説明

化学修飾タンパク質組成物及び方法

本発明は、広くはタンパク質修飾の分野に関し、より詳細には、水溶性ブロックポリマー、薬剤へのこれらの結合、及びこれらを製造する方法及びこれらの使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くはタンパク質修飾の分野に関し、より詳細には、水溶性ブロックポリマー、薬剤へのこれらの結合、及びこれらを製造する方法及びこれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤への水溶性ポリマーの結合は、分子の溶解度、耐久性及び有効性の増強を提供することができる。例えばタンパク質をポリマーに結合するとき、この修飾は、立体相互作用を通して物理的接触をブロックし、分解を防ぐことによってタンパク質分解を阻止し得る。付加的な利点は、ある種の状況下で、薬剤の安定性と循環時間を上昇させること及び免疫原性を低下させることを含む。
【0003】
薬剤への結合のために最も一般的に使用される水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(「PEG」)である。「PEG化する(PEGylate)」という用語は、少なくとも1個のPEG分子の第二分子への結合を意味するようになった。PEG分子は、構造内の反復単位の数に基づいて大きさが異なり、典型的には分子量で表わされ、例えば数百ダルトンから40−50キロダルトン又はそれ以上である。
【0004】
PEG化は治療タンパク質の血清半減期を延長することができ、これによってこの効果期間を上昇させ、投与頻度を低下させ得る。PEGがタンパク質ベースの薬剤の血清半減期を上昇させる1つの機構は、タンパク質分解から保護することによる、Sadaら、J.Fermentation Bioengineering 71:137−139(1991)。実際に、レプチンのN末端における1個の20kDaポリエチレングリコール(PEG)ポリマーによる化学修飾は、非修飾天然タンパク質に比べて投与すべきレプチンの必要量の低下を生じさせ、溶解度を上昇させる;例えばPCT国際公開公報第WO96/40912号参照。総説については、Abuchowskiら、Enzymes as Drugs.(J.S.Holcerberg and J. Roberts,eds.pp.367−383(1981))参照。
【0005】
実際に、PEGはいくつかの市販の治療タンパク質に結合されており、この例は、重症複合免疫不全症を治療するためのPEG−アデノシンデアミナーゼ(Adagen(登録商標));好中球減少症を治療するためのNeulasta(商標)(ペグフィルグラスチム);Definity(登録商標)Vial(ペルフルトレン脂肪ミクロスフェア)注射用懸濁液(PEG);先端巨大症を治療するためのSomavert(登録商標)(ペグビソマント);急性リンパ芽球性白血病又は非ホジキンリンパ腫の治療のためのPEG−L−アスパラギナーゼ(Oncaspar(登録商標));及び肝炎を治療するためのPEGASYS(登録商標)(ペグインターフェロンα−2a)及びPEG−INTRON(登録商標)(ペグインターフェロンα−2b)を含む。
【0006】
しかし、このような化学修飾に関連した制限がある。例えば慢性適用における及び/又は比較的多量でのこれらの結合体の使用は、分解に対する抵抗性の故に高分子量ポリマーの蓄積をもたらし得る。加えて、PEG−薬剤結合体は、高用量で長期にわたって定期的に投与したとき腎空胞に蓄積することが認められた;例えばConoverら、Artificial Organs,21(5):369−378(1997);Bendeleら、Toxicological Sciences,42:152(1998)参照。このような空胞が個人の健康に有害であるかどうかは不明であるが、薬剤投与は関連するいかなる異常も伴わないことが好ましい。そこで、薬剤に結合した水溶性ポリマーを得ることは、この水溶性ポリマーが、例えば腎空砲の形成によって測定したとき、望ましくない蓄積を伴わずに患者の体内から排出される場合、有益である。
【発明の開示】
【0007】
本発明は、不安定結合基によって連結された水溶性ブロックポリマー、これらを製造する方法及びこれらを使用する方法に関する。従って、本発明の1つの態様は、リンカーを通してもう1つ別の同じ(ブロックホモポリマー)又は異なるポリマー(ブロックコポリマー)に共有結合されたポリマー及びこれらを使用するための方法を含み、該ポリマー−リンカー構造は、必要とされるブロックポリマー長を達成するためにもう1つ別のポリマー−リンカーに繰り返し結合することができる。1つの実施形態では、Aはポリマーを表わし、Bはリンカーを表わす。従って、ブロックホモポリマーは(A−B)[式中、nは反復単位の所望数を表わす整数である]の構造を有する。
【0008】
別の実施形態では、1個のポリマーをAで表わし、リンカーをBで表わし、第二の異種ポリマーをCで表わす。このブロックコポリマーの例では、ポリマー全体では、所望A−B又はC−B単位を交換可能に含むことができ、これらの単位は交代することができ、例えばnが1−1,000である(A−B−C−B−)又はブロックコポリマーは、このポリマー内で互いに対して可変数の各ポリマー型を有し得る。
【0009】
別の実施形態では、不安定リンカーは、水溶性ポリマーの内部分子結合よりも加水分解及び/又はタンパク質分解を受けやすい。従って、薬剤に結合した水溶性ブロックポリマーは、反復して及び/又は慢性的に投与されたとき、例えばPEG化後に、伝統的水溶性ポリマーへの結合によって提供される利点と一致する血清半減期延長及び/又は抗原性低下を示すが、腎空胞形成によって測定される望ましくない蓄積を低減又は排除する。
【0010】
以下でより詳細に述べるように、本発明は、タンパク質又はこの類似体を含む薬剤を化学修飾することに関する多くの態様を有する。ある態様では、本発明は、治療タンパク質に結合した水溶性ブロックポリマーの結合に関する。特定態様では、タンパク質治療薬は、レプチン、可溶性腫瘍壊死因子受容体(sTNFR)及びL1−7と称されるペプチドから選択される。
【0011】
ここで使用する、水溶性ブロックポリマーは、500ダルトンから3,000ダルトンまでのより小さなポリマーフラグメントと、分解に対して加水分解的又はタンパク質分解的に感受性である、ポリマーブロックの間のリンカーから構築される。代表的ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)であり、代表的結合はアミド基を通した結合である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
ポリエチレングリコール(PEG)などの水溶性ポリマーと薬剤、特にタンパク質治療薬の結合は、抗原性の低下及び血清半減期の延長を含む重要な治療上の恩恵を与える。しかし、より高い分子量のポリマー、例えば5kDa以上のPEGの慢性又は高用量投与は、例えば腎空胞におけるポリマーの蓄積によって測定したとき、被験者からの排泄遅延をもたらし得る。
【0013】
これに対し、より低い分子量形態のポリマー、例えば2kDa未満のPEGは、腎空砲に蓄積されることなく血清から清掃されることが発見された。実際に、PEGの分子量が高くなると共に空胞形成が上昇する傾向がある(図1)。これらの実験において、様々な分子量、すなわち1、2及び20kDaのPEGの等量をレプチン分子にモノPEG化したとき、腎空胞形成を誘発した2及び20kDaのPEG−レプチン結合体と異なり、1kDaのPEG−レプチン結合体だけは測定可能な腎空胞形成を示さなかった。分子量傾向はこれらのポリPEG化レプチンに関しても当てはまり、またレプチンを1kDa PEGで多重PEG化したとき、腎空胞スコアはPBS対照又は非修飾レプチンに比肩し得た。さらに、1kDa PEG化レプチンは、インビボでレプチンと等しい活性を有し、生理的pHでより可溶性であり、高濃度で注射部位反応を引き起こさず、腎空胞形成の証拠を示さないことが認められた。しかし、より小さいPEG、例えば5kDa未満のPEGを薬剤に結合したときは、より大きなPEG結合体、例えば20kDa PEGの結合体に関して認められるような血清半減期上昇は提供されない。
【0014】
そこで、発明者は、約1kDaを有する水溶性分子のブロックを、総ブロックポリマーの大きさが10kDa以上であるように、不安定結合を通して同種又は異種ブロックのいずれかに連結することによって血清半減期が上昇することを発見した。重要な点として、この上昇は非ブロックポリマーへの結合に比肩し得るものであり、従来のPEG化タンパク質の慢性投与で認められる腎空胞形成は低減するか又は排除される。
【0015】
従って、本発明は、ブロックポリマー、これらの分子を製造し、使用する方法、及び薬剤に結合したブロックポリマーに関する。本発明のブロックポリマーは、高分子量ポリマーの薬理的恩恵、例えば血清半減期上昇及び免疫原性低下を示すが、より分解性であり、従って望ましくない性質を有さないと考えられる。以下で述べる、本発明のブロックポリマーの一例に結合した薬剤の実施例が提供され、これらは、20kDa PEGによってN末端でモノPEG化されている治療分子と同様の薬物動態学的特性を有する。しかし、水溶性ブロックポリマー結合分子は、20kDaポリマーでPEG化されたものと異なり、慢性投与時に腎空胞の形成を誘発する傾向が低いことをさらに明らかにする。
【0016】
ブロックポリマーの大きさは、好ましくは約10から50kDa、より好ましくは約15から40kDa、さらに一層好ましくは約15から30kDaであり、代表的な大きさは20kDaである。種々の水溶性ポリマーは性質に関して多少の変動性を有し、従って理想的な大きさは結合する薬剤との使用に応じて決定される必要があることは、当業者には容易に了解される。理想的組成物及びまた、ブロックポリマー中のブロックの大きさ及びブロックポリマーの大きさを決定するための実験は、ここでの開示に照らすと単なる常套的な実験である。
【0017】
ここで使用するとき、「不安定結合」は、水溶性ポリマーにおいて認められる通常の分子結合よりもプロテアーゼ又は加水分解のいずれかによる破壊に対してより感受性であることと理解される。
【0018】
本ブロックポリマー組成物に関しては、様々な水溶性ポリマー(分子量、分枝等別に)、反応混合物中の水溶性ポリマー対薬剤分子の比率、実施する結合反応の種類、選択した結合薬剤を入手する方法、及び使用する薬剤の種類から選択し得る。
【0019】
ブロックポリマーは、これが結合する薬剤が生理環境などの水性環境において沈殿しないように、水溶性であるべきである。ポリマーは分枝又は非分枝のいずれでもよい。好ましくは、最終生成物製剤の治療用途のために、ポリマーは医薬的に許容可能である。当業者は、ポリマー/タンパク質結合体が治療的に使用されるかどうか、もしそうであれば、所望用量、循環時間、タンパク質分解に対する抵抗性この他のような配慮に基づいて所望ポリマーを選択することができる。
【0020】
薬剤への結合に適する典型的な水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸、デキストラン又はポリ(n−ビニルピロリドン)、プロピレングリコールホモポリマー、プロピレンオキシド/エチレンオキシドポリマー、ポリオキシエチル化ポリオル及びポリビニルアルコールを含むが、これらに限定されない。これらのポリマー−薬剤結合体製剤のいくつかは、改善された薬理的性質、例えば血清半減期の延長、改善された安定性、溶解度を有することが示されており、及び/又は免疫原性の低下も認められた(Trakasら、J.Neuroimmunology,120(1−2):42−9(2001))。
【0021】
本発明のブロックポリマー中のブロックのために有用な水溶性ポリマーに関して、分子量は約500ダルトンから約3000ダルトンの間である。ここで使用するとき、「約」という用語は、水溶性ポリマーの製剤において、一部の分子は指定分子量よりも重く、また別の分子はより軽いこと、及び指定分子量は単に製剤からとった平均であることを示す。所望治療プロフィール(例えば所望する持続放出の期間、もしあれば、生物活性への作用、取り扱いの容易さ、抗原性及び治療タンパク質又は類似体へのポリエチレングリコールの他の公知の作用の程度又は欠如)に依存して、他の大きさも使用し得る。従って、約500、約600、約700、約800、約900、約1,000、約1,100、約1,200、約1,300、約1,400、約1,500、約1,600、約1,700、約1,800、約1,900、又は約2,000のポリマーが本発明に従って使用できると考えられる。以下の実施例は、精製の容易さのため及び適切なモデル系を提供するために選択した、PEG1000の使用を含む。
【0022】
特定実施形態では、本発明の水溶性ポリマーは、薬剤のための担体として有用なPEGベースのブロックポリマーである。この実施例では、アミド基によって連結されたブロックポリマーを生産するための二官能性低分子量PEGジアミン(すなわち3,000ダルトン未満)と二官能性酸の1段階重付加重合によってポリマーを合成することができる。チオール反応性ポリマー末端基は、マレイミドプロピオン酸NHSエステルとアミノ末端基の反応によって形成した。
【0023】
1つの実施形態では、本発明のポリマー中のリンカーは、二塩基酸、例えばオキサリルクロリドである。より特定すると、1つの実施例ではブロックポリマー−薬剤結合体は、以下の式:R’−[−HN−(CHCHO)−CHCHNH−C(=O)−C(=O)−]−NH−R−NHC(=O)CHCH−マレイミド−S−薬剤[式中、R’はマレイミドなどの二官能基であり、Rはスペーサー分子であって、炭素、メチレン又は分子の構造及び機能を妨げない他の何らかの基であり得、nは10から500であり、及びxは5から25である]を有する。
【0024】
別の実施例では、ブロックポリマー−不安定リンカーは、式:R’−CHCHC(=O)NH−R−NH−C(=O)(CHC(=O)−[−O(CHCHO)−CHCHO−C(=O)(CHC(=O)−]−NH−R−NH−C(=O)CHCH−マレイミド−薬剤[式中、薬剤はタンパク質又はペプチドであり得、式中、xは1−1000であり、及びRとR’は結合基である。別の実施形態では、ブロックポリマーは、以下の式:R−[−C(=O)−PEG1K−C(=O)−NH−PEG1K−NH−]−C(=O)−CHCH−マレイミド−s−薬剤[式中、nは3から30、より好ましくは5から25、より好ましくは7から20、最も好ましくは10−15である]を有する。どちらの場合もR基は適切なキャッピング基であり得る。これらの実施例のどちらにおいても、マレイミドを薬剤上の遊離チオールと反応させて、薬剤とのチオエーテル結合を形成する。本発明のポリマーは、このポリマーが結合するシステイン残基を含むタンパク質である薬剤に結合すると考えられる。
【0025】
以下の実施例では、PEGベースのブロックポリマーを、ブロックポリマー−薬剤結合体を生産するために可溶性腫瘍壊死因子受容体(sTNFR)、ペプチドL1−7、及び遊離システインを含むレプチン分子に結合した。しかし、本発明のポリマーは、これらがポリマーと結合するための適切な連結基を有する限り、タンパク質、ペプチド(例えば精製天然、組換え、融合、突然変異又は合成タンパク質及び/又はペプチド)を含むいかなる治療分子、又は他の分子にも結合できることは了解される。
【0026】
ここで有用なタンパク質及びペプチドの代表的な例は、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、エリスロポエチン(EPO)、IgG1、IgG2及び他のアイソタイプを含む抗体、B1アンタゴニストペプチド、インスリン、ガストリン、プロラクチン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄体化ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、モチリン、インターフェロン(α、β、γ)、インターロイキン(IL−1からIL−12)、腫瘍壊死因子(TNF)、腫瘍壊死因子結合タンパク質(TNF−bp)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、グリア由来神経栄養因子(GDNF)、神経栄養因子3(NT3)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、神経栄養増殖因子(NGF)、オステオプロテグリン(破骨細胞形成抑制因子)(OPG)などの骨成長因子、インスリン様増殖因子(IGF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、巨核球由来増殖因子(MGDF)、角質細胞増殖因子(KGF)、トロンボポエチン、血小板由来増殖因子(PGDF)、コロニー刺激増殖因子(CSF)、骨誘導因子(BMP)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ及びカリクレインを含むが、これらに限定されない。
【0027】
PEGなどの水溶性ポリマーの結合に適用できる方法は、ここで述べるブロックポリマーの結合にも適することが理解される。そこで、一般に、ポリエチレングリコールのような水溶性分子は、薬剤上に認められる反応基によって薬剤に結合される。リシン残基上又はタンパク質のN末端などのアミノ基はこのような結合のために好都合である。例えばRoyer(米国特許第4,002,531号、上記)は、酵素へのポリエチレングリコール分子の結合のために還元的アルキル化を使用したと述べている。欧州特許第0 539 167号は、遊離アミノ基を有するペプチド及び有機化合物をPEGの中間誘導体又は関連水溶性有機ポリマーで修飾することを述べている。1990年2月27日発行のShawへの米国特許第4,904,584号は、反応性アミン基によるポリエチレングリコール分子の結合のためのタンパク質中のリシン残基の数の修飾に関する。
【0028】
水溶性ポリマーの結合のための付加的な方法も使用可能である。例えば米国特許第4,179,337号;及び米国特許第4,002,531号参照。米国特許第5,824,784号は、N末端モノペグ化タンパク質を開示しており、「N末端モノペグ化」は、タンパク質部分がN末端で1個のポリエチレングリコール部分に結合していることを表わし、前記タンパク質は、中でも特に、長い血清半減期及び改善された安定性を示す。
【0029】
さらに別の実施形態では、薬剤を2個以上のポリマーに結合する。そこで、様々な数のブロックポリマー部分を薬剤に結合し得る(すなわち、ジ−、トリ−、テトラ−等)。同様に、ポリマー−薬剤結合体の組合せを混合物として組合せてもよい。
【0030】
欧州特許第0 401 384号は、ポリエチレングリコール分子が結合したG−CSFを作製するための材料及び方法を述べる。G−CSF及びコンセンサスインターフェロンを含む治療タンパク質のN末端特異的PEG化の一般的方法は、米国特許第5,985,265号の中で教示される。加えて、ペグ化IL−6は、IL−6に結合したポリエチレングリコール分子を開示する米国特許第5,264,209号において教示される。さらに、国際公開公報第WO/8503868号は、リンホカインをポリエチレングリコールのアルデヒドと反応させることを報告している。
【0031】
一般に、本発明の実施において有用な薬剤は、化学合成手順から又は天然哺乳生物から又は選択的に、ゲノム又はcDNAクローニング又はDNA合成によって得られる外来性DNA配列の原核又は真核生物宿主発現から単離された形態であり得る。適切な原核生物宿主は、様々な細菌(例えば大腸菌)を含み、適切な真核生物宿主は、酵母(例えばサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae))及び哺乳動物細胞(例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞、サル細胞)を含む。例えば細胞において発現される外来性DNA配列の産物であるタンパク質は、発現の結果として、α−アミノ基を有するN末端メチオニル残基を有し得る。上記で指摘したように、ペプチドミメティック及び他の修飾タンパク質と同様に、ペプチドが包含される。使用する宿主細胞に依存して、タンパク質の発現産物は哺乳動物又は他の真核生物炭水化物でグリコシル化され得るか、又は非グリコシル化され得る。
【0032】
タンパク質発現産物はまた、初期メチオニンアミノ酸残基(−1位)を含んでもよく、成熟形態へと翻訳後切断され得る、例えばシグナルペプチドを含む分泌タンパク質は切断されたシグナルペプチドを有し得る。タンパク質類似体及び非天然タンパク質、例えばコンセンサスインターフェロンも、米国特許第5,824,784号及び同第5,985,265号に述べられている方法に適する。
【0033】
一般に、本発明における薬剤及びこの類似体の有用性は、薬剤を化学修飾するためにここで提供する化学修飾手順を実施すること、及び生じた生成物を、生物活性アッセイなどの所望特徴に関して試験することによって確認され得る。タンパク質の場合は、非ヒト哺乳動物を処置するとき所望に応じて、組換えマウス、ウシ、イヌ等のような組換え非ヒトタンパク質を使用し得る。例えばPCT国際公開公報第WO9105798号及びPCT 国際公開公報第WO8910932号参照。
【0034】
さらに、本発明の組成物及び方法は、医薬組成物の製剤、治療方法及び薬剤の製造の方法を含む。
【0035】
ブロックポリマー対薬剤分子の比率は、反応混合物中のこれらの濃度と同様に、様々である。一般に、最適比率は選択するポリマーの分子量によって決定される。加えて、1つの実施例は、所望ポリマー−薬剤種の非特異的ペグ化及び後の精製を含み、この比率は、使用可能なアミン反応基(典型的にはアミノ基)又は使用可能な遊離チオール基の数に依存し得る。モノ−ポリマー物質を得るための薬剤対ポリマー分子の低い反応比率の一例は、一般に薬剤分子当り1.5ポリマー分子である。この比率は、タンパク質対PEG結合体において得に有用である。
【0036】
水溶性ポリマー、例えばここで述べるブロックポリマーを、ポリマー部分とタンパク質部分の間に結合基を含まないタンパク質に連結する有用な方法は、Francisら(Ahern.,T.及びManning,M.C.編集)Plenum,New York,1991に述べられている。また、Delgadoら、Fisherら編集、Separations Using Aqueous Phase Systems,Applications In Cell Biology and Biotechnology,Plenum Press,N.Y.N.Y.,1989 pp.211−213は、ポリエチレングリコール部分とタンパク質部分の間に結合基を生じない、塩化トレシルの使用を含む。塩化トレシルの使用は毒性副産物を生産し得るので、この方法は治療生成物を生産するために使用することは困難であると考えられる。代替法は、カルボキシメチルメトキシポリエチレングリコールのN−ヒドロキシスクシニミジルエステルの使用である。
【0037】
ブロック水溶性ポリマー結合薬剤の特定種を分離することが必要な場合、例えば必要に応じて、N末端結合タンパク質を他の部分から単離し得る。この精製は、結合タンパク質分子の個体群からの分離を含む。例えば一実施例は、単結合物質に特徴的な電荷を有する物質を得るために(同じ見かけ電荷を有する他の多結合物質が存在してもよい)イオン交換クロマトグラフィーによって結合タンパク質を分離して、次いでサイズ排除クロマトグラフィーを用いてモノ結合物質を分離する。このようにして、N末端結合タンパク質を他のモノ結合種並びに他の多結合種から分離することができる。
【0038】
他の同様の方法が報告されている。例えば1990年5月3日公開のPCT国際公開公報第WO90/04606号は、ポリマー含有水性二相系において結合体を分配することを含む、水溶性ポリマー−タンパク質付加物の混合物を分画するための工程を教示する。
【0039】
別の態様では、水溶性ポリマーを選択的にN末端でタンパク質に結合する。これは、特定タンパク質における誘導体化のために使用可能な異なる種類の第一級アミノ基(リシン対N末端)の異なる反応性を利用した還元的アルキル化による修飾を含む。適切な反応条件下で、カルボニル基含有ポリマーによるN末端でのタンパク質の実質的に選択的な誘導体化が達成される。反応は、リシン残基のα−アミノ基とタンパク質のN末端残基のα−アミノ基のpK差を利用することができるpHで実施される。このような選択的誘導体化により、タンパク質への水溶性ポリマーの結合が制御される:ポリマーとの結合は主としてタンパク質のN末端で起こり、リシン側鎖アミノ基などの他の反応基の有意の修飾は起こらない。この方法によれば、モノポリマー/タンパク質結合体は、N末端に位置するポリマー部分を有するが、リシンに関するようなアミノ側基にはポリマー部分を持たない。製剤は、好ましくは80%以上のモノポリマー/タンパク質結合体、より好ましくは95%以上のモノポリマー/タンパク質結合体である。
【0040】
還元的アルキル化のためには、還元剤は水溶液中で安定であるべきであり、好ましくは還元的アルキル化の初期工程で形成されるシッフ塩基だけを還元することができるものである。好ましい還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、ホウ酸ジメチルアミン、ホウ酸トリメチルアミン及びホウ酸ピリジンから成る群より選択され得る。
【0041】
(レプチン分子)
本発明における使用に適するレプチンは、組換えヒト及びマウスメチオニルタンパク質から選択され得る。特に有用な形態のレプチンは、天然システインが突然変異して、78位がシステインに変化し、1個のシステインだけが水溶性ポリマーのマレイミド基のための反応部位として残っているものである。天然ヒト及びマウスレプチン配列を以下に示す。
【0042】
ヒトレプチン:
MVPIQKVQDDTKTLIKTIVTRINDISHTQSVSAKQRVTGLDFIPGLHPILSLSKMDQTLAVYQQVLTSLPSQNVLQIANDLENLRDLLHLLAFSKSCSLPQTSGLQKPESLDGVLEASLYSTEVVALSRLQGSLQDILQQLDVSPEC
マウスレプチン:
MVPIQKVQDDTKTLIKTIVTRINDISHTQSVSSKQRVTGLDFIPGLHPILTLSKMDQTLAVYQQILTSMPSRNVLQISNDLENLRDLLHVLAFSKSCHLPWASGLETLDSLGGVLEASGYSTEVVALSRLQGSLQDMLWQLDLSPGC
【0043】
加えて、適切なレプチンは、28位のグルタミニル残基を欠くものを含み、この場合1位は第一バリンであると考えられ、第一メチオニンは−1位である(Zhangら、Nature 372:425−432(1994);また、the Correction at Nature 374:479(1995)も参照のこと)。組換えヒトレプチン遺伝子産物は、成熟タンパク質として、146アミノ酸であり、N末端メチオニンを持たない。マウスタンパク質は、特に成熟タンパク質として、さらに、特にN末端において、ヒトタンパク質に実質的に相同である。組換えヒト配列において、マウス配列と相違するアミノ酸を変化させる(例えばアミノ酸残基を置換する)ことによって組換えヒトタンパク質の類似体を作製し得る。組換えヒトタンパク質はマウスにおいて生物活性を有するので、このような類似体は活性である可能性が高い。真核生物発現によって生産されるもののような、N末端メチオニル残基を欠くタンパク質も使用のために入手可能である。
【0044】
(可溶性腫瘍壊死因子結合タンパク質)
本発明に関して、TNF阻害剤に関する以下の参考文献中で開示される分子及びsTNFR及びsTNFRの変異体と誘導体及びこの参考文献中で開示される分子(以下参照)を集合的に「TNF−α阻害剤」と称する。これらは、TNF受容体I型又はII型の可溶性形態を含む。以下の実施例で使用するように、TNF結合タンパク質を使用することが注目されるが、付加的なポリペプチドもここで述べる組成物及び方法に関して有用であると考えられる。代表的なTNF結合タンパク質は、米国特許第6,541,620号、同第6,271,346号及び同第6,143,866号に述べられている。
【0045】
米国特許第6,541,620号は、集合的に「sTNFR」と称される、可溶性TNF受容体I型(sTNFR−I又は30kDa TNF阻害剤としても知られる)及び可溶性TNF受容体II型(sTNFR−II又は40kDa TNF阻害剤としても知られる)、並びにこれらの修飾形態(例えばフラグメント、機能性誘導体及び変異体)の配列を教示する。さらに、欧州特許第393 438号は、それぞれ成熟タンパク質のカルボキシル末端で51又は53アミノ酸残基が除去された、完全長組換え40kDa TNF阻害剤タンパク質のトランケート型である、40kDa TNF阻害剤D51及び40kDa TNF阻害剤D53を教示する。sTNFR−I及びsTNFR−IIは、神経成長因子受容体(NGF)、B細胞抗原CD40、4−1BB、T細胞抗原OX40、Fas抗原、及びCD27及びCD30抗原を含む、神経成長因子/TNF受容体スーパーファミリーの受容体の成員である(Smithら(1990),Science,248:1019−1023)。
【0046】
PCT出願第PCT/US97/12244号は、第四ドメイン(sTNFR−IのThr127−Asn161及びsTNFR−IIのアミノ酸残基Pro141−Thr179);第三ドメインの一部(sTNFR−Iのアミノ酸残基Asn111−Cys126及びsTNFR−IIのアミノ酸残基Pro123−Lys140);及び、場合により、第一ドメインの一部(sTNFR−Iのアミノ酸残基Asp1−Cys19及びsTNFR−IIのアミノ酸残基Leu1−Cys32)を含まない、sTNFR−I及びsTNFR−IIのトランケート形態を教示する。本発明において有用なトランケート型sTNFRは、式R1−[Cys19−Cys103]−R2及びR4−[Cys32−Cys115]−R5によって表わされるタンパク質を含む。これらのタンパク質はそれぞれsTNFR−I及びsTNFR−IIのトランケート形態であり、システインアミノ酸によって与えられるチオール側基における二重修飾の機会を提供する。「R1−[Cys19−Cys103]−R2」とは、[Cys19−Cys103]が、アミノ酸残基であるsTNFR−Iの残基19から103を表わし、R1が、Cys19又はCys18からAsp1のいずれか1個から選択されるアミノ末端アミノ酸残基のメチオニル化又は非メチオニル化アミン基を表わし、及びR2が、Cys103又はPhe104からLeu110のいずれか1個から選択されるカルボキシ末端アミノ酸残基のカルボキシ基を表わす、1又はそれ以上のタンパク質を意味する。
【0047】
本発明の例示的なトランケート型sTNFR−Iは、メチオニル化又は非メチオニル化の以下の分子(集合的に2.6D sTNFR−Iと称する):NH2−[Asp1−Cys105]−COOH(sTNFR−I 2.6D/C105とも称する);NH2−[Asp1−Leu108]−COOH(sTNFR−I 2.6D/C106とも称する);NH2−[Asp1−Asn105]−COOH(sTNFR−I 2.6D/N105とも称する);NH2−[Tyr9−Leu108]−COOH(sTNFR−I 2.3D/d8とも称する);NH2−[Cys19−Leu108]−COOH(sTNFR−I 2.3D/d18とも称する);及びNH2−[Ser16−Leu108]−COOH(sTNFR−I 2.3D/d15とも称する)、及びこれらの変異体及び誘導体を含む。
【0048】
様々な種類のTNF−α阻害剤が、以下の参考文献:米国特許第5,136,021号;同第5,929,117号;同第5,948,638号;同第5,807,862号;同第5,695,953号;同第5,834,435号;同第5,817,822号;同第5830742号;同第5,834,435号;同第5,851,556号;同第5,853,977号;同第5,359,037号;同第5,512,544号;同第5,695,953号;同第5,811,261号;同第5,633,145号;同第5,863,926号;同第5,866,616号;同第5,641,673号;同第5,869,677号;同第5,869,511号;同第5,872,146号;同第5,854,003号;同第5,856,161号;同第5,877,222号;同第5,877,200号;同第5,877,151号;同第5,886,010号;同第5,869,660号;同第5,859,207号;同第5,891,883号;同第5,877,180号;同第5,955,480号;同第5,955,476号;同第5,955,435号;同第5,994,351号;同第5,990,119号;同第5,952,320号;同第5,962,481号を含めて、当技術分野において開示されている。これらの開示の関連部分は参照によりここに組み込まれる。
【0049】
(治療方法)
本発明のさらに別の態様では、治療方法及び薬剤の製造方法が提供される。本発明のブロックポリマー−薬剤結合体の投与によって軽減される又は緩和される状態は、結合する薬剤に依存する。例えば薬剤がレプチンであるとき、本発明のブロックポリマー−レプチン結合体の投与によって軽減又は緩和され得る状態は、レプチンが適用できるものであり、肥満を含む。以下の作用実施例は、本発明のブロックポリマーで化学修飾されたレプチンが、PEG分子で化学修飾されたレプチンとほぼ同等に活性であることを明らかにする。同様に、本発明のブロックポリマーに結合したsTNFRは、腎空胞形成を誘発する傾向はより少ないが、炎症状態を治療する上で有効であることが示される。
【0050】
本発明のブロックポリマーに結合した可溶性腫瘍壊死因子受容体は、TNFの過剰発現に関連する状態、例えば炎症を治療するために使用することができる。本発明のTNF阻害剤組成物で治療できる急性及び慢性TNF仲介性疾患の非排他的なリストは、以下のものを含むが、これらに限定されない:悪液質/食欲不振;癌(例えば白血病):慢性疲労症候群;うっ血性心不全、冠状動脈再狭窄、心筋梗塞、心筋機能不全(例えば敗血症に関連する)及び冠状動脈バイパス移植を含む冠状動脈状態及び適応症;うつ病;若年発症1型糖尿病、真性糖尿病及びインスリン抵抗性(例えば肥満に関連する)を含む糖尿病;子宮内膜症、子宮内膜炎及び関連状態;線維筋痛又は痛覚脱失症;対宿主性移植片拒絶反応;痛覚過敏;クローン病及びクロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)関連性下痢を含む炎症性腸疾患;脳虚血(各々が神経変性を導き得る、外傷、てんかん、出血又は発作の結果としての脳損傷)を含む虚血;肺疾患(例えば成人呼吸促進症候群、喘息及び肺線維症);多発性硬化症;神経炎症性疾患;角膜移植、眼変性及びブドウ膜炎を含む眼疾患及び状態;癌関連疼痛を含む疼痛;膵炎;歯周疾患;毛孔性紅色ひこう疹(PRP);前立腺炎(細菌性又は非細菌性)及び関連状態;乾癬及び関連状態;肺線維症;再灌流障害;関節リウマチ、変形性関節症、若年性関節炎(関節リウマチ)、セロネガティブ多発性関節炎、強直性脊椎炎、ライター症候群及び反応性関節炎、スティル病、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患合併関節炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、強皮症、全身性硬化症、脈管炎(例えば川崎病)、脳血管炎、ライム病、ブドウ球菌誘発性(「敗血症性」)関節炎、シェーグレン症候群、リウマチ熱、多発性軟骨炎及びリウマチ性多発性筋痛及び巨細胞性動脈炎を含むリウマチ病;敗血症性ショック;放射線療法からの副作用;全身性エリテマトーデス(SLE);顎関節疾患;甲状腺炎;組織移植又は挫傷、捻挫、軟骨損傷、外傷、整形外科手術、感染(例えばHIV、クロストリジウム・ディフィシル及び関連種)又は他の疾患過程。
【0051】
ここで述べる別の態様は、上記の医薬組成物である。このような医薬組成物は、注射による投与用、又は経口、肺、鼻又は他の形態の投与用であり得る。一般に、医薬適合性の希釈剤、防腐剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント及び/又は担体と共に有効量のモノポリマー/タンパク質結合体生成物を含有する医薬組成物は本発明に包含される。このような組成物は、様々な緩衝剤含量(例えばトリス−HCl、酢酸塩、リン酸塩)、pH及びイオン強度の希釈剤;界面活性剤及び可溶化剤(例えばトゥイーン80、ポリソルベート80)、抗酸化剤(例えばアスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、防腐剤(例えばチメロソール、ベンジルアルコール)及び充填物質(例えばラクトース、マンニトール)などの添加物;ポリ乳酸、ポリグリコール酸などのポリマー化合物の微粒子製剤又はリポソームへの物質の組込みを含む。このような組成物は、本発明の化学修飾タンパク質の物理的状態、安定性、インビボでの放出速度、及びインビボでのクリアランス速度に影響を及ぼし得る。例えば参照によりここに組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版(1990,Mack Publishing Co.,Easton,PA 18042)p.1435−1712参照。
【0052】
さらなる試験が実施されると共に、様々な患者における様々な状態の治療のための適切な用量レベルに関する情報が明らかになり、当業者は、治療背景、受容者の年齢及び全般的健康状態を考慮して、適切な用量を確認することができるであろう。一般に、注射又は注入に関して、用量は、0.01μg/kg体重(化学修飾なしのタンパク質単独の量を算定)から100μg/kg(前記と同じベースで)の間である。
【0053】
以下の実施例は、上記で述べた様々な態様を例示する。
【実施例1】
【0054】
(PEG1K+GLUT−ポリエステル)−レプチン
実験材料
分子量=1000kDaの2個のヒドロキシ末端基を有するポリエチレングリコール(PEG1K−ジオール)(Aldrich)を、使用前に一晩真空オーブン(50−60℃)で乾燥した。塩化グルタリル(Fluka)、無水クロロホルム(Aldrich)、無水ジエーテル(J T Baker)、無水イソプロパノール(Aldrich)、2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(Fluka)、トリエチルアミン(99%+、B&J)、N,N−ジクロロヘキシルカルボジイミド(DCC,Lancaster)及び無菌水(Baxter)を受領したままの状態で使用した。
【0055】
装置器具
Pall Filtrons(公称分子量3kDaカットオフ膜)及びSlide−A−Lyzerカセット(Pierce、公称分子量7kDaカットオフ)を濃縮、精製又は緩衝液交換のために使用した。Waters System 717 Autosampler、510ポンプ、490E多波長検出器及び410示差屈折計;メタノール中20mM LiBrを移動相とするAlpha Series(TSK)2500及び4000カラムを使用し、Millenium32ソフトウエアと共にポリ(エチレングリコール)標準品を用いてGPCを実施した。20mM酢酸ナトリウムpH4.0及び20mM酢酸ナトリウムpH4.0プラス0.5M NaClの0から55%勾配により2.5ml/分で溶出するHiLoad SP26/10陽イオン交換カラムにおいてFPLC(Pharmacia)を実施した。薄層クロマトグラフィー(TLC)は、EM Scienceからの100プレート(TLC 60°F254)で実施し、メタノール/塩化メチレン(1:4)で展開して、ヨウ素蒸気及びニンヒドリンスプレーで視覚化した。
【0056】
重合
PEG1K−ジオール(24.06g、24.06mmol)を無水クロロホルム(60ml)に溶解し、トリエチルアミン(4.87g、48.12mmol)を添加した。この反応混合物を氷浴中で攪拌し、無水クロロホルム5ml中の塩化グルタリル(4.07g、24.08mol)を5−6時間かけて滴下した。反応物を室温で一晩攪拌した。生成物の分子量を、所望範囲(20−50kDa)が達成されるまでGPCによって追跡し、達成された時点で追加の0.5M塩化グルタリル(2.03g、12.01mmol)を添加して、反応物を室温で一晩放置した。ポリマーをアミンで末端キャップするために、無水クロロホルム200ml中5倍過剰の2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(17.83g、120mmol)を反応混合物中に滴下した。TLCのニンヒドリン陽性ポリマースポットがさらなる変化を示さなくなるまでキャッピング反応を観測した。クロロホルム:エーテル:イソプロパノール(400ml:1333ml:667ml)の低温(4℃)溶媒混合物でポリマーを沈殿させた。沈殿物をろ過し、減圧下で乾燥した。
【0057】
活性化
ジクロロメタン100ml中のマレイミドプロピオン酸(Sigma、0.738g、4.36mmol)及びトリエチルアミン(3.05g、30.1mmol)の溶液をDCC(18.77mg、90.96mmol)で1時間処理し、次いで上記のアミンキャップしたポリマー(3.055g、152.8μmol、M=20K、多分散性=1.3−1.5)を添加した。反応物を4℃で2日間放置した。沈殿したジシクロヘキシル尿素をろ過によって除去した。ろ液をクロロホルム:エーテル:イソプロパノール(120ml:800ml:400ml)の混合物で希釈し、沈殿物をろ過によって除去した。ろ液を減圧下で乾燥して、粗生成物1.863g(61.0%)を得、次にこれをSlide−A−Lyzerカセットにおいて20mMリン酸塩、5mM EDTA、pH6.5 2Lに対して透析した。
【0058】
結合
5mM EDTA及びレプチンS78C(97mg、6.0μmol)を含む20mMリン酸緩衝液、pH6.5中のポリマー(1.8269g、90μmol)を、最終タンパク質濃度1mg/mlまで添加した。反応物を4℃で一晩インキュベートした。
【0059】
精製
ポリマー結合体反応混合物のpHを3.5に調整し、次にHiLoad SP26/10カラムを用いてFPLCによって精製した。分画18−27を高分子量結合体として一緒にし、分画28−30を中分子量結合体として一緒にし、分画31−32を低分子量結合体として一緒にした。
【0060】
バイオアッセイのための試料を調製するために、高、中及び低分子量プールをPall Filtron遠心濃縮機(MWCO 3.5kDa)において濃縮し、次いで各々のプールを、3.5kDa MWCO膜を用いて4℃で24時間にわたってPBSに対して2回(1L)透析した。最後に、試料を2mg/mlに濃縮し、Acrodic Syringeフィルター(25mm、0.2μm HT Tuffryn膜、Gelman Laboratory)を通して5ml無菌バイアルにろ過した。
【0061】
結果
PEG1K+GLUT−ポリエステル−レプチンを、図1及び2に示すように、インビトロでの加水分解に対する抵抗性及び動物において体重減少を誘導する上での効果に関して試験した。データは、PEG化レプチン及び本発明のブロックポリマーでPEG化したレプチンで処置したマウスが体重減少すること(図2)、及びブロックポリマー−レプチン結合体では腎空胞の形成が実質的に低下し、腎空胞が検出不能であった(図3)ことを示す。
【実施例2】
【0062】
PEG1K+OXL−レプチン
材料
分子量=1KDaの2個のアミン末端基を有するポリエチレングリコール(PEG1K−ジアミン)(Shearwater Polymer Inc.)を、50℃−60℃の真空オーブンで一晩乾燥し、次いで室温に冷却した。塩化オキサリル(99+%、Fluka)、ジクロロメタン(HPLCグレード、Mallinckrodt)、無水ジエチルエーテル(J T Baker)、メタノール(HPLCグレード、J T Baker)、無水アセトニトリル(Aldrich)、2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(Fluka)、トリエチルアミン(>99.9%、Romil Ltd.)及び無菌水(Baxter)を受領したままの状態で使用した。
【0063】
装置器具
YM−3及びYM−10膜(公称分子量3000及び10,000KDaカットオフ)を備えたAmicon Stirred Cellsを精製のために使用した。Waters System 717 Autosampler、510ポンプ、490E多波長検出器及び410示差屈折計;メタノール中20mM LiBrを移動相とするAlpha Series2500及び4000カラム(TSK)を使用し、Millenium32ソフトウエアと共にポリ(エチレングリコール)標準品を用いてGPCを実施した。20mM酢酸ナトリウムpH4.0及び20mM酢酸ナトリウムpH4.0プラス0.5M NaClの25CV、0−55%勾配により2.5ml/分で溶出するHiLoad SP26/10陽イオン交換カラムにおいてFPLC(Pharmacia)を実施した。薄層クロマトグラフィー(TLC)は、EM Scienceからの100プレート(TLC 60°F254)で実施し、メタノール/塩化メチレン(1:4)で展開して、ヨウ素蒸気及びニンヒドリンスプレーで視覚化した。
【0064】
重合
PEG1K−ジアミン(7.10g、7.10mmol)を無水アセトニトリル(110ml)に溶解し、トリエチルアミン(1.44g、14.20mmol)を添加した。この反応混合物をドライアイス浴中で攪拌し、無水アセトニトリル10ml中の塩化オキサリル(0.9g、7.10mmol)を3−4時間かけて滴下して、次いで室温で一晩攪拌した。生成物の分子量を、所望範囲(20−50kDa)が達成されるまでGPCによって追跡し、達成された時点で無水アセトニトリル70ml中の2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(1.05g、0.2mmol)を添加した。TLCのニンヒドリン陽性ポリマースポットがさらなる変化を示さなくなるまでキャッピング反応を観測した。減圧下に回転蒸発器でアセトニトリルを蒸発させ、油性残留物を残した。この油性残留物を無菌水20mlに溶解し、YM−10膜を用いる攪拌セルにおいて無菌水2Lで精製した。バルクの水を蒸発によって除去し、残りを回転蒸発器での共沸蒸留(100mlトルエン3回)によって除去した。残留物を無水ジエチルエーテル200mlで沈殿させ、真空下で乾燥した。生成物の重量は5.18g(64.7重量%)であった。
【0065】
活性化
上記のアミンキャップしたポリマー(5.18g、287μmol、M=18K、多分散性=1.35)を無水アセトニトリル(30ml)に溶解し、トリエチルアミン(48.2mg、476μmol)及びマレイミドプロピオン酸NHSエステル(Bioscience,0.2287g、859μmol)で処理した。TLCのニンヒドリン陽性ポリマースポットがニンヒドリン陰性になるまで活性化反応を観測した。1時間後に反応が完了したことを認めた。溶媒を蒸発させ、生成物を、YM−10膜を用いる攪拌セルにおいて無菌水1Lで精製した。バルクの水を蒸発によって除去し、残りを共沸蒸留(3×30mlトルエン)によって除去して、次いで一晩真空乾燥した。生成物の重量は3.59g(〜69重量%)であった。
【0066】
結合
ポリマー(610mg、33.8μmol)を20mMリン酸塩、5mM EDTA、pH6.5に溶解し、レプチンS78C(100mg、6.2μmol)を添加した。反応物を4℃で一晩インキュベートした。
【0067】
精製
ポリマー結合体溶液をpH3.5に調整した後、カラムに負荷した。20mM酢酸ナトリウム、pH4及び20mM酢酸ナトリウムプラス0.5mM NaClを溶離液として用いるFPLCによって結合体を精製した。分画32−50を高分子量結合体として一緒にし、分画51−60を中分子量結合体として一緒にし、分画61−68を低分子量結合体として一緒にした。
【0068】
バイオアッセイのための試料を調製するために、高、中及び低分子量プールをAmicon攪拌セル(YM−3膜)において濃縮し、次いで各々のプールを、3.5kDa MWCO膜を用いて4℃で24時間にわたってPBSに対して2回(1L)透析した。最後に、試料を2mg/mlに濃縮し、5ml無菌バイアルにろ過した(25mm、0.2um Acrodicc Syringeフィルター、HT Tuffryn膜、Gelman Laboratory)。
【0069】
結果
マウスに、レプチンに結合した低、中及び高分子量PEGブロックポリマー(この実施例で上記に述べた)、Fc−レプチン融合タンパク質又は20kDa PEG化レプチンを注射した。これらの注射からの体重減少の結果を図4に示し、腎空胞形成を図5に示す。これらの結果は、タンパク質に結合した通常PEGポリマーと比較して同じタンパク質に結合したブロックポリマーの改善を明らかに示す。
【実施例3】
【0070】
PEG1K+PEG1K−レプチン
材料
分子量=1000KDaの2個のアミン末端基を有するポリエチレングリコール(PEG1K−ジアミン)(Shearwater Polymer Inc.)及び分子量=1056KDaの2個のカルボン酸末端基を有するポリエチレングリコール(PEG1K−二酸)(Shearwater Polymer Inc.)を、各々回転蒸発器で共沸蒸留によって乾燥した(50−60℃、3X、30mlトルエン)。ジクロロメタン(HPLCグレード、Mallinckrodt)、塩化チオニル(99%低鉄、Aldrich)、N,N−ジメチルホルムアミド(99.8%、Aldrich)、メタノール(HPLCグレード、J T Baker)、無水アセトニトリル(Aldrich)、2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(Fluka)、トリエチルアミン(99.9%、Romil Ltd.)及び無菌水(Baxter)を受領したままの状態で使用した。
【0071】
装置器具
YM−3及びYM−10膜(公称分子量3000及び10,000KDaカットオフ)を備えたAmicon Stirred Cellsを精製のために使用した。Waters System 717 Autosampler、510ポンプ、490E多波長検出器及び410示差屈折計;メタノール中20mM LiBr及び0.1%トリエチルアミンを移動相とするAlpha Series2500及び4000カラムを使用し、Millenium32ソフトウエアと共にポリ(エチレングリコール)標準品を用いてGPCを実施した。20mM酢酸ナトリウムpH4.0及び20mM酢酸ナトリウムpH4.0プラス0.5M NaClの0−55%勾配により2.5ml/分で溶出するHiLoad SP26/10陽イオン交換カラムにおいてFPLC(Pharmacia)を実施した。薄層クロマトグラフィー(TLC)は、EM Scienceからの100プレート(TLC 60°F254)で実施し、メタノール/クロロホルム(1:4)で展開して、ヨウ素蒸気及びニンヒドリンスプレーで視覚化した。
【0072】
PEG1K−二酸塩化物
トルエン35ml中の蒸留塩化チオニル(2.13g、17.91mmol)及びDMF(0.142g、1.94mmol)を、PEG1K−二酸(4.7289g、4.478mmol)を含む100ml丸底フラスコに緩やかに導入した。反応物をさらに1−2時間室温で反応させ、次いで回転蒸発器(50−60℃)で濃縮して、PEG1K−二酸塩化物の油性残留物を残し、これをアルゴンガス下で保存した。
【0073】
重合
PEG1K−ジアミン(4.52g、4.52mmol)を無水アセトニトリル(50ml)に溶解し、トリエチルアミン(0.9145g、9.04mmol)を添加した。この反応混合物を室温で攪拌し、無水アセトニトリル30ml中のPEG1K−二酸塩化物(4.7289g、4.478mmol)を3−4時間かけて滴下し、次いで室温で一晩攪拌した。生成物の分子量を、所望範囲(20−50kDa)が達成されるまでGPCによって追跡し、達成された時点で2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(0.034g、0.23mmol)を添加した。TLCのニンヒドリン陽性ポリマースポットがさらなる変化を示さなくなるまでキャッピング反応を観測した。減圧下に回転蒸発器でアセトニトリルを蒸発させ、油性残留物を残した。この油性残留物を無菌水20mlに溶解し、YM−10膜を用いる攪拌セルにおいて無菌水2Lで精製した。溶液を濃縮し、残留水を回転蒸発器での共沸蒸留(100mlトルエン3回)によって除去した。生成物の重量は3.7g(40%収率)であった。
【0074】
活性化
上記のアミンキャップしたポリマー(3.76g、188μmol、M=20kDa、多分散性=1.64)を無水アセトニトリル(40ml)に溶解し、トリエチルアミン(28.55mg、282μmol)及びマレイミドプロピオン酸NHSエステル(Bioscience,76.8mg、288μmol)で処理した。1時間後にTLCによって(ニンヒドリン陰性)反応が完了したことを認めた。溶媒を蒸発させ、生成物を、YM−3膜を用いる攪拌セルにおいて無菌水1Lで精製した。溶液を濃縮し、共沸蒸留(3回、30mlトルエン)によって乾燥して、一晩真空乾燥した。生成物の重量は3.13g(84.7%収率)であった。
【0075】
結合
活性化したマレイミドポリマー(3.13g)を20mMリン酸塩、5mM EDTA、及びpH6.5緩衝液に溶解した。レプチンS78C(126mg、7.798μmol)を添加した。反応物の最終濃度はタンパク質2mg/ml(全65ml緩衝液)であった。反応混合物を4℃で一晩放置した。
【0076】
精製
ポリマー結合体のpHを3.5に調整し、1mgタンパク質/mlに希釈した。20mM酢酸ナトリウム、pH4及び20mM酢酸ナトリウムプラス0.5M NaClを溶離液として用いるFPLCによって結合体を精製した。分画を4−20%トリ−グリミニゲル(Novex、クマシーブルー染色)で分析した。分画29−49を高分子量結合体として一緒にし、分画50−57を中分子量結合体として一緒にし、分画58−65を低分子量結合体として一緒にした。
【0077】
バイオアッセイのための試料を調製するために、高、中及び低分子量プールをAmicon攪拌セル(YM−3膜)において4℃で5mg/mlの濃度に濃縮し、緩衝液をPBSに交換した。試料を2mg/ml及び0.2mg/mlに希釈し、Acrodic Syringeフィルター(25mm、0.2μm HT Tuffryn膜、Gelman Laboratory)を通して5ml無菌バイアルにろ過した。
【0078】
実施例1−3の結論
上述したアミド−レプチンポリマーを製剤し、マウスに注射して、制御された期間にわたって体重減少を測定した。PBSを注射したマウスを対照として使用し、これらの体重を用いてゼロの基線値を算定した。ゼロ日目の単回投与での10mg/kgのFc−レプチン融合物は、4日目に11%という体重減少のピークを誘導し、体重は8日目までに基線値近くに戻った。同様に、PEG1k+oxl高分子量結合、中分子量結合及び低分子量結合のレプチン結合体は、同じく単回投与での10mg/kgで、ほぼ4日目又は5日目頃にピーク体重減少を誘導した。しかし、Fc−レプチンと異なり、PEG1k+oxl中分子量結合レプチン及びPEG1k+oxl高分子量結合レプチン結合体は、14日間の試験期間を超えて2%以上の体重減少を維持した。
【0079】
20kモノPEG−レプチン結合体も、単回投与での10mg/kgで投与し、3日目に9%のピーク体重減少を誘導し、動物は8日目までに体重を基線値の1%内に回復し、11日目まで基線値体重以下であった(図4)。これらの実験を反復し、比肩し得る結果を得た。
【0080】
別の実験において、結合体を注射した後に腎空胞を特定し、以下の尺度を用いて評点した。グレードゼロは腎空胞なしに等しい。グレード1+は、まれで小さな空胞によって示される最小腎空胞に等しい。グレード2+は、中等度の数の直径約3μmの空胞によって示される軽度腎空胞に等しい。グレード3+は、多数の直径約3−約5μmの空胞によって示される中等度の腎空胞に等しい。グレード4+は、無数の大きな、すなわち直径5μm以上の空胞が存在することを意味する著明な腎空胞に等しい。尿細管上皮が空胞形成に関して分析した主要部位であった。
【0081】
C57BL/6マウスに、10又は25mg/kgの1日量の結合体又は対照を7日間又は14日間注射した。PEG1k+oxl高分子量結合レプチンは、7又は14日間の毎日の皮下注射後に尿細管上皮における空胞を誘発しなかった。
【0082】
PEG1k+oxl中分子量結合レプチンは、毎日25mg/kgの7日間の注射後にグレード1+又は14日間の注射後にグレード2+の尿細管上皮空胞を誘発し、10mg/kgを14日間毎日注射した後最小腎空胞(グレード1+)を誘発した。この結合体に関して10mg/kgを7日間毎日注射したときには、腎空胞は検出されなかった。
【0083】
PEG1k+oxl低分子量結合レプチンは、毎日25mg/kgの7日間(グレード2+)又は14日間(グレード3+)の皮下注射後に腎空胞を誘発した。病変は、10mg/kg/日の7日間(グレード2+)又は14日間(グレード2+)の投与後にも認められた。
【0084】
陽性対照である20kモノPEG−レプチンは、投与期間に関わりなく10mg/kg/日又は25mg/kg/日の注射後に最小でもグレード3+の腎空胞を誘発した。
【実施例4】
【0085】
PEG1K+OXL/L1−7ペプチド
PEG1K+OXLポリマー(分子量=15KDa、96.29mg(6.4μmol)を、50mMリン酸塩、5mM EDTA、pH6.5中のL1−7ペプチド(5.39mg、1.5μmol)の溶液に添加した。ペプチドの最終濃度は2.5mg/mlであった。溶液を4℃で一晩インキュベートした。種々の分子量プールへの結合体の分離は、Hi−Trap SP HP 1mlカラムを用いてFPLCによって実施した。カラムを20mM酢酸ナトリウムpH4.0の5CVで平衡させ、結合体を、20mM酢酸ナトリウムプラス500mM塩化ナトリウムpH4.0の30CVで1ml分画に溶出した。分画1−4から高分子量プールを形成し、分画9−39から低分子量プールを形成した。
【0086】
両方のプールを濃縮し、緩衝液をPBSに交換した。
【実施例5】
【0087】
PEG1K+OXL−sTNF
材料
分子量=1KDaの2個のアミン末端基を有するポリエチレングリコール(PEG1K−ジアミン)(Shearwater Polymer Inc.)を、50−60℃の真空オーブンで一晩乾燥し、次いで室温に冷却した。塩化オキサリル(99+%、Fluka)、ジクロロメタン(HPLCグレード、Mallinckrodt)、無水ジエチルエーテル(J T Baker)、メタノール(HPLCグレード、J T Baker)、無水アセトニトリル(Aldrich)、2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(Fluka)、トリエチルアミン(>99.9%、Romil Ltd.)及び無菌水(Baxter)を受領したままの状態で使用した。
【0088】
装置器具
YM−3及びYM−10膜(公称分子量3000及び10,000KDaカットオフ)を備えたAmicon Stirred Cellsを精製のために使用した。Waters System 717 Autosampler、510ポンプ、490E多波長検出器及び410示差屈折計;メタノール中20mM LiBrを移動相とするAlpha Series2500及び4000カラム(TSK)を使用し、Millenium32ソフトウエアと共にポリ(エチレングリコール)標準品を用いてGPCを実施した。20mM酢酸ナトリウムpH4.0及び20mM酢酸ナトリウムpH4.0プラス0.5M NaClの0−55%勾配により2.5ml/分で溶出するHiLoad SP26/10陽イオン交換カラムにおいてFPLC(Pharmacia)を実施した。薄層クロマトグラフィー(TLC)は、EM Scienceからの100プレート(TLC 60°F254)で実施し、メタノール/クロロホルム(1:4)で展開して、ヨウ素蒸気及びニンヒドリンスプレーで視覚化した。
【0089】
重合
PEG1K−ジアミン(7.10g、7.10mmol)を無水アセトニトリル(110ml)に溶解し、トリエチルアミン(1.44g、14.20mmol)を添加した。この反応混合物をドライアイス浴中で攪拌し、無水アセトニトリル10ml中の塩化オキサリル(0.9g、7.10mol)を3−4時間かけて滴下して、次いで室温で一晩攪拌した。生成物の分子量を、所望範囲(20−50kDa)が達成されるまでGPCによって追跡し、達成された時点で無水アセトニトリル70ml中の2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(1.05g、0.2mmol)を添加した。TLCのニンヒドリン陽性ポリマースポットがさらなる変化を示さなくなるまでキャッピング反応を観測した。減圧下に回転蒸発器でアセトニトリルを蒸発させ、油性残留物を残した。この油性残留物を無菌水20ml及びvaque膜に溶解した。バルクの水を蒸発によって除去し、残りを回転蒸発器での共沸蒸留(100mlトルエン3回)によって除去した。残留物を無水ジエチルエーテル200mlで沈殿させ、真空下で乾燥した。生成物の重量は5.18g(64.7重量%)であった。
【0090】
活性化
上記のアミンキャップしたポリマー(5.18g、287μmol、M=18K、多分散性=1.35)を無水アセトニトリル(30ml)に溶解し、トリエチルアミン(48.2mg、476μmol)及びマレイミドプロピオン酸NHSエステル(Bioscience,0.2287g、859μmol)で処理した。TLCのニンヒドリン陽性ポリマースポットがニンヒドリン陰性になるまで活性化反応を観測した。1時間後に反応が完了したことを認めた。溶媒を蒸発させ、生成物を、YM−10膜を用いる攪拌セルにおいて無菌水1Lで精製した。バルクの水を蒸発によって除去し、残りを共沸蒸留(3×30mlトルエン)によって除去して、次いで一晩真空乾燥した。生成物の重量は3.59g(〜69重量%)であった。
【0091】
結合
ポリマー(549mg、30.5μmol)を20mMリン酸塩、5mM EDTA、pH6.5に溶解した。sTNF受容体(65.5mg、5.4μmol)を添加した。反応物を4℃で一晩インキュベートした。
【0092】
精製
ポリマー結合体溶液をpH3.5に調整した後、カラムに負荷した。20mM酢酸ナトリウムpH4及び20mM酢酸ナトリウムプラス0.5mM NaClを溶離液として使用するSepharose SP HRカラムを用いてFPLCによって結合体を精製した。結合sTNF不含及び結合sTNFを含む分画番号70−80をプールし、濃縮した。プールをSEC26/60SephacrylカラムS300に負荷した。結合体を2つのプール中で高分子量結合体及び低分子量結合体として収集した。
【0093】
バイオアッセイのための試料を調製するために、高及び低分子量プールをAmicon攪拌セル(YM−3膜)において濃縮し、次いで各々のプールを、3.5kDa MWCO膜を用いて4℃で24時間にわたってPBSに対して2回(1L)透析した。最後に、試料を2mg/mlに濃縮し、5ml無菌バイアルにろ過した(25mm、0.2um Acrodicc Syringeフィルター、HT Tuffryn膜、Gelman Laboratory)。
【0094】
実施例5の結合体のインビボ実験
可溶性TNF−RI結合体を、炎症のマウスモデルを治療する上での効果に関して試験した。コラーゲン誘発関節炎(CIA)を有するルイスラットに、上述したように作製し、sTNF/PEG+OXLと命名した結合体を注射した。ポリマー鎖は、連結した1kDa PEG分子から成る。
【0095】
80から100gの90匹の雌性ラットを入手し、以下のように関節炎を誘発した。ブタII型コラーゲンを0.1N酢酸(2mgコラーゲン/ml酢酸)に溶解した。16ゲージ乳化針をアジュバントと1:1で使用した。ラットに、足蹠の背面上の10の異なる部位に100μlの乳剤を皮内注射した。
【0096】
疾患の発症は足の腫脹と定義され、11日目に発生した。結合体を発症時から開始して4mg/kgで皮下注射し、3日間毎日注射した。正常対照(N=5)、未処置対照(N=8)、PEG−r−metHu−sTNF−rI(N=8)、sTNF/PEG+OXL−14(N=8)及びsTNF−RI(N=8)として5群に分けた。関節炎対照マウスは、発症から3日目の試験終了時まで毎日カリパスで測定したとき、3日目に約1mmの(平均±SE;n=8)の足腫脹を有していた。sTNF−RI処置マウスは、3日目に約0.5mmの足腫脹を有していた。これに対し、PEG及びPEG+OXLポリマーは、どちらも3日の期間にわたってほとんどの検出不能なレベルまで足腫脹を抑制した(図6)。
【0097】
本発明を好ましい実施形態の見地から説明したが、当業者には変法及び修正が生じることは了解される。従って、付属の特許請求の範囲は、特許請求の範囲内に含まれる、このような全ての等価変法をカバーすることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】1、2又は20kDaのPEG化レプチンを慢性注射した時の腎空胞形成を示す。Y軸上で、0は可視空胞が存在せず、0.5は、散在して分布するまれなごく小さい空胞であり、1.0は、細管内の細胞の刷子縁の下のごく小さな空胞の最小限の連なりであり、1.5は、分散した、いずれの細胞又は細管にも影響を及ぼさない、明らかな小空胞であり、2.0は、虫食い状の外観を有する、細管内の軽度であるが明らかな空胞であり、2.5は、より重症であるが、まだ細胞容積全体には影響を及ぼさない空胞であり、3.0は、細管の50%未満の中等度で明白な、大きく透明な空胞であり、3.5は、明白な空胞(3.0におけるような)及び核変性であり、4.0は、細管の50%を超える著明な空胞形成及び核変性である。
【図2】本発明の高、中又は低ブロックポリマーでPEG化したレプチンと比較した、20キロダルトンのPEG化レプチンで処置したマウスの体重減少を示す(四角は20kDaのPEG化レプチンからのデータを示し、Xは低分子量ブロックポリマー−レプチン結合体からのデータを示し、黒枠を伴うXは低分子量ブロックポリマー−レプチン結合体からのデータを示し、+は高分子量ブロックポリマー−レプチン結合体からのデータを示し、及びダイアモンド形はPBS対照からのデータを示す。
【図3】図2に従って処置したマウスにおいて腎空胞形成を測定した。
【図4】データは、実施例2で作製した結合体の単回注射の結果を示す。データの記号参照は図2と同じであり、Fc−レプチン融合タンパク質についての三角が追加されている。
【図5】図3に従って処置したマウスにおいて腎空胞形成を測定した。
【図6】足の腫脹とブロックポリマーPEG又は20kDa PEGのいずれかに結合したsTNFR1の作用を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,000ダルトン未満の第一水溶性ポリマー、不安定リンカー、及び2,000ダルトン未満の第二水溶性ポリマーを含むブロックポリマー。
【請求項2】
水溶性ポリマーが、ポリエチレングリコール、エチレングリコールのコポリマー、プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸、デキストランn−ビニルピロリドン、ポリn−ビニルピロリドン、プロピレングリコールホモポリマー、プロピレンオキシドポリマー、エチレンオキシドポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール及びポリビニルアルコールから成る群より選択される、請求項1に記載のブロックポリマー。
【請求項3】
総分子量が40kDa未満である、請求項1に記載のブロックポリマー。
【請求項4】
総分子量が約20kDaである、請求項3に記載のブロックポリマー。
【請求項5】
ブロックコポリマー構造を含む、請求項2に記載のブロックポリマー。
【請求項6】
少なくとも2個のポリマーの混合物を含む、請求項5に記載のブロックポリマー。
【請求項7】
ブロックホモポリマー構造を含む、請求項2に記載のブロックポリマー。
【請求項8】
ポリエチレングリコールのブロックから成る、請求項7に記載のブロックホモポリマー。
【請求項9】
ブロックポリマーの90%が2,000ダルトン未満である、請求項1に記載のブロックポリマー。
【請求項10】
ポリマーブロックの大部分が約1,000ダルトンである、請求項9に記載のブロックポリマー。
【請求項11】
タンパク質分解感受性リンカーがアミド結合を含む、請求項1に記載のブロックポリマー。
【請求項12】
薬剤及び医薬的に許容される担体に結合された請求項1のいずれかのブロックポリマーを含む製剤。
【請求項13】
請求項1のいずれかのブロックポリマーを製造する方法。
【請求項14】
請求項1のいずれかのブロックポリマーを投与することを含む、患者を治療する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−530569(P2007−530569A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505142(P2007−505142)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/009709
【国際公開番号】WO2005/094898
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(500049716)アムジエン・インコーポレーテツド (242)
【Fターム(参考)】