説明

包装容器及びそれを成形するための金型

【課題】出荷作業者に過度の負担を強いることなく蓋部材を容器本体に固定し、開封を防止することのできる包装容器を安価に提供する。
【解決手段】蓋部材3に形成された係合凸部33と、容器本体2に形成された係合穴24を係合させて蓋部材3を容器本体2にロックする。蓋部材3の天板31において係合凸部33の上方位置には貫通孔34が形成され、容器本体2の側壁22の内部には連通孔25が形成されているので、係合凸部33と係合穴24の係合状態を確認することができる。また、簡素で安価な金型構成により、容器本体2と蓋部材3を成形可能となり、包装容器の製造コストを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品等の被包装物を搬送・保管するための包装容器及びそれを成型するための金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から食品保冷用の容器においては、断熱性に優れた発泡体から成る発泡容器が広く用いられている。このような発泡容器は、食品を収容するための容器本体と、容器本体の上端に装着される蓋部材とによって構成される。食品が収容された容器本体は、例えば、出荷前に冷蔵室内で複数段積重ねられた状態で保管され、このとき、容器内の食品は冷却される。その後、出荷にあたっては、それぞれの容器本体の上端に容器内の冷気を密封するための蓋部材が装着され、所定の仕向け地に向けて適宜搬送される。
【0003】
ところが、食品の流通過程において、一部の心ない者によって蓋部材が開封され、容器本体に収容された食品が盗み出されるといった、いわゆる荷抜き行為が実行される場合があり、損害を及ぼしている。そこで、一度剥がすとその痕跡が残る荷抜き防止用の粘着テープ等で容器本体と蓋部材との境界部分を全周に亘って被覆した後、出荷するという対策が実施されている。しかしながら、このような専用の粘着テープは、通常の粘着テープに比べて高価であるため、少なからず流通のコストアップを招来していた。また、蓋部材の開封を完全に防止するために、粘着テープを容器本体と蓋部材との境界部分の全周に亘って巻き回す必要があるため、出荷作業者に負担を強いることから、流通過程において簡単に実行できる荷抜き防止策が要望されている。なお、特許文献1には、不正開封を防止することができる密封容器が示されている。
【特許文献1】登録実用新案3108018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に示された技術は、その図3乃至図4に示された形態から明らかなように、例えば少量の食品等を包装するための比較的小型の包装容器に好適なものであり、そもそも大型の包装容器に適用できる技術ではない。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、出荷作業者に過度の負担を強いることなく蓋部材を容器本体に固定し、不正な開封を防止することができる包装容器を安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、
底板及び側壁を有し被包装物を収容する容器本体と、天板及び側壁を有し前記容器本体の側壁上部に装着される蓋部材とを備えた包装容器において、
前記蓋部材は、その相対向する側壁の内側面の一部に内方に突出形成された係合凸部と、この係合凸部の上方位置に前記天板を貫通して形成された貫通孔とを有し、
前記容器本体は、前記側壁の上部において前記蓋部材の側壁の内側面が当接される蓋当接部と、この蓋当接部の外側面に形成され、前記蓋部材が装着された状態において前記係合凸部が係合される係合穴と、前記底板から前記蓋当接部に亘って前記側壁の内部に形成され、前記係合穴と連通する連通孔を有し、
前記容器本体に前記蓋部材が装着されたとき、前記係合凸部と前記係合穴の係合により、前記蓋部材をロックして該蓋部材の開封を防止するものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の包装容器において、
前記係合凸部は、前記蓋部材が前記容器本体に装着される際に該容器本体の側壁上端に対して所定の迎角で当接され、該蓋部材の側壁を外方に、該容器本体の側壁を内方にそれぞれ弾性変形させる斜面と、該蓋部材の天板に対して平行に形成され、該蓋部材が前記容器本体に完全に装着されたとき該容器本体の係合穴の側面と係合される係合面とを有するものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の包装容器において、
前記貫通孔は、平面視で前記係合凸部と重複し、平面視で該係合凸部と同等かそれよりも広い領域に開口されているものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1又は請求項2に記載の包装容器において、
前記連通孔は、平面視で前記蓋当接部の外側面と重複し、平面視で前記係合穴と同等かそれよりも広い領域に開口されているものである。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の包装容器において、
前記容器本体の側壁には、該容器本体の外側から前記蓋部材の側壁の下端面を臨ませるための凹部が形成されているものである。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の包装容器において、
前記容器本体に対して前記蓋部材を固定するための粘着シールをさらに備え、
前記粘着シールは、
前記容器本体と前記蓋部材との境界に沿って形成されているミシン目と、該容器本体及び蓋部材の前記側壁から剥がされた場合、該側壁の表面を剥離させる粘着面を有し、
前記容器本体の側壁と前記蓋部材の側壁の境界を被って部分的に貼り付けられるものである。
【0012】
請求項7の発明は、
請求項3に記載の蓋部材を成型するためのキャビティ空間を区画する雄金型及び雌金型を備えた蓋部材成形用金型において、
前記雌金型は、前記キャビティ空間に突出して前記貫通孔を形成する貫通孔形成凸部を有し、この貫通孔形成凸部の先端には、前記係合面を形成するために型開き方向に垂直な端面が形成されているものである。
【0013】
請求項8の発明は、
請求項4に記載の容器本体を成型するためのキャビティ空間を区画する雄金型及び雌金型を備えた容器本体成形用金型において、
前記蓋当接部を成型するためのキャビティ空間は、前記雄金型によって区画され、
前記雌金型は、前記側壁を成形するためのキャビティ空間に突出して前記連通孔を形成する連通孔形成凸部を有し、
型閉じ時において、前記連通孔形成凸部が前記雄金型と当接されることにより、前記連通孔及び係合穴が形成可能とされるものである。
【0014】
請求項9の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の包装容器において、
前記蓋部材の側壁は、前記係合凸部の下部において、該側壁の内面側から凹状に形成され、周辺部より肉厚が薄い薄肉部を有するものである。
【0015】
請求項10の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の包装容器において、
前記蓋部材の側壁は、容器の高さ方向に平行に、該側壁の内面側から形成されたスリットを有しているものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、容器本体に蓋部材が装着されたとき、係合凸部と係合穴の係合により、蓋部材をロックして該蓋部材の開封を防止することができる。これにより、出荷作業時に粘着テープを巻き回す必要がなくなることから、作業者の負担を軽減することができる。また、高価な荷抜き防止用の粘着テープを用いる必要がないため、流通のコストダウンを図ることができる。また、容器本体に蓋部材が装着された状態においては、容器本体の蓋当接部によって貫通孔が塞がれることとなるので、包装容器内に埃等の異物が混入する虞もない。さらにまた、係合凸部と係合穴との係合状態を貫通孔及び連通孔から目視で確認できるので、蓋部材の装着作業を確実に行えるようになる。
【0017】
請求項2の発明によれば、容器本体の側壁上端に対して所定の迎角で当接される斜面を有し、蓋部材が容器本体に装着される際に、蓋部材の側壁が外方に、容器本体の側壁が内方にそれぞれ弾性変形されるので、蓋部材の装着を円滑に行うことができる。また、一旦蓋部材を完全に装着した後は、蓋部材の天板に対して平行に形成された係合面と容器本体の係合穴の側面と係合されるので、蓋部材の不意な開封を防止することができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、貫通孔が、平面視で係合凸部と重複し、平面視で該係合凸部と同等かそれよりも広い領域に開口されているので、蓋部材の天板の上面側から金型の一部をキャビティ空間内に突出させることにより、係合凸部を形成することができるようになる。これにより、金型構造を簡素化して包装容器のコストダウンを図ることができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、連通孔が、平面視で蓋当接部の外側面と重複し、平面視で係合穴と同等かそれよりも広い領域に開口されているので、容器本体の底板の下面側から金型の一部をキャビティ空間内に突出させることにより、係合穴を形成することができるようになる。これにより金型構造を簡素化して包装容器のコストダウンを図ることができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、容器本体の側壁には、容器本体の外側から蓋部材の側壁の下端面を臨ませるための凹部が形成されているので、該凹部から蓋部材の側壁の下端面に指先等をかけて上方に力をかけることにより、包装容器を容易に開封することができる。これにより、正当な開封作業を妨げないようにすることができる。
【0021】
請求項6の発明によれば、容器本体の側壁と蓋部材の側壁の境界に粘着シールが貼り付けられ、かつ粘着シールには容器本体と蓋部材との境界に沿ってミシン目が形成されているので、このミシン目の損傷を目視で確認するだけで、包装容器の開封の有無を判断することができる。これにより、不正な開封を抑止することができる。また、粘着シールの粘着面は、容器本体等の側壁から粘着シールが剥がされた場合、側壁の表面を剥離させ、該粘着面に転写させるので、再度、側壁に貼り付けることができない。従って、粘着シールの有無を確認するだけで包装容器の開封の有無を判断することができる。これにより、より一層、不正な開封を抑止することができる。また、粘着シールには容器本体と蓋部材との境界に沿ってミシン目が形成されているので、正当な開封作業を妨げとはならない。
【0022】
請求項7の発明によれば、スライドコアを用いることなく、蓋部材の側壁に係合凸部を形成することができる。これにより、簡素な金型構成で請求項3に記載の蓋部材を成形することが可能となり、包装容器のコストダウンを図ることができる。
【0023】
請求項8の発明によれば、スライドコアを用いることなく、容器本体の側壁に係合穴を形成することができる。これにより、簡素な金型構成で請求項4に記載の容器本体を成形することが可能となり、包装容器のコストダウンを図ることができる。
【0024】
請求項9の発明によれば、蓋部材の係合凸部の下部に薄肉部が形成されているので、薄肉部を外側から破壊することにより、係合凸部の近傍に指先を掛けるための指掛け用穴を形成することができる。従って、作業者はこの指掛け用穴に指を掛けることにより、係合凸部と係合穴との係合を解き易くすることができる。また、薄肉部は、側壁の内面側から凹状に形成されているので、蓋部材が容器本体に装着された状態では、薄肉部の存在を外側から窺い知ることができない。従って、部外者による不正な開封を防止することができる。
【0025】
請求項10の発明によれば、蓋部材の側壁には、容器の高さ方向に平行にスリットが形成されているので、スリットに沿って側壁を破壊することにより、蓋部材を開封することが可能となる。また、スリットは、側壁の内面側に形成されているので、蓋部材が容器本体に装着された状態では、スリットの存在を外側から窺い知ることができない。従って、部外者による不正な開封を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(第1実施形態)
本発明の一実施形態による包装容器について図面を参照して説明する。図1は包装容器の外観を示している。包装容器1は、被包装物を収容する容器本体2と、容器本体2の上部に装着される蓋部材3と、容器本体2に蓋部材3を固定するための粘着シール4等を備えている。容器本体2及び蓋部材3は、例えば、軽量で断熱性に富むポリスチレン等の発泡樹脂等によって形成されている。
【0027】
図2は容器本体2の構成を、図3は蓋部材3の構成をそれぞれ示している。容器本体2は、矩形の底板21及び底板21の4つの端縁から立設された側壁22を有している。蓋部材3は、矩形の天板31及び天板31の4つの端縁から立設された側壁32を有し、容器本体2の側壁22の上部に装着される。
【0028】
容器本体2の側壁22の上部には、蓋部材3の側壁32の内側面が当接される蓋当接部23が形成されている。蓋当接部23のうち長手方向において相対向する一対の蓋当接部23の外側面には、蓋部材3が装着された状態において蓋部材3の係合凸部33が係合される水平方向に開口した係合穴24が形成されている。係合穴24が形成されている一対の側壁22の内部には、高さ方向に開口した連通孔25が形成されている。連通孔25は、底板21から蓋当接部23に亘って形成され、係合穴24と連通する。連通孔25は、平面視で蓋当接部23の外側面と重複し、平面視で係合穴24と同等かそれよりも広い領域に開口されている。また、容器本体2の互いに隣接する側壁22の交差部(容器本体2の角部)には、容器本体2の外側から蓋部材3の側壁32の下端面を臨ませるための凹部26が形成されている。凹部26は、4箇所ある側壁22の交差部のうち、対角に位置する2箇所の交差部に形成されている。
【0029】
蓋部材3の長手方向において相対向する側壁32の内側面には、内方に突出した係合凸部33が形成されている。係合凸部33の上方には、貫通孔34が天板31を貫通して形成されている。貫通孔34は、平面視で係合凸部33と重複し、平面視で係合凸部33と同等かそれよりも広い領域に開口されている。また、側壁32の内側には、蓋当接部23が嵌合される嵌合溝35が形成されている。
【0030】
図4は、容器本体2の側壁22及び蓋部材3の側壁32の構造、並びに蓋部材3が容器本体2に装着される様子を示している。同図は、図2及び図3におけるA−A線断面を示す。蓋部材3の係合凸部33は、蓋部材3が容器本体2に装着される際に容器本体2の側壁22の上端に対して所定の迎角で当接される斜面33aと、蓋部材3の天板31に対して平行に形成された係合面33bを有している。図4(b)に示すように、斜面33aは、容器本体2に装着される際に容器本体2の側壁22の上端と当接され、蓋部材3の側壁32を外方に、容器本体2の側壁22を内方にそれぞれ弾性変形させる。図4(c)に示すように、係合面33bは、蓋部材3が容器本体2に完全に装着されたとき、容器本体2の係合穴24の側面と係合され、蓋部材3をロックする。容器本体2に蓋部材3が装着されたとき、係合凸部33と係合穴24の係合により、蓋部材3がロックされ、不意な開封が防止される。
【0031】
図5は粘着シール4の構成を、図6は包装容器1から粘着シール4の一部を剥がした状態を示している。粘着シール4は、4箇所ある容器本体2の側壁22の交差部のうち、凹部26が形成されていない交差部のみに部分的に貼り付けられる(図1参照)。粘着シール4は、長手方向に平行に、5mm程度の間隔を隔てて形成された3本のミシン目41、42、43と、容器本体2の側壁22及び蓋部材3の側壁32に貼り付けられる粘着面44を有している。粘着シール4は、中央のミシン目42が容器本体2と蓋部材3との境界に沿うように、側壁22、32に貼り付けられる。包装作業の現場においては、中央のミシン目42を容器本体2と蓋部材3との境界に正確に合致させるのは困難な場合がある。そこで、本実施形態においては、3本のミシン目41、42、43を平行に配設し、いずれかのミシン目が容器本体2と蓋部材3との境界に略合致するように構成されている。
【0032】
また、粘着面44には、粘着シール4が一旦容器本体2の側壁22及び蓋部材3の側壁32に貼り付けられた後、側壁22、32から引き剥がされた場合、側壁22、32の表面を剥離・転写させる程度の粘着力を有する糊が塗布されている。従って、図6に示すように、側壁22、32から粘着シール4を引き剥がそうとすると、粘着シール4の粘着面44には、側壁22、32の表面樹脂(図6中ハッチング部分にあったもの)が転写されるため、粘着面44の粘着力は著しく低下する。その結果、一度剥がした粘着シール4を再度側壁22、32に貼り付けることができない。なお、この粘着シール4は、容器本体2及び蓋部材3と同等のポリスチレン樹脂等により形成されている。従って、包装容器1を廃棄する際、粘着シールを剥がす必要はない。
【0033】
図7は、容器本体2を成型するための容器本体成形用金型の構成を示している。容器本体成形用金型60は、第1雄金型61a、第2雄金型61b及び雌金型62と、プレート63、64と、フレーム65、66と、基板67、68等によって構成されている。容器本体2を成型するためのキャビティ空間は、第1雄金型61a、第2雄金型61b及び雌金型62等によって区画される。第1雄金型61aは、第2雄金型61bに結合され、第2雄金型61bは、プレート63、フレーム65を介して基板67に結合・支持され、これらは雌金型62に対して一体的に移動される。雌金型62は、プレート64、フレーム66を介して基板68に結合・支持されている。容器本体2の蓋当接部23を成型するためのキャビティ空間は、第1雄金型61aの上部及び第2雄金型61bによって区画される。
【0034】
雌金型62は、容器本体2の係合穴24及び連通孔25を形成するための連通孔形成凸部62zを有している。連通孔形成凸部62zは、雌金型62の内底面から略垂直に立設され、第1雄金型61a、第2雄金型61bの型閉じ動作に伴い、容器本体2の側壁22を成形するためのキャビティ空間に突出する。図7に示すように、雌金型62に対して第1雄金型61a、第2雄金型61bが完全に閉じられたとき、雌金型62の連通孔形成凸部62zの外側面の先端部が第2雄金型61bの内側面と当接される。これにより、容器本体2の連通孔25及び係合穴24が形成可能とされる。
【0035】
図8は、蓋部材3を成型するための蓋部材成形用金型の構成を示している。蓋部材成形用金型70は、雄金型71及び雌金型72と、プレート73、74と、フレーム75、76と、基板77、78等によって構成されている。蓋部材3を成型するためのキャビティ空間は、雄金型71及び雌金型72等によって区画される。雄金型71は、プレート73、フレーム75を介して基板77に結合・支持され、これらは雌金型72に対して一体的に移動される。雌金型72は、プレート74、フレーム76を介して基板78に結合・支持されている。
【0036】
雄金型71は、蓋部材3の嵌合溝35を形成するための溝形成凸部71zを有し、雌金型72は、蓋部材3の嵌合溝35及び貫通孔34を形成するための貫通孔形成凸部72zを有している。雌金型72の貫通孔形成凸部72zは、雌金型72の内底面から略垂直に立設されている。また、雄金型71の溝形成凸部71zは、貫通孔形成凸部72zと平行に形成されている。溝形成凸部71z及び貫通孔形成凸部72zは、雄金型71の型閉じ動作に伴い、蓋部材3の天板31の端縁近傍を成形するためのキャビティ空間に突出する。図8に示すように、雌金型72に対して雄金型71が完全に閉じられたとき、雌金型72の貫通孔形成凸部72zの内側面が雄金型71の溝形成凸部71zの外側面と当接される。これにより、蓋部材3の嵌合溝35及び貫通孔34が形成可能とされる。また、雄金型71には、蓋部材3の係合凸部33の斜面33aを形成するための斜面形成部71yが形成され、雌金型72には、係合凸部33の係合面33bを形成するための端面72yが形成されている。端面72yは、雄金型71の型開き方向に垂直に形成されている。
【0037】
以上のように、本実施形態の包装容器1によれば、容器本体2に蓋部材3が装着されたとき、係合凸部33と係合穴24の係合により、蓋部材3をロックして開封を防止することができる。これにより、出荷作業時に包装容器の全周に亘って粘着テープを巻き回す必要がなくなることから、作業者の負担を軽減することができる。また、高価な荷抜き防止用の粘着テープを用いる必要がないため、流通のコストダウンを図ることができる。また、容器本体2に蓋部材3が装着された状態においては、容器本体2の蓋当接部23によって貫通孔34が塞がれることとなるので、包装容器1の内部に埃等の異物が混入する虞もない。また、係合凸部33と係合穴24との係合状態を貫通孔34及び連通孔25から目視で確認できるので、蓋部材3の装着作業を確実に行えるようになる。
【0038】
また、蓋部材3の係合凸部33が容器本体2の蓋当接部23の先端に対して所定の迎角で当接される斜面33aを有し、蓋部材3が容器本体2に装着される際に、蓋部材3の側壁32が外方に、容器本体2の側壁22が内方にそれぞれ弾性変形されるので、蓋部材3の装着を円滑に行うことができる。また、一旦蓋部材3を完全に装着した後は、蓋部材3の天板31に対して平行に形成された係合面33bと容器本体2の係合穴24の側面とが係合されるので、蓋部材3の不意な開封を防止することができる。また、蓋部材3の貫通孔34が、平面視で係合凸部33と重複し、平面視で係合凸部33よりも広い領域に開口されているので、蓋部材3の天板31の上面側から金型の一部をキャビティ空間内に突出させることにより、容易に係合凸部33を形成することができるようになる。これにより、包装容器1のコストダウンを図ることができる。また、容器本体2の連通孔25が、平面視で蓋当接部23の外側面と重複し、平面視で係合穴24よりも広い領域に開口されているので、容器本体2の底板21の下面側から金型の一部をキャビティ空間内に突出させることにより、容易に係合穴24を形成することができるようになる。これにより、包装容器のコストダウンを図ることができる。
【0039】
また、容器本体2の側壁22には、容器本体2の外側から蓋部材3の側壁32の下端面を臨ませるための凹部26が形成されているので、凹部26から蓋部材3の側壁32の下端面に指先をかけて上方に力をかけることにより、包装容器1を開封することができる。これにより、蓋部材3のロック機能を維持したまま、正当な開封作業を妨げないようにすることができる。また、容器本体2の側壁22と蓋部材3の側壁32の境界に粘着シール4が貼り付けられ、かつ粘着シール4には容器本体2と蓋部材3との境界に沿ってミシン目41、42、43が形成されているので、これらのミシン目41、42、43の損傷を目視で確認するだけで、包装容器1の開封の有無を判断することができる。これにより、不正な開封を抑止することができる。また、粘着シール4の粘着面44は、容器本体2等の側壁から粘着シール4が剥がされた場合、側壁22、32の表面樹脂を剥離させるので、再度、側壁22、32に貼り付けることができない。従って、粘着シール4の有無を確認するだけで包装容器1の開封の有無を容易に判断することができる。これにより、より一層、不正な開封を抑止することができる。また、粘着シール4には容器本体2と蓋部材3との境界に沿ってミシン目41、42、43が形成されているので、正当な開封作業を妨げとはならない。
【0040】
また、容器本体成形用金型60の雌金型62に連通孔形成凸部62zが形成されているので、スライドコアを用いることなく、容器本体2の側壁22に係合穴24を形成することができる。これにより、簡素な金型構成で容器本体2を成形することが可能となり、包装容器1のコストダウンを図ることができる。同様に、蓋部材成形用金型70の雄金型71に溝形成凸部71zが、雌金型72に貫通孔形成凸部72zがそれぞれ形成されているので、スライドコアを用いることなく、蓋部材3の側壁32に係合凸部33を形成することができる。これにより、簡素な金型構成で蓋部材3を成形することが可能となり、包装容器1のコストダウンを図ることができる。
【0041】
(第2実施形態)
図9は、本発明の第2実施形態に適用される蓋部材を示している。蓋部材8は、矩形の天板81及び天板81の4つの端縁から立設された側壁82を有し、容器本体2の側壁22の上部に装着される。蓋部材8の長手方向において相対向する側壁82の内側面には、蓋部材3の係合凸部33と同等の係合凸部83が形成され、係合凸部83の上方には、蓋部材3の貫通孔34と同等の貫通孔84が天板81を貫通して形成されている。また、側壁82の内面側には、蓋部材3の嵌合溝35と同等の嵌合溝85が形成されている。
【0042】
係合凸部83が形成された側壁82の下端中央部には、その周辺部より肉厚が薄い薄肉部86が形成されている。薄肉部86は、側壁82の内面側を凹状に成形することにより形成される。従って、蓋部材8が容器本体2に装着された状態では、薄肉部86の存在を外側から窺い知ることができない。本願発明においては、蓋部材8の係合凸部83と容器本体2の係合穴24とが係合しているので、蓋部材8の開封が、通常の包装容器と比べると困難とされる場合が生ずる。このような場合は、薄肉部86を外側から内方に押圧して破壊することにより、係合凸部83の近傍に指先を掛けるための指掛け用穴が形成される。従って、作業者はこの指掛け用穴に指を掛け、側壁82を斜め外側に引き上げることにより、係合凸部83と係合穴24との係合を解き易くすることができる。
【0043】
また、側壁82の4隅近傍には、容器の高さ方向に平行にスリット87が形成されている。スリット87は、側壁82の下端縁から嵌合溝85の溝底近傍に亘って側壁82の内面側に形成されている。従って、蓋部材8が容器本体2に装着された状態では、スリット87の存在を外側から窺い知ることができない。本発明においては、上述した薄肉部86を破壊して形成した指掛け用穴に指を掛けることによっても、なお係合凸部83と係合穴24との係合が強固で蓋部材8を開封することが困難な場合もある。このような場合は、スリット87周辺の側壁82の下端縁に力を掛けることにより、スリット87に沿って側壁82を破壊して蓋部材8を開封することが可能となる。
【0044】
上述したように、蓋部材8が容器本体2に装着された状態では、薄肉部86及びスリット87は、容器の外観に現れないので、包装容器の意匠に何ら影響を及ぼすものではなく、また不正な荷抜き行為を行おうとした部外者が窺い知ることができない。従って、そのような者が強引に蓋部材8を開封しようとすると、側壁82は容易に破壊されることとなり、荷抜き行為を早期に発見できるようになる。また、係合穴24、係合凸部83、薄肉部86及びスリット87の位置を適宜変更した複数種類の容器本体2、蓋部材8を予め準備しておくことにより、部外者は、荷抜き行為を行おうとした容器のどの位置に薄肉部86及びスリット87等が形成されているのか解らないため、荷抜き行為の抑止力となる。
【0045】
なお、本発明は上記実施形態の構成に限られることなく、少なくとも容器本体2の側壁22に係合穴24が、蓋部材3の側壁32に係合穴24に対応する係合凸部33がそれぞれ形成され、両者の係合により、容器本体2に装着された蓋部材3をロックするように構成されていればよい。
【0046】
また、本発明は種々の変形が可能であり、例えば、係合穴24、凹部26及び係合凸部33の位置、形状等は図2、3等に示したものに限られることなく、適宜変形することができる。また、粘着シール4の貼り付け位置は、図1等に示したように包装容器1の角部とするのが最も望ましいが、側壁22のうち係合凸部33等が形成されていない側面の略中央部分に貼り付けることとしてもよい。
【0047】
また、本発明は、粘着シール4の替わりに図10又は図11に示す粘着シールを用いることとしてもよい。図10に示す粘着シール90は、その長辺に対して略45゜の角度で互いに平行に形成されたミシン目91、92、93を有する点において、粘着シール4とは相違する。包装作業の現場においては、容器本体2と蓋部材3との境界に対して粘着シール4の長辺を平行となるように粘着シール4を貼り付けるのが困難な場合がある。そこで、粘着シール90は、容器本体2と蓋部材3との境界に対して粘着シール4の長辺を略45゜の角度で貼り付けることにより、ミシン目91、92又は93を容器本体2と蓋部材3との境界に合致させることが可能となる。
【0048】
図11に示す粘着シール95は、そのミシン目が平坦部96と、折れ線部97を有している点に特徴を有している。粘着シール95を用いた場合には、蓋部材3が容器本体2から開封されたとき、粘着シール95は、ミシン目の平坦部96及び折れ線部97に沿って破断される。従って、この破断された折れ線部97を目視で確認することによって、蓋部材3が開封されたことを容易に検知することができる。また、折れ線部97の存在により、不正な開封を抑止することができ、荷抜き行為の抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態による包装容器の概略構成を示す斜視図。
【図2】(a)は同包装容器の容器本体の構成を示す平面図、(b)は同側面図、(c)は同正面図。
【図3】(a)は同包装容器の蓋部材の構成を示す平面図、(b)は同(a)におけるB−B線断面図。
【図4】同容器本体の側壁及び同蓋部材の側壁の構造と、同容器本体に同蓋部材が装着される様子を示す断面図。
【図5】同包装容器に適用される粘着シールの構成を示す正面図。
【図6】同包装容器から粘着シールが剥がされる様子を示す斜視図。
【図7】同容器本体を成形するための容器本体成型用金型の構成を示す断面図。
【図8】同蓋部材を成形するための蓋部材成型用金型の構成を示す断面図。
【図9】本発明の別の実施形態による包装容器に適用される蓋部材を裏返して視た斜視図。
【図10】図5とは別の粘着シールの構成を示す正面図。
【図11】図10とは別の粘着シールの構成を示す正面図。
【符号の説明】
【0050】
1 包装容器
2 容器本体
3 蓋部材
4 粘着シール
22 側壁
23 蓋当接部
24 係合穴
25 連通孔
26 凹部
32 側壁
33 係合凸部
33a 斜面
33b 係合面
34 貫通孔
41、42、43 ミシン目
44 粘着面
60 容器本体成形用金型
61a 第1雄金型
61b 第2雄金型
62 雌金型
62z 連通孔形成凸部
70 蓋部材成形用金型
71 雄金型
71z 溝形成凸部
72 雌金型
72y 端面
72z 貫通孔形成凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板及び側壁を有し被包装物を収容する容器本体と、天板及び側壁を有し前記容器本体の側壁上部に装着される蓋部材とを備えた包装容器において、
前記蓋部材は、その相対向する側壁の内側面の一部に内方に突出形成された係合凸部と、この係合凸部の上方位置に前記天板を貫通して形成された貫通孔とを有し、
前記容器本体は、前記側壁の上部において前記蓋部材の側壁の内側面が当接される蓋当接部と、この蓋当接部の外側面に形成され、前記蓋部材が装着された状態において前記係合凸部が係合される係合穴と、前記底板から前記蓋当接部に亘って前記側壁の内部に形成され、前記係合穴と連通する連通孔を有し、
前記容器本体に前記蓋部材が装着されたとき、前記係合凸部と前記係合穴の係合により、前記蓋部材をロックして該蓋部材の開封を防止することを特徴とする包装容器。
【請求項2】
前記係合凸部は、前記蓋部材が前記容器本体に装着される際に該容器本体の側壁上端に対して所定の迎角で当接され、該蓋部材の側壁を外方に、該容器本体の側壁を内方にそれぞれ弾性変形させる斜面と、該蓋部材の天板に対して平行に形成され、該蓋部材が前記容器本体に完全に装着されたとき該容器本体の係合穴の側面と係合される係合面とを有することを特徴とする請求項1に記載の包装容器。
【請求項3】
前記貫通孔は、平面視で前記係合凸部と重複し、平面視で該係合凸部と同等かそれよりも広い領域に開口されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の包装容器。
【請求項4】
前記連通孔は、平面視で前記蓋当接部の外側面と重複し、平面視で前記係合穴と同等かそれよりも広い領域に開口されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の包装容器。
【請求項5】
前記容器本体の側壁には、該容器本体の外側から前記蓋部材の側壁の下端面を臨ませるための凹部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の包装容器。
【請求項6】
前記容器本体に対して前記蓋部材を固定するための粘着シールをさらに備え、
前記粘着シールは、
前記容器本体と前記蓋部材との境界に沿って形成されているミシン目と、該容器本体及び蓋部材の前記側壁から剥がされた場合、該側壁の表面を剥離させる粘着面を有し、
前記容器本体の側壁と前記蓋部材の側壁の境界を被って部分的に貼り付けられることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の包装容器。
【請求項7】
請求項3に記載の蓋部材を成型するためのキャビティ空間を区画する雄金型及び雌金型を備えた蓋部材成形用金型において、
前記雌金型は、前記キャビティ空間に突出して前記貫通孔を形成する貫通孔形成凸部を有し、この貫通孔形成凸部の先端には、前記係合面を形成するために型開き方向に垂直な端面が形成されていることを特徴とする蓋部材成形用金型。
【請求項8】
請求項4に記載の容器本体を成型するためのキャビティ空間を区画する雄金型及び雌金型を備えた容器本体成形用金型において、
前記蓋当接部を成型するためのキャビティ空間は、前記雄金型によって区画され、
前記雌金型は、前記側壁を成形するためのキャビティ空間に突出して前記連通孔を形成する連通孔形成凸部を有し、
型閉じ時において、前記連通孔形成凸部が前記雄金型と当接されることにより、前記連通孔及び係合穴が形成可能とされることを特徴とする容器本体成形用金型。
【請求項9】
前記蓋部材の側壁は、前記係合凸部の下部において、該側壁の内面側から凹状に形成され、周辺部より肉厚が薄い薄肉部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の包装容器。
【請求項10】
前記蓋部材の側壁は、容器の高さ方向に平行に、該側壁の内面側から形成されたスリットを有していることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の包装容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−161236(P2009−161236A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2441(P2008−2441)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(593025619)トーホー工業株式会社 (19)
【出願人】(591100828)株式会社共栄技研 (3)
【出願人】(508009884)川島商事株式会社 (1)
【Fターム(参考)】