説明

化合物、該化合物を含む光学フィルム及び該光学フィルムの製造方法

【課題】広い波長域で一様の偏光変換が可能な光学フィルムを与える、新しい化合物を提供する。
【解決手段】置換されていてもよいシクロヘキシレン基及び−NH−CO−で表される基を含む化合物に由来する構造単位と、式(II)で表される化合物に由来する構造単位とを有する化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、該化合物を含む光学フィルム及び該光学フィルムの製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
可視光全域の入射光に対して、均一な位相差特性を与える位相差板を、積層ではなく単層で形成する技術が求められており、例えば正の複屈折性を示すポリマーとしてノルボルネン系樹脂を含み、さらに負の複屈折性を示すポリマーを含む単層フィルムを延伸して得られる位相差板が、広い波長域で一様の偏光変換が可能であることが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−337222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、広い波長域で一様の偏光変換が可能な光学フィルムを与える、新しい化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、置換されていてもよいシクロヘキシレン基及び−NH−CO−で表される基を含む化合物に由来する構造単位と、
式(II)で表される化合物に由来する構造単位とを有する化合物である。

(式(II)中、X及びXは、それぞれ独立に、炭素数2〜6のアルキレン基を表す。該アルキレン基に含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基又は水酸基に置換されていてもよく、該アルキレン基に含まれるメチレン基は、カルボニル基に置換されていてもよい。Rは、それぞれ独立に、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、グリシドキシ基、ニトロ基又はシアノ基を表す。s及びtは、それぞれ独立に、0〜6の整数を表し、nは、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。)
【0006】
また本発明は、さらに式(A−1)で表される化合物に由来する構造単位を有する上記化合物である。

(式(A−1)中、R32はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜6のアルキレン基又は単結合を表し、該アルキレン基に含まれるメチレン基は、ヘテロ原子に置換されていてもよい。R33は、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、該炭化水素基に含まれるメチレン基は、ヘテロ原子又はカルボニル基に置換されていてもよい。n31は、1〜15の整数を表す。)
【0007】
また本発明は、置換されていてもよいシクロヘキシレン基及び−NH−CO−で表される基を含む化合物が、イソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン及びジシクロヘキシルメタン4,4'−ジイソシアナートからなる群から選ばれる1以上の化合物である上記化合物である。
【0008】
また本発明は、式(II)で表される化合物が、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン及び9,9−ビス〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕フルオレンからなる群から選ばれる1以上の化合物である上記化合物である。
【0009】
また本発明は、式(A−1)で表される化合物が、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、ヘキサメチレンカーボネートジオール及びポリヘキサメチレンカーボネートジオールからなる群から選ばれる1以上の化合物である上記化合物である。
【0010】
また本発明は、化合物及び光重合開始剤(2)を含む組成物である。
【0011】
また本発明は、さらに、式(XI)〜式(XIII)で表されるモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマー(3)、並びに
モノマー(3)を重合してなる重合体(3)
からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む上記組成物である。

(式(XI)中、R11は、水素原子又はメチル基を表し、R12は、5〜20員環の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。該芳香族炭化水素基及び該芳香族複素環基に含まれる水素原子は、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、グリシドキシ基、炭素数2〜4のアシル基又はハロゲン原子に置換されていてもよく、該芳香族炭化水素基及び該芳香族複素環基に含まれるメチレン基は、カルボニル基に置換されていてもよい。)

(式(XII)中、R13は水素原子又はメチル基を表し、R14及びR15は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。又はR14及びR15は、R14及びR15が連結して形成される炭素数4〜6のアルキレン基を表す。該アルキル基及び該アルキレン基に含まれる水素原子は、水酸基に置換されていてもよく、該アルキル基及び該アルキレン基に含まれるメチレン基は、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子に置換されていてもよい。R16は単結合又は炭素数2〜6のオキシアルキレン基を表す。)

(式(XIII)中、R17は水素原子又はメチル基を表し、R18は、水素原子、メチル基又は5〜20員環の環状炭化水素基を表す。該環状炭化水素基に含まれる水素原子は、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、グリシドキシ基、炭素数2〜4のアシル基又はハロゲン原子に置換されていてもよく、該環状炭化水素基に含まれるメチレン基は、カルボニル基、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子に置換されていてもよい。該アルキル基、該アルコキシ基、該アリール基及び該アラルキル基に含まれる水素原子は、水酸基又はハロゲン原子に置換されていてもよい。)
【0012】
また本発明は、上記化合物を含む膜を延伸してなる光学フィルムである。
【0013】
また本発明は、上記組成物を光重合し、延伸してなる光学フィルムである。
【0014】
また本発明は、フィルムを透過する透過光の波長νnmにおける位相差値Re(ν)が、下記式を充足する上記光学フィルムである。
Re(450)<Re(550)<Re(650)
【0015】
また本発明は、上記光学フィルムからなる位相差板である。
【0016】
また本発明は、上記化合物を含む膜を、延伸する光学フィルムの製造方法である。
【0017】
また本発明は、上記組成物を光重合し、延伸する光学フィルムの製造方法である。
【0018】
また本発明は、上記化合物を含む溶液を平滑な面にキャストして溶剤を留去することによって成膜化して得られる膜を、延伸する光学フィルムの製造方法である。
【0019】
また本発明は、上記組成物を含む溶液を平滑な面にキャストして溶剤を留去することによって成膜化して得られる膜を、光重合し、延伸する光学フィルムの製造方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の化合物によれば、広い波長域で一様の偏光変換が可能な光学フィルムを与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。「光学フィルム」とは、光を透過し得るフィルムであって、光学的な機能を有するフィルムをいう。光学的な機能とは、屈折、複屈折等を意味する。
【0022】
本発明の化合物(以下「化合物(1)」という場合がある)は、置換されていてもよいシクロヘキシレン基及び−NH−CO−で表される基を含む化合物(以下「化合物(B)」という場合がある)に由来する構造単位を有する。
化合物(B)として、イソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアナート等が挙げられる。
【0023】
化合物(1)を構成する構造単位100モル%に対し、化合物(B)に由来する構造単位の含有量は、例えば30〜50モル%、好ましくは40〜50モル%、特に好ましくは45〜50モル%である。上記範囲内であると、光学フィルムが広い波長域でより一様の偏光変換を行うことが可能になることから好ましい。
【0024】
化合物(1)は、式(II)で表される化合物に由来する構造単位を含有する。
式(II)で表される化合物として、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕フルオレン等が挙げられる。
【0025】
化合物(1)を構成する構造単位100モル%に対し、式(II)で表される化合物に由来する構造単位の含有量は、例えば20〜50モル%、好ましくは25〜45モル%、特に好ましくは30〜40モル%である。上記範囲内であると、光学フィルムが広い波長域でより一様の偏光変換を行うことが可能になることから好ましい。
【0026】
化合物(1)は、さらに式(A−1)で表される化合物に由来する構造単位を含有してもよい。
【0027】
式(A−1)で表される化合物としては、例えば式(A−2)〜式(A−4)で表される化合物が挙げられる。
【0028】

式(A−2)中、R28は、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜6のアルキレン基を表す。該アルキレン基に含まれるメチレン基は、ヘテロ原子に置換されていてもよい。
【0029】

式(A−3)中、R29は、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を表す。該アルキレン基に含まれるメチレン基は、ヘテロ原子に置換されていてもよい。R30は、それぞれ独立に、単結合、−O−又は炭素数1〜8のアルキレン基を表す。該アルキレン基に含まれるメチレン基は、ヘテロ原子に置換されていてもよい。v29は、0〜18の整数を表す。
【0030】

式(A−4)中、R31は、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を表す。該アルキレン基に含まれる水素原子は、炭素数1〜4のアルキル基に置換されていてもよい。v31は、0〜18の整数を表す。
【0031】
式(A−1)で表される化合物として、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられ、中でも式(A−2)で表される化合物として、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール及び1,3−シクロヘキサンジオール等が挙げられ、式(A−3)で表される化合物として、ヘキサメチレンカーボネートジオール及びポリヘキサメチレンカーボネートジオール等が挙げられる。
【0032】
化合物(1)を構成する構造単位100モル%に対し、式(A−1)で表される化合物に由来する構造単位の含有量は、例えば0〜30モル%、好ましくは0〜20モル%、特に好ましくは0〜10モル%である。上記範囲内であると、光学フィルムが広い波長域でより一様の偏光変換を行うことが可能になることから好ましい。
【0033】
化合物(1)は、
化合物(B)と、式(II)で表される化合物と、ポリオール化合物(以下「ポリオール」という場合がある)とを反応させて得られる化合物(以下「ポリウレタン」という場合がある);
ポリウレタンにさらにポリアミン化合物(以下「ポリアミン」という場合がある)を反応させて得られる化合物(以下「ポリウレタン尿素」という場合がある);
ポリウレタンに、さらに水酸基を有する、アクリレート化合物及びメタアクリレート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を反応させて得られる化合物(以下「ポリウレタンアクリレート」という場合がある);
ポリウレタン尿素に、さらに水酸基を有する、アクリレート化合物及びメタアクリレート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を反応させて得られる化合物(以下「ポリウレタン尿素アクリレート」という場合がある);
であることが好ましい。ポリオールとは、2以上の水酸基を有する化合物をいう。
【0034】
化合物(B)は、式(B)で表される化合物であることが好ましい。

【0035】
式(B)中、R及びnは、上記と同じ意味を表す。
【0036】
化合物(B)としては、イソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアナート等が挙げられ、特にイソホロンジイソシアネートが好ましい。
【0037】
ポリオールとしては、低分子量のポリオールとして、分子量50以上400未満のポリオールが挙げられる。例えば、脂肪族、脂環族、芳香族、及び複素環式のジヒドロキシ化合物、トリヒドロキシ化合物、テトラヒドロキシ化合物等が上げられる。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、デカメチレンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、p−キシレンジオール、ジヒドロキシエチルテトラハイドロフタレート、2−メチルプロパン−1,2,3−トリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等から選ばれる。
【0038】
低分子量のポリオールとしては、ジオール化合物であることが好ましく、特にプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール及び1,6−ヘキサンジオール等から選ばれることが好ましい。また低分子量のポリオールの分子量は、50以上200以下であることが好ましく、更には62以上200以下であることが好ましい。低分子量のポリオールの分子量が62以上200以下であると、本発明の光学フィルムの伸縮性を抑制することができるため、好ましい。
【0039】
高分子量のポリオールとしては、平均分子量400以上のポリオールが挙げられる。例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、シリコーンポリオール、ポリオレフィン系ポリオール及びこれらの共重合体等が使用される。
【0040】
高分子量のポリオールとしては、ジオール化合物であることが好ましく、アルキレン基の炭素数が1〜6のポリアルキレンジオール及びポリカーボネートジオールから選ばれる化合物であることが好ましく、特にポリプロピレングリコール及びポリヘキサメチレンカーボネートジオールが好ましい。また、高分子量のポリオールの平均分子量は、400以上7000以下であることが好ましく、更には400以上5000以下であることが好ましい。更には、400以上2000以下であることが特に好ましい。高分子量のポリオールの平均分子量が400以上2000以下であると、本発明の光学フィルムに柔軟性を与えるため、好ましい。
【0041】
ポリエステルポリオールとしては、例えばコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、ドデカン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、フマル酸等から選ばれるジカルボン酸と低分子量のポリオールとを反応させて得られたものがある。別の方法として、β−プロピオクラトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン、メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、メチル−ε−カプロラクトン、ジメチル−ε−カプロラクトン、トリメチル−ε−カプロラクトン等のラクトン化合物を、低分子量のポリオールと反応せしめたものもある。
ポリエーテルポリオールとしては、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール等がある。
【0042】
ポリカーボネートポリオールとしては、低分子量のポリオール類とジアリルカーボネート、ジアルキルカーボネート及びエチレンカーボネートから選ばれる化合物からエステル交換法によって得られたもの、例えばポリ−1,6−ヘキサメチレンカーボネート、ポリ−2,2’−ビス(4−ヒドロキシヘキシル)プロパンカーボネート等がある。
【0043】
ポリオールとしては、特に限定されるものでなく、また複数のポリオールを組み合わせて用いてもよい。得られるフィルムの柔軟性や耐久性の観点から、低分子量ポリオールと高分子量ポリオールとをそれぞれ少なくとも1種用いて組み合わせることが好ましい。特に、平均分子量400以上10000以下の高分子量のポリオールと、高分子量のポリオールとは異なり、分子量50以上400未満の低分子量のジオール化合物とを含む化合物であることが好ましい。
【0044】
ポリアミンとしては、芳香族ポリアミン、脂肪族ポリアミン共に利用することができる。芳香族ポリアミンとしては、例えば、トリレンジアミン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリエチル−2,6−ジアミノベンゼン、3,5,3’,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、等が挙げられる。脂肪族ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノシクロヘキシルメタン、及び3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン)等が挙げられる。
脂肪族ポリアミンが、変色が少ないことから好ましい。特に脂環式構造を有するポリアミンが、光学特性が良好になる傾向にあり好ましい。脂環式構造を有するポリアミンとしては、ジアミノシクロヘキシルメタン及びイソホロンジアミン等が挙げられる。
【0045】
水酸基を有する(メタ)アクリレート(「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」と「メタアクリレート」との総称をいう)としては、モノヒドロキシモノ(メタ)アクリレート、モノヒドロキシオリゴ(メタ)アクリレート、オリゴヒドロキシオリゴ(メタ)アクリレートがあるが、反応性の観点からモノヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートが好ましい。モノヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられる。
【0046】
化合物(1)の製造方法である重付加反応等は、有機溶剤を用いてもよいし無溶剤でおこなってもよい。有機溶剤としては、イソシアネート基と反応しないものであれば特に限定されない。例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ミネラルターペン等の炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、メチルグリコールアセテート、酢酸セロソルブ等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、等が挙げられる。また、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン等の非プロトン性極性溶剤を用いてもよい。
【0047】
化合物(1)の製造に際して、ウレタン化反応を促進するために、必要により通常のウレタン反応に使用される触媒を用いてもよい。具体的には、トリエチルアミン、N−エチルモルホリン、トリエチレンジアミン等の第三級アミン;ジラウリン酸ジブチル錫、ジラウリン酸ジオクチル錫、オクチル酸錫等の有機錫系触媒、テトラブチルチタネート等の有機チタン系触媒、等が挙げられる。
【0048】
化合物(1)がポリウレタン尿素又はポリウレタン尿素アクリレートである場合、ジアミン等の鎖伸長剤および必要に応じて後述する反応停止剤を溶剤中に溶解させたものをポリウレタン溶液に添加して鎖伸長反応させるか、又はポリウレタン溶液に鎖伸長剤及び必要に応じて反応停止剤を添加して鎖伸長反応させればよい。ポリウレタン尿素の製造で用いる反応停止剤としては、例えば、ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン類;ベンジルアミン、ジベンジルアミン等の芳香族アミン類;ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類;エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類が挙げられる。
【0049】
また、化合物(1)の製造に際して、合成中のアクリレートの重合を抑制するために重合禁止剤を使用することも好ましい。具体的には、メトキノン、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン等のヒドロキノン系重合禁止剤、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、t−ブチルカテコール等のヒンダードフェノール系重合禁止剤、フェノチアジン、ニトロソ化合物等の一般的なものが使用できる。重合禁止剤は、1種又は2種以上用いてもよく、使用量は、一般的には10〜50000ppm、好ましくは50〜1000ppm程度である。
【0050】
化合物(1)の分子量は特別に限定されるものではないが、粘性や溶解性の観点から数平均分子量で1,000〜100,000の範囲であることが好ましい。また、化合物がウレタンオリゴマー、ウレタン尿素オリゴマー等の低分子量樹脂であってもよい。
【0051】
本発明の光学フィルムは、化合物(1)を含む膜を延伸することによって得ることができる。また、本発明の光学フィルムは、化合物(1)を含む本発明の組成物を光重合させてなる膜を、延伸することによって得ることもできる。
【0052】
本発明の組成物は、光重合開始剤(2)を含んでもよい。光重合開始剤(2)としては、例えばベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、α−ヒドロキシケトン類、α−アミノケトン類、ヨードニウム塩又はスルホニウム塩等が挙げられ、より具体的には、イルガキュア(Irgacure)907、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア250、イルガキュア369(以上、全てチバスペシャルティケミカルズ(株)製)、セイクオールBZ、セイクオールZ、セイクオールBEE(以上、全て精工化学(株)製)、カヤキュアー(kayacure)BP100(日本化薬(株)製)、カヤキュアーUVI−6992(ダウ社製)、アデカオプトマーSP−152及びアデカオプトマーSP−170(以上、全て(株)ADEKA)等を挙げることができる。
【0053】
また光重合開始剤(2)の使用量は、例えば化合物(1)と後述するモノマー(3)との合計量100重量部に対して、0.1重量部〜30重量部であり、好ましくは0.5重量部〜10重量部である。上記範囲内であれば、透過率を低下することなく、モノマーを重合させることができる。
【0054】
本発明の組成物は、モノマーの光重合を制御し、得られる光学フィルムの安定性を向上させるために、重合禁止剤を含んでいてもよい。重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン及びアルキルエーテル等の置換基を有するハイドロキノン類、ブチルカテコール等のアルキルエーテル等の置換基を有するカテコール類、ピロガロール類、2,2、6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル等のラジカル補足剤、チオフェノール類、β−ナフチルアミン類或いはβ−ナフトール類等を挙げることができる。
【0055】
重合禁止剤の使用量は、例えば化合物(1)と後述するモノマー(3)との合計量100重量部に対して、0.1重量部〜30重量部であり、好ましくは0.5重量部〜10重量部である。上記範囲内であれば、透過率を低下することなく、モノマーを重合させることができる。
【0056】
本発明の組成物は、光重合開始剤の反応を高感度化するために光増感剤を含有していてもよい。光増感剤としては、例えばキサントン及びチオキサントン等のキサントン類、アントラセン及びアルキルエーテル等の置換基を有するアントラセン類、フェノチアジン或いはルブレンを挙げることができる。
【0057】
光増感剤の使用量は、化合物(1)と後述するモノマー(3)との合計量100重量部に対して、例えば0.1重量部〜30重量部であり、好ましくは0.5重量部〜10重量部である。上記範囲内であれば、透過率を低下することなく、高感度にモノマーを重合させることができる。
本発明の組成物は、モノマー(3)及び/又はモノマー(3)を重合してなる重合体を含んでいてもよい。モノマー(3)としては、モノマー(XI)〜モノマー(XIV)で表されるモノマーが挙げられる。
【0058】
モノマー(XI)において、R11は、好ましくは水素原子である。
モノマー(XI)において、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基の具体例としては、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基及びアントラセニル基等の芳香族炭化水素基、ピロール基、フラニル基、ピラジニル基、ピラゾール基、ピリジニル基及びチアゾール基等の芳香族複素環基等が挙げられる。
【0059】
芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基に含まれる水素原子は、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基及びオクチル基等の炭素数1〜12のアルキル基、例えばメトキシ基及びエトキシ基等の炭素数1〜12のアルコキシ基、例えばフッ素原子、塩素原子及び臭素原子等のハロゲン原子、例えばアセチル基等のような炭素数2〜4のアシル基、水酸基、グリシドキシ基又はカルボキシル基に置換されていてもよい。
【0060】
芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基は、複数の芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる1以上の基が連結基を介して結合されてなる1価の基であってもよい。連結基としては、例えばメチレン基、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、シクロヘキシリデン基、エチレン基及びプロピレン基等の炭素数1〜6程度の炭化水素基、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基或いは−CO−等が挙げられる。また複数の芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基から選ばれる基が、単結合で結合していてもよい。
【0061】
具体的には、複数の芳香族炭化水素基が単結合で結合したビフェニル基や、複数の芳香族炭化水素基がイソプロピリデン基で結合した下記式で表される基等が挙げられる。
【0062】

【0063】
モノマー(XI)としては、例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン、トリメチルスチレン、プロピルスチレン、tert−ブチルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ドデシルスチレン等のアルキルスチレン、例えばヒドロキシスチレン、t−ブトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニルベンジルアセテート、o−クロロスチレン、p−クロロスチレン及びアミノスチレン等の、ベンゼン環に水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アシルオキシ基、ハロゲン及びアミノ基等から選ばれる基が結合した置換スチレン、例えば4−ビニルビフェニル、2−エチル−4ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン及び4−ヒドロキシ−4’−ビニルビフェニル等のビニルビフェニル系化合物、ビニルナフタレン及びビニルアントラセン等の縮合環及びビニル基を有する化合物、N−ビニルフタルイミド等の芳香族炭化水素基、複素環基及びビニル基を有する化合物等が挙げられる。
芳香族複素環基を有するモノマー(XI)としては、N−ビニルカルバゾール、N−フェニルマレイミド、N−ビニルピリジン、N−ビニルフタルイミド及びN−ビニルインドール等が挙げられる。
【0064】
モノマー(XII)において、R13は、好ましくは水素原子である。
モノマー(XII)として、異なる複数のモノマーを併用してもよい。
【0065】
モノマー(XII)の具体例としては、例えば(メタ)アクリルアミドのほかに、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド又はN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド等のN−置換(メタ)アクリルアミド、例えばN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等のN,N−置換(メタ)アクリルアミド、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート又は2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
モノマー(XII)としては、特にN,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート又は2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
モノマー(XII)は、例えば、和光純薬工業(株)、東京化成工業(株)、シグマ・アルドリッチジャパン(株)等から市販されている。モノマー(XII)、市販されているものをそのまま使用すればよい。
【0066】
モノマー(XIII)において、R16は、好ましくは水素原子である。
モノマー(XIII)において、5〜20員環の環状炭化水素基としては、例えばフェニル基、ナフチル基及びアントラニル基等の芳香族炭化水素基、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、イソボルニル基、トリシクロデカニル基及びアダマンチル基等のシクロアルキル基等が挙げられる。
【0067】
該環状炭化水素基には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基及びオクチル基等の炭素数1〜12のアルキル基、例えばメトキシ基及びエトキシ基等の炭素数1〜12のアルコキシ基、例えばフッ素原子、塩素原子及び臭素原子等のハロゲン原子、例えばアセチル基等のような炭素数2〜4のアシル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、水酸基、グリシドキシ基並びにカルボキシル基からなる群から選ばれる基が結合していてもよい。
該環状炭化水素基に含まれるメチレン基は、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子等のヘテロ原子に置換されていてもよい。
モノマー(XIII)として、異なる複数のモノマーを併用してもよい。
【0068】
モノマー(XIII)の具体例としては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、アントラセニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−テトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート又は1−アクリロイル−4−メトキシナフタレン等が例示され、特に、メチル(メタ)アクリレート、1−アクリロイル−4−メトキシナフタレン、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−テトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート又はナフチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0069】
モノマー(XI)〜(XIII)以外にも、モノマー(XI)〜(XIII)と共重合可能なモノマー(XIV)に由来する繰り返し単位が含有されていてもよい。共重合可能なモノマー(XIV)としては、例えば、式(XIV−a)で表されるモノマー(以下、モノマー(XIV−a)という場合がある)、酢酸ビニル、(無水)マレイン酸、マレイミド、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、炭素数2〜12のアルキルエステルを有する(メタ)アクリレート、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィン化合物、炭素数5〜20の環状オレフィン、炭素数5〜20の脂環式構造を有するビニル化合物等が挙げられる。

式(XIV−a)中、R18は前記R16と同じ意味を表し、sは1〜20の整数を表し、R19は前記R17と同じ意味を表す。
【0070】
モノマー(XIV−a)としては、式(XIV−1)又は式(XIV−2)で表されるモノマーが好ましい。

(式(XIV−1)中、R18及びsは前記と同じ意味を表し、Rは、それぞれ独立に、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、グリシドキシ基を表す。tは0〜4の数を表し、uは0〜5の数を表す。)

(式(XIV−2)中、R18、R、s及びtは前記と同じ意味を表す。)
【0071】
モノマー(XIV−a)の具体例としては、次のようなモノマーが例示される。

【0072】
モノマー(XIV)の製造方法としては、例えば、R19の構造を与える化合物としてフェノール化合物を用い、該化合物にエチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを反応させて、R19−(CH−CH−O)−Hを得て、さらにアクリル酸又はメタクリル酸等をエステル化する方法等が挙げられる。
【0073】
式(XIV−1−1)及び式(XIV−2−1)で表される化合物は新中村化学工業(株)からNKエステルL−4[式(XIV−1−1)で表されるモノマー]及びNKエステルA−CMP−1E[式(XIV−2−1)で表されるモノマー]の商品名で市販されている。
【0074】
共重合可能なモノマー(XIV)として用いられる炭素数3〜20のα−オレフィン化合物としては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンのような炭素原子数3〜20の直鎖状α−オレフィンや、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテンのような炭素原子数4〜20の分岐状α−オレフィン等が挙げられる。
エチレン及び炭素数3〜20のα−オレフィン化合物の中でも、エチレン、炭素原子数が3又は4の直鎖状α−オレフィンであるプロピレン及び1−ブテンが、得られる共重合体をフィルム状に成形した際の柔軟性に優れることから好ましく、特にエチレンが好ましい。
【0075】
共重合可能なモノマー(XIV)として用いられる環状オレフィンとは、炭素環内に重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物である。従って、環状オレフィンをモノマー(XI)〜モノマー(XIII)と共重合して得られる重合体(1)の主鎖中に、例えば、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、それらが2つ以上結合した環のような脂環式の環を導入し得る単量体である。具体的には、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エンや、6−アルキルビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン、5,6−ジアルキルビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン、1−アルキルビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン、7−アルキルビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エンのような、メチル基、エチル基、ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が導入されたノルボンネン誘導体、ジメタノオクタヒドロナフタレンとも呼ばれているテトラシクロ[4,4,0,12,5,17,10]−3−ドデセン、8−アルキルテトラシクロ[4,4,0,12,5,17,10]−3−ドデセン、8,9−ジアルキルテトラシクロ[4,4,0,12,5,17,10]−3−ドデセン等のジメタノオクタヒドロナフタレンの8位及び/又は9位に炭素数3以上のアルキル基が導入されたジメタノオクタヒドロナフタレン誘導体、分子内に1個又は複数個のハロゲンが導入されたノルボルネンの誘導体、8位及び/又は9位にハロゲンが導入されたジメタノオクタヒドロナフタレンの誘導体等が挙げられる。
【0076】
共重合可能なモノマー(XIV)として用いられる脂環式構造を有するビニル化合物とは、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、ノルボルネニル基、アダマンチル基等の炭素数3〜12程度の脂環式炭化水素基、及びビニル基からなる化合物である。
【0077】
共重合可能なモノマー(XIV)は、2種類以上の共重合可能なモノマーを併用してもよい。
【0078】
本発明の組成物には、多官能モノマーが含有されていてもよい。多官能モノマーとしては、多価(メタ)アクリレートが好ましい。該多価(メタ)アクリレートは、分子内に脂環式炭化水素基又は芳香族性を有する基を有することが好ましく、例えばビスフェノールフルオレンを有することが好ましい。
【0079】
本発明の組成物には、3官能以上の多官能光重合性化合物が含有されていてもよい。3官能以上の多官能光重合性化合物としては、例えばペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート又はジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等が挙げられる。共重合可能なモノマーは、単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。3官能以上の多官能光重合性化合物は、1種類でも2種類以上の3官能以上の多官能光重合性化合物を用いてもよい。
【0080】
本発明の組成物には、溶剤(4)を含んでいてもよい。有機溶剤としては、例えばエーテル類、芳香族炭化水素類、ケトン類、アルコール類、エステル類、アミド類等が挙げられる。
【0081】
エーテル類としては、例えばテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、メトキシペンチルアセテート、アニソール、フェネトール又はメチルアニソール等が挙げられる。
【0082】
芳香族炭化水素類としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン又はメシチレン等が挙げられる。
【0083】
ケトン類としては、例えばアセトン、2−ブタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロペンタノン又はシクロヘキサノン等が挙げられる。
【0084】
アルコール類としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール又はグリセリン等が挙げられる。
【0085】
エステル類としては、例えば酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、アルキルエステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート又はγ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0086】
アミド類としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド又はN,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
その他の溶剤としては、例えばN−メチルピロリドン又はジメチルスルホオキシド等が挙げられる。
溶剤は、それぞれ単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0087】
本発明の組成物には、レベリング剤を含んでいてもよい。レベリング剤としては、例えばトーレシリコーンDC3PA、同SH7PA、同DC11PA、同SH21PA、同SH28PA、同29SHPA、同SH30PA、ポリエーテル変性シリコンオイルSH8400(トーレシリコーン(株)製)、KP321、KP322、KP323、KP324、KP326、KP340、KP341(信越シリコーン製)、TSF400、TSF401、TSF410、TSF4300、TSF4440、TSF4445、TSF−4446、TSF4452、TSF4460(ジーイー東芝シリコーン(株)製)、フロリナート(商品名)FC430、同FC431(住友スリーエム(株)製)、メガファック(商品名)F142D、同F171、同F172、同F173、同F177、同F183、同R30(大日本インキ化学工業(株)製)、エフトップ(商品名)EF301、同EF303、同EF351、同EF352(新秋田化成(株)製)、サーフロン(商品名)S381、同S382、同SC101、同SC105(旭硝子(株)製)、E5844((株)ダイキンファインケミカル研究所製)、BM−1000、BM−1100(いずれも商品名:BM Chemie社製)、メガファック(商品名)R08、同BL20、同F475、同F477又は同F443(大日本インキ化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0088】
レベリング剤を用いることにより、得られるフィルム(膜)を平滑化することができる。さらに成膜化の製造過程で、組成物の流動性を制御したり、組成物を重合して得られるフィルムの架橋密度を調整したりすることができる。
レベリング剤の含有量は、モノマー(1)、化合物(2)、光重合開始剤(3)及び必要に応じて含まれる共重合可能なモノマー等の合計100重量部に対して、0.001重量部〜2.0重量部であり、好ましくは0.005重量部〜1.5重量部である。上記範囲内であれば、透過率を低下することなく、モノマーを重合させることができる。
【0089】
本発明の組成物には、可塑剤を含んでいてもよい。可塑剤としては、リン酸エステル、カルボン酸エステル又はグリコール酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート又はトリブチルホスフェートが挙げられる。
【0090】
カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル又はクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)又はジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が挙げられる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)、O−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)、クエン酸アセチルトリエチル又はクエン酸アセチルトリブチルが挙げられる。
その他のカルボン酸エステルとしては、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが例示される。
【0091】
グリコール酸エステルとしては、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート又はブチルフタリルブチルグリコレート等が例示される。またトリメチロールプロパントリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、ジトリメチロールプロパンテトラアセテート、ジトリメチロールプロパンテトラプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、ソルビトールヘキサプロピオネート、ソルビトールトリアセテートトリプロピオネート、イノシトールペンタアセテート又はソルビタンテトラブチレート等も好例として挙げられる。
【0092】
可塑剤としては、中でもトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジエチルヘキシルフタレート、トリアセチン、エチルフタリルエチルグリコレート、トリメチロールプロパントリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、ジトリメチロールプロパンテトラアセテート、ペンタエリスリトールテトラアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、ソルビトールヘキサプロピオネート又はソルビトールトリアセテートトリプロピオネート等が好ましく、特にトリフェニルホスフェート、ジエチルフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、トリメチロールプロパントリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、ジトリメチロールプロパンテトラアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、ソルビトールヘキサプロピオネート又はソルビトールトリアセテートトリプロピオネートが好ましい。
【0093】
可塑剤は1種でもよいし2種以上併用してもよい。可塑剤の添加量は、本発明のフィルム特性を大きく損ねない範囲で適宜、選択されればよく、例えば本発明の組成物の固形分総量に対して0.1〜30重量%程度である。
【0094】
可塑剤の具体例としては、特開平11−124445号公報記載の(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、特開平11−246704号公報記載のグリセロールエステル類、特開2000−63560号公報記載のジグリセロールエステル類、特開平11−92574号公報記載のクエン酸エステル類、特開平11−90946号公報記載の置換フェニルリン酸エステル類等が挙げられる。
【0095】
本発明の光学フィルムは、本発明の化合物を含む膜を延伸することによって、又は、本発明の組成物を光重合させてなる膜を、延伸することによって得ることができる。
本発明の組成物を紫外光(UV)によって光重合して硬化させる。紫外光の発生源としては、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト、低圧、高圧、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、太陽光線等が例示される。紫外光の照射強度は、終始一定の強度でも行ってよいし、硬化途中で強度を変化させることにより、硬化後の物性を微調整することもできる。
本発明の組成物は、化合物及び光重合開始剤(2)及びモノマー(3)を混合し、必要に応じて溶剤(4)、重合禁止剤、光増感剤、レベリング剤又は可塑剤を混合することによって調製される。
組成物を製造する際の有機溶剤の量は、化合物とモノマー(3)との合計濃度を10重量%以上、好ましくは20〜50重量%に調製される量である。
【0096】
本発明の光学フィルムは、通常、組成物を成膜化(フィルム化)し、光重合して、得られた膜状物をさらに延伸することによって製造される。組成物の膜状物を形成する方法としては、例えば、組成物を含む溶液を平滑な面にキャストして溶剤を留去する溶剤キャスト法、組成物を溶融押出機等でフィルム状に押出成形する溶融押出法等が挙げられる。特に溶剤キャスト法は組成物を含む溶液をそのまま成膜化できることから好ましい。
【0097】
また、延伸方法としては、例えば、テンター法による延伸法、ロール間延伸による延伸法等が挙げられる。
延伸は、一軸延伸でも二軸延伸のいずれでもよく、縦延伸でも横延伸のいずれでもよい。特に生産性の観点から、一軸延伸が好ましく、特に一軸の縦延伸が好ましい。
【0098】
光学フィルムを透過する光の波長450nmのレターデーション[Re(450)]と波長550nmのレターデーション[Re(550)]との比([Re(450)]/[Re(550)])は波長分散係数αと定義され、光学フィルムが広い波長域において一様の偏光変換を行うためには、光学フィルムの波長分散係数αが1.00未満である波長分散特性を有することが好ましい。かくして得られた本発明の光学フィルムは、通常、波長分散係数αが1.00未満である。
光学フィルムを透過する光の波長νnmにおける位相差値Re(ν)は、通常Re(450)<Re(550)<Re(650)の関係を充足する等、300〜700nm可視領域全般で右上がりの分散を示すことから、広い波長域で一様の偏光変換を行うことができる。
【0099】
本発明の光学フィルムは、広い波長域において一様の偏光変換が可能であるため、λ/2板又はλ/4板等の位相差板や、視野角向上フィルム等として用いられる。また光学フィルムがλ/4板であれば、それを直線偏光板と組み合わせて広波長域の円偏光板とすることができ、またλ/2板であれば、それを直線偏光板と組み合わせて広波長域の偏光回転素子とすることができる。したがって、各種液晶表示装置、陰極線管(CRT)、タッチパネル、エレクトロルミネセンス(EL)ランプ等における反射防止フィルター、さらには液晶プロジェクター等に使用することができる。
本発明の位相差板は、このように上記の光学フィルムからなり、広い波長域において一様の偏光変換が可能である。
【実施例】
【0100】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、重量%及び重量部である。なお光学異方性は、以下の方法によって求めた。
【0101】
(光学異方性)
延伸によって重合体主鎖を一軸配向させた際に、その配向方向と屈折率が最大になる方向が異なる(例えば、直交する、等)光学異方性を有する場合、負の複屈折性を有している。一方、配向方向と屈折率が最大になる方向が一致する、又はほぼ一致する(例えば、配向方向と屈折率が最大になる方向との差が10度以内の場合、等)場合、正の複屈折性を有している。屈折率が最大になる方向は自動複屈折計より求められる。
【0102】
(合成例1)
攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた反応槽に、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(平均分子量860)5.16部、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン18.92部、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.10部、ジラウリン酸ジブチル錫0.10部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート62.00部を仕込み、窒素気流攪拌下、イソホロンジイソシアネート14.67部を滴下し、滴下終了後、窒素気流下、120℃で4時間反応させ、数平均分子量:3.2×10のポリウレタン1を得た。
【0103】
(合成例2)
攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた反応槽に、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(平均分子量860)10.32部、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン16.82部、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.10部、ジラウリン酸ジブチル錫0.10部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート66.90部を仕込み、窒素気流攪拌下、イソホロンジイソシアネート14.67部を滴下し、滴下終了後、窒素気流下、120℃で4時間反応させ、数平均分子量:3.7×10のポリウレタン2を得た。
【0104】
(合成例3)
攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた反応槽に、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(平均分子量860)15.48部、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン14.72部、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.10部、ジラウリン酸ジブチル錫0.10部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート71.79部を仕込み、窒素気流攪拌下、イソホロンジイソシアネート14.67部を滴下し、滴下終了後、窒素気流下、120℃で4時間反応させ、数平均分子量:4.3×10のポリウレタン3を得た。
【0105】
(合成例4)
攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた反応槽に、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(平均分子量860)10.32部、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン16.82部、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.10部、ジラウリン酸ジブチル錫0.10部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート66.90部を仕込み、窒素気流攪拌下、イソホロンジイソシアネート14.67部を滴下し、滴下終了後、窒素気流下、120℃で4時間反応させ、50℃まで冷却後、2−ヒドロキシエチルアクリレート2.68部を仕込み、50℃で1時間反応させ、数平均分子量:3.9×10のウレタンアクリレート4を得た。
【0106】
(合成例5)
攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた反応槽に、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(平均分子量860)5.16部、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン14.72部、1,4−シクロヘキサンジメタノール1.73部、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.10部、ジラウリン酸ジブチル錫0.10部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート55.28部を仕込み、窒素気流攪拌下、イソホロンジイソシアネート14.67部を滴下し、滴下終了後、窒素気流下、120℃で4時間反応させ、数平均分子量:4.9×10のポリウレタン5を得た。
【0107】
(合成例6)
攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた反応槽に、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(平均分子量860)5.16部、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン14.72部、1,4−シクロヘキサンジオール1.39部、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.10部、ジラウリン酸ジブチル錫0.10部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート55.28部を仕込み、窒素気流攪拌下、イソホロンジイソシアネート14.67部を滴下し、滴下終了後、窒素気流下、120℃で4時間反応させ、数平均分子量:3.1×10のポリウレタン6を得た。
【0108】
(合成例7)
攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた反応槽に、ポリプロピレングリコール(平均分子量700)8.40部、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン16.82部、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.10部、ジラウリン酸ジブチル錫0.10部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート63.82部を仕込み、窒素気流攪拌下、イソホロンジイソシアネート14.67部を滴下し、滴下終了後、窒素気流下、120℃で4時間反応させ、数平均分子量:4.4×10のポリウレタン7を得た。
【0109】
(合成例8)
攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた反応槽に、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(平均分子量860)10.32部、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン16.82部、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.10部、ジラウリン酸ジブチル錫0.10部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート66.90部を仕込み、窒素気流攪拌下、イソホロンジイソシアネート14.67部を滴下し、滴下終了後、窒素気流下、120℃で4時間反応させ、50℃まで冷却し、イソホロンジアミン2.02部をイソプロピルアルコール31.98部に混合した溶液を滴下し、50℃で1時間反応させ、数平均分子量:1.6×10のポリウレタン尿素8を得た。
【0110】
(合成例9)
攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた反応槽に、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(平均分子量860)10.32部、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン16.82部、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.10部、ジラウリン酸ジブチル錫0.10部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート66.90部を仕込み、窒素気流攪拌下、イソホロンジイソシアネート14.67部を滴下し、滴下終了後、窒素気流下、120℃で4時間反応させ、50℃まで冷却し、イソホロンジアミン1.91部をイソプロピルアルコール30.64部に混合した溶液を滴下し、50℃で1時間反応させ、更に、2−ヒドロキシエチルアクリレート2.68部を仕込み、50℃で1時間反応させ、数平均分子量:1.6×10のウレタン尿素アクリレート9を得た。
【0111】
(合成例10)
攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた反応槽に、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(平均分子量860)10.32部、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン18.17部、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.10部、ジラウリン酸ジブチル錫0.10部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート66.90部を仕込み、窒素気流攪拌下、イソホロンジイソシアネート14.67部を滴下し、滴下終了後、窒素気流下、120℃で4時間反応させ、数平均分子量:3.5×10のポリウレタン10を得た。
【0112】
(合成例11)
攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた反応槽に、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(平均分子量860)10.32部、9,9−ビス〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕フルオレン21.05部、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.10部、ジラウリン酸ジブチル錫0.10部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100.49部を仕込み、窒素気流攪拌下、イソホロンジイソシアネート14.67部を滴下し、滴下終了後、窒素気流下、120℃で4時間反応させ、数平均分子量:9.3×10のポリウレタン11を得た。
【0113】
(合成例12)
攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた反応槽に、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(平均分子量860)10.32部、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン16.82部、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.10部、ジラウリン酸ジブチル錫0.10部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート66.90部を仕込み、窒素気流攪拌下、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン12.82部を滴下し、滴下終了後、窒素気流下、120℃で4時間反応させ、数平均分子量:1.4×10のポリウレタン12を得た。
【0114】
(合成例13)
攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた反応槽に、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(平均分子量860)10.32部、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン16.82部、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.10部、ジラウリン酸ジブチル錫0.10部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート96.73部を仕込み、窒素気流攪拌下、ジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアナート17.32部を滴下し、滴下終了後、窒素気流下、120℃で4時間反応させ、数平均分子量:1.2×10のポリウレタン13を得た。
【0115】
(実施例1)
合成例1で得られたポリウレタン1を、ポリエチレンテレフタレート製の離型フィルム上に、300μmのギャップのアプリケーターで塗布、100℃で30分乾燥し、温度調節オートグラフ延伸機((株)東洋精機製作所製、ストログラフT)を使用して3.0倍延伸し光学フィルムを得た。得られた光学フィルムを、450nmから750nmの波長範囲において、自動複屈折計(KOBRA−WR、王子計測機器(株)製)を用いて波長分散特性を測定した。該光学フィルムは、表2に示す光学特性であった。
【0116】
(実施例2〜11)
実施例1のポリウレタン1を表1に示したものに変更した以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを得た。得られた光学フィルムは、それぞれ表2に示す光学特性であった。
【0117】
(実施例12)
合成例4で作製したウレタンアクリレート4 20.0g、光重合開始剤(2)(イルガキュア184、チバスペシャルティケミカルズ(株)製)0.1g、ポリエーテル変性シリコンオイルSH8400(トーレシリコーン(株)製)0.05gを混合溶解したのち、ポリエチレンテレフタレート製の離型フィルム上に、300μmのギャップのアプリケーターで塗布、100℃で30分乾燥し、UV照射(高圧水銀ランプ:1Pass当たり 200mJ/cm:365nm)、さらに温度調節オートグラフ延伸機((株)東洋精機製作所製、ストログラフT)を使用して3.0倍延伸し光学フィルムを得た。実施例1と同様にして波長分散特性を測定したところ、表2に示す光学特性であった。
【0118】
(実施例13)
合成例4で作製したウレタンアクリレート4 15.0g、光重合開始剤(2)(イルガキュア184、チバスペシャルティケミカルズ(株)製)0.1g、メチルメタクリレート[モノマー(3)]5部、ポリエーテル変性シリコンオイルSH8400(トーレシリコーン(株)製)0.05g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2部を混合溶解したのち、実施例12と同様にして光学フィルムを得て、波長分散特性を測定したところ、表2に示す光学特性であった。
【0119】
(実施例14)
合成例4で作製したウレタンアクリレート4 15.0g、光重合開始剤(2)(イルガキュア184、チバスペシャルティケミカルズ(株)製)0.1g、メチルメタクリレート[モノマー(3)]4部、N−ビニルカルバゾール[モノマー(3)]1部、ポリエーテル変性シリコンオイルSH8400(トーレシリコーン(株)製)0.05g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2部を混合溶解したのち、実施例12と同様にして光学フィルムを得て、波長分散特性を測定したところ、表2に示す光学特性であった。
【0120】
(実施例15)
実施例12のウレタンアクリレート4を表1に示したものに変更した以外は、実施例12と同様にして光学フィルムを得た。得られた光学フィルムは、表2に示す光学特性であった。
【0121】
【表1】

【0122】
【表2】

【0123】
実施例1〜15の光学フィルムは、全て正の複屈折性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明の化合物によれば、広い波長域で一様の偏光変換が可能な光学フィルムを与えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
置換されていてもよいシクロヘキシレン基及び−NH−CO−で表される基を含む化合物に由来する構造単位と、
式(II)で表される化合物に由来する構造単位とを有する化合物。

(式(II)中、X及びXは、それぞれ独立に、炭素数2〜6のアルキレン基を表す。該アルキレン基に含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基又は水酸基に置換されていてもよく、該アルキレン基に含まれるメチレン基は、カルボニル基に置換されていてもよい。Rは、それぞれ独立に、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、グリシドキシ基、ニトロ基又はシアノ基を表す。s及びtは、それぞれ独立に、0〜6の整数を表し、nは、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。)
【請求項2】
さらに式(A−1)で表される化合物に由来する構造単位を有する請求項1記載の化合物。

(式(A−1)中、R32はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜6のアルキレン基又は単結合を表し、該アルキレン基に含まれるメチレン基は、ヘテロ原子に置換されていてもよい。R33は、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、該炭化水素基に含まれるメチレン基は、ヘテロ原子又はカルボニル基に置換されていてもよい。n31は、1〜15の整数を表す。)
【請求項3】
置換されていてもよいシクロヘキシレン基及び−NH−CO−で表される基を含む化合物が、イソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン及びジシクロヘキシルメタン4,4'−ジイソシアナートからなる群から選ばれる1以上の化合物である請求項1又は2記載の化合物。
【請求項4】
式(II)で表される化合物が、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン及び9,9−ビス〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕フルオレンからなる群から選ばれる1以上の化合物である請求項1〜3のいずれか記載の化合物。
【請求項5】
式(A−1)で表される化合物が、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、ヘキサメチレンカーボネートジオール及びポリヘキサメチレンカーボネートジオールからなる群から選ばれる1以上の化合物である請求項2〜4のいずれか記載の化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載の化合物及び光重合開始剤(2)を含む組成物。
【請求項7】
さらに、式(XI)〜式(XIII)で表されるモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマー(3)、並びに
モノマー(3)を重合してなる重合体(3)
からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項6記載の組成物。

(式(XI)中、R11は、水素原子又はメチル基を表し、R12は、5〜20員環の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。該芳香族炭化水素基及び該芳香族複素環基に含まれる水素原子は、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、グリシドキシ基、炭素数2〜4のアシル基又はハロゲン原子に置換されていてもよく、該芳香族炭化水素基及び該芳香族複素環基に含まれるメチレン基は、カルボニル基に置換されていてもよい。)

(式(XII)中、R13は水素原子又はメチル基を表し、R14及びR15は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。又はR14及びR15は、R14及びR15が連結して形成される炭素数4〜6のアルキレン基を表す。該アルキル基及び該アルキレン基に含まれる水素原子は、水酸基に置換されていてもよく、該アルキル基及び該アルキレン基に含まれるメチレン基は、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子に置換されていてもよい。R16は単結合又は炭素数2〜6のオキシアルキレン基を表す。)

(式(XIII)中、R17は水素原子又はメチル基を表し、R18は、水素原子、メチル基又は5〜20員環の環状炭化水素基を表す。該環状炭化水素基に含まれる水素原子は、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、グリシドキシ基、炭素数2〜4のアシル基又はハロゲン原子に置換されていてもよく、該環状炭化水素基に含まれるメチレン基は、カルボニル基、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子に置換されていてもよい。該アルキル基、該アルコキシ基、該アリール基及び該アラルキル基に含まれる水素原子は、水酸基又はハロゲン原子に置換されていてもよい。)
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか記載の化合物を含む膜を延伸してなる光学フィルム。
【請求項9】
請求項6又は7記載の組成物を光重合し、延伸してなる光学フィルム。
【請求項10】
フィルムを透過する透過光の波長νnmにおける位相差値Re(ν)が、下記式を充足する請求項8又は9記載の光学フィルム。
Re(450)<Re(550)<Re(650)
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか記載の光学フィルムからなる位相差板。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれか記載の化合物を含む膜を、延伸する光学フィルムの製造方法。
【請求項13】
請求項6又は7記載の組成物を光重合し、延伸する光学フィルムの製造方法。
【請求項14】
請求項1〜5のいずれか記載の化合物を含む溶液を平滑な面にキャストして溶剤を留去することによって成膜化して得られる膜を、延伸する光学フィルムの製造方法。
【請求項15】
請求項6又は7記載の組成物を含む溶液を平滑な面にキャストして溶剤を留去することによって成膜化して得られる膜を、光重合し、延伸する光学フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2010−31163(P2010−31163A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195967(P2008−195967)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】