説明

助手席用エアバッグ装置

【課題】従来のブラケット部やスティフナ等を用いずに車両の軽量化を果たすと共に、インストルメントパネルに対してフローティング構成として、乗員のより確実な安全対策を施すようにする。
【構成】インストルメントパネル20の固定部位である被係合体取付け部15に折り畳まれたエアバッグが収容されたケース体11を設置して、ケース体11をインストルメントパネル20の凹陥部21に嵌合設置することにより組み付け構成する場合に、ケース体11にフック片14を形成すると共に、被係合体取付け部15に被係合体であるU字状ピン16を設けておき、U字状ピン16にフック片14を被係合体取付け部15に対して下方に可動可能に係合することにより、ケース体11をインストルメントパネル20に対してフローティング状態で設置するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車のインストルメントパネルにおける助手席に対向する部位に設置される助手席用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の助手席用エアバッグ装置として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。かかる従来の技術は、同特許文献1に使用されている符号を付して説明すると、エアバッグを内蔵するエアバッグモジュール1をインストルメントパネル2内に装着する場合に、エアバッグモジュール1が、エアバッグを受容し且つエアバッグ展開時の放出口を上端面に有するケーシング3と、その放出口を覆うようにケーシング3の上部に一体化されたリッド4とを有し、ケーシング3の下面に設けられたブラケット部5を車両側のボディパネルのスティフナ6にネジ止めなどにて固設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−215157号公報(特に、段落0009を参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、上記従来の技術においては、エアバッグモジュール1は、ケーシングの下面に設けられたブラケット部5を車両側のボディパネルのスティフナ6にネジ止めすることによって、インストルメントパネル2に固定的に設置されていることになる。
【0005】
しかしながら、エアバッグモジュール1は、インストルメントパネル2の上部側裏面に配設されていることから、何かの物体が突き当たったような場合その衝撃を緩和すべく、インストルメントパネル2に対して下方向に逃げるように構成されていることが望ましいのであるが、上記従来の技術においては、インストルメントパネル2に固定的に設置されていることから、下方向に逃げるような構成とする場合には、ブラケット部5とスティフナ6との関係を如何に設計するかは非常に難しく、度重なる実験や試作を繰り返すことによって実証的に行う必要があって、多大な設計開発工数を必要としていた。
【0006】
また、上記従来の技術における助手席用エアバッグ装置は、エアバッグモジュール1をブラケット部5及びスティフナ6を用いてインストルメントパネル2に設置するという構成をとっていることから、ブラケット部5及びスティフナ6の重量分高重量化してしまい、現在大きく求められている車両軽量化の面に悖ることになる。
【0007】
そこで、この発明は、上記従来の技術における課題に鑑み、従来のブラケット部やスティフナ等を用いずに車両の軽量化を果たすと共に、物体が当接したような場合にインストルメントパネルに対してフローティング構成にした助手席用エアバッグ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る助手席用エアバッグ装置は、自動車のインストルメントパネルの固定部位に折り畳まれたエアバッグが収容されたケース体を設置することによりインストルメントパネルに組み付け構成する助手席用エアバッグ装置であって、ケース体及びインストルメントパネルの固定部位のうち、一方にフック片を複数個形成すると共に、他方にフック片が係合する被係合体を複数個設けておき、該被係合体にフック片をインストルメントパネルの固定部に対して下方に可動可能に係合することにより、ケース体をインストルメントパネルに対してフローティング状態で設置するように構成したことを特徴とする。
【0009】
かかる構成を有するこの発明は、エアバッグが収容されたケース体を、フック片と被係合体との係合によって、インストルメントパネルの固定部位に設置するように構成しているために、従来のブラケットやスティフナを用いず、車両の軽量化を果たすことができ、しかも、フック片と被係合体とを可動可能に係合することにより、ケース体をインストルメントパネルに対してフローティング構成とすることができることから、何らかの物体が当接した場合にはケース体がインストルメントパネルに対して下方向に逃げる構成が、多大な設計工数や実験工数を費やすことなく簡単に実現されることができる。
【0010】
また、この発明に係る助手席用エアバッグ装置は、上記発明の実施の形態として、被係合体が金属製のU字状ピンにて構成して、U字状ピンの一方の脚片部にフック片を係合するように構成している。
【0011】
かかる構成を有するこの発明は、被係合体を金属製のU字状ピンにて構成したことから、車両の軽量化に資すると共に、U字状ピンの一方の脚片部に対してフック片が係合状態を保持したままで可動可能に構成することができ、この結果、ケース体をインストルメントパネルに対するフローティング構成を、多大な設計工数や実験工数を費やすことなく簡単に実現されることができる。
【0012】
また、この発明に係る助手席用エアバッグ装置は、上記発明の実施の形態として、U字状ピンの外周に被係合片を装着し、被係合片が、フック片をU字状ピンに対して係合解除動作方向に移動させる係合解除傾斜面部と、係合解除傾斜面をフック片が乗り越えた後フック片の弾性復帰力により係合方向に移動することにより係合する被係合傾斜面部とを有して構成している。
【0013】
かかる構成を有するこの発明は、被係合片が、フック片をU字状ピンに対して係合解除動作方向に移動させる係合解除傾斜面部と、係合解除傾斜面部をフック片が乗り越えた後フック片の弾性復帰力により係合方向に移動することにより係合する被係合傾斜面部とを有していることから、フック片の被係合片に対する係合を容易にすることができる。
【0014】
また、この発明に係る助手席用エアバッグ装置は、上記発明の実施の形態として、被係合体が、金属製の針金の折曲により形成したループ状の枠体部をL字状に折曲することにより互いに対向する一対の折曲部を形成し、両折曲部に係合部を橋渡し形成し、且つ、枠体部の互いに対向する側端辺部の一方を、ケース及びインストルメントパネルの固定部位のうち、一方に形成した枢支部に揺動可能に枢着すると共に、枠体部の互いに対向する側端辺部の他方を、ケース及びインストルメントパネルの固定部位のうち他方に形成したフック片に係合するように形成して構成している。
【0015】
かかる構成を有するこの発明は、被係合体を金属製の針金を折曲することによって形成していることから、車両の軽量化に資すると共に、被係合体を構成する枠体部の他方の側端辺部を被係合体に係合する場合に他方の側端辺部が被係合体に対する係合状態を可動可能に構成することにより、ケース体をインストルメントパネルに対するフローティング状態に設置する構成を、多大な設計工数や実験工数を費やすことなく簡単に実現されることができる。
【0016】
また、この発明に係る助手席用エアバッグ装置は、上記発明の実施の形態として、ケース体とインストルメントパネルの固定部位との間に、スプリングを介在させて、スプリングの付勢力により被係合体に対するフック片の係合関係を助成するように構成している。
【0017】
かかる構成を有するこの発明は、被係合体に対するフック片の係合関係をスプリングの付勢力により保持していることから、インストルメントパネルに対してケース体が不用意に取り外されることがない。
【発明の効果】
【0018】
この発明は、エアバッグが収容されたケース体を、フック片と被係合体との係合によって、インストルメントパネルの固定部位に設置するように構成しているために、従来のブラケットやスティフナを用いず、車両の軽量化を果たすことができ、しかも、フック片と被係合体とを可動可能に係合することにより、ケース体をインストルメントパネルに対してフローティング構成とすることができることから、何らかの物体が当接した場合にはケース体がインストルメントパネルに対して下方向に逃げる構成が、多大な設計工数や実験工数を費やすことなく簡単に実現されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施例1に係る助手席用エアバッグ装置を設置したインストルメントパネルにおける助手席対向付近を描画した斜視図である。
【図2】図1における助手席用エアバッグ装置をインストルメントパネルに対して分解して描画した斜視図である。
【図3】図1におけるインストルメント側の被係合体周辺を拡大してインストルメントパネルの下面側から描画した斜視図である。
【図4】図1におけるA−A断面図である。
【図5】図3における被係合体の変形例1を描画した斜視図である。
【図6】この発明に係る実施例1の変形例を描画した要部断面図である。
【図7】この発明の実施例2に係る助手席用エアバッグ装置について描画した一部縦断面図である。
【図8】図7における破線示円内を拡大して描画した断面図であり、フック片が被係合体に係合した状態を示している。
【図9】図7における破線示円内を拡大して描画した断面図であり、フック片が被係合体に係合する初期段階を示している。
【図10】図7における破線示円内を拡大して描画した断面図であり、フック片が被係合体に係合する途中段階を示している。
【図11】図7における被係合体を描画した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明に係る助手席用エアバッグ装置は、従来のブラケット部やスティフナ等を用いずに車両の軽量化を果たすと共に、物体が当接したような場合にインストルメントパネルに対してフローティング構成にしている。
【0021】
次に、この発明の助手席用エアバッグ装置に係る実施例について、図を用いて説明する。
【0022】
先ず、図1から図4を用いて、この発明に係る助手席用エアバッグ装置としての実施例1の構成について説明する。
【0023】
この発明に係る実施例1における助手席用エアバッグ装置は、図示されないエアバッグを内蔵するエアバッグモジュール10をインストルメントパネル20内に装着するようになっている。インストルメントパネル20内に装着されたエアバッグモジュール1は、自動車の前席の一つである助手席に対向配置されている。
【0024】
そして、エアバッグモジュール1は、エアバッグを収容し且つエアバッグにおける車室内への開口部11aを上端面に有するケース体11と、開口部11aを閉塞するようにケース体11の上部に一体化されたリッド12と、ケース体11内に配置されてエアバッグを膨張展開するインフレータ13とを、有して構成している。
【0025】
ケース体11は、略四角形の底壁部11bの外周辺部をそれぞれ4つの起立側壁部11cにより囲繞されたボックス形状を呈して構成している。そして、ケース体11の各起立側壁11cには、それぞれ、下方に垂下するフック片14が一体に形成されている。各フック片14は、ケース体11の内部に向かって鉤状に形成されたフック部14aがそれぞれ形成されている。
【0026】
一方、インストルメントパネル20には、助手席に対向する部位において、ケース体11を嵌合設置するためのボックス状の凹陥部21が凹設されている。凹陥部21の底部21aは、中央部を開口させることによって、内方に飛び出すようにフランジ状突出部21bが形成されている。そして、各フランジ状突出部21bの略中央部には、それぞれ、内方に突出するように断面略コ字状を呈する被係合体取付け部15が形成されており、被係合体取付け部15は、インストルメントパネル20側の固定部位を構成している。
【0027】
更に、被係合体取付け部15は、凹陥部21の内方に互いに離間対向する状態で延在する一対の腕部15aを有しており、両腕部15aには、金属製の針金を折曲成形することにより形成したU字状ピン16が挿入設置されている。U字状ピン16は、両脚片部16aが被係合体取付け部15において両腕部15aに挟まれて形成された窓部15bから顕出しており、フック片14が係合する被係合体を構成している。
【0028】
次に、上記のように構成する実施例1において、エアバッグモジュール10をインストルメントパネル20に装着するには、図2示すように、エアバッグモジュール10をインストルメントパネル20の上部より移動して、凹陥部21内に嵌合する。この結果、各フック片14が窓部15bからU字状ピン16の両脚片部16aの間に挿入されることになる。この際、U字状ピン16には、弾性力を有していることから、両脚片部16a間にフック片14が挿入された場合、その付勢力に抗して両脚片部16a間を押し開き、フック片14のフック部14aが挿通した後に元の位置に復帰することになる。この時、フック片14のフック部14aは、一対の脚片部16aの一方に係合することになって、エアバッグモジュール10は、図1に示すように、インストルメントパネル20に装着されることになる。
【0029】
このようにインストルメントパネル20に装着されたエアバッグモジュール10にもしインストルメントパネル20の上部側から物体が当たって所定の力で当接したような場合には、エアバッグモジュール10は、インストルメントパネル20に対して下方方向の力を受けることになる。この結果、ケース体11に形成したフック片14は、被係合体としてのU字状ピン16の両脚片部16a間を可動して、ケース体11をインストルメントパネル20に対して下方向に移動して少しく逃げることができることになって、物体の衝撃を緩和することができる。
【0030】
このように構成する実施例1においては、エアバッグが収容されたケース体11は、フック片14と被係合体としてのU字状ピン16との係合によって、インストルメントパネル20の固定部位である被係合体取付け部15に設置するように構成していることから、従来のブラケットやスティフナを用いず、車両の軽量化を果たすことができる。しかも、フック片14とU字状ピン16とを可動可能に係合するということは、ケース体11をインストルメントパネル20に対してフローティング状態に設置されていることになり、ケース体11をインストルメントパネル20に対して下方向に逃げる構成となっていることになる。
【0031】
また、実施例1においては、被係合体として、金属製のU字状ピン16にて構成したことから、車両の軽量化に資すると共に、U字状ピン16の両脚片部16aのうち一方に対してフック片14が係合状態を保持したままで可動可能に構成することにより、ケース体11をインストルメントパネル20に対するフローティング状態に設置する構成が、多大な設計工数や実験工数を費やすことなく簡単に実現されることができる。
【0032】
図5は、上記実施例1におけるU字状ピン16の変形例を示している。図5によれば、U字状ピン16は、その外周に樹脂成形品などの被係合片17を装着することによって構成している。被係合片17は、3つの傾斜面部17a、17b及び17cが組み合わさった略三角棒状を呈して構成しており、3つの傾斜面部17a、17b及び17のうち、傾斜面部17aは、下向き面となっているも、傾斜面部17b及び17cは、上向きの傾斜面となっている。かかる2つの傾斜面部17b、17cのうち、一方の傾斜面部17bは、フック片14が係合してきた際には、フック片係合解除動作方向に移動させる傾斜角度を有する係合解除傾斜面に構成されている。
【0033】
そして、フック片14が被係合片17に対して挿入されてきた際には、フック片14は、まず傾斜面部17bによってフック片係合解除動作方向に移動して押し広げられ、かかる傾斜面部17bをフック片14が乗り越えた後には、フック片14の弾性復帰力によって、下方を向いている被係合傾斜面部としての傾斜面部17aに係合して、ケース体11をインストルメントパネル20に装着することになる。
【0034】
このようにインストルメントパネル20に装着されたエアバッグモジュール10にもしインストルメントパネル20の上部側から物体が当たって所定の力で当接したような場合には、エアバッグモジュール10は、インストルメントパネル20に対して下方方向の力を受けることになるが、この場合、ケース体11に形成したフック片14は、被係合体としてのU字状ピン16に装着した被係合片17の傾斜面部17aより下方に可動して、ケース体11をインストルメントパネル20に対して下方向に移動させて少しく逃げることができることになって、物体の衝撃を緩和することができる。
【0035】
従って、かかる変形例においては、三角棒を呈する被係合片17の傾斜面部17bは、フック片14の係合動作を円滑にすることができ、フック片14の被係合傾斜面部である傾斜面部17aへの係合を係合動作途中における引っ掛りを生じさせることなく容易にすることができる。
【0036】
そして、かかる変形例においても、実施例1と同様に、エアバッグが収容されたケース体11は、フック片14と被係合体としてのU字状ピン16に装着された被係合片17との係合によって、インストルメントパネル20の固定部位である被係合体取付け部15に設置するように構成している。このことから、かかる変形例も、従来のブラケットやスティフナを用いず、車両の軽量化を果たすことができ、しかも、フック片14と被係合片17とを可動可能に係合することにより、ケース体11をインストルメントパネル20に対してフローティング状態に設置されていることになり、ケース体11をインストルメントパネル20に対して下方向に逃げる構成を実現している。
【0037】
また、変形例においても、被係合体として、金属製のU字状ピン16及びこれに装着した合成樹脂性などの被係合片17にて構成したことから、車両の軽量化に資すると共に、被係合片の傾斜面部17aに対してフック片14が係合状態を保持したままで可動可能に構成することにより、ケース体11をインストルメントパネル20に対するフローティング状態に設置する構成が、多大な設計工数や実験工数を費やすことなく簡単に実現されることができる。
【0038】
図6は、上記実施例1の他の変形例を示している。図6によれば、ケース体11の各起立側壁11cにおいて、フック片14の外方に張り出すように上部スプリング座11dが形成されていると共に、インストルメントパネル20の被係合体取付け部15が下部スプリング座22を有して構成されていて、上部スプリング座11dと下部スプリング座22との間に、スプリング23が縮設されている。
【0039】
従って、スプリング23の付勢力は、U字状ピン16に対するフック片14の係合関係を保持していることから、インストルメントパネル20に対してケース体11が不用意に取り外されることがない。
【0040】
次に、図7から図11を用いて、本発明に係る実施例2について説明する。実施例2においては、図7に示すように、ケース体11の下面から下向きに垂下するように複数の垂下片18を垂設している。垂下片18には、ケース体11の内方に延在するフック片14が形成されており、フック片14の先端部は、上方に向かって鉤状に折曲されてフック部14aを形成している。また、垂下片18には、ケース体11の外方に向かって突出する上部スプリング座18aが形成されている。上部スプリング座18aに対して、離間対向するように、インストルメントパネル20の下面には、略L字状の下部スプリング座22が垂設されている。下部スプリング座22と上部スプリング座18aとの間には、スプリング23が縮設されている。
【0041】
更に、下部スプリング座22は、ケース体内方に突出した被係合体取付け部15を形成されており、被係合体取付け部15には、ベルクランク状に屈曲形成された被係合片19が揺動可能に設置されている。被係合片19は、図11に示すように、金属製の断面丸型針金をその両端部同士を溶接などにより接合した後ループ状に形成すると共に略ベルクランク状に折曲した枠状部19aと、一対の折曲部19b間を橋渡しするように溶接などにより接合装着した係合部19cとを有して構成している。被係合片19の枠状部19aにおける互いに対向する一対の側端片部19a−1、19a−2のうち、下方の側端片部19a−2は、被係合体取付け部15を枠状に形成することにより枢支部15cに揺動可能に枢着されている。また、係合部19cは、フック片14に上部側から係合するように構成されている。
【0042】
このように構成する本発明の実施例2によれば、インストルメントパネル20にケース体11を装着するには、エアバッグモジュール10をインストルメントパネル20の上部より移動して、図9に示すように、フック片の下面に被係合片19の係合部19cを当接する。かかる状態から、更にケース体11をスプリング23の付勢力に抗して下方に移動すると、被係合片19は、枢支部15cに対して側端片部19a−2が摺動して、図10に示すように、図中時計方向に揺動することになる。そして更に、スプリング22の付勢力に抗してケース体11を下動すると、被係合片19の係合部19cが、フック片14のフック部14aを乗り越すことになる。この結果、被係合片19が図中反時計方向に揺動して、フック片14に係合することになって(図8に示す状態)、エアバッグモジュール10は、図7に示すように、インストルメントパネル20に装着されることになる。
【0043】
かかる状態において、ケース体11側の上部スプリング座18aとインストルメントパネル20の固定部位である係合体取付け部15が形成された下部スプリング座22との間に、スプリング23を介在させて、スプリング23の付勢力により被係合片17に対するフック片14の係合関係を助成するように構成されていることになる。従って、被係合片17に対するフック片14の係合関係をスプリング23の付勢力により保持していることから、インストルメントパネル20に対してケース体11が不用意に取り外されることがない。
【0044】
更に、実施例2においても、上記実施例1と同様に、インストルメントパネル20に装着されたエアバッグモジュール10にもしインストルメントパネル20の上部側から物体が当たって所定の力で当接したような場合には、エアバッグモジュール10は、インストルメントパネル20に対して下方方向の力を受けることになるが、この場合、ケース体11に形成したフック片14は、被係合片19の係合部19cに対して可動して、ケース体11をインストルメントパネル20に対して下方向に移動して少しく沈ませることができることになって、物体の衝撃を緩和することができる。
【0045】
また、実施例2においても、エアバッグが収容されたケース体11は、フック片14と金属製の針金で構成した被係合片19との係合によって、インストルメントパネル20の固定部位である被係合体取付け部15を形成する下部スプリング座22に設置するように構成していることから、従来のブラケットやスティフナを用いず、車両の軽量化を果たすことができ、しかも、フック片14と被係合片19の係合部19cとを可動可能に係合することにより、ケース体11をインストルメントパネル20に対してフローティング状態に設置されていることになり、ケース体11をインストルメントパネル20に対して下方向に逃げる構成を、多大な設計工数や実験工数を費やすことなく簡単に実現されることができる。
【0046】
また、実施例2においても、被係合体として、金属製の針金で形成した被係合片19にて構成したことから、車両の軽量化に資すると共に、被係合片19の係合部19cに対してフック片14が係合状態を保持したままで可動可能に構成することにより、ケース体11をインストルメントパネル20に対するフローティング状態に設置する構成を、多くの設計や実験工数などをかけることなく簡単に実現することができる。
【0047】
上記いずれの実施例においても、ケース体11側にフック片14を設けると共に、インストルメントパネル20側に被係合体としてのU字状ピン16や被係合片19を設けるようにしたが、これに限定されるものでなく、ケース体11側に被係合体としてのU字状ピン16や被係合片19を設けると共に、インストルメントパネル20側にフック片14を設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
この発明は、エアバッグが収容されたケース体を、フック片と被係合体との係合によって、インストルメントパネルの固定部位に設置するように構成しているために、従来のブラケットやスティフナを用いず、車両の軽量化を果たすことができ、しかも、フック片と被係合体とを可動可能に係合することにより、自動車のインストルメントパネルにおける助手席に対向する部位に設置される助手席用エアバッグ装置等に好適であるといえる。
【符号の説明】
【0049】
10 エアバッグモジュール
11 ケース体
14 フック片
15 被係合体取付け部(固定部位)
16 U字状ピン(被係合体)
17 被係合片
18 垂下片
18a 上部スプリング座
19 被係合片
19c 係合部
20 インストルメントパネル
22 下部スプリング座
23 スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のインストルメントパネルの固定部位に折り畳まれたエアバッグが収容されたケース体を設置することにより前記インストルメントパネルに組み付け構成する助手席用エアバッグ装置であって、前記ケース体及び前記インストルメントパネルの固定部位のうち、一方にフック片を複数個形成すると共に、他方に前記フック片が係合する被係合体を複数個設けておき、該被係合体に前記フック片を前記固定部に対して下方に可動可能に係合することにより、前記ケース体を前記インストルメントパネルに対してフローティング状態で設置するように構成したことを特徴とする助手席用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記被係合体は、金属製のU字状ピンにて構成して、該U字状ピンの一方の脚片部に前記フック片を係合するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の助手席用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記U字状ピンの外周に被係合片を装着し、該被係合片が、前記フック片を前記U字状ピンに対して係合解除動作方向に移動させる係合解除傾斜面部と、該係合解除傾斜面をフック片が乗り越えた後フック片の弾性復帰力により係合方向に移動することにより係合する被係合傾斜面部とを有して構成したことを特徴とする請求項2に記載の助手席用エアバッグ装置。
【請求項4】
前記被係合体は、金属製の針金の折曲により形成したループ状の枠体部をL字状に折曲することにより互いに対向する一対の折曲部を形成し、該両折曲部に係合部を橋渡し形成し、且つ、前記枠体部の互いに対向する側端辺部の一方を、前記ケース及び前記インストルメントパネルの固定部位のうち、一方に形成した枢支部に揺動可能に枢着すると共に、前記枠体部の互いに対向する側端辺部の他方を、前記ケース及び前記インストルメントパネルの固定部位のうち他方に形成した前記フック片に係合するように形成したことを特徴とする請求項1に記載の助手席用エアバッグ装置。
【請求項5】
前記ケース体と前記インストルメントパネルの固定部との間に、スプリングを介在させて、該スプリングの付勢力により前記被係合体に対するフック片の係合関係を助成するように構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一に記載の助手席用エアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図11】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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