説明

動画像符号化装置及びプログラム、動画像復号装置及びプログラム、並びに、動画像配信システム

【課題】 符号化された動画像データの復号に係る処理量を低減する。
【解決手段】 本発明は、動画像符号化装置を搭載した動画像配信装置と、動画像復号装置を搭載した動画像受信装置とを有する動画像配信システムに関する。そして、動画像符号化装置は、動画像のキーフレームを符号化する手段と、非キーフレームの予測画像を生成する手段と、原画像に対する予測画像の誤りやすさに応じた誤り訂正符号の量を求める手段と、求めた誤り訂正符号の量に応じた誤り訂正符号のデータを生成して保持する手段と、原画像に係るデータを保持する手段と、求めた誤り訂正符号の量に応じて、誤り訂正符号又は原画像に係るデータのいずれかを選択して非キーフレームの符号化データとして生成する手段とを有することを特徴とする。また、動画像復号装置は、符号化された非キーフレームの符号化データの種類に応じた復号手段を適用して復号する手段を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画像符号化装置及びプログラム、動画像復号装置及びプログラム、並びに、動画像配信システムに関し、例えば、動画像についてDVC(Distributed Video Coding)方式で符号化して配信する動画像配信システムに適用し得る。
【背景技術】
【0002】
近年、非特許文献1に説明されるようなDistributed Video Coding(以下DVC)という新しい符号化方式に注目が集まっている。この方式は、符号化部で符号化するべき原画像に対してSlepian−Wolf符号化処理を行い、その符号化データと復号側で行った符号化部側の原画像の予測画像とともにSlepian−Wolf復号を行うことで画像の符号化を行う新しい符号化方式である。このような、非特許文献1に代表されるDVCの方式は、誤り訂正符号の再送要求というフィードバックを行うため、遅延が生じることや、符号化部と復号部が単独で動作できないという問題がある。
【0003】
そこで、非特許文献2では、この再送要求を避けるために、誤り訂正に必要な誤り訂正符号の量をWyner−Zivフレーム符号化部で計算を行う方式を提案している。
【0004】
以下、非特許文献2に記載されている、Slepian−Wolf符号化としてLDPC符号を用いた動画像の符号化装置及び復号装置について説明する。
【0005】
符号化装置側では、符号化するべき原画像(Wyner−Ziv Frames)を変換係数領域(DCT)に変換した後、各帯域毎に量子化(2Mklevel Quantizer)し、その値(q)を2値で表し、各ビットの情報を、例えば1frame分集めた情報(Extract bit−planes)毎にSlepian−Wolf符号化を行い、その結果のうちシンドロームビットのみを一時保存し、情報ビットは捨てられる。そして、符号化装置側では、Wyner−Zivフレーム復号部の作る予測画像を想定した予測画像をWyner−Zivフレーム符号器側で生成し、予測画像の誤りやすさを推定し、訂正するための必要な誤り訂正符号の量を計算する。
【0006】
符号化装置から復号装置に与えるシンドロームビットの量は、Slepian−Wolf符号化されたシンドロームビットを間引くことによって決定する。これは、間引きパターンを複数用意しておき、ここから誤り訂正に必要な符号量が得られる間引きパターンを選択することによって、送信する符号量を決定する。例えば、誤り訂正符号を1/48単位で間引くパターンの例で説明すると、1/48に間引くパターン、2/48に間引くパターン、…、47/48に間引くパターンというような間引きパターンと48/48のパターン(間引きなし)を用意しておき、この48通りから計算した送信する対応する間引きパターンを選択する。
【0007】
復号装置側では、予測画像を生成し(Interpolation/Extrapolation)、その予測画像を変換係数領域(DCT)に変換し、帯域毎にSide Informationとして利用する。
【0008】
そして、復号装置側では、符号化装置側から与えられたシンドロームビットとその内容を示す信号を受信し、受信したシンドロームビットの内容によって適用する復号方式を決定する。
【0009】
例えば、受信したシンドロームビットが、2/48等の間引かれたパターンの場合は、受け取ったシンドロームビットを送信された間引きパターンと仮定してSlepian−Wolf復号を行い、その復号値と、Side Infortnationから変換係数を再構築し、逆変換(IDCT)することで復号画像を得る。一方、48/48のパターン(間引きなしのパターン)の場合は、マトリクス解法を行い、その処理結果とSide Infornationから変換係数を再構築し、逆変換(IDCT)することで復号画像を得る。シンドロームビットが間引き無しの場合にマトリクス解法を行うのは、予測画像に誤りが極めて多い場合には、間引き無しのシンドロームビットによりSlepian−Wolf復号を行っても正しく復号できるとは限らないが、マトリクス解法を用いると復号の精度が向上する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Anne Aaro, Shantanu Rane, Eric Setton, and Bernd Girod,“Transform−domain Wyner−Ziv Codec for Video.”In:Proc,SPIE Visual Communications and Image Processing,San Jose,CA(2004)
【非特許文献2】C.Brites,F.Pereira,”Encoder Rate Control for Transform Domain Wyner−Ziv Video Coding“,ICIP2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、非特許文献2における送信符号量の制御方法では、符号化装置側でシンドロームビットについて間引きを行ったか、行っていないかによって、復号装置側での処理が異なる。符号化装置側で、間引きを行っていない場合には、復号装置側で、マトリクス解法による処理を行う必要があり、回路規模の増大、プログラム規模の増大などという問題が発生する。
【0012】
そのため、符号化された動画像データの復号に係る処理量を低減することができる動画像符号化装置及びプログラム、動画像復号装置及びプログラム、並びに、動画像配信システムが臨まれている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の本発明の動画像符号化装置は、(1)フレーム列を有する動画像信号の上記フレーム列のうちキーフレームを符号化するキーフレーム符号化手段と、(2)キーフレームを利用して、上記フレーム列のうち非キーフレームの予測画像を生成する予測画像生成手段と、(3)上記非キーフレームの原画像に係るデータを保持する原画像データ保持手段と、(4)上記予測画像の誤りやすさに応じて、その誤りを訂正する誤り訂正符号の量を求める送信符号量算出手段と、(5)上記送信符号量算出手段が求めた誤り訂正符号の量に応じた誤り訂正符号のデータを、生成して保持する誤り訂正符号データ保持手段と、(6)上記送信符号量算出手段が求めた誤り訂正符号の量に応じて、非キーフレームの符号化データとして、上記訂正符号データ保持手段が保持しているデータ、又は、上記原画像データ保持手段が保持しているデータのいずれかを選択する符号化データ選択手段と、(7)上記符号化データ選択手段が選択したデータを非キーフレームの符号化データとして出力する符号化データ出力手段とを有することを特徴とする。
【0014】
第2の本発明の動画像復号装置は、(1)フレーム単位に符号化された動画像データのうちキーフレームを復号するキーフレーム復号手段と、(2)復号されたキーフレームを利用して、上記動画像データのうち非キーフレームの予測画像を生成する予測画像生成手段と、(3)上記動画像データにおいて、非キーフレームの符号化データが、非キーフレームの原画像に対する、上記予測画像の誤りを訂正する誤り訂正符号であった場合には、その誤り訂正符号と上記予測画像とを用いて、非キーフレームを復号する第1の非キーフレーム復号手段と、(4)上記動画像データにおいて、非キーフレームの符号化データが、非キーフレームの原画像に係るデータであった場合に、その符号化データを復号する第2の非キーフレーム復号手段とを有することを特徴とする。
【0015】
第3の本発明の動画像符号化プログラムは、コンピュータを、(1)フレーム列を有する動画像信号の上記フレーム列のうちキーフレームを符号化するキーフレーム符号化手段と、(2)キーフレームを利用して、上記フレーム列のうち非キーフレームの予測画像を生成する予測画像生成手段と、(3)上記非キーフレームの原画像に係るデータを保持する原画像データ保持手段と、(4)上記予測画像の誤りやすさに応じて、その誤りを訂正する誤り訂正符号の量を求める送信符号量算出手段と、(5)上記送信符号量算出手段が求めた誤り訂正符号の量に応じた誤り訂正符号のデータを、生成して保持する誤り訂正符号データ保持手段と、(6)上記送信符号量算出手段が求めた誤り訂正符号の量に応じて、非キーフレームの符号化データとして、上記訂正符号データ保持手段が保持しているデータ、又は、上記原画像データ保持手段が保持しているデータのいずれかを選択する符号化データ選択手段と、(7)上記符号化データ選択手段が選択したデータを非キーフレームの符号化データとして出力する符号化データ出力手段として機能させることを特徴とする。
【0016】
第4の本発明の動画像復号プログラムは、コンピュータを、(1)フレーム単位に符号化された動画像データのうちキーフレームを復号するキーフレーム復号手段と、(2)復号されたキーフレームを利用して、上記動画像データのうち非キーフレームの予測画像を生成する予測画像生成手段と、(3)上記動画像データにおいて、非キーフレームの符号化データが、非キーフレームの原画像に対する、上記予測画像の誤りを訂正する誤り訂正符号であった場合には、その誤り訂正符号と上記予測画像とを用いて、非キーフレームを復号する第1の非キーフレーム復号手段と、(4)上記動画像データにおいて、非キーフレームの符号化データが、非キーフレームの原画像に係るデータであった場合に、その符号化データを復号する第2の非キーフレーム復号手段として機能させることを特徴とする。
【0017】
第5の本発明は、動画像受信装置と、配信用動画像データを上記動画像受信装置に配信する動画像配信装置とを有する動画像配信システムにおいて、(1)上記動画像配信装置は、フレーム列を有する動画像信号を符号化して配信用動画像データを生成する動画像符号化装置を有し、(2)上記動画像受信装置は、上記動画像配信装置から与えられた配信用動画像データを復号する動画像復号装置を有し、(3)上記動画像符号化装置として、第1の本発明の動画像符号化装置を適用し、(4)上記動画像復号装置として、第2の本発明の動画像復号装置を適用したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、符号化された動画像データの復号に係る処理量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態に係る動画像配信システムの全体構成について示したブロック図である。
【図2】実施形態に係る動画像符号化装置の動作について示したフローチャートである。
【図3】実施形態に係る動画像復号装置の動作について示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(A)主たる実施形態
以下、本発明による動画像符号化装置及びプログラム、動画像復号装置及びプログラム、並びに、動画像配信システムの一実施形態を、図面を参照しながら詳述する。
【0021】
(A−1)実施形態の構成
図1は、この実施形態の動画像配信システム1の全体構成を示すブロック図である。
【0022】
動画像配信システム1は、動画像配信装置10及び動画像受信装置20を有している。動画像配信装置10は、動画像符号化装置100を有しており、動画像符号化装置100により入力された映像信号を符号化して動画像データを生成し、図示しない通信部により動画像受信装置20に向けて送出する。
【0023】
動画像符号化装置100に対して入力される映像信号は、この実施形態においては、フレーム単位の映像信号(例えば、CCDカメラから入力される映像信号等)の列(以下、「入力シーケンス」という)を適用するものとして説明する。その他にも、動画像符号化装置100に、ビデオカメラ等によるアナログ形式の映像信号を入力して、動画像符号化装置100がフレーム単位の画像データに変換するキャプチャを別途備えるようにしても良い。このように、動画像符号化装置100に対して入力される映像信号の形式は限定されないものである。
【0024】
動画像受信装置20は、動画像復号装置200を有しており、図示しないにより、動画像配信装置10から送信された動画像データを受信し、動画像復号装置200により、受信した符号化された動画像データを復号して、動画像の信号を生成、所定の出力(例えば、ディスプレイへの出力や、復号した動画像データの記憶媒体への書き込み等、出力方法限定されないものである)を行う。
【0025】
動画像符号化装置100は、例えば、CPU、ROM、RAM、EEPROM、ハードディスクなどのプログラムの実行構成に、実施形態の動画像符号化プログラムをインストールすることにより構築するようにしても良いが、その場合でも、機能的には、図1のように表すことができる。また、動画像復号装置200についても同様のプログラムの実施構成に、実施形態の動画像復号プログラムをインストールすることにより構築するようにしても良いが、その場合でも、機能的には、図1のように表すことができる。
【0026】
動画像配信装置10は、例えば、ハードウェア的な通信部の他は、通信処理やデータ処理等を実行するためのCPU、ROM、RAM等を有しており、CPUが実行するプログラム(実施形態の動画像符号化プログラムを含む)をインストールすることにより構築しても良く、上述したプログラムを含め、動画像配信装置10の機能的構成を示すと図1に示すようになる。また、動画像受信装置20も、同様の装置に、実施形態の動画像復号プログラム等をインストールすることにより構築するようにしても良く、上述したプログラムを含め、動画像配信装置10の機能的構成を示すと図1に示すようになる。
【0027】
次に、動画像符号化装置100の内部構成について説明する。
【0028】
動画像符号化装置100は、Wyner−Zivフレーム符号化部110及びキーフレーム符号化部120を有している。また、Wyner−Zivフレーム符号化部110は、変換量子化部111、Side Information生成部112、送信符号量推定部113、Slepian−Wolf符号化部114、及び情報ビット格納部115を有している。
【0029】
キーフレーム符号化部120は、入力シーケンスからキーフレームを得、従来のMPEGやJPEGといった従来の符号化方式で符号化を行い、復号側へ符号化データを送信する。
【0030】
変換量子化部111は、入力シーケンスからWyner−Zivフレームを得、変換・量子化しビットプレーン単位へ分割する。
【0031】
Side Information生成部112は、Wyner−Zivフレームの前、もしくは後ろ、もしくは前後のキーフレーム画像を入力し、Wyner−Zivフレーム画像の予測画像を生成し、変換・量子化し、ビットプレーンへ分割する。
【0032】
Slepian−Wolf符号化部114は、変換量子化部111から入力された各ビットプレーンの情報(情報ビット)に対し、LDPC符号といったSlepian一Wolf符号化を行い、シンドロームビットを生成し、送信符号量推定部113からの指示があった場合にシンドロームビットを受信側(動画像受信装置20)に送信する。
【0033】
情報ビット格納部115は、変換量子化部111から入力された各ビットプレーンの情報(以下、「情報ビット」という)を格納し、送信符号量推定部113からの指示があった場合に動画像受信装置20(動画像復号装置200)に送信する。
【0034】
送信符号量推定部113は、Side Information生成部112で生成された予測画像の変換係数と、変換量子化部111で得られたWyner−Zivフレームの変換係数を入力し、各ビットプレーンの復号部へ送る誤り訂正符号の量を推定する。
【0035】
送信符号量推定部113による誤り訂正符号の量は、上述の非特許文献2の記載技術と同様の処理により、Slepian−Wolf符号化部114が符号化したシンドロームビットについて間引く量を決定する(間引く量ではなく、残す量を決定するようにしても良いが、ここでは、説明を簡易にするため間引く量として説明する)。
【0036】
そして、ここでは、例として、送信符号量推定部113が決定する誤り訂正符号の量(間引き量のパターン)は、Slepian−Wolf符号化したシンドロームビットを、1/48単位で間引くいずれかのパターン(1/48、2/48、…、48/48のいずれかのパターン)で示されるものとする。
【0037】
そして、送信符号量推定部113は、上述の間引き量のパターンを、48/48のパターン(すなわち、間引き無し)と決定した場合には、その旨が情報ビット格納部115に通知し、当該非キーフレームの符号化データとして、情報ビット格納部115に格納された情報を出力し、動画像受信装置20(動画像復号装置200)に送信する。
【0038】
また、送信符号量推定部113は、上述の間引き量のパターンを、1/48〜47/48のいずれかのパターン(すなわち、間引き有り)と決定した場合には、その旨をSlepian−Wolf符号化部114に通知する。そして、Slepian−Wolf符号化部114は、生成したシンドロームビットから、送信符号量推定部113により決定されたパターンの間引きを行って、その間引き後のデータを、当該非キーフレームの符号化データとして出力し、動画像受信装置20(動画像復号装置200)に送信する。
【0039】
また、Wyner−Zivフレーム符号化部110では、Slepian−Wolf符号化部114から送信される情報と、情報ビット格納部115から送信される情報について、受信側で分類できるような情報を付加するようにしても良い。例えば、ヘッダ情報の一部に、Slepian−Wolf符号化部114から送信される情報と、情報ビット格納部115から送信される情報とを分類するための情報を挿入するようにしても良い。
【0040】
次に、動画像復号装置200の内部構成について説明する。
【0041】
動画像復号装置200は、Wyner−Zivフレーム復号部210及びキーフレーム復号部220を有している。また、Wyner−Zivフレーム復号部210は、切り替え部211、Slepian−Wolf復号部212、Side Information生成部213、及び復号画像生成部214を有している。
【0042】
キーフレーム復号部220は、動画像符号化装置100(キーフレーム符号化部120)で符号化されたキーフレームを受信し、復号を行うことで、復号画像を得る。
【0043】
Side Information生成部213は、キーフレーム復号部220で得られたWyner−Zivフレームの前、もしくは後ろ、もしくは前後のキーフレームの復号画像から、例えば動き推定と動き補償などの手法を用いてWyner−Zivフレームの予測画像を生成し、変換・量子化しビットプレーンへ分割する。
【0044】
切り替え部211は、動画像符号化装置100(Wyner−Zivフレーム符号化部110)から受信したWyner−Zivフレームに係るデータが、シンドロームビットの場合には、そのデータをSlepian−Wolf復号部212へ与え、情報ビットの場合には、復号画像生成部214へ与える。
【0045】
Slepian−Wolf復号部212は、受信したシンドロームビットとSide Information生成部213で生成された予測画像の情報(ビットプレーン)とから、Slepian−Wolf復号を行う。
【0046】
復号画像生成部214は、Slepian−Wolf復号部212での各ビットプレーンの復号結果もしくは受信した情報ビットと、Side Information生成部213で生成された予測画像の情報を参照してフレーム単位での情報に再構成したのち、再構成されたフレームに逆変換・逆量子化を行い、復号画像を得る。
【0047】
(A−2)実施形態の動作
次に、以上のような構成を有するこの実施形態の動画像配信システム1の動作を説明する。
【0048】
ここでは、まず、動画像符号化装置100の動作について説明した後に、動画像復号装置200の動作について説明する。
【0049】
(A−2−1)動画像符号化装置の動作について
動画像符号化装置100に入力される、入力シーケンスはキーフレームとWyner−Zivフレームに分けられ、それぞれの符号化・復号が行われる。ここでは、入力シーケンスをキーフレームとWyner−Zivフレームを交互に符号化する例について説明を行う。
【0050】
動画像符号化装置100では、入力シーケンスの1フレーム目はキーフレームとして符号化が行われる。1フレーム目は、キーフレーム符号化部120において、非特許文献1などと同じくJPEGやMPEGのIフレームのようなフレーム内符号化がおこなわれて受信側へ送信される。次に、2フレーム目はWyner−Zivフレームとして、Wyner−Zivフレーム符号化部110により符号化が行われる。ここでは、この2フレーム目のデータが、Wyner−Zivフレーム符号化部110により符号化される場合を例として、Wyner−Zivフレーム符号化部110の動作について説明する。
【0051】
図2は、Wyner−Zivフレーム符号化部110の動作について示したフローチャートである。
【0052】
まず、入力シーケンスから2フレーム目の原画像を変換量子化部111へ入力される(S201)。
【0053】
次に、変換量子化部111で、2フレーム目の原画像が変換係数領域に変換(DCT)され、帯域ごとに量子化される(S202)。ステップS202では、各帯域の量子化された変換係数が2値化され、ビットプレーンへ分割されるとともに、各ビットプレーンの情報が情報ビットとして、情報ビット格納部115に格納される。帯域毎にビットプレーン化する際に、1フレーム全体の長さでビットプレーンへ分割しても良いし、画面内の領域ごと、といった形でグループ化した長さで区切り、ビットプレーンへ分割しても良い。一般に、誤り訂正符号は符号長が長いほど高い誤り訂正能力を発揮できる。しかし、動画像では、動きのある領域と動きがない領域では、動きのある領域のほうが予測画像の誤りが多い、というように画面内の領域によって誤りの量が異なることが考えられるため、領域によってビットプレーンを分割することにより、領域の特徴を捉えることができると考えられる。
【0054】
次に、キーフレーム符号化部120から前または後、または両方のキーフレーム画像がSide Information生成部112へ入力される(S203)。
【0055】
次に、Side Information生成部112において2フレーム目(Wyner−Zivフレーム)の予測画像が生成される(S204)。
【0056】
予測画像の生成には、前のキーフレームを利用する方法や、前後のキーフレーム画像の平均を取るなどの方法や、非特許文献2に示されるような、範囲の絞った動き探索などの方法がある。
【0057】
次に、Side Information生成部112において生成した予測画像に対して、変換・量子化を行い、ビットプレーンに分割される(S205)。このときのビットプレーンの長さは変換量子化部111と同様の分割方法で行う。
【0058】
次に、Side Information生成部112から予測画像の変換係数を送信符号量推定部113へ入力される(S206)。
【0059】
次に、変換量子化部111から原画像の変換係数が送信符号量推定部113へ入力される(S207)。
【0060】
次に、送信符号量推定部113において、誤り訂正に必要な誤り訂正符号の量が推定される(S208)。
【0061】
ステップS208における計算手法については、例えば、非特許文献2などの方法を用いることができる。つまり、送信符号量推定部113では、入力されたWyner−Zivフレームの予測画像と原画像の変換係数を比較し、帯域毎に予測誤差の分布パラメータを推定する。予測誤差の分布を平均0のラプラス分布と仮定すると、予測画像の変換係数と原画像の変換係数の差分の分散を計算することによって得られる。次に、推定した分布パラメータをもとに、各ビットプレーンの予測画像の誤りやすさを推定し、それを訂正するために必要な誤り訂正符号の量を計算する。符号化側のSide Information生成部112で生成された予測画像を復号側で生成する予測画像と仮定することで、誤りやすさを推定し、誤り訂正に必要な誤り訂正符号の量を推定し、間引きパターンを選択する。間引きパターンとは、例えば、誤り訂正符号(ここでは、例としてLDPCのシンドロームビットを用いる)を1/48単位で間引くパターンの例で説明すると、1/48に間引くパターン,2/48に間引くパターン、・・・、47/48に間引くパターンというような間引きパターンと、48/48のパターン(間引きなし)が用意されているので選択する。
【0062】
次に、送信符号量推定部113で求められた間引きパターンが、間引きありのパターンか無しのパターンかが判定され(S209)、間引き有りの場合(上述の例では48/48以外のパターン)は、間引きされたシンドロームビットが、動画像受信装置20(Wyner−Zivフレーム復号部210)に送信される(S210)。一方、間引きなし(上述の例では48/48のパターン)の場合は、情報ビット格納部115から、情報ビットが、動画像受信装置20(Wyner−Zivフレーム復号部210)に送信される(S211)。
【0063】
(A−2−2)動画像復号装置の動作について
次に、動画像復号装置200の動作を説明する。
【0064】
動画像復号装置200では、動画像符号化装置100から与えられる1フレーム目のデータは、上述の通りキーフレームの符号化データであるため、キーフレーム復号部220は、キーフレーム符号化部120から送信された符号化されたキーフレームを受信し、復号を行う。動画像符号化装置100側では、キーフレームはJPEGやMPEGのIフレームといった従来の符号化方式のフレーム内符号化を例として挙げているのが、これに対応した復号を行うことにより、復号画像を得る。
【0065】
次に、2フレーム目はWyner−Zivフレームについて符号化されたデータであるので、Wyner−Zivフレーム復号部210により復号が行われる。ここでは、この2フレーム目のデータが、Wyner−Zivフレーム復号部210により復号される場合を例として、Wyner−Zivフレーム復号部210の動作について説明する。
【0066】
図3は、Wyner−Zivフレーム復号部210の動作について示したフローチャートである。
【0067】
まず、Wyner−Zivフレーム復号部210において、動画像配信装置10(動画像符号化装置100)から送信された、Wyner−Zivフレームの符号化データが受信される(S301)。
【0068】
次に、切り替え部211において、受信した符号化データの内容が、ヘッダ情報の確認等により、シンドロームビットか情報ビットかが判定され(S302)、シンドロームビットである場合には、後述するステップS303の処理に進み、情報ビットである場合には後述するステップS308の処理に進む。
【0069】
次に、上述のステップS303において、受信した符号化データの内容が、シンドロームビットであった場合には、まず、キーフレーム復号部220の出力結果からキーフレーム画像(例えば前後のキーフレーム)がSide Information生成部213へ入力される(S303)。
【0070】
次に、Side Information生成部213で2フレーム目(Wyner−Zivフレーム)の予測画像が生成される(S304)。予測画像生成方法としては、例えば、前後の平均や、動き推定・動き補償を行う方法などがある。
【0071】
次に、Side Information生成部213において予測画像が、量子化・2値化され、ビットプレーンへ分割される(S305)。このとき、ビットプレーンの長さについては、符号化器と対応するように、フレーム全体や、画面内の領域といった一定の長さとなるようにしておく。
【0072】
次に、Slepian−Wolf復号部212へSide Information生成部213で生成されたビットプレーンが入力される(S306)。
【0073】
次に、Slepian−Wolf復号部212では、Wyner−Zivフレーム符号化部110から送信されたシンドロームビットを用いて、Slepian−Wolf復号(この実施形態においては、LDPC復号を用いる)が行われる(S307)。
【0074】
そして、上述のステップS303において、受信した符号化データがシンドロームビットであった場合には、Slepian−Wolf復号部212での復号結果が、復号画像生成部214へ入力される。一方、上述のステップS303において、受信した符号化データが情報ビットであると判定された場合には、受信した情報ビットが、復号画像生成部214へ入力される(S308)。
【0075】
次に、Wyner−Zivフレーム復号部210では、1フレームの全てのビットプレーンを処理したか否かが判定され(S309)、全てのビットプレーンの処理が完了した場合には後述するステップS310の処理に進み、そうでない場合には、上述のステップS301の処理に戻って動作する。
【0076】
次に、復号画像生成部214では、Slepian−Wolf復号部212による復号結果のビットプレーン又は情報ビットが、フレーム単位へ再構成され、逆量子化・逆変換することで復号画像が得られる(S310)。
【0077】
(A−3)実施形態の効果
この実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0078】
動画像符号化装置100側では、送信符号量推定部113により、シンドロームを間引かずに送信すると判定された場合には、シンドロームビットを送らずに、対応する情報ビットを送ることで、動画像復号装置200側で、従来のようなマトリクス解法等を行う手段を用意する必要がなくなる。これにより、動画像復号装置200側の回路規模、プログラム規模が縮小される上、処理量も低減することができる。
【0079】
(B)他の実施形態
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するような変形実施形態も挙げることができる。
【0080】
(B−1)上記の実施形態においては、送信符号量推定部113は、決定した誤り訂正符号の量(間引き量のパターン)が、「間引き有り」のパターンの場合には、Slepian−Wolf符号化部114に間引きしたシンドロームビットの出力を指示し、「間引き無し」のパターンの場合には、情報ビット格納部115に情報ビットの出力を指示しているが、その他の基準を適用するようにしても良い。
【0081】
例えば、間引きの有無ではなく、間引き量に対する閾値を設けて、その閾値との比較結果に応じて、シンドロームビット又は情報ビットの出力のいずれかを選択するようにしても良い。例えば、閾値を45/48に設定した場合には、送信符号量推定部113が決定した間引き量が1/48〜44/48のいずれかのパターンであった場合には、シンドロームビットの出力を選択し、45/48〜48/48のいずれかのパターンであった場合には、情報ビットの出力を選択するようにしても良い。
【0082】
(B−2)上記の実施形態においては、Slepian−Wolf符号化部114では、LDPC符号を用いた処理を行っているが、他の符号化方式(例えば、ターボ符号)を適用するようにしても良い。
【0083】
(B−3)上記の実施形態においては、情報ビット格納部115には、変換量子化部111から出力されるWyner−Zivフレーム(非キーフレーム)の原画像に係るビットプレーンが格納されるものとして説明したが、他の形式の原画像に係るデータを格納するようにしても良い。
【0084】
例えば、キーフレーム符号化部120における符号化形式と同様の形式(例えば、MPEGにおけるIフレームやJPEG等の形式)のデータを情報ビット格納部115に格納するようにしても良い。その場合は、動画像復号装置200側でも、復号画像生成部214において、情報ビット格納部115からのデータを受信した場合には、キーフレーム復号部220と同様の処理により復号するようにしても良い。なお、上述の例の場合、別途復号手段を設けずに、キーフレーム復号部220をそのまま適用するようにしても良い。
【0085】
(B−4)上記の実施形態において、動画像符号化装置100は、動画像配信装置10に搭載され、符号化した動画像データを、動画像受信装置20(動画像復号装置200)に送信するものとして説明したが、動画像符号化装置100を単独の装置として構築するようにしても良い。その場合、例えば、動画像符号化装置100が出力する動画像の符号化データを記録媒体(CD、DVD、ディスク装置等)に記録するようにしても良い。
【0086】
また、上記の実施形態において、動画像復号装置200は、動画像受信装置20に搭載され、符号化した動画像データを、動画像配信装置10(動画像符号化装置100)から受信して復号するものとして説明したが、動画像復号装置200を単独の装置として構築するようにしても良い。その場合例えば、動画像復号装置200に入力されるデータは、記録媒体(CD、DVD、ディスク装置等)に記録されたデータとしても良い。
【符号の説明】
【0087】
1…動画像配信システム、10…動画像配信装置、100…動画像符号化装置、110…Wyner−Zivフレーム符号化部、111…変換量子化部、112…Side Information生成部、113…送信符号量推定部、114…Slepian−Wolf符号化部、115…情報ビット格納部、120…キーフレーム符号化部、20…動画像受信装置、200…動画像復号装置、210…Wyner−Zivフレーム復号部、221…切り替え部、222…Slepian−Wolf復号部、223…Side Information生成部、224…復号画像生成部、220…キーフレーム復号部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム列を有する動画像信号の上記フレーム列のうちキーフレームを符号化するキーフレーム符号化手段と、
キーフレームを利用して、上記フレーム列のうち非キーフレームの予測画像を生成する予測画像生成手段と、
上記非キーフレームの原画像に係るデータを保持する原画像データ保持手段と、
上記予測画像の誤りやすさに応じて、その誤りを訂正する誤り訂正符号の量を求める送信符号量算出手段と、
上記送信符号量算出手段が求めた誤り訂正符号の量に応じた誤り訂正符号のデータを、生成して保持する誤り訂正符号データ保持手段と、
上記送信符号量算出手段が求めた誤り訂正符号の量に応じて、非キーフレームの符号化データとして、上記訂正符号データ保持手段が保持しているデータ、又は、上記原画像データ保持手段が保持しているデータのいずれかを選択する符号化データ選択手段と、
上記符号化データ選択手段が選択したデータを非キーフレームの符号化データとして出力する符号化データ出力手段と
を有することを特徴とする動画像符号化装置。
【請求項2】
上記符号化データ選択手段は、送信符号量算出手段が保持した誤り訂正符号の量が、上記誤り訂正符号データ保持手段が生成し得る誤り訂正符号の上限であった場合には、上記原画像データ保持手段が保持しているデータを選択し、送信符号量算出手段が保持した誤り訂正符号の量が、上記誤り訂正符号データ保持手段が生成し得る誤り訂正符号の上限でない場合には、上記訂正符号データ保持手段が保持しているデータを選択することを特徴とする請求項1に記載の動画像符号化装置。
【請求項3】
上記符号化データ選択手段は、送信符号量算出手段が保持した誤り訂正符号の量が、閾値以上であった場合には、上記原画像データ保持手段が保持しているデータを選択し、送信符号量算出手段が保持した誤り訂正符号の量が、上記閾値より少ない量であった場合には、上記訂正符号データ保持手段が保持しているデータを選択することを特徴とする請求項1に記載の動画像符号化装置。
【請求項4】
フレーム単位に符号化された動画像データのうちキーフレームを復号するキーフレーム復号手段と、
復号されたキーフレームを利用して、上記動画像データのうち非キーフレームの予測画像を生成する予測画像生成手段と、
上記動画像データにおいて、非キーフレームの符号化データが、非キーフレームの原画像に対する、上記予測画像の誤りを訂正する誤り訂正符号であった場合には、その誤り訂正符号と上記予測画像とを用いて、非キーフレームを復号する第1の非キーフレーム復号手段と、
上記動画像データにおいて、非キーフレームの符号化データが、非キーフレームの原画像に係るデータであった場合に、その符号化データを復号する第2の非キーフレーム復号手段と
を有することを特徴とする動画像復号装置。
【請求項5】
コンピュータを、
フレーム列を有する動画像信号の上記フレーム列のうちキーフレームを符号化するキーフレーム符号化手段と、
キーフレームを利用して、上記フレーム列のうち非キーフレームの予測画像を生成する予測画像生成手段と、
上記非キーフレームの原画像に係るデータを保持する原画像データ保持手段と、
上記予測画像の誤りやすさに応じて、その誤りを訂正する誤り訂正符号の量を求める送信符号量算出手段と、
上記送信符号量算出手段が求めた誤り訂正符号の量に応じた誤り訂正符号のデータを、生成して保持する誤り訂正符号データ保持手段と、
上記送信符号量算出手段が求めた誤り訂正符号の量に応じて、非キーフレームの符号化データとして、上記訂正符号データ保持手段が保持しているデータ、又は、上記原画像データ保持手段が保持しているデータのいずれかを選択する符号化データ選択手段と、
上記符号化データ選択手段が選択したデータを非キーフレームの符号化データとして出力する符号化データ出力手段と
して機能させることを特徴とする動画像符号化プログラム。
【請求項6】
コンピュータを、
フレーム単位に符号化された動画像データのうちキーフレームを復号するキーフレーム復号手段と、
復号されたキーフレームを利用して、上記動画像データのうち非キーフレームの予測画像を生成する予測画像生成手段と、
上記動画像データにおいて、非キーフレームの符号化データが、非キーフレームの原画像に対する、上記予測画像の誤りを訂正する誤り訂正符号であった場合には、その誤り訂正符号と上記予測画像とを用いて、非キーフレームを復号する第1の非キーフレーム復号手段と
上記動画像データにおいて、非キーフレームの符号化データが、非キーフレームの原画像に係るデータであった場合に、その符号化データを復号する第2の非キーフレーム復号手段と
して機能させることを特徴とする動画像復号プログラム。
【請求項7】
動画像受信装置と、配信用動画像データを上記動画像受信装置に配信する動画像配信装置とを有する動画像配信システムにおいて、
上記動画像配信装置は、フレーム列を有する動画像信号を符号化して配信用動画像データを生成する動画像符号化装置を有し、
上記動画像受信装置は、上記動画像配信装置から与えられた配信用動画像データを復号する動画像復号装置を有し、
上記動画像符号化装置として、請求項1〜3のいずれかに記載の動画像符号化装置を適用し、
上記動画像復号装置として、請求項4に記載の動画像復号装置を適用したことを特徴とする動画像配信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−77879(P2011−77879A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227896(P2009−227896)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】