説明

包装容器、及びその製造方法

【課題】樹脂製のフィルム材を熱融着により製袋してなる包装容器を製造するに際し、熱融着に要する時間を少なくして製造効率(製造速度)の向上を図ることができるとともに、シール強度の調整も容易な包装容器、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】互いに接着されて、包装容器に製袋されるフィルム材1a,1bのうち、少なくとも一方の接着部位2、又は接着部位2に重なる位置に導電性塗料3を塗布しておき、それぞれの接着部位2の位置合わせをするとともに、高周波加熱により導電性塗料3を加熱して接着部位2を溶融させることによって、それぞれの接着部位2を熱融着により接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製のフィルム材を熱融着により製袋してなる包装容器、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックボトルやガラス瓶などの他の容器に、シャンプー、リンスなどの内容物を詰め替えて使用する詰替用の容器として、詰替パウチと称される包装容器が多用されるようになってきている。
そして、このような詰替パウチに代表されるように、樹脂製のフィルム材を熱融着によって製袋してなる包装容器が、上記のようなサニタリー用品に限らず、食品類などの種々の内容物を包装する包装容器としても広く用いられている。
【0003】
ここで、図1は、従来から知られている一般的な詰替パウチの一例を示しており、詰替パウチ10は、樹脂製のフィルム材からなる胴部11と底部12とを備え、胴部11の側部周縁には、底部12を折り畳んだ状態でサイドシール13が施されているとともに、胴部11と底部12との間には、ボトムシール14が施されている。そして、胴部11の左上コーナーには、斜め上方に突出するノズル部16が形成されており、先端部分17を切取り線18に沿って切り取った後のノズル部16には、内容物を他の容器に詰め替える際の注ぎ口が形成される。
【0004】
なお、図示する例において、詰替パウチ10の頂部は未シール部とされているが、通常、詰替パウチ10の頂部は、未シール状態で内容物の充填工程まで搬送され、内容物が充填された後にトップシールが施される。また、図示する詰替パウチ10は、内容物が充填されると、折り畳まれた状態の底部12が折り線15のところで拡がって円錐又は角錐状になり、自立させることが可能となる、いわゆるスタンディングパウチとして構成されている。
【0005】
ところで、このような詰替パウチ10は、特許文献1などに記載されているように、一般には、図5に示すように、詰替パウチ10の表面側を形成する表面材1aと、裏面側を形成する裏面材1bとの間に、底部12を形成する底部材1cを折り畳んで挟み込み、これらを重ねた素材原反1を順次繰り出しながら、ヒートシール加工、カット加工などの各工程を流れ作業的に行うことによって製造される。
【0006】
具体的には、図6に示すように、まず、素材原反1に対して、ボトムシール装置101によりボトムシール14を施すことによって、底部材1cが、表面材1aと裏面材1bとのそれぞれにヒートシールされて一体になり、折り線15で折り畳まれた底部12が形成される。
ついで、サイドシール装置102によりサイドシール13が施され、図1中右側のサイドシール13が施される側部周縁に相当する一工程前の部位と、図1中左側のサイドシール13が施される側部周縁に相当する一工程後の部位とが同時にヒートシールされる。これにより、表面材1aと裏面材1bとがサイドシール13により袋状に一体化されてヒートシール加工が完了し、最後に、カット装置105により、詰替パウチ10の輪郭線に沿ってカット加工を施すことによって、詰替パウチ10が製造される。
なお、図示する例では、製造効率を向上させるために、二つの詰替パウチ10が同時に製造されるようになっている。
【0007】
【特許文献1】特開平9−188311号公報(段落番号[0002])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記したような従来の技術において、ヒートシール加工を施す際には、シール装置101,102が備えるヒーティングバーをフィルム材の最も外側に接触させ、熱伝導により、フィルム材が重なり合っている面に設けられた接着層の樹脂を溶融させることによって、フィルム材をヒートシールしている。
【0009】
したがって、一般に、樹脂は熱伝導性に劣るため、ヒーティングバーにより印加された熱がフィルム材の外側から内側の接着層に伝わり、接着層の樹脂が溶融温度に達するまでには相当の時間がかかってしまう。また、ヒートシール後には、加熱された接着部位以外の樹脂の冷却にも時間を要することとなる。
さらに、ヒートシール加工が施されている間は、シール装置101,102との位置合わせのために、素材原反1の繰り出しを停止させなければならない。
【0010】
このため、前述した従来技術にあっては、ヒートシール加工に多くの時間が費やされてしまい、これが障害となって、製造効率(製造速度)の向上を図るには限界があるという問題があった。
また、熱伝導によって接着剤層の樹脂を溶融させているため、接着層の樹脂温度を制御するのは難しく、フィルム材どうしのシール強度の調整は、主にシール面積に依存することとなり、調整可能なシール強度の範囲が制限されてしまうという問題もあった。
【0011】
本発明は、以上のような従来の技術が有する問題を解決するために提案されたものであり、樹脂製のフィルム材を熱融着により製袋してなる包装容器を製造するに際し、熱融着に要する時間を少なくして製造効率(製造速度)の向上を図ることができるとともに、シール強度の調整も容易な包装容器、及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明に係る包装容器の製造方法は、樹脂製のフィルム材を熱融着により製袋してなる包装容器の製造方法であって、互いに接着される前記フィルム材の少なくとも一方の接着部位、又は接着部位に重なる位置に導電性塗料を塗布しておき、前記接着部位の位置合わせをするとともに、高周波加熱により前記導電性塗料を加熱して前記接着部位を溶融させることによって、前記接着部位を接着して前記フィルム材を製袋する方法としてある。
ここで、接着部位に重なる位置とは、フィルム材上の接着部位に近接する位置であって、接着部位に重なるような位置関係にあることをいう。
【0013】
このような方法とした本発明に係る包装容器の製造方法によれば、高周波加熱によって接着部位を非接触で加熱、溶融させることができ、従来のヒーティングバーを用いたヒートシールのように、フィルム材を熱融着させる際に、フィルム材の繰り出しを停止させる必要がなく、フィルム材をシームレスに移動させながら接着部位を接着して製袋することが可能となる。しかも、導電性塗料を接着部位、又は接着部位に近接する位置に重ねて塗布しておけば、熱伝導によって接着部位の樹脂を溶融させるまでに要する時間や、接着部位以外の部分を冷却するのに要する時間を短縮することも可能となり、その結果、製造効率(製造速度)を大幅に向上させることができる。
さらに、本発明に係る包装容器の製造方法によれば、導電性塗料の塗布膜の表面抵抗値により発熱量を制御することによって、フィルム材どうしの接着強度を容易に調整することができるとともに、導電性塗料の塗布パターンの通りにフィルム材を接着することができるため、複雑な型替えなしに接着パターンを変更することも可能となる。
【0014】
また、本発明に係る包装容器の製造方法は、前記フィルム材の少なくとも一方が、印刷層を含む複数の層を積層してなるとともに、前記印刷層と同一面に前記導電性塗料を塗布する方法とすることができる。
このような方法とすれば、印刷層を形成する際の印刷工程と同一工程で導電性塗料を塗布することができる。
【0015】
また、本発明に係る包装容器の製造方法は、前記フィルム材の少なくとも一方が表面層と内面層とを備え、前記表面層と前記内面層との対向面のうち少なくとも一方に前記導電性塗料を塗布するとともに、前記表面層と前記内面層とを接着剤層を介して積層させた方法とすることができる。
このような方法とすれば、導電性塗料自身がフィルム材から剥離してしまうのを防止するとともに、導電性塗料が凝集剥離を生じることなく、表面層と内面層との接着を維持することができるため、フィルム材の積層構成を任意に設定することが可能となる。
【0016】
このような本発明に係る包装容器の製造方法にあっては、光の透過性があることや、マイクロ波に対して適度な表面抵抗値を示すなどの点からから、前記導電性塗料に導電性高分子を用いるのが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る包装容器は、樹脂製のフィルム材を熱融着により製袋してなる包装容器であって、互いに接着される前記フィルム材の少なくとも一方の接着部位、又は接着部位に重なる位置に導電性塗料が塗布されており、高周波加熱により前記導電性塗料を加熱して前記接着部位を溶融させることによって、前記接着部位を接着して前記フィルム材を製袋してなる構成としてある。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、樹脂製のフィルム材を熱融着により製袋してなる包装容器の製造効率(製造速度)を、従来に比べて大幅に向上させることができることに加えて、フィルム材どうしの接着強度を容易に調整することができるとともに、複雑な型替えなしに接着パターンを変更することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
なお、図1は、本発明に係る包装容器の一実施形態として、詰替パウチの例を示す概略平面図である。また、図2は、本発明に係る包装容器の製造方法の一実施形態における製造工程を概念的に示す説明図である。
【0020】
図1に示す詰替パウチ10は、胴部11と底部12とから構成されており、胴部11をなす表面材1aと裏面材1bとの間に、底部12をなす底部材1cを折り畳んで挟み込み(図5参照)、これらの長尺状の素材原反1を繰り出しながら、熱融着、裁断などの各工程を流れ作業的に行うことによって製造することができるが、詰替パウチ10の形態そのものは前述した通りなので、詳細な説明は省略する。
【0021】
本実施形態において、詰替パウチ10を形成する表面材1a、裏面材1b、及び底部材1cは、それぞれ樹脂製のフィルム材からなっている。そして、互いに接着されるフィルム材のうち、少なくとも一方のフィルム材の接着部位2、又は接着部位2に重なる位置に導電性塗料3を塗布しておき、それぞれの接着部位2の位置合わせをするとともに、高周波加熱により導電性塗料3を加熱して接着部位2を溶融させることによって、それぞれの接着部位2が熱融着により接着されるようにしてある。
【0022】
より具体的には、図3に、図2のA−A断面に相当する表面材1aと裏面材1bの断面の概略を示すように、例えば、表面材1aと裏面材1bは、それぞれ表面層11a,11bと内面層12a,12bとを接着剤層13a,13bを介して積層することによって形成され、このとき、表面材1aの表面層11aの内面側には必要に応じて印刷層14aが設けられるが、この印刷層14aとともに、表面層11aの内面側の接着部位2と重なる位置に導電性塗料3を塗布しておく。
このようにして、予め用意しておいた表面材1aと裏面材1bを、それぞれの接着部位2が当接するように重ね合わせ、その状態で高周波を印加することにより導電性塗料3に誘導電流が流れて導電性塗料3が発熱し、これによって生じた熱が接着部位2を溶融して、表面材1aと裏面材1bのそれぞれの接着部位2が熱融着により接着される。
【0023】
また、表面材1aと裏面材1bのそれぞれと、底部材1cとの間でも同様にして熱融着させることができ、この場合、例えば、図4に、図2のB−B断面に相当する表面材1a、裏面材1b、及び底部材1cの断面の概略を示すように、互いに接着されるフィルム材の一方の接着部位2に重なる位置に導電性塗料3を塗布しておけばよい。
なお、図4に示す例では、裏面材1bと底部材1cとの間の熱融着は、裏面材1b側に導電性塗料3を塗布するようにしているが、このようにすれば、熱融着時に折り畳まれた底部材1cの間に遮熱板などを介在させなくとも、底部材1cどうしで熱融着してしまうのを避けることができる。
【0024】
このように、本実施形態によれば、表面材1a、裏面材1b、及び底部材1cのそれぞれを互いに接着させようとする部位に対応させて、所望の接着パターン通りに導電性塗料3を塗布しておくことで、高周波を印加することにより導電性塗料が発熱し、接着部位2がフィルム材の内部から加熱されて溶融することによって、互いの接着部位2を接着させることができる。
【0025】
したがって、例えば、図2に示すように、表面材1aと裏面材1bとの間に底部材1cを挟み込んだ素材原反1を繰り出して、高周波発生装置103内を通過させれば、高周波印加により導電性塗料3が発熱し、接着部位2が加熱、溶融されることにより、表面材1aと裏面材1bには、それぞれの接着部位2に底部材1cが熱融着されてこれらが一体となってボトムシール14が施される。そして、これと同時に、表面材1aと裏面材1bとの間でも、お互いの接着部位2が熱融着されてサイドシール13が施される。
【0026】
なお、図2に示す例において、サイドシール13が施されるに際し、図1中右側のサイドシール13が施される側部周縁に相当する一工程前の部位と、図1中左側のサイドシール13が施される側部周縁に相当する一工程後の部位とが同時に熱融着されるのは、前述した従来技術と同様である。
【0027】
素材原反1が高周波発生装置103内を通過して、その接着部位2が加熱、溶融した後には、フィルム材どうしの接着がより確実になされるようにするために、必要に応じて押圧ローラ104などにより素材原反1を狭圧するようにしてもよい。表面材1a、裏面材1b、及び底部材1cが互いに接着されたら、最後に、カット装置105により、詰替パウチ10の輪郭線に沿って素材原反1を裁断することによって、詰替パウチ10が製造される。
【0028】
以上のように、本実施形態によれば、高周波加熱によって接着部位2を非接触で加熱、溶融させることができるため、従来のヒーティングバーを用いたヒートシールのように、フィルム材を熱融着させる際に、フィルム材の繰り出しを停止させる必要がない。これにより、フィルム材をシームレスに移動させながら、接着部位2を熱融着により接着して製袋することが可能となる。
【0029】
しかも、導電性塗料3を接着部位2、又は接着部位2に近接する位置に重ねて塗布しておけば、熱伝導によって接着部位2の樹脂を溶融させるまでに要する時間や、接着部位2以外の部分を冷却するのに要する時間を短縮することも可能となり、その結果、製造効率(製造速度)を大幅に向上させることができる。
【0030】
さらに、本実施形態によれば、導電性塗料3を塗布してなる塗布膜の表面抵抗値を任意に設定して、導電性塗料3の発熱量を制御することにより、フィルム材どうしの接着強度を容易に調整することができるとともに、導電性塗料3の塗布パターンの通りにフィルム材を接着することができるため、複雑な型替えなしに接着パターンを変更することも可能となる。
【0031】
本実施形態で用いるフィルム材は、熱融着により互いに接着して包装容器の形態に製袋することができるものであれば、特に制限はない。
フィルム材に適した樹脂材料としては、例えば、結晶性ポリプロピレン、結晶性プロピレン−エチレン共重合体、結晶性ポリブテン−1、結晶性ポリ4−メチルペンテン−1、低−、中−、或いは高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)等のポリオレフィン類;ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体等の芳香族ビニル共重合体;ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン樹脂等のハロゲン化ビニル重合体;アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体の如きニトリル重合体;ナイロン6、ナイロン66、パラまたはメタキシリレンアジパミドの如きポリアミド類;ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート等のポリエステル類;各種ポリカーボネート;ポリオキシメチレン等のポリアセタール類等の熱可塑性樹脂等を挙げることができる。
これらの樹脂材料からなるフィルム材は、未延伸で用いるに限らず、一軸延伸、又は二軸延伸して用いることもできる。
【0032】
また、フィルム材は単層で用いてもよいが、図示する例のように、上記の樹脂材料を二種以上積層して構成することもできる。
例えば、延伸ナイロンフィルム、延伸ポリエステルフィルムなどを表面層とし、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルムを内面層とする二層構成とすることができるほか、さらに、上記の樹脂材料からなる樹脂フィルムを任意に積層させた三層以上の多層構成とすることもできる。
このような積層フィルムの製造に際しては、各層間に必要に応じて接着剤、アンカー剤を介在させることもできる。また、フィルム材には、高周波加熱に支障をきたさない範囲で、アルミニウム等の金属箔、金属又は金属酸化物の蒸着フィルム、紙などを中間層として積層することもでき、フィルム材の層構成は、包装容器に充填する内容物に応じて選択することができる。
【0033】
また、フィルム材には、必要に応じて印刷層を設けることができ、通常、印刷層は、多層構成とされたフィルム材の積層界面(図示する例では、表面層11aの内面側)に設けられるが、このとき、図示する例のように、導電性塗料3を印刷層14aと同一面に塗布するようにすれば、印刷層14aを形成する際の印刷工程と同一工程で導電性塗料を塗布することができるため好ましい。
【0034】
また、導電性塗料3は、フィルム材の接着部位2に直接塗布するようにしてもよいが、導電性塗料3は一般に熱硬化性であり、導電性塗料3自身がフィルム材から剥離してしまうことが考えられる。このため、導電性塗料3は、フィルム材からの導電性塗料3の剥離を防止する上で、多層構成とされたフィルム材の積層界面に塗布するのが好ましい。
例えば、図示する例のように、表面層11aと内面層12aとを備えて表面材1a(フィルム材)が構成されている場合、表面層11aと内面層12aとの対向面のうち少なくとも一方に、接着部位2と重なるように導電性塗料3を塗布するようにすることができる。
このとき、表面層11aと内面層12aは、その一方又は両方が二層以上からなっていてもよいが、導電性塗料3の凝集剥離によって、表面層11aと内面層12aとの接着が阻害されてしまうことが考えられる。このため、導電性塗料3が凝集剥離を生じることなく、表面層11aと内面層12aとの接着が維持されるように、少なくとも一方の対向面に導電性塗料が塗布された表面層11aと内面層12aとを接着剤層を介して積層させるのが好ましい。
このようにすれば、フィルム材の積層界面に導電性塗料を塗布することによってフィルム材の層構成が制限されてしまうのを有効に回避して、フィルム材の積層構成を任意に設定することが可能となる。
【0035】
なお、導電性塗料3を接着部位2に重なる位置に塗布する場合には、熱伝導によって接着部位2の樹脂を溶融させるまでに要する時間を短縮する上で、できるだけ接着部位2に近接する界面に塗布するのが好ましいが、仮に、フィルム材の最外面に導電性塗料3を塗布するようにしたとしても、本実施形態によれば、フィルム材をシームレスに移動させながら接着部位2を接着して製袋することができるため、それだけでも、製造効率(製造速度)を従来に比べて大幅に向上させることができる。
【0036】
また、本実施形態で用いる導電性塗料3としても、高周波を印加することによって発熱し、フィルム材の接着部位2を溶融させることができるものであれば、特に制限なく利用することができる。
導電性塗料3としては、例えば、黒鉛、銅、ニッケル、酸化インジウム等の無機系の導電性微粒子や、チオフェン、ピロール、フランを重合してなる複素五員環式化合物の重合体、ポリアニリン等の導電性高分子などをベースポリマー中に分散させるとともに、溶剤に溶かしてポリマー溶液としたものを用いることができる。導電性塗料3は、印加する高周波の周波数帯域に応じて、最適な表面抵抗値を示すものを適宜選択するが、光の透過性があることや、マイクロ波に対して適度な表面抵抗値を示すなどの点から、特にマイクロ波を印加する場合には、導電性高分子を用いるのが好ましい。
【0037】
なお、ベースポリマーや、溶剤には、この種の導電性塗料に用いられているものを利用することができる。例えば、ベースポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカルボジイミドなどを用いることができる。また、溶剤としては、水、炭化水素化合物、ハロゲン化炭化水素化合物、芳香族炭化水素化合物、エステル、エーテル、アミド、アルコール、ケトンなどを用いることができる。
【0038】
また、導電性塗料3を塗布する際には、導電性塗料3の塗布厚や濃度などにより、塗布膜の表面抵抗値を任意に設定することによって、導電性塗料3の発熱量を制御することができるが、その発熱量は、フィルム材の接着部位2の樹脂の融点や、印加する高周波の周波数などに応じて設定することができる。
例えば、フィルム材の接着部位2の樹脂が、ポリエチレンや、ポリプロピレンである場合には、160〜170℃程度に加熱することで熱融着が可能となるが、このとき、比較的高い2.45GHz程度の周波数帯域の高周波を印加するのであれば、塗布膜の表面抵抗値は10〜1000Ω/sq程度となるように調整することができ、比較的低い10〜100kHz程度の周波数帯域の高周波を印加するのであれば、塗布膜の表面抵抗値は10Ω/sq程度以下となるように調整することができる。
【0039】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【0040】
例えば、前述した本実施形態では、理解を容易にするために、包装容器として詰替パウチ10の例を具体的に示して説明するが、本発明が適用可能な包装容器の形態は特に制限されない。例えば、平袋状の包装容器など、特定の形態に関わらず、種々の形態に適用することができる。
【0041】
また、前述した実施形態では、詰替パウチ10を製造するにあたって、ノズル部16の先端部分17を切り取りやすくするための切取り線18を形成する工程についての説明を省略しており、このような切取り線18は、例えば、光学反射式のレーザーマーカーを使用して、フィルム材の表面に溝加工を施すことにより形成することができるが、本発明にあっては、このような包装容器の形態に応じた必要な工程を任意に付加することもできる。
【0042】
また、前述した実施形態で示す詰替パウチ10は、その頂部が未シール状態で内容物の充填工程まで搬送され、内容物が充填された後にトップシールが施されるが、このようなトップシールを施す場合においても、本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上説明したように、本発明は、樹脂製のフィルム材を熱融着により製袋してなる包装容器、及びその製造方法として、包装容器の形態に関わらず、広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る包装容器の一実施形態として、一般的な詰替パウチの例を示す概略平面図である。
【図2】本発明に係る包装容器の製造方法の一実施形態における製造工程を概念的に示す説明図である。
【図3】図2のA−A断面に相当する表面材と裏面材の断面の概略を示す説明図である。
【図4】図2のB−B断面に相当する表面材、裏面材、及び底部材の断面の概略を示す説明図である。
【図5】詰替パウチの製造に用いられる素材原反の構成の一例を示す説明図である。
【図6】従来の詰替パウチの製造方法における製造工程を概念的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1 素材原反
1a 表面材
11a 表面層
12a 内面層
13a 接着剤層
14a 印刷層
1b 裏面材
11b 表面層
12b 内面層
13b 接着剤層
1c 底部材
11c 表面層
12c 内面層
13c 接着剤層
2 接着部位
3 導電性塗料
10 詰替パウチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のフィルム材を熱融着により製袋してなる包装容器の製造方法であって、
互いに接着される前記フィルム材の少なくとも一方の接着部位、又は接着部位に重なる位置に導電性塗料を塗布しておき、
前記接着部位の位置合わせをするとともに、高周波加熱により前記導電性塗料を加熱して前記接着部位を溶融させることによって、前記接着部位を接着して前記フィルム材を製袋する
ことを特徴とする包装容器の製造方法。
【請求項2】
前記フィルム材の少なくとも一方が、印刷層を含む複数の層を積層してなるとともに、前記印刷層と同一面に前記導電性塗料を塗布する
請求項1に記載の包装容器の製造方法。
【請求項3】
前記フィルム材の少なくとも一方が表面層と内面層とを備え、前記表面層と前記内面層との対向面のうち少なくとも一方に前記導電性塗料を塗布するとともに、前記表面層と前記内面層とを接着剤層を介して積層させた
請求項1又は2のいずれか1項に記載の包装容器の製造方法。
【請求項4】
前記導電性塗料に導電性高分子を用いた
請求項1〜3のいずれか1項に記載の包装容器の製造方法。
【請求項5】
樹脂製のフィルム材を熱融着により製袋してなる包装容器であって、
互いに接着される前記フィルム材の少なくとも一方の接着部位、又は接着部位に重なる位置に導電性塗料が塗布されており、
高周波加熱により前記導電性塗料を加熱して前記接着部位を溶融させることによって、前記接着部位を接着して前記フィルム材を製袋してなる
ことを特徴とする包装容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−168147(P2007−168147A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−365859(P2005−365859)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】