説明

化粧シート及びその製造方法

【課題】粒子径が大きく、かつ、高アスペクト比の光輝顔料を含有していても平面性に優れ、意匠性を損なうことなく、外観不良が発生しにくく、二次加工時に発泡しない化粧シートおよびその製造方法を得ることである。
【解決手段】本発明は、基材フィルム層の表面に、長さが75〜3000μmの光発色性繊維の短繊維を含有した電子線硬化性樹脂を50〜250μmの厚さで塗布して塗膜を得る塗膜形成工程と、該塗膜上に表面フィルムを被覆する被覆工程と、前記塗膜に電子線を照射する硬化工程と、から少なくとも構成されている化粧シートの製造方法および該製造方法によって得られた化粧シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家具、建具、キッチン収納及び壁紙などの建材、エアコン、テレビ及び冷蔵庫などの家電並びに自動車の内部材などの意匠性、特に高級感を高めるため、これらの部材表面に塗料や化粧シートを適用し、金属光沢を付与することが行われている。
【0003】
塗料を用いる方法は、複雑形状であっても適用しやすい点が優れている。しかし、有機溶剤を使用する場合は、作業環境が悪化し人体への悪影響が及ぶおそれがある。また、水系塗料の場合は、乾燥工程など余計な工程が増えることにより、品質管理が困難であるし、製造コストは増大する。さらに、鏡面のような平面性に優れた表面は得られにくい、という問題もある。
【0004】
化粧シートとしては、たとえば、熱可塑性樹脂に光輝顔料を添加し、押出機やカレンダー成形機などでシート状に成形し、化粧シートとすることが考えられる。ところが、この方法では、混練、成形中に光輝顔料の粒子を細かく破砕してしまい、所望の金属光沢が得られないという問題がある。
【0005】
また、光輝顔料を含有したインクを用いてフィルムに印刷して化粧シートを得る方法もある。しかし、光輝顔料は一般的な顔料と比較して粒子径が大きく、かつアスペクト比が高いため、印刷版型を流用すると、顔料粒子が版彫刻によって不均一な偏りを生じたり、ドクタースジが発生したりといった外観不良が生じやすく、製品不良率が高くなってしまうという問題点があった。
【0006】
また、三層からなる化粧シートにおいて、中間層を構成する有機溶剤を使用する2液硬化型などの接着剤に光沢顔料を含有した化粧シートおよびその製造方法が提案されている(特許文献1)。しかし、接着剤を塗工したときに、やはりドクタースジなどの外観不良が発生しやすい。また、真空成形などの二次加工において再加熱した際、接着剤中の残留溶剤が気化して化粧シートが発泡してしまうという問題も生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−156215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、粒子径が大きく、かつ、高アスペクト比の光輝顔料を含有していても意匠性を損なうことなく、外観不良が発生しにくく、二次加工時に発泡しない化粧シートおよびその製造方法を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の化粧シートは、基材フィルム層と、長さが75〜3000μmの光発色性繊維の短繊維を含有する厚さが50〜250μm電子線硬化性樹脂の硬化塗膜層と、表面フィルム層を有する化粧シートである。
【0010】
前記光発色製繊維は、屈折率の異なる二種類の樹脂を交互に積み重ねた光干渉による発色効果を有する多層構造を内部に備えた繊維で、繊維断面の短径が10〜20μm、長径が40〜70μmであることが好ましい。
【0011】
前記基材フィルム層は、印刷模様を有していることが好ましい。
【0012】
また、基材フィルム層の表面に、長さが75〜3000μmの光発色性繊維の短繊維を含有した電子線硬化性樹脂を50〜250μmの厚さで塗布する電子線硬化性塗膜形成工程と、該電子線硬化性塗膜上から表面フィルムによって被覆する被覆工程と、前記電子線硬化性塗膜に電子線を照射して硬化膜を得る硬化工程とから少なくとも構成されている化粧シートの製造方法である。
【0013】
化粧シートの製造方法に用いられる前記光発色製繊維は、屈折率の異なる二種類の樹脂を交互に積み重ねた光干渉による発色効果を有する多層構造を内部に備えた繊維で、繊維断面の短径が10〜20μm、長径が40〜70μmの短繊維であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の化粧シートは、長さが75〜3000μmの光発色性繊維の短繊維を光輝顔料として使用しているが、厚さが50〜250μm電子線硬化性樹脂の硬化塗膜層を使用しているため、意匠性を損なうことなく、外観不良が発生しにくく、二次加工時に発泡しない化粧シートが得られる。
【0015】
また、本発明の化粧シートに用いる光発色性繊維は、従来の光輝顔料に比べて意匠性に優れ、柔軟性であるので、化粧シートを各種基材にメンブレン成形などの三次元成形法によって積層する際、加工性が優れている。
【0016】
また、本発明の化粧シートの製造方法によれば以上のような化粧シートを製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明の化粧シートに用いられる基材フィルム層は、本発明の化粧シートを家電製品や建材等の部材の表面に貼り付ける際、貼り付ける側となる層である。
【0019】
基材フィルム層は、熱可塑性樹脂からなり、着色されていても無着色でも、また透明・半透明・不透明いずれでも良い。着色した場合、硬化塗膜層に含まれる光発色性繊維に由来する金属光沢との相乗効果で高い意匠性を得ることができる。また、硬化塗膜層も基材シートも透明である場合、化粧シート全体が透けて見えるため、貼り付ける部材の表情および特性を生かしたデザインとすることができる。
【0020】
また、基材フィルム層は表面に印刷模様を有していてもよい。印刷模様は、ウレタンアクリレート、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂等をバインダ成分とした各種インクが用いられ、グラビア印刷、凸版印刷、インクジェット印刷、リバースロールコート法等の方法を用いて基材シート層の表面に印刷する。
【0021】
具体的に基材フィルム層に用いられる熱可塑性樹脂等としては、PET、APET、PETGなどのポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂が挙げられる。なかでも、後加工性に優れることから、非晶質であるPETGを用いたフィルムを用いることが好ましい。また、PETGからなる2層の間に、非晶質ポリエチレンテレフタレート層(APET層)を積層させたフィルム(GAGフィルム)等を用いても良い。
【0022】
基材フィルム層の厚さは、40〜500μmである。好ましくは50〜400μm、80〜300μmであると特に好ましい。基材フィルム層の厚さが40μm以上であれば、後加工に十分耐えうる強度を有する。一方、500μmを超えると、二次加工時に余計に加熱時間を必要とするため、化粧シート自体がダメージを受けやすく、また価格面で不利である。
【0023】
本発明の表面フィルム層は、無色透明で、硬度、耐薬品性、耐候性などを有していると好ましい。また、表面フィルム層は着色していても、半透明のものでも良い。
【0024】
具体的に表面フィルム層としては、アクリルフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、「二軸延伸PETフィルム」とする。)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、「PETGフィルム」とする。)、易成型ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、「易成型PETフィルム」とする。)ポリエチレンフィルム(以下、「PEフィルム」とする。)、ポリプロピレンフィルム(以下「PPフィルム」とする。)等が挙げられる。中でも、二次加工性、耐候性及び透明性に優れるアクリルフィルム、表面硬度、耐薬品性及び透明性に優れる二軸延伸PETフィルム、並びに真空成型やインサートモールド成型などが可能であるなど二次加工性に優れるPETGフィルムなどを用いると特に好ましい。
【0025】
なお、易成型ポリエチレンテレフタレートとは、ポリエチレンテレフタレートの一種で、ポリエチレンテレフタレートのジカルボン酸成分がテレフタル酸であるのに対し、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸の他、イソフタル酸及び/又はフタル酸が含まれているものである。
【0026】
また、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートとは、ポリエチレンテレフタレートの一種であり、ポリエチレンテレフタレートのグリコール成分がエチレングリコールであるのに対し、グリコール成分として、エチレングリコールの他、ジオールが含まれている非結晶性ポリエステルである。
【0027】
表面フィルム層の厚さは、12〜200μmであると好ましく、25〜100μmであるとより好ましく、25〜50μmであると特に好ましい。表面フィルム層の厚さが12μm以上であれば、化粧シートとしての外観や表面性能を維持しやすく、200μm以下であれば、取り扱いが容易であり、価格の面で有利である。
【0028】
表面フィルムは、表面形状が平滑のみならず、エンボスあるいは凹凸印刷により、全面や部分的に形成したものも用いられる。艶を消したマット調が得られるマット調二軸延伸PETフィルムや、凹凸のあるエンボス調が得られるエンボス調二軸延伸PETフィルム、又は易成型PETフィルム等を使用すると好ましい。
【0029】
電子線硬化性樹脂としては、二次加工時に残留溶剤に由来する発泡を防止する効果があり、硬化塗膜層を形成する際の塗工性に優れることから、溶剤を実質的に含まず、重合性オリゴマー及び重合性モノマーを含有するものを用いると好ましい。
【0030】
電子線硬化性樹脂としては、硬化塗膜層を形成する際の塗工性に優れることから、重合性オリゴマー及び重合性モノマーを含有するものを用いると好ましい。
【0031】
重合性オリゴマーとしては、たとえば、ウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、アクリル樹脂アクリレート等のアクリル系オリゴマー;アリルエーテル系オリゴマー、ビニルエーテル系オリゴマー、アリルウレタン系オリゴマー、ポリエーテルアクリレートオリゴマー、ポリオールアクリレートオリゴマー、メラミンアクリレートオリゴマーなどが挙げられる。
【0032】
これら重合性オリゴマーの中でも、柔軟性を付与しやすく、取扱が容易であることから、ウレタンアクリレートオリゴマーを用いると好ましい。
【0033】
重合性モノマーとしては、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソオクチルアクリレート等の単官能アクリレート;1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等の2官能アクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能アクリレート;ポリチオール化合物などが挙げられる。
【0034】
これら重合性モノマーの中でも、安価で入手しやすいことから、トリメチロールプロパントリアクリレートを用いると好ましい。
【0035】
電子線硬化性組成物における電子線硬化性樹脂の含有量は、90〜99.999質量%であると好ましく、95〜99.95質量%であるとより好ましく、98〜99.9質量%であると特に好ましい。
【0036】
電子線硬化性樹脂は、5〜20Pa・s(25℃、以下同じ)の粘度を有することが好ましい。粘度が5Pa・s以上であれば光発色性繊維の短繊維と均一に混練・押出が可能で、塗工ムラを生じにくい。また、粘度が20Pa・s以下であれば、塗工厚み50〜250μm程度での均一塗工が可能である。
【0037】
前記光発色性繊維は、長さが75〜3000μmであり、150〜2500μmの短繊維を用いることが好ましい。長さは短繊維の長さが75μmより短いと意匠性に乏しく、3000μmより長いと繊維同士が絡みやすくなり、かつ、塗工中に詰まり易くなるため好ましくない。
【0038】
また光発色性繊維は、屈折率の異なる二種類の樹脂を交互に積み重ねた光干渉による発色効果を有する多層構造を内部に備えた繊維で、繊維断面の短径が10〜20μm、長径が40〜70μmのものが好ましい。多層構造およびアスペクト比が大きいため、光沢に変化が生じ、高い意匠性を付与することができる。
【0039】
電子線硬化性樹脂組成物における光発色性繊維の短繊維の含有量は、0.01〜8質量%であると好ましく、0.03〜5質量%であるとより好ましく、0.05〜3質量%であると特に好ましい。含有量が0.01質量%以上であれば、化粧シートに特定の意匠効果を付与することができる。また、8質量%以下であれば、塗工ムラやドクタースジなどの外観不良が生じにくい。
【0040】
また、電子線硬化性組成物には、必要に応じてその他の添加剤として、光安定剤(たとえばヒンダードアミン系光安定剤)、酸化防止剤、老化防止剤、レベリング剤、帯電防止剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、無機系充填剤、有機系充填剤、紫外線吸収能や近赤外線吸収能を有する酸化チタン、酸化亜鉛、ITOなどの金属(複合)酸化物微粒子、着色顔料、紫外線吸収剤等を添加することもできる。
【0041】
電子線硬化性樹脂の塗布厚さの下限は、前記短繊維の短径の3倍、好ましくは4倍より厚くすることが好ましい。薄すぎると塗工表面にスジや凹凸が発生しやすくなる。また、電子線硬化性樹脂の塗布厚さの上限は、化粧性を付与できる厚さであれば良く、コストが高くなるので250μm以下、好ましくは200μm以下で十分である。
【0042】
本発明の化粧シートは、上記硬化塗膜層上に、透明の電子線硬化性樹脂からなる第2の硬化塗膜層を有していてもよい。第2の硬化塗膜層とは、透明の電子線硬化性樹脂を含有する第2の電子線硬化性組成物を硬化させてなる層である。ここで、透明の電子線硬化性樹脂としては、前記硬化塗膜層と同様の電子線硬化性樹脂を用いることができる。第2の電子線硬化性組成物は、該電子線硬化性樹脂のみからなるものであっても、該電子線硬化性樹脂に異なる長さの光発色性繊維の短繊維、光輝顔料、着色顔料及び他の添加物を加えたものであってもよい。
【0043】
以下に本発明の化粧シートの形成方法の一例を示す。
【0044】
本発明の化粧シートを形成するには、基材フィルム層の表面に、電子線硬化性樹脂中に光発色性繊維の短繊維を攪拌機で均一に分散させた電子線硬化性組成物を連続的に塗布し、塗膜を形成する。次いで、塗膜上を表面フィルム層により連続的に被覆し、この表面フィルム層上から、窒素ガス雰囲気下で適切な条件の電子線を照射し、塗膜を硬化させて硬化塗膜層を形成し、本発明の化粧シートとする。
【0045】
なお、電子線硬化性組成物の塗布方法としては、キャスト塗工法、ロールナイフコート法、ダイコート法、リバースロールコート法、ロールコート法、グラビアコート法などが挙げられ、中でもキャスト塗工法、ダイコート法などによって、電子線硬化性組成物を塗布すると好ましい。
【0046】
本発明の化粧シートは、光発色性繊維の短繊維を含有させた電子線硬化性樹脂を用い、キャスト工法等によって基材フィルムに塗布されるため、望ましい意匠性を本発明の化粧シートに与えることができる。
【0047】
さらに、本発明の化粧シートに用いる電子線硬化性組成物は、電子線硬化性樹脂と光発色性繊維の短繊維とからなる無溶剤の組成物であり、加工性の優れたものである。
【実施例1】
【0048】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、各実施例で得られた各化粧シートは以下の方法で評価を行った。
【0049】
[ドクタースジの有無]
各実施例で得られた化粧シートを目視観察し、以下の基準で評価した。
○:スジは認められない。
△:スジは認められるが、実用上問題がない。
×:スジは大きく認められ、実用上の問題が大きい。
【0050】
[分散性]
各実施例で得られた化粧シートを目視観察し、以下の基準で評価した。
○:光発色性繊維の短繊維の分散性良好。
△:光発色性繊維の短繊維の分散性は幅方向にややむらがある。
×:光発色性繊維の短繊維は、絡みやむらが大きい。
まず、基材フィルム層として、厚さ300μmの黒色PETGフィルム(シーアイ化成製「GSR」)を用い、これにウレタン系インク(DIC製「XS」)をグラビア印刷法にて塗工して、印刷模様を形成した。
次に、電子線硬化性樹脂A(根上工業社製「アートレジンUN−3320HB」)60質量部と電子線硬化性樹脂B(新中村化学社製「NKエステルA−HD」)40質量部を混合し、約10Pa・s(25℃)に調整し、これに光発色性繊維の短繊維(繊維の短径17μm、長径70μm、長さ1000μm、帝人ファイバー社製「Morphotone」)2質量部を混合し、攪拌機で均一分散させ、電子線硬化性組成物を得た。
前記印刷模様上に、得られた電子線硬化性組成物をダイコーターで厚さ75μmになるように塗工し、塗膜を形成した。
次に、塗膜上を表面フィルム層となる厚さ100μmの裏面易接着処理し、表面がハードコート処理したPETフィルム(中井商事製「レイハイパー」)にて連続的に被覆した。
さらに、表面フィルム層の上から、窒素ガス雰囲気下で、加速電圧300eKV、線量70KGyの条件で電子線照射を行い、電子線硬化性組成物を硬化させて硬化塗膜層とし、化粧シートを形成し、得られた化粧シートについて、各評価を行った。「ドクタースジの有無」および「分散性」の評価は、どちらも○であった。
【実施例2】
【0051】
まず、基材フィルム層として、厚さ300μmの黒色PETGフィルム(シーアイ化成製「GSR」)を用いた。
次に、電子線硬化性樹脂(東亜合成社製「アロニックスM−7100」)約9Pa・s(25℃)に、光発色性繊維の短繊維(繊維の短径17μm、長径70μm、長さ2000μm、帝人ファイバー社製「Morphotone」)2質量部を混合し、攪拌機で均一分散させ、電子線硬化性組成物を得た。
前記基材フィルム層上に、得られた電子線硬化性組成物をダイコーターで厚さ100μmになるように塗工し、塗膜を形成した。
次に、塗膜上を表面フィルム層となる厚さ100μmの裏面易接着処理し、表面がハードコート処理したPETフィルム(中井商事製「レイハイパー」)にて連続的に被覆した。
さらに、表面フィルム層の上から、窒素ガス雰囲気下で、加速電圧250eKv、線量70KGy、速度10m/minの条件で電子線照射を行い、電子線硬化性組成物を硬化させて硬化塗膜層とし、化粧シートを形成し、表面フィルムを剥離して得られた化粧シートについて、各評価を行った。「ドクタースジの有無」および「分散性」の評価は、どちらも○であった。
【実施例3】
【0052】
まず、基材フィルム層として、厚さ150μmの白色PETGフィルム(シーアイ化成製「GSR」)を用い、これにウレタン系インク(DIC製「XS」)をグラビア印刷法にて塗工して、印刷模様を形成した。
次に、電子線硬化性樹脂(東亜合成社製「アロニックスM−7100」)約9Pa・s(25℃)に、光発色性繊維の短繊維(繊維の短径17μm、長径70μm、長さ2000μm、帝人ファイバー社製「Morphotone」)2質量部を混合し、攪拌機で均一分散させ、電子線硬化性組成物を得た。
前記印刷模様上に、得られた電子線硬化性組成物をダイコーターで厚さ100μmになるように塗工し、塗膜を形成した。
次に、塗膜上を表面フィルム層となる厚さ100μmの裏面易接着処理し、表面がハードコート処理したPETフィルム(中井商事製、「レイハイパー」)にて連続的に被覆した。
さらに、表面フィルム層の上から、窒素ガス雰囲気下で、加速電圧300eKV、線量70KGyの条件で電子線照射を行い、電子線硬化性組成物を硬化させて硬化塗膜層とし、化粧シートを形成し、得られた化粧シートについて、各評価を行った。「ドクタースジの有無」および「分散性」の評価は、どちらも○であった。
【0053】
[比較例1]
実施例1において、光発色性繊維の短繊維(繊維の短径17μm、長径70μm、長さ4000μm、帝人ファイバー社製「Morphotone」)を変更したこと以外は実施例1と同様にして化粧シートを形成した。得られた化粧シートの評価は、「ドクタースジの有無」が△、「分散性」の評価は、×であった。
【0054】
[比較例2]
実施例2において、電子線硬化性組成物をダイコーターで厚さ30μmになるように塗工したこと以外は、実施例2と同様にして化粧シートを形成した。得られた化粧シートの評価は、「ドクタースジの有無」および「分散性」の評価は、どちらも×であった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の化粧シートは、意匠性に優れており、たとえば、キッチン収納庫用扉、家電製品等に用いることができる。
【0056】
また、本発明の化粧シートは硬化塗膜層に、特定の長さの光発色性繊維の短繊維を含有しているので、分散性および意匠性に優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム層と、長さが75〜3000μmの光発色性繊維の短繊維を含有する厚さが50〜250μmの電子線硬化性樹脂の硬化塗膜層と、表面フィルム層とを有する化粧シート。
【請求項2】
前記光発色製繊維は、屈折率の異なる二種類の樹脂を交互に積み重ねた光干渉による発色効果を有する多層構造を内部に備えた繊維で、繊維断面の短径が10〜20μm、長径が40〜70μmの短繊維である請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記基材フィルム層は、印刷模様を有している請求項1又は2に記載の化粧シート。
【請求項4】
基材フィルム層の表面に、長さが75〜3000μmの光発色性繊維の短繊維を含有した電子線硬化性樹脂を50〜250μmの厚さで塗布して塗膜を得る塗膜形成工程と、
該塗膜上に表面フィルムを被覆する被覆工程と、
前記塗膜に電子線を照射する硬化工程と、
から少なくとも構成されている化粧シートの製造方法。
【請求項5】
前記光発色製繊維は、屈折率の異なる二種類の樹脂を交互に積み重ねた光干渉による発色効果を有する多層構造を内部に備えた繊維で、繊維断面の短径が10〜20μm、長径が40〜70μmの短繊維である請求項4に記載の化粧シートの製造方法。

【公開番号】特開2010−234709(P2010−234709A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86531(P2009−86531)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000106726)シーアイ化成株式会社 (267)
【Fターム(参考)】