説明

動作解析装置、動作解析方法、プログラムおよび記録媒体

【課題】複数の試技の平均データを分かり易く表示できるとともに、当該一連の動作中の注目動作ポイントのデータが変容しないような装置を実現する。
【解決手段】動作解析装置1の制御部13は、パラメータデータが経過時間に従って並べられた時系列データの中から、注目動作ポイントに対応する注目パラメータデータを特定し、当該注目パラメータデータを区切り位置として複数の区分に分割し、区分ごとに、各試技についてのパラメータデータの数の割合の全試技の平均値を基準割合として設定し、当該基準割合および各区分の最大データ数に基づいて、基準データ数を設定する。そして、制御部13は、各試技の時系列データについて、各区分のパラメータデータの数が当該区分に対して設定した基準データ数になるようにデータ変換し、平均値を求める。そして、当該平均値に基づいて、パラメータの時間的変化を示す画面をディスプレイ12に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツ選手の動作を解析する動作解析装置および動作解析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、一流と呼ばれているスポーツ選手の多くは合目的的・合理的運動過程(運動技術)を身につけ、競技の場で発揮している。従って、競技中の一流選手の動作を分析すれば運動技術を明らかにする資料を得ることができる。従来、映画撮影法による動作分析が行われてきた。この場合、複数の被験者を用いたとしても、全被験者の時系列データを動きの全局面にわたって示すことはほとんど行われず、一般的にはいくつかの典型例を示すという方法が用いられてきた(非特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら近年、データ処理装置などの進歩も手伝い、各被験者の動作時間に基準をもうけてデータを規格化・平均化する技術が知られている。例えば、各被験者の動作時間を100%に規格化し、規格化した時刻ごとにデータを平均化することにより、複数の被験者のデータをより簡略な方法で示している。
【0004】
図8は、3人の被験者による跳躍動作中の地面反力を示したものである。(A)は、横軸を跳躍開始時点からの経過時間としたものであり、3試技とも動作時間が違うので曲線が重なり、全体の結果が判りにくい。(B)は、各試技の動作時間を160%に規格化したものであり、変化パターンがわかりやすい。(C)は、(B)で規格化したデータの平均および標準偏差を示すものであり、複数の時系列データを一つにまとめたものである。このように、動作開始から動作終了までの時間を規格化することにより、複数の試技の平均のパターンが分かり易くなる。
【非特許文献1】増村雅尚、阿江通良,「空中でボールを強く打つためのからだの動き−バレーボールにおける打動作の分析−」,バイオメカニクス研究,Vol.11,No.3,2007年
【非特許文献2】橋原孝博 他,「規格化・平均化の手法による運動技術解析の試み−バレーボールのスパイク技術について−」,体育学研究第33巻第3号,昭和63年12月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図8の(C)のような場合、以下のような問題がある。すなわち、動作開始から動作終了までの一連の動作の中には、注目すべき動作ポイント(注目動作ポイント)を含む場合がある。例えば、バレーボール競技におけるアタック動作は、離地時から着地時までであるが、その中には、ボールの打撃時という注目動作ポイントが含まれる。このような注目動作ポイントが行われるタイミングは、各試技によって異なる。そのため、動作開始から動作終了までの時間を規格化して、複数の試技の平均のパターンを示した場合、注目動作ポイントがどの時点が判別できず、注目動作ポイントの各種力学データが変容してしまう。
【0006】
なお、非特許文献2には、バレーボール競技での踏切動作における踏切移行時、前半終了時、離地時の時点を合せた図面が開示されている。しかしながら、非特許文献2では、このような図面の作成処理の具体的な方法が開示されていない。すなわち、全試技に亘っての踏切前半と後半の時間的割合の平均値を求め、動作時間に基準を設けてデータを規格化し、規格化されたデータを平均化して表示しているが、規格化を可能とするためのデータ数の決定方法(時間分割のための制約条件)については考慮・言及されていない。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、運動競技における一連の動作について、複数の試技の平均データを分かり易く表示できるとともに、当該一連の動作中の注目動作ポイントのデータが変容せず、全試技についての規格化処理が簡単な動作解析装置および動作解析方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る動作解析装置は、上記課題を解決するために、スポーツ選手の動作を解析する制御部を備えた動作解析装置であって、注目動作ポイントを含む一連の所定動作を特定動作とし、上記特定動作に伴い変化するパラメータの値を示すデータをパラメータデータとするとき、上記制御部は、(a)複数の試技について、上記特定動作における所定時間ごとのパラメータデータが経過時間に従って並べられた時系列データを取得し、(b)上記時系列データの中から、上記注目動作ポイントに対応するパラメータデータを注目パラメータデータとして特定し、(c)注目パラメータデータを区切り位置として、上記時系列データを複数の区分に分割し、(d)各試技について、区分ごとに、当該区分内に含まれるパラメータデータの数の、全パラメータデータの数に対する割合を算出し、(e)区分ごとに、算出した割合の全試技に亘っての平均値を求め、当該平均値を基準割合として設定し、(f)各区分について、各試技のパラメータデータの数の中で最も多い最大データ数を特定し、(g)各区分について、以下の条件Aを満たす基準データ数を設定し、(h)各試技の時系列データについて、各区分のパラメータデータの数が当該区分に対して設定した基準データ数になるように一次補間によりパラメータデータをデータ変換し、変換後のパラメータデータを経過時間に従って順番に並べ、各パラメータデータを当該順番を示す番号に対応付けた変換済時系列データを作成し、(i)全試技における変換済時系列データについて、同一番号ごとにパラメータデータの平均値を求め、当該平均値を番号に従って並べた平均時系列データを作成し、上記平均時系列データに基づいて、上記パラメータの時間的変化を示す画面を表示部に表示させる、ことを特徴とする。
【0009】
条件A:各区分について、当該区分の基準データ数が、当該区分について特定した最大データ数以上であり、かつ、全区分の基準データ数の合計に対する当該区分の基準データ数の割合が、当該区分について設定した基準割合と一致する。
【0010】
また、本発明の動作解析方法は、スポーツ選手の動作を解析する制御部を備えた動作解析装置における動作解析方法であって、注目動作ポイントを含む一連の所定動作を特定動作とし、上記特定動作に伴い変化するパラメータの値を示すデータをパラメータデータとするとき、(a)上記制御部が、複数の試技について、上記特定動作における所定時間ごとのパラメータデータが経過時間に従って並べられた時系列データを取得するステップと、(b)上記制御部が、上記時系列データの中から、上記注目動作ポイントに対応するパラメータデータを注目パラメータデータとして特定するステップと、(c)上記制御部が、注目パラメータデータを区切り位置として、上記時系列データを複数の区分に分割するステップと、(d)上記制御部が、各試技について、区分ごとに、当該区分内に含まれるパラメータデータの数の、全パラメータデータの数に対する割合を算出するステップと、(e)上記制御部が、区分ごとに、算出した割合の全試技に亘っての平均値を求め、当該平均値を基準割合として設定するステップと、(f)上記制御部が、各区分について、各試技のパラメータデータの数の中で最も多い最大データ数を特定するステップと、(g)上記制御部が、各区分について、以下の条件Aを満たす基準データ数を設定するステップと、(h)上記制御部が、各試技の時系列データについて、各区分のパラメータデータの数が当該区分に対して設定した基準データ数になるように一次補間によりパラメータデータをデータ変換し、変換後のパラメータデータを経過時間に従って順番に並べ、各パラメータデータを当該順番を示す番号に対応付けた変換済時系列データを作成するステップと、(i)上記制御部が、全試技における変換済時系列データについて、同一番号ごとにパラメータデータの平均値を求め、当該平均値を番号に従って並べた平均時系列データを作成し、当該平均時系列データに基づいて、上記パラメータの時間的変化を示す画面を表示部に表示させるステップと、を含むことを特徴とする。
【0011】
条件A:各区分について、当該区分の基準データ数が、当該区分について特定した最大データ数以上であり、かつ、全区分の基準データ数の合計に対する当該区分の基準データ数の割合が、当該区分について設定した基準割合と一致する。
【0012】
上記の構成によれば、複数の被験者における各種力学データなどのパラメータデータの平均値を経時的に示すことができる。さらに、注目動作ポイントの位置データが変容することがないため、注目動作ポイントの位置データを正確に表示させることができる。そして、全試技における変換済時系列データにおいて、各区分のパラメータデータの数が基準データ数と同じであるため、平均値を求める処理を容易に実行することができる。
【0013】
また、上述したように、非特許文献2に記載の技術では、全試技のデータを規格化するための基準となるデータ数を動作全体時間に対する各局面の時間的割合の平均により求めているが、この手法のみでは、試技の生のデータ数が基準データ数より多くなる試技については同期調整によるデータの規格化ができない。しかしながら、上記の構成によれば、各区分について条件Aを満たす基準データ数を設定することにより全試技についての規格化が可能になる。すなわち条件Aは、各区分について、当該区分の基準データ数が、当該区分について特定した最大データ数以上であることを一つの要件としている。そのため、全ての試技において各区分の生のパラメータデータの数は、当該区分に対して設定した基準データ数以上となる。その結果、各試技の時系列データについて、一次補間を用いることにより、容易に各区分のパラメータデータの数が基準データ数になるようにパラメータデータをデータ変換することができる。すなわち、全試技のデータ数の規格化を容易に行うことができる。このような効果は、従来にない効果である。
【0014】
さらに、条件Aは、全区分の基準データ数の合計に対する当該区分の基準データ数の割合が、当該区分について設定した基準割合と一致することを一つの要件としている。ここで、「一致」とは完全に一致する場合に加えて、基準割合に対してわずかにずれている場合も含む。例えば、基準割合として小数点以下1桁まで求める場合、基準割合に対して±0.5%の範囲内である場合も「一致」しているとしてもよい。これにより、変換済時系列データにおいて、各区分のパラメータデータの数の割合が基準割合と一致する。基準割合は、各区分の時間的割合に対応するため、各区分のパラメータデータ数を確認することで、各区分の時間的割合を把握することができる。
【0015】
さらに、上記制御部は、上記画面として、上記番号の順に従って上記平均値を一定間隔で表した画面を表示部に表示させることが好ましい。
【0016】
これにより、番号の順に従って上記平均値を一定間隔で表した画面を見ることで、各区分の時間的割合を把握することができる。
【0017】
なお、上記スポーツ選手の一例としてはバレーボール選手が挙げられ、上記パラメータデータの一例としては、所定の基準軸に対する上記バレーボール選手の特定身体部位の位置座標を示す位置データが挙げられる。
【0018】
なお、上記動作解析装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記制御部として動作させることにより動作解析装置をコンピュータにて実現させるプログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る動作解析装置は、以上のように、スポーツ競技における一連の動作について、複数の試技の平均データを分かり易く表示できるとともに、当該一連の動作中の注目動作ポイントのデータが変容しないような画面を表示させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の動作解析システムに関する実施の一形態について図1〜図7に基づいて説明すれば以下のとおりである。
【0021】
(動作解析システムの構成)
本実施形態に係る動作解析システムは、バレーボール競技などのスポーツ競技における選手の動作に伴って変化する各種パラメータの値を示すデータ(解析対象データ:パラメータデータ)を解析する動作解析プログラムにより実現される。ここで、解析対象データとしては、例えば、基準点に対する身体部位やバットなどのスポーツ器具の相対位置、地面反力などの力、身体部位やスポーツ器具の速度、基準軸を中心としたときの基準線からの身体部位やスポーツ器具の角度、などを示すデータがある。以下では、解析対象データとして、基準点に対する相対位置データ(以下、単に位置データという)を例にとり説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、スポーツ競技としてバレーボール競技を例により説明するが、本発明はバレーボール競技に限定されるものではない。
【0022】
本実施形態に係る動作解析システム10は、図1に示すように、解析対象データ(ここでは、位置データ)を測定するための2台のカメラ2と、当該カメラ2で撮影された動画データに基づいて、位置データの解析を行う動作解析装置1とを含む。
【0023】
動作解析装置1は、本実施形態の動作解析プログラムがインストールされたパーソナルコンピュータである。動作解析装置1は、入力部11、ディスプレイ(表示部)12、制御部13、記憶部14を含む。
【0024】
入力部11は、キーボードおよびマウスから構成される。キーボードは、各種処理コマンド等を制御部13に入力するためのものである。マウスは、ディスプレイ12に表示されている画像におけるいずれかのポイントをオペレータが指定し、この指定したポイントを制御部13に認識させるためのポインティングデバイスである。
【0025】
ディスプレイ12は、制御部13によって処理された情報を画像として表示するためのデバイスであり、液晶ディスプレイが用いられる。但し、液晶ディスプレィに限られるものではなく、例えば、プラズマディスプレィ、CRT、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレィ、無機ELディスプレィであってもよい。
【0026】
制御部13は、動作解析装置1における上述した各種構成の動作を統括的に制御するものである。この制御部13は、CPU(Central Processing Unit,中央演算処理装置),RAM(Random Access Memory,随時書込・読出メモリ)等によって構成される。そして、各種構成の動作制御は、動作解析プログラムを含む各種の制御プログラムをCPUに実行させることによって行われる。この制御プログラムは、例えばCD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)などのリムーバブルメディアに記録されているものを読み出してRAMに展開し、CPUがRAMにアクセスして使用する形態であってもよいし、記憶部14などにインストールされたものを読み出してRAMに展開し、CPUがRAMにアクセスして使用する形態であってもよい。また、制御部13がインターネットなどの通信ネットワークに接続された構成とする場合、この通信ネットワークを介して上記プログラムをダウンロードして記憶部14にインストールして実行する形態なども考えられる。
【0027】
記憶部14は、ハードディスクまたはフラッシュメモリなどの不揮発性の記憶装置によって構成されるものである。この記憶部14に記憶される内容としては、上記した制御プログラム、OS(Operating System)プログラム、およびその他各種プログラム、入力部11より入力された情報、制御部13によって処理された情報などが挙げられる。
【0028】
(動作解析の手順)
次に、本実施の形態における動作解析装置1による動作解析の具体的な方法を説明する。以下では、バレーボール競技において選手がアタックを行う際の踏切動作について解析を行った場合を例にとり説明する。アタックは、図2に示されるように、アタックするために走り出した時から踏切位置に片足が到達した時までの助走動作、踏切位置に片足が到達した時から離地時までの踏切動作、離地時から着地時までの打撃動作の3つの局面に分けられる。そして、踏切動作は、踏切位置に片足が到達した時(踏切開始時)から身体重心位置が最も低い位置に到達する時(前半終了時)までの前半部分と、前半終了時から離地時(踏切終了時)までの後半部分とに分けられる。ここで、前半終了時とは、ジャンプするための力を溜め込んだときであり、踏切動作における注目動作ポイントである。図2において、踏切開始時の身体重心位置を○印で示し、前半終了時(注目動作ポイント)の身体重心位置を◎印で示し、踏切終了時の身体重心位置を□印で示している。
【0029】
(手順1:位置データの取得)
カメラで撮影した2次元画像から3次元の位置データを得るための方法について、よく知られているDLT法(Direct Linear Transformation Parameters)による手順の概略を説明する。
【0030】
DLT法は撮影範囲の全体に分布するように撮影した較正点との比較によって2次元画像データから3次元の位置データを求める方法であり、方法の原理、手順等の詳細については、例えば、Walton,J.s.:”Science in Biomechanics Cinematography”,Academic Publishers,Del Mar,1979,69-97 に記述がある。
【0031】
DLT法による3次元位置データの取得のため、まず、撮影場所(ここではバレーコート)に較正器(較正器上には、較正点として相対的な位置関係が既知の複数のマーカーが設置されている)を設置し、2台の16mmシネマカメラで撮影して、センターラインとレフトサイドラインとの交点を原点とする座標系を構成する。制御部13では、実際の2次元撮影画像から3次元位置データを求めるためのDLT係数が撮影カメラ毎に計算され、記憶部14に蓄えられる。
【0032】
例えば、実際の3次元位置データの解析は、(1)サーブ開始時から選手がアタックを終了して着地するまでを上記の2台のカメラで同時に撮影し(撮影スピードは、例えば、毎秒100コマ、露出時間1/400秒などの予め定められた条件で行えばよい)、(2)オペレータが、撮影した動画像の中から複数の踏切動作の試技各々について踏切開始時のコマ画像から踏切終了時のコマ画像までを選択し、(3)オペレータが入力部のマウスを使って、選択した各コマ画像において、踏切動作を行っている選手の特定身体部位(例えば腰)を選定し、(4)制御部13によって、既に算出してあるDLT係数から指定された特定身体部位の3次元位置データを算出する、という手順で実施することができる。
【0033】
このようにして、制御部13は、複数の踏切動作について、踏切開始時から踏切終了時までの各コマ画像に対応する特定身体部位の3次元座標(位置データ)を求める。そして、制御部13は、各踏切動作について、算出した位置データをコマ画像の順番に並べた時系列データを作成する。これにより、制御部13は、時系列データを取得することができる。このとき、制御部13は、オペレータが入力部に入力した情報に基づいて、踏切開始時、前半終了時、踏切動作終了時のコマ画像に対応する位置データを特定し、どの位置データが踏切開始時、前半終了時、踏切動作終了時のコマ画像に対応するのかを示す情報を記憶部14に格納させる。なお、時系列データの作成が他のコンピュータ装置で実行され、制御部13は、当該コンピュータ装置から時系列データを取得してもよい。
【0034】
なお、選手の特定身体部位(腰など)に発信器を付けておき、当該発信器から発せられる信号を受信することで位置データを算出してもよい。
【0035】
(手順2:位置データの座標変換処理)
力、角度、速度等の時系列データは、そのまま後述する規格化・平均化の処理を行うことができる。しかしながら、上記のような位置データ、特に3次元座標で示される位置データは、そのままでは後述する規格化・平均化することができない。
【0036】
図3は、バレーボール競技中のアタックする選手の動きを身体重心位置で示したものである。図3の上図はコートの側方から、図3の下図はコートの上方からみたものである。原点は、レフトサイドラインとセンターラインとの交点である。各線上の○印は踏切開始時の身体重心位置を示し、□印は踏切終了時の身体重心位置を示している。
【0037】
図3から明らかなように、各選手ともアタックを行った地点や移動した方向が異なっている。従って、3次元映画撮影法により得られた特定身体部位の位置データをそのまま規格化・平均化することができない。各試技の位置データを規格化・平均化するためには、運動面を統一させる必要がある。
【0038】
そこで、制御部13は、各試技の位置データの座標変換処理を行う。図4は、バレーボール競技のアタック動作の一部である踏切動作における座標変換の手順を示す図である。レフトサイドラインとセンターラインとの交点を原点(0,0,0)としてコート上方から踏切動作中の特定身体部位の軌跡を示したものである。当該軌跡は、(手順1:位置データの取得)で取得した時系列データにより示される。図中において、実線上の○印は踏切開始時の位置を、◎印は前半終了時の位置を、□印は踏切終了時の位置を示している。
【0039】
制御部13は、以下の(1)〜(3)の手順で座標変換を行う。ただし、Z座標については変換しない。
【0040】
(1)まず、制御部13は、踏切動作開始時の位置から踏切動作終了時の位置までの水平ベクトルと、センターラインとのなす角度θを求める。
【0041】
(2)次に、原点を前半終了時のコート上の位置まで移動させる。
【0042】
(3)最後に、各位置データを、下記の式A・Bにより座標変換する。ここで、変換後のY’軸は、選手の前後方向であり、変換後のX’軸は、選手の左右方向である。
【0043】
X’=cos(θ)・X+sin(θ)・Y ・・・式A
Y’=−sin(θ)・X+cos(θ)・Y ・・・式B
このようにして座標変換を行うことにより、選手の前後方向および左右方向を軸として各試技の運動面を統一することができる。
【0044】
(手順3:データの規格化処理)
次に、時系列データの規格化を行う。各試技の動作時間は異なる。そのため、各試技の動作時間について規格化を行う必要がある。このとき、動作開始から動作終了までの一連の動作を、動作開始時と動作終了時とを合わすように規格化しただけでは、上述したように、注目動作ポイント(踏切動作の場合、前半終了時)がどの時点が判別できず、注目動作ポイントの各種データが変容してしまう。
【0045】
そこで、本実施形態では、以下のように、座標変換された位置データについて動作時間の規格化処理を行う。
【0046】
(規格化処理の手順1)
まず、制御部13は、各試技について、動作開始時から前半終了時までのコマ画像の数、すなわち、動作開始時から前半終了時まで(以下、前半部分という)の位置データ(以下、前半位置データという)の数(M)をカウントする。さらに、制御部13は、各試技について、前半終了時から動作終了時まで(以下、後半部分という)のコマ画像の数、すなわち、前半終了時から動作終了時までの位置データ(以下、後半位置データという)の数(N)をカウントする。そして、制御部13は、各試技について、前半位置データの数の全体(M+N)に対する割合Sm=M/(M+N)、ならびに、後半位置データの数の全体(M+N)に対する割合Sn=N/(M+N)を求める。
【0047】
そして、制御部13は、各試技について求めたSmの平均値Sm_aveを求めるとともに、各試技について求めたSnの平均値Sn_aveを求める。制御部13は、求めた平均値Sm_aveを前半部分のデータ数割合として決定し、求めた平均値Sn_aveを後半部分のデータ数割合として決定する。なお、制御部13は、データ数割合(%)として、整数の値を求めてもよいし、小数点以下1桁まで求めてもよい。
【0048】
具体的な計算方法を図5および表1によって説明する。
【0049】
図5はある試技の踏切動作の各コマ画像を示したものであり、前半部分が5コマ(すなわち、前半位置データの数Mが5)であり、後半部分が7コマ(すなわち、後半位置データの数Nが7)である。
【0050】
また、表1は試技数を3とした場合の計算例を示したものであり、試技1のデータは図5の値としてある。表1から、前半位置データのデータ数割合は(5/12+6/13+6/12)/3≒0.46、後半位置データ割合は(7/12+7/13+6/12)/3≒0.54、となる。
【0051】
【表1】

【0052】
(規格化処理の手順2)
次に、各試技の時系列データについて、前半位置データの数と後半位置データの数との割合が手順1で求めたデータ数割合となり、かつ、同じデータ数になるように、同期調整を行う。
【0053】
具体的には、制御部13は、各試技の前半位置データの数のうち最も多いデータ数(以下、最大前半データ数という)を特定する。さらに、制御部13は、各試技の後半位置データの数のうち最も多いデータ数(以下、最大後半データ数という)を特定する。そして、制御部13は、以下の条件Aを満たす基準前半データ数と基準後半データ数とを設定する。
【0054】
条件A:基準前半データ数と基準後半データ数との合計に対する基準前半データ数および基準後半データ数の割合のそれぞれが、手順1で求めた前半部分および後半部分のデータ数割合と一致し、かつ、基準前半データ数及び基準後半データ数がそれぞれ最大前半データ数及び最大後半データ数以上の整数となる。
【0055】
前述の表1について具体的に説明すれば、最大前半データ数は6、最大後半データ数は7であり、前半データ数と後半データ数の割合は0.46:0.54=23:27 であり、条件Aから、基準前半データ数として23(>6)、基準後半データ数として27(>7)が得られる。
【0056】
すなわち、制御部13は、最大前半データ数以上であり、かつ、基準前半データ数と基準後半データ数との合計に対する基準前半データ数の割合が、手順1で求めた前半部分のデータ数割合と一致する数を算出し、そのうち、最小の整数を基準前半データ数として設定する。同様に、制御部13は、基準後半データ数も設定する。ここで、「一致」とは完全に一致する場合に加えて、手順1で求めたデータ数割合に対してわずかにずれている場合も含む。例えば、データ数割合として小数点以下1桁まで求める場合、基準割合に対して±0.5%の範囲内である場合も「一致」しているとすればよい。
【0057】
なお、制御部13は、入力部11に入力された情報に基づいて、基準前半データ数及び基準後半データ数を設定してもよい。この場合、操作者は、入力部11に対して、最大データ数以上になる基準データ数をいくつにするかは、各局面の時間的割合との関わりの中で、できるだけ試技のデータ数に近い数値になるように判断して決めればよい。
【0058】
そして、各試技の時系列データについて、踏切開始時から前半終了時までの位置データの数が基準前半データ数となり、前半終了時から踏切終了時までの位置データの数が基準後半データ数となるように、一次補間公式によって、同期調整を行う。
【0059】
具体的には、各試技の時系列データの前半位置データの各々について、踏切開始時からの経過時間を求める。当該経過時間は、位置データの計測間隔と、位置データに対応するコマ画像の順番とから容易に求めることができる。例えば、毎秒100コマの画像を撮影している場合、位置データの計測間隔が0.01秒であり、踏切開始時から5番目の位置データである場合、当該位置データに対応する踏切開始時からの経過時間は、0.01×(5−1)=0.04秒 となる。次に、踏切開始時から前半終了時までの経過時間を、(基準前半データ数−1)で割った時間を基準サンプリング間隔とし、踏切開始時から当該基準サンプリング間隔×nの時間だけ経過した時点を同期タイミングとする。ただし、nは0から(基準前半データ数−1)までの整数である。そして、各試技の前半位置データについて、同期タイミングでの位置データを一次補間公式で求め、同期調整した後の位置データを生成する。
【0060】
図6は、同期調整の方法を模式的に説明する図である。図6において(a)は、基準前半データ数から求めた同期タイミングを示している。(c)は、各試技の前半位置データについて、その測定タイミングを示している。そして、(b)は、同期調整した後の前半位置データを示している。
【0061】
各試技についての前半位置データの踏切開始時からの経過時間が同期タイミングと異なる場合、この時間的な差を利用して同期調整を行う。各同期タイミングTMについて、TM直前である経過時間Aの前半位置データY(A)と、TM直後である経過時間Bの前半位置データY(B)とを特定する。そして、以下の式に従って、同期タイミングにおける前半位置データY(TM)を求める。
【0062】
【数1】

【0063】
同期タイミングと同じ経過時間の前半位置データがない場合、上記のようにして同期タイミングにおける前半位置データを求める。同様にして、後半位置データについても、同期タイミング(この場合、前半終了時から基準サンプリング間隔×nの時間だけ経過した時点:nは0から(基準後半データ数−1)までの整数)を決定し、同期タイミングにおける後半位置データを求める。
【0064】
そして、このようにして求めた同期タイミングの前半位置データを、同期タイミングの経過時間の順に並べる。その後に、同期タイミングの後半位置データを、同期タイミングの経過時間の順に並べる。このとき、踏切開始時の位置データのデータ番号を1番目とし、並べた順に従って各位置データに対してデータ番号を付与する。このようにして並べた位置データおよび対応するデータ番号を含むデータを同期調整済時系列データ(変換済時系列データ)とする。
【0065】
以上の同期調整の処理を、各試技の位置データに対して実行する。これにより、各試技の同期調整済時系列データは、全て、前半部分の位置データの数が基準前半データ数となり、後半部分の位置データの数が基準後半データ数となる。そして、全ての試技に対する同期調整済時系列データにおいて、データ番号が基準前半データ数番目の位置データは、前半終了時の位置データとなる。
【0066】
このように、制御部13は、基準前半データ数および基準後半データ数として、条件Aを満たす整数を設定する。上述したように、非特許文献2に記載の技術では、全試技のデータを規格化するための基準となるデータ数を動作全体時間に対する各局面の時間的割合の平均により求めているが、この手法のみでは、試技の生のデータ数が基準データ数より多くなる場合がある。このような場合は理論式の解法ができず同期調整によるデータの規格化ができない。しかしながら、本実施形態によれば、上記のように、基準前半データ数および基準後半データ数として、条件Aを満たす整数を設定するため、全ての試技において前半部分および後半部分の各局面の生データの数は、それぞれ最大前半データ数および最大後半データ数以上となる。その結果、各試技の同期調整済時系列データについて、一次補間を用いることにより、容易に前半部分および後半部分のデータ数を基準データ数になるようにデータ変換することができる。すなわち、全試技のデータ数の規格化を容易に行うことができる。このような効果は、従来にない効果である。
【0067】
(手順4:データの平均化処理)
上記規格化処理で求めた各試技の同期調整済時系列データは、全て同じ数の位置データを含んでいる。そして、制御部13は、全試技について、データ番号ごとに、当該データ番号に対応する位置データの平均値を求め、当該平均値をデータ番号に従って並べた平均時系列データを作成する。そして、制御部13は、作成した平均時系列データに基づいて、データ番号の順に従って、当該データ番号に対応する平均値を一定間隔で表した、特定身体部位の位置の時間的変化を示す画面をディスプレイ12に表示させる。これにより、制御部13は、作成した平均時系列データに基づいて、位置の変化、つまり、平均的な軌跡をディスプレイ12に表示させることができる。これにより、全試技の位置データを一つにまとめて示すことができる。
【0068】
このとき、制御部13は、横軸をデータ番号とし、縦軸を位置データの平均値として示せばよい。
【0069】
また、横軸において隣り合うデータ番号の間隔を一定にすればよい。これにより、各局面(上記の例では前半部分と後半部分)の横軸方向の長さの割合は、手順1で求めたデータ数割合となる。このデータ数割合は、各局面の時間的割合に対応するものである。そのため、各局面の横軸方向の長さを見ることで、各局面の時間的割合を把握することができる。
【0070】
また、全ての試技に対する同期調整済時系列データにおいて、基準前半データ数番目のデータ番号の位置データは、前半終了時の位置データである。そのため、当該データ番号に対応する位置データの平均値は、全試技の前半終了時の位置データをまとめたものを的確に示している。つまり、注目動作ポイントである前半終了時の位置データを変容させることなく示すことができる。
【0071】
なお、上記の説明では、腰を特定身体部位として説明したが、これに限らず、身体の複数の部位(指先、手首、頭、両肘、両肩、胸、両膝、両足首、つま先、など)について、規格化平均化の処理を行ってもよい。この場合、制御部13は、データ番号ごとに平均化された各身体部位の位置を線分で結ぶことでスティックピクチャーを作成・表示させてもよい。これにより、全身の平均の動作フォームを表すことが可能となる。
【0072】
図7は、一流バレーボール選手のアタックの打撃動作を示す図である。打撃動作は、離地時からバックスイング終了時までのバックスイング時間、バックスイング終了時からボールとのインパクト時までのフォアスイング時間、インパクト時から着地時までのフォロースルー時間の3つの局面に分けられる。この場合、バックスイング終了時およびインパクト時が注目動作ポイントとして設定される。図7の上方の棒グラフにおいて、黒塗り部分がバックスイング時間、縦線部分がフォアスイング時間、白抜き部分がフォロースルー時間を示している。図7の下方のスティックピクチャーは、バックスイング時間、フォアスイング時間、フォロースルー時間の3つの局面のデータ数の割合を上記(規格化処理の手順1)に記した方法で求め、上記(規格化処理の手順2)に記した方法で規格化し、上記(手順4:データの平均化処理)で記した方法で平均化した、身体部位21点の位置の軌跡を示している。
【0073】
以上のように、本実施形態の動作解析装置1は、スポーツ選手の動作を解析する制御部13を備えている。ここで、注目動作ポイントを含む一連の所定動作を特定動作(例えば、踏切動作)とし、当該特定動作に伴い変化するパラメータの値を示すデータを解析対象データ(パラメータデータ、例えば、所定の基準座標に対する特定身体部位の位置データ)とする。
【0074】
そして、制御部13は、
(a)複数の試技について、踏切動作における所定時間ごとの位置データが経過時間に従って並べられた時系列データを取得し、
(b)上記時系列データの中から、上記注目動作ポイントに対応する位置データを特定し、
(c)特定した位置データを区切り位置として、上記時系列データを複数の区分(ここでは、前半部分と後半部分)に分割し、
(d)各試技について、区分(前半部分と後半部分)ごとに、当該区分内に含まれる位置データの数の、全位置データの数に対する割合を算出し、
(e)区分(前半部分と後半部分)ごとに、算出した割合の全試技に亘っての平均値を求め、当該平均値をデータ数割合(基準割合)として設定し、
(f)各区分(前半部分と後半部分)について、各試技の位置データの数の中で最も多い最大データ数(最大前半データ数、最大後半データ数)を特定し、
(g)各区分(前半部分と後半部分)について、以下の条件Aを満たす基準データ数(基準前半データ数、基準後半データ数)を設定し、
条件A:各区分(前半部分と後半部分)について、当該区分の基準データ数が、当該区分について特定した最大データ数以上であり、かつ、全区分の基準データ数の合計に対する当該区分の基準データ数の割合が、当該区分について設定したデータ数割合と一致する、
(h)各試技の時系列データについて、各区分(前半部分と後半部分)の位置データの数が当該区分に対して設定した基準データ数になるように一次補間により位置データをデータ変換し、変換後の位置データを経過時間に従って順番に並べ、各位置データを当該順番を示すデータ番号に対応付けた同期調整済時系列データ(変換済時系列データ)を作成し、
(i)全試技における同期調整済時系列データについて、同一データ番号ごとに位置データの平均値を求め、当該平均値をデータ番号に従って並べた平均時系列データを作成し、上記パラメータの時間的変化を示す画面をディスプレイ12に表示させる。
【0075】
このように、本実施形態の規格化・平均化の手法は、複数の被験者における位置データなどの各種力学データの平均値を経時的に示すことができる。そのため、運動技術あるいは運動技術の大部分が発揮されている複数の運動試技を規格化・平均化すれば、結果として得られた平均値で示される運動過程は、全被験者の動作に共通に内在する運動過程(運動技術)に一致あるいは近似するはずである。従って、本実施形態の規格化・平均化の手法は運動技術を究明するための一つの優れた方法である。また、本実施形態の規格化・平均化の手法は、複数の試技をまとめて単一の運動試技として整理することができるので、熟練者群対未熟練者群のようなグループ間どうしの各動作を比較検討することが容易となる。
【0076】
さらに、注目動作ポイントの位置データが変容することがないため、注目動作ポイントの位置データを正確に表示させることができる。
【0077】
さらに、注目動作ポイントを境にした各局面のデータ数は、各試技における各局面のデータ数割合の平均値で設定される。そして、設定されたデータ数割合になるように各局面のデータ数が調整され、全ての局面の解析対象データが順番に並べられる。この解析対象データを順番に従って一定間隔で表示することにより、各局面の時間的割合を把握することができる。
【0078】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0079】
最後に、動作解析装置1の各ブロック、特に制御部13は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0080】
すなわち、動作解析装置1は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである動作解析装置1の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記動作解析装置1に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0081】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0082】
また、動作解析装置1を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の動作解析装置は、バレーボール競技などのスポーツにおける選手の動作を解析する装置として適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明に係る動作解析装置の構成を示すブロック図である。
【図2】バレーボール競技におけるアタックの各動作局面を示す図である。
【図3】バレーボール競技中のアタックする選手の動きを身体重心位置で示したものである。
【図4】バレーボール競技のアタック動作の一部である踏切動作における座標変換の手順を示す図である。
【図5】試技1の踏切動作の各コマ画像を示す図である。
【図6】同期調整の方法を模式的に説明する図である。
【図7】バレーボール選手のアタックの打撃動作を示す図である。
【図8】3人の被験者による跳躍動作中の地面半力を示したグラフである。
【符号の説明】
【0085】
1 動作解析装置
2 カメラ
11 入力部
12 ディスプレイ(表示部)
13 制御部
14 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スポーツ選手の動作を解析する制御部を備えた動作解析装置であって、
注目動作ポイントを含む一連の所定動作を特定動作とし、
上記特定動作に伴い変化するパラメータの値を示すデータをパラメータデータとするとき、
上記制御部は、
(a)複数の試技について、上記特定動作における所定時間ごとのパラメータデータが経過時間に従って並べられた時系列データを取得し、
(b)上記時系列データの中から、上記注目動作ポイントに対応するパラメータデータを注目パラメータデータとして特定し、
(c)注目パラメータデータを区切り位置として、上記時系列データを複数の区分に分割し、
(d)各試技について、区分ごとに、当該区分内に含まれるパラメータデータの数の、全パラメータデータの数に対する割合を算出し、
(e)区分ごとに、算出した割合の全試技に亘っての平均値を求め、当該平均値を基準割合として設定し、
(f)各区分について、各試技のパラメータデータの数の中で最も多い最大データ数を特定し、
(g)各区分について、以下の条件Aを満たす基準データ数を設定し、
条件A:各区分について、当該区分の基準データ数が、当該区分について特定した最大データ数以上であり、かつ、全区分の基準データ数の合計に対する当該区分の基準データ数の割合が、当該区分について設定した基準割合と一致する、
(h)各試技の時系列データについて、各区分のパラメータデータの数が当該区分に対して設定した基準データ数になるように一次補間によりパラメータデータをデータ変換し、変換後のパラメータデータを経過時間に従って順番に並べ、各パラメータデータを当該順番を示す番号に対応付けた変換済時系列データを作成し、
(i)全試技における変換済時系列データについて、同一番号ごとにパラメータデータの平均値を求め、当該平均値を番号に従って並べた平均時系列データを作成し、上記平均時系列データに基づいて、上記パラメータの時間的変化を示す画面を表示部に表示させる、
ことを特徴とする動作解析装置。
【請求項2】
上記制御部は、上記画面として、上記番号の順に従って上記平均値を一定間隔で表した画面を表示させることを特徴とする請求項1に記載の動作解析装置。
【請求項3】
上記スポーツ選手がバレーボール選手であり、
上記パラメータデータが、所定の基準軸に対する上記バレーボール選手の特定身体部位の位置座標を示す位置データであることを特徴とする請求項1の動作解析装置。
【請求項4】
スポーツ選手の動作を解析する制御部を備えた動作解析装置における動作解析方法であって、
注目動作ポイントを含む一連の所定動作を特定動作とし、
上記特定動作に伴い変化するパラメータの値を示すデータをパラメータデータとするとき、
(a)上記制御部が、複数の試技について、上記特定動作における所定時間ごとのパラメータデータが経過時間に従って並べられた時系列データを取得するステップと、
(b)上記制御部が、上記時系列データの中から、上記注目動作ポイントに対応するパラメータデータを注目パラメータデータとして特定するステップと、
(c)上記制御部が、注目パラメータデータを区切り位置として、上記時系列データを複数の区分に分割するステップと、
(d)上記制御部が、各試技について、区分ごとに、当該区分内に含まれるパラメータデータの数の、全パラメータデータの数に対する割合を算出するステップと、
(e)上記制御部が、区分ごとに、算出した割合の全試技に亘っての平均値を求め、当該平均値を基準割合として設定するステップと、
(f)上記制御部が、各区分について、各試技のパラメータデータの数の中で最も多い最大データ数を特定するステップと、
(g)上記制御部が、各区分について、以下の条件Aを満たす基準データ数を設定するステップと、
条件A:各区分について、当該区分の基準データ数が、当該区分について特定した最大データ数以上であり、かつ、全区分の基準データ数の合計に対する当該区分の基準データ数の割合が、当該区分について設定した基準割合と一致する、
(h)上記制御部が、各試技の時系列データについて、各区分のパラメータデータの数が当該区分に対して設定した基準データ数になるように一次補間によりパラメータデータをデータ変換し、変換後のパラメータデータを経過時間に従って順番に並べ、各パラメータデータを当該順番を示す番号に対応付けた変換済時系列データを作成するステップと、
(i)上記制御部が、全試技における変換済時系列データについて、同一番号ごとにパラメータデータの平均値を求め、当該平均値を番号に従って並べた平均時系列データを作成し、当該平均時系列データに基づいて、上記パラメータの時間的変化を示す画面を表示部に表示させるステップと、
を含むことを特徴とする動作解析方法。
【請求項5】
請求項1から3の何れか1項に記載の動作解析装置の上記の制御部としてコンピュータを機能させるための動作解析プログラム。
【請求項6】
請求項5に記載の動作解析プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−268584(P2009−268584A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119857(P2008−119857)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】