説明

化学療法に付随する副作用を軽減するためのビタミンD3およびその類似体

本開示は、抗悪性腫瘍薬の投与の前に骨髄前駆細胞および間質細胞を調節するための、ビタミンD3などのビタミンD化合物またはその類似体および/もしくは代謝物の使用に関する。本開示の方法は、多能性幹細胞前駆細胞の利用可能性を高めることによって骨髄抑制を回復させることができ、かつ標準的療法(たとえば顆粒球刺激因子)と併用して骨髄細胞の増殖を増加させ、および/または骨髄からの骨髄細胞の動員を向上させ、それによってコロニー刺激因子(CSF)の用量および投与、ならびに化学療法後の快復時間を減少させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、血中カルシウム上昇(calcemic)活性および非-血中カルシウム上昇活性を有し、固形腫瘍および/または白血病を治療するための抗悪性腫瘍薬の投与の前に薬学的に許容される方法で投与されるビタミンD化合物、たとえばビタミンD3およびその類似体の使用を提供する。
【0002】
関連出願
本出願は、2009年1月27日に出願された米国特許仮出願第61/147,549号、および2009年9月1日に出願された米国特許仮出願第61/239,003号に基づく優先権を主張する。
【0003】
上述の出願のそれぞれの内容を、本明細書によってそれら全体を援用する。
【背景技術】
【0004】
癌を治療するための組成物は、常に開発され、かつ試験されている。たとえば、ビタミンD3の類似体は、強力な細胞分化剤として癌治療分野に登場した。最も広く用いられかつ研究されたものの1つ、1,25(OH)D3(カルシトリオール)は、脊髄異形成障害(MDS)において単独でおよびコロニー刺激因子と組み合わせて分化を誘発することが実証されている。実際に、1,25(OH)D3を用いて高パルス投与量を投与することによってMDSを治療する方法が開発され、高カルシウム血症、すなわちこの類似体の最も深刻な副作用を回避してきた。
【0005】
癌治療による1つの問題は、最も利用できる治療に付随して起こる副作用である。具体的には、癌細胞の増殖速度が異常に高い理由から、細胞毒性化学療法剤は、癌細胞を除去するために全身的に投与される。しかし、そのようなレジメンは、増殖期にある正常な細胞を区別できず、したがって活発な増殖期のすべての細胞が化学療法剤によって標的とされることになる。その結果、抗悪性腫瘍療法は重篤な副作用、たとえば、貧血、血小板減少、および好中球減少を誘発する化学療法誘発性の骨髄抑制(CIM)を不可避的に引き起こし、疲労、出血増加、および重篤感染症のリスク増加をもたらすことになる。
【0006】
したがって、化学療法剤治療を受けている被験者が被っている化学療法剤の副作用を減少させるおよび/または軽減するための方法を提供することが、好ましい。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、多能性幹細胞と、増殖因子を産生する間質細胞とを、化学療法の投与に起因する二次毒性から保護するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、抗悪性腫瘍薬の投与の前に、たとえばビタミンD3および/もしくはその類似体または代謝物などの、カルシトリオール(1,25(OH)D3)を含むがこれに限定されないビタミンD化合物を用いて、骨髄前駆細胞および間質細胞を調節することが可能である。
【0008】
いくつかの実施形態では、本発明のビタミンD化合物(たとえば、ビタミンD3および/もしくはその類似体または代謝物)は、高カルシウム血症または抗悪性腫瘍薬治療の妨害が回避され得るような方法で投与することができる。
【0009】
他の実施形態では、高カルシウム血症作用を誘発することなく、保護のための最適用量を決定するために、主題のビタミンD化合物(たとえばビタミンD3および/もしくはその類似体またはそれらの代謝物)の投与の前に被験者の骨髄細胞をスクリーニングし得る。
【0010】
さらに他の実施形態では、本発明は、骨髄抑制を誘発する化学療法剤で治療される被験者において、被験者に有効量のビタミンD化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグもしくは溶媒和化合物を投与することによって、化学療法誘発性の骨髄抑制を防止するまたは減少させる方法を提供する。
【0011】
他の実施形態では、本発明は、被験者に有効量のビタミンD化合物または薬学的に許容される塩、そのプロドラッグもしくは溶媒和化合物を投与することによって、骨髄抑制を誘発する化学療法剤で治療されている被験者において、骨髄抑制が誘発する障害のリスクを防止するまたは減少させる方法を提供する。
【0012】
一部の実施形態では、本発明は、被験者に有効量のビタミンD化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグもしくは溶媒和化合物を投与することによって、化学療法剤で治療されている被験者における好中球の欠乏を防止する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示の種々の実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。
【図1】(a)対照として使用した無処置の幹細胞のコロニーの顕微鏡写真である。(b)1,25(OH)D3だけで処置した幹細胞のコロニーの顕微鏡写真である。(c)4−ヒドロキシペルオキシシクロホスファミド(4−HC)と組み合わせて1,25(OH)D3で処置した幹細胞のコロニーの顕微鏡写真である。
【図2】種々の用量の1,25(OH)D3への曝露の後に、骨髄細胞の生存率をトリパンブルー排除法で測定したグラフである。
【図3】(a)シクロホスファミドとベヒクル(○)、またはシクロホスファミドとカルシトリオール(●);(b)シクロホスファミド+ドキソルビシンとベヒクル(○)、またはシクロホスファミド+ドキソルビシンとカルシトリオール(●);(c)シクロホスファミド、ドキソルビシンとパクリタキセルとベヒクル(○)、またはシクロホスファミド、ドキソルビシンとパクリタキセルとカルシトリオール(●)、による第1のサイクルで処置したラットの好中球絶対数を比較するグラフである。
【図4】(a)対照、シクロホスファミドとベヒクル、またはシクロホスファミドとカルシトリオール;(b)対照、シクロホスファミド+ドキソルビシンとベヒクル、またはシクロホスファミド+ドキソルビシンとカルシトリオール;(c)対照、シクロホスファミド、ドキソルビシンとパクリタキセルとベヒクル、またはシクロホスファミド、ドキソルビシンとパクリタキセルとカルシトリオール、によるラットの第1のサイクルの処置の間、22日目に骨髄培養物から得たコロニーの数を比較するグラフである。
【図5】(a)対照、シクロホスファミドとベヒクル、またはシクロホスファミドとカルシトリオール;(b)対照、シクロホスファミド+ドキソルビシンとベヒクル、またはシクロホスファミド+ドキソルビシンとカルシトリオール;(c)対照、シクロホスファミド、ドキソルビシンとパクリタキセルとベヒクル、またはシクロホスファミド、ドキソルビシンとパクリタキセルとカルシトリオール、によるラットの第1のサイクルの処置の間、25日目に骨髄培養物から得たコロニーの数を比較するグラフである。
【図6】(a)対照、シクロホスファミドとベヒクル、またはシクロホスファミドとカルシトリオール;(b)対照、シクロホスファミド+ドキソルビシンとベヒクル、またはシクロホスファミド+ドキソルビシンとカルシトリオール;(c)対照、シクロホスファミド、ドキソルビシンとパクリタキセルとベヒクル、またはシクロホスファミド、ドキソルビシンとパクリタキセルとカルシトリオール、によるラットの第1のサイクルの処置の間、32日目に骨髄培養物から得たコロニーの数を比較するグラフである。
【図7】(a)シクロホスファミドとベヒクル(○)、またはシクロホスファミドとカルシトリオール(●);(b)シクロホスファミド+ドキソルビシンとベヒクル(○)、またはシクロホスファミド+ドキソルビシンとカルシトリオール(●);(c)シクロホスファミド、ドキソルビシンとパクリタキセルとベヒクル(○)、またはシクロホスファミド、ドキソルビシンとパクリタキセルとカルシトリオール(●)、による第2のサイクルで処理したラットの好中球絶対数を比較するグラフである。
【図8】(a)対照、シクロホスファミドとベヒクル、またはシクロホスファミドとカルシトリオール;(b)対照、シクロホスファミド+ドキソルビシンとベヒクル、またはシクロホスファミド+ドキソルビシンとカルシトリオール;(c)対照、シクロホスファミド、ドキソルビシンとパクリタキセルとベヒクル、またはシクロホスファミド、ドキソルビシンとパクリタキセルとカルシトリオールによるラットの第2のサイクルの処置の間、49日目に骨髄培養物から得たコロニーの数を比較するグラフである。
【図9】(a)対照、シクロホスファミドとベヒクル、またはシクロホスファミドとカルシトリオール;(b)対照、シクロホスファミド+ドキソルビシンとベヒクル、またはシクロホスファミド+ドキソルビシンとカルシトリオール;(c)対照、シクロホスファミド、ドキソルビシンとパクリタキセルとベヒクル、またはシクロホスファミド、ドキソルビシンとパクリタキセルとカルシトリオールによるラットの第2のサイクルの処置の間、52日目に骨髄培養物から得たコロニーの数を比較するグラフである。
【図10】(a)対照、シクロホスファミドとベヒクル、またはシクロホスファミドとカルシトリオール;(b)対照、シクロホスファミド+ドキソルビシンとベヒクル、またはシクロホスファミド+ドキソルビシンとカルシトリオール;(c)対照、シクロホスファミド、ドキソルビシンとパクリタキセルとベヒクル、またはシクロホスファミド、ドキソルビシンとパクリタキセルとカルシトリオールによるラットの第2のサイクルの処置の間、60日目に骨髄培養物から得たコロニーの数を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
分化細胞は、完全には解明されていない理由から、化学療法に対する感受性が高くない。したがって、生命を維持するのに必要な最小量の前駆細胞と、悪性細胞を根絶する必要性との間のバランスを保つには、化学療法の毒性攻撃に耐え、次いで骨髄を再形成して、種々の増殖因子によって前駆細胞が動員されることを可能にする患者の前駆細胞プールに依存することがしばしばである。このバランスを保つことは、ほとんどの腫瘍学者が直面する課題であり、かつ用いる治療的なアプローチに影響を及ぼし、たとえば、化学療法の用量の減少、少ないサイクル数、および患者の生存への悪影響を及ぼし得るアジュバント療法の使用をもたらす。
【0015】
おそらく、この現象の最も過激な例は、骨髄除去であり、ある種の白血病に対して必要な治療である。骨髄除去は、ほとんどが極度のCIMの二次的影響のため、死亡率が驚くほど高い。
【0016】
したがって、正常な骨髄増殖性の細胞を保護するレジメンは、様々な型の癌患者での死亡率および罹患率の有意な低下をもたらすであろう。今日まで、改変した化学療法プロトコールおよび種々の造血因子の使用などの対症療法的アプローチが支持されている。正常骨髄細胞を調節するために保護薬を使用することに対する主な懸念のうちの1つは、それが抗悪性腫瘍薬を妨げることもあり、したがって癌寛解の可能性を減少させ得ることである。したがって、現在、CIMは、白血球数が危機的な状態にあるときに化学療法剤の用量を減少させ、G−CSFおよびエリスロポエチン(EPO)などの増殖因子を投与して化学療法に誘発される貧血症を解消することで、経験的に治療されている。たとえば、好中球減少症(好中球顆粒球数の0.5×10/Lを下回る減少)は、合成G−CSF(顆粒球コロニー刺激因子、たとえばペグフィルグラスチム、フィルグラスチム、レノグラスチム)で改善することができる。このアプローチは、より短い回復時間をもたらしている。しかし、それらは不快な副作用という深刻な負担、たとえば発熱、悪寒、広範囲な骨痛を患者にもたらすこともあり、抗悪性腫瘍療法の他の副作用を併発すると、生活の質の低下、ならびに遺伝子組換えコロニー刺激因子のコストが高いためソーシャルコストの重荷をももたらす。
【0017】
したがって、一態様では、本発明は、有効量のビタミンD化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグもしくは溶媒和化合物を被験者に投与することによって、骨髄抑制を誘発する化学療法剤を用いて治療される被験者における、化学療法誘発性の骨髄抑制を防止するまたは減少させる方法を提供する。「化学療法誘発性の骨髄抑制(CIM)」という表現は、骨髄抑制を誘発する1種以上の化学療法剤を用いて被験者を治療した際に生じる、血球細胞(たとえば赤血球、好中球などの白血球および/または血小板)数の減少を含む。一実施形態では、CIMは(たとえば、赤血球数の減少に起因する)貧血症を引き起こす。貧血症の症状は、たとえば、脱力感、疲労、倦怠感、集中力低下、息切れ、心臓の動悸、アンギナ、蒼白、頻拍、および心拡大を含む。別の実施形態では、CIMは(たとえば好中球数の減少に起因する)好中球減少症を引き起こす。好中球減少症の症状は、たとえば、重篤な感染症または敗血症、発熱、口腔内潰瘍、下痢、および咽喉炎のリスクの増加を含む。さらに別の実施形態では、CIMは(たとえば血小板数の減少に起因する)血小板減少症を引き起こす。血小板減少症の症状は、たとえば、出血、紫斑、鼻出血および歯肉出血のリスクの増加を含む。
【0018】
「CIMを防止する」という表現は、CIMまたはCIMに付随する1つもしくは複数の症状の抑止もしくは抑制を含む。
【0019】
「減少」、「減少させる」、および「減少させること」という表現は、CIMまたはCIMに付随する1つもしくは複数の症状の減少、軽減、または完全な回復を含む。
【0020】
「被験者」という用語は、CIMに罹患し得る哺乳類、たとえばネコ、イヌ、ウマ、ブタ、ウシ、ヒツジ、齧歯動物(たとえばラット、マウス)、ウサギ、リス、クマ、霊長類(たとえばチンパンジー、ゴリラ、およびヒト)を含む。一実施形態では、被験者はラットである。他の実施形態では、被験者は遺伝子組換えした哺乳類である。さらに別の実施形態では、被験者はヒトである。
【0021】
「化学療法剤」という表現は、癌を治療するために用いられる抗悪性腫瘍薬(たとえば、異常な組織腫瘤の増殖を抑制する化学物質)、抗生物質、または他の(たとえば、多発性硬化症、皮膚筋炎、多発性筋炎、狼瘡、関節リウマチを治療する、および移植拒絶反応を抑制する)細胞増殖抑制性化学療法剤が含まれる。一実施形態では、化学療法剤はCIMを誘発する薬剤を含む。化学療法剤の例としては、たとえば、アルキル化剤(たとえばシスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシルまたはイホスファミド)、代謝拮抗薬(たとえばプリン、たとえばアザチオプリン、メルカプトプリン、またはピリミジン)、植物性アルカロイド(たとえばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、およびビンデシンなどのビンカアルカロイド類)、タキサン類(たとえばパクリタキセルおよびドセタキセル)、ポドフィロトキシン類(たとえばエトポシドおよびテニポシド)、トポイソメラーゼ阻害剤(たとえばアムサクリン)、および抗腫瘍性抗生物質(たえばダクチノマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、およびブレオマイシン)が挙げられる。一部の実施形態では、化学療法剤はドキソルビシン、パクリタキセルおよび/またはシクロホスファミドならびにこれらの任意の組合せを含む。
【0022】
一実施形態では、化学療法剤は細胞周期特異的薬剤である。「細胞周期特異的薬剤」という表現は、細胞増殖の特定のサイクルを標的にする化学療法剤を含む。他の実施形態では、化学療法剤は細胞周期非特異的薬剤である。「細胞周期非特異的薬剤」という表現は、細胞増殖のどのサイクルでもまたはすべてのサイクルを標的にする化学療法剤を含む。細胞周期非特異的薬剤の例としては、たとえば、ナイトロジェンマスタード(たとえばシクロホスファミド、メクロレタミン、ウラムスチン、メルファラン、クロラムブシル、およびイホスファミド)、ニトロソウレア(たとえばカルムスチン、ロムスチンおよびストレプトゾシン)、およびアルキルスルホナート(たとえばブスルファン)などのアルキル化剤;シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、オキサプラチン、サトラプラチン、および四硝酸トリプラチンなどのアルキル化様薬剤;またはプロカルバジンならびにアルトレタミンが挙げられる。
【0023】
一部の実施形態では、被験者は化学療法剤(たとえば2種以上の化学療法剤)の組合せで治療される。したがって、化学療法剤の組合せは、細胞周期特異的薬剤、細胞周期非特異的薬剤またはその組合せを含んでもよい。
【0024】
「化学療法剤を用いて治療する」という表現は、化学療法剤が投与される状態(たとえば癌)を治療するのに適した方法で、1種以上の化学療法剤を被験者に投与することを含む。
【0025】
他の実施形態では、本発明は、有効量のビタミンD化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグもしくは溶媒和化合物を被験者に投与することによって、骨髄抑制を誘発する化学療法剤を用いて治療されている被験者における、骨髄抑制によって誘発される障害のリスクを減少させる方法または防止する方法を提供する。
【0026】
「骨髄抑制によって誘発される障害」という表現は、化学療法誘発性の骨髄抑制の結果として起こる障害および障害の症状を含む。骨髄抑制によって誘発される障害の例としては、骨髄抑制によって誘発される貧血症(たとえば、脱力感、疲労、倦怠感、集中力低下、息切れ、心臓の動悸、アンギナ、蒼白、頻拍、および心拡大のような症状を含む)、骨髄抑制によって誘発される好中球減少症(たとえば、重篤な感染症または敗血症、発熱、口腔内潰瘍、下痢、および咽喉炎のリスクの増加のような症状を含む)、または骨髄抑制によって誘発される血小板減少症(たとえば、出血、紫斑、鼻出血および歯肉出血のリスクの増加のような症状を含む)が挙げられる。
【0027】
一実施形態では、骨髄抑制によって誘発される障害は、骨髄抑制によって誘発される好中球減少症である。さらに別の実施形態では、骨髄抑制によって誘発される障害は、骨髄抑制によって誘発される感染症、骨髄抑制によって誘発される発熱、骨髄抑制によって誘発される口腔内潰瘍、骨髄抑制によって誘発される下痢、および骨髄抑制によって誘発される咽喉炎である。「骨髄抑制によって誘発される感染症」という表現は、化学療法誘発性の骨髄抑制および/または化学療法誘発性の好中球減少症の結果として起こる感染症(たとえば敗血症)を含む。
【0028】
一部の実施形態では、本発明は、有効量のビタミンD化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグもしくは溶媒和化合物を被験者に投与することによって、化学療法剤を用いて治療されている被験者における好中球の欠乏を防止する方法を提供する。
【0029】
「好中球の欠乏を防止する」という表現は、化学療法剤を用いて被験者を治療する結果として起こり得る被験者における好中球の減少を抑止することまたは抑制することを含む。一部の実施形態では、本発明の方法は、少なくとも約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%好中球の欠乏を防止する。
【0030】
「投与する」、「投与すること」および「投与」という表現は、CIMを防止するまたは減少させるために有効な量のビタミンD化合物を1つまたは複数の用量で与えることを含む。ビタミンD化合物の投与の所与のプロトコールにおいて最適な投与速度は、使用される特定の化合物、調合された特定の組成物、適用様式、投与の特定の部位なとに関して行われる従来の用量決定試験を用いて、当業者が確認することができる。
【0031】
一実施形態では、ビタミンD化合物は、パルス投与で投与される。「パルス投与」という表現は、短期間に繰り返して投与されるビタミンD化合物の1回分の投与を含む。
【0032】
一部の実施形態では、被験者に投与されるビタミンD化合物の用量は、約0.1μg/m〜約300μg/m、約1μg/m〜280μg/m、約25μg/m〜約60μg/mである。他の実施形態では、被験者に投与されるビタミンD化合物の用量は、約10μg/kg〜約200μg/kgである。
【0033】
一実施形態では、ビタミンD化合物は、化学療法剤の投与の前に投与される。ビタミンD化合物は、化学療法剤の投与の約5分前、約10分前、約20分前、約30分前、約45分前、約1時間前、約2時間前、約3時間前、約4時間前、約5時間前、約6時間前、約7時間前、約8時間前、約9時間前、約10時間前、約11時間前、約12時間前、約13時間前、約14時間前、約15時間前、約16時間前、約17時間前、約18時間前、約19時間前、約20時間前、約21時間前、約22時間前、約23時間前、約24時間前、約36時間前、約48時間前、約60時間前、約72時間前、約84時間前、または約96時間前に投与されてもよい。
【0034】
他の実施形態では、ビタミンD化合物は、化学療法剤と実質的に同時に投与される。たとえば、ビタミンD化合物は、化学療法剤と同時投与されてもよく、最初にビタミンD化合物が投与され、直後に化学療法剤の投与が続いてもよく、または最初に化学療法剤が投与され、直後にビタミンD化合物の投与が続いてもよい。
【0035】
一実施形態では、ビタミンD化合物は、化学療法剤の投与後に投与される。ビタミンD化合物は、化学療法剤の投与の約5分後、約10分後、約20分後、約30分後、約45分後、約1時間後、約2時間前、約3時間後、約4時間後、約5時間後、約6時間後、約7時間後、約8時間後、約9時間後、約10時間後、約11時間後、約12時間後、約13時間後、約14時間後、約15時間後、約16時間後、約17時間後、約18時間後、約19時間後、約20時間後、約21時間後、約22時間後、約23時間後、または約24時間後に投与されてもよい。
【0036】
一部の実施形態では、ビタミンD化合物の投与は、被験者内のカルシウム濃度を実質的に上昇させない。別の実施形態では、ビタミンD化合物の投与は、高カルシウム血症(たとえば血液中のカルシウムが多すぎるまたはカルシウム値が異常に高い)を誘発しない。
【0037】
他の実施形態では、ビタミンD化合物は、化学療法によって誘発される毒性、たとえば化学療法誘発性の貧血症などの骨髄副作用を解消する追加の薬剤と同時投与される。「化学療法誘発性の貧血症」という表現は、化学療法剤の投与の結果として起こる貧血症(たとえば赤血球の量の減少)を含む。「化学療法誘発性の貧血症を解消する薬剤」という表現は、化学療法誘発性の貧血症またはその1つまたは複数の症状を治療する、防止する、減少させる、または回復させる薬剤を含む。一部の実施形態では、化学療法誘発性の貧血症を解消する追加の薬剤として、増殖因子、たとえばエポエチンアルファ、エリスロポエチン(EPO)または顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)が挙げられる。たとえば、この薬剤は、G−CSF、GM−CSF、PDGF、EGF、またはEPOなどの増殖因子であってもよい。
【0038】
化合物の「有効量」という表現は、被験者におけるCIMまたは1つもしくは複数のCIMの症状を防止するまたは減少させるのに必要な化合物の量もしくは十分な化合物の量である。有効量は、被験者の大きさと体重、疾患の種類などの因子によって変わりうる。当業者は、上述の因子を研究して、過度の実験なしでビタミンD化合物の有効量に関して決定をすることができるであろう。
【0039】
一実施形態では、ビタミンD化合物は、式(I)によって表される。
【化1】

【0040】
[式中、
aおよびbは、それぞれ独立して単結合または二重結合であり、
aが二重結合であるとき、Xは−CHであり、aが単結合であるとき、Xは水素もしくはヒドロキシル置換アルキルであり、
は、水素、ヒドロキシル、アルコキシル、トリアルキルシリルまたは置換アルキルもしくは非置換アルキルであり、独立して1〜3個のハロゲン、ヒドロキシル、シアノまたは−NR’R”の残基によって置換され、
は、水素、ヒドロキシル、−O−トリアルキルシリル、または置換もしくは非置換のアルキル、アルコキシルまたはアルケニルであり、独立して1〜3個のハロゲン、ヒドロキシル、シアノまたは−NR’R”の残基で置換され、
bが二重結合であるとき、Rは不在であり、bが単結合であるとき、Rは水素、ヒドロキシル、もしくはアルキルであるか、またはRおよびRは、それらが結合する炭素原子と共に連結して、5〜7員環の炭素環を形成することができ、
は、水素、ハロゲンまたはヒドロキシルであり、
aが二重結合であるとき、Rは不在であり、aが単結合であるとき、Rは水素、ハロゲンもしくはヒドロキシルであり、
は、置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アルキル−O−アルキル、アルキル−CO−アルキルであり、独立して1〜5個のヒドロキシル、オキソ、ハロゲン、アルコキシル、アリール、ヘテロアリール、シアノ、ニトロ、もしくは、−NR’R”の残基で置換され、
は、置換アルキルもしくは非置換アルキルであり、独立して1〜3個のヒドロキシル、ハロゲン、アルコキシル、アリール、ヘテロアリール、シアノ、ニトロ、もしくはーNR’R”の残基で置換され、そして
R’およびR”は、それぞれ独立して水素、ヒドロキシル、ハロゲン、−C1−7アルキルまたは−C1−7アルコキシルである。]
一部の実施形態では、Rはヒドロキシルであり、Rはヒドロキシルであり、aは二重結合であり、Rは不在であり、Xは−CHであり、bは二重結合であり、RおよびRは不在であり、Rはアルキル(たとえばメチル)であり、Rはアルキル(例を挙げると、置換もしくは非置換のCアルキル、たとえばヒドロキシル置換Cアルキルまたはシクロアルキル置換Cアルキル)である。
【0041】
いくつかの実施形態では、ビタミンD化合物は、式(II)によって表される。
【化2】

【0042】
[式中、
cは、単結合または二重結合であり、
1aは、水素、トリアルキルシリル、または置換アルキルもしくは非置換アルキルであり、独立して1〜3個のハロゲン、ヒドロキシル、シアノもしくは−NR’R”の残基で置換され、
2aは、水素、ヒドロキシル、−O−トリアルキルシリル、または置換アルキルもしくは非置換のアルキル、アルコキシルまたはアルケニルであり、独立して1〜3個のハロゲン、ヒドロキシル、シアノもしくは−NR’R”の残基で置換され、
3a、R4aは、cが二重結合のとき不在であり、またはcが単結合のときそれぞれ独立して水素、ヒドロキシル、ハロゲン、アルコキシル、または置換アルキルもしくは非置換アルキルであり、独立して1〜3個のヒドロキシルもしくはハロゲン残基で置換され、
3b、R4b、R5a、R6a、R7a、およびR8aはそれぞれ独立して水素、ヒドロキシル、ハロゲン、アルコキシル、または置換アルキルもしくは非置換アルキルであり、独立して1〜3個のヒドロキシルもしくはハロゲン残基で置換され、またはR6a、R7a、およびR8aのうちの任意の2つが連結して3〜7員環の炭素環を形成することができる。]
例示的実施形態では、化合物は式(II)によって表され、式中、R1a、R3a、およびR4aはそれぞれ水素である。
【0043】
別の例示的実施形態では、化合物は式(II)によって表され、式中、cは単結合を表す。
【0044】
さらに別の例示的実施形態では、化合物は式(II)によって表され、式中、R6aおよびR8aは両方ともメチルである。
【0045】
一実施形態では、化合物は式(II)によって表され、式中、R1aは水素である。
【0046】
別の実施形態では、化合物は式(II)によって表され、式中、R2aはヒドロキシルである。
【0047】
別の実施形態では、化合物は式(II)によって表され、式中、R7aはヒドロキシルである。
【0048】
さらに別の実施形態では、化合物は式(II)によって表され、式中、R5aはヒドロキシルである。
【0049】
いくつかの実施形態では、ビタミンD化合物は、1,25−ジヒドロキシビタミンD3(1,25(OH)D3(カルシトリオールとしても知られている)、1,25−ジヒドロキシ−16−エン−23−イン−コレカルシフェロール、1α−ヒドロキシビタミンD3、1α,24−ジヒドロキシビタミンD3、またはMC903(たとえばカルシポトリオール)である。
【0050】
ビタミンD化合物の他の適切な類似体、代謝物、誘導体および/または模倣物としては、たとえば、以下の特許で記述されているものを含み、その全体を参照することによってそれぞれを援用する。米国特許第4,391,802号(1α−ヒドロキシビタミンD誘導体);第4,717,721号(コレステロールまたはエルゴステロールの側鎖より長さにおいて長い17の側鎖を有する1α−ヒドロキシ誘導体);第4,851,401号(シクロペンタノ−ビタミンD類似体);第4,866,048号および第5,145,846号(アルキニル、アルケニル、およびアルカニル側鎖を有するビタミンD3類似体);第5,120,722号(トリヒドロキシカルシフェロール);第5,547,947号(フルオロコレカルシフェロール化合物);第5,446,035号(メチル置換ビタミンD);第5,411,949号(23−オキサ−誘導体);第5,237,110号(19−ノル−ビタミンD化合物);第4,857,518号(ヒドロキシル化24−ホモ−ビタミンD誘導体)。他の適切な例としては、ROCALTROL(Roche Laboratories);CALCIJEX注射用カルシトリオール;EB1089(24a,26a,27a,トリホモ−22,24−ジエン−1α,25−(OH)−D3、KH1060(20−エピ−22−オキサ−24a,26a,27a−トリホモ1a、25−(OH)−D3)、MC1288(1,25−(OH)−20−エピ−D3)、およびMC903(カルシポトリオール、1a,24s(OH)−22−エン−26,27−デヒドロ−D3)を含むLeo Pharmaceuticalsからの治験薬;1,25−(OH)−16−エン−D3、1,25−(OH)−16−エン−23−イン−D3、および25−(OH)−16−エン−23−イン−D3を含むRoche Pharmaceuticalの薬物;Chugai Pharmaceuticals 22−オキサカルシトリオール(22−オキサ−1α,25−(OH)−D3;イリノイ大学からの1α−(OH)−D5;ZK161422(20−メチル−1,25−(OH)−D3)およびZK157202(20−メチル−23−エン−1,25−(OH)−D3)を含むInstitute of Medical Chemistry−Schering AGからの薬物;1α−(OH)−D2;1α−(OH)−D3、1α−(OH)−D4、25−(OH)−D2;25−(OH)−D3;ならびに25−(OH)−D4が挙げられる。追加の例としては、1α,25−(OH)−26,27−d6−D3;1α,25−(OH)−22−エン−D3;1α,25−(OH)−D3;1α,25−(OH)−D2;1α,25−(OH)−D4;1α,24,25−(OH)−D3;1α,24,25−(OH)−D2;1α,24,25−(OH)−D4;1α−(OH)−25−FD3;1α−(OH)−25−FD4;1α−(OH)−25−FD2;1α,24−(OH)−D4;1α,24−(OH)−D3;1α,24−(OH)−D2;1α,24−(OH)−25−FD4;1α,24−(OH)−25−FD3;1α,24−(OH)−25−FD2;1α,25−(OH)−26,27−F6−22−エン−D3;1α,25(OH)−26,27−F6−D3;1α,25S−(OH)−26−F3−D3;1α,25−(OH)−24−F2−D3;lα,25S,26−(OH)−22−エン−D3;1α,25R,26−(OH)−22−エン−D3;1α,25−(OH)−D2;1α,25−(OH)−24−エピ−D3;1α,25−(OH)−23−イン−D3;1α,25−(OH)−24R−F−D3;1α,25S,26−(OH)−D3;1α,24R−(OH)−25F−D3;1α,25−(OH)−26,27−F6−23−イン−D3;1α,25R−(OH)−26−F3−D3;1α,25,28−(OH)−D2;1α,25−(OH)−16−エン−23−イン−D3;1α,24R,25−(OH)−D3;1α,25−(OH)−26,27−F6−23−エン−D3;1α,25R−(OH)−22−エン−26−F3−D3;1α,25S−(OH)−22−エン−26−F3−D3;1α,25R−(OH)−D3−26,26,26−d3;1α,25S−(OH)−D3−26,26,26−d3;ならびに1α,25R−(OH)−22−エン−D3−26,26,26−d3が挙げられる。追加の例としては、米国特許第6,521,608号に見い出すことができ、その開示全体を参照することで本明細書に援用する。また、たとえば米国特許第6,503,893号、第6,482,812号、第6,441,207号、第6,410,523号、第6,399,797号、第6,392,071号、第6,376,480号、第6,372,926号、第6,372,731号、第6,359,152号、第6,329,357号、第6,326,503号、第6,310,226号、第6,288,249号、第6,281,249号、第6,277,837号、第6,218,430号、第6,207,656号、第6,197,982号、第6,127,559号、第6,103,709号、第6,080,878号、第6,075,015号、第6,072,062号、第6,043,385号、第6,017,908号、第6,017,907号、第6,013,814号、第5,994,332号、第5,976,784号、第5,972,917号、第5,945,410号、第5,939,406号、第5,936,105号、第5,932,565号、第5,929,056号、第5,919,986号、第5,905,074号、第5,883,271号、第5,880,113号、第5,877,168号、第5,872,140号、第5,847,173号、第5,843,927号、第5,840,938号、第5,830,885号、第5,824,811号、第5,811,562号、第5,786,347号、第5,767,111号、第5,756,733号、第5,716,945号、第5,710,142号、第5,700,791号、第5,665,716号、第5,663,157号、第5,637,742号、第5,612,325号、第5,589,471号、第5,585,368号、第5,583,125号、第5,565,589号、第5,565,442号、第5,554,599号、第5,545,633号、第5,532,228号、第5,508,392号、第5,508,274号、第5,478,955号、第5,457,217号、第5,447,924号、第5,446,034号、第5,414,098号、第5,403,940号、第5,384,313号、第5,374,629号、第5,373,004号、第5,371,249号、第5,430,196号、第5,260,290号、第5,393,749号、第5,395,830号、第5,250,523号、第5,247,104号、第5,397,775号、第5,194,431号、第5,281,731号、第5,254,538号、第5,232,836号、第5,185,150号、第5,321,018号、第5,086,191号、第5,036,061号、第5,030,772号、第5,246,925号、第4,973,584号、第5,354,744号、第4,927,815号、第4,804,502号、第4,857,518号、第4,851,401号、第4,851,400号、第4,847,012号、第4,755,329号、第4,940,700号、第4,619,920号、第4,594,192号、第4,588,716号、第4,564,474号、第4,552,698号、第4,588,528号、第4,719,204号、第4,719,205号、第4,689,180号、第4,505,906号、第4,769,181号、第4,502,991号、第4,481,198号、第4,448,726号、第4,448,721号、第4,428,946号、第4,411,833号、第4,367,177号、第4,336,193号、第4,360,472号、第4,360,471号、第4,307,231号、第4,307,025号、第4,358,406号、第4,305,880号、第4,279,826号、および第4,248,791号を参照されたい。それぞれの開示全体を参照することによって本明細書に援用する。
【0051】
さらに、利用してもよい他の化合物としては、米国特許第6,218,430号および国際公開第2005/037755号に開示されているビス−アリール誘導体などのビタミンD模倣物が挙げられ、それぞれの開示全体を参照によって本明細書に援用する。本発明に適した非セコステロイド性のビタミンD模倣化合物の追加の例は、米国特許第6,831,106号、第6,706,725号、第6,689,922号、第6,548,715号、第6,288,249号、第6,184,422号、第6,017,907号、第6,858,595号、および第6,358,939号に見い出すことができ、それぞれの開示全体を参照によって本明細書に援用する。
【0052】
さらに、利用してもよい他の適したビタミンD3の類似体、代謝物、誘導体および/または模倣物としては、米国特許出願公開第2006/0177374号に特定されたものが含まれ、その開示全体を参照によって本明細書に援用する。
【0053】
「ビタミンD類似体」という表現は、構造および機能においてビタミンDに類似した化合物を含む。一実施形態では、ビタミンD類似体は、ビタミンD3類似体(たとえば構造および機能においてビタミンD3に類似した化合物)である。
【0054】
「ビタミンD代謝物」という表現は、ビタミンDの代謝に関与する中間体および産物である化合物を含む。一実施形態では、ビタミンD代謝物は、ビタミンD3代謝物(たとえば、ビタミンD3の代謝に関与する中間体または産物である化合物)である。
【0055】
「ビタミンD誘導体」という表現は、1つの原子と別の原子または原子団との置換によって親化合物(たとえばビタミンD)から生じる得る化合物を含む。一実施形態では、ビタミンD誘導体は、ビタミンD3誘導体(たとえば1つの原子と別の原子または原子団との置換によってビタミンD3から生じ得る化合物)である。
【0056】
「ビタミンD模倣物」という表現は、生物学的過程でビタミンDを化学的に模倣することができる化合物を含む。一実施形態では、ビタミンD模倣物は、ビタミンD3模倣物(たとえば、生物学的過程でビタミンD3を化学的に模倣することができる化合物)である。
【0057】
本明細書で用いる、「アルキル」という用語は、1〜20個の炭素原子を含む、完全に飽和した分岐または非分岐(たとえば直鎖もしくは線状鎖)の炭化水素残基を含む。好ましくは、アルキルは1〜7個の炭素原子を含み、より好ましくは1〜4個の炭素原子を含む。アルキル残基の代表的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、3−メチルヘキシル、2,2−ジメチルペンチル、2,3−ジメチルペンチル、n−ヘプチルが挙げられる。
【0058】
「C1−7アルキル」という用語は、1〜7個の炭素原子を有する炭化水素を含む。さらに、「アルキル」という用語は、「非置換C1−7アルキル」および「置換C1−7アルキル」の双方を含む。C1−7アルキル残基に対する置換基の代表的な例は、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C3−8シクロアルキル、C2−7アルケニル、C2−7アルキニル、C1−7アルコキシ、C2−7アルケニルオキシ、C2−7アルキニルオキシ、ハロゲン、またはアミノ(C1−7アルキルアミノ、ジ−C1−7アルキルアミノ、C6−10アリールアミノ、ジ−C6−10アリールアミノを含む)である。
【0059】
本明細書で用いる、「アルコキシ」という用語はアルキル−O−を含み、式中のアルキルは上記のように本明細書に定義される。アルコキシ残基の代表的な例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、2−プロポキシ、ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロプロピルオキシ−、シクロヘキシルオキシ−などが挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、アルコキシ基は約1〜7個、より好ましくは約1〜4個の炭素原子を有する。アルコキシという用語は、置換アルコキシを含む。置換アルコキシ基の例としては、ハロゲン化アルコキシ基が含まれる。ハロゲン置換アルコキシ基の例は、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロメトキシ、ジクロロメトキシ、およびトリクロロメトキシである。
【0060】
「C1−7アルコキシ」という用語は、C1−7アルキル−O−を含み、式中のC1−7アルキルは上に定義される。さらに、C1−7アルコキシという用語は、「非置換C1−7アルコキシ」および「置換C1−7アルコキシ」の双方を含む。C1−7アルコキシ残基に対する置換基の代表的な例としては、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1−7アルキル、C3−8シクロアルキル、C2−7アルケニル、C2−7アルキニル、C1−7アルコキシ、C2−7アルケニルオキシ、C2−7アルキニルオキシ、ハロゲン、またはアミノ(C1−7アルキルアミノ、ジ−C1−7アルキルアミノ、C6−10アリールアミノ、ジ−C6−10アリールアミノを含む)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0061】
「アルコキシアルキル」という用語は、C1−7アルキル基がC1−7アルコキシで置換されている、上で定義されるようなアルキル基を含む。さらに、「アルコキシアルキル」という用語は、「非置換アルコキシアルキル」および「置換アルコキシアルキル」の双方を含む。アルコキシアルキル残基に対する置換基の代表的な例としては、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1−7アルキル、C3−8シクロアルキル、C2−7アルケニル、C2−7アルキニル、C1−7アルコキシ、C2−7アルケニルオキシ、C2−7アルキニルオキシ、ハロゲン、またはアミノ(C1−7アルキルアミノ、ジ−C1−7アルキルアミノ、C6−10アリールアミノ、ジ−C6−10アリールアミノを含む)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0062】
「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する分岐炭化水素または非分岐炭化水素を含む。「C2−7アルケニル」という用語は、2〜7個の炭素原子を有し、かつ少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む炭化水素をいう。アルケニル残基の代表的な例としては、ビニル、プロプ−1−エニル、アリル、ブテニル、イソプロペニル、またはイソブテニルが挙げられるがこれらに限定されない。さらに、「アルケニル」という用語は、「非置換C2−7アルケニル」および「置換C2―7アルケニル」の双方を含む。C2−7アルケニル残基に対する置換基の代表的な例としては、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1−7アルキル、C3−8シクロアルキル、C2−7アルケニル、C2−7アルキニル、C1−7アルコキシ、C2−7アルケニルオキシ、C2−7アルキニルオキシ、ハロゲン、またはアミノ(C1−7アルキルアミノ、ジ−C1−7アルキルアミノ、C6−10アリールアミノ、ジ−C6−10アリールアミノを含む)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0063】
「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する分岐炭化水素または非分岐炭化水素を含む。「C2−7アルキニル」という用語は、2〜7個の炭素原子を有し、かつ少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む炭化水素をいう。C2−7アルキニル残基の代表的な例としては、エチニル、プロプ−1−イニル(プロパルギル)、ブチニル、イソプロピニル、またはイソブチニルが挙げられるがこれらに限定されない。さらに、「アルキニル」という用語は、「非置換C2−7アルキニル」および「置換C2−7アルキニル」の双方を含む。C2−7アルキニル残基に対する置換基の代表的な例としては、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1−7アルキル、C3−8シクロアルキル、C2−7アルケニル、C2−7アルキニル、C1−7アルコキシ、C2−7アルケニルオキシ、C2−7アルキニルオキシ、ハロゲン、またはアミノ(C1−7アルキルアミノ、ジ−C1−7アルキルアミノ、C6−10アリールアミノ、ジ−C6−10アリールアミノ、およびC1−7アルキルC6−10アリールアミノを含む)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0064】
本明細書で用いる「シクロアルキル」という用語は、3〜12個の炭素原子、好ましくは3〜8個、または3〜7個の炭素原子からなる飽和または不飽和の単環式、二環式、または三環式炭化水素基を含む。代表的な単環式炭化水素基としては、たとえば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、およびシクロヘキセニルが挙げられる。代表的な二環式炭化水素基としては、たとえば、ボルニル、インジル、ヘキサヒドロインジル、テトラヒドロナフチル、デカヒドロナフチル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプテニル、6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプチル、および2,6,6−トリメチルビシクロ[3.1.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチルが挙げられる。代表的な三環式炭化水素基としては、たとえば、アダマンチルが挙げられる。
【0065】
「C3−8シクロアルキル」という用語は、3〜8個の炭素原子を有する環状炭化水素基を含む。さらに、「C3−8シクロアルキル」という用語は、「非置換C3−8シクロアルキル」および「置換C3−8シクロアルキル」の双方を含む。C3−8シクロアルキル残基に対する置換基の代表的な例としては、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1−7アルキル、C3−8シクロアルキル、C2−7アルケニル、C2−7アルキニル、C1−7アルコキシ、C2−7アルケニルオキシ、C2−7アルキニルオキシ、ハロゲン、またはアミノ(C1−7アルキルアミノ、ジ−C1−7アルキルアミノ、C6−10アリールアミノ、ジ−C6−10アリールアミノを含む)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0066】
「アリール」という用語は、その環部分に6〜20個の炭素原子を有する単環式または二環式芳香族炭化水素基を含む。アリール残基の代表的な例としては、フェニル、ナフチル、アントラシル、フェナントリル、またはテトラヒドロナフチルが挙げられるがこれらに限定されない。
【0067】
「C6−10アリール」という用語は、その環部分に6〜10個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基を含む。さらに、アリールという用語は、「非置換アリール」および「置換アリール」の双方を含む。アリール残基に対する置換基の代表的な例としては、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1−7アルキル、C3−8シクロアルキル、C2−7アルケニル、C2−7アルキニル、C1−7アルコキシ、C2−7アルケニルオキシ、C2−7アルキニルオキシ、ハロゲン、またはアミノ(C1−7アルキルアミノ、ジ−C1−7アルキルアミノ、C6−10アリールアミノ、ジ−C6−10アリールアミノを含む)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0068】
「ヘテロアリール」という用語は、複数の炭素原子、およびO、NまたはSから選択される1〜5個のヘテロ原子から選択される5〜10個の環員を含む単環式または二環式のヘテロアリール残基を含む。ヘテロアリール基の例としては、チエニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサ−2,3−ジアソリル、オキサ−2,4−ジアゾリル、オキサ−2,5−ジアゾリル、オキサ−3,4−ジアゾリル、チア−2,3−ジアゾリル、チア−2,4−ジアゾリル、チア−2,5−ジアゾリル、チア−3,4−ジアゾリル、3−、4−または5−イソチアゾリル、2−、4−または5−オキサゾリル、3−、4−または5−イソキサゾリル、3−または5−1,2,4−トリアゾリル、4−または5−1,2、3−トリアゾリル、テトラゾリル、2−、3−または4−ピリジル、3−または4−ピリダジニル、3−、4−または5−ピラジニル、2−ピラジニル、2−,4−または5−ピリミジニルが挙げられるがこれらに限定されない。ヘテロアリール基は単環式、二環式、三環式、または多環式であり得る。
【0069】
「ヘテロアリール」という用語はさらに、ヘテロ芳香族環が1つまたは複数のアリール環、シクロ脂肪族環、またはヘテロシクリル環に融合し、そこでラジカルまたは結合点がヘテロ芳香族環上または融合アリール環上にある基を含む。このようなヘテロアリール残基の代表的な例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない。インドリル、イソインドリル、インダゾリル、インドリジニル、プリニル、キノリジニル、キノリニル、イソキノリニル、シノリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、ベンズイソキノリニル、チエノ[2,3−b]フラニル、フロ[3,2−b]−ピラニル、5H−ピリド[2,3−d]−o−オキサジニル、1H−ピラゾロ[4,3−d]−オキサゾリル、4H−イミダゾ[4,5−d]チアゾリル、ピラジノ[2,3−d]ピリダジニル、イミダゾ[2,1−b]チアゾリル、イミダゾ[1,2−b][1,2,4]トリアジニル、7−ベンゾ[b]チエニル、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズオキサピニル、ベンズオキサジニル、1H−ピロロ[1,2−b][2]ベンゾアザピニル(benzazapinyl)、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾトリアゾリル、ピロロ[2,3−b]ピリジニル、ピロロ[3,2−c]ピリジニル、ピロロ[3,2−c]ピリジニル、ピロロ[3,2−b]ピリジニル、イミダゾ[4,5−b]ピリジニル、イミダゾ[4,5−c]ピリジニル、ピラゾロ[4,3−d]ピリジニル、ピラゾロ[4,3−c]ピリジニル、ピラゾロ[3,4−c]ピリジニル、ピラゾロ[3,4−d]ピリジニル、ピラゾロ[3,4−b]ピリジニル、イミダゾ[1,2−a]ピリジニル、ピラゾロ[1,5−a]ピリジニル、ピロロ[1,2−b]ピリダジニル、イミダゾ[1,2−c]ピリミジニル、ピリド[3,2−d]ピリミジニル、ピリド[4,3−d]ピリミジニル、ピリド[3,4−d]ピリミジニル、ピリド[2,3−d]ピリミジニル、ピリド[2,3−b]ピラジニル、ピリド[3,4−b]ピラジニル、ピリミド[5,4−d]ピリミジニル、ピラジノ[2,3−b]ピラジニル、またはピリミド[4,5−d]ピリミジニル。さらに、「ヘテロアリール」という用語は、「非置換ヘテロアリール」および「置換ヘテロアリール」の双方を含む。
【0070】
「アリール」基または「ヘテロアリール」基の芳香環は、非置換であるか、1つまたは複数の環位で、置換基によって置換されることができる。置換基は、たとえば、以下のとおりである:ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、C1−7アルキル、C3−8シクロアルキル、C2−7アルケニル、C2−7アルキニル、C6−10アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、C1−7アルコキシ、C3−8シクロアルキルオキシ、C2−7アルケニルオキシ、C2−7アルキニルオキシ、C6−10アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリルオキシ、アリールアルキルオキシ、ヘテロアリールアルキルオキシ、ヘテロシクリルアルキルオキシ、ケトン類(C1−7アルキルカルボニル、C3−8シクロアルキルカルボニル、C2−7アルケニルカルボニル、C2−7アルキニルカルボニル、C6−10アロイル、C6−10アリールC1−7アルキルカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ヘテロシクリルカルボニルを含む)、エステル類(C1−7アルコキシカルボニル、C3−8シクロアルキルオキシカルボニル、C6−10アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクリルオキシカルボニル、C1−7アルキルカルボニルオキシ、C3−8シクロアルキルカルボニルオキシ、C6−10アリールカルボニルオキシ、ヘテロアリールカルボニルオキシ、ヘテロシクリルカルボニルオキシを含む)、カルボナート類(C1−7アルコキシカルボニルオキシ、C6−10アリールオキシカルボニルオキシ、ヘテロアリールオキシカルボニルオキシを含む)、カルバメート類(C1−7アルコキシカルボキシルアミノ、C6−10アリールオキシカルボニルアミノ、C2−7アルケニルオキシカルボニルアミノ、C2−7アルキニルオキシカルボニルアミノ、C6−10アリールオキシカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、C1−7アルキルアミノカルボニルオキシ、ジ−C1−7アルキルアミノカルボニルオキシ、C6−10アリールアミノカルボニルオキシを含む)、カルバモイル(C1−7アルキルアミノカルボニル、ジ−C1−7アルキルアミノカルボニル、C6−10アリールアミノカルボニル、C6−10アリールC1−7アルキルアミノカルボニル、C2−7アルケニルアミノカルボニルを含む)、アミド(C1−7アルキルカルボニルアミノ、C1−7アルキルカルボニルC1−7アルキルアミノ、C6−10アリールカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノを含む)、C6−10アリールC1−7アルキル、ヘテロアリールC1−7アルキル、ヘテロシクロC1−7アルキル、アミノ(C1−7アルキルアミノ、ジ−C1−7アルキルアミノ、C6−10アリールアミノ、ジ−C6−10アリールアミノ、およびC1−7アルキルC6−10アリールアミノを含む)、スルホニル(C1−7アルキルスルホニル、C6−10アリールスルホニル、C6−10アリールC1−7アルキルスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、C1−7アルコキシスルホニル、C6−10アリールオキシスルホニル、ヘテロアリールオキシスルホニル、C3−8シクロアルキルスルホニル、ヘテロシクリルスルホニルを含む)、スルファモイル、スルホンアミド、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、チオエーテル(C1−7アルキルチオ、C6−10アリールチオ、ヘテロアリールチオを含む)、ウレイド、イミノ、アミジノ、チオカルボキシル(C1−7アルキルチオカルボニル、C6−10アリールチオカルボニルを含む)、スルフィニル(C1−7アルキルスルフィニル、C6−10アリールスルフィニルを含む)、カルボキシル。ここで上述のそれぞれの炭化水素基は場合によって1つまたは複数のC1−7アルキル、C2−7アルケニル、C2−7アルキニル、C3−8シクロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、またはC1−7アルコキシ基で置換され得る。
【0071】
本明細書で用いる、「ヘテロシクリル」または「ヘテロシクロ」という用語は、非置換もしくは置換、飽和もしくは不飽和の非芳香環もしくは環系を含み、たとえば、4−、5−、6−、もしくは7−員の単環式環系、7−、8−、9−、10−、11−、もしくは12−員の二環式環系、または10−、11−、12−、13−、14−、もしくは15−員の三環式環系であり、かつO、SおよびNから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含み、ここでNおよびSはまた種々の酸化状態まで任意に酸化されることができる。一実施形態では、ヘテロシクリル残基は、5〜7個の環原子を含み、かつ場合によってO、SまたはNから選択されるさらなるヘテロ原子を任意に含む飽和単環式環を表す。ヘテロシクリル基は、ヘテロ原子または炭素原子で結合されることができる。ヘテロシクリルは、融合環または架橋環ならびにスピロ環状環を含むことができる。ヘテロシクリル残基の例として、たとえば、ジヒドロフラニル、ジオキソラニル、ジオキサニル、ジチアニル、ピペラジニル、ピロリジン、ジヒドロピラニル、オキサチオラニル、ジチオラン、オキサチアニル、チオモルホリノ、オキシラニル、アジリジニル、オキセタニル、オキセパニル、アゼチジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ピロリジニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、モルホリノ、ピペラジニル、アゼピニル、オキサピニル、オキサアゼパニル、オキサチアニル、チエパニル、アゼパニル、ジオキセパニル、およびジアゼパニルが挙げられる。
【0072】
「ヘテロシクリル」という用語は、以下の1、2または3個の置換基で置換された、本明細書に定義されるヘテロ環基を含む。置換基は、たとえば、=O、=S、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリルオキシ、アリールアルキルオキシ、ヘテロアリールアルキルオキシ、ヘテロシクリルアルキルオキシ、ケトン類(アルキルカルボニル、シクロアルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アロイル、アリールアルキルカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ヘテロシクリルカルボニルを含む)、エステル類(アルコキシカルボニル、シクロアルキルオキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクリルオキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、シクロアルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、ヘテロアリールカルボニルオキシ、ヘテロシクリルカルボニルオキシを含む)、カルボナート類(アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、ヘテロアリールオキシカルボニルオキシを含む)、カルバメート類(アルコキシカルボキシルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、アルケニルオキシカルボニルアミノ 、アルキニルオキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アルキルアミノカルボニルオキシ、ジアルキルアミノカルボニルオキシ、アリールアミノカルボニルオキシを含む)、カルバモイル(アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、アリールアルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニルを含む)、アミド(アルキルカルボニルアミノ、アルキルカルボニルアルキルアミノ、アリールカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノを含む)、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルアルキル、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、スルホニル(アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アリールアルキルスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、ヘテロアリールオキシスルホニル、シクロアルキルスルホニル、ヘテロシクリルスルホニルを含む)、スルファモイル、スルホンアミド、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、チオエーテル(アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオを含む)、ウレイド、イミノ、アミジノ、チオカルボキシル(アルキルチオカルボニル、アリールチオカルボニルを含む)、スルフィニル(アルキルスルフィニル、アリールスルフィニルを含む)、カルボキシル等であり、ここで上述のそれぞれの炭化水素基は場合によって1つまたは複数のC1−7アルキル、C2−7アルケニル、C2−7アルキニル、C3−8シクロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、またはC1−7アルコキシ基で置換され得る。
【0073】
「ヘテロシクリルアルキル」という用語は、ヘテロシクリルで置換されたC1−7アルキルである。この用語は、1つまたは複数のC1−7アルキル、C2−7アルケニル、C2−7アルキニル、C3−8シクロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、またはC1−7アルコキシ基で置換され得る、非置換および置換のヘテロシクリルアルキル残基を含む。
【0074】
「カルボニル」または「カルボキシ」という用語は、酸素原子に二重結合で連結された炭素(C=O)を含有する化合物および残基を含む。カルボニルはさらに、本発明の化合物がその意図された機能を行うことを可能にする任意の残基で置換されることができる。たとえば、カルボニル残基は、C1−7アルキル、C2−7アルケニル、C2−7アルキニル、C6−10アリール、C1−7アルコキシ、アミノなどで置換されてもよい。カルボニルを含有する残基の例としては、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、アミド、エステル、尿素、無水物などが挙げられる。
【0075】
「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」という用語は、−OHまたは−Oを有する基を含む。
【0076】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素などを含む。
【0077】
「過ハロゲン化された」という用語は、そのすべての水素がハロゲン原子に置き換わった残基を含む。
【0078】
本発明のビタミンD化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和化合物もしくはプロドラッグは、1つまたは複数の不斉中心を含んでもよく、したがって絶対立体化学に関してアミノ酸について(R)−もしくは(S)−として、または(D)−もしくは(L)−として定義されることもあるエナンチオマー、ジアステレオマー、および他の立体異性体を生じ得る。本発明は、このような可能性のある異性体のすべて、ならびにそれらのラセミ体および光学的に純粋な形態を含むことが意図される。光学活性な(+)および(−)、(R)−および(S)−、または(D)−および(L)−の異性体は、キラルシントンまたはキラル試薬を使用して調製することもでき、またはキラルカラムを用いるHPLCなどの従来の技法を用いて分離し得る。本明細書に記述する化合物がオレフィン二重結合または幾何学的に不斉の他の中心を含む場合、特に明記しない限り、化合物はEおよびZの両幾何異性体を含むことが意図される。同様に、すべての互変異性型も、含まれることが意図される。
【0079】
「立体異性体」という表現は、同じ結合によって結合されている同じ原子で構成されているが、置き換え可能でない、異なる三次元構造を有する化合物を含む。本発明は、種々の立体異性体およびそれらの混合体を企図し、かつ「エナンチオマー」を含む。これは、その分子が互いに重ね合わせることができない鏡像である2つの立体異性体を指す。
【0080】
本発明は、薬学的に許容される同位体的に標識されたビタミンD化合物のすべてを含む。これらの化合物では1つまたは複数の原子が同じ原子番号を有するが、通常自然界に見られる原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子に置き換わっている。
【0081】
本発明の化合物への包含に適した同位体の例としては、HおよびHなどの水素同位体、11C、13Cおよび14Cなどの炭素同位体、36Clなどの塩素同位体、18Fなどのフッ素同位体、123Iおよび125Iなどのヨウ素同位体、13Nおよび15Nなどの窒素同位体、15O、17O、および18Oなどの酸素同位体、32Pなどのリン同位体、ならびに35Sなどの硫黄同位体が挙げられる。たとえばジュウテリウム(すなわちH)などの重い同位体による置換は、in vivoでの半減期の増加などのより高い代謝安定性、または必要投与量の減量によって生ずるいくつかの治療上の利点をもたらすことができ、したがってある状況において好まれることもある。同位体的に標識されたビタミンD化合物は、一般的に、以前に使用した非標識試薬の代わりに適当な同位体的に標識された試薬を使用することによって、当業者にとって公知の従来の技法によって、または添付する実施例および調製法の節に記載される方法に類似した方法によって、調製され得る。
【0082】
本発明の例示的なビタミンD化合物のうちの1つは、1,25(OH)D3であり、これは主に腎臓の近位尿細管でいくつかの前駆体から合成される。1,25(OH)D3の別の第2の供給源は、太陽光に応答した皮膚による、より活性の低い代謝物の変換を介する。1,25(OH)D3は、細胞へのカルシウム流入・流出、ならびにカルシウムの骨格への動員を調節することが示されているセコステロイドである。さらに、1,25(OH)D3は、主にビタミンD受容体(VDR)と相互作用することによって、カルシウム調節に無関係の他の細胞内役割を有する。VDRは核内受容体であるが、細胞質領域でも見られる。意見が一致していることは、ステロイド受容体であるVDRが核内に位置して、レチノイドX受容体などの他の受容体と相互作用するということである。
【0083】
1,25(OH)D3の効果は完全には理解されていないが、1,25(OH)D3が血中カルシウム増加ではない役割を発現して、VDRのDNA結合ドメインへのその親和性のためにゲノム効果を有することが知られている。VDRのDNA結合ドメインは、タンパク質間の相互作用ならびに他の補助因子および機能ドメインの活性化を調節する。リガンド結合ドメイン(LBD)は、VDRの転写活性での重要な因子であるリン酸化にとって不可欠である。
【0084】
1,25(OH)D3の低分子量および親油性は、その細胞膜への侵入を確実にし、そのVDRへの高親和性はそのVDRのリガンド結合ドメインへの結合につながる。1,25(OH)D3は間接的にヒストンアセチラーゼを動員し、それによってクロマチンを広げる。したがって、活性化補助因子標的遺伝子は、活性化補助因子によって活性のスイッチが入る。一方では、LBD結合なしに、VDRは、他のリプレッサータンパク質と相互作用することによって、ヒストンデアセチラーゼが媒介する転写の抑制をもたらすこともできる。遺伝子転写は、遺伝子のプロモーター領域内の特定のDNA配列であるVDR応答要素によって媒介される。
【0085】
このゲノム活性に加えて、1,25(OH)D3はまた、カルシウムおよび塩化イオンの流入と流出を調節する。1,25(OH)D3はさらに、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPキナーゼ)を調節し、迅速な増殖抑制および細胞分化をもたらす。
【0086】
「プロドラッグ」という用語は、生理的条件下で、または加溶媒分解によって本発明の生物活性のある化合物に変換され得る化合物を含む。したがって、「プロドラッグ」という用語は、薬学的に許容される本発明の化合物の代謝前駆体を指す。プロドラッグは、それを必要とする被験者に投与されるとき、不活性であり得るが、in vivoで本発明の活性化合物に変換される。プロドラッグは通常は、in vivoで、たとえば血液中での加水分解または腸もしくは肝臓での変換によって急速に変わり、本発明の親化合物をもたらす。プロドラッグ化合物は、哺乳動物における溶解度、組織適合性、または徐放性の利点を提供することが多い(Bundgard, H., Design of Prodrugs (1985), pp. 7−9, 21−24 (Elsevier, Amsterdam)を参照されたい)。プロドラッグに関する考察は、Higuchi, T.ら, Pro−drugs as Novel Delivery Systems, A.C.S Symposium Series, Vol. 14, および Bioreversible Carriers in Drug Design, Edward B. Roche編, Anglican Pharmaceutical Association arid Pergamon Press, 1987に提示されている。
【0087】
「薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤」という表現は、ヒトまたは家畜での使用に許容されるとして米国食品医薬品局の許可を受けた、任意のアジュバント、担体、賦形剤、滑剤、甘味剤、希釈剤、防腐剤、色素/着色剤、調味料、表面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定剤、等張剤、溶剤、または乳化剤を含むが、これらに限定されない。
【0088】
「薬学的に許容される塩」という表現は、酸および塩基の両付加塩を含む。
【0089】
「薬学的に許容される酸付加塩」という表現は、生物学的効果および遊離塩基の特性を保持し、生物学的にまたはその他の点で望ましくないものではなく、以下の酸とで形成される塩を含む:限定されるものではないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、ならびに、限定されるものではないが、酢酸、2,2−ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4−アセトアミド安息香酸、ショウノウ酸、カンファー−10−スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、炭酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、2−オキソ−グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、ピルビン酸、サリチル酸、4−アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、チオシアン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ウンデシレン酸などの有機酸。
【0090】
「薬学的に許容される塩基付加塩」という表現は、生物学的効果および遊離酸の特性を保持し、生物学的にまたはその他の点で望ましくないものではない塩を含む。これらの塩は、無機塩基または有機塩基の遊離酸への付加から調製される。無機塩基に由来する塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩、アルミニウム塩などが挙げられるがこれらに限定されない。好ましい無機塩は、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、およびマグネシウム塩である。有機塩基に由来する塩は、一級アミン、二級アミン、および三級アミン、天然に存在する置換アミンを含む置換されたアミン、環状アミン、およびたとえばアンモニア、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、デアノール、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、ベネタミン、ベンザチン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N−エチルピペリジン、ポリアミンの樹脂などの塩基性イオン交換樹脂が挙げられるがこれらに限定されない。特に好ましい有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリンおよびカフェインである。
【0091】
結晶化によって、本発明の化合物(たとえばビタミンD化合物)の溶媒和化合物を生成することが多い。本明細書で用いる、「溶媒和化合物」という用語には、1つまたは複数の溶媒の分子と共に本発明の化合物の1つまたは複数の分子を含む凝集体が含まれる。溶媒は水であってもよく、この場合溶媒和化合物は水和物であり得る。あるいは、溶媒は有機溶媒であってもよい。このように、本発明の化合物は一水和物、二水和物、半水和物、セスキ水和物、三水和物、四水和物などを含む水和物として、ならびに対応する溶媒和形態として存在することができる。本発明の化合物は、真の溶媒和化合物であってもよく、一方他の場合は、本発明の化合物は単に付随的な水を保持してもよく、または水にある付随的な溶媒を加えた混合物であってもよい。
【0092】
「医薬組成物」という表現は、本発明の化合物(たとえばビタミンD化合物)と、本発明の生物学的に活性の化合物を被験者に送達するための当技術分野で通常承認されている媒体との製剤を含む。この媒体は、その薬学的に許容されるすべての担体、希釈剤または賦形剤を含む。
【0093】
ビタミンD化合物および/または本発明の化学療法剤を含む医薬組成物は、被験者に経口的に、全身的に、非経口的に、局所的に、直腸に、経鼻的に、膣内に、または大槽内に投与されてもよい。これらは、もちろん、各投与経路に適した形態によって投与される。たとえば、これらは錠剤もしくはカプセル剤の形態で、注射、吸入、軟膏剤など、注射、注入、または吸入による投与、ローション剤または軟膏剤による局所投与、および直腸座薬または膣坐薬によって投与される。
【0094】
本明細書で用いる、「非経口的投与」および「非経口的に投与される」という表現は、通常注射による、腸内投与および局所投与以外の投与方法を含み、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊椎内、および胸骨内の注射ならびに注入投与を含むが、これらに限定されない。
【0095】
本明細書で用いる、「全身投与」、「全身的に投与される」という表現は、中枢神経系への直接的な投与以外のビタミンD化合物の投与を含み、該投与が被験者の系に侵入し、したがって代謝および他の同様の過程に入るような、たとえば皮下投与を含む。
【0096】
一部の方法では、本発明の組成物は、任意の上皮表面に局所的に投与することができる。「上皮表面」とは、体の外部表面を覆う、または管腔構造の内面を覆う、皮膚表面および粘膜面を含むがこれらに限定されない組織領域を含む。このような上皮表面は、口、咽頭、食道、肺、眼、耳、鼻、頬、舌、膣、頸部、尿生殖器、消化管、および肛門直腸の各表面を含む。
【0097】
組成物は、局所投与のために使用される種々の従来の形態で製剤化することができる。これらは、たとえば、溶液剤もしくは懸濁剤、坐剤、洗浄剤、浣腸、ゲル剤、クリーム剤、乳剤、ローション剤、スラリー剤、散剤、スプレー剤、フォーム剤、ペースト剤、軟膏剤、軟膏、香油剤、洗浄剤、または滴下剤などの半固体剤形および液体剤形を含む。
【0098】
局所投与のために従来使用される担体としては、ペクチン、ゼラチンおよびその誘導体、ポリ乳酸またはポリグリコール酸ポリマーまたはそのコポリマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたは酸化セルロースなどのセルロース誘導体、グアーゴム、アカシアゴム、カラヤゴム、トラガカントゴム、ベントナイト、寒天、カルボマー、ヒバマタ、セラトニア、デキストランおよびその誘導体、ガティゴム、ヘクトライト、インスパキュラハスク、ポリビニルピロリドン、シリカおよびその誘導体、キサンタンゴム、カオリン、タルク、澱粉およびその誘導体、パラフィン、水、植物油および動物油、ポリエチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセロール、エタノール、プロパノール、プロピレングリコール(グリコール、アルコール類)、不揮発油、ナトリウム塩、カリウム塩、アルミニウム塩、マグネシウム塩またはカルシウム塩(たとえば塩化物、炭酸塩、炭酸水素塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、酢酸塩、グルセプト酸塩または酒石酸塩)が挙げられる。
【0099】
局所薬に向けての標準的な組成物戦略を、本剤の持続および滞留時間を増強するため、かつ達成される予防的有効性を改善するために、ビタミンD化合物に適用することがで
きる。
【0100】
下部腸管で、または経膣的に使用される局所投与のために、直腸座剤、適した浣腸、ゲル、軟膏剤、溶液剤、懸濁剤または挿入物を使用することができる。局所的な経皮貼付剤も使用してもよい。経皮貼付剤は、本発明の組成物を体に制御送達するという付加的な利点を有する。このような剤形は、適当な媒体に薬剤を溶解させるまたは分散させることによって作製することが可能である。
【0101】
本発明の組成物は、直腸投与または膣投与のための坐薬の形態で投与することができる。これらの座薬は、室温で固体であるが、直腸温で液体になり、したがって直腸内または膣内で融解して薬剤を放出する適切な非刺激性担体と薬剤を混合することによって調製される。このような材料は、室温で固体であるが、体温で液体になり、したがって直腸腔内または膣腔内で融解して、活性剤を放出することになる、ココアバター、蜜蝋、ポリエチレングリコール、坐薬ワックスまたはサリチル酸塩を含む。膣投与に適する組成物としては、適切であることが当技術分野で知られているそのような担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、フィルム、またはスプレー組成物も挙げられる。本発明の医薬組成物で使用される担体は、膣投与に適合しなければならない。
【0102】
眼内投与の場合、本医薬組成物は、pHを調整した等張無菌食塩水中の微粒子化懸濁剤として、または好ましくはpHを調整した等張無菌食塩水中の溶液剤として、塩化ベンジルアルコニウムなどの防腐剤を伴って、または伴わずに、製剤化することができる。あるいは、眼科用の用途の場合、本組成物はペトロラタムなどの軟膏剤で製剤化することができる。代表的な眼科用組成物は、眼軟膏剤、散剤、溶液剤などが挙げられる。
【0103】
散剤およびスプレー剤は、ビタミンD化合物に加えて、担体、たとえばラクトース、タルク、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミドの粉末またはこれらの物質の混合物を含むことができる。スプレー剤はさらに、クロロフルオロ炭化水素なとの通例のプロペラント、ならびにブタンおよびプロパンなどの揮発性の非置換炭化水素を含むことができる。
【0104】
通常、水性エアゾール剤は、ビタミンD化合物の水溶液または懸濁液と、従来の薬学的に許容される担体および安定剤とを一緒に製剤化することによって作製される。担体および安定剤は、特定の化合物の必要によって変わるが、通常は、非イオン性界面活性剤(たとえば、Tween、Pluronic、ポリエチレングリコールなど)、血清アルブミンのようなタンパク質、ソルビタンエステル、オレイン酸、レシチン、グリシンなどのアミノ酸、緩衝剤、塩類、糖類または糖アルコールが挙げられる。エアゾール剤は通常、等張液から調製される。エアゾール剤の生成または本発明の送達に関する他のいかなる手段も、当技術分野で公知の方法のいずれかによって達成され得る。たとえば、エアゾール剤の送達の場合、化合物はプロペラントを含んだ任意の適切な担体とともに、微細に分離された形態で供給される。
【0105】
液化プロペラントは通常、周囲条件で気体であって、加圧下で凝縮される。プロペラントは、当技術分野で許容され知られているどのようなものであってもよく、プロパンおよびブタン、または5個までの炭素のものなどの他の低級アルカンであってもよい。組成物は、適切なプロペラントおよび弁と共に容器内部に保持され、弁の働きによって放出されるまで高圧で維持される。
【0106】
ビタミンD化合物は、任意の経口的に許容される剤形で経口投与することもできる。剤形は、以下を含むがこれらに限定されない:カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、トローチ剤(香味づけた基礎原料、通常スクロースおよびアカシアまたはトラガカントを用いる)、散剤、顆粒剤、または水性液体もしくは非水性液体中の溶液剤もしくは懸濁剤液として、または水中油型もしくは油中水型液体エマルジョン剤として、またはエリキシルもしくはシロップとして、または香錠(ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアなどの不活性基剤を用いる)としておよび/または口腔洗浄剤など。活性成分として、所定量のスクロースオクタスルファートおよび/もしくは抗生物質もしくは避妊薬(単数もしくは複数)をそれぞれ含有する。ビタミンD化合物は、ボーラス、舐剤またはペースト剤として投与してもよい。経口用錠剤の場合、一般に用いられる担体はラクトースおよびトウモロコシ澱粉を含む。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤もまた通常添加される。カプセル剤形態での経口投与の場合、有用な希釈剤は、ラクトースおよび乾燥トウモロコシ澱粉を含む。水性懸濁剤が経口使用のために必要とされる場合、活性成分を乳化剤および懸濁剤と組み合わせる。必要に応じて、特定の甘味料、香味剤または着色料を添加してもよい。錠剤ならびに糖衣錠、カプセル剤、丸剤および顆粒剤などの他の固体剤形は、切れ目を入れるか、腸溶コーティングおよび製剤分野で周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製してもよい。これらはまた、その中の活性成分の徐放放出または制御放出を提供するために、たとえば、所望の放出特性を提供する種々の比率のヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはミクロスフェアを使用して製剤化してもよい。これらは、たとえば、細菌保持フィルターを介する濾過によって、または使用直前に滅菌水または他の無菌の注射用媒体に溶解させることができる無菌の固体組成物の形態に滅菌剤を組み入れることによって、無菌化してもよい。これらの組成物は、不透明化剤を任意に含有してもよく、かつビタミンD化合物だけを、または優先的に、胃腸管の特定の部分に、場合によって遅延した方法で放出する組成物であってもよい。使用することができる包埋組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。活性成分は、適当な場合、上述の賦形剤のうちの一つまたは複数を含むマイクロカプセル形態でもあり得る。経口投与のための液体剤形は、薬学的に許容される乳剤、マイクロ乳剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤を含む。活性成分に加えて、この液体剤形は、当技術分野で一般に用いられる不活性希釈剤、(たとえば水または他の溶媒)、可溶化剤および乳化剤(たとえばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油類(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油および胡麻油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物)を含んでもよい。
【0107】
不活性希釈剤の他に、経口組成物は、アジュバント、たとえば湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、香味剤、着色剤、芳香剤および防腐剤を含むこともできる。
【0108】
懸濁製剤は、ビタミンD化合物に加えて、懸濁剤、たとえば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、アルミニウムメタヒドロオキシド、ベントナイト、寒天およびトラガカント、ならびにこれらの混合物を含んでもよい。
【0109】
ビタミンD化合物の無菌の注射剤形態は、水性懸濁剤または油性懸濁剤であり得る。これらの懸濁剤は、当技術分野で知られている技法によって、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて製剤化してもよい。
【0110】
湿潤剤、乳化剤および潤滑剤(たとえばラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム)、ならびに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および芳香剤、防腐剤および抗酸化剤が、組成物中に含まれることもあり得る。無菌注射用製剤は、非経口的に許容される無毒性希釈剤もしくは溶剤中の無菌の注射用溶液剤または懸濁剤(たとえば1,3−ブタンジオール中の溶液剤)であってもよい。使用してもよい許容されるベヒクルおよび溶媒には、水、リンガー溶液および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌の不揮発油が、溶媒または懸濁媒体として従来から使用されている。この目的のために、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドを含む、任意の無刺激性の不揮発油を使用してもよい。オレイン酸などの脂肪酸およびそのグリセリド誘導体は、注射用製剤において有用であり、オリーブ油またはヒマシ油などの天然の薬学的に許容される油、特にそれらのポリオキシエチル化されたものも同様に有用である。これらの油剤または懸濁剤はまた、長鎖アルコール希釈剤または分散剤を含み得る。ビタミンD化合物は、溶液剤もしくは懸濁剤、坐剤、洗浄剤、浣腸、ゲル剤、クリーム剤、乳剤、ローション剤、スラリー剤、散剤、スプレー剤、フォーム剤、ペースト剤、軟膏剤、軟膏、香油剤、洗浄剤、滴下剤およびその他を含む配合剤を形成する材料において、他の剤形中で総量のいくらかの割合を占める。
【0111】
一実施形態では、ビタミンD化合物は、予防的に投与してもよい。予防的投与の場合、ビタミンD化合物は、可能性のあるCIMの前に適用することができる。投与のタイミングは、ビタミンD化合物の予防効果を最大にするために最適化することができる。投与のタイミングは、投与方法、用量、組成物の安定性と有効性、単回投与または複数回投与などの投与頻度に応じて変わることになる。当業者は、ビタミンD化合物の予防効果を最大にするために要求される最適な時間間隔を決定することができる。
【0112】
組成物に含まれるとき、ビタミンD化合物は通常、総重量の約0.000001%〜約100%、より好ましくは約0.001%〜約50%、最も好ましくは約0.01%〜約25%の量で含まれる。
【0113】
担体を含む本発明の組成物の場合、該組成物は、たとえば約1重量%〜約99重量%、好ましくは約50重量%〜約99重量%、最も好ましくは約75重量%〜約99重量%の少なくとも1種の担体を含む。
【0114】
また、治療成分が所望の濃度レベルに達することを目的とし、かつ成分が最終的に互いに密な混合物の状態になるのであれば、本発明の組成物の別々の成分は、あらかじめ混合されることも可能であり、または各成分が所定の投与量で同じ環境に別々に加えられてもよい。さらに、本発明は、連続的にまたは断続的に投与されるまたは送達されることも可能である。
【0115】
一部の実施形態では、ビタミンD化合物は、約50μg/mL〜約400μg/mL、たとえば約100μg/mL〜350μg/mL、約150μg/mL〜約300μg/mL、または約200μg/mL〜約250μg/mLのビタミンD化合物を含む無菌溶液剤として製剤化される。さらに別の実施形態では、ビタミンD化合物は、約50μg/mL〜約100μg/mL、たとえば約55μg/mL〜約95μg/mL、約60μg/mL〜約90μg/mL、約65μg/mL〜約80μg/mL、約70μg/mL〜約75μg/mLのビタミンD化合物を含む無菌溶液剤として製剤化される。さらに別の実施形態では、ビタミンD化合物は、約300μg/mL〜約400μg/mL、たとえば約310μg/mL〜約380μg/mL、約330μg/mL〜約370μg/mL、または約340μg/mL〜約350μg/mLのビタミンD化合物を含む無菌溶液剤として製剤化される。一実施形態では、約75μg/mLのビタミンD化合物を含む。別の実施形態では、本製剤は約345μg/mLのビタミンD化合物を含む。さらなる実施形態では、ビタミンD化合物は、カルシトリオールである。
【0116】
他の実施形態では、本製剤は無水非変性エタノールおよびポリソルベート20をさらに含む。さらに別の実施形態では、本製剤は被験者への投与の前に、0.9%の塩化ナトリウム溶液で1:10に希釈される。
【0117】
一部実施形態では、ビタミンD化合物は、無水200プルーフ(U.S.)非変性エタノール、USP(96%w/w)およびポリソルベート20、USP(4%w/w)のベヒクル中、約50μg/mL〜約400μg/mLで無菌カルシトリオール製剤として調製され、ホストへの投与の前に0.9%の塩化ナトリウム溶液(USP)で1:10に希釈される。
【0118】
いくつかの実施形態では、ビタミンD化合物は、無水200プルーフ(U.S.)非変性エタノール、好ましくはUSPグレード以上(96%w/w)およびポリソルベート20、好ましくはUSPグレード以上(4%w/w)のベヒクル中、75μg/mLまたは345μg/mLの無菌カルシトリオール製剤として調製され、ホストへの投与の前に0.9%の塩化ナトリウム溶液(USPグレード以上)で1:10に希釈される。
【0119】
本開示に従って、ビタミンD3、またはその類似体、代謝物、誘導体および/または模倣物などのビタミンD化合物は、化学療法剤と併用して投与され、CIMを含むこれらの化学療法剤の望ましくない副作用を減少させ得る。ビタミンD化合物は、所望の効果を得るために、化学療法剤の投与の前に、それと同時に、また投与後に投与されてもよい。
【0120】
いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明の方法は、多能性幹細胞前駆細胞の有効性を増加させることによって骨髄抑制を回復させ得る。このような方法を、標準的療法(たとえば顆粒球刺激因子またはG−CSFを使用する療法)と併用して、骨髄細胞の増殖を増加させおよび/または骨髄からの骨髄細胞の動員を改善し、それによって、コロニー刺激因子(CSF)の用量および投与、ならびに化学療法後の回復時間を減少させることができる。
【0121】
本発明のビタミンD化合物は、抗悪性腫瘍薬の投与の前に、骨髄前駆細胞および間質細胞を調節することが可能である。本明細書の方法を標準的療法(たとえばG−CSFを使用する療法)と併用して、骨髄細胞の増殖を増加させおよび/または骨髄からの骨髄細胞の動員を改善し、それによって、コロニー刺激因子(CSF)の用量および投与ならびに化学療法後の回復時間を減少させることができる。
【0122】
本発明の別の態様は、患者に投与してもよい主題のビタミンD化合物(たとえばビタミンD3)(その誘導体、類似体および/または活性代謝物を含む)の最適投与量を決定するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明のビタミンD化合物は、ホスト(本明細書では、いくつかの実施形態で患者と呼ぶこともある)の骨髄細胞に投与されて、最適治療量を決定し得る。好ましくは、最適治療量は、高カルシウム血症作用を誘発することなく、骨髄細胞を保護する。
【0123】
骨髄細胞の生存を検出するために使用され得る方法は、当技術分野では公知であり、手動および自動のトリパンブルー排除法;色素除外法;蛍光定量的な排除色素、免疫蛍光および直接鏡検を用いる方法;細胞機能または生存率を決定するための放射性同位元素およびシンチレーションの使用;半固体寒天コロニー形成アッセイまたはメチルセルロースアッセイなどのコロニーアッセイの使用;カスパーゼなどの種々の基質を用いることによるアポトーシスの初期マーカーを検出する方法;およびそれによって主題のビタミンD化合物の特定用量が細胞毒性であるかどうか決定することができる他の任意の自動もしくは手動の方法が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0124】
本明細書で説明した(上述および下述の)すべての実施形態は、本発明の態様のうちの1つだけに記述した実施形態、および本発明のさまざまな態様で記述した実施形態を含めて、適用可能な任意の他の実施形態(単数および複数)と組み合わせることができることが企図されることに留意されたい。
【実施例】
【0125】
以下の実施例は、本発明の実施形態を例示するために提示されている。これらの実施例は、例示にすぎないことを意図とし、いかなる点においても本発明の範囲を限定することを意図するものではない。部および百分率は、特に明記しない限り重量による。本明細書で用いる、「室温」は約20℃〜約25℃の温度を指す。
【0126】
実施例1 1,25(OH)D3の化学的予防効果
材料および方法
1,25(OH)D3、ヒト組換えGM−CSFおよびG−CSF、ヒストパック1077をSigma−Aldrich (St. Louis, MO)から購入した。
【0127】
化学療法剤シクロホスファミドの活性代謝物である4−ヒドロキシペルオキシシクロホスファミド(4HC)をDuke Comprehensive Cancer Centerから入手した。組織培養グレードの寒天、ウシ胎児血清(FCS)および粉末ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)をInvitrogen (Carlsbad, CA)から入手した。末梢循環前駆幹細胞は、健常な男性ドナーの伏在静脈を静脈穿刺することよってヘパリンナトリウムバキュテナー(Becton, Dickinson and Company, Franklyn Lakes NJ)に採取した。バフィーコートは、製造業者の説明書に従いヒストパック1077を使用して勾配遠心分離によって得た。10%ウシ胎児血清を補充したRMPI1640(Invitrogen)を用いて細胞を2回洗浄した。
【0128】
DMEMおよび0.5%寒天で調製した半固体培地を含むコロニー形成アッセイを用いた。これらの培養のために、約2.5×10細胞/mLの濃度で単核細胞を播種し、GM−CSFおよびG−CSFを約100U/mLの濃度で加えた。37℃で湿度100%の5%COインキュベーター内で14日間、細胞を培養した。
【0129】
培養期間の終了時に、2人の独立した観察者によって倒立顕微鏡を用いてコロニー(50個以上の細胞のクラスター)を数えた。
【0130】
結果
10%ウシ胎児血清を追加したDMEM中で、末梢幹細胞を5×10細胞/mLの濃度で4つのグループに無作為に分けた。グループ1は無処置の対照であり、グループ2は0.05μg/mLの1,25(OH)D3と共に24時間インキュベートし、グループ3は0.05μg/mLの1,25(OH)D3と共に24時間インキュベートし、グループ4は無処置だった。細胞を10%ウシ胎児血清を含むDMEMで洗浄した。次いで、グループ3およびグループ4を25μg/mLの4−HCと共に20時間、インキュベートした。続いて、すべてのグループを上述のように2回洗浄した。次いで、上述のように細胞を半固体寒天培地のプレートに播種した。
【0131】
説明した4つのグループの結果を下記の表1に示す。結果は、1,25(OH)D3の化学的予防効果を確認した。
【表1】

【0132】
骨髄コロニーの顕微鏡写真を撮り、図1a、1bおよび1cに示す。図1aは、増殖因子を追加した末梢血に由来する正常な骨髄コロニーを示す。図1bに示すように、予防的投与量での1,25(OH)D3を含む場合でも、骨髄コロニーが観察された。さらに、4−HCが誘発する毒性から保護された1,25(OH)D3のプレートではコロニーが観察された(図1c)が、4−HC単独のプレートではコロニーが観察されなかった。これは、0.05μg/mL用量の1,25(OH)D3が24時間の間、4−HCなどの毒物の作用から骨髄前駆細胞を保護したことを示している。
【0133】
様々な用量の1,25(OH)D3を骨髄細胞に投与した。1,25(OH)D3の骨髄細胞への効果についてのグラフを図2に示す。様々な用量の1,25(OH)D3に24時間曝露した後、骨髄細胞の生存率をトリパンブルー排除法によって決定した。これらの実験のために、2.5×10細胞/mLを、種々の用量(0.01μg/mL、0.1μg/mL、0.5μg/mL、0.75μg/mL、1μg/mL、および10μg/mL)の1,25(OH)D3と共に、10%ウシ胎児血清を補充したRPMI1640中で24時間、インキュベートした。図2に示すように、0.05μg/mLの最適予防的投与量での生存率は90%であった。
【0134】
実施例2 化学療法誘発性の骨髄抑制(CIMS)の治療のためのAPI31543(カルシトリオール)の高用量非-血中カルシウム増加レジメン(NCR)
本研究の目的は、ラット新生仔への20−メチルコラントレンの胃への点滴注入およびそれに続く緑色白血病細胞の注入によって発現したMIAC51(ラット緑色白血病細胞系)を有するマルチコースCIMSの動物モデルを用いることによって、被験物質である化合物31543(カルシトリオール、USP)のCIMSに対する潜在的な予防効果を評価することである。得られた細胞系は、ヒト緑色白血病の特徴(白血病、白血病腹水および緑色腫の形成)を有する悪性の骨髄性白血病である。
【0135】
2つの別々の無菌カルシトリオール濃縮液を本研究で使用した。具体的には、75μg/mLおよび345μg/mLの無菌カルシトリオール濃縮液を、無水200プルーフ非変性エタノール、USP(96%w/w)およびポリソルベート20、USP(4%w/w)のベヒクル中で調製した。この濃縮液を、使用する際に、注射用塩化ナトリウム(0.9%)溶液、USPで1:10に希釈する。たとえば、4.0mLの注射用塩化ナトリウム溶液と混合した75μg/mLのカルシトリオール濃縮液の1.0mLアリコートは、15μg/mLのカルシトリオールアリコート溶液を与える。このアリコートの0.17mLの注射は、約2.6μgのカルシトリオールを送達することになる。4.0mLの注射用塩化ナトリウム(0.9%)溶液と混合した345μg/mL濃縮液の1.0mLアリコートは、およそ69μg/mLのカルシトリオールアリコート溶液を与える。このアリコートの0.15mLの注射は、10.4μgのカルシトリオールを送達することになる。この低い方の濃度のカルシトリオールを若いラット(21日齢)に対して使用し、高い方の濃度のカルシトリオールを年長のラット(49日齢)の投薬で使用する。
【0136】
ベヒクル対照は、無菌の無水200プルーフ非変性エタノール、USP(96%w/w)およびポリソルベート20、USP(4%w/w)のベヒクル濃縮液を、注射用塩化ナトリウム(0.9%)、USPで同じ希釈率(1mL濃縮液ベヒクル+4mL等張食塩水)で希釈したものである。最終的な投薬濃度は、動物モデルでの予備投薬試験を経て、前もって決定する。
【0137】
Sprague Dawleyラット(10日齢の仔ラット、自然な同腹仔が好ましい)を本研究で用いる。Peterらによって行われた研究では、雄のLewisラットへのビンブラスチン投与は、総白血球数および絶対好中球数(ANC)に急激な減少を引き起こした(Peterら, 1998)。さらに、Peterらは、ラットが顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)に関してヒトのそれに対する優れた等価の動物であることを証明した。従って、ラットにおいて、ANCの最低値によって判断される好中球減少症の発症が十分に特徴づけられている。さらに、ラットモデルは、シクロホスファミド、ドキソルビシンおよびパクリタキセルならびにそれらの組み合わせなどの頻繁に用いられる骨髄抑制化学療法剤に応答する利点もある(JimenezおよびYunis, 1992)。Jimenez博士によって開発された白血病の新生仔ラットモデルは、世界で唯一のラット緑色白血病モデルであり、試験化合物のCIM発症に対する効果、白血病の治療、化学療法剤との潜在的相互作用、およびCIMの防止に対する試験薬の効果を同時に試験する最適な機会を提供する。
【0138】
ラットは、21日齢まで10匹の同腹仔で維持する。21日目に、ラットを分けて、固有の識別番号を割り当てて、一対ずつ収容する。これらの実験には、2つの段階がある。
【0139】
第1段階:14日齢仔ラットから32日齢のラット
15日目にMIAC51細胞を注射する。ベヒクルまたはAPI31543の第1のパルスを21日目に投与する。次いで、22日目に開始して24日目に終了する3種類の化学療法レジメンを与える。総白血球数の最低値は、化学療法の投与後4日目〜6日目に観察されるが、NCAの場合2日目〜7日目である(Peterら, 1998)。死後の骨髄培養およびカルシウム測定は、22日目と26日目に行う。一部の動物の最終的な血球および骨髄培養物の計数を32日目に行う。明白な白血病を有する動物を屠殺する。
【0140】
第2段階:47日齢から60日齢のラット
47日目に、白血病が進行したラットを屠殺する。48日目に、被験物質またはベヒクルの第2のパルスを投与する。骨髄培養および血漿カルシウム濃度分析を49日目に行い、被験物質の骨髄への効果を評価する。化学療法を開始し、52日目まで続ける。54日目に、骨髄細胞の第2の培養およびカルシウム濃度を試験する。最終的に、60日目に全血球計算を行った後、動物を屠殺する。
【0141】
表2に、本研究設計の概要を述べる。
【表2】

【0142】
被験物質およびベヒクルを静脈内に投与し、化学療法剤を腹腔内に注射する。
【0143】
脊髄形成異常に対するパルス療法で用いたカルシトリオールの用量は、45μgである。Mosteller計算法を使用すると、151ポンド(約68.5kg)の理想的体重の5フィート8インチ(約173cm)の平均的な人の場合の体表面積(BSA)は1.81mである(Halls, 2008)。したがって、ヒトに対する用量は25μg/mである(WhitehouseおよびCurd, 2007)。BSAを算出するために、Meeh−Rubner計算法Ab=km2/3を用いる。皮膚表面積(SSA)は、ほぼ絶対的な精度(r=>0.9)で推定することができる(SpiersおよびCandas, 1984)。
【0144】
21日齢のラットの場合、SSAは102cmであり、一方49日齢のラットの場合、SSAは399cmである。したがって、試験される最初のカルシトリオールパルス用量は、21日齢のラットに対してはおよそ2.6μgであり、49日齢のラットに対してはおよそ10μgである。たとえば、21日齢のラットに対する0.26μg〜2.6μgの用量範囲、および49日齢のラットに対する1μg〜10μgの用量範囲を試験して、この用量が的確であるかどうか、または増加もしくは減少させる必要があるかどうかを決定する。
【0145】
第1および第2の両サイクルにおいて、化学療法に先立って被験物質およびベヒクルを投与する。第1および第2のサイクルにおいて、上記に示すように、たとえば2.6μgまたは10μgのいずれかで被験物質を投薬する。化学療法剤は、およそ100μLの容量で体重に基づいて腹腔内に投与する。下記の表3は、化学療法剤の用量およびスケジュールを示す。
【表3】

【0146】
動物は、化学療法に応答した無気力、食欲不振または他の苦痛の徴候に関して毎日モニターする。白血病腹水のような早期の白血病の徴候を示すすべての動物を即座に屠殺して、記録する。
【0147】
MIAC51細胞を注射するために、15日齢のラットを手で抑え、ラットの右脚を徐々に引き伸ばす。注射すべき部位をアルコール綿で消毒する。次いで、1×10個のMIAC51細胞を腹腔内に注射する。
【0148】
第1のカルシトリオールのパルスにおいて被験物質および対照物質を投与するために、ラットの各同腹仔に100〜200μLの容量のベヒクルまたは被験物質を尾静脈から投与する。
【0149】
第2のカルシトリオールのパルスにおいて被験物質および対照物質を投与するために、血液学的分析によって癌のないことが証明された生存ラットを、48日目にケタミン/キシラジン混合物(それぞれ50mg/kgと5mg/kg)で麻酔し、次いで二度目の試験化合物または対照物質を尾静脈から静脈内注射する。
【0150】
化学療法レジメン、化学療法レジメンと被験物質、または化学療法レジメンとベヒクル(たとえば上記の表3に記載したもの)のいずれかを投与される22日齢のラットに第1の化学療法のコースを投与するために、各同腹仔の平均体重を算出し、それを用いて適切な濃度の化学療法剤を調製する。次いで、29ゲージ、1/2ccのインスリンシリンジを用いて、動物の個別の体重に従って、化学療法剤を約100μLの容量で、腹腔内に注入する。この日齢では、麻酔は不要である。右脚を徐々に引っ張って伸ばし、注射すべき部位をアルコール綿で消毒する。
【0151】
化学療法レジメン、化学療法レジメンと被験物質、または化学療法レジメンとベヒクル(たとえば上記の表3に記載したもの)のいずれかを投与される49日齢のラットに化学療法の第2のコースを投与するために、ラットの平均体重を算出し、それを用いて適切な濃度の化学療法剤を調製する。次いで、高悪性腫瘍薬の注射の前に、ケタミン/キシラジンで動物に麻酔する。29ゲージ、1/2ccのインスリンシリンジを用いて、動物の個別の体重に従って、化学療法剤を約100μLの容量で、腹腔内に注入する。
【0152】
実験で用いる化学療法剤は、ドラフトで調製し、50mLのポリプロピレン製コニカルチューブに移し、しっかりと栓をする。パクリタキセルはDMSO中50mg/mLの濃度で溶解して分け、使用前に−20℃で保存する。蒸留水中でのシクロホスファミドの溶解性を向上させるために、シクロホスファミド1gあたり750mgのD−マンニトールを加える。ドキソルビシンは、蒸留水に完全に溶解する。
【0153】
散剤形態の化学療法剤を含むチューブは、しっかりと栓をして、安全キャビネットに移す。このキャビネット内で、化学療法剤は、動物の体重に対して所定の好ましい投与量(およそ100μL/ラット)に従って蒸留水を用いて希釈する。水溶性の化学療法剤および/またはD−マンニトールを含む容器を、0.2μmの低タンパク質結合膜フィルターおよシリンジを用いて無菌のポリプロピレン製コニカルチューブに無菌状態で濾過する。エトポシドおよびパクリタキセルの無菌の保存液は、ラットの平均体重に応じてポリプロピレン製チューブに濾過した後に、蒸留水中で他の化学療法剤と混合することができる。化学療法剤を、無菌条件下で、個別の29ゲージ、1/2ccシリンジ(Becton Dickinson and Company)に移す。
【0154】
MIAC51細胞を、以前に記述されているように(JimenezおよびYunis, 1987, 参照によって援用する)、37℃で、湿度100%の5%COインキュベーター内で培養する。非組織培養処理されたフラスコ(Falcon)内のL−グルタミンおよび10%のウシ胎児血清(Gibco Invitrogen, Carlsbad, CA)を追加したRPMI1640培地(Gibco Invitrogen, Carlsbad, CA)中で細胞を増殖させる。動物に注入する前に、細胞を50%のコンフルエンシーになるまで増殖させ、コニカルチューブに収集する。次いで細胞を室温で10分間、600gで遠心分離させて、濃度1×10の細胞をウシ胎児血清を含まないRPMI1640中に再懸濁させる。次いで、無菌条件下で細胞懸濁液を29ゲージ(ga)、1/2ccインスリンシリンジに移す。
【0155】
骨髄前駆細胞およびMIAC51細胞のコロニー形成能をアッセイするために、以前に記述されているように(JimenezおよびYunis, 1988)骨髄細胞を収集して、血清を含まないDMEMで洗浄する。次いで、細胞を1×10/mLの濃度まで懸濁させて、400gで40分間の遠心分離のために勾配上にのせる。次いで、培地と勾配の間に見られるペレットを慎重に吸引して、血清を含まないDMEMで2回洗浄する。最後に、1×10細胞/mLを含む細胞懸濁液を、10%のウシ胎児血清を追加したDMEM中で調製し、組織培養プレート中で3時間インキュベートする。浮遊細胞を吸引して、半固体寒天培養プレートに移す。
【0156】
半固体寒天培地を調製するために、粉末状のMEMを、2倍濃度まで組織培養グレードの水でもどす。次いで、寒天(0.3%)を加えて、寒天が完全に溶解するまでこの混合物を沸騰させる(PerkinsおよびYunis, 1986)。培地を37℃まで冷却し、沸騰プロセス中に失われた可能性のある必須アミノ酸を加える。次いで、半固体培地をマルチウエルクラスター上に分配し、1ウェルごとに組織培養グレードの水で満たし、さらに蒸発しないようにする。この時点で、製造者の手順に従ってG−CSFまたはGM−CSFを加え、骨髄細胞懸濁液またはMIAC51細胞を気泡が生じないようにピペットで慎重に加える。7日後、コロニー数をカウントする。
【0157】
染色した半固体寒天スライドを調製するために、7日後のプレートをエタノール中30%酢酸の希釈液で30分間、続いて無水エタノール、30%エタノール、および50%エタノールを3分間隔で加えて固定する。その後、プレートの内容物を、3×2インチのガラススライドに移し、Harris’ Alumヘマトキシリンで染色する。以前に記述されているように(JimenezおよびYunis, 1988)、各コロニーを記録する。
【0158】
血液学的分析を行うために、カルシトリオールのパルス投与の1日前に開始し、10日後に終了する化学療法の両コースにわたって血液スミアを行う。50mg/kgケタミンと5mg/kgキシラジンの混合物を用いて動物に麻酔する。尾静脈をアルコール綿で消毒して、無菌の29ゲージシリンジを用いて穿刺し、50μLを採血して血液スミアを作製する。血球カウントのために、少量の血液を採血し、血球計数器で細胞数をカウントするために使用する。末梢血液スミア中の骨髄細胞およびMIAC51の存在を、Wright染色を用いる通例のスライド染色によって評価する。
【0159】
22日目、26日目、49日目、および53日目に3匹の動物から血液を心臓穿刺によって採取する。カルシウム濃度の分析のために、すべての血液試料をバイアルに採取する。骨髄培養のために用いたすべての動物に麻酔して失血させ、骨髄を採取する。
【0160】
大腿骨髄を採取するために、上述のように動物を失血させる。サイズ20のメスを使用して、鼡径部を切開し、筋肉を切断する。無菌の鉗子を使用して、骨端表面が容易に見られるまで、骨を切除する。次いで、無菌のボーンカッターを使用して、大腿骨を関節から切り離す。骨の両端を切断して、18ゲージ針を備えた5mLシリンジを用いて、10%ウシ胎児血清を追加したRPMI1640を大腿骨に通す。次いで、骨が残存する骨髄懸濁液を、ヒストパック1077を用いて、勾配遠心分離によって濃縮する。培地で2回洗浄して、単核細胞が豊富な調製物を得る。骨髄スミアを作製するために、この懸濁液を細胞遠心分離機(Shandon, NY)を使用してスライド上に固定する。実際の数を、培地洗浄の希釈係数を考慮して算出する。骨髄スミア中の骨髄細胞およびMIAC51の存在を、Wright染色を用いる通例のスライド染色によって評価する。
【0161】
被験物質ならびにベヒクルのみの両方を試験する。各グループは60匹の動物からなり、その数は本研究にとって統計学的に有意である。すべての動物は15日齢になると、MIAC51を注射する。
【0162】
本研究では、シクロホスファミド、シクロホスファミドおよびドキソルビシン、ならびにシクロホスファミド、ドキソルビシンおよびパクリタキセルの3通りの化学療法レジメンを含む、最も骨髄抑制するレジメンを用いる。すべてのグループに、MIAC51を投与する。各グループは以下の通りである。化学療法のみ、化学療法+ベヒクル、化学療法+被験物質(各化学療法レジメンあたり計180匹の動物)。使用した動物の最終的な数は以下の通りである。3組の併用化学療法レジメン×180匹の動物=540匹のラット。
【0163】
20%の絶対差で0.8の検定力およびα=0.05を得るには、1グループあたり36匹の動物が必要になり得る。シクロホスファミドによる寛解率は、少なくとも20%である。検定力分析によれば、統計的有意性を達成する最小限の試料サイズは、36匹の動物である。したがって、各群にさらに4匹の動物を追加して、10%のモデル減少率を考慮に入れる。
【0164】
化学療法剤と防御化合物の連合効果の解析は、化合物、化学療法、およびCIMSの発現の間の相互作用に対して特別に注目する二元配置分散分析を使用することで行う。有意な相互作用は、2つの間の相乗作用または拮抗作用のいずれかを示す。分散分析の後に、化学療法または白血病の存在下もしくは非存在下での防御化合物に対する応答間の相違についての対比較を行う。最後に、白血病の発現をFisherの直接確率法を用いて比較する。すべての比較をα=0.05で行う。
【0165】
実施例3 化学療法誘発性の脊髄抑制の処置のためのカルシトリオールの高用量非-血中カルシウム増加レジメン:緑色白血病ラットの多化学療法レジメンモデル(MC<R)を用いた研究
実験の第1のサイクルのために、15日齢のLong EvansラットにMIAC51を注入した。21日目に、これらのラットをそれぞれの化学療法レジメンに対して3グループに無作為割り当てした。これらのグループにおいて、グループIにはベヒクルを投与し、グループIIには10μgのカルシトリオールを投与した。ベヒクルまたはカルシトリオールのパルス投与を、化学療法投与の4日前に投与した。21日目に、グループIおよびグループIIを、以下の化学療法レジメンを投与する3グループにそれぞれ分けた:シクロホスファミド(150mg/kg)、シクロホスファミドおよびドキソルビシン(それぞれ100mg/kg、25mg/kg)、ならびにシクロホスファミド、ドキソルビシンおよびパクリタキセル(それぞれ100mg/kg、25mg/kg、10mg/kg)。20日目に開始し、32日目まで、動物を手で抑えながら27ゲージのシリンジで尾静脈を穿刺することによって、完全な顆粒球のカウントを行なった。
【0166】
図3a〜3cに示すように、化学療法の投与前のベースラインの絶対好中球数(ANC)は、3621±154mmから3000±254mmにわたった。図4〜6および以下の表4に示すように、いったん化学療法を投与すると、ANC値は24日目と27日目の間で有意に減少した。
【表4】

【0167】
これらの結果は、3つのすべての化学療法レジメンの投与後に、カルシトリオールの投与が、ANC最低値を有意に減少させることを示す。
【0168】
22日目、25日目、および32日目に骨髄培養を行った。32日目、完全な白血球のカウントをすべての動物で行い、MIAC51が陽性だった動物は屠殺した。図4〜6に示すように、骨髄培養はANCデータを裏付けている。シクロホスファミドレジメンの場合、22日目の対照のコロニー数は85±24であった。シクロホスファミドおよびベヒクルを投与したグループの場合、コロニー数は5±1であり、シクロホスファミドおよびカルシトリオールを投与したグループの場合、コロニー数は56±17であった(図4a)。25日目、対照の値は76±9コロニーであり、一方シクロホスファミドおよびベヒクルで処置したラットの骨髄培養は12±4コロニーであった。カルシトリオールの投与は、コロニー数について80±15コロニーまでの有意な増加をもたらした(図5a)。同様の結果が他の2つの化学療法レジメンでも観察された(図4b、4c、5b、および5c)。
【0169】
化学療法剤の第2のサイクルのために、生存ラットを再無作為化して、同じレジメンで処置した。好中球数を上述のように、尾静脈を穿刺することで測定した。48日目にカルシトリオールの第2のパルスを投与して、上述の用量で化学療法を開始した。52日目、各化学療法レジメンあたりラットを3つのグループに無作為化した。各化学療法レジメンでは、グループIにベヒクルだけを投与し、グループIIに20μgのカルシトリオールを投与した。
【0170】
32日目〜60日目、化学療法の投与前のベースラインANCは、3330±135mmから3005±142mmにわたった。上述の第1のサイクルで観察されたように、第2のサイクルの間に化学療法を投与すると、ANC値は、図7および以下の表5に示すように、36日目と39日めの間に有意に減少した。
【表5】

【0171】
これらの結果は、カルシトリオールの投与が3つのすべての化学療法レジメンにおいて、化学療法誘発性の好中球減少症から有意に保護することを示す。
【0172】
49日目、52日目、および60日目に、骨髄培養を行った(データを図8〜10に示す)。ここでも、骨髄培養はANCデータを裏付けた。シクロホスファミドレジメンの場合、40日目に、対照値は90±15コロニーであった。シクロホスファミドおよびベヒクルを投与されたグループの場合、コロニー数は4.5±1コロニーであり、シクロホスファミドおよびカルシトリオールを投与されたグループの場合、コロニー数は82±25コロニーであった。52日目、対照値は98±26コロニー数であり、一方シクロホスファミドで処理したラットの骨髄培養は7±2.5コロニーであった。カルシトリオールの投与は、86±25コロニーと、コロニー数において有意な増加をもたらした。同様の結果は、他の2つの化学療法レジメンでも観察された。
【0173】
22日目、25日目、32日目、49日目、52日目、および60日目にカルシウム濃度も測定し、その結果を表6にまとめる。シクロホスファミドの場合、対照カルシウム濃度は、22日目の10±0.5から、25日目の10±0.5、および32日目の10.5±0.3にわたった。シクロホスファミドを投与されたラットでは、カルシトリオールの単回パルスは高カルシウム血症を誘発しなかった。同様の結果が、他の2つの化学療法剤レジメンでも観察された。
【表6】

【0174】
参考文献
Biesma, B., E. Vellengaら, (1992). Effects of hematopoietic growth factors on chemotherapy−induced myelosuppression. Crit Rev Oncol Hematol 13(2): 107−34.

Bociek, R. G. および J. O. Armitage (1996). Hematopoietic growth factors. CA Cancer J Clin 46(3): 165−84.

Freedman, L. P. (1999). Transcriptional targets of the vitamin D3 receptor−mediating cell cycle arrest and differentiation. J Nutr 129(2S Suppl): 581S−586S.

Halls, S. (2008). Body Surface Area BSA Calculator Medication Doses;
www.halls.md/body−surface−area/bsa.htm. Retrieved 07/06/2009, 2009.

Jimenez, J. J. および A. A. Yunis (1987). Tumor−Cell Rejection through Terminal Cell−Differentiation. Science 238(4831): 1278−1280.

Jimenez, J. J. および A. A. Yunis (1988). Treatment with monocyte−derived partially purified GM−CSF but not G−CSF aborts the development of transplanted chloroleukemia in rats. Blood 72(3): 1077−80.

Jimenez, J. J. および A. A. Yunis (1992). Protection from chemotherapy−induced alopecia by 1,25−dihydroxyvitamin D3. Cancer Res 52(18): 5123−5.

Katschinski, D. M., G. J. Wiedemannら, (1999). Whole body hyperthermia cytokine induction: a review, and unifying hypothesis for myeloprotection in the setting of cytotoxic therapy. Cytokine Growth Factor Rev 10(2): 93−7.

Marangolo, M., C. Bengalaら, (2006). Dose and outcome: the hurdle of neutropenia (Review). Oncol Rep 16(2): 233−48.

Middleton, M. および N. Thatcher (1998). G− and GM−CSF. Int J Antimicrob Agents 10(2): 91−3.

Moeenrezakhanlou, A., L. Shephardら, (2008). Myeloid cell differentiation in response to calcitriol for expression CD11b and CD14 is regulated by myeloid zinc finger−1 protein downstream of phosphatidylinositol 3−kinase. J Leukoc Biol 84(2): 519−28.

Moreb, J., J. R. Zucaliら, (1989). Protective effects of IL−1 on human hematopoietic progenitor cells treated in vitro with 4−hydroperoxycyclophosphamide. J Immunol 142(6): 1937−42.

Mughal, T. I. (2004). Current and future use of hematopoietic growth factors in cancer medicine. Hematol Oncol 22(3): 121−34.

Perkins, S. L. および A. A. Yunis (1986). Pattern of colony−stimulating activity in HL−60 cells after phorbol−ester−induced differentiation. Exp Hematol 14(5): 401−5.

Peter, F. W., D. A. Schuschkeら, (1998). Leukocyte behavior in a free−flap model following chemotherapy and application of granulocyte colony−stimulating factor (GCSF). Microsurgery 18(4): 290−7.

Spiers, D. E. および V. Candas (1984). Relationship of skin surface area to body mass in the immature rat: a reexamination. J Appl Physiol 56(1): 240−3.

Sredni, B., M. Albeckら, (1995). Bone marrow−sparing and prevention of alopecia by AS101 in non−small−cell lung cancer patients treated with carboplatin and etoposide. J Clin Oncol 13(9): 2342−53.

Whitehouse, M. および J. Curd (2007). Methods of using vitamin D compounds in the treatment of myelodysplastic syndromes. United States of America.

Yunis, A. A., J. J. Jimenezら, (1984). Further evidence supporting an in vivo role for colony−stimulating factor. Exp Hematol 12(11): 838−43.

当然のことながら、上述のおよび他の種々の特徴と機能、またはそれらの代替物は、多くの他の異なる系もしくは用途と組み合わされることが好ましいこともある。さらに、本明細書に記述した本発明を鑑みて、明示的に記述されてない種々の代替物、修飾、変形または改善は、続いて当業者によって実行され得る。そのような代替物、修飾、変形または改善も、添付する特許請求の範囲に包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨髄抑制を誘発する化学療法剤で治療される被験者において化学療法誘発性の骨髄抑制(CIM)を防止するまたは減少させる方法であって、前記被験者に有効量のビタミンD化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグもしくは溶媒和化合物を投与することを含む方法。
【請求項2】
前記ビタミンD化合物が式(I):
【化1】

[式中、
aおよびbはそれぞれ独立して単結合または二重結合であり、
aが二重結合であるとき、Xは−CHであり、aが単結合であるとき、Xは水素またはヒドロキシル置換アルキルであり、
は、水素、ヒドロキシル、アルコキシル、トリアルキルシリルまたは置換アルキルもしくは非置換アルキルであり、独立して1〜3個のハロゲン、ヒドロキシル、シアノまたは−NR’R”の残基で置換され、
は、水素、ヒドロキシル、−O−トリアルキルシリル、または置換もしくは非置換のアルキル、アルコキシルもしくはアルケニルであり、独立して1〜3個のハロゲン、ヒドロキシル、シアノまたは−NR’R”の残基で置換され、
bが二重結合であるとき、Rは不在であり、bが単結合であるとき、Rは水素、ヒドロキシルもしくはアルキルであり、またはRおよびRは、それらが結合する炭素原子と共に連結して、5〜7員環の炭素環を形成していても良く、
は、水素、ハロゲンまたはヒドロキシルであり、
aが二重結合であるとき、Rは不在であり、aが単結合であるとき、Rは水素、ハロゲンまたはヒドロキシルであり、
は、置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アルキル−O−アルキル、アルキル−CO−アルキルであり、独立して1〜5個のヒドロキシル、オキソ、ハロゲン、アルコキシル、アリール、ヘテロアリール、シアノ、ニトロ、または、−NR’R”の残基で置換され、
は、置換アルキルまたは非置換アルキルであり、独立して1〜3個のヒドロキシル、ハロゲン、アルコキシル、アリール、ヘテロアリール、シアノ、ニトロ、または−NR’R”の残基で置換され、かつ、
R’およびR”は、それぞれ独立して水素、ヒドロキシル、ハロゲン、−C1−7アルキルまたは−C1−7アルコキシルである。]
の化合物であり、前記CIMが防止されまたは減少する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ビタミンD化合物が式(II):
【化2】

[式中、
cは、単結合または二重結合であり、
1aは、水素、トリアルキルシリルまたは置換アルキルもしくは非置換アルキルであり、独立して1〜3個のハロゲン、ヒドロキシル、シアノまたは−NR’R”の残基で置換され、
2aは、水素、ヒドロキシル、−O−トリアルキルシリル、または置換もしくは非置換のアルキル、アルコキシルもしくはアルケニルであり、独立して1〜3個のハロゲン、ヒドロキシル、シアノまたは−NR’R”の残基で置換され、
cが二重結合であるとき、R3a、R4aは不在であり、cが単結合であるとき、R3a、R4aはそれぞれ独立して水素、ヒドロキシル、ハロゲン、アルコキシルまたは置換アルキルもしくは非置換アルキルであり、独立して1〜3個のヒドロキシルまたはハロゲンの残基で置換され、
3b、R4b、R5a、R6a、R7a、およびR8aは、それぞれ独立して水素、ヒドロキシル、ハロゲン、アルコキシルまたは置換アルキルもしくは非置換アルキルであり、独立して1〜3個のヒドロキシルまたはハロゲンの残基で置換され、またはR6a、R7aおよびR8aのうちの任意の2つが連結して、3〜7員の炭素環を形成していても良い。]
によって表される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ビタミンD化合物が、1,25−ジヒドロキシビタミンD3;1,25−ジヒドロキシ−16−エン−23−イン−コレカルシフェロール;1,25−ジヒドロキシ−16−エン−イン−コレカルシフェロール;1α−ヒドロキシビタミンD3;1α,24−ジヒドロキシビタミンD3、MC903、またはこれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ビタミンD化合物が局所的に、または全身的に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記化学療法が細胞周期特異的化学療法剤の使用を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記化学療法が細胞周期非特異的化学療法剤の使用を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記化学療法剤が細胞周期非特異的薬剤と併用する細胞周期特異的薬剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ビタミンD化合物が前記化学療法剤の投与の前に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ビタミンD化合物が前記化学療法剤と同時投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記被験者が哺乳類である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ビタミンD化合物が、化学療法誘発性の貧血症を解消する追加の薬剤と同時投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記薬剤が増殖因子である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記増殖因子がG−CSFまたはEPOである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ビタミンD化合物が、該ビタミンD化合物を約50μg/mL〜約400μg/mL含有する無菌の溶液として製剤化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
製剤が無水非変性エタノールおよびポリソルベート20をさらに含有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
製剤が前記被験者への投与の前に0.9%の塩化ナトリウム溶液中に1:10で希釈される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
製剤が約75μg/mLのビタミンD化合物を含有する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
製剤が約345μg/mLのビタミンD化合物を含有する、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記ビタミンD化合物がカルシトリオールである、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
ビタミンD化合物の最適な治療量を決定する方法であって、
ビタミンD化合物またはその薬学的に許容される塩の一連の試験量を被験者に投与することと、
高カルシウム血症作用を引き出すことなく、化学療法誘発性の骨髄抑制から被験者の骨髄細胞を保護するために必要とされる最小投与量を決定することとを含み、
前記ビタミンD化合物が式(I):
【化3】

[式中、
aおよびbはそれぞれ独立して単結合または二重結合であり、
aが二重結合であるとき、Xは−CHであり、aが単結合であるとき、Xは水素もしくはヒドロキシル置換アルキルであり、
は、水素、ヒドロキシル、アルコキシ、トリアルキルシリルまたは置換アルキルもしくは非置換アルキルであり、独立して1〜3個のハロゲン、ヒドロキシル、シアノまたは−NR’R”の残基で置換され、
は、水素、ヒドロキシル、−O−トリアルキルシリル、または置換もしくは非置換のアルキル、アルコキシルまたはアルケニルであり、独立して1〜3個のハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、または、−NR’R”の残基で置換され、
bが二重結合であるとき、Rは不在であり、bが単結合であるとき、Rは水素、ヒドロキシルもしくはアルキルであり、またはRおよびRは、それらが結合する炭素原子と共に連結して、5〜7員環の炭素環を形成していても良く、
は、水素、ハロゲンまたはヒドロキシルであり、
aが二重結合のとき、Rは不在であり、aが単結合のとき、Rは水素、ハロゲンまたはヒドロキシルであり、
は、置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アルキル−O−アルキル、アルキル−CO−アルキルであり、独立して1〜5個のヒドロキシル、オキソ、ハロゲン、アルコキシル、アリール、ヘテロアリール、シアノ、ニトロ、もしくは、−NR’R”の残基で置換され、
は、置換アルキルまたは非置換アルキルであり、独立して1〜3個のヒドロキシル、ハロゲン、アルコキシル、アリール、ヘテロアリール、シアノ、ニトロまたは−NR’R”の残基で置換され、そして
R’およびR”は、それぞれ独立して水素、ヒドロキシル、ハロゲン、−C1−7アルキルまたは−C1−7アルコキシルである。]
によって表されるものである、上記方法。
【請求項22】
骨髄抑制を誘発する化学療法剤で治療される被験者において骨髄抑制によって誘発される障害のリスクを減少させるまたは防止する方法であって、前記骨髄抑制によって誘発される障害を防止する、または骨髄抑制によって誘発される障害のリスクを減少させるように、有効量のビタミンD化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグもしくは溶媒和化合物を前記被験者に投与することを含む、上記方法。
【請求項23】
前記骨髄抑制によって誘発される障害が、骨髄抑制によって誘発される感染症である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
化学療法剤で治療される被験者において好中球の欠乏を防止する方法であって、前記被験者において好中球の欠乏が防止されるように、有効量のビタミンD化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグもしくは溶媒和化合物を前記被験者に投与することを含む、上記方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公表番号】特表2012−516343(P2012−516343A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548263(P2011−548263)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/022284
【国際公開番号】WO2010/088304
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(511181278)バーグ バイオシステムズ,エルエルシー (7)
【Fターム(参考)】