説明

動力伝達装置

【課題】モータの回転軸の軸端部に供給される潤滑油をモータの軸芯に効率よく供給できる動力伝達装置を提供すること。
【解決手段】ケース1と、ケース内に配置されたモータと、モータの回転軸20における軸端部23の外周に配置され、かつケースによって外周が支持されて回転軸を回転自在に支持する軸受3Dと、回転軸に形成され、軸端部に供給される潤滑油をモータに導く油路4と、軸端部に供給される潤滑油が軸受に流れることを抑制する抑制部5と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動力伝達装置内の被供給部に潤滑油を供給する技術が知られている。例えば、特許文献1には、オイル受け部からモータジェネレータに潤滑油を供給する動力伝達装置の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−151261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
動力伝達装置においてモータに対して冷却等のための潤滑油を供給する方法として、モータの回転軸の軸芯からモータに潤滑油を供給する方法が考えられる。モータに対して適切に潤滑油を供給できるように、モータの軸芯に効率よく潤滑油を送ることができることが望まれている。例えば、モータの回転軸の軸端部に供給される潤滑油をモータの軸芯に導く場合、軸端部に供給される潤滑油を少ないロスでモータの軸芯に供給できることが望ましい。
【0005】
本発明の目的は、モータの回転軸の軸端部に供給される潤滑油をモータの軸芯に効率よく供給できる動力伝達装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の動力伝達装置は、ケースと、前記ケース内に配置されたモータと、前記モータの回転軸における軸端部の外周に配置され、かつ前記ケースによって外周が支持されて前記回転軸を回転自在に支持する軸受と、前記回転軸に形成され、前記軸端部に供給される潤滑油を前記モータに導く油路と、前記軸端部に供給される潤滑油が前記軸受に流れることを抑制する抑制部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記動力伝達装置において、前記抑制部は、前記軸端部に配置された端部部材と、シール部材とを備え、前記端部部材は、前記軸受と前記ケースの内壁とを前記回転軸の軸方向において仕切り、かつ前記内壁との間に前記軸端部に供給された潤滑油を貯留する貯留部を形成する仕切り部と、前記貯留部と前記油路とを連通する通路部とを有し、前記シール部材は、前記仕切り部と前記内壁との間をシールして前記貯留部の潤滑油が前記軸受に流れることを抑制することが好ましい。
【0008】
上記動力伝達装置において、前記シール部材は、弾性変形可能であり、前記軸方向において前記仕切り部と前記内壁との間に介在していることが好ましい。
【0009】
上記動力伝達装置において、前記軸受は、前記仕切り部を介して前記シール部材を前記内壁に向けて押圧していることが好ましい。
【0010】
上記動力伝達装置において、更に、前記回転軸の外周面に配置されたはすば歯車を備え、回転する前記はすば歯車が前記軸受に向けて送る潤滑油によって前記軸受を潤滑することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る動力伝達装置は、ケース内に配置されたモータと、モータの回転軸における軸端部の外周に配置され、かつケースによって外周が支持されて回転軸を回転自在に支持する軸受と、回転軸に形成され、軸端部に供給される潤滑油をモータに導く油路と、軸端部に供給される潤滑油が軸受に流れることを抑制する抑制部と、を備える。本発明に係る動力伝達装置によれば、モータの回転軸の軸端部に供給される潤滑油をモータの軸芯に効率よく供給できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施形態に係る動力伝達装置の概略構成を示す図である。
【図2】図2は、実施形態に係る動力伝達装置の要部を示す図である。
【図3】図3は、前進時に第四軸受に供給される潤滑油の流れを示す図である。
【図4】図4は、変形例の動力伝達装置の要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態に係る動力伝達装置につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0014】
(実施形態)
図1から図3を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、動力伝達装置に関する。図1は、実施形態に係る動力伝達装置の概略構成を示す図、図2は、実施形態に係る動力伝達装置の要部を示す図である。
【0015】
本実施形態の動力伝達装置1−1は、複軸式のハイブリッド用のトランスアクスル(T/A)である。動力伝達装置1−1は、キャッチタンクからモータ(図1の符号2参照)の軸芯へ潤滑油を導入する樹脂カバー(図2の符号51参照)とOリング(図2の符号52参照)とを有する。Oリング52は、樹脂カバー51とケースとの間に挿入されており、樹脂カバー51とケースとの隙間から潤滑油が漏れることを抑制する。このように、本実施形態の動力伝達装置1−1によれば、モータ2の回転軸の軸端部に供給される潤滑油の漏れを抑制してモータ2の軸芯に効率よく潤滑油を供給することができる。
【0016】
また、Oリング52によって、MGシャフト(図2の符号20参照)のスラスト方向の隙間が詰められる。よって、MGシャフト20のスラスト方向の移動が規制されることにより、ガラ音が低減される。これにより、動力伝達装置1−1の静粛性の向上が実現される。
【0017】
図1および図2に示すように、動力伝達装置1−1は、ケース1と、モータ2と、軸受3と、油路4と、抑制部5とを備えている。動力伝達装置1−1は、例えば、車両に搭載されるものである。本実施形態の動力伝達装置1−1は、モータ2および図示しないエンジンを動力源として走行するハイブリッド車両の動力伝達装置である。動力伝達装置1−1は、エンジンと駆動輪とを接続している。
【0018】
ケース1は、動力伝達装置1−1の外殻部材である。ケース1内には、モータ2、軸受3、カウンタシャフト6が配置されている。また、図示されていないが、ケース1内には、インプットシャフト、差動機構等が配置されている。インプットシャフトは、エンジンの動力が入力される入力軸である。差動機構は、エンジンやモータ2の動力を減速して左右の駆動輪に伝達する。
【0019】
カウンタシャフト6は、軸受を介してケース1によって回転自在に支持されている。カウンタシャフト6は、カウンタドリブンギア7およびファイナルドライブギア8を有する。カウンタドリブンギア7は、インプットシャフトのカウンタドライブギアと噛み合っている。
【0020】
モータ2は、電力の供給により駆動する電動機としての機能(力行機能)と、機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機としての機能(回生機能)とを兼ね備えている。モータ2としては、例えば、交流同期型のモータジェネレータを用いることができる。モータ2は、ケース1に固定された固定子としてのステータ2Aと、ステータ2Aの内方に配置された回転子としてのロータ2Bとを有する。
【0021】
モータ2の回転軸であるMGシャフト20は、第一シャフト部21および第二シャフト部22を有する。第二シャフト部22は、第一シャフト部21よりも軸方向のエンジン側に配置されている。第一シャフト部21には、ロータ2Bが連結されている。ロータ2Bは、第一シャフト部21の外周面に連結されており、ロータ2Bと第一シャフト部21とは一体に回転する。第二シャフト部22は、第一シャフト部21における軸方向のエンジン側の端部に挿入されている。第一シャフト部21と第二シャフト部22とは、一体回転可能なように、例えばスプライン嵌合によって連結されている。
【0022】
第一シャフト部21および第二シャフト部22は、それぞれ軸受3を介してケース1によって回転自在に支持されている。第一シャフト部21は、第一軸受3Aおよび第二軸受3Bによって支持されている。第一軸受3Aは、ロータ2Bよりも軸方向のエンジン側と反対側に配置され、第二軸受3Bは、ロータ2Bよりも軸方向のエンジン側に配置されている。第二シャフト部22は、第三軸受3Cおよび第四軸受3Dによって支持されている。第三軸受3Cは、第二シャフト部22における軸方向のエンジン側と反対側に配置され、第四軸受3Dは、第二シャフト部22における軸方向のエンジン側の端部に配置されている。つまり、第四軸受3Dは、MGシャフト20の軸端部に配置され、かつケース1によって支持されてMGシャフト20を回転自在に支持する軸受である。
【0023】
図2を参照して、第四軸受3Dは、例えば、玉軸受であり、外輪31、内輪32および転動体33を有する。外輪31は、ケース1におけるモータ2と軸方向において互いに対向する内壁11によって支持されている。内壁11は、第四軸受3Dよりもエンジン側に位置して第四軸受3Dと軸方向において対向している。内壁11は、軸方向のエンジン側に凹む凹部を有しており、外輪31はこの凹部に嵌合してケース1に対して固定されている。つまり、第四軸受3Dは、ケース1によって外周が支持されてMGシャフト20を回転自在に支持するものである。
【0024】
内輪32と第二シャフト部22とは、第二シャフト部22におけるエンジン側の端部が内輪32に挿入された状態で嵌合している。つまり、第四軸受3Dは、MGシャフト20における軸端部の外周に配置されている。内輪32は、第二シャフト部22と一体に回転する。また、内輪32における軸方向のエンジン側と反対側の端部は、第二シャフト部22と軸方向において当接している。外輪31と内輪32との間には、複数の転動体33が周方向に連続的に配置されている。転動体33は、球形であり、外輪31と内輪32との間で転動することにより、ケース1に対する第二シャフト部22の相対回転を可能とする。
【0025】
なお、本明細書では、特に記載のない限り、「径方向」とはMGシャフト20の中心軸線Xと直交する方向を示し、「軸方向」とはMGシャフト20の中心軸線Xと平行な方向を示すものとする。
【0026】
図1に戻り、第四軸受3Dは、第二シャフト部22の径方向外側に配置されて第二シャフト部22とケース1とを接続している。第二シャフト部22は、リダクションギア9を有する。リダクションギア9は、第二シャフト部22の外周面に配置されており、軸方向における第三軸受3Cと第四軸受3Dとの間に配置されている。リダクションギア8は、カウンタドリブンギア7と噛み合っている。これにより、モータ2は、MGシャフト20、リダクションギア9およびカウンタドリブンギア7を介してカウンタシャフト6と動力を伝達することができる。このように、カウンタドリブンギア7には、リダクションギア9およびインプットシャフトのカウンタドライブギアがそれぞれ噛み合っており、カウンタシャフト6にはエンジンの動力およびモータ2の動力がそれぞれ入力される。カウンタシャフト6のファイナルドライブギア8には、差動機構のリングギアが噛み合っている。カウンタシャフト6に入力された動力は、ファイナルドライブギア8、リングギアおよび差動機構を介して駆動輪に伝達される。
【0027】
なお、インプットシャフトには、発電機が接続されている。発電機は、インプットシャフトと同軸上に配置されており、例えば、遊星歯車機構を介してインプットシャフトと接続されている。発電機は、遊星歯車機構を介して伝達される動力によって発電することができる。この発電機は、バッテリから供給される電力によって電動機として機能することもできるモータジェネレータである。このように、動力伝達装置1−1は、二つのモータジェネレータが互いに異なる軸上に配置された複軸式のハイブリッドトランスアクスルである。
【0028】
油路4は、第一シャフト部21および第二シャフト部22に形成されている。図1に示すように、油路4は、第一シャフト部21に形成された第一油路41と、第二シャフト部22に形成された第二油路42とを有する。第一油路41は、第一シャフト部21を軸方向に貫通する軸方向油路41Aと、第一シャフト部21を径方向に貫通する径方向油路41Bとを有する。軸方向油路41Aは、第一シャフト部21よりも軸方向のエンジン側の空間と、軸方向のエンジン側と反対側の空間とを連通するものである。径方向油路41Bは、軸方向油路41Aとロータ2Bとを連通する。言い換えると、径方向油路41Bは、軸方向油路41Aと第一シャフト部21の径方向外側の空間とを径方向に連通する油路であって、かつロータ2Bに対応する位置に形成されている。
【0029】
第二油路42は、第二シャフト部22を軸方向に貫通するものである。すなわち、第二油路42は、第二シャフト部22よりも軸方向のエンジン側の空間と、軸方向のエンジン側と反対側の空間とを連通する。第一油路41と第二油路42とは連通しており、一体の油路4として機能する。油路4は、MGシャフト20における軸方向の両端部とモータ2のロータ2Bとを連通しており、MGシャフト20の軸端部に供給される潤滑油をロータ2Bに導くものである。
【0030】
MGシャフト20におけるエンジン側の軸端部には、潤滑油が供給される。潤滑油は、例えば、ケース1内に配置されたキャッチタンク10から供給される。キャッチタンク10は、潤滑油を一時的に貯留することができるオイル受け部である。キャッチタンク10は、ケース1内における上部に配置されている。キャッチタンク10には、ケース1内の下部に貯留した潤滑油がリングギアの回転等によって送られる。
【0031】
キャッチタンク10に貯留された潤滑油は、図示しない油路等を介して動力伝達装置1−1の各部に供給される。キャッチタンク10の潤滑油は、油路を介して直接MGシャフト20におけるエンジン側の軸端部の近傍に供給されてもよく、動力伝達装置1−1の各部を潤滑・冷却した潤滑油がMGシャフト20におけるエンジン側の軸端部の近傍に導かれるようにしてもよい。
【0032】
図2に示すように、MGシャフト20におけるエンジン側の軸端部(以下、単に「エンジン側の軸端部」と記載する。)23に供給された潤滑油は、矢印Y1に示すように第二油路42に流入する。第二油路42に流入した潤滑油は、第二油路42から第一油路41の軸方向油路41Aおよび径方向油路41Bを介してロータ2Bに導かれる。ロータ2Bに導かれた潤滑油は、ロータ2Bおよびステータ2Aを潤滑・冷却することができる。
【0033】
ここで、エンジン側の軸端部23に供給された潤滑油を油路4を介して効率良くモータ2に供給できることが望ましい。例えば、エンジン側の軸端部23に供給される潤滑油が油路4に流入することなく第四軸受3Dに流れ、第四軸受3Dを介して流出してしまうと、モータ2に供給できる油量が減少してしまう。
【0034】
本実施形態の動力伝達装置1−1は、エンジン側の軸端部23に供給される潤滑油が第四軸受3Dに流れることを抑制する抑制部5を備える。抑制部5は、樹脂カバー(端部部材)51およびOリング52を有する。
【0035】
樹脂カバー51は、第二シャフト部22におけるエンジン側の端部に配置され、内壁11に対して第四軸受3Dを遮蔽するカバー部材である。樹脂カバー51は、先端部が第二油路42に挿入された円筒形状の円筒部51Aと、フランジ状の仕切り部51Bとを有する。円筒部51Aは、その外径が第二油路42の内径よりもわずかに小さい。
【0036】
仕切り部51Bの形状は、油路4に対応する貫通孔53を有する円環形状である。仕切り部51Bにおける径方向内側の端部、すなわち貫通孔53は、円筒部51Aにおけるエンジン側の端部と接続されている。仕切り部51Bと円筒部51Aとの接続部は、軸方向のエンジン側に向かうほど径が拡大するテーパ形状となっている。仕切り部51Bは、軸方向において内壁11と第四軸受3Dとを仕切っている。内壁11と仕切り部51Bとの間には、エンジン側の軸端部23に供給された潤滑油を貯留する貯留部12が形成されている。
【0037】
内壁11は、軸方向のエンジン側に向かうほどMGシャフト20の中心軸線Xとの径方向の距離が小さくなるテーパ形状である。貯留部12は、仕切り部51Bと内壁11との軸方向の隙間である。仕切り部51Bは、内壁11のテーパ形状に対応するテーパ形状とされている。これにより、仕切り部51Bと内壁11との軸方向の隙間が大きくなりすぎることが抑制されている。
【0038】
仕切り部51Bによって第四軸受3Dと内壁11とが軸方向において仕切られていることで、エンジン側の軸端部23に供給される潤滑油が第四軸受3Dに流れることが抑制され、貯留部12に潤滑油が貯留される。
【0039】
円筒部51Aは、中空円筒形状である。円筒部51A内には、円筒部51Aを軸方向に貫通する通路部51Cが形成されている。通路部51Cは、貯留部12と第二油路42とを連通している。通路部51Cは、貫通孔53と第二油路42(油路4)とを軸方向に接続する。これにより、エンジン側の軸端部23に供給されて貯留部12に貯留される潤滑油は、通路部51Cを介して第二油路42に導かれる。
【0040】
Oリング52は、仕切り部51Bとケース1との間をシールして仕切り部51Bとケース1との隙間からの潤滑油の漏れを抑制するシール部材である。仕切り部51Bは、Oリング52を挟んで内壁11と軸方向において対向している。第四軸受3Dは、シム13を介して仕切り部51Bを内壁11に向けて軸方向に押圧している。より具体的には、内壁11には、第一内周面14と第一係止面15とを有する第一凹部16、および第二内周面17と第二係止面18とを有する第二凹部19が形成されている。第一凹部16および第二凹部19は、それぞれ軸方向のエンジン側に凹む形状であり、その断面形状は、中心軸線Xを中心とする円形である。第一内周面14および第二内周面17は、軸方向に延在する面であり、第一係止面15および第二係止面18は、第四軸受3Dと軸方向において対向する面である。第二凹部19は、第一凹部16の第一係止面15に対して軸方向のエンジン側に凹んでいる。
【0041】
第四軸受3Dの外輪31は、第一凹部16に嵌合しており、シム13によって第一係止面15に対する外輪31の軸方向の位置が調節されている。外輪31は、シム13をエンジン側(第一係止面15)に向けて押圧するようにケース1に対して組み付けられている。仕切り部51Bにおける径方向外側の端部、すなわち外縁部は、第二内周面17に接している。Oリング52は、仕切り部51Bと第二係止面18とに挟まれている。外輪31はシム13を介して仕切り部51Bを第二係止面18に向けて押圧しており、これによりOリング52が第二係止面18と仕切り部51Bとの隙間をシールしている。また、Oリング52は、仕切り部51Bの外縁部に配置されている。これにより、Oリング52は、仕切り部51Bと第二内周面17との径方向における隙間もシールしている。
【0042】
Oリング52が第二係止面18と仕切り部51Bとの隙間をシールしていることにより、貯留部12の潤滑油が仕切り部51Bと第二係止面18との隙間から漏れることが抑制される。また、Oリング52が第二内周面17と仕切り部51Bの外周面との隙間をシールしていることにより、貯留部12の潤滑油が仕切り部51Bと第二内周面17との隙間から漏れることが抑制される。よって、本実施形態の動力伝達装置1−1によれば、貯留部12の潤滑油が第四軸受3Dに流れることを抑制し、エンジン側の軸端部23に供給された潤滑油を効率良く油路4に流入させてモータ2の軸芯に導くことができる。
【0043】
また、Oリング52は、軸方向において第四軸受3Dとケース1との間、より具体的には仕切り部51Bと内壁11との間に介在している。Oリング52は、弾性変形可能な弾性部材である。これにより、MGシャフト20とケース1との軸方向の隙間が詰められる。よって、MGシャフト20の軸方向の動きが規制される。また、Oリング52によってMGシャフト20(第四軸受3D)とケース1との衝突が緩和されることで、ガラ音(衝突音)が軽減される。従って、車両走行時の静粛性の向上、および各部材の耐久性の向上を図ることができる。
【0044】
また、本実施形態の動力伝達装置1−1では、はすば歯車であるリダクションギア9によって、第四軸受3Dに潤滑油が供給される。これにより、抑制部5によって貯留部12の潤滑油の漏れが抑制されたとしても、第四軸受3Dに対して適切に潤滑油を供給することができる。
【0045】
図3は、前進時に第四軸受3Dに供給される潤滑油の流れを示す図である。リダクションギア9は、はすば歯車であり、前進時において、同一歯面におけるエンジン側がエンジン側と反対側よりも回転方向の後方にある。言い換えると、リダクションギア9における前進時の回転方向前方の歯面は、軸方向において第四軸受3Dと対向している。これにより、前進時には、図3に矢印Y2で示すように、回転するリダクションギア9が第四軸受3Dに潤滑油を送って第四軸受3Dを潤滑する。回転するリダクションギア9によって、潤滑油には軸方向のエンジン側に向かうスラスト力が作用し、第四軸受3Dに向けて進む。第四軸受3Dは、リダクションギア9から飛散する潤滑油によって潤滑・冷却される。リダクションギア9から第四軸受3Dに潤滑油が送られることから、リダクションギア9に対する潤滑油の供給を確保すれば、第四軸受3Dに対する潤滑油の供給も確保することができる。
【0046】
なお、仕切り部51Bと内壁11との隙間をシールするシール部材は、Oリング52に限定されるものではない。また、樹脂カバー51の形状は図示した形状に限定されるものではない。例えば、仕切り部51Bは、少なくとも内壁11と第四軸受3Dとを仕切るものであればよい。
【0047】
また、軸方向において第四軸受3Dとケース1との間に介在する弾性部材としてのOリング52の配置は、図示したものには限定されない。弾性部材は、例えば、シム13と仕切り部51Bとの間に配置されてもよい。
【0048】
(実施形態の変形例)
実施形態の変形例について説明する。本変形例では、樹脂カバー51とケース1との隙間をシールするシール部材が、樹脂カバー51と一体に形成される点が上記実施形態と異なる。図4は、本変形例の動力伝達装置1−1の要部を示す図である。
【0049】
図4に示すように、樹脂カバー51は、ゴム等の弾性変形可能な素材で形成されたシール部51Dを有する。シール部51Dは、仕切り部51Bにおける軸方向のエンジン側に配置されている。シール部51Dは、例えば、リング状の弾性部材を仕切り部51Bの外縁部、すなわち径方向外側の端部に固定したものである。シール部51Dを仕切り部51Bに固定する方法は、例えば、加硫接着とすることができる。
【0050】
シール部51Dを仕切り部51Bと一体にすることで、組付け性を向上させることができる。例えば、樹脂カバー51とOリング52とが別の部材であると、組付け時に樹脂カバー51が脱落してしまう虞がある。また、樹脂カバー51とOリング52とが別部材であると、組付けの工程数が増えてしまう。
【0051】
これに対して、シール部51Dが樹脂カバー51に一体化されていると、組付けの工程数が減少する。また、組付け時における樹脂カバー51の脱落を抑制可能となる。例えば、シール部51Dの径を第二内周面17の内径に対応する大きさとして、シール部51Dが第二内周面17に接するようにすれば、ケース1に対する樹脂カバー51の軸方向の相対移動を規制することができる。このように、本変形例によれば、動力伝達装置1−1の組付け性の向上によるコスト低減を実現可能となる。
【0052】
上記の実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0053】
1−1 動力伝達装置
1 ケース
2 モータ
3D 第四軸受
4 油路
5 抑制部
20 MGシャフト
23 エンジン側の軸端部
51 樹脂カバー
52 Oリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケース内に配置されたモータと、
前記モータの回転軸における軸端部の外周に配置され、かつ前記ケースによって外周が支持されて前記回転軸を回転自在に支持する軸受と、
前記回転軸に形成され、前記軸端部に供給される潤滑油を前記モータに導く油路と、
前記軸端部に供給される潤滑油が前記軸受に流れることを抑制する抑制部と、
を備えることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
前記抑制部は、前記軸端部に配置された端部部材と、シール部材とを備え、
前記端部部材は、前記軸受と前記ケースの内壁とを前記回転軸の軸方向において仕切り、かつ前記内壁との間に前記軸端部に供給された潤滑油を貯留する貯留部を形成する仕切り部と、前記貯留部と前記油路とを連通する通路部とを有し、
前記シール部材は、前記仕切り部と前記内壁との間をシールして前記貯留部の潤滑油が前記軸受に流れることを抑制する
請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記シール部材は、弾性変形可能であり、前記軸方向において前記仕切り部と前記内壁との間に介在している
請求項2に記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記軸受は、前記仕切り部を介して前記シール部材を前記内壁に向けて押圧している
請求項2または3に記載の動力伝達装置。
【請求項5】
更に、前記回転軸の外周面に配置されたはすば歯車を備え、
回転する前記はすば歯車が前記軸受に向けて送る潤滑油によって前記軸受を潤滑する
請求項1から4のいずれか1項に記載の動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−163120(P2012−163120A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21692(P2011−21692)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】