説明

包装容器

【課題】 小袋を容器蓋内面に貼付した包装容器であって、安定した生産が可能であり、しかも電子レンジ加熱の際には急激な温度上昇やそれによる包装材料の損傷といった問題を回避することが可能な包装容器を提供する。
【解決手段】 開口を有する容体21と、容体21の開口を覆う蓋体22と、蓋体22の内面に剥離可能に熱溶着される袋体3とからなり、前記蓋体22の内面の少なくとも一部が前記袋体3と剥離可能に熱溶着し得る第1シーラント層221にて形成され、袋体3が(A)一方の面に前記蓋体22の内面に剥離可能に熱溶着し得る高融点シーラント層311を備え、他方の面に前記高融点シーラント層311の融点よりも30℃以上低い融点を有する低融点シーラント層313を備えたシートと、(B)一方の面に前記低融点シーラント層313に熱溶着可能な第2シーラント層321を備えたシート、とから形成された包装容器1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離可能な小袋を備える包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、加熱調理された包装食品が多く販売されるに至り、これら包装食品の多くは電子レンジによって加熱調理に供されるが、このような包装食品には酸素による変質や微生物の繁殖による腐敗を防ぐ目的から脱酸素剤が同包されるのが通常である。
【0003】
ここで、脱酸素剤としては安全性、酸素吸収効率、及びコスト等の観点から鉄粉類を主成分とするものが汎用されるが、上記のような電子レンジによる加熱調理が行なわれる場合に鉄粉類にマイクロ波が照射されると、過電流による急激な温度上昇やそれによる包装材料の損傷といった問題が生じる場合がある。このような事情を踏まえ、例えば特許文献1:特開平5−3776号公報には、マイクロ波耐性を有する脱酸素剤包装体を用いることにより、上記のような問題の発生を防止する技術が記載されている。
【0004】
しかし、上記特許文献1の脱酸素剤包装体はアルミニウム等の導電性薄膜をマイクロ波耐性層として脱酸素剤の周囲に用いるものであり、マイクロ波が直接鉄粉(脱酸素剤)に照射される場合に比べて上記のような問題が生じ難くなるとは考えられるものの、金属層を用いるものである以上、上記のような問題の生ずる可能性は残る。しかも、食習慣の多様化によって同じ包装食品に対して複数回の電子レンジ加熱が行なわれることもあり、上記のような問題が生じるおそれは益々大きくなっている。
【0005】
一方、特許文献2:特開2004−131112号公報には、弁当等の容器表面に調味品用小袋を貼付するに際し、調味品用小袋の弁当等の容器表面に接する部分の一部にのみ両面接着テープを介在させることにより、調味品用小袋を剥離可能に貼付することが可能となる旨記載されている。
また、脱酸素剤を容器内壁面に貼付する際に両面テープ、粘着剤、或いは接着剤等を採用し得ることについては特許文献3:特開平9−290869号公報、特許文献4:特開平11−276888号公報、特許文献5:特開2003−81353号公報、特許文献6:特開2004−53476号公報等に記載されている。
【0006】
しかしながら、特に食品等を収容する容器を設計するに際しては、容器内部に両面テープ、粘着剤、接着剤等を共存させることは内容物の汚染防止の観点、或いは衛生上の観点から避けられる傾向にある。電子レンジによる加熱調理が想定される場合には、当該傾向は特に顕著となる。
【0007】
特許文献7:特開2004−330451号公報には、鉄粉等の酸素吸収性物質を含む酸素吸収層を備えたLLDPE製の小袋が、大容器のLLDPE製内壁面に熱溶着された包装体が記載されている。この包装体については接着剤等を用いずに小袋が大容器内壁面に貼付されることから、上記した衛生上の問題等は起こらないものと考えられるが、当該包装体はレトルト食品用途を念頭に置くものであって、酸素吸収層を備えたLLDPE製小袋が強固にLLDPE製の内壁面に熱溶着されたものである。つまり、小袋を剥離させることは念頭になく、電子レンジ加熱が行なわれれば上記のような問題が生ずるものと予想される。
汎用の脱酸素剤等が接着剤等を用いることなく容器内に貼付された包装容器であって、しかも電子レンジ加熱の際に上記のような問題を回避し得る包装容器の開発が望まれていた。
【0008】
【特許文献1】特開平5−3776号公報
【特許文献2】特開2004−131112号公報
【特許文献3】特開平9−290869号公報
【特許文献4】特開平11−276888号公報
【特許文献5】特開2003−81353号公報
【特許文献6】特開2004−53476号公報
【特許文献7】特開2004−330451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、汎用の脱酸素剤等が包装された小袋を、接着剤等を用いることなく容器内に貼付した包装容器であって、安定した生産が可能であり、しかも電子レンジ加熱の際には急激な温度上昇やそれによる包装材料の損傷といった問題を回避することが可能な包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る包装容器は、開口を有する容体と、この容体の開口を覆う蓋体と、この蓋体の内面に剥離可能に熱溶着されると共に前記容体に収容される袋体とからなる包装容器であって、前記蓋体の内面の少なくとも一部が前記袋体と剥離可能に熱溶着し得る第1シーラント層にて形成され、前記袋体が以下の(A),(B)の各シート、(A)一方の面に、前記蓋体の内面に剥離可能に熱溶着し得る高融点シーラント層を備え、他方の面に、前記高融点シーラント層の融点よりも30℃以上低い融点を有する低融点シーラント層を備えたシート、(B)一方の面に、前記低融点シーラント層に熱溶着し得る第2シーラント層を備えたシート、を前記(A)シートの低融点シーラント層と前記(B)シートの第2シーラント層とを対向させて重ね合わせ周縁部を熱溶着して形成された袋体であることを特徴とする。
【0011】
なお、本発明において「シーラント層の融点」とは、JIS K7121に準拠して測定した場合に観察される主材樹脂成分の融解ピーク温度を意味するものである。
また、本発明において「主材樹脂」とは、構成する各種樹脂成分の中で最も大きな割合を占める樹脂成分であることを意味するが、通常は、樹脂成分の総量に占める含有率が50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、特に好ましくは95質量%以上の樹脂成分を意味する。当該割合としては、100質量%であってもよい。
【0012】
本発明における上記第1シーラント層及び/又は高融点シーラント層としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及びポリスチレン系樹脂から選ばれる1種又は2種以上を主材樹脂とする層であることが好適である。また、本発明における上記低融点シーラント層及び/又は第2シーラント層としては、ポリエチレン系樹脂を主材樹脂とする層であることが好適である。
【0013】
本発明におけるポリエチレン系樹脂としては、例えばエチレン単独重合体;エチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンその他のα−オレフィンから選ばれる1種又は2種以上との共重合体;エチレン−メタクリル酸共重合等のエチレン−不飽和カルボン酸共重合体;エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等のエチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体;エチレン−無水マレイン酸共重合体等のエチレン−不飽和カルボン酸無水物共重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物;エチレン−ビニルアルコール共重合体;エチレン−エポキシ化合物共重合体;アイオノマー樹脂;及びこれら各重合体よりなる群から選択された2種以上の混合物が挙げられる。
【0014】
なお、上記ポリエチレン系樹脂はいずれも、エチレンユニットを通常50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上の割合で含むものである。
また、上記ポリエチレン系樹脂には超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)が含まれる。
【0015】
本発明におけるポリプロピレン系樹脂としては、例えばプロピレン単独重合体;プロピレンとエチレンとの共重合体;プロピレンと1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンその他のα−オレフィンから選ばれる1種又は2種以上との共重合体;及びこれら各重合体よりなる群から選択された2種以上の混合物が挙げられる。
【0016】
なお、上記ポリプロピレン系樹脂はいずれも、プロピレンユニットを通常50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上の割合で含むものである。
また、上記ポリプロピレン系樹脂には結晶性ポリプロピレン(CPP)が含まれる。
【0017】
本発明におけるポリスチレン系樹脂としては、例えばスチレン単独重合体;スチレンとエチレンとの共重合体;スチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンその他のα−オレフィンとの共重合体;及びこれら各重合体よりなる群から選択された2種以上の混合物が挙げられる。
【0018】
なお、上記ポリスチレン系樹脂はいずれも、スチレンユニットを通常50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上の割合で含むものである。
【0019】
これらポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及びポリスチレン系樹脂における立体規則性、ポリマー鎖分岐の度合い、ポリマーを構成するモノマー種の数、並びにモノマーの配列等については、本願発明の目的を損なわない範囲であれば特に制限はない。立体規則性についてはイソタクチック、シンジオタクチック、アタクチックのいずれであってもよいし、モノマーの配列についてはブロックタイプ、ランダムタイプのいずれであってもよい。
【0020】
ここで、上記高融点シーラント層と上記第1シーラント層との熱溶着強度としては、JIS−Z0238に準拠して測定したヒートシール強度(180°剥離強度)として通常0.5〜3.5kgf/15mm、好ましくは1.0〜2.5kgf/15mmである。このヒートシール強度が大きすぎると袋体の剥離が困難となり本発明の目的が達成されない場合があり、一方、小さすぎると安定して蓋体の内面に袋体が固定されない、乃至固定不能となり本発明の目的が達成されない場合がある。
【0021】
また、上記低融点シーラント層と上記第2シーラント層との熱溶着強度としては、JIS−Z0238に準拠して測定したヒートシール強度(180°剥離強度)として通常0.3〜3.0kgf/15mm、好ましくは0.5〜1.5kgf/15mmである。このヒートシール強度が小さすぎると層間が剥離しやすく密封性が保ち難く、容器としての機能を果たさない場合がある。
【0022】
本発明において、上記高融点シーラント層と低融点シーラント層とは、融点の温度差として30℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上の温度差が確保されて組合わされたものである。
ここで、上記高融点シーラント層の融点としては通常130〜170℃、好ましくは150〜165℃である。また、上記低融点シーラント層の融点としては通常90〜130℃、好ましくは100〜125℃である。
【0023】
本発明における上記(A)シートは、一方の面に上述した高融点シーラント層を備え、他方の面に上述した低融点シーラント層を備えたシートであるが、これら高融点シーラント層と低融点シーラント層との間には単層あるいは複数層の中間層が介在しても良い。また、上記第1シーラント層には上記(A)シートに対向する側の裏面側に単層あるいは複数の層が積層されても良いし、上記(B)シートの第2シーラント層には上記(A)シートに対向する側の裏面側に単層あるいは複数の層が積層されても良い。
このような中間層や、さらに積層される単層又は複数層の素材としては、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ナイロン、ポリエステル、いわゆる接着性レジン等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0024】
なお、上述した各層には必要に応じて公知の添加剤、例えば抗酸化剤、アンチブロッキング剤、耐候剤、中和剤、難燃剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、分散剤、顔料等の有機充填剤や無機充填剤等を適宜配合することができる。
また、本発明において複数の層を積層する方法としては公知の方法を用いることができ、溶剤型接着剤を用いるドライラミネート法、溶融樹脂接着剤を用いる溶融ラミネート法、あるいは複数の層を溶融状態で積層し共押出し加工する共押出し法等を適宜採用することができる。
【0025】
以上のように本発明の包装容器を構成することにより、汎用の脱酸素剤等が包装された袋体を、接着剤等を用いることなく容器内に貼付した包装容器であって、安定した生産が可能であり、しかも電子レンジ加熱の際には急激な温度上昇やそれによる包装材料の損傷といった問題を回避し得る包装容器が提供される。
【0026】
即ち、上記第1シーラント層と高融点シーラント層とを剥離可能に熱溶着し得る組合せとすることにより、第1シーラント層が形成する蓋体の内面と、高融点シーラント層が表面の一面を形成する袋体とが剥離可能に熱溶着される結果、食品等の内容物を汚染することなく脱酸素剤等を包装する袋体と食品等の内容物とを同一容器内(開口を有する容体と、この容体の開口を覆う蓋体とで形成される容器内)で並存させることが可能となる。また、電子レンジによる加熱の際には袋体を蓋体の内面から剥離して取り外すことができるので、上記のような問題を回避し得る。
【0027】
なお、本発明における上述した袋体は、その表面にシーラント層を備えるものである。
ここで、容器をヒートシールにより作成しようとする場合には、一般に当業者はシーラント層を容器の表面側に用いようとは考えない。シーラント層で容器表面を構成するということは、容器自体をヒートシールにより作成しようとする際に容器表面を形成するシーラント層に熱溶着装置から直接熱が印加されることを意味し、熱溶着装置にシーラント層の一部が溶融して付着してしまうと、付着した当該シーラント層の一部を熱溶着装置から除去する手間等が生じて生産性が低下する可能性があるからである。また、本発明においては小容器(袋体)を更に別の基材面(蓋体の内面)に熱溶着させる必要があることから容器表面にシーラント層を備えるものであるが、袋体を作成する際、即ち、例えば脱酸素剤等を挟持して上記(A),(B)両シートの周縁部を熱圧着する際に、袋体表面を形成するシーラント層の一部が溶融して熱溶着装置(ダイロールやシールバー等)に付着してしまうと、上記生産性の低下問題のみならず、シーラント層の破損による蓋体内面へのシール不良問題が生ずるおそれがある。
この点、本発明においては袋体外壁面を形成する高融点シーラント層の融点を、袋体内壁面を形成する低融点シーラント層の融点との関係において特定の関係を有するよう設定するため、シーラント層の一部が溶融して熱溶着装置に付着してしまうおそれが可及的に低減され、上記のような生産性の低下問題、乃至、シール強度の低下問題が生じることが回避され、安定した袋体の製造、ひいては本発明の包装容器の安定した製造が可能となっている。
【0028】
また、本発明における袋体には、上述したような脱酸素剤(鉄粉などを主成分とする汎用の脱酸素剤)に代えて、或いは脱酸素剤と共に、その他の物品を内包させることも可能である。即ち、本発明における上記袋体は接着剤等を用いることなく容器蓋体に剥離可能に貼付されるものであるが、本発明の包装容器の用途や内容物の種類に応じ、例えば商品流通時や保管時には包装容器と共存させることが好ましく、しかも使用時には包装容器から剥離させることが好ましいような物品が想定される場合には、そのような物品を上記袋体の内容物とすることができる。
そのような、上記袋体に内包される物品としては、例えば七味唐辛子等の香辛料、具材、粉末スープ、液体スープ、ふりかけ等といった食品類や、ストロー、プラスチックフォーク、プラスチックスプーン等といった小物類、乾燥剤等といった薬剤類等が挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を併用することができるが、これらに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0029】
以上述べたように、本発明によれば、例えば汎用の脱酸素剤等が包装された袋体を、接着剤等を用いることなく容器内に貼付した包装容器であって、安定した生産が可能であり、しかも電子レンジ加熱の際には急激な温度上昇やそれによる包装材料の損傷といった問題を回避し得る包装容器が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施形態に制限されるものではない。
図1は本発明の包装容器の一例を示す包装容器1の概略斜視図であり、図2は図1に示す包装容器1のX−X部分断面図である。包装容器1は、図1に示されるように、食品等の主内容物を収容することが可能な大容器2と、内容物の酸化劣化を防止するための脱酸素剤といった副内容物を収容することが可能な袋体3とから構成されている。
【0031】
大容器2は、平面視略矩形状の底面と当該底面の4周縁から立設された側壁とを有し、上部に開口を有する容体21と、この開口を覆って容体21に接合される蓋体22とから構成されている。ここで、側壁の上部開口端には水平方向に延びて前記蓋体との接合代となる接合片部が備えられている。また、蓋体22は、図2に示されるように、蓋体22の大容器内壁面側から大容器外壁面側へ向けて順にポリエチレン系樹脂層(PE層)221、ナイロン層(Ny層)222、ポリエチレンテレフタレート層(PET層)223が積層された積層構造をなし、前記ポリエチレン系樹脂層(PE層)221が本発明における第1シーラント層に相当するものである。この第1シーラント層は、袋体3との熱溶着が可能な層である。
【0032】
袋体3は、蓋体22に剥離可能に熱溶着される基材シート31と、この基材シート31の前記蓋体22に対して裏面側に熱溶着される通気性シート32とから構成されている。基材シート31と通気性シート32とは、脱酸素剤といった副内容物33が両シートにより挟持されて収容されるように周縁部が熱溶着されている。この基材シート31は本発明における(A)シートに相当するものであり、通気性シート32は本発明における(B)シートに相当するものである。
【0033】
基材シート31は、図2に示されるように、蓋体22に面する側から上記副内容物に面する側へ向けて順にポリプロピレン系樹脂層(PP層)311、PET層312、PE層313が積層された積層構造をなし、前記PP層311が本発明における高融点シーラント層、PE層313が本発明における低融点シーラント層に相当する。
また、通気性シート32は同じく図2に示されるように、基材シート31に面する側から順にPE層321、紙層322、PE層323、PET層324が積層された積層構造をなし、前記PE層321が本発明における第2シーラント層に相当する。
【0034】
主内容物と副内容物とを伴う包装容器1の製造方法を例示すれば、まず第1に、容体21、蓋体22、基材シート31、及び通気性シート32を公知の方法を用いて個別に形成する。
第2に、基材シート31と通気性シート32とを、PE層313とPE層321とが対向するように配置し、副内容物33を挟持して周縁部を熱溶着することにより、副内容物33を収容した袋体3を形成する。
第3に、蓋体22のPE層221と袋体3の片表面を形成するPP層31とを対向させて重ねて熱溶着することにより、袋体3が剥離可能に熱溶着された蓋体22を形成する。なお、熱溶着に際しては蓋体22のPET層223側からのみ加熱してポイントシールを行なうことが、熱伝導の観点から好適である。
最後に、開口部を上方に向け、主内容物を充填した容体21の開口端に備えられた接合片と蓋体22とを、袋体3が容器内部に収容されるように重ね合わせ、開口部を覆うように蓋体22を接合する。これにより、副内容物を伴う袋体3と、主内容物とを共に収容した包装容器1が形成される。
【0035】
この包装容器1において、高融点シーラント層に相当するPP層311と、低融点シーラント層に相当するPE層313とが、融点ピーク温度として30℃以上の融点差を確保した組合せとして選定されていることにより、副内容物33を挟持して基材シート31と通気性シート32とが熱溶着される際、即ち袋体3を製造する際に、PP層311が溶融して熱ロールなどの熱溶着装置に付着する不都合を解消し得る。
また、高融点シーラント層に相当するPP層311と蓋体22の内壁面を形成するPE層221とが、剥離可能に熱溶着し得る組合せとして選定されているため、主内容物が加熱食品で副内容物が鉄粉等を主成分とする脱酸素剤であり、更に電子レンジ加熱がなされる場合であっても、電子レンジによる加熱調理の前に蓋体22を容体21から若干剥離させて包装容器1を開口し、袋体3を蓋体22から剥離させて包装容器1の開口から取り出すことにより、レンジアップ問題(マイクロ波により鉄粉が急激に加熱される問題、それに伴う容器の損傷といった問題)を回避し得る。
【0036】
なお、上記した実施形態において、容体21や蓋体22の形状や大きさ、層構成、大容器に収容される主内容物、袋体に収容される副内容物等については本発明の目的を損なわない範囲で適宜選定し得る。また、本発明の包装容器についての製造方法としても特に限定されるものではない。容体と蓋体との接合方法、熱溶着部の位置、大きさ(シール径)、熱溶着条件等についても適宜設定可能である。
更に、副内容物が脱酸素剤等である場合には上記(B)シートとして通気性シートを用いることが好適であるが、副内容物の種類により(B)シートを適宜選定し得、別個の食品(調味品等)を副内容物とする場合には通常の包装用シートや、いわゆるガスバリア性シート等を採用することも可能である。
【実施例】
【0037】
以下、参考例、実施例および比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0038】
[参考例1〜5]
PET/Ny/LLDPEの3層構造を有する積層体を蓋体として作成し、この蓋体のLLDPE面と下表1中に示す各ポリプロピレン系樹脂フィルムとの熱溶着適性を評価した。ここで、上記蓋体の構成素材としてPETとしては一般的なPETフィルム(フィルム厚み12μm、融点252℃)、Nyとしてはユニチカ(株)製Nyフィルム(フィルム厚み15μm、融点220℃)、LLDPEとしては東セロ(株)製共押出多層PEフィルム(フィルム厚み30μm、融点127℃)を用いた。また、上記蓋体はこれら各フィルムをドライラミネート法(接着剤としては脂肪族エステル系接着剤を用い、固形分塗工量3.5g/m2で塗工し、溶媒を揮発させた後に貼合し、エージングを行なう方法)にて作成した。
上記のように作成した蓋体のLLDPE面に表1中に示すポリプロピレン系樹脂フィルムを重ね、蓋体のPET層側から加熱してLLDPE層とポリプロピレン系樹脂フィルムとを熱溶着した。熱溶着条件としては圧力2kgf/cm2,時間1秒で直径6mmのポイントシールとし、PET層側からのみ加熱する方式とした。得られた熱溶着体の溶着強度を、JIS−Z0238に準拠したヒートシール強度(180°剥離強度)として測定した。結果を下表2に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
[評価]
◎:熱溶着可能温度、熱溶着強度のバランスが適切。
○:熱溶着可能温度はやや高めであるが、熱溶着強度は適切。
△:熱溶着可能温度がやや低めの温度範囲にまで拡がり、熱溶着時に熱溶着装置への付着の危険性がある。
×:熱溶着可能温度が高めで、且つ熱溶着強度が他のフィルムに比べ弱いため選定せず。
【0042】
[実施例1〜5,比較例1,2]
上表1に示す素材及び以下に示す素材を用い、下表3に示す積層順序を備えた接合体(蓋体と袋体との接合体)を作成した。
表3中に示す蓋体は上記参考例と同様に作成した。また、基材シート並びに通気性シートをそれぞれ作成後、脱酸素剤を両シートに挟持し、表3中に示す条件で熱溶着して袋体を作成した。ここで、第5層を形成するPETとしては一般的なPETフィルム(フィルム厚み12μm、融点252℃)、第8層を形成する紙としては上質紙(20〜50g/cm2)、第9層を形成するPEとしてはLLDPEフィルム(フィルム厚み20μm、融点115.9℃)、第10層を形成するPETとしては一般的なPETフィルム(フィルム厚み12μm、融点252℃)を用いた。更に、この袋体と上記蓋体とを表3中に示す条件で熱溶着することにより上記接合体を作成した。得られた接合体について、袋体の製造安定性や熱溶着強度等を評価した。結果を表3に併記した。
【0043】
【表3】

【0044】
[熱溶着強度]
JIS−Z0238に準拠したヒートシール強度(180°剥離強度)として測定した。
[袋体の製造安定性]
○:第6層と第7層との熱溶着強度が0.3kgf/15mm以上であると共に、熱溶着時に熱溶着装置側に第4層(高融点シーラント層)の素材が付着しなかった場合を○と判定した。
×:第6層と第7層との熱溶着強度が0.3kgf/15mm未満である場合、及び/又は、熱溶着時に熱溶着装置側に第4層(高融点シーラント層)の素材が付着した場合を×と判定した。
【0045】
表3において、実施例5の積層構成のうち第6層の素材を表1のフィルムuに変更した比較例1においては、実施例5と同様の熱溶着条件では第6層と第7層との熱溶着ができず(即ち、袋体が製袋し得ず)、熱溶着し得る程度に熱溶着条件を変更する(シール温度を高くする)と、熱溶着時の熱溶着装置側への第4層の付着が生じて安定した製袋が出来ず、本発明の目的を達成し得ない結果となった。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一の実施形態を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示す包装容器1のX−X部分断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 包装容器
2 大容器
21 容体
22 蓋体
221 PE層(第1シーラント層)
3 袋体
31 基材シート
311 PP層(高融点シーラント層)
313 PE層(低融点シーラント層)
32 通気性シート
321 PE層(第2シーラント層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する容体と、この容体の開口を覆う蓋体と、この蓋体の内面に剥離可能に熱溶着されると共に前記容体に収容される袋体とからなる包装容器であって、前記蓋体の内面の少なくとも一部が前記袋体と剥離可能に熱溶着し得る第1シーラント層にて形成され、また、シーラント層の融点を下記のように定義した場合に前記袋体が以下の(A),(B)の各シート、
(A)一方の面に、前記蓋体の内面に剥離可能に熱溶着し得る高融点シーラント層を備え、他方の面に、前記高融点シーラント層の融点よりも30℃以上低い融点を有する低融点シーラント層を備えたシート、
(B)一方の面に、前記低融点シーラント層に熱溶着し得る第2シーラント層を備えたシート、
を前記(A)シートの低融点シーラント層と前記(B)シートの第2シーラント層とを対向させて重ね合わせ周縁部を熱溶着して形成された袋体であることを特徴とする包装容器。
[シーラント層の融点]
JIS K7121に準拠して測定した場合に観察される、シーラント層中に主材樹脂として含まれる成分の融解ピーク温度。
【請求項2】
前記高融点シーラント層と前記第1シーラント層との組合せが、一方がポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及びポリスチレン系樹脂よりなる群から選択される1種又は2種以上を主材樹脂として形成される層であり、他方が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及びポリスチレン系樹脂よりなる群から選択される1種又は2種以上を主材樹脂として形成される層である組合せである請求項1記載の包装容器。
【請求項3】
前記高融点シーラント層と前記第1シーラント層との熱溶着強度が、JIS−Z0238に準拠して測定したヒートシール強度(180°剥離強度)として0.5〜3.5kgf/15mmである請求項1又は2記載の包装容器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−341852(P2006−341852A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−166350(P2005−166350)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【出願人】(000116297)ヱスビー食品株式会社 (40)
【Fターム(参考)】