説明

動物用栄養補助飼料の製造方法

【課題】 穀類及び豆類の屑、その精選残渣、加工残渣を培地として使用し、特にβーグルコンその他薬効成分を多量に含むきのこの菌糸体を養殖し、これを動物用栄養補助飼料にする。
【解決手段】 穀類及び豆類のサイロ屑、その殻や茎を含む精選残渣、その食品加工時に生ずる加工残渣等よりなる培地に水分を加えて滅菌し、きのこ種菌を接種して合成樹脂袋に収容し、時折袋ごと培地を揉みほぐしながら袋内に菌糸を蔓延させ、菌糸が十分蔓延した培地を袋から取出して温風乾燥し、これを粉砕して製品とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、愛玩動物、養殖動物、養殖魚類などの健康維持に貢献する栄養補助飼料、即ちサプリメントの製造方法にかかり、特に有用きのこの菌糸体を用いたサプリメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
きのこ類が健康に有用な成分を多く含んでいることが知られており、例えば血中のコレステロール値の引下げ、血圧の降下、血小板の凝集作用の制御、抗酸化、肝障害抑制、免疫賦活、抗腫瘍等の有益な作用があるとされている。特に人用のサプリメントとして用いられているマンネンタケ、メシマコブ等は、βーグルカンを中心とする多糖類を多量に含み、顕著な免疫賦活、抗腫瘍作用、抗酸化作用、コレステロール値の引下げ、血糖値引下げ等の薬効があるとされている。
【0003】
一方、これらきのこ類の栽培基材である広葉樹の原木や大鋸屑は、林業従事者の減少と森林資源の減少とによって、価格が上昇すると共に、良質の基材の安定確保が困難となりつつある。
【0004】
そのために、最近では食品リサイクル法の施行によって産業廃棄物として処分が義務づけられているコーヒー渣、穀物や豆類のサイロ残渣、精選残渣や加工後の残渣などの有効利用が研究されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明は、上述の産業廃棄物として処理せざるを得なかった穀類、豆類のサイロ残渣や加工残渣などを有効に利用して培地を作り、これに有用きのこ類を増殖させ、これを培地ごと愛玩動物、養殖動物、養殖魚類などのサプリメントとして利用するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、穀類、豆類のサイロ残渣、精選残渣や加工残渣などを含む培地に種菌を接種して培養し、培地中に菌糸が十分に蔓延した後にこれを乾燥して粉砕し、そのまま或いは適宜栄養物質を加え、必要に応じてペレット状に成形して商品とする。
【0007】
上述の、穀類及び豆類としては、とうもろこし、マイロ、大麦、小麦、はだか麦。ライ麦、エン麦、米、そば、大豆等が使用可能であり、そのサイロ残渣、破砕物や穀や茎などの夾雑物が混入した精選残渣、及び醤油粕、酒類粕、製餡渣、おから、コーヒー渣、カカオ豆渣も利用することができ、これらはきのこの栄養分の含有量に応じて適宜配合することが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明は枯渇しつつある森林資源を使用せず、産業廃棄物として処理せざるを得ない未利用物を培地として使用するものであるから、環境問題に貢献する。そしてその製品は、有用きのこを同様に健康上有益であることに加え、きのこの子実体と較べて格段と安価に生産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
調整した培地に適量の水を加えて攪拌し、これを合成樹脂製のきのこ栽培袋に充填し、加熱殺菌する。冷却後、培地にきのこ種菌を接種して袋を密閉し、適温の培養室で菌を培養する。培養の途中で、培地を袋ごと手で揉みほぐし、菌糸に空気を行渡らせると共に増殖の均一化を計る。培地全体に菌糸が蔓延したら、袋を開いて培地を取出し、十分乾燥して細かく粉砕し、製品とする。
【実施例】
【0010】
培地基材として、体積比でマイロ:大麦:大豆皮及びコーンコブ(とうもろこし芯)を2:1:1で配合する。大豆皮及びコーンコブは、基材の保水性を高めるために添加し、直径5mm程度に粉砕したものを使用する。この配合物に全体の50%に相当する量の水を加えてよく攪拌しこれを500gづつ容量1リットルのきのこ栽培袋に充填して密封し、オートクレーブに袋ごと収容して120℃、1.1気圧で1時間の加熱滅菌を行う。
【0011】
オートクレーブより取出した袋入り培地を1晩放冷し、培地の温度が内部まで室温に下ったことを確認したら、(財)日本きのこセンター保有のマンネンタケ50040株を接種し、22℃、湿度88%、暗黒の培養室内で培養する。培養の途中、随時袋ごと培地をもみほぐし、内部に空気を与えて菌糸の伸長を促進させ、菌糸体量の増量を図る。
【0012】
接種から14〜21日程度で培地全体に菌糸が蔓延したら、袋口を開き、手で出来るだけ小さく砕き、45℃の温風乾燥機内で2晩乾燥させ、乾燥後に粉砕機により粉状になるまで粉砕して、サプリメントを完成する。
【0013】
上述のサプリメントを分析した結果、1g当り76.95mgの菌糸体量を含むことが判った。この菌糸体は、多量のβーグルカンを含有していて薬効が大きく、しかも子実体を用いる場合に較べて格段と安価に生産することができる。
【産業上の利用可能性】
【0014】
上述の粉状サプリメントは、通常の飼料栄養物を配合してペレット状に成形して、犬や猫などの愛玩動物の配合飼料を造ることができる。そして、使用するきのこ類としては、実施例のマンネンタケに限定されず、各種の有用きのこ類にも実施することができ、対象動物は牧畜動物、家禽、養殖魚類等、特に制限は存在しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
きのこ培地を滅菌し、これに種菌を接種して培養し、上記培地中に菌糸が十分蔓延した後にこれを乾燥して粉砕することを特徴とする動物用栄養補助飼料の製造方法。
【請求項2】
上記きのこ培地は、穀類、豆類のサイロ残渣、精選残渣または加工残渣のうちの少なくとも一種類を含有することを特徴とする請求項1記載の動物用栄養補助飼料の製造方法。
【請求項3】
上記種菌を接種した培地を合成樹脂製の袋に収容し、密閉して培養することを特徴とする請求項1または請求項2記載の動物用栄養補助飼料の製造方法。
【請求項4】
上記培養中の接種培地を、これを収容している袋ごと随時揉みほぐすことを特徴とする請求項3記載の動物用栄養補助飼料の製造方法。

【公開番号】特開2006−304715(P2006−304715A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132884(P2005−132884)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(391000519)財団法人日本きのこセンター (5)
【出願人】(505184610)国際飼料工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】