説明

化粧料用顔料分散液

【課題】化粧品用途として汎用可能な黒酸化鉄を黒色顔料として用い、分散性に優れペン型タイプの化粧料としても好適に用いることのできる化粧料用顔料分散液を提供することを目的とする。
【解決手段】ポリ−γ−L−グルタミン酸および/またはその塩、黒酸化鉄、べんがら及び紺青を含有することを特徴とする化粧料用顔料分散液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧料用顔料分散液、更に詳しくは、特にペン型容器に充填して用いる黒色化粧料として好適な化粧料用顔料分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
人の皮膚は、角質層によって覆われており、乾燥した大気中においても水分を失うことなく生命活動を維持できるのは、外界と接しているこの角質層が存在しているからであることはよく知られている。角質層は薄く柔軟で且つ体内の水分を保ち、健常な皮膚状態を維持するように調節している。
【0003】
しかしながら、我々は環境要因等(例えば、温度変化、湿度変化、光、水との接触、洗剤の使用等)により、しばしば表皮に何らかの損傷をきたすことがある。ダメージを受けた皮膚は、硬く、弾力性も失われ、カサカサとした肌荒れ状態となる。こうした肌荒れ皮膚は、近年、急増傾向にあるアトピー性皮膚炎との関連性も指摘されており、深刻なスキントラブルを招く恐れもある。
【0004】
荒れ肌には、角質細胞の剥離によるものと、乾燥により皮膚の健康状態が悪化して表皮の硬化や損傷に至るものがある。前者の荒れ肌はコレステロール、セラミド、脂肪酸等の角質細胞間脂質の溶出、および紫外線、洗剤等に起因する角質細胞の変性や表皮細胞の増殖・角化バランスの崩壊による角層透過バリアの形成不全等によって発生する。この荒れ肌を予防または治癒する目的で、角質細胞間脂質成分又はそれに類似する合成の角質細胞間脂質を供給するなどの検討が行われている。この角層細胞間脂質は、有棘層と顆粒層の細胞で生合成された層板顆粒が、角層直下で細胞間に放出され、伸展し、層板(ラメラ)構造をとり、細胞間に広がったものである。層板顆粒はグルコシルセラミド、コレステロール、セラミド、リン脂質等から構成されるが、角層細胞間脂質にはグルコシルセラミドは殆ど含まれていない。すなわち、層板顆粒中のグルコシルセラミドは、β−グルコセレブロシダーゼによって加水分解を受け、セラミドに変換され、このセラミドがラメラ構造をとる結果、角層細胞間脂質として角層透過バリアの形成を改善し、荒れ肌防御のバリアの働きを持つと考えられる。洗浄剤による肌荒れはセラミドの補充が有効であり、肌荒れの改善に高い効果を示すことが報告されている(非特許文献1)。
【0005】
一方、後者の荒れ肌には、化粧料用顔料分散液には皮膚の恒常性維持の他、皮膚からの水分揮散を防止し、皮膚を構成する表皮、角質層に水分を保持させ皮膚に保湿性、柔軟性を保たせみずみずしい肌を保持する等の目的で保湿剤が配合されている。従来より用いられてきた保湿剤としては、オリーブ油、等の植物油やラノリンのような動物由来の脂質に代表される親油性の保湿剤の他に親水性の保湿剤としては、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール等の水溶性多価アルコール、ヒアルロン酸及びキサンタンガムのような多糖類、ポリエチレングリコールなどの水溶性高分子、ピロリドンカルボン酸塩及びアミノ酸に代表される低分子量の天然保湿因子、植物抽出エキス等が知られている。
【0006】
このように様々な種類の親水性、親油性の保湿剤が存在するが、安全性を重要視する風潮などから、昨今では動物由来のものや化学合成品は避けられる傾向にあり、好ましくは天然物や微生物による発酵生産物で、さらには生体のみならず環境にも負荷の少ない生分解性の素材が期待され注目を浴びている。
【0007】
一方で、微生物が生産するバイオポリマーが有望視されている。バイオポリマーの中でも、アミノ酸が縮重合して構成されるポリアミノ酸と呼ばれる一群のバイオポリマーには、様々な機能が見出されており、その潜在能力に注目が集まっている。従来、ポリアミノ酸として、ポリ−γ−グルタミン酸(以下、「PGA」と表記することがある)、ポリ−ε−リジンおよびシアノファイシンの3種類が同定されている。
【0008】
PGAは、グルタミン酸のα−アミノ基とγ−カルボキシル基とがアミド結合したポリアミノ酸である。PGAは、古くから日本人に親しまれている納豆の糸引きの主体物質として知られる、吸水性のポリアミノ酸であるが、このように親しまれてきた背景として、その魅力的な機能性によるところが大きい。PGAの魅力的な機能としては、生分解性及び高吸水性を兼ね備えている点が知られている。これらの機能を利用して、上述した化粧料用顔料分散液をはじめ、医療品、食品等、種々の分野、用途で用いられることが期待されている。
【0009】
最近、ポリアミノ酸の構造的特徴(構成アミノ酸の光学活性や種類、分子サイズ、結合様式など)がその機能性に強く反映されていることが分かってきた。よく知られているところでは、生分解性と高吸水性を兼ね備えている点が挙げられる。それらの機能を利用し、食品、化粧品、医療品などの多くの分野で、種々の用途があるものと期待されている。しかし、現在、製品化されているPGAは、化学的にヘテロなDL−PGAである。具体的には、PGAは、納豆菌やその類縁菌から生産され、D−グルタミン酸及びL−グルタミン酸が不規則に結合しており、その含有比率や、配列は生産菌の培養毎に変動する。一般に、ポリアミノ酸の構造的特徴(構成するアミノ酸の光学活性や種類、分子サイズ、結合様式など)は、その機能に強く影響を与える。上記DL−PGAは、分子毎に構造が異なるため、その性質も分子毎に異なる。これでは、所望の品質を有するDL−PGAを安定して製造することが困難である。
【0010】
ホモポリ−γ−グルタミン酸を生産する菌も報告されている。例えば、炭疸菌Bacillus anthracisはD−グルタミン酸のみからなるポリ−γ−D−グルタミン酸(以下、D−PGAと記載することもある)を生産する事が報告されている(非特許文献2)。しかし、本菌は強い病原性を有する細菌であるため、工業的なPGA生産菌としては不適切であり、生産されるD−PGAの分子量も小さい。また、好アルカリ性細菌Bacillus haloduransは、L−グルタミン酸のみからなるポリ−γ−L−グルタミン酸および/またはその塩(以下L−PGAと記載することもある)を生産する事も報告されている(非特許文献3)。しかし、本菌の生産するL−PGAは分子量が極めて小さく、実用的な性能を得るには不十分である。
【0011】
一方、高分子量のホモポリ−γ−グルタミン酸の生産菌として、好塩性古細菌Natrialba aegyptiacaが分子量10万〜100万程度のL−PGAを生産することが報告されている。しかし、本菌は液体培養条件下では分子量が10万程度と小さい、かつ殆どポリ−γ−L−グルタミン酸および/またはその塩を生産しないため、工業的な生産菌として問題があった(非特許文献4、特許文献1)。
【0012】
上記以外に、L−PGAを生産する生物としては、ヒドラ等が挙げられるが、ヒドラの場合も同様に分子量が極めて小さいという問題がある(非特許文献3)。
【0013】
一方本発明者らは、均一な光学純度でかつ高分子量のポリ−γ−L−グルタミン酸および/またはその塩を液体培養などで大量に調製することを可能とした。より具体的には、数平均分子量が130万以上で、かつ均一な光学純度のポリ−γ−L−グルタミン酸および/またはその塩を、培養液1Lあたり4.99g以上の高い生産性で取得している(特許文献2)。
【0014】
また、ポリ−γ−L−グルタミン酸の架橋方法と架橋体(特許文献3)、並びにポリ−γ−L−グルタミン酸及びポリ−γ−L−グルタミン酸架橋体のうち少なくとも一方を含むことを特徴とする化粧料用顔料分散液(特許文献4)の報告がある。
【0015】
従来より化粧品用途に用いられる黒色顔料としては、カーボンブラック、黒酸化鉄およびチタンブラック等が一般的に知られている。これら黒色顔料は、例えば水系媒体に分散されて、円筒型の収納部分に充填された化粧料を筆型のペン先で塗布するペン型タイプのアイライナー用途などに用いられている。これらの黒色顔料のうちカーボンブラック、チタンブラックは化粧品用の色材として認可のおりている国もあれば、認可のおりていない国もあり、世界的に使用することは困難である。
【0016】
一方、黒酸化鉄は、磁性を有するため凝集しやすく、分散が困難である。また、酸化されて赤褐色に変色したりするといった不具合も生じていた。特に、化粧品用途では皮膚への安全性等の面から分散媒が限定されており、水系タイプの化粧品の場合には、黒酸化鉄の安定な分散は一層困難であった。このように顔料成分の微分散が困難であり粗大粒子が多く存在してしまうために、アイライナー等のペン型タイプの化粧品に使用した場合には、ペン先へインクが充分に供給されず、かすれが生じやすいという問題があった。また上記した変色の問題の解決、分散安定性向上のために、黒酸化鉄、べんがら、コンジョウ、黄酸化鉄等、各種の顔料をブレンドして黒色の化粧料を調製することも行われているが、分散が粗末なために、分散が粗末でも筆記できるような構造の部材での使用に制限されてしまうことになる。このような部材は一般にインキ流量が安定せず、ペン先からボタ落ちするなど、化粧用具としての品質が安定しない等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特表2002−517204号公報
【特許文献2】特開2007−314434号公報
【特許文献3】特開2008−120910号公報
【特許文献4】特開2008−120725号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】ジャーナル オブ バイオサイエンス アンド バイオエンジニアリング、94,187(2002)
【非特許文献2】Handy, W. E., and H.N. Rydon,Biochem J., 40, 297-309 (1946)
【非特許文献3】生物と化学 Vol.40, No.4, p212-214 (2002)
【非特許文献4】Hezayen, F. F., B. H. A. Rehm, B. J. Tindall and A. Steinbuchel, Int. J. Syst. E., 51, 1133-1142(2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、化粧品用途として汎用可能な黒酸化鉄を黒色顔料として用い、分散性に優れペン型タイプの化粧料としても好適に用いることのできる化粧料用顔料分散液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
斯かる実情において、本発明者らは鋭意研究を行ったところ、顔料組成として特定の三成分を併用することにより色相にも優れ、かつ分散安定性に優れた黒色分散液を得ることを見出した。
【0021】
すなわち、本発明は以下のような構成からなる。
(1)ポリ−γ−L−グルタミン酸および/またはその塩、黒酸化鉄、べんがら及び紺青を含有することを特徴とする化粧料用顔料分散液。
(2)ポリ−γ−L−グルタミン酸が、ポリ−γ−L−グルタミン酸分子同士の架橋構造を有することを特徴とするポリ−γ−L−グルタミン酸架橋体であることを特徴とする(1)の化粧料用顔料分散液。
(3)ポリ−γ−L−グルタミン酸の平均分子量が100万以上であることを特徴とする(1)または(2)の化粧料用顔料分散液。
(4)ポリ−γ−L−グルタミン酸の平均分子量が200万以上であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかの化粧料用顔料分散液。
(5)ポリ−γ−L−グルタミン酸の平均分子量が350万以上であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかの化粧料用顔料分散液。
(6)ポリ−γ−L−グルタミン酸の吸水倍率が10倍以上5000倍以下であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかの化粧料用顔料分散液。
(7)粘度が20mPa・s以下であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかの化粧料用顔料分散液。
(8)水系アイライナー用途であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかの化粧料用顔料分散液。
(9)(1)〜(8)のいずれかの化粧料用顔料分散液をペン型容器に充填してなることを特徴とするアイライナー。
【発明の効果】
【0022】
本発明の化粧料用顔料分散液は、黒の良好な色相を呈し、且つ分散安定性に優れペン型容器に充填してペン型化粧料として優れた顔料分散液を得ることができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の「ポリ−γ−L−グルタミン酸」とは、L−グルタミン酸のみからなるホモポリマ−である。その構造は式(I)にて示される構造である。α−COOHの水素は水素であっても良いし他の金属対イオンでも良い。例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、カルシウム、亜鉛及び鉄等一般的なものあれば限定する必要はない。そのなかでも好ましくはナトリウムである。
【0024】
【化1】

【0025】
本発明の「分子量」とはプルラン標準物質の分子量換算にて算出した数平均分子量(Mn)のことを指す。
【0026】
本発明のポリ−γ−L−グルタミン酸は、既存の方法で得ることができる。たとえば、特許文献2(特開2007−314434号公報)に記載された方法で、ポリ−γ−L−グルタミン酸を得ることができる。以下に、一例として、特許文献2を参考にしたポリ−γ−L−グルタミン酸の製造方法を述べるがこれに限定されるものではない。
【0027】
たとえば、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センタ−に、ナトリアルバ エジプチアキア(Natrialba aegyptiaca)0830−82株(受託機関名:独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センタ−、受託日:平成18年4月4日、受託番号:FERM BP−20872)、ナトリアルバ エジプチアキア(Natrialba aegyptiaca)0830−243株(受託機関名:独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センタ−、受託日:平成18年4月4日、受託番号:FERM BP−20873)、またはナトリアルバ エジプチアキア(Natrialba aegyptiaca)0831−264株(受託機関名:独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センタ−、受託日:平成18年4月4日、受託番号:FERM BP−20874)として寄託されている菌株をもちいてポリ−γ−L−グルタミン酸を得る場合、液体培養によりポリ−γ−L−グルタミン酸を得ることができる。または、特許文献2(特開2007−314434号公報)に記載された方法で微生物を変異処理し、液体培養によりポリ−γ−L−グルタミン酸を生産できる微生物を作製し、ポリ−γ−L−グルタミン酸を生産することもできる。また、ナトリアルバ エジプチアキア(Natrialba aegyptiaca)を常法により固相培養し、ポリ−γ−L−グルタミン酸を生産することもできる。
【0028】
液体培養する場合には、振とう培養、通気攪拌培養など好気条件などで行うことが望ましい。その際の培養温度は、30〜50℃、好ましくは35〜45℃が適当である。また、培地のpHは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、塩酸、硫酸またそれらの水溶液などによって調整できるが、pH調整できれば限定されない。培養pH5.0−9.0、好ましくはpH6.0−8.5で培養するのが望ましい。また、培養期間は、通常2〜7日間程度でよい。また、培養時のNaCl濃度は10〜30%、好ましくは15〜25%で培養するのが望ましい。また、Yeast Extract濃度は0.1〜10%、好ましくは0.5〜5.0%濃度で培養するのが望ましい。また、固体培養の場合においても前期液体培養の場合と応用に、培養温度は30〜50℃、好ましくは35〜45℃、培養時のpHは5.0−9.0、好ましくはpH6.0−8.5、培養時のNaCl濃度は10−30%、好ましくは15〜25%、Yeast Extract濃度は0.1−10%、好ましくは0.5−5%濃度が採用される。このようにして培養すると、ポリ−γ−L−グルタミン酸は、主として菌体外に蓄積されて前記した培養物中に含まれる。特に限定はされないが、PGA生産液体培地−1(22.5% NaCl、2% MgSO・7HO、0.2% KCl、3% Trisodium Citrate、1% Yeast Extract、0.75% Casamino acid)を使用してもよく、各添加量は菌株にあわせて適宜調整すればよい。
【0029】
培養液中のポリ−γ−L−グルタミン酸の定量方法としては、ポリ−γ−L−グルタミン酸を含む試料から、硫酸銅やエタノ−ルを用いて沈澱させ、その沈殿物の重量測定およびKijerder法による総窒素の測定を行なうもの(M.Bovarnick,J.Biol.Chem.,145巻、415ペ−ジ、1942年)、塩酸加水分解後のグルタミン酸量を測定する方法(R.D.Housewrigt,C.B.Thorne,J.Bacteriol.,60巻、89ペ−ジ、1950年)及び、塩基性色素との定量的な結合を利用した比色法(M.Bovarnick et al.,J.Biol.Chem.,207巻、593ペ−ジ、1954年)が知られているが好ましくは、塩基性色素との定量的な結合を利用した比色法である。
【0030】
塩基性色素としてはクリスタルバイオレット、アニリンブル−、サフラニンオ−、メチレンブル−、メチルバイオレット、トルイジネブル−、コンゴレッド、アゾカルマイン、チオニン、ヘマトキシリンなどがあげられるが、サフラニンオ−が好ましい。
【0031】
この培養物からポリ−γ−L−グルタミン酸を分離、採取するには、硫酸銅やエタノ−ルを用いて沈澱させるなどの前記の公知の方法を用いればよい。一例を挙げると、例えば、培養液を遠心分離し、菌体を取り除く。続いて、得られた上清液に3倍量の水を加え希釈した後、pHを3.0に調整する。pH調整後、5時間 室温で攪拌した。その後、3倍量のエタノ−ルを加え、ポリ−γ−L−グルタミン酸を沈殿物として回収した。沈殿物を0.1mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)に溶解させ、低分子物質を透析により除去する。透析後、得られた液を核酸除去のため、DNase、RNase処理を行っても良いし、次いでタンパク質除去のために、Proteinase処理を行っても良い。Proteinase処理後、透析により低分子物質を除去しても良い。透析後、凍結乾燥等により、乾燥ポリ−γ−L−グルタミン酸を得ればよい。また、必要により陰イオン交換樹脂を用いた精製を行うことができるが、一般的な条件で精製可能である。
【0032】
本発明に使用するポリ−γ−L−グルタミン酸の分子量は、特に限定されないが、好ましくは50万以上、より好ましくは80万以上、さらに好ましくは100万以上、特に好ましくは130万以上である。
【0033】
L−PGAの分子量の上限値は特に限定されるものではないが、前述のL−PGAの製造方法によれば、例えば、600万、最大で1500万のL−PGAを得ることができる。
【0034】
このポリ−γ−L−グルタミン酸および/またはその塩は、古細菌によって生産されるために、納豆菌によって生産されるポリ−γ−L−グルタミン酸および/またはその塩と比べて特有の臭気が軽減することで、化粧品、医薬部外品、医療用品、衛生用品または医薬品の用途に利用しても品質を損なうことがない。
【0035】
本発明では、顔料として黒酸化鉄、べんがら、紺青の3成分を必須とする。黒酸化鉄のみだと、分散が困難で十分な分散安定化は不可能である。べんがらと紺青のみでは色相的に望ましいものを得るのは困難である。また、黒酸化鉄とべんがらのみでは色相が望ましいものを得るのが困難である。よって上記3成分は安定な混色黒の分散液をつくる上で必須であることを本発明者らは見出したのである。
【0036】
これら三成分の配合比としては重量比で、黒酸化鉄:べんがら=3:0.5〜3:5、特に好ましくは3:1〜3:3、黒酸化鉄:紺青=3:0.3〜3:5、特に好ましくは3:0.5〜3:3、黒酸化鉄:べんがら:紺青=3:1:0.5〜3:2:5が好ましく、中でも3:2:1〜3:2:3が最も色相的に黒に近づく上に分散安定性も優れている。べんがらの配合量が上記の範囲より少ないと、分散安定性が低下する。一方、上記の範囲より多いと色相の面で黒から外れてしまう。また、紺青の配合量が上記の範囲より少ないと色相の面で黒から外れてしまう。一方、上記の範囲より多いと色相も変わってしまい良好な黒色を得るのが困難となる。また分散性が低下しゲル化、分離を生じやすい。なお、これら三成分の顔料を用いて黒色以外の、例えば褐色等の化粧料として使用することも勿論差し支えない。
【0037】
本発明で用いる顔料の粒径は特に限定されないが、黒酸化鉄の1次粒子径としては通常0.15〜0.5μm、好ましくは0.15〜0.3μm、べんがらの1次粒子径としては通常、0.02〜0.7μm、好ましくは0.09〜0.4μm、紺青の1次粒子径としては通常、0.05〜0.2μm、好ましくは0.08〜0.15μmである。これら顔料の形状も特に制限されず、針状、球状等、いずれの形状のものも用いることができる。
【0038】
分散液中の顔料の濃度は、1〜40重量%が良く、さらに好ましくは、10〜30重量%が良い。本発明の化粧料用顔料分散液は、水系の化粧品用途に好適である。ここで水系とは、分散媒が水を40重量%以上含むものをいう。水以外の分散媒は限定されないが、通常、水溶性のアルコールおよび多価アルコール類を含むことができる。本発明の顔料分散液には、分散剤を含有させることにより分散安定性を向上させるのが望ましい。ここで、分散剤としてアニオン系分散剤とノニオン系分散剤とを併用するのが極めて好ましい。
【0039】
上記の顔料組成で、アニオン系分散剤のみだと、系の安定性が低く増粘およびゲル化また、チキソトロピー性がありインク筆記が不良といった不具合を生じやすい。ノニオン系分散剤のみだと、分散不足になり顔料の色分離を起こし、ペンの上向き、下向きの濃度差が大きくなるといった不具合を生じることがある。アニオン系分散剤およびノニオン系分散剤を併用することにより、ペンの上向き、下向きとの濃度差、色相の変化のない優れた化粧料を得ることができる。
【0040】
アニオン系分散剤としては、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体及びスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体並びにこれらの塩から選ばれる一種又は二種以上、すなわち、アニオン系分散剤としては、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体及びスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体のうち一種以上、もしくはこれらの塩のうち一種以上、のいずれかを少なくとも含んでいればよい。これらの塩の種類としては限定されないが、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ塩、アンモニウム塩や、モノ、ジ−、トリエタノールアミン、トリイソプロパノ−ルアミン等のアルカノ−ルアミン塩が挙げられる。上記したアニオン系分散剤の例のうち特に、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体及びスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体並びにこれらの塩、のうち少なくとも1種以上を用いるのが、分散安定性が特に優れており好ましい。顔料分散液の分散性及び色調とその安定性等の物性の観点からは、アニオン系分散剤の分子量としては1000〜20000が好ましくさらには2000〜13000が特に好ましい。特に、アニオン系分散剤としてポリアスパラギン酸及び/又はその塩を用いると、他のアニオン系分散剤を用いた場合と比較して、分散系の粘度が著しく低下するため、高顔料濃度でも良好な分散が可能となり、従ってインクの筆記濃度が上がるという利点がある。
【0041】
ノニオン系分散剤としてはポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソセチルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル等のポリオキシエチレン系ノニオン性界面活性剤が挙げられる。これらのうち特に、HLB15〜20のポリオキシエチレンアルキルエーテルを少なくとも用いれば、分散安定性が優れており好ましい。もちろん、アニオン系分散剤の2種類以上の併用、ノニオン系分散剤の2種類以上の併用をしても良い。
【0042】
これら分散剤の配合量としては、顔料全体として100重量部に対しアニオン系分散剤は1〜60重量部、特に5〜35重量部を配合するのが望ましい。ノニオン系分散剤は顔料全体として100重量部に対し1〜60重量部、特に5〜35重量部を配合するのが望ましい。これらの範囲で特に、顔料の分散性および分散安定性を高めることができる。アニオン系分散剤とノニオン系分散剤の配合比率としては、重量比で100:50〜100:200、特に100:70〜100:180が望ましい。
【0043】
本発明の分散液は、さらに保湿剤、防腐剤、pH調整剤等の添加物を含有してもよい。保湿剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1.3ブチレングリコール、イソプレングリコール、ポリエチレングリコール、へキシレングリコール、グリセリン、濃グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ソルビット、ソルビット液、マルチトール、マルチトール液、キシリットが挙げられる。
【0044】
防腐剤としては、クロロブタノ―ル、クロルクレゾール、パラクロルメタキシレノール、クレゾール、トリクロサン、トリクロロカルバニド、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンゼトニウム液、塩化セチルピリジニウム、チアントール、フェノール、パラフェノールスルホン酸ナトリウム(二水和物)、パラフェノールスルホン酸亜鉛、レゾルシン、感光素101号、感光素201号、感光素301号、感光素401号、ヒノキオール、l−メントール、dl−メントール、d−カンフル、dl−カンフル、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル類、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸メチル、サリチル酸フェニル等が挙げられる。
【0045】
pH調整剤としてはエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン。ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1.3−プロパンジオール、モルホリン、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、強アンモニア水が挙げられる。本発明の化粧料用顔料分散液には、本発明の効果を損なわない程度に、上記成分の他に、水系化粧料用アイテムに一般に使用されている成分、例えば、キレート剤、消泡剤を適宜配合できる。
【0046】
顔料成分としては、上述した必須の3成分以外に、例えばマット感を得る等の目的で、カオリン、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、タルク、セリサイト、マイカ等の体質顔料を入れても差し支えない。望ましい黒の色相を得るという面からは、顔料全体に対して20重量%以下、好ましくは10重量%以下に抑えるのが望ましい。
【0047】
また、本発明の顔料分散液にはポリマーエマルジョンを含有させることができる。ポリマーエマルジョンとしては代表的にはアクリル樹脂系、スチレン/アクリル酸樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、スチレン/ブタジエン樹脂系、ポリウレタン系、オレフィン樹脂系、アルキッド樹脂系等の各種水溶性ポリマーエマルジョンが挙げられる。増粘剤としてはメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ソーダ、ポリエチレングリコール、酸化エチレン・酸化プロピレンブロック共重合体、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、カゼイン、グァーガム、ローカストビーンガム、ベントナイト系増粘剤、が挙げられる。
【0048】
これら各成分を配合して本発明の顔料分散液を得ることができる。配合方法は特に限定されず、各成分の配合順序も限定されない。公知の諸法を適宜用いればよい。複数の顔料成分を予めブレンドしてから分散媒、分散剤等と配合してもよいし、各顔料成分を予め分散液としておき、それらを互いに混合してもよい。分散装置も限定されず、ボールミル、サンドミル、ロールミルなどのメディアミル、ホモミキサー、アトライターなど公知の分散機を適宜利用して混合すれば良い。以上説明した本発明の顔料分散液は、色相に優れた黒色を呈することができ、色分かれもなく、また顔料の粗大粒子が抑えられ一次粒径に近い分散径で経時安定性も良く優れた分散性を有するものである。このため、特にペン型化粧料に好適に用いることができる。
【0049】
また本発明の顔料分散液の粘度も特に限定されないが、上記のように分散が良いため低粘度の分散液にすることができ、例えば粘度20mPa・s以下、さらには10mPa・s以下におさえることができる。粘度が20mPa・sを超えるとペン型容器に充填した際にインクがペンから出にくく、書き味が悪くなってしまう。このため、本発明の顔料分散液はペン型容器に充填してアイライナー等の化粧料として用いた場合には、ペンから出やすく、書き味が良いという利点を有する。また、取扱や他の化粧品成分との混合も容易である。より高粘度とする場合は適宜増粘剤等の成分の添加により調整すればよい。
【0050】
また、本発明の化粧料用顔料分散液は、有機溶剤を含まない顔料分散液とすることができるため、生体への有害性、引火性、溶剤臭などに気を使わなくても良い水系アイライナー等の製品を提供できるという利点もある。
【0051】
以下、本発明を実施例に基づき、より詳細に説明する。なお、本発明は、特に実施例に限定されるものではない。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。なお、以下の実施例に示す「%」は全て「重量%」である。
【0052】
〔製造例1;ポリ−γ−L−グルタミン酸の製造〕
Natrialba aegyptica(受託番号:FERM BP−10749)のL乾燥アンプルに、0.4mlのPGA生産用液体培地(22.5% NaCl、2% MgSO・7HO、0.2% KCl、3% Trisodium Citrate、1% Yeast Extract、0.75% Casamino acid)を加えて懸濁液を得た。0.2mlの当該懸濁液を、PGA寒天培地(10% NaCl、2% MgSO・7HO、0.2% KCl、3% Trisodium Citrate、1% Yeast Extract、0.75% Casamino acid、2% Agar)に接種し、37℃で3日間培養して、シングルコロニーを得た。
【0053】
次に、5本の18ml容試験管に、それぞれ、3mlのPGA生産液体培地(22.5% NaCl、2% MgSO・7HO、0.2% KCl、3% Trisodium Citrate、1% Yeast Extract、0.75% Casamino acid、pH7.2)を入れ、さらに、上記シングルコロニーを白金耳で1白金耳掻き取り植菌した。植菌後の試験管を、37℃、300rpmで3日間培養して、さらに、得られた培養液0.5mlを、50ml PGA生産液体培地を入れた500ml容坂口フラスコ10本にそれぞれ植菌し、37℃で5日間培養した。培養後、得られた培養液を遠心し、菌体を取り除いて上清を回収した。
【0054】
次に、回収した上清に3倍量の水を加え希釈した後、1N硫酸でpHを3.0に調整した。pHを調整した後、室温で5時間攪拌した。その後、3倍量のエタノールを加えて遠心分離を行い、沈殿物を回収した。この沈殿物がL−PGAである。
【0055】
回収したL−PGAを0.1mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)に溶解して、これを、低分子物質等の不純物を除去するために透析した。次に、透析後の液体に含まれる核酸を除去するために、当該液体に、MgClが1mM、DNaseI(TAKARA社製)が10U/ml、RNaseI(ニッポンジーン製)が20μg/mlとなるように加えて、37℃で2時間インキュベートした。次いでタンパク質を除去するために、核酸を除去した後の液体にProteinase K(タカラバイオ製)を3U/mlとなるように添加して、37℃で5時間インキュベートしてProteinase K処理を行なった。
【0056】
Proteinase K処理の後、超純水で透析し、低分子物質を除去した。次に、L−PGAを陰イオン交換樹脂(Q sepharose Fast Flow、GE ヘルスケア バイオサイエンス社製)に吸着させ、0.5MのNaCl水溶液で洗浄した後、1MのNaCl水溶液で溶出した。得られた溶液を、さらに超純水で透析し、透析後の溶液を凍結乾燥することにより、L−PGAのナトリウム塩(以下、「L−PGA・Na塩」と表記する)を得た。なお、超純水は、MilliQ(Millipore社製の純水製造装置)で作製した。
【0057】
〔製造例2;ポリ−γ−L−グルタミン酸の分子量分析−1〕
製造例1で得たL−PGA・Na塩の平均分子量を、GPC分析にて測定した。その結果、Mw=7,522,000、Mn=3,704,000、Mw/Mn=2.031であることが確認された(プルラン換算)。
【0058】
なお、GPC分析は、以下の条件で行なった。
装置:HLC−8220GPC(東ソー社製)
カラム:TSKgel α−M(東ソー社製)
流速:0.6ml/min
溶出液:0.15M NaCl水溶液
カラム温度:40℃
注入量:10μl
検出器:示差屈折計
【0059】
〔製造例3;ポリ−γ−L−グルタミン酸の分子量分析−2〕
製造例1において、1.0MのNaCl水溶液溶出した後、さらに、1N HClを用いて、pHを2.0に調製した以外は、製造例1と同様の操作を行なって得たL−PGA・Na塩の平均分子量をGPC分析により測定した。その結果、Mw=2,888,000、Mn=1,327,000、Mw/Mn=2.176であることが確認された(プルラン換算)。なお、本製造例におけるGPC分析は、製造例2と同様の操作で行なった。
【0060】
〔製造例4;ポリ−γ−L−グルタミン酸架橋体の作製〕
製造例1で得たL−PGA・Na塩の5%水溶液を作製した。
【0061】
次に、L−PGA・Na塩水溶液を、窒素を用いて3分間バブリングした後、蓋付き10mlサンプル瓶に、2ml分取して蓋を閉めた。
【0062】
次に、サンプル瓶に、線源をコバルト60とするγ線照射装置を用いてγ線を照射した。照射線量は、5kGyとなるように照射した。γ線照射後に得られた生成物を、サンプル瓶から取り出し、余分な水分を80メッシュの金網で水切りした後、凍結乾燥することで、L−PGA架橋体粉末を得た。なお、上記余分な水分には、未架橋のL−PGAが含まれており、当該水切りは、未架橋のL−PGAを除去することが主たる目的である。
【0063】
(粘度測定方法)
各実施例、比較例中、粘度は、以下の方法で測定した。試料を均一に攪拌後、1.2ccをシリンジでとり、その後、25℃において、E型粘度計(ELD形)用い、50rpmで1分間後の粘度を測定する。測定ローターは試料粘度に応じて、適宜選択する。
【0064】
(実施例1)
以下の各成分を配合し、メディアミルで混合して、黒色化粧料用顔料分散液を得た。
【0065】
〔配合処方〕
黒酸化鉄 7.5部
べんがら 5.0部
コンジョウ 4.0部
スチレン−αメチルスチレン−アクリル酸共重合体 6.3部
ポリオキシエチレンオレイルエーテル(20E.O.、HLB17.0)4.0部
1,3−ブチレングリコール 3.5部
フェノキシエタノール 0.5
部パラオキシ安息香酸メチル 0.2部
パラオキシ安息香酸プロピル 0.1部
2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール 0.1部
エデト酸ニナトリウム 0.1部
強アンモニア水 1.6部
精製水 67.1部
【0066】
上記の黒色化粧料用顔料分散液の粘度は、6.8mPa・sであった。上記の黒色化粧料用顔料分散液を筆ペン型容器に詰め、筆記を行った。筆記物を目視判定したところ、色相は青味黒の良好なものであった。また、この筆ペン型容器中で、室温、50℃で1ヶ月放置した後も、ペンの上向き、下向きで、ともにインクの吐き出し良好であり、濃度差および色相差は見られなかった。
【0067】
(実施例2)
以下の各成分を配合し、メディアミルで混合して、黒色化粧料用顔料分散液を得た。
【0068】
〔配合処方〕
黒酸化鉄 10.0部
べんがら 6.8部
コンジョウ 7.2部
ポリアスパラギン酸ナトリウム 1.5部
ポリオキシエチレンラウリルエーテル(21E.O.、HLB19.0)2.4部
アクリル酸アルキル共重合体エマルション 9.0部
1,3−ブチレングリコール 4.0部
フェノキシエタノール 0.8部
パラオキシ安息香酸メチル 0.3部
パラオキシ安息香酸プロピル 0.1部
2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール 0.2部
エデト酸ニナトリウム 0.1部
精製水 57.6部
【0069】
上記の黒色化粧料用顔料分散液の粘度は、9.0mPa・sであった。上記の黒色化粧料用顔料分散液を筆ペン型容器に詰め、筆記を行った。筆記物を目視判定したところ、色相は赤味黒の良好なものであった。また、この筆ペン型容器中で、室温、50℃で1ヶ月放置した後も、ペンの上向き、下向きで、ともにインクの吐き出し良好であり、濃度差および色相差は見られなかった。
【0070】
(実施例3)
以下の各成分を配合し、メディアミルで混合して、焦げ茶化粧料用顔料分散液を得た。
【0071】
〔配合処方〕
黒酸化鉄 8.8部
べんがら 12.0部
コンジョウ 2.4部
ポリアスパラギン酸ナトリウム 1.2部
ポリオキシエチレンラウリルエーテル(21E.O.、HLB19.0)2.0部
アクリル酸アルキル共重合体エマルション 9.0部
1,3−ブチレングリコール 4.0部
フェノキシエタノール 0.8部
パラオキシ安息香酸メチル 0.3部
パラオキシ安息香酸プロピル 0.1部
2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール 0.2部
エデト酸ニナトリウム 0.1部
精製水 59.1部
【0072】
上記のこげ茶化粧料用顔料分散液の粘度は、7.9mPa・sであった。上記のこげ茶化粧料用顔料分散液を筆ペン型容器に詰め、筆記を行った。筆記物を目視判定したところ、色相はこげ茶の良好なものであった。また、この筆ペン型容器中で、室温、50℃で1ヶ月放置した後も、ペンの上向き、下向きで、ともにインクの吐き出し良好であり、濃度差および色相差は見られなかった。
【0073】
(比較例1)
以下の各成分を配合し、メディアミルで混合して、黒色化粧料用顔料分散液を得た。
【0074】
〔配合処方〕
黒酸化鉄 20.0部
べんがら 5.0部
スチレン−αメチルスチレン−アクリル酸共重合体 5.0部
1,3−ブチレングリコール 3.5部
フェノキシエタノール 0.5部
パラオキシ安息香酸メチル 0.2部
パラオキシ安息香酸プロピル 0.1部
エデト酸ニナトリウム 0.1部
2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール 0.2部
強アンモニア水 1.3部
精製水 64.1部
【0075】
上記の黒色化粧料用顔料分散液の粘度は、6.2mPa・sであった。上記の黒色化粧料用顔料分散液を筆ペン型容器に詰め、筆記を行った。筆記物を目視判定したところ、色相は、こげ茶であった。また、この筆ペン型容器中で、室温、50℃で1ヶ月放置した後も、ペンの上向き、下向きで、ともにインクの吐き出し良好であり、濃度差および色相差は見られなかった。
【0076】
(比較例2)
以下の各成分を配合し、メディアミルで混合して、黒色化粧料用顔料分散液を得た。
【0077】
〔配合処方〕
黒酸化鉄 24.0部
紺青 1.0部
スチレン−αメチルスチレン−アクリル酸共重合体 6.3部
ポリオキシエチレンオレイルエーテル(20E.O.、HLB17.0)4.0部
1,3−ブチレングリコール 3.5部
フェノキシエタノール 0.5部
パラオキシ安息香酸メチル 0.2部
パラオキシ安息香酸プロピル 0.1部
エデト酸ニナトリウム 0.1部
2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール 0.2部
強アンモニア水 1.6部
精製水 58.5部
【0078】
上記の黒色化粧料用顔料分散液の粘度は、7.2mPa・sであった。上記の黒色化粧料用顔料分散液を筆ペン型容器に詰め、筆記を行った。筆記物を目視判定したところ、色相は、青味黒であった。また、この筆ペン型容器中で、室温、50℃で1ヶ月放置したところ、ペンの上向き、下向きで、ともにインクの吐き出し不良で、大きな濃度差、色相差が見られた。
【0079】
(比較例3)
以下の各成分を配合し、メディアミルで混合して、黒色化粧料用顔料分散液を得た。
【0080】
〔配合処方〕
黒酸化鉄 25.0部
スチレン−αメチルスチレン−アクリル酸共重合体 6.3部
1,3−ブチレングリコール 3.5部
フェノキシエタノール 0.5部
パラオキシ安息香酸メチル 0.2部
パラオキシ安息香酸プロピル 0.1部
エデト酸ニナトリウム 0.1部
2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール 0.2部
強アンモニア水 1.6部
精製水 62.5部
【0081】
上記の黒色化粧料用顔料分散液の粘度は、7.1mPa・sであった。上記の黒色化粧料用顔料分散液を筆ペン型容器に詰め、筆記を行った。筆記物を目視判定したところ、色相は、赤味黒であった。また、ペン先へのインク供給が不良で、筆記物は、かすれてしまった。
【0082】
(比較例4)
以下の各成分を配合し、メディアミルで混合して、黒色化粧料用顔料分散液を得た。
【0083】
〔配合処方〕
ベンガラ 14.0部
紺青 7.0部
スチレン−αメチルスチレン−アクリル酸共重合体 2.5部
ポリオキシエチレンオレイルエーテル(20E.O.、HLB17.0)2.0部
1,3−ブチレングリコール 3.5部
フェノキシエタノール 0.5部
パラオキシ安息香酸メチル 0.2部
パラオキシ安息香酸プロピル 0.1部
エデト酸ニナトリウム 0.1部
2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール 0.2部
強アンモニア水 0.6部
精製水 69.3部
【0084】
上記の黒色化粧料用顔料分散液の粘度は、4.0mPa・sであった。上記の黒色化粧料用顔料分散液を筆ペン型容器に詰め、筆記を行った。筆記物を目視判定したところ、色相は、青味黒であった。また、この筆ペン型容器中で、室温、50℃で1ヶ月放置したところ、ペンの上向き、下向きで大きな濃度差および色相差が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、ポリ−γ−L−グルタミン酸および/またはその塩、黒酸化鉄、べんがら及び紺青を含有することにより、分散性に優れペン型タイプの化粧料としても好適に用いることのできる化粧料用顔料分散液を提供することができる。さらに、従来のポリ−γ−L−グルタミン酸よりも、原料コストが安価であり、大量生産可能となり、長期にわたる使用に十分に耐え得ることからも、産業界に大きく寄与することが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ−γ−L−グルタミン酸および/またはその塩、黒酸化鉄、べんがら及び紺青を含有することを特徴とする化粧料用顔料分散液。
【請求項2】
ポリ−γ−L−グルタミン酸が、ポリ−γ−L−グルタミン酸分子同士の架橋構造を有することを特徴とするポリ−γ−L−グルタミン酸架橋体であることを特徴とする請求項1に記載の化粧料用顔料分散液。
【請求項3】
ポリ−γ−L−グルタミン酸の平均分子量が100万以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧料用顔料分散液。
【請求項4】
ポリ−γ−L−グルタミン酸の平均分子量が200万以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の化粧料用顔料分散液。
【請求項5】
ポリ−γ−L−グルタミン酸の平均分子量が350万以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の化粧料用顔料分散液。
【請求項6】
ポリ−γ−L−グルタミン酸の吸水倍率が10倍以上5000倍以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の化粧料用顔料分散液。
【請求項7】
粘度が20mPa・s以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の化粧料用顔料分散液。
【請求項8】
水系アイライナー用途であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の化粧料用顔料分散液。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の化粧料用顔料分散液をペン型容器に充填してなることを特徴とするアイライナー。

【公開番号】特開2012−1503(P2012−1503A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139331(P2010−139331)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】