説明

化学増幅型フォトレジスト組成物

【課題】半導体素子のバンプ形成などに用いられる厚膜レジストパターンなどの製造に有用であり、当該レジストパターンが裾引きの発生が極めて抑制されたものである化学増幅型フォトレジスト組成物を提供する。
【解決手段】樹脂(A)、酸発生剤(B)及び
式(X)


(式(X)中、
Rは、水素原子、アルキル基、アリール基などを表す。
2つのR'は、水素原子、アルキル基、アリール基などを表すが、2つのR'が互いに結合し、これらが結合する炭素原子とともに環を形成する。)
で表される化合物(X)を含有する化学増幅型フォトレジスト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学増幅型フォトレジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子のバンプ形成プロセスなどには、膜厚4〜150μmの厚膜フォトレジスト膜又は厚膜レジストパターンの形成(製造)が必要である。したがって、当該プロセスなどには、厚膜フォトレジスト膜又は厚膜レジストパターンを形成し得るフォトレジスト組成物が求められる。
【0003】
このようなフォトレジスト組成物として、例えば、特許文献1には、t−ブチルメタクリレート由来の構造単位を有する樹脂と、N−トリフルオロメチルスルホニルオキシ−1,8−ナフタルアミドと、ジシクロヘキシルメチルアミンとを含有する組成物(化学増幅型フォトレジスト組成物)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−249993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の化学増幅型フォトレジスト組成物は優れた感度及び解像度で、厚膜レジストパターンを形成できるものの、レジストパターン下部に裾引きが生じる場合があり、このような裾引きの発生を抑制する点で改良が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の発明を含む。
〔1〕樹脂(A)、酸発生剤(B)及び
式(X)

(式(X)中、
複数存在するRは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜30のアリール基、置換基を有してもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、ハロゲン原子及びメルカプト基からなる群より選ばれる基又は原子を表す。
2つのR'は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜30のアリール基、置換基を有してもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、ハロゲン原子及びメルカプト基からなる群より選ばれる基又は原子を表すか、2つのR'が互いに結合し、これらが結合する炭素原子とともに環を形成する。)
で表される化合物(X)を含有する化学増幅型フォトレジスト組成物。
〔2〕前記化合物(X)が、式(X’)

(式(X’)中、
複数存在するRは前記と同じ意味を表し、
2つのR''は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜30のアリール基、置換基を有してもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、ハロゲン原子及びメルカプト基からなる群より選ばれる基又は原子を表す。)
で表される化合物である前記〔1〕記載の化学増幅型フォトレジスト組成物。
〔3〕前記複数存在するRが、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、カルボキシル基、メチル基及びフェニル基からなる群より選ばれる基又は原子である前記〔1〕又は〔2〕記載の化学増幅型フォトレジスト組成物。
〔4〕前記化合物(X)が、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、1,10−フェナントロリン、4,7−ジヒドロキシ−1,10−フェナントロリン又は2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリンである前記〔1〕記載の化学増幅型フォトレジスト組成物。
〔5〕前記樹脂(A)が、アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸の作用によりアルカリ水溶液に溶解しうる樹脂を含む前記〔1〕〜〔4〕のいずれか記載の化学増幅型フォトレジスト組成物。
〔6〕前記〔1〕〜〔5〕のいずれか記載の化学増幅型レジスト組成物であって、
該化学増幅型レジスト組成物の総質量に対して、前記酸発生剤(B)の含有割合が0.05〜5質量%の範囲であり、前記樹脂(A)の含有割合が5〜60質量%の範囲であり、前記化合物(X)の含有割合が0.001〜1質量%である化学増幅型レジスト組成物。
〔7〕金、銅、ニッケル、スズ、パラジウム及び銀からなる群より選ばれる1種以上の金属を含む導電材料を有する基板上に、膜厚4〜150μmのフォトレジスト膜を形成するために用いられる前記〔1〕〜〔6〕のいずれか記載の化学増幅型フォトレジスト組成物。
〔8〕さらに溶剤(D)を含有する前記〔1〕〜〔7〕のいずれか記載の化学増幅型フォトレジスト組成物。
〔9〕(1)前記〔8〕記載の化学増幅型フォトレジスト組成物を基板上に塗布する工程

(2)塗布後の組成物を乾燥してフォトレジスト膜を形成する工程;
(3)フォトレジスト膜を露光する工程;
(4)露光後のフォトレジスト膜を加熱する工程;及び
(5)加熱後のフォトレジスト膜を現像する工程
を含むレジストパターンの製造方法。
〔10〕前記基板が、金、銅、ニッケル、スズ、パラジウム及び銀からなる群より選ばれる1種以上の金属を含む導電材料を有する基板である前記〔9〕記載のレジストパターンの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、レジストパターン形成における裾引き発生を極めて抑制し得る化学増幅型フォトレジスト組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例において、製造されたレジストパターンにおける裾引き発生の良否の判定方法を模式的に示す図である。
【図2】本発明の実施例において、製造されたレジストパターンのトップ形状の良否を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の化学増幅型フォトレジスト組成物(以下、場合により「本レジスト組成物」という。)は、樹脂(A)、酸発生剤(B)及び前記式(X)で表される化合物(X)を含有することを特徴とする。以下、本レジスト組成物の構成成分を、化合物(X)、樹脂(A)及び酸発生剤(B)の順で説明し、さらに本レジスト組成物が任意に含有する構成成分、本レジスト組成物の調製方法、並びに、本レジスト組成物を用いるレジストパターン、特に厚膜レジストパターンの製造方法について説明する。
【0010】
本明細書では、特に断りのない限り、炭素数を適宜選択しながら、以下の置換基の例示は、同様の置換基を有するいずれの化学構造式においても適用される。アルキル基又はアルカンジイル基のように直鎖状又は分岐状をとることができるものは、そのいずれをも含む。立体異性体が存在する場合は、全ての立体異性体を包含する。以下の置換基の例示において、「C」に付して記載した数値は、各々の基の炭素数を示すものである。
さらに、本明細書において、「(メタ)アクリル系モノマー」とは、「CH2=CH−CO−」又は「CH2=C(CH3)−CO−」の構造を有するモノマーの少なくとも1種を意味する。同様に「(メタ)アクリレート」及び「(メタ)アクリル酸」とは、それぞれ「アクリレート及びメタクリレートの少なくとも1種」並びに「アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種」を意味する。
【0011】
本明細書において、炭化水素基とは、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基、並びにこれらの組み合わせである。脂肪族炭化水素基のうち1価のものは典型的には、アルキル基及びシクロアルキル基である。芳香族炭化水素基のうち1価のものは典型的には、アリール基である。
【0012】
アルキル基の具体例は、メチル基(C)、エチル基(C)、プロピル基(C)、ブチル基(C)、ペンチル基(C)、ヘキシル基(C)、ヘプチル基(C)、オクチル基(C)、デシル基(C10)、ドデシル基(C12)、テトラデシル基(C14)、ヘキサデシル基(C16)、オクタデシル基(C18)及びイコシル基(C20)などである。
アルカンジイル基とは、例えば、ここに例示したアルキル基から水素原子を1個取り去ったものであり、その具体例は、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、ウンデカン−1,11−ジイル基、ドデカン−1,12−ジイル基、トリデカン−1,13−ジイル基、テトラデカン−1,14−ジイル基、ペンタデカン−1,15−ジイル基、ヘキサデカン−1,16−ジイル基、ヘプタデカン−1,17−ジイル基、メチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基、2−プロピリデン基、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,2−プロピレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基及び2−メチル−1,4−ブチレン基などである。
【0013】
シクロアルキル基は、以下に示す単環式及び多環式のいずれをも包含する。
【0014】
単環式のシクロアルキル基は、以下の式(KA−1)〜(KA−7)で表されるシクロアルカンの水素原子を1個取り去った基である。

【0015】
多環式の脂肪族炭化水素基は、以下の式(KA−8)〜(KA−13)でそれぞれ表されるシクロアルカンの水素原子を1個取り去った基である。

【0016】
2価のシクロアルカンジイル基は、式(KA−1)〜式(KA−13)のシクロアルカンから水素原子を2個取り去った基が挙げられる。
【0017】
ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子である。
【0018】
アルキル基、アルカンジイル基、シクロアルキル基及びシクロアルカンジイル基は置換基を有していてもよい。このような置換基としては、そのつど定義するが、例えば、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アリール基、アラルキル基及びアリールオキシ基が挙げられる。
【0019】
アルコキシ基としては、メトキシ基(C)、エトキシ基(C)、プロポキシ基(C)、ブトキシ基(C)、ペンチルオキシ基(C)、ヘキシルオキシ基(C)、ヘプチルオキシ基(C7)、オクチルオキシ基(C8)、デシルオキシ基(C10)、ドデシルオキシ基(C12)、テトラデシルオキシ基(C14)及びヘキサデシルオキシ基(C16)などが挙げられる。
アシル基としては、アセチル基(C)、プロピオニル基(C)、ブチリル基(C)、バレイル基(C)、ヘキシルカルボニル基(C)、ヘプチルカルボニル基(C7)、オクチルカルボニル基(C8)及びデシルカルボニル基(C10)などのアルキル基とカルボニル基とが結合したもの、並びにベンゾイル基(C7)などのアリール基とカルボニル基とが結合したものが挙げられる。
アシルオキシ基としては、アセチルオキシ基(C)、プロピオニルオキシ基(C)、ブチリルオキシ基(C)及びイソブチリルオキシ基(C)などが挙げられる。
アラルキル基としては、ベンジル基(C7)、フェネチル基(C8)、フェニルプロピル基(C9)及びナフチルメチル基などが挙げられる。
アリールオキシ基としては、フェニルオキシ基(C)及びナフチルオキシ基(C10)などのアリール基と酸素原子とが結合したものが挙げられる。
【0020】
アリール基としては、フェニル基(C)、ナフチル基(C10)、アントニル基(C14)、ビフェニル基(C12)、フェナントリル基(C14)及びフルオレニル基(C13)などが挙げられる。2価のアリーレン基は例えば、ここに例示したアリール基から、さらに水素原子1個と取り去った基などを挙げることができる。
【0021】
アリール基及びアリーレン基も置換基を有することがある。このような置換基はそのつど定義するが、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシル基、アルキル基及びアリールオキシ基を挙げることができる。これらのうち、アルキル基は、鎖式脂肪族炭化水素基として例示したものと同じであり、芳香族炭化水素基に任意に有する置換基のうち、アルキル基以外のものは、脂肪族炭化水素基の置換基として例示したものと同じものを含む。
【0022】
<化合物(X)>
本レジスト化合物に含有される化合物(X)は上述のとおり、式(X)で表される。繰り返しになるが、式(X)を以下に示す。

(式(X)中、
複数存在するRは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜30のアリール基、置換基を有してもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、ハロゲン原子及びメルカプト基からなる群より選ばれる基又は原子を表す。
2つのR'は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜30のアリール基、置換基を有してもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、ハロゲン原子及びメルカプト基からなる群より選ばれる基又は原子を表すか、2つのR'が互いに結合し、これらが結合する炭素原子とともに環を形成する。)
【0023】
化合物(X)のR及びR'について説明する。
ハロゲン原子はすでに例示したもののいずれでもよい。
【0024】
アルキル基は炭素数1〜12の範囲において、すでに例示したものを含む。当該アルキル基は、炭素数が1〜6の範囲であると好ましく、メチル基又はエチル基であると、より好ましく、メチル基がさらに好ましい。なお、当該アルキル基が置換基を有する場合、その置換基にある炭素数を含めての炭素数の総和が前記の範囲であると好ましい。
【0025】
シクロアルキル基は炭素数3〜12の範囲において、すでに例示したものを含む。当該シクロアルキル基は、炭素数3〜6の範囲であると好ましく、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基であると、より好ましく、シクロヘキシル基がさらに好ましい。なお、当該シクロアルキル基が置換基を有する場合、その置換基にある炭素数を含めての炭素数の総和が前記の範囲であると好ましい。
【0026】
アリール基は炭素数6〜30の範囲において、すでに例示したものを含む。当該アリール基は、炭素数6〜12の範囲であると好ましく、フェニル基又はナフチル基であると、より好ましく、フェニル基がさらに好ましい。なお、当該アリール基が置換基を有する場合、その置換基にある炭素数を含めての炭素数の総和が前記の範囲であると好ましい。
【0027】
また、R及びR'はカルボキシル基やスルホン酸基といった酸性基であってもよいが、かかる酸性基は例えば、アンモニウムイオンなどにより中和されているとより好ましい。
【0028】
化合物(X)にある2つのR'は互いに結合して、それらが結合している炭素原子とともに環を形成していてもよく、その場合の環の炭素数は20以下の範囲から選ばれるが、2つのR'が互いに結合して環を形成している場合、その環はベンゼン環であると好ましい。2つのR'は互いに結合してベンゼン環を形成している場合の化合物(X)は、以下の式(X’)で表される。

(式(X’)中、
複数存在するRは前記と同じ意味を表し、
2つのR''は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜30のアリール基、置換基を有してもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、ハロゲン原子及びメルカプト基からなる群より選ばれる基又は原子を表す。)
【0029】
''の置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜30のアリール基、及び、置換基を有してもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基の具体例及びその好適例はいずれも、Rの場合で説明したものと同じである。
【0030】
化合物(X)、とりわけ前記式(X’)で表される化合物(X)は公知の方法により製造することもできるが、フェナントロリン誘導体として市場から容易に入手できるものをそのまま、或いは必要により精製して用いることもできる。市販されているフェナントロリン誘導体の中でも、本レジスト組成物に用いる化合物(X’)としては、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、1,10−フェナントロリン、4,7−ジヒドロキシ−1,10−フェナントロリン及び2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリンなどが特に好ましい。
【0031】
<樹脂(A)>
本レジスト組成物は樹脂(A)を含有する。かかる樹脂(A)は単独種の樹脂であっても、2種以上の樹脂を組み合わせて用いることもできるが、アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸の作用によりアルカリ水溶液に溶解しうる樹脂を少なくも1種含有することが特に好ましい。以下、アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸の作用によりアルカリ水溶液に溶解しうる樹脂を場合により、「酸作用特性樹脂」という。
【0032】
酸作用特性樹脂は好ましくは、ポリヒドロキシスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂及びノボラック系樹脂からなる群より選ばれるものである。以下、これらの樹脂をその具体例を挙げつつ説明する。
【0033】
(メタ)アクリル系樹脂は例えば、式(I)で表される化合物由来の構造単位を有し、そのポリスチレン換算の重量平均分子量が50000〜300000の重合体を好ましいものとして挙げることができる。以下、かかる(メタ)アクリル系樹脂の一例として、特許文献1記載の(メタ)アクリル系樹脂を挙げ、該(メタ)アクリル系樹脂について詳述する。

(式(I)中、
は、水素原子又はメチル基を表す。R2は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、または式(II)で表される基を表す。)

(式(II)中、
は、炭素数1〜6のアルカンジイル基を表す。Rは、炭素数1〜6のアルキル基を表す。nは1〜30の整数を表す。
nが2以上の場合、複数存在するRは互いに同一又は相異なる。)
【0034】
式(I)で示される化合物としては、例えば、
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル及び(メタ)アクリル酸t−ブチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;
(メタ)アクリル酸シクロペンチル及び(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル類;
(メタ)アクリル酸アダマンチルなどの多環式(メタ)アクリル酸エステル類;
(メタ)アクリル酸エチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸エチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸エチレングリコールモノプロピルエーテル、(メタ)アクリル酸エチレングリコールモノブチルエーテル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ペンタエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ヘキサエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ノナエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸オクタエチレングリコールモノメチルエーテル及び(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテルなどの(メタ)アクリル酸エステル類など
が挙げられる。これらの中でも、式(I)で表される化合物としては、t−ブチル(メタ)アクリレートであるか、Rが式(II)で表される基である化合物が好ましく、とりわけ好ましい(メタ)アクリル系樹脂は、t−ブチル(メタ)アクリレート由来の構造単位と、Rが式(II)で表される基である式(I)で表される化合物由来の構造単位とを有するものである。この場合の式(I)で表される化合物は、nが2〜16の範囲であるRを有していると、とりわけ好ましい。なお、ここでいう「t−ブチル」とは、「tert−ブチル」を意味する。
【0035】
上述した、Rが式(II)で表される基である、式(I)で表される化合物及びt−ブチル(メタ)アクリレートにそれぞれ由来する構造単位を有する(メタ)アクリル系樹脂の一例を、当該樹脂の製造用に用いた化合物の組み合わせで示すと、t−ブチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸オクタエチレングリコールモノメチルエーテル/(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノメチルエーテルを共重合させた樹脂を挙げることができる。
【0036】
前記(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量は、上述のとおり50000〜300000の範囲であるが、100000〜250000の範囲がより好ましく、100000〜200000の範囲がさらに好ましい。
【0037】
該ポリヒドロキシスチレン系樹脂とは、典型的にはポリヒドロキシスチレンに含まれるフェノール性水酸基の一部又は全部が、酸の作用により脱保護反応が生じうる保護基で保護されたものであり、典型的には式(S)で表される構造単位を有するものである。

[式中、
10は、ハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、水素原子又はハロゲン原子を表す。
laは0〜4の整数を表す。
11は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜4のアシル基、炭素数2〜4のアシルオキシ基、アクリロイル基又はメタクリロイル基を表し、laが2以上である場合、複数存在するR11は互いに同一又は相異なる。
12及びR13はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表す。
14は、置換基を有していてもよい炭素数1〜17のアルカンジイル基又は単結合を表し、該アルカンジイル基に含まれるメチレン基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又は−N(R)−(ただし、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す)で表される基に置き換わっていてもよい。
15は、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基を表す。]
【0038】
該ポリヒドロキシスチレン系樹脂は、式(S)で表される構造単位の他に構造単位を有していてもよく、かかる他の構造単位としては、式(S)の−C(R12)(R13)−O−R14−R15で表される基が水素原子に置き換わった構造単位や、前記(メタ)アクリル系樹脂を構成する構造単位(式(I)で表される化合物由来の構造単位など)が挙げられる。
【0039】
ノボラック系樹脂は、該ノボラック樹脂に含まれるフェノール性水酸基の一部又は全部が、酸の作用により脱保護反応が生じうる保護基で保護されたものが挙げられる。この酸の作用により脱保護反応が生じうる保護基とは、すでにポリヒドロキシスチレン系樹脂で述べた基(−C(R12)(R13)−O−R14−R15で表される基)と同じである。なお、ここでいうノボラック樹脂については、本レジスト組成物に含有することのできるアルカリ可溶性樹脂の一例として後述する。
【0040】
以上、本レジスト組成物の樹脂(A)に好ましく含有される酸作用特性樹脂について、説明したが、該樹脂(A)はさらにアルカリ可溶性樹脂を含有していてもよく、その場合のアルカリ可溶性樹脂はノボラック樹脂などが挙げられる。
【0041】
以下、ノボラック樹脂について説明する。
前記ノボラック樹脂は、フェノール系化合物とアルデヒドとを触媒の存在下に縮合させて得られる樹脂である。フェノール系化合物としては、例えば、フェノール;o−、m−又はp−クレゾール;2,3−、2,5−、3,4−又は3,5−キシレノール;2,3,5−トリメチルフェノール;2−、3−又は4−tert−ブチルフェノール;2−tert−ブチル−4−又は5−メチルフェノール;2−、4−又は5−メチルレゾルシノール;2−、3−又は4−メトキシフェノール;2,3−、2,5−又は3,5−ジメトキシフェノール;2−メトキシレゾルシノール;4−tert−ブチルカテコール;2−、3−又は4−エチルフェノール;2,5−又は3,5−ジエチルフェノール;2,3,5−トリエチルフェノール;2−ナフトール;1,3−、1,5−又は1,7−ジヒドロキシナフタレン;キシレノールとヒドロキシベンズアルデヒドとの縮合により得られるポリヒドロキシトリフェニルメタン系化合物などが挙げられる。これらのフェノール系化合物は、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−キシレノール、2,5−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2−t−ブチルフェノール、3−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノールが好ましい。
【0042】
アルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、アクロレイン又はクロトンアルデヒドのような脂肪族アルデヒド類;シクロヘキサンアルデヒド、シクロペンタンアルデヒド、フルフラール又はフリルアクロレイン等の脂環式アルデヒド類;ベンズアルデヒド、o−、m−もしくはp−メチルベンズアルデヒド、p−エチルベンズアルデヒド、2,4−、2,5−、3,4−もしくは3,5−ジメチルベンズアルデヒド又はo−、m−もしくはp−ヒドロキシベンズアルデヒドのような芳香族アルデヒド類;フェニルアセトアルデヒド又はケイ皮アルデヒドのような芳香脂肪族アルデヒド類などが挙げられる。これらのアルデヒドも、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。これらのアルデヒドのなかでは、工業的に入手しやすいことから、ホルムアルデヒドが好ましい。
【0043】
フェノール系化合物とアルデヒドとの縮合に用いられる触媒の例としては、塩酸、硫酸、過塩素酸又は燐酸のような無機酸;蟻酸、酢酸、蓚酸、トリクロロ酢酸又はp−トルエンスルホン酸のような有機酸;酢酸亜鉛、塩化亜鉛又は酢酸マグネシウムのような二価金属塩などが挙げられる。これらの酸触媒も、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。かかる触媒の使用量は、例えば、アルデヒド1モルに対して0.01〜1モルの範囲である。
【0044】
フェノール系化合物とアルデヒドとの縮合反応は常法に従って行うことができる。例えば、フェノール系化合物とアルデヒドとを混合した後、例えば、60〜120℃の範囲の温度で2〜30時間程度反応させることで、当該縮合は実施される。当該縮合は適当な反応溶媒の存在下で実施してもよい。反応終了後、例えば、必要に応じて反応混合物に水に不溶な溶媒を加え、反応混合物を水で洗浄し、濃縮することにより、ノボラック樹脂を取り出すことができる。
【0045】
本レジスト組成物中に含有される樹脂(A)に酸作用特性樹脂(例えば、ポリヒドロキシスチレン系樹脂及び/又は(メタ)アクリル系樹脂)と、アルカリ可溶性樹脂(例えば、ノボラック樹脂)とを混合して用いる場合、その質量比は、[酸作用特性樹脂]/[アルカリ可溶性樹脂]の形式で表して、1/4〜4/1の範囲が好ましく、1/2〜3/2の範囲がさらに好ましい。
【0046】
<酸発生剤(B)>
次に、本レジスト組成物に含有される酸発生剤(B)について説明する。
該酸発生剤(B)は、光又は放射線の照射により酸を発生する化合物であり、その化合物自体に、又はその化合物を含む組成物に、光又は電子線などの放射線を作用させることにより、その化合物が分解して酸を発生するものである。酸発生剤(B)から発生する酸が前記樹脂(A)中の酸作用特性樹脂に作用して、レジストパターンを製造することができる。
【0047】
該酸発生剤(B)はイオン性酸発生剤であっても、非イオン性酸発生剤であっても、これらの組み合わせであってもよい。具体的な酸発生剤(B)としては、オニウム塩、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物、スルホン化合物及びスルホン酸化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
【0048】
好ましいイオン性酸発生剤としては、例えば、式(Va)で示される化合物、(Vb)で示される化合物、式(Vc)で示される化合物及び式(III)で示される化合物が挙げられる。好ましい非イオン性酸発生剤として及び式(IV)で示される化合物および式(VI)で示される化合物が挙げられる。


(式中、
、P及びPは、それぞれ独立に、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。a、b及びcは、それぞれ独立に0〜3の整数である。aが2以上のとき、複数のP1は互いに同一又は相異なり、bが2以上のとき、複数のP2は互いに同一又は相異なり、cが2以上のとき、複数のP3は互いに同一又は相異なる。Z-は、有機対イオンを表す。)
【0049】

(式中、
4及びP5は、それぞれ独立に、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。d及びeは、それぞれ独立に0又は1である。Z-は、有機対イオンを表す。)
【0050】

(式中、
6及びP7は、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数3〜10のシクロアルキル基を表すか、P6とP7とが互いに結合して、それらが結合する硫黄原子とともに炭素数3〜7の環を形成する。該環がメチレン基を含む場合、そのメチレン基はカルボニル基、酸素原子又は硫黄原子に置き換わっていてもよい。P8は水素原子を表し、P9は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基又は置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表すか、或いは、P8とP9とが互いに結合してこれらが結合している炭素原子とともに環を形成する。Z-は、有機対イオンを表す。)
【0051】

(式中、
Aは、酸素原子又は硫黄原子を表す。2つのR5は、それぞれ独立に、メチル基又はフェニル基を表す。R6は、炭素数1〜8のペルフルオロアルキル基を表す。)
【0052】

(式中、
10は、置換基を有してもよい炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基又は置換基を有してもよい炭水素1〜16の芳香族基を表す。)
【0053】

(式中、
A及びR6は、式(IV)と同じ意味である。2つのRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
【0054】
式(Va)におけるP1、P2及びP3、式(Vb)のP及びP、式(Vc)のP及びPにおける、アルキル基、シクロアルキル基及びアルコキシ基の具体例は、炭素数がそれぞれの範囲ですでに例示したものを含む。式(III)及び式(IV)のRのペルフルオロアルキル基とは、炭素数1〜8のアルキル基に含まれる水素原子の全てがフッ素原子に置換されたものである。
【0055】
式(Va)で表される酸発生剤(B)から、有機対イオン(Z)を取り除いたカチオンの具体的な例としては、次のようなものを挙げることができる。

【0056】
式(Vb)で表される酸発生剤(B)から、有機対イオン(Z)を取り除いたカチオンの具体的な例としては、次のようなものを挙げることができる。

【0057】
式(Vc)で表される酸発生剤(B)から、有機対イオン(Z)を取り除いたカチオンの具体的な例としては、次のようなものを挙げることができる。

【0058】

【0059】

【0060】
式(III)で表される酸発生剤(B)から、RSOを取り除いたカチオンの具体的な例としては、次のようなものを挙げることができる。

【0061】
式(Va)、式(Vb)及び式(Vc)でそれぞれ表される酸発生剤(B)中の有機対イオン(Z-)について、その具体例を説明する。
該有機対イオン(Z-)の具体例の第1は、式(VII)で示されるアニオンである。→

(式中、
1、Q2、Q3、Q4及びQ5(Q1〜Q5)は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルデヒド基(−CHO)、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数1〜16のアルコキシ基、炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、シアノ基、炭素数1〜4個のアルキルチオ基、炭素数1〜4個のアルキルスルホニル基、水酸基、ニトロ基又は式(VIII)

(式中、
b1は、酸素原子又は硫黄原子を含んでいてもよい直鎖状アルカンジイル基を表し、Cy1は、炭素数3〜20個の脂環式炭化水素基を表す。)
で示される基を表す。)
【0062】
式(VII)のQ1〜Q5におけるアルキル基及びアルコキシ基の具体例は、炭素数1〜16の範囲においてすでに例示したものを含む。
【0063】
炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基とは、炭素数1〜8のアルキル基に含まれる水素原子の一部又は全部がハロゲン原子に置換されたものであり、その具体例は、トリフルオロメチル基、ペルフルオロエチル、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロイソプロピル基及びペルフルオロブチル基などである。
炭素数6〜12のアリール基の具体例は、炭素数がこの範囲においてすでに例示したもの、さらにアリール基に含まれる水素原子の一部がアルキル基又はアルコキシ基などに置換され、その炭素数が12以下のものである。例えば、フェニル基、トリル基、メトキシフェニル基及びナフチル基などが挙げられる。
炭素数7〜12のアラルキル基としては、ベンジル基、クロロベンジル基、メトキシベンジル基などが挙げられる。
炭素数1〜4のアルキルチオ基としては、すでに例示した炭素数1〜4のアルキル基と硫黄原子とが組み合わさったものであり、具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基及びブチルチオ基などが挙げられる。
炭素数1〜4個のアルキルスルホニル基としては、すでに例示した炭素数1〜4のアルキル基とスルホニル基とが組み合わさったものであり、具体的には、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基及びブチルスルホニル基などが挙げられる。
【0064】
また、式(VII)のQ〜Q5のうち、2個以上が式(VIII)で示される基である場合は、複数存在するXは互いに同一又は相異なり、複数存在するCy1は互いに同一又は相異なる。
【0065】
b1としては、次のようなものが挙げられる。


ここに示すRb1の具体例の中でも、式(a−1)〜式(a−7)でそれぞれ表される直鎖状アルカンジイル基が好ましい。
【0066】
Cy1としては、次のようなものが挙げられる。

ここに示すCyの具体例の中でも、シクロヘキシル基[式(b−4)]、2−ノルボルニル基[式(b−21)]、2−アダマンチル基[式(b−23)]及び1−アダマンチル基[式(b−24)]が好ましい。
【0067】
また、式(VII)で表される有機対イオン(Z-)の具体例として、次のようなものを挙げることができる。

【0068】

【0069】

【0070】

【0071】

【0072】

【0073】

【0074】

【0075】

【0076】

【0077】

【0078】

【0079】

【0080】

【0081】

【0082】
前記有機対イオン(Z-)の具体例の第2は、式(VIIIa)で表されるアニオンである。

(式中、
6は、炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基、置換されていてもよいナフチル基又は置換されていてもよいアントリル基を表す。)
【0083】
式(VIIIa)で表されるアニオンとして、次のものが挙げられる。

【0084】
前記有機対イオン(Z-)の具体例の第3は、式(VIIIb)で表されるアニオンである。

(式中、
7及びQ8は、それぞれ独立に、炭素数1〜20のペルフルオロアルキル基、又は、炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表す。)
【0085】
式(VIIIb)で表されるアニオンとして、次のものが挙げられる。

【0086】
式(Va)、式(Vb)及び式(Vc)でそれぞれ表される酸発生剤(B)において、該酸発生剤(B)を構成するカチオンとアニオンとに分けて説明したが、これらの酸発生剤(B)は、すでに例示したカチオンと、例示したアニオンとを任意に組み合わせることができる。
【0087】
式(IV)で表される酸発生剤(B)としては、例えば、以下に示すものが挙げられる。



【0088】
式(VI)で表される酸発生剤(B)としては、例えば、以下に示すものが挙げられる。


【0089】
以上、本レジスト組成物に含有される酸発生剤(B)をその具体例を示しつつ説明したが、これらの酸発生剤(B)のなかでも、本レジスト組成物に含有される酸発生剤(B)は、式(III)又は式(IV)で表される酸発生剤(B)、或いは、式(III)及び式(IV)でそれぞれ表される酸発生剤(B)の組み合わせである。
【0090】
かかる酸発生剤(B)は、市場から入手できるものを用いてもよいし、公知の方法に準じて製造したものを用いてもよい。
【0091】
<塩基性化合物(以下、場合により「塩基性化合物(C)」という。)>
以上、本レジスト組成物の構成成分である化合物(X)、樹脂(A)及び酸発生剤(B)について説明したが、本レジスト組成物には、レジスト分野でクエンチャーと呼ばれる塩基性化合物(C)を含有していてもよい。本レジスト組成物に、この塩基性化合物(C)を含有させる場合、その含有量は、本レジスト組成物の固形分の質量に対し、0.01〜5質量%程度であり、より好ましく0.01〜1質量%程度である。
【0092】
塩基性化合物(C)は、例えばアミン及びアンモニウム塩が挙げられる。アミンとしては、脂肪族アミン及び芳香族アミンが挙げられる。脂肪族アミンとしては、第一級アミン、第二級アミン及び第三級アミンが挙げられる。塩基性化合物(C)として、具体的には、式(C1)で表される化合物〜式(C6)で表される化合物が挙げられ、より好ましくは式(C1−1)で表される化合物が挙げられる。
【0093】

[式中、
c1、Rc2及びRc3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表し、該アルキル基及び該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、アミノ基又は炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよく、該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい。]
【0094】

[式中、
c2及びRc3は、上記と同じ意味を表す。
c4は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。
m3は0〜3の整数を表し、m3が2以上のとき、複数のRc4は、互いに同一であるか相異なる。]
【0095】

[式中、
c5、Rc6、Rc7及びRc8は、それぞれ独立に、Rc1と同じ意味を表す。
c9は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6の脂環式炭化水素基又は炭素数2〜6のアルカノイル基を表す。
n3は0〜8の整数を表し、n3が2以上のとき、複数のRc9は、互いに同一であるか相異なる。]
【0096】

[式中、
c10、Rc11、Rc12、Rc13及びRc16は、それぞれ独立に、Rc1と同じ意味を表す。
c14、Rc15及びRc17は、それぞれ独立に、Rc4と同じ意味を表す。
o3及びp3は、それぞれ独立に0〜3の整数を表し、o3又はp3が2以上であるとき、それぞれ、複数のRc14及びRc15は互いに同一であるか相異なる。
c1は、炭素数1〜6のアルカンジイル基、−CO−、−C(=NH)−、−S−又はこれらを組合せた2価の基を表す。]
【0097】
式(C1)〜式(C6)においては、アルキル基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、アルコキシ基、アルカンジイル基は、上述したものと同様のものが挙げられる。
アルカノイル基としては、アセチル基、2−メチルアセチル基、2,2−ジメチルアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、及び2,2−ジメチルプロピオニル基などが挙げられる。
【0098】
式(C1)で表される化合物としては、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミン、アニリン、ジイソプロピルアニリン、2−,3−又は4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、ジフェニルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、メチルジブチルアミン、メチルジペンチルアミン、メチルジヘキシルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、メチルジヘプチルアミン、メチルジオクチルアミン、メチルジノニルアミン、メチルジデシルアミン、エチルジブチルアミン、エチルジペンチルアミン、エチルジヘキシルアミン、エチルジヘプチルアミン、エチルジオクチルアミン、エチルジノニルアミン、エチルジデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリス〔2−(2−メトキシエトキシ)エチル〕アミン、トリイソプロパノールアミンエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン及び4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタンなどが挙げられ、好ましくはジイソプロピルアニリンが挙げられ、特に好ましくは2,6−ジイソプロピルアニリンが挙げられる。
【0099】
式(C2)で表される化合物としては、ピペラジンなどが挙げられる。
式(C3)で表される化合物としては、モルホリンなどが挙げられる。
式(C4)で表される化合物としては、ピペリジン及び特開平11−52575号公報に記載されているピペリジン骨格を有するヒンダードアミン化合物などが挙げられる。
式(C5)で表される化合物としては、2,2’−メチレンビスアニリンなどが挙げられる。
式(C6)で表される化合物としては、イミダゾール及び4−メチルイミダゾールなどが挙げられる。
【0100】
アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトライソプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラオクチルアンモニウムヒドロキシド、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、3−(トリフルオロメチル)フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ブチルアンモニウムサリチラート及びコリンなどが挙げられる。
【0101】
<溶剤(以下、場合により「溶剤(D)」という。)>
後述するレジストパターンの製造に用いるためは、本レジスト組成物は溶剤(D)を含有すると好ましい。
【0102】
溶剤(D)は、本レジスト組成物に用いる化合物(X)や樹脂(A)などの種類及びその量に応じて最適なものを選択できるが、例えば、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルエステル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルのようなグリコールエーテル類;乳酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル及びピルビン酸エチルのようなエステル類;アセトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン及びシクロヘキサノンのようなケトン類;γ−ブチロラクトンのような環状エステル類;等を挙げることができる。溶剤(D)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0103】
また、溶剤(D)は、後述するレジストパターンの製造において、基板上に形成されるフォトレジスト膜が、均一で平滑な塗膜を与えるようにして選択される。
【0104】
<その他の成分(以下、場合により「成分(F)」という。)>
本レジスト組成物は、必要に応じて、成分(F)を含有していてもよい。かかる成分(F)は特に限定はなく、レジスト分野で公知の添加剤、例えば、増感剤、溶解抑止剤、界面活性剤、安定剤及び染料などを利用できる。
【0105】
<本レジスト組成物の調製方法>
本レジスト組成物は、化合物(X)、樹脂(A)、酸発生剤(B)及び溶剤(D)を混合することで調製することができる。かかる混合において、その混合順は任意であり、特に限定されるものではない。混合する際の温度は、10〜40℃の範囲から、化合物(X)や樹脂(A)などの種類、化合物(X)や樹脂(A)などの溶剤(D)に対する溶解度などに応じて適切な温度範囲を選ぶことができる。混合時間は、混合温度に応じて選べばよいが、0.5〜24時間が好ましい。なお、混合手段は特に限定されず、攪拌混合などを用いることができる。
【0106】
本レジスト組成物の構成成分の含有割合は、本レジスト組成物の総質量を基準に好ましい範囲が定められる。例えば、該総質量を基準に、化合物(X)が0.001〜1質量%の範囲であり、樹脂(A)が5〜60質量%の範囲であり、酸発生剤(B)が0.05〜5質量%の範囲%の範囲であると好ましい。溶剤(D)の含有割合は、後述するレジストパターンの製造において、所望の膜厚のフォトレジスト膜又はレジストパターンを製造できる範囲に溶剤(D)の含有割合は定められる。本レジスト組成物における溶剤(D)の含有割合は、例えば液体クロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィーなどの公知の分析手段で測定することができる。
【0107】
このように、化合物(X)、樹脂(A)、酸発生剤(B)及び溶剤(D)、並びに必要に応じて用いられる塩基性化合物(C)又は成分(F)の各々を好ましい含有量で混合した後は、孔径0.01〜0.2μm程度のフィルターを用いてろ過などすることにより、本レジスト組成物は調製できる。
【0108】
かくして調製される本レジスト組成物は、膜厚が約2〜200μm、好ましくは膜厚が約4〜150μm、より好ましくは膜厚が約5〜約100μmのフォトレジスト層又はレジストパターンを基板(支持体)上に製造するのに適している。以下、このフォトレジスト層又はレジストパターンの製造方法について説明する。
【0109】
<レジストパターンの製造方法>
本レジスト組成物によるレジストパターンの製造方法は、
(1)本レジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物を乾燥してフォトレジスト膜を形成する工程;
(3)フォトレジスト膜を露光する工程;
(4)露光後のフォトレジスト膜を加熱する工程;及び
(5)加熱後のフォトレジスト膜を現像する工程
を含む。以下、ここに示す工程の各々を、「工程(1)」〜「工程(5)」のようにいう。
【0110】
工程(1)における本レジスト組成物の基板上への塗布は、スピンコーターなど、半導体の微細加工のレジスト材料塗布用として広く用いられている塗布装置によって行うことができる。本レジスト組成物は、バンプ形成などに用いるレジストパターンの製造に好適であるので、かかる塗布膜の膜厚は工程(2)で得られるフォトレジスト膜が、膜厚4〜150μmの範囲になるようにして、好ましくは膜厚5〜50μmの範囲になるようにして定められる。なお、塗布膜の膜厚は、当該塗布装置の条件(塗布条件)を種々調節することで調整可能であり、適切な予備実験等を行うことにより、所望の膜厚の塗布膜になるように塗布条件を選ぶことができる。なお、本レジスト組成物を塗布する前に、基板を洗浄したり、反射防止膜を形成したりしておいてもよい。この反射防止膜の形成には例えば、市販の有機反射防止膜用組成物を用いることができる。
【0111】
すでに説明したとおり、本レジスト組成物は例えば、バンプ形成に必要な厚膜のフォトレジスト膜を製造することに適している。このバンプとは通常、以下の手順により形成される。すなわち、LSI素子等が加工されたウェハー上に、導電層となる導電材料(バリアメタル)を積層した後、当該導電層が積層された(付された)ウェハーの導電層表面上に所望のパターンからなるフォトレジスト膜を形成する。そして、この所望のパターンからなるフォトレジスト膜を鋳型として、メッキにより導電材料を析出させて電極を形成してから、鋳型であるフォトレジスト膜を除去する。そして、フォトレジスト膜を除去した部分に残存する導電層をエッチング等により除去する。本レジスト組成物はこのようなバンプ形成に用いられる基板、すなわち、その表面に導電材料が形成されている基板上に裾引きの発生が十分抑制され、形状(断面形状)に優れたフォトレジスト膜を製造することができる。バンプ形成に用いられる基板は、導電材料を有する基板、特に表面に導電材料が付された(積層された)基板である。当該導電材料は、金(Au)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)及び銀(Ag)からなる群より選ばれる1種以上の金属、又は当該群から選ばれる1種以上の金属を含む合金、すなわち、金、銅、ニッケル、スズ、パラジウム及び銀からなる群より選ばれる1種以上の金属を含む導電材料を挙げることができる。中でも、より低コストでバンプ形成を実施するうえでは、銅又は銅合金である導電材料を有する基板が好ましいが、本レジスト組成物は、上述の導電材料を有する基板のいずれを用いた場合であっても、該基板の導電材料上に裾引きの発生が十分抑制され、形状(断面形状)に優れたフォトレジスト膜を製造することができる。かかる本レジスト組成物の効果は、基板の本レジスト組成物を塗布する表面上の一部が金属酸化物などの絶縁材料となっていても発現される。以上、本レジスト組成物によりバンプを形成するための基板について説明したが、当該基板は、銅を含む導電材料を有するものが特に好ましい。
【0112】
工程(2)においては、基板上に塗布された本レジスト組成物、すなわち塗布膜を乾燥させて、該塗布膜から溶剤〔溶剤(D)〕を除去する。このような溶剤除去は、例えば、ホットプレートなどの加熱装置を用いた加熱手段(いわゆるプリベーク)、又は減圧装置を用いた減圧手段により、或いはこれらの手段を組み合わせて、該塗布膜から溶剤を蒸発させることにより行われる。加熱手段や減圧手段の条件は、本レジスト組成物に含まれる溶剤(D)の種類等に応じて選択でき、例えばホットプレートの場合、該ホットプレートの表面温度を50〜200℃程度の範囲にすることが好ましい。また、減圧手段では、適当な減圧機の中に、塗布膜が形成された基板を封入した後、該減圧機の内部圧力を1〜1.0×10Pa程度にすればよい。かくして塗布膜から溶剤を除去することにより、該基板上にはフォトレジスト膜が形成される。
【0113】
工程(3)は該フォトレジスト膜を露光する工程であり、好ましくは、露光機を用いて該組成物層を露光するものである。この際には、微細加工を実施しようとする所望のパターンが形成されたマスク(フォトマスク)を介して露光が行われる。露光機の露光光源としては、製造しようとするレジストパターンの解像度に応じて選択すればよく、i線、KrFエキシマレーザやArFエキシマレーザ等種々のものを用いることができる。また、該露光機は液浸露光機であってもよく、この場合の液浸媒体として例えば、超純水などが用いられる。
上述のとおり、マスクを介して露光することにより、該フォトレジスト膜には露光された部分(露光部)及び露光されていない部分(未露光部)が生じる。露光部のフォトレジスト膜では該フォトレジスト膜に含まれる酸発生剤(B)が露光エネルギーを受けて酸を発生し、さらに発生した酸との作用により、酸作用特性樹脂(前記(メタ)アクリル樹脂)が脱保護反応を生じ、結果として露光部のフォトレジスト膜にある樹脂(A)はアルカリ水溶液に可溶なものとなる。一方、未露光部では露光エネルギーを受けていないため、樹脂(A)はアルカリ水溶液に対して不溶又は難溶のままとなる。かくして、露光部にあるフォトレジスト膜と未露光部にあるフォトレジスト膜とは、アルカリ水溶液に対する溶解性が著しく相違するため、アルカリ水溶液による現像によりレジストパターンを形成することができる。
【0114】
工程(4)においては、露光部で生じうる脱保護基反応を、さらにその進行を促進するための加熱処理(いわゆるポストエキスポジャーベーク)が行われる。かかる加熱処理は前記工程(2)で示したホットプレートを用いる加熱手段などが好ましい。なお、工程(4)におけるホットプレート加熱を行う場合、該ホットプレートの表面温度は50〜200℃程度が好ましく、70〜150℃程度がより好ましい。加熱処理により、上記脱保護反応が促進される。
【0115】
工程(5)は、加熱後のフォトレジスト膜を現像する工程であり、好ましくは、加熱後のフォトレジスト膜を現像装置により現像するものである。ここでいう現像とは、加熱後のフォトレジスト膜をアルカリ水溶液と接触させることにより、露光部のフォトレジスト膜を該アルカリ水溶液に溶解させて除去することである。未露光部は、上述のとおりアルカリ水溶液に対して不溶又は難溶であるため、基板に残り、当該基板上にレジストパターンが製造される。
前記アルカリ水溶液としては、「アルカリ現像液」と称される本技術分野で公知のものを用いることができる。該アルカリ水溶液としては例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液や(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド(通称コリン)の水溶液などが挙げられる。
【0116】
現像後、好ましくは超純水などでリンス処理を行い、さらに基板及びレジストパターン上に残存している水分を除去することが好ましい。
【0117】
かくして、本レジスト組成物から製造されるレジストパターンは厚膜であり、裾引き現象の発現が極めて抑制されており、さらに該レジストパターンのトップ形状も良好であるので、バンプ形成のためのレジストパターンに極めて優れている。
【実施例】
【0118】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。
実施例及び比較例中、含有量及び使用量を表す「%」及び「部」は、特記ないかぎり質量基準である。
実施例において、化合物の構造は、質量分析(LC;Agilent製1100型、MASS;Agilent製LC/MSD型)で確認した。
重量平均分子量は、ポリスチレンを標準品として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー株式会社製HLC−8120GPC型、カラムは”TSKgel Multipore HXL−M”3本、溶媒はテトラヒドロフラン)により求めた値である。
カラム:TSKgel Multipore HXL-M x 3 + guardcolumn(東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/min
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
注入量:100μl
分子量標準:標準ポリスチレン(東ソー社製)
【0119】
合成例1(樹脂A1の合成)
攪拌器、還流冷却管、温度計を備えた四つ口フラスコに、ジオキサン118gを仕込み
77℃まで昇温した。そこへメタクリル酸tert−ブチル42.7g、メタクリル酸
ポリエチレングリコールメチルエーテル(共栄社化学(株)製ライトエステル130MA、式(II)におけるnが約9の化合物である。)29.8g、メタクリル酸メトキシジエチレングリコール45.2g、及びアゾビスイソブチロニトリル0.4gをジオキサン59gに溶解した溶液を1時間かけて滴下した。その後、さらに同温度で10時間撹拌を継続した。冷却後、反応混合物を、メタノール130g及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート92gで希釈し、希釈した反応混合物を、水1440gに注ぐことにより、樹脂を沈殿させた。沈殿物をろ過した後、ろ過した沈殿物を、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート184gにより溶解し、その溶解液を、メタノール423g及び水918gの混合溶媒に注ぐことにより、再び樹脂を沈殿させた。得られた沈殿をプロピレングリコールメチルエーテルアセテートに溶解後、濃縮を行って濃度40質量%の樹脂(A)溶液を得た。該樹脂(A)溶液に含まれる樹脂(A)を樹脂A1という。得られた樹脂A1の重量平均分子量は110000であった。
【0120】
合成例2(樹脂A2の合成)
攪拌器、還流冷却管、温度計を備えた四つ口フラスコに、2,5−キシレノール413.5g、サリチルアルデヒド103.4g、p−トルエンスルホン酸20.1g、及びメタノール826.9gを仕込み、還流状態まで昇温し、4時間保温した。冷却後、メチルイソブチルケトン1320gを仕込み、留去物の量が1075g程度になるまで常圧蒸留を行った。蒸留後、m−クレゾール762.7g及び2−tert−ブチル−5−メチルフェノール29.0を加え、65℃まで昇温し、さらに37%ホルマリン678gを滴下終了時に87℃になるように温調しながら1.5時間かけて滴下した。87℃で10時間保温した後メチルイソブチルケトン1115gを加え、イオン交換水で3回分液水洗を行った。得られた樹脂溶液にメチルイソブチルケトン500gを加えて全量が3435gになるまで減圧濃縮を行った。得られた樹脂液にメチルイソブチルケトン3796gとn−ヘプタン4990gを加え60℃に昇温して1時間攪拌した後、分液を行い下層の粘調な樹脂を取り出した。取り出した樹脂にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート3500gを加えて溶解し、1690gになるまで濃縮蒸留を行った。かくして得られた樹脂溶液に含まれる樹脂を樹脂A2とする。得られた樹脂A2の重量平均分子量は7000であった。
【0121】
実施例1〜5及び比較例1
以下の表1にします各成分を混合して溶解し、さらに孔径0.5μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過して、レジスト組成物を調製した。
【0122】
<樹脂(A)>
樹脂A1及び樹脂A2
<酸発生剤(B)>
酸発生剤B1

【0123】
<化合物(X)>
化合物X1:
2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン
化合物X2:
1,10−フェナントロリン
化合物X3:
4,7−ジヒドロキシ−1,10−フェナントロリン
化合物X4:
2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン
【0124】
<比較例用化合物>
化合物C1
N,N−ジシクロヘキシルメチルアミン
【0125】
<溶剤>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 24部
【0126】
実施例1〜5及び比較例1
以下の各成分を混合して溶解し、さらに孔径0.5μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過して、レジスト組成物を調製した。
【0127】
銅基板に上記のレジスト組成物を乾燥後の膜厚が20μmとなるようにスピンコートした。レジスト組成物塗布後は、ホットプレート上にて130℃で3分間プリベークした。こうしてフォトレジスト膜を形成したそれぞれのウェハーに、i−線ステッパー〔(株)ニコン製の“NSR 1755i7A”、NA=0.5〕を用い、露光量を段階的に変化させてラインアンドスペースパターンを露光した。
露光後は、ホットプレート上にて90℃で3分間ポストエキスポジャーベークを行い、さらに2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間のパドル現像を3回行った。
現像後のダークフィールドパターンを走査型電子顕微鏡で観察し、その結果を表2に示した。なお、ここでいうダークフィールドパターンとは、外側にクロム層(遮光部)をベースとしてライン状にガラス層(透光層)が形成されたレチクルを介した露光及び現像によって得られ、したがって露光現像後は、ラインアンドスペースパターンの周囲のレジストパターンである。
【0128】
【表1】

【0129】
<裾引き部の形状>
20μmのラインアンドスペースパターンのマスクを使用し、20μmのラインアンドスペースが1:1となる露光量において、図1に示すように、マスク寸法20μmにおけるスペースSに対し、裾引きをしていない部分(完全に解像している部分)をBとし、下記のような指標で評価した。結果を表4に示す。
1.0≦B/S≦0.9 「○」 裾引き良好
0.9<B/S≦0.75 「△」 裾引きあり
B/S<0.75 「×」 裾引きが著しい
<形状評価>
20μmのラインアンドスペースパターンのマスクを使用し、20μmのラインアンドスペースが1:1となる露光量において、図2(a)に示すように、トップ形状が矩形に近く良好なものを「○」、図2(b)に示すように、トップ形状が矩形に近く悪いものを「×」として判断した。その結果を表4に示す。
<解像度>
20μmのラインアンドスペースパターンが1:1となる露光量において、パターンの底部分を解像する最小マスク寸法(μm)を解像度(限界解像度)とした。
【0130】
【表2】

【0131】
参考例1〜3
実施例1及び実施例2のレジスト組成物、比較例1のレジスト組成物について、以下に示す条件で保存安定性を評価した。
【0132】
<保存安定性>
調製後40℃で保存したレジスト組成物を用い実施例と同じ条件で解像度及びパターン形状(裾引き及び形状)を評価し、形状が調製後の結果に対して変化が認められず、感度の変化率が10%未満であるか否かで保存安定性を評価した。実施例1及び実施例2のレジスト組成物は30日保存後も、調製後に比して形状及び解像度が略同等であり、優れた保存安定性を示した。一方、比較例1のレジスト組成物は、14日保存後で形状及び解像度が調製後よりも悪化し、保存安定性が悪いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本レジスト組成物は半導体加工、特にバンプ形成用のレジストパターン製造に極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂(A)、酸発生剤(B)及び
式(X)

(式(X)中、
複数存在するRは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜30のアリール基、置換基を有してもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、ハロゲン原子及びメルカプト基からなる群より選ばれる基又は原子を表す。
2つのR'は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜30のアリール基、置換基を有してもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、ハロゲン原子及びメルカプト基からなる群より選ばれる基又は原子を表すか、2つのR'が互いに結合し、これらが結合する炭素原子とともに環を形成する。)
で表される化合物(X)を含有する化学増幅型フォトレジスト組成物。
【請求項2】
前記化合物(X)が、式(X’)

(式(X’)中、
複数存在するRは前記と同じ意味を表し、
2つのR''は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜30のアリール基、置換基を有してもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、ハロゲン原子及びメルカプト基からなる群より選ばれる基又は原子を表す。)
で表される化合物である請求項1記載の化学増幅型フォトレジスト組成物。
【請求項3】
前記複数存在するRが、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、カルボキシル基、メチル基及びフェニル基からなる群より選ばれる基又は原子である請求項1又は2記載の化学増幅型フォトレジスト組成物。
【請求項4】
前記化合物(X)が、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、1,10−フェナントロリン、4,7−ジヒドロキシ−1,10−フェナントロリン又は2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリンである請求項1記載の化学増幅型フォトレジスト組成物。
【請求項5】
前記樹脂(A)が、アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸の作用によりアルカリ水溶液に溶解しうる樹脂を含む請求項1〜4のいずれか記載の化学増幅型フォトレジスト組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載の化学増幅型レジスト組成物であって、
該化学増幅型レジスト組成物の総質量に対して、前記酸発生剤(B)の含有割合が0.05〜5質量%の範囲であり、前記樹脂(A)の含有割合が5〜60質量%の範囲であり、前記化合物(X)の含有割合が0.001〜1質量%である化学増幅型レジスト組成物。
【請求項7】
金、銅、ニッケル、スズ、パラジウム及び銀からなる群より選ばれる1種以上の金属を含む導電材料を有する基板上に、膜厚4〜150μmのフォトレジスト膜を形成するために用いられる請求項1〜6のいずれか記載の化学増幅型フォトレジスト組成物。
【請求項8】
さらに溶剤(D)を含有する請求項1〜7のいずれか記載の化学増幅型フォトレジスト組成物。
【請求項9】
(1)請求項8記載の化学増幅型フォトレジスト組成物を基板上に塗布する工程;
(2)塗布後の組成物を乾燥してフォトレジスト膜を形成する工程;
(3)フォトレジスト膜を露光する工程;
(4)露光後のフォトレジスト膜を加熱する工程;及び
(5)加熱後のフォトレジスト膜を現像する工程
を含むレジストパターンの製造方法。
【請求項10】
前記基板が、金、銅、ニッケル、スズ、パラジウム及び銀からなる群より選ばれる1種以上の金属を含む導電材料を有する基板である請求項9記載のレジストパターンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−101289(P2013−101289A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246241(P2011−246241)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】