説明

劣化食用油用再生剤、劣化食用油用再生剤の製造方法および劣化食用油の再生方法

【課題】細孔分布が主にメソポア領域で、従来と同等またはそれ以上の色素成分の吸着能を有する食品添加物二酸化ケイ素からなる劣化食用油用再生剤を提供する。
【解決手段】全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有し、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素からなることを特徴とする劣化食用油用再生剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライビーンズ、惣菜等を揚げた後の劣化食用油を再生するための食用油用再生剤、劣化食用油用再生剤の製造方法および劣化食用油の再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンビニエンスストアー、惣菜屋等の揚物をその場で販売する食品営業では、食用油を多量に使用している。このような食用油で惣菜等の揚種を揚げる場合、食用油は高温に曝されると共に繰り返し使用される。このため、食用油は加水分解、酸化等を受けて劣化を生じる。その結果、遊離脂肪酸の生成による酸価の上昇、鉄分の増加による黄褐色から茶褐色を呈する着色、色度の上昇を招く。
【0003】
このような食用油の繰り返し使用に伴って劣化を生じた場合には、資源の有効利用、食品のリサイクル化の要請から劣化により食用油に生成した各種不純物を除去して酸価の低減、脱色を行って再生処理を施すことが行われている。
【0004】
特許文献1、2には、前記劣化食用油の再生処理等に用いられるシリカ・マグネシア系製剤が開示されている。
【0005】
特許文献1のシリカ・マグネシア系製剤は、シリカ成分およびマグネシア成分をR=Sw/Mw(ただしSwはSiO2換算でのシリカ成分の含有量、MwはMgO換算のマグネシア成分の含有量を示す)で表したときのR(重量比)が0.1≦R≦1.9の範囲となる割合で含有し、シリカ成分およびマグネシア成分の少なくとも一部がシリカ成分層とマグネシア成分層が並行に接合した層構造を形成し、かつ0.16mモル/g以上の脂肪酸吸着能を有するものである。
【0006】
特許文献2のシリカ・マグネシア系製剤は、シリカ成分およびマグネシア成分をR=Sw/Mw(ただしSwはSiO2換算でのシリカ成分の含有量、MwはMgO換算のマグネシア成分の含有量を示す)で表したときのR(重量比)が2.1≦R≦50の範囲となる割合で含有し、シリカ成分層がマグネシア成分層をサンドイッチした三層構造部分をシリカの微粒子からなるマトリックス相が包含した状態を形成し、かつ0.15mモル/g以上のメチレンブルー吸着能、窒素原子換算で2.2mg/g以上の揮発性塩基吸着能を有するものである。
【特許文献1】特開2005−8675
【特許文献2】特開2005−6510
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、細孔分布が主にメソポア領域で、従来の特許文献1,2と同等またはそれ以上の色素成分の吸着能を有する食品添加物二酸化ケイ素からなる劣化食用油用再生剤を提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、細孔分布が主にメソポア領域で、従来の特許文献1,2と同等またはそれ以上の色素成分の吸着能を有する食品添加物二酸化ケイ素からなる劣化食用油用再生剤の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、細孔分布が主にメソポア領域を持つ食品添加物二酸化ケイ素および食品添加物酸化マグネシウムの乾式混合物からなり、従来の特許文献1,2と同等またはそれ以上の色素成分の吸着能および酸価低減能力を有する劣化食用油用再生剤を提供することを目的とする。
【0010】
本発明は、劣化食用油の再生処理にあたり、劣化食用油が白濁することなく劣化食用油中の色素成分を低減することが可能な劣化食用油の再生方法を提供することを目的とする。
【0011】
本発明は、劣化食用油の再生処理にあたり、劣化食用油が白濁することなく劣化食用油中の色素成分および酸価を低減することが可能な劣化食用油の再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によると、全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有し、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素からなることを特徴とする劣化食用油用再生剤が提供される。
【0013】
また本発明によると、反応容器内に水を入れ、加温する工程と、
前記反応容器内の加温水を撹拌しながら、ケイ酸ソーダ溶液および硫酸マグネシウム溶液を滴下する工程と、
前記反応容器内の溶液に硫酸を加えてスラリーを調製する工程と、
前記スラリーを濾過、水洗、乾燥することにより全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有し、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素を得る工程と
含むことを特徴とする劣化食用油用再生剤の製造方法が提供される。
【0014】
さらにまた本発明によると、反応容器内に水、ケイ酸ソーダ溶液および尿素を添加する工程と、
前記反応容器内を加温した後、酸を添加して共沈させる工程と、
前記反応容器内の共沈物を濾過、水洗、乾燥することにより尿素複合二酸化ケイ素を得る工程と、
前記尿素複合二酸化ケイ素を焼成して尿素を焼失することにより全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有し、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素を得る工程と
含むことを特徴とする劣化食用油用再生剤の製造方法が提供される。
【0015】
さらに本発明によると、全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有し、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素と食品添加物酸化マグネシウムとを乾式混合してなる劣化食用油用再生剤が提供される。
【0016】
さらに本発明によると、全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有し、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素からなる食用油用再生剤に200℃以下に加熱された劣化食用油を接触させて再生するにあたり、前記食用油用再生剤の水分量を調整してその再生剤との接触以降の劣化食用油中の水分量を0.7%以下に抑えることを特徴とする劣化食用油の再生方法が提供される。
【0017】
さらに本発明によると、全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有し、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素と食品添加物酸化マグネシウムとを乾式混合してなる食用油用再生剤に200℃以下に加熱された劣化食用油を接触させて再生するにあたり、前記食用油用再生剤の水分量を調整してその再生剤との接触以降の劣化食用油中の水分量を0.7%以下に抑えることを特徴とする劣化食用油の再生方法が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、従来の特許文献1,2と同等またはそれ以上の脱色能を有する劣化食用油用再生剤を提供することができる。
【0019】
本発明によれば、従来の特許文献1,2と同等またはそれ以上の脱色能を有する劣化食用油用再生剤の製造方法を提供することができる。
【0020】
本発明によれば、従来の特許文献1,2と同等またはそれ以上の酸価の低減および脱色能を有する劣化食用油用再生剤を提供することができる。
【0021】
本発明は、劣化食用油の再生処理にあたり、劣化食用油が白濁することなく劣化食用油の脱色を図ることが可能な劣化食用油の再生方法を提供できる。
【0022】
本発明は、劣化食用油の再生処理にあたり、劣化食用油が白濁することなく劣化食用油の酸価の低減および脱色を図ることが可能な劣化食用油の再生方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る劣化食用油用再生剤、劣化食用油用再生剤の製造方法、および劣化食用油の再生方法を詳細に説明する。
【0024】
(第1実施形態)
この第1実施形態に係る劣化食用油用再生剤、全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有する、つまりメソポアであり、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素からなる。
【0025】
前記Vl−t法(t−プロット法)は、公知の技術であり、例えば文献[近藤精一他 化学セミナー16「吸着の科学」丸善株式会社 52−54頁、79−80頁]に詳細に記載されている。この文献から、t−プロット法は吸着膜の平均厚さ(t)を相対圧(P/P0)に対してプロットした標準等温線を使う。ここで、(t)は吸着膜中の平均吸着総数(V/Vm)と単分子層の厚さ(σ)の積で表され、吸着質が窒素分子である場合、σ=0.354nm、Vは窒素吸着量、Vmは窒素の単分子層吸着量で表される。吸着量(Vl)を(t)に対してプロットしたものがt−プロットである。
【0026】
例えば試料がミクロポアを有する場合には、t−プロットは座標原点を通る1本の直線にはならず、tの大きい箇所で下方にずれた直線が得られる。tが大きい箇所の直線の傾きから外部表面積が求められる。また、試料がミクロポアのないメソポアを有する場合には、t−プロットはtが大きい箇所で座標原点を通る直線から上方にずれ、全表面積が外部表面積として求められる。
【0027】
前記食品添加物二酸化ケイ素の全比表面積を350m2/g未満にすると、例えば200℃以下に加熱した劣化食用油の再生に適用した際、効果的に脱色することが困難になる虞がある。前記食品添加物二酸化ケイ素の全比表面積の上限は、1500m2/g、より好ましくは700m2/gにすることが望ましい。
【0028】
前記Vl−t法で算出した外部表面積が全比表面積に占める割合を80%未満にすると、例えば200℃以下に加熱した劣化食用油の再生に適用した際、効果的に脱色することが困難になる虞がある。より好ましいVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積に占める割合は、90%以上、最も好ましくは100%である。
【0029】
前記食品添加物二酸化ケイ素は、形状および粒径が任意であるが、取り扱い易さ等を考慮して球状で10〜300μmの径を有することが好ましい。
【0030】
次に、第1実施形態の劣化食用油用再生剤を製造するための2つの方法を説明する。
【0031】
(1)マグネシウム溶出法による劣化食用油用再生剤の製造方法
まず、反応容器内に水を入れ、加温する。この加温は、40〜100℃にすることが好ましい。つづいて、前記反応容器内の加温水を撹拌しながら、ケイ酸ソーダ溶液および硫酸マグネシウム溶液を滴下する。ケイ酸ソーダ溶液および硫酸マグネシウム溶液は、SiO2とMgO換算のモル比で4:1〜1:1になるように、かつ総重量が水およびケイ酸ソーダと硫酸マグネシウムの重量に対して1〜40重量%になるように滴下することが好ましい。
【0032】
次いで、前記反応容器内の溶液に硫酸を加えてマグネシウムを溶出させてスラリーを調製する。このとき、添加する硫酸は希硫酸でも、濃硫酸でもよいが、例えば10〜70重量%の濃硫酸が好ましい。硫酸は、硫酸マグネシウムに対して1.0〜2.0モル倍率で添加することが好ましい。得られたスラリーを濾過、水洗、乾燥し、必要に応じて乾燥物をすり潰すことによって、全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有し、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素(劣化食用油用再生剤)を製造する。この時、水洗は硫酸の残留が認められなくなるまで行うことが好ましい。
【0033】
(2)尿素焼失法による劣化食用油用再生剤の製造方法
まず、反応容器内に水、ケイ酸ソーダ溶液および尿素を入れる。この時、ケイ酸ソーダ溶液(SiO2換算)および尿素はそれらのモル比で20:1〜1:1になるように配合することが好ましい。ケイ酸ソーダおよび尿素の総量は、水、ケイ酸ソーダおよび尿素の重量に対して1〜40重量%になるように配合することが好ましい。
【0034】
次いで、前記反応容器内の溶液を加温した後、酸を添加して尿素複合二酸化ケイ素を共沈させる。溶液の加温温度は、5〜100℃にすることが好ましい。酸の滴下に際し、溶液を撹拌しながら行うことが好ましい。前記酸としては、例えば希塩酸、希硫酸等を用いることができる。つづいて、反応容器内の共沈物を濾過、水洗、乾燥することにより尿素複合二酸化ケイ素を得る。ひきつづき、得られた尿素複合二酸化ケイ素を焼成して尿素を焼失することにより、全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有し、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素(劣化食用油用再生剤)を製造する。この時、焼成は空気のような酸化性雰囲気中、200〜1000℃、より好ましくは300〜700℃で行うことが望ましい。
【0035】
(3)テンプレート法による劣化食用油用再生剤の製造方法
まず、反応容器内に水、ケイ酸ソーダ溶液およびポリオキシアルキレンアルキルエーテルを入れる。この時、ケイ酸ソーダ溶液(SiO2換算)およびポリオキシアルキレンアルキルエーテルはそれらの重量比で4:1〜1:2になるように配合することが好ましい。ケイ酸ソーダおよびポリオキシアルキレンアルキルエーテルの総量は、水、ケイ酸ソーダおよびポリオキシアルキレンアルキルエーテルの重量に対して1〜40重量%になるように配合することが好ましい。前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、例えばポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等を用いることができる。
【0036】
次いで、前記反応容器内の溶液を加温した後、酸を添加してポリオキシアルキレンアルキルエーテル複合二酸化ケイ素を共沈させる。溶液の加温温度は、50〜100℃にすることが好ましい。酸の滴下に際し、溶液を撹拌しながら行うことが好ましい。前記酸としては、例えば希塩酸、希硫酸等を用いることができる。つづいて、反応容器内の共沈物を濾過、水洗、乾燥することによりポリオキシアルキレンアルキルエーテル複合二酸化ケイ素を得る。ひきつづき、得られたポリオキシアルキレンアルキルエーテル複合二酸化ケイ素を焼成してポリオキシアルキレンアルキルエーテルを焼失することにより全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有し、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素(劣化食用油用再生剤)を製造する。この時、焼成は空気のような酸化性雰囲気中、200〜1000℃、より好ましくは300〜700℃で行うことが望ましい。
【0037】
以上、第1実施形態に係る劣化食用油用再生剤は全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有する、つまりメソポアであり、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素からなり、例えば200℃以下に加熱した劣化食用油との接触おいてその劣化食用油中の色素成分に対する高い吸着能を有するため、劣化食用油を効果的に脱色して再生することができる。
【0038】
また、第1実施形態に係る劣化食用油用再生剤である食品添加物二酸化ケイ素は例えば第7版食品添加物公定書 D−1009の定量法に従う試験に適合するため、高い安全性を有する。
【0039】
(第2実施形態)
この第2実施形態に係る劣化食用油用再生剤は、全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有する、つまりメソポアであり、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素と食品添加物酸化マグネシウムとを乾式混合してなるものである。
【0040】
前記食品添加物二酸化ケイ素は、前記第1実施形態で説明したのと同様なものが用いられる。
【0041】
前記食品添加物酸化マグネシウムは、形状および粒径が任意であるが、取り扱い易さ等を考慮して球状で10〜300μmの径を有することが好ましい。
【0042】
前記食品添加物二酸化ケイ素および食品添加物酸化マグネシウムの配合割合は、例えば200℃以下に加熱した劣化食用油の再生目的に応じて適宜選択される。例えば、劣化食用油の脱色を重視した再生では劣化食用油の脱色に寄与する食品添加物二酸化ケイ素の配合割合を多くすることが好ましい。一方、劣化食用油の酸価の低減を重視した再生では劣化食用油の酸価度の低減に寄与する食品添加物酸化マグネシウムの配合割合を多くすることが好ましい。特に、前記食品添加物二酸化ケイ素の配合重量をM1、前記食品添加物酸化マグネシウムの配合重量をM2とすると、M1/M2を2.3〜20、より好ましくは8〜14にすることが好ましい。
【0043】
前記乾式混合は、出荷前の段階で行ってもよいし、ユーザによる使用時に行っても、いずれでもよい。
【0044】
以上、第2実施形態に係る劣化食用油用再生剤は、全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有する、つまりメソポアであり、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占め、例えば200℃以下に加熱した劣化食用油との接触おいてその劣化食用油中の色素成分に対する高い吸着能を有する食品添加物二酸化ケイ素と同劣化食用油との接触おいてその劣化食用油中の酸価低減能を有する食品添加物酸化マグネシウムとを乾式混合してなるものであるため、劣化食用油を効果的に脱色すると共に、酸価度を低減して再生することができる。
【0045】
特に、前記食品添加物二酸化ケイ素の配合重量をM1、前記食品添加物酸化マグネシウムの配合重量をM2とすると、M1/M2を2.3〜20にすることによって、劣化食用油の再生時においてバランスの取れた脱色および酸価度の低減を図ることができる。
【0046】
また、第2実施形態に係る劣化食用油用再生剤は例えば第7版食品添加物公定書 D−1009の定量法に従う試験に適合した食品添加物二酸化ケイ素と食品添加物酸化マグネシウムとが化学的に変化せずに単に乾式混合したものであるため、高い安全性を有する。
【0047】
第2実施形態に係る劣化食用油用再生剤は、例えば200℃以下に加熱された劣化食用油を接触させて再生する際、その再生剤との接触以降の劣化食用油中の水分量が0.7%以下、より好ましくは0.5%以下になるように水分量(実質的に食品添加物二酸化ケイ素の水分量)または添加量を調整することが望ましい。具体的には、劣化食用油の水分量は品種、使用形態によって異なるが概ね上限が0.5%であることから、再生剤から劣化食用油へ負荷する水分量を0.2%以下にすることが好ましい。ただし、劣化食用油の水分量が0.7%以上である場合、例えば200℃以下に加熱されたこの劣化食用油が再生剤に接触すると、含有水分の揮発に伴う突沸を生じ、作業が困難になる虞があることから、予め再生処理前に劣化食用油を180℃で循環させて水分量を概ね0.7%以下、好ましくは0.5%以下に調整して再生処理することが望ましい。このように水分量を規定することによって、例えば200℃以下に加熱された劣化食用油に再生剤を接触する際、劣化食用油の脂肪酸マグネシウムの生成に起因する白濁を抑制または防止することが可能になる。
【0048】
すなわち、前述した特許文献1である特開2005−8675の段落[0031]には、「単なるシリカとマグネシアとの乾式混合物では、油脂からの遊離脂肪酸であるステアリン酸やオレイン酸などとの造塩反応が生じ、金属石鹸である脂肪酸マグネシウムが生成してしまい、この結果、好ましい脂肪酸吸着能を示さなくなるばかりではなく、処理油に金属石鹸分が移行してしまい、これも風味を損ねる原因となる。」と記載されている。
【0049】
本発明者らは、脂肪酸マグネシウムの生成が劣化食用油の水分量に起因し、その水分が劣化食用油自体のみならず再生剤からも導入されることを究明し、食品添加物二酸化ケイ素と食品添加物酸化マグネシウムとを乾式混合してなる劣化食用油用再生剤(実質的に食品添加物二酸化ケイ素)の水分量または添加量を前述のように調整することによって、後述する実施例でも記載のようにこの再生剤との接触時の劣化食用油の脂肪酸マグネシウムの生成に起因する白濁を抑制または防止できることを見出した。
【0050】
(第3実施形態)
この第3実施形態に係る劣化食用油の再生方法は、まず、全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有し、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素からなる食用油用再生剤を用意する。つづいて、この食用油用再生剤に200℃以下に加熱された劣化食用油を接触させて再生する。この時、前記食用油用再生剤の水分量または添加量を調整してその再生剤との接触以降の劣化食用油中の水分量を0.7%以下に抑える。
【0051】
前記食用油用再生剤は、前記第1実施形態で説明したのと同様のものが用いられる。
【0052】
前記加熱された劣化食用油の下限温度は、90℃にすることが好ましい。
【0053】
前記食用油用再生剤に200℃以下に加熱された劣化食用油を接触させる工程は、加熱源を有する食用油収容容器と前記食用油用再生剤が収納された再生剤用容器とを循環流路で接続し、前記食用油収容容器内の加熱された劣化食用油を前記循環流路を通して前記再生剤用容器に供給、循環させて前記食用油用再生剤に繰り返し接触させる方法を採用することができる。
【0054】
前記食用油用再生剤の水分量調整は、前述した第1実施形態の食品添加物二酸化ケイ素の製造方法(1)〜(3)における乾燥工程、焼成工程の温度、時間を制御することによりその食品添加物二酸化ケイ素の水分量を調整することによりその再生剤との接触以降の劣化食用油中の水分量を0.7%以下に抑える。使用する再生剤の水分量の設定は、再生対象である劣化食用油の種類、性状、つまり水分量に応じてなされる。
【0055】
前記再生剤との接触以降の劣化食用油中の水分量が0.7%を越えると、再生処理において加熱された劣化食用油をこの再生剤に接触する時に劣化食用油中に脂肪酸マグネシウムが生成して白濁する虞がある。より好ましい再生剤との接触以降の劣化食用油中の水分量は0.5%以下である。
【0056】
以上、第3実施形態に係る劣化食用油の再生方法によれば劣化食用油を効果的に脱色すると共に、加熱された劣化食用油を再生剤に接触させる際の白濁を抑制または防止することができる。
【0057】
(第4実施形態)
この第4実施形態に係る劣化食用油の再生方法は、まず、全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有し、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素と食品添加物酸化マグネシウムとを乾式混合してなる食用油用再生剤を用意する。つづいて、この食用油用再生剤に200℃以下に加熱された劣化食用油を接触させて再生する。この時、前記食用油用再生剤の水分量を調整してその再生剤との接触以降の劣化食用油中の水分量を0.7%以下に抑える。
【0058】
前記食用油用再生剤は、前記第2実施形態で説明したのと同様のものが用いられる。
【0059】
前記加熱された劣化食用油の下限温度は、90℃にすることが好ましい。
【0060】
前記食用油用再生剤に200℃以下に加熱された劣化食用油を接触させる工程は、加熱源を有する食用油収容容器と前記食用油用再生剤が収納された再生剤用容器とを循環流路で接続し、前記食用油収容容器内の加熱された劣化食用油を前記循環流路を通して前記再生剤用容器に供給、循環させて前記食用油用再生剤に繰り返し接触させる方法を採用することができる。
【0061】
前記食用油用再生剤の水分量調整は、主にその構成成分である食品添加物二酸化ケイ素を対象にすることが好ましい。すなわち、前述した第1実施形態の食品添加物二酸化ケイ素の製造方法(1)〜(3)における乾燥工程、焼成工程の温度、時間を制御することによりその食品添加物二酸化ケイ素の水分量を調整、つまり食用油用再生剤の水分量を調整することによりその再生剤との接触以降の劣化食用油中の水分量を0.7%以下に抑える。使用する再生剤(主に食品添加物二酸化ケイ素)の水分量の設定は、再生対象である劣化食用油の種類、性状、つまり水分量に応じてなされる。
【0062】
前記再生剤との接触以降の劣化食用油中の水分量が0.7%を越えると、再生処理において加熱された劣化食用油をこの再生剤に接触する時に劣化食用油中に脂肪酸マグネシウムが生成して白濁する虞がある。より好ましい再生剤との接触以降の劣化食用油中の水分量は0.5%以下である。
【0063】
以上、第4実施形態に係る劣化食用油の再生方法によれば劣化食用油を効果的に脱色し、かつ酸価度を低減して再生できると共に、加熱された劣化食用油を再生剤に接触させる際の白濁を抑制または防止することができる。
【0064】
[実施例]
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0065】
最初に、本実施例、参照例および比較例に用いた試験方法の詳細を説明する。
【0066】
1)再生剤のX−ray回折試験
この試験は、以下の測定条件で行った。
【0067】
・X線回折装置:株式会社リガク製商標名 RINT2000
・X線 :Cu−Kα
・フィルタ :使用せず
・カウンタ :シンチレーションカウンタ
・電圧 :40kV
・電流 :20mA
・走査速度 :3.00°/分
・サンプリング
ステップ:0.050°
・発散スリット:1deg
・散乱スリット:1deg
・受光スリット:0.15mm。
【0068】
2)再生剤の示差熱分析方法
この分析方法は、以下の測定条件で行った。
【0069】
・装置 :島津製作所社製自動示差熱・熱重量同時測定装置(商標名
DTG60H)
・雰囲気ガス :窒素
・ガス流量 :50mL/分
・セル :白金
・温度プログラム:25℃3分間保持後、10℃/分の昇温速度で100℃まで昇温。
【0070】
3)再生剤の細孔分布測定方法
この測定方法は、以下の装置および解析条件で行った。
【0071】
・装置 :Quantachrome社製高速比表面積・細孔分布測定装置(商標名
NOVA4000e型)
・前処理条件 :試料0.03〜0.1gを110℃、2時間乾燥後、試料を
正確に測り、吸着管に封入し、その後10-3torr以下にて
150℃、5時間脱気した。
【0072】
・全比表面積 :多点BET法
・細孔分布 :BJH法
・外部表面積 :Vl−t法。
【0073】
4)再生剤による食用油脱色、油脱色率の測定のための試験
一般惣菜油(吉原製油(株)社製商標名:ゴールデン大豆白絞油)の使用済み劣化油10gに再生剤0.4gを添加して密封した後、150℃のオイルバス中、振盪器にて130回/分の条件で30分間振盪した。振盪後、直ちにメンブランフィルタ(目開き0.8μm)にて濾過し、得られた濾過液の吸光度を測定した。再生剤無添加の同使用済み劣化油10gをブランクとし、同様な処理を行って濾過液の吸光度を測定した。これらの測定結果を書き式に導入して油脱色率(%)を求めた。
【0074】
油脱色率(%)=[(ブランクの吸光度−脱色処理後の吸光度)/ブランクの吸光度]
×100
5)再生剤による再生処理後の食用油酸価試験
一般惣菜油(吉原製油(株)社製商標名:ゴールデン大豆白絞油)の使用済み劣化油10gに任意量の再生剤を添加して密封した後、150℃のオイルバス中、振盪器にて130回/分の条件で30分間振盪した。振盪後、直ちにメンブランフィルタ(目開き0.8μm)にて濾過し、得られた濾過液の酸価を測定した。この酸価測定は、日本工業規格(JIS K−3504)の油脂試験方法に準じて行った。
【0075】
6)再生剤および使用済み食用油の水分量の測定
一般惣菜油(吉原製油(株)社製商標名:ゴールデン大豆白絞油)の使用済み劣化油の水分量の測定を以下の方法により行った。
【0076】
再生剤の水分量は、乾燥減量測定方法(1g、105℃、3時間)で求めた。
【0077】
使用済み劣化油中の水分量は、(財)日本食品分析センター編 五訂「日本食品標準成分表分析マニアルの解説」1−1−2.乾燥助剤添加法を参考として以下の方法で求めた。
【0078】
すなわち、秤量容器内に精製ケイ砂20〜30gを入れた。同時に、撹拌用ガラス棒を秤量容器に入れ、この秤量容器を乾燥機に設置して105℃で2時間間乾燥した。つづいて、秤量容器を乾燥機から取り出し、デシケータに入れて1時間放冷した後、0.1mgの桁まで秤量し、恒量を求めた。このときの秤量値をW0とする。ひきつづき、秤量容器内に試料である使用済み劣化油を3〜5g程度添加し、0.1mgの桁まで秤量した。このときの秤量値をW1とする。次いで、秤量容器内に水をその中の精製ケイ砂が濡れる程度に加え、ガラス棒で試料を混和しさらの水浴上で撹拌しながら、サラサラな状態になるまで予備乾燥した。この後、乾燥機に設置し、105℃、3時間の本乾燥を行い、さらに秤量容器をデシケータに移し、1時間放冷し、0.1mgの桁まで秤量した。このときの秤量値をW2とする。このように測定した秤量値W0,W1,W2を次式に導入して使用済み劣化油中の水分量を求めた。
【0079】
水分量(%)={(W1−W2)/(W1−W0)}×100
次に、実施例、参照例および比較例を説明する。
【0080】
(実施例1)
反応容器であるタンク内に水2.5Lを投入し、この水を40℃に加温した。つづいて、加温水を攪拌しながら市販3号ケイ酸ソーダ532gと硫酸マグネシウム溶液(7水塩結晶物175gを水に溶解し300mLとした溶液)を滴下した。滴下終了後の溶液に70%の硫酸110gを加えることによりスラリーを調製した。得られたスラリーを濾過、水洗、乾燥した後、乳鉢ですり潰すことにより二酸化ケイ素148gを得た。
【0081】
得られた二酸化ケイ素は、7版食品添加物公定書D−1009[二酸化ケイ素]の定量法の項目に従って試験を行った結果、二酸化ケイ素の含有量が99.1%であった。水分量は、4.1%であった。ここで、水分量が前記試験での二酸化ケイ素との合量で100%を超えるのは前記試験が水分除去を伴う焼成工程を経てなされることによるものである。
【0082】
(実施例2)
反応容器であるタンク内に水700mL、市販3号ケイ酸ソーダ144gおよび尿素3.5gを投入し、70℃に加温した。つづいて、加温溶液を攪拌しながら希塩酸を滴下してpHを中性に調整することにより共沈させた。滴下終了後の共沈物を有する溶液を濾過、水洗、乾燥することにより尿素複合二酸化ケイ素を得た。この複合二酸化ケイ素を500℃で焼成し、尿素を焼失し、乳鉢ですり潰すことにより二酸化ケイ素38gを得た。
【0083】
得られた二酸化ケイ素は、7版食品添加物公定書D−1009[二酸化ケイ素]の定量法の項目に従って試験を行った結果、二酸化ケイ素の含有量が99.5%であった。水分量は、0.8%であった。
【0084】
(実施例3)
反応容器であるタンク内に水700mL、市販3号ケイ酸ソーダ72gおよびポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール14gを投入し、70℃に加温した。つづいて、加温溶液を攪拌しながら希塩酸を滴下してpHを中性に調整することにより共沈させた。滴下終了後の共沈物を有する溶液を濾過、水洗、乾燥することにより有機物複合二酸化ケイ素を得た。この複合二酸化ケイ素を500℃で焼成し、有機物(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール)を焼失し、乳鉢ですり潰すことにより二酸化ケイ素18gを得た。
【0085】
得られた二酸化ケイ素は、7版食品添加物公定書D−1009[二酸化ケイ素]の定量法の項目に従って試験を行った結果、二酸化ケイ素の含有量が99.8%であった。水分量は、0.8%であった。
【0086】
(参照例1)
反応容器であるタンク内に水3.0Lを投入し、この水を40℃に加温した。つづいて、加温水を攪拌しながら市販3号ケイ酸ソーダ1.8kgと市販の硫酸アルミニウム1.12kgを添加した。添加終了後の溶液に塩酸520gを加えることによりスラリーを調製した。得られたスラリーを濾過、水洗、乾燥した後、すり潰すことにより二酸化ケイ素498gを得た。
【0087】
得られた二酸化ケイ素は、7版食品添加物公定書D−1009[二酸化ケイ素]の定量法の項目に従って試験を行った結果、二酸化ケイ素の含有量が99.0%であった。水分量は、2.8%であった。
【0088】
(参照例2)
反応容器であるタンク内に水700mL、市販3号ケイ酸ソーダ72gおよびポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール25gを投入し、70℃に加温した。つづいて、加温溶液を攪拌しながら希塩酸を滴下してpHを中性に調整することにより共沈させた。滴下終了後の共沈物を有する溶液を濾過、水洗、乾燥することにより有機物複合二酸化ケイ素を得た。この複合二酸化ケイ素にメタノールを加え、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを溶出させた後、水洗、乾燥し、すり潰すことにより二酸化ケイ素18gを得た。
【0089】
得られた二酸化ケイ素は、7版食品添加物公定書D−1009[二酸化ケイ素]の定量法の項目に従って試験を行った結果、二酸化ケイ素の含有量が99.8%であった。水分量は、2.1%であった。
【0090】
得られた実施例1〜3および参照例1,2の二酸化ケイ素粒子(食用油用再生剤)について、前述した項目3)の試験に基づいてBET法による全比表面積、Vl−t法で算出した外部表面積および全比表面積に占める外部表面積の比率を求めた。その結果を下記表1に示す。
【0091】
また、実施例1〜3および参照例1,2の二酸化ケイ素のBJH法による細孔分布を図1に示す。この図1から実施例1〜3の二酸化ケイ素は、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有することが確認された。これに対し、参照例1,2の二酸化ケイ素は細孔形態が細孔直径4nm未満の範囲に分布極大を有することが確認された。
【0092】
さらに、実施例1〜3および参照例1,2の二酸化ケイ素(食用油用再生剤)について、前述した項目4)の試験に基づいて油脱色率を求めた。その結果を下記表1に示す。
【表1】

【0093】
前記表1から明らかなように全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有し、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素からなる実施例1〜3の再生剤は、50%以上の脱色率を示し、細孔形態が細孔直径4nm未満の範囲に分布極大を有し、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%未満である食品添加物二酸化ケイ素からなる参照例1,2の再生剤に比べて優れた脱色性能を有することがわかる。
【0094】
また、実施例1〜3の再生剤を用いた項目4)の試験において、使用済み劣化油10gに再生剤0.4gを添加して密封した後、150℃のオイルバス中、振盪器にて振盪させる際、再生剤から持ち込まれる水分量を含む使用済み劣化油の水分量が0.7%以下になるように再生剤の水分量を調整した結果、使用済み劣化油の白濁が発生しなかった。
【0095】
(実施例4〜6および参照例3,4)
実施例1〜3および参照例1,2の二酸化ケイ素粒子と食品添加物酸化マグネシウム(富田製薬社製商標名:食品添加物酸化マグネシウム)を重量比R(R=SiO2/MgO)が9になるように配合し、乾式混合することにより劣化食用油用再生剤をそれぞれ調製した。
【0096】
(比較例1:特開2005−8675の実施例1に対応)
シリカ原料として市販の二酸化ケイ素(水澤化学工業(株)製ミズカソーブC−1)、マグネシウム原料として市販の酸化マグネシウム(神島化学工業(株)製スターマグU)を用い、R=0.1(R=SiO2/MgO重量比)となるよう、かつ両原料のSiO2換算でシリカ成分含有量とMgO換算でのマグネシア含量の合計量が150gになるように原料を量りとった。次に、容量2Lのステンレススチール製タンクに後から加える粉末原料との合量が1150gとなるように水道水を入れ、予め量りとった粉末原料を少しずつ加えいれた(固形分濃度13%)。撹拌を続け、加熱により約15分間で95℃まで昇温し、以後10時間かけて均質混合および熟成を行った。スラリーを減圧濾過により脱水し、得られたケーキを電気乾燥器に入れ、110℃で乾燥した。最後に乾燥ケーキをサンプルミル(ハンマー型粉砕機)で粉砕し、比較例1の試料(劣化食用油用再生剤)とした。
【0097】
(比較例2:特開2005−8675の実施例9に対応)
シリカ原料として市販の二酸化ケイ素(水澤化学工業(株)製ミズカソーブC−1)、マグネシウム原料として市販の酸化マグネシウム(神島化学工業(株)製スターマグU)を用い、R=1.9(R=SiO2/MgO重量比)となるよう、且つ両原料のSiO2換算でシリカ成分含有量とMgO換算でのマグネシア含量の合計量が150gになるように原料を量りとった。次に、容量2Lのステンレススチール製タンクに後から加える粉末原料との合量が1150gとなるように水道水を入れ、予め量りとった粉末原料を少しずつ加えいれた(固形分濃度13%)。撹拌を続け、加熱により約15分間で95℃まで昇温し、以後10時間かけて均質混合および熟成を行った。スラリーを減圧濾過により脱水し、得られたケーキを電気乾燥器に入れ、110℃で乾燥した。最後に乾燥ケーキをサンプルミル(ハンマー型粉砕機)で粉砕し、比較例2の試料(劣化食用油用再生剤)とした。
【0098】
(比較例3:特開2005−6510の実施例1に対応)
シリカ原料として市販の二酸化ケイ素(水澤化学工業(株)製ミズカソーブC−1)、マグネシウム原料として市販の酸化マグネシウム(神島化学工業(株)製スターマグU)を用い、R=2.1(R=SiO2/MgO重量比)となるよう、且つ両原料のSiO2換算でシリカ成分含有量とMgO換算でのマグネシア含量の合計量が150gになるように原料を量りとった。次に、容量2Lのステンレススチール製タンクに後から加える粉末原料との合量が1150gとなるように水道水を入れ、予め量りとった粉末原料を少しずつ加えいれた(固形分濃度13%)。撹拌を続け、加熱により約15分間で95℃まで昇温し、以後10時間かけて均質混合および熟成を行った。スラリーを減圧濾過により脱水し、得られたケーキを電気乾燥器に入れ、110℃で乾燥した。最後に乾燥ケーキをサンプルミル(ハンマー型粉砕機)で粉砕し、比較例3の試料(劣化食用油用再生剤)とした。
【0099】
(比較例4:特開2005−6510の実施例に準ずる)
シリカ原料として市販の二酸化ケイ素(水澤化学工業(株)製ミズカソーブC−1)、マグネシウム原料として市販の酸化マグネシウム(神島化学工業(株)製スターマグU)を用い、R=9(R=SiO2/MgO重量比)となるよう、且つ両原料のSiO2換算でシリカ成分含有量とMgO換算でのマグネシア含量の合計量が150gになるように原料を量りとった。次に、容量2Lのステンレススチール製タンクに後から加える粉末原料との合量が1150gとなるように水道水を入れ、予め量りとった粉末原料を少しずつ加えいれた(固形分濃度13%)。撹拌を続け、加熱により約15分間で95℃まで昇温し、以後10時間かけて均質混合および熟成を行った。スラリーを減圧濾過により脱水し、得られたケーキを電気乾燥器に入れ、110℃で乾燥した。最後に乾燥ケーキをサンプルミル(ハンマー型粉砕機)で粉砕し、比較例4の試料(劣化食用油用再生剤)とした。
【0100】
得られた実施例4〜6、参照例3,4および比較例1〜4の劣化食用油用再生剤について、前述した項目1)のX−ray回折試験に基づいてX線回折スペクトルを測定した。実施例4〜6および参照例3,4の劣化食用油用再生剤のX線回折スペクトルを図2に、比較例1〜4の劣化食用油用再生剤のX線回折スペクトルを図3に、それぞれ示す。
【0101】
また、実施例4〜6、参照例3,4および比較例1〜4の食用油用再生剤について、前述した項目2)の示差熱分析方法に基づいて示差熱分析を行った。実施例4〜6および参照例3,4の劣化食用油用再生剤の示差熱分析結果を図4の(A)〜(E)に、比較例1〜4の劣化食用油用再生剤の示差熱分析結果を図5の(A)〜(D)に、それぞれ示す。
【0102】
図2により実施例4〜6および参照例3,4の食用油用再生剤は、2θが43°、62°の付近に酸化マグネシウムに起因するピークが、2θが22°付近に二酸化ケイ素のアモルファス構造に起因するブロードな回折パターンが、それぞれ現れることがわかる。
【0103】
これに対し、図3に示すように比較例1の食用油用再生剤は2θが19°、39°50°、58°の付近に水酸化マグネシウムに起因する顕著なピークが現れることがわかる。また、図3に示すように比較例2,3の食用油用再生剤は2θが20°、35°、61°の付近に前記[背景技術]に開示した特開2005−8675および特開2005−6510の記載のサンドイッチ構造に起因する低強度で幅広のピークがそれぞれ現れる。なお、比較例4の食用油用再生剤は2θが23°の付近にアモルファスシリコンに起因する小さなピークが現れる。このような実施例4〜6、参照例3,4および比較例1〜4の食用油用再生剤の各成分の出現は図4、図5の示差熱分析結果にも反映されている。
【0104】
また、実施例4〜6、参照例3,4および比較例1〜4の食用油用再生剤について、前述した項目3)の試験に基づいてBET法による全比表面積、Vl−t法で算出した外部表面積および全比表面積に占める外部表面積の比率を求めた。その結果を下記表2に示す。
【0105】
さらに、実施例4〜6、参照例3,4および比較例1〜4の食用油用再生剤について、一般惣菜油(吉原製油(株)社製商標名:ゴールデン大豆白絞油)の使用済み劣化油(酸価2.1)を用い、前述した項目4)の試験に基づいて油脱色率、項目5)の試験に基づいて酸価をそれぞれ求めた。その結果を下記表2に示す。
【表2】

【0106】
前記表2から明らかなように全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有し、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素と食品添加酸化マグネシウムを乾式混合した実施例4〜6の再生剤は、細孔形態が細孔直径4nm未満の範囲に分布極大を有し、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%未満である食品添加物二酸化ケイ素と食品添加酸化マグネシウムを乾式混合した参照例3,4の再生剤に比べて高い脱色率と酸価の低減効果を有することがわかる。
【0107】
また、実施例4〜6の再生剤は比較例1を除く比較例2〜4の再生剤と同程度またはそれ以上の高い脱色率を有し、さらに比較例1〜4の再生剤に比べて高い酸価低減効果を有することがわかる。
【0108】
(実施例7)
一般惣菜油(吉原製油(株)社製商標名:ゴールデン大豆白絞油)の使用済み劣化油(水分量0.6%)に水分量を4.1%に調整した実施例4の劣化食用油用再生剤を0.10g、0.20g、0.3g、0.4g、0,6および1.0gを添加し、前述した食用油酸価試験に基づいて酸価をそれぞれ求めた。同時に、各再生剤の添加時における使用済み劣化油の濁りの状態を観察した。これらの結果を下記表3に示す。
【0109】
(比較例5)
一般惣菜油(吉原製油(株)社製商標名:ゴールデン大豆白絞油)の使用済み劣化油(水分量0.6%)に水分量を4.1%に調整した比較例2の劣化食用油用再生剤を0.10g、0.20g、0.3g、0.4g、0,6および1.0gを添加し、前述した食用油酸価試験に基づいて酸価をそれぞれ求めた。同時に、各再生剤の添加時における使用済み劣化油の濁りの状態を観察した。これらの結果を下記表3に示す。
【表3】

【0110】
前記表3から明らかなように実施例4の劣化食用油用再生剤(水分量:4.1%)を用いた実施例7では劣化食用油の総水分量が0.7%を超えると劣化食用油の濁りが生じる、つまり劣化食用油の総水分量を0.7%以下に抑えることにより劣化食用油の濁りを防止できることがわかる。
【0111】
これに対し、比較例2の劣化食用油用再生剤(水分量:4.1%)を用いた比較例5では劣化食用油の総水分量が0.7%を超えても劣化食用油の濁りが生じず、総水分量が0.76%を超えたときに濁りが生じることがわかる。これは、対象再生剤の比較例2が特開2005−8675の実施例9に対応するもので、同公開公報の段落[0031]の記載内容を裏付けている。
【0112】
ただし、実施例7および比較例5の対比において微濁する時点での酸価の低減量は、比較例5に比べて実施例7が多いことがわかる。
【0113】
したがって、全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有し、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素と食品添加物酸化マグネシウムとを乾式混合してなる食用油用再生剤に200℃以下に加熱された劣化食用油を接触させて再生するにあたり、前記食用油用再生剤の水分量または添加量を調整してその再生剤との接触以降の劣化食用油中の水分量を0.7%以下に抑えることによって、劣化食用油の白濁を抑制または防止でき、劣化食用油を脱色できることはもちろん、酸価を効果的に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】実施例1〜3および参照例1,2の二酸化ケイ素粒子のBJH法による細孔分布を示す図。
【図2】実施例4〜6および参照例3,4の劣化食用油用再生剤のX線回折スペクトル図。
【図3】比較例1〜4の劣化食用油用再生剤のX線回折スペクトル図。
【図4】実施例4〜6および参照例3,4の劣化食用油用再生剤の示差熱分析結果を示す図。
【図5】比較例1〜4の劣化食用油用再生剤の示差熱分析結果を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有し、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素からなることを特徴とする劣化食用油用再生剤。
【請求項2】
反応容器内に水を入れ、加温する工程と、
前記反応容器内の加温水を撹拌しながら、ケイ酸ソーダ溶液および硫酸マグネシウム溶液を滴下する工程と、
前記反応容器内の溶液に硫酸を加えてスラリーを調製する工程と、
前記スラリーを濾過、水洗、乾燥することにより全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有し、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素を得る工程と
含むことを特徴とする劣化食用油用再生剤の製造方法。
【請求項3】
反応容器内に水、ケイ酸ソーダ溶液および尿素を添加する工程と、
前記反応容器内を加温した後、酸を添加して反応性生物を共沈させる工程と、
前記反応容器内の共沈物を濾過、水洗、乾燥することにより尿素複合二酸化ケイ素を得る工程と、
前記尿素複合二酸化ケイ素を焼成して尿素を焼失することにより全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有し、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素を得る工程と
含むことを特徴とする劣化食用油用再生剤の製造方法。
【請求項4】
全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有し、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素と食品添加物酸化マグネシウムとを乾式混合してなる劣化食用油用再生剤。
【請求項5】
前記食品添加物二酸化ケイ素の配合重量をM1、前記食品添加物酸化マグネシウムの配合重量をM2とすると、M1/M2が2.3〜20であることを特徴とする請求項4記載の劣化食用油用再生剤。
【請求項6】
全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有し、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素からなる食用油用再生剤に200℃以下に加熱された劣化食用油を接触させて再生するにあたり、前記食用油用再生剤の水分量または添加量を調整してその再生剤との接触以降の劣化食用油中の水分量を0.7%以下に抑えることを特徴とする劣化食用油の再生方法。
【請求項7】
全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有し、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素と食品添加物酸化マグネシウムとを乾式混合してなる食用油用再生剤に200℃以下に加熱された劣化食用油を接触させて再生するにあたり、前記食用油用再生剤の水分量または添加量を調整してその再生剤との接触以降の劣化食用油中の水分量を0.7%以下に抑えることを特徴とする劣化食用油の再生方法。
【請求項8】
前記食用油用再生剤は、前記食品添加物二酸化ケイ素の配合重量をM1、前記食品添加物酸化マグネシウムの配合重量をM2とすると、M1/M2が2.3〜20であることを特徴とする請求項7記載の劣化食用油の再生方法。
【請求項9】
前記食用油用再生剤に200℃以下に加熱された劣化食用油を接触させる工程は、加熱源を有する食用油収容容器と前記食用油用再生剤が収納された再生剤用容器とを循環流路で接続し、前記食用油収容容器内の加熱された劣化食用油を前記循環流路を通して前記再生剤用容器に供給、循環させて前記食用油用再生剤に繰り返し接触させることを特徴とする請求項6または7記載の劣化食用油の再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−335982(P2006−335982A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−165488(P2005−165488)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(000237972)富田製薬株式会社 (30)
【Fターム(参考)】