説明

包装用シート

【課題】CD、DVD、書籍、などを包装するのに好適なように、緩衝性、柔軟性、耐水性、開封容易性を兼ね備えた新たな包装資材を提供する。
【解決手段】ポリスチレン及びポリオレフィンを含有し、かつ2軸延伸されてなる発泡スチレン系樹脂シートからなる包装用シートを提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD、DVD、書籍、雑貨、衣類などを郵送乃至宅配する際にこれらを包装するに用いる包装用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットを介してのオンラインショッピングが盛んになり、CD、DVD、書籍、雑貨、衣類などをWebサイトで購入し、これらの商品を郵便や宅配などによって購入者に配達するビジネスモデルが普及している。このようなビジネスモデルにおいて、商品の包装及び輸送は、商品を破損させないように、緩衝性を有する包装資材で包装して郵送乃至宅配されることが一般的である。
【0003】
この種の用途に用いる包装資材として、現在、紙製品(クラフト紙)での包装が実用化されているが、内容物の保護性(緩衝性)が不十分であるため、プラスチック製の気泡性緩衝シートで内容物を包装し、さらに前記のクラフト紙で包装するという二重包装をする必要があり、効率的とは言えない状態であった。
【0004】
そのほか、特許文献1には、プラスチック気泡シートの長尺シートを、そのほぼ中央線に沿って二つに折り、所定の間隔で横断方向のヒートシールを施すことによって、折り線を底としシートの端の側を開口とする袋の連続体を形成し、このヒートシール部に切離し用のミシン目を入れてなることを特徴とするプラスチック気泡シートによる緩衝性能を有するミシン目入り連続包装袋が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、オレフィン重合体とスチレン重合体と相溶化剤の混合物からなる発泡シートを包装材として使用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−1278号公報
【特許文献2】特開2000−204185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
CD、DVD、書籍、雑貨、衣類などを包装して輸送することを考慮すると、これに用いる包装資材としては、衝撃からこれらの商品を保護する緩衝性のほか、各種形状の商品を包装するための柔軟性や、水の侵入を防ぐ耐水性、さらには手で引裂いて容易に開封することができる開封容易性などを備えていることが望まれる。
【0008】
そこで本発明は、このような緩衝性、柔軟性、耐水性、開封容易性を兼ね備えた新たな包装資材を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリスチレン及びポリオレフィンを含有し、かつ2軸延伸されてなる発泡スチレン系樹脂シートからなる包装用シートを提案する。
【発明の効果】
【0010】
本発明が提案する包装用シートは、ポリスチレン及びポリオレフィンを含有し、かつ2軸延伸されてなる発泡スチレン系樹脂シートからなるため、緩衝性、柔軟性、耐水性、開封容易性を兼ね備えており、包装用シートとして好適である。例えばこの包装用シートを適当な大きさの長方形状に裁断し、2枚重ねて2辺又は3辺をシールした後、商品を入れて、残りの辺をシールして商品を包装することができ、例えばCD、DVD、書籍、雑貨、衣類などを郵送乃至宅配する際の包装に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明するが、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0012】
<本樹脂シート1>
本発明の実施形態の一例に係る樹脂シート(「本樹脂シート1」と称する)は、ポリスチレン及びポリオレフィンを含有し、かつ2軸延伸されてなる発泡スチレン系樹脂シートからなる単層構成の発泡スチレン系樹脂シートである。
【0013】
(ポリスチレン)
ポリスチレンは、スチレン系樹脂であれば特に限定するものではない。例えば、ゴム成分を含有しないポリスチレン系樹脂を(A)、ゴム成分を含有するポリスチレン系樹脂を(B)とした場合、(A)単独、(B)単独、又は(A)と(B)の混合物の何れでもよい。
【0014】
ゴム成分を含有しないポリスチレン系樹脂(A)の代表例としては、一般用ポリスチレン(以下、「GPPS」と記載することがある)等のポリスチレンを挙げることができる。更には、スチレン、アルキルスチレン(例えば、o-、m-、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、p-t-ブチルスチレン)、α-アルキルスチレン(例えば、α-メチルスチレン、α-エチルスチレン)等の芳香族ビニル化合物の単独重合体、これら単量体を組み合わせた共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(例えば、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体)、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体等も挙げられる。これらは、単独または2種類以上を組み合わせることができる。(A)を(B)と組み合わせて用いる場合も、(A)は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
これらの中でも、(A)としては、GPPSが好ましい。また、上記の(A)の中でGPPS以外の(A)は、GPPSに対して、GPPSとの相溶性を有する範囲で、単独または2種類以上を組み合わせて使用することが好ましい。
【0016】
GPPSの中でも、温度200℃、荷重5kgにおいてのメルトフローレートが0.5〜20g/10分の範囲のGPPSが好ましく、2〜10g/10分の範囲のGPPSが特に好ましい。このようなGPPSを用いることにより、比較的低温での溶融混練及び押出発泡をより一層容易に行うができる。
【0017】
他方、ゴム成分を含有するポリスチレン系樹脂(B)としては、例えば、グラフト型共重合体の代表であるHIPS、ABA型ブロック共重合体の代表であるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(以下、「SBS」と記載することがある)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(以下、「SIS」と記載することがある)等を挙げることができる。
【0018】
上記(B)の製造において用いられるゴム成分としては、例えば、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリルゴム、ブタジエン-イソプレンゴム等の非スチレン系ゴム;スチレン-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレンゴム等のスチレン系ゴムを挙げることができる。なかでもブタジエンゴムが好ましく、ブタジエンゴムのなかでも、シス-1,4構造の含有率の高いハイシス型が、同含有率の低いローシス型より熱安定性の点から好ましい。
【0019】
ゴム成分の含有量は、一塩化ヨウ素、ヨウ化カリウム及びチオ硫酸ナトリウム標準液を用いた電位差滴定でジエン含有量を測定し、ジエン含有量をゴム成分の含有量として計算する。分析方法は、例えば、日本分析化学会高分子分析研究懇談会編、「新版高分子分析ハンドブック」、紀伊國屋書店(1995年度版)、P.659「(3)ゴム含量」に記載されており、この方法で測定し、そのように測定した値として定義される。
【0020】
(B)中のゴム成分の含有量は、(B)全体に対して、3〜50質量%が好ましく、中でも4質量%以上或いは40質量%以下であるのがより好ましく、その中でも5質量%以上或いは30質量%以下であるのが特に好ましい。
【0021】
(B)としては、温度200℃、荷重5kgにおいてのメルトフローレートが0.5〜20g/10分の範囲のHIPSやSIS共重合体が好ましく、中でも2.0g/10分以上或いは10g/10分以下であるHIPSやSISがより好ましい。特に上記のHIPSが好ましい。(B)は単独で、または(A)と組み合わせて用いることができる。
(B)は、1種類又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。(B)を(A)と組み合わせて用いる場合も、(B)は2種類以上を組み合わせて用いることができる。このようなポリスチレン系樹脂を用いることにより、比較的低温での溶融混練、押出発泡が可能となる。
【0022】
本樹脂シート1全体に対する、好ましいゴム成分の含有量は0〜50質量%であり、中でも1質量%以上或いは40質量%以下であるのがさらに好ましく、その中でも2質量%以上或いは20質量%以下であるのが特に好ましい。ゴム成分を含有することによってシートに柔軟性や緩衝性、引裂強度を付与することができる。一方、ゴム成分の含有量が多過ぎると、製造時の押出安定性や延伸安定性が悪くなるばかりでなく、製造されたシートの剛性が必要以上に低下してしまう場合がある。ゴム成分の含有量が前記範囲となるように、上記(A)及び/又は(B)を用いればよい。
【0023】
(ポリオレフィン)
ポリスチレンにポリオレフィンを配合することにより、柔軟性を高めることができ、商品を入れる際の梱包シワや位置ズレを生じ難くすることができ、包装用途に好適とすることができる。
【0024】
本樹脂シート1に用いるポリオレフィンとしては、オレフィンの単独又は共重合体であればよい。
オレフィンとしては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、4−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等を挙げることができる。これらのオレフィンのうち、エチレン又はプロピレンが特に好ましい。
また、上記オレフィンと共重合性モノマーとの共重合体(ランダム共重合体、ブロック共重合体等も含む)であってもよい。この際、共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ノルボルネン、エチリデンノルボルネン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキセン等の環状オレフィン類;ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン等のジエン類等を挙げることができる。
これらの共重合性モノマーは、単独で又は2種以上組み合わせてオレフィンと共に共重合することができる。
【0025】
以上の中でも、本樹脂シート1に柔軟性を付与する観点並びに入手し易い観点などから、好ましいポリオレフィンとして、エチレンのホモポリマーであるポリエチレン、プロピレンのホモポリマーであるポリプロピレン及びエチレン酢酸ビニル共重合体などを挙げることができ、これらのうちの1種又は2種以上を併用するのが好ましい。
【0026】
ポリオレフィンは、ポリスチレンに単独で配合してもよいし、他の樹脂と混練したペレットなどとして配合してもよい。また、発泡剤含んだマスターバッチとして配合してもよい。
【0027】
(含有割合)
ポリスチレン及びポリオレフィンの含有割合は、緩衝性、柔軟性、耐水性、開封容易性をシートに付与する観点から、ポリスチレン及びポリオレフィンの合計量100質量部に対して、ポリスチレンを50〜99.5質量部含み、且つポリオレフィンを0.5〜50質量部含むのが好ましい。中でもポリオレフィンを1質量部以上或いは20質量部以下含むのが特に好ましく、その中でもポリオレフィンを2質量部以上或いは10質量部以下含むのがさらに好ましい。シート中のポリスチレン含有量は50〜99.5重量%が望ましい。
【0028】
(その他の成分)
本樹脂シート1は、相溶化剤を含んでいてもよいが、その含有量は、高温での酸化による焼け異物、ゲル化の観点から、ポリスチレン及びポリオレフィンの合計量100質量部に対して0.1質量部未満、特に0.08質量部未満、その中でも0.05質量部未満(0質量部を含む)のが好ましい。
【0029】
相溶化剤には、例えば、スチレン系モノマーと共役ジエンとのランダム共重合体の水素添加共重合体、ブロック共重合体の水素添加共重合体などが添加されたスチレン系モノマー-共役ジエン系共重合体等を挙げることができる。
【0030】
なお、前記水素添加されたスチレン系モノマー-共役ジエン系共重合体には、(a)スチレン系モノマーと共役ジエンとのランダムまたはブロック共重合体が水素添加された水素添加共重合体のみならず、(b)スチレン系モノマーと一種または二種以上のα-オレフィンとのランダムまたはブロック共重合体の水素添加共重合体なども含まれるものとする。
【0031】
スチレン系モノマーには、前記例示の単量体が含まれる。前記水素添加されたスチレン系モノマー-共役ジエン系共重合体は、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、グリシジル(メタ)アクリレートなどにより変性されていてもよい。
【0032】
好ましい水素添加されたスチレン系モノマー-共役ジエン系共重合体には、水素添加スチレン-ブタジエンランダムまたはブロック共重合体、水素添加スチレン-イソプレンランダムまたはブロック共重合体などのスチレン系モノマーと炭素数4〜6の共役ジエンとの共重合体の水素添加体などが例示できる。
【0033】
そのほか、必要に応じて、後述する発泡剤や、充填剤、分散剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、分散助剤、内部潤滑剤、滑剤、熱安定剤、酸化防止剤、加水分解防止剤、紫外線吸収剤、耐光剤、結晶核剤、離型剤、難燃剤、可塑剤、防曇剤、強化剤、増量剤、抗菌剤、防かび剤、顔料、染料、着色剤、表面ぬれ改善剤、流動性改良剤、増粘剤、上記帯電防止剤以外の界面活性剤、無機系フィラー、有機系フィラー、カーボンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛、補強剤等を含んでもよい。
【0034】
(発泡倍率)
本樹脂シート1の発泡倍率は、1.1〜5.0倍の範囲であるのが好ましい。
発泡倍率が1.1倍以上であれば、柔軟性、緩衝性、シート表面外観等を維持することができる一方、発泡倍率が1.5倍以下であれば、シート表面外観の悪化、機械的強度(衝撃強度、引裂強度等)などを維持することができる。
かかる観点から、本樹脂シート1の発泡倍率は1.6倍以上或いは4.5倍以下であるのがより好ましく、中でも2.5倍以上或いは4.2倍以下であるのが好ましい。
【0035】
この発泡倍率(P)は、JIS K7222に準拠して測定した発泡シートの密度(Q)と、JIS K7112のD法に準拠して測定した、その発泡体材料の発泡させていない状態の密度(R)より、P=R/Qにより求められる値である。
【0036】
発泡倍率の制御は、発泡剤の種類やその配合量のほか、押出時の樹脂温度、樹脂圧力等によって可能である。本樹脂シートは、他の物性を良好に保ちつつ、上記の発泡倍率を実現することが可能である。特に、発泡倍率が大きくなっても(例えば、4.0倍以上となっても)、機械的強度を良好に保つことができる。
【0037】
樹脂シートを発泡させるには、化学発泡剤を添加して押出成型する方法、発泡ガス原料を注入しながら押出成型する方法、液状の発泡ガス原料を樹脂に含浸させたものを押出成型する方法等を適用することができる。
【0038】
発泡剤としては、例えばプロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の揮発性発泡剤;炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アゾ化合物(アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド、ジアゾアミノベンゼン等)、スルホニルヒドラジド化合物(ベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルオキシ−4,4‘−ビススルホニルヒドラジド等)、ニトロソ化合物(N,N’−ジニトロソペンタメチレントリアミン等)等の化学発泡剤(分解型発泡剤)のほか、二酸化炭素、窒素ガス等の発泡ガス原料、水等などの液状の発泡ガス原料を挙げることができる。
これらの発泡剤は単独で使用してもよいし、また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
なお、化学発泡剤を使用する際は、化学発泡剤と樹脂とを混合させた樹脂ペレット(マスターバッチ)を作成して、発泡剤を含む樹脂として使用してもよい。マスターバッチに使用する樹脂としては、上記したポリスチレンやポリオレフィンを挙げることができる。
【0040】
(延伸倍率)
本樹脂シート1の延伸倍率は、縦方向(シートの流れ方向又は押出し方向(「MD」とも称する))及び横方向(シートの流れ方向又は押出し方向と直角方向(「TD」とも称する))の延伸倍率がともに1.1〜5.0倍であるのが好ましく、その中でも1.1〜3.0がさらに好ましい。
延伸倍率が5.0倍を超えると、延伸による機械的特性の向上が飽和するので、これを超えて延伸しても効率的でない一方、延伸倍率が小さ過ぎると、機械的強度(衝撃強度、引裂強度)が低下して、破れ易くなる可能性があるため、MD及びTD両方の延伸倍率が上記範囲であるのが好ましい。かかる観点から、本樹脂シート1における延伸倍率は、MD、TDともに、1.2倍以上或いは3.0倍以下であるのがさらに好ましく、その中でも1.5倍以上或いは2.9倍以下であるのがより一層好ましい。
ポリスチレンとポリオレフィンの混合物を押出し成形する際において、相溶化剤を入れない場合、通常機械物性の低下することが一般的に知られている。しかし、相溶化剤をいれなくても、シート成形後これを二軸延伸することにより、相溶化剤を入れなくても機械物性が低下しない良好なシートを得ることができる。
【0041】
ここで、「延伸倍率」とは、二軸延伸シートの試験片に記入した直線の長さが収縮前後で変化した割合であり、具体的には、次式、すなわち、延伸倍率=Y/Z、によって算出される値(単位[倍])を意味する。Yは二軸延伸シートの試験片の長さを意味し、Zは該試験片の延伸前の長さを表す。
この式におけるY、Zの求め方は、Yは、二軸延伸シートの試験片に、定規及び筆記用具を用いてMD及びTDに描いた直線の長さ[mm]を示し、Zは140℃のシリコーンオイルバスに、上記試験片を10分間浸漬し収縮させた後の、上記直線の長さ[mm]を示す。
【0042】
(独立気泡率)
本樹脂シート1の独立気泡率は0.5〜27%が好ましい。
独立気泡率が27%以下であれば、包装用途使用時の折り曲げ加工の際に、気泡の反発力が勝って加工が困難となるような事態を防ぐことができ、また、独立気泡率が0.5%以上であれば、気泡が少なすぎて外部からの衝撃に対する緩衝性が不足するのを防ぐことができる。
よって、かかる観点から、本樹脂シート1の独立気泡率は、中でも0.7%以上或いは25%以下であるのがより一層好ましく、その中でも0.9%以上或いは10%以下であるのがさらに好ましい。
【0043】
独立気泡率は、以下の手順(1)〜(5)に従って、島津製作所社製、乾式自動密度計(アキュピック1340)を使用して測定することができる。後述する独立気泡率についても同様である。
手順(1) 本樹脂シート1を縦39mm、横12.5mmの短冊片に切り出す。短冊片の枚数は、短冊片を重ねた際にシート厚みが約12.5mmになるよう調整した枚数を使用する。例えば実施例1では、シート厚みが0.75mmなので短冊片17枚使用した。重ねた厚み12.75mm。
手順(2) 切り出した短冊片を試料セルに収容し、乾式自動密度計にて試料体積(Vp1)を測定する。
手順(3) 上記測定後の短冊片を縦方向に6回カットして、縦39mm、横1.79mmの細長い短冊片を作成する。例えば実施例1では、短冊片17枚全てを6回カットした。
手順(4) カットした短冊片全てを試料セルに収容し、乾式自動密度計にて試料体積(Vp2)を測定する。
手順(5) 次式に基づき独立気泡率S(N=3の平均値)を求める。
S(%)=Vc/Vg×100
Vc=Vg−W/D−Voc
Voc=1/A(A・Vp1−Vp2)
【0044】
Vc:独立気泡だけの体積(cm
Vg:幾何学体積(外寸から計算された体積)(cm
W:切り出した短冊片の試料重量(g)
D:試料の密度(g/cm
Voc:開放気泡の体積(cm
A:短冊片のカット前後での側面の面積の比
(カット後の各短冊片の側面の面積の和/切り出した各短冊片の側面の面積の和)
Vp1:切り出した短冊片の試料体積(cm
Vp2:カット後の短冊片の試料体積(cm
【0045】
(製造方法)
本樹脂シート1は、ポリスチレン、ポリオレフィン、必要に応じて発泡剤などの他の原料を混合し、押出成形してシート成形すると共に発泡させ、その後、二軸延伸するようにして作製することができる。
より具体的には、ポリスチレン、ポリオレフィン、必要に応じて発泡剤などの他の原料を押出機によって溶融混練し、押出ながら口金に供給し、口金出口で発泡剤の分解温度以上に加熱して連続的に押出発泡させながらシート状に成形し、次いで、例えば、ロール延伸法等での縦延伸、続いてテンター法等での横延伸で、連続的に逐次二軸延伸すればよい。
【0046】
<本樹脂シート2>
本発明の実施形態の一例に係る樹脂シート(「本樹脂シート2」と称する)は、内層と外層を備えた3層以上からなる多層構成の2軸延伸されてなる樹脂シートであって、内層は、ポリスチレン及びポリオレフィンを含有する発泡樹脂層であり、外層は、ポリスチレンを含有する樹脂層であることを特徴とするものである。
上記の3層を備えていればよいから、外層と内層の間に適宜樹脂層が介在してもよい。
【0047】
(内層)
本樹脂シート2の内層の組成及び発泡倍率は、上記の本樹脂シート1と同様であるのが好ましい。すなわち、延伸する前の本樹脂シート1の表裏側に外層を形成し、2軸延伸して本樹脂シート2を得るのがよい。
【0048】
(外層)
外層は、内層との接着性と剛性付与の観点から、ポリスチレンを主成分として含有する樹脂層であるのが好ましく、目的に応じて適宜成分をさらに配合するのが好ましい。例えば柔軟性をさらに高めるために、ポリスチレンに上記の如きポリオレフィンや相溶化剤を添加したり、或いは、帯電防止性を付与するためにポリスチレンにノニオン系、アニオン系、カチオン系界面活性剤やポリエーテルエステルアミドを添加したり、ヒートシール性を付与するためにポリスチレンにアイオノマーを添加したりすることを挙げることができる。該樹脂層中のポリスチレンの量は50〜99.5重量%であるのが好ましい。
なお、外層に発泡剤を配合すると、インキの印刷性が低下するため、外層には発泡剤を配合しないのが好ましく、また、強度及び剛性を高める点からも、外層は非発泡層とするのが好ましい。
【0049】
(好ましい積層構成)
より好ましい構成例として、ポリスチレン(例えばHIPS)及びポリオレフィン(例えばPE)を含有する発泡樹脂層からなる内層の片面又は両面に、ポリスチレン(例えばHIPS)、好ましくはさらにポリオレフィン(例えばPE)を含有する非発泡樹脂層からなる外層を積層し、2軸延伸してなるシートが好ましい。
【0050】
(層比率)
内層と外層(合計)の単位面積当たりの質量比率としては、緩衝性、柔軟性、耐水性及び開封容易性のバランスの観点から、内層:外層(合計)=50:50〜99:1であるのが好ましく、中でも60:40以上或いは95:5以下であるのがより好ましく、その中でも70:30以上或いは90:10以下であるのがより好ましい。
【0051】
(延伸倍率)
本樹脂シート2の延伸倍率は、本樹脂シート1と同様に、MD及びTDともに1.1〜5.0倍であるのが好ましく、1.2倍以上或いは3.0倍以下であるのがさらに好ましく、その中でも1.5倍以上或いは2.9倍以下であるのがより一層好ましい。
ポリスチレンとポリオレフィンの混合物を押出し成形する際において、相溶化剤を入れない場合、機械物性が低下したり、多層の場合では層が剥離しやすかったりすることが一般的に知られている。しかし、相溶化剤をいれなくても、シート成形後これを二軸延伸することにより、相溶化剤を入れなくても機械物性が低下しない良好なシートを得ることができる。
【0052】
(独立気泡率)
樹脂シート2の独立気泡率は0.5〜27%が好ましい。独立気泡率が27%以下であれば、包装用途使用時の折り曲げ加工の際に、気泡の反発力が勝って加工が困難となるような事態を防ぐことができ、また、独立気泡率が0.5以上であれば、気泡が少なすぎて外部からの衝撃に対する緩衝性が不足するのを防ぐことができる。
よって、かかる観点から、本樹脂シート2の独立気泡率は、中でも0.7%以上或いは25%以下であるのがより一層好ましく、その中でも0.9%以上或いは10%以下であるのがさらに好ましい。
【0053】
(製造方法)
各層を構成する原料をそれぞれ混合し、共押出して積層シートに成形すると共に発泡させ、その後、上記同様に二軸延伸するようにして作製すればよい。具体的には、汎用のフィードブロック付きダイやマルチマニホールドダイ等を使用して共押出することができる。
また、各層を構成するシートを形成し、発泡させた後これをヒートラミネーションやドライラミネーション等の方法により積層するようにしてもよい。
【0054】
<本樹脂シート1及び2の物性>
本樹脂シート1及び2の厚さは、目的に応じて調整すればよい。包装資材、すなわち包装袋を形成するためのシートとして用いる場合には、0.1mm〜1.5mmであるのが好ましく、特に0.3mm以上或いは1.3mm以下であるのが好ましく、中でも0.4mm以上或いは1.0mm以下であるのがより一層好ましい。
【0055】
本樹脂シート1及び2の引裂強度に関しては、手で容易に引き裂くことができる観点から、15N/mm以下であるのが好ましく、特に10N/mm以下、中でも7N/mm以下であるのがさらに好ましい。
また、同じく手で容易に引き裂くことができ、さらにMD、TDどちら側から引き裂いてもまっすぐに引裂ける観点から、MD及びTDの引裂強度の比率が、MD:TD=1:3〜3:1であるのが好ましく、特にMD:TD=1:2.5〜2.5:1であるのが好ましく、中でも特にMD:TD=1:2〜2:1であるのが好ましい。上記の範囲以外の比率では、手で引き裂いた際に引裂き方向が曲がってしまうなどの現象が起こり開封しにくいことがある。このようなMD及びTDの引裂強度の比率は、本樹脂シート1及び2において、組成や、MD及びTDの延伸倍率や延伸時の温度条件を設定することで調整することができる。
【0056】
<本樹脂シート1及び2の用途>
本樹脂シート1及び2は、包装資材シートとして好適に利用することができる。
例えば、本樹脂シート又は2を長方形状に切断し、2枚重ねてその3辺をシールすることで、包装袋を形成することができる。
また、本樹脂シート1又は2を長方形状に切断し、2枚重ねてその2辺又は3辺をシールし、シート間に商品を収納し、残りの辺をシールすることで、商品を包装することができる。
本樹脂シート1又は2は、緩衝性、柔軟性、耐水性、開封容易性を兼ね備えているため、内容物としての商品の形状に合わせて包装することができ、衝撃や水の侵入から商品を保護することもでき、しかも手で容易に開封することができるという包装資材としての特徴を有している。
【0057】
(自着性接着剤)
本樹脂シート1及び2を包装資材として用いる場合には、本樹脂シート1及び2において、少なくとも片面の一部若しくは全面に自着生接着剤を付着するのが好ましい。
【0058】
自着性接着剤とは、接着剤面同士を重ねてある程度の力で押圧すると、加熱しなくても接着剤同士のみが接着する樹脂を意味し、天然ゴムをベースとする接着剤が代表例である。
但し、本樹脂シート1及び2の片面に塗布する自着生接着剤としては、天然ゴム系材料にスチレンブタジエンゴムを配合してなる組成を有する接着剤であるのが好ましい。
天然ゴムからなる接着剤や、天然ゴム系材料をメチルメタクリレート(MMA)変性しただけの接着剤は、ポリスチレンとの相性が悪く、引き裂いて開封する際に糸引き現象を生じてしまうのに対し、天然ゴム系材料にスチレンブタジエンゴムを配合してなる組成を有する接着剤や、天然ゴム系材料をMMA変性し、さらにスチレンブタジエンゴムを配合してなる組成を有する接着剤は、このような糸引き現象を生じないため特に好ましい。
【0059】
(全光線透過率)
また、本樹脂シート1及び2を包装資材として用いる場合には、本樹脂シート1及び2の全光線透過率を20%以下にするのが好ましく、中でも19%以下、その中でも18%以下にするのがより好ましい。
シートの全光線透過率を20%以下にするには、例えば本樹脂シート1及び2の片面にインキを塗布するなどして遮光性を付与するようにすればよい。
また、酸化チタンなどの顔料をシートに混練することにより、シートに遮光性を付与することもできる。
このように遮光性を付与することで、中身の商品が透けて見えることがないため、機密を保持することができる。
【0060】
好ましい包装シートとして、本樹脂シート1及び2の片面全面に自着生接着剤を塗布し、反対片面にインキを塗布して遮光性を付与してなるシートを挙げることができる。
このような包装シートは、例えば自着生接着剤を塗布した面が対面するように、上下2枚に重ねて、左右両側縁部を押圧して接着シールし、適宜長さで長方形に裁断し、他の一辺を押圧して接着シールすることで包装袋を形成することができる。
また、例えば自着生接着剤を塗布した面が対面するように、上下2枚に重ねて、シートの流れ方向両側縁部を押圧して接着シールし、2枚のシート間に商品を入れ、シートの流れ方向に適宜長さで裁断して長方形状とし、他の2辺を押圧して接着シールすることで商品を包装することができる。この場合、自着性接着剤は押圧しても商品には接着しない性質を有する。
【0061】
<語句の説明>
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。以下に記載の例で使用した原材料は、以下の特性を有する原料を使用した。包装用シートの評価項目と評価方法は、以下に記載したとおりである。
【0063】
[原材料]
GPPS:温度200℃、荷重5kgの条件下で測定したメルトフローレート(MFR)が、3.5g/10分の一般ポリスチレン(PSジャパン社製、商品名:HH102、ゴム成分含有量:0質量%)。
HIPS:上と同じ条件下で測定したMFRが、3.0g/10分の耐衝撃性ポリスチレン(PSジャパン社製、商品名:HT478、ゴム成分含有量:9質量%)。
PP:上と同じ条件下で測定したMFRが、0.5g/10分の一般ポリプロピレン(日本ポリプロ社製、商品名:EA9)。
【0064】
発泡剤−1:ポリエチレンをベースとし、分解温度155℃の発泡剤を10質量%含有するマスターバッチ(永和化成工業社製、商品名:ポリスレンEE105)。
発泡剤−2:ポリスチレンをベースとし、分解温度155℃の発泡剤を40質量%含有するマスターバッチ(永和化成工業社製、商品名:ポリスレンES405)。
発泡剤−3:エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)をベースとし、分解温度155℃の発泡剤を40質量%含有するマスターバッチ(永和化成工業社製、商品名:ポリスレンEV405D)。
【0065】
接着剤−1:天然ゴムラテックスをメチルメタクリレート(MMA)でグラフト重合して改質した固形分58%の天然ゴムラテックス(レヂテックス社製、商品名:CS−200)。
接着剤−2:天然ゴムラテックスをメチルメタクリレート(MMA)でグラフト重合し、さらにスチレンブタジエンゴムラテックスを配合して改質した固形分50%の天然ゴムラテックス。
【0066】
[シートの評価項目]
以下の評価は、接着剤を積層していない状態でのシートでのものである。
【0067】
(1)引張弾性率(単位:MPa):柔軟性
実施例及び比較例で得られた包装シートから、JIS K7127に準拠した試験片タイプ2(幅10mm;MD及びTD)を作成し、東洋精機社製「オートグラフDSS2000」を使用して初期クランプ間距離5cm、引張速度10mm/分の条件で測定し、引張弾性率(単位:MPa)とした。MDおよびTDについて、各々長辺とした5個の試験片での平均値を算出した。
この値が1000MPa未満のものを柔軟性が「良好」と判定し「○」と表示し、1000MPa以上のものをシートが硬く包装用に加工するのに適さず「劣る」と判断して「×」と表示した。
【0068】
(2)引裂強度(単位:N/mm):易引裂性
実施例及び比較例で得られた包装シートから、大きさが50mm×64mmの試験片を、各シートのMD(シートの押出方向)を長辺として5枚、TD(シートの押出方向と直角方向)を長辺として5枚作成した。これら試験片の端辺(50mm)側の中央端から長辺と平行に13mmの切れ込みを刻設し、東洋精機社製「軽荷重引裂試験機」を使用して、引裂いた時の指示値を読み取り、この指示値から初期試験片の厚さ[mm]で除した値を引裂強度(単位:N/mm)とした。MDおよびTDについて、各々長辺とした5個の試験片での平均値を算出した。
この値がMD:TD=3:1〜1:3の場合には、MD、TDどちら側から引き裂いてもほぼまっすぐに引き裂くことができるので、易引裂性が「良好」と判定して「○」と表示し、この範囲から外れる場合をMD、TDの引裂強度の高い側から引き裂いた際にまっすぐに引き裂けず曲がってしまうことから「劣る」と判断して「×」と表示した。
【0069】
(3)独立気泡率(単位:%):折り曲げ加工性
実施例及び比較例で得られた包装シートから、大きさが39mm×12.5mmの試験片をシートの厚みが約12.5mmになるよう枚数を切り出した。これらの試験片を島津製作所社製「乾式自動密度計(アキュピック1340)」を使用して体積測定を実施し、得られた独立気泡体積を幾何学体積で除した値を独立気泡率(単位:%)とした。各々につき3回の試験の平均値を算出した。なお、詳細については、前述した独立気泡率の項目も参照されたい。
この値が0.5%〜27.0%であれば、包装用途使用時の折り曲げ加工の際に、気泡の反発力が勝って加工が困難となるような事態を防ぐことができ、また、気泡が少なすぎて外部からの衝撃に対する緩衝性が不足するのを防ぐことができるので、折り曲げ加工性が「良好」と判定して「○」と表示し、この範囲から外れる場合を「劣る」と判断して「×」と表示した。
【0070】
(4)全光線透過率(単位:%):遮光性
実施例及び比較例で得られた包装シートから、大きさが50mm×50mmの試験片を5枚作成し、JIS K7105に準拠し、日本電色社製「濁度計 NDH2000」で測定し、5個の試験片の平均値を算出した。
この平均値を全光線透過率(単位:%)とした。この値が20%以下のものを包装用とした際に内容物が認識できないことから遮光性が「良好」と判定して「○」と表示し、20%を超えるものを「劣る」と判断して「×」と表示した。
【0071】
(5)開封性能:
実施例及び比較例で得られた包装シートから、大きさが150mm×150mmの試験片を作成し、自着性接着剤が付着された面を向かい合わせにして重ね、袋状にするために4方向の端部30mmをプレス機にて7MPaで10秒間プレスし封筒状のサンプルを作製した。
この封筒状サンプルを素手で引裂くように破いて開封し、開封した際の接着剤の状態を目視で確認して開封性能とした。
開封した面の接着剤が目立たずきれいである状態のものを「良好」と判定して「○」と表示し、開封した面の接着剤が糸を引くような状態のものを「やや劣る」と判定して「△」と表示し、開封する前に接着剤が既に剥がれてしまうような状態のものを「劣る」と判定して「×」と表示した。
【0072】
(6)発泡倍率(単位:倍)
以下に記載の例で得られたシートから、JIS K7222に準拠して測定した密度(Q)と、JIS K7112に準拠して測定した該シートを発泡させていない状態の密度(R)より、発泡倍率(単位:倍)を、発泡倍率P=R/Qとして求めた。
なお、発泡倍率Pは、発泡樹脂層のみの発泡前後の密度の比ではなく、シート全体の発泡前後の密度の比である。
【0073】
[実施例1]
二台の押出機(プラ技研社製、ベント式65mmφ型押出機、および池貝鉄工製、タンデム115mmφ押出機)と、それぞれの押出機先端に装着された接続用管を介して2種3層用フィードブロック及び分配ブロック(プラ技研製)から面長が850mmのT−ダイ(プラ技研社製)を準備し、これらを三層シートが得られるように組立てた。
【0074】
原料の組合せ及びその割合を表1に示したとおりとし、リボンブレンダーによって均一に混合してドライブレンド物を得た。2台の押出機のシリンダー温度を190℃に設定してドライブレンド物を溶融し、表1に記載したシート構成となるように3層の未延伸シートとして押出し、80℃に設定した冷却ロールで急冷し、両外層が発泡層で内層も発泡層からなる未延伸発泡シートを作製した。得られた未延伸シートを、ロール方式縦延伸機で縦方向に約2.5倍、続いてテンター横延伸機によって横方向に約2.5倍延伸し、厚さ0.75mm、発泡倍率4.1倍の二軸延伸発泡シートとし、ロール状に巻き取った。得られたシートは、内外層の組成が同じであるため、実質単層のシートである。該シートを用いて引張弾性率及び引裂強度の評価を行った。評価結果を表−1に記した。
【0075】
次に、得られたシートの片面全面に遮光処理として、スプレー式塗工装置を用いて白色塗料の塗布を実施した。また、シートの反対面全面に、接着剤−2をロール塗工装置にて塗布し、乾燥炉を通過させてロール状に巻き取り、単層の包装シートを得た。該包装シートを用いて全光線透過率及び開封性能の評価を行った。評価結果を表1に記した。
【0076】
得られたシートの層構成、層比、シート全体の組成濃度比率、厚さ、および、上記(1)〜(6)の評価項目についての評価結果を表1に記載した。
【0077】
[実施例2]
表1に示すように、ポリスチレンの種類と延伸倍率を変更した以外は、実施例1と同様にして厚さ0.71mm、発泡倍率4.1倍の単層包装シートを得た。
得られたシート及び包装シートの評価結果を表1に示した。
【0078】
[実施例3]
表1に示すように、原料及びその配合比と接着剤の種類と延伸倍率とを変更した以外は、実施例1と同様にして厚さ0.41mm、発泡倍率1.5倍の単層包装シートを得た。
得られたシート及び包装シートの評価結果を表1に示した。
【0079】
[実施例4]
両外層形成用樹脂に発泡剤を配合せず、内層形成用樹脂に発泡剤を配合し、実施例1で使用したのと同じ二台の押出機を使用し、内層用の押出機のシリンダー温度を220℃に、外層用の押出機シリンダー温度を220℃設定し溶融させ、実施例1の手順で内層が発泡した三層の未延伸シートとして押出し、80℃に設定した冷却ロールで急冷し、両外層が未発泡層で内層も発泡層からなる未延伸発泡シートを作製した。得られた未延伸シートを、ロール方式縦延伸機で縦方向に約2.5倍、続いてテンター横延伸機によって横方向に約2.5倍延伸し、厚さ0.47mm、発泡倍率1.7倍の二軸延伸発泡シートとし、ロール状に巻き取った。
【0080】
得られたシートの片面全面に遮光処理として、スプレー式塗工装置を用いて白色塗料の塗布を実施した。また、シートの反対面全面に、接着剤−2をロール塗工装置にて塗布し、乾燥炉を通過させてロール状に巻き取り、多層包装シートを得た。
得られたシート及び包装シートの評価結果を表1に示した。
【0081】
[実施例5]
実施例4において、延伸条件と押出機の温度の調整により、延伸倍率と発泡倍率を変更した以外は、実施例4と同様にして厚さ0.58mm、発泡倍率3.7倍の多層包装シートを得た。
得られたシート及び包装シートの評価結果を表1に示した。
【0082】
[実施例6]
実施例4において、原料配合及び延伸倍率を表1に示すように変更した以外は、実施例4と同様にして厚さ0.72mm、発泡倍率3.6倍の多層包装シートを得た。
得られたシート及び包装シートの評価結果を表1に示した。
【0083】
[実施例7]
実施例4において、原料配合及び延伸倍率を表1に示すように変更した以外は、実施例4と同様にして厚さ0.88mm、発泡倍率3.0倍の多層包装シートを得た。
得られたシート及び包装シートの評価結果を表1に示した。
【0084】
[比較例1]
実施例1において、発泡剤の種類と量、並びに延伸倍率を表2に示すように変更すると共に、ポリオレフィンを含有しないことにした以外は、実施例1と同様にして厚さ0.33mm、発泡倍率1.5倍の発泡シートをロール状に巻き取った。
得られたシートの片面全面に遮光処理として、スプレー式塗工装置を用いて白色塗料の塗布を実施した。また、シートの反対面全面に、接着剤−2をロール塗工装置にて塗布し、乾燥炉を通過させてロール状に巻き取り、単層包装シートを得た。
得られたシート及び包装シートの評価結果を表2に示した。
【0085】
[比較例2]
実施例4において、内層の発泡剤の種類と量を変えると共に、ポリオレフィンを含有しないことにした以外は、実施例4と同様にして厚さ0.31mm、発泡倍率1.7倍の多層包装シートを得た。
得られたシート及び包装シートの評価結果を表2に示した。
【0086】
[比較例3]
実施例2において、2軸延伸を1軸延伸に変更した以外は、実施例2と同様にして厚さ1.04mm、発泡倍率2.2倍の発泡シートをロール状に巻き取った。
得られたシートの片面全面に、遮光処理としてスプレー式塗工装置を用いて白色塗料の塗布を実施した。また、シートの反対面全面に、接着剤−2をロール塗工装置にて塗布し、乾燥炉を通過させてロール状に巻き取り、単層包装シートを得た。
得られたシート及び包装シートの評価結果を表2に示した。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
なお、表1及び表2において、「シートの層比率*1」における数値は、外層/内層/外層における各層の樹脂組成物の押出し量(質量)比率を意味し、「単層・多層*2」において「発」は発泡を意味し、「非」は非発泡を意味する。また、「ゴム成分*3」における数値は、自着性接着剤、塗料を除いたシート部分のみに含まれるゴム成分(質量%)を意味している。
また、特に示さないが、実施例1−7で得られたシートにおいて、相溶化剤の含有量は、ポリスチレン及びポリオレフィンの合計量100質量部に対して0質量部であった。
【0090】
(結果及び考察)
比較例1及び比較例2は、実施例1−7と対比すると、ポリスチレンのみからなり、ポリオレフィンを含有しない発泡二軸延伸シートであるため、引張弾性率が高く、包装シートとしては柔軟性に劣っていた。また、独立気泡率が高いため、折り曲げ加工性が劣っていた。
比較例3は、実施例2と対比すると、2軸延伸か1軸延伸の違いであるが、1軸延伸であるため、引裂強度の縦横比が大きく、開封性能に劣っていた。
【0091】
これに対し、実施例1−7はすべて、ポリスチレンとポリオレフィンを含有する発泡二軸延伸シートであるか、或いは、内層がポリスチレンとポリオレフィンを含有する発泡樹脂層であり、外層がポリスチレンを含有する非発泡樹脂層からなる二軸延伸シートであるため、包装シートに必要な緩衝性、折り曲げ加工性、柔軟性、耐水性、開封性能を備えていた。
【0092】
上記の実施例・比較例とこれまでの試験結果を総合して考えると、緩衝性、折り曲げ加工性、耐水性及び開封性能を確保しつつ柔軟性を付与する観点から、単層の発泡スチレン系樹脂シート又は多層構成の内層をなす発泡樹脂層において、ポリスチレン及びポリオレフィンの合計量100質量部に対して、ポリオレフィンを0.5〜49質量部の割合で配合するのが好ましく、中でも1質量部以上或いは20質量部以下、その中でも2質量部以上或いは10質量部以下の割合で配合するのがさらに好ましいと考えることができる。
【0093】
実施例3で使用した接着剤−1は、天然ゴム系材料をMMA変性しただけの接着剤であり、他の実施例で使用した接着剤−2は、天然ゴム系材料をMMA変性し、さらにスチレンブタジエンゴムを配合してなる組成を有する接着剤であった。
両者を比較すると、スチレンブタジエンゴムを配合していない接着剤は、ポリスチレンとの相性が悪く、引き裂いて開封した際に糸引き現象を生じたのに対し、スチレンブタジエンゴムを配合した接着剤は糸引き現象を生じなかった。
これまでの試験結果から、天然ゴム系材料にスチレンブタジエンゴムを配合してなる組成を有する接着剤であれば、糸引き現象を生じることなく、きれいに開封することができることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン及びポリオレフィンを含有し、かつ2軸延伸されてなる発泡スチレン系樹脂シートからなる包装用シート。
【請求項2】
独立気泡率が0.5〜27%であることを特徴とする請求項1に記載の包装用シート。
【請求項3】
シートの片面に自着性接着剤が付着された包装用シートであって、当該自着性接着剤は、天然ゴム系材料にスチレンブタジエンゴムが配合されてなる組成を有する接着剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の包装用シート。
【請求項4】
相溶化剤の含有量が、ポリスチレン及びポリオレフィンの合計量100質量部に対して0.1質量部未満であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の包装用シート。
【請求項5】
シートの縦方向及び横方向の引裂強度の比率が、縦方向:横方向=1:3〜3:1であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の包装用シート。
【請求項6】
包装用シートの縦方向及び横方向の延伸倍率がともに1.1〜5.0倍であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の包装用シート。
【請求項7】
包装用シートの全光線透過率が20%以下であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の包装用シート。
【請求項8】
ポリスチレン及びポリオレフィンを含有し、かつ2軸延伸されてなる単層の発泡スチレン系樹脂シートからなる請求項1〜7の何れかに記載の包装用シート。
【請求項9】
内層と外層を備えた3層以上からなる多層構成の2軸延伸されてなる包装用シートであって、内層は、ポリスチレン及びポリオレフィンを含有する発泡樹脂層であり、外層は、ポリスチレンを含有する非発泡樹脂層であることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の包装用シート。
【請求項10】
単層の発泡スチレン系樹脂シート又は多層構成の内層をなす発泡樹脂層において、ポリスチレン及びポリオレフィンの合計量100質量部に対して、ポリスチレンを50〜99.5質量部含み、ポリオレフィンを0.5〜50質量部含むことを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の包装用シート。
【請求項11】
ポリオレフィンが、ポリエチレン、ポリプロピレン及びエチレン酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の包装用シート。

【公開番号】特開2012−144285(P2012−144285A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5266(P2011−5266)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】