説明

化学カップリング反応の操作条件のスクリーニング法およびこの方法を実行するためのキット

本発明は,少なくとも二つの官能基のカップリング反応の操作条件をスクリーニングするための方法、特に前記カップリング反応において有用な触媒、ならびに前記方法を実行するためのキットに関する。本発明は、基礎および応用研究へ、特に化学、アグロフード、薬学、および環境保護の領域において、合成反応の性能を開発および最適化するべく適用されることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、参考として本明細書に含まれる、2003年4月15日出願のフランス特許出願番号第03 50106号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、化学カップリング反応の操作条件のスクリーニング法、およびこの方法が実行されることを可能にするための好適なキットに関する。
【0003】
さらに明確には、本発明は、種々の操作条件の影響を、反応の収率について同時に検査するための方法であって、たとえば、結果としてこの収率の最適化を生じる一つまたはいくつかの条件を選択する目的で、少なくとも二つの官能基をカップリングすることを含む方法に関する。
【0004】
このような操作条件は、定性的および定量的の双方であってよい。
【0005】
従って、この方法は、触媒または溶媒といった、特定のカップリング反応においてそれらが有用であり得るかどうかを決定することが所望される物質をスクリーンするべく使用されることが可能であり、また、反応媒体としてカップリング反応の収率に対するその影響を測定することが要求されるレベル、たとえば温度または圧力レベル,濃度、化学量論比、または、反応時間または反応媒体の撹拌時間のような時間を、スクリーニングするべく使用されてよい。
【0006】
本発明の方法は、それゆえ、基礎および応用の双方の研究の分野において、数多くの適用を見出しやすい。
【0007】
したがってそれは、たとえば、化学的であれ生物学的であれ、均一系または不均一系の触媒作用の機構のよりよい理解を目的とする基礎的研究において使用されることが可能である。
【0008】
それはまた、応用調査研究において、特に化学、アグロフード、薬学、および環境保護の領域において、より効果的でありかつ特定の制約に対し特異的に反応し得る触媒を開発すること、または、合成反応の収率または実験条件を、たとえばこれらの反応の実行の経費を低減するべく最適化すること、という目的で使用されることが可能である。
【0009】
それは特に、「野生型」酵素の触媒性能レベルを改善する目的で、突然変異した酵素のライブラリをスクリーンするべく、あるいは既知または未知の組成を有する生物学的媒体を、これらの媒体中の特定の触媒活性の存在を同定する目的でスクリーンするべく使用されることが可能である。
【背景技術】
【0010】
カップリング反応の操作条件をスクリーニンするという点においては、これらは本質的には、今日までに提案されてきた触媒をスクリーンするべく意図された方法である。
【0011】
こうした方法は、すべて、種々の候補触媒の存在下に、それについてカップリング反応が使用されやすい化合物のファミリーを代表する、二つの特定の化合物を反応させることからなる工程、およびその後の、前記反応に対するこれらの触媒の有効性を評価することからなる工程を含む。
【0012】
したがって、第一に、カップリング反応の終了時に、反応媒体の組成を分析することを目的とした、高圧力液体クロマトグラフィー(HPLC)による既知の方法があり、そのことは、たとえばシリカゲルカラム上での濾過により、それらがまず精製されねばならないことを意味している。
【0013】
これらはそれゆえ、実行するのに骨の折れる方法であり、一日あたり限られた数の検査しか行なうことができず、結果的にミディアム−またはハイ−スループットスクリーニングには完全に不適当である。
【0014】
第二に、カップリング反応の終了時に、このカップリング反応に関与する化合物のうちの一つと、または前記反応から派生した産物または副産物と反応して、呈色、脱色、または蛍光または化学発光の放出といったシグナルを発生することができる、化学反応を使用することを目的とした方法がある。
【0015】
単なる例として、以下が参照される:
−ラバストル(Lavastre)およびモルケン(Morken)によりAngew. Chem. Int. Ed. 1999年、第38巻,第21号、p.3163−3165、[1]において記述された、アリル位アルキル化において有用な触媒のスクリーニングのための方法であり、このアルキル化の過程で産生される1−ナフトールを、「ファーストレッドバイオレットLB」として知られるジアゾニウム塩と反応させ、明橙色化することによって検出することを目的とする;
−ベーム(Boehm)およびハーマン(Herrmann)により、Eur. J. Org. Chem. 2000年、p.3679−3681、[2]において記述された、ソノガシラ(Sonogashira)反応において有用な触媒をスクリーンするためのものであって、この反応の産物を、KMnOで酸化して反応媒体の脱色を引き起こすことによって示すことからなる;
−レーバー(Loeber)らにより、J. Am. Chem. Soc. 2001年、第123巻,p.4366−4367、[3]において提唱された、アニリンのようなアリールアミンによる1,3−ジエンのハイドロアミネーションにおいて有用な触媒をスクリーンするためのものであって、残存するアニリンを、その効果が反応媒体を赤色に着色することである、酸の存在下にフルフラールと反応させることによって示すことからなる。
【0016】
この第二のタイプの方法は、それ自身、カップリング反応に関与する化合物の一つに、あるいはこの反応によって形成される産物に、特異的な反応物を必要とするという欠点を示しており、そのことが、化合物に関連するかまたは、かかる反応物をそれに利用することができる産物を結果として生じる、反応のスクリーニングへの、その使用を制限している。
【0017】
また、カップリング反応に関係する化合物の一方が固形担体へ付着されており、他方が蛍光プローブで標識されている方法も存在する。二つの化合物は反応されるため、触媒の有効性は、結果として固形担体上に反応由来の産物の形成を生じる。この担体は次に、反応していない化合物の分画を除去し、かつ反応に由来する産物を前記担体上に存在する蛍光を読取ることによって検出する目的で、洗浄されねばならない。
【0018】
このような方法の実例は、ショーネシー(Shaugnessy)らによる文献(J. Am. Chem. Soc. 1999年、第121巻,p.2123−2132、[4])において、ヘック(Heck)反応において有用な触媒のスクリーニングについて例示されている。この実例においては、第一の化合物は架橋されたポリスチレン樹脂(ワング(wang)樹脂)へ付着されているハロゲン化アリールであり、一方第二の化合物はクマリンで標識されたアクリレートである。
【0019】
後者のタイプの方法は、二つの主要な欠点を示す。まず、触媒作用は不均一媒体中で行なわれる。現在、不均一媒体中で高い触媒活性を示す触媒が、均一媒体中では完全に無効であることを証明することが可能であることが知られている。さらに、触媒作用の査定は本質的に定性的であって、カップリング反応の収率を計算することは、この計算が固形担体上の第一の化合物のグラフティングの度合いについての知識を必要とすることから困難である。
【0020】
もう一つのタイプの方法は、有効な触媒の存在下では、無効な触媒の存在下よりも、反応による熱の放出がより迅速に起こるという事実に基づいている。したがって、熱量測定法によるか、または前記反応媒体の上に固定された超高感度赤外線カメラを使用したサーモグラフィーによって、反応媒体の温度変異を測定することにより、触媒の有効性を査定することが可能である。
【0021】
このタイプの方法の一つの態様の実例は、ブラックモンド(Blackmond)らによる刊行物(Organic Process Research & Development、1999年、第3巻,第4号,p.275−280、[5])において、ヘック反応において有用な触媒のスクリーニングについて例示されている。
【0022】
熱分析スクリーニング法は、相当な、かつ費用のかかる材料を必要とするという欠陥を有する。さらに、それは反応収率の計算を可能にはしない。最後に、それはゆっくりと起こる反応には適用可能ではなく、その結果として、検出不能または充分に有意ではない熱の量を出してしまう。
【0023】
最後に、ヒンダーリング(Hinderling)およびチャン(Chen)により、Angew. Chem. Int. Ed.、1999年、第38巻、第15号、p.2253−2256、[6]において、オレフィン重合触媒のスクリーニングを行なうための、エレクトロスプレー質量分析法の使用が提唱されている。ここでもまた、相当な、かつ費用のかかる材料を必要とする方法が含まれている。
【非特許文献1】Lavastre and Morken, Angew. Chem. Int. Ed. 1999, 38(21), 3163-3165
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
それゆえ、カップリング反応に対する種々の操作条件の影響、およびさらに詳細にはこの反応における触媒の潜在的な有用性、を検査することを可能にする方法、および全般的に、今日までに提案されたスクリーニング法によって示されたすべての欠点がない方法に対し、真の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、少なくとも二つの官能基のカップリング反応の操作条件をスクリーニングする方法を提供することにより、この必要性を的確に満たすものであり、以下の工程:
i)少なくとも二つの化合物:
・式E−X−G
[式中、Gは前記少なくとも二つの官能基の一番目を表し、Xは共有結合または第一のスペーサー基を表しており、一方Eは第一の分子Mの残基を表し、それに対し第一の特異抗体ACが利用可能である]
の第一の化合物、および
・式E−X−G
[式中、Gは前記少なくとも二つの官能基の二番目を表し、Xは共有結合または第二のスペーサー基を表しており、Xと同じかまたは異なってよく、一方Eは、Mとは異なる第二の分子Mの残基でありかつ第二の特異抗体ACがそれに対して利用可能であるか、あるいはカップリング剤の存在下に抗体ACと少なくとも一つの共有結合を形成することができる基を表す]
の第二の化合物、
を一緒に反応させることであって;
前記少なくとも二つの化合物は、一つの溶媒において溶液中で、あらかじめ操作された条件下に反応されており、少なくともその一つは、反応媒体および、鎖E−X−G−G−X−Eを含んでいる化合物Zのこの媒体における形成を得るための、候補操作条件であって、これにおいてX、X、E、およびEは上記と同様の意味を有し、一方G−Gは、前記少なくとも二つの官能基のカップリングから結果として生じる原子団を表しており;
ii)反応媒体中の化合物Zの濃度を、あらかじめ決められた反応時間tにおいて、少なくとも抗体ACを用いた少なくとも一つのイムノアッセイによって測定する工程;および
iii)そのようにして測定された化合物Zの濃度を用いて、前記カップリング反応に対する候補操作条件の影響を評価すること、
を含む。
【0026】
したがって、本発明の方法においては、それについて操作条件をスクリーンすることが所望されかつ、この適例ではGおよびGの少なくとも二つの官能基を含むカップリング反応は、反応物として、各々が一端にこれらの官能基のうちの一つを、他端には、それに対して特異抗体、各々ACおよびACが利用可能である各々分子MおよびMの残基、を、あるいは第二の化合物の場合には、分子Mに特異的な抗体ACと一以上の共有結合を形成することの可能な基を含んでいる、少なくとも二つの化合物を使用して、カップリング剤の存在下に行なわれる。
【0027】
カップリング反応によって産生される化合物Zの反応媒体中の濃度は、したがって、選択された反応時間tにおいて、少なくとも一つのイムノアッセイによって容易に測定されることが可能であり、このアッセイは抗体ACのみか、または二つの抗体ACおよびACを使用する。
【0028】
ひとたび化合物Zの濃度がわかれば、次に、カップリング反応の収率を計算によって測定すること、およびその下にそれが行なわれた操作条件の影響を査定することが可能である。これらの影響はまた、しかしながら、前記濃度を、異なる操作条件下にあらかじめ得られていた一以上の濃度と比較すること、および基準値としての役割を果たすことによっても査定されることが可能である。
【0029】
上記のおよび以下の本文において:
−用語「候補操作条件」は、それについて、カップリング反応に対する影響が検査される、操作条件を意味することが意図される;
−用語、分子Mの「残基」は、前記分子が、Xが共有結合またはスペーサー基を表すかに依存して官能基Gまたはスペーサー基へ、共有結合によって付着された場合、式E−X−Gの化合物中に残っているこの分子部分を意味することが意図される;同様に、用語、各々M、M、またはMの分子の「残基」は、前記分子が、X、X、またはXが共有結合またはスペーサー基を表すかに依存して各々官能基G、G、またはGか、またはスペーサー基へ、共有結合によって付着された場合、式E−X−G、E−X−G、またはE−X−Gの化合物中に残っているこの分子部分を意味することが意図される。
【0030】
さらに、用語、分子に「特異的な抗体」は、この分子を特異的に認識すること、および抗原−抗体免疫反応によりそれと結合することのできる抗体を意味することが意図される。
【0031】
前文に示したように、化合物E−X−GおよびE−X−Gにおいて、GおよびGは、操作条件をスクリーンすることが所望されるカップリング反応に少なくとも関与している二つの官能基に相当し、それゆえこの反応によって選ばれる。
【0032】
二つの官能基を含み、かつ本発明による方法がそれに使用可能であるカップリング反応は、特に以下の分子間カップリング反応である:
−エステル化反応、カルボン酸(R−COOH)または、たとえば、酸ハロゲン化物(R−CO−Hal)のようなカルボン酸誘導体と、アルコール(R′−OH)とのカップリングからなるような、エステル基(R−COR′)を得るようにする反応;
−アミド反応、カルボン酸(R−COOH)またはカルボン酸誘導体と、第一級(R′−NH)または第二級(R′−NH−R′′)アミンとのカップリングからなるような、アミド(R−CONH−R′またはR−CONR′−R′′)を得るようにする反応;
−アルドール反応、二つのアルデヒド(R−CHO)または二つのケトン(R−CO−R′)のカップリングか、またはアルデヒドとケトンのカップリングからなるような、アルドールまたはケトールを得るようにする反応、およびニトロアルドール反応のようなその変形で、アルデヒドが窒素化合物(R′−CH−NO)とカップリングされてニトロアルコール(R−CH(OH)−CH(NO)−R′)を得るようにするような反応;
−ヘック反応、オレフィン(R′−CH=CH)と有機ハロゲン化物(R′−Hal)とのカップリングからなり、アルケン(R−CH=CH−R′)を得るようにする反応、およびその変形;
−ベイリス・ヒルマン(Baylis-Hillman)反応、アルケン(R−CH=CH)とアルデヒド(R′−CHO)とのカップリングからなり、アリルアルコール(R′−C(CH)−CH(OH)−R′)を得るようにする反応、およびその変形;
−マイケル(Michael)反応、求核性化合物と不飽和電子受容体化合物(たとえば、R−CH=CH)との間の付加反応からなる反応、およびその変形;
−メタセシス反応、二つのオレフィン(たとえば、R−CH=CHおよびR′−CH=CH)のカップリングからなり、第三のオレフィン(R−CH=CH−R′)を得るようにするような反応;
−ディールス・アルダー(Diels-Alder)反応であり、ジエンとジエノフィルとの間の環付加化からなる反応;
−ソノガシラ反応、アルキン(R−CCH)とハロゲン化アリール(Ar−Hal)とのカップリングからなる反応、およびその変形;
−スズキ(Suzuki)反応、アリールボロン酸(Ar−B(OH))とハロゲン化アリール(Ar′−Hal)とのカップリングからなり、ジアリール(Ar−Ar′)を得るようにする反応,およびその変形;
−クマダ(Kumada)反応、グリニャール試薬(R−Mg−Hal)とハロゲン化アルキル、ハロゲン化ビニル、またはハロゲン化アリールとのカップリングからなる反応、およびその変形;
−スティール(Stille)反応、有機スズ化合物(たとえば、Ar−SnBu)と有機ハロゲン化物(たとえば、Ar′−Br)とのカップリングからなる反応,およびその変形;
−ヒヤマ(Hiyama)反応、有機シラン(たとえば、Ar−SiR)と有機ハロゲン化物(たとえば、Ar′−Br)とのカップリングからなる反応、およびその変形;
−リーベスキンド・スログル(Liebeskind-Srogl)反応、ボロン酸(たとえば、Ar−B(OH))とチオールエステル(R−CO−S−R′)のカップリングからなり、ケトンを得るようにする反応、および変形。
【0033】
三つの官能基を含むカップリング反応は、特に、活性水素を有する化合物と、エノール化不能なアルデヒドおよび、第一級または第二級アミンとのカップリングからなり、アミノメチル化合物を得るようにするマンニッヒ(Mannich)反応、アミンと、アルデヒドおよび、α−ブロモケトンとのカップリングからなり、ピロールを得るようにするハンチュ(Hantzsch)反応、およびα−ケトアルデヒドと、カルボン酸および、イソニトリルとのカップリングからなり、オキサゾールを得るようにするボシオ(Bossio)らの反応であり、一方4つの官能基を含むカップリング反応は、たとえば、カルボン酸、第一級アミン、カルボニル化合物、およびイソシアニドのカップリングからなり、α−アミノカルボキサミドを得るようにするウギ(Ugi)反応である。
【0034】
さらに、式E−X−G、およびE−X−Gの化合物においては、Eは分子Mの残基を表し、それに対し第一の特異抗体ACが利用可能であり、一方Eは分子Mの残基を表し、それに対し第二の特異抗体ACが利用可能である。
【0035】
これら二つの残基は、それらが由来した分子MおよびMのものと同様の抗原性を示さねばならず、各々、抗体ACおよび抗体ACによって認識されて、それらと免疫結合を形成するが、しかしカップリング反応の進行を、特に立体障害によって損なうことも、この反応を妨害することもあってはならない。
【0036】
したがって、分子MおよびMは好ましくはハプテン、すなわち低分子であって、タンパク質(ウシ血清アルブミン,γ−免疫グロブリンなど)または多糖のようなベクター上へのグラフティングの後、それらに対して特異的に指示された抗体の産生を動物に誘発することができる。
【0037】
これらのハプテンは、特に、まずにそれらがベクター上にグラフトされ、二番目に官能基GおよびGか、または、XおよびXがそのような基である場合にはスペーサー基へ付着されるようにすることができる反応性の基、好ましくはカルボン酸、アミン、またはチオールで置換された、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、ビシクロ[2.2.2]ヘプタン、2,2−ジメチル−3−メチル−4,4−ジメチルペンタン、アダマンタン、パーヒドロフェナレン、およびパーヒドロアントラセンといった、炭化水素であることが可能である。かかる炭化水素は、事実上、化学的にかなり不活性であるという利点をもつ。
【0038】
しかしながら、これらのハプテンはまた、炭化水素以外の分子であることも可能であり、その場合、もし化合物E−X−G、およびE−X−Gにおいて、これらの分子の残基が、カップリング反応が行なわれる条件下に反応することが可能な一以上の遊離の官能基を含む場合には、この、またはこれらの官能基は、カップリング反応が行なわれる前、すなわちこの方法の工程i)に先立ち選択された、適当な保護基で保護されるべきであり、次に、工程i)と工程ii)との間で脱保護される。
【0039】
二つの分子が、本発明の方法を実行するために特に有利なハプテンを構築するために見出されている。これらは、第一にヒスタミンであって、以下の式(I):
【0040】
【化1】

【0041】
に相当し、これに対しては、少なくとも10−8Mに等しいKdを示すいくつかのモノクローナル抗体を得ることが可能になっており、第二にはホモバニリン酸であって、以下の式(II):
【0042】
【化2】

【0043】
に相当し、これに対しては、少なくとも10−6Mに等しいKdを示すいくつかのモノクローナル抗体を得ることが可能になっている。
【0044】
したがって、本発明の方法の第一の好ましいアレンジメントによれば、化合物E−X−GにおけるE、またはE−X−GにおけるEは、以下の式(III):
【0045】
【化3】

【0046】
[式中、Rは水素原子か、または、たとえば、tert−ブチルオキシカルボニル(BOC)基またはベンジル基のような、アミン官能基−保護基を表す]に相当する。
【0047】
したがって、本発明の方法のもう一つのの好ましいアレンジメントによれば、化合物E−X−GにおけるE、またはE−X−GにおけるEは、以下の式(IV):
【0048】
【化4】

【0049】
[式中、Rは水素原子か、または、たとえば、ジメチルtert−ブチルシリルタイプのシリル化された基、ジヒドロピラン、さもなければベンジル、アリル、またはアセタール基といったアルコール官能基−保護基を表す]に相当する。
【0050】
化合物E−X−Gにおいては、Eが分子Mの残基ではなく、カップリング剤の存在下に抗体ACと少なくとも一つの共有結合を形成することができる基を表すことが可能であり、その場合、この基はアミン、カルボン酸、アルデヒド、チオール、フェノール、アルケニル、およびアジド基、およびたとえば、ベンゾフェノンおよびアリールアジド基のような光活性化可能な基から都合よく選ばれる。
【0051】
好ましくは、Eはアミンまたはチオール基である。前文に示したように、E−X−GおよびE−X−Gの化合物において、EおよびEは、官能基GおよびGに対し、直接的に、またはスペーサー基を介して付着されてよい。
【0052】
これらのスペーサー基は、その機能は、第一にEと官能基Gとの間に、第二にEと官能基Gとの間に、ただブリッジを形成することのみであり、エチレン(−(CH−),プロピレン(−(CH−)、またはブチレン(−(CH−)タイプなどの飽和炭化水素基のような任意の官能基を欠いている基か、またはカップリング反応が実行される操作条件下では反応することができない一以上の官能基を含む基か、さもなければカップリング反応が実行される前に、適当な保護基で保護されている一以上の官能基を含む基である。
【0053】
本発明によれば、化合物Zのための前記少なくとも一つのイムノアッセイは、実現の単純さを理由に、好ましくは固相アッセイである。
【0054】
本発明による方法の第一の好ましい態様によれば、Eは、化合物E−X−Gにおいて分子Mの残基に相当することから、化合物Zのための前記少なくとも一つのイムノアッセイは、「サンドイッチ」タイプ(または2サイト)のアッセイであり、工程ii)は以下の工程:
)反応時間tにおいて得られた反応媒体を、その上に抗体ACが固定されている固相と接触させ、この抗体とこの化合物の残基Eとの間の免疫結合により、この固体上への化合物Zの付着を得る工程;
)固相を、標識へ結合された抗体ACを含んでいるコンジュゲートと接触させ、この抗体と、前記固相へ付着された化合物Zの残基Eとの間の免疫結合により、該コンジュゲートの、該固相への付着を得る工程;
)抗体ACに結合された標識により、固相へ付着されたコンジュゲートの量を測定する工程;および
)そのようにして測定されたコンジュゲートの量から、前記時間tにおける反応媒体中の化合物Zの濃度を、基準範囲において測定する工程;
を含んでおり、
前記工程ii)はまた、工程a)とb)の間、および工程b)とc)の間に、固相を洗浄することからなる一以上の操作も含む。
【0055】
このアッセイは、それゆえ二つの抗体ACおよびACを使用しており、抗体ACは固相上に固定され、抗体ACは標識へ結合される。
【0056】
本発明による方法のもう一つの好ましい態様によれば、Eは、化合物E−X−Gにおいて、抗体ACと少なくとも一つの共有結合を形成することができる基に相当することから、化合物Zのための前記少なくとも一つのイムノアッセイは、US−A−5,476,770[7]において記述された、「SPIE−IA」タイプ(固相エピトープイムノアッセイ(Solid-Phase Epitope ImmunoAssey))のアッセイであり、工程ii)は以下の工程:
)反応時間tにおいて得られた反応媒体を、その上に抗体ACが固定されている固相と接触させ、この抗体とこの化合物の残基Eとの間の免疫結合により、この固相への化合物Zの付着を得る工程;
)カップリング剤を、固相上に固定された抗体ACおよび、この固相へ付着された化合物Zの基Eと反応させ、該抗体と該基との間に一以上の共有結合の形成を得る工程;
)固相上に固定された抗体ACと、前記固相へ付着された化合物Zの残基Eとの間に存在する免疫結合を変性させ、該固相から該残基を放出する工程;
)固相を、標識へ結合された抗体ACを含んでいるコンジュゲートと接触させ、前記抗体と、そのように放出された化合物Zの残基Eとの間の免疫結合により、該コンジュゲートの付着を得る工程;
)抗体ACに結合された標識により、固相へ付着されたコンジュゲートの量を測定する工程;および
)そのようにして測定されたコンジュゲートの量から、前記時間tにおける反応媒体中の化合物Zの濃度を、基準範囲において測定する工程;
を含んでおり、
前記工程ii)はまた、工程a)とb)の間、b)とc)の間、c)とd)の間、およびd)とe)の間、に、固相を洗浄することからなる一以上の操作も含む。
【0057】
このアッセイ自体は、抗体ACのみを使用するが、二つの異なる形状:固相上に固定されている第一の形状、および標識へ結合されている第二の形状、
においてである。
【0058】
工程b)において使用されるカップリング剤は化学的反応物でよく、その場合、それはバイファンクショナルであるべきであり、すなわち、それは化合物E−X−Gの基Eと反応することができる第一の官能基と、抗体ACと反応することができる、第一のものと同じかまたは異なる第二の官能基を含むべきである。
【0059】
これらの官能基が同じかまたは異なることにより、それらはグルタールアルデヒド、ジフルオロジニトロベンゼン、ビス(マレイミド)ヘキサン、またはスベリン酸スクシンイミジルのような、ホモバイファンクショナル試薬か、またはN−スクシンイミジル−3−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネートまたはスクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレートのような、ヘテロバイファンクショナル試薬でよい。
【0060】
グルタールアルデヒドまたは、スベリン酸ジスクシンイミジルが、好ましくは使用される。
【0061】
変形として、カップリング剤は、Eが光活性化可能な基である場合には、照射、たとえば紫外線照射でよい。
【0062】
工程c)において、抗体ACと、化合物Zの残基Eとの間に存在する免疫結合の変性は、適当な試薬により、さもなければ超音波または熱の反応を通して、慣例的に行なわれることが可能である。
【0063】
この試薬は、HClのような酸、NaOHのような塩基、たとえば、メタノールタイプのアルコールのような有機溶媒、界面活性剤、および無機塩から選ばれてよい。
【0064】
化合物Zをアッセイするために選ばれた技術が何であれ:
−抗体ACおよび、適切な場合には抗体ACは、一般的には、その特異性がより大きいことを理由にモノクローナル抗体を使用することが好ましいが、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体でよく;
−固相上への抗体ACの固定は、受動的または能動的な固定であることが可能であり;したがって、この固定は、固相の表面への前記抗体の単純な吸着により、共有結合により、アビジン・ビオチン系のような結合分子により、さもなければニッケルまたは銅/NTA(ニトリロ三酢酸)複合体と結合したポリヒスチジンタグによって得られることが可能であり;抗体ACがモノクローナル抗体であるとき、その固相上への固定はまた、この固相の表面にあらかじめ吸着されたポリクローナル抗体によっても得られることが可能であり;
−固相は、チューブの壁、マイクロタイトレーション用プレートのウエル、ポリスチレンまたはニトロセルロースのようなプラスチックからなる膜、ガラスビーズ、磁気ビーズ、および、一般に、受動的または能動的に、そこへ抗体を付着させることができる任意の表面のような、イムノアッセイに通常使用される固相の任意の一つであることが可能であり;さらに
−標識は、ヨウ素125、クロム51、またはトリチウムのような同位元素、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アセチルコリンエステラーゼ、またはグルコースオキシダーゼのような酵素、ピロガロールルミノールまたはイソルミノールのような発光標識、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、またはシアニンのような蛍光標識、さもなければ、ビオチンおよびその構造上の類似体のような、アビジンまたはストレプトアビジンと反応することができる物質であることが可能であり;後者の場合には、アビジンまたはストレプトアビジンは、たとえば酵素または蛍光色素によってそれ自体が標識されている。
【0065】
好ましくは、抗体ACおよび、適切な場合には抗体ACは、モノクローナル抗体であり;固相はマイクロタイトレーション用プレートのウエルの壁であり;抗体ACの固定は、この相の表面におけるこの抗体の受動的な吸着によって実行され、標識は酵素、特に、その代謝回転(秒当たり、および部位当たり、16000分子の基質を加水分解)の故に、アセチルコリンエステラーゼであり、それを含むコンジュゲートに高い比活性を与える。
【0066】
本発明によれば、方法は工程i)とii)との間に、反応媒体の希釈からなる操作を都合よく含む。
【0067】
さらに、カップリング反応に対する候補操作条件の影響は、好ましくは、工程iii)において、工程ii)で測定された反応媒体中の化合物Zの濃度から、この反応の収率を測定することにより評価される。
【0068】
この収率は、たとえば、以下の式:
【0069】
【数1】

【0070】
[式中:
・[Z]は、工程ii)において測定された反応媒体中の化合物Zの濃度であり、fは、後者が工程i)とii)との間に希釈を受けた場合の該媒体についての希釈比であり、一方
・[E−X−G]は、反応媒体中の化合物E−X−Gの初濃度である]
を適用することにより計算されることが可能である。
【0071】
前文に示したように、その操作条件をスクリーンすることが所望されるカップリング反応は、二つまたは二つより多い官能基のカップリングからなることが可能であり、この反応に関与する官能基の数は、好ましくは2、3、または4に等しい。
【0072】
カップリング反応が二つの官能基GおよびGのカップリングからなるとき:
−工程i)においては、式E−X−GおよびE−X−Gの化合物は一緒に反応され、反応媒体中で、式E−X−G−G−X−E[式中、X、X、E、およびEは上記と同様の意味を有し、G−Gは前記官能基GおよびGの間のカップリングから結果として生じる原子団を表す]に相当する化合物Zの形成が得られ、一方
−工程ii)においては、反応媒体中の化合物Zの濃度は、単一のイムノアッセイによって測定され、それは好ましくは上述の「サンドイッチ」タイプまたは「SPIE−IA」タイプの固相アッセイである。
【0073】
カップリング反応が三つの官能基G、G、およびGのカップリングからなるとき:
−工程i)においては、式E−X−GおよびE−X−Gの化合物は、式E−X−G
[式中、Xは共有結合か、または第三のスペーサー基を表し、Xおよび/またはXと同じかまたは異なってよく、一方Eは、MおよびMとは異なる第三の分子Mの残基であり,それに対して第三の特異抗体ACが利用可能であるか、あるいは、カップリング剤の存在下に抗体ACと共有結合を形成することが可能な基を表すが、Eがすでにかかる基を表していることはないという条件下である]
の第三の化合物と反応され、反応媒体中で、以下の式:
【0074】
【化5】

【0075】
[式中、X、X、X、E、E、およびEは、上記と同様の意味を有し、かつ
【0076】
【化6】

【0077】
は、前記官能基G、G、およびGのカップリングから結果として生じる原子団を表す]
の一つに相当する化合物Zの形成を得るようにし;一方
−工程ii)においては、反応媒体中の化合物Zの濃度は、二つの異なるイムノアッセイにより測定される。
【0078】
これらのアッセイは、平行に、すなわち、反応媒体の二つの異なるサンプルについて、または反応媒体の同一のサンプルについて交互に、行なわれてよく、好ましくは固相において両方行なわれる。
【0079】
したがって、それらは二つの「サンドイッチ」タイプのアッセイでよく、以下:
−第一のアッセイ用には、固相上に固定された抗体ACおよび、第一の標識へ結合された抗体AC、および
−第二のアッセイ用には、固相上に固定された抗体ACおよび、第二の標識へ結合された抗体AC
を用いて行なわれ、第一および第二の標識は、二つのアッセイが平行して行なわれる場合にはおそらくは同一であるが、それらが交互に行なわれる場合には異なるべきである。
【0080】
変形として、第一のアッセイは、上記のような抗体ACを用いて行なわれる「SPIE−IA」タイプのアッセイでよく、この場合、第二のアッセイは、化合物E−X−GおよびE−X−Gにおいて、「SPIE−IA」アッセイを通じて抗体ACと一以上の共有結合を形成することができる基を表すものがEであるか、またはEであるかに依存して、標識へ結合された抗体ACまたは抗体ACを用いて行なわれる「サンドイッチ」タイプアッセイである。
【0081】
全ての場合に、反応媒体中の化合物Zの形成は、二つのアッセイによって測定された該化合物の濃度の類似性によって保証される。
【0082】
カップリング反応が4つの官能基G、G、G、およびGのカップリングからなるとき:
−工程i)においては、式E−X−GおよびE−X−Gの化合物は、前文に定義された式E−X−Gの第三の化合物と、および式E−X−G
[式中、Xは共有結合か、または第4のスペーサー基を表し、X、Xおよび/またはXと同じかまたは異なってよく、一方Eは、M、M、およびMとは異なる第四の分子Mの残基であり,それに対して第四の特異抗体ACが利用可能であるか、あるいは、カップリング剤の存在下に抗体ACと共有結合を形成することが可能な基を表すが、E、およびEがすでにかかる基を表していることはないという条件下である]
の第4の化合物と反応され、
反応媒体中で、以下の式:
【0083】
【化7】

【0084】
[式中、X、X、X、X、E、E、E、およびEは、上記と同様の意味を有し、かつ
【0085】
【化8】

【0086】
は、前記官能基G、G、G、およびGのカップリングから結果として生じる原子団を表す]
の一つに相当する化合物Zの形成を得るようにし;一方
−工程ii)においては、反応媒体中の化合物Zの濃度は、三つの異なるイムノアッセイにより測定される。
【0087】
ここではまた、これらのアッセイは、平行して、または交互に行なわれることが可能であり、三つはすべて好ましくは固相において行なわれる。それらは三つの「サンドイッチ」タイプのアッセイか、または「SPIE−IA」タイプのアッセイとそれに続く二つの「サンドイッチ」タイプのアッセイでよく、反応媒体中の化合物Zの形成は、ここで再び、得られた結果の類似性によって保証される。
【0088】
本発明によれば、候補操作条件は、好ましくは、溶媒、触媒,温度レベル、圧力レベル、超音波の利用、濃度(反応された物質および/または触媒の)、化学量論比(これらの物質間の)、反応時間、およびそれらの組合せからなる群より選ばれる。
【0089】
したがって、本発明の方法は,たとえば、触媒または温度レベル、または圧力レベルといった単一タイプの操作条件のスクリーニングのため、および、溶媒/触媒、溶媒/触媒/反応時間,温度/圧力、または触媒/温度/圧力の組合せなどといった、異なるタイプの操作条件の組合せのスクリーニングのための双方に使用されることが可能である。
【0090】
上記のおよび下記の本文において、用語「触媒」は、反応媒体中にそれが存在することだけで、反応のカイネティクスを加速することができる、任意の薬剤を意味することが意図される。
【0091】
この触媒は、たとえば、有機化合物、無機塩基,金属、金属塩、金属酸化物またはハイブリッド、有機金属化合物、金属−リガンド複合体、ハロゲン化物、さもなければそれらの組合せなどといった、化学的触媒、および生物学的触媒の双方でよく、後者については非常に多様な形状にあることが可能であり、特に、臓器、組織、細胞、細胞の分画、細胞オルガネラ,酵素抽出物、分子複合体、さもなければ単純な分子、たとえば単離および精製された酵素の形状にある。
【0092】
本発明の方法は、多くの利点を有する。特に:
−直接的にまたはスペーサー基を介して官能基上へグラフトされることが可能な少なくとも一つの分子と、この分子を特異的に認識することおよび、それと結合することが可能な少なくとも一つの抗体とが利用可能である限り、二つの官能基のカップリングから結果として生じる化合物を、後者の如何を問わず、アッセイすることを可能にし;結果として、本発明の方法により,非常に多くのカップリング反応の操作条件をスクリーンすることを可能にするためには、利用可能ないくつかのグラフト可能な分子および、これらの分子に特異的ないくつかの抗体をもつことで充分である;
−種々のタイプの操作条件を、それらが定性的条件であろうと定量的条件であろうと、平行して、または組合せて、同時に検査することを可能にし;
−すべての触媒系と、それらが化学的であろうと生物学的であろうと、適合性であり;
−カップリング反応の最後に、得られた反応媒体を精製することからなる操作を何ら必要とせず;
−カップリング反応の収率を得ることを可能にすることにより、操作条件の影響を定性的に評価することを可能にし;
−10−9Mまでの低濃度の化合物Zの検出を可能にすることが見出されていることから、非常に感度がよく、微量の試薬および溶媒を用いてそれを実現することを可能にし;
−再現性があり;
−実行することが単純であり、費用のかかるおよび/または容易に入手できない装置を何ら必要とせず;
−高速でスクリーニングを実行することが可能であり;したがって、比較的単純な自動化された装置、すなわち固相の洗浄、酵素標識用の基質の分布、酵素/基質反応の読取りを提供するが、他の試薬の分布は提供しない、自動化された装置は、単回の実験で一日に約千回の検査を行なうことを可能にする。それゆえこの速度は、本発明による方法の完全な自動化を可能にする装置を使用することにより、10倍(すなわち1日10,000回のテスト)まで増大されることが可能である。
【0093】
本発明の方法は、それゆえ「ハイスルーアウト」スクリーニンを実行するために特に好適である。
【0094】
本発明の主題はまた、少なくとも二つの官能基のカップリング反応の操作条件をスクリーンする方法を実行するためのキットであって、適当な量の:
−一緒に反応することが意図された少なくとも二つの化合物、
・式E−X−G
[式中、Gは前記少なくとも二つの官能基の一番目を表し、Xは共有結合または第一のスペーサー基を表しており、Eは第一の分子Mの残基を表す]
の第一の化合物;および
・式E−X−G
[式中、Gは前記少なくとも二つの官能基の二番目を表し、Xは共有結合または第二のスペーサー基を表し、Xと同じかまたは異なってよく、Eは、Mとは異なる第二の分子Mの残基である]
の第二の化合物;
−少なくとも二つの抗体:
・第一の分子Mに特異的な第一の抗体ACであり、この抗体は任意に複数の固相へ付着されており;および
・第二の分子Mに特異的な第二の抗体ACであり、この抗体は標識へ結合されており;
−鎖E−X−G−G−X−Eを含んでいる化合物Zであり、X、X、E、およびEは上記と同様の意味を有し、一方G−Gは、前記少なくとも二つの官能基のカップリングから結果として生じる原子団を表しており;さらに、任意に:
−標識を可視化するための試薬、たとえば標識が酵素であれば基質;および
−適当に選ばれた緩衝液(希釈液、洗浄緩衝液など)
を含む。
【0095】
本発明の主題はまた、少なくとも二つの官能基のカップリング反応の操作条件をスクリーンする方法を実行するためのキットであって、適当な量の:
−一緒に反応することが意図された少なくとも二つの化合物、
・式E−X−G
[式中、Gは前記少なくとも二つの官能基の一番目を表し、Xは共有結合または第一のスペーサー基を表しており、Eは第一の分子Mの残基を表す]
の第一の化合物;および
・式E−X−G
[式中、Gは前記少なくとも二つの官能基の二番目を表し、Xは共有結合または第二のスペーサー基を表し、Xと同じかまたは異なってよく、Eは、カップリング剤の存在下に、分子Mに特異的な抗体と一以上の共有結合を形成することのできる基を表す]
の第二の化合物;
−少なくとも一つの抗体、この抗体は分子Mに特異的な前記抗体であり;
−標識へ結合された、分子Mに特異的な前記抗体を含んでいるコンジュゲート;
−鎖E−X−G−G−X−Eを含んでいる化合物Zであり、X、X、E、およびEは上記と同様の意味を有し、一方G−Gは、前記少なくとも二つの官能基のカップリングから結果として生じる原子団を表しており;さらに、任意に:
−標識を可視化するための試薬、
−カップリング剤、
−免疫結合を変性させることができる試薬、および
−適当に選ばれた緩衝液を含む。
【0096】
本発明の主題はまた、スクリーニングのための、特に、二つの官能基間のカップリング反応において有用な触媒の「ハイスループット」スクリーニングのための、前文に定義されたスクリーニング法またはキットの用途である。
【0097】
上記のアレンジメントの他に、本発明はまた、以下の付加的な記述から現れるであろう、他のアレンジメントも含んでおり、それは操作条件の「ハイスループット」スクリーニングのための、その実現性および利点の双方を実証することを可能にした、本発明の方法の態様の実施例に関係する。
【0098】
この付加的な記述は、何ら制限するものではない単なる例証として示されており、添付の図面について言及している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0099】
(実施例1)
本実施例は、本発明の方法の第一の態様を例示しており、これにおいて:
−カップリング反応は、
【0100】
【化9】

【0101】
によって表されるニトロアルドール反応であり:
−スクリーニングは、組合わされた三つのタイプの操作条件、すなわち溶媒のタイプ、触媒のタイプ、および反応時間、に関係しており;かつ
−反応媒体中の化合物Zの濃度は、「サンドイッチ」タイプの固相ELISAアッセイにより測定される。
【0102】
化合物E−X−Gは、以下の式(V):
【0103】
【化10】

【0104】
に相当し、6−ニトロカプロン酸とヒスタミンとのカップリングからの結果として生じる。
【0105】
化合物E−X−G自体は、以下の式(VI)に相当し:
【0106】
【化11】

【0107】
かつ、N−(2−アミノエチル)−3−(4−ホルミルフェニル)プロピオンアミドとホモバニリ酸とのカップリングからの結果として生じる。
【0108】
化合物E−X−GおよびE−X−Gのカップリング反応は:
−二つの候補溶媒:テトラヒドロフラン(THF)および塩化メチレン(CHCl):
−12の候補触媒:フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)、フッ化カリウム(KF)、トリエチルアミン(TEA)、ピリジン(PYR)、ジイソプロピルアミン(DIA)、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ナトリウムメトキシド(NaOMe)、水酸化ナトリウム(NaOH)、および炭酸カリウム(KCO)、および
−4つの候補反応時間:30分、1時間、4時間、および12時間、
を用いて行なわれる。
【0109】
このカップリング反応によって産生された化合物Z(式E−X−G−G−X−Eの)の免疫酵素アッセイは:
−ヒスタミンに向けられたモノクローナル抗体(抗体His−31;Kd:10−9M)、ポリスチレン・マイクロタイトレーション用プレート(300μl/ウエルに等しい容量の)のウエルの壁上に、コーティングにより、すなわちポリスチレン表面における該抗体の受動的な吸着によって固定されている;
−アセチルコリンエステラーゼ(AChE)へ結合された、ホモバニリン酸に向けられたモノクローナル抗体(抗体H6−92;Kd:10−7M)を含んでいるコンジュゲート、
このコンジュゲートは、タラン(Taran)らにより、Clin. Chem. 1997年、第43巻、第2号、p.363−368、[8]において記述されたように調製および貯蔵され;さらに
−可視化剤、固相へ付着された抗体H6−92/AChEのコンジュゲート量を測定するための、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)中の、7.5H10−4Mのヨウ化アセチルチオコリン、および2.5H10−4Mの5,5′−ジチオビス−(2−ニトロ)安息香酸(エルマン(Ellman)試薬)の混合物、
を用いて行なわれる。
【0110】
マイクロタイトレーション用プレートのウエルの壁の表面への抗体His−31の吸着は、100μlのこの抗体溶液(0.05Mリン酸緩衝液(pH7.4)中、5μl/ml)を、これらの各ウエル内へ入れ、プレートを周囲温度において18時間静置することによって得られた。これに続き、ウエルは300μlのEIA緩衝液で洗浄および飽和され、プレートはスコッチテープで覆われ、その使用まで4℃において貯蔵された。
【0111】
そのいくつかの工程が図1に図示されたこの方法は、以下の方法に従って行なわれた。
【0112】
1)方法:
*カップリング反応(図1の工程A):
化合物E−X−Gに存在するヒスタミン残基(残基E)の含窒素環によって保持された第二級アミン官能基を、BOC基(図1のGP)により、また化合物E−X−Gに存在するホモバニリン酸の環(残基E)によって保持されたヒドロキシル官能基を、ジメチルtert−ブチルシリル基(図1のGP)によって保護した後、ポリプロピレン・マイクロタイトレーション用プレートの各ウエル(容量:300μl/ウエル)へ、以下のもの:
−50μlの化合物E−X−Gの5mM有機溶液、
−50μlの化合物G−Y−Eの5mM有機溶液、および
−25μlの候補触媒の1mM有機溶液、
が連続して入れられ、
単一かつ同一の溶媒(THFまたはCHCl)が各ウエルにおいて使用される。
【0113】
マイクロタイトレーション用プレートは、40℃の温度において、インキュベ−ターシェイカー内に置かれ、そこで所望の反応時間にわたって保持される。
【0114】
*カップリング反応の停止および脱保護(図1の工程B):
125μlの純粋なトリフルオロ酢酸(TFA)のウエルへの添加により、カップリング反応は停止され、保護基は除去される。プレートは、周囲温度において15分間振盪される。
【0115】
*反応媒体の希釈(図1の工程C):
各反応媒体は、10μlの該媒体を移し、それをディープウエルプレートのウエル(容量:2ml/ウエル)に収容された1mlのEIA緩衝液(0.1Mリン酸緩衝液;0.15M NaCl;0.1%BSA;0.01%アジ化ナトリウム;pH7.4)へ添加することにより希釈される。
【0116】
この操作は2回繰返され、各反応媒体が10倍に希釈されるようにする。
【0117】
*化合物Zのアッセイ
50μlの各々の希釈された反応媒体は、ウエルの壁が抗体His−31でコートされたマイクロタイトレーション用プレートのウエルに入れられる(図1の工程D)。
【0118】
プレートは、周囲温度において1時間振盪され、次いで、0.05%のツイーン(Tween)(登録商標)20を含む0.01Mのリン酸緩衝液,pH7.4からなる洗浄緩衝液で5回洗浄される(図1の工程E)。
【0119】
次に、50μlのH6−92/AChEコンジュゲートが、5エルマン(Ellman)単位/ml(EU)(1エルマン単位は、25℃において1cmの光路に対し、1単位の吸光度の増加をエルマン試薬に1mlを1分で生じることができる酵素の量として定義される)で、各ウエルへ入れられる(図1の工程F)。
【0120】
プレートは周囲温度において3時間振盪され、次いで洗浄緩衝液で5回洗浄される(図1の工程G)。
【0121】
200μlの可視化試薬(RV)が次に各ウエルへ投入される。プレートは周囲温度において1時間振盪され、その時間の終わりに、各ウエルに含まれる媒体の414nmにおける光学密度(OD)が自動読取り装置によって測定される。
【0122】
そのようにして得られたOD値から、各反応媒体について化合物Zの濃度が基準範囲(吸光度値を化合物Zの濃度へ対応させることを可能にする)を参照して測定され、次いでニトロアルドール反応の収率が、収率を計算するための上記の式によって測定される。
【0123】
2)結果:
結果は、図2において、反応収率(%として表される)が、0と10%の間か、10と30%の間か、30と50%の間か、または50と70%の間であるかによって、白色、ライトグレー、ミディアムグレー、またはダークグレーの円によって記号化された、マトリックスの形状で示されている。
【0124】
このような円は、各々候補反応時間に対応して8行にわたり、また候補触媒に対応して12列にわたって分布され、上の4行はTHF中で行なわれた反応の収率を示しており、下の4行はCHCl中で行なわれた反応の収率を示している。
【0125】
図2は、たとえば、ニトロアルドール反応がTHF中で4時間行なわれる場合、ジアザビシクロオクタン(DABCO)およびジメチルアミノピリジン(DMAP)のみが50%より高い収率を得ることを可能にするのに対し、それがCHCl中で同じ時間行なわれる場合には、フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)の存在下でのみ、かかる収率が得られることを示している。
【0126】
(実施例2)
この実施例は、本発明による方法の第二の態様を例示しており:
−カップリング反応は:
【0127】
【化12】

金属/リガンド
塩基−Cu+1
【0128】
によって表されるソノガシラ反応であり;
−スクリーニングは、組合わされた二つのタイプの操作条件、すなわち,溶媒のタイプおよび触媒のタイプに関係しており;かつ
−反応媒体中の化合物Zの濃度は、「SPIE−IA」タイプの固相免疫酵素アッセイによって測定される。
【0129】
この実施例においては、化合物E−X−Gは以下の式(VII):
【0130】
【化13】

【0131】
に相当し、5−ヘキシン酸とヒスタミンのカップリングからの結果として生じる。
【0132】
化合物E−X−G自体は、以下の式(VIII):
【0133】
【化14】

【0134】
に相当する。
【0135】
化合物E−X−GおよびE−X−Gのカップリングからなる反応は以下を用いて行われる:
−三つの候補溶媒:ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキサイド(DMSO)、およびTHF;
−in situで調製された触媒のライブラリであり、各触媒は:
(1)以下の複合体M1〜M7から選ばれた、金属複合体M:
M1:Pddba
M2:Pd(PPh
M3:Pd(OAc)
M4:PdCl(PPh
M5:PdCl(CCN)
M6:Pd(NH(NO
M7:Ni(acac)、および
(2)以下の23リガンドから選ばれるリガンドL:
・式PR[式中、Rは各々n−ブチル、n−オクチル、t−ブチル、−CH−CH=CH、−CHOH、−CHCHCHOH、−N(CH、フェニル、o−トリル、−CH=CH、o,p−ジ−OCH、またはo−フリル基である]に相当するリガンドL1〜L12;
・式RP(CHPR[式中、Rはメチル基であり、かつnは1または2に等しい(L13,L14)か、またはRはフェニル基であり、かつnは1、2、または4に等しい(L15,L16,L17)]に相当するリガンドL13〜L17;
・リガンド18または式:
【0136】
【化15】

【0137】
のリガンドDIOP;
・式AsPh、および(Ph)As(CHAs(Ph)のヒ素複合体L19およびL20;
・式:
【0138】
【化16】

【0139】
[式中、Rはエチル基であり、R′はメチル基であり(L21);RおよびR′はt−ブチル基であり(L22);RおよびR′は2,6−ジイソプロピルベンゼン基である]に相当するイミダゾリウム、L21〜L23、
(3)ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)およびカリウムt−ブトキシド(tBuOK)から選ばれる塩基、ヨウ化銅(CuI)および銅トリフラート(CuOTf)から選ばれる銅塩の存在下、
の間の組合せに相当する。
【0140】
カップリング反応によって産生された化合物Z(式E−X−G−G−X−Eの)の免疫酵素アッセイは:
−ヒスタミンに向けられたモノクローナル抗体(抗体His−76;Kd:10−8M)であり、ポリスチレン・マイクロタイトレーション用プレート(容量:300μl/ウエル)のウエルの壁上に、コーティングにより、実施例1に記述されたものと同様の技術によって固定されている;
−アセチルコリンエステラーゼ(AChE)へ結合された、該抗体を含んでいるコンジュゲート;および
−実施例1で記述された、固相へ付着されたHis−76/AChEコンジュゲートの量を測定するための可視化剤、
を用いて行なわれる。
図3に図式的に示された方法の様々な工程は、以下の手続きに従って実行される。
【0141】
1)方法
*カップリング反応(図3の工程A):
化合物E−X−Gに存在するヒスタミン残基A(残基E)の含窒素環によって保持されたアミン官能基、および化合物E−X−Gのアミン官能基を、BOC基で保護した後(図3のGP)、ポリプロピレン・マイクロタイトレーション用プレートの各ウエル(等しい容量:300μl/ウエル)へ、不活性雰囲気下に、以下のもの:
−5μlの溶媒または、金属複合体Mの16mM有機溶液、
−5μlの溶媒または、リガンドLの32mM有機溶液、
−25μlの、160mMの化合物E−X−G、6.4mMの銅塩、480mMの塩基を含む有機溶液、および
−5μlの、化合物E−X−Gの800mM有機溶液、
が連続的に入れられ、
単一かつ同一の溶媒(DMF、DMSO、またはTHF)が各ウエルにおいて使用される。
【0142】
プレートは、25℃の温度において、インキュベ−ターシェイカー内に置かれ、そこで24時間保持される。
【0143】
*カップリング反応の停止および脱保護(図3の工程B):
40μlの純粋なトリフルオロ酢酸(TFA)の各ウエルへの添加により、カップリング反応は停止され、BOC基は除去される。プレートは、周囲温度において1時間振盪される。
【0144】
*反応媒体の希釈(図3の工程C):
各反応媒体は、10μlの該媒体を移し、それをディープウエルプレートのウエル(容量:2ml/ウエル)に収容された1mlのEIA緩衝液へ添加することにより希釈される。
【0145】
この操作は2回繰返され、各反応媒体が10倍に希釈されるようにする。
【0146】
*化合物Zのアッセイ
100μlの各々の希釈された反応媒体は、ウエルの壁が抗体His−76でコートされたマイクロタイトレーション用プレートのウエルに入れられる。
【0147】
プレートは、周囲温度において1時間振盪され、次いで、0.05%のツイーン(Tween)(登録商標)20を含む0.01Mのリン酸緩衝液,pH7.4からなる洗浄緩衝液で5回洗浄される(図3の工程D)。
【0148】
次に、100μlの0.1Mホウ酸緩衝液(pH9)、および10μlの、DMF中10mg/mlのスベリン酸ジスクシンイミジル(DSS)が各ウエルへ入れられる。
【0149】
プレートは周囲温度において15分間振盪され、次いで洗浄緩衝液で5回洗浄される(図3の工程E)。
【0150】
150μlの1N NaOHが次に各ウエルへ投入され、反応を見るために周囲温度において5分間放置される。この時間の終わりに、プレートは洗浄緩衝液で5回洗浄される(図3の工程F)。
【0151】
100μlの、1エルマン単位/mlのHis−76/AChEコンジュゲート溶液が各ウエルへ投入され、プレートは周囲温度において1時間振盪され、次いで洗浄緩衝液で5回洗浄される(図3の工程G)。
【0152】
固相へ付着されたコンジュゲートの量を測定するため、方法は実施例1と同様に行なわれ、414nmにおける光学密度(OD)の測定は、酵素反応の30分または1時間後に行なわれる。
【0153】
そのようにして得られたOD値から、各反応媒体について化合物Zの濃度が基準範囲を参照して測定され、次いでソノガシラ反応の収率が、上記の実施例1において使用されたものと同様の式によって測定される。
【0154】
2)結果:
単なる例として、結果のいくつかが図4において、反応収率(%として表される)が、0と10%の間か、10と20%の間か、20と30%の間か、30と40%の間か、または40と50%の間であるかによって、白色からダークグレーまでの円によって記号化された、マトリックスの形状で示されている。
【0155】
これらの円は、8行にわたり、1番目は金属複合体Mの不在(M0の行)に、他の7つ金属複合体M1〜M7のうちの一つに相当して、また24列にわたり、1番目はリガンドLの不在(L0の列)に、他の23列はリガンドL1〜L23に相当して分布されている。
【0156】
図4に示された結果は、溶媒としてDMFを、塩基としてDIEAを、銅塩としてヨウ化銅を、2%の金属M、および4%のリガンドLを用いて得られたものである。
【0157】
これらの結果を考慮すれば、パラジウムと組合わされた場合、二つのリガンド(L12およびL19)が最も有効であるとわかることが注目されてよい。
【0158】
(参考文献)

【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】本発明のスクリーニング法の第一の態様の種々の工程を、図式的に表した図である。
【図2】図1に例示された本発明の方法の第一の態様によって行なわれた操作条件のスクリーニングの結果を、%として表された反応収率で示す図である。
【図3】本発明の方法の第二の態様の種々の工程を、図式的に表した図である。
【図4】図3に例示された本発明の方法の第二の態様によって行なわれた操作条件のスクリーニングの結果を、%として表された反応収率で示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二つの官能基のカップリング反応の操作条件をスクリーニングする方法であって、以下の工程:
i)少なくとも二つの化合物:
・式E−X−G
[式中、Gは前記少なくとも二つの官能基の一番目を表し、Xは共有結合または第一のスペーサー基を表しており、一方Eは第一の分子Mの残基を表し、それに対して第一の特異抗体ACが利用可能である]
の第一の化合物、および
・式E−X−G
[式中、Gは前記少なくとも二つの官能基の二番目を表し、Xは共有結合または第二のスペーサー基を表しており、Xと同じかまたは異なってよく、一方Eは、Mとは異なる第二の分子Mの残基であって且つこれに対しては第二の特異抗体ACが利用可能であるか、あるいはカップリング剤の存在下に抗体ACと少なくとも一つの共有結合を形成することができる基を表す]
の第二の化合物、
を一緒に反応させる工程であって;
前記少なくとも二つの化合物が、一つの溶媒中の溶液中で、あらかじめ操作された条件下に反応させられており、少なくともその一つは、反応媒体および、鎖E−X−G−G−X−Eを含んでいる化合物Zのこの媒体における形成を得るための、候補操作条件であって、これにおいてX、X、E、およびEは上記と同様の意味を有し、一方G−Gは、前記少なくとも二つの官能基のカップリングから結果として生じる原子団を表しており;
ii)反応媒体中の化合物Zの濃度を、あらかじめ決められた反応時間tにおいて、少なくとも抗体ACを用いた少なくとも一つのイムノアッセイによって測定する工程;および
iii)そのようにして測定された化合物Zの濃度を用いて、前記カップリング反応に対する候補操作条件の影響を評価する工程、
を含む方法。
【請求項2】
前記カップリング反応が、エステル化反応、アミド反応、アルドール反応およびニトロアルドール反応、ヘック反応、ベイリス・ヒルマン反応、マイケル反応、メタセシス反応、ディールス・アルダー反応、ソノガシラ反応、スズキ反応、クマダ反応、スティール反応、ヒヤマ反応、リーベスキンド・スログル反応、マンニッヒ反応、ハンチュ反応、ボシオらの反応、ウギ反応、およびそれらの変形からなる群から選ばれる、請求項1の方法。
【請求項3】
またはEがヒスタミン残基を表す、請求項1または請求項2の方法。
【請求項4】
またはEがホモバニリン酸残基を表す、請求項1または請求項2の方法。
【請求項5】
またはEが、以下の式(III):
【化1】

[式中、Rは水素原子か、または保護基を表す]
に相当する、請求項3の方法。
【請求項6】
またはEが、以下の式(IV):
【化2】

[式中、Rは水素原子か、または保護基を表す]
に相当する、請求項5の方法。
【請求項7】
が、アミン、カルボン酸、アルデヒド、チオール、フェノール、アルケニルおよびアジド基、および光活性化可能な基から選ばれる基を表す、請求項1または請求項2の方法。
【請求項8】
が、アミンまたはチオール基を表す、請求項7の方法。
【請求項9】
化合物Zのための前記少なくとも一つのイムノアッセイが固相アッセイである、請求項1〜8のいずれか一項の方法。
【請求項10】
が、分子Mの残基に相当することから、工程ii)が以下の工程:
)反応時間tにおいて得られた反応媒体を、その上に第一の抗体ACが固定されている固相と接触させ、この抗体とこの化合物の残基Eとの間の免疫結合により、この固体相への化合物Zの付着を得る工程;
)固相を、標識へ結合された第二の抗体ACを含んでいるコンジュゲートと接触させ、前記第二の抗体ACと、前記固相へ付着された化合物Zの残基Eとの間の免疫結合により、該コンジュゲートの、該固相への付着を得る工程;
)抗体ACに結合された標識により、固相へ付着されたコンジュゲートの量を測定する工程;および
)そのようにして測定されたコンジュゲートの量から、前記時間tにおける反応媒体中の化合物Zの濃度を、基準範囲において測定する工程;
を含んでおり、
前記工程ii)がまた、工程a)とb)の間、および工程b)とc)の間に、固相を洗浄することからなる一以上の操作も含んでいる、請求項1〜6のいずれか一項の方法。
【請求項11】
が、第一の抗体ACと少なくとも一つの共有結合を形成することができる基に相当することから、工程ii)が以下の工程:
)反応時間tにおいて得られた反応媒体を、その上に第一の抗体ACが固定されている固相と接触させ、該抗体と該化合物の残基Eとの間の免疫結合により、該固相への化合物Zの付着を得る工程;
)カップリング剤を、前記固相上に固定された第一の抗体ACおよび、該固相へ付着された化合物Zの基Eと反応させ、該抗体と該基との間に一以上の共有結合の形成を得る工程;
)前記固相上に固定された第一の抗体ACと、前記固相へ付着された化合物Zの残基Eとの間に存在する免疫結合を変性させ、該固相から該残基を放出する工程;
)前記固相を、標識へ結合された第一の抗体ACを含んでいるコンジュゲートと接触させ、前記抗体と、そのように放出された化合物E−X−G−G−Y−Eの残基Eとの間の免疫結合により、該固相への該コンジュゲートの付着を得る工程;
)抗体ACに結合された標識により、前記固相へ付着されたコンジュゲートの量を測定する工程;および
)そのようにして測定されたコンジュゲートの量から、前記時間tにおける反応媒体中の化合物Zの濃度を、基準範囲において測定する工程;
を含んでおり、
前記工程ii)がまた、工程a)とb)の間、b)とc)の間、c)とd)の間、およびd)とe)の間、に、固相を洗浄することからなる一以上の操作も含んでいる、請求項1、2、7、または8のいずれか一項の方法。
【請求項12】
前記第一の抗体ACがモノクローナル抗体である、先行する請求項のいずれか一項の方法。
【請求項13】
前記第二の抗体ACがモノクローナル抗体である、請求項1〜6または10のいずれか一項の方法。
【請求項14】
前記固相が、その上に前記第一の抗体ACが吸着されている、マイクロタイトレーション用プレートのウエルの壁である、先行する請求項のいずれか一項の方法。
【請求項15】
前記標識が酵素、好ましくはアセチルコリンエステラーゼである、請求項10または請求項11の方法。
【請求項16】
前記工程i)およびii)の間に、反応媒体の希釈からなる操作を含んでいる、先行する請求項のいずれか一項の方法。
【請求項17】
前記カップリング反応の収率が、反応媒体中の化合物Zの濃度から測定される、先行する請求項のいずれか一項の方法。
【請求項18】
前記カップリング反応が、2、3、または4個の官能基のカップリングからなる、先行する請求項のいずれか一項の方法。
【請求項19】
前記カップリング反応が二つの官能基GおよびGのカップリングからなり:
−工程i)において、式E−X−GおよびE−X−Gの化合物は一緒に反応され、前記反応媒体中で、式E−X−G−G−X−E
[式中、X、X、E、およびEは上記と同様の意味を有し、G−Gは前記官能基GおよびGの間のカップリングから結果として生じる原子団を表す]
に相当する化合物Zの形成が得られ、一方
−工程ii)において、前記反応媒体中の化合物Zの濃度は、単一のイムノアッセイによって測定される、
請求項18の方法。
【請求項20】
前記カップリング反応が三つの官能基G、G、およびGのカップリングからなり:
−工程i)においては、式E−X−GおよびE−X−Gの化合物は、式E−X−G
[式中、Xは共有結合か、または第三のスペーサー基を表し、Xおよび/またはXと同じかまたは異なってよく、一方Eは、MおよびMとは異なる第三の分子Mの基であり,それに対して第三の特異抗体ACが利用可能であるか、あるいは、カップリング剤の存在下に抗体ACと共有結合を形成することが可能な基を表すが、Eがすでにかかる基を表していることはないという条件下である]
の第三の化合物と反応され、前記反応媒体中で、以下の式:
【化3】

[式中、X、X、X、E、E、およびEは、上記と同様の意味を有し、かつ
【化4】

は、前記官能基G、G、およびGのカップリングから結果として生じる原子団を表す]
の一つに相当する化合物Zの形成を得るようにし;一方
−工程ii)においては、反応媒体中の化合物Zの濃度が、二つの異なるイムノアッセイにより測定される、
請求項18の方法。
【請求項21】
前記カップリング反応が4つの官能基G、G、G、およびGのカップリングからなり:
−工程i)においては、式E−X−GおよびE−X−Gの化合物は、前文に定義された式E−X−Gの第三の化合物と、および式E−X−G
[式中、Xは共有結合か、または第4のスペーサー基を表し、X、Xおよび/またはXと同じかまたは異なってよく、一方Eは、M、M、およびMとは異なる第四の分子Mの残基であり,それに対して第四の特異抗体ACが利用可能であるか、あるいは、カップリング剤の存在下に抗体ACと共有結合を形成することが可能な基を表すが、E、およびEがすでにかかる基を表していることはないという条件下である]
の第4の化合物と反応され、
前記反応媒体中で、以下の式:
【化5】

[式中、X、X、X、X、E、E、E、およびEは、上記と同様の意味を有し、かつ
【化6】

は、前記官能基G、G、G、およびGのカップリングから結果として生じる原子団を表す]
の一つに相当する化合物Zの形成を得るようにし;一方
−工程ii)においては、前記反応媒体中の化合物Zの濃度が、三つの異なるイムノアッセイにより測定される、
請求項18の方法。
【請求項22】
前記候補操作条件が、溶媒、触媒,温度レベル、圧力レベル、超音波の利用、濃度、化学量論比、反応時間、およびそれらの組合せからなる群より選ばれる、先行する請求項のいずれか一項の方法。
【請求項23】
前記候補操作条件が触媒である、先行する請求項のいずれか一項の方法。
【請求項24】
少なくとも二つの官能基のカップリング反応の操作条件をスクリーンする方法を実行するためのキットであって、適当な量の:
−一緒に反応することが意図された少なくとも二つの化合物、
・式E−X−G
[式中、Gは前記少なくとも二つの官能基の一番目を表し、Xは共有結合または第一のスペーサー基を表しており、Eは第一の分子Mの残基を表す]
の第一の化合物;および
・式E−X−G
[式中、Gは前記少なくとも二つの官能基の二番目を表し、Xは共有結合または第二のスペーサー基を表し、Xと同じかまたは異なってよく、Eは、Mとは異なる第二の分子Mの残基である]
の第二の化合物;
−少なくとも二つの抗体:
・第一の分子Mに特異的な第一の抗体ACであり、該抗体は任意に複数の固相へ付着されており;および
・第二の分子Mに特異的な第二の抗体ACであり、該抗体は標識へ結合されており;
−鎖E−X−G−G−X−Eを含んでいる化合物Zであり、X、X、E、およびEは上記と同様の意味を有し、一方G−Gは、前記少なくとも二つの官能基のカップリングから結果として生じる原子団を表しており;さらに、任意に:
−標識を可視化するための試薬、たとえば標識が酵素であれば基質;および
−適当に選ばれた緩衝液、
を含むキット。
【請求項25】
少なくとも二つの官能基のカップリング反応の操作条件をスクリーンする方法を実行するためのキットであって、適当な量の:
−一緒に反応することが意図された少なくとも二つの化合物、
・式E−X−G
[式中、Gは前記少なくとも二つの官能基の一番目を表し、Xは共有結合または第一のスペーサー基を表しており、Eは第一の分子Mの残基を表す]
の第一の化合物;および
・式E−X−G
[式中、Gは前記少なくとも二つの官能基の二番目を表し、Xは共有結合または第二のスペーサー基を表し、Xと同じかまたは異なってよく、Eは、カップリング剤の存在下に、分子Mに特異的な抗体と一以上の共有結合を形成することのできる基を表す]
の第二の化合物;
−少なくとも一つの抗体、この抗体は分子Mに特異的な前記抗体であり;
−標識へ結合された、分子Mに特異的な前記抗体を含んでいるコンジュゲート;
−鎖E−X−G−G−X−Eを含んでいる化合物Zであり、X、X、E、およびEは上記と同様の意味を有し、一方G−Gは、前記少なくとも二つの官能基のカップリングから結果として生じる原子団を表しており;さらに、任意に:
−標識を可視化するための試薬、
−カップリング剤、
−免疫結合を変性させることができる試薬、および
−適当に選ばれた緩衝液、
を含むキット。
【請求項26】
請求項1〜23のいずれか一項のスクリーニング法の、または、請求項24または請求項25のキットの、スクリーニングのための、特に、二つの官能基間のカップリング反応において有用な触媒の「ハイスループット」スクリーニングのための用途。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−527367(P2007−527367A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505875(P2006−505875)
【出願日】平成16年4月13日(2004.4.13)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050158
【国際公開番号】WO2004/092729
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(590000514)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (429)
【Fターム(参考)】