説明

化学的マーキング又はトレーシングによる物体又は物質の確実な認証方法

本発明は,物体の理論的識別,物体の分光光度分析,標準として用いられるマーカーの決定,分光光度分析を通して得られたこの標準マーカーに関するデータと予め記憶された特定のデータとの比較,分光光度分析に供すべき補正量の計算,マーカーの存在の有無及びマーカーの強度の検出,物体を認証するコードの設定,及び,場合によっては,警報信号の送出を含む識別及び認証段階を含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は,化学的マーキング又はトレーシングによる物体又は物質の確実な認証方法に関する。これに限るものではないが,より具体的には偽造に対する取り組みや自動スクリーニングに適応される。
【0002】
一般に,輸送中や販売用の物体又は物質の多くがバーコードを用いて識別されている。バーコードは製品を特定するためには役に立つが,これらを認証するため,すなわちこの物体又は物質がバーコードによって特定されるその物であることを分析して証明するのに十分とは言えない。
【0003】
この問題を解決するために,物体又は物質の中に化学的マーカーを含有させる方法が考案されている。しかし,分析を実施し,偽造製品を検出するためには,実験に頼らなければならず,この手順は非常に長く複雑なものである。
【0004】
個々の製品に特定した分析機器の開発から成る方法に関しては,経済的に実行不可である。
【0005】
本発明は,複数の製品用に1台の機器のみを使用して,これらの不都合を解決する方法を提案することを目的としている。
【0006】
この目的を達成するために,本発明では,少なくとも次の二の連続する段階を含み,種々の物体又は物質を識別する認証方法を提案する。
■ 初期段階であって,この段階は,
− 入射光放射によって励起された時に,周波数スペクトルが,互いに対して識別可能であると共に,添加されることを意図された物体及び物質に対して識別可能なエネルギー放射を発する複数の化学的マーカーを選択することと,
− 個々の物体又は物質に対して,他の物体に帰属させたものとは異なる,予め選択されたマーカーの組み合わせを帰属させ,添加することと,
− 帰属させた組み合わせにおいて,マーカーの存在の有無に関するパラメータによって決められる認証コードを設定することと,
− 物体又は物質全ての認証コード,及び,これらの物体又は物質に対応する関連データを情報システムのメモリに記憶することと,
− 物体,物質,その容器,及び/又はそのパッケージに関連付けることが可能な識別コードであって,バーコード又はその同等物等の識別コードを,物体又は物質に割り当てることと,
− 前記システムのメモリに,この個々の物体の識別コードを記憶することと,
− この識別コードと認証コードとの間の対応を設定することとを含む。
【0007】
■ 前記システムによる識別及び認証段階であって,この段階は,
− この物体に関連付けられた識別コードを読み取ることによって,物体又は物質の理論的識別を行うことと,
− 物体又は物質の少なくとも一部について分光光度分析を行い,前記パラメータ,特にマーカーの存在の有無を検出し,その物体又は物質の認証コードを決定することと,
− 理論的識別コードが認証コードと対応している場合には,この物体の認証を行うことと,
− 対応が検出された場合には,認証信号を送出し,認証コードが識別コードと対応しない場合には,警報信号を送出することとを含む。
【0008】
分光光度分析段階は,以下の工程で構成され,
− 広域周波数スペクトル光線を用いて,このマーキングされた物体又は物質を照射し,
− 発生器によって照射された物体,又は,物質から透過,又は,反射した波を分光素子に送り,この分光素子は,これを偏向させて,種々の波長の範囲に対応した種々のスペクトルのゾーンに光強度の光スペクトルを生成させ,
− それぞれのゾーンで光強度を検出し,
− この強度を,このゾーンに特定して帰属させてあり,上記パラメータを介してメモリに登録されている一又はそれ以上の閾値と比較し,
− この比較の結果が,物体の認証コードの決定に寄与する
工程とを含む。
【0009】
好適には,分析すべきスペクトルのゾーン,並びにこれらのゾーンの個々に割り当てられている種々のパラメータの決定は,システムによって識別データからなされる。この解決方法は結果の信頼性が非常に高く,用いる処理手段の仕事量を大幅に軽減する。
【0010】
帰属させた組み合わせにおけるマーカーの存在の有無に関すると共に,識別及び/又は認証コードの決定に用いられるパラメータは,特に,
− 蛍光が存在するかしないか,
− 蛍光の持続時間が少なくとも一の閾値よりも長いか短いか,
− 予め設定された波長を有するピークが存在するかしないか,並びに,任意に,このピークの強さ及び/又は幅,
− マーカーの濃度に対応する放射ピークの高さが,所定の一又はそれ以上の閾値よりも大きいか小さいかを含む。
【0011】
可能な組み合わせ数を増加させるために,種々のマーカーの濃度を用いて,種々の強度のストライプを得る。
【0012】
さらに,読み取りとそれに続く分光光度分析を外乱させる可能性のある光学的要因を全て避けるために,光放射の発生器によって放射された光強度を,マーカーの存在によって影響を受けない所定の周波数範囲で検出された光強度の値と,所定の保存された値との間の幅に応じて制御することが提案される。
【0013】
この対策は,多数の強度レベルをパラメータとして用いる際に必要であることが分かる 。
【0014】
本発明の目的は,さらに具体的には,前述の認証方法をより確実にすることである。
【0015】
この目的のために,本発明は,複数の化学的マーカーを使用して,この存在の有無によって,どのような場合にでも認証コードが個々の物体の種類に特定のものであるように,複数の異なる物体に認証コードを設定することを提案するものである。
【0016】
本発明によると,前記マーカーの少なくとも一つが,他のマーカーの存在の有無及び/又はその強度を決定するために,参照用として機能する標準計量として用いられる。特に,物体又は物質の組成,入射角度等の位置変動,物体又はこの物体或いは物質を包む又は取り囲む透明な材料からの距離,異物(汚れ等)の存在による信号の減少,又は悪天候への長期間の露出,又は,物体の経時変化により起こりうる信号の減少等に起因しうるノイズを避けるために,補正及び修正を行う観点で用いられる。
【0017】
その結果,本発明による方法はまた,
− 予め前述のマーカーより一つを選択し,予め期間を決める或いは決めずに,このマーカーを製品又は物質の種類に標準計量として帰属させること,
− 識別データ及び標準計量としての,その機能に特定したデータをこのマーカーに割り当て,これらのデータを記憶すること,
− 認証段階の間に,予め記憶された識別データから,この標準計量として用いられているマーカーを決定し,物体又は物質の分光光度分析を通して得られたこの標準計量マーカーに関するデータを,前述の予め記憶された特定のデータと比較すること,
− この比較の結果から,分光光度分析に供すべき補正量を計算すること,
− 補正された分光分析の結果から,マーカーの存在の有無,及び/又は強度を検出すること,
− 前記マーカーの存在の有無,及び/又は強度から,物体又は物質の認証コードを決定することを含む。
【0018】
もちろん,この方法は対応が検出された場合には認証信号を,認証コードが識別コードと対応しない場合には警報信号を送出することを含んでもよい。
【0019】
この解決方法の利点の一つは,極低濃度(数ppmから数百ppm,望ましくは数十ppm(ppmは100万分の1))の個々に信号発光特性を有する化学的マーカーを用いることが可能なことである。しかし,黒又は着色されている等の特別なマトリックスの場合には,これらの濃度が任意に数パーセントに至ってもよい。この結果,以下をもたらす。
■ ナノ材料,すなわちその大きさがナノメートル(1mの10億分の1)単位で測られる粒子又は構造体を化学的マーカーとして使うことが可能である。 粒子の大きさが小さければ小さいほど,表面/体積の比率が大きくなり,その結果,分光光度分析でより有意となる性質がここで利用できる。
■ 非常に少量が使用されるため,マーカーが添加される素材の基本的な物理的及び化学的な性質は変わらず保たれることを考慮すると,生物によって吸収可能なマーカー手段により表面に堆積させることによって,薬を識別し,健康に危険をおよぼす可能性のある偽造品を防止するために使用することができる。
■ 同じ理由によって,マーカーのコストは低い。
■ さらには,製品や物質の照明による放射信号は弱く,背景ノイズに埋もれてしまう。従って,専用の検出器を装備していない者にとっては検出が難しい。
■ 信号が弱く,かつ,特定のピーク幅と非常に正確な波長を有するために,これを模倣することはほとんど不可能である。
■ 放射ピークの強度は,マーカー濃度の関数である。数ppm程度の濃度を用いて,手作業で均質に複製することも不可能である。例えば,元の管理された濃度が4ppmとして,複製物はゼロ値から数十又は数百ppm偏差した値を提示するであろうから,許容基準が狭い(例えば3.8から4.2ppm)検出器によって正しく読み取られることは防止される。
■ 信号が独立して分析され比較される数種類のマーカーを使うことにより,偽造を行うことは一層困難になる。
■ おとり,すなわち偽のマーカーを使うことも可能であり,この存在は単に偽造者を惑わすことを目的とする。
■ 本発明による方法を実施する責任のある団体は,そのトレーサーの調達元が既知の場合であっても,このプロセスの保護性を損なうことなくこの認証コードを適応することが可能であり,その供給者に知られずにそのコードを選択することができる。また,情報システムのパスワードに変更がなされるのと同じように,定期的にそのコードを変更することも可能である。
■ あるレベルのみを読み込む所定の読み込み又は認証装置によるいくつかのレベルのコードが考えられる。従って,例えば,製造業者が三つのマーカーA,B,及びCを用い,マーカーAとBを登録パターンを識別することに用い,一方で三番目のマーカーを製造場所と対応させる等の使い方が可能である。
■ 製品の真正性を市場でチェックする担当の要員は,マーカーAとBを識別するために設計された装置を所持することになる。
■ 「内部保安」サービス又は品質サービス要員はマーカーCを検出するための装置を利用することになる。
■ これらのマーカーは,
a) 集合体に埋め込むこと,例えば,これらのマーカーを,ポリマーの名称と等級,物体の製造者,トレーサビリティー,認証等を識別することを目的としてプラスチック素材に添加してもよく,
b) 例えば,
− 含浸によって(例えば,織物や化学着色剤…),
− 全面又は選択的(シルクスクリーン印刷,バッファデポジット(buffer deposit))に係わらず,種々の支持体,例えば金属製の航空部材上へのコーティング(ニス塗り,ペンキ塗り,噴霧)によって,又は
− 一部が可視又は不可視なマーキングされたラベルの形態として,表面上に配置し得る。
同様に,認証コードは集合体に埋め込まれたマーカーの存在の有無から,そして表面上又は任意にラベル上に配置されたマーカーの存在の有無から,認証コードを決定することができる。
【0020】
好適には,このラベルは,マーカーを含む透明層によって覆われる反射領域を含んでもよい。従って,本解決方法は,反射による分光光度法を実現させ,大幅にエネルギー損失を低減させる。
【0021】
認証データは,選択されたマーカーの組み合わせ,特有な光線の波長,それらの強度,蛍光可能な持続時間…を含み得る。
【0022】
従って,マーカーの存在の有無を検証するためには,識別コードから識別される予測されるストライプに対応する範囲の値を,これらの範囲の外側に位置するゾーンを気にすることなく分析すれば十分であり,全ての波長を網羅する必要はない。
【0023】
認証を進めるために,分析を行う作業者は,物体又は物質の理論的識別を知る必要がない。これは,該理論的識別が,バーコードによって,データ比較を行う情報システムに直接供給されるからである。
【0024】
好適には,マーキングする領域は,明確な形態を有する領域によって不可視なマーキングの形態とすることができる。
【0025】
この場合,認証方法には,形態を認識する方法と組み合わせて,マーキングされた領域を読み込むことが含まれるため,その結果,マーキングの偽造は一層無作為で行うしかなくなる。
【0026】
このような方法は偽造に対する取り組みに用いることができるが,同様に自動スクリーニングに適用することもできる。例えば,プラスチックのリサイクルの場合には,プラスチックの種類や等級によってマーカーの組み合わせを用いることが可能であり,一旦認証がなされると,種類又は等級によってスクリーニングを行うことが可能である。
【0027】
本発明による方法を実施するために用いられる読み取り装置は,現場でのチェック用又は販売現場用に可搬とすることが可能である。それでも,非常に多数の測定(1秒間に最大1万から10万回の測定)を行うことが可能であるために,製造中の一括チェックを実施することも可能である。
【0028】
以下,本発明の実施形態を説明するが,これに限定されるものではない。
【0029】
図1の実施形態では,マーカーの組み合わせを含んだ物質を波が透過している。より正確には,最終的にサンプルは溶液中に希釈されて分析される。
【0030】
このタイプの分析は,材料が直接又はその物質(個体又は液体)の容器を通して分析可能な物体に関しても,同様に実施可能であることを記載しておく。
【0031】
この実施形態では,本発明による方法を用いた識別及び認証装置は分光光度計を備えており,該分光光度計は,さらに以下のものを備える。
− 出力調節可能な電流発生器6によって電力を供給される光源4を取り入れた,広域周波数スペクトルかつ強度調節可能な光放射発生器;
− レンズ5の光軸上にあるコリメータ2,
− 光発生器の光軸上に位置する透明な容器9に入った製品サンプル8,
− 前記光軸上で,光発生器の反対側に位置する容器9の側に配置される,周波数に応じてスペクトルを生成するために光放射を分解する分光素子1(プリズム又は回折格子),
− 分光素子1によって種々のスペクトルレベルとなった放射を検出し,検出されたスペクトルを表すデジタル信号を電子システムに送信するための,ここではDTC3の電荷を送る検出器片のスペクトルの検出手段。
【0032】
前述のように,光源4は広域周波数スペクトル源である。これは,アークランプ(キセノン型)又は白色光を発生させる電球から構成される。また任意に,使用される化学的マーカーの性質に応じて特有に選択される複数のレーザ放射源と,これらの放射源から放射された種々の放射を混合するために用いられる光学ミキサーから構成することもできる。
【0033】
レンズ5は,例えば,無色の(achromatique)複レンズで構成してよい。
【0034】
もちろん,電流発生器6は分光光度計に接続されている電子回路に同様に電源を供給してもよい。
【0035】
この実施形態で,検出器片3は,化学的マーカーの存在によって影響されないスペクトルの位置に設置したセルCを備える。
【0036】
このセルCは,第2の入力が修正された電圧VCを受ける減算器Sの入力に(増幅後)適応する検出信号を送出する。この減算器Sの出力は電力増幅器APに適応され,減算器Sの出力が一定の値に,望ましくはゼロに等しく維持されるように発生器6を駆動する。
【0037】
この配置により,セルCによって受光される光強度のレベルが一定であることが確保される。従って,これにより,サンプル8を通った放射光の強度を変動させる可能性のある外乱は回避される。
【0038】
本発明に沿って,光源は,容器9に貼られたバーコード11の方向に光放射(例えばレーザー光)を発するバーコードリーダ12と関連付けられている。このリーダ12は,バーコードによって反射された放射を検出するためのレシーバを備える。電子回路がこのレシーバによって受信した情報を処理し,このバーコードを表すデジタル信号を電子システムEに向けて発生させる。
【0039】
この電子システムは,識別コードのデータベースBC,認証コードのデータベースBA,及び各種処理用の管理プログラムPGの記憶手段,並びに,表示及び信号手段AFと関連付けられたプロセッサP(破線で表示)を備える。
【0040】
このプロセッサPは,バーコードリーダ3によって伝達される信号,及び,識別コードのデータベースBCより,容器9の理論的識別(ブロックB1)を行うように設計されている。一旦理論的識別が完了すると,プロセッサPは探索すべきスペクトルのゾーンを決定する(ブロックB2)。この目的で,二のデータベースBC,BA間で編集された対応テーブルTCによって,読み取られた識別コードから得られた対応する認証コードが使用される。次に,プロセッサPは,検出器片3によって供給された信号を介して所定のスペクトルのゾーンを分析する(ブロックB3)。
【0041】
標準計量マーカーが使用されている場合には,検出器によって生成されたこの標準計量マーカーに対応するデジタル信号により,分析に先立ち,信号を補正することができる(ブロックB4)。
【0042】
次に,プロセッサPは検出した認証コードを決定し(ブロックB5),所定の識別コードと比較する(ブロックB6)。これら二のコードが一致した場合には,プロセッサは認証信号SVを送出する。一致しない場合には,プロセッサは警報信号SAを送出する。
【0043】
図1に例示した装置によって使用されている本発明による方法では,次の段階を含む(図2)。
■ 初期段階では以下を含む。
− マーカー相互間及び物質に対する妥当性に応じてマーカーを選択すること,
− 前記物質中にこれらのマーカーを種々の濃度で導入すること,
− マーカーの存在の有無(濃度でも可)を表すバイナリー数値によって構成される認証コードを決定し,これらのコードを電子システムEのメモリ中に記憶すること,
− バーコード11によって識別される物質を,これらのコードのそれぞれに帰属させること。
■ 識別及び/又は認証段階は以下を含む。
− バーコードリーダ12を用いてマーキングされた物質の容器上に設置されたバーコード11を読み取り,この物質の識別情報を含む特定の信号を送出すること(ブロック1),
− この信号を電子システムEに送信し,この識別コードを識別すること(ブロック2),
− 分光光度分析であって,
○ 光源4を用いて物質を照射すること
○ 透過した波を分光素子1に送り,その波をその波長に応じ種々に偏向させること,
○ 透過した放射光は平面波であり,偏向によって連続したDTC3片で構成されている検出ゾーンに発生源の連続像を与えるため,これによって透過した放射光のスペクトルを得ること(ブロック3),
○ このスペクトルのサンプリングを行い,次に,このアナログ信号を所定のデジタル構造を示すデジタル信号に変換すること(ブロック4),
○ メモリに記憶された認証データ中に示され,バーコードの識別によって抽出された波長の範囲に応じてマスキングを行い,マーカー特有のストライプの存在の有無のみを考慮して読み取りコードを決定すること(ブロック5),
○ そのデータ又は認証コードを,実験データ又は読み取りコードと比較を行い,物質の認証を行うこと(ブロック6)を含む分光光度分析。
− 視覚的、例えばスクリーン13上に、及び/又は聴覚手段により結果を表示することであって,
○ 前記認証コードと前記読み取りコードが一致した場合には,認証成功(ブロック7)を表示し,
○ 前記認証コードと前記読み取りコードが一致しない,非認証の場合には,警報信号(ブロック8)を発すること。
【0044】
図3は,物体又は物質14の少なくとも一部を反射した波を用いた分析を例示したものである。
【0045】
この場合は,分光素子1は反射波の光軸上に位置する。
【0046】
この分析方法は,上述したもの,例えば図1と同じである。
【0047】
図4は,図3の実施形態の変形を例示したものである。実際は,マーカーは物体又は物質14の中に直接含有されていないが,マーキングする物体にラベル15を貼り,その上に透明なニスを塗ったフィルムを用いて適用される。
【0048】
この分析方法は,上述したもの,例えば図1と同じである。
【0049】
より良い分析結果を得るために,ラベルは反射性であっても良い。
【0050】
また,マーカーを含有しないブランクラベルを用い,該ブランクラベルを,マーカーを付けるために,フィルム又はニスによって任意に覆い,データ処理中に対応する信号を取り除くことが可能である。これにより,分析が簡略化する。実際には,マーキングされたラベルが,次にブランクラベルが照射され,その後,データ処理の時に,ブランクラベルのスペクトルのデータが,マーキングされたラベルのスペクトルのデータから取り除かれる。
【0051】
蛍光マーカーの場合には,時間δtの後に第2の測定を行い,蛍光の持続時間を検証しても良い。
【0052】
用いるトレーサは有機物でも無機物でも良く,ジスプロシウム,ユーロピウム,サマリウム,イットリウム等の希土類元素をベースにしたものを使うことができる。
【0053】
使用されるいくつかのマーカー,及び,その特性を下記の表に例示する。
これらをマーキングする会社は,特には,「BASF」(登録商標),「Bayer」(登録商標),「Glowburg」(登録商標),「Lambert Riviere」(登録商標),「Phosphor Technology」(登録商標),「Rhodia」(登録商標),SCPI等がある。


これらのマーカーは商品化されているマーカーだけに限定されず,全合成によって合成しても,商品化されているマーカーから誘導してもよいことを記載しておく。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明による方法を用いた透過波を使用した装置の概略図であり;
【図2】本発明による方法の機能線図であり;
【図3】本発明による方法を用いた反射波を使用した装置の概略図であり;
【図4】本発明による方法を用いたラベルの反射波を使用した装置の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種々の物体又は物質の識別及び認証のための方法であって,この方法は分光光度分析手段と結合した情報システムを用いる方法において,
■ 初期段階であって,
− 入射光放射によって励起された時に,周波数スペクトルが,互いに対して識別可能であると共に,添加されることを意図された前記物体及び前記物質に対して識別可能なエネルギー放射を発する複数の化学的マーカーを選択することと,
− 個々の前記物体又は前記物質に対して,他の物体に帰属させたものとは異なる,予め選択されたマーカーの組み合わせを帰属させ,添加することと,
− 前記帰属させた組み合わせにおいて,前記マーカーの存在の有無に関するパラメータによって決められる認証コードを設定することと,
− 前記物体又は前記物質全ての前記認証コード,及び,前記物体又は前記物質に対応する関連データを情報システムのメモリに記憶することと,
− 前記物体,前記物質,その容器,及び/又はそのパッケージに関連付けることが可能な識別コードであって,バーコード又はその同等物等の前記識別コードを前記物体又は前記物質に割り当てることと,
− 前記システムの前記メモリに個々の前記物体の前記識別コードを記憶することと,
− 前記識別コードと前記認証コードとの間の対応を設定することとを含む初期段階と,
■ 前記システムによる識別及び認証段階であって,
− 前記物体に関連付けられた前記識別コードを読み取ることによって,前記物体又は前記物質の理論的識別を行うことと,
− 前記物体又は前記物質の少なくとも一部について分光光度分析を行い,前記パラメータ,特に前記マーカーの存在の有無を検出し,前記物体又は前記物質の認証コードを決定することと,
− 理論的識別コードが前記認証コードと対応している場合には,前記物体の認証を行うことと,
− 対応が検出された場合には,認証信号を送出し,前記認証コードが前記識別コードと対応しない場合には,警報信号を送出することとを含む識別及び認証段階との,少なくとも二の連続した段階を含む方法。
【請求項2】
使用される前記マーカーの濃度が,おおよそ数ppmから数百ppm,望ましくは数十ppmであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記マーカーは固有の光信号を生成するナノ材料を含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
おとりとして機能するマーカーの使用を含むことを特徴とする請求項1〜3記載の方法。
【請求項5】
同じ製品の前記認証コードが定期的に変更されることを特徴とする請求項1〜4記載の方法。
【請求項6】
前記マーカーは強度レベルによって選択されることを含む請求項1〜5記載の方法。
【請求項7】
同じ前記物体又は同じ前記物質に割り当てられた前記マーカーは,種々の読み取り手段によって読み取り可能ないくつかのコードを成すことを特徴とする請求項1〜6記載の方法。
【請求項8】
前記マーカーは集合体の中に埋め込まれ,又は,表面上に配置されることを特徴とする請求項1〜7記載の方法。
【請求項9】
前記認証コードは,前記集合体の中に埋め込まれた,又は,前記表面に配置されたマーカーの存在の有無によって決定されることを特徴とする請求項1〜8記載の方法。
【請求項10】
明確な形態を提示する一又はそれ以上の領域に応じたマーキングを含み,前記認証段階は,前記形態を認識して,マーキングされた領域を読み取ることを含むことを特徴とする請求項1〜9記載の方法。
【請求項11】
前記分光光度分析は,以下の工程で構成され,
− 広域周波数スペクトル光線を用いて,このマーキングされた前記物体又は前記物質を照射し,
− 発生器によって照射された前記物体,又は,前記物質から透過,又は,反射した波を分光素子(1)に送り,該分光素子は,前記波を偏向させて,種々の波長の範囲に対応した種々のスペクトルのゾーンに光強度の光スペクトルを生成させ,
− それぞれの前記ゾーンで前記光強度を検出し,
− この強度を,このゾーンに特定して帰属させてあり,前記パラメータを介してメモリに登録されている一又はそれ以上の閾値と比較し,
− この比較の結果が,前記物体の前記認証コードの決定に寄与する
工程とを含むことを特徴とする請求項1〜10記載の方法。
【請求項12】
分析すべき前記スペクトルの前記ゾーン,並びに,これらのゾーンのそれぞれに割り当てられている種々のパラメータが,前記識別コードから決定されることを含むことを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記光放射の発生器によって放射された前記光強度を,前記マーカーの存在によって影響を受けない所定の周波数範囲で検出された前記光強度の前記値と,所定の保存された値との間の幅に応じて制御することを含むことを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記光放射の発生器は,アークランプ又は白色光を発生させる電球等の広域周波数スペクトル光源を備えることを特徴とする請求項11〜13記載の方法。
【請求項15】
前記光放射の発生器は,使用される前記化学的マーカーの性質に応じて特定して選択された複数のレーザ放射源と,これらの放射源から放射された種々の放射を混合するミキサーとを備えることを特徴とする請求項11〜13記載の方法。
【請求項16】
前記分析データの分光光度処理は,以下の工程で構成され,
− 前記スペクトルのサンプリングを行い,
− 前記アナログ信号を,所定のフレームを有するデジタル信号に変換し(ブロック4),
− メモリに記憶された前記認証データ中に示され,前記バーコードの識別によって抽出された波長の範囲に応じてマスキングを行い,前記パラメータを用いて読み取りコードを決定し(ブロック5),
− 前記認証データを,実験データ又は前記読み取りコードと比較し(ブロック6),
− 結果を示すために,視覚的(13)及び/又は聴覚手段により,
○ 前記認証コードと前記読み取りコードが一致した場合には,認証成功(ブロック7)を表示し,
○ 前記認証コードと前記読み取りコードが一致しない,非認証の場合には,警報信号(ブロック8)を発する
工程とを含むことを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項17】
一又は複数の前記マーカーを含有する反射性の支持体の付着物を含むことを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項18】
前記マーカーを含有しないブランク支持体の前記付着物を含み,この支持体は同様に照射され,データ処理中にマーキングされた前記支持体の前記スペクトルの前記データから,前記ブランク支持体の前記スペクトルのデータが除去され,これにより,対応する信号が除去されて分析が簡略化されることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項19】
データ処理中に,前記物質の前記スペクトルの前記データ又はブランクの前記物体が,前記マーキングされた前記物体又は前記物質の前記スペクトルのデータから除去されることを特徴とする請求項1〜18記載の方法。
【請求項20】
前記マーカーの前記組み合わせは,少なくとも一の蛍光マーカーを含むことを特徴とする請求項1〜19記載の方法。
【請求項21】
前記パラメータは,励起に続く識別すべき前記物質の前記光放射の持続時間をさらに含むことを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項22】
前記パラメータは,
− 蛍光が存在するかしないか,
− 前記蛍光の持続時間が閾値よりも長いか短いか,
− 予め設定された波長を有するピークが存在するかしないか,
− 前記マーカーの濃度に対応する放射ピークの高さが,所定の閾値よりも大きいか小さいかを含むことを特徴とする請求項21記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−534953(P2007−534953A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510071(P2007−510071)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【国際出願番号】PCT/FR2005/001013
【国際公開番号】WO2005/106779
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(505159032)
【出願人】(505159054)
【Fターム(参考)】