説明

化粧品スキンケア製剤における抗酸化効果のための作用物質を同定及び評価するための転写プロファイリング及びバイオマーカーに基づく方法

皮膚への加齢に関連した酸化損傷に関連した遺伝子及び遺伝子産物に関する遺伝子パネル、マイクロアレイ、及びバイオマーカーパネル、並びに皮膚への酸化損傷の予防、逆転、又は減少のための化粧品剤の同定及び評価のための転写プロファイリングに基づく方法。第2相酵素の発現を増加させるために、抗酸化応答要素のnrf2媒介性活性化を誘発することができる化粧品剤及びその化粧品剤を含む組成物、その化粧品剤を採用して、皮膚の最適な酸化還元状態を回復させるための方法、並びにnrf2媒介性機構を介して作用する化粧品剤を同定及び評価するための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の内的及び外的老化に基づく酸化的ストレスに関する遺伝子パネル、バイオマーカー、DNAマイクロアレイ、及び転写プロファイリング技術に関する。より具体的には、本発明は、皮膚への適用のために製剤化された安全かつ有効な量の特定作用物質を含む、皮膚細胞及び化粧品組成物における抗酸化効果のための作用物質を同定及び評価するための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、哺乳類生物の最も大きく、かつ最も可視的な器官である。したがって、老化の兆候は、皮膚において最も容易に明らかであり、種々の遺伝子機構、環境機構、及びホルモン機構を伴う複合過程に起因する。人々は、概して、内的かつ経時的な老化と外的「環境」老化とを区別することができ、両方の過程は、相互に重なる作用とともに発生する。フリーラジカルは、一連の内的老化及び外的老化の両方において中心的役割を果たす。経時的な老化において、フリーラジカルが健常なヒトの代謝に由来する一方で、外的老化において、フリーラジカルは、紫外線放射曝露、喫煙、アルコール消費、及び空気汚染等の環境障害/ストレスによって産生される。実際、皮膚への紫外線放射誘発性損傷の半分以上がフリーラジカルの紫外線誘発性形成に起因すると推定される。活性酸素種(ROS)として既知のフリーラジカルは、紫外線による皮膚老化及びメラニン形成に著しい影響を及ぼす。「老化のフリーラジカル説」は、1956年にHarmanらによって最初に提案され、フリーラジカルの形成と中和との間の不均衡は、依然として、皮膚老化の作用を説明するのに最も広く受け入れられている説である。
【0003】
酸化的ストレスは、解毒、修復、及び防御する細胞応答の能力と比較して、活性酸素種(ROS)の過剰産生によって引き起こされる。細胞は、代謝エネルギーの一定入力を介して所望の還元状態を維持する酵素によって保たれる還元環境の維持を求める。この正常な酸化還元状態における妨害は、過酸化物及び超酸化物等のROSを含むフリーラジカルの産生を介して毒性作用を引き起こす。フリーラジカルは、種々の細胞組織膜、脂質、タンパク質、及び核酸を損傷し得る不対電子を有する高度の反応分子である。フリーラジカルは、皮膚老化に更なる影響を及ぼすと考えられる炎症にもつながる。フリーラジカルの産生が加齢に伴って増加する一方で、それらに対抗する内的防御機構の完全性及び能力は減少する。不均衡は、細胞組織への進行性かつ累積損傷につながり、環境老化が自然な老化過程に重なる老化及び促進老化をもたらす。
【0004】
抗酸化物質は、内的及び外的酸化的ストレスの両方からの保護を提供する物質である。皮膚への抗酸化物質の局所適用が、フリーラジカルを中和又は解毒し、かつそれらの老化作用のうちのいくつかを改善又は予防し得ると直観的に理解されるようである。抗酸化物質を含み、かつ皮膚への局所投与を目的とした化粧品組成物は、何世紀にもわたって使用されており、製剤は、古代文化の遺物の中に保存された状態で見つけられている。しかしながら、伝統的には、化粧品業界は、ビタミンC及びE等のフリーラジカル捕捉及び中和によって作用する抗酸化物質の提供に焦点を当てている。直接作用する抗酸化物質を含む化粧品製剤は、そのような作用物質が生来不安定であり、酸化環境において容易に酸化されるため、それらが処理しようとするフリーラジカル不均衡を引き起こす同一の環境障害によって不活性の状態にし得るという事実に悩まされている。更に、皮膚への吸収を評価するのは困難であり、有効性を評価する総合的な能力は、概して、皮膚における捕捉を達成させるインビトロ捕捉可能性の測定値の間の結び付きの推定、並びに治療計画にわたる皮膚の外観検査及び消費者の自己報告に基づく主観性及び依存性を伴っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、化粧品業界は、直接的捕捉以外の機構を介して作用する抗酸化剤及びそれらを含む化粧品製剤を必要としており、提案された作用物質の抗酸化効果及び美容治療計画を評価するための改善された客観的方法を更に必要としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
結果的に、本発明は、皮膚細胞若しくは組織における酸化的ストレスを逆転させるか、あるいは予防するのに有効であるか、あるいは望ましい酸化還元状態まで皮膚を回復させるのに有効である化粧品剤を同定し、かつ客観的に評価するための方法を提供することによって、当該技術分野における欠陥に取り組む。複数の内的及び外的抗酸化機構を介して皮膚に対する酸化均衡を維持するか、又は回復させるために作用する作用物質の同定及び評価を可能にする方法が提供される。より頑強な抗酸化作用を達成するために、内的抗酸化応答若しくは防御の誘発、内的抗酸化応答若しくは防御の増加、及び/又はフリーラジカルの直接的捕捉によって、酸化防止の利点を提供することが確認されている化粧品剤及び組成物が提供される。
【0007】
独自の22個一組の遺伝子を発見するために、DNAマイクロアレイ転写分析及び特定の生物情報処理及び統計的処理に関する技術が採用され、これらの遺伝子の転写プロファイル及びこれらの遺伝子の発現産物の発現プロファイルの検査は、皮膚の酸化還元状態及び提案された抗酸化剤への皮膚細胞の応答についての情報を提供する。
【0008】
本発明の一実施形態は、酸化的ストレスの機能としてヒト皮膚において転写的に調節される遺伝子を含む遺伝子パネルを対象とし、2つ以上の遺伝子を含むパネルは、図1の表1に示される遺伝子からなる群から選択される。一態様では、独創的な遺伝子パネルを構成する遺伝子の発現産物を含むバイオマーカーパネルが提供される。別の態様では、本発明は、遺伝子パネルを構成する遺伝子に対応する核酸に特異的にハイブリダイズする固定化オリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイを提供する。マイクロアレイは、スクリーニング方法及び本発明による遺伝子パネルを組み込む方法を達成するのに特に有用である。
【0009】
有効な化粧品剤を同定するためのいくつかのスクリーニング方法が提供される。一実施形態は、皮膚への加齢に関連した酸化損傷を予防するか、あるいは逆転させるのに有効な作用物質を同定するための独創的なスクリーニング方法を対象とする。方法は、(a)若い皮膚、皮膚細胞、若しくは皮膚等価物についての参照転写プロファイルを提供する工程と、(b)老化皮膚、皮膚細胞、若しくは皮膚等価物についての参照転写プロファイルを提供する工程と、(c)老化皮膚、皮膚細胞、若しくは皮膚等価物を、提案された作用物質と接触させて、試験転写プロファイルを生成する工程と、(d)試験転写プロファイルを、参照プロファイルと比較して、試験転写プロファイルが、若い参照プロファイルに向かって、かつ/又は老化参照プロファイルから離れて一方向に移動する場合、提案された作用物質を、皮膚への加齢に関連した酸化損傷を予防するか、あるいは逆転させるのに有効であると同定する工程とを含み、転写プロファイルは、本発明によるマイクロアレイで生成される。特定の態様では、有効であると同定される作用物質を含む組成物及び皮膚を組成物で処理する方法も提供される。更なる実施形態は、酸化的ストレス下の皮膚の所望の酸化還元均衡を回復させるのに有効な作用物質を同定又は評価するためのスクリーニング方法を対象とする。方法は、酸化的ストレス下の皮膚についての参照転写プロファイル又はバイオマーカープロファイルを提供する工程と、試験皮膚、皮膚細胞、若しくは皮膚等価物を、提案された作用物質とある期間接触させる工程と、試験皮膚についての試験転写プロファイル又はバイオマーカープロファイルを生成する工程と、試験プロファイルを参照プロファイルと比較する工程と、試験プロファイルが実質的に参照プロファイルを模倣する場合、提案された作用物質が、所望の酸化還元均衡を回復させるのに有効であると決定する工程とを含み、転写プロファイルは、本発明によるマイクロアレイに由来する。
【0010】
更なる実施形態によると、化粧品剤を、皮膚、皮膚細胞、又は皮膚等価物における酸化的ストレスへの細胞内応答を誘発するか、あるいは増加させることができるNrf2活性化因子として同定するためのスクリーニングアッセイが提供され、細胞内応答は、抗酸化応答要素(ARE)からの転写における上方調節である。アッセイは、シグナル伝達遺伝子に結合されるAREを有するAREレポーター細胞株を提供する工程であって、シグナル伝達遺伝子が第2相(Phase 2)酵素をコードする、工程と、AREレポーター細胞を、Nrf2活性化因子として提案される化粧品剤に接触させる工程と、シグナルを測定することによって、シグナル伝達遺伝子のAREからの転写を測定する工程と、シグナルが検出される場合、化粧品剤が細胞内応答を誘発するか、あるいは増加させることができるNrf2活性化因子であると決定する工程とを含む。態様は、抗酸化応答要素(ARE)のNfr2媒介性転写を調節することによって、酸化防止の利点を皮膚に提供する少なくとも1つの作用物質を含む、皮膚への局所適用のために製剤化される組成物を含む。
【0011】
本発明の種々の実施形態の特性及び利点は、本発明の幅広い表現を与えるよう意図される特定の実施形態の図及び実施例を含む以下の記述から明らかになる。種々の修正は、本発明の本記述及び実践から当業者には明らかである。範囲が開示の特定の形態に制限されるよう意図されず、本発明は、「特許請求の範囲」によって定義される本発明の趣旨及び範囲に収まるすべての修正、等価物、及び代替物を網羅する。
【0012】
本明細書に組み込まれ、かつその一部を構成する添付の図は、本発明の特定の実施形態を示し、概要及び詳述を伴って、本発明の態様の原理を説明する役割を果たし、「特許請求の範囲」によって定義される本発明の範囲を制限すると解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】酸化的ストレスの機能として老化皮膚において転写的に調節された際の、特定の生物情報及び統計的手法の適用と併用されるDNAマイクロアレイ転写分析によって同定された22個の遺伝子の表。表は、遺伝子発現産物、遺伝子記号、それが酸化的ストレスに関するとして既知の機能、及びそれぞれの同定された遺伝子に関するアレイに基づく折り畳み変化データを含む。
【図1B】酸化的ストレスの機能として老化皮膚において転写的に調節された際の、特定の生物情報及び統計的手法の適用と併用されるDNAマイクロアレイ転写分析によって同定された22個の遺伝子の表。表は、遺伝子発現産物、遺伝子記号、それが酸化的ストレスに関するとして既知の機能、及びそれぞれの同定された遺伝子に関するアレイに基づく折り畳み変化データを含む。
【図1C】酸化的ストレスの機能として老化皮膚において転写的に調節された際の、特定の生物情報及び統計的手法の適用と併用されるDNAマイクロアレイ転写分析によって同定された22個の遺伝子の表。表は、遺伝子発現産物、遺伝子記号、それが酸化的ストレスに関するとして既知の機能、及びそれぞれの同定された遺伝子に関するアレイに基づく折り畳み変化データを含む。
【図2】酸化ラジカルの存在によって誘発される細胞解毒系を示す。具体的には、反応性求電子種の存在に応答して上方調節される酵素の第2相ファミリーの発現が示される。
【図3】抗酸化応答要素(ARE)のNfr2媒介性活性化の一般的機構を示す。
【図4A】オリベム(商標)460(オリーブ油DFFAP)、シグナリン(商標)(オリーブ油BJO)、及びGFF(酵母発酵濾液)によるNrf2媒介性転写のARE活性化アッセイ及び用量依存的調節を示す。
【図4B】オリベム(商標)460(オリーブ油DFFAP)、シグナリン(商標)(オリーブ油BJO)、及びGFF(酵母発酵濾液)によるNrf2媒介性転写のARE活性化アッセイ及び用量依存的調節を示す。
【図4C】オリベム(商標)460(オリーブ油DFFAP)、シグナリン(商標)(オリーブ油BJO)、及びGFF(酵母発酵濾液)によるNrf2媒介性転写のARE活性化アッセイ及び用量依存的調節を示す。
【図5】抗酸化応答有効性の尺度として、HO−1の増加に対するGFFとオリベム(商標)460(オリーブ油DFFAP)との間の相乗効果を示す。
【図6】ヒト皮膚外植片におけるHO−1バイオマーカーアッセイの正当性を示す。
【図7A】HO−1バイオマーカーアッセイ:図4のそれぞれの作用物質についての第2相酵素であるHO−1におけるELISAでのARE結果の確認を示す。
【図7B】HO−1バイオマーカーアッセイ:図4のそれぞれの作用物質についての第2相酵素であるHO−1におけるELISAでのARE結果の確認を示す。
【図7C】HO−1バイオマーカーアッセイ:図4のそれぞれの作用物質についての第2相酵素であるHO−1におけるELISAでのARE結果の確認を示す。
【図7D】HO−1バイオマーカーアッセイ:図4のそれぞれの作用物質についての第2相酵素であるHO−1におけるELISAでのARE結果の確認を示す。
【図8】酸化的ストレスの機能として老化皮膚において調節されることを以前に予想又は決定されていない遺伝子の表。
【図9】化粧品剤オリベム(商標)460(オリーブ油DFFAP)及びGFF(酵母発酵濾液)についての抗酸化プロファイルを評価するために独創的な方法の一実施形態を示す転写プロファイルデータ。
【図10A】提案された化粧品剤GFF(酵母発酵濾液)、シグナリン(商標)(オリーブ油BJO)、及びオリベム(商標)460(オリーブ油DFFAP)についてのARE活性化アッセイ結果の表。
【図10B】提案された化粧品剤GFF(酵母発酵濾液)、シグナリン(商標)(オリーブ油BJO)、及びオリベム(商標)460(オリーブ油DFFAP)についてのARE活性化アッセイ結果の表。
【図10C】提案された化粧品剤GFF(酵母発酵濾液)、シグナリン(商標)(オリーブ油BJO)、及びオリベム(商標)460(オリーブ油DFFAP)についてのARE活性化アッセイ結果の表。
【図11A】提案された化粧品剤GFF(酵母発酵濾液)、シグナリン(商標)(オリーブ油BJO)、及びオリベム(商標)460(オリーブ油DFFAP)についてのHO−1 ELISA結果の表。
【図11B】提案された化粧品剤GFF(酵母発酵濾液)、シグナリン(商標)(オリーブ油BJO)、及びオリベム(商標)460(オリーブ油DFFAP)についてのHO−1 ELISA結果の表。
【図12】独創的な方法に従って、抗酸化応答要素(ARE)のNrf2媒介性転写を調節することによって、酸化防止の利点を皮膚に提供する可能性において、「ヒット」として同定される化合物を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
皮膚細胞を含む細胞の最適な健康状態は、酸化剤及び抗酸化物質の微妙な均衡の維持を必要とする。この均衡が乱されるため、酸化剤が細胞の抗酸化能力を圧倒するとき、著しい損傷が発生し得る。この損傷は、細胞タンパク質、膜脂質、及びDNAの機能に影響を及ぼし、検査を受けない場合、生物の低下した健康状態をもたらす。酸化的ストレスの損傷効果は、皮膚細胞、口腔細胞、及び呼吸細胞で最も容易に見られる。
【0015】
活性酸素種(ROS)は、紫外線放射を受けた皮膚等の環境障害又は代謝及び炎症等の内的過程由来の皮膚細胞において生成される特に有害なフリーラジカルである。ROSは、高色素性しみ、しわ、及びDNA損傷をもたらす紫外線による老化の過程における主な要因であり、紫外線によって老化した皮膚に見られ、かつそれに関連する損傷の大部分を占める。老化のROS理論は、1950年代後半に最初に提案され、現在でも依然として最も広く受け入れられている老化の理論である。ROS理論によると、累積した環境及び代謝過程は、酸化的ストレスにつながる。酸化的ストレスは、MMPの上方調節及び皮膚マトリックスの分解を特徴とする炎症、低下した酵素機能及びタンパク質架橋を特徴とする修復機能性能力の減少を誘発する。これらは、皮膚の減少したコラーゲン含量、減少したGAG、及び増加した弾力線維症に現れる。ビタミンA、C、及びE等のビタミン並びに代謝産物を減少させることによって、酸化的ストレスへの最初の第1段階細胞応答が提供される。しかしながら、連続攻撃の際に、これらは枯渇させられ得、防御タンパク質、すなわち、第2相酵素の上方調節及び内因性系の発現及び分泌の増加を含む第2段階細胞応答が結果として起きる。最初の第1段階応答及び増大した第2段階応答を含む細胞解毒系の図式が図2に示され、抗酸化応答要素(ARE)からのNfr2媒介性転写、第2相酵素をコードする遺伝子に結合されるプロモータ領域に応答して、増加した発現を呈する第2相酵素の部分的なリストも含む。
【0016】
化粧品業界は、可視的な老化の兆候を減少させるか、予防するか、あるいは逆転させることを目的とした多数のスキンケア製品を提供する。ゲノム科学及びプロテオーム科学の成長から得られた洞察によって、この業界の基礎となる、外観の改善への注目は、老化作用のうちの1つに対する取り組みから、それらの作用に反映される過程に対する取り組みに移行している。本発明者は、若い皮膚と、老化皮膚と、紫外線によって老化した皮膚との間に異なる形で現される酸化的ストレス及び抗酸化防御に関連した遺伝子の集中的なパネルを選別するために、ゲノム技術の適用に努めた。22個の遺伝子の結果として生じるパネル(図1)は、外的及び内的老化皮膚における酸化的ストレスの証拠を提供し、皮膚における最適な酸化還元均衡の維持への特定の関連性を有する転写因子及び酵素をコードする相当数を含む。本分析の結果は、過酸化水素のレベルの増加を引き起こす老化皮膚における抗酸化防御の調節不全を実証し、かつ酸化的ストレスの証拠を提供する。
【0017】
したがって、本発明の一実施形態は、加齢に関連した酸化的ストレスの機能としてヒト皮膚において調節される遺伝子を含む遺伝子パネルを提供する。パネルは、表1、図1に示される遺伝子からなる群から選択される2つ以上の遺伝子を含む。転写分析は、Nrf2をコードするNRFT、抗酸化応答要素(ARE)を活性化するDNA結合タンパク質、及びMtf1をコードするMTF1、すなわち、金属毒性に対する重要な防衛要素であるメタロチオネインの調節因子を含む、抗酸化防御機構を調節する22個の表中の遺伝子及び遺伝子産物の間の加齢に関連した主要な転写因子の下方調節を明らかにした。結果的に、特定の実施形態において、調節は、転写調節を含み、選択された遺伝子は、(a)転写調節が下方調節を含む、1つ以上のNRF2、MTF1、及びGPX2、並びに(b)転写調節が上方調節を含む、CP、CLU、TLR4、SOD3、及びAOX1のうちの1つ以上を含む。酸化的ストレスは、皮膚の暦年齢及び/又は皮膚に影響を与える環境要因のいずれか又は両方の結果として経験され得る。皮膚に酸化的ストレスを引き起こす周知の環境要因には、紫外線A及び紫外線Bの両方の紫外線放射への皮膚の曝露、直接及び間接喫煙、アルコールの消費、及び空気汚染が含まれる。別の特定の実施形態では、酸化的ストレスは、H22産生に由来し、選択された遺伝子は、(a)調節が転写下方調節を含む、GPX2、PRDX2、及びCAT、並びに(b)調節が転写上方調節を含む、SOD3及びAOX1を含む。
【0018】
表1に示される遺伝子はそれぞれ、加齢に関連した酸化的ストレスに関与する特定のタンパク質をコードする。皮膚細胞又は皮膚組織における遺伝子産物の発現の測定値は、皮膚の酸化還元状態についての情報も提供する。遺伝子産物は、臨床的に関連するバイオマーカーパネルを形成する。本発明者は、CP(セルロプラスミン)及びCLU(クラスタリン)等の酸化的ストレスのある特定のマーカーをコードする遺伝子が、老化皮膚において実質的に上方調節されることを見出した。
【0019】
遺伝子パネルの臨床的有用性には、RT−PCR等の標準の分子生物学的手法の使用、及び全22個の遺伝子パネル又はある関連するその小集団のハイスループット転写プロファイリングのために設計される低密度のDNAチップの提供が含まれる。したがって、本発明は、遺伝子パネル、及び本発明による遺伝子パネルうちのいずれかを構成する遺伝子に対応する核酸に特異的にハイブリダイズする固定化オリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイの、RT−PCR分析のための一組の特定のオリゴヌクレオチドプライマーを提供する。所与の一組の遺伝子をプロファイルすることができる低密度のDNAマイクロアレイ/チップの産生は、当該技術分野において既知の方法を用いて、十分に当業者の能力の範囲内である。このパネルはまた、ELISA、固定化抗体を伴うビーズに基づくアッセイ、及びウエスタンブロット法、並びに質量分光検出を伴うプロテオーム分析等の標準の免疫化学的方法を用いて、タンパク質発現レベルでスクリーニングすることによって利用され得る。
【0020】
本発明は、皮膚への加齢に関連した酸化損傷を予防するか、あるいは逆転させるのに有効な作用物質を同定するためのスクリーニング方法を更に提供する。方法は、(a)若い皮膚、皮膚細胞、若しくは皮膚等価物についての参照転写プロファイルを提供する工程と、(b)老化皮膚、皮膚細胞、若しくは皮膚等価物についての参照転写プロファイルを提供する工程と、(c)老化皮膚、皮膚細胞、若しくは皮膚等価物を、提案された作用物質と接触させて、試験転写プロファイルを生成する工程と、(d)試験転写プロファイルを、参照プロファイルと比較して、試験転写プロファイルが、若い参照プロファイルに向かって、かつ/又は老化参照プロファイルから離れて一方向に移動する場合、提案された作用物質を、皮膚への加齢に関連した酸化損傷を予防するか、あるいは逆転させるのに有効であると同定する工程とを含む。本方法を達成するのに必要な転写プロファイリングは、本発明によるマイクロアレイを含むDNAチップ、RT−PCR、又は転写分析ための他の標準方法によって着手され得る。遺伝子産物の発現プロファイリング及びタンパク質発現の測定は、ELISA及び他の免疫アッセイ、ウエスタンブロット法、並びに質量分光を含むが、それらに限定されない当該技術分野において周知の多くのプロテオーム法によって着手され得る。
【0021】
加齢に関連した酸化損傷を減少させるのに有効であると同定される作用物質は、皮膚への局所適用のために化粧品組成物に製剤化され得る。そのような組成物は、酸化的ストレスによる可視的な老化の兆候を予防するか、あるいは減少させるために、消費者によって皮膚の処理に利用され得る。
【0022】
本発明は、酸化的ストレス下の皮膚の所望の酸化還元均衡を回復させるのに有効な作用物質を同定又は評価するためのスクリーニング方法を更に提供し、本方法は、酸化的ストレス下の皮膚についての参照転写プロファイル又はバイオマーカープロファイルを提供する工程と、試験皮膚、皮膚細胞、又は皮膚等価物を、提案された作用物質とある期間接触させる工程と、試験皮膚についての試験転写プロファイル又はバイオマーカープロファイルを生成する工程と、試験プロファイルを参照プロファイルと比較する工程と、試験プロファイルが実質的に参照プロファイルに重なり合う場合、提案された作用物質が、所望の酸化還元均衡を回復させるのに有効であると決定する工程とを含む。この場合、細胞解毒及び防御/修復応答を模倣する作用物質が求められ、かつ同定される。同定された作用物質又は有効であると評価された作用物質を含む化粧品組成物は、皮膚への局所適用のために製剤化される。
【0023】
求電子試薬及び活性酸素種の継続的な存在に応答して増加した第2相酵素の発現は、このタンパク質ファミリーに共通した抗酸化応答要素(ARE)からの転写によって駆動される。転写上方調節は、カタラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、及びヘムオキシゲナーゼ(HO−1)等の抗酸化関連タンパク質の増加をもたらす。これらの酵素は、O2−及びH22等の酸化中間体の還元を触媒して、H2O等のより有害性の低い最終産物にする。有害な毒素の代謝に関与するタンパク質に加えて、ROSによって引き起こされる損傷を実際に同定及び修復する他のタンパク質が上方調節される。
【0024】
AREは、酸化還元サイクリングフェノール及び求電子試薬によって活性化される独自のシス作用調節要素である。近年の研究は、多くの他の転写因子がARE配列に結合するにもかかわらず、DNA結合タンパク質Nrf2がARE活性化に必要とされる主な転写因子であることを示唆する。NFE2L2又はNrf2としても既知の核因子(赤血球由来2)様2は、ヒト中でNFR2遺伝子によってコードされる転写因子である。したがって、Nrf2は、抗酸化応答の主要な調節因子であり、酸化的ストレスは、ARE活性化の主な原動力である。図3は、Nrf2媒介性ARE活性化の図式を説明する。酸化的ストレス又は求電子試薬は、Keap1の酸化を誘発し、立体配座変化は、Nrf2−Keap1複合体からのNrf2の放出をもたらし、複数のAREのその後の活性化を伴うインポーチン媒介性輸送を介するNrf2の核転座及びAREに結合された遺伝子の転写の増加をもたらす。
【0025】
AREからの転写の上方調節は、求電子試薬及び酸化剤を解毒して無害な代謝産物にし、細胞中の主な抗酸化物質である大量のグルタチオンを増加させ、かつ有害なタンパク質の分解を増加させ、DNA損傷を同定及び処理することによって損傷を修復する、30個を超えるタンパク質の生成を触媒する第2相酵素の発現をもたらす。結果的に、Nrf2活性化因子として同定される活性物質は、増加した内因性抗酸化能力を有する組織を提供するために、細胞自身の防御機構を高めることができると考えられ得る。他方では、ROS捕捉を介して働く直接的な抗酸化剤は、細胞及び細胞環境中の酸化剤を直接減少させることにより、直接的ではあるが、より一時的な利点を提供する。
【0026】
AREレポーター細胞株は、酸化的ストレスに応答して、AREからの転写を増加させる化合物をスクリーニングするために開発及び使用され得、細胞抗酸化防御タンパク質の増加をもたらす。ARE32レポーター細胞株は、アッセイを、AREからの転写を増加させ、かつ第2相酵素の発現を増加させ得る化粧品剤に提供するよう適合され、したがって、身体自身の抗酸化応答を増加させる。ARE32は、CXR Biosciencesによって、MCF7細胞を、pGL8x−ARE(ルシフェラーゼ遺伝子に結合される8個のラットGST ARE複写物)及びネオマイシン選択性マーカーを含有するpCDNA3.1でトランスフェクトすることにより産生される安定したレポーター細胞株である。選択はG418の存在下で行われ、耐性クローンは単離され、ルシフェラーゼの誘導においてスクリーニングされる。例示の標準物質は、tert−ブチルハイドロキノン(tBHQ)、既知のNrf2の活性化因子である。
【0027】
化粧品組成物は、皮膚への局所適用のために製剤化され得、抗酸化応答要素(ARE)からのNrf2媒介性転写を調節することによって、酸化防止の利点を皮膚に提供する少なくとも1つの作用物質を送達する。組成物は、ARE調節から独立した細胞内抗酸化応答機構を誘発することによって酸化防止の利点を皮膚に少なくとも部分的に提供する、少なくとも1つの更なる作用物質を更に含み得、合わせられた抗酸化作用の有効性は相乗的であり、かつ/あるいはフリーラジカルの直接的捕捉によって直接に酸化防止の利点を皮膚に提供する、少なくとも1つの更なる作用物質を含み得る。フリーラジカル捕捉剤である作用物質の非限定的な例には、ビタミンA、E、及びCが挙げられる。
【0028】
本発明の組成物中に包含され得る他のスキンケア活性物質の非限定的な例は、アミノ糖、ビタミンB3、レチノイド、ペプチド、植物ステロール、ヘキサミジン、ジアルカノイルヒドロキシプロリン化合物、サリチル酸化合物、N−アシルアミノ酸化合物、日焼け止め活性物質、水溶性ビタミン、油溶性ビタミン、及び皮膚科学的に許容される担体である。
【0029】
本発明によるヘキサミジンは、異性体、互変異性体、塩、並びにカルボン酸等の有機酸及びスルホン酸等の鉱酸を含むが、それらに限定されない誘導体を含むと理解される。ヘキサミジンの専門的な名称は、4,4’−(ヘキサメチレンジオキシ)ジベンゼンカルボキシイミダミドである。皮膚科学的に許容される塩には、カリウム及びナトリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム及びマグネシウム等のアルカリ土類金属塩、非毒性重金属塩、並びにアンモニウム及びトリアルキルアンモニウム塩が含まれる。あるいは、ヘキサミジンは、ELASTAB HP100の商標名でフランスのLaboratories Serobiologiques of Pulnoyから市販されているイセチオン酸ヘキサミジンである。
【0030】
本発明による組成物は、組成物の約0.0001重量%〜約25重量%、あるいは約0.001重量%〜約10重量%、あるいは約0.01重量%〜約5重量%、及びあるいは約0.02重量%〜約2.5重量%のヘキサミジンを含み得る。
【0031】
ISP−Vincienceのシグナリン(商標)は、Simmondsia chinensis種(ホホバ(jojoba))ワックスから抽出される約10%の脂肪アルコールでの酵素加水分解によってOlea europaea(オリーブ(olive))油から得られる1,2−ジアシルグリセロール(1,2−DAG)から主に構成される特許成分である。本発明による組成物が製剤化され得る。
【0032】
オリベム(登録商標)は、B&T Companyの登録商標である。市販のオリベム400シリーズには、本出願の出願日現在、オリベム400、450、及び460が含まれており、すべて、オリーブ油脂肪酸に由来する極めて低刺激性のアニオン性界面活性剤として同定されており、かつ概して、所有者によってPEG−7オリーブ油カルボン酸ナトリウムとして特徴付けられている。オリベムシリーズは、約81%のオレイン酸、8%のパルミチン酸、7%のリノール酸、及び2%のステアリン酸を含む。オリベム400、450、及び460は、それぞれ、36%、50%、及び60%の活性濃度を有する。化粧品製剤における使用は、概して、3〜10重量%の濃度である。「オリベム」が登場する本出願にわたって、別途示されない限り、オリベム460のことであると理解される。頭字語DFFAPは、「脂肪酸由来、ペグ化」を意味するよう意図されている。本明細書で使用されるGFFは、「ガラクトマイセス発酵濾液」、すなわち、酵母様の真菌属であるガラクトマイセスの発酵濾液を指すと理解される。
【0033】
本発明は、化粧品剤を、皮膚、皮膚細胞、又は皮膚等価物における酸化的ストレスへの細胞内応答を誘発するか、あるいは増加させることができるNrf2活性化因子として同定又は評価するためのスクリーニングアッセイも提供し、細胞内応答は、抗酸化応答要素(ARE)からの転写における上方調節である。アッセイは、AREレポーター細胞株を提供する工程であって、AREがレポーター遺伝子に結合され、AREからの転写が、Nrf2活性化因子に応答するNrf2によって媒介される、工程と、AREレポーター細胞を、Nrf2活性化因子として提案される化粧品剤に接触させる工程と、AREからのレポーター遺伝子の転写によって生成されるシグナルを検出する工程と、シグナルが検出される場合、化粧品剤が、細胞内応答を誘発するか、あるいは増加させることができるNrf2活性化因子であると決定する工程とを含む。特定の実施形態では、レポーター遺伝子は、ルシフェラーゼである。シグナルは、任意の既知のレポーター系に従って検出され得る。特定の実施形態では、シグナルは、発光である。
【0034】
スクリーニングは、皮膚、皮膚細胞、又は皮膚等価物を、提案されたNrf2活性化因子と接触させる工程と、皮膚、皮膚細胞、又は皮膚等価物上の第2相酵素活性について、バイオマーカーを測定する工程とを含む、確認工程も含み、バイオマーカーは、カタラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、ヘムオキシゲナーゼ、及びその触媒産物からなる群から選択される。
【0035】
本発明による組成物を製造する方法も提供される。具体的には、酸化防止利点を皮膚に提供するのに有効な化粧品組成物を製造する方法の一実施形態は、独創的なスクリーニングアッセイのうちの1つ以上に従って同定される1つ以上の作用物質を用いて組成物を製剤化する工程を含む。例えば、製造方法は、化粧品剤を、皮膚における酸化的ストレスへの細胞内応答、皮膚細胞、又は皮膚等価物を誘発するか、あるいは増加させることができるNrf2活性化因子として同定するためのスクリーニングアッセイに従って同定される1つ以上の作用物質での製剤化を含み得るか、あるいは本発明による遺伝子パネルを構成する遺伝子の転写調節を介して、酸化防止利点を皮膚に提供すると同定される1つ以上の作用物質での製剤化を含み得る。遺伝子パネルに対して相補的なマイクロアレイの使用は、ある特定の実施形態にも包含される。他の方法において、製造方法は、新規のスクリーニングアッセイのある組み合わせから同定される1つ以上の作用物質での製剤化を含み得る。
【0036】
以下の実施例は、本発明のある特定の態様を説明するために提供されており、「特許請求の範囲」によって定義されるその範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0037】
実施例1:内因的かつ紫外線によって老化した皮膚における酸化的ストレスに関連する22個の遺伝子の独自のパネルの生成。
日光から保護された若い皮膚、日光から保護された老化した皮膚、日光によって損傷した若い皮膚、及び日光によって損傷した老化した皮膚における転写発現の比較。対象には、10名の若年(18〜20歳)及び10名の高齢(60〜67歳)の女性が含まれた。3個の4mmのパンチ生検を、それぞれの対象の2つの皮膚部位:日光から保護された皮膚(臀部「YB」及び「OB」)及び日光に曝露された皮膚(外側前腕、「YA」及び「OA」)のうちのそれぞれから得た。高齢の対象を、ある程度、前腕に可視的な中程度から重度の紫外線による損傷を有することに基づいて選択した。RNAを生検から抽出し、精製した。標識化標的cRNAを合成し、全ヒトゲノムを包含する54613個のプローブセットを含有するAffymetrix(登録商標)HG−U133 Plus 2.0マイクロアレイを用いて分析した。
【0038】
抗酸化防御又は酸化的ストレスに関連した遺伝子の同定は、以下のプロトコルに従った:(1)Gene Ontology、EntrezGene、及びSwiss ProtデータベースからのHG−U133 Plus 2.0遺伝子チップ(商標)上の遺伝子への機能注釈を、キーワードプロトコルを用いて検索した[酸化的ストレス又は抗酸化物質又はフリーラジカル又は過酸化水素又は有機過酸化物又は超酸化物又は活性酸素種]。これから、合計245個の独自の注釈付き遺伝子を同定した。(2)245個の酸化的ストレス関連遺伝子のリストの配列データを、内因的老化又は紫外線による老化のうちのいずれかにおいて調節される遺伝子を同定するために、以下のフィルタリングプロトコルに供した。
・すべての試料にわたって少なくとも10パーセントの要求(4パーセント以上の要求)
・腕又は臀部の高齢対若年比較において、t−試験p値0.05未満
・腕又は臀部の高齢対若年比較において、折り畳み変化−1.5未満又は1.5超
【0039】
この段階に至るまで、合計27個の遺伝子がフィルタリング評価基準を満たした。老化及び抗酸化活性の両方との関連の強さに基づく更なる生物情報工程を行い、相関性不十分であるという理由からのこれらの遺伝子のうちの11個の排除、及び6個の更なる遺伝子(CAT、HMOX1、MGST3、NQO1、PRDX2、及びSOD2)の包含をもたらし、それらが上述の折り畳み変化評価基準を満たし損なったにもかかわらず、老化及び酸化的ストレスの両方への統計的に有意な相関を呈した。
【0040】
これらの遺伝子の全フィルタリングプロトコル及び転写発現データの最終産物として出現した22個の遺伝子のパネルが、表1に示され、図1に示される。図1に示される表中のデータの検査によって示されるように、老化皮膚における酸化的ストレス関連遺伝子の発現のパターンは、方向性に関して、紫外線から保護された部位と紫外線によって損傷した部位との間のパターンと実質的に類似している。保護機構を調節する主要な転写因子は、加齢に伴って下方調節され、加齢に伴う細胞質保護応答の損失を示す。H22(例えば、カタラーゼ及びグルタチオンペルオキシダーゼ)を解毒するのに必要とされる酵素をコードする遺伝子の同時増加を伴うことなく、H22産生(スーパーオキシドジスムターゼ3「SOD3」及びアルデヒドオキシダーゼ1「AOX1」)に関連した遺伝子の実質的な上方調節が存在する。遷移金属の存在下のH22は、極度に有害なヒドロキシラジカルを形成し得る。H22は、本研究において著しく上方調節されたマトリックスメタロプロテイナーゼ2(MMP2)も誘発し得る。増加したMMP活性は、老化と関連した皮膚マトリックスの損失に寄与し得る。この遺伝子発現パターンは、老化皮膚における酸化的ストレスに寄与し得る。グルタチオンペルオキシダーゼ2(GPX2)が内因的に老化した皮膚において著しく下方調節されたことにも注目すべきである。図8は、本方法に従って転写的に調節されることが見出されたが、皮膚における加齢に関連した変化に関与するとして以前に同定又は示唆されていないタンパク質をコードする、表1に示される遺伝子の小集団を説明する。特定の実施形態では、本発明による遺伝子パネルは、加齢に関連した酸化的ストレスの機能としてヒト皮膚において調節される遺伝子の選択的小集団を含み、パネルは、表1に示される遺伝子からなる群から選択される少なくとも2つの遺伝子を含み、選択された遺伝子のうちの少なくとも1つは、SOD2、CAT、HMOX1、MGST3、又はNQO1である。
【0041】
減少したグルタチオンペルオキシダーゼに照らして、増加したセルロプラスミン及びSODは、自己免疫疾患リウマチ性関節炎におけるこれらのタンパク質について以前に報告された遺伝子発現のパターンに類似している。toll様受容体4(TLR4)の上方調節は、恐らく酸化的ストレスと関連した老化皮膚における先天性免疫応答の活性化を示唆する。老化皮膚における発現減少を示す他のROS保護遺伝子には、ALDH3A2、DHCR24、MGST1、及びSLC23A2が含まれる。
【0042】
実施例2:転写プロファイリング方法の適用、オリベム(商標)460及びGFFで処理された皮膚外植片の転写プロファイルの生成
皮膚外植片を、外科廃棄物(腹壁形成、46歳女性)から収集し、同日に処理した。皮膚試料を冷たいPBS中ですすぐことによって処理し、皮下脂肪を、外科用メスを用いて除去し、端部を再切断し、その後、1.3cmの正方形を収集した。それぞれの正方形を6ウェルプレート中のトランスウェルフィルタ上に設置し、80μLの処理物を局所的に適用した。外植片を、水中のオリベム460(0.1%)及びGFF(20%)で処理し、33℃、95%の湿度で3日間インキュベートし、その後、処理物を除去した。組織を更に3日間インキュベートし、4mmのパンチを採取し、後の遺伝子特異的プライマーでのRNA単離及びPCR分析のために、液体N2中で急速凍結させた。対照皮膚は処理しなかった。
【0043】
オリベム(商標)460(オリーブ油DFFAP)及びGFFを含む化粧品組成物での処理によって転写的に調節された遺伝子の表は、図9に示され、本発明による遺伝子パネルを構成する。とりわけ、過酸化水素を解毒するCAT及びPRDX2に加えて、過酸化水素を産生する酵素を解毒するAOX1、SOD2、及びSOD3の発現の上方調節、すなわち、均衡のとれたかつ有益な抗酸化応答が観察される。これは、AOX1、SOD2、及びSOD3が上方調節されるが、GPX2に加えて、CAT及びPRDX2が下方調節される、老化皮膚におけるパターンと対照する。
【0044】
実施例3:提案された作用物質の抗酸化活性を評価するための、ARE活性化アッセイ及びヘムオキシゲナーゼ1ELISAの適用。
オリーブ油DFAP、シグナリン、及びGFFの抗酸化特性は、ARE転写アッセイ及びELISAバイオマーカーアッセイから得られた結果によって実証され、バイオマーカーは、第2相酵素HO−1である。ヒト皮膚外植片培養物を用いた、ヘムオキシゲナーゼ1(HO−1)バイオマーカー試験の結果も示される。
【0045】
ヒト皮膚角化細胞及び線維芽細胞の初代培養物、並びにエクスビボヒト皮膚培養物(外植片)を、特定のオリーブ油誘導体(PEG−7「オリーブ油DFAP」で変性されたオリーブ油由来脂肪酸)、ホホバ油(シグナリン(商標))とブレンドしたオリーブ油、及びガラクトマイセス発酵濾液(GFF)で24時間処理した。AREをCXR−Biosciencesから入手可能なARE−32レポーター細胞株を用いてアッセイし、以下に詳細が示される。
【0046】
AREアッセイ
ARE32は、pGL8x−ARE(ルシフェラーゼ遺伝子に結合される8個のラットGST ARE複写物)及びネオマイシン選択性マーカーを含有するpCDNA3.1を含有する安定したMCF7細胞株であり、CXRbiosciencesから許可された。選択はG418の存在下で行われ、耐性クローンを単離した。クローンを、tBHQに応答したルシフェラーゼの誘発についてスクリーニングした。
【0047】
試薬及び器具
・ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Gibco、カタログ番号11054−020、ロット番号1361242)
・加熱不活性化ウシ胎児血清(FBS)(Gibco、カタログ番号16140−063、ロット番号1345764)
・ゲネチシンG418硫酸塩(G418)(Gibco、カタログ番号11811−031)
・定常Glo系(Promega、カタログ番号E2510)
・96ウェルプレート(Costar、カタログ番号3917)
・ペニシリン−ストレプトマイシン(Gibco、カタログ番号15070−063、ロット番号109733)
・Tert−ブチルヒドロキノン(tBHQ)(Aldrich、カタログ番号11,294−1)
・パーキンエルマーエンビジョンリーダー
【0048】
AREC32細胞の維持
ARE32細胞を、以下を含有するDMEM(フェノールレッドフリー)中で定期的に維持する:
10%のFBS
50単位/mLのペニシリン及び50μg/mLのストレプトマイシン
0.8mg/mLのG418
細胞を3〜4日毎に二次培養する。細胞を、90%のFBS及び10%のDMSOを含有する培地中で凍結させた。
【0049】
tBHQでのルシフェラーゼの誘発
1.96ウェルプレート中で、1×104細胞/ウェルを、50単位/mLのペニシリン、50μg/mLのストレプトマイシン、0.8mg/mLのG418、及び10%のFBSを含有する100μLのDMEM中に播種する。
2.細胞を、5%のCO2インキュベーター中で、37℃で24時間インキュベートする。
3.培地を100μLの新鮮な培地に置き換え、1ウェルにつき2μLの試験化合物で処理し、陽性対照は、25μMのTBHQであった。(原液の10mMのtBHQを、DMSO中で新たに調製した。)
4.処理後、100μLの培地を添加し、最終のアッセイ容積を200μLにする。
5.細胞を、CO2インキュベーター中で、37℃で更に24時間インキュベートする。
6.製造業者の指示に従って、定常gloアッセイシステムを用いてルシフェラーゼ活性についてアッセイする:
a.100μLの培地を除去する
b.100μLの再構成基質をウェルに直接添加する
c.5〜10分間振盪インキュベートする
d.Promegaルシフェラーゼアッセイプロトコルを用いて、エンビジョン上で読み取る。(定常gloの半減期は5時間)
e.プレートを1ウェル当たり5秒間読み取る。
【0050】
AREの細胞型及び組織確認を、1試料当たりの総タンパク質に基準化されたHO−1 ELISAを介して確認した。スチューデントのt−試験を用いて統計分析を行い、処理した試料と対照試料を比較した。エラーバーは、標準偏差を示す。
【0051】
AREからの転写を促進する作用物質を同定するために、AREレポーターアッセイがどのように作動するかの一般的図式が、図3に示される。オリベム(商標)460(オリーブ油DFFAP)、シグナリン、及びGFFのAREアッセイ結果が、図4に示される。3つすべての作用物質は、AREからの転写の著しい用量依存的上方調節を引き起こした。角化細胞におけるHO−1のオリベム(商標)460(オリーブ油DFFAP)誘発性発現の結果が図7Aに示され、線維芽細胞におけるオリベム(商標)460(オリーブ油DFFAP)の結果が図7Bに示され、更にシグナリン及びGFFの結果が図7C及び7Dに示される。3つすべての作用物質は、ヒト皮膚角化細胞及び線維芽細胞においてHO−1(細胞抗酸化能力のバイオマーカー)の著しい用量依存的増加を引き起こした。図9は、ヒト皮膚外植片についてのHO−1データを説明する。ヒト皮膚エクスビボに局所的に適用されたシグナリン、GFF、及びGFF/オリベム(商標)460(オリーブ油DFFAP)の組み合わせは、HO−1の著しい発現増加を引き起こした。ヒト皮膚角化細胞におけるGFF及びシグナリンの組み合わせは、図6に示されるように、HO−1発現の相乗的増加をもたらした。結果の厳重な検査は、AREからの転写が、HO−1バイオマーカー結果による予測よりもGFFによって少ない影響を受けたことを示す。これは、HIF−1(低酸素症誘発因子1、低酸素状態に応答する転写因子)等の第2経路が関与し得ることを示唆する。更に、AREからの転写に影響を及ぼさない程度に低いレベルのオリベム(商標)460(オリーブ油DFFAP)で処理されたヒト皮膚角化細胞は、それにもかかわらず、GFFと相乗的に振舞って、GFF単独での予測した程度を超えてHO−1を増加させ、相乗的な抗酸化作用、並びに独立した経路のへの支援を示した。
【0052】
実施例4:更なる提案された作用物質:オリベム(商標)460(オリーブ油DFFAP)、シグナリン(商標)(オリーブ油BJO)、及びGFF(酵母発酵濾液)の抗酸化活性を評価するためのARE活性化アッセイ及びヘムオキシゲナーゼ1ELISAの適用。
実施例3に記載のARE活性化アッセイを採用した。抗酸化応答要素からの転写を試験するために、レポーター株を成長させ、それぞれ異なる用量の化合物を添加し、24時間インキュベートする。次に、細胞を溶解し、発光出力を検出及び定量化する。シグナリンの用量応答結果が、図10Aに示される。検査は、上方調節が用量依存的であることを示す。オリベム(商標)460(オリーブ油DFFAP)の用量応答結果が、図10Bに示される。検査は、上方調節が用量依存的であることを示す。GFFの用量応答結果が、図10Cに示される。検査は、GFFによる上方調節がどの用量においても著しくないことを示す。
【0053】
AREからの転写の活性化を確認し、かつ可能性のある抗酸化機構を更に調査するために、角化細胞及び線維芽細胞の両方において、それぞれの作用物質に対して実施例に記載のヘムオキシゲナーゼ1(HO−1)ELISAも採用する。ヘムオキシゲナーゼ1(HO−1)は第2相酵素であり、細胞中のその産生を定量化するために、市販のELISAを選択した。図11Aに示されるように、GFF及びシグナリンの両方ともに、角化細胞において用量依存的応答を実証するが、線維芽細胞において用量依存的応答は実証しない。図11Bは、オリベム(商標)460(オリーブ油DFFAP)が、角化細胞及び線維芽細胞の両方において用量依存的上方調節を呈することを示す。最も高い容量は有毒であると考えられており、角化細胞よりも線維芽細胞に当てはまり、最も高い濃度での明らかに不定の結果を説明する。図5に示されるように、HO−1の上方調節をもたらさなかった用量のオリベム(商標)460(オリーブ油DFFAP)がGFFと合わせられるとき、HO−1発現の予想されなかった相乗的増加が起こる。シグナリン及びGFFは、単独又はオリベム(商標)460(オリーブ油DFFAP)との組み合わせで、ヒト皮膚外植片におけるHO−1発現を上方調節する。
【0054】
実施例5:提案された化合物がAREのnrf2媒介性誘発を調節する際の潜在的有効性についてスクリーニングされる本発明の実施形態を示す。
提案された化合物を、上述の実施例3に示されるAREアッセイを用いてスクリーニングする。図12は、それぞれの化合物において試験した濃度及び観察されたAREの増加率に加えて、「AREスクリーニングヒット」の表を説明する。概して、AREからの転写を上方調節する化合物は、増加した抗酸化能力を提供する細胞中の第2相保護酵素の量を増加させる。
【0055】
本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、種々の修正、拡張、及び変更が本発明に加えられ得ることが当業者には明らかである。前述を考慮して、本発明の修正及び変更が以下の「特許請求の範囲」及びそれらの等価物の範囲内に収まるという条件で、本発明がそれらを網羅することが意図されている。
【0056】
配列同定情報
配列番号:1ホモサピエンスアルデヒド脱水素酵素3ファミリー、メンバーA2(ALDH3A2)、転写変異体2
配列番号:2ホモサピエンスアルデヒド脱水素酵素3ファミリー、メンバーA2(ALDH3A2)、転写変異体1
配列番号:3ホモサピエンスアルデヒドオキシダーゼ1(AOX1)
配列番号:4ホモサピエンスカタラーゼ(CAT)
配列番号:5ホモサピエンスセロイドリポフスチン症、神経細胞8(てんかん、精神遅滞を伴って進行)(CLN8)
配列番号:6ホモサピエンスクラスタリン(CLU)、転写変異体1
配列番号:7ホモサピエンスクラスタリン(CLU)、転写変異体2
配列番号:8ホモサピエンスセルロプラスミン(フェロオキシダーゼ)(CP)
配列番号:9ホモサピエンスシトクロムc、身体(CYCS)、ミトコンドリアタンパク質をコードする核遺伝子
配列番号:10ホモサピエンス24−デヒドロコレステロール還元酵素(DHCR24)
配列番号:11ホモサピエンスグルタチオンペルオキシダーゼ2(胃腸管系)(GPX2)
配列番号:12ホモサピエンスヘムオキシゲナーゼ(デサイクリング)1(HMOX1)
配列番号:13ホモサピエンス熱ショック60kDaタンパク質1(シャペロニン)(HSPD1)、ミトコンドリアタンパク質をコードする核遺伝子、転写変異体1
配列番号:14ホモサピエンス熱ショック60kDaタンパク質1(シャペロニン)(HSPD1)、ミトコンドリアタンパク質をコードする核遺伝子、転写変異体2
配列番号:15ホモサピエンス熱ショック60kDaタンパク質1(シャペロニン)(HSPD1)、ミトコンドリアタンパク質をコードする核遺伝子、転写変異体2
配列番号:16ホモサピエンスミクロソームグルタチオンS−転移酵素1(MGST1)、転写変異体1a
配列番号:17ホモサピエンスミクロソームグルタチオンS−転移酵素1(MGST1)、転写変異体1b
配列番号:18ホモサピエンスミクロソームグルタチオンS−転移酵素1(MGST1)、転写変異体1c
配列番号:19ホモサピエンスミクロソームグルタチオンS−転移酵素1(MGST1)、転写変異体1d
配列番号:20ホモサピエンスミクロソームグルタチオンS−転移酵素3(MGST3)
配列番号:21ホモサピエンス金属調節転写因子1(MTF1)
配列番号:22ホモサピエンスNADH脱水素酵素(ユビキノン)Fe−Sタンパク質1、75kDa(NADH−補酵素Q還元酵素)(NDUFS1)、ミトコンドリアタンパク質をコードする核遺伝子
配列番号:23ホモサピエンス核因子(赤血球由来2)様2(NFE2L2)、転写変異体1
配列番号:24ホモサピエンス核因子(赤血球由来2)様2(NFE2L2)、転写変異体2
配列番号:25ホモサピエンス核因子(赤血球由来2)様2(NFE2L2)、転写変異体3
配列番号:26ホモサピエンスNAD(P)H脱水素酵素、キノン1(NQO1)、転写変異体1
配列番号:27ホモサピエンスNAD(P)H脱水素酵素、キノン1(NQO1)、転写変異体2
配列番号:28ホモサピエンスNAD(P)H脱水素酵素、キノン1(NQO1)、転写変異体3
配列番号:29ホモサピエンスペルオキシレドキシン2(PRDX2)、ミトコンドリアタンパク質をコードする核遺伝子、転写変異体1
配列番号:30ホモサピエンスペルオキシレドキシン2(PRDX2)、ミトコンドリアタンパク質をコードする核遺伝子、転写変異体3
配列番号:31ホモサピエンス溶質担体ファミリー23(核酸塩基輸送体)、メンバー2(SLC23A2)、転写変異体1
配列番号:32ホモサピエンス溶質担体ファミリー23(核酸塩基輸送体)、メンバー2(SLC23A2)、転写変異体2
配列番号:33ホモサピエンススーパーオキシドジスムターゼ2、ミトコンドリア(SOD2)、ミトコンドリアタンパク質をコードする核遺伝子、転写変異体1
配列番号:34ホモサピエンススーパーオキシドジスムターゼ2、ミトコンドリア(SOD2)、ミトコンドリアタンパク質をコードする核遺伝子、転写変異体2
配列番号:35ホモサピエンススーパーオキシドジスムターゼ2、ミトコンドリア(SOD2)、ミトコンドリアタンパク質をコードする核遺伝子、転写変異体3
配列番号:36ホモサピエンススーパーオキシドジスムターゼ3、細胞外(SOD3) 配列番号:37ホモサピエンスtoll様受容体4(TLR4)、転写変異体1
配列番号:38ホモサピエンスtoll様受容体4(TLR4)、転写変異体3、コード化なし
配列番号:39ホモサピエンスtoll様受容体4(TLR4)、転写変異体4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加齢に関連した酸化的ストレスの機能としてヒト皮膚において調節される遺伝子を含む遺伝子パネルであって、前記パネルが、表1に示される遺伝子からなる群から選択される少なくとも2つの遺伝子を含み、前記選択された遺伝子のうちの少なくとも1つが、SOD2、CAT、HMOX1、MGST3、又はNQO1である、遺伝子パネル。
【請求項2】
前記調節が転写調節を含み、前記選択された遺伝子が、(a)前記転写調節が下方調節を含む、1つ以上のNRF2、MTF1、及びGPX2と、(b)前記転写調節が上方調節を含む、CP、CLU、TLR4、SOD3、及びAOX1のうちの1つ以上と、を含む、請求項1に記載の遺伝子パネル。
【請求項3】
前記酸化的ストレスが、前記皮膚の暦年齢及び/又は前記皮膚に影響を与える環境要因の結果として経験される、請求項1に記載の遺伝子パネル。
【請求項4】
前記酸化的ストレスが、前記皮膚の暦年齢の結果として経験される、請求項1に記載の遺伝子パネル。
【請求項5】
前記酸化的ストレスが、前記皮膚に影響を与える環境要因の結果として経験される、請求項1に記載の遺伝子パネル。
【請求項6】
前記環境要因が、紫外線曝露、直接喫煙、アルコールの消費、及び空気汚染のうちの1つ以上を含む、請求項5に記載の遺伝子パネル。
【請求項7】
前記酸化的ストレスが、H22産生に由来し、前記選択された遺伝子が、(a)前記調節が転写下方調節を含む、GPX2と、(b)前記調節が転写上方調節を含む、SOD3及びAOX1と、を含む、請求項1に記載の遺伝子パネル。
【請求項8】
請求項1に記載の遺伝子パネルを構成する前記遺伝子の遺伝子産物のうちの1つ以上を含む、バイオマーカーパネル。
【請求項9】
請求項1に記載の遺伝子パネルを構成する前記遺伝子に対応する核酸に特異的にハイブリダイズする固定化オリゴヌクレオチドを含む、マイクロアレイ。
【請求項10】
皮膚への加齢に関連した酸化損傷を予防するか、あるいは逆転させるのに有効な作用物質を同定するためのスクリーニング方法であって、(a)若い皮膚、皮膚細胞、若しくは皮膚等価物についての参照転写プロファイルを提供する工程と、(b)老化皮膚、皮膚細胞、若しくは皮膚等価物についての参照転写プロファイルを提供する工程と、(c)前記老化皮膚、皮膚細胞、若しくは皮膚等価物を、提案された作用物質と接触させて、試験転写プロファイルを生成する工程と、(d)前記試験転写プロファイルを、前記参照プロファイルと比較して、前記試験転写プロファイルが、前記若い参照プロファイルに向かって、かつ/又は前記老化参照プロファイルから離れて一方向に移動する場合、前記提案された作用物質を、皮膚への加齢に関連した酸化損傷を予防するか、あるいは逆転させるのに有効であると同定する工程と、を含み、転写プロファイルが、請求項9に記載のマイクロアレイで生成される、スクリーニング方法。
【請求項11】
酸化的ストレス下の皮膚の所望の酸化還元均衡を回復させるのに有効な作用物質を同定又は評価するためのスクリーニング方法であって、酸化的ストレス下の皮膚についての参照転写プロファイル又はバイオマーカープロファイルを提供する工程と、試験皮膚、皮膚細胞、又は皮膚等価物を、提案された作用物質とある期間接触させる工程と、前記試験皮膚についての試験転写プロファイル又はバイオマーカープロファイルを生成する工程と、前記試験プロファイルを前記参照プロファイルと比較する工程と、前記試験プロファイルが実質的に前記参照プロファイルを模倣する場合、提案された作用物質が、所望の酸化還元均衡を回復させるのに有効であると決定する工程と、を含む、スクリーニング方法。
【請求項12】
皮膚への局所適用のために製剤化される化粧品組成物であって、抗酸化応答要素(ARE)のNrf2媒介性転写を調節することによって、酸化防止の利点を前記皮膚に提供する少なくとも1つの作用物質を含む、化粧品組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1つの作用物質が、表3に示される化合物から選択される、請求項12に記載の化粧品組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1つの作用物質が、Bar−Timp、アージュン、アルファリポ酸、及びローズマリー抽出物CGからなる群から選択される、請求項13に記載の化粧品組成物。
【請求項15】
フリーラジカルの直接的捕捉によって、直接に酸化防止の利点を前記皮膚に提供する少なくとも1つの更なる作用物質を更に含む、請求項12に記載の化粧品組成物。
【請求項16】
前記少なくとも1つの更なる作用物質が、ビタミン又はその機能的誘導体である、請求項15に記載の化粧品組成物。
【請求項17】
前記ビタミンが、ビタミンA、ビタミンC、及びビタミンEからなる群から選択される、請求項16に記載の化粧品組成物。
【請求項18】
化粧品剤を、皮膚における酸化的ストレスへの細胞内応答を誘発するか、あるいは増加させることができるNrf2活性化因子として同定するためのスクリーニングアッセイであって、前記細胞内応答が、前記抗酸化応答要素(ARE)からの転写における上方調節と、1つ以上の第2相(Phase 2)酵素の発現の増加と、を含み、前記アッセイが、AREレポーター細胞株を提供する工程であって、前記AREが、レポーティング遺伝子に結合され、前記AREからの転写が、Nrf2活性化因子に応答するNrf2によって媒介され、シグナルが、前記AREからの前記レポーティング遺伝子の転写によって生成される、工程と、前記AREレポーター細胞を、Nrf2活性化因子として提案される化粧品剤に接触させる工程と、シグナルが検出される場合、前記化粧品剤が、前記細胞内応答を誘発するか、あるいは増加させることができるNrf2活性化因子であると決定する工程と、を含む、スクリーニングアッセイ。
【請求項19】
前記レポーター遺伝子が、ルシフェラーゼをコードする、請求項18に記載のスクリーニングアッセイ。
【請求項20】
前記シグナルが、発光である、請求項18に記載のスクリーニングアッセイ。
【請求項21】
皮膚、皮膚細胞、又は皮膚等価物を、前記提案されたNrf2活性化因子と接触させる工程と、前記皮膚、皮膚細胞、又は皮膚等価物上の第2相酵素活性について、1つ以上のバイオマーカーを測定する工程と、を含む、確認工程を更に含み、前記1つ以上のバイオマーカーが、カタラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、ヘムオキシゲナーゼ、触媒産物からなる群から選択される、請求項18に記載のスクリーニングアッセイ。
【請求項22】
酸化防止利点を皮膚に提供するのに有効な化粧品組成物を製造する方法であって、請求項18に記載のスクリーニングアッセイに従って、酸化防止利点を前記皮膚に提供すると同定される1つ以上の作用物質を用いて前記組成物を製剤化する工程を含む、方法。
【請求項23】
酸化防止利点を皮膚に提供するのに有効な化粧品組成物を製造する方法であって、抗酸化応答要素(ARE)のNrf2媒介性転写を調節することによって、酸化防止利点を提供すると同定される少なくとも1つの作用物質と、加齢に関連した酸化的ストレスの機能としてヒト皮膚において調節され、かつ表1に示される遺伝子の転写調節を介して、酸化防止利点を提供すると同定される少なくとも1つの作用物質とを用いて、前記組成物を製剤化する工程を含む、方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【公表番号】特表2013−518595(P2013−518595A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552136(P2012−552136)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【国際出願番号】PCT/US2011/023918
【国際公開番号】WO2011/097572
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】