説明

化粧建築板の製造方法

【課題】簡便な方法でインクジェット印刷層の発色を良好にすることができる化粧建築板の製造方法を提供する。
【解決手段】基材1の表面に水性エナメル塗料の塗膜2を形成する。この水性エナメル塗料塗膜2の表面にフレーム処理を施した後に、水性インクによりインクジェット印刷層を形成する。フレーム処理により水性エナメル塗料塗膜2の表面が酸化され、C−OH結合等になることなどで極性基が導入されて一時的に親水性とすることができ、このフレーム処理後の水性エナメル塗料塗膜2の表面に水性インクのインクジェット印刷による塗装を行うことによって、水性インクと水性エナメル塗料塗膜2の表面との馴染み性を良くして弾きの発生を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁材や屋根材などの外装材等に使用される化粧建築板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外装材等に使用される化粧建築板として、インクジェットプリンタによる塗装を施したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この化粧建築板は、基材の表面に受理層を形成すると共に受理層の表面にインクジェットプリンタの塗装によりインクジェット印刷層を形成するものである。ここで、受理層はインクジェット印刷層を形成する水性インクを弾くことがなく、鮮明な発色を得られるようにするために、基材の表面に設けられるものである。従って、通常、受理層はベースとなる塗料に吸水性樹脂やシリカ、アルミナなどを配合し、水性インクの弾きを防止し、水性インクの吸い込みを良好にするようにしている。しかし、上記の受理層は非常に高価であり、また、耐水性が悪いという問題があった。
【特許文献1】特開2007−154432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、簡便な方法でインクジェット印刷層の発色を良好にすることができる化粧建築板の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の請求項1に係る化粧建築板の製造方法は、基材1の表面に水性エナメル塗料の塗膜2を形成し、この水性エナメル塗料塗膜2の表面にフレーム処理を施した後に、水性インクによりインクジェット印刷層3を形成して成ることを特徴とするものである。
【0005】
本発明の請求項2に係る化粧建築板の製造方法は、請求項1において、フレーム処理後の水性エナメル塗料塗膜2の表面における水の接触角が50〜65°であることを特徴とするものである。
【0006】
本発明の請求項3に係る化粧建築板の製造方法は、請求項1又は2において、フレーム処理時における基材1とバーナー5との相対的な移動速度が3〜20m/分であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明では、フレーム処理により水性エナメル塗料塗膜2の表面が酸化され、C−OH結合等になることなどで極性基が導入されて一時的に親水性とすることができ、このフレーム処理後の水性エナメル塗料塗膜2の表面に水性インクのインクジェット印刷による塗装を行うことによって、水性インクと水性エナメル塗料塗膜2の表面との馴染み性を良くして弾きの発生を防止することができ、簡便な方法で色再現性などの発色性を良好にすることができるものである。また、本発明では、水性エナメル塗料塗膜2に吸水性樹脂などを吸水性を高める成分を配合することがないので、安価に製造することができ、しかも、耐水性を損なわないようにすることができるものである。
【0008】
請求項2の発明では、水性インクの馴染み性を良くして弾きの発生がほとんど無いようにすることができ、発色性を良好にすることができるものである。
【0009】
請求項3の発明では、発泡等の不良を生じさせないで水性エナメル塗料塗膜2のフレーム処理を行うことができ、発色性を良好にすることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0011】
本発明の化粧建築板は図2に示すように、基材1に水性エナメル塗料塗膜2、インクジェット印刷層3、クリアー塗膜4をこの順に設けて形成されている。インクジェット印刷層3は化粧建築板を加飾して化粧するのに用いられ、クリアー塗膜4はインクジェット印刷層3を水分等から保護するためにインクジェット印刷層3にオーバーコートされている。
【0012】
基材1としては、窯業系基材や金属系基材のように無機質のものであっても、樹脂系基材のように有機質のものであっても、いずれでもよい。窯業系基材の外装材は、瓦や外壁材等の用途に使用されるものである。窯業系基材は、無機質硬化体の原料となる水硬性膠着材に無機充填剤、繊維質材料等を配合し、成形した後に養生硬化させて作製されるものであり、水硬性膠着材としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポルトランドセメント、高炉セメント、高炉スラグ、ケイ酸カルシウム、石膏等から選ばれたものの一種あるいは複数種を用いることができる。また、無機充填剤としては、フライアッシュ、ミクロシリカ、珪砂等を、繊維質材料としては、パルプ、合成繊維等の無機繊維や、スチールファイバー等の金属繊維を、それぞれ単独であるいは複数種併せて用いることができる。成形は押出成形や注型成形、抄造成形、プレス成形等の方法により行うことができ、成形の後、必要に応じてオートクレーブ養生、蒸気養生、常温養生を行って、外装材として使用される窯業系基材を作製することができる。その他、基材1としては、例えば、フレキシブルボード、珪酸カルシウム板、石膏スラグパーライト板、木片セメント板、プレキャストコンクリート板、ALC板、石膏ボード等の無機質板(サイディング)を用いることができる。
【0013】
また、上記の基材1の片面又は両面にはシーラー塗膜1aを設けることができる。シーラー塗膜1aは基材1の目止めや密着性確保等のために形成されるものである。シーラー塗膜1aの形成に用いられるシーラー塗料としては、低分子量の樹脂や小粒径のエマルションからなる浸透性タイプの下塗り材等を用いることができる。具体的には、例えば、アクリルエマルション樹脂に、酸化チタン、酸化鉄系顔料、カーボンブラック、炭酸カルシウム等の顔料、ブチルセロソルブ、消泡剤等の添加剤、水等を加えて撹拌分散して調製したものをシーラー塗料として用いることができる。そして、シーラー塗膜1aを形成するにあたっては、基材1の表面にシーラー塗料を塗布・乾燥することにより形成することができる。このときシーラー塗料は、基材1の表面に塗布量32〜76g/mで塗布するのが好ましい。そして、焼付け乾燥は、例えば、ジェット乾燥機を用いて、80〜140℃、1〜3分の条件で行うのが好ましい。なお、シーラー塗料の塗布は、スプレーガン、ロールコーター、フローコーター、カーテンコーター等を用いて行うことができる。
【0014】
上記の水性エナメル塗料塗膜2を形成するのに用いられる水性エナメル塗料としては、下地の隠蔽力が高く耐久性に優れ種類豊富な色揃えを有し外観意匠性向上に寄与可能な着色塗料を用いることができる。具体的には、例えば、アクリルエマルション樹脂やアクリルシリコン系エマルション樹脂に、酸化チタン、酸化鉄系顔料、カーボンブラック、硫酸バリウム等の顔料、ブチルセロソルブ、消泡剤、増粘剤等の添加剤、水等を加えて撹拌分散して調製したものをエナメル塗料として用いることができる。
【0015】
上記のインクジェット印刷層3を形成するのに用いられる水性インクとしては、水に水性顔料などの着色剤を配合し、さらに必要に応じて、浸透剤、乾燥防止剤、pH調整剤、防腐剤などを配合して調製することができる。
【0016】
クリアー塗膜4を形成するのに用いられるクリアー塗料はアクリルエマルション塗料などを用いることができる。アクリルエマルション塗料としては、環境負荷を低減するために、アクリル系エマルションをベースにしたアクリル樹脂塗料や、アクリルシリコン系エマルションをベースにしたアクリルシリコン樹脂塗料等の水性塗料を用いるのが好ましいが、溶剤系塗料を用いても良い。またアクリルエマルション塗料には、アクリルビーズ、マイカ等の骨材を配合しておくのが好ましい。これにより、意匠性を向上させることができる。
【0017】
そして、図2に示すような化粧建築板を製造するにあたっては、基材1の表面に設けたシーラー塗膜1aの表面に、水性エナメル塗料を塗布・乾燥して着色等のために水性エナメル塗料塗膜2を形成する。このとき水性エナメル塗料は、基材1のシーラー塗膜1aの表面に塗布量76〜140g/mで塗布するのが好ましい。そして、焼付け乾燥は、例えば、ジェット乾燥機を用いて、80〜120℃、1〜3分の条件で行うのが好ましい。なお、エナメル塗料の塗布は、スプレーガン、ロールコーター、フローコーター、カーテンコーター等を用いて行うことができる。
【0018】
次に、水性エナメル塗料塗膜2の表面にフレーム処理を行う。フレーム処理は、ガスバーナーなどのバーナー5から噴出される火炎6に水性エナメル塗料塗膜2の表面を接触させて行うものである。これにより、通常では撥水性の水性エナメル塗料塗膜2の表面を一時的に親水性にすることができる。また、フレーム処理では火炎6の外炎(酸化炎)を接触させることが好ましく、これにより、火炎6による水性エナメル塗料塗膜2の表面の酸化作用などが強くなって、フレーム処理を効率よく行うことができる。
【0019】
また、フレーム処理は火炎6と水性エナメル塗料塗膜2の表面とが数秒(0.05〜0.5秒間)接触すればよく、図1に示すように、水性エナメル塗料塗膜2を形成した基材1を搬送しながら行うことができる。すなわち、水性エナメル塗料塗膜2を上側に向けた基材1をベルトコンベアなどの搬送装置15で搬送しながら、火炎6を下方に向けて吹き出しているバーナー5の下側を通過させることにより、フレーム処理を行うことができる。このときの基材1の搬送速度(バーナー5に対する基材1の相対的な移動速度)は3〜20m/分にするのが好ましい。基材1の搬送速度が3m/分未満であると、水性エナメル塗料塗膜2に発泡が生じてインクジェット印刷層3の発色性が低下するおそれがあり、基材1の搬送速度が20m/分より大きいと、水性エナメル塗料塗膜2に十分なフレーム処理を行うことができず、インクジェット印刷層3の発色性が低下するおそれがある。また、フレーム処理後の水性エナメル塗料塗膜2の表面における水の接触角度は50〜65°であることが好ましく、これになるように火炎6と水性エナメル塗料塗膜2の接触時間などのフレーム処理の条件を設定する。上記の水の接触角度が50°未満であると、インクジェット印刷層3の水性インクが滲みやすくなって良好な発色性を得ることができないおそれがあり、65°よりも大きくなると、インクジェット印刷層3の水性インクが水性エナメル塗料塗膜2の表面で弾かれて広がりにくくなるために、良好な発色性を得ることができないおそれがある。
【0020】
上記のようにしてフレーム処理を行った後、水性エナメル塗料塗膜2の表面にインクジェット印刷層3を形成する。インクジェット印刷層3はインクジェットプリンタにより水性インクのドット3a、3a…を印刷することにより形成するものであり、例えば、図3に示すような、インクジェットプリンタを用いて塗装することができる。このインクジェットプリンタは、噴射ノズル7を設けた塗装ノズルヘッド8、塗装ノズルヘッド8の噴射ノズル7に水性インクを供給する塗料供給タンク9、塗装ノズルヘッド8の噴射ノズル7からの水性インクの噴射を制御する塗装制御システム10などを設けたインクジェット式塗装機11と、基材1を搬送する搬送コンベア12とを備えて形成されるものである。
【0021】
塗装ノズルヘッド8は、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色の水性インクを噴出する4種類の塗装ノズルヘッド8y、8c、8m、8kから形成してあり、フルカラー印刷による塗装を行うことができるようにしてある。塗料供給タンク9も同様に4種類のものからなるものであり、イエローの水性インクを供給する塗料供給タンク9yは塗装ノズルヘッド8yに、シアンの水性インクを供給する塗料供給タンク9cは塗装ノズルヘッド8cに、マゼンタの水性インクを供給する塗料供給タンク9mは塗装ノズルヘッド8mに、ブラックの水性インクを供給する塗料供給タンク9kは塗装ノズルヘッド8kに、それぞれ接続してある。また、各塗装ノズルヘッド8y、8c、8m、8kは基材1の搬送方向に沿って配列してある。
【0022】
塗装制御システム10は、各種のCPU、ROM、RAM等から構成されるものであり、塗装データ作成部、塗装制御部、噴射ノズル制御部等を備えて形成してある。塗装データ作成部は、原画をスキャナ等して得た色柄パターンのデータを入力して保存するものであり、塗装制御部は、塗装を行う基材1に応じた色柄パターンのデータを塗装データ作成部から取り出し、この色柄のパターンのデータに基づいて、噴射ノズル制御部に制御信号を出力するものである。また、噴射ノズル制御部は、塗装ノズルヘッド8y、8c、8m、8kの各噴射ノズル7に接続してあり、噴射ノズル制御部から入力される制御信号に基づいて各噴射ノズル7を制御するものである。各噴射ノズル7は例えばピエゾ制御方式や光熱交換素子にレーザー光を照射して制御する方式により噴射を行ったり噴射を停止したりするようになっており、噴射ノズル制御部で各噴射ノズル7を制御することによって、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各水性インクの噴射と停止を個別に制御して、色柄パターンに対応したフルカラー印刷による塗装を行うことができるものである。
【0023】
搬送コンベア12は、インクジェット式塗装機11の下側に配置されるものであり、ベルトコンベアで形成することができる。
【0024】
そして、上記のように形成されるインクジェット装置でインクジェット印刷するにあたっては、まず、フレーム処理を施した基材1を搬送コンベア12上に導入する。導入された基材1はそのまま送られてインクジェット式塗装機11の塗装ノズルヘッド8y、8c、8m、8kの下を順に通過する。このように、基材1を搬送コンベア12で送りながら、塗装ノズルヘッド8y、8c、8m、8kから水性インクを噴射させて塗着させることによって、水性エナメル塗料塗膜2の表面にインクジェット印刷層3を形成することができるものである。本発明において水性インクの吐出量は18〜35ピコリットルにするのが好ましい。このように塗装された基材1はさらに送られ、次工程に搬出されるものである。
【0025】
この後、インクジェット印刷層3の表面にクリアー塗料を塗布・乾燥してクリアー塗膜4を形成することができる。このときクリアー塗料は、インクジェット印刷層3の表面に塗布量32〜76g/mで塗布するのが好ましい。そして、焼付け乾燥は、例えば、ジェット乾燥機を用いて、80〜140℃、1〜3分の条件で行うのが好ましい。十分に焼付け乾燥を行わないと、温度湿度等環境条件によって、外装材の耐久性が低下しやすくなる場合がある。なお、クリアー塗料の塗布は、スプレーガン、ロールコーター、フローコーター、カーテンコーター等を用いて行うことができる。
【実施例】
【0026】
以下本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0027】
[基材]
基材としては、次のようにして作製された窯業系基材を用いた。すなわち、まず普通ポルトランドセメント40質量部、フライアッシュ40質量部、パルプ6質量部、セメント板廃材粉砕物14質量部を混合し、これに水を固形分濃度が20質量%となるように混合して分散することによって、セメントスラリーを調製した。次にこのセメントスラリーを抄造した後、プレス加工して模様成形を行い、凹凸のある柄が形成された抄造板を作製した。そしてこの抄造板を60℃で10時間蒸気養生し、さらに170℃で5時間オートクレーブ養生することによって、窯業系基材を作製した。
【0028】
また、この窯業系基材の片面にはシーラー塗膜を設けた。シーラー塗膜を形成するシーラー塗料は、アクリルエマルション樹脂25質量部に、顔料(酸化チタン、酸化鉄系顔料、カーボンブラック、炭酸カルシウムからなる)20質量部、添加剤(ブチルセロソルブ、消泡剤からなる)1質量部、水54質量部を加えて撹拌分散して調製したものを用いた。そして、上記の窯業系基材の表面にシーラー塗料を塗布・乾燥してシーラー塗膜を形成した。このときシーラー塗料は、基材の表面に塗布量54g/mで塗布した。焼付け乾燥は、ジェット乾燥機を用いて、120℃、1.5分の条件で行った。
【0029】
[水性エナメル塗料]
水性エナメル塗料としては、アクリルエマルション樹脂28質量部に、顔料(酸化チタン、酸化鉄系顔料、カーボンブラック、硫酸バリウムからなる)23質量部、添加剤(ブチルセロソルブ、消泡剤、増粘剤からなる)6.5質量部、水42.5質量部を加えて撹拌分散して調製したものを用いた。
【0030】
[水性インク]
インクジェット印刷層を形成するための水性インクとしては、松下電工化研製の水性顔料インクを用いた。この水性インクはフタロシアニン、弁柄、オーカ、カーボンを顔料として含む4種類のものがあって、水50〜75質量部と顔料2〜8質量部とを含むものである。
【0031】
[クリアー塗料]
クリアー塗料としては、アクリルエマルション樹脂34質量部、添加剤(ブチルセロソルブ、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤からなる)1.7質量部、水64.3質量部を加えて撹拌分散して調製した水性アクリルエマルション塗料を用いた。
【0032】
[実施例1〜4及び比較例1、2の化粧建築板の作製]
基材のシーラー塗膜の表面に水性エナメル塗料を塗布・乾燥して水性エナメル塗料塗膜を形成した。このとき水性エナメル塗料塗膜は、シーラー塗膜の表面に塗布量98g/mで塗布し、焼付け乾燥は、ジェット乾燥機を用いて、120℃、2分の条件で行った。その後、水性エナメル塗料塗膜の表面にフレーム処理を行った。このときバーナーとしてはLPGガスバーナーを用いた。次に、フレーム処理後の水性エナメル塗料塗膜の表面に水性インクをインクジェット印刷により塗装した。このときマスターマインド製のインクジェットプリンタを用い、吐出量は20ピコリットルとした。この後、クリアー塗料を塗布・乾燥してクリアー塗膜を形成することによって、図1に示すような化粧建築板(外装材)を作製した。このときクリアー塗料は、エナメル塗膜の表面に塗布量54g/mで塗布し、焼付け乾燥は、ジェット乾燥機を用いて、130℃、60秒の条件で行った。なお、各塗料の塗布は、スプレーガンを用いて行った。
【0033】
[性能評価]
(1)水の接触角
フレーム処理後の水性エナメル塗料塗膜の水の接触角を測定した。水の接触角は接触角計を用いてθ/2法で算出した。
(2)インクドット径の測定
インクジェット印刷層のインクドットの直径をマイクロスコープを用いて測定した。
(3)外観(発色性)
得られた化粧建築板の外観を評価した。ここで、「○」はインク濃度100%まで階調が表現されていることを示し、「△」はインク濃度80%まで階調が表現されているか、あるいは僅かな塗膜発泡が見られることを示し、「×」は階調表現がインク濃度50%以下あるいは塗膜に大きな発泡が見られることを示す。
【0034】
上記の性能評価を表1に示す。なお、表1には「火炎と塗膜との距離」の欄を記載した。この欄はフレーム処理時における火炎と水性エナメル塗料塗膜の表面との距離を示すものであり、0mmが火炎の先端と水性エナメル塗料塗膜の表面とが接触した状態を示し、それよりも火炎と水性エナメル塗料塗膜とが近づくとマイナス符号、遠ざかるとプラス符号を付した。また、「コンベア速度」の欄はフレーム処理時における基板の搬送速度を示す。
【0035】
【表1】

【0036】
フレーム処理を行った実施例1〜4では、火炎が水性エナメル塗料塗膜の表面に接触せずにフレーム処理が十分に行われていない比較例1、2に比べて、水の接触角が小さくなり、水性インクが弾かれることなく本来想定している大きさに広がって十分なドット径が得られるものであり、その結果、外観が良好となった。また、実施例4はコンベア速度が遅すぎてフレーム処理の効果が過剰となり、水性エナメル塗料塗膜に発泡が生じたため、外観がやや低下した。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示し、フレーム処理を示す概略図である。
【図2】本発明で製造される化粧建築板の一例を示す断面図である。
【図3】同上のインクジェット印刷を示す概略図である。
【符号の説明】
【0038】
1 基材
2 水性エナメル塗料塗膜
3 インクジェット印刷層
5 バーナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に水性エナメル塗料の塗膜を形成し、この水性エナメル塗料塗膜の表面にフレーム処理を施した後に、水性インクによりインクジェット印刷層を形成して成ることを特徴とする化粧建築板の製造方法。
【請求項2】
フレーム処理後の水性エナメル塗料塗膜の表面における水の接触角が50〜65°であることを特徴とする請求項1に記載の化粧建築板の製造方法。
【請求項3】
フレーム処理時における基材とバーナーとの相対的な移動速度が3〜20m/分であることを特徴とする請求項1又は2に記載の化粧建築板の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−107298(P2009−107298A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284500(P2007−284500)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】