説明

化粧シート、化粧シートの着色層用水性樹脂および化粧シートの着色層用水系塗工液

【課題】VOCの残存量を極力減少させて環境安全性をより向上させ、さらに層間密着性に優れた化粧シート等を提供する。
【解決手段】少なくとも、基材2、着色層11、接着層5、透明樹脂層6をこの順で積層した化粧シート1であって、着色層11が、アクリル複合型ウレタンエマルションを含有する水系塗工液で形成される化粧シート1により上記課題を解決する。アクリル複合型ウレタンエマルションが、少なくとも(A)イソホロンジイソシアネート、(B)3−メチル−1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールを構成成分として有するポリカーボネートポリオール、及び(C)分子中に2個以上の水酸基と1個以上のカルボキシル基を有する化合物から構成されるウレタン樹脂と、メタクリル酸エチルから構成されるアクリル樹脂とから構成されることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シート、これに用いられる着色層用水性樹脂および着色層用水系塗工液の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
建築物の内装、建具の表面化粧、車両の内装等に用いられる化粧シートとしては、基材、ベタ着色層および/または絵柄着色層からなる着色層、接着層および透明樹脂層を順次積層させた化粧シートが一般に知られている。
【0003】
こうした従来の化粧シートにおいては、例えば、特許文献1に記載のように、着色層(インキ層ともいわれる。)および接着層が、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤や、メチルエチルケトンや酢酸エチル等の脂肪族溶剤を含む溶剤系塗工液により形成されている。
【0004】
ところで、そうしたトルエン、キシレン等の芳香族溶剤や、メチルエチルケトンや酢酸エチル等の脂肪族溶剤は、有機性揮発物質(以下、VOCという。)であり、近年その使用の低減が要請されている。特に、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤は、PRTR法の指定化学物質、および、室内空気中化学物質の指針値策定物質として挙げられており、「芳香族溶剤は使用しない、その他の溶剤も使用を減少しよう。」という強い要請がある。
【0005】
特に、化粧シートの製造においては、溶剤系塗工液に含まれるVOCが揮発することによる作業環境上の不都合や、化粧シート中に残存したVOCが一般の生活空間に供給されることによる環境安全性上の不都合等がある。こうした不都合に対して、VOCの使用を減少させるべく種々の手段が提案されている。例えば、特許文献2には、VOC含有量を極力減少させた水系塗工液で着色層や接着層を形成した化粧シートが開示されている。
【0006】
こうした水系塗工液で着色層や接着層を形成してなる従来の化粧シートは、VOCの揮発量や残存量をより減少させることができるので、上述した環境上の不都合を解決するのに有効である。
【特許文献1】特開平11−198309号公報
【特許文献2】特開2001−62970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、こうした従来の化粧シートは、化粧シートを構成する基材シートと透明樹脂層との層間密着性に劣るものが多く、必ずしも十分な層間密着性、特に耐候性試験後の層間密着性を有しているとは言い得ないものであった。
【0008】
本発明は、上述の不都合を解決すべくなされたものであって、その目的は、VOCの残存量を極力減少させて環境安全性をより向上させ、さらに層間密着性に優れた化粧シートおよびこうした化粧シートの着色層に好適に使用できる水性樹脂、水系塗工液を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の化粧シートは、少なくとも、基材、着色層、接着層、透明樹脂層をこの順で積層した化粧シートであって、前記着色層が、アクリル複合型ウレタンエマルションを含有する水系塗工液で形成され、前記アクリル複合型ウレタンエマルションが、少なくとも(A)イソホロンジイソシアネート、(B)3−メチル−1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールを構成成分として有し、3−メチル−1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとのモル比が95:5〜75:25の範囲のポリカーボネートポリオール、及び(C)分子中に2個以上の水酸基と1個以上のカルボキシル基を有する一般式(1)で表される化合物から構成されるウレタン樹脂と、メタクリル酸エチルから構成されるアクリル樹脂とから構成され、ウレタン樹脂:アクリル樹脂の重量比が40:60〜60:40の範囲であることに特徴を有する。
【化1】

【0010】
また、アクリル樹脂の推定ガラス転移温度が40〜80℃であり、このアクリル複合型ウレタンエマルションは、アクリル樹脂組成のまわりにウレタン樹脂組成が位置した構造となっており、ウレタン樹脂組成の重量平均分子量が40,000〜100,000であることが好ましい。
【0011】
この発明によれば、着色層を形成するのに水系塗工液を使用するので、従来のような溶剤系塗工液に起因するVOCの発生が抑制され、作業環境におけるVOCの揮発量および化粧シート中のVOC残存量を減少させることができ、その結果、化粧シートの環境安全性をより向上させることができる。また、その水系塗工液にはアクリル複合型ウレタンエマルションが含有されるので、アクリル複合型ウレタンエマルションはウレタン樹脂の特徴である基材シートへの初期密着性と、アクリル樹脂の特徴である高耐候性を併せ持つため、製造された化粧シートは耐候性試験後の層間密着性に優れたものとなる。
【0012】
なお、上述した本発明の化粧シートの具体的な構成として、基材をポリオレフィン系エラストマーを主成分とする材料で形成したり、透明樹脂層をポリオレフィン系樹脂を主成分とする材料で形成したり、透明樹脂層の表面側に凹凸模様を形成したり、その凹凸模様の凹陥部に部分着色層を形成したり、透明樹脂層の表面に保護層を設けたり、基材の裏面にプライマー層を設けたりすることができる。
【0013】
上記課題を解決する本発明の化粧シートの着色層用水性樹脂は、アクリル複合型ウレタンエマルションであって、少なくとも(A)イソホロンジイソシアネート、(B)3−メチル−1,5−ペンタンジオールを構成成分として有し3−メチル−1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとのモル比率が95:5〜75:25の範囲であるポリカーボネートポリオール、及び(C)分子中に2個以上の水酸基と1個以上のカルボキシル基を有する一般式(1)で表される化合物から構成されるウレタン樹脂と、メタクリル酸エチルを構成成分として有するアクリル樹脂とから構成され、アクリル樹脂組成の表面にウレタン樹脂組成が位置した構造となっており、ウレタン樹脂:アクリル樹脂の重量比が40:60〜60:40の範囲であり、アクリル組成の推定ガラス転移温度が40〜80℃、ウレタン樹脂組成の重量平均分子量が40,000〜100,000であることに特徴を有する。
【化2】

【0014】
また、上記課題を解決する本発明の化粧シートの着色層用水系塗工液は、上記化粧シートの着色層用水性樹脂を含有することに特徴を有する。これらの発明によれば、溶剤系塗工液に起因する上記VOCの不都合を解決し、環境安全性が高く、耐候性試験後の層間密着性に優れた化粧シートの着色層を形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、アクリル複合型ウレタンエマルションを含有する水系塗工液によって着色層が形成されているので、基材と着色層間、着色層と接着層間の密着性が優れた化粧シートが提供される。さらに、本発明の化粧シートによれば、水系塗工液によって着色層が形成されているので、化粧シートの作業環境中のVOCの揮発量および化粧シート中のVOC残存量を極力減少させることができる。その結果、環境安全性をより向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の化粧シートについて、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1は、本発明の化粧シート1の層構成の一例を示す断面図である。図1に示す本発明の化粧シート1は、基材2、ベタ着色層3、絵柄着色層4、接着層5、透明樹脂層6、凹凸模様7、部分着色層8、保護層9が順次積層された形態である。また、基材2の裏面にはプライマー層10が形成されている。
【0018】
(基材)
基材2は、化粧シート1における必須の構成であり、下記に示す各種のオレフィン系樹脂を好ましく適用できる。基材2には、ポリオレフィン系エラストマーを主成分としてなる材料を用いることが好ましく、材料にポリオレフィン系エラストマー以外の成分が含まれている場合には、ポリオレフィン系エラストマーが最も多い割合で含まれている。例えば、(イ)ハードセグメントとしての高密度ポリエチレンまたはポリプロピレンと、ソフトセグメントとしてのエラストマーまたは無機充填剤とを有する混合物、(ロ)特開平9−111055号公報、特開平5−77371号公報、特開平7−316358号公報等に記載されているエチレン−プロピレン−ブテン共重合体、(ハ)特公平6−23278号公報に記載されているハードセグメントとしてのアイソタクチックポリプロピレンとソフトセグメントとしてのアタクチックポリプロピレンとの混合物、等を用いることができる。
【0019】
前記(イ)のハードセグメントとしての高密度ポリエチレンとしては、好ましくは、比重が0.94〜0.96のポリエチレンであって、低圧法で得られる結晶化度が高く、分子に枝分かれ構造の少ない高分子である高密度ポリエチレンが用いられる。また、ハードセグメントとしてのポリプロピレンとしては、好ましくは、アイソタクチックポリプロピレンが用いられる。
【0020】
前記(イ)のソフトセグメントとしてのエラストマーとしては、ジエン系ゴム、水素添加ジエン系ゴム、オレフィンエラストマー等が用いられる。水素添加ジエン系ゴムは、ジエン系ゴム分子の二重結合の少なくとも一部分に水素原子を付加させてなるものであり、ポリオレフィン系樹脂の結晶化を抑えて、その柔軟性を向上させたものである。ジエン系ゴムとしては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、プロピレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム等が挙げられる。オレフィンエラストマーとしては、2種類または3種類以上のオレフィンと共重合しうるポリエンを少なくとも1種類加えた弾性共重合体であり、オレフィンとしてはエチレン、プロピレン、α−オレフィン等が使用され、ポリエンとしては、1,4ヘキサジエン、環状ジエン、ノルボルネン等が使用される。好ましいオレフィンエラストマーとしては、例えばエチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエンゴム、エチレン−ブタジエン共重合体ゴム等のオレフィンを主成分とする弾性共重合体が挙げられる。なお、これらのエラストマーは、必要に応じて有機過酸化物、硫黄等の架橋剤を用いて、過重架橋させてもよい。
【0021】
これらエラストマーの添加量としては、10〜60重量%、好ましくは30重量%程度である。エラストマーの添加量が10重量%未満では、一定荷重伸度の変化が急峻になり過ぎ、また、破断時伸度、耐衝撃性、易接着性の低下が生じる。エラストマーの添加量が60重量%より高いと、透明性、耐候性および耐クリープ性の低下が生ずる。
【0022】
前記(イ)の無機充填剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク等の平均粒径0.1〜10μm程度の粉末が用いられる。添加量としては、1〜60重量%、好ましくは5〜30重量%である。無機充填剤の添加量が1重量%未満では、耐クリープ変形性および易接着性の低下が生じる。また、無機充填剤の添加量が60重量%を超えると、破断時伸度および耐衝撃性の低下が生じる。
【0023】
前記(ロ)のオレフィン系樹脂としては、エチレン・プロピレン・ブテン共重合体樹脂からなる熱可塑性エラストマーが用いられる。ここで、ブテンとしては、1ブテン、2ブテン、イソブチレンの3種の構造異性体のいずれも用いることができる。共重合体としては、ランダム共重合体であって、非晶質の部分を一部含む。
【0024】
上記エチレン・プロピレン・ブテン共重合体樹脂の好ましい具体例としては、次の(a)〜(c)が挙げられる。
【0025】
(a)特開平9−111055号公報に記載されるエチレン、プロピレンおよびブテンの3元共重合体によるランダム共重合体。このランダム共重合体においては、プロピレン成分の重量比率が90重量%以上であることが好ましく、メルトフローレートが、230°C、2.16kgの条件下で1〜50g/10分であることが好ましい。このようなランダム共重合体は、ランダム共重合体100重量部に対し、燐酸アリールエステル化合物を主成分とする透明造核剤を0.01〜50重量部、炭素数12〜22の脂肪酸アミドを0.003〜0.3重量部、を溶融混練してなるものである。
【0026】
(b)特開平5−77371号公報に記載されるエチレン、プロピレンおよびブテンの3元共重合体。この共重合体は、プロピレン成分の重量比率が50重量%以上の非晶質重合体20〜100重量%に、結晶質ポリプロピレンを80〜0重量%添加してなるものである。
【0027】
(c)特開平7−316358号公報に記載されるエチレン、プロピレン、1ブテンの3元共重合体。この共重合体は、プロピレンおよび/または1ブテンの含有率が50重量%以上の低結晶質重合体20〜100重量%に、アイソタクチックポリプロピレン等の結晶性ポリオレフィン80〜0重量%を混合した組成物に対して、Nアシルアミノ酸アミン塩、Nアシルアミノ酸エステル等の油ゲル化剤を0.5重量%添加したものである。
【0028】
上記(a)〜(c)のエチレン・プロピレン・ブテン共重合体樹脂は、単独で用いてもよいし、必要に応じてさらに他のポリオレフィン樹脂を混合して用いてもよい。
【0029】
前記(ハ)のオレフィン系樹脂としては、特公平6−23278号公報に記載のように、(A)ソフトセグメントとして、数平均分子量Mnが25000以上で、且つ重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mn≦7の沸騰ヘプタンに可溶なアタクチックポリプロピレン10〜90重量%と、(B)ハードセグメントとして、メルトインデックスが0.1〜4g/10分の沸騰ヘプタン不溶性のアイソタクチックポリプロピレン90〜10重量%との混合物からなる軟質ポリプロピレンが挙げられる。
【0030】
上記(ハ)のオレフィン系熱可塑性エラストマーの中でも、アイソタクチックポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンの混合物からなり、且つアタクチックポリプロピレンの重量比率が5〜50重量%のものが好ましく用いられ、アタクチックポリプロピレンの重量比率が20〜40重量%のものが特に好ましく用いられる。アタクチックポリプロピレンの重量比率が5重量%未満では、エンボス加工をする際や3次元形状や凹凸形状の物品に成形加工する際に、ネッキングによる不均一なシート状基材の変形が生じたり、その結果としての皺、絵柄の歪み等が生ずる。一方、アタクチックポリプロピレンの重量比率が50重量%を超えると、シート状の基材自体が変形し易くなり、基材を印刷機に通した時に基材が変形し、着色層11の絵柄が歪んだり、多色刷の場合に見当が合わなくなる等の不良が発生しやすくなると共に、成形時においてはシートが破れ易くなる。
【0031】
基材2を形成する上述のオレフィン系樹脂中には、必要に応じて、着色剤、熱安定剤、難燃剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤等が添加される。
【0032】
着色剤としては、チタン白、亜鉛華、べんがら、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラック等の無機顔料、イソインドリノン、ハンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー等の有機顔料または染料、アルミニウム、真鍮等の箔粉からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸亜鉛等の箔粉からなる真珠光沢顔料等が用いられる。また、必要に応じて、無機充填剤を5〜60重量%の割合で添加してもよい。無機充填剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、シリカ(二酸化ケイ素)、アルミナ(酸化アルミニウム)等の粉末等が挙げられる。着色剤は、基材2に化粧シート1として必要な色彩を持たせるために添加され、透明着色と不透明(隠蔽)着色のいずれでも構わないが、一般的には被着体15を隠蔽するために不透明着色が好ましい。
【0033】
熱安定剤としては、フェノール系、サルファイト系、フェニルアルカン系、フィスファイト系、アミン系等の公知のものが使用でき、熱加工時の熱変色等の劣化の防止の向上が図られる。難燃剤は、難燃性を付与する場合に添加され、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの粉末が用いられる。紫外線吸収剤は、樹脂により良好な耐候性(耐光性)を付与するためのものであり、ベンゾトリアソール、ベンゾフェノン、サリチル酸エステル等の有機物、または、0.2μm径以下の微粒子状の酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化チタン等の無機物が用いられる。その他に、ベンゾトリアゾール骨格にアクリロイル基またはメタクリロイル基を導入した反応型紫外線吸収剤も用いられる。なお、これらの紫外線吸収剤の添加量は、通常0.5〜10重量%程度である。ラジカル捕捉剤は、紫外線による劣化を更に防止し、耐候性を向上させるためのものであり、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ビペリジニル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ビペリジニル)セバケート、その他、例えば特公平4−82625号公報に開示されている化合物等のヒンダード系ラジカル捕捉剤、ビペリジニル系ラジカル捕捉剤等が使用される。
【0034】
基材2は、上述した材料を任意に選択してブレンドしたものをカレンダー加工等の常用の方法により製膜して得ることができる。基材2の厚みは10〜200μm、好ましくは50〜100μm程度である。
【0035】
化粧シート1の表面側(透明樹脂層6側)における基材2の表面には、易接着層の塗布、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の易接着処理を施すことが好ましい。易接着層(プライマー層またはアンカー層ともいう。)を構成する樹脂としては、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩化ポリエチレンが挙げられる。
【0036】
なお、上述したポリオレフィン系樹脂からなる基材2の他に、ポリエステルやビニロン等の有機樹脂等を用いた織布または不織布、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル等のアクリル樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、三酢酸セルロース、セロハン、ポリカーボネート等の樹脂からなるシートまたはフィルムを基材2として用いることも可能である。また、薄葉紙、クラフト紙、チタン紙、リンター紙、板紙、石膏ボード紙、上質紙、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙等の紙、あるいは、そうした紙にポリ塩化ビニルをゾル塗工またはドライラミネートしたいわゆるビニル壁紙原反を用いることもできる。また、硝子繊維、石綿、チタン酸カリウム繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭素繊維等の無機質繊維からなるシートまたはフィルムを基材2として用いることも可能である。また、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼、銅等の金属箔等を用いることもできる。さらに、こうした各基材材料を複数積層させたものを、基材2として用いることも可能である。
【0037】
(着色層)
着色層11は、化粧シート1における必須の層であり、ベタ着色層3および/または絵柄着色層4から構成される。
【0038】
ベタ着色層3は、図1に示すように、基材2の地肌の隠蔽および基材との密着性向上等の目的で設けられ、通常は模様のない全ベタ状の着色層として形成される。一方、絵柄着色層4は、図形、文字、記号、色彩、それらの組み合わせ等により、木目模様、石目模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形等からなる模様ないし色彩を有し、ベタ着色層3上に、平面状、凹凸状、凸状(図1を参照。)の層として形成される。また、絵柄着色層4は、着色層11を形成したものを一時的にロール状態で保存する場合には基材2裏面側と着色層11とのブロッキングを防止する等の機能も有するものとする。なお、絵柄着色層4がベタ着色層3の作用を兼ねる場合もあり、この場合には絵柄着色層4がベタ着色層3となる。こうして形成されたベタ着色層3および/または絵柄着色層4は、基材2表面の全面に設けても部分的に設けても何れでもよい。また、着色層11は、図1に示すように、基材2の表面全面に設けたベタ着色層3と、そのベタ着色層3の表面に部分的に設けた絵柄着色層4とから構成することもできる。
【0039】
着色層11は、アクリル複合型ウレタンエマルションを含有する本発明の化粧シートの着色層用水系塗工液によって形成される。すなわち、こうした水系塗工液を用い、基材2上に塗布し、乾燥させることによって、ベタ着色層3および/または絵柄着色層4からなる着色層11が形成される。こうして形成された着色層11は、従来のようなVOCの発生が抑えられ、化粧シートの環境安全性をより向上させることに寄与できる。さらに、この水系塗工液で着色層11を形成することにより、化粧シートの層間密着性が向上し、耐候性密着性、耐煮沸水性も良好であるという当初想像できなかった他の効果もあった。なお、以下において、ベタ着色層3を形成する水系塗工液をベタ着色層用の水系塗工液といい、絵柄着色層4を形成する水系塗工液を絵柄着色層用の水系塗工液といい、これらの水系塗工液を総称して着色層用の水系塗工液ということがある。
【0040】
ベタ着色層用の水系塗工液の基本的な構成は、バインダー成分として水性樹脂であるアクリル複合型ウレタンエマルションを含有し、架橋剤として水分散系イソシアネートを含有し、着色剤として顔料を含有し、さらに溶媒として水または水とアルコール等との混合物を含有するものである。絵柄着色層用の水系塗工液の基本的な構成は、バインダー成分として水性樹脂であるアクリル複合型ウレタンエマルションを含有し、着色剤として顔料を含有し、さらに溶媒として水または水とアルコール等との混合物を含有するものである。なお、絵柄着色層用の水系塗工液には、架橋剤として水分散系イソシアネートを含有させてもよい。
【0041】
(1) アクリル複合型ウレタンエマルション
水性樹脂であるアクリル複合型ウレタンエマルションは、バインダー成分として着色層用の水系塗工液に含まれている。アクリル複合型ウレタンエマルションは、ウレタン樹脂組成とアクリル樹脂組成とが、所定の構成比率で配合されてなる樹脂である。そして、図6に示されるように、アクリル複合型ウレタンエマルション60は、アクリル組成62のまわりにウレタン組成61が位置した構造、言い換えると、ウレタン組成の部分61(以下、ウレタン部ともいう。)を外側に、アクリル組成の部分62(以下、アクリル部ともいう。)を内側にしたコアシェル構造となっている。なお、コアシェル構造とは、具体的には同一ミセル内に異なる樹脂組成の成分が存在し、中心部分(コア)と外殻部分(シェル)とで異なる樹脂組成とからなっている構造をいう。コアシェル構造は、ルテニウム染色による透過型電子顕微鏡観察で分析可能である。こうした水性樹脂を化粧シートの着色層用水系塗工液に用いることにより、溶媒である水との親和性が増し、水系塗工液の安定性が優れるという利点がある。
【0042】
アクリル複合型ウレタンエマルションのウレタン樹脂組成とアクリル樹脂組成との構成重量比率は、ウレタン樹脂:アクリル樹脂=60:40〜40:60とすることが好ましく、さらに好ましくは50:50〜60:50である。構成重量比率は、GPC法による面積比によって測定可能である。エマルション中のウレタン樹脂組成比率を40以下にすると、ウレタン樹脂組成中に導入する親水基量が高くなり、耐水性が低下する。また、現段階ではウレタン樹脂組成比率を60以上にした場合には、転相時の粘度が非常に高くなり転相中に凝集物等が生成する。この範囲のなかで本来層間密着力に寄与しないアクリル成分よりもウレタン成分を高めることにより、化粧シートの層間密着性を向上させるという効果がある。
【0043】
アクリル複合型ウレタンエマルションのウレタン樹脂の重量平均分子量は、40,000〜100,000程度とされ、この範囲内でより小さい方が好ましい。このような分子量とすることにより、化粧シートの着色層を形成したときの層間密着性を向上させることができる。ウレタン樹脂の分子量が40,000以下ではウレタン樹脂の凝集力が低下するために、密着力が低下し、100,000以上ではウレタン樹脂の凝集力が高くなりすぎて密着性が低下するものと出願時点では考えられている。
【0044】
次に、ウレタン部について説明する。アクリル複合型ウレタンエマルションのウレタン部は、以下に説明する所定の組成、所定の重量平均分子量で構成されており、アクリル複合型ウレタンエマルションの外側に配置されて水性樹脂を水系塗工液の溶媒中に分散させる乳化剤の役割を果たす。また、化粧シート1の着色層11を形成する際に、架橋剤と反応して基材2との接着性を向上させ、層間密着性を向上させる。その他にも、着色層の凝集力を向上や耐水性を向上させる役割がある。
【0045】
アクリル複合型ウレタンエマルションのウレタン部は、(A)イソホロンジイソシアネート、(B)3−メチル−1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールを必須構成成分として有し、3−メチル−1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとのモル比率が95/5〜75/25であるポリカーボネートポリオール、(C)下記一般式(1)の化合物とを必須成分としてなるウレタン樹脂で示される。
【化3】

【0046】
また、アクリル複合型ウレタンエマルションのウレタン部のみに、親水基を導入した構成となっており、該親水基はウレタン数分子量1500〜2000に対して1官能基量導入をすることが好ましい。1親水基量当たりのウレタン数分子量が小さすぎると、親水基量が多すぎるために、親水性が高まりすぎて製造上乳化を行うことが難しくなる。1親水基量当たりのウレタン数分子量が多すぎると、エマルション中に含有される親水基量が少なすぎて、エマルションが生成されなかったり、凝集物が発生する可能性がある。
【0047】
親水基の量をこうした範囲内とすることにより、アクリル複合型ウレタンエマルションを使用した水性インキの保存安定性を向上させるという作用があり、また、インキとしての安定性が低下しない程度に親水基量を少なくすることで形成した化粧シートの層間密着性を向上させることができるという効果がある。親水基としては、例えば、カルボキシル基の3級アミン中和物等が挙げられる。
【0048】
親水基の量をこの範囲内とすることにより、水性樹脂と疎水性である基材2との相性が増し、層間密着性を向上させることができる。すなわち、上述した基材2としてポリプロピレンを用いた場合において、基材の表面は、コロナ処理されることにより親水基が導入されて、水性樹脂との相性を高めているが、処理から時間が経つと、導入された親水基がポリプロピレンの表面から内部にもぐることにより失活して、基材表面は疎水性に戻ると考えられる。そのため、水性樹脂の親水基の量を減らすことにより水性樹脂の疎水性を向上させて、水性樹脂と基材2との相性が良好となり、化粧シートの層間密着性が向上するものと、出願時点においては考えられている。なお、基材2としてポリエチレンを用いる場合には、親水基が失活することはない。
【0049】
アクリル複合型ウレタンエマルションのウレタン部には、上述の親水基の他、例えばスルホン酸−ナトリウム塩等の官能基を備えた組成とすることができる。こうした官能基は、親水性が非常に高いために水性インキが乾燥した場合に塗膜の再溶解性を向上するために備えられる。
【0050】
また、ウレタン組成の部分(ウレタン部)の分子量は40,000〜100,000程度である。こうした分子量とすることにより、形成した化粧シートの層間密着性が増すという作用がある。
【0051】
次に、アクリル部について説明する。アクリル複合型ウレタンエマルションのアクリル部は、以下に説明する所定の組成、所定の推定ガラス転移温度(以下、推定ガラス転移温度をTgという。)で構成されており、アクリル複合型ウレタンエマルションの内側に配置されて、化粧シートの着色層を形成した後の層間密着性を向上させる。その他にも、耐候性を向上させる役割がある。
【0052】
アクリル複合型ウレタンエマルションのアクリル部は、メタクリル酸エチル(エチルメタクリレート)を主体とするアクリル組成で示される。こうした組成により、乾燥時の温度に於いて軟質化し増膜性が良好になり、尚かつ耐候密着性が良好になるという作用がある。
【0053】
また、(メタ)アクリル部のTgは、40〜80℃程度である。このようなTGの範囲にあることで印刷時の加熱によりアクリル複合エマルションがゴム状態となり、基材との濡れ性が良好となり、冷却時にはガラス状態となる作用があるので、水系塗工液により化粧シートに形成された着色層の、基材との密着性を向上させることができるという効果がある。
【0054】
(メタ)アクリル部のTgがこうした範囲内にある場合において、(メタ)アクリル複合型ウレタンエマルションの(メタ)アクリル部をさらに軟質化させることが好ましい。(メタ)アクリル部を軟質化させるには、アクリルのTgを低い方にシフトさせればよく、例えば、Tgを40〜60℃程度にすることが好ましい。こうした範囲内とすることにより、水性樹脂のアクリルによるべとつき感が増し、水系塗工液のタック感が増して、形成された着色層の基材への密着力が高まるので、化粧シートの層間密着性が向上すると考えられる。なお、アクリル部のTgは使用するモノマーのそれぞれのホモポリマーのTgを含有比率により加算した値である。
【0055】
上述したアクリル複合型ウレタンエマルションにおいて、その平均粒径は50〜200μm程度である。ここで、平均粒径は光干渉型の粒径測定装置で粒径分布を測定し、頻度50%の粒径を意味する。本出願時点では、本出願の(メタ)アクリル複合型ウレタンエマルションでは50μm以下の粒径のエマルションは製造することが困難であり、200μm以上では、エマルションとして不安定であり、場合によっては凝集物が生成する可能性がある。
【0056】
アクリル複合型ウレタンエマルションには、乳化された耐候安定剤を添加しても構わない。本出願のアクリル複合型エマルションの耐候性は十分に高いものの、要求性能によっては紫外線吸収剤、酸化防止剤等の耐候安定剤を添加することにより、分子切断が抑えられ耐候性がより長くなる効果がある。
【0057】
以上説明したように、化粧シートの着色層用水性樹脂であるアクリル複合型ウレタンエマルションが、所定のウレタン組成と所定のアクリル組成とから構成され、ウレタン:アクリルが所定の構成比率で配合されてなることにより、層間密着性の向上された化粧シートを提供することができる。なお、こうしたアクリル複合型ウレタンエマルションのうち、上述した所定のアクリルTg、所定のウレタン分子量であるものが、好ましく化粧シートの着色層用水系塗工液に用いられる。
【0058】
化粧シートの着色層用水系塗工液に用いられるアクリル複合型ウレタンエマルションの代表的な製造方法を以下に示すが、従来既知の方法で製造されたアクリル複合型ウレタンエマルションも使用可能である。
【0059】
まずイソシアネート基に対し非反応性のアクリルモノマー中で(A)有機ポリイソシアネートと(B)ポリオール及び(C)活性水素基とイオン基形成を含有する化合物を反応させイソシアネート基末端のウレタンプレポリマーを生成させる。通常、有機ポリイソシアネートのNCO基と、ポリオール及びイオン基形成化合物を合わせた活性水素基の比率はモル比で1.1:1〜3.0:1の範囲でNCO基を過剰とする。プレポリマー化反応は通常50〜100℃で行うが、後述のアクリルモノマーの熱による重合を防ぐため空気の存在下で、p−メトキシフェノール等の重合禁止剤をモノマーに対して20〜3000ppm程度の範囲で加えておくことが好ましい。また、この際、ウレタン化反応の触媒としてジブチルチンジラウレート、ジブチルチンジオクトエート、スタナスオクトエート等の有機スズ化合物やトリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の3級アミン化合物等を使用しても良い。このようにしてイソシアネート基末端のウレタンプレポリマーのアクリルモノマー溶液が得られる。
【0060】
本発明において使用する有機ポリイソシアネートとしては、(A)イソホロンジイソシアネート(IPDI)を必須成分とする。その他、性能上問題ない範囲で2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)及びこれと2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)の混合物、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が混合することも可能である。また、必要に応じ上記TDI、HMDI、IPDI等の3量体、或いはトリメチロールプロパン等との反応物である多官能性イソシアネートを少量併用することも可能である。
【0061】
本発明において使用するポリオールとしては、(B)3−メチル−1,5−ペンタンジオールを必須成分とし、好ましくは更に1,6−ヘキサンジオールを含有するポリカーボネートポリオールであり、3−メチル−1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとがモル比で95:5〜75:25の範囲であるポリカーボネートポリオールが好ましい。その他、性能上問題ない範囲で、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオール等を混合することも可能である。
【0062】
前記ポリオールの数平均分子量は通常、1000〜3000、さらに好ましくは1500〜2500である。この分子量が小さすぎるとポリオールとしての機能が発揮されず、大きすぎると得られたウレタンプレポリマーの粘度が高くなり水分散時に凝集物の発生や、分散不良を引き起こしたり、親水基量が低下するために水分散が不良になる傾向がある。
【0063】
また、本発明において使用する活性水素基とイオン基形成を含有する化合物としては、(C)分子中に2個以上の水酸基と1個以上のカルボキシル基を有する一般式(1)で表される化合物を必須成分とする。この一般式(1)で示される化合物は、ウレタン樹脂中でイオン形成基として作用する。カルボキシル基を含有するものとして例えばジメチロールプロピオン酸が挙げられる。
【0064】
又、(C)に加えて、ジメチロール酢酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールヘプタン酸、ジメチロールノナン酸、1−カルボキシ−1,5−ペンチレンジアミン、ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸等のアルカノールカルボン酸類、ポリオキシプロピレントリオールと無水マレイン酸や無水フタル酸とのハーフエステル化合物等、スルホン酸アルカリ金属塩基、例えば2−スルホ−1,4−ブタンジオールナトリウム塩、5−スルホ−ジ−β−ヒドロキシエチルイソフタレートナトリウム塩、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノエチルスルホン酸テトラメチルアンモニウム塩、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノエチルスルホン酸テトラエチルアンモニウム塩、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノエチルスルホン酸ベンジルトリエチルアンモニウム塩等を併用することも可能である。
【0065】
カルボキシル基を含有する化合物を使用した場合、カルボキシル基塩を形成し親水性化するために中和剤としてトリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、ジメチルアミノエタノール等のアミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物を用いる。カルボキシル基に対する中和率は通常50〜100モル%である。中和剤としては、塩基性や耐水性向上の観点から、トリエチルアミンが好ましい。
【0066】
本発明中のイソシアネート基に対し非反応性の(メタ)アクリルモノマーとしては、メタクリル酸エチルを必須成分とする。その他、性能上問題ない範囲で水酸基、カルボキシル基、シラノール基、アミノ基、グリシジル基等を含有しないアクリルモノマーも使用可能である。例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸エトキシブチル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド/テトラヒドロフラン共重合体の(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体の(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル等が挙げられ、アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−ビニルホルムアミド等のアミド基を有するもの、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート等の三級アミノ基を有するモノマー、N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール等の窒素を含有するモノマー、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等の脂環式モノマー、また、スチレン、α−メチルスチレン、メタクリル酸フェニル等の芳香族系モノマー、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の含珪素モノマー、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の含フッ素モノマー等が挙げられる。その他、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリアクリレート等が挙げられる。
【0067】
ウレタンプレポリマーのアクリルモノマー溶液にアクリルモノマーを追加する場合、追加時期は特に限定されず、後述のウレタンプレポリマーの中和工程の前または後の任意の時期に添加することができる。また、中和したウレタンプレポリマーを水に分散させた後、この分散液にアクリルモノマーを添加しても良い。
【0068】
ウレタンプレポリマーのアクリルモノマー溶液を水に分散するためには、前記のイオン基形成化合物をウレタンプレポリマー分子鎖に組み込んで、必要に応じイオン基形成に必要な前記中和剤を加え、ウレタンプレポリマーに自己乳化性を付与する。イオン基の含有量は、好ましくはイオン基1個に対しウレタン数分子量1500〜2000の範囲である。イオン基1個に対するウレタン数分子量が小さすぎると得られる樹脂の皮膜物性や耐水性が悪くなる傾向がある。また、大きすぎるとウレタンプレポリマーの自己乳化性が不足し分散粒子の平均粒子径が大きくなり分散安定性が悪くなるばかりでなく、緻密な皮膜が形成しにくい。
【0069】
また、該ウレタンプレポリマー溶液を水に分散する際、ポリオキシアルキレン基含有アクリルモノマーを添加することによって、水への分散が良好となり尚かつ均一でより安定な分散液が得られる。ポリオキシアルキレン基含有アクリルモノマーとは、末端がヒドロキシ基、又は炭素数1〜3のアルキレンオキシ基であり、ポリオキシアルキレン基がポリオキシエチレン基、又はポリオキシプロピレン基であるアクリルモノマーである。
【0070】
また、本発明においては、塗膜の耐水性や基材への密着性の点から界面活性剤を使用しないことが好ましいが、ウレタンプレポリマーのアクリルモノマー溶液の水分散液の安定性、あるいはそれを重合する際の安定性を増すため少量の界面活性剤の併用も可能である。界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、アルキルスルフォコハク酸塩等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエステル等のノニオン性界面活性剤がある。また、反応性活性剤を併用しても良い。
【0071】
ウレタンプレポリマーのアクリルモノマー溶液を水に分散する方法としては、通常の撹拌機による分散で可能であるが、より粒子径の細かい均一な水分散体を得るためにはホモミキサー、ホモジナイザー、ディスパー、ラインミキサー等を使用しても良い。このようにしてウレタンプレポリマーのアクリルモノマー溶液の水分散液を得た後、これに重合開始剤を添加して温度を上昇させてアクリルモノマーの重合温度の範囲内でウレタンプレポリマーの水による鎖延長を行うと共に、アクリルモノマーの重合を行ない、ウレタン樹脂とアクリル樹脂からなるアクリル複合型ウレタンエマルションが得られる。ウレタン樹脂は自己乳化基を有しており、アクリル樹脂はそれに対して非水性である。さらに、ウレタン樹脂とアクリル樹脂は非相溶であるので、コアシェル構造を有するアクリル複合型ウレタンエマルションとなる。
【0072】
また、必要に応じてウレタンプレポリマーの鎖延長の際に水以外の鎖延長剤を添加してウレタンプレポリマーと鎖延長剤とを反応させても良い。鎖延長剤としては、活性水素を有する公知の鎖延長剤を用いることができ、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、シクロヘキシルメタンジアミン、イソホロンジアミン等のジアミン類、ヒドラジン等が挙げられる。
【0073】
該水分散液の重合には公知のラジカル重合が適用できる。重合開始剤は水溶性開始剤、油溶性開始剤共に使用可能であり、油溶性開始剤を使用する場合はウレタンプレポリマーのアクリルモノマー溶液に添加しておくことが好ましい。これら重合開始剤は、通常アクリルモノマーに対して0.05〜5重量%の範囲で用いられ、重合温度は20〜100℃が好ましい。レドックス系開始剤の場合は75℃以下で十分である。重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソブチルバレロニトリル、等のアゾ化合物、過酸化ベンゾイル、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、クミルパーオキシオクテート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、ラウリルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジンカーボネイト等の有機過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の無機パーオキサイド化合物がある。有機または無機パーオキサイド化合物は、還元剤と組み合わせてレドックス系開始剤として使用することも可能である。還元剤としては、L−アスコルビン酸、L−ソルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、ロンガリット等が挙げられる。
【0074】
重合開始剤の添加に際しては、始めに全量を一括仕込みする方法、全量を時間をかけて滴下する方法、始めに一部分仕込んで残りを後から追加する方法のいずれでも良い。また、重合を押し切り残存モノマーを減らすために重合の途中、或いは一旦重合を終えた後に重合開始剤を追加して重合を加えることもできる。この際、重合開始剤の組み合わせは任意に選ぶことができる。アクリルモノマーの重合における分子量を調節する目的で公知の連鎖移動剤、例えばオクチルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、ターシャルドデシルメルカプタン、チオグリコール酸等の使用も可能である。
【0075】
本発明のアクリル複合型ウレタンエマルションからなる着色層用水製樹脂の不揮発分は20〜50重量%が好ましく、より好ましくは30〜40重量%である。不揮発分が多すぎると十分に乳化せず、少なすぎると着色層用水系塗工液とした場合の樹脂濃度が低くなりすぎて使用出来ない可能性がある。
【0076】
このような水性樹脂を用いた化粧シートの着色層用水系塗工液は、従来の水系塗工液に比べて、形成された着色層を含む化粧シートの層間密着性を向上させる点で、優れたものである。
【0077】
(2) 顔料
顔料は、着色剤としてベタ着色層/絵柄着色層用の水系塗工液に含まれている。こうした着色顔料には、有機または無機系の顔料を使用することができる。例えば、黄色顔料としては、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン、キノクサリンジオン等の有機顔料、黄鉛、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、チタンイエロー、アンチモン黄等の無機顔料を使用することができる。また、赤色顔料としては、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドン等の有機顔料、弁柄、朱、カドミウムレッド、クロムバーミリオン等の無機顔料を使用することができる。また、青色顔料としては、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー等の有機顔料、紺青、群青、コバルトブルー等の無機顔料を使用することができる。また、黒色顔料としては、アニリンブラック等の有機顔料、カーボンブラック等の無機顔料を使用することができる。また、白色顔料としては、二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモン等の無機顔料を使用することができる。また、シリカ等のフィラー、有機ビーズ等の体積顔料、中和剤、界面活性剤等を任意に含有させることができる。
【0078】
水性樹脂:顔料の配合割合は、特に限定されず、適切に塗工液を塗布できる範囲で適宜設定される。
【0079】
(3) 水分散系イソシアネート
水分散系イソシアネートは、架橋剤としてベタ着色層用の水系塗工液に含まれている。なお、上述のように、絵柄着色層用の水系塗工液に含まれていてもよい。水分散系イソシアネートとしては、水に自己乳化可能なものであれば特に制限はない。自己乳化型ポリイソシアネートは、たとえばポリイソシアネートにイソシアネート基と反応しうる活性水素基を少なくとも1個以上有する親水性基及び疎水性基を導入することにより得ることができる。親水性基だけでなく疎水性基を導入するのは、ポリイソシアネートを水中に分散した場合、その周りに存在している水分子と付近に存在する未反応のNCO基との反応を、立体障害的あるいはその親油性に基づいて界面化学的に抑制する効果を得るためである。疎水性基としては、たとえば、活性水素基を少なくとも1個以上有する高級アルコールや水酸基含有脂肪酸エステル等を挙げることができる。
【0080】
自己乳化型ポリイソシアネートに使用するポリイソシアネートとしては、たとえばフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどおよびこれら異性体からなる芳香族ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、2,4,4’−トリイソシアネートジフェニルエーテル、トリ(イソシアネートフェニル)メタンなどのトリイソシアネート類などを挙げることができる。また、ポリイソシアネートと活性水素基含有化合物との反応によるイソシアネート基末端化合物、あるいはこれら化合物の反応、例えばアダクト型ポリイソシアネートやウレトジオン化反応、イソシアヌレート化反応、カルボジイミド化反応、ウレトンイミン化反応、ビュレット化反応などによるイソシアネート変性体、およびこれらの混合物を挙げることができる。これらポリイソシアネートのうちで、水分散安定性、水分散後のイソシアネート基の安定性、無黄変性等の点から、脂肪族あるいは脂環式ポリイソシアネート、特にヘキサメチレンジイソシアネートが好ましく、この中でも耐熱性、架橋性等の点で平均NCO官能基数が2以上であるイソシアヌレート環含有ポリイソシアネートが好ましい。
【0081】
このようなイソシアヌレート環含有ポリイソシアネートは、たとえば、原料のポリイソシアネートを、第3級アミン類、アルキル置換エチレンイミン類、第3級アルキルフォスフィン類、アセチルアセン金属塩類、各種有機酸の金属塩類等の公知のウレトジオン化触媒及び/あるいはイソシアヌレート化触媒、さらに必要に応じ助触媒を用いて、溶剤の存在下又は不存在下で通常0〜90℃の反応温度で製造される。
【0082】
助触媒としては、例えばフェノール性ヒドロキシル基含有化合物、アルコール性ヒドロキシル基含有化合物等が挙げられる。溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族系、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル系等のイソシアネート基に対して不活性な溶剤が挙げられる。
【0083】
また反応停止剤により触媒を不活性化し反応を停止させることができる。反応停止剤としては、例えばリン酸、パラトルエンスルホン酸メチル、硫黄等を挙げることができる。
【0084】
自己乳化型ポリイソシアネートの親水性基としては、カチオン、アニオン等のイオン性基、ノニオン性基等が挙げられる。ポリイソシアネートにノニオン性基を導入するためのノニオン性化合物としては、ポリアルキレンエーテルアルコール、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0085】
ポリアルキレンエーテルアルコールの製造に開始剤として用いられる活性水素含有化合物としては、例えばメタノール、n−ブタノール、シクロヘキサノール、フェノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、アニリン、トリメチロールプロパン、グリセリンなどが挙げられる。これらのうち、水分散安定性の点から、低級アルコールを用いるのが好ましい。
【0086】
またポリオキシアルキレン脂肪酸エステルの製造に開始剤として用いられる脂肪酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸などが挙げられる。これらのうち、水分散安定性の点から低級脂肪酸を用いるのが好ましい。
【0087】
該ポリアルキレンエーテルアルコール、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルなどに存在するアルキレンオキサイド鎖は、一般には3〜90個であり、好ましくは5〜50個である。またアルキレンオキサイド鎖はすべてエチレンオキシド鎖で構成されたものでもよいが、全アルキレンオキサイド鎖中でエチレンオキシドユニットとプロピレンオキシドユニット等の他のアルキレンオキシドユニットとを併用したものでもよく、この場合ポリイソシアネートの水分散性を考慮すると少なくともエチレンオキサイドユニットを70%以上含むものが好ましい。
【0088】
ポリイソシアネートにイオン性基を導入するためのイオン性化合物としては、脂肪酸塩、スルホン酸塩、リン酸エステル、硫酸エステル塩等のアニオン性化合物、第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級アミン塩、第四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩等のカチオン性化合物、スルホベタイン等の両性化合物が挙げられる。
【0089】
ポリイソシアネートに疎水性基を導入するための高級アルコールとしては、例えば、オクチルアルコール、カプリルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、シンナミルアルコール等が挙げられる。
【0090】
ポリイソシアネートに疎水性基を導入するための脂肪酸エステルの原料としての脂肪酸としては、α−オキシプロピオン酸、オキシコハク酸、ジオキシコハク酸、ε−オキシプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、ヒドロキシ酢酸、α−ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸、リシノエライジン酸、リシノステアロール酸、サリチル酸、マンデル酸等を挙げることができ、ヒドロキシル基含有化合物としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ドデシルアルコール、ラウリルアルコール等が挙げられる。
【0091】
本発明の自己乳化型ポリイソシアネートは、公知の方法で一般には溶剤の不存在下で50〜130℃の中程度に高められた温度にて製造されるが、必要に応じてウレタン工業で常用の不活性溶剤、触媒等を使用することもできる。
【0092】
自己乳化型ポリイソシアネートは、親水性鎖を導入することにより水分散安定性を向上させることができ、さらに適度な長さの親油性鎖を親水性鎖とのバランスを考慮して導入することにより、水中でのイソシアネート基と水との反応を界面化学的に抑制することができる。
【0093】
自己乳化型ポリイソシアネートに、必要に応じて他の物質を混合することができる。例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐熱性向上剤、着色剤、無機および有機充填剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、補強材、触媒などを添加することができる。
【0094】
上記の自己乳化型ポリイソシアネートは、水と混合することにより、容易に水分散液とすることができる。得られた水分散液は、水に分散した後も比較的安定に存在しているイソシアネート基が、これら基材表面に存在する活性水素基と反応するため、非常に密着性の良い塗料、接着剤を得ることができる。
【0095】
またポリイソシアネートが水に分散した後かなりの時間が経過し、イソシアネート基が消滅した後も、粒径が0.1〜2.5μm程度のポリイソシアネート粒子がエマルジョン状態として安定に存在しているため、これを塗布し常温乾燥あるいは加熱乾燥して得られる皮膜は、硬く強靭なものとなる。このため、フィルムまたはシートの状態あるいは各種基材のコーティグ剤等として使用することが可能である。基材との密着性が重視される場合は、イソシアネート基が存在している状態で塗布し、使用するのが望ましい。
【0096】
こうした種類の水分散系イソシアネートが配合された水系塗工液は、安定したものとなり、そのポットライフが長くなる。また、この水系塗工液を用いて形成した着色層を有する化粧シートの層間密着性を向上させることができる他、耐候性向上、耐煮沸水性向上、基材と着色層との密着性が増すことによる接着剤塗工性の向上という効果がある。
【0097】
水性樹脂:水分散性イソシアネートの配合割合は、特に限定されず、適切に塗工液を塗布できる範囲で適宜設定される。
【0098】
(4) 溶媒
溶媒である水は、従来より水系塗工液に使用されているグレードの工業用水が使用される。また、水とアルコール等とからなる混合溶媒を、水系塗工液の溶媒として使用することもできる。そうした混合溶媒を構成するアルコール等としては、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール等の低級アルコール、グリコール類およびそのエステル類等を挙げることができる。なお、これら低級アルコール、グリコール類およびそのエステル類等の溶媒は、水系塗工液の流動性改良、水系塗工液の消泡、被塗工体である基材またはベタ着色層への濡れの向上、濡れ性の向上にともなう意匠性の向上、乾燥性の調整、製造された化粧シートの層間密着性の向上等の目的で使用されるものであり、その目的に応じてその種類、使用量等が決定される。本発明で使用される水系塗工液は、ベンゼン、トルエン、キシレン等の危険性の高い芳香族炭化水素系の有機性揮発物質が用いられておらず、また、その他の有機溶剤の使用も抑えているので、VOCの発生を減少させることができる。
【0099】
水とアルコール等とからなる混合溶媒においては、それらの配合割合を、水:アルコール等(例えば、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール等が挙げられる。)=100:0〜20:80の範囲で調整できる。
【0100】
水とアルコールの割合は、アルコール比率が増加すると、沸点の低下および蒸気圧の減少による乾燥性の向上、インキ自体の表面エネルギーが減少することによる消泡作用、基材との濡れ性が向上することによる基材との密着性向上やインキの転移性の向上等が挙げられるが、アルコール比率が増加しすぎると、エマルジョンの安定化阻害によるゲル化や沈降、VOCの増大が出願時点において考えられている。また、水比率が向上すると安全性の向上等の効果が考えられる。
【0101】
また、水系塗工液中の溶媒の配合割合は、特に制限がないが、溶媒の割合が少ないとインキの流動性が低下し良好な印刷適性を保持できない。また、溶媒比率が高すぎると乾燥性の低下、流動性が高くなりすぎ、意匠性が悪くなるといった不具合が考えられる。より現実的な配合割合は、バインダー成分である水性樹脂と、架橋剤との重量を100とした場合に、40〜1000の割合で配合させることが好ましく、100〜400の割合で配合させることが特に好ましい。
【0102】
(5) 化粧シートの着色層用水系塗工液
ベタ着色層3や絵柄着色層4に使用される化粧シートの着色層用水系塗工液には、本発明の特徴的な効果を十分に発揮できる範囲内で、ワックス類、分散剤、消泡剤、レベリング剤、安定剤、充填剤、潤滑剤、滑剤、その他の添加剤を任意に添加することができる。
【0103】
(6) 化粧シートの着色層(ベタ着色層/絵柄着色層)の形成
ベタ着色層3や絵柄着色層4は、上述した化粧シートの着色層用水系塗工液を塗工または印刷等によって設けた後、乾燥して形成される。更に詳しく説明すれば、基材2としてオレフィン基材を用いた場合には、基材をコロナ放電処理することにより基材表面に官能基(具体的には、カルボキシル基、カルボニル基、水酸基、過酸化基等)が生成され、その基材上にベタ着色層用の水系塗工液を塗工または印刷し、乾燥硬化させることにより、図7に示すように、水系塗工液中の水分散系イソシアネート70のイソシアネート基と、上記基材表面に生成した官能基と、アクリル複合型ウレタンエマルション60とが反応し、ベタ着色層3が形成される。
【0104】
ベタ着色層と基材との密着性は基材表面のコロナ処理等により生成した官能基および表面の付着水と、水性樹脂や硬化剤に含まれるカルボキシル基や活性水素基との相互作用、および/またはイソシアネート化合物等の上記官能基や付着水との化学結合反応によって発現する。
【0105】
また、絵柄着色層4は、絵柄着色層用水系塗工液をベタ着色層3上に塗工または印刷した後、乾燥硬化させて形成される。塗工方法としては、公知の各種方法、例えばロールコート、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、エアーナイフコート、キスコート、ブレードコート、スムーズコート、コンマコート、スプレーコート、かけ流しコート、刷毛塗り等の方法を用いることがでる。また、印刷方法としては、グラビア、活版、フレキソ等の凸版印刷、平版オフセット、ダイリソ印刷等の平版印刷、シルクスクリーン等の孔版印刷、静電印刷、インクジェットプリント等の公知の各種方法を用いることができる。ベタ着色層3は、乾燥後の膜厚が0.1〜5.0μm程度になるように塗工または印刷され、絵柄着色層4は、乾燥後の膜厚が0〜10.0μm程度になるように塗工または印刷される。
【0106】
(接着層)
接着層5は、図1に示すように、着色層11と透明樹脂層6との間に設けられて、着色層11が形成された基材2と透明樹脂層6との密着性を向上させるプライマー層ないしアンカー層としての役割を有するものであり、耐久性や長期にわたる外観維持性を向上させる作用がある。こうした作用は、形成された絵柄を長期間保持することができ、極めて有効である。
【0107】
接着層5は、水系塗工液、溶剤系塗工液または無溶剤系塗工液で形成される。このうち、水系塗工液または無溶剤系塗工液を用いることが好ましく、水系塗工液で形成された接着層5は、従来のような溶剤系塗工液に起因するVOCの発生がなく、化粧シートの環境安全性をより向上させることに寄与できる。
【0108】
接着層用の水系塗工液としては、硬化剤を含有する2液性の水系塗工液が好ましく使用される。水系塗工液に用いられる樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等の水性樹脂が挙げられる。
【0109】
溶剤系塗工液または無溶剤系塗工液で接着層5を形成する場合においては、従来より一般的に使用されている溶剤系または無溶剤系の塗工液を使用できる。
【0110】
溶剤系塗工液に用いられる樹脂としては、2液性の油性ウレタン樹脂、油性アクリル樹脂と油性ウレタン樹脂との混合物等が挙げられる。
【0111】
無溶剤系(ノンソル系)の塗工液は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とからなる。ポリオール化合物としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリシロキサンポリオール等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等のポリイソシアネート単量体から誘導されたイソシアヌレート、ビウレット、アロファネート等の多官能ポリイソシアネート化合物、あるいはトリメチロールプロパン、グリセリン等の3官能以上のポリオール化合物との反応により得られる末端イソシアネート基含有の多官能ポリイソシアネート化合物等を挙げることができる。
【0112】
接着層5は、上述した接着層用塗工液を、着色層11上に塗工または印刷等によって設けた後、乾燥させて形成される。塗工方法としては、公知の各種方法、例えばロールコート、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、エアーナイフコート、キスコート、ブレードコート、スムーズコート、コンマコート、スプレーコート、かけ流しコート、刷毛塗り等の方法を用いることができ、乾燥後の膜厚が0.5〜10μm程度になるように塗工される。
【0113】
(透明樹脂層)
透明樹脂層6は、トップ樹脂層ともいわれ、着色層11を擦り傷等から保護したり、化粧シート1の表面強度を向上させたり、塗装感を付与すること等を目的として、接着層5を介して着色層11上に積層される。
【0114】
透明樹脂層6を構成する樹脂としては、上述した接着層5を介して着色層11上に密着よく形成される透明な樹脂であれば特に限定されるものではないが、例えば、透明ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂が好ましく挙げられる。このように、透明樹脂層6には、ポリオレフィン系樹脂を主成分としてなる材料を用いることが好ましく、材料にポリオレフィン系樹脂以外の成分が含まれている場合には、ポリオレフィン系樹脂が最も多い割合で含まれている。透明樹脂層用の樹脂として使用できるオレフィン樹脂以外の樹脂としては、上述の基材2に使用される樹脂材料と同じものを使用することができる。こうした透明樹脂層6を形成する樹脂には、必要に応じて、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、マット剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤等の公知の添加剤が添加される。
【0115】
透明樹脂層6は、接着層5上に、別個に形成された透明樹脂シートをドライラミネーションや熱ラミネーション等の各種のラミネート法で積層して形成されたり、溶融押出し塗工法により成膜されたり、その他公知の方法で積層される。
【0116】
また、図2に示すように、透明樹脂層6を2層以上の複層構造にしてもよい。2層以上積層させてなる透明樹脂層16は、基材2側の透明樹脂層6’と保護層側の透明樹脂層6”とに異なる作用効果を持たせることができる点で有利である。一の具体例として、保護層側の透明樹脂層6”については、フッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂を主成分とした樹脂で形成して優れた耐汚染性等の表面機能を付与し、基材側の透明樹脂層6’については、熱可塑性アクリル樹脂等で形成し、接着層5との間の密着性等を向上させることができる。また、他の具体例として、保護層側の透明樹脂層6”については、耐候剤を添加したポリプロピレン系樹脂で形成して優れた耐候性を付与し、基材側の透明樹脂層6’については、エラストマーを含有したポリプロピレン系樹脂で形成して耐候性と密着性を向上させることができる。
【0117】
2層以上の透明樹脂層16は、複数の樹脂組成物を溶融共押出しして形成されたり、ドライラミネーションや熱ラミネーション等の各種のラミネート法で形成される。このとき、図3に示すように、プライマー層またはアンカー層として作用する接着層12を介して2以上の層からなる透明樹脂層16を形成することもできる。なお、この場合における接着層12は、透明樹脂層6’、6”と共に溶融共押出しして形成されたり、水性ウレタン樹脂を含有する水系塗工液で塗布されて形成される。その場合には、VOCの発生をより一層抑制することができる。
【0118】
透明樹脂層6の厚さは、20〜500μm程度であり、30〜100μm程度が好ましい。
【0119】
(凹凸模様)
凹凸模様7は、エンボス模様ともいわれ、図1に示すように、必要に応じて上述の透明樹脂層6の表面に形成される。また、図2および図3に示すように2層以上の透明樹脂層16を形成した場合には、凹凸模様7を最表面の透明樹脂層に形成したり、最表面以外の透明樹脂層に形成したりすることができる。
【0120】
凹凸模様7は、特に限定されず、化粧シート1の用途に応じた模様であればよい。例えば、木目導管溝、木目年輪凹凸、浮造年輪凹凸、木肌凹凸、砂目、梨地、ヘアライン、万線状溝、花崗岩の劈開面等の石材表面凹凸、布目の表面テクスチュア、皮絞、文字、幾何学模様等の模様が挙げられる。
【0121】
凹凸模様7を形成する手段としては、例えば、加熱加圧によるエンボス加工法やTダイ溶融押出し法が挙げられる。加熱加圧によるエンボス加工法は、透明樹脂層6の表面を加熱軟化させ、その表面をエンボス版で加圧してエンボス版の凹凸模様7を賦形し、冷却して固定化する方法であり、公知の枚葉式または輪転式のエンボス機が用いられる。エンボス加工法で凹凸模様を形成する場合には、ラミネート加工により積層する前の透明樹脂層用シートに予めエンボス加工したり、透明樹脂層用シートを積層すると同時に(いわゆるダブリングエンボス法)エンボス加工をする。また、Tダイ溶融押出し法で透明樹脂層6を積層する場合には、賦形ローラを兼用させた冷却ローラを使用し、透明樹脂層6の成膜・積層と同時に凹凸模様7を形成する。また、ヘアライン加工、サンドブラスト加工等によってもエンボス模様を形成することができる。
【0122】
(部分着色層)
部分着色層8は、凹凸模様7の凹陥部17にワイピング法により形成される。ワイピング法は、ドクターブレードコート法またはナイフコート法で凹陥部17を含む表面全面に部分着色層用の塗工液を塗布した後、凹陥部17以外の表面から部分着色層用の塗工液を除去することにより、凹陥部17のみに部分着色層8を形成する方法である。部分着色層用の塗工液としては、有機顔料、無機顔料、光輝性顔料等の着色顔料と、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化型樹脂等のバインダー樹脂とからなる塗工液や、エマルジョン型の水系塗工液等を使用できる。
【0123】
また、上述のベタ着色層3および/または絵柄着色層4を形成する水系塗工液を好ましく用いることもでき、そうした場合には、環境安全性の点でより好ましい。
【0124】
(保護層)
保護層9は、トップコート層またはオーバープリント層(OP層)ともいわれ、凹凸模様7を形成する凹陥部17やその凹陥部17に形成された部分着色層8の表面を被って、化粧シート1を保護することを目的として設けられるものである。
【0125】
保護層9は、耐擦傷性や耐汚染性等の物性向上を目的として用いられるため、熱硬化樹脂および/または電離放射線硬化型樹脂を用いることが好ましい。また、溶剤系塗工液で形成してもよいが、VOCの発生を抑制する環境安全性を考慮すると、水系塗工液や無溶剤系塗工液で形成するのが望ましい。無溶剤系の塗工液を用いた場合には、電離放射線硬化型の塗工液が好ましい。したがって、上述した着色層や接着層に用いる水系塗工液と同様に、水性樹脂を用い、さらに、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、安定剤、充填剤、潤滑剤、滑剤、粘度調整剤、その他の添加剤を任意に添加し、水溶媒または水とアルコール等とからなる混合溶媒を使用し、ミキサー等で十分に混合して調製した水系塗工液が好ましく使用される。
【0126】
電離放射線硬化型樹脂としては、分子中に、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、またはエポキシ基等のカチオン重合性官能基を有する単量体、プレポリマーまたはポリマー(以下、これらを総称して化合物と呼称する)からなる。これら単量体、プレポリマー、およびポリマーは、単体で用いるか、或いは複数種混合して用いる。こうした電離放射線硬化型樹脂は電子線を照射すれば十分に硬化するが、紫外線を照射して硬化させる場合には、増感剤として光重合開始剤を添加する。光重合開始剤の添加量は一般に、電離放射線硬化型樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部程度である。
【0127】
また、反応型の水性樹脂組成物で保護層9を形成することもでき、耐擦傷性や、透明樹脂層6との密着性を向上させることができる。特に、エマルジョン型の樹脂を用いた場合には、樹脂組成物中に硬化剤等の反応開始剤が保護され、塗膜化の後に反応を開始させることが可能となる。そのため、塗工し易い樹脂組成物で塗工し、その後反応させて保護層9を形成することもできる。このような反応型の樹脂組成物としては、例えば、感熱反応型の樹脂として、活性水素基を有する樹脂からなる主剤とイソシアネート基と溶媒の水やアルコール系化合物との反応を抑制するように、親水性処理されたイソシアネート系硬化剤、もしくはブロック剤で処理したイソシアネート系硬化剤をエマルジョン化した樹脂組成物、またはアミノ基やカルボン酸基を有する樹脂からなる主剤とエポキシ基を有する水溶性または水分散性硬化剤からなる樹脂組成物等を挙げることができる。
【0128】
保護層9は、耐擦傷性等の表面物性の向上させるため設けられるほか、シリカ等の公知の艶消し剤を塗工液に添加することにより艶調整したものとしたり、塗装感等の意匠性を付与させたものとすることができる。また、保護層9に、より良好な耐候性または耐光性を付与するために、必要に応じて紫外線吸収剤、光安定剤を添加した塗工液を用いて、その層を形成することができる。
【0129】
保護層9は、上述した各種の塗工液を、グラビアコート法、リバースロールコート法、ナイフコート法、キスコート法、その他塗工法等の公知の塗工法で塗工形成して形成される。また、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷等の公知の印刷法で形成される。形成された保護層9の厚みは0.5〜40μm程度が好ましく、3〜30μmがより好ましい。
【0130】
また、必要に応じて、表面保護層6と保護層9との間にアンカー層を設けてもよく、アンカー層としてはポリウレタン樹脂やポリエステル樹脂を含有するものが好ましく、上記ポリウレタン樹脂やポリエステル樹脂を含有する水性塗工液を用いて形成することがより好ましい。
【0131】
(プライマー層)
プライマー層10は、本発明の化粧シート1を各種の被着体15に接着させ易くすることを目的として、基材2の裏面側に形成される。
【0132】
プライマー層10は、一般には、アクリル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等が使用されるが、上述した着色層11や、接着層5を形成するのに好ましく採用される水系塗工液を用いることが環境安全性の観点から好ましい。
【0133】
(化粧シート)
上述の構成を有する本発明の化粧シート1は、他の被着体15(裏打材)に積層して用いられる。
【0134】
被着体15としては、図4に示すような立体形状物品41や、図5に示すような平板状、曲面状等の板材51、シート(或いはフィルム)等の各種形状の物品が対象となる。こうした被着体15としては、木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木材板、木質繊維板等の木質板、鉄、アルミニウム等の金属、アクリル、ポリエステル、ポリスチレン、ポリオレフィン、ABS樹脂、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース系樹脂、ゴム等の樹脂、硝子、陶磁器等のセラミックス、石膏等の非セメント窯業系材料、上質紙、和紙等の紙、炭素、石綿、チタン酸カリウム、硝子、合成樹脂等の繊維からなる不織布または織布、等々が挙げられる。
【0135】
化粧シート1と被着体15との関係において、化粧シート1の基材2の種類またはプライマー層10の有無により、被着体15にそのまま熱融着等で接着できる場合には、化粧シート1と被着体15とを接着剤を用いずに積層させることができるが、化粧シート1の基材2またはプライマー層10の種類により、被着体15にそのまま熱融着等で接着できない場合には、適当な接着剤を用いて積層させる。なお、接着剤としては、酢ビ系、尿素系等の接着剤が挙げられる。
【0136】
また、一般的な積層方法としては、例えば、(a)接着剤を介して被着体15に加圧ローラーで加圧して積層する方法、(b)特公昭50−19132号公報、特公昭43−27488号公報等に記載のように、化粧シート1を射出成形の雌雄両金型間に挿入して、両金型を閉じ、雄型のゲートから溶融樹脂を射出充填した後、冷却して樹脂成型品の成形と同時にその表面に化粧シート1を接着積層する射出成形同時ラミネート方法、(c)特公昭56−45768号公報、特公昭60−58014号公報等に記載のように、接着剤を介して成形品の表面に化粧シート1を対向させ、成形品側からの真空吸引による圧力差により化粧シート1を成形品表面に積層する真空プレス積層方法、(d)特公昭61−5895号公報、特公平3−2666号公報等に記載のように、円柱、多角柱等の柱状被着体の長軸方向に、接着剤を介して化粧シート1を供給しつつ、複数の向きの異なるローラーにより、柱状被着体を構成する複数の側面に順次化粧シート1を加圧接着して積層してゆくラッピング加工方法等が挙げられる。
【0137】
本発明の化粧シート1を積層した各種の被着体15は、所定の成形加工等を施して、各種装飾用素材等として用いられる。例えば、壁、天井、床等建築物の内装、窓枠、扉、手摺等の建具の表面化粧、家具または弱電・OA機器のキャビネットの表面化粧、自動車、電車等の車輌内装、航空機内装、窓硝子の化粧用等の用途が挙げられる。
【実施例】
【0138】
以下に、実施例と比較例を挙げて、本発明について更に詳しく説明する。以下において、部とは重量部のことである。
【0139】
(樹脂製造例1)
(工程1) 冷却管、温度計、仕込み口、撹拌装置を備えた4つ口の2Lセパラブルフラスコにエチルメタクリレート192.09g、イソホロンジイソシアネート38.99g、平均分子量2000のポリカーボネートジオール(クラレポリオールC−2090:クラレ製(3−メチル−1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとのモル比率が90:10の範囲))87.71g、ジメチロールブタン酸13.00g、p−メトキシフェノール0.019gを仕込み、80℃まで昇温し5時間反応させてウレタンプレポリマーのアクリルモノマー溶液を得た。
【0140】
(工程2) ウレタンプレポリマーのアクリルモノマー溶液を40℃まで冷却し、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(n=9)17.46gとトリエチルアミン8.88gを加えて均一に混合した。
【0141】
(工程3) ウレタンプレポリマーのアクリルモノマー溶液に脱塩水639.76gを滴下しウレタンプレポリマー溶液を乳化した。アクリルモノマーがミセルの中心部となり、ウレタンプレポリマーは乳化基を有しているので最外層となるウレタンプレポリマー乳化液が得られた。
【0142】
(工程4) 乳化させたウレタンプレポリマー溶液をフラスコに窒素ガスを導入しながら過硫酸カリウム2.10gを加え、分散液を徐々に昇温した。50℃付近で発熱したが、発熱がおさまった後に温度を75℃に保ち3時間反応しウレタンプレポリマーの水による鎖延長とアクリルモノマーの重合を行い、アクリルモノマーがコア部、ウレタンプレポリマーがシェル層となる樹脂製造例1のアクリル複合型ウレタンエマルションを得た。
【0143】
(樹脂製造例2)
(工程1) 冷却管、温度計、仕込み口、撹拌装置を備えた4つ口の2Lセパラブルフラスコにエチルメタクリレート170.61g、イソホロンジイソシアネート48.59g、平均分子量2000のポリカーボネートジオール(クラレポリオールC−2090:クラレ製)109.30g、ジメチロールブタン酸16.20g、p−メトキシフェノール0.017gを仕込み、80℃まで昇温し5時間反応してウレタンプレポリマーのアクリルモノマー溶液を得た。
【0144】
(工程2) ウレタンプレポリマーのアクリルモノマー溶液を40℃まで冷却し、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(n=9)17.47gとトリエチルアミン11.06gを加えて均一に混合した。
【0145】
(工程3) ウレタンプレポリマーのアクリルモノマー溶液に脱塩水637.81gを滴下しウレタンプレポリマー溶液を乳化した。アクリルモノマーがミセルの中心部となり、ウレタンプレポリマーは乳化基を有しているので最外層となるウレタンプレポリマー乳化液が得られた。
【0146】
(工程4) 乳化させたウレタンプレポリマー溶液にn−ブチルアミン1.20gを添加した。
【0147】
(工程5) フラスコに窒素ガスを導入しながら過硫酸カリウム1.74gを加え、分散液を徐々に昇温した。50℃付近で発熱したが、発熱がおさまった後に温度を75℃に保ち3時間反応しウレタンプレポリマーの水による鎖延長とアクリルモノマーの重合を行い、アクリルモノマーがコア部、ウレタンプレポリマーがシェル層となる樹脂製造例2のアクリル複合型ウレタンエマルションを得た。
【0148】
(樹脂製造例3)
樹脂製造例2と同様な方法で表1、表2に記載した原料を使用して樹脂製造例3のアクリル複合型ウレタンエマルションを得た。なお、表1、表2には、樹脂製造例3の他、樹脂製造例1、2の原料も併せて記載している。
【0149】
(比較樹脂製造例1)
(工程1) 冷却管、温度計、仕込み口、撹拌装置を備えた4つ口の2Lセパラブルフラスコにメチルメタクリレート157.22g、イソホロンジイソシアネート49.19g、平均分子量2000のポリカーボネートジオール(クラレポリオールC−2090:クラレ製)110.65g、ジメチロールプロピオン酸14.85g、p−メトキシフェノール0.016gを仕込み、80℃まで昇温し5時間反応させてウレタンプレポリマーのアクリルモノマー溶液を得た。
【0150】
(工程2) ウレタンプレポリマーのアクリルモノマー溶液を40℃まで冷却し、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(n=9)17.47gとトリエチルアミン11.20gを加えて均一に混合した。
【0151】
(工程3) ウレタンプレポリマーのアクリルモノマー溶液に脱塩水637.27gを滴下しウレタンプレポリマー溶液を乳化した。アクリルモノマーがミセルの中心部となり、ウレタンプレポリマーは乳化基を有しているので最外層となるウレタンプレポリマー乳化液が得られた。
【0152】
(工程4) フラスコに窒素ガスを導入しながら過硫酸カリウム1.75gを加え、分散液を徐々に昇温した。50℃付近で発熱したが、おさまった後に温度を75℃に保ち3時間反応しウレタンプレポリマーの水による鎖延長とアクリルモノマーの重合を行い、アクリルモノマーがコア部、ウレタンプレポリマーがシェル層となる比較樹脂製造例1のアクリル複合型ウレタンエマルションを得た。
【0153】
(比較樹脂製造例2)
(工程1) 冷却管、温度計、仕込み口、撹拌装置を備えた4つ口の2Lセパラブルフラスコにメチルメタクリレート192.09g、イソホロンジイソシアネート38.99g、平均分子量2000のポリカーボネートジオール(クラレポリオールC−2090:クラレ製)87.71g、ジメチロールブタン酸13.00g、p−メトキシフェノール0.019gを仕込み、80℃まで昇温し5時間反応してウレタンプレポリマーのアクリルモノマー溶液を得た。
【0154】
(工程2) ウレタンプレポリマーのアクリルモノマー溶液を40℃まで冷却し、メタクリル酸6.98g、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(n=9)10.48g、トリエチルアミン17.09gを加えて均一に混合した。
【0155】
(工程3) ウレタンプレポリマーのアクリルモノマー溶液に脱塩水631.55gを滴下しウレタンプレポリマー溶液を乳化した。アクリルモノマーがミセルの中心部となり、ウレタンプレポリマーは乳化基を有しているので最外層となるウレタンプレポリマー乳化液が得られた。
【0156】
(工程4) フラスコに窒素ガスを導入しながら過硫酸カリウム2.10gを加え、分散液を徐々に昇温した。50℃付近で発熱したが、発熱がおさまった後に温度を75℃に保ち3時間反応しウレタンプレポリマーの水による鎖延長とアクリルモノマーの重合を行い、アクリルモノマーがコア部、ウレタンプレポリマーがシェル層となる比較樹脂製造例2のアクリル複合型ウレタンエマルションを得た。
【0157】
(比較樹脂製造例3)
(工程1) 冷却管、温度計、仕込み口、撹拌装置を備えた4つ口の2Lセパラブルフラスコにメチルメタクリレート129.22g、n−ブチルアクリレート62.86g、イソホロンジイソシアネート38.99g、平均分子量2000のポリカーボネートジオール(クラレポリオールC−2090:クラレ製)87.71g、ジメチロールブタン酸13.00g、p−メトキシフェノール0.019gを仕込み、80℃まで昇温し5時間反応させてウレタンプレポリマーのアクリルモノマー溶液を得た。
【0158】
(工程2) ウレタンプレポリマーのアクリルモノマー溶液を40℃まで冷却し、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(n=9)17.46g、トリエチルアミン8.88gを加えて均一に混合した。
【0159】
(工程3) ウレタンプレポリマーのアクリルモノマー溶液に脱塩水639.76gを滴下しウレタンプレポリマー溶液を乳化した。アクリルモノマーがミセルの中心部となり、ウレタンプレポリマーは乳化基を有しているので最外層となるウレタンプレポリマー乳化液が得られた。
【0160】
(工程4) フラスコに窒素ガスを導入しながら過硫酸カリウム2.10gを加え、分散液を徐々に昇温した。50℃付近で発熱したが、おさまった後に温度を75℃に保ち3時間反応しウレタンプレポリマーの水による鎖延長とアクリルモノマーの重合を行い、アクリルモノマーがコア部、ウレタンプレポリマーがシェル層となる比較樹脂製造例3のアクリル複合型ウレタンエマルションを得た。
【0161】
【表1】

【0162】
【表2】

【0163】
【表3】

【0164】
【表4】

【0165】
(インキ製造例1)
樹脂製造例1で得られたアクリル−ウレタン共重合体224.0gにテイカ株式会社製酸化チタンJR−806を235.2gと脱塩素水105.0gとイソプロピルアルコール35.0gを加えて良く撹拌したあと、粒径1mmのガラスビーズを570g仕込み、ペイントシェイカーで60分間錬肉後、ポリウレタン系造粘剤17.5gと脱塩素水83.3gを混合し、白色のベタ着色層用の水系塗工液A用インキを得た。
【0166】
(インキ製造例2)
樹脂製造例1で得られたアクリル−ウレタン共重合体398.4gに縮合アゾ系顔料57.6gと脱塩素水73.8gとイソプロピルアルコール40.2gを加えて良く撹拌したあと、粒径1mmのガラスビーズを570g仕込み、ペイントシェイカーで60分間錬肉後、ポリウレタン系造粘剤15gと脱塩素水15gを混合し、黄色の絵柄着色層用の水系塗工液B用インキを得た。
【0167】
(インキ製造例3)
樹脂製造例2で得られたアクリル−ウレタン共重合体を用いて、インキ製造例1と同様な方法で、白色のベタ着色層用の水系塗工液C用インキを得た。
【0168】
(インキ製造例4)
樹脂製造例2で得られたアクリル−ウレタン共重合体を用いて、インキ製造例2と同様な方法で、黄色の絵柄着色層用の水系塗工液D用インキを得た。
【0169】
(インキ製造例5)
樹脂製造例3で得られたアクリル−ウレタン共重合体を用いて、インキ製造例1と同様な方法で、白色のベタ着色層用の水系塗工液E用インキを得た。
【0170】
(比較インキ製造例1)
比較樹脂製造例3で得られたアクリル−ウレタン共重合体を用いて、インキ製造例1と同様な方法で、白色のベタ着色層用の水系塗工液F用インキを得た。
【0171】
(比較インキ製造例2)
比較樹脂製造例3で得られたアクリル−ウレタン共重合体を用いて、インキ製造例2と同様な方法で、黄色の絵柄着色層用の水系塗工液G用インキを得た。
【0172】
(比較インキ製造例3)
比較樹脂製造例4で得られたアクリル−ウレタン共重合体を用いて、インキ製造例1と同様な方法で、白色のベタ着色層用の水系塗工液H用インキを得た。
【0173】
(比較インキ製造例4)
比較樹脂製造例4で得られたアクリル−ウレタン共重合体を用いて、インキ製造例2と同様な方法で、黄色の絵柄着色層用の水系塗工液I用インキを得た。
【0174】
(比較インキ製造例5)
比較樹脂製造例5で得られたアクリル−ウレタン共重合体を用いて、インキ製造例1と同様な方法で、白色のベタ着色層用の水系塗工液用インキを得ようと試みたが、顔料分散不良・インキ安定性(経時増粘)等の問題があり、化粧シートの着色層用水性インキとして用いられるインキとはならなかった。
【0175】
(実施例1)
基材2として両面にコロナ放電処理を施した厚さ60μmのポリプロピレン系エラストマー着色シートを用い、その片方の面にグラビア印刷法でプライマー層用のポリウレタン系水性塗工液(イソシアネート系硬化剤使用)を塗布・乾燥し、約1.0μmのプライマー層を形成した。また、プライマー層を形成した他方の面にグラビア印刷法で下記配合のベタ着色層用の水系塗工液A、絵柄着色層用の水系塗工液Bを順次塗布・乾燥し、約2.0μmのベタ着色層3および約0.5μmの絵柄着色層4を順次形成した。
【0176】
両面にコロナ放電処理を施した厚さ80μmの透明ポリプロピレンフィルムの片方の面に、グラビア印刷法で下記配合の接着層用のポリエステル系溶剤系塗工液(イソシアネート硬化剤使用)を、塗布・乾燥し、厚さ約10.0μmの接着層5を形成した。
【0177】
さらに絵柄着色層4と接着層5の面が貼り合わさるように、基材2と厚さ80μmの透明ポリプロピレンフィルムをドライラミネート方式で積層して透明樹脂層6を形成した。次に、その積層シートの表面にエンボス加工により凹凸模様7を形成し、エンボス処理面にコロナ処理した後、エンボスの凹部に毛刷法で着色層用ポリウレタン系水性塗工液(イソシアネート硬化剤使用)を用いて着色層を形成し、さらにその上に、グラビア印刷法で、保護層用ポリアクリル系水系塗工液(イソシアネート硬化剤使用)を塗布・乾燥し、約5.5μmの保護層9を形成した。その後、温度25℃で7日間養生することにより、実施例1の化粧シートを得た。
【0178】
ベタ着色層用の水系塗工液A
インキ製造例1で得られたインキ: 100 部
水分散型イソシアネート樹脂(住化バイエルウレタン株式会社製、バイヒジュール3100): 3.36 部
希釈溶剤(水/イソプロピルアルコール=7/3): 15 部
絵柄着色層用の水系塗工液B
インキ製造例2で得られたインキ: 100 部
希釈溶剤(水/イソプロピルアルコール=5/5): 15 部
【0179】
(実施例2)
実施例1と同様にして基材2にプライマー層1、ベタ着色層3、絵柄着色層4を形成した。さらに、絵柄着色層4上に、グラビア印刷法で接着層用のポリエステル系溶剤系塗工液(イソシアネート硬化剤使用)を、塗布・乾燥し、厚さ約3.0μmの接着層5を形成した。その接着層5上に、ランダム重合ポリプロピレンにフェノール系酸化防止剤0.2重量%、ヒンダードアミン系光安定剤0.3重量%、ブロッキング防止剤0.2重量%を添加した樹脂を、200℃にてTダイより溶融状態で押出し、溶融押出し塗工法により厚さ80μmに積層して透明樹脂層6を形成した。次に、その積層シートの表面にエンボス加工により凹凸模様7を形成し、エンボス処理面にコロナ処理した後、グラビア印刷法で、保護層用ポリアクリル系水系塗工液(イソシアネート硬化剤使用)を塗布・乾燥し、約5.5μmの保護層9を形成した。その後、温度25℃で7日間養生することにより、実施例2の化粧シートを得た。
【0180】
(実施例3)
実施例2のベタ着色層の水系塗工液Aに代えて水系塗工液Cを、絵柄着色層用の水系塗工液Bに代えて水系塗工液Dを用いた。その他は、実施例2と同様にして実施例3の化粧シートを得た。
【0181】
ベタ着色層用の水系塗工液C
インキ製造例3で得られたインキ: 100 部
水分散型イソシアネート樹脂(住化バイエルウレタン株式会社製、バイヒジュール3100): 3.36 部
希釈溶剤(水/イソプロピルアルコール=7/3): 15 部
絵柄着色層用の水系塗工液D
インキ製造例4で得られたインキ: 100 部
希釈溶剤(水/イソプロピルアルコール=5/5): 15 部
【0182】
(実施例4)
実施例2のベタ着色層の水系塗工液Aに代えて水系塗工液Eを、絵柄着色層用の水系塗工液Bに代えて水系塗工液Dを用いた。その他は、実施例2と同様にして実施例4の化粧シートを得た。
【0183】
ベタ着色層用の水系塗工液E
インキ製造例5で得られたインキ: 100 部
水分散型イソシアネート樹脂(住化バイエルウレタン株式会社製、バイヒジュール3100): 3.36 部
希釈溶剤(水/イソプロピルアルコール=7/3): 15 部
【0184】
(実施例5)
実施例4のポリエステル系溶剤系塗工液(イソシアネート硬化剤使用)に代えて、ポリエステル系水性塗工液(イソシアネート硬化剤使用)を用いた。その他は、実施例4と同様にして実施例5の化粧シートを得た。
【0185】
(比較例1)
実施例2のベタ着色層用の水系塗工液Aに代えてベタ着色層用の水系塗工液Fを、絵柄着色層用の水系塗工液Bに代えて絵柄着色層用の水系塗工液Gを用いた。その他は、実施例2と同様にして比較例1の化粧シートを得た。
【0186】
ベタ着色層用の水系塗工液F
比較インキ製造例1で得られたインキ: 100 部
水分散型イソシアネート樹脂(住化バイエルウレタン株式会社製、バイヒジュール3100): 3.36 部
希釈溶剤(水/イソプロピルアルコール=7/3): 15 部
絵柄着色層用の水系塗工液G
比較インキ製造例2で得られたインキ: 100 部
希釈溶剤(水/イソプロピルアルコール=5/5): 15 部
(比較例2)
実施例2のベタ着色層用の水系塗工液Aに代えてベタ着色層用の水系塗工液Hを、絵柄着色層用の水系塗工液Bに代えて絵柄着色層用の水系塗工液Iを用いた。その他は、実施例2と同様にして比較例2の化粧シートを得た。
【0187】
ベタ着色層用の水系塗工液H
比較インキ製造例3で得られたインキ: 100 部
水分散型イソシアネート樹脂(住化バイエルウレタン株式会社製、バイヒジュール3100): 3.36 部
希釈溶剤(水/イソプロピルアルコール=7/3): 15 部
絵柄着色層用の水系塗工液I
比較インキ製造例4で得られたインキ: 100 部
希釈溶剤(水/イソプロピルアルコール=5/5): 15 部
(耐候性試験後の層間密着性の評価方法)
実施例1〜5、比較例1〜2で得られた各化粧シートの耐候試験後の層間密着性の評価を、下記の方法により行った。得られた結果を表5に示した。
【0188】
耐候性試験後の層間密着性は、耐候性試験後に、幅1インチにカットした化粧シート1を試験片とし、この試験片の基材2と透明樹脂層6とをINSTRON5500引張試験機を用い、25℃の雰囲気中において引張速度100mm/分、基材2と透明樹脂層6との間の開き角180°の条件にて引っ張った剥離強度で評価し、剥離強度が10N以上のものを○、5N以上10N未満のものを△、5N未満のものを×で表した。なお、耐候性試験は、化粧シート1の試験片を、ダイプラ・ウィンテス株式会社製メタルウェザーにセットし、ライト条件(照度:60mW/cm、ブラックパネル温度63℃、層内湿度50%RH)で20時間、結露条件(照度:0mW/cm、ブラックパネル温度30℃、層内湿度98%RH)で4時間、水噴霧条件(結露条件の前後10秒間)の条件で50時間試験した後、25℃50%RHの条件下で2日間保持した。
【0189】
【表5】

【0190】
(作製した化粧シート)
表5に示すように、実施例1〜5の化粧シート1は、ベタ着色層3、絵柄着色層4が本発明の水系塗工液で形成されているので、耐候性試験後においてもその層間密着性に優れたものであった。さらに、実施例1〜5の化粧シート1は、VOCの発生が抑えられたものであり、化粧シート製造時における作業環境の安全性や生活空間での環境安全性が向上したものであった。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】本発明の化粧シートの層構成の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の化粧シートの層構成の他の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の化粧シートの層構成の更に他の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の化粧シートの実施形態の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の化粧シートの実施形態の他の一例を示す断面図である。
【図6】本発明の水系塗工液を構成するアクリル複合型ウレタンエマルションを示す模式図である。
【図7】本発明の水系塗工液を基材上に塗布して着色層を形成する際の接着機構を示す模式図である。
【符号の説明】
【0192】
1 化粧シート
2 基材
3 ベタ着色層
4 絵柄着色層
5 接着層
6、6’、6” 透明樹脂層
7 凹凸模様
8 部分着色層
9 保護層
10 プライマー層
11 着色層
12 接着層
15 被着体
16 多層からなる透明樹脂層
17 凹陥部
41 立体形状物品
51 板材
60 アクリル複合型ウレタンエマルション
61 ウレタン組成の部分(ウレタン部)
62 アクリル組成の部分(アクリル部)
65 接着されたアクリル複合型ウレタンエマルション
70 水分散性イソシアネート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材、着色層、接着層、透明樹脂層をこの順で積層した化粧シートであって、
前記着色層が、アクリル複合型ウレタンエマルションを含有する水系塗工液で形成され、
前記アクリル複合型ウレタンエマルションが、少なくとも(A)イソホロンジイソシアネート、(B)3−メチル−1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールを構成成分として有し、3−メチル−1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとのモル比率が95:5〜75:25の範囲のポリカーボネートポリオール、及び(C)分子中に2個以上の水酸基と1個以上のカルボキシル基を有する一般式(1)で表される化合物から構成されるウレタン樹脂と、メタクリル酸エチルから構成されるアクリル樹脂とから構成され、ウレタン樹脂:アクリル樹脂の重量比が40:60〜60:40の範囲であることを特徴とする化粧シート。
【化1】

【請求項2】
アクリル複合型ウレタンエマルションのアクリル樹脂の推定ガラス転移温度が40〜80℃であることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
アクリル複合型ウレタンエマルションが、アクリル樹脂組成の表面にウレタン樹脂組成が位置した構造となっており、ウレタン樹脂組成の重量平均分子量が40,000〜100,000であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記基材がポリオレフィン系エラストマーを主成分としてなり、前記透明樹脂層がポリオレフィン系樹脂を主成分としてなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記透明樹脂層の表面側に凹凸模様が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の化粧シート。
【請求項6】
前記凹凸模様の凹陥部に着色層が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の化粧シート。
【請求項7】
前記透明樹脂層上の最表面に表面保護層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の化粧シート。
【請求項8】
前記基材の裏面に裏面プライマー層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の化粧シート。
【請求項9】
少なくとも(A)イソホロンジイソシアネート、(B)3−メチル−1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールを構成成分として有し3−メチル−1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとのモル比率が95:5〜75:25の範囲であるポリカーボネートポリオール、及び(C)分子中に2個以上の水酸基と1個以上のカルボキシル基を有する一般式(1)で表される化合物から構成されるウレタン樹脂と、メタクリル酸エチルを構成成分として有するアクリル樹脂とから構成されるアクリル複合型ウレタンエマルションであって、アクリル樹脂組成の表面にウレタン樹脂組成が位置した構造となっており、ウレタン樹脂:アクリル樹脂の重量比が40:60〜60:40、アクリル樹脂の推定ガラス転移温度が40〜80℃、ウレタン樹脂組成の重量平均分子量が40,000〜100,000であるアクリル複合型ウレタンエマルションからなることを特徴とする化粧シートの着色層用水性樹脂。
【化2】

【請求項10】
請求項9に記載の化粧シートの着色層用水性樹脂を含有することを特徴とする化粧シートの着色層用水系塗工液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−23752(P2008−23752A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196100(P2006−196100)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【出願人】(000145965)株式会社昭和インク工業所 (4)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】