包装袋
【課題】 本発明は、別体の蓋材を用いなくても密封性を保持でき且つ取出口を通じて収納物を取り出すことができる包装袋を提供する。
【解決手段】 本発明の包装袋10は、表フィルム1と裏フィルム2が接着剤層5を介して積層された積層フィルム3から形成された袋本体4を有し、前記袋本体4に取出口を形成するために、前記表フィルム1の面内に平面視非直線状の表側切込線11が形成され、且つ、前記裏フィルム2の面内に前記表側切込線11と位置ずれした平面視非直線状の裏側切込線21が形成されており、前記表側切込線11と裏側切込線21の間の領域12aにおける表フィルム1と裏フィルム2の層間が、擬似接着されている。
【解決手段】 本発明の包装袋10は、表フィルム1と裏フィルム2が接着剤層5を介して積層された積層フィルム3から形成された袋本体4を有し、前記袋本体4に取出口を形成するために、前記表フィルム1の面内に平面視非直線状の表側切込線11が形成され、且つ、前記裏フィルム2の面内に前記表側切込線11と位置ずれした平面視非直線状の裏側切込線21が形成されており、前記表側切込線11と裏側切込線21の間の領域12aにおける表フィルム1と裏フィルム2の層間が、擬似接着されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納物を取り出すための取出口を形成できる包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、お菓子や鰹節などの食品、ウェットティッシュなどの衛生品、医薬品などの様々な物品が、柔軟な包装袋に収納されている。
また、切込線に従って包装袋の一部分を離反させることによって収納物の取出口が生じ、この取出口をシート状の開閉蓋片で開閉できる包装体も知られている(特許文献1)。
かかる包装体は、所望枚数のウェットティッシュを取出口から取り出した後、この取出口を開閉蓋片にて再封することができる。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の包装体においては、別体の開閉蓋片を包装袋に貼付しなければならないので、部品数が増え、さらに、製造時にはこれを貼付する工程が必要となる。
従来の包装体においては、包装袋の表面に切込線を覆うように開閉蓋片を貼付しなければ、切込線の隙間から収納空間内にガスや粉塵が進入し、包装袋の密封性を保持できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−19858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、別体の蓋材を用いなくても密封性を保持でき且つ取出口を通じて収納物を取り出すことができる包装袋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の包装袋は、表フィルムと裏フィルムが接着剤層を介して積層された積層フィルムから形成された袋本体を有し、前記袋本体に取出口を形成するために、前記表フィルムの面内に平面視非直線状の表側切込線が形成され、且つ、前記裏フィルムの面内に前記表側切込線と位置ずれした平面視非直線状の裏側切込線が形成されており、前記表側切込線と裏側切込線の間の領域における表フィルムと裏フィルムの層間が、擬似接着されている。
【0007】
上記包装袋においては、袋本体を形成する表フィルムと裏フィルムにそれぞれ切込線(表側切込線及び裏側切込線)が形成されているが、前記表側切込線と裏側切込線の間の領域における表フィルムと裏フィルムの層間が擬似接着されているので、袋本体の密封性が保持されている。
かかる表側切込線と裏側切込線の間の領域における表フィルムと裏フィルムの層間が擬似接着されているので、表側切込線を利用して表フィルムの一部分を離反させると、前記領域における表フィルムと裏フィルムが層間剥離し、さらに、表フィルムに引っ張られて裏フィルムの一部分が裏側切込線に従って離反する。従って、前記表フィルムの一部分及び裏フィルムの一部分が袋本体から捲れ、裏側切込線で囲われる範囲内に、袋本体の収納空間に通じる取出口が生じる。よって、この取出口から収納物を取り出すことができる。
また、上記領域における表フィルムと裏フィルムの層間は、擬似接着されているので、一度剥離した後に再度接着しない状態、又は、一度剥離した後に再度接着したとしても軽い衝撃などで簡単に剥がれる状態となっている。従って、表フィルムの一部分及び裏フィルムの一部分をを捲った後は、これが元通りに袋本体に接着しなくなる。従って、一度開封したことが簡単に判別できるので、悪戯などの不正開封を容易に発見することができる。
【0008】
本発明の好ましい包装袋は、前記表側切込線と裏側切込線の間の領域における表フィルムと裏フィルムの層間が擬似接着剤層を介して擬似接着され、前記領域以外における表フィルムと裏フィルムの層間が前記接着剤層を介して接着されており、前記擬似接着剤層及び接着剤層が、同じ接着剤から形成され、前記擬似接着剤層の接着強度が接着剤層の接着強度よりも小さい。例えば、前記接着剤として、加熱温度に応じて接着強度が変化し得る感熱接着剤が用いられる。
【0009】
上記好ましい包装袋においては、同じ接着剤を用いて、擬似接着剤層と接着剤層が形成されている。よって、接着剤の塗り分け作業を行う必要がないので、上記包装袋を容易に作製できる。
例えば、加熱温度に応じて接着強度が変化し得る感熱接着剤を用いる場合、1つの感熱接着剤を表フィルム(又は裏フィルム)の全体に塗布し、その後、擬似接着させたい領域に対応する感熱接着剤を所定の温度で、且つ強く接着させたい領域に対応する感熱接着剤を所定の温度で加熱することにより、擬似接着剤層と接着剤層を形成できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の包装袋は、別体の蓋材を用いなくても密封性を保持できる。また、本発明の包装袋は、フィルムの一部分を捲ることにより、収納物を取り出すための取出口を簡単に形成できる。
また、本発明の包装袋を一度開封すると、そのことが簡単に判別できる。従って、不正開封を未然に防止できる包装袋を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係る包装袋の斜視図。
【図2】同包装袋の平面図。
【図3】図1のIII−III線断面図(包装袋の収納空間側から裏フィルムの裏面側を見た図)。
【図4】図2のIV−IV線拡大断面図。
【図5】切込線の変形例を示す斜視図。
【図6】開封部を捲り上げた状態を示す斜視図。
【図7】本発明の第3実施形態に係る包装袋について、図2のIV−IV線と同様な箇所で切断した拡大断面図。
【図8】本発明の第4実施形態に係る包装袋の第1変形例の平面図。
【図9】本発明の第4実施形態に係る包装袋の第2変形例の平面図。
【図10】本発明の第4実施形態に係る包装袋の第3変形例の平面図。
【図11】本発明の第4実施形態に係る包装袋の第4変形例の平面図。
【図12】本発明の第5実施形態に係る包装袋の斜視図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
本明細書において、横方向及び縦方向は、包装袋を任意に平坦面上に置いてその法線方向から見たときの方向性を指し、横方向と縦方向は、袋本体の一面内で互いに直交する方向である。また、平面視形状は、包装袋を任意に平坦面上に置いてその法線方向から見たときの形状である。さらに、「A〜B」という記載は、A以上B以下を意味する。
各図において、部材の大きさ及び厚みは、実際の製品とは異なっていることに留意されたい。
また、図2、図8、図9、図10及び図11において、擬似接着とされた範囲を「薄墨」で表している。フィルムの層間に擬似接着がなされているので、これは平面図に直接現れないが、擬似接着の範囲を分かりやすく図示する目的で、便宜上、このように表している。
【0013】
[第1実施形態]
図1乃至図4に於いて、本発明の包装袋10は、表フィルム1と裏フィルム2が接着剤層5を介して積層された積層フィルム3から形成された袋本体4を有する。袋本体4の内部には、収納物が収納される収納空間が形成されている。
この袋本体4の一面に前記収納空間に通じる取出口を形成するために、袋本体4を構成する積層フィルム3には切込線11,21が形成されている。この切込線11,21によって囲われた、袋本体4の面内の一部分7(以下、開封部という場合がある)が袋本体4から離反することによって、収納物の取出口が生じる。
積層フィルム3は、表フィルム1と裏フィルム2を有するので、表フィルム1及び裏フィルム2の面内にそれぞれ切込線11,21が形成されている。以下、表フィルム1に形成された切込線11を「表側切込線」といい、裏フィルム2に形成された切込線21を「裏側切込線」という。
【0014】
表側切込線11の形状は、平面視非直線状であり、裏側切込線21の形状は、前記表側切込線11から位置ずれした平面視非直線状である。この表側切込線11と裏側切込線21の間の領域12aにおける表フィルム1と裏フィルム2の層間は、擬似接着されている。
【0015】
本発明において擬似接着とは、少しの力で層間剥離できる程度に弱く接着している状態であって、一度剥離した後(弱く接着している状態を解除した後)、再度接着しないことをいい、一度剥離した後に特殊加圧条件や加熱条件などを施すことにより再度弱く接着する場合や、一度剥離した後に通常の人の力で加圧することにより、軽い衝撃や時間の経過に伴い簡単に剥離する程度に再度弱く接着する場合を含む。
【0016】
本実施形態では、前記表側切込線11と裏側切込線21の間の領域12aにおける表フィルム1と裏フィルム2の層間が擬似接着剤層51を介して擬似接着され、一方、前記領域12a以外における表フィルム1と裏フィルム2の層間が接着剤層5を介して強く接着されている。この擬似接着剤層51及び接着剤層5は、加熱温度に応じて接着強度が変化し得る感熱接着剤から形成されている。
【0017】
具体的には、袋本体4を構成する積層フィルム3は、柔軟性を有し、液体及び大気を実質的に通さない枚葉体からなる。なお、本明細書において、フィルムとは、一般にシートと呼ばれている枚葉体が含まれる。すなわち、フィルムとシートは、いずれも枚葉体であり、両者は同義である。
【0018】
表フィルム1の材質は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。表フィルム1としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの合成樹脂フィルム、不織布、発泡樹脂フィルム、紙などが挙げられる。表フィルム1は、任意に選ばれた2種以上のフィルムの積層体(例えば、2種以上の合成樹脂フィルムが一体的に積層された積層体、或いは、合成樹脂フィルムと紙が一体的に積層された積層体など)でもよい。また、表フィルム1は、上記のような様々なフィルム又は積層体に、ガスバリア層及び/又は光バリア層が一体的に積層された積層体でもよい。
加工性に優れ且つ収納物の品質を良好に保持できることから、表フィルム1は、合成樹脂フィルム、2種以上の合成樹脂フィルムの積層体、又は、これらにガスバリア層及び/又は光バリア層が積層された積層体を用いることが好ましい。
【0019】
なお、表フィルム1は、透明又は非透明の何れでもよい。さらに、表フィルム1には、必要に応じて、意匠印刷が施されていてもよい。意匠印刷が施される場合、その意匠印刷層(インキ層。図示せず)は、その擦傷を防止するため、表フィルム1の裏面に設けられることが好ましい。もっとも、意匠印刷層は、表フィルム1の表面に設けられていてもよい。
表フィルム1の厚みは、特に限定されない。表フィルム1として合成樹脂フィルム又はこれを含む積層体が用いられる場合には、その厚みは、一般に、15μm〜120μmである。
【0020】
裏フィルム2の材質も、特に限定されず、上記表フィルム1で例示したようなフィルム又は積層体を用いることができる。なお、表フィルム1がガスバリア層及び/又は光バリア層を有する場合には、裏フィルム2は、これらの層を有さなくてもよいし、或いは、これらの層を有していてもよい。また、表フィルム1及び裏フィルム2の何れも、ガスバリア層及び/又は光バリア層を有さなくてもよい。
【0021】
熱シールによって袋本体4を形成できることから、裏フィルム2は、シーラント層を有することが好ましい。例えば、裏フィルム2は、シーラント層の単層、又は、シーラント層と他の層(例えば、シーラント層とは異なる合成樹脂フィルム)が一体的に積層され且つこのシーラント層が最裏面に一体的に積層された積層体を用いることが好ましい。
シーラント層は、加熱することにより溶融して互いに接着し得る層である。シーラント層としては、汎用的なポリエチレン層が挙げられる。
裏フィルム2は、透明又は非透明の何れでもよい。
裏フィルム2の厚みは、特に限定されない。裏フィルム2としてシーラント層の単層が用いられる場合には、その厚みは、一般に、15μm〜70μmである。
【0022】
表側切込線11は、袋本体4の一面の中央部における表フィルム1に形成されている。もっとも、表側切込線11は、袋本体4の中央部に形成される場合に限定されない。
表側切込線11の形状は、両端部を有する有端の非直線状である。例えば、表側切込線11は、両端部113,113を有し、この両端部113,113を結んだ仮想直線から袋本体4の一方側(本実施形態では、横方向一方側)に膨らんだ平面視非直線状に形成されている。
【0023】
一方、裏側切込線21は、袋本体4の一面の中央部における裏フィルム2に形成されている。もっとも、裏側切込線21は、上記表側切込線11と同様に、袋本体4の中央部に形成される場合に限定されない。
裏側切込線21の形状は、両端部を有する有端の非直線状、又は、無端の非直線状の何れかである。なお、無端の非直線状の切込線とは、その内側に閉鎖領域を形成するような形状の切込線(すなわち、環状の切込線)である。
【0024】
裏側切込線21は、例えば、上記表側切込線11と同様に、両端部213,213を有し、この両端部213,213を結んだ仮想直線から袋本体4の一方側に膨らんだ平面視非直線状に形成されている。
裏側切込線21の形成箇所と表側切込線11の形成箇所は一致しておらず、裏側切込線21は、表側切込線11と位置ずれして形成されている。
本実施形態では、裏側切込線21は、前記表側切込線11を基準にして、表側切込線11から内側に離れて形成されている。
【0025】
詳細には、表側切込線11は、一方の端部113及び他方の端部113と、この両端部113,113から横方向一方側にそれぞれ延びる一対の第1表側切込線111,111と、一対の第1表側切込線111,111に連設され且つ縦方向に延びる1つの第2表側切込線112と、を有する。
また、第2表側切込線112の縦方向中央部は、横方向一方側に略円弧状に膨らんでいる。この第2表側切込線112の略円弧状で囲われた領域は、表フィルム1の一部分を捲り出すときの摘み部として機能する。
【0026】
裏側切込線21は、一方の端部213及び他方の端部213と、この両端部213,213から横方向一方側にそれぞれ延びる一対の第1裏側切込線211,211と、一対の第1裏側切込線211,211に連設され且つ縦方向に延びる1つの第2裏側切込線212と、を有する。
第1裏側切込線211及び第2裏側切込線212は、それぞれ第1表側切込線111及び第2表側切込線112よりも内側に位置ずれして形成されている。
【0027】
第1裏側切込線211と第1表側切込線111との間隔及び第2裏側切込線212と第2表側切込線112との間隔(つまり、表側切込線11と裏側切込線21の間の領域12aの間隔W)は、特に限定されず、適宜設定できる。もっとも、前記間隔Wが余りに狭いと、表側切込線11と裏側切込線21が連通し、袋本体4の密封性を保持できなくなるおそれがある。かかる点を考慮すると、前記間隔Wは、5mm以上が好ましく、さらに、7mm以上がより好ましい。また、前記間隔Wが広くても本発明の効果は変わらないが、前記間隔Wが余りに広いと相対的に裏側切込線21で囲われる部分(取出口)が狭くなる。かかる点を考慮すると、前記間隔Wは、20mm以下が好ましい。
【0028】
本実施形態では、第1裏側切込線211と第1表側切込線111との間隔は横方向において略一定であり、第2裏側切込線212と第2表側切込線112との間隔は縦方向において略一定である(ただし、第2表側切込線112の縦方向中央部と第2裏側切込線212との間隔を除く)。つまり、裏側切込線21の平面視形状は、表側切込線11の平面視形状よりも小さく且つその形状の相似形である。
【0029】
もっとも、第1裏側切込線211と第1表側切込線111との間隔及び第2裏側切込線212と第2表側切込線112との間隔(前記領域12aの間隔W)が略一定でなく、少なくとも何れか一方の間隔が次第に広がっていたり、或いは、部分的に異なっていてもよい。
【0030】
ここで、切込線(表側切込線11及び裏側切込線21)とは、フィルムの厚み方向に貫通した切り目の連続線を意味する。切込線は、図2に示すように、前記切り目が全体的に連続しているものでもよいし、或いは、ある程度長さの連続線が断続的に繋がっているもの(図5に示すように、長い連続線Aが、短い間隔Bを開けて繋がっているもの)でもよい。このように、切り目の連続線が断続的に繋がって構成される切込線であっても、この切込線に従ってフィルムを切り取ることができる。
【0031】
表側切込線11と裏側切込線21の間の領域12a及びその近傍領域を除いて、表フィルム1の裏面及び裏フィルム2の表面の間には、接着剤層5が全体的(全面的)に介装されている。
前記接着剤層5は、表フィルム1と裏フィルム2を強固に接着するための層である。接着剤層5が設けられている部分においては、表フィルム1と裏フィルム2は、人力ではほぼ層間剥離させることができない。
【0032】
接着剤層5の接着強度は、両フィルム1,2を容易に剥離できない程度であれば特に限定されず、例えば、10N/15mm以上が好ましい。接着剤層5の接着強度の上限は、特に制限はないが、一般的には、30N/15mm以下である。
【0033】
前記接着剤層の接着強度は、JIS Z 0237の180度剥離に準じた方法で測定された値をいう。具体的には、前記接着強度は、接着剤を介して表フィルムと裏フィルムが接着されたものを100mm×15mmに切り出し、温度23±2℃、湿度50±5%RH、300mm/分の速度で剥離したときの最大強度をいう。
【0034】
擬似接着剤層51は、表側切込線11と裏側切込線21の間の領域12aにおける表フィルム1と裏フィルム2の層間に設けられている。さらに、表側切込線11の外側近傍領域11o及び裏側切込線21の内側近傍領域21iにおける表フィルム1と裏フィルム2の層間にも、擬似接着剤層51が設けられている。
この擬似接着剤層51が設けられた部分においては、両フィルム1,2は容易に剥離し得る。
【0035】
擬似接着剤層51の接着強度は、特に限定されないが、余りに弱いと表フィルム1と裏フィルム2を擬似接着できず、袋本体4の密封性を担保できないおそれがある。かかる観点から、擬似接着剤層51の接着強度は、0.5N/15mm以上が好ましい。一方、擬似接着剤層51の接着強度が余りに強いと、取出口を形成するために表フィルム1の一部分(表側切込線11で囲われた領域)を捲ったときに、前記領域12aにおける表フィルム1と裏フィルム2の層間が剥離しないおそれがある。かかる観点から、擬似接着剤層51の接着強度は、3N/15mm以下が好ましい。
なお、擬似接着剤層51の接着強度は、上記接着剤層5の接着強度の測定法と同様にして測定できる。
【0036】
上記擬似接着剤層51及び接着剤層5は、1つの感熱接着剤から形成されている。
本実施形態で使用される感熱接着剤は、常温(25℃)で粘着性を示さず且つ加熱することにより粘着性を示し、温度が下がると固化して表フィルム1と裏フィルム2を接着するものであるが、加熱温度に応じて、接着強度を調整できる接着剤である。
【0037】
例えば、この感熱接着剤を低い温度(例えば、60℃〜80℃)に加熱した場合、粘着性を生じるが、その後常温以下まで温度を下げても、表フィルム1と裏フィルム2の層間は強く接着せず、擬似接着された状態となる。一方、この感熱接着剤を高い温度(例えば90℃〜120℃)に加熱した場合、粘着性を生じ、その後常温以下まで温度を下げると、表フィルム1と裏フィルム2の層間は十分な接着強度を以て接着する(強く接着する)。
【0038】
そして、表側切込線11と裏側切込線21の間の領域12a及びその近傍領域11o,21iにおける感熱接着剤を低い温度に加熱し、それ以外の領域における感熱接着剤を高い温度に加熱することにより、擬似接着剤層51及び接着剤層5が形成されている。
このような加熱温度に応じて接着強度を調整できる感熱接着剤としては、例えば、株式会社松村石油研究所製の商品名「モレスコメルト エクセルピールEP」などが挙げられる。
【0039】
なお、少なくとも表側切込線11と裏側切込線21の間の領域12aにおける表フィルム1と裏フィルム2の層間が擬似接着されていれば、その領域12aにおける両フィルム1,2の層間が確実に剥離する。そして、表側切込線11の外側近傍領域11o及び裏側切込線21の内側近傍領域21iにおける表フィルム1と裏フィルム2の層間にも擬似接着剤層51を設けている理由は、表側切込線11及び裏側切込線21を接着剤層5の縁にに厳密に一致させて刻設することが困難であるからである。
【0040】
擬似接着剤層51が設けられる表側切込線11の外側近傍領域11oの幅及び裏側切込線21の内側近傍領域21iの幅は、それぞれ特に限定されない。もっとも、これらの幅が余りに狭すぎると、実質的にこれらの近傍領域11o,21iに擬似接着剤層51を設けた意義が失われ、一方、これらの幅が余りに広すぎると、擬似接着部分が広くなり過ぎて表フィルム1が不用意に剥がれるおそれがある。かかる観点から、これらの幅は、それぞれ1mm〜10mm程度が好ましく、1mm〜5mm程度がより好ましい。
【0041】
袋本体4は、収納物を収納した収納空間を有する密封袋である。袋本体4は、積層フィルム3を筒状にしてその両端辺部の裏面同士を合掌状に重ね合わせてこれを横方向帯状に接着した中央接着部41と、筒状にした積層フィルム3の両側辺部を縦方向帯状にそれぞれ接着した両閉塞部42,42と、を有する。
このように1枚の積層フィルム3を3方辺部において閉塞した袋の形態は、一般に、ピロー包装と呼ばれている。
【0042】
なお、本発明の袋本体4は、収納物を密封して包装できる袋形態であれば、上記ピロー包装に限られず、他の形態でもよい。
また、収納物は特に限定されず、例えば、お菓子などの食品、ティシュペーパー、おもちゃ、文房具類、化粧品類、固形薬品類などが挙げられる。
【0043】
上記包装袋10は、例えば、次のようにして作製できる。
上記感熱接着剤を、長尺状の表フィルム1の裏面(又は裏フィルム2の表面)の全体的に略均一な厚み(例えば、5μm〜20μm)で設け、感熱接着剤上に裏フィルム2(又は表フィルム1)を重ね合わせた後、形成予定の表側切込線11と裏側切込線21の間の領域12aに対応する感熱接着剤を所定の温度(上記感熱接着剤の場合には、比較的低い温度)に加熱し且つそれ以外の領域に対応する感熱接着剤を、フィルムの外側から所定の温度(比較的高い温度)に加熱することにより、長尺状の積層フィルム3を形成する。次に、表フィルム1の表面側からカッター刃を用いて表側切込線11を刻設し且つ裏フィルム2の裏面側からカッター刃を用いて裏側切込線21を刻設する。得られた積層フィルム3は、必要に応じて、ロールに巻き取られる。
【0044】
本実施形態では、加熱温度に応じて接着強度が変化し得る感熱接着剤を用いている。かかる感熱接着剤を用いれば、これを表フィルム1(又は裏フィルム2)の全体に塗布しても擬似接着剤層51及び接着剤層5を形成でき、接着剤の塗り分け作業を行う必要がない。従って、包装袋10を容易に作製できる。
【0045】
そして、収納物を包むように上記積層フィルム3を筒状にし、筒状にした積層フィルム3の両端辺部を合掌状に重ね合わせてこれを横方向帯状に接着して中央接着部41を形成し(裏フィルム2がシーラント層を有する場合には、シーラント層同士を重ね合わせて熱シールにて横方向帯状に接着する)、筒状の積層フィルム3の両側辺部を縦方向帯状にそれぞれ接着して両閉塞部42,42を形成する(裏フィルム2がシーラント層を有する場合には、同様に熱シールにて接着する)。このようにして包装袋10を作製できる。
【0046】
上記包装袋10においては、袋本体4を形成する表フィルム1と裏フィルム2にそれぞれ表側切込線11及び裏側切込線21が形成されているが、表側切込線11と裏側切込線21の間の領域12aにおける表フィルム1と裏フィルム2の層間が擬似接着されているので、袋本体4の密封性は保持されている。
【0047】
このように前記領域12aにおける表フィルム1と裏フィルム2の層間が擬似接着されているので、表側切込線11を利用して表フィルム1の一部分を袋本体4から離反させると、前記領域12aにおける表フィルム1と裏フィルム2が層間剥離し、さらに、表フィルム1に引っ張られて裏フィルム2の一部分が裏側切込線21に従って袋本体4から離反する。すると、図6に示すように、開封部7が袋本体4から捲れ上がり、裏側切込線21で囲われる範囲内に、袋本体4の収納空間に通じる取出口9が生じる。よって、この取出口9から収納物を取り出すことができる。
【0048】
また、前記領域12aにおける表フィルム1と裏フィルム2の層間は、擬似接着されている。このため、この層間は、一度剥離した後に再度接着しない状態、又は、一度剥離した後に再度接着したとしても軽い衝撃や時間の経過に伴い簡単に剥がれる状態となっている。従って、前記層間を剥離して開封部7を捲った後、この開封部7を元に戻しても、開封部7が元通りに袋本体4に接着しなくなる。このように開封部7を剥がすと一度開封したことが簡単に判別できるので、悪戯などの不正開封の発見が容易に行える。このため、不正開封を未然に防止できる。
【0049】
なお、本発明の包装袋は、上記実施形態に限られず、本発明の意図する範囲で、適宜変更することができる。以下、本発明の他の実施形態を説明する。ただし、以下の他の実施形態の説明においては、上記第1実施形態と異なる事項について主として説明し、上記第1実施形態と同様の構成及び効果については、その説明を省略し且つ用語及び符号を援用する場合がある。
【0050】
[第2実施形態]
上記第1実施形態では、加熱温度に応じて接着強度が変化し得る感熱接着剤を用いて擬似接着剤層51及び接着剤層5が形成されているが、例えば、接着力の異なる2種類の接着剤を用いて擬似接着剤層51及び接着剤層5を形成することも可能である。
【0051】
例えば、表側切込線11と裏側切込線21の間の領域12aに(好ましくは、さらに、表側切込線11の外側近傍領域11o及び裏側切込線21の内側近傍領域21iも加えて)、比較的接着力が弱い接着剤であって剥離した後に通常の人の力で圧力を加えても再接着しない接着剤を塗布し、それ以外の領域に比較的接着強度が強い接着剤を塗布して積層フィルム3を形成してもよい。
かかる接着力が弱い接着剤の使用は、前記領域12aにおける表側切込線11と裏側切込線21の層間を、弱く接着し且つ一度剥離した後には再度接着しない状態として擬似接着させることを可能とする。
【0052】
上記比較的接着強度が強い接着剤としては、ドライラミネート用接着剤、ウェットラミネート用接着剤、感熱接着剤、紫外線硬化型接着剤などが挙げられ、その接着強度としては、上記第1実施形態の接着剤層5で例示した接着強度と同程度である。
上記比較的接着強度が弱い接着剤としては、接着強度の弱いドライラミネート用接着剤、ウェットラミネート用接着剤、感熱接着剤、紫外線硬化型接着剤溶剤型接着剤又は感圧型粘着剤などが挙げられる。
第2実施形態では、異なる接着剤を塗り分ける必要があるが、第2実施形態の方法でも、少なくとも表側切込線11と裏側切込線21の間の領域12aにおける表フィルム1と裏フィルム2の層間が擬似接着とされた包装袋10を構成できる。
【0053】
[第3実施形態]
第3実施形態は、剥離剤を用いて擬似接着させる例である。
図7に示すように、表フィルム1と裏フィルム2の層間の全体には、比較的接着強度が強い接着剤からなる接着剤層5aが設けられ、表側切込線11と裏側切込線21の間の領域12aにおける表フィルム1の裏面(又は裏フィルム2の表面でもよい)に、剥離層52が設けられている。前記接着剤層5aは、前記剥離層52に対する再接着性を有さない(接着剤層5aと剥離層52の界面で剥離した後、接着剤層5aが剥離層52に再接着しない)。
前記剥離層52の形成は、前記領域12aにおける表側切込線11と裏側切込線21の層間を、弱く接着し且つ一度剥離した後には再度接着しない状態として擬似接着させることを可能とする。
【0054】
また、表側切込線11の外側近傍領域11o及び裏側切込線21の内側近傍領域21iにおける表フィルム1の裏面(又は裏フィルム2の表面でもよい)にも、剥離層52が設けられている。もっとも、剥離剤層52は、これらの近傍領域11o,21iにまで設けなくてもよい。
図7において、剥離層52に対面する接着剤層5aの厚みが薄く表されているが、実際には、接着剤層5aは、全体的に略均一な厚みで設けられている。
【0055】
本実施形態の接着剤層5aを形成する比較的接着強度が強い接着剤としては、ドライラミネート用接着剤、ウェットラミネート用接着剤、感熱接着剤、紫外線硬化型接着剤などが挙げられ、その接着強度としては、上記第1実施形態の接着剤層5で例示した接着強度と同程度である。
【0056】
剥離層52は、接着剤層5a(接着剤層5aは上記の通り比較的接着強度が強い接着剤からなる)の接着強度を弱くする層である。
剥離層52は、剥離剤を接着剤層5aの対面側に塗工することにより設けることができる。本実施形態では、裏フィルム2の表面に接着剤層5aが設けられているので(裏フィルム2の表面に接着剤が塗布されているので)、剥離層52は、表フィルム1の裏面であって表側切込線11と裏側切込線21の間の領域12a、表側切込線11の外側近傍領域11o及び裏側切込線21の内側近傍領域21iにおける裏面にそれぞれ設けられている。
【0057】
剥離剤としては、例えば、シリコーンや超微粒子などを含む溶剤型又はエマルジョン型の樹脂溶液、電離放射線硬化型樹脂溶液、紫外線硬化型インキなどの印刷インキなどを例示できる。剥離層52の厚みは、通常、0.5〜5μm程度である。
【0058】
剥離層52と接着剤層5aは比較的弱く接着しているが、両者は、少しの力でその界面において層間剥離する(擬似接着)。剥離層52の接着剤層5aに対する接着強度は、上記第1実施形態の擬似接着剤層51で例示した接着強度と同程度である。
【0059】
[第4実施形態]
第4実施形態においては、表側切込線11及び裏側切込線21の様々な変形例を示す。
上記第1実施形態においては、表側切込線11及び裏側切込線21の平面視形状は、それぞれ略コの字状であるが、例えば、図8に示すように、表側切込線11及び裏側切込線21が、それぞれ平面視略V字状に形成されていてもよい。
また、図9に示すように、表側切込線11及び裏側切込線21が、それぞれ平面視略半楕円状に形成されていてもよい。
その他、図示しないが、表側切込線11及び裏側切込線21の平面視形状は、略半円状などに形成されていてもよい。
【0060】
さらに、上記第1実施形態においては、表側切込線11及び裏側切込線21の平面視形状は、大きさの異なる相似形であるが、表側切込線11及び裏側切込線21は、異なる形状に形成されていてもよい。
例えば、図10に示す包装袋10は、表側切込線11が平面視略U字状に形成され、一方、裏側切込線21がこの表側切込線11の内側に離れて略コの字状に形成されている。
【0061】
また、上記第1実施形態においては、裏側切込線21が有端の非直線状であるが、例えば、図11に示すように、裏側切込線21が無端の非直線状に形成されていてもよい。好ましくは、無端の非直線状の裏側切込線21は、表側切込線11の内側に形成される。この場合、無端の非直線状の裏側切込線21は、表側切込線11で囲われる範囲内に完全に含まれていてもよいし、或いは、図示したように、裏側切込線21の一部が、表側切込線11の両端部113,113から外側に出ていてもよい。
【0062】
なお、第5実施形態における各変形例の包装袋10は、図8乃至図11に示すように、表側切込線11の外側近傍領域及び裏側切込線21の内側近傍領域もそれぞれ擬似接着されているが、これら各変形例の包装袋10においても、表側切込線11の外側近傍領域及び裏側切込線21の内側近傍領域が擬似接着されていなくてもよい。すなわち、少なくとも表側切込線11と裏側切込線21の間の領域における表フィルム1と裏フィルム2の層間が擬似接着されていればよい。
【0063】
[第5実施形態]
また、図12に示すように、上記各実施形態の包装袋10に、再封ラベル8を貼付してもよい。
この再封ラベル8は、表側切込線11に従って表フィルム1が不用意に切れることによって開封部7が捲れることを防止するために貼付されている。
再封ラベル8は、表側切込線11の一部分に跨るように表フィルム1の表面に貼付されていれば、特にその貼付位置は限定されないが、図示したように、摘み部として機能する表側切込線11の膨出部に跨って貼着されていることが好ましい。
再封ラベル8としては、従来公知のタックラベル(基材の裏面に粘着剤が塗布されたラベル)を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の包装袋は、食品、化粧品類のような様々な物品の包装に利用できる。
【符号の説明】
【0065】
1…表フィルム、11…表側切込線、11o…表側切込線の外側近傍領域、12a…表側切込線と裏側切込線の間の領域、2…裏フィルム、21…裏側切込線、裏側切込線の内側近傍領域、3…積層フィルム、4…袋本体、5,5a…接着剤層、51…擬似接着剤層、52…剥離層、6…粘着剤層、7…開封部、8…再封ラベル、10…包装袋
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納物を取り出すための取出口を形成できる包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、お菓子や鰹節などの食品、ウェットティッシュなどの衛生品、医薬品などの様々な物品が、柔軟な包装袋に収納されている。
また、切込線に従って包装袋の一部分を離反させることによって収納物の取出口が生じ、この取出口をシート状の開閉蓋片で開閉できる包装体も知られている(特許文献1)。
かかる包装体は、所望枚数のウェットティッシュを取出口から取り出した後、この取出口を開閉蓋片にて再封することができる。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の包装体においては、別体の開閉蓋片を包装袋に貼付しなければならないので、部品数が増え、さらに、製造時にはこれを貼付する工程が必要となる。
従来の包装体においては、包装袋の表面に切込線を覆うように開閉蓋片を貼付しなければ、切込線の隙間から収納空間内にガスや粉塵が進入し、包装袋の密封性を保持できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−19858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、別体の蓋材を用いなくても密封性を保持でき且つ取出口を通じて収納物を取り出すことができる包装袋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の包装袋は、表フィルムと裏フィルムが接着剤層を介して積層された積層フィルムから形成された袋本体を有し、前記袋本体に取出口を形成するために、前記表フィルムの面内に平面視非直線状の表側切込線が形成され、且つ、前記裏フィルムの面内に前記表側切込線と位置ずれした平面視非直線状の裏側切込線が形成されており、前記表側切込線と裏側切込線の間の領域における表フィルムと裏フィルムの層間が、擬似接着されている。
【0007】
上記包装袋においては、袋本体を形成する表フィルムと裏フィルムにそれぞれ切込線(表側切込線及び裏側切込線)が形成されているが、前記表側切込線と裏側切込線の間の領域における表フィルムと裏フィルムの層間が擬似接着されているので、袋本体の密封性が保持されている。
かかる表側切込線と裏側切込線の間の領域における表フィルムと裏フィルムの層間が擬似接着されているので、表側切込線を利用して表フィルムの一部分を離反させると、前記領域における表フィルムと裏フィルムが層間剥離し、さらに、表フィルムに引っ張られて裏フィルムの一部分が裏側切込線に従って離反する。従って、前記表フィルムの一部分及び裏フィルムの一部分が袋本体から捲れ、裏側切込線で囲われる範囲内に、袋本体の収納空間に通じる取出口が生じる。よって、この取出口から収納物を取り出すことができる。
また、上記領域における表フィルムと裏フィルムの層間は、擬似接着されているので、一度剥離した後に再度接着しない状態、又は、一度剥離した後に再度接着したとしても軽い衝撃などで簡単に剥がれる状態となっている。従って、表フィルムの一部分及び裏フィルムの一部分をを捲った後は、これが元通りに袋本体に接着しなくなる。従って、一度開封したことが簡単に判別できるので、悪戯などの不正開封を容易に発見することができる。
【0008】
本発明の好ましい包装袋は、前記表側切込線と裏側切込線の間の領域における表フィルムと裏フィルムの層間が擬似接着剤層を介して擬似接着され、前記領域以外における表フィルムと裏フィルムの層間が前記接着剤層を介して接着されており、前記擬似接着剤層及び接着剤層が、同じ接着剤から形成され、前記擬似接着剤層の接着強度が接着剤層の接着強度よりも小さい。例えば、前記接着剤として、加熱温度に応じて接着強度が変化し得る感熱接着剤が用いられる。
【0009】
上記好ましい包装袋においては、同じ接着剤を用いて、擬似接着剤層と接着剤層が形成されている。よって、接着剤の塗り分け作業を行う必要がないので、上記包装袋を容易に作製できる。
例えば、加熱温度に応じて接着強度が変化し得る感熱接着剤を用いる場合、1つの感熱接着剤を表フィルム(又は裏フィルム)の全体に塗布し、その後、擬似接着させたい領域に対応する感熱接着剤を所定の温度で、且つ強く接着させたい領域に対応する感熱接着剤を所定の温度で加熱することにより、擬似接着剤層と接着剤層を形成できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の包装袋は、別体の蓋材を用いなくても密封性を保持できる。また、本発明の包装袋は、フィルムの一部分を捲ることにより、収納物を取り出すための取出口を簡単に形成できる。
また、本発明の包装袋を一度開封すると、そのことが簡単に判別できる。従って、不正開封を未然に防止できる包装袋を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係る包装袋の斜視図。
【図2】同包装袋の平面図。
【図3】図1のIII−III線断面図(包装袋の収納空間側から裏フィルムの裏面側を見た図)。
【図4】図2のIV−IV線拡大断面図。
【図5】切込線の変形例を示す斜視図。
【図6】開封部を捲り上げた状態を示す斜視図。
【図7】本発明の第3実施形態に係る包装袋について、図2のIV−IV線と同様な箇所で切断した拡大断面図。
【図8】本発明の第4実施形態に係る包装袋の第1変形例の平面図。
【図9】本発明の第4実施形態に係る包装袋の第2変形例の平面図。
【図10】本発明の第4実施形態に係る包装袋の第3変形例の平面図。
【図11】本発明の第4実施形態に係る包装袋の第4変形例の平面図。
【図12】本発明の第5実施形態に係る包装袋の斜視図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
本明細書において、横方向及び縦方向は、包装袋を任意に平坦面上に置いてその法線方向から見たときの方向性を指し、横方向と縦方向は、袋本体の一面内で互いに直交する方向である。また、平面視形状は、包装袋を任意に平坦面上に置いてその法線方向から見たときの形状である。さらに、「A〜B」という記載は、A以上B以下を意味する。
各図において、部材の大きさ及び厚みは、実際の製品とは異なっていることに留意されたい。
また、図2、図8、図9、図10及び図11において、擬似接着とされた範囲を「薄墨」で表している。フィルムの層間に擬似接着がなされているので、これは平面図に直接現れないが、擬似接着の範囲を分かりやすく図示する目的で、便宜上、このように表している。
【0013】
[第1実施形態]
図1乃至図4に於いて、本発明の包装袋10は、表フィルム1と裏フィルム2が接着剤層5を介して積層された積層フィルム3から形成された袋本体4を有する。袋本体4の内部には、収納物が収納される収納空間が形成されている。
この袋本体4の一面に前記収納空間に通じる取出口を形成するために、袋本体4を構成する積層フィルム3には切込線11,21が形成されている。この切込線11,21によって囲われた、袋本体4の面内の一部分7(以下、開封部という場合がある)が袋本体4から離反することによって、収納物の取出口が生じる。
積層フィルム3は、表フィルム1と裏フィルム2を有するので、表フィルム1及び裏フィルム2の面内にそれぞれ切込線11,21が形成されている。以下、表フィルム1に形成された切込線11を「表側切込線」といい、裏フィルム2に形成された切込線21を「裏側切込線」という。
【0014】
表側切込線11の形状は、平面視非直線状であり、裏側切込線21の形状は、前記表側切込線11から位置ずれした平面視非直線状である。この表側切込線11と裏側切込線21の間の領域12aにおける表フィルム1と裏フィルム2の層間は、擬似接着されている。
【0015】
本発明において擬似接着とは、少しの力で層間剥離できる程度に弱く接着している状態であって、一度剥離した後(弱く接着している状態を解除した後)、再度接着しないことをいい、一度剥離した後に特殊加圧条件や加熱条件などを施すことにより再度弱く接着する場合や、一度剥離した後に通常の人の力で加圧することにより、軽い衝撃や時間の経過に伴い簡単に剥離する程度に再度弱く接着する場合を含む。
【0016】
本実施形態では、前記表側切込線11と裏側切込線21の間の領域12aにおける表フィルム1と裏フィルム2の層間が擬似接着剤層51を介して擬似接着され、一方、前記領域12a以外における表フィルム1と裏フィルム2の層間が接着剤層5を介して強く接着されている。この擬似接着剤層51及び接着剤層5は、加熱温度に応じて接着強度が変化し得る感熱接着剤から形成されている。
【0017】
具体的には、袋本体4を構成する積層フィルム3は、柔軟性を有し、液体及び大気を実質的に通さない枚葉体からなる。なお、本明細書において、フィルムとは、一般にシートと呼ばれている枚葉体が含まれる。すなわち、フィルムとシートは、いずれも枚葉体であり、両者は同義である。
【0018】
表フィルム1の材質は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。表フィルム1としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの合成樹脂フィルム、不織布、発泡樹脂フィルム、紙などが挙げられる。表フィルム1は、任意に選ばれた2種以上のフィルムの積層体(例えば、2種以上の合成樹脂フィルムが一体的に積層された積層体、或いは、合成樹脂フィルムと紙が一体的に積層された積層体など)でもよい。また、表フィルム1は、上記のような様々なフィルム又は積層体に、ガスバリア層及び/又は光バリア層が一体的に積層された積層体でもよい。
加工性に優れ且つ収納物の品質を良好に保持できることから、表フィルム1は、合成樹脂フィルム、2種以上の合成樹脂フィルムの積層体、又は、これらにガスバリア層及び/又は光バリア層が積層された積層体を用いることが好ましい。
【0019】
なお、表フィルム1は、透明又は非透明の何れでもよい。さらに、表フィルム1には、必要に応じて、意匠印刷が施されていてもよい。意匠印刷が施される場合、その意匠印刷層(インキ層。図示せず)は、その擦傷を防止するため、表フィルム1の裏面に設けられることが好ましい。もっとも、意匠印刷層は、表フィルム1の表面に設けられていてもよい。
表フィルム1の厚みは、特に限定されない。表フィルム1として合成樹脂フィルム又はこれを含む積層体が用いられる場合には、その厚みは、一般に、15μm〜120μmである。
【0020】
裏フィルム2の材質も、特に限定されず、上記表フィルム1で例示したようなフィルム又は積層体を用いることができる。なお、表フィルム1がガスバリア層及び/又は光バリア層を有する場合には、裏フィルム2は、これらの層を有さなくてもよいし、或いは、これらの層を有していてもよい。また、表フィルム1及び裏フィルム2の何れも、ガスバリア層及び/又は光バリア層を有さなくてもよい。
【0021】
熱シールによって袋本体4を形成できることから、裏フィルム2は、シーラント層を有することが好ましい。例えば、裏フィルム2は、シーラント層の単層、又は、シーラント層と他の層(例えば、シーラント層とは異なる合成樹脂フィルム)が一体的に積層され且つこのシーラント層が最裏面に一体的に積層された積層体を用いることが好ましい。
シーラント層は、加熱することにより溶融して互いに接着し得る層である。シーラント層としては、汎用的なポリエチレン層が挙げられる。
裏フィルム2は、透明又は非透明の何れでもよい。
裏フィルム2の厚みは、特に限定されない。裏フィルム2としてシーラント層の単層が用いられる場合には、その厚みは、一般に、15μm〜70μmである。
【0022】
表側切込線11は、袋本体4の一面の中央部における表フィルム1に形成されている。もっとも、表側切込線11は、袋本体4の中央部に形成される場合に限定されない。
表側切込線11の形状は、両端部を有する有端の非直線状である。例えば、表側切込線11は、両端部113,113を有し、この両端部113,113を結んだ仮想直線から袋本体4の一方側(本実施形態では、横方向一方側)に膨らんだ平面視非直線状に形成されている。
【0023】
一方、裏側切込線21は、袋本体4の一面の中央部における裏フィルム2に形成されている。もっとも、裏側切込線21は、上記表側切込線11と同様に、袋本体4の中央部に形成される場合に限定されない。
裏側切込線21の形状は、両端部を有する有端の非直線状、又は、無端の非直線状の何れかである。なお、無端の非直線状の切込線とは、その内側に閉鎖領域を形成するような形状の切込線(すなわち、環状の切込線)である。
【0024】
裏側切込線21は、例えば、上記表側切込線11と同様に、両端部213,213を有し、この両端部213,213を結んだ仮想直線から袋本体4の一方側に膨らんだ平面視非直線状に形成されている。
裏側切込線21の形成箇所と表側切込線11の形成箇所は一致しておらず、裏側切込線21は、表側切込線11と位置ずれして形成されている。
本実施形態では、裏側切込線21は、前記表側切込線11を基準にして、表側切込線11から内側に離れて形成されている。
【0025】
詳細には、表側切込線11は、一方の端部113及び他方の端部113と、この両端部113,113から横方向一方側にそれぞれ延びる一対の第1表側切込線111,111と、一対の第1表側切込線111,111に連設され且つ縦方向に延びる1つの第2表側切込線112と、を有する。
また、第2表側切込線112の縦方向中央部は、横方向一方側に略円弧状に膨らんでいる。この第2表側切込線112の略円弧状で囲われた領域は、表フィルム1の一部分を捲り出すときの摘み部として機能する。
【0026】
裏側切込線21は、一方の端部213及び他方の端部213と、この両端部213,213から横方向一方側にそれぞれ延びる一対の第1裏側切込線211,211と、一対の第1裏側切込線211,211に連設され且つ縦方向に延びる1つの第2裏側切込線212と、を有する。
第1裏側切込線211及び第2裏側切込線212は、それぞれ第1表側切込線111及び第2表側切込線112よりも内側に位置ずれして形成されている。
【0027】
第1裏側切込線211と第1表側切込線111との間隔及び第2裏側切込線212と第2表側切込線112との間隔(つまり、表側切込線11と裏側切込線21の間の領域12aの間隔W)は、特に限定されず、適宜設定できる。もっとも、前記間隔Wが余りに狭いと、表側切込線11と裏側切込線21が連通し、袋本体4の密封性を保持できなくなるおそれがある。かかる点を考慮すると、前記間隔Wは、5mm以上が好ましく、さらに、7mm以上がより好ましい。また、前記間隔Wが広くても本発明の効果は変わらないが、前記間隔Wが余りに広いと相対的に裏側切込線21で囲われる部分(取出口)が狭くなる。かかる点を考慮すると、前記間隔Wは、20mm以下が好ましい。
【0028】
本実施形態では、第1裏側切込線211と第1表側切込線111との間隔は横方向において略一定であり、第2裏側切込線212と第2表側切込線112との間隔は縦方向において略一定である(ただし、第2表側切込線112の縦方向中央部と第2裏側切込線212との間隔を除く)。つまり、裏側切込線21の平面視形状は、表側切込線11の平面視形状よりも小さく且つその形状の相似形である。
【0029】
もっとも、第1裏側切込線211と第1表側切込線111との間隔及び第2裏側切込線212と第2表側切込線112との間隔(前記領域12aの間隔W)が略一定でなく、少なくとも何れか一方の間隔が次第に広がっていたり、或いは、部分的に異なっていてもよい。
【0030】
ここで、切込線(表側切込線11及び裏側切込線21)とは、フィルムの厚み方向に貫通した切り目の連続線を意味する。切込線は、図2に示すように、前記切り目が全体的に連続しているものでもよいし、或いは、ある程度長さの連続線が断続的に繋がっているもの(図5に示すように、長い連続線Aが、短い間隔Bを開けて繋がっているもの)でもよい。このように、切り目の連続線が断続的に繋がって構成される切込線であっても、この切込線に従ってフィルムを切り取ることができる。
【0031】
表側切込線11と裏側切込線21の間の領域12a及びその近傍領域を除いて、表フィルム1の裏面及び裏フィルム2の表面の間には、接着剤層5が全体的(全面的)に介装されている。
前記接着剤層5は、表フィルム1と裏フィルム2を強固に接着するための層である。接着剤層5が設けられている部分においては、表フィルム1と裏フィルム2は、人力ではほぼ層間剥離させることができない。
【0032】
接着剤層5の接着強度は、両フィルム1,2を容易に剥離できない程度であれば特に限定されず、例えば、10N/15mm以上が好ましい。接着剤層5の接着強度の上限は、特に制限はないが、一般的には、30N/15mm以下である。
【0033】
前記接着剤層の接着強度は、JIS Z 0237の180度剥離に準じた方法で測定された値をいう。具体的には、前記接着強度は、接着剤を介して表フィルムと裏フィルムが接着されたものを100mm×15mmに切り出し、温度23±2℃、湿度50±5%RH、300mm/分の速度で剥離したときの最大強度をいう。
【0034】
擬似接着剤層51は、表側切込線11と裏側切込線21の間の領域12aにおける表フィルム1と裏フィルム2の層間に設けられている。さらに、表側切込線11の外側近傍領域11o及び裏側切込線21の内側近傍領域21iにおける表フィルム1と裏フィルム2の層間にも、擬似接着剤層51が設けられている。
この擬似接着剤層51が設けられた部分においては、両フィルム1,2は容易に剥離し得る。
【0035】
擬似接着剤層51の接着強度は、特に限定されないが、余りに弱いと表フィルム1と裏フィルム2を擬似接着できず、袋本体4の密封性を担保できないおそれがある。かかる観点から、擬似接着剤層51の接着強度は、0.5N/15mm以上が好ましい。一方、擬似接着剤層51の接着強度が余りに強いと、取出口を形成するために表フィルム1の一部分(表側切込線11で囲われた領域)を捲ったときに、前記領域12aにおける表フィルム1と裏フィルム2の層間が剥離しないおそれがある。かかる観点から、擬似接着剤層51の接着強度は、3N/15mm以下が好ましい。
なお、擬似接着剤層51の接着強度は、上記接着剤層5の接着強度の測定法と同様にして測定できる。
【0036】
上記擬似接着剤層51及び接着剤層5は、1つの感熱接着剤から形成されている。
本実施形態で使用される感熱接着剤は、常温(25℃)で粘着性を示さず且つ加熱することにより粘着性を示し、温度が下がると固化して表フィルム1と裏フィルム2を接着するものであるが、加熱温度に応じて、接着強度を調整できる接着剤である。
【0037】
例えば、この感熱接着剤を低い温度(例えば、60℃〜80℃)に加熱した場合、粘着性を生じるが、その後常温以下まで温度を下げても、表フィルム1と裏フィルム2の層間は強く接着せず、擬似接着された状態となる。一方、この感熱接着剤を高い温度(例えば90℃〜120℃)に加熱した場合、粘着性を生じ、その後常温以下まで温度を下げると、表フィルム1と裏フィルム2の層間は十分な接着強度を以て接着する(強く接着する)。
【0038】
そして、表側切込線11と裏側切込線21の間の領域12a及びその近傍領域11o,21iにおける感熱接着剤を低い温度に加熱し、それ以外の領域における感熱接着剤を高い温度に加熱することにより、擬似接着剤層51及び接着剤層5が形成されている。
このような加熱温度に応じて接着強度を調整できる感熱接着剤としては、例えば、株式会社松村石油研究所製の商品名「モレスコメルト エクセルピールEP」などが挙げられる。
【0039】
なお、少なくとも表側切込線11と裏側切込線21の間の領域12aにおける表フィルム1と裏フィルム2の層間が擬似接着されていれば、その領域12aにおける両フィルム1,2の層間が確実に剥離する。そして、表側切込線11の外側近傍領域11o及び裏側切込線21の内側近傍領域21iにおける表フィルム1と裏フィルム2の層間にも擬似接着剤層51を設けている理由は、表側切込線11及び裏側切込線21を接着剤層5の縁にに厳密に一致させて刻設することが困難であるからである。
【0040】
擬似接着剤層51が設けられる表側切込線11の外側近傍領域11oの幅及び裏側切込線21の内側近傍領域21iの幅は、それぞれ特に限定されない。もっとも、これらの幅が余りに狭すぎると、実質的にこれらの近傍領域11o,21iに擬似接着剤層51を設けた意義が失われ、一方、これらの幅が余りに広すぎると、擬似接着部分が広くなり過ぎて表フィルム1が不用意に剥がれるおそれがある。かかる観点から、これらの幅は、それぞれ1mm〜10mm程度が好ましく、1mm〜5mm程度がより好ましい。
【0041】
袋本体4は、収納物を収納した収納空間を有する密封袋である。袋本体4は、積層フィルム3を筒状にしてその両端辺部の裏面同士を合掌状に重ね合わせてこれを横方向帯状に接着した中央接着部41と、筒状にした積層フィルム3の両側辺部を縦方向帯状にそれぞれ接着した両閉塞部42,42と、を有する。
このように1枚の積層フィルム3を3方辺部において閉塞した袋の形態は、一般に、ピロー包装と呼ばれている。
【0042】
なお、本発明の袋本体4は、収納物を密封して包装できる袋形態であれば、上記ピロー包装に限られず、他の形態でもよい。
また、収納物は特に限定されず、例えば、お菓子などの食品、ティシュペーパー、おもちゃ、文房具類、化粧品類、固形薬品類などが挙げられる。
【0043】
上記包装袋10は、例えば、次のようにして作製できる。
上記感熱接着剤を、長尺状の表フィルム1の裏面(又は裏フィルム2の表面)の全体的に略均一な厚み(例えば、5μm〜20μm)で設け、感熱接着剤上に裏フィルム2(又は表フィルム1)を重ね合わせた後、形成予定の表側切込線11と裏側切込線21の間の領域12aに対応する感熱接着剤を所定の温度(上記感熱接着剤の場合には、比較的低い温度)に加熱し且つそれ以外の領域に対応する感熱接着剤を、フィルムの外側から所定の温度(比較的高い温度)に加熱することにより、長尺状の積層フィルム3を形成する。次に、表フィルム1の表面側からカッター刃を用いて表側切込線11を刻設し且つ裏フィルム2の裏面側からカッター刃を用いて裏側切込線21を刻設する。得られた積層フィルム3は、必要に応じて、ロールに巻き取られる。
【0044】
本実施形態では、加熱温度に応じて接着強度が変化し得る感熱接着剤を用いている。かかる感熱接着剤を用いれば、これを表フィルム1(又は裏フィルム2)の全体に塗布しても擬似接着剤層51及び接着剤層5を形成でき、接着剤の塗り分け作業を行う必要がない。従って、包装袋10を容易に作製できる。
【0045】
そして、収納物を包むように上記積層フィルム3を筒状にし、筒状にした積層フィルム3の両端辺部を合掌状に重ね合わせてこれを横方向帯状に接着して中央接着部41を形成し(裏フィルム2がシーラント層を有する場合には、シーラント層同士を重ね合わせて熱シールにて横方向帯状に接着する)、筒状の積層フィルム3の両側辺部を縦方向帯状にそれぞれ接着して両閉塞部42,42を形成する(裏フィルム2がシーラント層を有する場合には、同様に熱シールにて接着する)。このようにして包装袋10を作製できる。
【0046】
上記包装袋10においては、袋本体4を形成する表フィルム1と裏フィルム2にそれぞれ表側切込線11及び裏側切込線21が形成されているが、表側切込線11と裏側切込線21の間の領域12aにおける表フィルム1と裏フィルム2の層間が擬似接着されているので、袋本体4の密封性は保持されている。
【0047】
このように前記領域12aにおける表フィルム1と裏フィルム2の層間が擬似接着されているので、表側切込線11を利用して表フィルム1の一部分を袋本体4から離反させると、前記領域12aにおける表フィルム1と裏フィルム2が層間剥離し、さらに、表フィルム1に引っ張られて裏フィルム2の一部分が裏側切込線21に従って袋本体4から離反する。すると、図6に示すように、開封部7が袋本体4から捲れ上がり、裏側切込線21で囲われる範囲内に、袋本体4の収納空間に通じる取出口9が生じる。よって、この取出口9から収納物を取り出すことができる。
【0048】
また、前記領域12aにおける表フィルム1と裏フィルム2の層間は、擬似接着されている。このため、この層間は、一度剥離した後に再度接着しない状態、又は、一度剥離した後に再度接着したとしても軽い衝撃や時間の経過に伴い簡単に剥がれる状態となっている。従って、前記層間を剥離して開封部7を捲った後、この開封部7を元に戻しても、開封部7が元通りに袋本体4に接着しなくなる。このように開封部7を剥がすと一度開封したことが簡単に判別できるので、悪戯などの不正開封の発見が容易に行える。このため、不正開封を未然に防止できる。
【0049】
なお、本発明の包装袋は、上記実施形態に限られず、本発明の意図する範囲で、適宜変更することができる。以下、本発明の他の実施形態を説明する。ただし、以下の他の実施形態の説明においては、上記第1実施形態と異なる事項について主として説明し、上記第1実施形態と同様の構成及び効果については、その説明を省略し且つ用語及び符号を援用する場合がある。
【0050】
[第2実施形態]
上記第1実施形態では、加熱温度に応じて接着強度が変化し得る感熱接着剤を用いて擬似接着剤層51及び接着剤層5が形成されているが、例えば、接着力の異なる2種類の接着剤を用いて擬似接着剤層51及び接着剤層5を形成することも可能である。
【0051】
例えば、表側切込線11と裏側切込線21の間の領域12aに(好ましくは、さらに、表側切込線11の外側近傍領域11o及び裏側切込線21の内側近傍領域21iも加えて)、比較的接着力が弱い接着剤であって剥離した後に通常の人の力で圧力を加えても再接着しない接着剤を塗布し、それ以外の領域に比較的接着強度が強い接着剤を塗布して積層フィルム3を形成してもよい。
かかる接着力が弱い接着剤の使用は、前記領域12aにおける表側切込線11と裏側切込線21の層間を、弱く接着し且つ一度剥離した後には再度接着しない状態として擬似接着させることを可能とする。
【0052】
上記比較的接着強度が強い接着剤としては、ドライラミネート用接着剤、ウェットラミネート用接着剤、感熱接着剤、紫外線硬化型接着剤などが挙げられ、その接着強度としては、上記第1実施形態の接着剤層5で例示した接着強度と同程度である。
上記比較的接着強度が弱い接着剤としては、接着強度の弱いドライラミネート用接着剤、ウェットラミネート用接着剤、感熱接着剤、紫外線硬化型接着剤溶剤型接着剤又は感圧型粘着剤などが挙げられる。
第2実施形態では、異なる接着剤を塗り分ける必要があるが、第2実施形態の方法でも、少なくとも表側切込線11と裏側切込線21の間の領域12aにおける表フィルム1と裏フィルム2の層間が擬似接着とされた包装袋10を構成できる。
【0053】
[第3実施形態]
第3実施形態は、剥離剤を用いて擬似接着させる例である。
図7に示すように、表フィルム1と裏フィルム2の層間の全体には、比較的接着強度が強い接着剤からなる接着剤層5aが設けられ、表側切込線11と裏側切込線21の間の領域12aにおける表フィルム1の裏面(又は裏フィルム2の表面でもよい)に、剥離層52が設けられている。前記接着剤層5aは、前記剥離層52に対する再接着性を有さない(接着剤層5aと剥離層52の界面で剥離した後、接着剤層5aが剥離層52に再接着しない)。
前記剥離層52の形成は、前記領域12aにおける表側切込線11と裏側切込線21の層間を、弱く接着し且つ一度剥離した後には再度接着しない状態として擬似接着させることを可能とする。
【0054】
また、表側切込線11の外側近傍領域11o及び裏側切込線21の内側近傍領域21iにおける表フィルム1の裏面(又は裏フィルム2の表面でもよい)にも、剥離層52が設けられている。もっとも、剥離剤層52は、これらの近傍領域11o,21iにまで設けなくてもよい。
図7において、剥離層52に対面する接着剤層5aの厚みが薄く表されているが、実際には、接着剤層5aは、全体的に略均一な厚みで設けられている。
【0055】
本実施形態の接着剤層5aを形成する比較的接着強度が強い接着剤としては、ドライラミネート用接着剤、ウェットラミネート用接着剤、感熱接着剤、紫外線硬化型接着剤などが挙げられ、その接着強度としては、上記第1実施形態の接着剤層5で例示した接着強度と同程度である。
【0056】
剥離層52は、接着剤層5a(接着剤層5aは上記の通り比較的接着強度が強い接着剤からなる)の接着強度を弱くする層である。
剥離層52は、剥離剤を接着剤層5aの対面側に塗工することにより設けることができる。本実施形態では、裏フィルム2の表面に接着剤層5aが設けられているので(裏フィルム2の表面に接着剤が塗布されているので)、剥離層52は、表フィルム1の裏面であって表側切込線11と裏側切込線21の間の領域12a、表側切込線11の外側近傍領域11o及び裏側切込線21の内側近傍領域21iにおける裏面にそれぞれ設けられている。
【0057】
剥離剤としては、例えば、シリコーンや超微粒子などを含む溶剤型又はエマルジョン型の樹脂溶液、電離放射線硬化型樹脂溶液、紫外線硬化型インキなどの印刷インキなどを例示できる。剥離層52の厚みは、通常、0.5〜5μm程度である。
【0058】
剥離層52と接着剤層5aは比較的弱く接着しているが、両者は、少しの力でその界面において層間剥離する(擬似接着)。剥離層52の接着剤層5aに対する接着強度は、上記第1実施形態の擬似接着剤層51で例示した接着強度と同程度である。
【0059】
[第4実施形態]
第4実施形態においては、表側切込線11及び裏側切込線21の様々な変形例を示す。
上記第1実施形態においては、表側切込線11及び裏側切込線21の平面視形状は、それぞれ略コの字状であるが、例えば、図8に示すように、表側切込線11及び裏側切込線21が、それぞれ平面視略V字状に形成されていてもよい。
また、図9に示すように、表側切込線11及び裏側切込線21が、それぞれ平面視略半楕円状に形成されていてもよい。
その他、図示しないが、表側切込線11及び裏側切込線21の平面視形状は、略半円状などに形成されていてもよい。
【0060】
さらに、上記第1実施形態においては、表側切込線11及び裏側切込線21の平面視形状は、大きさの異なる相似形であるが、表側切込線11及び裏側切込線21は、異なる形状に形成されていてもよい。
例えば、図10に示す包装袋10は、表側切込線11が平面視略U字状に形成され、一方、裏側切込線21がこの表側切込線11の内側に離れて略コの字状に形成されている。
【0061】
また、上記第1実施形態においては、裏側切込線21が有端の非直線状であるが、例えば、図11に示すように、裏側切込線21が無端の非直線状に形成されていてもよい。好ましくは、無端の非直線状の裏側切込線21は、表側切込線11の内側に形成される。この場合、無端の非直線状の裏側切込線21は、表側切込線11で囲われる範囲内に完全に含まれていてもよいし、或いは、図示したように、裏側切込線21の一部が、表側切込線11の両端部113,113から外側に出ていてもよい。
【0062】
なお、第5実施形態における各変形例の包装袋10は、図8乃至図11に示すように、表側切込線11の外側近傍領域及び裏側切込線21の内側近傍領域もそれぞれ擬似接着されているが、これら各変形例の包装袋10においても、表側切込線11の外側近傍領域及び裏側切込線21の内側近傍領域が擬似接着されていなくてもよい。すなわち、少なくとも表側切込線11と裏側切込線21の間の領域における表フィルム1と裏フィルム2の層間が擬似接着されていればよい。
【0063】
[第5実施形態]
また、図12に示すように、上記各実施形態の包装袋10に、再封ラベル8を貼付してもよい。
この再封ラベル8は、表側切込線11に従って表フィルム1が不用意に切れることによって開封部7が捲れることを防止するために貼付されている。
再封ラベル8は、表側切込線11の一部分に跨るように表フィルム1の表面に貼付されていれば、特にその貼付位置は限定されないが、図示したように、摘み部として機能する表側切込線11の膨出部に跨って貼着されていることが好ましい。
再封ラベル8としては、従来公知のタックラベル(基材の裏面に粘着剤が塗布されたラベル)を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の包装袋は、食品、化粧品類のような様々な物品の包装に利用できる。
【符号の説明】
【0065】
1…表フィルム、11…表側切込線、11o…表側切込線の外側近傍領域、12a…表側切込線と裏側切込線の間の領域、2…裏フィルム、21…裏側切込線、裏側切込線の内側近傍領域、3…積層フィルム、4…袋本体、5,5a…接着剤層、51…擬似接着剤層、52…剥離層、6…粘着剤層、7…開封部、8…再封ラベル、10…包装袋
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表フィルムと裏フィルムが接着剤層を介して積層された積層フィルムから形成された袋本体を有し、
前記袋本体に取出口を形成するために、前記表フィルムの面内に平面視非直線状の表側切込線が形成され、且つ、前記裏フィルムの面内に前記表側切込線と位置ずれした平面視非直線状の裏側切込線が形成されており、
前記表側切込線と裏側切込線の間の領域における表フィルムと裏フィルムの層間が、擬似接着されていることを特徴とする包装袋。
【請求項2】
前記表側切込線と裏側切込線の間の領域における表フィルムと裏フィルムの層間が擬似接着剤層を介して擬似接着され、前記領域以外における表フィルムと裏フィルムの層間が前記接着剤層を介して接着されており、前記擬似接着剤層及び接着剤層が、同じ接着剤から形成され、前記擬似接着剤層の接着強度が接着剤層の接着強度よりも小さい請求項1に記載の包装袋。
【請求項3】
前記接着剤が、加熱温度に応じて接着強度が変化し得る感熱接着剤である請求項2に記載の包装袋。
【請求項1】
表フィルムと裏フィルムが接着剤層を介して積層された積層フィルムから形成された袋本体を有し、
前記袋本体に取出口を形成するために、前記表フィルムの面内に平面視非直線状の表側切込線が形成され、且つ、前記裏フィルムの面内に前記表側切込線と位置ずれした平面視非直線状の裏側切込線が形成されており、
前記表側切込線と裏側切込線の間の領域における表フィルムと裏フィルムの層間が、擬似接着されていることを特徴とする包装袋。
【請求項2】
前記表側切込線と裏側切込線の間の領域における表フィルムと裏フィルムの層間が擬似接着剤層を介して擬似接着され、前記領域以外における表フィルムと裏フィルムの層間が前記接着剤層を介して接着されており、前記擬似接着剤層及び接着剤層が、同じ接着剤から形成され、前記擬似接着剤層の接着強度が接着剤層の接着強度よりも小さい請求項1に記載の包装袋。
【請求項3】
前記接着剤が、加熱温度に応じて接着強度が変化し得る感熱接着剤である請求項2に記載の包装袋。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−35896(P2012−35896A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179993(P2010−179993)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]