説明

包装茹で麺製造装置及び包装茹で麺製造方法

【課題】本発明の目的は、麺が茹でられてから包装されるまでの間に微生物で汚染されることが防がれる包装茹で麺製造装置及び包装茹で麺製造方法を提供することである。
【解決手段】包装茹で麺製造装置10は、麺を茹でる茹で装置20と、茹でられた麺を冷却する冷却装置40と、冷却装置40に接続されたダクト93を介して清浄空気を冷却装置40内に供給する清浄空気供給装置90とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装された茹で麺を製造する包装茹で麺製造装置及び包装茹で麺製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1によれば、茹で麺は、麺を茹で、茹でた麺を水洗冷却し、冷却された麺のpHを調整し、pHが調整された麺をポリプロピレン等の袋に包装し、必要に応じて80〜95℃程度での加熱殺菌を行ったものである。茹で麺は、茹でうどん、茹でそば、又は、茹で中華麺である。包装後に加熱殺菌を行った茹で麺は、比較的長期間の保存が可能である。包装後に加熱殺菌を行わない場合、水洗冷却から包装工程にバイオロジカルクリーンルームを設けることが望まれる。
【0003】
特許文献1は、包装茹で麺の製造方法を開示している。包装茹で麺の製造方法は、生麺類を100℃未満の条件下で乾燥して乾麺類を得る工程と、乾麺類を100℃以下の温度で茹でて茹で麺類を得る工程と、茹で麺類のpHを調整する工程と、pHが調整された茹で麺類を殺菌された容器に無菌下で充填する工程と、容器を無菌下で密封する工程とを含み、生麺類又は乾麺類を100℃を超える温度で加熱する工程と茹で麺類を加熱する工程とを含まない。ここで、茹で麺類の充填及び容器の密封は、アメリカ航空宇宙局(NASA)規格のクラス100,000またはそれよりも清浄度の高いクリーンルームで行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−253460号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】諏訪好英ら、「〈業種別〉クリーンルーム運用管理事例集」、情報機構、2007年6月、pp.433−446
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、麺が茹でられてから包装されるまでの間に微生物で汚染されることが防がれる包装茹で麺製造装置及び包装茹で麺製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、(発明を実施するための形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0008】
本発明による包装茹で麺製造装置は、麺を茹でる茹で装置(20)と、前記麺を冷却する冷却装置(40)と、前記冷却装置に接続されたダクト(93)を介して清浄空気を前記冷却装置内に供給する清浄空気供給装置(90)とを具備する。
【0009】
上記包装茹で麺製造装置は、前記冷却装置内に蒸気を吹き出す蒸気配管(50)を更に具備する。
【0010】
上記包装茹で麺製造装置は、前記冷却装置内の温度を検出する温度センサ(51〜56)と、制御装置(100)とを更に具備する。前記制御装置は、前記蒸気配管が前記冷却装置内に蒸気を吹き出している間に前記温度が所定の閾値温度を超えている時間が所定の閾値時間を超えた場合、前記蒸気配管に設けられたバルブ(102)を閉じて前記冷却装置内に蒸気を吹き出すことを停止し、前記バルブを閉じた後に前記清浄空気供給装置に前記冷却装置内への前記清浄空気の供給を開始させる。
【0011】
前記茹で装置は、湯(34)が入れられる茹で槽(24)と、仕切り板(26)と、バケットコンベア(25)とを備える。前記仕切り板の下端(26a)は前記湯に浸かる。前記茹で装置内は、前記仕切り板及び前記湯によって第1空間(21)及び第2空間(22)に仕切られる。前記バケットコンベアは、前記第1空間から前記湯に入れられた前記麺を前記第2空間に引き上げる。前記第2空間は前記冷却装置内に接続される。
【0012】
前記茹で装置は、前記麺が茹でられた後に通過するシュート(28)を備える。上記包装茹で麺製造装置は、前記シュートを定期的に殺菌する殺菌器(27、29、35、36)を更に具備する。
【0013】
前記殺菌器は、前記シュートに蒸気を吹きかける蒸気配管(27)である。
【0014】
前記殺菌器は、前記シュートに散水するシャワーヘッド(29)である。前記シャワーヘッドは前記シュートに定期的に熱湯をかける。
【0015】
前記殺菌器は、ヒータ(35)である。
【0016】
前記殺菌器は、有機酸水溶液、次亜塩素酸水、又はアルコールを前記シュートに対して噴出すノズル(36)である。
【0017】
前記冷却装置は、有機酸又は次亜塩素酸を含む冷却水に前記麺をくぐらせ、有機酸又は次亜塩素酸のいずれも含まない冷却水に前記麺をくぐらせない。
【0018】
上記包装茹で麺製造装置は、前記麺を包装する包装機(80)を更に具備する。前記包装機は、前記冷却装置から前記包装機に前記清浄空気が流入するように前記冷却装置に接続される。
【0019】
本発明による包装茹で麺製造方法は、麺を茹でるステップと、冷却装置(40)に接続されたダクト(93)を介して前記冷却装置内に清浄空気を供給しながら前記冷却装置が前記麺を冷却するステップとを具備する。
【0020】
上記包装茹で麺製造方法は、前記麺を冷却する前記ステップの前に、前記冷却装置内を殺菌するステップを更に具備する。
【0021】
前記冷却装置内を殺菌するステップは、前記冷却装置内に蒸気を吹き出すことを開始するステップと、前記冷却装置内の温度が所定の閾値温度を超えている時間が所定の閾値時間を超えた場合に、前記冷却装置内に蒸気を吹き出すことを停止するステップとを含む。
【0022】
前記麺を茹でる前記ステップを実行する茹で装置(20)は、湯(34)が入れられる茹で槽(24)と、仕切り板(26)とを備える。前記仕切り板の下端(26a)は前記湯に浸かる。前記茹で装置内は、前記仕切り板及び前記湯によって第1空間(21)及び第2空間(22)に仕切られる。前記第2空間は前記冷却装置内に接続される。前記麺を茹でる前記ステップは、前記麺を前記第1空間から前記湯に入れるステップと、前記麺を前記湯の中で移動させて前記仕切り板の下を通過させるステップと、前記麺を前記湯から前記第2空間に引き上げるステップとを含む。
【0023】
上記包装茹で麺製造方法は、前記茹で装置が備えるシュート(28)を定期的に殺菌するステップを更に具備する。前記麺は、前記麺を茹でる前記ステップの後に前記シュートを通過する。
【0024】
前記麺を冷却する前記ステップは、有機酸又は次亜塩素酸を含む冷却水に前記麺をくぐらせるステップを含み、有機酸又は次亜塩素酸のいずれも含まない冷却水に前記麺をくぐらせるステップを含まない。
【0025】
上記包装茹で麺製造方法は、前記冷却装置から包装機(80)に前記清浄空気を流入させながら前記包装機が前記麺を包装するステップを更に具備する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、麺が茹でられてから包装されるまでの間に微生物で汚染されることが防がれる包装茹で麺製造装置及び包装茹で麺製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る包装茹で麺製造装置の概略図である。
【図2】図2は、シュートを加熱殺菌するためのヒータを示す概略図である。
【図3】図3は、包装茹で麺製造装置が備える制御系のブロック図である。
【図4】図4は、冷却装置と包装機の接続状態を示す概略図である。
【図5】図5は、冷却水の細菌数の変化を示すグラフである。
【図6】図6は、冷却水の真菌数の変化を示すグラフである。
【図7】図7は、10℃で保存した場合の製品細菌数の変化を示すグラフである。
【図8】図8は、15℃で保存した場合の製品細菌数の変化を示すグラフである。
【図9】図9は、10℃で保存した場合の製品真菌数の変化を示すグラフである。
【図10】図10は、15℃で保存した場合の製品真菌数の変化を示すグラフである。
【図11】図11は、シュートを殺菌するためのノズルを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
添付図面を参照して、本発明による包装茹で麺製造装置及び包装茹で麺製造方法を実施するための形態を以下に説明する。
【0029】
(第1の実施形態)
図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る包装茹で麺製造装置10を説明する。包装茹で麺製造装置10は、包装茹で麺を製造する。包装茹で麺製造装置10は、麺を茹でる茹で装置20と、茹でられた麺を冷却する冷却装置40と、冷却された麺を包装する包装機80と、清浄空気供給装置90と、給気ファン95と、排気ファン98を具備する。清浄空気供給装置90は、給気ファン91と、フィルタユニット92とを備える。フィルタユニット92は、HEPAフィルタのような微生物及び塵埃を除去可能なフィルタを備える。清浄空気供給装置90はダクト93に接続され、ダクト93は冷却装置40に接続されている。ダクト93に逆止ダンパ94が設けられている。
【0030】
清浄空気供給装置90がダクト93を介して冷却装置40内に微生物及び塵埃が除去された清浄空気を供給して冷却装置40内を陽圧に保持する。したがって、茹でられた麺が空気中に浮遊する微生物で汚染されることが防がれる。包装茹で麺製造装置10及びこれを用いる包装茹で麺製造方法は、冷却装置40が設置される部屋をバイオロジカルクリーンルームにする場合と比較して、コスト面で有利である。
【0031】
以下、本実施形態に係る包装茹で麺製造装置10を更に詳細に説明する。
【0032】
茹で装置20は、ケース23と、麺を茹でるための湯34が入れられる茹で槽24と、バケットコンベア25と、仕切り板26と、シュート28と、シャワーヘッド29を備える。茹で槽24、バケットコンベア25、及び、仕切り板26は、ケース23に収容されている。仕切り板26の下端26aは、湯34に浸かる。すなわち、下端26aは湯34の水面34aより下に配置される。ケース23(茹で装置20)内は、仕切り板26及び湯34によって空間21及び空間22に仕切られる。仕切り板26には、空間21と空間22とを接続する開口26bが形成されている。シュート28の入口は空間22に配置され、シュート28の出口はケース23(茹で装置20)外に配置される。空間22は、シュート28とシュート57を介して冷却装置40内と接続される。シャワーヘッド29は空間22に配置される。ケース23には、空間21に空気を取り入れるための空気取入口23aが設けられている。給気ファン95はダクト96に接続され、ダクト96は空気取入口23aに接続される。ダクト96に逆止ダンパ97が設けられている。給気ファン95はダクト96を介して空間21に空気を供給する。給気ファン95は、微生物及び塵埃が除去された清浄空気を空間21に供給してもよく、工場内の空気をそのまま空間21に供給してもよい。排気ファン98は、ダクト99を介して空間21に接続されている。排気ファン98は空間21から排気する。
【0033】
図2を参照して、包装茹で麺製造装置10は、シュート28およびシュート57を加熱殺菌するためのヒータ35を備える。
【0034】
図1を参照して、冷却装置40は、ケース42と、冷却槽43〜45と、バケットコンベア49と、シュート57及び58を備える。冷却槽43〜45及びバケットコンベア49は、ケース42(冷却装置40)内の空間41に配置される。シュート57の入口はケース42外に配置され、シュート57の出口は空間41に配置される。シュート57の入口はシュート28の出口の真下に配置される。包装茹で麺製造装置10は、シュート28の出口及びシュート57の入口の周囲を囲む囲い30を備える。囲い30は、シュート57の入口から冷却装置40内(空間41)に空気中を浮遊する微生物が落下することを防止する。シュート58の入口58aは空間41に配置され、シュート58の出口58bはケース42外(冷却装置40外)に配置される。冷却槽43〜45には、それぞれ、茹でられた麺を冷却するための冷却水46が溜められる。冷却槽44は冷却槽43よりも高い位置に配置され、冷却槽45は冷却槽44よりも高い位置に配置される。逆止ダンパ104が設けられた排気ダクト103が冷却装置40に接続されている。
【0035】
包装茹で麺製造装置10は、蒸気配管27及び50と、温度センサ31、32、51〜56を備える。蒸気配管27は、空間22に配置され、空間22に蒸気を吹き出す。蒸気配管50は、空間41に配置され、空間41に蒸気を吹き出す。複数の温度センサ31及び32は、空間22に配置され、空間22内の温度を検出する。複数の温度センサ51〜56は、空間41に配置され、冷却装置40内の温度を検出する。
【0036】
図3を参照して、包装茹で麺製造装置10の制御系を説明する。包装茹で麺製造装置10の制御系は、温度センサ31、32、51〜56と、制御装置100と、蒸気配管27に設けられたバルブ101と、蒸気配管50に設けられたバルブ102と、清浄空気供給装置90と、給気ファン95と、排気ファン98と、冷却水供給装置120とを備える。
【0037】
以下、本実施形態に係る包装茹で麺製造方法を説明する。
【0038】
包装茹で麺製造装置10の運転を開始する前に、空間22内及び冷却装置40内を蒸気で加熱殺菌する。加熱殺菌中、シュート58の出口58bはキャップ60で塞がれ、制御装置100は清浄空気供給装置90を停止し、制御装置100は給気ファン95を停止させ、制御装置100は排気ファン98に空間21から排気させ、制御装置100は、バルブ101及び102を開いて蒸気配管27及び50から空間22内及び冷却装置40内に蒸気を吹き出すことを開始する。これにより、空間22内及び冷却装置40内が加熱殺菌される。このとき、仕切り板26の開口26bを通って空間22から空間21に蒸気が流入し、排気ファン98によって排気される。冷却装置40内(空間41)の蒸気は排気ダクト103を介して工場外に排気される。制御装置100は、蒸気配管27及び50が蒸気を吹き出している間に温度センサ31、32、51〜56が検出する全ての温度を監視し、全ての温度が所定の閾値温度を超えている時間が所定の閾値時間を超えた場合、バルブ101及び102を閉じて蒸気配管27及び50が空間22及び冷却装置40内に蒸気を吹き出すことを停止する。ここで、閾値温度及び閾値時間は、空間22及び冷却装置40内の殺菌が十分に行われるように予め設定される。
【0039】
それから、制御装置100は、清浄空気供給装置90に冷却装置40内に清浄空気の供給を開始させ、給気ファン95に空間21に空気を供給させる。
【0040】
清浄空気の供給の開始後、キャップ60がシュート58の出口58bから取り除かれ、出口58bが包装機80に接続される。
【0041】
図4を参照して、包装機80は、麺を袋82内に誘導する麺誘導路81を備える。包装機80は、麺を袋82に包装する。シュート58の出口58bと麺誘導路81とがシリコンチューブ65を介して接続される。シリコンチューブ65により出口58bと麺誘導路81の間から空気中を浮遊する微生物が包装機80内に入ることが防がれる。
【0042】
清浄空気の供給の開始後、制御装置100は、冷却水供給装置120に冷却水の供給を開始させる。冷却水供給装置120は、包装茹で麺製造装置10の運転中、冷却水を冷却槽45に供給し続ける。冷却水は、冷却槽45から冷却槽44に流入し、冷却槽44から冷却槽43に流入し、冷却槽43から冷却装置40外に排出される。したがって、冷却槽44内の冷却水の温度は冷却槽45内の冷却水の温度より高く、冷却槽43内の冷却水の温度は冷却槽44内の冷却水の温度より高い。
【0043】
その後、包装茹で麺製造装置10の運転が開始される。以下、包装茹で麺製造装置10の運転中の動作を説明する。
【0044】
前工程から茹で装置20に供給された麺は、空間21から湯34に入れられる。バケットコンベア25は、麺を湯34中で移動させて仕切り板26の下を通過させてから、麺を湯34から空間22に引き上げる。湯34中を移動するときに麺が茹でられて殺菌される。バケットコンベア25は、引き上げた麺をシュート28へ落とす。麺は、シュート28及びシュート57を通過して、冷却装置40に入る。シャワーヘッド29は、麺が滑りやすくなるようにシュート28に散水する。
【0045】
バケットコンベア49は、麺を冷却槽43内の冷却水にくぐらせ、その後冷却槽44内の冷却水にくぐらせ、その後冷却槽45内の冷却水にくぐらせ、その後シュート58に落とす。
【0046】
麺は、シュート58及び麺誘導路81を通過して袋82に入る。包装機80は、袋82をシールして麺を袋82に包装する。
【0047】
包装茹で麺製造装置10の運転中、清浄空気供給装置90は清浄空気を冷却装置40内に供給し、給気ファン95は空間21に空気を供給し、排気ファン98は空間21から排気する。空間41内の清浄空気の一部は、シュート57及びシュート28を通って空間22に流入する。空間22内の清浄空気及び湯34からの湯気は、仕切り板26の開口26bを通って空間21に流入し、空間21から排気ファン98によって排気される。茹で装置20内が仕切り板26及び湯34で仕切られているため、清浄空気供給装置90が供給する清浄空気の量が少なくて済む。空間41内の清浄空気の他の一部は、シュート58及び麺誘導路81を通って、包装機80内の袋82内に流入する。したがって、空間22、空間41、シュート58内、麺誘導路81内、袋82内が清浄空気で満たされる。清浄空気供給装置90が空間22及び41を陽圧に保持するため、空間22及び41に空気中を浮遊する微生物が入り込むことが防がれる。湯34から引き上げられてから袋82に包装されるまで麺の周囲が除菌された清浄空気で満たされているため、袋82に包装された包装茹で麺(以下、「製品」という。)の初発菌数が低く抑えられる。そのため、製品は、包装後の加熱殺菌を行わなくても長期間の保存が可能である。包装後の加熱殺菌を行わないため、製品の製造コストが抑制され、且つ、加熱殺菌の熱で麺のたんぱく質が変性して味が悪くなることが防がれる。
【0048】
ここで、包装茹で麺製造装置10の運転中、制御装置100はヒータ35にシュート28およびシュート57を定期的に加熱殺菌させる。この定期的な加熱殺菌により、麺が茹でられたときに死滅しなかった麺の原料由来の耐熱性芽胞形成菌がシュート28およびシュート57の表面で増殖することが防止され、増殖した耐熱性芽胞形成菌で製品が汚染されることが防止される。
【0049】
本実施形態においては、ヒータ35を用いてシュート28およびシュート57を加熱するかわりに、シャワーヘッド29が定期的にシュート28およびシュート57に熱湯をかけてもよく、蒸気配管27がシュート28およびシュート57に向かって定期的に蒸気を吹きかけてもよい。ヒータ35、シャワーヘッド29、及び蒸気配管27は加熱殺菌器として用いられる。
【0050】
本発明に関連して行った微生物試験の結果を以下に説明する。
【0051】
図5は、従来法における冷却槽の冷却水を冷却槽43の設定温度で保存したときの冷却水の細菌数変化を示す。ひし形シンボルは冷却水が酢酸を含まない場合の細菌数を示し、四角形シンボルは冷却水が酢酸を質量百分率濃度で0.1%含む場合の細菌数を示し、三角形シンボルは冷却水が酢酸を質量百分率濃度で0.3%含む場合の細菌数を示す。冷却水が酢酸を含まない場合、冷却水が酢酸を0.1%含む場合、冷却水が酢酸を0.3%含む場合の各々について、初発の細菌数と12時間後の細菌数とを測定した。酢酸を質量百分率濃度で0.3%含む冷却水を用いた場合に、冷却水の細菌数の増加が最も良く抑制された。
【0052】
図6は、従来法における冷却槽の冷却水を冷却槽43の設定温度で保存したときの冷却水の真菌数変化を示す。ひし形シンボルは冷却水が酢酸を含まない場合の真菌数を示し、四角形シンボルは冷却水が酢酸を質量百分率濃度で0.1%含む場合の真菌数を示し、三角形シンボルは冷却水が酢酸を質量百分率濃度で0.3%含む場合の真菌数を示す。冷却水が酢酸を含まない場合、冷却水が酢酸を0.1%含む場合、冷却水が酢酸を0.3%含む場合の各々について、初発の真菌数と12時間後の真菌数とを測定した。酢酸を質量百分率濃度で0.3%含む冷却水を用いた場合に、冷却水の真菌数の増加が最も良く抑制された。
【0053】
図7は、冷却装置40内に清浄空気を供給しない従来法で製造された製品と、本実施形態に係る包装茹で麺製造方法を模擬した第1模擬方法で製造された製品と、本実施形態に係る包装茹で麺製造方法を模擬した第2模擬方法で製造された製品を、10℃で保存した場合の製品細菌数の変化を示す。第1模擬方法においては、茹でた麺をクリーンベンチ内で酢酸を質量百分率で0.3%含む冷却水で冷却し、クリーンベンチ内で包装した。第2模擬方法においては、茹でた麺をクリーンベンチ内で酢酸を含まない冷却水で冷却し、クリーンベンチ内で包装した。ひし形シンボルは従来法で製造された製品の細菌数を示し、四角形シンボルは第1模擬方法で製造された製品の細菌数を示し、三角形シンボルは第2模擬方法で製造された製品の細菌数を示す。従来法で製造された製品、第1模擬方法で製造された製品、及び、第2模擬方法で製造された製品の各々について、製造1日後の細菌数と、製造7日後の細菌数と、製造14日後の細菌数を測定した。10℃で保存したときの製品1gあたりの細菌数は、従来法の場合には、製造14日後に、茹で麺の衛生規範で生菌数の基準とされる100,000を超えたが、第1模擬方法及び第2模擬方法の場合には、製造14日後であっても100,000を超えなかった。
【0054】
図8は、従来法で製造された製品と、第1模擬方法で製造された製品と、第2模擬方法で製造された製品を、15℃で保存した場合の製品細菌数の変化を示す。ひし形シンボルは従来法で製造された製品の細菌数を示し、四角形シンボルは第1模擬方法で製造された製品の細菌数を示し、三角形シンボルは第2模擬方法で製造された製品の細菌数を示す。従来法で製造された製品、第1模擬方法で製造された製品、及び、第2模擬方法で製造された製品の各々について、製造1日後の細菌数と、製造7日後の細菌数と、製造14日後の細菌数を測定した。15℃で保存したときの製品1gあたりの細菌数は、従来法及び第2模擬方法の場合には、製造14日後に100,000を超えたが、第1模擬方法の場合には、製造14日後であっても100,000を超えなかった。
【0055】
図9は、従来法で製造された製品と、第1模擬方法で製造された製品と、第2模擬方法で製造された製品を、10℃で保存した場合の製品真菌数の変化を示す。ひし形シンボルは従来法で製造された製品の真菌数を示し、四角形シンボルは第1模擬方法で製造された製品の真菌数を示し、三角形シンボルは第2模擬方法で製造された製品の真菌数を示す。従来法で製造された製品、第1模擬方法で製造された製品、及び、第2模擬方法で製造された製品の各々について、製造1日後の真菌数と、製造7日後の真菌数と、製造14日後の真菌数を測定した。10℃で保存したときの製品1gあたりの真菌数は、従来法の場合には、製造7日後及び14日後に100,000を超えたが、第1模擬方法及び第2模擬方法の場合には、製造1日後、7日後、及び14日後のすべてにおいて10を超えなかった。
【0056】
図10は、従来法で製造された製品と、第1模擬方法で製造された製品と、第2模擬方法で製造された製品を、15℃で保存した場合の製品真菌数の変化を示す。ひし形シンボルは従来法で製造された製品の真菌数を示し、四角形シンボルは第1模擬方法で製造された製品の真菌数を示し、三角形シンボルは第2模擬方法で製造された製品の真菌数を示す。従来法で製造された製品、第1模擬方法で製造された製品、及び、第2模擬方法で製造された製品の各々について、製造1日後の真菌数と、製造7日後の真菌数と、製造14日後の真菌数を測定した。15℃で保存したときの製品1gあたりの真菌数は、従来法の場合には、製造7日後及び14日後に100,000を超えたが、第1模擬方法及び第2模擬方法の場合には、製造1日後、7日後、及び14日後のすべてにおいて10を超えなかった。
【0057】
したがって、第1模擬方法の場合には、10℃で保存した場合と15℃で保存した場合の両方において、製造14日後であっても、細菌数が100,000を超えず、真菌数が10を超えなかった。
【0058】
冷却水の酢酸濃度が高いと麺の酸味が強くなること、及び、上述の微生物試験の結果から、冷却水供給装置120が酢酸を質量百分率濃度で0.1〜1.0%含む冷却水を冷却槽43〜45に供給することが好ましい。より好ましくは0.25〜0.35%である。冷却水供給装置120が有機酸としての酢酸を含む冷却水を冷却槽43〜45に供給する場合、麺は有機酸を含まない冷却水をくぐらない。有機酸により冷却水のpHが下がるため、芽胞の発芽が防止される。また、冷却水中の有機酸により、麺のpHが調整される。
【0059】
(第2の実施形態)
図11を参照して、本発明の第2の実施形態に係る包装茹で麺製造装置10を説明する。本実施形態に係る包装茹で麺製造装置10は、ヒータ35のかわりにノズル36を備える点が第1の実施形態に係る包装茹で麺製造装置10と異なる。包装茹で麺製造装置10の運転中、制御装置100はノズル36にシュート28およびシュート57を定期的に殺菌させる。ノズル36は、有機酸水溶液、次亜塩素酸水、又はアルコールを定期的にシュート28およびシュート57に対して噴き出す。ノズル36は、有機酸水溶液、次亜塩素酸水、及びアルコールから選択される二つ又は三つを定期的にシュート28およびシュート57に対して噴き出してもよい。この定期的な殺菌により、麺が茹でられたときに死滅しなかった麺の原料由来の耐熱性芽胞形成菌がシュート28およびシュート57の表面で増殖することが防止され、増殖した耐熱性芽胞形成菌で製品が汚染されることが防止される。ノズル36は、シュート28およびシュート57を定期的に殺菌するための殺菌器として用いられる。
【0060】
本実施形態に係る包装茹で麺製造装置10は、ヒータ35とノズル36の両方を備えてもよい。
【0061】
上記各実施形態に様々な変更を加えることが可能である。
【0062】
例えば、包装茹で麺製造装置10の運転開始前において、蒸気を用いた加熱殺菌のかわりに、又は、蒸気を用いた加熱殺菌と併せて、茹で装置20の空間22に面した部分及び冷却装置40の空間41に面した部分を次亜塩素酸水又はアルコールで殺菌することが考えられる。ここで、茹で装置20の空間22に面した部分は、シュート28を含み、冷却装置40の空間41に面した部分は、シュート57、58を含む。
【0063】
更に、包装機80をシュート58の出口58bに接続する前に、包装機80を熱湯とアルコールで殺菌することが好ましい。
【0064】
酢酸を含む冷却水を用いるかわりに、乳酸のような酢酸以外の有機酸を含む冷却水や次亜塩素酸を含む冷却水を用いても良い。
【符号の説明】
【0065】
10…包装茹で麺製造装置
20…茹で装置
21、22…空間
23…ケース
23a…空気取入口
24…茹で槽
25…バケットコンベア
26…仕切り板
26a…下端
26b…開口
28…シュート
29…シャワーヘッド
30…囲い
31、32…温度センサ
34…湯
34a…水面
35…ヒータ
36…ノズル
40…冷却装置
41…空間
42…ケース
43〜45…冷却槽
46…冷却水
49…バケットコンベア
50…蒸気配管
51〜56…温度センサ
57、58…シュート
58a…シュート入口
58b…シュート出口
60…キャップ
65…シリコンチューブ
80…包装機
81…麺誘導路
82…袋
90…清浄空気供給装置
91…給気ファン
92…フィルタユニット
93…ダクト
94…逆止ダンパ
95…給気ファン
96…ダクト
97…逆止ダンパ
98…排気ファン
99…ダクト
100…制御装置
102…バルブ
103…排気ダクト
104…逆止ダンパ
120…冷却水供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
麺を茹でる茹で装置と、
前記麺を冷却する冷却装置と、
前記冷却装置に接続されたダクトを介して清浄空気を前記冷却装置内に供給する清浄空気供給装置と
を具備する
包装茹で麺製造装置。
【請求項2】
前記冷却装置内に蒸気を吹き出す蒸気配管を更に具備する
請求項1の包装茹で麺製造装置。
【請求項3】
前記冷却装置内の温度を検出する温度センサと、
制御装置と
を更に具備し、
前記制御装置は、前記蒸気配管が前記冷却装置内に蒸気を吹き出している間に前記温度が所定の閾値温度を超えている時間が所定の閾値時間を超えた場合、前記蒸気配管に設けられたバルブを閉じて前記冷却装置内に蒸気を吹き出すことを停止し、前記バルブを閉じた後に前記清浄空気供給装置に前記冷却装置内への前記清浄空気の供給を開始させる
請求項2の包装茹で麺製造装置。
【請求項4】
前記茹で装置は、
湯が入れられる茹で槽と、
仕切り板と、
バケットコンベアと
を備え、
前記仕切り板の下端は前記湯に浸かり、
前記茹で装置内は、前記仕切り板及び前記湯によって第1空間及び第2空間に仕切られ、
前記バケットコンベアは、前記第1空間から前記湯に入れられた前記麺を前記第2空間に引き上げ、
前記第2空間は前記冷却装置内に接続される
請求項1乃至3のいずれかに記載の包装茹で麺製造装置。
【請求項5】
前記茹で装置は、前記麺が茹でられた後に通過するシュートを備え、
前記シュートを定期的に殺菌する殺菌器を更に具備する
請求項1乃至4のいずれかに記載の包装茹で麺製造装置。
【請求項6】
前記殺菌器は、前記シュートに蒸気を吹きかける蒸気配管である
請求項5の包装茹で麺製造装置。
【請求項7】
前記殺菌器は、前記シュートに散水するシャワーヘッドであり、
前記シャワーヘッドは前記シュートに定期的に熱湯をかける
請求項5の包装茹で麺製造装置。
【請求項8】
前記殺菌器は、ヒータである
請求項5の包装茹で麺製造装置。
【請求項9】
前記殺菌器は、有機酸水溶液、次亜塩素酸水、又はアルコールを前記シュートに対して噴き出すノズルである
請求項5の包装茹で麺製造装置。
【請求項10】
前記冷却装置は、
有機酸又は次亜塩素酸を含む冷却水に前記麺をくぐらせ、
有機酸又は次亜塩素酸のいずれも含まない冷却水に前記麺をくぐらせない
請求項1乃至9のいずれかに記載の包装茹で麺製造装置。
【請求項11】
前記麺を包装する包装機を更に具備し、
前記包装機は、前記冷却装置から前記包装機に前記清浄空気が流入するように前記冷却装置に接続される
請求項1乃至10のいずれかに記載の包装茹で麺製造装置。
【請求項12】
麺を茹でるステップと、
冷却装置に接続されたダクトを介して前記冷却装置内に清浄空気を供給しながら前記冷却装置が前記麺を冷却するステップと
を具備する
包装茹で麺製造方法。
【請求項13】
前記麺を冷却する前記ステップの前に、前記冷却装置内を殺菌するステップを更に具備する
請求項12の包装茹で麺製造方法。
【請求項14】
前記冷却装置内を殺菌するステップは、
前記冷却装置内に蒸気を吹き出すことを開始するステップと、
前記冷却装置内の温度が所定の閾値温度を超えている時間が所定の閾値時間を超えた場合に、前記冷却装置内に蒸気を吹き出すことを停止するステップと
を含む
請求項13の包装茹で麺製造方法。
【請求項15】
前記麺を茹でる前記ステップを実行する茹で装置は、
湯が入れられる茹で槽と、
仕切り板と
を備え、
前記仕切り板の下端は前記湯に浸かり、
前記茹で装置内は、前記仕切り板及び前記湯によって第1空間及び第2空間に仕切られ、
前記第2空間は前記冷却装置内に接続され、
前記麺を茹でる前記ステップは、
前記麺を前記第1空間から前記湯に入れるステップと、
前記麺を前記湯の中で移動させて前記仕切り板の下を通過させるステップと、
前記麺を前記湯から前記第2空間に引き上げるステップと
を含む
請求項12乃至14のいずれかに記載の包装茹で麺製造方法。
【請求項16】
前記茹で装置が備えるシュートを定期的に殺菌するステップを更に具備し、
前記麺は、前記麺を茹でる前記ステップの後に前記シュートを通過する
請求項12乃至15のいずれかに記載の包装茹で麺製造方法。
【請求項17】
前記麺を冷却する前記ステップは、
有機酸又は次亜塩素酸を含む冷却水に前記麺をくぐらせるステップを含み、
有機酸又は次亜塩素酸のいずれも含まない冷却水に前記麺をくぐらせるステップを含まない
請求項12乃至16のいずれかに記載の包装茹で麺製造方法。
【請求項18】
前記冷却装置から包装機に前記清浄空気を流入させながら前記包装機が前記麺を包装するステップを更に具備する
請求項12乃至17のいずれかに記載の包装茹で麺製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−50611(P2011−50611A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203123(P2009−203123)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【特許番号】特許第4608007号(P4608007)
【特許公報発行日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(503447379)中野食品株式会社 (1)
【出願人】(504209389)
【Fターム(参考)】