説明

化学線硬化性基を含む低粘度アロファネート

本発明は、化学放射線への暴露によりエチレン性不飽和化合物と重合を伴って反応する活性化基を有するポリイソシアネートの低粘度反応生成物、そのような生成物の製造方法、及びそのような生成物の被覆組成物における使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学放射線への暴露によりエチレン性不飽和化合物と重合を伴って反応する活性化基を有するポリイソシアネートの低粘度反応生成物、そのような生成物の製造方法、及びそのような生成物の被覆組成物における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
化学放射線、例えば紫外線、赤外線又は電子線により、活性化された二重結合を有する被覆系を硬化することは、産業界において知られており、確立された技術である。このような硬化方法は、被覆技術における最も急速な硬化方法の1つである。
【0003】
粘度を調節するためにできる限り少量の有機溶媒を使用するかあるいは有機溶媒を全く使用しないという、現代の被覆系に対する環境上及び経済上の要求の故に、元から低い粘度を有する塗料原料を使用することが望ましい。この目的に対して、例えばEP-A-0 682 012 に記載されているようなアロファネート構造を有するポリイソシアネートが従来から知られている。
【0004】
産業界において、そのような物質は、1価又は多価アルコールを過剰の脂肪族及び/又は脂環式ジイソシアネートと反応させることにより製造される(GB-A-994 890、EP-A-0 000 194 又はEP-A-0 712 840参照)。この反応の後、減圧下での蒸留により、未反応イソシアネートが除去される。DE-A-198 60 041 によれば、この手順は、活性化二重結合を有するOH官能性化合物、例えばヒドロキシアルキルアクリレートを用いて行うことができるが、特に低モノマーの生成物の製造に関して、問題が生じる。残留イソシアネート含量を十分に(残留モノマー0.5質量%未満)低下できるように、135℃までの温度で、蒸留工程を行う必要があるので、二重結合が、精製工程中でさえ熱重合開始されて、重合反応を起こす可能性がある。
【0005】
低モノマー含量の、アロファネート含有ポリウレタン系放射線硬化型バインダーの製造が、EP-A-0 867 457 及びUS-A 5 739 251 に記載されている。しかし、このようなバイダーは、活性化二重結合を含ます、代わりに非反応性アリルエーテル基(構造:R−O−CH−CH=CH)を含んでいる。従って、必要な紫外線反応性を導入する反応性希釈剤(低分子量のアクリル酸エステル)を添加する必要がある。
【0006】
EP-A-0 825 211 は、オキサジアジントリオンからアロファネート構造を合成する方法を記載しているが、活性化二重結合を有する放射線硬化性誘導体は知られていない。記載されていることは、マレエート−及び/又はフマレート−含有ポリエステルの使用のみであり、放射線硬化の可能性は記載されていない。
【0007】
US-A 5 777 024 は、活性化二重結合を有するヒドロキシ官能性モノマーをアロファネート変性イソシアヌレートポリイソシアネートのイソシアネート基と反応させることにより、低粘度放射線硬化性アロファネートを製造することを記載している。その結果、アロファネート結合基は飽和されている。
【0008】
アルコールを用いたウレトジオンの開環によるアロファネート化合物の生成は、基本的に、粉体塗装材料における架橋機構として、知られている(Proceedings of the International Waterborne, High-Solids, and Powder Coatings Symposium 2001, 28th, 405-419頁、及びUS-A 2003-0153713 参照)。しかしながら、その為に必要な反応温度(120℃以上)は、目的とする、活性化二重結合を有するアロファネートに基づく放射線硬化性モノマーの製造には、高すぎる。
【0009】
歴史的には、ウレトジオン環とアルコールとの直接反応によるアロファネートの生成は、イソシアネートを含まない、溶媒系2K(2液型)ポリウレタン塗料について、研究された。触媒を用いなければ、この反応は、低い反応速度の故に、工業的に重要ではない(F. Schmitt, Angew. Makromol. Chem. (1989), 171, 21-38頁)。しかしながら、適切な触媒を用いると、HDI系ウレトジオン硬化剤とポリオールとの間の架橋反応は、60〜80℃で開始すると言われている(K. B. Chandalia; R. A. Englebach; S. L. Goldstein; R. W. Good; S. H. Harris; M. J. Morgan; P. J. Whitman; R. T. Wojcik, Proceedings of the International Waterborne, High-Solids, and Powder Coatings Symposium, (2001), 77-89頁)。このような触媒の構造は、これまで出版されていない。この反応を利用して調製した市販製品も、これまで未公表である。
【0010】
簡潔に言えば、100℃より低い温度における活性化二重結合を有するアルコールとウレトジオンとの開環反応による、低粘度放射線硬化性アロファネートの製造は、従来技術では詳細に開示されていないと言うことができる。
【特許文献1】GB-A-994 890
【特許文献2】EP-A-0 000 194
【特許文献3】EP-A-0 712 840
【特許文献4】DE-A-198 60 041
【特許文献5】EP-A-0 867 457
【特許文献6】US-A 5 739 251
【特許文献7】EP-A-0 825 211
【特許文献8】US-A 5 777 024
【特許文献9】US-A 2003-0153713
【非特許文献1】Proceedings of the International Waterborne, High-Solids, and Powder Coatings Symposium 2001, 28th, 405-419頁
【非特許文献2】F. Schmitt, Angew. Makromol. Chem. (1989), 171, 21-38頁
【非特許文献3】Proceedings of the International Waterborne, High-Solids, and Powder Coatings Symposium, (2001), 77-89頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明の目的は、100℃未満の温度で実施でき、得られる生成物が好ましくは未希釈状態で23℃において100000mPasの粘度を有する、活性化二重結合を有するアロファネート基含有バインダーの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くべきことに、触媒としてフェノキシド塩を使用した、ウレトジオンと活性化二重結合含有アルコールとの反応により、所望のバイダーが得られることが見出された。
【0013】
従って、本発明は、化学放射線への暴露によりエチレン性不飽和化合物と重合を伴って反応する活性化基を有する有機基を、2つの単結合を介して結合されたアロファネート基の酸素原子に含む、アロファネート基含有バインダーの製造方法であって、
A)ウレトジオン基含有化合物1種又はそれ以上を、
B)化学放射線への暴露によりエチレン性不飽和化合物と重合を伴って反応する基を有するOH官能性化合物1種又はそれ以上、および
C)所望により更に、NCO反応性化合物と、
D)触媒としての、フェノキシド基含有化合物1種又はそれ以上、及び
E)所望により、助剤及び添加剤の存在下に、
反応させる、製造方法を提供する。
更に、本発明は、本発明の方法により得られるバイダーを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
成分A)において、少なくとも1つのウレトジオン基を含む有機化合物全てを使用することができる。
好ましくは、そのような化合物は、自体既知の方法による、脂肪族、脂環式及び/又は芳香脂肪族ジイソシアネート又はポリイソシアネートの接触二量化により得ることができる(J. Prakt. Chem. 1994, 336, 196-198頁参照)。
【0015】
適当なジイソシアネートの例には、1,4−ジイソシアナトブタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)、トリメチルヘキサンジイソシアネート、1,3−及び1,4−ビスイソシアナトメチルシクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、1,3−及び1,4−キシリレンジイソシアネート(武田(日本)から市販のXDI)、ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート及びジフェニルメタン2,4’−ジイソシアネート(MDI)、2,4−及び2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)、又はこれらの混合物が包含される。1,6−ジイソシアナトヘキサンが好ましい。
【0016】
本発明において使用される触媒の例には、トリアルキルホスフィン、ジメチルアミノピリジン、トリス(ジメチルアミノ)ホスフィンが包含される。
【0017】
二量化反応の結果は、当業者に知られているように、使用する触媒、プロセス条件及び使用するジイソシアネートに依存する。特に、1分子あたり平均して1を越えるウレトジオン基(ウレトジオン基の数は分布に依存)を含む生成物を生成することができる。使用する触媒、プロセス条件及び使用するジイソシアネートに依存して、ウレトジオンに加えて、他の構造単位、例えばイソシアヌレート及び/又はイミノオキサジアジンジオンを含む混合生成物が生成される。
【0018】
成分A)の特に好ましい化合物は、HDIの接触二量化の生成物を含み、0.5質量%未満の遊離HDI含量、17〜25質量%、特に21〜24質量%のNCO含量、及び23℃で20〜500mPas、好ましくは50〜200mPasの粘度を有する。
【0019】
接触二量化により得られる一般にNCO官能性の化合物は、好ましくは、成分A)の一部として直接使用されるが、基本的には、そのような化合物は、まず、更なる反応に付され、その後でのみ使用される。この更なる反応は、例えば、遊離NCO基のブロッキング、若しくはイミノオキサジアジンジオン、イソシアヌレート、ウレタン、アロファネート、ビウレット、尿素、オキサジアジントリオン、オキサゾリジノン、アシルウレア又はカルボジイミド構造を形成するための、2又はそれ以上の官能価を有するNCO反応性化合物とのNCO基の更なる反応であってよい。これにより、選択した割合に依存してNCO基を含む又は含まない、ウレトジオン基を有するより高分子量の化合物が得られる。
【0020】
適しているブロック剤は、例えば、アルコール、ラクタム、オキシム、マロネート、アルキルアセトアセテート、トリアゾール、フェノール、イミダゾール、ピラゾール及びアミンであり、具体的には、ブタノンオキシム、ジイソプロピルアミン、1,2,4−トリアゾール、ジメチル−1,2,4−トリアゾール、イミダゾール、ジエチルマロネート、エチルアセトアセテート、アセトンオキシム、3,5−ジメチルピラゾール、ε−カプロラクタム、N−t−ブチルベンジルアミン、シクロペンタノンカルボキシエチルエステル又はこれらブロック剤の所望の混合物である。NCO基のブロッキングの為の方法は、当業者には周知であり、例えば、Progress in Organic Coatings 1999, 36, 148-172頁に記載されている。
【0021】
2又はそれ以上の官能価を有するNCO反応性化合物は、上記のジ−又はポリイソシアネートであってよく、更に、2又はそれ以上の官能価を有するアルコール、例えばエチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、異性体ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサン−1,6−ジオール、2−エチルヘキサンジオール及びトリプロピレングリコール、又はこれらアルコールのアルコキシル化誘導体である。好ましい2価アルコールは、ヘキサン−1,6−ジオール、ジプロピレングリコール及びトリプロピレングリコールである。適当な3価アルコールは、グリセロール又はトリメチロールプロパン若しくはこれらのアルコキシル化誘導体である。4価アルコールは、ペンタエリトリトール又はそのアルコキシル化誘導体である。
【0022】
成分A)の化合物は、本発明の方法に直接使用でき、或いは、前駆体から出発して、本発明の方法に先だって該化合物を調製することもできる。
【0023】
化学放射線は、電磁放射線、電離放射線、特に電子線、紫外線及び可視光を意味する(Roche Lexikon Medizin, 第4版;Urban & Fischer Verlag, ミュンヘン 1999)。
【0024】
成分B)の化合物において、化学放射線への暴露によりエチレン性不飽和化合物と重合を伴って反応する基は、例えば、ビニル、ビニルエーテル、プロペニル、アリル、マレイル、フマリル、マレイミド、ジシクロペンタジエニル、アクリルアミド、アクリル及びメタクリル基であり、この種の活性化基、例えばビニルエーテル、アクリレート及び/又はメタクリレート基が好ましく、アクリレート基がより好ましい。
【0025】
成分B)の適当なヒドロキシ基含有化合物の例は、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート(例えば、PEA6/PEM6;Laporte Performance Chemicals Ltd., イギリス)、ポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート(例えば、PPA6、PPM5S;Laporte Performance Chemicals Ltd., イギリス)、ポリアルキレンオキシドモノ(メタ)アクリレート(例えば、PEM63P;Laporte Performance Chemicals Ltd., イギリス)、ポリ(ε−カプロラクタム)モノ(メタ)アクリレート(例えば、Tone M100TM;Dow, ドイツ Schwalbach)、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ官能性モノ−、ジ−又はそれ以上のポリアクリレート(例えば、グリセリルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、又はジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレート(これらは、場合によりアルコキシル化された多価アルコール、例えばトリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトールを反応させて得られる)である。
【0026】
B)の成分として同様に適しているのは、二重結合を含む酸と、場合により二重結合を含むエポキシド化合物との反応により得られるアルコール、例えば、(メタ)アクリル酸とグリシジル(メタ)アクリレート又はビスフェノールAジグリシジルエーテルの反応生成物である。
【0027】
加えて、場合により不飽和の酸無水物とヒドロキシ化合物及び場合によりアクリレート基を含むエポキシド化合物との反応により得られる不飽和アルコールを用いることも、同様に可能である。その例は、無水マレイン酸と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びグリシジル(メタ)アクリレートとの反応生成物である。
【0028】
特に好ましくは、成分B)の化合物は、上記種類に相当し、0.6〜1.1のOH官能価を有する。
【0029】
特に好ましい化合物は、第1級ヒドロキシル基を有する化合物である。何故なら、本発明の方法において、第1級ヒドロキシル基は、第2級又は第3級ヒドロキシル基より反応性が高いからである。とりわけ好ましいのは、2−ヒドロキシエチルアクリレート及び4−ヒドロキシブチルアクリレートである。
【0030】
成分B)のOH官能性不飽和化合物に加え、本発明の方法では、成分B)とは異なりかつNCO反応性基(例えば、OH、SH又はNH)を含む更なる成分C)を使用することができる。
【0031】
そのような化合物は、例えば、化学放射線への暴露によりエチレン性不飽和化合物と重合を伴って反応する基を含むNH−又はSH−官能性化合物である。
【0032】
加えて、水性媒体からの使用、例えば水性塗料中での使用が特に想定されるなら、親水化作用を有する基を導入することが可能である。親水化作用を有する基は、カチオン性でもアニオン性でもよいイオン性基、及び/又は非イオン性親水性基である。カチオン性、アニオン性又は非イオン性分散化合物は、例えばスルホニウム、アンモニウム、ホスホニウム、カルボキシレート、スルホネート又はホスホネート基若しくは塩の形成により上記基に変換できる基(潜在的イオン性基)を有する化合物、或いはポリエーテル基を含みかつ存在するイソシアネート反応性基により導入することができる化合物である。好ましい適切なイソシアネート反応性基は、ヒドロキシル基及びアミノ基である。
【0033】
適当なイオン性化合物又は潜在的イオン性基を含む化合物の例は、モノ−及びジヒドロキシカルボン酸、モノ−及びジアミノカルボン酸、モノ−及びジヒドロキシスルホン酸、モノ−及びジアミノスルホン酸、並びにモノ−及びジヒドロキシホスホン酸又はモノ−及びジアミノホスホン酸、並びにこれらの塩、例えばジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ヒドロキシピバリン酸、N−(2−アミノエチル)−β−アラニン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタンスルホン酸、エチレンジアミン−プロピル−又はブチルスルホン酸、1,2−又は1,3−プロピレンジアミン−β−エチルスルホン酸、マレイン酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、グリシン、アラニン、タウリン、リシン、3,5−ジアミノ安息香酸、IPDIとアクリル酸との付加物(EP-A-0 916 647、実施例1)並びにそのアルカリ金属塩及び/又はアンモニウム塩;亜硫酸水素ナトリウムとブタ−2−エン−1,4−ジオールとの付加物、ポリエーテルスルホネート、2−ブテンジオールとNaHSOとのプロポキシル化付加物(例えば、DE-A-2 446 440、第5〜9頁、式I-III)、並びに親水性合成成分としてカチオン性基に変換できる構造単位(例えば、N−メチルジエタノールアミン)である。好ましいイオン性又は潜在的イオン性化合物は、カルボキシル若しくはカルボキシレート基及び/又はスルホネート基及び/又はアンモニウム基を有する化合物である。特に好ましいイオン性化合物は、イオン性又は潜在的イオン性基としてカルボキシル基及び/又はスルホネート基を有する化合物、例えば、2−(2−アミノエチルアミノ)エタンスルホン酸のN−(2−アミノエチル)−β−アラニン塩、IPDIとアクリル酸との付加物のN−(2−アミノエチル)−β−アラニン塩(EP-A-0 96 647、実施例1)、及びジメチロールプロピオン酸のN−(2−アミノエチル)−β−アラニン塩である。
【0034】
適当な非イオン性親水化化合物は、例えば、少なくとも1個のヒドロキシ又はアミノ基を含むポリオキシアルキレンエーテルである。このようなポリエーテルは、エチレンオキシドから誘導される単位30〜100質量%のフラクションを含む。適当な化合物には、1〜3の官能価を有する直鎖構造のポリエーテル、更に、式(I):
【化1】

[式中、R及びRは、相互に独立に、1〜18個の炭素原子を含み、酸素原子及び/又は窒素原子により中断されていてよい2価の脂肪族、脂環式又は芳香族基である。
は、アルコキシ末端ポリエチレンオキシド基である。]
で示される化合物が包含される。
【0035】
非イオン性親水化化合物は、例えば、1分子あたり平均5〜70個、好ましくは7〜55個のエチレンオキシド単位を含む1価ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコール(例えば、常套の方法により適当な出発分子をアルコキシル化して得られる化合物)である(例えば、Ullmanns Encyclopaedie der technischen Chemie, 第4版第19巻、Verlag Chemie, Weinheim 31-38頁)。
【0036】
適当な出発分子は、飽和モノアルコール、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、s−ブタノール、異性体ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール及びノナノール、n−デカノール、n−ドデカノール、n−テトラデカノール、n−ヘキサデカノール、n−オクタデカノール、シクロヘキサノール、異性体メチルシクロヘキサノール又はヒドロキシメチルシクロヘキサン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン又はテトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル(例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテル);不飽和アルコール、例えば、アリルアルコール、1,1−ジメチルアリルアルコール又はオレイルアルコール;芳香族アルコール、例えば、フェノール、異性体クレゾール又はメトキシフェノール;芳香脂肪族アルコール、例えば、ベンジルアルコール、アニシルアルコール又はシンナミルアルコール;第2級モノアミン、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、N−メチル−及びN−エチルシクロヘキシルアミン又はジシクロヘキシルアミン;並びに複素環式第2級アミン、例えば、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン又は1H−ピラゾールである。好ましい出発分子は、飽和モノアルコールである。特に好ましくは、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを出発分子として使用する。
【0037】
アルコキシル化反応に適したアルキレンオキシドは、特に、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドであり、これらは、アルコキシル化反応において、任意の順序で、又は混合物として使用できる。
【0038】
ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールは、純ポリエチレンオキシドポリエーテルであっても、ポリアルキレンオキシド単位の少なくとも30質量%、好ましくは少なくとも40質量%がエチレンオキシド単位からなる混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルであってもよい。好ましい非イオン性化合物は、少なくとも40質量%のエチレンオキシド単位及び60質量%以下のプロピレンオキシド単位を含む1官能性混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルである。
【0039】
特にイオン性基を含む親水化剤を使用する場合、触媒D)の作用に対するその影響を調べる必要がある。この理由から、非イオン性親水化剤が好ましい。
【0040】
触媒成分D)の化合物として、本発明に従って使用するフェノキシドに加えて、基本的に、イソシアネート基とイソシアネート反応性基との反応を触媒するために当業者に知られている化合物を単独で又は所望の混合物として使用することもできる。
【0041】
列挙できる例には、第3級アミン、例えばトリエチルアミン、ピリジン、メチルピリジン、ベンジルジメチルアミン、N,N−エンドエチレンピペラジン、N−メチルピペリジン、ペンタメチレンジエチレントリアミン、N,N−ジメチルアミノシクロヘキサン、N,N'−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、又は金属塩、例えば塩化鉄(III)、オクタン酸スズ(II)、エチルカプロン酸スズ(II)、パルミチン酸スズ(II)、ジブチルスズ(IV)ジラウレート、ジブチルスズ(IV)ジアセテート及びグリコール酸モリブデン、若しくはこれら触媒の所望の混合物が包含される。
【0042】
しかしながら、D)の触媒として専らフェノキシド及び/又はフェノキシド基含有化合物を使用することが好ましい。
【0043】
成分D)のフェノキシド基含有化合物は、好ましくは、次式(II)で示される化合物である:
【化2】

[式中、Zは、窒素原子又はリン原子である。
、R、R及びRは、相互に独立に、水素原子、又は同一又は異なる任意に不飽和の置換基を有する又はヘテロ原子を含む、24個までの炭素原子を有する脂肪族、脂環式又は芳香族基である。
Yは、式(III):
【化3】

(ここで、Qは、水素原子である。
、X、X、X及びXは、相互に独立に、水素原子、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシル、アミド、アミン、エーテル、エステル、チオエーテル、ケトン、アルデヒド及びカルボキシレート基、並びに場合により未置換の、置換された又はヘテロ原子を含む、24個までの炭素原子を有する脂肪族、脂環式又は芳香族基からなる群から選択される置換基であるか、又は環構造又は多環構造の一部を形成する。)
のフェノキシド基である。]
【0044】
式(II)で示されるフェノキシド基含有化合物として、アンモニウムフェノキシド及びホスホニウムフェノキシドを使用するのが好ましく、テトラアルキルアンモニウムフェノキシド及びテトラアルキルホスホニウムフェノキシドを使用するのが特に好ましい。
【0045】
とりわけ好ましいフェノキシドは、テトラブチルアンモニウム4−(メトキシカルボニル)フェノキシド、テトラブチルアンモニウム2−(メトキシカルボニル)フェノキシド、テトラブチルアンモニウム4−ホルミルフェノキシド、テトラブチルアンモニウム4−ニトリルフェノキシド、テトラブチルホスホニウム4−(メトキシカルボニル)フェノキシド、テトラブチルホスホニウム2−(メトキシカルボニル)フェノキシド、テトラブチルホスホニウム4−ホルミルフェノキシド、テトラブチルアンモニウムサリチレート及び/又はテトラブチルホスホニウムサリチレートである。
【0046】
成分D)の上記フェノキシドは、工程中、その場で(in situ)生成することもできる。対応するフェノール及び強塩基(例えば、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド又はテトラブチルホスホニウムヒドロキシド)を用いることにより、工程中で実際に触媒活性であるフェノキシドを生成することができる。
【0047】
また、成分E)のフェノール系安定剤も、塩基との反応により、成分D)の目的のための触媒として機能するフェノキシドを形成し得ることを、指摘することができる。この場合、対応するフェノールとは対照的に、そのようなフェノキシドはもはや安定化効果を有さないことを認識すべきである。さらに、強塩基、例えばトラブチルアンモニウムヒドロキシド又はテトラブチルホスホニウムヒドロキシドは、他のイソシアネート誘導体の生成、特に三量化を触媒することに注意すべきである。
【0048】
触媒D)は、当業者に既知の方法で担体材料に担持させ、それを不均一触媒として使用することもできる。
【0049】
触媒成分D)の化合物は、有利には、方法に関与する成分の1つ又は成分の一部分に溶解することができる。特に、本発明において使用されるフェノキシド塩は、極性ヒドロキシアルキルアクリレートに非常によく溶解するので、少量のB)中に溶解したD)を、液体状の濃縮溶液として、計り入れることができる。
【0050】
本発明の方法において、触媒成分D)は、方法生成物の固形分に基づいて、典型的には0.001〜5.0質量%、好ましくは0.01〜2.0質量%、より好ましくは0.05〜1.0質量%の量で使用される。
【0051】
成分E)の構成物として、本発明の方法では、例えば溶媒又は反応性希釈剤も使用できる。
【0052】
適当な溶媒は、溶媒の添加時点から工程の終了時まで、方法生成物に存在する官能基に対して不活性である。適する溶媒は、例えば、塗料産業で使用されている溶媒であり、炭化水素、ケトン及びエステル、例えば、トルエン、キシレン、イソオクタン、アセトン、ブタノン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド及びジメチルホルムアミドであるが、溶媒を全く加えないのが好ましい。
【0053】
反応性希釈剤として、UV硬化中に(共)重合されてポリマーネットワークに組み込まれ、NCO基に対して不活性である化合物を使用することができる。そのような反応性希釈剤は、例えば、P.K.T. Oldring(編), Chemistry & Technology of UV & EB Formulations For Coatings, Inks & Paints, 第2巻, 1991, SITA Technology, ロンドン, 237-285頁に示されている。反応希釈剤は、アクリル酸又はメタクリル酸、好ましくはアクリル酸と、一又は多官能性アルコールとのエステルであってよい。適当なアルコールの例には、異性体ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール及びデカノール、並びに脂環式アルコール、例えばイソボルニルアルコール、シクロヘキサノール及びアルキル化シクロヘキサノール、ジシクロペンタノール、芳香脂肪族アルコール、例えばフェノキシエタノール及びノニルフェニルエタノール、及びテトラヒドロフルフリルアルコールが包含される。加えて、これらアルコールのアルコキシル化誘導体も使用できる。適当な2価アルコールは、例えば、エチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、異性体ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサン−1,6−ジオール、2−エチルヘキサンジオール及びトリプロピレングリコール、若しくはこれらアルコールのアルコキシル化誘導体である。好ましい2価アルコールは、ヘキサン−1,6−ジオール、ジプロピレングリコール及びトリプロピレングリコールである。適当な3価アルコールは、グリセロール、トリメチロールプロパン又はそれらのアルコキシル化誘導体である。4価アルコールは、ペンタエリトリトール又はそのアルコキシル化誘導体である。
【0054】
本発明のバインダーは、早発重合に対して安定化されていなければならない。従って、成分E)の構成物として、成分A)〜D)の反応の前及び/又は間に、好ましくは、重合を禁止するフェノール系安定剤を添加する。このフェノール類として、p−メトキシフェノール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン又は2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを使用する。また、安定化に適しているのは、N−オキシ化合物、例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンN−オキシド(TEMPO)又はその誘導体である。安定剤は、バインダーに化学的に組み込むこともでき、その為には、上記種類の化合物が、とりわけ更なる遊離脂肪族アルコール基若しくは第1級又は第2級アミン基を有しており、従ってウレタン又は尿素基により成分A)の化合物に化学的に結合できる場合、適している。この目的に特に適しているのは、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンN−オキシドである。フェノール系安定剤、特にp−メトキシフェノール及び/又は2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールも好ましい。
【0055】
対照的に、他の安定剤、例えばHALS(=hindered amine light stabilizers)は、そのような効果的な安定化作用を奏さず、不飽和基の「クリーピング」ラジカル重合を引き起こし得ることが知られているので、E)としてそれほど好ましくはない。
【0056】
早発重合に対して反応混合物、特に不飽和基を安定化する為に、酸素含有ガス、好ましくは空気を、反応混合物中又は上に、送り込むことができる。ガスは、遊離イソシアネート基の存在下での望ましくない反応を防止するために、非常に低い水分含量を有するのが好ましい。
【0057】
一般に、安定剤は本発明のバインダーの製造中に添加され、その終了時に、長期安定性を得るために、安定化はフェノール系安定剤により繰り返えされ、所望により反応生成物は空気により飽和される。
【0058】
本発明の方法において、安定剤成分は、方法生成物の固形分に基づいて、典型的には0.001〜5.0質量%、好ましくは0.01〜2.0質量%、より好ましくは0.05〜1.0質量%の量で使用される。
【0059】
成分B)からのOH基の、成分A)からのNCO及びウレトジオン基合計量に対する比は、典型的には1.5:1〜1.0:1.9、好ましくは1.0:1.0〜1.0:1.9、より好ましくは1.0:1.0〜1.0:1.2である。
【0060】
本発明の方法は、好ましくは20〜100℃、より好ましくは40〜100℃、特に80〜89℃の温度で行われる。
【0061】
通常、存在し得るNCO基は、成分A)のウレトジオン基に比べ、成分B)のヒドロキシル基とより迅速に反応する。従って、B)中に2種又はそれ以上の異なる成分が存在するなら、成分の添加順序により、B)の1つの成分が好ましくはウレタン化に組み込まれ、最後に添加された成分が好ましくはアロファネート化に組み込まれるように、ウレタン化とアロファネート化を制御することができる。
【0062】
しかしながら、触媒不活性化化合物(フェノキシドの場合、例えば、酸性リン酸エステルなどの強酸)の添加により、又は成分B)及びC)の残留化合物を掃去するさらなるイソシアネート含有化合物の添加により、アロファネート化を終了することもできる。
【0063】
本発明の方法を、例えば静的ミキサー、押出機又は混練機により連続的に行うか、例えば攪拌反応器によりバッチ式で行うかは、重要ではない。
好ましくは、本発明の方法は、攪拌反応器で行われ、成分A)〜E)の添加順序は任意である。
【0064】
反応の進行は、反応器に装備された適当な測定装置により、及び/又は採取した試料の分析により、追跡することができる。適当な方法は、当業者には既知である。そのような方法には、例えば、粘度測定、屈折率の測定、OH含有量の測定、ガスクロマトグラフィ(GC)、核磁気共鳴スペクトル(NMR)、赤外線スペクトル(IR)、及び近赤外線スペクトル(NIR)が含まれる。中でも、存在する遊離NCO基(脂肪族NCO基については、ν=約2272cm-1におけるバンド)及び特にウレトジオン基(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートに基づくウレトジオンについては、ν=1761cm-1におけるバンド)を調べるIR、並びに成分B)及びC)の未反応化合物のGC分析が好ましい。
【0065】
本発明の一つの好ましい態様では、化合物A)のアロファネート化とウレタン化とを並行して行う。この目的のために、成分A)を最初に導入し、安定剤並びに必要ならE)からの更なる助剤及び添加剤を加え、続いて、成分B)〜E)を添加し、反応混合物を反応温度に加熱する。
【0066】
本発明の別の好ましい態様では、まず最初に、NCO基が完全に反応されるまで、成分A)とB)を反応させる。E)又はその一部を存在させておいてもよい。続いて、A)のウレトジオン基のB)との反応を、D)の添加により、適切な場合には温度も更に調節して、開始する。
【0067】
特に好ましい態様では、イソシアネート基とウレトジオン基とを成分B)の過剰のヒドロキシル基と反応させる。触媒D)を用いた成分A)とB)との反応の後に残っているヒドロキシル基は、次いで、好ましくは更なるイソシアネート含有化合物、特に成分B)の可能な構成物として記載した化合物と反応させて、ウレタン化する。
【0068】
本発明の方法により得られる不飽和アロファネート、特に、好ましく使用されるHDIの接触二量化の生成物に基づくアロファネートは、23℃で、好ましくは100000mPas以下、より好ましくは60000mPas以下、非常に好ましくは40000mPas以下の粘度を有する。
【0069】
本発明の方法により得られる不飽和アロファネート、特に、好ましく使用されるHDIの接触二量化の生成物に基づくアロファネートは、好ましくは600〜3000g/モル、より好ましくは750〜1500g/モルの数平均分子量Mnを有する。
【0070】
本発明の方法により得られる不飽和アロファネートは、好ましくは0.5質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満の遊離ジ−及び/又はトリイソシアネートモノマーしか含まない。
【0071】
本発明のバインダーは、被覆剤又は塗料、更に接着剤、印刷インク、注型用樹脂、歯科用コンパウンド、サイズ剤、フォトレジスト、ステレオリソグラフィ、複合材料用樹脂及びシーラントの製造に使用することができる。接着結合又は封止(シーリング)において、必要なことは、紫外線照射硬化の場合、相互に結合又は封止される2つの基材の少なくとも一方が、紫外線に対して透過性であることである。言い換えると、基材は透明でなければならない。電子線の場合、電子に対する十分な透過性を確保しなければならない。塗料及び被覆剤に使用するのが好ましい。
【0072】
更に本発明は、
a)本発明のアロファネート基含有バインダー1種又はそれ以上
b)所望により、化学放射線への暴露によりエチレン性不飽和化合物と重合を伴って反応する基を有さない、遊離又はブロックトイソシアネート基含有ポリイソシアネート1種又はそれ以上
c)所望により、化学放射線への暴露によりエチレン性不飽和化合物と重合を伴って反応する基及び任意に遊離又はブロックトイソシアネート基を有する、a)とは異なる他の化合物、
d)所望により、活性水素原子を有するイソシアネート反応性化合物1種又はそれ以上、
e)開始剤、
f)所望により、溶媒、並びに
g)所望により、助剤及び添加剤
を含んでなる被覆組成物を提供する。
【0073】
成分b)のポリイソシアネート自体は、当業者には既知である。本発明では、所望によりイソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、ウレトジオン及び/又はイミノオキサジアジントリオンにより変性されていてよく、かつヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4'−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン及び/又はトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートに基づく化合物が好ましい。
【0074】
この場合、NCO基はブロックされていてよく、用いるブロック剤は、成分A)の説明に関連して既に記載した化合物である。
【0075】
成分c)の化合物には、特に、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4'−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン及び/又はトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートに基づく化合物であって、所望によりイソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、ウレトジオン及び/又はイミノオキサジアジントリオン基により変性されていてよく、活性水素原子を含むイソシアネート基反応性官能基を含まない化合物に基づくウレタンアクリレートのような化合物が包含される。
【0076】
NOC含有ウレタンアクリレートは、Bayer AG (ドイツ Leverkusen) からRoskydalTM UA VPLS 2337、RoskydalTM UA VPLS 2396 又はRoskydalTM UA XP として市販されている。
【0077】
加えて、既に記載しかつ放射線硬化被覆剤の分野で知られている反応性希釈剤を、NCO反応性基を含んでいない限り、成分c)として使用してもよい。
【0078】
成分d)の化合物は、飽和又は不飽和である。NCO基と反応する化学官能基は、活性水素原子を含む官能基、例えば水酸基、アミン基又はチオール基である。
【0079】
好ましいのは、飽和ポリヒドロキシ化合物であり、その例は、被覆剤、接着剤、印刷インク又はシーラントの分野で知られており、化学放射線への暴露によりエチレン性不飽和化合物と重合を伴って反応する基を有していない、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリレートポリオール及び/又はポリウレタンポリオールである。
【0080】
不飽和ヒドロキシ官能性化合物は、例えば、放射線硬化被覆剤の分野で知られており、30〜300mgKOH/gのOH価を有する、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ウレタンアクリレート及びアクリル化ポリアクリレートである。
【0081】
加えて、既に記載しかつ放射線硬化被覆剤の分野で知られている反応性希釈剤を、NCO反応性基を含む限り、成分d)として使用してもよい。
【0082】
成分e)のラジカル重合開始剤として、熱及び/又は放射線により活性化できる開始剤を使用できる。本発明では、紫外線又は可視光により活性化できる光開始剤が好ましい。光開始剤は、自体既知の化合物であり、市販されており、単分子開始剤(タイプI)と二分子開始剤(タイプII)とに分けられる。適当な(タイプI)系は、ケトン化合物、例えば、第三級アミンと組み合わせたベンゾフェノン、アルキルベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、アントロン、及びハロゲン化ベンゾフェノン並びにこれらの混合物である。更に、適している(タイプII)開始剤は、例えば、ベンゾイン及びその誘導体、ベンジルケタール、アシルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、例えば、ビスアシルオキシド、フェニルグリオキシル酸エステル、カンファーキノン、α−アミノアルキルフェノン、α,α−ジアルコキシアセトフェノン及びα−ヒドロキシアルキルフェノンである。
【0083】
開始剤は、フィルム形成バインダーの質量に基づき、0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%の量で使用され、単独で、又はしばしば有利な相乗効果の故に相互に組み合わせて、使用できる。
【0084】
紫外線に代えて電子線を使用する場合、光開始剤は必要ではない。当業者に知られているように、電子線は、熱放射により発生され、電圧差により加速される。次いで、高エネルギー電子は、チタン箔を通過し、硬化されるバインダーへと誘導される。電子線硬化の一般的な原理は、”Chemistry & Technology of UV & EB Formulations for Coatings, Inks & Paints”, 第1巻, P.K.T. Oldring(編), SITA Technology, 英国ロンドン, 101-157頁1991) に詳述されている。
【0085】
活性化二重結合の熱硬化の場合、熱分解性ラジカル開始剤を加えて行うこともできる。当業者に知られているように、適切な開始剤は、ジアルコキシジカーボネートのような過酸化物(例えば、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート)、ジアルキルパーオキシド(例えば、ジラウリルパーオキシド)、芳香族又は脂肪族酸のパーエステル(例えば、t−ブチルパーベンゾエート又はt−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート)、無機過酸化物(例えば、パーオキソ二硫酸アンモニウム、パーオキソ二硫酸カリウム)、有機過酸化物(例えば、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、ジクミルパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシド)、若しくはアゾ化合物(例えば、2,2'−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、1−[(シアノ−1−メチルエチル)アゾ]−ホルムアミド、2,2'−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2'−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2'−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2'−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド)である。高度に置換された1,2−ジフェニルエタン(ベンズピナコール)、例えば、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、1,1,2,2−テトラフェニルエタン−1,2−ジオール又はそのシリル化誘導体も使用可能である。
【0086】
紫外線活性化開始剤と熱活性化開始剤とを併用することもできる。
【0087】
成分c)の助剤及び添加剤には、E)に関して先に記載した溶媒が含まれる。
【0088】
加えて、硬化した塗膜の耐候性を増すために、e)として、紫外線吸収剤及び/又はHALS安定剤も含ませることができる。これらの組み合わせが好ましい。前者は、390nm以下の吸収範囲を持たなければならず、例えばトリフェニルトリアジン(例えば、TinuvinTM 400 (Ciba Spezialitaetenchemie GmbH(ドイツ Lampertheim))、ベンゾトリアゾール(例えば、TinuvinTM 622 (Ciba Spezialitaetenchemie GmbH(ドイツ Lampertheim))又はシュウ酸ジアニリド(例えば、SanduvorTM 3206 (Clariant(スイス Muttenz))であり、樹脂固形分に基づき、0.5〜3.5質量%の量で添加される。適当なHALS安定剤は市販されている[TinuvinTM 292 又は TinuvinTM 123 (Ciba Spezialitaetenchemie GmbH(ドイツ Lampertheim))若しくは(例えば、SanduvorTM 3258 (Clariant(スイス Muttenz))]。好ましい使用量は、樹脂固形分に基づいて、0.5〜2.5質量%である。
【0089】
同じく、成分e)は、顔料、染料、充填剤、均展剤及び液化剤を含むことができる。
【0090】
更に、必要なら、NCO/OH反応を促進するためにポリウレタン化学で既知の触媒を成分e)に存在させることができる。触媒は、スズ塩又は亜鉛塩若しくは有機スズ化合物、スズ石鹸及び/又は亜鉛石鹸、例えば、オクタン酸スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキシド、若しくは第3級アミン、例えばジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)である。
【0091】
被覆される材料への本発明の被覆組成物の適用は、被覆技術において既知の常套方法、例えば、噴霧塗布、ナイフ塗布、ロール塗布、流延、浸漬、スピンコーティング、刷毛塗り又は霧化により、或いは、印刷技術、例えばスクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷又はオフセット印刷により、更には転写法により、行われる。
【0092】
適当な基材は、例えば、木材、金属、特に電線エナメル被覆、コイル被覆、缶被覆又は容器被覆の用途で使用される金属、プラスチック(フィルム状プラスチックも含む)、特にABS、AMMA、ASA、CA、CAB、EP、UF、CF、MF、MPF、PF、PAN、PA、HDPE、LDPE、LLDPE、UHMWPE、PET、PMMA、PP、PS、SB、PUR、PVC、RF、SAN、PBT、PPE、POM、PUR−RIM、SMC、BMC、PP−EPDM及びUP(これらの略称は、DIN 7728T1 に従う。)、紙、皮革、布帛、フェルト、ガラス、木製材料、コルク、無機的に結合した基材、例えば木質ボード及びファイバーセメントスラブ、電子器機又は鉱物質基材である。また、種々の上記材料からなる基材、又は既に被覆された基材、例えば車両、航空機又は船舶及びそれらの部品、特に車体又は外装部品を被覆することもできる。更に、例えば、被覆組成物を一時的に基材に適用し、部分的又は完全に硬化し、場合により剥離して、フィルムを製造することもできる。
【0093】
硬化するには、存在する溶媒を、部分的に又は完全に除去することができる。
その後で又は同時に、場合により必要な熱硬化又は光化学硬化操作を、連続的に又は同時に行うこともできる。
【0094】
必要な場合には、熱硬化を室温又はそれ以上の高温、好ましくは40〜160℃、より好ましくは60〜130℃、更に好ましくは80〜110℃で行うことができる。
【0095】
e)に光開始剤を使用する場合、放射線硬化は、高エネルギー照射線、すなわち紫外線又は太陽光、例えば200〜700nmの波長の光を照射することにより、或いは、高エネルギー電子(電子線、150〜300keV)を照射することにより、行うことができる。使用する光又は紫外線の照射源は、例えば、高圧又は中圧水銀灯であり、水銀蒸気は、他の元素、例えばガリウム又は鉄をドープすることにおり変性しておくことも可能である。レーザー、パルスランプ(UV閃光ランプの名称で知られている)、ハロゲンランプ又はエキシマエミッターも、同様に使用できる。それらの設計の基本部分として、或いは特別なフィルタ及び/又は反射体の使用により、UVスペクトルの一部が放射されないように装備することもできる。例えば、職業衛生学的理由により、UV−C、又はUV−C及びUV−Bに属する放射線をフィルタで除去することができる。エミッターは静置して、照射される材料を、機械的手段により照射源を通過して移動させてもよく、或いは、エミッターを可動式にし、照射される材料を硬化中静置しておいてもよい。放射線量は、通常、UV硬化の場合架橋させるのに十分な量であり、80〜5000mJ/cmの範囲である。
【0096】
照射は、所望により、酸素の不存在下で、例えば不活性ガス雰囲気又は低酸素雰囲気中で行う。適している不活性ガスは、好ましくは窒素、二酸化炭素、希ガス又は燃焼ガスである。更に、照射は、放射線に対して透明である媒体により被覆材料を覆って行ってもよい。そのような媒体の例は、ポリマーフィルム、ガラス又は液体(例えば水)である。
【0097】
放射線量及び硬化条件に依存して、使用する開始剤の種類及び濃度を、当業者には既知の仕方で変更することができる。
【0098】
特に好ましくは、静置した高圧水銀灯を使用して硬化を行う。この場合、光開始剤を、被覆剤の固形分に基づいて、0.1〜10質量%、より好ましくは0.2〜3.0質量%の濃度で用いる。このような被覆剤を硬化するには、200〜600nmの波長範囲で測定して、200〜3000mJ/cmの照射線量を使用するのが好ましい。
【0099】
温度の上昇により熱的に活性化できる開始剤をd)で用いる場合、熱エネルギーは、輻射、伝導及び/又は対流により被覆剤に導入され、通常、被覆技術では常套であるオーブン、近赤外ランプ及び/又は赤外ランプを用いる。
【0100】
適用された膜厚(硬化前)は、通常0.5〜5000μm、好ましくは5〜1000μm、より好ましくは15〜200μmである。溶媒を使用する場合、溶媒は、適用後、硬化前に、通常の方法により除去される。
【実施例】
【0101】
別途記載がない限り、全てのパーセントは質量%である。
NCO含量(%)は、DIN EN ISO 11909 に基づき、ブチルアミンとの反応の後、0.1mol/lの塩酸を用いる逆滴定により決定した。
粘度は、ISO/DIS 3219:1990 に従い、コーンプレート粘度計(SM−KP)(Paar Physica (ドイツ Ostfildern) 製Viskolab LC3/ISO)を用いて測定した。
赤外スペクトルは、Perkkin Elmer (ドイツ Ueberlingen) 製モデル157装置を用い、塩化ナトリウムプレート間に適用した液体膜について測定した。
【0102】
最終生成物中の三量体、ウレトジオン、アロファネート及びウレタン構造の量は、NMRスペクトル分析により測定した。そのために、試料の13C−NMRをCDCl中で記録し[DPX 400 及びAVC 400 (Bruker (ドイツ Karlsruhe) 製)、共鳴周波数100MHz、緩和遅延4秒、2000スキャン、収集時間1.03秒、励起角度30秒]、下部構造のモル分率を、δ(13C) =121.4ppm (1C; NCO)、148.4ppm (3C; 三量体)、153.8ppm (1C; アロファネート)、156.3ppm (1C, ウレタン) 及び157.1ppm (2C; ウレトジオン) における信号強度積分から決定した。
【0103】
残留モノマーの量及び揮発性合成成分の量は、GC(内部標準としてテトラデカンを使用。オーブン温度110℃、注入器温度150℃、キャリアガス:ヘリウム、装置:6890 N (Agilent (ドイツ Waldbronn) 製)、カラム:Restek RT 50, 30m, 内径32mm, 膜厚0.25μm)により分析した。
【0104】
固形分は、DIN 53216/1 draft 4/89, ISO 3251 に従って測定した。
各実験を行った際の一般的な23℃の周囲温度は、RTで示した。
【0105】
DesmodurTM N3400:主としてウレトジオン構造を含むHDIポリイソシアネート、粘度185mPas/23℃、NCO含量21.4%、Bayer AG (ドイツ Leverkusen) の市販品。
DesmorapidTM Z:ジブチルスズジラウレート(DBTL)、Bayer AG (ドイツ Leverkusen) の市販品。
DarocurTM 1173:光開始剤:Ciba Spezialitaetenchemie GmbH(ドイツ Lampertheim)の市販品。
ToneTM M100:ε−カプロラクタム2当量と2−ヒドロキシエチルアクリレート1当量の反応生成物、OH含量=4.97%、粘度=82mPas/23℃、Dow (ドイツ Schwalbach) の市販品。
【0106】
実施例1〜3では、適当な触媒活性フェノキシドの調製を記載し、該フェノキシドは、実施例4〜5において、アロファネートを含む対応化合物を生成するための、ウレトジオン基含有化合物とエチレン性不飽和ヒドロキシ化合物との反応に使用した。
【0107】
実施例1 テトラブチルアンモニウム4−(メトキシカルボニル)フェノキシド
還流冷却器、加熱用油浴、機械式攪拌機及び内部温度計を備えたガラスフラスコに、室温で、4−ヒドロキシ安息香酸メチル(38.00g)及び水(277.92g)を導入し、十分に攪拌した。続いて、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(162.00g;水中濃度40%)を加え、反応混合物を60℃に加熱した。混合物を60℃で1時間攪拌した(フラスコの内容物は透明になった)。次いで、反応混合物を冷却し、水を、減圧(20mbar)下、30〜45℃で留去した。次いで、生成物を酢酸ブチルで洗浄し、真空乾燥機中、80℃、10mbarで乾燥した。白色固体が得られた。
【0108】
実施例2 テトラブチルアンモニウム4−ホルミルフェノキシド
還流冷却器、加熱用油浴、機械式攪拌機及び内部温度計を備えたガラスフラスコに、室温で、4−ヒドロキシベンズアルデヒド(7.64g)及び水(93.86g)を導入し、十分に攪拌した。続いて、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(40.54g;メタノール中濃度40%)を加え、反応混合物を60℃に加熱した。混合物を60℃で1時間攪拌した(フラスコの内容物は透明になった)。次いで、反応混合物を冷却し、溶媒(メタノール及び水)を、減圧(20mbar)下、30〜45℃で留去した。次いで、生成物を酢酸ブチルで洗浄し、真空乾燥機中、80℃、10mbarで乾燥した。白色固体が得られた。
【0109】
実施例3 テトラブチルアンモニウムサリチレート
還流冷却器、加熱用油浴、機械式攪拌機及び内部温度計を備えたガラスフラスコに、室温で、サリチル酸エチル(35.90g)及び水(282.13g)を導入し、十分に攪拌した。続いて、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(139.98g;水中濃度40%)を加え、反応混合物を60℃に加熱した。混合物を60℃で1時間攪拌した(フラスコの内容物は透明になった)。次いで、反応混合物を冷却し、水を、減圧(20mbar)下、30〜45℃で留去した。残渣を60℃でトルエン(200ml)に移した。その後、混合物を再蒸留した。残渣を、酢酸ブチル(50ml)から再結晶化した。生成物を濾取し、酢酸ブチルで洗浄し、真空乾燥機中、80℃、10mbarで乾燥した。白色固体が得られた。
【0110】
実施例4 本発明のアロファネート含有バインダー
還流冷却器、攪拌機及び滴下漏斗を備えた3ツ口フラスコに、空気を通気しながら(6L/hr)、RTで、DesmodurTM N3400(42.70g)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(0.15g)及びDesmorapidTM Z(0.001g)を導入し、これらを60℃に加熱した。ToneTM M100(75.72g)をゆっくり滴下し、その間、最高温度は70℃に達した。その後、反応混合物を、NCO含量が0.2%未満になるまで、70℃に保持した。続いて、反応混合物を80℃に加熱し、ToneTM M100(31.05g)と実施例1で調製した触媒(0.37g)の混合物を滴下した。反応混合物を、赤外スペクトル中ν=1768cm-1においてウレトジオン基が検出されなくなるまで、80℃に保持した。得られた生成物は透明で、9300mPas/23℃の粘度、0%のNCO含量、6.5モル%の三量体含量、32.0モル%のアロファネート含量、61.5モル%のウレタン含量及び0モル%のウレトジオン含量を有していた。
【0111】
実施例5 本発明のアロファネート含有バインダー
還流冷却器、攪拌機及び滴下漏斗を備えた3ツ口フラスコに、空気を通気しながら(6L/hr)、RTで、DesmodurTM N3400(53.48g)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(0.15g)及びDesmorapidTM Z(0.001g)を導入し、これらを60℃に加熱した。2−ヒドロキシエチルアクリレート(31.83g)をゆっくり滴下し、その間、最高温度は70℃に達した。その後、反応混合物を、NCO含量が0.1%未満になるまで、70℃に保持した。続いて、2−ヒドロキシエチルアクリレート(15.66g)と実施例3で調製した触媒(0.51g)の混合物を滴下した。反応混合物を、赤外スペクトル中ν=1768cm-1において3.5時間後にウレトジオン基の非常に弱い信号しか検出されなくなるまで、80℃に保持した。塩化ベンゾイル(0.10g)を加え、混合物を急速にRTまで冷却した。ガスクロマトグラフィにより、採集した試料は、4.15%のヒドロキシエチルアクリレート含量を有していることが分かった。ヒドロキシエチルアクリレート(6.8g)を加え、混合物を、赤外スペクトル中ν=2272cm-1においてイソシアネート基の信号が検出されなくなるまで、80℃に保持した。採集した試料のヒドロキシエチルアクリレート含量は0.07%であることが分かった。得られた生成物は透明で、56500mPas/23℃の粘度及び0%のNCO含量を有していた。
【0112】
比較例C1 アロファネート含有バインダー調製の試み
ウレトジオン基含有硬化剤及び活性化二重結合を有していないポリマーヒドロキシ化合物を含む粉体塗料の架橋用触媒(US-A 2003 301 537 13 に記載)について、その適合性を調べた。
【0113】
実施例3で得た触媒に代えて、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(0.51g)を触媒として用いた以外は、実施例5を繰り返した。反応混合物を80℃に加熱し、赤外スペクトル中ν=1768cm-1において2時間後にウレトジオン基の非常に弱い信号しか検出されなくなるまで、80℃に保持した。塩化ベンゾイル(0.10g)を加え、混合物を急速にRTまで冷却した。この冷却中に、反応混合物は濁った。ガスクロマトグラフィにより、採集した試料は、2.4%のヒドロキシエチルアクリレート含量を有していることが分かった。DesmodurTM N3400(5.20g)を反応混合物に加え、混合物を、赤外スペクトル中ν=2272cm-1においてイソシアネート基の信号が検出されなくなるまで、70℃で攪拌した。ガスクロマトグラフィにより、採集した試料のヒドロキシエチルアクリレート含量は0.17%であることが分かった。濁った生成物が得られ、84000mPas/23℃の粘度及び0%のNCO含量を有していた。
【0114】
比較例C2 アロファネート含有バインダー調製の試み
ウレトジオン基含有硬化剤及び活性化二重結合を有していないポリマーヒドロキシ化合物を含む粉体塗料の架橋用触媒(US-A 2003 301 537 13 に記載)について、その適合性を調べた。
【0115】
実施例3で得た触媒に代えて、テトラブチルアンモニウムフルオリド(0.67g)を触媒として用いた以外は、実施例5を繰り返した。反応混合物を80℃に加熱し、赤外スペクトル中ν=1768cm-1において3時間後にウレトジオン基の非常に弱い信号しか検出されなくなるまで、80℃に保持した。塩化ベンゾイル(0.10g)を加え、混合物を急速にRTまで冷却した。この冷却中に、反応混合物は濁り、無色の沈殿物が生成した。ガスクロマトグラフィにより、採集した試料のヒドロキシエチルアクリレート含量は1.7%であることが分かった。DesmodurTM N3400(4.30g)を反応混合物に加え、混合物を、赤外スペクトル中ν=2272cm-1においてイソシアネート基の信号が検出されなくなるまで、70℃で攪拌した。ガスクロマトグラフィにより、採集した試料のヒドロキシエチルアクリレート含量は0.15%であることが分かった。濁った生成物が得られ、92000mPas/23℃の粘度及び0%のNCO含量を有していた。
【0116】
比較例C1及びC2は、ウレトジオン基含有硬化剤及びポリマーヒドロキシ化合物からなる粉体塗料の架橋に適した物質であっても、ウレトジオン及びアルコールからの目的とするアロファネートの合成には適していないことを示している。得られた生成物は濁っており、比較的粘度が高く、従って、被覆を製造するのには適していない。
【0117】
実施例6 被覆組成物及び塗料
実施例5で調製した生成物の一部を、3.0%の光開始剤DarocurTM 1173 と十分に混合した。90μmのギャップを有するボーンドクターナイフを用いて、混合物を、ガラス板上に薄膜状で塗布した。紫外線照射(中圧水銀灯、IST Metz GmbH (ドイツ Nuertingen) 製、750mJ/cm)により、500gの荷重で10回往復させるスチールウール(グレード0/0/0)による引掻きによっても傷つかない硬い透明被覆が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学放射線への暴露によりエチレン性不飽和化合物と重合を伴って反応する活性化基を有する有機基を、2つの単結合を介して結合されたアロファネート基の酸素原子に含む、アロファネート基含有バインダーの製造方法であって、
A)ウレトジオン基含有化合物1種又はそれ以上を、
B)化学放射線への暴露によりエチレン性不飽和化合物と重合を伴って反応する基を有するOH官能性化合物1種又はそれ以上、および
C)所望により更に、NCO反応性化合物と、
D)触媒としての、フェノキシド基含有化合物1種又はそれ以上、及び
E)所望により、助剤及び添加剤の存在下に、
反応させる、製造方法。
【請求項2】
成分A)のウレトジオン基含有化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートに基づく化合物である、請求項1に記載のアロファネート基含有バインダーの製造方法。
【請求項3】
成分B)として、2−ヒドロキシエチルアクリレート及び/又は4−ヒドロキシブチルアクリレートを使用する、請求項1又は2に記載のアロファネート基含有バインダーの製造方法。
【請求項4】
成分D)の触媒として、テトラブチルアンモニウム4−(メトキシカルボニル)フェノキシド、テトラブチルアンモニウム2−(メトキシカルボニル)フェノキシド、テトラブチルアンモニウム4−ホルミルフェノキシド、テトラブチルアンモニウム4−ニトリルフェノキシド、テトラブチルホスホニウム4−(メトキシカルボニル)フェノキシド、テトラブチルホスホニウム2−(メトキシカルボニル)フェノキシド、テトラブチルホスホニウム4−ホルミルフェノキシド、テトラブチルアンモニウムサリチレート及び/又はテトラブチルホスホニウムサリチレートを使用する、請求項1〜3のいずれかに記載のアロファネート基含有バインダーの製造方法。
【請求項5】
工程温度は40〜100℃である、請求項1〜4のいずれかに記載のアロファネート基含有バインダーの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法により得られる、化学放射線への暴露によりエチレン性不飽和化合物と重合を伴って反応する基を有するアロファネート基含有バインダー。
【請求項7】
23℃で100000mPas以下の粘度を有する、請求項6に記載のアロファネート基含有バインダー。
【請求項8】
被覆剤、塗料、接着剤、印刷インク、注型用樹脂、歯科用コンパウンド、サイズ剤、フォトレジスト、ステレオリソグラフィシステム、複合材料用樹脂及びシーラントの製造における、請求項6又は7に記載のアロファネート基含有バインダーの使用。
【請求項9】
a)請求項6又は7に記載のアロファネート基含有バインダー1種又はそれ以上
b)所望により、化学放射線への暴露によりエチレン性不飽和化合物と重合を伴って反応する基を有さない、遊離又はブロックトイソシアネート基含有ポリイソシアネート1種又はそれ以上
c)所望により、化学放射線への暴露によりエチレン性不飽和化合物と重合を伴って反応する基及び任意に遊離又はブロックトイソシアネート基を有する、a)とは異なる他の化合物、
d)所望により、活性水素原子を有するイソシアネート反応性化合物1種又はそれ以上、
e)開始剤、
f)所望により、溶媒、並びに
g)所望により、助剤及び添加剤
を含んでなる被覆組成物。
【請求項10】
請求項6又は7に記載のアロファネート基含有バインダーから得られる被覆により塗装された基材。

【公表番号】特表2007−529580(P2007−529580A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503233(P2007−503233)
【出願日】平成17年3月5日(2005.3.5)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002334
【国際公開番号】WO2005/092942
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】