説明

化学的に活性なフィルター材料

【課題】本発明は流体流からNOのような目標物質を除去する際に使用する改良活性フィルター材を提供する。
【解決手段】本発明のフィルターは、ポリマー接着剤によって多孔質支持体に付着された化学的活性粒子を用いる。微多孔質層が多孔質支持体の少なくとも一つの側面または内部に取付けられる。得られたフィルター材は、触媒作用または反応によって好ましくない物質を除去するのみならず、塵埃が活性触媒部位をふさぐ前にフィルター流から塵埃のような汚染物質を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体流から望ましくない物質を除くことができる、改良された化学的に活性な濾過材料に関する。
【背景技術】
【0002】
活性フィルターは、種々の流体濾過の適用に対して使用されている。本明細書中で使用する「フィルター」なる用語は、装置を通過する粒子または分子を阻止、捕捉、及び、または変性する全ての装置を包含することを意図する。本発明における「流体」なる用語の使用は、液体及び気体を含め、任意の形態の容易に流動する物質を包含することを意図する。「活性」なる用語は、フィルターが、触媒作用、反応、またはそれらの或る組合せの如何によらず、流体流中の一つ以上の成分、または目標物質に対して作用し、その結果変性された物質が形成されることを意味する。一般にこれらのフィルターは活性物質をマトリックス内に有しており、活性物質としては触媒物質(例えば、TiO、V、WO、Al、MnO、ゼオライト、及び遷移金属化合物及びその酸化物)及び、または反応性物質(例えば水酸化ナトリウム等)が挙げられる。流体がマトリックス上、またはマトリックス中を通過する時、流体中の目標物質は活性物質の活性部位と反応し、目標物質をより望ましい副生成物または最終生成物に変え、これによって目標物質が流体流から除かれる。本明細書中で用いられる「活性部位」なる用語は、目標物質との交互作用が生ずる活性物質上の或る場所を表示する。このようなものの例として次のものが挙げられる。
【0003】
【表1】

【0004】
触媒フィルター装置をつくる以前の試みの例として、ピルシュの米国特許第4,220,633号及び同第4,309,386号で述べられているものが挙げられ、ここではフィルターバッグがNOの触媒還元工程を促進する適当な触媒でおおわれている。トミサワ等の米国特許第5,051,391号には、直径が0.01ミクロンから1ミクロンの間の金属酸化物でつくられている触媒粒子が、フィルター、及び、または触媒繊維によって担持されていることを特徴とする触媒フィルターが開示されている。カリノウスキー等の米国特許第4,732,879号には、多孔質の、好ましくは触媒活性の金属酸化物の被覆が、繊維状形態の比較的非多孔質の支持体に適用される方法が記述されている。ランリーの西独特許出願公開第3,633,214号明細書では、フィルター材料の複数の層の中に触媒を挿入することによって、触媒粉末が複数層のフィルターバッグ中に組入れられている。触媒フィルター装置をつくる更なる例には、藤田等の特開平8−196,830号公報に述べられているものが挙げられ、ここでは吸着剤、反応体、または類似物の微粉末が、フィルター層の内部に支持されている。佐々木等の特開平9−155,123号公報では、脱窒層がフィルタークロス上に形成される。貝原等の特開平9−220,466号公報では、触媒フィルターが、硝子繊維の布に酸化チタンのゾルを含浸させ、次いでこれを熱処理し、更にアンモニウムメタバナデートを含浸させることによってつくられる。魚屋等の特開平4−219,124号公報では、触媒分離を防止するために、目が詰んで厚く、且つ高度に通気性のフィルタークロスが、バッグフィルター材用の触媒を充填されている。ピンケ等の米国特許第5,620,669号では、フィルターが延伸膨張ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)と触媒粒子との複合繊維から成り、ePTFEは結節とフィブリルの構造を有し、触媒粒子は前記構造中に拘束されている。
【0005】
前述の特許(例えば、日特平9−155,123号公報、日特平9−220,466号公報、日特平4−219,124号公報、米国特許第4,220,633、及び同第4,309,386号)の大抵の場合において、フィルターは、燃焼工程で発生するような多量の塵埃を蒐集することができる。従来、短い蒐集時間の後(分から時間のオーダー)、フィルター材の汚れた側面上の蒐集された塵埃の層は、フィルターを横切る圧力低下を増大させ、フィルターは浄化されねばならない(多くの場合現場で)。この浄化サイクル中(例えば、高エネルギーエアインパルスシステム、シェーカーシステム、リバースエアシステム等)、外側の塵埃層が落下し、新しい濾過サイクルが開始される。運転工程中、二つの主な問題が発生の可能性があり、即ちそれらは化学的劣化と機械的劣化である。
【0006】
化学的劣化に関しては、フィルターの化学的機能が汚染によって役立たなくされ、これは事実上全ての以前の活性フィルター装置に関しては深刻な問題であり、特に触媒フィルター装置に対してはそうである。定義によると、触媒は触媒反応中に消費されないけれども、触媒フィルターは、流体流からの粒子、液体、及び気体汚染(即ち、微細な塵埃粒子、金属、シリカ、塩、金属酸化物、炭化水素、水、酸性気体、三価の燐を含む物質、アルカリ属金属、ヒ素、アルカリ金属酸化物等)によって運転寿命が制限されてきた可能性がある。失活は、活性粒子上の活性部位が物理的におおわれたり、或は化学的に変性されるために生じる。これらの汚染物をフィルターから取除くことができないと、フィルターは急速に浄化効率が減少し、遂に交換しなければならなくなる。
【0007】
述べてきたように、種々の浄化装置がフィルター(例えば、シェーカー式フィルターバッグ、バッグパルス式フィルターバッグ及びカートリッジ、リバースエア式フィルターバッグ等)から塵埃を除去するために存在するが、これらの装置は、フィルター材の内部に埋もれた塵埃を除去するのに特に有効ではない。
【0008】
触媒濾過におけるもう一つの要求は、凝結する流体から活性粒子上の活性部位を保護することである。しばしば重金属によって著しく汚染されているこれらの流体は、正常な運転中、特に燃焼プラントの場合等に、フィルター材の表面に凝結することがある。若しこれらの液体が活性物質と直接接触すると、これらの液体は活性部位を著しく汚染し、これらの部位をより不活性にすることができる。
【0009】
化学的劣化のもう一つの形態は、挿入された活性粒子が運転中に失われることによるものである。多くの場合活性粒子は、正常な運転の過酷さに耐える程の強さでは担体繊維に付着していない。活性粒子はフィルターから脱落し、そのためフィルター効果を減少させるのみならず、清浄な流体流を汚染することにもなる。
【0010】
機械的劣化に関しては、フィルターの機械的機能は、運転中のフィルター繊維の摩擦によって、または塵埃汚染物のフィルター内への侵入及び蒐集によって劣化され得る。もう一つの機械的機能不全は、さきに引用した技術のフィルターのいくつかに関して起る塵埃粒子の貫通によるものである。この現象は特に浄化サイクル中に観察され得るもので、過酷なフィルター浄化によって、粒子はゆっくりとフィルター媒体を貫通して、及びフィルター媒体から移動する。
【0011】
更に機械的機能は、支持体の活性粒子負荷が高くてフィルターの圧力低下が過度に増大し、及び、またはフィルター材が取扱えない程かたくなる時に妨害される。
【0012】
大抵の公知の今迄の技術は、或る方法で化学的劣化に対処している製品を記述している。若干の特許(例えば、日特平9−155,123号公報)では、触媒層がフィルターの下流側面に配置され、このようにして触媒が微小粒子の汚染にさらされるのを避けている。他の例、例えば日特平9−220,466号公報では、触媒が長い期間使用されると、微小粒子、化学汚染、及び他のそのような要因のために、触媒の活性が減少することが認められている。この構造の一つの予期された不利益な点は、孔が気体流の汚染物によって物理的におおわれるため孔の中の活性部位が役立たなくなると、活性部位の発生の効果が無効にされるということである。
【0013】
二つの場合、即ち日特平8−196,830号公報及び米国特許第5,620,669号においては、微小粒子や気体汚染物質による触媒の汚染は問題視されていない。これらのフィルター材の何れもが、そのような汚染を回避するための保護層を有している。併しながら日特平8−196,830号公報に記述の材料は、いくつかの不利な点を有している。第一に本材は保護層の厚さのためにやや肉厚である。このようなフィルターについて予期される一つの不利な点は、肉厚のために本材はかたく、このため従来の浄化法によって浄化することが困難と考えられることである。その上、記述の製品の活性粒子は、フィルター材の繊維に機械的に付着されていない。触媒粒子のポリマー繊維に対するゼータ電位の差が付着のメカニズムとして期待されている。触媒粒子の摩損が書面に記述されている。
【0014】
ABB社に譲渡された特公平10−230,119号公報は、フィルタークロスに形成する繊維を液体触媒に浸漬し、触媒を乾燥し、繊維をフィルタークロスに形成し、フィルタークロスにエチレンテトラフルオライド樹脂の連続多孔質の薄いフィルターを適用することによって形成されたフィルター材を指向している。エチレンテトラフルオライド樹脂フィルムは、触媒がフィルターから薄片になってはげ落ちないようにすることを期待されている。併しながら、触媒粒子が薄いフィルムに隣接していない領域で、それらがどのようにして薄片状のはげ落ちから守られるかについては何の言及もない。
【0015】
微小粒子及び目標物質の両方の除去を提供する、今日迄入手可能な唯一の市販のフィルター材は、さきに記述の米国特許第5,620,669号に教示されている。このフィルターは、微多孔質膜による触媒粒子の保護、並びに強固な接着及び低圧損のために直接触媒粒子を結節とフィブリルに取付ける組入れの考えを組み合わせたものである。不幸にしてこのフィルター材は製造するのにやや複雑で費用がかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って本発明の第一の目的は、流体流の目標物質に対して触媒作用をすること、及び、または化学的に反応することに有効な、改良された活性フィルター材を提供することである。
【0017】
もう一つの目的は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);フルオロエチレンプロピレン(FEP);高分子量ポリエチレン(HMW−PE)で分子量が1,000,000以上のもの;高分子量ポリプロピレン(HMW−PP)で分子量が1,000,000以上のもの;ポリフルオロアクリレート(PFA);ポリ弗化ビニリデン(PVDF);テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及び弗化ビニリデンの三元共重合体(THV);及びポリクロロトリフルオロエチレン(CFE)から成るグループより選ばれた少なくとも一つのポリマー接着剤によって、活性粒子が多孔質支持体に拘束されているフィルター活性材を提供することである。
【0018】
本発明の更にもう一つの目的は、活性材の活性の損失を最小限にして有効に浄化が可能であり、その結果フィルター材が伸延された有効運転寿命を有する、改良された活性フィルター材を提供することである。
【0019】
本発明の更にもう一つの目的は、フィルター材中に含まれた活性材の活性に対して及ぼす影響が最少の、改良された活性フィルター材を製造する方法を提供することである。
【0020】
本発明の更にもう一つの目的は、容易に、且つ費用がかからずに製造される、改良された活性フィルター材を提供することである。
【0021】
本発明のこれら並びに他の目的は、次の明細書の検討にもとづいて明白となるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、流体流中に見出される目標物質を除去するのに使用される改良された活性フィルター材である。除去は化学反応または触媒反応によって行なわれる。触媒反応によって運転される活性フィルター材の場合、NOのような望ましくない物質は、水やNのような受け容れられる最終生成物に変換され、活性フィルターは全反応にわたって変化せずに残される。本発明は、多くの重要な点で従来の活性フィルター製品と異なる。特に本フィルターは、ポリマー接着剤によって多孔質の織布または不織布の支持体に接着する活性粒子を有し、選択的に少なくとも一つの保護用微多孔質層が、支持体に隣接して、または支持体中に存在する。この保護用微多孔質層は好ましくは微多孔質膜を含むものであり、本明細書中で更に詳細に記述される。特に好ましい実施態様において、多孔質支持体は延伸膨張PTFE繊維の織布または不織布を含み、保護層は延伸膨張PTFEを含む。本明細書中で使用される「ポリマー接着剤」なる用語は、活性粒子をポリマー接着剤の結果として生じる固定形態に対してのみならず支持体に対しても拘束する細糸及び分散一次粒子を形成することができる、液体中に懸濁した固体粒子の形態の少なくとも一つの熱可塑性エラストマーを含むものとする。適当なポリマー接着剤としては、PTFE、FEP、HMWPE、HMWPP、PFA、PVDF、THV、及びCFEが挙げられる。
【0023】
驚くべきことに、一つ以上のポリマー接着剤の使用によって活性粒子を多孔質支持体中に拘束した場合、なお目標物質は多くの側面から粒子上の活性部位に接近することができ、最初の拘束されない活性粒子と比較して、フィルター中の活性粒子の活性が感知できる程に減少するようには思われないことが見出された。その上、更に驚くべきことに、保護用の微多孔質層をポリマー接着剤を使用して支持体に積層する時は、活性粒子の活性が感知できる程に減少しないことが見出された。
【0024】
本発明の活性フィルター材の重要な特徴は、本材がポリマー接着剤による活性粒子のフィルター材への密接な接着との組合せで高い強度を提供することである。これらの属性が、シェーカーバッグ、リバースエア、またはパルスジェット等のフィルター浄化装置のような、過酷な環境での使用に対して、本フィルター材を理想的なものにしている。多孔質支持体が延伸膨張PTFEの織布または不織布を含む好ましい実施態様においては、延伸膨張PTFE繊維材が極めて強力で摩耗抵抗が大きいので、本フィルター材は、フィルター浄化システムの屈曲や過酷な取扱いに容易に耐えることができる。
【0025】
その上本フィルター材は、流体中の目標物質とのすぐれた反応性を有している。支持体中に存在する直線状の孔は極めて少ないか全くないので、フィルターを貫通する流体の通路は曲がりくねったものであり、このため流体が本フィルター材を貫通する時、流体は活性部位と良好な接触を行なうことができる。
【0026】
本発明の運転寿命を更に改良するためには、少なくとも一つの微多孔質層を多孔質支持体の上または中に取付けることが好ましく、最も好ましいのは活性フィルターの少なくとも上流側面(即ち、濾過された流体流がフィルターを出るフィルターの下流側面と比較して、濾過される流体流に接触するフィルターの側面。)に取付けることである。本明細書中で使用される「微多孔質層」なる用語は、少なくとも1マイクロメートルの厚さを有し、且つ微孔の断面の長さが0.05マイクロメートルから10マイクロメートルのオーダーである層を指すことを意図している。特に好ましい微多孔質層は延伸膨張微多孔質PTFE膜を含むものである。この保護用微多孔質層は塵埃粒子及び他の汚染物質を流体流から分離し、特にフィルターの上流側面に隣接している場合に、塵埃粒子がフィルターの活性部分の中に埋もれるのを防止する。その結果、塵埃粒子は微多孔質層の外側でケーキ状となる。このようにして保護層は、活性粒子を塵埃粒子による汚染から防止するばかりでなく、フィルターを出る流体流から塵埃粒子を除去する。ePTFE膜のような疎水性微多孔質膜は、水性液体がベースとなっている汚染物質に対して特に有効な保護用微多孔質層である。微多孔質延伸膨張PTFE膜がフィルターの上流側面上に用いられる場合には、シェーカー、リバースエア、及びバックパルス等のフィルター浄化法は、フィルター浄化にとって特に有効となるが、これは本膜の低い表面エネルギーのために、塵埃が容易に膜表面から分離するからである。浄化性が高まることによって、フィルター寿命を高めることが可能となる。
【0027】
或る適用例に対しては、充填材または他の物質を有していても有していなくても、複数の微多孔質層を含めること、或は追加の多孔質支持体フィルター層さえも含めることもまた、濾過水準を追加して高めるのに有用であり得る。このような実施態様においては、全体の活性フィルター材構成での更に多くの設計上のパラメーターを得ることができる。層の数、層の配置(例えば、多孔質支持体の上流、中、または下流。)、及び層の組成を変えることによって、活性フィルター材に対する望ましい適用の要求に応じて、フィルター材をいろいろ性質を変化させてつくることができる。
【0028】
多くの独特の工程手段もまた本発明の特色を示すものである。好ましい工程において、活性粒子はポリマー接着剤と組合わされ、次いで多孔質支持体中に含浸される。特に粒子はポリマー接着剤によって支持体に取付けられるが、ポリマー接着剤は活性粒子の表面の小面積のみをおおうに過ぎず、このため流体流にさらされた時、活性粒子は目標物質と相互に作用することができる。次に支持体は、好ましくは少なくとも一つの延伸膨張PTFEのシートを含む、少なくとも一つの微多孔質層に取付けられる。微多孔質層は多孔質支持体の上流側面に配置されるか、多孔質支持体中に挟まれるか、または多孔質支持体の下流側面に配置され得る。微多孔質層は、支持体上に保持されている活性粒子のみならず、支持体それ自体をも、流体流中の微小粒子汚染から、及び設置、取扱い等の間の汚染または損傷から保護するのに役立つ。
【発明の効果】
【0029】
この改良されたフィルター並びに独特の製造工程は広い範囲のフィルターのパラメーターを可能とし、このようなパラメーターとしては、活性粒子の負荷、フィルターの厚さ、フィルターの透過性、すぐれた気体と触媒との接触を得るための活性粒子周辺の流域(即ち、濾過される気体が貫通して流れるフィルター内の容積)、フィルター強度、活性粒子の保護、フィルターの孔の大きさの分布及び近似、活性粒子の大きさ、活性粒子の形状、及び活性粒子の表面積が挙げられる。
【0030】
本発明の実施は、付随する図と共に考慮する時、次の説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】光学顕微鏡による本フィルター材の断面の写真であり、ポリマー接着剤によってフェルトの繊維に付着した触媒粒子を示し、倍率50倍である。
【図2】支持体のePTFEフェルトの繊維に、ポリマー接着剤によって付着した活性粒子の走査型電子顕微鏡写真であり、倍率1,500倍である。
【図3】活性粒子と支持体との間で拘束、接着を行なうポリマー接着剤を示す大要の描写である。
【図4】ポリマー接着剤がどのようにして活性粒子及び支持体を拘束するかのもう一つの大要の描写である。
【図4A】ポリマー接着剤がどのようにして活性粒子及び支持体を拘束するかの更にもう一つの大要の描写である。
【図5】本発明の活性フィルター材の一つの実施態様に関する側断面の大要描写である。
【図6】本発明の活性フィルター材のもう一つの実施態様に関する上からみた断面の大要描写である。
【図7】本発明の活性フィルター材の更にもう一つの実施態様に関する側断面の大要描写である。
【図8】本発明の活性フィルター材の他の実施態様に関する側断面の大要描写である。
【図8A】本発明の活性フィルター材の他の実施態様に関する側断面の大要描写である。
【図9】NOの変換効率を測定する反応装置集成体の側断面の大要である。
【図9A】反応装置集成体のサンプル保持具の中に置かれたフィルター材サンプルの詳細を示す。
【図10】粒子損失を決定するために用いられた装置の側断面の大要である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は改良された活性フィルター材である。このフィルターによって、汚染気体成分、または、ダイオキシン、フラン、NO、CO、及び類似物のような目標物質が流体流から除去され得る(即ち、触媒作用またはその他の反応を受ける。)。その上、流体流中に存在することのある微小粒子が高い捕集効率で蒐集され得、フィルター中の活性粒子の性能に障害を及ぼさない。同様に本活性フィルター材は、フィルターを出る流体流から塵埃粒子を除去するのに有効である。
【0033】
本発明のフィルターは、ポリマー接着剤によって支持体に取付けられた活性粒子を含有する。支持体の少なくとも一つの側面または内部に、液体流からフライアッシュや類似物のような微小粒子を濾過して取除く微多孔質層が存在する。
【0034】
図1は本発明の多孔質支持体の断面を示し、約50倍に拡大した光学顕微鏡写真である。本映像は、ePTFEのスクリム12上にあるePTFE繊維10のニードルドフェルトの支持体、及びポリマー接着剤(この倍率ではみえない)によってePTFE繊維に保持されている含浸された活性粒子14を示す。触媒粒子はフェルトの厚さ全体にわたって、実質的に均一に分布している。
【0035】
図2はポリマー接着剤16によって、ePTFEのフェルトの支持体の繊維10に取付けられた活性粒子14の、走査型電子顕微鏡写真で、1,500倍に拡大したものである。
【0036】
図3及び4は、ポリマー接着剤が活性粒子を支持体(例えば、繊維質のePTFEのフェルトまたは類似物)に保持することができる、二つの別々の方法の大要を示すものである。図3では、粒子14はポリマー接着剤16aの分散一次粒子(即ち、ポリマー接着剤の分散系からの単一粒子。)によって、支持体10に取付けられている。図4は、小さなポリマー接着剤の細糸16bによって、支持体10に取付けられた粒子14を示す。「細糸」は小さなポリマーのストランド(直径が数ミクロン以下のオーダーのような)と定義するものとする。細糸16bは、選択的に図4aに示すように、分散一次粒子から派生することができる。
【0037】
図5は保護層22を有する活性フィルター材20の側断面透視図であり、この実施態様では保護層は含浸多孔質支持体24に取付けられた微多孔質膜である。この好ましい実施態様において、膜22は支持体24の上流側面に配置されており、これによって濾過される素子26(例えば、塵埃粒子及び汚染物)を含む流体流(図では矢印によって流れの方向を表わす)は、最初に膜22と接触する。支持体24中の活性粒子を汚染(塵埃または活性部位を封鎖するその他の物質によるような)から保護するため、図示の形態では微多孔質層が含浸支持体に積層されている。塵埃粒子及びこれらの塵埃粒子上に存在する可能性がある吸着汚染物は、微多孔質層によって阻止され、このようにして多孔質支持体に取付けられている活性粒子との接触が防止される。この保護層は活性フィルター材に顕著に改良された保護を与え、微多孔質層のないフィルターと比較して、より長期の有効寿命を提供する。
【0038】
種々の微多孔質層が使用可能であるが、ゴアの米国特許第3,953,566号、バシノの米国特許第5,476,589号、及び米国特許第5,814,405号に記述されているような延伸膨張PTFE膜の使用が特に好ましく、その際立った濾過特性のゆえに、これらの特許の内容は特に参考として本出願に組入れられている。膜の形態の延伸膨張PTFE(ePTFE)は、それを特に望ましいフィルター材とする多くの望ましい性質を有している。例えばePTFEは断面の長さが0.05ミクロンから10ミクロンのオーダーのような顕微鏡でしかみえない多くの孔または微細孔を有し、これらは流体分子を通過させるが、細かい塵埃及び類似物のような微小粒子の通過を抑制する。その上延伸膨張PTFE膜の表面は、蓄積した汚染物質から容易に浄化することができ、フィルターの運転寿命を著しく改良する。
【0039】
本発明の好ましい材料は次のようにしてつくられる。即ち、活性粒子及びポリマー接着剤を多孔質構造中に含浸させるのに適した孔の大きさを有する多孔質支持体が供給される。「粒子」とは任意の縦横比を有する材料を意味し、従ってフレーク、繊維、及び球状並びに非球状の粉末が含まれる。活性粒子とポリマー接着剤とのスラリーが、機械的手段の助けを借りるかまたは借りることなく、支持体の多孔構造中に流入する。ポリマー接着剤の量が、粒子を支持体に保持するのには十分であるが、活性触媒粒子の表面をおおうのは最小限となり、これによって活性粒子の反応性を最大限とするように選ばれる。または、支持体構成材料、活性粒子、及びポリマー接着剤を混合して凝集性の多孔質構造を形成することによるように、多孔質支持体構造の形成中に活性粒子とポリマー接着剤とを支持体中に組入れることもできる。更に別の方法として、ポリマー接着剤が多孔質支持体中に組入れられる前か後に、活性粒子を支持体に加えることもできる。
【0040】
次に含浸支持体は、多孔質支持体内、支持体の下流側面、または最も好ましくは上流側面に、微多孔質膜のような少なくとも一つの微多孔質層が与えられる。保護層は、積層、溶接、縫製、タッキング、締付け、または他の適当な取付け手段等によって、連続的または非連続的に取付けることができる。保護用微多孔質層は、必要に応じて選択的に、フィルターの残りの部分を乱すことなしに除去及び交換もできるような構造にすることができる。
【0041】
適当な粒子は、流体流からの目標物質に触媒作用をしたり、またはそれとは違った方法で反応するようなものである。適当な触媒粒子は、貴金属類、非貴金属類、金属酸化物(遷移金属類及び遷移金属化合物を含む)、並びにアルカリ及びアルカリ土類、それらの酸化物及び炭酸塩を含むことができる。好ましい触媒粒子は、貴金属類(例えば、化合物を含むPt、Pd、Au、及びRh)、バナジア、遷移金属(例えば、化合物を含むFe、Cu、及びAl)から選ばれた活性表面を有する、チタニア、アルミナ、シリカ及びゼオライトのような粒子を含むことができる。特に好ましい触媒は、アナターゼ型の酸化チタン上のVから成る。これとは違った方法で反応する粒子の例は、水酸化ナトリウム、及び炭酸ナトリウム、沃化カリウム、その他の類似物のような塩で処理された活性炭が挙げられるが、これに限るものではない。さきの叙述は余すところなく述べているものではなく、それどころか他の適当な触媒や反応粒子も同様に用いることができる。更に或る与えられたタイプの反応粒子は、環境が異なれば異なった風に作用することがあり、即ち、ある時は触媒として作用し、別の場合には反応性物質として作用することがあることを認識することが重要である。活性粒子に加えて、所望の結果に依っては、本発明の装置に吸着剤等のような他の任意の粒子を含ませることが望ましいことがあり得る。
【0042】
活性粒子は、最終の複合材(空気量を含まず)に対して、重量で70%迄、或は更に多く迄の広い範囲の量が支持体中に与えられるようにフィルターに加えられるが、重量で10%から30%が好ましい。
【0043】
本発明に適した活性粒子は小さい傾向にあり、即ち通常40ミクロン未満の大きさである。好ましい大きさは、用いられる支持体の孔の大きさ、及び用いられる活性粒子の活性度対大きさの関係に依存する。
【0044】
多孔質支持体はフィルターの本来の姿を維持する任意の材料であることができ、粒子及び微多孔質が取付けられるマトリックスである。適当な例としては、織布及び不織布、シートまたは膜、開放気泡の発泡体、焼結微小粒子構造体、またはバインダー或は焼成によって一緒に保持された繊維と微小粒子の網状組織体が挙げられる。
【0045】
一つの好ましい多孔質支持体は膜の形態のePTFEを含み、或は更に好ましくは、織布または不織布である繊維の形態のePTFEである。ePTFEの孔の大きさは、本発明の範囲内では断面長で0.05ミクロン未満から100ミクロンより大きい範囲にわたって、極めて広く変化させ得ることが認識されるべきである。一つの特に好ましい多孔質支持体は、1平方メートル当り300gから900gの密度を有し、通気度が水柱圧12mmの加圧下で9〜26m/分であるニードルドePTFE繊維でつくられた不織布である。
【0046】
本発明のポリマー接着剤が構造体をつなぎ合せる。本接着剤が活性粒子を支持体に付着させ、且つ選択的に保護層を含浸支持体に付着させることができる。適当なポリマー接着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);フルオロエチレンプロピレン(FEP);高分子量ポリエチレン(HMW−PE、ここで分子量は100万以上);高分子量ポリプロピレン(HMW−PP、ここで分子量は100万以上);パーフルオロアクリレート(PFA);ポリ弗化ビニリデン(PVDF);テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及び弗化ビニリデンの三元共重合体(THV);及びポリクロロトリフルオロエチレン(CFE)が挙げられる。ポリマー接着剤及び多孔質支持体の組成は同じでも異なっていてもよい。
【0047】
ポリマー接着剤は支持体中に透入される前に活性粒子とスラリー化するか、或は活性粒子の前または後に支持体に加えることもできる。次にポリマー接着剤は粒子が多孔質支持体に付着するように固定化される。本明細書中で用いる「固定化された」または「固定化する」なる用語は、揮発物を除去するための乾燥、加熱、硬化、または溶融流動化を指すことを意図するものである。最終複合体中のポリマー接着剤固形物の量は、重量で1%から90%であり得るが、重量で5%から10%が好ましい。
【0048】
驚くべきことに、微多孔質層が活性粒子の活性度に悪影響を与えることなく、活性層に積層またはその他の方法で取付けられることが見出された。本明細書中でさきにも述べたように、支持体、ポリマー接着剤、粒子、及び微多孔質層の正しい選択及び組合せが、機能維持のために極めて重要である。適当な微多孔質層の例としては、微多孔質ePTFE膜、他の重合体(有機または無機)膜、多層膜、充填材入りの膜、非対称膜、他の不織布または織布材、及び開放気泡発泡体が挙げられるが、これらに限るものではない。
【0049】
本発明の好ましいフィルター材は、12mmの水柱圧で少なくとも0.1m/分の通気度、約100g/mから3,000g/mの最終重量、及び約0.1mmから100mmの厚さを有する。
【0050】
図6はフィルターバッグのような円柱状フィルター30の、上からみた透視断面図である。この図は、図5で示されたものに対して拡大された濾過の可能性を描画するものである。微多孔質層22は第一の含浸多孔質支持体24の上流側面(矢印の方向によって表わされているように)に与えられており、支持体24はそれとは違った機能の活性粒子を有する第二の含浸層36に隣接し、更に第三のタイプの活性粒子と機能を有する第三の含浸層38が続く。この形状は代るものとして、ひだなしまたはひだ付の形状のカートリッジフィルターとして与えられることもできる。
【0051】
図6の実施態様に示されているように、同一層または隣接層に、一つのタイプよりも多い活性粒子を含めることが可能である。これらの隣接層は、同一または異なった支持体材を有することができる。所望の機能によっては、また与えられたシステムの空間を考慮して、同一の支持体に対して、或は同一または異なった組成の隣接支持体層に対して、二つのタイプ以上の活性粒子を加えることが可能である。例えば触媒粒子と反応性粒子を同一の支持体に組み入れ、二つの異なった機能を遂行させることができる。もう一つの例では、活性粒子が異なった層に存在することができ、例えば反応性粒子はポリウレタンの開放気泡発泡体中にあり、隣接層では触媒がePTFEのフェルト中にあるといった具合である。これらの例は更に異なったポリマー接着剤を用いることによって変化させることができ、ポリマー接着剤はフィルターの所望の性能(温度、活性度等)に応じて選択が可能である。
【0052】
本発明に従ってつくることができるフィルター材には、多くの置換の余地があることが認識されるべきである。本発明によって考えられる材料の組合せの中には;(1)1層または複数層のePTFE膜のような少なくとも一つの微多孔質層を、支持体の上流側面、中、または下流側面に配置すること;(2)与えられた多孔質支持体中に異なった組成の活性粒子を含ませること;(3)同一または異なった組成(即ち、多孔質層の組成、活性粒子の組成、ポリマー接着剤の組成)の複数層の多孔質支持体でフィルターをつくること;等がある。
【0053】
図7は本発明のフィルター材の側断面図である。微多孔質層22は第一の多孔質支持体24の上流側面(矢印によって示されているように)に設置されており、支持体24は第二の多孔質支持体36に隣接している。これらの活性層を異なった支持体、ポリマー接着剤、及び活性粒子で構成させ、これらの組合せを特別の用途に適したものとすることができる。
【0054】
本発明の一つの特に好ましい実施態様において、その中の流体流からの汚染気体、他の目標物質、及び微小粒子を処理する用途に特に適するフィルターを提供することができる。例えばTiO、V、及びWOの触媒を用いることにより、NO、NO及びNHの汚染物質が、酸素の存在下で容易にHOとNに変化される。
【0055】
図8は本発明のもう一つのフィルター材の側断面図である。これは多孔質支持体24の上流に設置された微多孔質層22を有する。第二の微多孔質層29が多孔質支持体24の下流に設置されている。
【0056】
図8Aは微多孔質層22が多孔質支持体24の中に設置されている更なる実施態様である。
【0057】
図9は反応装置システムの大要を示すもので、これは本発明によってつくられたフィルターのNOの還元反応を測定するのに用いられた。フィルターサンプルの品質を試す4.5インチ×4.5インチ(11.4cm×11.4cm)の寸法の面積を有するこの垂直流反応装置システム40中で化学反応性が試験された。本システム40は三つの部分、即ちガス供給装置、反応装置、及び分析装置から成るものであった。ガス導入マニホールド44が、NO反応のための4種の異なった気体、即ち一酸化窒素(NO)(ニュージャージー州、リバートンのBOC社よりのもので、窒素中のNOが20%で、他の窒素酸化物含量が2,000ppm未満)、アンモニア(NH)(BOC社よりのもので、窒素中のアンモニアが20%)、窒素発生装置(マサチューセッツ州、ハーバーヒルのホワットマン社のモデルナンバー75−78、運転圧100psi、窒素純度>99.5%)よりの高純度窒素、及び現場の加圧空気供給源からの空気(乾燥機を通して脱湿し、システム直結の活性炭ベッドによって脱炭化水素したもの)を供給した。各気体の流速は、マスフローコントローラー(ペンシルバニア州、ハットフィールドのブルックインストルメント社のモデルナンバー5850i)(図示されず)によって制御された。1/4インチのステンレススチールのチューブを使用して、各気体のシリンダーをマスフローコントローラーに接続した。
【0058】
反応装置集成体は、気体を予熱するための部分43(長さ24インチ、外径3/4インチ、内径1/2インチ)、及び反応装置本体45から構成された。予熱部分43の最初の半分は加熱テープ46によって加熱され、これは温度コントローラー(イリノイ州、シャウムブルグのオムロン社のモデルナンバーE5CJ)によって制御され、加熱速度は20℃/分であった。予熱部分43の次の半分は炉によって加熱され、その温度及び加熱速度は第二の温度コントローラー(オムロン社のモデルナンバーE5CJ)によって制御された。加熱速度は10℃/分であった。予熱部分43の下流は反応装置本体45であった。反応装置本体45はステンレススチールでできており、サンプル保持具48が反応装置本体45の上半分45aと下半分45bの間に置かれた。本体45aの上半分の頂部の寸法は2.5インチ×2.5インチで、本体の上半分の底部の寸法は4.5インチ×4.5インチであり、本体の頂部と底部との間の距離は4インチであった。本体45bの下半分の寸法は同一で、単に逆にしただけであった。サンプル保持具48(4.5インチ×4.5インチ×0.125インチ、ステンレススチール)は上部本体と下部本体との間に置かれた。図9Aはサンプル保持具48中のサンプル42の形状を示す。特にPTFEガスケット49(4.5インチ×4.5インチ×0.125インチ)がサンプル保持具48の上に取付けられ、サンプル42が図示の如くガスケット49ともう一つのPTFEガスケット50との間に挟まれた。下部本体45bはガスフローメーター(図示せず)に接続され、これが気体の流速を測定した。上部と下部の本体45a、45bは温度コントローラー(図示せず)によって加熱され、加熱速度は10℃/分であった。入口の気体と出口の気体の夫々の気体温度は、相互に2℃の範囲内に制御された。サンプル42の上下の気体採取口52及び53は、夫々入側及び出側の気体濃度を測定するために設置され、これによって変換効率を決定した。排出口55が残りの気体を排出するために設置された。
【0059】
運転中に採取された気体は気体分析部で分析され、これは気体の条件調節システム、NO分析器(ジョージャ州、アルファレッタのシーメンス社のモデルナンバーウルトラマット5E)、及び酸素分析器(シーメンス社のモデルナンバーウルトラマット21/O)から構成された。気体の条件調節システムに入る前に、3リットルの気体が、気体流からアンモニアを除去するために3リットルの燐酸(pH=1)を含む酸性スクラッバーを通過した。次にこの3リットルの気体は、湿気とNOを除去するために気体の条件調節システムにポンプで送られ、その後気体は二つの部分に分けられた。即ち2リットルの気体が酸素分析器に吸引され、1リットルの気体が同時にNO分析器に吸引された。NO分析器と酸素分析器の両方共、サンプル気体の測定前に較正された。
【0060】
図10の本発明のフィルターの粒子損失を測定するために用いた装置の大要を示す。粒子損失の試験に用いた装置は、ニューマフィル社の部品No.6−17273によってつくられた試験用のパルスジェットバッグハウスであり、次の基本的構成要素、即ちフィルター要素62を含む塵埃蒐集機60、空気流入口63及び出口65、及びパルスジェットマニホールド67を有していた。本装置は、3×3のグリッドで、3個の要素を夫々浄化する3個のパルスパイプ68を有し、9個のフィルター要素62を収容した。本試験では3個の要素がフィルターバッグ用に使用され、全て別々のパルスパイプにあり、残りの要素はふさがれた。パルスジェットの浄化パラメーターは次の通り、即ち、パルス圧は40psi及び80psi、パルス継続時間は0.05秒、パルス間隔は一稼動当り30秒、パルスパイプの孔の大きさは0.25、パルスパイプ直径は1インチ、パルスパイプの高さはチューブシート上5インチ、空気流は10インチの水柱圧で毎分200〜2,000立方フィートであった。フィルターバッグが取付けられたフィルターケージは、60インチの長さの底部負荷ケージ(イリノイ州、イタスカのフレックスクリーンリサーチ−コットレルフレックスクリーン社)であった。チューブシートを横切る差圧は負であった。
【0061】
本発明の活性フィルター材の4個の構成要素、即ち、活性粒子、ポリマー接着剤、支持体、及び微多孔質層の組合せが、次の実施例で示されているように、広い範囲の応用に適用可能である。活性フィルター材は、所望の応用に従って、フィルターバッグ、平らなまたはひだ付の平坦なフィルターパネルのようなフィルターパネル、或はひだ付またはひだなしのフィルターカートリッジに組み入れることができる。この発明が特別の利益を持つことができる一つの分野は、工業用流体分野におけるガスの静止源からの放出物浄化である。併しながら、本発明は、流体流中の目標物質に対する作用(触媒作用、反応、または或る組合せの如何に拘らず)が望まれる、事実上全ての濾過応用分野で利用可能であると考えられる。
【0062】
本発明の範囲を限定することを意図するものでなく、次の実施例は本発明がどのようにしてつくられ、且つ使用されるかを説明するものである。
【実施例】
【0063】
実施例1
活性材料として22重量パーセントの触媒、9重量パーセントのポリマー接着剤、及び68重量パーセントの支持体を含む本発明のフィルター材が、次に記述する方法で製造され、本フィルター材のNO変換率が測定された。
【0064】
2フィート(61cm)×1フィート(30.5cm)の寸法で、厚さ1.5mm、重量158.78g、通気度が12mmの水柱圧で9〜26m/分の範囲の、ニードルド延伸膨張PTFE繊維のフェルト支持体材(メリーランド州、エルクトンのダブリューエルゴアアンドアソシエーツ社)を入手した。29重量パーセントのポリマー接着剤溶液(デラウエア州、ウイルミントンのデュポン社によってT120として販売されている弗化エチレンプロピレン(FEP)水系分散液を稀釈したもの)の63ml、脱イオン水の187ml、及び触媒(テキサス州、ヒューストンのCRI社からS096として押出成形品の形で販売されている、TiO上に3%のVを有する平均直径0.5ミクロンのもの)の50.75gを22分間電磁撹拌したものを含むスラリーを調製した。
【0065】
スラリーをフェルト支持体材の表面上に注ぎ、スパチュラで滑らせることによって支持体の表面上に均一に分布させた。次いで支持体を裏返して他の表面を露出させ、スラリーの全てが支持体吸収される迄前記の処理を繰り返した。次に含浸フェルトをピンフレーム上に取付け、220℃で18分間加熱乾燥させた。
【0066】
含浸フェルトを含むフィルター材は、12mm HO圧での測定で4.2m/分の通気度であった。
【0067】
次いで厚さ約10ミクロンで、12mmの水柱圧で4.6m/分から5.4m/分の範囲の通気度を有する1層の多孔質延伸膨張PTFE膜を、含浸フェルトに積層した。特に本物質はFEPの融点以上に加熱され、且つ10−3秒から10−5秒の間加圧され、FEPを軟化させ、膜の含浸フェルトへの接合を行なわせた。得られた布帛ラミネートは、多孔質延伸膨張PTFE膜とフェルト間の良好な接着強度を有し、12mm水柱圧での通気度は1.0m/分であった。
【0068】
図9で記述し、示された反応装置がNO変換効率を測定するために使用された。特に4.5インチ(11.4mm)四方のフィルター材サンプルを、図9Aに示したように両側面にガスケットを有するサンプル保持具の中に置き、サンプル保持具を反応装置中に置いた。窒素と空気のマスフローコントローラーを、触媒1g当り毎時0.275mの空間速度が得られるようにセットし、反応装置をチェックしてサンプル保持具の周りに洩れがないようにした。加熱テープ、炉、上部本体、及び下部本体に対する温度コントローラーを、夫々250℃、216℃、340℃、及び310℃にセットした。温度がセット温度に達したところで、216℃にセットした窒素と空気を2時間流すことによってサンプルの試験を行なった。窒素によるサンプル処理の後、NO、アンモニア、及びNに対するマスフローコントローラーを、NOに対しては396ppm、アンモニアに対しては400ppm、酸素(空気由来)に対しては6%(体積)、残りはNの各濃度になるように切換えた。入側気体及び出側気体のNO及び酸素の濃度を測定した。入側及び出側の濃度の分析装置の読みが10分間変化しなくなったところで測定を中止した。系の条件が変化してないことを確認するため、最初に参考サンプルの測定を行なった。NOの変換効率は76.8%であった。この変換効率は次式により計算された。
【0069】
【数1】

【0070】
実施例2
20重量パーセントの触媒、10重量パーセントのポリマー接着剤、及び70重量パーセントの支持体を含むフィルターバッグが、次記のように製造され、フィルターの触媒粒子の損失が測定された。
【0071】
12mmの水柱圧で平均通気度が9から26m/分のニードルド延伸膨張PTFE繊維のフェルト支持体材(ダブリューエルゴアアンドアソシエーツ社)が、直径8.5インチ、厚さ0.6インチ、長さ62インチ、及び重量581.13gのバッグに縫製された。57重量パーセントのポリマー接着剤溶液(デラウエア州、ウイルミントンのデュポン社によってT120として販売されている、弗化エチレンプロピレン(FEP)の水系分散液)の144.64ml、脱イオン水の482.95g、及び触媒(テキサス州、ヒューストンのCRI社から、S096として押出成形品の形で販売されている、TiO上に3%のVを有する平均直径0.5ミクロンのもの)の166.34gを5分間よりも多く電磁撹拌したものを含むスラリーを調製した。スラリーをフェルト支持体材の内面及び外面に注ぎ、材料を巻いたり広げたりする作業を繰り返し行なうことによって支持体表面上に均一に分布させ、またバッグの内側を外側に引っ張り出している間にも、また表側を外側に引っ張り出している間にも前記作業を繰り返して行なった。この処理をスラリーの全てが支持体に吸収される迄繰り返した。次いで含浸フィルターバッグをオーブン中に吊し、次の温度プロフィール、即ち、150℃で70分、オーブン温度を150℃から250℃迄上げるのに83分、250℃で7分加熱乾燥させ、その後加熱を切り、バッグをオーブン中で14.5時間冷却し、その後バッグを取出した。
【0072】
次いで図10で説明し示したように、バッグを試験用のパルスジェットハウス中に置いた。用いた運転方法を説明すると次の通りである。試験開始前にバッグを図示のように取付け、系の塵埃が無視できる程度に浄化し、更に支柱フィルターを浄化し、圧損が水柱圧で2.0インチ未満になるようにした。ファンモードは自動に設定され、チューブシートを横切る圧損は水柱圧で1.5インチから3.0インチの範囲であった。浄化モードは自動に設定され、パルス稼動時間は0.25秒、パルス非稼動時間は2秒であった。その後試験を開始した。
【0073】
塵埃のない空気流がフィルターバッグケージにしっかりとはめられた含浸フィルターバッグに当った。パルス圧は、バッグが約47,400パルスに対して40psiのパルスを、次いで約35,000パルスに対して80psiのパルスを、合計約83,000パルスを受けるように調節された。バッグの重量が、パルス前、約13,600パルス後、約47,400パルス後、及び試験完了時の4回測定された。試験後のバッグは試験開始時と目視上の外観は同一で、即ち、損耗の形跡がなく清浄であった。どの時間でも、触媒粒子の損失を示す何等の重量損失もなかった。
【0074】
実施例3
41重量パーセントの触媒、23重量パーセントのポリマー接着剤、及び36重量パーセントの支持体を含む含浸フェルト材が、次に説明するようにして製造された。
【0075】
不織布の通常の空調用フィルターパッド支持体(ノースカロライナ州、ヘンダーソンのピュロレーター室空調用フィルターパッドの部品番号191773)を入手し、寸法は7.25インチ×7インチ、厚さは0.25インチ、重量は3.76gであった。固形分重量24.1パーセントのポリマー接着剤(デラウエア州、ウイルミントンのデュポン社により販売されているポリテトラフルオロエチレン、PTFE、の水系分散液)の22.08g、脱イオン水の57.08g、触媒(テキサス州、ヒューストンのCRI社より、S096として押出成形品の形で販売されている、TiO上に3%のVを含む平均直径0.5ミクロンのもの)の9.5g、及びイソプロピルアルコール(IPA)の2gを電磁撹拌したものを含むスラリーが調製された。
【0076】
支持体にIPAを撒布し、スラリーを予め湿らせた支持体の表面上に注いだ。残りのスラリーを再び支持体上に注いだ。この操作を数回繰り返して均一な分布になるようにした。
【0077】
次いで含浸サンプルは室温で吊し、一晩中乾燥させた。次いでサンプルを140℃で15分間乾燥し、15分間かけて125℃に冷却し、オーブンから取出した。通気度は、12mm水柱圧で61m/分の測定限界を有する装置で測定可能の通気度よりも大きかった。
【0078】
通気度−フレージャー数法
通気度は、空気流測定用の約2.75インチの直径の円形面積(6平方インチ)を与えるガスケット付フランジ取付具中で、試験サンプルを締付けることによって測定された。サンプル取付具の上流側は、乾燥圧縮空気の源と一列にフローメーターに接続された。サンプル取付具の下流側は大気に開放された。
【0079】
試験は、サンプルの上流側に水柱12mm(0.5インチ)の圧を加え、導管内のフローメーター(ボール浮揚式ロタメーター)を通過する空気の流速を記録することによって行なわれた。
【0080】
結果はフレージャー数によって報告され、これは12mmの水柱圧におけるサンプルの1平方メートル当り毎分の立方メートルで表わした空気流、または、0.5インチの水柱圧におけるサンプル1平方フィート当り毎分の立方フィートで表わした空気流である。
【0081】
本発明の特別の実施態様が本明細書中で図解され、説明されてきたが、本発明はこのような図解、説明に限定されるものではない。次の特許請求の範囲内で、種々の変化、変更が本発明の一部として組み入れ、実施され得ることが認識されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質支持体を含む物品であって、多孔質支持体はポリマー接着剤によって前記支持体の表面に接着された活性粒子を有し、前記活性粒子は(a)ポリマーの細糸、及び(b)分散一次ポリマー粒子を含む接着剤によって拘束されている物品。
【請求項2】
前記活性粒子が触媒粒子を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記活性粒子が反応性粒子を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記活性粒子が複数の組成の粒子を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記活性粒子が酸化チタン上の酸化バナジウムを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記ポリマー接着剤が、FEP(弗化エチレンプロピレン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、HMW−PE(高分子量ポリエチレン)、HMW−PP(高分子量ポリプロピレン)、PFA(パーフルオロアクリレート)、PVDF(ポリ弗化ビニリデン)、THV(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及び弗化ビニリデンの三元共重合体)、及びCFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)より成るグループから選ばれた、少なくとも一つの材料を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
少なくとも一つの多孔質支持体が、織布、不織布、膜、開放気泡発泡体、焼成微粒子、繊維と微粒子の網状組織、及びそれらの組合せのうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記多孔質支持体が複数の多孔質層を含み、各層が同じ組成を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項9】
前記多孔質支持体が第一の多孔質層及び少なくとも一つの第二の多孔質層を含み、前記少なくとも一つの第二の多孔質層が前記第一の多孔質層の組成と異なる組成を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項10】
前記多孔質支持体が複数の多孔質層を含み、各層が異なる組成の活性粒子を組み入れている、請求項1に記載の物品。
【請求項11】
更に少なくとも一つの微多孔質層を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項12】
前記少なくとも一つの微多孔質層が、前記多孔質支持体の少なくとも一部に取付けられている、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
前記微多孔質層が前記多孔質支持体に積層されている、請求項11に記載の物品。
【請求項14】
前記微多孔質層が、溶接、縫製、タッキング、及び締付けの少なくとも一つによって、前記多孔質支持体の少なくとも一部に取付けられている、請求項11に記載の物品。
【請求項15】
前記微多孔質層が、その中に活性粒子を含む、請求項11に記載の物品。
【請求項16】
前記少なくとも一つの微多孔質層が延伸膨張PTFE膜を含む、請求項11に記載の物品。
【請求項17】
前記少なくとも一つの微多孔質層の少なくとも一つが、前記多孔質支持体の上流側面に在る、請求項11に記載の物品。
【請求項18】
前記少なくとも一つの微多孔質層の少なくとも一つが、前記多孔質支持体の中に在る、請求項11に記載の物品。
【請求項19】
前記少なくとも一つの微多孔質層の少なくとも一つが、前記多孔質支持体の下流側面に在る、請求項11に記載の物品。
【請求項20】
更に前記多孔質支持体の下流側面に少なくとも一つの微多孔質層を有する、請求項17に記載の物品。
【請求項21】
フィルターバッグの形態の、請求項11に記載の物品。
【請求項22】
ひだ付カートリッジの形態の、請求項11に記載の物品。
【請求項23】
平らなフィルターパネルの形態の、請求項11に記載の物品。
【請求項24】
流体流中で使用するフィルターであって、
触媒粒子を有するニードルド延伸膨張PTFE繊維の不織布の少なくとも一つの多孔質層を含む、少なくとも一つの多孔質支持体であって、前記触媒粒子が弗化エチレンプロピレン(FEP)樹脂によって前記多孔質層に接着されており、前記触媒粒子が、(a)FEPの細糸、及び(b)分散一次FEP粒子を含む前記FEP樹脂によって拘束されている、少なくとも一つの多孔質支持体と;
前記多孔質支持体の上流側面に取付けられた延伸膨張PTFE膜を含む、少なくとも一つの微多孔質層と
を含んでなる、流体流中で使用するフィルター。
【請求項25】
前記触媒粒子が、酸化チタン、酸化アルミニウム、シリカ、及びゼオライトから成るグループから選ばれた粒子上に、Pt、Pd、Au、Rh、Fe、Cu、Al、及びそれらの化合物、並びに酸化バナジウムから成るグループから選ばれた活性表面を有する、請求項24に記載のフィルター。
【請求項26】
前記触媒粒子が、金属酸化物粒子上の酸化バナジウム、及び金属酸化物粒子上の白金から成るグループから選ばれた少なくとも一つの組成を有する、請求項24に記載のフィルター。
【請求項27】
前記微多孔質層が、積層、溶接、縫製、タッキング、及び締付けの少なくとも一つによって、前記多孔質支持体の少なくとも一部に取付けられている、請求項24に記載のフィルター。
【請求項28】
流体流中で使用するフィルターであって、
アナターゼ型の酸化チタン粒子上のV25を有する、ニードルド延伸膨張PTFE繊維の不織布の少なくとも一つの多孔質層を含む、少なくとも一つの多孔質支持体であって、前記粒子が弗化エチレンプロピレン(FEP)樹脂によって前記多孔質層に接着されており、前記粒子が、(a)FEPの細糸、及び(b)分散一次FEP粒子を含む前記FEP樹脂によって拘束されている、少なくとも一つの多孔質支持体と;
前記多孔質支持体の上流側面に取付けられた延伸膨張PTFE膜を含む、少なくとも一つの微多孔質層と
を含んでなる、流体流中で使用するフィルター。
【請求項29】
フィルター材料を形成する方法であって、次のステップ、即ち
少なくとも一つの多孔質層を有する多孔質支持体を供給するステップ、
前記少なくとも一つの多孔質層の多孔体の一部に、活性粒子及びポリマー接着剤を含むスラリーを含浸させるステップ、
前記活性粒子が、(a)ポリマーの細糸、及び(b)分散一次粒子を含む、前記ポリマー接着剤によって、前記少なくとも一つの多孔質層内に拘束されるように、前記ポリマー接着剤を固定化することにより、前記多孔質支持体がその中の多孔性を維持するステップ、及び
前記多孔質支持体の上流側面に、少なくとも一つの微多孔質層を供給するステップ
を含む、フィルター材料を形成する方法。

【図3】
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【図4】
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【図4A】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図8A】
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【図9】
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【図9A】
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【図10】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−86217(P2012−86217A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−272405(P2011−272405)
【出願日】平成23年12月13日(2011.12.13)
【分割の表示】特願2001−524705(P2001−524705)の分割
【原出願日】平成12年9月21日(2000.9.21)
【出願人】(598123677)ゴア エンタープライズ ホールディングス,インコーポレイティド (279)
【Fターム(参考)】