説明

包装箱

【課題】 バージンロック機能付きの包装箱において、バージンロックを解除された蓋板を直ちに開封可能にしながら、再封された蓋板の自由な開放を制止可能にすること。
【解決手段】 包装箱10であって、蓋板21の開封後に該蓋板21の差込フラップ22を後板12の内側面と内フラップ23、24の後縁23B、24Bの間の間隙Gに差込んで蓋板21を再封したとき、該差込フラップ22のスリット40に係止している係止片30の該差込フラップ22の内側に入っている上端係止部32を内フラップ23、24の内側面に衝合させ、蓋板21の自由な開放を制止可能するもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバージンロック機能付きの包装箱に関する。
【背景技術】
【0002】
バージンロック機能付きの包装箱として、特許文献1に記載の如く、第1〜第4側壁と、第1側壁の上端縁に連設された頂壁と、底部開口を閉じる底壁とを有する六面体の物品収納容器であり、頂壁が、自由端縁と、自由端縁に連設された係止片とを有し、第2側壁が、その上端縁近傍に形成されたスリットと、スリットから容器の下方へ向かって形成された開閉窓とを有し、係止片をスリットから容器の内側へ挿入すると、係止片の先端部が容器の内側に係合し、開閉窓を第2側壁の外側へ旋回させると、スリットにつながって係止片の先端部を容器の外側へ引き出すことが可能な開口が形成されるものがある。この包装箱は、頂部開口を頂壁の回転によって開封したとき、頂壁に連設されている係止片と容器との係合(バージンロック)を解除するため、開閉窓を第2側壁から切り離さなければならず、バージンロックを解除した開閉窓の切り離しが容器の外観に表れることで容器が開封済であることがわかる。
【0003】
ところが、特許文献1に記載の包装箱では、容器のバージンロックを解除して開封する作業が、開閉窓を第2側壁から切り離して外側へ旋回させる工程と、係止片を第2側壁に形成されているスリットから引き出す工程の複数の工程からなり、迅速に欠ける。
【0004】
従来の他のバージンロック機能付きの包装箱として、図9に示す如く、後板2の上縁の側の一部であって、該後板2のその他の部分から切取り可能に設けられた係止片3と、前板1に連設されている蓋板4の差込フラップ5に設けられてその幅方向へ延びるスリット5Aとを有し、該差込フラップ5を後板2の内側面と内フラップ6の後縁の間の間隙に差込むとき、係止片3の上端係止部3Aを差込フラップ5の外側面からスリット5Aに挿入し、該係止片3の上端係止部3Aに該スリット5Aを係止させて蓋板4を閉止可能にするものがある。
【0005】
この包装箱では、蓋板4の差込フラップ5のスリット5Aと係止している係止片3を後板2のその他の部分から切取れば、蓋板4のバージンロックを解除して該蓋板4を直ちに開封できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-160127
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図9に示した従来のバージンロック機能付きの包装箱では、蓋板4の開封後に蓋板4の差込フラップ5を後板2の内側面と内フラップ6の後縁の間の間隙に差込んで蓋板4を再封したとき、蓋板4の前板1に対する折り曲げ連設部で生じている開放習性力により、蓋板4が自由に開放してしまい易い。
【0008】
本発明の課題は、バージンロック機能付きの包装箱において、バージンロックを解除された蓋板を直ちに開封可能にしながら、再封された蓋板の自由な開放を制止可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、前板と後板と左右の側板からなる胴部と、前板の上縁に連設される蓋板と、蓋板の先端部に設けられる差込フラップと、左右の側板の上縁の少なくとも一方に連設される内フラップとを有し、胴部の開口に内フラップを折込み配置し、この内フラップの外側に折込み重ねた蓋板の差込フラップを後板の内側面と内フラップの後縁の間の間隙に差込み可能にし、後板の上縁の側の一部であって、該後板のその他の部分から切取り可能に設けられた係止片と、蓋板の差込フラップに設けられてその幅方向へ延びるスリットとを有し、該差込フラップを後板の内側面と内フラップの後縁の間の間隙に差込むとき、係止片の上端係止部を該差込フラップの外側面からスリットに挿入し、該係止片の上端係止部に該スリットを係止させて蓋板を閉止可能にするとともに、蓋板の差込フラップのスリットと係止している係止片を後板のその他の部分から切取り、蓋板を開封可能にする包装箱であって、蓋板の開封後に該蓋板の差込フラップを後板の内側面と内フラップの後縁の間の間隙に差込んで蓋板を再封したとき、該差込フラップのスリットに係止している係止片の該差込フラップの内側に入っている上端係止部を内フラップの内側面に衝合させ、蓋板の自由な開放を制止可能するようにしたものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は包装箱の物品収容前の蓋開き状態を示す斜視図である。
【図2】図2は包装箱の物品収容後の蓋閉じ状態を示す斜視図である。
【図3】図3は包装箱の展開図である。
【図4】図4は蓋開き状態を示し、(A)は正面図、(B)は(A)のB−B線に沿う模式断面図である。
【図5】図5は蓋閉じ状態を示し、(A)は正面図、(B)は(A)のB−B線に沿う模式断面図である。
【図6】図6は蓋開封状態を示し、(A)は正面図、(B)は(A)のB−B線に沿う模式断面図である。
【図7】図7は蓋再封状態を示し、(A)は正面図、(B)は(A)のB−B線に沿う模式断面図である。
【図8】図8は包装箱の胴部の開口に配置された内フラップを示し、(A)は一例の平面図、(B)は他の例の平面図である。
【図9】図9は従来例の包装箱を示し、(A)は斜視図、(B)は模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1、図2に示したバージンロック機能付き包装箱10は、図1に示す蓋開き状態において物品を収容した後、図2に示す蓋閉じ状態を後述する如くにバージンロックし、このバージンロックを解除して蓋開封可能にするものである。
【0012】
包装箱10は、板紙、プラスチックシート、又は紙とプラスチックの複合シート等から打ち抜かれた図3に示す如くの展開素材から製作される。尚、本明細書では、包装箱10を水平面上においた状態で、水平面上にて相直交する一方を前後、他方を左右と称し、水平面に対して直交する鉛直方向に沿う上方を上、下方を下と称する。尚、素材の展開状態でいう各部の左右、上縁、下縁とは、この素材が組立てられた包装箱の状態で、各部の左右、上縁、下縁を構成することとなるものを左右、上縁、下縁という。
【0013】
包装箱10は、前板11の左右両側に折目13A、14Aを介して左右の側板13、14を連設し、左側板13に折目12Aを介して後板12を連設し、後板12に折目15Aを介して糊付片15を連設する。各板11、12、13、14を角柱状に折曲げ、右側板14の内側面に糊付片15を接着して胴部10Aを形成する。
【0014】
包装箱10は、前板11の上縁に折目21Aを介して蓋板21を連設し、蓋板21の先端部に折目22Aを介して差込フラップ22を設け、左右の側板13、14の上縁に折目23A、24Aを介して左右の内フラップ23、24を連設する。
【0015】
包装箱10は、前板11の下縁に折目25Aを介して底板25を連設し、後板12の下縁に折目26Aを介して底板26を連設する。包装箱10は、左右の側板13、14の下縁に折目27A、28Aを介して内フラップ27、28を連設する。
【0016】
包装箱10は、胴部10Aの開口10Bを後述する如くに蓋板21等で閉じた蓋閉じ状態を少なくとも1回開封したとき、この開封の痕跡を外観に残すため、蓋板21等に下記(A)の係止片30と(B)のスリット40によるバージンロック機能を備える。
【0017】
(A)包装箱10は、後板12の上縁の側の中央の一部であって、後板12のその他の部分から切取り可能に設けられた係止片30を有する。係止片30は、図4〜図7に示す如く、後板12のその他の部分とミシン目31Aを介して切取り可能に接合される切取り可能部31と、切取り可能部31の中央上部に連結される上端係止部32とからなる。上端係止部32は、切取り可能部31の中央上部との連結部32Aと、この連結部32Aの幅方向の左右両側に延びる肩部32B、32Bと、両側の肩部32B、32Bの連結部32Aに対する外側端同士を結ぶ膨出状曲線32Cとで囲まれる舌片状をなす。上端係止部32の膨出状曲線32Cは、本実施例では外方に凸の円弧状をなす。
【0018】
(B)包装箱10は、蓋板21の差込フラップ22の中央部に設けられてその幅方向(左右方向)へ延びるスリット40を有する。スリット40は、その幅方向の中央部を、先端側に向けて凸状をなす凸状スリット部41とする。差込フラップ22の凸状スリット部41に沿って画成されてV字状外郭をなす凸片部42が、係止片30の上端係止部32を後述する如くにスリット40に挿入するときのガイドになる。
【0019】
包装箱10は、以上の素材により以下の如くに組立てられ、図1に示す蓋開き状態の箱体を形成する。
【0020】
(1)素材の各板11、12、13、14を角柱状に折曲げ、右側板14の内側面に糊付片15を接着して胴部10Aを形成する。胴部10Aの上端に開口10Bを形成する。
【0021】
(2)胴部10Aの下端の開口に内フラップ27、28を折込み配置し、この内フラップ27、28の外側に折込み重ねた底板25、26を互いに係合かつ接着して底部10Cを形成する。
【0022】
以下、包装箱10の使用方法について説明する。
(1)図1、図4に示す蓋開き状態の包装箱10の内部に物品を収容する。即ち、包装箱10の蓋板21及び内フラップ23、24を開口10Bの外方に開き、この開口10Bから物品を装填する。
【0023】
(2)包装箱10を図2、図5に示す如くにバージンロックされた蓋閉じ状態とする。即ち、胴部10Aの開口10Bに内フラップ23、24を折込み配置し、この内フラップ23、24の外側に折込み重ねた蓋板21の差込フラップ22を、後板12の内側面と内フラップ23、24の後縁23B、24Bの間の間隙G(図8)に差込む。
【0024】
この(2)による蓋板21の差込フラップ22の差込み過程で、図5に示す如く、係止片30の上端係止部32を差込フラップ22の外側面から該差込フラップ22のスリット40に挿入し、係止片30の上端係止部32に該スリット40を係止させて蓋板21を閉止、換言すればバージンロックする。係止片30の上端係止部32を差込フラップ22のスリット40に挿入するとき、上端係止部32の膨出状曲線32Cの円弧頂部が差込フラップ22の前述した凸片部42の内側面に誘い込まれ、該上端係止部32をスリット40に挿入ガイドするものになる。蓋板21の差込フラップ22の差込みが完了したと同時に、係止片30の上端係止部32が肩部32Bまで差込フラップ22のスリット40に挿入され、スリット40のエッジが上端係止部32の肩部32Bに係止されて上述のバージンロックを形成するものになる。
【0025】
(3)前述(1)で装填された物品の取出しに際しては、図6に示す如く、蓋板21の差込フラップ22のスリット40と係止している係止片30を、後板12のその他の部分から切取って離すことによりバージンロックを解除し、蓋板21を開封可能にする。係止片30がバージンロックを解除するために切り離された痕跡が包装箱10の外観に表れて包装箱10が開封済であることがわかる。係止片30は、切取り可能部31のミシン目31Aにおいて後板12のその他の部分から切り離される。
【0026】
(4)蓋板21の上述(3)の開封後に、図7に示す如く、蓋板21の差込フラップ22を後板12の内側面と内フラップ23、24の後縁23B、24Bの間の間隙Gに差込んで蓋板21を再封する。このとき、差込フラップ22のスリット40に係止している上述(3)の係止片30において、差込フラップ22のスリット40から内側に入っている上端係止部32は、内フラップ23、24の内側面に衝合し、蓋板21の自由な開放が制止される。
【0027】
尚、包装箱10にあっては、内フラップ23、24の後縁23B、24Bが後板12の内側面との間の間隙Gを、差込フラップ22のスリット40に係止する係止片30の上端係止部32が内フラップ23、24の後縁23B、24B寄りの内側面に衝合するに足るに十分な小間隙に設定する。図8(A)は内フラップ23、24の先端側の後縁23B、24Bを後板12の内側面に近接する側に十分に張出し、係止片30の上端係止部32が内フラップ23、24の先端側の内側面に確実に衝合するようにした例である。図8(B)は内フラップ23、24の基端側寄りの後縁23B、24Bを後板12の内側面に近接する側に十分に張出し、係止片30の上端係止部32が内フラップ23、24の基端側寄りの内側面に衝合するようにし、かつ差込フラップ22を後板12の幅方向中央の内側面と内フラップ23、24の先端側の後縁23B、24Bの間の間隙Gに差込み容易にした例である。
【0028】
本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(請求項1)
(a)蓋板21の差込フラップ22のスリット40と係止している係止片30を後板12のその他の部分から切取れば、蓋板21のバージンロックを解除して該蓋板21を直ちに開封できる。
【0029】
(b)蓋板21の開封後に蓋板21の差込フラップ22を後板12の内側面と内フラップ23、24の後縁23B、24Bの間の間隙Gに差込んで蓋板21を再封したとき、蓋板21の前板11に対する折曲げ連設部で生じている開放習性力が蓋板21を開放させようとしても、蓋板21の差込フラップ22に設けたスリット40に係止している係止片30の該差込フラップ22の内側に入っている上端係止部32が内フラップ23、24の内側面に引きかかる如くに衝合し、蓋板21の自由な開放が制止される。
【0030】
(請求項2)
(c)蓋板21の差込フラップ22に設けられるスリット40が、その幅方向の中央部を、先端側に向けて凸状をなす凸状スリット部41とすることにより、差込フラップ22の凸状スリット部41に沿って画成される凸片部42が、係止片30の上端係止部32をスリット40に挿入するときのガイドになる。従って、蓋板21の最初の閉止時に、後板12に設けられている係止片30の上端係止部32を差込フラップ22のスリット40に容易に挿入できる。
【0031】
(請求項3)
(d)後板12に設けられている係止片30の上端係止部32が、切取り可能部31の中央上部との連結部32Aと、この連結部32Aの幅方向の両側に延びる肩部32B、32Bと、両側の肩部32B、32Bの連結部32Aに対する外側端同士を結ぶ膨出状曲線32Cとで囲まれる舌片状をなす。従って、蓋板21の最初の閉止時に、後板12に設けられている係止片30の舌片状上端係止部32を差込フラップ22のスリット40に容易に挿入できる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、包装箱において、蓋板の開封後に該蓋板の差込フラップを後板の内側面と内フラップの後縁の間の間隙に差込んで蓋板を再封したとき、該差込フラップのスリットに係止している係止片の該差込フラップの内側に入っている上端係止部を内フラップの内側面に衝合させ、蓋板の自由な開放を制止できる。
【符号の説明】
【0033】
10 包装箱
10A 胴部
10B 開口
11 前板
12 後板
13、14 側板
21 蓋板
22 差込フラップ
23、24 内フラップ
30 係止片
31 切取り可能部
31A ミシン目
32 上端係止部
32A 連結部
32B 肩部
32C 膨出状曲線
40 スリット
41 凸状スリット部
42 凸片部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前板と後板と左右の側板からなる胴部と、前板の上縁に連設される蓋板と、蓋板の先端部に設けられる差込フラップと、左右の側板の上縁の少なくとも一方に連設される内フラップとを有し、胴部の開口に内フラップを折込み配置し、この内フラップの外側に折込み重ねた蓋板の差込フラップを後板の内側面と内フラップの後縁の間の間隙に差込み可能にし、
後板の上縁の側の一部であって、該後板のその他の部分から切取り可能に設けられた係止片と、蓋板の差込フラップに設けられてその幅方向へ延びるスリットとを有し、該差込フラップを後板の内側面と内フラップの後縁の間の間隙に差込むとき、係止片の上端係止部を該差込フラップの外側面からスリットに挿入し、該係止片の上端係止部に該スリットを係止させて蓋板を閉止可能にするとともに、
蓋板の差込フラップのスリットと係止している係止片を後板のその他の部分から切取り、蓋板を開封可能にする包装箱であって、
蓋板の開封後に該蓋板の差込フラップを後板の内側面と内フラップの後縁の間の間隙に差込んで蓋板を再封したとき、該差込フラップのスリットに係止している係止片の該差込フラップの内側に入っている上端係止部を内フラップの内側面に衝合させ、蓋板の自由な開放を制止可能する包装箱。
【請求項2】
前記蓋板の差込フラップに設けられるスリットが、その幅方向の中央部を、先端側に向けて凸状をなす凸状スリット部とし、
差込フラップの凸状スリット部に沿って画成される凸片部が、係止片の上端係止部をスリットに挿入するときのガイドになる請求項1に記載の包装箱。
【請求項3】
前記後板に設けられる係止片が、後板のその他の部分とミシン目を介して切取り可能に接合される切取り可能部と、切取り可能部の中央上部に連結される上端係止部とからなり、
上端係止部が、切取り可能部の中央上部との連結部と、この連結部の幅方向の両側に延びる肩部と、両側の肩部の連結部に対する外側端同士を結ぶ膨出状曲線とで囲まれる舌片状をなす請求項1又は2に記載の包装箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−285186(P2010−285186A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−140505(P2009−140505)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【出願人】(000166258)古林紙工株式会社 (19)
【Fターム(参考)】