説明

化粧料

【課題】高い紫外線防御効果を有し、しかも肌に塗布したときの耐水性に優れた紫外線防御化粧料を提供する。
【解決手段】O1/W/O2乳化型組成物であって、油相O1及びO2に紫外線遮蔽能を有する微粒子金属酸化物を含有する化粧料、並びにその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い紫外線防御効果を有し、しかも耐水性に優れた紫外線防御化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
地表に届く太陽光線の紫外線は、長波長紫外線UVA(320〜400nm)及び中波長紫外線UVB(280〜320nm)に分けられ、さらに、UVAはUVAII(320〜340nm)とUVAI(340〜400nm)に分けられる。UVBは、短時間で肌に紅斑や浮腫などの炎症(サンバー
ン)を起こさせ、そのあと数日後に色素沈着を引き起こすサンタンの作用があり、さらに、皮膚の老化、発ガンの原因にもなり得るとされている。一方、UVAは、表皮に存在する淡色のメラニン色素を濃色のメラニン色素に変化させ、皮膚を黒くする即時黒化を引き起こすとともに、肌のハリや弾力の低下の原因となるとされている。
【0003】
これら紫外線を防御するために、紫外線を効率良く吸収する有機系紫外線吸収剤や、紫外線を散乱させる紫外線防御粉体を含有する日焼け止め化粧料が用いられている。近年市販されている日焼け止め化粧料の多くは、紫外線防御効果の持続性が高く、肌への塗布が容易であるW/O型の製剤であり、このような乳化物の外油相に、表面を疎水性処理した紫外線防御粉体(疎水性紫外線防御粉体)や、有機系紫外線吸収剤を組み合わせて含有させ、紫外線防御効果を得ている。
【0004】
しかしながら、これらの乳化物においては、一相(油相)のみにしか紫外線防御剤が存在しないため、肌上に塗布した際に紫外線防御剤が不均一となり、紫外線防御剤の効果が完全に発揮されない場合が多い。
このため、製剤を肌に塗布した際に、紫外線防御剤が肌上でより均一に分布するよう、種々の検討がなされている。例えば、特許文献1には、水分散性の超微細な二酸化チタンと油分散性の超微細な二酸化チタンとを使用することにより、肌上で紫外線防御剤の分布状態がより均一となり、紫外線に対する防御効果が相乗的に向上することが記載されている。
また、特許文献2には、油溶性紫外線吸収剤と水溶性紫外線吸収剤とを組み合わせて用いることにより、紫外線防御効果が向上することが記載されている。
【0005】
しかしながら、これらの組成物においては、紫外線防御効果の向上は期待できるものの、水溶性の紫外線防御剤を用いるため、汗や水などに対する耐水性が十分ではなく、紫外線防御効果の持続性において、満足できるものではなかった。
【特許文献1】特開平6−16527号公報
【特許文献2】特表平8−506574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高い紫外線防御効果を有し、しかも肌に塗布したときの耐水性に優れた紫外線防御化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、O/W/O型の多層エマルジョンにおいて、内外両油相中に紫外線防御粉体を含有させることにより、塗布時の肌上での紫外線防御剤の分布状態が均一になり、紫外線防御効果が向上するとともに、汗や水に対する耐水性にも優れた紫外線防御化粧料が得られることを見出した。
【0008】
本発明は、O1/W/O2乳化型組成物であって、油相O1及びO2に紫外線遮蔽能を有する微粒子金属酸化物を含有する化粧料、並びにその製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の化粧料は、高い紫外線防御効果を有し、しかも肌に塗布したときの耐水性に優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の化粧料は、O1/W/O2乳化型化粧料であり、内相である油相O1及び外相であるO2のいずれにも紫外線遮蔽能を有する微粒子金属酸化物が含有される。
1及びO2の両油相に含有される紫外線遮蔽能を有する微粒子金属酸化物は、UVBからUVAIIの広範囲を吸収又は散乱する効果を有する金属酸化物であり、紫外線を吸収又は散乱する効果が高い点から、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウムが好ましい。これらの微粒子金属酸化物の平均粒子径は、0.001〜0.5μm、特に0.01〜0.1μmであるのが好ましい。
【0011】
微粒子金属酸化物の市販品としては、例えば、微粒子酸化亜鉛として、FINEX−25、FINEX−50、FINEX−75(以上、堺化学社製)、MZ500シリーズ、MZ700シリーズ(以上、テイカ社製)、ZnO−350(住友大阪セメント社製)等が挙げられる。微粒子酸化チタンとしては、TTO−55シリーズ、TTO−51シリーズ(以上、石原産業社製)、JRシリーズ、JAシリーズ(以上、テイカ社製)等が挙げられる。また、微粒子酸化セリウムとしては、ニッキ社あるいはセイミケミカル社から販売されている高純度酸化セリウムが挙げられる。これらのうち、特に酸化亜鉛、酸化チタンが好ましい。
【0012】
本発明においては、紫外線遮蔽能を有する微粒子金属酸化物は、得られる分散体中で分散し易い状態にあることが望ましく、そのために微粒子金属酸化物の表面を他の物質で被覆したり、分散助剤用ゾル、例えばAl23ゾル等を、あるいはゾルの安定化剤を無機物質粒子と混合してもよい。例えば超微粒子酸化チタンを用いる場合、超微粒子の表面をAl、Si、Zr、Mg、Zn、Ce、Ti、Feから選ばれる1種以上の酸化物または含水酸化物で被覆して分散安定性を向上させることができる。
【0013】
更に、微粒子金属酸化物は、汗や水に対する耐水性を向上させるため、通常化粧料用粉体に施される疎水性表面処理をしたものが好ましい(疎水性紫外線防御粉体)。
表面処理の方法としては、金属酸化物の撥水性を向上するようなものであれば特に限定されないが、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、シリコーン樹脂等によるシリコーン処理、パーフルオロ基含有化合物等によるフッ素化合物処理などが挙げられる。特に、シリコーン処理されたものが好ましい。
【0014】
微粒子金属酸化物を油相O1に含有(分散)させるには、(b)疎水性モノマー単位と親水性モノマー単位とからなるポリマーであって、好ましくは、親水性モノマー単位を40〜80質量%、特に40〜60質量%含有するポリマーを用いるのが好ましい。
【0015】
かかるポリマーとしては、非イオン性、カチオン性ポリマーが好ましく、さらには疎水性モノマー単位、親水性モノマー単位それぞれが重合したマクロマーを形成したポリマーであることが好ましく、特に、疎水性マクロマーが、シロキサン骨格を有するものが好ましい。例えば、シロキサン鎖を骨格(疎水性マクロマー)として、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン等のポリオキシアルキレン基や、オキサゾリン基、アミノ基等の親水性マクロマーが付加したものなどが挙げられる。具体的に例示すれば、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシエチレンアルキルポリシロキサン・ポリオキシプロピレンアルキルポリシロキサン・ジメチルポリシロキサン共重合体、メチルポリシロキサン・アルキルメチルポリシロキサン・ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体、アミノ変性シリコーン、オキサゾリン変性シリコーンなどが挙げられる。
特に、特開平7−133352号公報記載のオキサゾリン変性シリコーン(ポリN−アシルエチレンイミン変性シリコーン)が好ましい。
また、これらのポリマーの分子量は、10000〜250000、特に10000〜200000であるのが好ましい。
【0016】
油相O1としては、通常の化粧料に用いられる油性成分を用いることができ、シリコーン油を含有するのが好ましい。油相O1は特に、次の(a)、(b)、(c)及び(d);
(a)紫外線遮蔽能を有する微粒子金属酸化物、
(b)疎水性モノマー単位と親水性モノマー単位とからなるポリマー、
(c)シリコーン油、
(d)炭素数1〜3のアルコール
を、(a):(b):(c):(d)=(25〜65):(0.1〜5):(10〜50):(10〜50)、特に好ましくは、(25〜65):(0.5〜4):(20〜50):(10〜50)の質量割合で含有する分散液であるのが、安定な分散液を得ることができ、好ましい。
【0017】
(c)シリコーン油としては、通常の化粧料に用いられる、20℃で液状のもので、(a)紫外線防御粉体が分散できるものであれば特に制限されず、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン等が挙げられる。特に、20℃における粘度が、1〜1000mm2/sのものが、感触の点から好ましい。
(d)炭素数1〜3のアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノールが挙げられ、エタノールが好ましく、これらの混合物であっても良い。
【0018】
また、粉体の分散性を向上させるため、(d)炭素数1〜3のアルコールは、(c)シリコーン油に対して0.5〜5質量倍用いるのが好ましい。
【0019】
さらに、油相O1中には、(a)、(b)、(c)及び(d)以外の成分、例えば前記以外の粉体、油性成分、紫外線吸収剤等を含有させることもできる。
【0020】
本発明のO1/W/O2乳化型化粧料は、例えば、(A)疎水性モノマー単位と親水性モノマー単位とからなるポリマーであって、親水性モノマー単位を40〜80質量%含有するポリマーにより、O1/W乳化物を調製し、次に、当該O1/W乳化物を、(B)界面活性剤により油相O2に乳化することにより製造することができる。
【0021】
成分(A)のポリマーとしては、前記(b)と同様のものが挙げられる。
成分(A)のポリマーは、(b)のポリマーと同一であっても、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0022】
油相O1は、全組成中に1〜40質量%、特に5〜30質量%含有されるのが好ましい。
また、水相Wは、全組成中に5〜60質量%、特に10〜50質量%含有されるのが好ましい。
【0023】
成分(A)のポリマーは、疎水性紫外線防御粉体を含有する油相O1と水相Wを乳化するのに用いられ、全組成中に0.05〜5質量%、特に0.2〜5質量%含有するのが好ましい。
【0024】
油相O1の水相W中での平均粒子径は、小さければ小さいほどブラウン運動による分散が安定化されるため、より小さいのが好ましく、平均粒子径として、10μm以下、特に1μm以下であるのが好ましい。平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定される。
【0025】
次に、得られたO1/W乳化物を、(B)界面活性剤により油相O2に乳化することにより、本発明のO1/W/O2乳化型化粧料を得ることができる。
【0026】
成分(B)の界面活性剤としては、油溶性の高いW/O型界面活性剤が好ましく、例えば、HLB7以下の非イオン性界面活性剤が挙げられる。具体的には、シリコーン系の界面活性剤であるポリエーテル変性シリコーン、グリセリルアルキル変性シリコーン、及びポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸モノアルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸ジアルカノールアミド、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
これらは、1種以上を用いることができ、全組成中に0.01〜10質量%含有するのが好ましい。
【0027】
また、成分(B)の界面活性剤として、疎水性モノマー単位と親水性モノマー単位とからなるポリマーであって、親水性モノマー単位を5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%含有するポリマーを用いることもできる。
かかるポリマーとしては、前記ポリマー(b)、ポリマー(A)と同様のもので、親水性の含有割合が異なるものが挙げられる。
【0028】
油相O2に含まれる油剤としては、油剤としては、シリコーン油、炭化水素油、エステル油、エーテル油、フッ素油等が挙げられる。
シリコーン油としては、直鎖状ポリオルガノシロキサン、環状ポリシロキサン等が挙げられる。直鎖状ポリオルガノシロキサンとしては、炭素数が1〜5のアルキル基を有する直鎖状アルキルポリシロキサン、炭素数が1〜5のアルキル基及び炭素数が6〜10のアリール基を有する直鎖状アルキルアリールポリシロキサン等が挙げられ、具体的には、直鎖状ジメチルポリシロキサン、直鎖状メチルフェニルポリシロキサン等が挙げられる。これら直鎖状オルガノポリシロキサンのうち、20℃における粘度が1〜1000mPa・s、特に5〜10mPa・sのものが好ましい。環状ポリシロキサンとしては、炭素数が1〜5のアルキル基を置換基として有する4〜6員環の環状シロキサンが挙げられ、具体的には、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
【0029】
炭化水素油としては、流動パラフィン、スクワラン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、ポリブテン等が挙げられる。
また、エステル油としては、例えば、サフラワー油、大豆油、ブドウ種子油、ゴマ油、小麦胚芽油、アボガド油、オリブ油、ヒマシ油、マカデミアナッツ油、メドフォーム油等の植物性油;ミンク油、タートル油、液状ラノリン等の動物性油;ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、ラノリン脂肪酸イソプロピル等の低級アルコールの脂肪酸エステル;イソノナン酸2−エチルヘキシル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、2-エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸イソセチル、イソステアリン酸イソステアリル等の高級アルコールの脂肪酸エステル;リンゴ酸ジイソステアリル、乳酸セチル等の高級アルコールのオキシ酸エステル;トリカプリル酸グリセリル、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、ジイソステアリン酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール等の多価アルコールの脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0030】
エーテル油としては、セチルジメチルブチルエーテルなどが挙げられ、フッ素油としては、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロカーボン等が挙げられる。
これらのうち、シリコーン油が特に好ましい。
油相O2は、全組成中に30〜90質量%、特に40〜80質量%含有されるのが好ましい。
【0031】
また、油相O2には、安定性を向上させる目的で、パルミチン酸デキストリン、アルキル変性シリコーン等を含有させることもできる。その含有量は、油相O2中に0.001〜3質量%、特に0.01〜2質量%、更に0.1〜1質量%であるのが好ましい。
【0032】
油相O1及び油相O2に分散する微粒子金属酸化物の質量割合は、O1/O2=1:9〜9:1、特に2:8〜7:3であるのが、粉体がより均一に含有され、紫外線防御効果がより高くなるので好ましい。
【0033】
本発明の化粧料は、更に有機紫外線吸収剤を含有することができ、紫外線防御効果をより高めることができる。有機紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、油溶性のものが好ましい。
油溶性の紫外線吸収剤としては、安息香酸系のもの、アントラニリック酸系のもの、サリチル酸系のもの、桂皮酸系のもの、ベンゾフェノン系のものが含まれる。安息香酸系紫外線吸収剤としては、安息香酸系のものとして、パラアミノ安息香酸(以下、PABAと略す)、グリセリルPABA、エチルジヒドロキシプロピルPABA、N−エトキシレートPABAエチルエステル、N−ジメチルPABAエチルエステル、N−ジメチルPABAブチルエステル、N−ジメチルPABAアミノエステル、オクチルジメチルPABA等が;アントラニリック酸系のものとして、ホモメンチル−N−アセチルアントラニレート等が挙げられる。サリチル酸系紫外線吸収剤としては、アミルサリチレート、メンチルサリチレート、ホモメンチルサリチレート、オクチルサリチレート、フェニルサリチレート、ベンジルサリチレート、p−イソプロパノールフェニルサリチレート等が挙げられる。桂皮酸系紫外線吸収剤としては、オクチルシンナメート、エチル−4−イソプロピルシンナメート、エチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、メチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、プロピル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシシンナメート、イソアミル−p−メトキシシンナメート、2−エチルヘキシル−p−メトキシシンナメート、2−エトキシエチル−p−メトキシシンナメート、シクロヘキシル−p−メトキシシンナメート、エチル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、2−エチルヘキシル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、グリセリルモノ−2−エチルヘキサノイルジパラメトキシシンナメート等が挙げられる。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−メチルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、2−エチルヘキシル−4’−フェニルベンゾフェノン−2−カルボキシレート、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシ−3−カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。更に上記以外に、3−(4’−メチルベンジリデン)−dl−カンファー、3−ベンジリデン−dl−カンファ−、ウロカニン酸エチルエステル、2−フェニルー5−メチルベンゾキサゾール、2,2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ジベンザラシン、ジアニソイルメタン、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン、5−(3,3−ジメチルー2−ノルボニリデン)−3−ペンタンー2−オン、特開平2−212579号公報記載のベンゼン−ビス−1,3−ジケトン誘導体、特開平3−220153号公報記載のベンゾイルピナコロン誘導体等が挙げられる。
【0034】
化粧料中における有機紫外線吸収剤の含有量は、特に制限されないが、紫外線防御効果を高め、良好な使用感を得る点から、全組成中に0.1〜25質量%、特に0.5〜10質量%であるのが好ましい。
これらの有機紫外線吸収剤は、油相O1及び/又はO2のいずれに含有させても良い。
【0035】
本発明の化粧料は、前記以外に、通常化粧料用に用いられる成分、例えば、液体油、固形脂(ワックス)、半固形油、アルコール類、水、保湿剤、水溶性高分子、油溶性高分子、高分子ラテックス、各種界面活性剤、薬剤、植物抽出液、セラミド類、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤、pH調整剤、増粘剤、酸化防止剤、防腐剤、香料等を含有することができる。
【0036】
本発明の化粧料は、紫外線防御性を付加した各種の化粧料、例えば、スキンケア化粧料、メイクアップ化粧料、頭髪化粧料等として適用することができる。特に、メイクアップ化粧料としては、日焼け止め化粧料、ファンデーション、白粉、化粧下地、頬紅、口紅、コンシーラー、アイ製品等として好適である。
【実施例】
【0037】
製造例1(オキサゾリン変性シリコーンの製造)
硫酸ジエチル3.76g(0.024mol)及び2−エチル−2−オキサゾリン65.3g(0.66mol)を、脱水した酢酸エチル140gに溶解し、窒素雰囲気下、8時間加熱還流し、末端反応性ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)を合成した。ここに、側鎖1級アミノプロピル変性ポリジメチルシロキサン(分子量100000、アミン当量20500)500g(アミノ基にして0.024mol)の50%酢酸エチル溶液を一括して加え、12時間加熱還流した。反応混合物を減圧濃縮し、N−プロピオニルエチレンイミン・ジメチルシロキサン共重合体を淡黄色ゴム状固体(537g、収率95%)として得た。重量平均分子量は149000であった。(親水性マクロマー含有率12質量%)
【0038】
製造例2(オキサゾリン変性シリコーンの製造)
硫酸ジエチル7.57g(0.049mol)及び2−エチル−2−オキサゾリン263.3g(2.66mol)を、脱水した酢酸エチル550gに溶解し、窒素雰囲気下、8時間加熱還流し、末端反応性ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)を合成した。ここに、側鎖1級アミノプロピル変性ポリジメチルシロキサン(分子量60000、アミン当量3870)250g(アミノ基にして0.065mol)の50%酢酸エチル溶液を一括して加え、12時間加熱還流した。反応混合物を減圧濃縮し、N−プロピオニルエチレンイミン・ジメチルシロキサン共重合体を淡黄色ゴム状固体(505g、収率97%)として得た。重量平均分子量は88400であった。(親水性マクロマー含有率49質量%)
【0039】
実施例1〜2、比較例1〜4
表1に示す組成の液状紫外線防御化粧料を製造し、紫外線防御効果及び耐水性を評価した。結果を表1に併せて示す。
【0040】
(製法)
(1)実施例1、2:
成分(13)、(14)及び(17)を混ぜた中に、成分(15)を分散させ、IV相を得る。成分(1)を成分(4)〜(6)に分散させ、I相を得る。成分(7)を成分(8)に混ぜ、得られ
たII相をI相に加え、均一にする。その中に成分(9)、(10)及び(12)を加え、得られた
液をIV相に加えて均一にすることにより、化粧料(O1/W/O2乳化型)を得た。
【0041】
(2)比較例1:
成分(13)、(14)及び(17)を混ぜた中に、成分(15)を分散させ、IV相を得る。成分(9)、(10)及び(12)を混ぜ、IV相に加えて均一にすることにより、化粧料を得た。
【0042】
(3)比較例2、3:
成分(13)、(14)及び(17)を混ぜた中に、成分(15)又は(16)を分散させ、IV相を得る。成分(2)又は(3)に成分(9)、(10)及び(12)を混ぜ、IV相に加えて均一にすることにより、化粧料を得た。
【0043】
(4)比較例4:
成分(13)、(14)及び(17)を均一に混ぜてIV相を得る。次に、成分(9)〜(12)を混ぜてIV相に加え、均一にすることにより、化粧料を得た。
【0044】
(評価方法)
(1)紫外線防御効果:
SPFアナライザー(Optometrics社)を用いて、各化粧料のSPF値を測定し、以下の基準で示した。
◎:SPF値20以上。
○:SPF値15以上20未満。
△:SPF値5以上15未満。
×:SPF値5未満。
【0045】
(2)耐水性(水処理後のSPF値):
石英板にサージカルテープを張り、その上に各化粧料を塗布し(塗布量:2mg/cm2)、SPFアナライザー(Optometrics社)を用いてSPF値を測定する。その後、80分間水中にて処理後、再びSPF値を測定し、水処理後のSPF値/水処理前のSPF値×100(%)を算出した。SPFの持続性を以下の基準で判定し、耐水性の指標とした。
○(耐水性が非常に高い):90%以上。
△(耐水性が高い):70%以上90%未満。
×(耐水性が低い):70%未満。
【0046】
【表1】

【0047】
実施例1及び2の化粧料(O1/W/O2乳化型)は、紫外線防御効果が高く、しかも耐水性にも優れ、紫外線防御効果の持続性の高いものであった。特に実施例2は、I相中に分散された紫外線防御剤(金属酸化物)の分散安定性により優れ、紫外線防御効果が非常に高かった。
これに対し、比較例1〜4はW/O型乳化化粧料であり、疎水性紫外線防御粉体を油相Oのみに含有する比較例1は、紫外線防御効果が低く、使用感も劣る。また、親水性紫外線防御粉体を油相Oに分散させた比較例2は、紫外線防御効果及び耐水性がいずれも低いものであった。同様に油相Oに親水性酸化チタンを分散させた比較例3も耐水性が低いものであった。さらに、水相に水溶性紫外線吸収剤(フェニルベンズイミダゾールスルホン酸)を配合した比較例4においても、十分な耐水性は得られなかった。
【0048】
実施例3〜5、比較例5〜6
表2に示す組成の液状紫外線防御化粧料を製造し、実施例1と同様にして、紫外線防御効果(SPF値)を評価した。結果を表2に併せて示す。
【0049】
(製法)
成分(13)〜(16)を混ぜた中に、成分(11)及び(12)を分散させ、成分(10)に加えて均一に混ぜることによりIV相を得る。次に、成分(3)〜(5)を均一に混ぜた中に、成分(1)及び(2)を分散させ、I相を得る。成分(6)を成分(7)に混ぜ、得られたII相をI相に加え、均一にする。その中に成分(8)及び(9)を加え、均一なO1/W乳化物を得た。得られたO/W乳化物をIV相に加え、均一にすることにより、O1/W/O2化粧料を得た。
【0050】
【表2】

【0051】
実施例3〜5の化粧料はいずれも、紫外線防御効果が高いものであった。特に、水溶性成分と油溶性成分との比率が質量比で約4/6であるこの系では、内油相と外油相に存在する疎水性防御粉体の比率が4/6に近い5/5の実施例4が最も紫外線防御効果が高かった。これに対し、疎水性紫外線防御粉体が外油相のみ、あるいは内油相のみに存在する比較例5及び6は、紫外線防御効果に劣るものであった。
【0052】
実施例6(サンスクリーンローション)
以下に示す組成のサンスクリーンローションを、実施例1と同様の方法により製造した。
(組成)
I相
(1)シリコーン被覆処理酸化亜鉛 3.8(質量%)
(2)シリコーン被覆処理酸化チタン 0.6
(3)オキサゾリン変性シリコーン(製造例2) 0.3
(4)メチルシクロポリシロキサン 3.8
(5)エタノール 2.6
II相
(6)オキサゾリン変性シリコーン(製造例2) 0.8
(7)エタノール 1.9
III相
(8)エタノール 2.9
(9)水 バランス
(10)グリセリン 3.5
IV相
(11)ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 0.8
(12)シリコーン被覆処理酸化亜鉛 11.0
(13)シリコーン被覆処理酸化チタン 0.2
(14)メチルシロキサン網状重合体 5.0
(15)メチルシクロポリシロキサン 20.0
(16)ジメチルポリシロキサン 15.0
(17)パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 4.0
【0053】
実施例7(サンスクリーンクリーム)
以下に示す組成のサンスクリーンクリームを、実施例1と同様の方法により製造した。
(組成)
I相
(1)シリコーン被覆処理酸化亜鉛 3.8(質量%)
(2)シリコーン被覆処理酸化チタン 0.6
(3)オキサゾリン変性シリコーン(製造例2) 0.3
(4)メチルシクロポリシロキサン 3.8
(5)エタノール 2.6
II相
(6)オキサゾリン変性シリコーン(製造例2) 0.8
(7)エタノール 1.9
III相
(8)エタノール 2.9
(9)水 バランス
(10)硫酸マグネシウム 1.0
(11)グリセリン 7.0
IV相
(12)ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 2.0
(13)シリコーン被覆処理酸化亜鉛 11.0
(14)シリコーン被覆処理酸化チタン 0.2
(15)メチルシロキサン網状重合体 3.0
(16)メチルシクロポリシロキサン 20.0
(17)ジメチルポリシロキサン 15.0
(18)パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 3.0
(19)スクワラン 2.0
(20)パルミチン酸デキストリン 0.5
【0054】
実施例8(サンスクリーンファンデーション)
以下に示す組成のサンスクリーンファンデーションを、実施例1と同様の方法により製造した。
(組成)
I相
(1)シリコーン被覆処理酸化亜鉛 3.8(質量%)
(2)シリコーン被覆処理酸化チタン 0.6
(3)オキサゾリン変性シリコーン(製造例2) 0.3
(4)メチルシクロポリシロキサン 3.8
(5)エタノール 2.6
II相
(6)オキサゾリン変性シリコーン(製造例2) 0.8
(7)エタノール 1.9
III相
(8)エタノール 2.9
(9)水 バランス
(10)グリセリン 3.5
IV相
(11)ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 0.8
(12)シリコーン被覆処理酸化亜鉛 11.0
(13)シリコーン被覆処理酸化チタン 0.2
(14)メチルシロキサン網状重合体 5.0
(15)着色顔料 適量
(16)メチルシクロポリシロキサン 20.0
(17)ジメチルポリシロキサン 15.0
(18)パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 4.0
(19)香料 微量
【0055】
実施例6〜8で得られた化粧料について、実施例1と同様に紫外線防御効果及び耐水性を評価したところ、いずれも紫外線防御効果が高く、耐水性にも優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1/W/O2乳化型組成物であって、油相O1及びO2に紫外線遮蔽能を有する微粒子金属酸化物を含有する化粧料。
【請求項2】
油相O1及びO2に分散する微粒子金属酸化物の質量割合が、O1/O2=1:9〜9:1である請求項1記載の化粧料。
【請求項3】
紫外線遮蔽能を有する微粒子金属酸化物が、シリコーン処理されたものであり、油相O1及びO2が、それぞれシリコーン油を含有するものである請求項1又は2記載の化粧料。
【請求項4】
油相O1が、(a)、(b)、(c)及び(d);
(a)紫外線遮蔽能を有する微粒子金属酸化物、
(b)疎水性モノマー単位と親水性モノマー単位とからなるポリマー、
(c)シリコーン油、
(d)エタノール
を、(a):(b):(c):(d)=(25〜65):(0.1〜5):(10〜50):(10〜50)の質量割合で含有する分散液である請求項1又は2記載の化粧料。
【請求項5】
(A)疎水性モノマー単位と親水性モノマー単位とからなるポリマーであって、親水性モノマー単位を40〜80質量%含有するポリマーにより、O1/W乳化物を調製し、次に、当該O1/W乳化物を、(B)界面活性剤により油相O2に乳化する請求項1〜4のいずれか1項記載のO1/W/O2乳化型化粧料の製造方法。
【請求項6】
(B)界面活性剤が、疎水性モノマー単位と親水性モノマー単位を有するポリマーであって、親水性モノマー単位を5〜50質量%含有するポリマーである請求項5記載の製造方法。


【公開番号】特開2007−137825(P2007−137825A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−334283(P2005−334283)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】