説明

包装容器

【課題】十分な密封性を有するとともに、容器内部の内圧が上昇すると、手を加えることなく通気路が形成され、この通気路を通して蒸気を逃がすことのできる包装容器の提供。
【解決手段】開口部の周縁にフランジ部が形成された容器本体11と、開口部を塞ぐ蓋材21とを備えた包装容器1であって、蓋材21はシール部14側の第1層22と、この第1層22に接合層23を介して積層された第2層24とを有し、接合層23は、接合強度が強い高ラミネート領域23Aと接合強度が低い低ラミネート領域23Bに分けられる。包装容器1を電子レンジ等で加熱すると、低ラミネート領域23Bに対応する第1層22と第2層24とが剥離して蒸気を外部に逃がす通気路が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フランジ部が形成された容器本体に蓋材が設けられた包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品等の包装形態としては、当該食品等を収納ないし充填した後、容器本体の開口部周縁に設けられたフランジ部とフィルム状の蓋材とをヒートシールして密封包装した包装容器がある。この包装容器では、収納された食品等を取り出す際にあっては蓋材を容器本体から剥離する。
近年では、電子レンジを用いて、包装容器に収納されている食品等を簡便に加熱調理することが広く行われている。このような電子レンジ用食品等の包装容器を電子レンジで加熱する際には、温度上昇における包装容器内部の圧力上昇による包装容器の破裂を防止すべく、通常は、利用者が加熱前に蓋材の一部分に小孔を空けたり、または蓋材を剥がしたりして空気抜き部分を形成して、その後に電子レンジ加熱が行われていた。
【0003】
しかしながら、加熱前のこのような作業は結構手間のかかるものであり、また、この作業をせずに電子レンジによる加熱を誤って行うと、内圧が急激に上昇し、容器や電子レンジが破損してしまう懸念がある。従って、このような手間のかかる作業を行わなくても、包装容器内部の圧力が上昇すると包装容器の一部が自動的に開封し、そこから蒸気を逃がすような技術が検討されている。
【0004】
従来、複数の合成樹脂層を備えて蓋体を構成し、この蓋体の互いに隣接する一組の合成樹脂層の間に通気路を形成し、この通気路と容器内部空間とを連通させるために容器内部側の合成樹脂層に切れ目を設け、一方、容器外部へ続く通気路出口は、粘着層をもって機密状態に閉止する包装容器がある(特許文献1)。この包装容器では、加熱により容器内部の圧力が上昇すると、切れ目から流入した高圧蒸気が粘着層を剥離開口して蒸気を外部に排出する。
また、蓋体と容器本体を密封している熱接着部を容器の内側に張り出させ、この張出部に切刃もしくは切欠を有する密封容器も提案されている(特許文献2)。この密封容器では、内側に位置する張出部の熱接着部が先に剥離するので、容器の内部と外部とが切刃もしくは切欠によって連通する。
【0005】
【特許文献1】特開平8−85580号公報
【特許文献2】特開平11−171261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、最初から蓋体の容器内部側の合成樹脂層に切れ目を形成しているので、切れ目のない場合と比べて耐圧性が劣り、製造段階において蓋が破断するなどの問題がある。
また、特許文献2では、蓋材と容器本体を密封している熱接着部の張出部に切刃もしくは切欠が設けられており、容器内圧上昇による蓋材と容器本体の剥離を可能にするためには、熱接着部の剥離強度を小さくする必要がある。しかし、剥離強度を小さくすると、十分な密封性を確保できなくなるという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、十分な密封性を有するとともに、容器内部の内圧が上昇すると、手を加えることなく通気路が形成され、この通気路を通して蒸気を逃がすことのできる包装容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の包装容器は、開口部周縁にフランジ部が形成された容器本体と、前記開口部を塞ぐとともに前記フランジ部との間をシール部でシールされた蓋材とを備え、前記容器本体と前記蓋材との少なくとも一方は前記シール部側に設けられた第1層と、この第1層に接合層を介して積層された第2層とを有し、前記接合層は前記第1層との接合強度が強い高ラミネート領域と前記第1層との接合強度が低い低ラミネート領域とを備え、この低ラミネート領域と接合される前記第1層には前記容器本体と前記蓋材との間の空間に許容値以上の圧力が生じた際に切断が開始されて前記低ラミネート領域まで達する薄肉部が形成され、前記低ラミネート領域は、その外端縁が外部に露出していることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、食品等の内容物が収納された包装容器を電子レンジ等でそのまま加熱すると、その加熱によって容器の内圧が高まり、この内圧により薄肉部に切れ目が入る。この切れ目から出る蒸気により、第1層と第2層との間に設けられた接合層のうち低ラミネート領域にある第1層と第2層とが剥離され、この剥離によって容器外部へと続く通気路が形成される。この通気路によって容器内部の蒸気を外部に排出することで、容器が破裂することがない。
従って、本発明では、第1層の破断を開始するために従来のような切れ目を形成していないので、切れ目から誤って破断することがなく、十分な密封性を発揮できる。
また、本発明では、通気路が第1層と第2層の間に形成されることから、シール部の剥離強度を小さくする必要がないので、包装容器の密封性を十分に確保でき、密封性の問題も解決できる。
【0010】
本発明の包装容器は、前記第1層、前記第2層及び前記接合層は前記蓋材に設けられている構成が好ましい。
この発明によれば、蓋材は、第1層、接合層及び第2層を積層したシートから成形され、蓋材は略平面状に形成されることから、薄肉部を正確に第1層に形成することができる。これに対して、第1層、接合層及び第2層を容器本体に設けることにすると、内容物を収納するための空間を形成するために容器本体は積層したシートをプレス等の曲げ加工をするために、その加工後の薄肉部の薄さが加工前に比べて変化することになり、最悪、薄肉部が誤って破断する可能性もある。そのため、蓋材に第1層、接着層及び第2層を設ける本発明では、薄肉部の成形が正確に行えることができ、薄肉部が薄すぎて誤って容器本体が破断したり、薄肉部が厚すぎて包装容器の内部に大きな圧力がかかっても第1層と第2層とが剥離せず蒸気を外部に逃がすことができないという不都合を回避することができる。
【0011】
本発明の包装容器は、前記容器本体には、その内周面から前記開口部の中心に向かって突出するとともに前記蓋材をタイトシールするための凸部が設けられるか、又は、容器本体の底部から蓋材に向かって突出する凸部が設けられ、この凸部の前記タイトシール部と隣接した位置に前記薄肉部が形成されている構成が好ましい。
【0012】
この発明によれば、薄肉部がタイトシール部とは隣接した位置に形成されているので、上昇した容器内圧により薄肉部周辺の蓋材が持ち上げられることになり、より強い圧力が薄肉部に集中する。そのため、薄肉部に切れ目が入りやすくなり、低ラミネート領域に対応する第1層と第2層とが容易に剥離され、内部の蒸気が確実に外部に排出される。
【0013】
本発明の包装容器において、前記凸部は、前記蓋材と対向する面が前記フランジ部と略同一面を形成している構成が好ましい。
【0014】
この発明によれば、凸部の蓋材と対抗する面がフランジ部と略同一面上にあることから、蓋材と容器本体とのシールと、タイトシールとを同時にできるだけでなく、蓋材の外層面に凸凹が形成されないので、運搬時や陳列時において包装容器を重ねたときの安定性を保つことができる。
【0015】
本発明の包装容器において、前記容器本体は、前記蓋材と接する表面剥離層と、この表面剥離層と接する基材層とを備え、前記表面剥離層と前記基材層との層間剥離強度よりも前記表面剥離層と前記蓋材との層間剥離強度が強くされ、前記フランジ部には、前記シール部より内周側に前記表面剥離層を表面から前記基材層の表面に達するまで切り込まれた内周切込部が形成されている構成が好ましい。
【0016】
この発明によれば、開封のために、蓋材の外周部を容器本体に対して引っ張ると、容器本体の表面剥離層が基材層に対して剥離し、この剥離が内周切込部まで達すると、蓋材と容器本体とが容易に剥がれることになる。
従って、蓋材と容器本体をシールする面と開封時の剥離面が異なるため、表面剥離層と蓋材との層間剥離強度を大きくして十分な密封性を確保しても問題がないので、包装容器の密封性に影響を与えることなく容易に開封することができる。また、フランジ部のシール部内側に設けられた内周切込部によって、剥離された表面剥離層が分断されるので、易開封性を得られる。
【0017】
本発明の包装容器において、前記フランジ部には、前記シール部より外周側に前記表面剥離層の表面から前記基材層の表面に達するまで切り込まれた外周切込部が形成されている構成が好ましい。
この発明によれば、開封時には、外周切込部よりシール部の剥離が始まるので、開封を確実にかつ容易に行うことができる。
【0018】
本発明の包装容器において、前記タイトシール部は、前記シール部よりも深く形成される構成が好ましい。
この発明によれば、シールにより蓋材のタイトシール部の第1層が薄くなり、さらにタイトシールされた部分がフランジ部より内側にあるため、加熱されて内圧が上昇すると薄肉部に圧力が集中する。それにより、薄肉部で第1層が破断し、第1層と第2層の剥離が開始される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
[第一実施形態]
図1は本実施形態にかかる包装容器の概略図を示す。図1(A)は密閉された状態の包装容器を示す斜視図、図1(B)は一部が開封された状態の包装容器を示す斜視図である。図2は、図1(A)の断面図であり、図3は図1(B)の断面図である。
【0020】
図1から図3において、包装容器1は、内容物Pが凹部に収納される平面略円形状の容器本体11を備え、この容器本体11は、その中心部に平面略円形に形成された開口部12を塞ぐため蓋材21が開口部12の周縁に配設されたフランジ部13にヒートシールされている。このフランジ部13と蓋材21とのヒートシールは環状のシール部14で行われる。
【0021】
フランジ部13は、蓋材21とヒートシールされるシール部14の内周側に内周切込部19が形成されている。この内周切込部19は、開口部12と略同心円上に環状に形成されている。
また、容器本体11には、フランジ部13の内周面から開口部12の中心に向かって突出した凸部15が形成されている。この凸部15は蓋材21に対する面がフランジ部13と同一になるように形成され、かつ、蓋材21とは反対側が容器本体11の底部に達している。
このような立体的な形状は真空成形、圧空成形、射出成形、ブロー成形、押し出し成形などの成形方法で形成することができる。なお、凸部15を有しない包装容器1を前述の成形方法で形成し、これとは別に成形した凸部15を容器本体11に貼り付けてもよい。
【0022】
容器本体11は、表面剥離層17と基材層18とからなる多層シートで形成され、表面剥離層17と基材層18との間の剥離強度は、表面剥離層17と蓋材21とのシール部14の剥離強度より小さく形成されている。なお、内周切込部19の先端は表面剥離層17を貫通して基材層18まで達している。
表面剥離層17を構成可能な樹脂は、ヒートシール性を有する材料とすることが好ましく、例えば、ポリプロピレン(PP)系樹脂、ポリエチレン(PE)系樹脂等のポリオレフィン系樹脂や非晶性ポリエチレンテレフタレートを使用することが好ましい。表面剥離層17の厚さは10μm〜200μmが好ましいが、容器の大きさ、用途によって異なる。
【0023】
基材層18の構成材料としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等のオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂等の材料、エチレンビニルアルコール共重合体及びこれらのブレンド材料の単層シートまたは積層シートを使用することができる。積層シートには層の間に接着層、酸素吸収樹脂層を設けることもできる。ここで、接着層は無水マレイン酸変性PP、その他の材料を用いることができる。
【0024】
例えば、本実施形態では、容器本体11の層構成を次のものとすることができる。例えば、(1)厚さ20μm〜150μmの高密度ポリエチレン(HDPE)の表面剥離層と厚さ100μm〜2500μmのポリプロピレン層とからなる積層シート、(2)厚さ20μm〜150μmのポリプロピレンの表面剥離層と厚さ50μm〜500μmのポリプロピレン及びポリエチレンの層と厚さ100μm〜2500μmのポリプロピレン層とからなる積層シートを例示できる。
これらの積層シートの製造は、共押出し、熱ラミネーション、ドライラミネーション等で行うことができ、さらには、これらを段階的に組み合わせることでも行うことができる。
【0025】
蓋材21は、シール部14側に設けられた第1層22と、この第1層22に接合層23を介して積層された第2層24とを有する。
第1層22は、例えば、L−LDPEを含むLDPE(低密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、その他の材料を使用することができる。
第2層24は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、二軸延伸ナイロンフィルム(O−Ny)等をからいずれか1つの層を用いることや、これらの層を積層する(図では2層)ものでもよい。
接合層23は、例えば、ポリエステル系のドライラミネート用接着剤からなり、接合強度が強い高ラミネート領域23Aと、接合強度が低い低ラミネート領域23Bとを有している。
低ラミネート領域23Bと高ラミネート領域23Aとの接着力を変えるには、接着剤の厚みを変える。つまり、低ラミネート領域23Bは高ラミネート領域23Aよりも接着剤の厚さを薄くして、接合強度を低くしている。
図4は包装容器1のうち蓋材21の第2層24の一部が破断され、低ラミネート領域23Bと高ラミネート領域23Aとの区画が示されている。
図4に示される通り、低ラミネート領域23Bは、その一端側が凸部15の周囲を覆うとともに、その他端側が蓋材21の外端縁の一部を含んでいる。蓋材21の平面上において低ラミネート領域23B以外の領域が高ラミネート領域23Aとされる。なお、蓋材21の外周縁の一部には開封開始部25が設けられている。
【0026】
図5には本実施形態の要部が拡大して示されている。図5において、平面視で凸部15が蓋材21の低ラミネート領域23Bに含まれる位置において容器本体11と蓋材21とがタイトシール部26でタイトシールされている。
このタイトシール部26は、凸部15の蓋材21と対向する面に設けられている。第1層22のタイトシール部26に隣接して薄肉部22Aが形成されている。この薄肉部22Aは、包装容器1の内部に所定の圧力がかかった際に破断できる程度まで薄く形成されている。
【0027】
本実施形態の包装容器1を製造する方法について説明する。
まず、表面剥離層17と基材層18とを有する多層シートを製造する。この多層シートを図示しない凹状金型とフランジ押さえ及びプラグとの間に送り、この状態でフランジ押さえ及びプラグを金型側に移動させることで、内容物Pを収納する凹部にフランジ部13と凸部15とが形成された容器本体11を製造する。
その後、容器本体11のフランジ部13に切込刃(図示せず)を押し当て、内周切込部19が環状に形成される。
一方において、第1層22と第2層24との間に接合層23を設けた多層シートを製造する。この際、高ラミネート領域23Aと低ラミネート領域23Bとを予め区画し、これらの領域に対応して接合層23の接着剤の厚さを変える。第1層22には予め薄肉部22Aを形成しておいてもよく、蓋材21を成形する際にシールバーを押し当てて薄肉部22Aを形成するものでもよい。
その後、内容物Pが収納された容器本体11のフランジ部13の平面部と凸部15とに蓋材21を載せ、これらをヒートシールする。これらの間には環状のシール部14とタイトシール部26がそれぞれ形成されることになる。ヒートシールは図示しないシールバーが蓋材21の上からフランジ部13と凸部15とに押し当てられて行われるが、この際に、凸部15に凹み15Aが形成されることになる。
【0028】
このように製造された包装容器1では、以下のように蒸気が包装容器1の外部へ逃がされる。図6及び図7は、加熱時の各状態における包装容器1の断面図である。
加熱前の状態の包装容器1を図示しない電子レンジに入れて加熱すると、図6に示される通り、包装容器1の内圧が上昇し、蓋材21が持ち上がる。なお、容器内の蒸気はタイトシール部26と環状のシール部14との間に回り込み、これらの間の蓋材21の部位がフランジ部13に対して持ち上がる。
内圧が許容範囲を超えると、図7に示される通り、薄肉部22Aの内周側端部あるいは外周側端部に切れ目が入り、切れ目から内部の蒸気が外部に排出されようとする。この蒸気により、剥離強度の低い低ラミネート領域23Bに対応した第1層22と第2層24とが剥離して通気路Qを形成する。低ラミネート領域23Bは蓋材21の外端縁まで続いており、通気路Qもこれに沿って形成されるので、外端縁が排出口となり、包装容器1の内部と外部とが連通する。従って、手を加えることなく通気路Qが形成され、この通気路Qから包装容器1内部の蒸気を外部へと逃がすことができる。
この包装容器1を開封するには、図1(B)及び図3に示される通り、開封開始部25をつまんで蓋材21を上部に引き上げる。そうすると、容器本体11の表面剥離層17と基材層18とが層間剥離して包装容器1を開封することができる。
【0029】
従って、本実施形態では、次の作用効果を奏することができる。
(1)容器本体11のフランジ部13が蓋材21とシール部14を介してシールされた包装容器1において、蓋材21にシール部14側に設けられた第1層22と、この第1層22に接合層23を介して積層された第2層24とを設け、接合層23を第1層22との接合強度が強い高ラミネート領域23Aと接合強度が低い低ラミネート領域23Bとを備えて構成し、この低ラミネート領域23Bと接合される第1層22に薄肉部22Aを形成した。そのため、食品等の内容物Pが収納された包装容器1を電子レンジ等で加熱すると、薄肉部22Aの端部が切れて、第1層22と第2層24の剥離のきっかけを形成し、さらに、低ラミネート領域23Bに対応する第1層22と第2層24とが剥離して蒸気を外部に逃がす通気路Qが形成されるため、加熱前に小孔を予め開けたり、容器の一部を開封するといった手間をかけることはない。しかも、非加熱時は薄肉部22Aを含む第1層が容器本体11と十分にシールされているため、運搬時等に誤って破断することがない。
【0030】
(2)第1層22、第2層24及び接合層23を容器本体11ではなく蓋材21に設けたから、曲げ加工を施す容器本体11に設けられる場合よりも、薄肉部22Aの形成を正確に行うことができる。従って、薄肉部22Aが薄すぎて誤って蓋材21が破断され、薄肉部22Aが厚すぎて通気路を形成できない等の不都合を生じることがない。
【0031】
(3)薄肉部22Aをタイトシール部26に隣接した位置に形成したから、包装容器1の内圧が上昇すると薄肉部22A周辺の蓋材21が持ち上げられ、より強い圧力が薄肉部22Aに集中する。そのため、薄肉部22Aに切れ目が入りやすい構成となっているので、内部の蒸気を確実に外部へ排出することができる。
【0032】
(4)凸部15の蓋材21と対抗する面がフランジ部13と略同一面上にあるので、蓋材21と容器本体11のシール部14の形成とタイトシール部26の形成とを同時にできるだけでなく、蓋材21の外層面に凹凸が形成されないので、運搬時や陳列時において包装容器1を重ねたときの安定性を保つことができる。
【0033】
(5)容器本体11の表面剥離層17と基材層18とが層間剥離をして開封されるため、蓋材21と容器本体11をシールする面の剥離強度を大きくしても易開封性が損なわれることはない。すなわち、蓋材21と容器本体11をシールする面の剥離強度を大きくできるので、十分な密封性を確保できる。また、表面剥離層17が基材層18に対して剥離される際には、この剥離が内周切込部19に達すると蓋材21と容器本体11が容易に剥がれるので、易開封性を得られる。
【0034】
(6)タイトシール部26は、シールバーの形状変更や部分的な温度制御により深く形成されるので、タイトシール部との境目の蓋材21に大きな圧力が集中する。従って、圧力が集中した部分が薄くなり、薄肉部22Aが形成される。
【0035】
(7)低ラミネート領域23Bは高ラミネート領域23Aよりも接着剤の厚さを薄くして、接合強度を低くしている。接着剤の厚さは接着力に比例するから、これらの領域間の接着力の調整を容易に管理することができる。
【0036】
[第二実施形態]
図8を用いて、本発明の第二実施形態を説明する。
第二実施形態はシール部14の外周側に外周切込部20を設けた構成となっている以外は、第一実施形態と同じ構成となっているので説明は省略する。
すなわち、シール部14の外周に一定の距離をおいて外周切込部20が形成されており、この外周切込部20は表面剥離層17の表面から基材層18の表面に達するまで略V字形に切り込まれている。
このような構成であれば、第一実施形態に記載した効果に加えて、開封時には、シール部14の剥離がこの外周切込部20から開始されるので、確実に蓋材21を剥離することができる。
【0037】
[変形例]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、包装容器1の形状を平面円形状としたが、本発明では、平面矩形状のものでもよい。
また、本発明では、フランジ部13の裏面に補強用リブやカールを設けるものでもよい。
【0038】
また、前記実施形態では、接合層23を接着剤とし、接着剤の厚みによってラミネート強度を変化させていたが、蓋材21を製造する際の加熱加圧処理の強弱によってラミネート強度を変化させても良いし、高ラミネート領域23Aと低ラミネート領域23Bで、粘着力の異なる接着剤を使用してラミネート強度を変化させても良い。
さらに、前記実施形態では、フランジ部13の一部を突出させて凸部15を設けたが、凸部15を省略してもよい。この場合、薄肉部22Aを形成できるくらいの幅を有するフランジ部13を形成してもよい。また、凸部15はフランジ部13と一体化させずに、フランジ部13よりも内側の位置で容器本体の底部から蓋材に向かって突出させて形成してもよい。
そして、本発明では、蓋材21をフランジ部13にシールする手段としてヒートシールを用いたが、超音波や接着剤を用いてもよい。
また、第1層22、第2層24及び接合層23を蓋材21に設けたが、本発明では、容器本体11のみ、あるいは、蓋材21と容器本体11との双方に設けるものであってもよい。
【実施例】
【0039】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例等の記載内容に何ら制約されるものではない。
[実施例]
シート構成が容器内側からHDPE(商品名;プライムポリマーHi-zex445M)/PP(ポリプロピレン)/EVOH(エチレンビニルアルコール)/PP(ポリプロピレン)である容器本体11と、シート構成がNy(ナイロン)/EVOH(エチレンビニルアルコール)/LLDPE(低密度ポリエチレン)で、EVOHとLLDPEの間に接合層23を設けた蓋材21を用いて、全体形状を図1に示す容器直径が140mm(10mmのフランジ部13を含む)の内周切込部19を有する包装容器1を製造した。なお、接合層23は、接着剤(商品名:三井武田 A−616 A−65)からなり、接合層23の低ラミネート領域23Bは、接着剤を高ラミネート領域23Aの10分の1の厚みにして剥離強度を低くしている。
以上によって製作された包装容器1に水100ccを充填してシールした後、電子レンジで加熱した。
包装容器1の内容物が70℃なった時点で蓋材21に通気路Qが形成され、蒸気が包装容器1の外部に抜けるようになり、包装容器1は変形および破袋しなかった。また、初期の開封性も良好なままであった。
【0040】
[比較例1]
実施例と同じシート構成の容器本体11と蓋材21を用い、内周切込部19を有する包装容器1を製造した。ただし、実施例とは異なり、この蓋材21には、低ラミネート領域23Bを有していない構造とし、内圧により通気路を形成する機構をなくした。
実施例と同じように水100ccを充填してシールした後、電子レンジで加熱すると、内容物が沸騰し、包装容器が爆発して内容物が飛散した。
【0041】
[比較例2]
実施例と同じシート構成で内周切込部19を有しない容器本体11と、実施例と同じシート構成と接合層23を備えた蓋材21を用いて包装容器1を製造した。
実施例と同じように水100ccを充填してシールした後、電子レンジで加熱すると、内容物が70℃になった時点で蓋材21に通気路が形成され、蒸気が包装容器外部に抜けるようになり、包装容器1は変形および破袋しなかった。しかしながら、包装容器1を開封しようとすると、容易に開封できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、例えば、レトルト食品等の各種食品や薬品、化粧品等に包装容器として広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】(A)本発明の一実施形態にかかる包装容器の密閉された状態を示す斜視図 。 (B)前記包装容器の一部が開封された状態を示す斜視図。
【図2】前記包装容器の密閉状態における断面図。
【図3】前記包装容器の開封時における断面図。
【図4】前記包装容器の平面図。
【図5】前記包装容器の要部断面図。
【図6】前記包装容器において、加熱により内圧が上昇した状態の断面図。
【図7】前記包装容器において、加熱により通気路が形成された状態の断面図。
【図8】本発明の二実施形態にかかる包装容器の要部断面図。
【符号の説明】
【0044】
1…包装容器
11…容器本体
12…開口部
13…フランジ部
15…凸部
17…表面剥離層
18…基材層
19…内周切込部
21…蓋材
22…第1層
22A…薄肉部
23…接合層
23A…高ラミネート領域
23B…低ラミネート領域
24…第2層
P…内容物
Q…通気路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部周縁にフランジ部が形成された容器本体と、前記開口部を塞ぐとともに前記フランジ部との間をシール部でシールされた蓋材とを備え、
前記容器本体と前記蓋材との少なくとも一方は前記シール部側に設けられた第1層と、この第1層に接合層を介して積層された第2層とを有し、前記接合層は前記第1層との接合強度が強い高ラミネート領域と前記第1層との接合強度が低い低ラミネート領域とを備え、この低ラミネート領域と接合される前記第1層には前記容器本体と前記蓋材との間の空間に許容値以上の圧力が生じた際に切断が開始されて前記低ラミネート領域まで達する薄肉部が形成され、前記低ラミネート領域は、その外端縁が外部に露出していることを特徴とする包装容器。
【請求項2】
請求項1に記載された包装容器において、
前記第1層、前記第2層及び前記接合層は前記蓋材に設けられていることを特徴とする包装容器。
【請求項3】
請求項2に記載された包装容器において、
前記容器本体には、その内周面から前記開口部の中心に向かって突出するとともに前記蓋材をタイトシールするための凸部が設けられるか、又は、容器本体の底部から蓋材に向かって突出する凸部が設けられ、この凸部の前記タイトシール部と隣接した位置に前記薄肉部が形成されていることを特徴とする包装容器。
【請求項4】
請求項3に記載された包装容器において、
前記凸部は、前記蓋材と対向する面が前記フランジ部と略同一面を形成していることを特徴とする包装容器。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれかに記載された包装容器において、
前記容器本体は、前記蓋材と接する表面剥離層と、この表面剥離層と接する基材層とを備え、前記表面剥離層と前記基材層との層間剥離強度よりも前記表面剥離層と前記蓋材との層間剥離強度が強くされ、前記フランジ部には、前記シール部より内周側に前記表面剥離層を表面から前記基材層の表面に達するまで切り込まれた内周切込部が形成されていることを特徴とする包装容器。
【請求項6】
請求項5に記載された包装容器において、
前記フランジ部には、前記シール部より外周側に前記表面剥離層の表面から前記基材層の表面に達するまで切り込まれた外周切込部が形成されていることを特徴とする包装容器。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載された包装容器において、
前記タイトシール部は、前記シール部よりも深く形成されることを特徴とする包装容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−284095(P2007−284095A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−112551(P2006−112551)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(500163366)出光ユニテック株式会社 (128)
【Fターム(参考)】