化合物半導体太陽電池
【課題】太陽電池製造プロセス時に発生する光電変換層の割れやしわの問題が生じない構造の太陽電池を提供する。
【解決手段】主としてIII−V族化合物半導体からなる光電変換層(101および102)と、該光電変換層(101および102)上に形成されたコンタクト層(103)と、該コンタクト層(103)の表面の少なくとも一部に形成された電極(105)と、を含む太陽電池であって、該コンタクト層(103)は、主としてGaPからなり、該光電変換層の厚さは2.5μm以下であることを特徴とする。光電変換層(101および102)の厚さとコンタクト層(103)の厚さとの合計は、3μm以上であることが好ましい。
【解決手段】主としてIII−V族化合物半導体からなる光電変換層(101および102)と、該光電変換層(101および102)上に形成されたコンタクト層(103)と、該コンタクト層(103)の表面の少なくとも一部に形成された電極(105)と、を含む太陽電池であって、該コンタクト層(103)は、主としてGaPからなり、該光電変換層の厚さは2.5μm以下であることを特徴とする。光電変換層(101および102)の厚さとコンタクト層(103)の厚さとの合計は、3μm以上であることが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物半導体太陽電池に関し、より詳しくは、III−V族化合物半導体太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、III−V化合物半導体を材料とする太陽電池(以下、III−V族化合物半導体太陽電池と称する)は、高効率である特徴を生かして、宇宙用あるいは集光用として用いられるようになっている。
【0003】
III−V族化合物半導体太陽電池においては、光電変換層のバンドギャップに相当する光より長波長の光を透過させ、上記太陽電池を透過した長波長光を吸収するバンドギャップが小さい別の太陽電池と組み合わせてスタック型の太陽電池を構成することができるようにするため、当該光電変換層の厚さをμmオーダーまで薄くすることが求められる。
【0004】
図9は、光電変換層を薄くした、従来のIII−V族化合物半導体太陽電池の一例を示す概略断面図である。図9に示される太陽電池は、p−InGaPからなるベース層901およびn−InGaPからなるエミッタ層902から構成される光電変換層、表面側に形成されたn−GaAsからなるコンタクト層903、および裏面側に形成されたp+−GaAs/n+−GaAsからなるトンネル接合層904を有している。コンタクト層903およびトンネル接合層904は、パッド部分と櫛型状部分とそれらを連結するバー状領域を残してエッチング除去されており、これらの上には、たとえばAuGe/Ni/Au/Ag/Auで電極905、906がそれぞれ形成されている。また、電極905および電極906のパッド部分には、それぞれインターコネクター907、908が溶接され、表面側はシリコン系の樹脂等によりカバーガラス909が接着されている。
【0005】
図9に示される構造の太陽電池は、通常、図10に示される方法で製造される。まず、GaAsからなる基板1001上に、n−InGaPからなるエッチングストップ層1002、p+−GaAs/n+−GaAsからなるトンネル接合層904、p−InGaPからなるベース層901およびn−InGaPからなるエミッタ層902およびn−GaAsからなるコンタクト層903をこの順に形成する(図10(a))。次に、コンタクト層903上に、レジスト1003を塗布した後(図10(b))、櫛形状の電極にするために、フォトリソグラフィーにより、レジスト1003の一部を残す(図10(c))。ついで、アンモニア系のエッチング液でレジスト1003下のコンタクト層903をエッチングする(図10(d))。この時、下地のエミッタ層902は、アンモニア系ではエッチングされないため、コンタクト層903がエッチングされればエッチングは自動的に止まる。
【0006】
次に、適当な有機溶剤を用いてレジストを除去し(図10(e))、再度全面にレジスト1004を塗布する(図10(f))。再度のフォトリソグラフィーにより、コンタクト層903が残っている櫛形状の領域に合わせてレジストを抜く(図10(g))。ついで、その上から、表面電極905となる金属、たとえばAu、Ge、Ni、Au、Ag、Auをこの順に蒸着し(図10(h))、リフトオフによりレジスト1004上に蒸着された表面電極905をレジスト1004ごと除去し、コンタクト層903上に目的の電極を残して形成する(図10(i))。以上のプロセスによりコンタクト層903と表面電極905が形成される。なお、必要に応じて表面電極905は、熱処理を行ない、アロイ化して抵抗を下げるプロセスを追加することがある。
【0007】
次に、表面電極905のパッド部分にインターコネクター907を溶接した後にシリコン系の樹脂でカバーガラス909に表面側を貼り付ける(図10(j))。その後、アンモニア系のエッチング液を用いて、基板1001を全面エッチングする(図10(k))。このとき、エッチングストップ層1002でエッチングは止まる。その後、HCl系のエッチング液でエッチングストップ層1002を除去し、n+−GaAsからなるトンネル接合層904のn+−GaAs層を露出させる(図10(l))。その後は、表面電極905を形成した際と同様のプロセスにより、トンネル接合層を櫛型状にするとともに、この裏面側にも櫛型状の電極906を、たとえばAuGe/Ni/Au/Ag/Auを用いて形成し、パッド部分に裏側のインターコネクター908を溶接して、図9に示される太陽電池を得る(図10(m))。
【0008】
このように、従来コンタクト層は、GaAsを用いて形成されるのが通常であるが(たとえば、特許文献1)、コンタクト層やトンネル接合層にGaAsを用いた場合、GaAsは、光電変換層を構成するInGaPよりバンドギャップが小さく、InGaPで吸収されるべき波長帯の光がGaAsで吸収されてしまい発電に寄与されなくなることから、コンタクト層およびトンネル接合層を櫛型状にエッチングする必要があった。
【0009】
しかし、コンタクト層およびトンネル接合層を櫛型状にエッチングすると、最終的に、全面に広がって層を形成しているのは光電変換層のみであり、かつ該光電変換層の厚さはμmオーダー程度と薄いため、基板をエッチング除去するプロセス以降、特にトンネル接合層をエッチングにより櫛型状にするプロセスにおいて、光電変換層が割れたり、しわが寄ったりするという問題があった。
【特許文献1】特開平8−204215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、プロセス時に発生する光電変換層の割れ等の問題が生じない構造の太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の太陽電池は、主としてIII−V族化合物半導体からなる光電変換層と、該光電変換層上に形成されたコンタクト層と、該コンタクト層の表面の少なくとも一部に形成された電極と、を含む太陽電池であって、該コンタクト層は、主としてGaPからなり、該光電変換層の厚さが2.5μm以下であることを特徴とする。
【0012】
上記光電変換層の厚さと上記コンタクト層の厚さとの合計は、3μm以上であることが好ましい。また、上記光電交換層の厚さは、1〜2μmであることが好ましい。
【0013】
上記コンタクト層は、AlxGa1-x-yInyP(0<x≦0.1、0<y≦0.1)からなっていてもよい。
【0014】
また本発明は、上記光電変換層と上記コンタクト層との間に中間層をさらに有し、該中間層のバンドギャップおよび格子定数は、光電変換層のバンドギャップおよび格子定数と、コンタクト層のバンドギャップおよび格子定数との間にあることを特徴とする太陽電池を提供する。
【0015】
さらに本発明は、上記いずれかの太陽電池(太陽電池(A))に直列接続された太陽電池(B)を有するスタック型太陽電池であって、該太陽電池(B)が有する光電変換層のバンドギャップは、太陽電池(A)が有する光電変換層のバンドギャップより小さいスタック型太陽電池を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の太陽電池は、光電変換層上に、主にGaPからなるコンタクト層を備えるものである。このような構成によれば、該コンタクト層をエッチングして櫛型状とする必要がなく、したがってコンタクト層を全面にわたって形成できるため、太陽電池製造プロセス時における光電変換層の割れやしわを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、実施の形態を示して本発明を詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る太陽電池の一例を示す概略断面図である。図1に示される太陽電池は、p−InGaPからなるベース層101およびn−InGaPからなるエミッタ層102から構成される光電変換層、表面側に形成されたn−GaPからなるコンタクト層103、および裏面側に形成されたp+−GaAs/n+−GaAsからなるトンネル接合層104を有している。トンネル接合層104は、パッド部分と櫛型状部分とそれらを連結するバー状領域を残してエッチング除去されており、コンタクト層103およびトンネル接合層104の上には、電極105、106がそれぞれ形成されている。また、電極105および電極106のパッド部分には、それぞれインターコネクター107、108が溶接され、表面側はシリコン系の樹脂等によりカバーガラス109が接着されている。
【0018】
本実施形態においては、上述の図9に示される太陽電池と異なり、コンタクト層103は、n−GaPにより構成されている。n−GaPからなるコンタクト層103は、間接遷移型であり、p−InGaPからなるベース層101およびn−InGaPからなるエミッタ層102から構成される光電変換層より大きなバンドギャップを有しているため、該光電変換層で吸収される波長帯およびそれより長波長帯の光を損失させることなく透過させる。したがって、図9に示されるn−GaAsからなるコンタクト層の場合のように、光が通る領域を残してコンタクト層を櫛型状にエッチングで除去する必要がない。すなわち、コンタクト層としてバンドギャップが大きいGaPを主成分とする材料を用いることにより、表面側の光が透過する部分にコンタクト層が存在していた場合でも、その透過損失を低減できるため、コンタクト層を櫛型状にエッチングする必要がないのである。したがって、光電変換層上にコンタクト層を全面に形成することができ、これにより全面にわたって厚みを増加させることができるため、太陽電池製造プロセス時の割れやしわの発生を抑止することができる。
【0019】
本実施形態の太陽電池は、III−V族化合物半導体を主材料とする光電変換層の厚さを十分に薄くして、該光電変換層のバンドギャップに相当する光を吸収して発電すると共に、バンドギャップに相当する光より長波長の光を透過させる機能を有するものである。概して、当該機能を発現させるためには、光電変換層の厚さは、2.5μm程度以下とすることが必要であるが、別の太陽電池を直列(タンデム)接続してスタック型の太陽電池(以下、タンデム型太陽電池ともいう)としたときの当該スタック型太陽電池の変換効率を考慮すると、p−InGaPからなるベース層101およびn−InGaPからなるエミッタ層102から構成される光電変換層の厚さは、1〜2μmとすることが好ましい。この点については後述する。
【0020】
本実施形態において、上記光電変換層の厚さとコンタクト層103の厚さとの合計(以下、トータル層厚ともいう)は、3μm以上であることが好ましい。すなわち、光電変換層の厚さを1〜2μmとした場合、コンタクト層の厚さを2〜1μm以上とし、トータル層厚を3μm以上とすることが好ましい。トータル層厚が3μm未満である場合、トータル層厚が薄くなるに従い、急激に光電変換層の割れやしわの発生率が上昇する。
【0021】
図2は、本実施形態に係る太陽電池における、光電変換層とコンタクト層とのトータル層厚と割れ、しわ発生率との関係を示すグラフである。図2から明らかなように、トータル層厚が3μm未満の場合、トータル層厚の減少とともに、急激に光電変換層の割れ、しわの発生率が上昇することがわかる。なお、割れ、しわの発生率は、光電変換層の厚さを1.55μmで一定とし、コンタクト層の厚さを種々変化させて測定したものである。割れ、しわの発生率の測定は、具体的には次のようにして行なった。4’’サイズのGaAs基板5枚に対して図1の構造で1cm×1cm角のセルを基板1枚当たり60個、計300個作製し、トンネル接合層104を櫛形状にエッチングした後に目視あるいは顕微鏡で観察し、割れ、しわの発生したセル数の割合を求めて測定した。
【0022】
トータル層厚の上限については特に制限はないが、コンタクト層を厚くするほど製造材料費が増加することを考慮すると、5μm程度以下とすることが好ましい。
【0023】
本実施形態において、コンタクト層103は、主としてGaPからなるものである。ここで、「主としてGaPからなる」とは、光電変換層のバンドギャップより十分に大きい範囲で、他の成分、たとえばAl、In等を含んでいてもよいことを意味する。上述のように、コンタクト層を主としてGaPから構成することにより、光電変換層で吸収されるべき波長帯およびそれより長波長帯の光を損失させることなく透過させることができる。
【0024】
コンタクト層は、主としてGaPからなる限り、他の成分を含有していてもよい。当該他の成分として、たとえばAl、In等を挙げることができる。すなわち、コンタクト層は、AlxGa1-x-yInyPから構成することができる。
【0025】
図3は、本実施形態に係る太陽電池における、コンタクト層の組成と比抵抗との関係を示すグラフであり、図3(a)は、コンタクト層の組成をAlxGa1-x-yInyPとしたときの、Al組成比xとコンタクト層の比抵抗との関係を示すグラフ、図3(b)は、コンタクト層の組成をAlxGa1-x-yInyPとしたときの、In組成比yとコンタクト層の比抵抗との関係を示すグラフである。なお、図3(a)は、In組成比y=0.05の条件で測定したものであり、図3(b)は、Al組成比x=0.05の条件で測定したものである。コンタクト層は、光電変換層で吸収されるべき波長帯およびそれより長波長帯の光を損失させることなく透過させるためには、InGaPからなる光電変換層以上のバンドギャップを有していればよいと考えられるが、InGaPに対してできるだけバンドギャップ差が大きい方がよい。この点を考慮すると、GaAs基板に格子整合する最大バンドギャップのAlInP材料と同等以上のバンドギャップを有すれば充分と考えられるので、コンタクト層をAlxGa1-x-yInyPとした場合、xは0〜1.0であり、yは概ね0〜0.2であることが好ましいと考えられる。ただし、図3(a)および(b)に示されるように、x、yともに0.1より大きくなると、コンタクト層の比抵抗が著しく大きくなり、コンタクト層として適さないと判断される。したがってxおよびyは、それそれ0.1以下とすることが望ましい。なお、コンタクト層の比抵抗の測定は、具体的には次のようにして行なった。すなわち、GaAs基板の上に、n−AlxGa1-x-yInyP層を1μm形成した評価用サンプルを作製し、4端子によるシート抵抗測定器を用いて測定した。
【0026】
本実施形態において、各層のドーパントは従来公知のものを用いることができる。また、そのキャリア濃度についても、特に制限されるものではなく、直列抵抗やキャリア拡散長等を考慮して適宜選択されるものである。たとえば、n−GaPからなるコンタクト層103がSiドープされている場合、そのキャリア濃度は、たとえば、3×1018〜1×1019cm-3程度とすることができる。また、p−InGaPからなるベース層101がZnドープされている場合、そのキャリア濃度は、たとえば、1×1017〜5×1017cm-3程度とすることができる。n−InGaPからなるエミッタ層102がSiドープされている場合、そのキャリア濃度は、たとえば、1×1018〜5×1018cm-3程度とすることができる。
【0027】
本実施形態の太陽電池の製造方法は、特に限定されるものではないが、たとえば以下のようにして製造することができる。図4は、図1に示される太陽電池の製造方法の好ましい一例を示す概略工程図であり、各工程における太陽電池中間物の概略断面図を示すものである。まず、たとえばGaAsからなる基板401上に、たとえばn−InGaPからなるエッチングストップ層402、p+−GaAs/n+−GaAsからなるトンネル接合層104、p−InGaPからなるベース層101およびn−InGaPからなるエミッタ層102、n−GaPを主成分とするコンタクト層103をこの順に形成する(図4(a))。
【0028】
その後、コンタクト層103上に、図10の方法と同様にして、パッド部分と櫛型状部分から構成される電極105を、たとえばAuGe/Ni/Au/Ag/Auで形成した後、該パッド部分にインターコネクター107を溶接し、Si系樹脂等でカバーガラス109に貼り付ける(図4(b))。ついで、アンモニア系のエッチング液等を用いて、基板401をエッチングする(図4(c))。エッチングは、エッチングストップ層402でストップするので、その後に、エッチングストップ層402をHCl系のエッチング液で除去する(図4(d))。最後に、図10の方法と同様にして、裏面側のトンネル接合層104を櫛型状にエッチングで除去し、電極106を形成し、パッド部分にインターコネクター108を溶接して、図1に示される太陽電池を得る(図4(e))。
【0029】
<第2の実施形態>
図5は、本発明の第2の実施形態に係る太陽電池の一例を示す概略断面図である。図5に示される太陽電池は、p−InGaPからなるベース層501およびn−InGaPからなるエミッタ層502からなる光電変換層、n−GaPからなるコンタクト層503、および裏面側に形成されたp+−GaAs/n+−GaAsからなるトンネル接合層504、インターコネクター507、508、およびカバーガラス509から構成される、上記第1の実施形態に係る太陽電池と同様の構成の太陽電池(以下、太陽電池(A)ともいう)の下に、Si太陽電池(バックコンタクト型)510(以下、太陽電池(B)ともいう)を設置してタンデム型の構造とした、スタック型太陽電池である。ここで、Si太陽電池510が光電変換層のバンドギャップは、上記p−InGaPからなるベース層501およびn−InGaPからなるエミッタ層502からなる光電変換層のバンドギャップより小さくしているので、太陽電池(A)を透過した、該太陽電池(A)の光電変換層のバンドギャップに相当する光より長波長の光は、太陽電池(B)の光電変換層によって吸収され、変換効率が大きく向上している。
【0030】
図6は、本実施形態に係る太陽電池における、太陽電池(A)が有するInGaPからなる光電変換層の厚さと変換効率との関係を示すグラフであり、太陽電池(A)におけるp−InGaPからなるベース層501およびn−InGaPからなるエミッタ層502からなる光電変換層と、n−GaPからなるコンタクト層503とのトータル層厚を3.5μmとして、該光電変換層の厚さを0.5〜2.5μmの間で変化させたときのタンデム型太陽電池全体、および太陽電池(A)、(B)それぞれの変換効率を示すグラフである。図6に示されるように、太陽電池(A)の光電変換層の厚さが1μmより薄い場合には、太陽電池(A)の変換効率が低下することがわかる。また、太陽電池(A)の光電変換層の厚さが2μmより厚い場合には、光電変換層の自由キャリアによる吸収の影響を受け、太陽電池(A)を透過する長波長光が減少し、太陽電池(B)の変換効率が低下することがわかる。したがって、太陽電池(A)の光電変換層の厚さは、1〜2μmであることが好ましい。この範囲内であれば、タンデム型太陽電池全体の変換効率を高くすることができる。
【0031】
なお、上記変換効率の測定は、具体的には次のようにして行なった。ソーラーシミュレーターの光源をAM1.5の条件に設定し、1SUN(100mW/cm2)でタンデム型太陽電池に照射し、太陽電池(A)、(B)の個々の電極からインターコネクターを通して出力を取り出し、太陽電池(A)、(B)個々について変換効率を測定した。タンデム型太陽電池の変換効率は太陽電池(A)および(B)の変換効率を足し合わせたものとした。
【0032】
<第3の実施形態>
図7は、本発明の第3の実施形態に係る太陽電池の一例を示す概略断面図である。図7に示される太陽電池は、n−Gapからなるコンタクト層703と、p−InGaPからなるベース層701およびn−InGaPからなるエミッタ層702より構成される光電変換層との間に、n−AlGaInPからなる中間層711を設けたこと以外は、上記第1の実施形態に係る太陽電池と同様の構成を有する。
【0033】
ここで、本実施形態において中間層711は、n−GaPからなるコンタクト層703と、p−InGaPからなるベース層701およびn−InGaPからなるエミッタ層702より構成される光電変換層との中間のバンドギャップおよび格子定数を有する、n−AlGaInPより構成されるが、中間層材料は、コンタクト層のバンドギャップおよび格子定数と、光電変換層のバンドギャップおよび格子定数の間のバンドギャップおよび格子定数を有するものであればよい。そのような材料としては、AlGaInPのほか、たとえばGaInP、AlInP、AlGaInPAs、GaInPAs、AlInPAs等を挙げることができる。
【0034】
図8は、n−GaPコンタクト層/n−InGaP光電変換層のヘテロ接合およびn−GaPコンタクト層/n−AlGaInP中間層/n−InGaP光電変換層のヘテロ接合におけるバンド状態を示す概念図である。図8(a)および(b)は、それぞれn−GaPコンタクト層とn−InGaP光電変換層とがヘテロ接合される前および後のバンド状態を示したものである。n−GaPとn−InGaPは、真空準位に対する伝導帯の下端(Ec)と価電子帯の上端(Ev)の位置がタイプIIと呼ばれる位置関係にあり、接合時に伝導帯、価電子帯共にヘテロ界面で大きなノッチ(それぞれΔEc、ΔEv)を生じる(図8(b))。本組合せでは、伝導帯の界面でのノッチΔEcは約0.39eV、価電子帯の界面でのノッチΔEvは約0.03eVである。n−GaP/n−InGaPの接合界面における約0.39eVの大きな伝導体のノッチは、電子に対する障壁(抵抗)となる可能性があるため、界面におけるコンタクト層および光電変換層のキャリア濃度を3×1018cm-3以上の高濃度にしてノッチ間をトンネル電流が流れる状態にして抵抗を下げる必要がある。しかし、このようにキャリア濃度を高濃度とすると、自由キャリアによる光吸収量が増大するため、下層の光電変換層に入射する光強度が減少し太陽電池セルの出力電流の低下を招くといった問題がある。
【0035】
上記問題を解消すべく、本実施形態では、コンタクト層と光電交換層との間に中間層を設けるものである。すなわち、ヘテロ接合をn−GaP(コンタクト層703)/n−AlGaInP(中間層711)/n−InGaP(光電変換層)の構成とすることにより、図8(c)に示されるように、ノッチは各界面に2分割され(0.39eVのノッチが0.20eVおよび0.19eVのノッチに分割される)、界面におけるコンタクト層および光電変換層のキャリア濃度を3×1018cm-3以下としても抵抗は上がらない。
【0036】
<第4の実施形態>
図11は、本発明の第4の実施形態に係る太陽電池の一例を示す概略断面図である。図11に示される太陽電池は、図1に示される上記第1の実施形態に係る太陽電池の構造と比較して、GaPコンタクト層の導電型を逆転し、該GaPコンタクト層を光電変換層の下方に配した構造を有する。より詳しくは、p−InGaPからなるベース層1101およびn−InGaPからなるエミッタ層1102から構成される光電変換層、表面側に形成されたp+−GaAs/n+−GaAsからなるトンネル接合層1104、およびp−GaPからなるコンタクト層1103を有している。トンネル接合層1104は、パッド部分と櫛型状部分を残してエッチング除去されており、p−GaPコンタクト層1103は全面に形成されている。コンタクト層1103およびトンネル接合層1104の上には、電極1105、1106がそれぞれ形成されている。また、電極1105および電極1106のパッド部分には、それぞれインターコネクター1107、1108が溶接され、表面側はシリコン系の樹脂等によりカバーガラス1109が接着されている。このような構成によっても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
<実施例1>
図1に示される構造のIII−V族化合物半導体太陽電池を図4に示す方法により作製した。まず、GaAsからなる基板401上に、n−InGaPからなるエッチングストップ層402(0.2μm厚、Siドープ:2×1017cm-3)、p+−GaAs/n+−GaAsからなるトンネル接合層104(それぞれ、0.05μm厚/0.25μm厚、Cドープ:2×1019cm-3/Teドープ:5×1019cm-3)、p−InGaPからなるベース層101(1.5μm厚、Znドープ:2×1017cm-3)およびn−InGaPからなるエミッタ層102(0.05μm厚、Siドープ:2×1018cm-3)および、n−GaPを主成分とするコンタクト層103(2.0μm厚、Siドープ:5×1018cm-3)をこの順に形成した(図4(a))。
【0039】
その後、コンタクト層103上に、図10の方法と同様にして、パッド部分と櫛型状部分から構成される電極105を、AuGe/Ni/Au/Ag/Auで形成した後、該パッド部分にインターコネクター107を溶接し、Si系樹脂でカバーガラス109に貼り付けた(図4(b))。ついで、アンモニア系のエッチング液を用いて、基板401をエッチングした(図4(c))。その後、エッチングストップ層402をHCl系のエッチング液で除去した(図4(d))。最後に、図10の方法と同様にして、裏面側のトンネル接合層104を櫛型状にエッチングで除去し、電極106を形成し、パッド部分にインターコネクター108を溶接して、図1に示される太陽電池を得た(図4(e))。
【0040】
基板401のエッチング除去時、およびトンネル接合層104のエッチング時に割れやしわの発生は全くなかった。また、本実施例の太陽電池をAM1.5下で、上記測定方法にて変換効率を測定したところ、18.0%であった。
【0041】
<実施例2>
実施例1の太陽電池の下にSi太陽電池(バックコンタクト型)を設置して、図5に示されるタンデム型の太陽電池を作製した。実施例1のInGaP光電変換層を有する太陽電池を透過したAM1.5の光に対するSi太陽電池の変換効率を測定したところ、10.5%であり、タンデム型全体で、28.5%の効率が得られた。
【0042】
<実施例3>
実施例1と同様の方法を用いて、図7に示される、n−GaPからなるコンタクト層703と、光電変換層(p−InGaPからなるベース層701およびn−InGaPエミッタ層よりなる)との間にn−AlGaInPからなる中間層711を有する太陽電池を作製した。各層の厚さおよびキャリア濃度は、以下の層以外は、実施例1と同じとした。コンタクト層703:層厚2.0μm、Siドープ。キャリア濃度は、上(電極705側)の0.4μmのみ5×1018cm-3とし、下(中間層711側)の1.6μmについては1×1018cm-3とした(中間層711:層厚0.1μm、Siドープ:1×1018cm-3)。
【0043】
基板のエッチング除去時、およびトンネル接合層704のエッチング時に割れやしわの発生は全くなかった。また、本実施例の太陽電池をAM1.5下で、上記測定方法にて変換効率を測定したところ、18.3%であった。
【0044】
<実施例4>
図11に示される構造のIII−V族化合物半導体太陽電池を、実施例1と同様の方法により作製した。各層の構成は、以下のとおりとした。p−InGaPベース層1101(1.5μm厚、Znドープ:2×1017cm-3)、n−InGaPエミッタ層1102(0.05μm厚、Siドープ:2×1018cm-3)、p−GaPコンタクト層1103(2.0μm厚、Znドープ:5×1018cm-3)、p+−GaAs/n+−GaAsからなるトンネル接合層1104(それぞれ、0.05μm厚/0.25μm厚、Cドープ:2×1019cm-3/Teドープ:5×1019cm-3)。
【0045】
基板のエッチング除去時、およびトンネル接合層1104のエッチング時に割れやしわの発生は全くなかった。また、本実施例の太陽電池をAM1.5下で、上記測定方法にて変換効率を測定したところ、18.0%であった。
【0046】
<比較例1>
図9に示される構造の太陽電池を図10の方法により作製した。各層の構成は、以下のとおりとした。p−InGaPベース層901(1.5μm厚、Znドープ:2×1017cm-3)、n−InGaPエミッタ層902(0.05μm厚、Siドープ:2×1018cm-3)、n−GaAsコンタクト層903(0.4μm厚、Teドープ:5×1018cm-3)、p+−GaAs/n+−GaAsからなるトンネル接合層904(それぞれ、0.05μm厚/0.25μm厚、Cドープ:2×1019cm-3/Teドープ:5×1019cm-3)。また、図10において、基板にはGaAs、エッチングストップ層1002にはn−InGaP(0.2μm厚、Siドープ:2×1017cm-3)を用いた。この太陽電池をAM1.5下で、上記測定方法にて変換効率を測定したところ、17.0%であった。
【0047】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る太陽電池の一例を示す概略断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る太陽電池における、光電変換層とコンタクト層とのトータル層厚と割れ、しわ発生率との関係を示すグラフである。
【図3】第1の実施形態に係る太陽電池における、コンタクト層の組成と比抵抗との関係を示すグラフである。
【図4】図1に示される太陽電池の製造方法の好ましい一例を示す概略工程図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る太陽電池の一例を示す概略断面図である。
【図6】第2の実施形態に係る太陽電池における、太陽電池(A)が有するInGaPからなる光電変換層の厚さと変換効率との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る太陽電池の一例を示す概略断面図である。
【図8】n−GaPコンタクト層/n−InGaP光電変換層のヘテロ接合およびn−GaPコンタクト層/n−AlGaInP中間層/n−InGaP光電変換層のヘテロ接合におけるバンド状態を示す概念図である。
【図9】従来のIII−V族化合物半導体太陽電池の一例を示す概略断面図である。
【図10】従来のIII−V族化合物半導体太陽電池の製造方法一例を示す概略工程図である。
【図11】本発明の第4の実施形態に係る太陽電池の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0049】
101,501,701,1101 ベース層、102,502,702,1102 エミッタ層、103,503,703,1103 コンタクト層、104,504,704,1104 トンネル接合層、105,106,505,506,705,706,1105,1106 電極、107,108,507,508,707,708,1107,1108 インターコネクター、109,509,709,1109 カバーガラス、401 基板、402 エッチングストップ層、510 Si太陽電池(バックコンタクト型)、711 中間層。
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物半導体太陽電池に関し、より詳しくは、III−V族化合物半導体太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、III−V化合物半導体を材料とする太陽電池(以下、III−V族化合物半導体太陽電池と称する)は、高効率である特徴を生かして、宇宙用あるいは集光用として用いられるようになっている。
【0003】
III−V族化合物半導体太陽電池においては、光電変換層のバンドギャップに相当する光より長波長の光を透過させ、上記太陽電池を透過した長波長光を吸収するバンドギャップが小さい別の太陽電池と組み合わせてスタック型の太陽電池を構成することができるようにするため、当該光電変換層の厚さをμmオーダーまで薄くすることが求められる。
【0004】
図9は、光電変換層を薄くした、従来のIII−V族化合物半導体太陽電池の一例を示す概略断面図である。図9に示される太陽電池は、p−InGaPからなるベース層901およびn−InGaPからなるエミッタ層902から構成される光電変換層、表面側に形成されたn−GaAsからなるコンタクト層903、および裏面側に形成されたp+−GaAs/n+−GaAsからなるトンネル接合層904を有している。コンタクト層903およびトンネル接合層904は、パッド部分と櫛型状部分とそれらを連結するバー状領域を残してエッチング除去されており、これらの上には、たとえばAuGe/Ni/Au/Ag/Auで電極905、906がそれぞれ形成されている。また、電極905および電極906のパッド部分には、それぞれインターコネクター907、908が溶接され、表面側はシリコン系の樹脂等によりカバーガラス909が接着されている。
【0005】
図9に示される構造の太陽電池は、通常、図10に示される方法で製造される。まず、GaAsからなる基板1001上に、n−InGaPからなるエッチングストップ層1002、p+−GaAs/n+−GaAsからなるトンネル接合層904、p−InGaPからなるベース層901およびn−InGaPからなるエミッタ層902およびn−GaAsからなるコンタクト層903をこの順に形成する(図10(a))。次に、コンタクト層903上に、レジスト1003を塗布した後(図10(b))、櫛形状の電極にするために、フォトリソグラフィーにより、レジスト1003の一部を残す(図10(c))。ついで、アンモニア系のエッチング液でレジスト1003下のコンタクト層903をエッチングする(図10(d))。この時、下地のエミッタ層902は、アンモニア系ではエッチングされないため、コンタクト層903がエッチングされればエッチングは自動的に止まる。
【0006】
次に、適当な有機溶剤を用いてレジストを除去し(図10(e))、再度全面にレジスト1004を塗布する(図10(f))。再度のフォトリソグラフィーにより、コンタクト層903が残っている櫛形状の領域に合わせてレジストを抜く(図10(g))。ついで、その上から、表面電極905となる金属、たとえばAu、Ge、Ni、Au、Ag、Auをこの順に蒸着し(図10(h))、リフトオフによりレジスト1004上に蒸着された表面電極905をレジスト1004ごと除去し、コンタクト層903上に目的の電極を残して形成する(図10(i))。以上のプロセスによりコンタクト層903と表面電極905が形成される。なお、必要に応じて表面電極905は、熱処理を行ない、アロイ化して抵抗を下げるプロセスを追加することがある。
【0007】
次に、表面電極905のパッド部分にインターコネクター907を溶接した後にシリコン系の樹脂でカバーガラス909に表面側を貼り付ける(図10(j))。その後、アンモニア系のエッチング液を用いて、基板1001を全面エッチングする(図10(k))。このとき、エッチングストップ層1002でエッチングは止まる。その後、HCl系のエッチング液でエッチングストップ層1002を除去し、n+−GaAsからなるトンネル接合層904のn+−GaAs層を露出させる(図10(l))。その後は、表面電極905を形成した際と同様のプロセスにより、トンネル接合層を櫛型状にするとともに、この裏面側にも櫛型状の電極906を、たとえばAuGe/Ni/Au/Ag/Auを用いて形成し、パッド部分に裏側のインターコネクター908を溶接して、図9に示される太陽電池を得る(図10(m))。
【0008】
このように、従来コンタクト層は、GaAsを用いて形成されるのが通常であるが(たとえば、特許文献1)、コンタクト層やトンネル接合層にGaAsを用いた場合、GaAsは、光電変換層を構成するInGaPよりバンドギャップが小さく、InGaPで吸収されるべき波長帯の光がGaAsで吸収されてしまい発電に寄与されなくなることから、コンタクト層およびトンネル接合層を櫛型状にエッチングする必要があった。
【0009】
しかし、コンタクト層およびトンネル接合層を櫛型状にエッチングすると、最終的に、全面に広がって層を形成しているのは光電変換層のみであり、かつ該光電変換層の厚さはμmオーダー程度と薄いため、基板をエッチング除去するプロセス以降、特にトンネル接合層をエッチングにより櫛型状にするプロセスにおいて、光電変換層が割れたり、しわが寄ったりするという問題があった。
【特許文献1】特開平8−204215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、プロセス時に発生する光電変換層の割れ等の問題が生じない構造の太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の太陽電池は、主としてIII−V族化合物半導体からなる光電変換層と、該光電変換層上に形成されたコンタクト層と、該コンタクト層の表面の少なくとも一部に形成された電極と、を含む太陽電池であって、該コンタクト層は、主としてGaPからなり、該光電変換層の厚さが2.5μm以下であることを特徴とする。
【0012】
上記光電変換層の厚さと上記コンタクト層の厚さとの合計は、3μm以上であることが好ましい。また、上記光電交換層の厚さは、1〜2μmであることが好ましい。
【0013】
上記コンタクト層は、AlxGa1-x-yInyP(0<x≦0.1、0<y≦0.1)からなっていてもよい。
【0014】
また本発明は、上記光電変換層と上記コンタクト層との間に中間層をさらに有し、該中間層のバンドギャップおよび格子定数は、光電変換層のバンドギャップおよび格子定数と、コンタクト層のバンドギャップおよび格子定数との間にあることを特徴とする太陽電池を提供する。
【0015】
さらに本発明は、上記いずれかの太陽電池(太陽電池(A))に直列接続された太陽電池(B)を有するスタック型太陽電池であって、該太陽電池(B)が有する光電変換層のバンドギャップは、太陽電池(A)が有する光電変換層のバンドギャップより小さいスタック型太陽電池を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の太陽電池は、光電変換層上に、主にGaPからなるコンタクト層を備えるものである。このような構成によれば、該コンタクト層をエッチングして櫛型状とする必要がなく、したがってコンタクト層を全面にわたって形成できるため、太陽電池製造プロセス時における光電変換層の割れやしわを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、実施の形態を示して本発明を詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る太陽電池の一例を示す概略断面図である。図1に示される太陽電池は、p−InGaPからなるベース層101およびn−InGaPからなるエミッタ層102から構成される光電変換層、表面側に形成されたn−GaPからなるコンタクト層103、および裏面側に形成されたp+−GaAs/n+−GaAsからなるトンネル接合層104を有している。トンネル接合層104は、パッド部分と櫛型状部分とそれらを連結するバー状領域を残してエッチング除去されており、コンタクト層103およびトンネル接合層104の上には、電極105、106がそれぞれ形成されている。また、電極105および電極106のパッド部分には、それぞれインターコネクター107、108が溶接され、表面側はシリコン系の樹脂等によりカバーガラス109が接着されている。
【0018】
本実施形態においては、上述の図9に示される太陽電池と異なり、コンタクト層103は、n−GaPにより構成されている。n−GaPからなるコンタクト層103は、間接遷移型であり、p−InGaPからなるベース層101およびn−InGaPからなるエミッタ層102から構成される光電変換層より大きなバンドギャップを有しているため、該光電変換層で吸収される波長帯およびそれより長波長帯の光を損失させることなく透過させる。したがって、図9に示されるn−GaAsからなるコンタクト層の場合のように、光が通る領域を残してコンタクト層を櫛型状にエッチングで除去する必要がない。すなわち、コンタクト層としてバンドギャップが大きいGaPを主成分とする材料を用いることにより、表面側の光が透過する部分にコンタクト層が存在していた場合でも、その透過損失を低減できるため、コンタクト層を櫛型状にエッチングする必要がないのである。したがって、光電変換層上にコンタクト層を全面に形成することができ、これにより全面にわたって厚みを増加させることができるため、太陽電池製造プロセス時の割れやしわの発生を抑止することができる。
【0019】
本実施形態の太陽電池は、III−V族化合物半導体を主材料とする光電変換層の厚さを十分に薄くして、該光電変換層のバンドギャップに相当する光を吸収して発電すると共に、バンドギャップに相当する光より長波長の光を透過させる機能を有するものである。概して、当該機能を発現させるためには、光電変換層の厚さは、2.5μm程度以下とすることが必要であるが、別の太陽電池を直列(タンデム)接続してスタック型の太陽電池(以下、タンデム型太陽電池ともいう)としたときの当該スタック型太陽電池の変換効率を考慮すると、p−InGaPからなるベース層101およびn−InGaPからなるエミッタ層102から構成される光電変換層の厚さは、1〜2μmとすることが好ましい。この点については後述する。
【0020】
本実施形態において、上記光電変換層の厚さとコンタクト層103の厚さとの合計(以下、トータル層厚ともいう)は、3μm以上であることが好ましい。すなわち、光電変換層の厚さを1〜2μmとした場合、コンタクト層の厚さを2〜1μm以上とし、トータル層厚を3μm以上とすることが好ましい。トータル層厚が3μm未満である場合、トータル層厚が薄くなるに従い、急激に光電変換層の割れやしわの発生率が上昇する。
【0021】
図2は、本実施形態に係る太陽電池における、光電変換層とコンタクト層とのトータル層厚と割れ、しわ発生率との関係を示すグラフである。図2から明らかなように、トータル層厚が3μm未満の場合、トータル層厚の減少とともに、急激に光電変換層の割れ、しわの発生率が上昇することがわかる。なお、割れ、しわの発生率は、光電変換層の厚さを1.55μmで一定とし、コンタクト層の厚さを種々変化させて測定したものである。割れ、しわの発生率の測定は、具体的には次のようにして行なった。4’’サイズのGaAs基板5枚に対して図1の構造で1cm×1cm角のセルを基板1枚当たり60個、計300個作製し、トンネル接合層104を櫛形状にエッチングした後に目視あるいは顕微鏡で観察し、割れ、しわの発生したセル数の割合を求めて測定した。
【0022】
トータル層厚の上限については特に制限はないが、コンタクト層を厚くするほど製造材料費が増加することを考慮すると、5μm程度以下とすることが好ましい。
【0023】
本実施形態において、コンタクト層103は、主としてGaPからなるものである。ここで、「主としてGaPからなる」とは、光電変換層のバンドギャップより十分に大きい範囲で、他の成分、たとえばAl、In等を含んでいてもよいことを意味する。上述のように、コンタクト層を主としてGaPから構成することにより、光電変換層で吸収されるべき波長帯およびそれより長波長帯の光を損失させることなく透過させることができる。
【0024】
コンタクト層は、主としてGaPからなる限り、他の成分を含有していてもよい。当該他の成分として、たとえばAl、In等を挙げることができる。すなわち、コンタクト層は、AlxGa1-x-yInyPから構成することができる。
【0025】
図3は、本実施形態に係る太陽電池における、コンタクト層の組成と比抵抗との関係を示すグラフであり、図3(a)は、コンタクト層の組成をAlxGa1-x-yInyPとしたときの、Al組成比xとコンタクト層の比抵抗との関係を示すグラフ、図3(b)は、コンタクト層の組成をAlxGa1-x-yInyPとしたときの、In組成比yとコンタクト層の比抵抗との関係を示すグラフである。なお、図3(a)は、In組成比y=0.05の条件で測定したものであり、図3(b)は、Al組成比x=0.05の条件で測定したものである。コンタクト層は、光電変換層で吸収されるべき波長帯およびそれより長波長帯の光を損失させることなく透過させるためには、InGaPからなる光電変換層以上のバンドギャップを有していればよいと考えられるが、InGaPに対してできるだけバンドギャップ差が大きい方がよい。この点を考慮すると、GaAs基板に格子整合する最大バンドギャップのAlInP材料と同等以上のバンドギャップを有すれば充分と考えられるので、コンタクト層をAlxGa1-x-yInyPとした場合、xは0〜1.0であり、yは概ね0〜0.2であることが好ましいと考えられる。ただし、図3(a)および(b)に示されるように、x、yともに0.1より大きくなると、コンタクト層の比抵抗が著しく大きくなり、コンタクト層として適さないと判断される。したがってxおよびyは、それそれ0.1以下とすることが望ましい。なお、コンタクト層の比抵抗の測定は、具体的には次のようにして行なった。すなわち、GaAs基板の上に、n−AlxGa1-x-yInyP層を1μm形成した評価用サンプルを作製し、4端子によるシート抵抗測定器を用いて測定した。
【0026】
本実施形態において、各層のドーパントは従来公知のものを用いることができる。また、そのキャリア濃度についても、特に制限されるものではなく、直列抵抗やキャリア拡散長等を考慮して適宜選択されるものである。たとえば、n−GaPからなるコンタクト層103がSiドープされている場合、そのキャリア濃度は、たとえば、3×1018〜1×1019cm-3程度とすることができる。また、p−InGaPからなるベース層101がZnドープされている場合、そのキャリア濃度は、たとえば、1×1017〜5×1017cm-3程度とすることができる。n−InGaPからなるエミッタ層102がSiドープされている場合、そのキャリア濃度は、たとえば、1×1018〜5×1018cm-3程度とすることができる。
【0027】
本実施形態の太陽電池の製造方法は、特に限定されるものではないが、たとえば以下のようにして製造することができる。図4は、図1に示される太陽電池の製造方法の好ましい一例を示す概略工程図であり、各工程における太陽電池中間物の概略断面図を示すものである。まず、たとえばGaAsからなる基板401上に、たとえばn−InGaPからなるエッチングストップ層402、p+−GaAs/n+−GaAsからなるトンネル接合層104、p−InGaPからなるベース層101およびn−InGaPからなるエミッタ層102、n−GaPを主成分とするコンタクト層103をこの順に形成する(図4(a))。
【0028】
その後、コンタクト層103上に、図10の方法と同様にして、パッド部分と櫛型状部分から構成される電極105を、たとえばAuGe/Ni/Au/Ag/Auで形成した後、該パッド部分にインターコネクター107を溶接し、Si系樹脂等でカバーガラス109に貼り付ける(図4(b))。ついで、アンモニア系のエッチング液等を用いて、基板401をエッチングする(図4(c))。エッチングは、エッチングストップ層402でストップするので、その後に、エッチングストップ層402をHCl系のエッチング液で除去する(図4(d))。最後に、図10の方法と同様にして、裏面側のトンネル接合層104を櫛型状にエッチングで除去し、電極106を形成し、パッド部分にインターコネクター108を溶接して、図1に示される太陽電池を得る(図4(e))。
【0029】
<第2の実施形態>
図5は、本発明の第2の実施形態に係る太陽電池の一例を示す概略断面図である。図5に示される太陽電池は、p−InGaPからなるベース層501およびn−InGaPからなるエミッタ層502からなる光電変換層、n−GaPからなるコンタクト層503、および裏面側に形成されたp+−GaAs/n+−GaAsからなるトンネル接合層504、インターコネクター507、508、およびカバーガラス509から構成される、上記第1の実施形態に係る太陽電池と同様の構成の太陽電池(以下、太陽電池(A)ともいう)の下に、Si太陽電池(バックコンタクト型)510(以下、太陽電池(B)ともいう)を設置してタンデム型の構造とした、スタック型太陽電池である。ここで、Si太陽電池510が光電変換層のバンドギャップは、上記p−InGaPからなるベース層501およびn−InGaPからなるエミッタ層502からなる光電変換層のバンドギャップより小さくしているので、太陽電池(A)を透過した、該太陽電池(A)の光電変換層のバンドギャップに相当する光より長波長の光は、太陽電池(B)の光電変換層によって吸収され、変換効率が大きく向上している。
【0030】
図6は、本実施形態に係る太陽電池における、太陽電池(A)が有するInGaPからなる光電変換層の厚さと変換効率との関係を示すグラフであり、太陽電池(A)におけるp−InGaPからなるベース層501およびn−InGaPからなるエミッタ層502からなる光電変換層と、n−GaPからなるコンタクト層503とのトータル層厚を3.5μmとして、該光電変換層の厚さを0.5〜2.5μmの間で変化させたときのタンデム型太陽電池全体、および太陽電池(A)、(B)それぞれの変換効率を示すグラフである。図6に示されるように、太陽電池(A)の光電変換層の厚さが1μmより薄い場合には、太陽電池(A)の変換効率が低下することがわかる。また、太陽電池(A)の光電変換層の厚さが2μmより厚い場合には、光電変換層の自由キャリアによる吸収の影響を受け、太陽電池(A)を透過する長波長光が減少し、太陽電池(B)の変換効率が低下することがわかる。したがって、太陽電池(A)の光電変換層の厚さは、1〜2μmであることが好ましい。この範囲内であれば、タンデム型太陽電池全体の変換効率を高くすることができる。
【0031】
なお、上記変換効率の測定は、具体的には次のようにして行なった。ソーラーシミュレーターの光源をAM1.5の条件に設定し、1SUN(100mW/cm2)でタンデム型太陽電池に照射し、太陽電池(A)、(B)の個々の電極からインターコネクターを通して出力を取り出し、太陽電池(A)、(B)個々について変換効率を測定した。タンデム型太陽電池の変換効率は太陽電池(A)および(B)の変換効率を足し合わせたものとした。
【0032】
<第3の実施形態>
図7は、本発明の第3の実施形態に係る太陽電池の一例を示す概略断面図である。図7に示される太陽電池は、n−Gapからなるコンタクト層703と、p−InGaPからなるベース層701およびn−InGaPからなるエミッタ層702より構成される光電変換層との間に、n−AlGaInPからなる中間層711を設けたこと以外は、上記第1の実施形態に係る太陽電池と同様の構成を有する。
【0033】
ここで、本実施形態において中間層711は、n−GaPからなるコンタクト層703と、p−InGaPからなるベース層701およびn−InGaPからなるエミッタ層702より構成される光電変換層との中間のバンドギャップおよび格子定数を有する、n−AlGaInPより構成されるが、中間層材料は、コンタクト層のバンドギャップおよび格子定数と、光電変換層のバンドギャップおよび格子定数の間のバンドギャップおよび格子定数を有するものであればよい。そのような材料としては、AlGaInPのほか、たとえばGaInP、AlInP、AlGaInPAs、GaInPAs、AlInPAs等を挙げることができる。
【0034】
図8は、n−GaPコンタクト層/n−InGaP光電変換層のヘテロ接合およびn−GaPコンタクト層/n−AlGaInP中間層/n−InGaP光電変換層のヘテロ接合におけるバンド状態を示す概念図である。図8(a)および(b)は、それぞれn−GaPコンタクト層とn−InGaP光電変換層とがヘテロ接合される前および後のバンド状態を示したものである。n−GaPとn−InGaPは、真空準位に対する伝導帯の下端(Ec)と価電子帯の上端(Ev)の位置がタイプIIと呼ばれる位置関係にあり、接合時に伝導帯、価電子帯共にヘテロ界面で大きなノッチ(それぞれΔEc、ΔEv)を生じる(図8(b))。本組合せでは、伝導帯の界面でのノッチΔEcは約0.39eV、価電子帯の界面でのノッチΔEvは約0.03eVである。n−GaP/n−InGaPの接合界面における約0.39eVの大きな伝導体のノッチは、電子に対する障壁(抵抗)となる可能性があるため、界面におけるコンタクト層および光電変換層のキャリア濃度を3×1018cm-3以上の高濃度にしてノッチ間をトンネル電流が流れる状態にして抵抗を下げる必要がある。しかし、このようにキャリア濃度を高濃度とすると、自由キャリアによる光吸収量が増大するため、下層の光電変換層に入射する光強度が減少し太陽電池セルの出力電流の低下を招くといった問題がある。
【0035】
上記問題を解消すべく、本実施形態では、コンタクト層と光電交換層との間に中間層を設けるものである。すなわち、ヘテロ接合をn−GaP(コンタクト層703)/n−AlGaInP(中間層711)/n−InGaP(光電変換層)の構成とすることにより、図8(c)に示されるように、ノッチは各界面に2分割され(0.39eVのノッチが0.20eVおよび0.19eVのノッチに分割される)、界面におけるコンタクト層および光電変換層のキャリア濃度を3×1018cm-3以下としても抵抗は上がらない。
【0036】
<第4の実施形態>
図11は、本発明の第4の実施形態に係る太陽電池の一例を示す概略断面図である。図11に示される太陽電池は、図1に示される上記第1の実施形態に係る太陽電池の構造と比較して、GaPコンタクト層の導電型を逆転し、該GaPコンタクト層を光電変換層の下方に配した構造を有する。より詳しくは、p−InGaPからなるベース層1101およびn−InGaPからなるエミッタ層1102から構成される光電変換層、表面側に形成されたp+−GaAs/n+−GaAsからなるトンネル接合層1104、およびp−GaPからなるコンタクト層1103を有している。トンネル接合層1104は、パッド部分と櫛型状部分を残してエッチング除去されており、p−GaPコンタクト層1103は全面に形成されている。コンタクト層1103およびトンネル接合層1104の上には、電極1105、1106がそれぞれ形成されている。また、電極1105および電極1106のパッド部分には、それぞれインターコネクター1107、1108が溶接され、表面側はシリコン系の樹脂等によりカバーガラス1109が接着されている。このような構成によっても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
<実施例1>
図1に示される構造のIII−V族化合物半導体太陽電池を図4に示す方法により作製した。まず、GaAsからなる基板401上に、n−InGaPからなるエッチングストップ層402(0.2μm厚、Siドープ:2×1017cm-3)、p+−GaAs/n+−GaAsからなるトンネル接合層104(それぞれ、0.05μm厚/0.25μm厚、Cドープ:2×1019cm-3/Teドープ:5×1019cm-3)、p−InGaPからなるベース層101(1.5μm厚、Znドープ:2×1017cm-3)およびn−InGaPからなるエミッタ層102(0.05μm厚、Siドープ:2×1018cm-3)および、n−GaPを主成分とするコンタクト層103(2.0μm厚、Siドープ:5×1018cm-3)をこの順に形成した(図4(a))。
【0039】
その後、コンタクト層103上に、図10の方法と同様にして、パッド部分と櫛型状部分から構成される電極105を、AuGe/Ni/Au/Ag/Auで形成した後、該パッド部分にインターコネクター107を溶接し、Si系樹脂でカバーガラス109に貼り付けた(図4(b))。ついで、アンモニア系のエッチング液を用いて、基板401をエッチングした(図4(c))。その後、エッチングストップ層402をHCl系のエッチング液で除去した(図4(d))。最後に、図10の方法と同様にして、裏面側のトンネル接合層104を櫛型状にエッチングで除去し、電極106を形成し、パッド部分にインターコネクター108を溶接して、図1に示される太陽電池を得た(図4(e))。
【0040】
基板401のエッチング除去時、およびトンネル接合層104のエッチング時に割れやしわの発生は全くなかった。また、本実施例の太陽電池をAM1.5下で、上記測定方法にて変換効率を測定したところ、18.0%であった。
【0041】
<実施例2>
実施例1の太陽電池の下にSi太陽電池(バックコンタクト型)を設置して、図5に示されるタンデム型の太陽電池を作製した。実施例1のInGaP光電変換層を有する太陽電池を透過したAM1.5の光に対するSi太陽電池の変換効率を測定したところ、10.5%であり、タンデム型全体で、28.5%の効率が得られた。
【0042】
<実施例3>
実施例1と同様の方法を用いて、図7に示される、n−GaPからなるコンタクト層703と、光電変換層(p−InGaPからなるベース層701およびn−InGaPエミッタ層よりなる)との間にn−AlGaInPからなる中間層711を有する太陽電池を作製した。各層の厚さおよびキャリア濃度は、以下の層以外は、実施例1と同じとした。コンタクト層703:層厚2.0μm、Siドープ。キャリア濃度は、上(電極705側)の0.4μmのみ5×1018cm-3とし、下(中間層711側)の1.6μmについては1×1018cm-3とした(中間層711:層厚0.1μm、Siドープ:1×1018cm-3)。
【0043】
基板のエッチング除去時、およびトンネル接合層704のエッチング時に割れやしわの発生は全くなかった。また、本実施例の太陽電池をAM1.5下で、上記測定方法にて変換効率を測定したところ、18.3%であった。
【0044】
<実施例4>
図11に示される構造のIII−V族化合物半導体太陽電池を、実施例1と同様の方法により作製した。各層の構成は、以下のとおりとした。p−InGaPベース層1101(1.5μm厚、Znドープ:2×1017cm-3)、n−InGaPエミッタ層1102(0.05μm厚、Siドープ:2×1018cm-3)、p−GaPコンタクト層1103(2.0μm厚、Znドープ:5×1018cm-3)、p+−GaAs/n+−GaAsからなるトンネル接合層1104(それぞれ、0.05μm厚/0.25μm厚、Cドープ:2×1019cm-3/Teドープ:5×1019cm-3)。
【0045】
基板のエッチング除去時、およびトンネル接合層1104のエッチング時に割れやしわの発生は全くなかった。また、本実施例の太陽電池をAM1.5下で、上記測定方法にて変換効率を測定したところ、18.0%であった。
【0046】
<比較例1>
図9に示される構造の太陽電池を図10の方法により作製した。各層の構成は、以下のとおりとした。p−InGaPベース層901(1.5μm厚、Znドープ:2×1017cm-3)、n−InGaPエミッタ層902(0.05μm厚、Siドープ:2×1018cm-3)、n−GaAsコンタクト層903(0.4μm厚、Teドープ:5×1018cm-3)、p+−GaAs/n+−GaAsからなるトンネル接合層904(それぞれ、0.05μm厚/0.25μm厚、Cドープ:2×1019cm-3/Teドープ:5×1019cm-3)。また、図10において、基板にはGaAs、エッチングストップ層1002にはn−InGaP(0.2μm厚、Siドープ:2×1017cm-3)を用いた。この太陽電池をAM1.5下で、上記測定方法にて変換効率を測定したところ、17.0%であった。
【0047】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る太陽電池の一例を示す概略断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る太陽電池における、光電変換層とコンタクト層とのトータル層厚と割れ、しわ発生率との関係を示すグラフである。
【図3】第1の実施形態に係る太陽電池における、コンタクト層の組成と比抵抗との関係を示すグラフである。
【図4】図1に示される太陽電池の製造方法の好ましい一例を示す概略工程図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る太陽電池の一例を示す概略断面図である。
【図6】第2の実施形態に係る太陽電池における、太陽電池(A)が有するInGaPからなる光電変換層の厚さと変換効率との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る太陽電池の一例を示す概略断面図である。
【図8】n−GaPコンタクト層/n−InGaP光電変換層のヘテロ接合およびn−GaPコンタクト層/n−AlGaInP中間層/n−InGaP光電変換層のヘテロ接合におけるバンド状態を示す概念図である。
【図9】従来のIII−V族化合物半導体太陽電池の一例を示す概略断面図である。
【図10】従来のIII−V族化合物半導体太陽電池の製造方法一例を示す概略工程図である。
【図11】本発明の第4の実施形態に係る太陽電池の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0049】
101,501,701,1101 ベース層、102,502,702,1102 エミッタ層、103,503,703,1103 コンタクト層、104,504,704,1104 トンネル接合層、105,106,505,506,705,706,1105,1106 電極、107,108,507,508,707,708,1107,1108 インターコネクター、109,509,709,1109 カバーガラス、401 基板、402 エッチングストップ層、510 Si太陽電池(バックコンタクト型)、711 中間層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主としてIII−V族化合物半導体からなる光電変換層と、
前記光電変換層上に形成されたコンタクト層と、
前記コンタクト層の表面の少なくとも一部に形成された電極と、を含む太陽電池であって、
前記コンタクト層は、主としてGaPからなり、
前記光電変換層の厚さは2.5μm以下であることを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記光電変換層の厚さと前記コンタクト層の厚さとの合計は、3μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記光電交換層の厚さは、1〜2μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記コンタクト層は、AlxGa1-x-yInyP(0<x≦0.1、0<y≦0.1)からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池。
【請求項5】
前記光電変換層と前記コンタクト層との間に中間層をさらに有し、
前記中間層のバンドギャップおよび格子定数は、前記光電変換層のバンドギャップおよび格子定数と、前記コンタクト層のバンドギャップおよび格子定数との間にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の太陽電池(A)に直列接続された太陽電池(B)を有するスタック型太陽電池であって、
前記太陽電池(B)が有する光電変換層のバンドギャップは、前記太陽電池(A)が有する光電変換層のバンドギャップより小さいスタック型太陽電池。
【請求項1】
主としてIII−V族化合物半導体からなる光電変換層と、
前記光電変換層上に形成されたコンタクト層と、
前記コンタクト層の表面の少なくとも一部に形成された電極と、を含む太陽電池であって、
前記コンタクト層は、主としてGaPからなり、
前記光電変換層の厚さは2.5μm以下であることを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記光電変換層の厚さと前記コンタクト層の厚さとの合計は、3μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記光電交換層の厚さは、1〜2μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記コンタクト層は、AlxGa1-x-yInyP(0<x≦0.1、0<y≦0.1)からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池。
【請求項5】
前記光電変換層と前記コンタクト層との間に中間層をさらに有し、
前記中間層のバンドギャップおよび格子定数は、前記光電変換層のバンドギャップおよび格子定数と、前記コンタクト層のバンドギャップおよび格子定数との間にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の太陽電池(A)に直列接続された太陽電池(B)を有するスタック型太陽電池であって、
前記太陽電池(B)が有する光電変換層のバンドギャップは、前記太陽電池(A)が有する光電変換層のバンドギャップより小さいスタック型太陽電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−270604(P2008−270604A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−113063(P2007−113063)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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