説明

包装用積層材およびそれを用いた蓋材

【課題】包装用積層材を合成樹脂フィルムのみで構成し,しかも積層材にカールが発生しないようにする。
【解決手段】 包装用積層材は、合成樹脂フィルムよりなる基材層(A)とシーラント樹脂層(B)とが積層されたものであり、基材層(A)がともに合成樹脂フィルムよりなる裏面に印刷が施された表面層(1)とその下面に形成せられた印刷保護層(2)よりなり、シーラント樹脂層(B)がともに合成樹脂フィルムよりなる裏面層(3)とその上面に形成せられたクッション性付与層(4)よりなるものである。そして、層の厚みは、シーラント樹脂層(B)より基材層(A)の方が大きくなされ、かつ層の弾性率は、シーラント樹脂層(B)より基材層(A)の方が大きくなされ、さらに、基材層(A)の弾性率が、1〜7GPaの範囲内となされているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、飲料品等の包装に用いられる包装用積層材およびそれを用いた蓋材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、包装材料は、環境保護および省資源化のために、さらには食品・飲料品の金属混入チェック用金属探知機の探知障碍にならないようするために、アルミニウム箔を使用せずに合成樹脂フィルムのみよりなる包装用積層材や合成樹脂と紙とよりなる包装用積層材が広く使用されるようになってきた。
【0003】
しかしながら、アルミニウム箔を使用しない包装用積層材は、腰が弱くてカールするため、食品・飲料品の自動充填機へ包装用積層材を装入した際、シール不良や作業上のトラブルの発生するおそれがあった。
【0004】
特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)の薄い表面フィルムに、溶融押出しにより低密度ポリエチレン(LDPE)をラミネートし、その上に続いて溶融押出しによりシーラント樹脂をラミネートした包装用積層材の場合、押出した樹脂が冷却固化する過程で収縮するため、全体がシーラント樹脂層側に大きくカールしてしまう。その結果、自動充填機へ包装用積層材を装入した際にその作業性が著しく悪くなる。また、この積層材を用いた蓋を容器にヒートシールする場合は、積層材がカールしているので、ヒートシールが不完全になるという問題もあった。
【0005】
上記カール現象は、PETフィルム上にCDPEに続いてシーラント樹脂を押出しコーティングした際、その瞬間の溶融した状態での樹脂密度が0.765g/cc(比容積:1.307)であるのに対し、これが冷却固化して結晶化すると、その状態での樹脂密度が0.920g/cc(比容積:1.087)となり、20%程度も体積収縮が生じるためである考えられる。
【0006】
従来、このようなカールが発生しない包装用積層材として、下記特許文献1に開示されているように、(A)厚み50〜150μmの紙を主体とする層、(B)合成樹脂フィルム単体又は複合体からなる層、(C)厚み15〜50μmのシーラント層を積層した積層材において、(A)、(B)および(C)の各層の厚みが(A)≧(B)+(C)の関係にある包装用積層材が開示されている。
【特許文献1】特開2000−85058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記紙を主体とする構成の包装用積層材の場合、しかしながら、紙の吸湿性のために印刷ピッチが伸び縮みして管理が難しいという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、合成樹脂フィルムのみで構成されてしかもカールが発生しない包装用積層材およびそれを用いた蓋材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明による包装用積層材は、合成樹脂フィルムよりなる基材層(A)とシーラント樹脂層(B)とが積層された積層材において、つぎの条件を満足することを特徴とするものである。
【0010】
1.層の厚みが(A)≧(B)であること。
【0011】
2.層の弾性率が(A)≧(B)であること。
【0012】
3.(A)の弾性率が1〜7GPaであること。
【0013】
上記において、基材層(A)は、下記請求項2のように、表面層および印刷保護層のうち少なくとも表面層よりなるものであるから、基材層(A)の厚さは、基材層(A)が表面層だけの場合は、表面層の厚さであり、基材層(A)が表面層および印刷保護層よりなる場合は、両者を合わせた厚さとなる。また、表面層および印刷保護層の厚さは、ともに6〜100μmである。
【0014】
シーラント樹脂層(B)は、下記請求項3のように、裏面層およびクッション性付与層のうち少なくとも裏面層よりなるものであるから、シーラント樹脂層(B)が裏面層だけの場合は、裏面層の厚さであり、シーラント樹脂層(B)が裏面層およびクッション性付与層よりなる場合は、両者を合わせた厚さとなる。また、裏面層の厚さは、5〜70μmであり、クッション性付与層の厚さは、10〜70μmである。
【0015】
基材層(A)の弾性率を1〜7GPaに限定したのは、弾性率が1 GPa未満であると、カール防止効果が少なく、7GPaを超えると、積層材を蓋に用いた場合、蓋としての開封機能に支障をきたすおそれがあるからである。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1記載の包装用積層材において、基材層が、ともに合成樹脂フィルムよりなる表面層とその下面に形成せられた印刷保護層よりなることを特徴とするものである。
【0017】
上記において、印刷保護層は、表面層の裏面に印刷された文字、模様等を保護するためのものである。表面層および印刷保護層の合成樹脂の具体例としては、ともにポリエチレンナフタレート(PEN)、PET、二軸延伸ポリアミド(ON),ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリスチレン(PS)、アラミド樹脂およびポリカーボネートを挙げることができる。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1または2記載の包装用積層材において、シーラント樹脂層(B)が、ともに合成樹脂フィルムよりなる裏面層とその上面に形成せられたクッション性付与層よりなることを特徴とするものである。
【0019】
上記において、裏面層およびクッション性付与層に用いられる合成樹脂の具体例としては、LDPE、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)およびエチレン−ビニール アセテート共重合体(EVA)を挙げることができる。
【0020】
請求項4の発明による蓋材は、請求項1、2または3記載の包装用積層材を用いたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の包装用積層材によれば 、積層材を構成しているものがすべて合成樹脂であり、吸湿性を有する紙が全く使用されていないので、積層材に印刷を施した場合、印刷ピッチが伸び縮みするというような問題がない。また、積層材は上記の構成を有するので、溶融押出し直後のシーラント樹脂の冷却過程で生じる収縮力に打ち勝つことができ、カールの発生がない。したがって、自動充填機へ積層材を装入した際の作業性に問題が生じない。また、この積層材を用いた蓋を容器にヒートシールする場合にも、積層材がカールしていないので、ヒートシールが不完全になるおそれがない。しかも、積層材には、従来のようにアルミニウム箔が使用されていないので、合成樹脂のリサイクルが容易となる利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明による包装用積層材の実施の形態を示すものであって、この積層材は、合成樹脂フィルムよりなる基材層(A)とシーラント樹脂層(B)とが積層されたものであり、基材層(A)がともに合成樹脂フィルムよりなる裏面に印刷が施された表面層(1)とその下面に形成せられた印刷保護層(2)よりなり、シーラント樹脂層(B)がともに合成樹脂フィルムよりなる裏面層(3)とその上面に形成せられたクッション性付与層(4)よりなるものである。そして、層の厚みは、シーラント樹脂層(B)より基材層(A)の方が大きくなされ、かつ層の弾性率は、シーラント樹脂層(B)より基材層(A)の方が大きくなされ、さらに、基材層(A)の弾性率が、1〜7GPaの範囲内となされている。
【実施例】
【0023】
下表の実施例および比較例につき、カールの発生状況を目視で観察した。
【0024】
クッション性付与層の樹脂溶融押出温度を320゜とし、裏面層の樹脂溶融押出温度を300゜とし、基材層(A)側にコロナ処理およびアンカーコート処理を施してこの面にシーラント樹脂層(B)をラミネートし、冷却ロールで冷却した後に巻き取った。
【表1】

【0025】
表1から明らかなように、本発明の実施例のものには、いずれもカールの発生は認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による包装用積層材の部分垂直断面図である。
【符号の説明】
【0027】
A 基材層
B シーラント樹脂層
1 表面層
2 印刷保護層
3 裏面層
4 クッション性付与層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂フィルムよりなる基材層(A)とシーラント樹脂層(B)とが積層された積層材において、つぎの条件を満足することを特徴とする包装用積層材。
1.層の厚みが(A)≧(B)であること。
2.層の弾性率が(A)≧(B)であること。
3.(A)の弾性率が1〜7GPaであること。
【請求項2】
基材層が、ともに合成樹脂フィルムよりなる表面層とその下面に形成せられた印刷保護層よりなることを特徴とする請求項1記載の包装用積層材。
【請求項3】
シーラント樹脂層(B)が、ともに合成樹脂フィルムよりなる裏面層とその上面に形成せられたクッション性付与層よりなることを特徴とする請求項1または2記載の包装用積層材。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の包装用積層材を用いたことを特徴とする蓋材。




【図1】
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【公開番号】特開2006−272850(P2006−272850A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98114(P2005−98114)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(501428187)昭和電工パッケージング株式会社 (110)
【Fターム(参考)】