説明

化粧料及びその製造方法

本発明は、圧縮粉体形態のパウダー状化粧用組成物に関し、(a)組成物の総重量の45重量%以上のフィラーであって、10以上のアスペクト比を有するフィラー、シリカ小球体、微孔性高分子小球体、ポリウレタン粉体、高分子マイクロカプセル、及び、エラストマー性架橋オルガノポリシロキサン粉体からなる群から選択される少なくとも1種のフィラー、(b)少なくとも1種の非磁性顔料、及び、(c)任意の、少なくとも1種の磁性粒子を含む粉体相を含み、前記磁性粒子が組成物中に存在する場合の前記非磁性顔料/前記磁性粒子の比が1以上であるパウダー状化粧用組成物、並びに、化粧料の製造方法等に関する。本発明はウェットプロセスで製造された、多量の磁性粒子を含む従来の化粧料に見られ得る流れ筋を防止可能であり、また、ウェットプロセスで製造された化粧料の表面色の薄化を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パウダー状化粧用組成物、特に、圧縮粉体(コンパクトパウダー)形態の化粧用組成物、及び、化粧料の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
パウダー状ファンデーション等のパウダー状化粧料の製造方法は、ドライプロセスとウェットプロセスの2つのタイプに分類することができる。
【0003】
ドライプロセスでは、その多くが粉体である、パウダー状化粧料の成分をパン等の容器に充填する。充填後、電動モーター、水圧ラム、空圧シリンダー等により提供される機械力によって前記成分が圧縮され、パウダー状化粧料が調製される。必要に応じて、特開平5−70325号公報に記載されるように超音波を付加してもよい。
【0004】
一方、ウェットプロセスでは、パウダー状化粧料の成分は、一旦、大量の溶媒に分散されてスラリーとされる。次に、このスラリーは容器に充填される。充填後、機械力によってスラリーは圧縮されて溶媒が同時に及び/又は順次除去され、スラリーが固化される。
【0005】
一般に、ウェットプロセスはドライプロセスよりも複雑であり、製造コストがより高くなる傾向にある。しかし、ウェットプロセスは、特殊な処方(例えば、大量の球状粉体を含むもの)であっても使用可能であり、また、ドライプロセスでは達成できない可能性のある特殊な特性(スムースな感触、良好な落下耐性)を付与することができる。したがって、最近は、従来の化粧品から差別化可能な新しい化粧品を提供するために、ウェットプロセスの使用が増加している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−70325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ウェットプロセスでは、ドライプロセスでは生じない幾つかの問題が発生する。これらの問題は、化粧料、特にパウダー状化粧料の製造のためにウェットプロセスを使用することを困難としうる。
【0008】
上記の問題とは以下のとおりである。
(1)ウェットプロセスで製造された化粧料の表面には流れ筋が見られる。
(2)ドライプロセスで製造された化粧料の表面の色に比べてウェットプロセスで製造された化粧料の表面の色は薄くなる。
(3)ウェットプロセスで製造された化粧料の表面の色は当該化粧料の内部の色に比べて薄くなる。
【0009】
本発明の目的は、ウェットプロセスで製造された化粧料に見られ得る流れ筋を防止することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、ドライプロセスで製造された化粧料の表面の色に比べてウェットプロセスで製造された化粧料の表面の色が薄くなることを防止することにある。
【0011】
本発明の更なる他の目的は、ウェットプロセスで製造された化粧料の表面の色が化粧料の内部の色に比べて薄くなることを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、圧縮粉体形態のパウダー状化粧用組成物であって、
(a)組成物の総重量の45重量%以上のフィラーであって、10以上のアスペクト比を有するフィラー、シリカ小球体、微孔性高分子小球体、ポリウレタン粉体、高分子マイクロカプセル、及び、エラストマー性架橋オルガノポリシロキサン粉体からなる群から選択される少なくとも1種のフィラー、
(b)少なくとも1種の非磁性顔料、及び
(c)任意の、少なくとも1種の磁性粒子
を含む粉体相を含み、
前記磁性粒子が組成物中に存在する場合の前記非磁性顔料/前記磁性粒子の比が1以上である、パウダー状化粧用組成物によって達成することができる。
【0013】
好ましい態様では、このパウダー状化粧用組成物はウェットプロセスによって得ることができる。
【0014】
前記フィラーは、天然雲母、合成雲母、セリサイト、エラストマー性架橋オルガノポリシロキサン粉体、及び、それらの混合物から選択されることが好ましい。
【0015】
前記磁性粒子は黒色酸化鉄を含んでよい。
【0016】
前記非磁性顔料は、少なくとも一種の有機又は無機着色物質で少なくとも部分的に被覆されている無機コアを含む複合顔料を含むことが好ましい。前記複合顔料は、前記有機又は無機着色物質を前記無機コアに固定する少なくとも一種のバインダーを含んでよい。
【0017】
前記磁性粒子が存在する場合の、前記磁性粒子及び前記非磁性顔料の総量は、パウダー状化粧料組成物の全重量の0.1〜25重量%であることができる。
【0018】
前記粉体相の総量は、パウダー状化粧料組成物の全重量の80〜95重量%であることができる。
【0019】
前記フィラーの量は、パウダー状化粧料組成物の全重量の60重量%以上であることができ、70重量%以上が好ましい。
【0020】
前記パウダー状化粧料組成物中の前記非磁性顔料/前記磁性粒子の比は好ましくは20以上であり、より好ましくは50以上である。
【0021】
本発明の他の側面は、
少なくとも1種の非磁性顔料を含む粉体を少なくとも液体中に分散してスラリーを得る工程;
前記スラリーを圧縮又は吸引により容器中で成形する工程;及び
前記成形されたスラリーを乾燥する工程
を含む化粧料の製造方法であって、
前記粉体が磁性粒子を含まない、又は、前記粉体が磁性粒子を含む場合は、前記磁性粒子の量が、前記化粧料中の前記非磁性顔料/前記磁性粒子の比が1以上となる量であることを特徴とする化粧料の製造方法である。
【0022】
この方法では、前記液体の少なくとも一部が前記成形工程において除去されることが好ましい。
【0023】
前記粉体は磁性粒子を含まないことが好ましい。なお、前記磁性粒子は黒色酸化鉄を含んでもよい。
【0024】
前記非磁性顔料は、上記の複合顔料を含むことが好ましい。前記複合顔料は、有機又は無機着色物質を無機コアに固定する少なくとも一種のバインダーを含むことが好ましい。
【0025】
前記磁性粒子が存在する場合の、前記磁性粒子及び前記非磁性顔料の総量は、化粧料の全重量の0.1〜25重量%であることができる。
【0026】
前記粉体の総量は、化粧料の全重量の80〜95重量%であることができる。
【0027】
また、本発明は、上記の方法によって得られた化粧料にも関し、化粧料としては、例えば、上記のパウダー状化粧用組成物が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例1及び比較例1のパウダー状化粧用組成物の2つの写真
【図2】実施例1及び比較例1のパウダー状化粧用組成物の表面からパウダー状化粧用組成物の一部を100回取出した場合の当該組成物の表面色の変化を示すグラフ
【図3】実施例1及び比較例1のパウダー状化粧用組成物の磁気の影響を示す写真
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明者らは上記の流れ筋及びウェットプロセスで得られた化粧料の薄い色の原因が当該化粧料に含まれる磁性粒子、典型的には磁性顔料であることを見出した。
【0030】
化粧料の製造に使用される機械等はその製造操作中に当該機械等に適用される機械応力等によって磁気を有しうる。
【0031】
上記磁気は化粧料中の磁性粒子に影響を与え、当該磁性粒子を凝集させ、これが化粧料の流れ筋及び薄い表面色を生じさせる。ウェットプロセスにおいて必須に使用される液体媒体中で磁性粒子は動くことが可能であるので、この問題はウェットプロセスで起こり得るが、液体媒体を使用しないドライプロセスでは磁性粒子は移動できないので、ドライプロセスでは磁性粒子がこの問題を引き起こすことはできない。したがって、上記の問題はウェットプロセスに特有である。
【0032】
(パウダー状化粧料)
本発明では、上記の問題を解決するために、ウェットプロセスで得られる本発明のパウダー状化粧用組成物は磁性粒子を含まないか、又は、比較的少量の磁性粒子しか含まない。
【0033】
まず、本発明のパウダー状化粧用組成物を詳細に説明する。
【0034】
(粉体相)
本発明のパウダー状化粧用組成物は主成分として粉体相を含む。粉体相の総量は、パウダー状化粧用組成物の総重量に対して70〜100重量%であることが可能であり、80〜95重量%が好ましく、85〜95重量%がより好ましい。粉体相の量は、そこに含まれる粉体のみに基づいて算出され、そこに存在しうる痕跡量の溶媒等の他の成分の量は算出には考慮されない。
【0035】
粉体相は少なくとも1種の特定のフィラー及び少なくとも1種の非磁性顔料を必須成分として含み、任意成分として、少なくとも1種の磁性粒子を含む。
【0036】
必要に応じて、これらは、疎水化剤による表面処理が施されていてもよい。疎水化剤は、メチコーン、ジメチコーン、ペルフルオロアルキルシラン等のシリコーン;ステアリン酸等の脂肪酸;ジミリスチン酸アルミニウム等の金属石鹸、水素添加牛脂グルタミン酸アルミニウム塩、ペルフルオロアルキルリン酸塩、ペルフルオロアルキルシラン、ペルフルオロアルキルシラザン、ヘキサフルオロプロピレンのポリオキシド、ペルフルオロアルキルペルフルオロポリエーテル基を有するポリオルガノシロキサン;アミノ酸;N−アシルアミノ酸又はその塩;レシチン、イソプロピルトリイソステアリルチタネート;セバシン酸イソステアリル等のエステル;ステアロイルグルタミン酸二ナトリウム等の界面活性剤;並びに、これらの混合物から選択されうる。
【0037】
N−アシルアミノ酸は8〜22の炭素原子を有するアシル基、例えば、2−エチルヘキサノイル基、カプロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基又はココイル基等を備えることができる。これらの化合物の塩は、アルミニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ジルコニウム塩、亜鉛塩、ナトリウム又はカリウム塩であり得る。アミノ酸は、例えば、リジン、グルタミン酸又はアラニン、及び、これらの誘導体であり得る。
【0038】
上記の成分におけるアルキル基は1〜30、好ましくは5〜16の炭素原子を有するアルキル基である。表面処理された疎水性顔料は特にEP-A-1086683に記載されている。
【0039】
本発明の好適な態様では、顔料は、ラウロイルリジン等のN−アシルアミノ酸、ステアリルグルタミン酸二ナトリウム等の界面活性剤、ジメチコーン等のシリコーン、及び、セバシン酸イソステアリル等のエステルで被覆されることができる。
【0040】
(特定のフィラー)
本発明のパウダー状化粧用組成物は少なくとも1種の特定のフィラーを含む。
【0041】
ある態様では、上記の特定のフィラーとして、10以上のアスペクト比を有するフィラーが使用される。アスペクト比は20以上であっても、50以上であってもよい。アスペクト比は平均厚み及び平均長さによって、アスペクト比=長さ/厚みの式によって決定することができる。
【0042】
特に、10以上のアスペクト比を有するフィラーは、天然雲母、合成雲母、セリサイト及びこれらの混合物から選択することができる。
【0043】
他の態様では、上記の特定のフィラーとして、非圧縮性フィラー(コンパクト化できないフィラー)が使用される。
【0044】
「非圧縮性フィラー」とは、考慮中の物質に依存する一定量以上、特に前記組成物の全重量に対して5重量%以上、の含量の場合に、手動加圧を用いて、特に2×107Pa(200バール)の圧力下で、良好なコンパクト性(圧縮性)を有さず、及び/又は、良好な衝撃強度を有する製品の製造にとって有害であり、特に落下実験において12%以上の質量損失を有し、及び/又は、均一に取り出せるコンパクト製品を得ることを可能にさせない粉末を意味する。前記非圧縮性フィラーは、有機タイプ又は無機タイプ、並びに、球状、フレーク状又は層状であり得る。
【0045】
非圧縮性フィラーは以下のものから選択することができる。
- シリカ小球体(ミクロスフェア)、特にMaprecos社の製品「Silica Beads SP 700/HA(登録商標)」及び「Silica Beads SB 700(登録商標)」、Asahi Glass社の「Sunspheres H-33(登録商標)」及び「Sunspheres H-51(登録商標)」等の開放多孔質ミクロスフェア類、とりわけ中空ミクロスフェア類;これらミクロスフェア類は適切な場合は化粧品有効成分で含浸できる。
- スポンジと同様の構造を有する微孔性高分子小球体;これらは、一般に少なくとも0.5 m2/g、とりわけ少なくとも1 m2/gの比表面積を有し、前記比表面積は、極めて高い多孔性のミクロスフェア類を作製する実践的な可能性から生じること以外に上限はなく:前記比表面積は、例えば、1000 m2/g、さらにそれ以上までであり得る。これらのミクロスフェア類の例としては、RP Scherrer社の架橋アクリレートポリマー「Polytrap 6603 Adsorber(登録商標)」から作製されたもの、またSEPPIC社のポリメチルメタクリレート「Micropearl M 100(登録商標)」から作製されたもの等のアクリルポリマーミクロスフェア類が挙げることができる。
- Toshiki社により品名「Plastic Powder D-400(登録商標)」で販売されているヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールヘキシルラクトンとの粉末状コポリマーなどのポリウレタン粉末。
- 1つだけの閉鎖穴を担持し、液体、特に化粧品有効剤を含有し得るリザーバを形成する高分子マイクロカプセル;それらは、US-A 3 615 972およびEP-A-0 56 219に記載されているものなど知られた方法により調製される。それらは、例えば、エチレン様不飽和酸、アミン又はエステルモノマー類のポリマー類若しくはコポリマー類、尿素-ホルムアルデヒドポリマー類又は塩化ビニリデンポリマー類若しくはコポリマー類から作製でき;例として、メチルアクリレート又はメタクリレートポリマー類若しくはコポリマー類、或いは、代わりに塩化ビニリデンとアクリロニトリルとのコポリマー類、例えば、Expancel社の「Expancel(登録商標)」から作製されたマイクロカプセルを挙げることができ:これらのポリマー類の中でも、塩化ビニリデンから誘導された20〜60重量%の単位、アクリロニトリルから誘導された20〜60重量%の単位、アクリルモノマー及び/又はスチレンモノマーから誘導された単位等の0〜40重量%の他の単位を含有するものを特に挙げることができ;架橋アクリルポリマー類またはコポリマー類もまた使用できる。
- Dow Corning社により品名「Trefil Powder E-506C」で販売されているものなど、特開平2−243612号公報に特に記載されているエラストマー性架橋オルガノポリシロキサン粉末、例えば、US 5 538 793に記載されている、シリコーン樹脂、特に、シルセスキオキサンで被覆されているエラストマー性架橋オルガノポリシロキサン粉末。このようなエラストマー類は、Shin-Etsu社により品名「KSP-100」、「KSP-101」、「KSP-102」、「KSP-103」、「KSP-104」及び「KSP-105」で販売されている。
- それらの混合物。
【0046】
好ましい態様では、上記の特定のフィラーは
− エラストマー性架橋オルガノポリシロキサン、
− 天然雲母、
− 合成雲母、
− セリサイト、及び、
− これらの混合物
から選択される。
【0047】
単一種類のフィラー又は2種以上のタイプのフィラーの組合せも使用可能である。
【0048】
上記のフィラーは比較的多量の場合はドライプロセスでは圧縮困難である。したがって、10以上の高アスペクト比を有する非圧縮性フィラーを45重量%以上含む粉体相を含むパウダー状化粧用組成物は好ましくはウェットプロセスで製造される。本発明のパウダー状化粧用組成物は組成物の全重量を基準にして45重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは55重量%以上、更により好ましくは60重量%以上、更により好ましくは70重量%以上の上記特定のフィラーを含む。
【0049】
(非磁性顔料)
本発明のパウダー状化粧用組成物は少なくとも1種の非磁性顔料を含む。「非磁性顔料」とは、磁気の影響を示さない顔料、すなわち、磁気の作用に対して感受性を有さない顔料を意味しており、例えば、磁力線に沿って整列したりすることがない。磁性を示さない限り、非磁性顔料の材質及び型は限定されない。
【0050】
非磁性顔料としては、ウェットプロセスで使用される液体媒体に溶解しないので、液体に不溶性の非磁性顔料が好ましく使用される。これらはパウダー状化粧用組成物中に残存し、当該組成物の色を制御することが容易となる。
【0051】
したがって、非磁性顔料としては、不溶性有機非磁性顔料及び不溶性無機非磁性顔料が好ましく、不溶性無機非磁性顔料がより好ましい。
【0052】
不溶性有機非磁性顔料としては、不溶性表面処理を受けた、赤201号、橙203号、黄4号等を使用することができる。
【0053】
不溶性無機非磁性顔料としては、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、酸化亜鉛、二酸化チタン、群青及び紺青を挙げることができる。赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、酸化亜鉛、二酸化チタン又は紺青が好ましい。
【0054】
非磁性真珠光沢顔料も不溶性無機非磁性顔料として使用可能である。非磁性真珠光沢顔料としては、塩化オキシビスマス、二酸化チタン被覆雲母及び水酸化アルミニウム被覆雲母を挙げることができる。
【0055】
本発明では、径1μm未満の二酸化チタン微粒子も不溶性無機非磁性顔料として分類される。径1μm未満の二酸化チタンは白色無機非磁性顔料として使用してもよい。
【0056】
非磁性顔料の最も好ましい例は、少なくとも一種の有機又は無機着色物質で少なくとも部分的に被覆されている無機コアを含む複合顔料である。前記複合顔料は、前記有機又は無機着色物質を前記無機コアに固定する少なくとも一種のバインダーを含むことが好ましい。
【0057】
複合顔料は、例えば、0.5m2/g(平方メートル/グラム)から500m2/gまでの範囲、例えば、1.5m2/gから400m2/gまでの範囲、例えば、2m2/gから300m2/gまでの範囲の比表面積を有し得る。比表面積はBET(ブルナー-エメット-テラー)方法を使用して測定された値である。
【0058】
無機コアは有機又は無機着色物質の粒子を固定するのに適しているあらゆる形態を有してもよく、例えば、球形形態、小球形態、顆粒形態、多面形態、針状形態、スピンドル形の形態、平らにされたフレーク形態、米粒形態又はスケール形態、及びこれらの形態の組み合わせが非限定的に挙げられる。
【0059】
例えば、無機コアの最大寸法対最小寸法の比は1から50までの範囲であり得る。
【0060】
無機コアは1nmから100nmまでの範囲、例えば、5nmから75nmまでの範囲、例えば、10nmから50nmまでの範囲の平均サイズを有し得る。ある態様では、無機コアは15nmから40nmまでの範囲の平均サイズ、例えば、20nmから25nmまでの範囲の平均サイズを有することができる。
【0061】
「平均サイズ」とは、50%集団で統計的な粒子サイズ分布曲線により与えられる寸法を意味すると理解され、該寸法をD50という。平均サイズは画像分析(電子顕微鏡) により測定される数平均であってもよい。
【0062】
無機コアは2 以上、例えば、2.1以上、例えば、2.2以上の屈折率を有し得る。
【0063】
無機コアを形成し得る材料として、金属塩及び金属酸化物、例えば、チタン、ジルコニウム、セリウム、亜鉛、鉄、紺青、アルミニウム及びクロムの酸化物、アルミナ、ガラス、セラミック、グラファイト、シリカ、ケイ酸塩、例えば、アルミノシリケート及びホウケイ酸塩、合成マイカ、並びにこれらの混合物が非限定的に挙げられる。
【0064】
ある態様では、無機コアは、チタンの酸化物、例えば、TiO、鉄の酸化物、例えば、Fe、セリウム、亜鉛及びアルミニウムの酸化物、シリカ及びケイ酸塩、例えば、アルミノシリケート及びホウケイ酸塩から形成されてもよい。
【0065】
無機コアはBET法を使用して測定して、1m2/gから1 ,000m2/gまでの範囲、例えば、10m2/gから600m2/gまでの範囲、例えば、20m2/gから400m2/gまでの範囲の比表面積を有し得る。ある態様では、無機コアは、25m2/gから75m2/gまでの範囲の比表面積を有しうる。また、他の態様では、無機コアは、40m2/gから60m2/gまでの範囲、例えば、50m2/gの比表面積を有し得る。
【0066】
無機コアは所望により着色し得る。
【0067】
複合顔料中のコアの質量比率は複合顔料の合計質量に対し50%を超えてもよく、例えば、50%から70%まで、例えば、60〜70%の範囲であってもよい。
【0068】
存在する場合、バインダーはそれが無機コアの表面への有機又は無機着色物質の付着を可能にする限りあらゆるタイプであってもよい。バインダーは有機物であってよい。
【0069】
前記バインダーは、これらに限定される訳ではないが、シリコーンポリマー、ポリマー化合物、オリゴマー化合物等のシリコーン化合物、及び、オルガノシラン、フルオロアルキル化オルガノシラン及びポリシロキサン、種々のカップリング剤、例えば、シラン、チタネート、アルミネート及びジルコネートをベースとするカップリング剤から選ばれうる。
【0070】
ある態様では、シリコーン化合物を以下のものから選択することができる。
− アルコキシシランから得られたオルガノシラン(1);
− 下記の非限定例から選択される変性又は非変性ポリシロキサン(2);
− ポリエーテル、ポリエステル及びエポキシ化合物から特に選ばれた少なくとも一つの基を含む変性ポリシロキサン(2A)( 以下、“変性ポリシロキサン”と称する);及び
− ポリマーの末端に位置する一つのケイ素原子の位置に、非限定例として、カルボン酸基、アルコール基及びヒドロキシル基から選ばれた少なくとも一つの官能基を有するポリシロキサン(2B);並びに
− フルオロアルキルシランから得られたフルオロアルキル化オルガノシラン化合物(3)
【0071】
オルガノシラン化合物(1)は式(I):

R1aSiX4-a (I)

(式中、
R1はC6H5-基、(CH3)2CH-CH2-基及びn-CbH2b+1-基(式中bは1から18の数)から選ばれ、
XはCH3O-基及びC2H5O-基から選ばれ、かつ
a は0から3までの範囲である)
のものから選ばれたアルコキシシラン化合物から得られてもよい。
【0072】
アルコキシシラン化合物の非限定例として、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等から選ばれたアルコキシシランが挙げられる。例えば、本開示の一実施態様において、少なくとも一種のアルコキシシラン化合物はメチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、例えば、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン及びフェニルトリエトキシシランから選ばれる。
【0073】
ポリシロキサン(2)は、例えば、式(II):
【化1】

(式中、
R2は水素原子及びCH3基から選ばれ、かつdは15から450までの範囲である)
のものから選ばれてもよい。
【0074】
本開示の一実施態様において、R2は水素原子である。
【0075】
変性ポリシロキサン(2A)は、例えば、
− (a1) 式(III):
【化2】

(式中、
R3は-(CH2)h-基から選ばれ、
R4は-(CH2)i-CH3基から選ばれ、
R5は-OH基、-COOH基、-CH=CH2基、-C(CH3)=CH2基及び-(CH2)j-CH3基から選ばれ、
R6は-(CH2)k-CH3基から選ばれ、
g 及びh は互いに独立に1から15までの範囲であり、
j及びkは互いに独立に0から15までの範囲であり、
eは1から50までの範囲であり、かつ
fは1から300までの範囲である)
のものから選ばれた、ポリエーテルを有する変性ポリシロキサン、
− (a2) 式(IV):
【化3】

(式中、
R7、R8及びR9は、同じであってもよく、また異なっていてもよく、-(CH2)q-基から選ばれ、
R10は-OH基、-COOH基、-CH=CH2基、-C(CH3)=CH2基及び-(CH2)r-CH3基から選ばれ、
R11は-(CH2)s-CH3基から選ばれ、
n及びq(これらは同じであってもよく、また異なっていてもよい) は1から15までの範囲であり、
r及びs(これらは同じであってもよく、また異なっていてもよい)は0から15までの範囲であり、
eは1から50までの範囲であり、かつ
fは1から300までの範囲である)
により表される、ポリエステルを有する変性ポリシロキサン、及び
− (a3) 式(V):
【化4】

(式中、
R12は-(CH2)v-基から選ばれ、
vは1から15までの範囲であり、
tは1から50までの範囲であり、かつ
uは1から300までの範囲である)
のものから選ばれたエポキシ基を有する変性ポリシロキサン、又は、これらの混合物
であってもよい。
【0076】
本開示の一実施態様において、変性ポリシロキサン(2A)は式(III)のものから選ばれたポリエーテルを有する変性ポリシロキサンである。
【0077】
末端部分で変性されたポリシロキサン(2B)は式(VI):
【化5】

(式中、
R13及びR14は、同じであってもよく、また異なっていてもよく、-OH基、R16-OH基、及びR17-COOH基から選ばれ、
R15は-CH3基及び-C6H5基から選ばれ、
R16及びR17は-(CH2)y-基から選ばれ、
yは1から15までの範囲であり、
wは1から200までの範囲であり、かつ
xは0から1 0 0までの範囲である)
のものから選ばれてもよい。
【0078】
本開示の一実施態様において、R16及び/又はR17の少なくとも一つは少なくとも一つの末端ケイ素原子の位置にカルボン酸基を有する。
【0079】
フルオロアルキル化オルガノシラン化合物(3)は式(VII):

CF3(CF2)zCH2CH2(R18)aSiX4-a (VII)

(式中、
R18はCH3-基、C2H5-基、CH3O-基及びC2H5O-基から選ばれ、
X はCH3O-基及びC2H5O-基から選ばれ、
z は0 から15までの範囲であり、かつ
a は0 から3 までの範囲である)
のフルオロアルキルシランから選ばれてもよい。
【0080】
使用し得るフルオロアルキルシランとしては、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジエトキシシラン等が非限定的に挙げられる。一実施態様において、フルオロアルキルシランはトリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン及びヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランから選ばれ、別の実施態様において、フルオロアルキルシランはトリフルオロプロピルトリメトキシシラン及びトリデカフルオロオクチルトリメトキシシランから選ばれる。
【0081】
使用し得るシランをベースとするカップリング剤の非限定例として、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ− グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ −アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン及びγ−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0082】
使用し得るチタネートをベースとするカップリング剤の非限定例として、イソプロピルステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスフェート)チタネート、テトラ(2,2-ジアリールオキシメチル- 1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスフェートチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)オキシアセテートチタネート及びビス( ジオクチルピロホスフェート)エチレンチタネートが挙げられる。
【0083】
使用し得るアルミネートをベースとするカップリング剤の非限定例として、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロポキシモノエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、及びアルミニウムトリスアセチルアセトネートが挙げられる。
【0084】
使用し得るジルコネートをベースとするカップリング剤の非限定例として、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビスアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラキスエチルアセトアセテート、ジルコニウムトリブトキシモノエチルアセトアセテート、及びジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネートが挙げられる。
【0085】
バインダーとして使用される化合物は300〜100000の範囲のモル質量を有し得る。
【0086】
無機コアを一様に被覆する層を得るために、バインダーは、例えば、液状であってもよく、又は、水もしくはその他の溶媒に可溶性であってもよい。
【0087】
バインダーはコア及びバインダーを含む粒子の質量に対し0.01質量%から15質量%までの範囲の量、例えば、0.02質量%から12.5質量%までの範囲の量、例えば、0.03質量%から10質量%までの範囲の量(C又はSiに関して計算される) で存在し得る。バインダーの相対量の計算に関する更なる詳細が欧州特許出願番号EP1184426A2に見られる。
【0088】
ある態様では、バインダーは複合顔料の全質量に対し5質量% 以下、例えば、3質量% 以下の量で存在し得る。
【0089】
有機又は無機着色物質は、例えば、本発明のパウダー状化粧用組成物の製造に使用されるウェットプロセスで使用される液体媒体に不溶性の特定の化合物から選択されうる。
【0090】
無機着色物質は、例えば、カーボンブラック等の無機顔料を含むことができる。
【0091】
有機着色物質は、例えば、有機レーキ又は他の顔料といった顔料を含み得る。これは、
− コチニールカルミン;
− アゾ、アントラキノン、インジゴ、キサンテン、ピレン、キノリン、トリフェニルメタン又はフルオラン染料の有機着色物質;
− 有機レーキ、又は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム、ジルコニウム、ストロンチウム、チタン等の不溶性塩、又は、少なくとも一つのカルボン酸基又はスルホン酸基を含んでもよい酸性染料、例えば、アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、キサンテン染料、ピレン染料、キノリン染料、トリフェニルメタン染料又はフッ素染料等の酸性染料の不溶性塩、並びに、
これらの混合物
から選ばれうる。
【0092】
使用し得る有機顔料としては、D&CブルーNo.4、D&CブラウンNo.1、D&CグリーンNo.5、D&CグリーンNo.6、D&CオレンジNo.4、D&CオレンジNo.5、D&CオレンジNo.10、D&CオレンジNo.11、D&CレッドNo.6、D&CレッドNo.7、D&CレッドNo.17、D&CレッドNo.21、D&CレッドNo.22、D&CレッドNo.27、D&CレッドNo.28、D&CレッドNo.30、D&CレッドNo.31、D&CレッドNo.33、D&CレッドNo.34、D&CレッドNo.36、D&CバイレットNo.2、D&CイエローNo.7、D&CイエローNo.8、D&CイエローNo.10、D&CイエローNo.11、FD&CブルーNo.1、FD&C グリーンNo.3、FD&CレッドNo.40、FD&CイエローNo.5、FD&CイエローNo.6が非限定的に挙げられる。
【0093】
有機着色物質は、例えば、カロファン又は安息香酸アルミニウムの如き有機支持体により担持された少なくとも一種の有機レーキを含んでもよい。
【0094】
使用し得る有機レーキとしては、D&CレッドNo.2アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.3アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.4アルミニウムレーキ、D&CレッドNo. 6アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.6バリウムレーキ、D&CレッドNo.6バリウム/ストロンチウムレーキ、D&CレッドNo.6ストロンチウムレーキ、D&CレッドNo. 6カリウムレーキ、D&C レッドNo.7アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.7バリウムレーキ、D&CレッドNo.7カルシウムレーキ、D&CレッドNo.7カルシウム/ストロンチウムレーキ、D&CレッドNo.7ジルコニウムレーキ、D&CレッドNo.8ナトリウムレーキ、D&C レッドNo.9アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.9バリウムレーキ、D&CレッドNo. 9バリウム/ストロンチウムレーキ、D&CレッドNo.9ジルコニウムレーキ、D&CレッドNo.10ナトリウムレーキ、D&CレッドNo.19アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.19バリウムレーキ、D&CレッドNo.19ジルコニウムレーキ、D&C レッドNo.21アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.21ジルコニウムレーキ、D&CレッドNo.22アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.27アルミニウムレーキ、D&CレッドN o.27アルミニウム/チタン/ジルコニウムレーキ、D&CレッドNo.27バリウムレーキ、D&CレッドNo.27カルシウムレーキ、D&CレッドNo.27ジルコニウムレーキ、D& CレッドNo.28アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.30レーキ、D&CレッドNo.31カルシウムレーキ、D&CレッドNo.33アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.34カルシウムレーキ、D&CレッドNo.36レーキ、D&CレッドNo.4 0アルミニウムレーキ、D&CブルーNo.1アルミニウムレーキ、D&CグリーンNo.3アルミニウムレーキ、D&C オレンジNo.4アルミニウムレーキ、D&CオレンジNo.5アルミニウムレーキ、D&C オレンジNo.5ジルコニウムレーキ、D&CオレンジNo.10アルミニウムレーキ、D&C オレンジNo.17バリウムレーキ、D&CイエローNo.5アルミニウムレーキ、D&CイエローNo.5ジルコニウムレーキ、D&CイエローNo.6アルミニウムレーキ、D&CイエローNo.7ジルコニウムレーキ、D&CイエローNo.10アルミニウムレーキ、FD&CブルーNo.1アルミニウムレーキ、FD&CレッドNo.4アルミニウムレーキ、FD&CレッドN o.4 0アルミニウムレーキ、FD&CイエローNo.5アルミニウムレーキ及びFD&CイエローNo.6アルミニウムレーキが非限定的に挙げられる。
【0095】
先にリストされた有機着色物質の夫々に相当する化合物が“ The Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Association” により発行された“ 国際化粧成分辞書及びハンドブック” と題する書籍、1997年編集、371-386頁及び524-528頁に記載されており、その内容が参考として本明細書に含まれる。
【0096】
有機又は無機着色物質は無機コア100質量部当り10質量部から500質量部までの範囲、例えば、無機コア100質量部当り20質量部から250質量部までの範囲、例えば、40質量部から125質量部までの範囲の量で存在し得る。
【0097】
複合顔料中の有機又は無機着色物質の比率は複合顔料の全質量に対し30%を超えてもよく、例えば、30%から50%まで、例えば、30%から40%までの範囲であってもよい。
【0098】
複合顔料は任意の適切な方法で製造することができ、例えば、メカノケミカル法、又は、有機又は無機着色物質の溶解及びコア表面での沈殿を伴う溶液沈殿法により製造することができる。
【0099】
バインダーは使用してもしなくてもよい。
【0100】
有機又は無機着色物質とコアとを機械的に混合する方法が好ましい。着色物質の導入前にコアにバインダーを添加して混合することができる。
【0101】
複合顔料は、例えば、欧州特許出願第EP1184426及びEP1217046に記載された方法の一つを使用して製造することができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。本開示の一実施態様において、複合顔料は欧州特許出願第EP1184426に記載された方法に従って製造される。
【0102】
本開示の一実施態様においては、無機コアを構成することが意図されている粒子が最初にバインダーと混合される。
【0103】
バインダーが無機コアの表面に一様に付着し得るように、粒子を、例えば、最初にミルに通して、崩壊させてもよい。
【0104】
混合条件及び撹拌条件はコアがバインダーで一様に被覆されるように選ばれる。このような条件は線形負荷が19.6 N/cm(ニュートン/センチメートル)から19160 N/c mまでの範囲、例えば、98 N/c mから14170 N/c mまでの範囲、例えば、147 N/cmから980 N/cmまでの範囲であるように調節し得る。処理時間の期間は5分から24時間までの範囲、例えば、10分から20時間までの範囲である。回転速度は2 rpm(回転/分)から1000 rpmまでの範囲、例えば、5 rpmから1000 rpmまでの範囲、例えば、10 rpmから800 rpmまでの範囲であってもよい。
【0105】
無機コアをバインダーで少なくとも部分的に被覆した後、有機又は無機着色物質が添加され、それがバインダーの層に付着するように撹拌により混合される。
【0106】
添加方法の例として、多量又は少量の連続添加が挙げられる。
【0107】
無機コアとバインダー、或いは、有機又は無機着色物質とバインダーで被覆された無機コアの、混合及び撹拌は、鋭いせん断力及び/又は圧縮力を粉末の混合物に適用し得る装置を使用して行ない得る。その型の装置の例はローラーミキサー、ブレードミキサー等である。本開示の一実施態様において、ローラーミキサーが使用される。好適な装置のリストが欧州特許出願第EP1184426A2に示されている。
【0108】
複合顔料を製造するための別の方法が日本特許JP3286463に記載されており、それは溶液沈殿方法を開示している。有機着色物質がエタノールに溶解され、次いで無機コアが前記エタノール溶液に分散される。次いで炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムのアルカリ性水溶液がこれらの混合物に徐々に添加され、最後に、塩化カルシウムエタノール溶液が絶えず撹拌しながら徐々に添加される。
【0109】
複合顔料として、例えば、
− 合成二酸化チタン(CI77891)、FD&C青アルミニウムレーキ(CI42090)及びポリメチルハイドロジェンシロキサンの混合物(各重量比は58.1/40.7/1.2)
− 合成二酸化チタン(CI77891)、D&C赤7号(CI15850)及びポリメチルハイドロジェンシロキサンの混合物(各重量比は65.8/32.9/1.3)
− 合成二酸化チタン(CI77891)、D&C赤28号(CI45410)及びポリメチルハイドロジェンシロキサンの混合物(各重量比は65.8/32.9/1.3)
− 合成二酸化チタン(CI77891)、FD&C黄アルミニウムレーキ(CI191140)及びポリメチルハイドロジェンシロキサンの混合物(各重量比は65.8/32.9/1.3)、及び
− これらの混合物
が挙げられる。
【0110】
好ましい態様では、本発明のパウダー状化粧用組成物は合成二酸化チタン(CI77891)、FD&C青アルミニウムレーキ(CI42090)及びポリメチルハイドロジェンシロキサンの混合物(各重量比は58.1/40.7/1.2)を含む。
【0111】
非磁性顔料の総量は、パウダー状化粧用組成物の全重量を基準にして、0.01〜30重量%であることができ、好ましくは0.1〜25重量%、更に好ましくは0.5〜20重量%、更により好ましくは1〜15重量%とすることができる。
【0112】
(磁性粒子)
本発明のパウダー状化粧用組成物は少なくとも1種の磁性粒子を含んでもよい。「磁性粒子」とは磁気の影響を示す粒子、すなわち、磁気の作用に対して感受性を有する粒子を意味しており、例えば、磁力線に沿って整列する。
【0113】
しかし、磁性粒子がパウダー状化粧用組成物中に存在する場合であっても、磁性粒子(磁性顔料等)の量は、非磁性顔料/磁性粒子の重量比が1以上、好ましくは2以上、より好ましくは5以上、更により好ましくは20以上、更により好ましくは30以上、更により好ましくは40以上、更により好ましくは50以上、特に好ましくは100以上となるように限定される。
【0114】
好ましくは、本発明のパウダー状化粧用組成物は磁性粒子を含まない。
【0115】
磁性粒子としては、磁性を有しうる任意の無機又は有機顔料を使用することができる。例えば、酸化鉄Feを含む真珠光沢顔料は磁性粒子として使用しうる。例えば、磁性を示す真珠光沢顔料は、メルク(Merck)社からCOLORONA BLACKSTAR BLUE, COLORONA BLACKSTAR GREEN, COLORONA BLACKSTAR GOLD, COLORONA BLACKSTAR RED, CLOISONNE NU ANTIQUE SUPER GREEN, MICRONA MATTE BLACK (17437), MICA BLACK (17260), COLORONA PATINA SILVER (17289)、及び、COLORONA PATINA GOLD (117288)として、また、エンゲルハード(Engelhard)社からFLAMENCO TWILIGHT RED, FLAMENCO TWILIGHT GREEN, FLAMENCO TWILIGHT GOLD, FLAMENCO TWILIGHT BLUE, TIMICA NU ANTIQUE SILVER 110 AB, TIMICA NU ANTIQUE GOLD 212 GB, TIMICA NU-ANTIQUE COPPER 340 AB, TIMICA NU ANTIQUE BRONZE 240 AB, CLOISONNE NU ANTIQUE GREEN 828 CB, CLOISONNE NU ANTIQUE BLUE 626 CB, GEMTONE MOONSTONE G 004, CLOISONNE NU ANTIQUE RED 424 CHROMA-LITE, BLACK (4498), CLOISONNE NU ANTIQUE ROUGE FLAMBE (code 440 XB), CLOISONNE NU ANTIQUE BRONZE (240 XB), CLOISONNE NU ANTIQUE GOLD (222 CB)、及び、CLOISONNE NU ANTIQUE COPPER (340 XB)として販売されている。
【0116】
他に挙げられる磁性粒子の好ましい例は黒色酸化鉄であり、例えば、BASF社によってSICOVITノワールE172の名称で市販されているものが挙げられる。
【0117】
磁性粒子は金属鉄を含んでもよく、特に、不動態化した軟性鉄、例えば、米国特許第6589331号(本明細書に組み込まれる)記載の方法を実施してカルボニル鉄から得られたもの等をふくんでもよい。磁性粒子は酸化物の表面層を有してもよい。
【0118】
磁性粒子は球状粒子又はフレークの形態であってよい。磁性粒子の大きさは10μm以下でよく、1μm以下でもよい。
【0119】
磁性粒子が存在する場合、磁性粒子の量は、パウダー状化粧用組成物の全重量を基準として0.00001〜0.3重量%としてよく、好ましくは0.00001〜0.1重量%である。
【0120】
磁性粒子が存在する場合、磁性粒子と非磁性顔料の総量は、パウダー状化粧用組成物の全重量を基準として0.1〜25重量%であってよく、0.1〜20重量%が好ましく、0.1〜15重量%がより好ましい。最も好ましくは、本発明のパウダー状化粧用組成物は磁性粒子を含まない。
【0121】
本発明のパウダー状化粧用組成物は磁性粒子を含まないか、或いは、当該組成物が磁性粒子を含む場合であっても磁性粒子の量は、最大でも非磁性顔料の量と等しい程度である。したがって、本発明のパウダー状化粧用組成物は磁気によって影響を受けないか又は非常に僅かにしか影響を受けない。結果として、本発明のパウダー状化粧用組成物はウェットプロセスを使用して好適に製造することができる。
【0122】
パウダー状化粧用組成物は化粧料に一般に使用されている追加の成分を少なくとも1種更に含むことができる。追加の成分は好ましくはウェットプロセスで使用される液体媒体に不溶であり、好ましくは非磁性である。
【0123】
追加の成分としては、少なくとも1種の追加のフィラーが挙げられる。追加のフィラーは無機又は有機であり、その結晶形(例えば、ラメラ、正方晶、六方晶、斜方晶等)に関わらず、板状、球状又は楕円状等の任意の形状であることができる。
【0124】
本発明の組成物に使用可能な追加のフィラーには、タルク、シリカ、カオリン、ポリアミド(ナイロン(登録商標))粉末、ポリ−β−アラニン粉末、ポリウレタン粉末、ポリエチレン粉末、ポリスチレン粉末、ポリ(メタ)アクリレート粉末、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))粉末等のフッ素ポリマー粉末、ラウロイルリシン、デンプン、窒化ホウ素、アクリル酸ポリマー粉末、シリコーン樹脂粉末(例えば、東芝のトスパール(登録商標))等のシリコーン粉末、沈降炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、ガラス又はセラミックのビーズが含まれる。単一種類の追加のフィラーを使用してもよく、2種類以上の追加のフィラーを組み合わせて使用してもよい。
【0125】
上記(必須)特定のフィラー/上記追加のフィラーの重量比は1以上である。
【0126】
追加のフィラーは、パウダー状化粧用組成物の全重量を基準として、0.1〜50重量%、好ましくは0.1〜40重量%、より好ましくは0.1〜30重量%、更により好ましくは0.1〜20重量%、特に好ましくは0.1〜10重量%の範囲の量でパウダー状化粧用組成物中に存在することができる。
【0127】
必要であれば、本発明のパウダー状化粧用組成物は少なくとも1種のバインダーを含む。バインダーとしては、シリコーン、植物又は動物油、合成油、ワックス、高級脂肪酸、高級アルコール等が挙げられる。
【0128】
バインダーは、パウダー状化粧用組成物の全重量を基準として、0.1〜15重量%、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%、更により好ましくは0.1〜3重量%、特に好ましくは0.1〜1重量%の範囲の量でパウダー状化粧用組成物中に存在することができる。
【0129】
本発明のパウダー状化粧用組成物は、防腐剤、界面活性剤、抗酸化剤、香料、保湿剤、UV遮蔽剤、ビタミン等の他の任意の成分を更に含むことができる。
【0130】
これらの任意の成分は、パウダー状化粧用組成物の全重量を基準として、0.1〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%、より好ましくは0.1〜1重量%の範囲の量でパウダー状化粧用組成物中に存在することができる。
【0131】
(製造方法)
次に、ウェットプロセスに基づく本発明の化粧料の製造方法を詳細に説明する。
【0132】
本発明の化粧料の製造方法では、既述した本発明のパウダー状化粧用組成物等の化粧料の製造のためにウェットプロセスを採用する。採用されるウェットプロセスは、少なくとも粉体を液体中に分散してスラリーを得る工程;前記スラリーを圧縮又は吸引により容器中で成形する工程;及び、前記成形されたスラリーを乾燥する工程を含む。各工程の詳細を以下に説明する。
【0133】
(分散工程)
この工程では、少なくとも粉体が液体中に分散されてスラリーが調製される。ここでスラリーとは液体中の粉体による粘度の高い懸濁液を意味する。
【0134】
上記のとおり、前記粉体は必須成分として少なくとも1種の非磁性顔料を含み、また、任意成分として少なくとも1種の磁性粒子を含みうる。前記粉体は好ましくは上記の少なくとも1種の特定のフィラーを含む。前記粉体は上記の追加のフィラーを更に含むことができる。
【0135】
前記粉体が磁性粒子を含まないことが最も好ましい。前記粉体が磁性粒子を含む場合は、前記磁性粒子の量が、前記化粧料中の前記非磁性顔料/前記磁性粒子の重量比が1以上、好ましくは2以上、より好ましくは5以上、更により好ましくは20以上、更により好ましくは30以上、更により好ましくは40以上、更により好ましくは50以上、特に好ましくは100以上となる量に限定される。
【0136】
したがって、分散工程前に、非磁性顔料のみを混合して、又は、非磁性顔料を、非磁性顔料/磁性粒子の重量比が1以上となる程度の少量の磁性粒子と混合して、粉体を調製することができる。
【0137】
或いは、分散工程前に、磁性粒子を含む粉体中の当該磁性粒子の少なくとも一部を少なくとも1種の非磁性顔料で置換することによって、粉体を調製することができる。この場合、好ましくは、磁性粒子の全てが非磁性顔料で置換されることが好ましい。
【0138】
前記液体は、典型的には、溶媒であり、好ましくは揮発性溶媒である。揮発性溶媒としては、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、エーテル、フッ化炭化水素、低分子量の環状又は直鎖状シリコーン等の揮発性シリコーン、及び、軽質流動イソパラフィン等の炭化水素等が挙げられる。使用性の点ではイソプロパノール及び軽質流動イソパラフィンが好ましい。軽質流動イソパラフィンが最も好ましい。上記揮発性溶媒は単一種類を使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0139】
本発明では、例えば、粉体が秤量され、ヘンシェルミキサー等の任意の機械的手段で混合される。好ましくは、混合された粉体は例えばハンマーミル等によって粉砕される。
【0140】
次に、混合された粉体は秤量され、ボール等の適当な容器中の液体に分散される。この分散工程は遊星混合機で実施することもできる。分散時間は限定されるものではないが、混合手段等の幾つかの要素に依存する。例えば、遊星混合機が分散に使用される場合、約15〜約20分が必要とされうる。
【0141】
粉体及び液体の量は限定されない。粉体量に対する液体量の比は使用性を踏まえて決定することができる。液体量が多すぎると、得られるスラリーが溢れ、又は、次の成形工程において容器から垂れることになり、或いは、更に次の乾燥工程で過剰に縮小してしまうおそれがある。一方、液体量が少なすぎると、得られるスラリーが次の成形工程で成形困難となり、又は、更に次の乾燥工程後にひび割れを起こすおそれがある。例えば、粉体及び液体は5:1、好ましくは3:1、より好ましくは2:1の重量比で使用することができる。
【0142】
必要であれば、分散工程中に脱気を実施してもよい。脱気は、例えば、真空チャンバー中で液体に粉体を分散することで実施可能である。脱気に必要な時間は限定されるものではないが、例えば、真空チャンバー内の圧力等の幾つかの要素に依存する。例えば、脱気は約15〜約20分間実施することができる。脱気を効率良く実施するためにはスラリーを撹拌することが好ましい。
【0143】
必要であれば、分散工程前の上記粉体の混合工程を分散工程と一体化してもよい。すなわち、粉体を秤量して、粉砕を伴う可能性のある上記の混合工程に付することなく、液体中に直接粉体を分散してもよい。
【0144】
(成形工程)
この工程では、スラリーは圧縮又は吸引によって容器中で成形される。例えば、上記分散工程で得られたスラリーは容器中に注入され、当該スラリーは圧縮及び/又は吸引されてスラリーが成形される。
【0145】
容器としては、皿又はパン等の任意の容器が使用可能である。好ましくは、パンが容器として使用されうる。化粧料の成分は通過不可であるが溶媒の吸引によって溶媒は通過可能な小孔を容器が備えていてもよい。容器中にスラリーを注入する態様は限定されない。典型的には、上注入法及び下注入法の2つの態様が存在する。
【0146】
上注入法では、スラリーは容器の上から容器内に注入される。上注入法は複数の色を有する化粧品を製造するのに好適である。更に、スラリーを注入するための複雑な機構を容器が備える必要がないので、上注入法は下注入法に比べてコスト的に有利である。
【0147】
下注入法では、スラリーは容器の底から容器内に注入される。注入のために、容器の底には容器内にスラリーを供給するための機構が通常必要である。下注入法は化粧品を大量に製造するためには好適である。更に、下注入法では複雑な形状の化粧品を容易に製造することができる。容器内に導入されたスラリーは圧縮及び/又は吸引によって成形される。好ましくは、圧縮と吸引が同時に実施される。
【0148】
圧縮は、平面を有する圧縮部材等の機械的手段によって容器内のスラリーを圧縮することによって実施可能である。吸引は、例えば、バキューミングによって容器内を減圧することによって実施可能である。圧縮及び吸引は幾度か繰り返すことができる。必要であれば、容器及び/又は圧縮部材に振動を加えてもよい。スラリー中の液体の少なくとも一部が圧縮及び吸引によって除去されてスラリーを固化することが好ましい、液体の大部分がスラリーから除去されることがより好ましい。
【0149】
(乾燥工程)
この工程では、成形されたスラリーが乾燥されて化粧料となる。乾燥によって、スラリー中に残存する溶媒は完全に除去される。乾燥温度は、化粧料の成分及び使用された溶媒のタイプ等の幾つかの要素に依存する。例えば、乾燥は約60℃から100℃の温度で行うことができる。乾燥時間も上記の要素に依存する。例えば、乾燥は約1〜6時間実施することができる。
【0150】
本発明の製造方法で採用されるウェットプロセスは、大量の粉体及び少量のバインダーを含む化粧料を製造可能なので、ドライプロセスに比べて有利である。更に、ウェットプロセスは、複数の色及び星形等の異形の化粧料を容易に製造可能である。
【0151】
一方、少量の溶媒しか使用せずスラリーを調製しない、いわゆるセミウェットプロセスは、本明細書におけるウェットプロセスには該当しない。セミウェットプロセスでは、溶媒は除去されない場合がある。更に、スラリーが調製されるが圧縮前に乾燥され、乾燥物が粉砕されて圧縮される別のプロセスも本発明におけるウェットプロセスには該当しない。
【0152】
本発明の製造方法で製造される化粧料はスムースな肌触りと良好な落下耐性を有しうる。更に、本発明の製造方法で製造される化粧料は湿った感触、良好なのび等を備えることができる。
【0153】
本発明の製造方法で製造される化粧料は、好ましくは、パウダーファンデーション、プレストパウダー、デオドラントパウダー等のパウダー状化粧品の形態である。特に、本発明の製造方法はコンパクトパウダーファンデーション等のコンパクトパウダーの形態にあるパウダー状メークアップ化粧料の製造に有用である。
【実施例】
【0154】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、実施例は、本発明を何ら限定するものではない。
【0155】
表1に示す下記の組成を有する実施例1及び比較例1のパウダー状化粧用組成物が調製された。表1中の数値は組成物の全重量に対する重量百分率を示す。
【表1】

* = 合成二酸化チタン(CI77891)、FD&C青アルミニウムレーキ(CI42090)及びポリメチルハイドロジェンシロキサンの混合物(各重量比は58.1/40.7/1.2)
【0156】
実施例1及び比較例1のパウダー状化粧用組成物の製造方法は以下のとおりである。
(1)乾燥粉体調製
原料を秤量し、カッターミキサーで混合した。混合物をハンマーミルで粉砕した。
(2)スラリー調製
得られた乾燥粉体の50gをステンレス製のボウルに入れ、28gの軽質流動イソパラフィンを添加してゴム製スパチュラを使用して手作業で混合した。
(3)ウェットプロセス
得られたスラリーを金属製パン上に注いだ。吸引を行いつつ、445KPa(100kgf)で2秒間、スラリーをサーボプレスにかけた。この工程を3回繰り返した。金属製パン上に残存していた粉体を70℃で6時間乾燥してコンパクトパウダーの形態のパウダー状化粧料を得た。
【0157】
このようにして得られた実施例1及び比較例1のパウダー状化粧用組成物を以下のように評価した。
(A)目視評価
実施例1及び比較例1のパウダー状化粧用組成物の写真をとり、互いに比較した。実施例1の表面は均一であったが、実施例1に比べて比較例1の表面は均一ではなかった。写真を図1に示す。
(B)色差評価1
上記(1)乾燥粉体調製で得られた実施例1の乾燥粉体を圧縮し、その直後の表面色をコニカ−ミノルタ社製CR−200色度計で測定し、上記(3)ウェットプロセス後の実施例1の表面色と比較した。同一の手順を比較例1についても実施した。結果を表2に示す。
【0158】
【表2】

【0159】
表2中、「ドライ」は、上記(1)乾燥粉体調製で得られた混合物を圧縮した直後の表面色を表し、「ウェット」は上記(3)ウェットプロセス後の表面色を表す。
【0160】
実施例1の「ドライ」及び「ウェット」の表面色の差は比較例1のものよりも小さいことが明らかである。したがって、比較例1よりも実施例1の方が、最終製品の表面色のコントロールが容易である。これは、磁性顔料である黒色酸化鉄を使用しないことによって表面色の差が抑制可能であることを示す。
【0161】
(C)色差評価2
実施例1のパウダー状化粧用組成物の一部を当該組成物の表面から取り出し、取り出した部分の表面色をコニカ−ミノルタ社製CR−200色度計で測定した。この工程を100回繰り返して、色の変化を決定した。同一の手順を比較例1についても繰り返した。結果を表3及び図2に示す。
【0162】
【表3】

【0163】
表3において、「0」におけるL、C及びhは上記(3)ウェットプロセス直後の表面色に対応する(表2の「ウェット」を参照)。
【0164】
比較例1に比べて実施例1の方が、パウダー状化粧用組成物の内部の色と表面の色との差異が小さいことが明らかである。したがって、比較例1よりも実施例1の方が、最終製品の色のコントロールが容易である。これは、磁性顔料である黒色酸化鉄を使用しないことによってパウダー状化粧用組成物の内部と表面の色の差を抑制可能であることを示す。
【0165】
(D)磁気影響評価
上記(2)スラリー調製の直後の実施例1及び比較例1のスラリーの磁石上での挙動を比較した。
【0166】
ステンレス製ボウルではなくプラスチック板上で実施された上記(2)スラリー調製の3分後の実施例1及び比較例1のスラリーの写真を撮影した。写真を図3の上段に示す。
【0167】
スラリーを保持するプラスチック板の底を磁石で引っ掻いて、写真を撮影した。写真を図3の中段に示す。
【0168】
次に、スラリーをゴム製スパチュラを使用して再度混合し、その写真を撮影した。写真を図3の下段に示す。
【0169】
図3に示すように、磁石で引っ掻いた直後及び磁石で引っ掻いた後にゴム製スパチュラで再度混合した後に、比較例1には黒い線及び色の薄い部分が見られた。これは、磁性顔料である黒色酸化鉄が磁化され、黒い線として視認されるように凝集したこと、並びに、プラスチック板の底に集まってしまい表面の色が薄くなったことを示す。
【0170】
一方、黒い線及び色の薄い部分は実施例1の表面には見られない。したがって、比較例1よりも実施例1の方が、最終製品の色のコントロールが容易である。これは、磁性顔料である黒色酸化鉄を使用せず、合成二酸化チタン(CI77891)、FD&C青アルミニウムレーキ(CI42090)及びポリメチルハイドロジェンシロキサンの混合物(各重量比は58.1/40.7/1.2)である複合顔料等の非磁性顔料を使用することに均一な色を得ることができることを示す。
【0171】
次に、両方の組成物(本発明の実施例1、及び、比較例1)を6人の日本人女性によってハーフフェース対比試験によって評価した。比較例1の化粧料よりも、実施例1の化粧料の方が、皮膚に光沢を与え、また、皮膚色のカバー、毛穴等の皮膚形状欠陥の遮蔽、皮膚色欠陥の遮蔽、きらめく仕上がりの点で、より優れたメークアップ効果を与えた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮粉体形態のパウダー状化粧用組成物であって、
(a)組成物の総重量の45重量%以上のフィラーであって、10以上のアスペクト比を有するフィラー、シリカ小球体、微孔性高分子小球体、ポリウレタン粉体、高分子マイクロカプセル、及び、エラストマー性架橋オルガノポリシロキサン粉体からなる群から選択される少なくとも1種のフィラー、
(b)少なくとも1種の非磁性顔料、及び
(c)任意の、少なくとも1種の磁性粒子
を含む粉体相を含み、
前記磁性粒子が組成物中に存在する場合の前記非磁性顔料/前記磁性粒子の比が1以上である、パウダー状化粧用組成物。
【請求項2】
前記フィラーが、天然雲母、合成雲母、セリサイト、エラストマー性架橋オルガノポリシロキサン粉体、及び、それらの混合物から選択される、請求項1記載のパウダー状化粧用組成物。
【請求項3】
前記磁性粒子が黒色酸化鉄を含む、請求項1又は2記載のパウダー状化粧用組成物。
【請求項4】
前記非磁性顔料が、少なくとも一種の有機又は無機着色物質で少なくとも部分的に被覆されている無機コアを含む複合顔料を含む、請求項1乃至3のいずれかに記載のパウダー状化粧用組成物。
【請求項5】
前記複合顔料が、前記有機又は無機着色物質を前記無機コアに固定する少なくとも一種のバインダーを含む、請求項4記載のパウダー状化粧用組成物。
【請求項6】
前記磁性粒子が存在する場合の、前記磁性粒子及び前記非磁性顔料の総量が組成物の全重量の0.1〜25重量%である、請求項1乃至5のいずれかに記載のパウダー状化粧用組成物。
【請求項7】
前記粉体相の総量が組成物の全重量の80〜95重量%である、請求項1乃至6のいずれかに記載のパウダー状化粧用組成物。
【請求項8】
前記フィラーの量が組成物の全重量の60重量%以上である、請求項1乃至7のいずれかに記載のパウダー状化粧用組成物。
【請求項9】
少なくとも1種の非磁性顔料を含む粉体を少なくとも液体中に分散してスラリーを得る工程;
前記スラリーを圧縮又は吸引により容器中で成形する工程;及び
前記成形されたスラリーを乾燥する工程
を含む化粧料の製造方法であって、
前記粉体が磁性粒子を含まない、又は、前記粉体が磁性粒子を含む場合は、前記磁性粒子の量が、前記化粧料中の前記非磁性顔料/前記磁性粒子の比が1以上となる量である、化粧料の製造方法。
【請求項10】
前記液体の少なくとも一部が前記成形工程において除去される、請求項9記載の化粧料の製造方法。
【請求項11】
前記粉体が磁性粒子を含まない、請求項9又は10記載の化粧料の製造方法。
【請求項12】
前記磁性粒子が黒色酸化鉄を含む、請求項9乃至11のいずれかに記載の化粧料の製造方法。
【請求項13】
前記非磁性顔料が、少なくとも一種の有機又は無機着色物質で少なくとも部分的に被覆されている無機コア、及び、前記有機又は無機着色物質を前記無機コアに固定する少なくとも一種のバインダーを含む複合顔料を含む、請求項9乃至12のいずれかに記載の化粧料の製造方法。
【請求項14】
前記磁性粒子が存在する場合の、前記磁性粒子及び前記非磁性顔料の総量が化粧料の全重量の0.1〜25重量%である、請求項9乃至13のいずれかに記載の化粧料の製造方法。
【請求項15】
前記粉体の総量が化粧料の全重量の80〜95重量%である、請求項9乃至14のいずれかに記載の化粧料の製造方法。
【請求項16】
請求項9乃至15のいずれかに記載の製造方法によって得られる化粧料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−529424(P2012−529424A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552257(P2011−552257)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【国際出願番号】PCT/JP2009/061143
【国際公開番号】WO2010/143314
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】