説明

動力伝達変換機構及びそれを利用したリニアアクチュエータ

【課題】本発明は、外力に対して受動的に機能する動力伝達変換機構及びそれを利用したリニアアクチュエータを提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明は、平行な線状孔を斜めにして複数空けた筒状のガイド体を筒状の内体と筒状の外体で挟み、前記ガイド体の各線状孔内に前記内体の外周面に接する内ボールと前記外体の内周面に接する外ボールを交互に配置することで、内外ボールの回転により前記内体に与えた回転力を螺旋回転に変換して前記外体に伝達する際に、外力に対して受動的に機能することを特徴とする動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータの構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外力に対して受動的に機能する動力伝達変換機構及びそれを利用したリニアアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、従来の電動ドライバー等の回転工具は、モータで軸を回転させることでネジを締めるが、ネジは徐々にネジ穴に入っていくため、そのままでは工具とネジが離れてしまうので、工具を押し付けながら作業する必要がある。
【0003】
特許文献1に記載されているように、円筒状のハウジング内に進退自在に嵌合した進退部材と、前記進退部材にナットが結合されたボールねじ機構と、前記ボールねじ機構のねじ軸を回転させるモータとを備えたリニアアクチュエータの発明も公開されている。
【0004】
また、特許文献2に記載されているように、電動モータの回転軸にウォーム及びウォームホイールを介して連係されハウジングに回転自在に支持された回転ネジ軸と、回転ネジ軸に螺合し且つ回転ネジ軸の回転により相対的に軸線方向に往復移動する出力軸とを備えたリニアアクチュエータの発明も公開されている。
【特許文献1】特開2007−303515号公報
【特許文献2】特開2008−219998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2のように、歯車やボールねじ等の噛み合わせ部を持つ発明は、回転運動を別の運動に変換しているだけであり、工具の押付け等の外力に対して柔軟に対応することができない。
【0006】
そこで、本発明は、外力に対して受動的に機能する動力伝達変換機構及びそれを利用したリニアアクチュエータを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、平行な線状孔を斜めにして複数空けた筒状のガイド体を筒状の内体と筒状の外体で挟み、前記ガイド体の各線状孔内に前記内体の外周面に接する内ボールと前記外体の内周面に接する外ボールを交互に配置することで、内外ボールの回転により前記内体に与えた回転力を螺旋回転に変換して前記外体に伝達する際に、外力に対して受動的に機能することを特徴とする請求項1に記載の動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータの構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、斜めにした線状孔にボールを交互に配置することで、内体の回転力をボールを介して伝達し外体を螺旋状に回転させることにより、軸方向力を得るリニアアクチュエータとして実現することができる。
【0009】
また、線状孔にボールを交互に配置しただけであるので、外力に対してボールの回転方向をずらすことで受動的に動作させることが可能であり、動力装置への負荷も軽減することができる。
【0010】
本発明である動力伝達変換機構は、電動ドライバー以外にも、義手、ヒューマノイドロボット、パワースーツ等の関節駆動その他リニアアクチュエータを利用した装置に応用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、外力に対して受動的に機能させるという目的を、平行な線状孔を複数空けたガイド体を内体と外体の間に挟み、前記ガイド体の各線状孔内に前記内体に接する内ボールと前記外体に接する外ボールを交互に配置することで、内外ボールの回転により動力を伝達する際に外力に対して回転方向を受動的に変換することを特徴とする動力伝達変換機構により実現した。
【実施例1】
【0012】
以下に、添付図面に基づいて、本発明である動力伝達変換機構及びそれを利用したリニアアクチュエータについて詳細に説明する。図1は、本発明である動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータの外観の斜視図である。
【0013】
リニアアクチュエータ1は、入力されたエネルギーを直線運動に変換する駆動装置であり、動力装置7の動力により、外体4を上下にスライド移動させ、接続部8に接続された外部装置に伝達する。
【0014】
まず本発明であるリニアアクチュエータ1の仕組みとなる動力伝達変換機構1aについて説明する。図2は、本発明である動力伝達変換機構の平面図である。図3は、本発明である動力伝達変換機構の側面の断面図である。
【0015】
尚、図3の上段は、図2のA−A線で切断した断面図であり、線状孔5を縦切りにした状態である。また、図3の下段は、図2のB−B線で切断した断面図であり、線状孔5を横切りにした状態である。
【0016】
動力伝達変換機構1aは、平行な線状孔5を複数空けたガイド体3aを内体2aと外体4aの間に挟み、ガイド体3aの各線状孔5内に内体2aに接する内ボール6と外体4aに接する外ボール6aを交互に配置することで、内外ボール6、6aの回転により動力を伝達する際に外力に対して回転方向を受動的に変換することを特徴とする。
【0017】
内体2aは、ガイド体3aの下側に平行に位置する板状の部材であり、ガイド体3aに対して相対的に水平方向に移動することができる。尚、内体2aとガイド体3aとの間には隙間が存在する。
【0018】
外体4aは、ガイド体3aの上側に平行に位置する板状の部材であり、ガイド体3aに対して相対的に水平方向に移動することができる。尚、外体4aとガイド体3aとの間には隙間が存在する。尚、図2においては透明な板として記載する。
【0019】
ガイド体3aは、内体2aと外体4aの間に挟まれた板状の部材である。ガイド体3aには、内体2a側の面に抜ける部分と外体4a側の面に抜ける部分を有する細長の線状孔5が複数空けられる。
【0020】
線状孔5は、内ボール6及び外ボール6aを収容する溝である。全ての線状孔5は、ガイド体3aに対して同じ傾きを有しており、お互い平行である。尚、形状は特定ではなく、内外ボール6、6aを収めやすいように加工しても良い。
【0021】
線状孔5の幅は、最大で内ボール6又は外ボール6aを1個収めることができる幅である。ただし、内外ボール6、6aが回転できる余裕を設ける。また、線状孔5の長さは、線状孔5に収める内外ボール6、6aの個数に依る。
【0022】
内外ボール6、6aは、球体であり、線状孔5に対し、上下交互で且つ内ボール6と外ボール6aが接するように収められる。即ち、内体2a側の面から一部突出する内ボール6と、外体4a側の面から一部突出する外ボール6aとが交互に配置される。
【0023】
内外ボール6、6aの配置は上下二段で、線状孔5の両端に達するまで入れるが、1つの線状孔5に入れる内外ボール6、6aの個数は2個以上にする。尚、端の内外ボール6、6aの位置を上にするか下にするかは任意である。
【0024】
内体2aが移動すると、内体2aと接する内ボール6も摩擦により回転する。内ボール6が回転すると、内ボール6と接する外ボール6aも摩擦により回転する。外ボール6aが回転すると、外ボール6aと接する外体4aも摩擦により移動する。
【0025】
例えば、ガイド体3aに対し全ての線状孔5を左上の方に傾けて空けた場合に、内体2aと外体4aを固定して、ガイド体3aに左から右方向に外力を加えると、ガイド体3aは内外ボール6、6aが回転して右上方向に移動する。
【0026】
図4は、本発明である動力伝達変換機構の側面を拡大した断面図である。尚、図4の上段は、内外ボール6、6aに外力が掛かっていない状態であり、図4の下段は、内外ボール6、6aに外力が掛かった状態である。
【0027】
例えば、左側の外ボール6aが線状孔5の左端の壁面に接し、中央の内ボール6が左側の外ボール6aと右側の外ボールの間に挟まれ、右側の外ボール6aが線状孔5の右端の壁面に接しているとする。
【0028】
このとき、線状孔5の長手方向の両端と外ボール6aとの接点においては内外ボール6、6aを押さえ付ける力が働き、内ボール6と外ボール6aとの接点においては摩擦力により動力を伝達する力が働く。
【0029】
そのため、内ボール6については線状孔5の長手方向の両端と内ボール6の中心を結ぶ線、外ボール6aについては線状孔5の長手方向の両端と外ボール6aの中心を結ぶ線が回転軸となる。
【0030】
しかしながら、この回転軸は固定されている訳ではなく、軸線上に線状孔5の端面以外は内外ボール6、6aとの接点が存在しないため、内外ボール6、6aに線状孔5が押さえ付ける以上の力が加えられると、回転軸の角度がその方向にずらされる。
【0031】
即ち、本来の回転軸を維持しようとする力と、回転軸をずらそうとする力との間でバランスが取れた位置を回転軸として、内外ボール6、6aが回転し、その回転は全ての内外ボール6、6aに連動する。
【0032】
例えば、内体2a又は外体4aを右から左方向に移動させて、内ボール6は時計回りに、外ボール6aは反時計回りに回転する外力を掛ける。尚、内ボール6と外ボール6aとは逆に回転するので、内体2aと外体4aは同方向に移動させることが可能である。
【0033】
外力が弱ければ内外ボール6、6aの中心を左右に通る回転軸に近付き、外力が強ければ内外ボール6、6aの中心を手前から奥に通る回転軸に近付き、外力に応じて回転軸がずらされる。
【0034】
このように、ガイド体3aが内外ボール6、6aによって伝達する動力を妨げるような外力に対して受動的に機能することができ、それにより動力装置に影響を及ぼすようなこともない。
【実施例2】
【0035】
図5は、本発明である動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータの動作時の斜視図である。図6は、本発明である動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータの平面の断面図である。
【0036】
リニアアクチュエータ1は、平行な線状孔5を斜めにして複数空けた筒状のガイド体3を筒状の内体2と筒状の外体4で挟み、ガイド体3の各線状孔5内に内体2の外周面に接する内ボール6と外体4の内周面に接する外ボール6aを交互に配置することで、内外ボール6、6aの回転により内体2に与えた回転力を螺旋回転に変換して外体4に伝達する際に、外力に対して受動的に機能することを特徴とする。
【0037】
リニアアクチュエータ1は、動力伝達変換機構1aを利用しており、内体2と外体4とガイド体3を筒状にすることで、動力装置7から回転動力を内体2に与えると、外体4が螺旋状に回転し、接続部8に軸方向力を伝達する。
【0038】
中心が内体2、内体2の外側がガイド体3、ガイド体3の外側が外体4のように配置し、内体2と外体4でガイド体3を挟み込む。尚、内体2とガイド体3の間、及びガイド体3と外体4の間には隙間を設け、密着はさせない。
【0039】
図7は、本発明である動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータのガイド体の斜視図である。図8は、本発明である動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータのガイド体の側面図である。図9は、本発明である動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータのガイド体の平面図である。
【0040】
尚、図8の側面図については、下部を断面図にしており、内部が中空の筒状であることを示す。また、図9の平面図については、ガイド体3を透過させて、内外ボール6、6aの配置状況を示す。
【0041】
ガイド体3の側周面には、複数の線状孔5を空ける。各線状孔5は斜めに傾け、等間隔で平行に配置し、少なくとも外周面に抜ける部分と内周面に抜ける部分が交互に存在するように設ける。
【0042】
線状孔5の形状は、例えば、長方形状、円を繋げた形状、やや波状にうねった形状のように細長い線状である。線状孔5は、3箇所以上均等に空けて安定させることが望ましいが、対向する2箇所、又は1本を螺旋状に1周以上巻くように空けても構わない。
【0043】
線状孔5には、内周面から一部突出する内ボール6と、外周面から一部突出する外ボール6とが、交互に収容される。尚、内外ボール6、6aの突出は、ガイド体3と内体2の隙間、又はガイド体3と外体4の隙間の分である。
【0044】
内ボール6と外ボール6aとは接するので、お互い逆方向に回転する。また、内ボール6同士は全て同じ方向に回転し、外ボール6a同士も全て同じ方向に回転するため、内ボール6同士又は外ボール6a同士は接しない。
【0045】
図10は、本発明である動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータの側面の断面図である。図11は、本発明である動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータの動作時の側面の断面図である。
【0046】
リニアアクチュエータ1においては、内体2の中に動力装置7に連結した軸状の回転体9を通し、回転体9から内体2に動力を伝達可能に接続することで、回転体9の回転に伴い内体2も回転させる。
【0047】
尚、回転体9は内体2に回転力を伝達するが、回転体9に対し内体2が上下にスライド移動可能な状態とする。また、動力装置7としては、電気エネルギーを回転運動に変換するモータ等を用いる。
【0048】
ガイド体3の内部に内体2が通るようにし、ガイド体3の下端を動力装置7の固定部7aに固定する。尚、ガイド体3と回転体9との間にはベアリング11を介しており、回転体9はガイド体3とは関係なく回転することが可能である。
【0049】
外体4の内部にガイド体3が通るようにし、上部において内体2と外体4をベアリング11を介して連結すると共に、外体4の上端にベアリング11を介して接続部8を取り付ける。
【0050】
尚、ガイド体3には予め内外ボール6、6aを収容可能な個数セットしておき、全ての内ボール6は内体2の外周の壁面に接するようにし、全ての外ボール6aは外体4の内周の壁面に接するようにする。
【0051】
また、外体4の内周壁の下部には、外体4がガイド体3から外れないようにストッパー10を設ける。ストッパー10には止め輪などを用い、外体4が上昇した際に、外ボール6aが引っ掛かるようにする。
【0052】
例えば、回転体9の回転により内体2が回転すると、内体2から内ボール6に回転力が伝達されるが、内ボール6は斜めに回転軸が通っているため、内ボール6は斜め方向に回転する。
【0053】
外ボール6aには内ボール6と反対方向の回転が伝達され、外ボール6aも斜め方向に回転していることから、外体4は螺旋状に回転する。即ち、内体2と外体4は回転しながら上下方向にも移動する。
【0054】
尚、ガイド体3には左上方向に傾けた線状孔5を空けていることから、上から見て回転体9を時計回りに回転させると内体2及び外体4は下降し、回転体9を反時計回りに回転させると内体2及び外体4は上昇する。
【0055】
外体4が上昇し、ストッパー10が外ボール6aに接触すると、外体4の上昇を妨げる外力が生じ、内外ボール6、6aの回転軸を垂直方向に向けることで、内体2及び外体4に回転力のみを伝達する。
【0056】
また、外体4の上昇中に接続部8を下方に押し付けた場合も、外体4の上昇を妨げる外力であり、外力により内外ボール6、6aの回転軸の向きが変えられるので、内体2及び外体4を下降させることも可能である。
【実施例3】
【0057】
図12は、本発明である動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータの内体とボールの比率を変えたガイド体の平面図である。図13は、本発明である動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータの内体とボールの比率を変えたガイド体の側面図である。
【0058】
リニアアクチュエータ1bは、内体2の外径よりも内外ボール6、6aの直径を大きくすることで、変換される軸方向力及び回転力を減速して伝達することができる。尚、内ボール6と外ボール6aのサイズを変えることで変速効果を得ることも可能である。
【0059】
例えば、内体2の円周の長さが、内外ボール6、6aの円周の長さの半分であれば、内体2が一回転したときに、内外ボール6、6aは半回転しかしないため、外体4の回転及び移動速度も半分に減速されて伝達される。
【0060】
ガイド体3の厚さ、ガイド体3に空ける線状孔5の位置、線状孔5の数、線状孔5に入る内外ボール6、6aの数、内外ボール6、6aのサイズ、内外ボール6、6aの段数などは任意に調整可能である。
【0061】
図14は、本発明である動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータの内体と外体の距離を変えた場合のボール配置を示す図である。尚、図14の上段は距離が狭い場合であり、図14の下段は距離が広い場合である。
【0062】
内体2の外周と外体4の内周の円周差を変えることで、回転量及び軸方向への移動量を調整することもできる。尚、内ボール6同士又は外ボール6a同士が接触せず、内ボール6と外ボール6aが一直線上にならない範囲で調整する。
【0063】
内外ボール6、6aのサイズが同じでも、内体2の外周と外体4の内周までの距離が変われば、内ボール6と外ボール6aが接する角度が変わるので、回転軸の位置により回転時に伝達される移動量も変わるためである。
【0064】
即ち、内ボール6の回転軸と外ボール6aの回転軸の距離が離れている場合は接点の回転軌道が長くなり、内ボール6の回転軸と外ボール6aの回転軸の距離が近い場合は接点の回転軌道が短くなる。
【0065】
図15は、本発明である動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータの内体と外体の移動量について示す図である。内体2の外径、内ボール6の直径、外ボール6aの直径、外体4の内径の比が1:2:2:9とし、一直線上に並んだと仮定する。
【0066】
内体2が反時計回りに1回転したとすると、内ボール6は時計回りに半回転し、外ボール6aは反時計回りに半回転し、外体4は反時計回りに9分の1回転することとなり、内体2と外体4とで、回転角度に差が生じる。
【0067】
即ち、内体2を9回転させると外体4が1回転し、回転速度を9分の1に減速することができる。尚、内体2と外体4の比が変速比となるため、内体2から外体4までの距離が同じであれば、内ボール6と外ボール6aの比率が変わっても影響はない。
【0068】
また、内外ボール6、6aが斜め方向に回転し、内体2及び外体4が螺旋回転した場合には、上下方向への移動距離にも差が生じ、外体4が1回転して上昇する間に、内体2は9回転して9倍上昇することになる。
【0069】
尚、内体2と外体4を連結すれば回転角度及び昇降距離は同じとなるが、移動速度を合わせようとする力が外力となり、内外ボール6、6aの回転軸の向きがずらされて回転方向が変わる。
【0070】
図16は、本発明である動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータのボールの回転軸について示す図である。尚、図16の下段右側は線状孔内を横から見た図、上段はそれを上から見た図、下段左側はそれを左から見た図である。
【0071】
内外ボール6、6aは、線状孔5の長手方向の両端で押さえられ、摩擦力が働いているため、内ボール6の中心と線状孔5の両端を結ぶ線と、外ボール6aの中心と線状孔5の両端を結ぶ線が回転軸になりやすい。
【0072】
しかし、内外ボール6、6aは固定されている訳ではなく、回転軸が通る端のうち少なくとも一方が押さえられていない状態であるため、外力の影響を受けると、回転軸が傾きやすい。
【0073】
例えば、上段の図のように、内ボール6に対し左下方向に向かって外力が加わった場合、外ボール6aにより押さえられてはいるが、回転軸の両端に押さえがないため、横向きの回転軸の角度が下方にずらされる。
【0074】
外ボール6aに同じ外力が加わっていなければ、内ボール6の回転により回転軸の角度を変えようとする力と、外ボール6a自身が回転軸の角度を維持しようとする力が働いているため、内ボール6と外ボール6aの回転軸にずれが生じる。
【0075】
その結果、運動方向のずれにより内ボール6に伝達される量と外ボール6aが伝達する量に差が生じることとなる。尚、螺旋回転の場合では、内体2が回転し昇降する量と、外体4が回転し昇降する量との間に差が生じる。
【0076】
図17は、本発明である動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータのボールサイズを変えたガイド体を用いた場合の側面の断面図である。図18は、本発明である動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータのボールサイズを変えたガイド体を用いた場合の動作時の側面の断面図である。
【0077】
リニアアクチュエータ1bは、内体2を軸状にして動力装置7に接続し、内体2の周りにガイド体3を配置し、ガイド体3の周りに外体4を配置する。尚、外体4はベアリング11により回転可能に動力装置7の固定部7aに取り付けられる。
【0078】
内体2の回転により、内ボール6は斜め方向に回転し、さらに外ボール6aが逆方向に回転し、外体4を回転させるが、内外ボール6、6aが斜め方向に回転することからガイド体3が上下移動し、ガイド体3に取り付けた接続部8をスライド移動させる。
【0079】
尚、内体2及び外体4の回転に伴い、ガイド体3が逆方向に回転する場合があるので、接続部8を回転させずに昇降のみさせる場合は、ガイド体3と接続部8の間にすべり受け軸を設けるか、ガイド体3の回転方向を固定し回転を止めるような外力を与える。
【0080】
外体4の内周壁の設けたストッパー10に外ボール6aが接触すると、ガイド体3の移動を制限する外力が働き、内外ボール6、6aの回転軸の向きが調整され、外力の大きさに従って受動的に動作する。
【実施例4】
【0081】
図19は、本発明である動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータの構成の配置を変えた場合の側面の断面図である。リニアアクチュエータ1cの構成は様々に応用可能である。
【0082】
リニアアクチュエータ1cは、軸状の内体2を枠体12に固定し、内体2の周りにガイド体3を配置し、ガイド体3の周りに外体4を配置する。尚、枠体12には丸棒12aも固定し、動力装置7の固定部7aが丸棒12aに沿って移動できるように、すべり受け軸7bを介して取り付ける
【0083】
また、ガイド体3には回転体9を取り付けると共に、ベアリング11によりガイド体3が回転可能となるように動力装置7の固定部7aに取り付け、動力装置7から回転体9にベルトやその他の手段により回転力を伝達させる。
【0084】
ガイド体3が回転すると、内体2と外体4に対して内外ボール6、6aが斜め方向に回転することで、ガイド体3が上下移動も行い、ストッパー10で制限される範囲内で、固定部7aをスライド移動させる。
【0085】
尚、内体2が固定されていることから、外体4はガイド体3と反対方向に移動する。内体2の外周と外体4の内周の円周差があると、回転角度に差が生じ、スライド移動量も変化するので、円周差を利用して移動量を調整することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明である動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータの外観の斜視図である。
【図2】本発明である動力伝達変換機構の平面図である。
【図3】本発明である動力伝達変換機構の側面の断面図である。
【図4】本発明である動力伝達変換機構の側面を拡大した断面図である。
【図5】本発明である動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータの動作時の斜視図である。
【図6】本発明である動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータの平面の断面図である。
【図7】本発明である動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータのガイド体の斜視図である。
【図8】本発明である動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータのガイド体の側面図である。
【図9】本発明である動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータのガイド体の平面図である。
【図10】本発明である動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータの側面の断面図である。
【図11】本発明である動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータの動作時の側面の断面図である。
【図12】本発明である動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータの内体とボールの比率を変えたガイド体の平面図である。
【図13】本発明である動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータの内体とボールの比率を変えたガイド体の側面図である。
【図14】本発明である動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータの内体と外体の距離を変えた場合のボール配置を示す図である。
【図15】本発明である動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータの内体と外体の移動量について示す図である。
【図16】本発明である動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータのボールの回転軸について示す図である。
【図17】本発明である動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータのボールサイズを変えたガイド体を用いた場合の側面の断面図である。
【図18】本発明である動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータのボールサイズを変えたガイド体を用いた場合の動作時の側面の断面図である。
【図19】本発明である動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータの構成の配置を変えた場合の側面の断面図である。
【符号の説明】
【0087】
1 リニアアクチュエータ
1a 動力伝達変換機構
1b リニアアクチュエータ
1c リニアアクチュエータ
2 内体
2a 内体
3 ガイド体
3a ガイド体
4 外体
4a 外体
5 線状孔
6 内ボール
6a 外ボール
7 動力装置
7a 固定部
7b すべり受け軸
8 接続部
9 回転体
10 ストッパー
11 ベアリング
12 枠体
12a 丸棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行な線状孔を複数空けたガイド体を内体と外体の間に挟み、前記ガイド体の各線状孔内に前記内体に接する内ボールと前記外体に接する外ボールを交互に配置することで、内外ボールの回転により動力を伝達する際に外力に対して回転方向を受動的に変換することを特徴とする動力伝達変換機構。
【請求項2】
平行な線状孔を斜めにして複数空けた筒状のガイド体を筒状の内体と筒状の外体で挟み、前記ガイド体の各線状孔内に前記内体の外周面に接する内ボールと前記外体の内周面に接する外ボールを交互に配置することで、内外ボールの回転により前記内体に与えた回転力を螺旋回転に変換して前記外体に伝達する際に、外力に対して受動的に機能することを特徴とする請求項1に記載の動力伝達変換機構を利用したリニアアクチュエータ。
【請求項3】
内体の外周と外体の内周の円周差により回転量及び軸方向への移動量を調整することを特徴とする請求項2に記載のリニアアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−116937(P2010−116937A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288664(P2008−288664)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(307007328)
【Fターム(参考)】