説明

化粧シート

【課題】長期の暴露等によっても剥離などの問題が発生しない耐候性に優れた化粧シートを提供すること。
【解決手段】熱可塑性樹脂を主材として耐候安定剤を添加した基材シート上に、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層を少なくともこの順に積層して化粧シートにおいて、前記基材シートの樹脂100重量%に対して多孔質炭酸カルシウムを2%〜60重量%添加してなること、透明熱塑性樹脂層が、アクリル系熱可塑性樹脂を主材として構成されたものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建築物の内外装材や、造作材、建具等の建築資材、家具什器類、車両内装、住設機器や家具製品等の表面化粧等に使用するための高耐候性の化粧シートに関するものであり、例えば玄関引戸等の耐候性や耐熱性が必要とされる建築部材の表面化粧用として好適な高耐候性の化粧シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
着色した熱可塑性樹脂基材シートに絵柄模様を施した後、透明熱可塑性樹脂層を設けた構造の化粧シートが知られているが、外装用に高耐候性を持たせるには、こられ樹脂層に紫外線吸収剤や光安定剤などの耐候安定剤が適宜添加されるものとなる。しかしながら、長期の暴露等により、前記耐候安定剤が層間や表面にブリードアウトしてきて、層間密着強度を低下させて、剥離が発生することがあった。
【特許文献1】特開平09−096089号公報
【特許文献2】特開平10−157025号公報
【特許文献3】特開2003−191382号公報
【特許文献4】特開平11−263889号公報
【非特許文献1】吉村英之、岡山県工業技術センター、技術情報、No.461、p2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はこの問題点を解決するためになされたものであり、すなわちその課題とするところは、長期の暴露等によっても剥離などの問題が発生しない耐候性に優れた化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はこの課題を解決したものであり、すなわちその請求項1記載の発明は、熱可塑性樹脂を主材として耐候安定剤を添加した基材シート上に、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層を少なくともこの順に積層して化粧シートにおいて、前記基材シートの樹脂100重量%に対して多孔質炭酸カルシウムを2%〜60重量%添加してなることを特徴とする化粧シートである。
【0005】
またその請求項2記載の発明は、前記透明熱塑性樹脂層が、アクリル系熱可塑性樹脂を主材として構成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の化粧シートである。
【0006】
またその請求項3記載の発明は、前記透明熱可塑性樹脂層の上にさらに表面保護層を設けてなることを特徴とする請求項1または2のいずれか記載の化粧シートである。
【発明の効果】
【0007】
本発明はその請求項1記載の発明により、基材シートに添加した多孔質炭酸カルシウムが耐候安定剤のブリードを吸収するので、絵柄層のインキ界面の密着性が落ちることが無く、剥離などの問題が発生しない。また耐候性にすぐれたものとなる、という作用効果を奏する。
【0008】
またその請求項2記載の発明により、透明熱塑性樹脂層にアクリル系熱可塑性樹脂を用いることで、より優れた耐候性能を持つ化粧シートを得ることが可能となるという作用効果を奏する。
【0009】
またその請求項3記載の発明により、適切な耐性を有する表面保護層を設けることで、より優れた耐候性能を持つ化粧シートを得ることが可能となるという作用効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明の化粧シートの一実施例の断面の構造を示す。基材シート1上に絵柄模様層2、透明熱可塑性樹脂層3を設けてなる。場合によっては表面保護層4、アンカー層5を設けても良い。
【0011】
本発明における基材シート1は熱可塑性樹脂を主材とするが、その熱可塑性樹脂の種類には特に制限はなく、基本的には従来の一般の化粧シートに使用されていたものと同様のものを使用することができる。具体的には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂や、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のオレフィン系共重合体樹脂などのポリオレフィン系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体、1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン−テトラフロロエチレン共重合体、エチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂等、或いはそれらの2種以上の混合物、共重合体、複合体、積層体等を使用することができる。
【0012】
また、前記の各種の熱可塑性樹脂の中でも、近年の環境問題に対する社会的な関心の高まりに鑑みれば、ポリ塩化ビニル樹脂等の様な塩素(ハロゲン)を含有する樹脂の採用は望ましいものではなく、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂を採用することが望ましい。中でも各種物性や加工性、汎用性、経済性等の面からは、ポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂(非晶質又は二軸延伸)を使用することが最も望ましい。これらのうちポリオレフィン系樹脂は、従来よりポリ塩化ビニル樹脂を代替する化粧シート用材料として採用が進んでいたものの、切削加工性の悪さが目立つことが指摘されて来たが、本発明によって切削加工性の格段の改善が可能となり、本発明の効果が最も顕著に発現する素材でる。
【0013】
前記ポリオレフィン系樹脂としては、既に列挙した様に多くの種類のものが知られており、それらの中から化粧シートの使用目的等に応じて適宜選択して使用すれば良いが、中でも一般的な用途に最も好適なのは、ポリプロピレン系樹脂、すなわちプロピレンを主成分とする単独または共重合体であり、具体的には、例えばホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂等を単独または適宜配合したり、それらにさらにアタクチックポリプロピレンを適宜配合した樹脂等を使用することができる。また、プロピレン以外のオレフィン系単量体を含む共重合体であってもよく、例えば、ポリプロピレン結晶部を有し、且つプロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィン、好ましくはエチレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1またはオクテン−1、のコモノマーの1種または2種以上を15モル%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体などを例示することができる。また、通常ポリプロピレン系樹脂の柔軟化に用いられている低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体またはその水素添加物等の改質剤を適宜添加することもできる。
【0014】
基材シート1には耐候安定剤を添加される。耐候性安定剤としては、紫外線吸収剤、光安定剤などがあり、紫外線吸収剤としてはベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾイミン系など、光安定剤としてはヒンダートアミン系、ヒンダードフェノール系などのものが使用可能である。
【0015】
本発明の特徴として、基材シート1には表面を多孔質にした炭酸カルシウムが添加される。基材シートの熱可塑性樹脂に対し2%〜60重量%含有されたことにより、ブリードアウトしようとする紫外線吸収剤を吸収するためインキ密着性が落ちず、耐候性が増す。
表面を多孔質にした炭酸カルシウムは、炭酸カルシウム1kgと乳酸水溶液100gをミキサーで混合後、大気中100℃で3時間乾燥し、大気中で300℃で2時間焼成して得ることが可能である。
【0016】
その他本発明の基材シート1は適宜着色するために着色剤が添加可能であり、その他各種耐性を設けるため熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤(ステアリン酸、金属石けん等)、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤、艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上が添加されていても良い。
【0017】
通常、基材シート1は着色されることで裏面に貼り合わせる化粧板用基材シート用基材の表面の色のばらつきや欠陥等を隠蔽するために、隠蔽性の不透明に着色されたものが用いられる場合が多いが、化粧材用基材の表面の質感を活かすために、透明乃至半透明のものが用いられる場合もある。
【0018】
絵柄模様層2は、基材シート1にグラビア印刷などの印刷により印刷インキ層として設けることが可能である。印刷に用いられるインキとしては、基材シートとの密着性を考慮して選択する。樹脂系としては、ウレタン樹脂系やポリエステルポリオールにポリイソシアネートを添加してなる2液タイプのウレタン系樹脂、塩酢ビ系樹脂、アクリル樹脂およびポリエステル樹脂の混合系などが一般的である。これらの樹脂へ有機、無機顔料、染料を添加することにより種々の色相を持つインキが調整される。
【0019】
透明熱可塑性樹脂層3は、前記基材シート1に用いる熱可塑性樹脂として示されたものが使用可能であり、基材シート1と同様の材質のものでも良いし、異なっていても良い。また、複数混合しても良いし、多層構造としても良い。特には、前記絵柄模様層2、また適宜設けるアンカー層5との密着を考慮して選定されるが、耐候性を考慮するとアクリル系熱可塑性樹脂を主材として構成されたものとすることが最適である。層厚としては50〜100μmが好適である。
【0020】
前記透明熱可塑性樹脂層3にアクリル系熱可塑性樹脂材料を用いない場合でも、表面保護層4を設けることで耐候性を向上させることが可能である。表面保護層4の厚みとしては、一般的には1〜20μm程度が好適であり、中でも3〜10μm程度が最も好適である。しかしながら、アンカー層5を設け、木質系基材に積層した場合などは、60μm〜130μm程度であっても良い。
【0021】
さらに、表面保護層4には艶調整層としての機能を兼ねて設けることができ、必要に応じて例えば紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、着色剤、充填剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、帯電防止剤、滑剤、減摩剤、艶調整剤等の添加剤を適宜添加することもできる。或いは必要に応じて、別の表面保護層または艶調整層もしくはその両者の機能を兼ね備えた層を設けても良い。
【0022】
一方、絵柄模様層2と透明熱可塑性樹脂層3との間には、使用される絵柄インキの種類、透明熱可塑性樹脂層に用いる樹脂との密着性を考慮してアンカー層5を適宜設けても良い。用いるものは接着剤としての作用を奏するものであればよく、ウレタン系やポリエステルポリオールにポリイソシアネートを添加してなる2液タイプのウレタン系樹脂、塩酢ビ系樹脂、アクリル樹脂およびポリエステル樹脂の混合系樹脂などが一般的である。またラミネート方法によっては、ランダムポリプロピレン、ポリエチレン等の接着性樹脂を用いてもよい。
【実施例1】
【0023】
基材シート1として厚さ80μmの着色ポリエチレン系樹脂シート(ポリエチレン樹脂100重量部、多孔質炭酸カルシウム充填剤15部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.5重量部、ヒンダードアミン系光安定剤0.5重量部添加)を用い、この表面に2液ウレタン樹脂系インキによりグラビア印刷にて絵柄模様層2を設けた。さらにこの上にアンカー層5としてポリエステル樹脂−塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂−ウレタン樹脂共重合樹脂を用い、これを乾燥後の塗布量が2g/mとなるように塗布し、この上に透明熱可塑性樹脂層3として厚さ50μmのアクリル樹脂(HBS001 三菱レーヨン株式会社製)を積層して本発明の化粧シートを得た。
【実施例2】
【0024】
アンカー層5として2液ウレタン樹脂を用い、乾燥後の塗布量を1g/m、さらにマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を接着性樹脂層を介して、透明熱可塑性樹脂層3として厚さ80μmのランダムポリプロピレン樹脂100重量部にトリアジン系紫外線吸収剤5重量を添加したものを用い、表面保護層4として耐候安定剤を添加した2液硬化型ウレタン系樹脂を厚さ10μmで設けた以外は実施例1と同様にして本発明の化粧シートを得た。
【0025】
<比較例1>
多孔質炭酸カルシウム充填剤を添加しなかった以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。
【0026】
<比較例2>
多孔質炭酸カルシウム充填剤を添加しなかった以外は実施例2と同様にして化粧シートを得た。
【0027】
<耐候性試験>
実施例1,2、比較例1,2の化粧シートを鋼鈑基材の表面に接着剤を介して貼り合わせ、メタルハライドランプによる促進耐候性試験機を用いて耐候性をテストした。
【0028】
メタルウェザー照射後の高耐候性化粧シート層間強度測定(N/inch)
0時間 120時間 216時間 312時間 408時間
実施例1 44 44 42 37 34
実施例2 45 43 42 35 33
比較例1 47 44 32 22 5
比較例2 46 43 30 20 4
【0029】
<クロスカット剥離試験>
実施例1,2、比較例1,2の化粧シートをアルミ基材の表面に接着剤を介して貼り合わせ、カッターナイフにて表面にクロスカットを入れ、クロスカットの中心部をエリクセンにて5mm押出し、メタルハライドランプによる促進耐候性試験機を用いて剥離の発生をテストした。
【0030】
0時間 120時間 216時間 312時間 408時間
実施例1 異常無し 異常無し 異常無し 異常無し 異常無し
実施例2 異常無し 異常無し 異常無し 異常無し 異常無し
比較例1 異常無し 異常無し 異常無し 剥離発生 剥離発生
比較例2 異常無し 異常無し 異常無し 剥離発生 剥離発生
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の化粧シートの一実施例の断面の構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1…基材シート
2…絵柄模様層
3…透明熱可塑性樹脂層
4…表面保護層
5…アンカー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を主材として耐候安定剤を添加した基材シート上に、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、を少なくともこの順に積層して化粧シートにおいて、前記基材シートの樹脂100重量部に対して多孔質炭酸カルシウムを2〜60重量部添加してなることを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記透明熱塑性樹脂層が、アクリル系熱可塑性樹脂を主材として構成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記透明熱可塑性樹脂層の上にさらに表面保護層を設けてなることを特徴とする請求項1または2のいずれか記載の化粧シート。

【図1】
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【公開番号】特開2008−272993(P2008−272993A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117807(P2007−117807)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】