説明

化学物質管理システム

【課題】簡便な操作で厳密な取扱量の管理が可能な化学物質管理システムを提供する。
【解決手段】化学物質を収容する容器10にRFIDタグ11を添付する。登録用コンピュータ100は、化学物質の重量を容器10ごと計測する電子天秤150と、電子天秤150で計測中の容器10のRFIDタグ11から化学物質IDを読み取るリーダライタ160を備える。登録用コンピュータ100は、電子天秤150で測定された容器10の重量とともに前記リーダライタ160で読み取った化学物質IDとをデータベースサーバ200に登録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厳密な取扱量の管理が必要な化学物質の管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば大学や企業の研究室、医療現場、工場等では種々の化学物質(医薬品を含む)が使用されているが、不正使用を防止するために該化学物質は厳密な取扱量の管理が必要とされている。このような管理を行うシステムとしては特許文献1に記載されているものが知られている。この管理システムでは、電子天秤により化学物質の重量を容器ごと測定し、該電子天秤に接続されたコンピュータに記憶している。なお、該管理システムでは、包装材等を含む容器の重量の個体差に注目して、容器の重量を厳密に測定することにより電子天秤に載せられた化学物質を自動的に判別している。ただし、一部が使用された化学物質の容器を含めた重量は希に一致する場合があるので、この場合には電子天秤に接続されたコンピュータを用いて、候補となる複数の化学物質から取扱者が手動で選択する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−344348
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、化学物質の取扱いの際には通常、取扱者は手を化学物質から保護するために手袋を装着している。また、手袋や容器外面には化学物質やその他の汚れが付着していることが多い。このため前述の管理システムでは、(1)容器外面に付着した汚れにより正確な判別ができない場合がある、(2)コンピュータを操作する際には手袋を外して作業する必要があるので不便である、という問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡便な操作で厳密な取扱量の管理が可能な化学物質管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明に係る化学物質管理システムは、化学物質を収容する容器に添付され化学物質を識別する化学物質識別子が記憶された第1のRFIDタグと、化学物質の重量を容器ごと計測する重量計測手段と、重量計測手段で計測中の容器に添付された第1のRFIDタグから化学物質識別子を読み取る第1の読取手段と、重量計測手段で計測された容器の重量と第1の読取手段で読み取られた該容器に係る化学物質識別子とを関連づけて第1の記憶手段に登録する登録手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、化学物質の重量を測定する際に該化学物質を収容する容器に付されたRFIDタグから化学物質識別子が読み取られるので、化学物質の特定と重量測定の作業を容易に行うことができる。
【0008】
ところで、この種の管理システムでは、上述したように化学物質の重量の管理だけでなく、取扱者の管理も重要である。そこで、本願では、上記システムにおいて、取扱者により携帯され該取扱者を識別する取扱者識別子が記憶された第2のRFIDタグと、取扱者の第2のRFIDタグから取扱者識別子を読み取る第2の読取手段とを備え、前記登録手段は、前記化学物質識別子及び重量の登録に先立ち前記第2の読取手段を用いて取扱者識別子を取得し、前記化学物質識別子及び重量に対して取扱者識別子を関連づけて第1の記憶手段に登録することを特徴とするものを提案する。本発明によれば取扱者を特定する作業を非接触で行うことができるので利便性の高いものとなる。
【0009】
さらに、本願では、第2の読取手段は第1及び第2のアンテナを含み、前記登録手段は、第1のアンテナで取扱者識別子を読み取った場合には化学物質の使用前として前記化学物質識別子,重量及び取扱者識別子を第1の記憶手段に登録し、第2のアンテナで取扱者識別子を読み取った場合には化学物質の使用後として前記化学物質識別子,重量及び取扱者識別子を第1の記憶手段に登録することを特徴とするものを提案する。本発明によれば化学物質の使用前又は使用後を特定する作業も非接触で行うことができるので利便性の高いものとなる。
【0010】
一方、取扱者の特定作業の手法として以下のものを提案する。すなわち、本願では、上記システムにおいて、取扱者の足により入力可能な入力手段と、取扱者識別子を含む複数の取扱者の情報を記憶する第2の記憶手段と、第2の記憶手段に記憶されている複数の取扱者情報の一部又は全部を表示するとともに表示された複数の取扱者情報の中から一の取扱者情報を前記入力手段からの入力に基づき選択することにより取扱者を特定する特定手段とを備え、前記登録手段は、前記化学物質識別子及び重量の登録に先立ち前記特定手段を用いて取扱者を特定し、前記化学物質識別子及び重量に対して、前記特定された取扱者の取扱者識別子を関連づけて第1の記憶手段に登録することを特徴とするものを提案する。本発明によれば、手を使うことなく取扱者の特定作業を行うことができるので利便性の高いものとなる。
【0011】
ところで、上記発明では、上述のように取扱者情報の選択作業を足で操作する入力手段で行っている。したがって、表示される取扱者情報が多数ある場合には選択作業が煩雑となる恐れがある。そこで、前記特定手段は、取扱者識別子に対して優先順位を設定し、複数の取扱者情報の一部又は全部を前記優先順位の高い順に並べて表示すると好適である。
【0012】
優先順位としては、(1)化学物質の使用前の登録はあるが使用後の登録をしていない取扱者、(2)所定時間内に鍵保管庫から鍵を取り出した取扱者、(3)所定期間内における登録数が多い取扱者を上位として設定すると好適である。
【0013】
また、本願では、前記登録手段は、第1の読取手段で読み取られた容器に係る化学物質識別子について使用前の登録はあるが使用後の登録のないデータが第1の記憶手段にある場合には使用状況を使用後とし、当該データが第1の記憶手段にない場合には使用状況を使用前とし、該使用状況とともに前記化学物質識別子及び重量を第1の記憶手段に登録することを特徴とするものを提案する。本発明によれば、化学物質の使用前か使用後であるかの使用状況について取扱者の入力操作を必要としないのでさらに利便性が向上する。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明によれば、化学物質の重量を測定する際に該化学物質を収容する容器に付されたRFIDタグから化学物質識別子が読み取られるので、化学物質の特定と重量測定の作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】化学物質管理システムの概略図
【図2】登録用コンピュータの機能ブロック図
【図3】データベースサーバの機能ブロック図
【図4】ユーザ情報の一例を示す図
【図5】鍵保管庫開閉履歴の一例を示す図
【図6】鍵使用履歴の一例を示す図
【図7】化学物質情報の一例を示す図
【図8】化学物質使用履歴の一例を示す図
【図9】鍵保管庫の機能ブロック図
【図10】鍵保管庫の動作を説明するフローチャート
【図11】登録用コンピュータの動作を説明するフローチャート
【図12】使用状況の選択時における画面の一例を説明する図
【図13】取扱者の特定時における画面の一例を説明する図
【図14】第2の実施形態に係る登録用コンピュータの機能ブロック図
【図15】第2の実施形態に係る登録用コンピュータの動作を説明するフローチャート
【図16】第3の実施形態に係る登録用コンピュータの機能ブロック図
【図17】第3の実施形態に係る登録用コンピュータの動作を説明するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る化学物質管理システムについて図面を参照して説明する。図1は化学物質管理システムの概略図である。
【0017】
この化学物質管理システムは、図1に示すように、化学物質の重量登録用のコンピュータ100と、各種データを記憶するデータベースサーバ200と、データ管理用のコンピュータ300と、化学物質の保管庫400と、保管庫400の鍵を収容する鍵保管庫500とを備えている。登録用コンピュータ100、データベースサーバ200、管理用コンピュータ300及び鍵保管庫500は、LAN600により互いに通信可能に接続されている。
【0018】
化学物質が収容された容器10にはRFIDタグ11が添付されている。該RFIDタグ11の固有識別子は化学物質IDとして用いられる。容器10を保管する保管庫400には扉に施錠されており、解錠には鍵20が必要となる。該鍵20にはRFIDタグ21が添付されている。該RFIDタグ21の固有識別子は鍵IDとして用いられる。
【0019】
登録用コンピュータ100には、化学物質の重量を容器10ごと計測する電子天秤150と、電子天秤150で測定中の化学物質の容器10に添付されたRFIDタグ11から化学物質IDを非接触で読み取るリーダライタ160と、取扱者の足により入力を行う入力手段であるフットスイッチ170とが接続されている。リーダライタ160のアンテナ161は電子天秤150の側方に設置されており、電子天秤150上の容器10に添付されたRFIDタグ11と通信可能となっている。フットスイッチ170は、一又は複数のスイッチ素子を備えており、登録用コンピュータ100で動作するアプリケーションにおいて選択操作等を可能としている。なお、本実施の形態では、取扱者の足により入力を行う入力手段としてオン・オフという2値の入力のみ可能なフットスイッチを用いたが、可変抵抗等を利用して連続した多値を入力可能なフットペダルや、上下左右への回転情報を入力可能なトラックボールなどを利用してもよく、さらにはこれらの入力手段を複数組み合わせても良い。
【0020】
図2を参照して登録用コンピュータ100について詳述する。図2には登録用コンピュータの機能ブロック図である。登録用コンピュータ100は、図2に示すように、電子天秤150から測定値を受信する天秤制御部111と、リーダライタ160を制御するリーダライタ制御部112と、化学物質の重量をデータベースサーバ200に登録する登録処理部113と、各種情報を表示する表示部114と、登録処理部113による登録処理に係る表示内容を表示部114に表示するための表示制御部115とを備えている。なお本実施の形態では、登録処理部113と表示制御部115とは1つのアプリケーション(登録アプリケーション116)として実装されている。登録アプリケーション116は、取扱者からの指示により又は天秤制御部111からの指示により起動する。登録用コンピュータ100の動作については後述する。
【0021】
次に図3を参照してデータベースサーバ200について説明する。図3はデータベースサーバの機能ブロック図である。データベースサーバ200は、データを蓄積するデータベース210と、取扱者に関する情報を処理するユーザ管理部221と、鍵20に関する情報を処理する鍵管理部222と、化学物質に関する情報を処理する化学物質管理部223と、管理用コンピュータ300に対して各管理部221,222,223で処理された情報に対するアクセスを容易にするためのユーザインタフェイス231とを備えている。
【0022】
データベース210には、ユーザ情報211,鍵保管庫開閉履歴212,鍵使用履歴213,化学物質情報214,化学物質使用履歴215が記憶されている。ユーザ情報211は、図4に例示するように、取扱者のユーザIDと名前等の属性情報が記憶されている。鍵保管庫開閉履歴212は、図5に例示するように、鍵保管庫500を開放した日時及び閉鎖した日時、開放・閉鎖を行った取扱者のユーザIDが記憶されている。鍵使用履歴213は、図6に例示するように、鍵IDと、鍵20の取り出し又は収容された日時、取り出し又は収容の何れかを区別する「状況」、鍵20の取り出し又は収容を行った取扱者のユーザIDが記憶されている。化学物質情報214は、図7に例示するように、化学物質IDと、名称や使用期限等の属性情報が記憶されている。化学物質使用履歴215は、図8に例示するように、化学物質IDと、当該化学物質の使用前における重量測定の日時、同使用後における重量測定の日時、当該化学物質の使用前における測定重量、同使用後における測定重量、当該化学物質の取扱者のユーザIDが記憶されている。
【0023】
前記ユーザ管理部221は主としてユーザ情報211に対するアクセスを制御するものであり、管理用コンピュータ300からのデータの追加・削除・修正・閲覧の要求に対する処理や、登録用コンピュータ100や鍵保管庫500からの問い合わせに対する回答処理などを行う。前記鍵管理部222は主として鍵保管庫開閉履歴212及び鍵使用履歴213に対するアクセスを制御するものであり、管理用コンピュータ300からのデータの閲覧要求に対する処理や、鍵保管庫500からの登録処理などを行う。前記化学物質管理部223は主として化学物質情報214及び化学物質使用履歴215に対するアクセスを制御するものであり、管理用コンピュータ300からのデータの閲覧要求に対する処理や、登録用コンピュータ100からの登録処理などを行う。
【0024】
管理用コンピュータ300はデータベースサーバ200にアクセスし、該データベースサーバ200に蓄積された各種データの閲覧やマスタ情報等の保守を行う。前述したようにデータベースサーバ200には管理用コンピュータ300用のユーザインタフェイス231が実装されており、管理用コンピュータ300は該ユーザインタフェイス231を介してデータベースサーバ200内のデータにアクセス可能となっている。
【0025】
次に、鍵保管庫500について図9を参照して説明する。図9は鍵保管庫の機能ブロック図である。鍵保管庫500は、図9に示すように、扉(図示省略)の解錠・施錠を行う電子錠501と、扉の開閉状況を検出する扉開閉センサ502と、電子錠501の制御やデータベースサーバ200への登録処理等を行う鍵保管庫制御部503と、鍵保管庫500内の鍵20に添付されたRFIDタグ21から鍵IDを読み取るタグ読取制御部504と、RFIDタグ21の読み取り用のアンテナ505と、取扱者が携行する非接触ICカード(図示省略)からユーザIDを読み取るICカード読取制御部506と、該非接触ICカードの読み取り用のアンテナ507とを備えている。なお、取扱者が携行する非接触ICカード(図示省略)は板状部材にRFIDタグが埋め込まれたものであり該RFIDタグの固有識別子をユーザIDとして用いる。鍵保管庫制御部503の動作については後述する。
【0026】
本実施の形態に係る化学物質管理システムの利用形態について説明する。管理者は、予め管理用コンピュータ300を用いてユーザ情報211や化学物質情報214を入力しておく。化学物質を使用する取扱者は、自身のユーザIDが記憶されたICカードを用いて鍵保管庫500を開け、所望の化学物質が収容されている保管庫400の鍵20を取り出す。取扱者は該鍵20を用いて保管庫400を開け、化学物質を取り出す。次に、取扱者は登録用コンピュータ100を用いて使用前の化学物質の重量を登録する。化学物質の使用が終わると取扱者は、登録用コンピュータ100を用いて使用後の化学物質の重量を登録する。次に、取扱者は、保管庫400を鍵20を用いて開け、化学物質を保管庫400に戻す。最後に、取扱者はICカードを用いて鍵保管庫500を開け、鍵20を戻す。なお、鍵20は化学物質の使用前に鍵保管庫500に戻し、使用後に再び鍵保管庫500から取り出してもよい。
【0027】
次に、上記利用形態に則して本実施の形態に係る化学物質管理システムの動作について説明する。まず、鍵保管庫500の動作について図10のフローチャートを参照して説明する。
【0028】
鍵保管庫500の鍵保管庫制御部503は、ICカード読取制御部506でICカードからユーザIDが読み取られると(ステップS1)、当該ユーザIDが登録されているか否かをデータベースサーバ200に問い合わせる(ステップS2)。問い合わせの結果ユーザIDが未登録の場合、当該取扱者は化学物質の使用権限がないとみなし処理を終了する(ステップS3)。問い合わせの結果ユーザIDが登録済みの場合、鍵保管庫制御部503は電子錠501を解錠制御するとともに、鍵保管庫開閉履歴212にデータを追記する(ステップS4,S5)。鍵保管庫制御部503は、扉が開放中において鍵20の鍵保管庫500からの取り出し又は収納を検出すると、当該鍵20について鍵使用履歴213にデータを追記する(ステップS6,S7)。なお、鍵20の取り出しは、鍵20に付設されているRFIDタグ21が読取可能から読取不可となったことにより検出する。また、鍵20の収納は、新たにRFIDタグ21の読み取りが可能となったことにより検出する。鍵保管庫制御部503は、扉開閉センサ502により扉の閉鎖を検出すると(ステップS8)、鍵保管庫制御部503は電子錠501を施錠制御するとともに、鍵保管庫開閉履歴212にデータを追記する(ステップS9,S10)。
【0029】
次に、取扱者が化学物質の使用前又は使用後に重量をデータベースサーバ200に登録する際の処理について図11を参照して説明する。取扱者が化学物質が入った容器10を電子天秤150に載せると、電子天秤150は容器10の測定重量を登録用コンピュータ100に送信し、登録用コンピュータ100の登録処理部113は天秤制御部111を介して該測定重量を受信する(ステップS21)。次に、登録処理部113は、当該登録処理が化学物質の使用前か又は使用後であるかを取扱者に選択させる(ステップS22)。この選択処理時における表示部114の画面内容の一例を図12に示す。図12に示すように、表示部114には「使用前」及び「使用後」並びに「キャンセル」を選択するためのボタンが表示され、フットスイッチ170の選択により何れかのボタンが選択される。次に、登録処理部113は、取扱者の特定処理を行う(ステップS23)。該特定処理では、図13に例示するように取扱者のリストを表示する。そして、フットスイッチ170の選択により何れかの取扱者が選択される。
【0030】
ここで、取扱者のリストはデータベースサーバ200のユーザ情報211に格納されているデータである。また、本願発明では、当該リストの表示順序に特徴がある。すなわち、本願発明では、ユーザ情報211に格納されている各データに優先順位を設定し、該優先順位に従って表示順序を制御している。優先順位の設定基準としては、例えば、(a)使用前の登録を行ったが使用後の登録はまだ行っていない取扱者、(b)所定の期間内において鍵保管庫500を使用した取扱者、(c)所定の期間内において使用前又は使用後の登録を行った回数が多い取扱者、(d)上記(a)〜(c)の任意の組合せ、などが挙げられる。これにより、表示部114には実際の取扱者である可能性が高いもの順にリストが表示されるので、フットスイッチ170の平均操作回数を軽減することができる。したがって利便性が向上する。また、さらに優先順位が所定の値以下の場合には当該取扱者のデータについては表示を制限するとともに、表示部114のリストには「その他のユーザ」の項目を表示して、該当する取扱者のデータを別のリストとして表示すると好適である。
【0031】
次に、登録処理部113は、リーダライタ制御部112を用いて電子天秤150に載せられている容器10のRFIDタグ11から化学物質IDを読み取る(ステップS24)。最後に登録処理部113は、測定重量をデータベースサーバ200に登録する(ステップS25)。より具体的には、前記ステップS22で「使用前」が選択された場合には、登録処理部113は、化学物質ID、使用前日時、使用前重量、ユーザIDを登録する。ここで、使用前日時は現在日時又は前記ステップS21の処理日時を設定し、使用前重量は前記ステップS21で取得した測定重量を設定する。一方、前記ステップS22で「使用前」が選択された場合には、化学物質ID及びユーザIDが一致し、且つ、使用後日時及び使用後重量の欄が空であるデータに対して、使用後日時及び使用後重量を追記する。ここで、使用後日時は現在日時又は前記ステップS21の処理日時を設定し、使用後重量は前記ステップS21で取得した測定重量を設定する。
【0032】
以上のように本実施の形態に係る化学物質管理システムでは、化学物質の重量測定の際には取扱者は登録用コンピュータ100をフットスイッチ170により操作可能なので利便性が向上する。また、本実施の形態では、取扱者の特定処理において表示部114には取扱者のリストが実際の取扱者である確立が高いもの順に表示されるので、フットスイッチ170の平均操作量を軽減できる。これにより更に利便性が向上したものとなる。
【0033】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る化学物質管理システムについて図面を参照して説明する。本実施の形態に係る化学物質管理システムが第1の実施の形態と異なる点は、登録用コンピュータ100における使用状況の選択処理及び取扱者の特定処理にある。他の構成・動作については第1の実施の形態と同様なので、ここでは相違点のみを説明する。
【0034】
本実施の形態に係る登録用コンピュータ100は、図14に示すように、電子天秤150から測定値を受信する天秤制御部111と、リーダライタ160を制御するリーダライタ制御部112と、化学物質の重量をデータベースサーバ200に登録する登録処理部113と、各種情報を表示する表示部114と、登録処理部113による登録処理に係る表示内容を表示部114に表示するための表示制御部115と、取扱者が携行する非接触ICカード(図示省略)からユーザIDを読み取るICカード読取制御部121と、該非接触ICカードの読み取り用の2つのアンテナ122,123とを備えている。なお、第1の実施の形態とは異なり取扱者の足により入力を行う入力手段であるフットスイッチ等は備えていない。またICカードは鍵保管庫500で用いられるものと共通である。
【0035】
前記2つのアンテナ122,123のうち一方のアンテナ122は、使用前登録において使用され、他方のアンテナ123は使用前登録において使用される。これにより、ICカードからユーザIDが読み取られたアンテナを特定することにより使用前登録又は使用後登録であるかを特定することができる。
【0036】
次に、取扱者が化学物質の使用前又は使用後に重量をデータベースサーバ200に登録する際の処理について図15を参照して説明する。取扱者が化学物質が入った容器10を電子天秤150に載せると、電子天秤150は容器10の測定重量を登録用コンピュータ100に送信し、登録用コンピュータ100の登録処理部113は天秤制御部111を介して該測定重量を受信する(ステップS31)。次に、登録処理部113は、ICカード読取制御部121でICカードからユーザIDが読み取られると(ステップS32)、当該ユーザIDが登録されているか否かをデータベースサーバ200に問い合わせる(ステップS33)。問い合わせの結果ユーザIDが未登録の場合、当該取扱者は化学物質の使用権限がないとみなし処理を終了する(ステップS34)。問い合わせの結果ユーザIDが登録済みの場合、登録処理部113は、リーダライタ制御部112を用いて電子天秤150に載せられている容器10のRFIDタグ11から化学物質IDを読み取る(ステップS35)。最後に登録処理部113は、測定重量をデータベースサーバ200に登録する(ステップS36〜S38)。より具体的には、前記ステップS32におけるユーザIDの読み取りが使用前登録用アンテナ122により行われていた場合には、登録処理部113は、化学物質ID、使用前日時、使用前重量、ユーザIDを登録する(ステップS36,S37)。ここで、使用前日時は現在日時又は前記ステップS31の処理日時を設定し、使用前重量は前記ステップS31で取得した測定重量を設定する。一方、前記ステップS32におけるユーザIDの読み取りが使用後登録用アンテナ123により行われていた場合には、化学物質ID及びユーザIDが一致し、且つ、使用後日時及び使用後重量の欄が空であるデータに対して、使用後日時及び使用後重量を追記する(ステップS36,S38)。ここで、使用後日時は現在日時又は前記ステップS31の処理日時を設定し、使用後重量は前記ステップS31で取得した測定重量を設定する。
【0037】
以上のように本実施の形態に係る化学物質管理システムでは、化学物質の重量測定の際には取扱者は登録用コンピュータ100の2つのアンテナ122,123のうち何れかにICカードをかざすだけで使用状況及び取扱者の特定が可能なので利便性が向上する。
【0038】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係る化学物質管理システムについて図面を参照して説明する。本実施の形態に係る化学物質管理システムが第2の実施の形態と異なる点は、登録用コンピュータ100における使用状況の特定処理にある。他の構成・動作については第2の実施の形態と同様なので、ここでは相違点のみを説明する。
【0039】
本実施の形態に係る登録用コンピュータ100は、図16に示すように、電子天秤150から測定値を受信する天秤制御部111と、リーダライタ160を制御するリーダライタ制御部112と、化学物質の重量をデータベースサーバ200に登録する登録処理部113と、各種情報を表示する表示部114と、登録処理部113による登録処理に係る表示内容を表示部114に表示するための表示制御部115と、取扱者が携行する非接触ICカード(図示省略)からユーザIDを読み取るICカード読取制御部121と、該非接触ICカードの読み取り用のアンテナ125とを備えている。なお、第1の実施の形態とは異なり取扱者の足により入力を行う入力手段であるフットスイッチ等は備えていない。またICカードは鍵保管庫500で用いられるものと共通である。
【0040】
前記第2の実施の形態では、2つのアンテナ122,123を備え、ICカードからユーザIDが読み取られたアンテナを特定することにより使用前登録又は使用後登録であるかを特定していた。一方、本実施の形態では、データーベースサーバ200を参照して使用状況の特定を行う。以下、取扱者が化学物質の使用前又は使用後に重量をデータベースサーバ200に登録する際の処理について図17を参照して説明する。
【0041】
取扱者が化学物質が入った容器10を電子天秤150に載せると、電子天秤150は容器10の測定重量を登録用コンピュータ100に送信し、登録用コンピュータ100の登録処理部113は天秤制御部111を介して該測定重量を受信する(ステップS41)。次に、登録処理部113は、リーダライタ制御部112を用いて電子天秤150に載せられている容器10のRFIDタグ11から化学物質IDを読み取る(ステップS42)。次に、登録処理部113は、使用状況の特定を行う。具体的には、前記ステップS42で取得した化学物質IDをキーとして、データベースサーバ200の化学物質使用履歴215に使用前の測定重量等が登録されているが使用後の測定重量等が登録されていないデータが存在するか否かを問い合わせる(ステップS43)。そして、該データが存在する場合には使用状況を「使用後」であると判定し(ステップS44,S45)、該データが存在しない場合には使用状況を「使用前」であると判定する(ステップS44,S46)。
【0042】
次に、登録処理部113は、ICカード読取制御部121でICカードからユーザIDが読み取られると(ステップS47)、当該ユーザIDが登録されているか否かをデータベースサーバ200に問い合わせる(ステップS48)。問い合わせの結果ユーザIDが未登録の場合、当該取扱者は化学物質の使用権限がないとみなし処理を終了する(ステップS49)。問い合わせの結果ユーザIDが登録済みの場合、登録処理部113は、データベースサーバへの登録処理を行う(ステップS50)。より具体的には、前記使用状況の特定処理により使用状況が使用前であると判定された場合には、登録処理部113は、化学物質ID、使用前日時、使用前重量、ユーザIDを登録する。ここで、使用前日時は現在日時又は前記ステップS41の処理日時を設定し、使用前重量は前記ステップS41で取得した測定重量を設定する。一方、前記使用状況の特定処理により使用状況が使用後であると判定された場合には、化学物質ID及びユーザIDが一致し、且つ、使用後日時及び使用後重量の欄が空であるデータに対して、使用後日時及び使用後重量を追記する。ここで、使用後日時は現在日時又は前記ステップS41の処理日時を設定し、使用後重量は前記ステップS41で取得した測定重量を設定する。
【0043】
以上のように本実施の形態に係る化学物質管理システムでは、使用状況の特定処理が自動で行われ、また、取扱者は登録用コンピュータ100のアンテナ125にICカードをかざすだけで取扱者の特定が可能なので利便性が向上する。
【0044】
なお、本実施の形態ではICカードを用いて取扱者の特定を行っているが、第1の実施の形態のようにフットペダル等により取扱者を選択するようにしても良い。
【0045】
以上本発明の実施の形態について詳述したが本発明はこれに限定されるものではない。例えば、使用状況の選択及び取扱者の特定のための手段として、前記第1の実施の形態ではフットスイッチ170を用い、第2及び第3の実施の形態ではICカードを用いたが、これらを組み合わせてもよい。
【0046】
また、上記実施の形態では、電子天秤150に容器10が載せられると測定重量が登録用コンピュータ100に送信され、登録処理部113等は該測定重量の受信を契機に起動するようにしたが、取扱者からの指示により起動するようにしてもよい。
【0047】
また、上記実施の形態では、化学物質の重量を登録処理・データの管理処理・データの蓄積という3つの機能を、それぞれ登録用コンピュータ100・管理用コンピュータ300・データベースサーバ200に実装したが、これらの機能の実装形態は不問である。例えば、前記全ての機能を一つのコンピュータに実装してもよいし、或いは一つの機能を複数のコンピュータに分散して実装するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
10…容器、11…RFIDタグ、20…鍵、21…RFIDタグ、100…登録用コンピュータ、150…電子天秤、160…リーダライタ、170…フットスイッチ、200…データベースサーバ、300…管理用コンピュータ、400…化学物質の保管庫、500…鍵保管庫。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学物質を収容する容器に添付され化学物質を識別する化学物質識別子が記憶された第1のRFIDタグと、
化学物質の重量を容器ごと計測する重量計測手段と、
重量計測手段で計測中の容器に添付された第1のRFIDタグから化学物質識別子を読み取る第1の読取手段と、
重量計測手段で計測された容器の重量と第1の読取手段で読み取られた該容器に係る化学物質識別子とを関連づけて第1の記憶手段に登録する登録手段とを備えた
ことを特徴とする化学物質管理システム。
【請求項2】
取扱者により携帯され該取扱者を識別する取扱者識別子が記憶された第2のRFIDタグと、
取扱者の第2のRFIDタグから取扱者識別子を読み取る第2の読取手段とを備え、
前記登録手段は、前記化学物質識別子及び重量の登録に先立ち前記第2の読取手段を用いて取扱者識別子を取得し、前記化学物質識別子及び重量に対して取扱者識別子を関連づけて第1の記憶手段に登録する
ことを特徴とする請求項1記載の化学物質管理システム。
【請求項3】
第2の読取手段は第1及び第2のアンテナを含み、
前記登録手段は、第1のアンテナで取扱者識別子を読み取った場合には化学物質の使用前として前記化学物質識別子,重量及び取扱者識別子を第1の記憶手段に登録し、第2のアンテナで取扱者識別子を読み取った場合には化学物質の使用後として前記化学物質識別子,重量及び取扱者識別子を第1の記憶手段に登録する
ことを特徴とする請求項2記載の化学物質管理システム。
【請求項4】
取扱者の足により入力可能な入力手段と、
取扱者識別子を含む複数の取扱者の情報を記憶する第2の記憶手段と、
第2の記憶手段に記憶されている複数の取扱者情報の一部又は全部を表示するとともに表示された複数の取扱者情報の中から一の取扱者情報を前記入力手段からの入力に基づき選択することにより取扱者を特定する特定手段とを備え、
前記登録手段は、前記化学物質識別子及び重量の登録に先立ち前記特定手段を用いて取扱者を特定し、前記化学物質識別子及び重量に対して、前記特定された取扱者の取扱者識別子を関連づけて第1の記憶手段に登録する
ことを特徴とする請求項1記載の化学物質管理システム。
【請求項5】
化学物質の使用前又は使用後であるかを前記入力手段からの入力に基づき選択する使用状況選択手段を備え、
前記登録手段は、前記使用状況選択手段による選択された使用状況とともに前記化学物質識別子,重量及び取扱者識別子を第1の記憶手段に登録する
ことを特徴とする請求項4記載の化学物質管理システム。
【請求項6】
前記特定手段は、取扱者識別子に対して優先順位を設定し、複数の取扱者情報の一部又は全部を前記優先順位の高い順に並べて表示する
ことを特徴とする請求項5記載の化学物質管理システム。
【請求項7】
前記特定手段は、第1の記憶手段から使用前の登録はあるが使用後の登録のない取扱者識別子を抽出し、該取扱者識別子の優先順位を他の取扱者識別子よりも高く設定する
ことを特徴とする請求項6記載の化学物質管理システム。
【請求項8】
取扱者により携帯され該取扱者を識別する取扱者識別子が記憶された第2のRFIDタグと、
化学物質の保管庫の鍵を収容した鍵保管庫とを備え、
該鍵保管庫は、取扱者による鍵の取り出しを規制する規制手段と、取扱者の第2のRFIDタグから取扱者識別子を読み取る第2の読取手段と、第2の読取手段により取扱者識別子を読み取ると鍵の取り出しの規制を解除するよう前記規制手段を制御するとともに取扱者識別子を第3の記憶手段に記憶する制御手段とを備え、
前記特定手段は、所定期間内に第3の記憶手段に記憶された取扱者識別子の優先順位を他の取扱者識別子よりも高く設定する
ことを特徴とする請求項6記載の化学物質管理システム。
【請求項9】
前記特定手段は、所定期間内において第1の記憶手段に記憶された使用前の登録又は使用後の登録の何れか一方或いは双方の登録数を算出し、該登録数の多い順に優先順位を設定する
ことを特徴とする請求項6記載の化学物質管理システム。
【請求項10】
前記登録手段は、第1の読取手段で読み取られた容器に係る化学物質識別子について使用前の登録はあるが使用後の登録のないデータが第1の記憶手段にある場合には使用状況を使用後とし、当該データが第1の記憶手段にない場合には使用状況を使用前とし、該使用状況とともに前記化学物質識別子及び重量を第1の記憶手段に登録する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の化学物質管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−163259(P2010−163259A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7772(P2009−7772)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】