説明

化粧板

【課題】板厚が薄くても不燃性及び加工性に優れた化粧板を提供すること。
【解決手段】(a1)ガラス転移温度Tgが0℃を超えるアクリル樹脂、ガラス転移温度Tgが0℃を超える塩化ビニル樹脂、アクリルウレタン、及び水性ポリウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂、及び(a2)熱硬化性樹脂の配合割合が固形分比で1:0〜0.5である(a)バインダー成分、及び(b)吸熱性金属水酸化物を含むプリプレグ2と、熱硬化性樹脂含浸化粧紙1とが積層され、一体化されたことを特徴とする化粧板5。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱硬化性樹脂化粧板が知られている。熱硬化性樹脂化粧板の中でも、特にJIS K 6902の「熱硬化性樹脂高圧化粧板試験方法」に適合するメラミン化粧板は、耐熱性、耐衝撃性、耐摩耗性、及び寸法安定性において優れることから、住宅機器、内装材(例えば天板、カウンター等)等に幅広く使用されている。
【0003】
近年では、コア層を構成する繊維質基材としてクラフト紙の代わりに無機繊維不織布を用いるとともに、熱硬化性樹脂から成るバインダー成分と無機充填材とを配合したスラリーを用いて製造した不燃性化粧板が知られている(特許文献1)。また、熱硬化性樹脂と、合成樹脂エマルジョンやゴムラテックス等の熱可塑性樹脂とを含むスラリーを含浸したプリプレグを用いて不燃性化粧板を製造する技術も開示されている(特許文献2、3、4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−290444号公報
【特許文献2】特開2005−103769号公報
【特許文献3】特開2005−199532号公報
【特許文献4】特開平3−253342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の不燃性化粧板は、板厚が3mm程度と厚く、机、テーブルの天板に接着加工すると木口面が目立つため一体感がない。また、従来の不燃性化粧板は厚くて重いため、家具の加工工程において、板厚0.8〜1.6mmの通常のメラミン化粧板に比べて作業しにくい。上述した課題を解決することが本発明の一側面である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の化粧板は、
(a1)ガラス転移温度Tgが0℃を超えるアクリル樹脂、ガラス転移温度Tgが0℃を超える塩化ビニル樹脂、アクリルウレタン、及び水性ポリウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂、及び(a2)熱硬化性樹脂の配合割合が固形分比で1:0〜0.5である(a)バインダー成分、及び(b)吸熱性金属水酸化物を含むプリプレグと、熱硬化性樹脂含浸化粧紙とが積層され、一体化されたことを特徴とする。
【0007】
本発明の化粧板は、板厚が薄くても(例えば0.6〜0.8mmでも)、不燃性を有する。また、本発明の化粧板は、加工しやすく、反りも小さく、取り扱いやすい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】不燃性化粧板5の構成を表す断面図である。
【図2】不燃性化粧板5'の構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、(a1)熱可塑性樹脂と(a2)熱硬化性樹脂の配合割合は、固形分比(重量比)で1:0〜0.5である。この範囲内であることにより、化粧板の可撓性が向上する。
(a1)熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度Tgが0℃を超えるアクリル樹脂、ガラス転移温度Tgが0℃を超える塩化ビニル樹脂、アクリルウレタン、及び水性ポリウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である。アクリルウレタン、及び水性ポリウレタン樹脂のガラス転移温度Tgは特に限定されない。
【0010】
また、(a1)熱可塑性樹脂として、平均粒子径が150〜300nmのアクリル樹脂エマルジョンを用いると、プレプリグの結着力、及び化粧板の曲げ加工性や平滑性を一層向上させることができる。平滑性が向上する理由は、アクリル樹脂エマルジョンが微粒子であるためであると推測できる。尚、平均粒子径は、レーザー光回折・散乱式粒子径測定装置(大塚電子株式会社製ELS−8000)を使用し、レーザーの照射時に検出された散乱光に基づいて計算した値である。
【0011】
前記(a2)熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ガラス転移温度が0℃を超えるアクリル樹脂を用いると、曲げ性、密着性、成形性を一層向上させることができる。(a2)熱硬化性樹脂は任意的成分であり、配合されていなくてもよい。
【0012】
(b)吸熱性金属水酸化物は、結晶水を含み、高温時に分解し、吸熱し、結合水を放出するため、本発明の化粧板の不燃性を向上させる。吸熱性金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。
【0013】
(b)吸熱性金属水酸化物は、例えば、(a)バインダー成分等とともに、スラリーの配合成分とすることができる。このスラリーを、例えば、繊維質基材に含浸し、プレプリグを製造することができる。吸熱性金属水酸化物の平均粒子径は、例えば、1〜50μmの範囲内とすることができる。この平均粒子径は、レーザー回折・散乱法(マイクロトラック法)により検出された粒度分布(体積分布)から算出された算術平均径である。吸熱性金属水酸化物の平均粒子径が上記の範囲内であることにより、スラリー中での(b)吸熱性金属水酸化物の分散性が向上し、スラリーの繊維質基材への含浸性が向上する。また、吸熱性金属水酸化物の平均粒子径が上記の範囲内であることにより、化粧板の表面が平滑な仕上がりとなる。
【0014】
前記プレプリグは、(b)吸熱性金属水酸化物の他に、例えば、非含水無機充填材を含んでもよい。非含水無機充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛等の炭酸塩、シリカ、タルク、フライアッシュ等が挙げられる。非含水無機充填材の平均粒子径(レーザー回折・散乱法(マイクロトラック法)により検出された粒度分布(体積分布)から算出された算術平均径)は、例えば、0.05〜20μmの範囲内とすることができる。この場合、スラリーの繊維質基材への含浸適性が一層向上する。
【0015】
非含水無機充填材の中でも、特に、炭酸塩(例えば炭酸カルシウム)を選択することができる。この場合、化粧板の製造工程における作業性、切削性が一層向上する。炭酸カルシウムとしては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム(沈降性炭酸カルシウム)等を用いることができる。炭酸カルシウムの平均粒子径は、例えば、0.05〜10μm、より好ましくは1〜5μmとすることができる。0.05μm以上とすることにより、スラリー中で炭酸カルシウムの凝集が生じにくくなり、スラリーの繊維質基材への含浸性が向上する。また、10μm以下とすることにより、化粧板の表面が一層平滑となり、外観が向上する。
【0016】
尚、軽質炭酸カルシウムとは石灰石を焼成し化学的に製造される炭酸カルシウムを意味し、重質炭酸カルシウムとは白色結晶質石灰石を乾式又は湿式粉砕して造った微粉炭酸カルシウムを意味する。
【0017】
プレプリグに含まれる全無機充填材中に占める(b)吸熱性金属水酸化物の配合割合は、例えば、50〜100重量%とすることができる。この場合、化粧板の不燃性が一層向上する。
本発明の化粧板において、プリプレグは、例えば、(c)シランカップリング剤を含むことができる。この場合、(c)シランカップリング剤を含まない場合よりも、JIS K−6902「熱硬化性樹脂高圧化粧板試験方法」の耐煮沸性において、重量増加率が一層小さくなり、また、プリプレグと熱硬化性樹脂含浸化粧紙との密着性が一層向上する。
【0018】
(c)成分の配合割合は、例えば、(a)+(b)+(c)の全成分中の0.7〜0.9重量%とすることができる。この場合、JIS K−6902「熱硬化性樹脂高圧化粧板試験方法」の耐煮沸性において、重量増加率が一層小さくなり、また、プリプレグと熱硬化性樹脂含浸化粧紙との密着性が一層向上する。
【0019】
シランカップリング剤としては、例えば、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロイルオキシ基含有シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有シラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シラン、p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリル基含有シラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基含有シラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有シラン等が挙げられる。特に、エポキシ基含有シランやアミノ基含有シランを用いると、プレプリグにおける架橋密度が一層向上する。
【0020】
全組成物(a+b+c)中の(a)バインダー成分の割合は、例えば、固形分で9〜15重量%とすることができる。15重量%以下であることにより、不燃性が一層向上するとともに、熱圧成形時に合成樹脂が染み出したりすることが起こりにくくなる。また、9重量%以上であることにより、プリプレグ同士の密着性が一層向上するとともに、繊維質基材へのスラリーの含浸量のコントロールが一層容易になる。
【0021】
本発明の化粧板におけるプレプリグは、例えば、(a)バインダー成分及び(b)吸熱性金属水酸化物を含むスラリーを繊維質基材に含浸することで製造できる。この繊維質基材としては、例えば、有機繊維基材や無機繊維基材等が挙げられる。
【0022】
有機繊維基材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ビニロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン等、これらの変成物、エチレン−酢酸ビニル共重合体等に代表される各種共重合体からなる繊維、これらの混合物、及びこれらの重合体からなる複合繊維等が挙げられる。
【0023】
無機繊維基材としては、例えば、ガラス繊維、ロックウール、炭素繊維等の無機繊維からなる不織布、織布等が挙げられる。無機繊維基材の坪量は、例えば、10〜200g/m2の範囲内とすることができる。無機繊維基材を用いた場合は、有機繊維基材を用いた場合よりも、化粧板の不燃性が一層向上する。無機繊維基材の中でも、ガラス繊維不織布を用いた場合は、耐熱性、耐炎性、スラリーの含浸性が一層向上する。
【0024】
繊維質基材へのスラリー固形分含浸率(%)は、数1で示される算出方法で、700〜1200%の範囲内が好ましい。1200%以下であることにより、プレプリグからのスラリー固形分の脱落が減少して、プレプリグを取り扱い易くなる。700%以上であることにより、プレプリグの層間剥離が生じにくくなる。
【0025】
【数1】

【0026】
本発明の化粧板において、例えば、繊維質基材にスラリーが含浸されたプリプレグからなるコア層の少なくとも片面に化粧層を形成することができる。化粧層の形成方法としては、例えば、塗装を施す方法や、樹脂含浸化粧紙を用いる方法や、転写箔を用いて化粧層を転写する方法等が挙げられる。樹脂含浸化粧紙を用いた場合、化粧板の生産性、コア層と化粧層との密着性、及び化粧層の耐摩耗性が一層向上する。
【0027】
樹脂含浸化粧紙を用いる方法は、例えば、まず、熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂液を熱硬化性樹脂化粧板用原紙に含浸し、次に、乾燥した樹脂含浸化粧紙を積層し、熱圧成形する方法である。熱圧成形には、例えば、平板プレス、連続プレス等のプレス機を用いることができる。
【0028】
樹脂含浸化粧紙は、例えば、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂からなる樹脂液を、熱硬化性樹脂化粧板用の30〜140g/m2の化粧紙に、数1で示される含浸率が80〜300%となるように含浸して製造することができる。樹脂含浸化粧紙の中でも、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂含浸化粧紙は、耐熱性、耐摩耗性において一層優れている。
【0029】
本発明の化粧板は、その片面又は両面に化粧層を形成することができる。片面のみに化粧層(例えば樹脂含浸化粧紙から成る化粧層)を形成した場合、他方の面には、例えば、バランス紙を配することができる。バランス紙を配した場合、化粧板の反りや破損を一層抑制することができる。
【0030】
バランス紙としては、例えば、熱硬化性樹脂(例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、グアナミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アクリル樹脂等)を主成分とし、水、有機溶剤にて希釈して粘度調整された樹脂液を、坪量が18〜40g/m2の化粧板用の表面紙に対し、数1に示す算出方法で260〜320%含浸し、乾燥した樹脂含浸バランス紙が挙げられる。
(実施例1)
(1)スラリーの製造
以下の成分を含むスラリーを製造した。
【0031】
ガラス転移温度Tgが47℃であり、エチルアクリレートとメチルメタアクリレートとを主モノマーとするアクリル樹脂エマルジョン(品番AXN−150、アイカ工業株式会社製、平均粒子径225nm):36重量部(固形分)
平均粒子径8μmの水酸化アルミニウム(吸熱性金属水酸化物):200重量部
平均粒子径1μmの重質炭酸カルシウム(非含水無機充填材):40重量部
なお、前記のアクリル樹脂エマルジョンは(a1)成分の一実施形態である。
(2)プリプレグの製造
50g/m2のガラス繊維不織布(繊維質基材)に、前記(1)で製造したスラリーを、数式1で定義される算出方法で含浸率が800%となるように含浸し、乾燥してプリプレグを製造した。
(3)メラミン樹脂含浸化粧紙の製造
坪量100g/m2である白色の熱硬化性樹脂化粧板用の化粧紙に、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂を主成分とする樹脂液を、数式1で定義される算出方法で含浸率が130%となるように含浸し、乾燥してメラミン樹脂含浸化粧紙を製造した。
(4)メラミン樹脂含浸バランス紙の製造
坪量23g/m2である熱硬化性樹脂化粧板用の表面紙に、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂を主成分とする樹脂液を、数式1で定義される算出方法で含浸率が280%となるように含浸し、乾燥してメラミン樹脂含浸バランス紙を製造した。
(5)不燃性化粧板の製造
下から順に、前記(4)で製造したメラミン樹脂含浸バランス紙を1枚、前記(2)で製造したプリプレグを2枚、及び前記(3)で製造したメラミン樹脂含浸化粧紙を1枚積層し、フラット仕上げプレートを用いて、130℃、70kg/cm2、60分間の条件で熱圧成形して一体化し、不燃性化粧板を製造した。図1に示すように、製造した不燃性化粧板5は、1枚のメラミン樹脂含浸化粧紙1、2枚のプリプレグ2、及び1枚のメラミン樹脂含浸バランス紙3を積層した構造を有する。
【0032】
なお、表1〜表3に、本実施例及び後述する各実施例及び各比較例で製造した不燃性化粧板の組成を示す。組成の単位は重量部である。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

【0036】
(実施例2)
基本的には前記実施例1と同様にして不燃性化粧板を製造した。ただし、スラリーの製造において、アクリル樹脂エマルジョンの配合量を30重量部とした。
(実施例3)
基本的には前記実施例1と同様にして不燃性化粧板を製造した。ただし、スラリーの製造において、エポキシ基含有シランの1種である3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン((c)シランカップリング剤)を2.4重量部加えた。
(実施例4)
基本的には前記実施例3と同様にして不燃性化粧板を製造した。ただし、スラリーの製造において、アクリル樹脂エマルジョンの配合量を26重量部とし、また、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン((c)シランカップリング剤)の配合量を2.2重量部とした。
(実施例5)
基本的には前記実施例3と同様にして不燃性化粧板を製造した。ただし、スラリーの製造において、アクリル樹脂エマルジョンの配合量を32重量部とし、また、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン((c)シランカップリング剤)の配合量を2.2重量部とした。
(実施例6)
基本的には前記実施例3と同様にして不燃性化粧板を製造した。ただし、スラリーの製造において、アクリル樹脂エマルジョンの配合量を26重量部とし、また、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン((c)シランカップリング剤)の配合量を1.9重量部とした。
(実施例7)
基本的には前記実施例3と同様にして不燃性化粧板を製造した。ただし、スラリーの製造において、アクリル樹脂エマルジョンの配合量を34重量部とし、水酸化アルミニウムの配合量を120重量部とし、重質炭酸カルシウムの配合量を120重量部とし、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン((c)シランカップリング剤)の配合量を2.2重量部とした。
(実施例8)
基本的には前記実施例3と同様にして不燃性化粧板を製造した。ただし、スラリーの製造において、アクリル樹脂エマルジョンの配合量を34重量部とし、水酸化アルミニウムの配合量を240重量部とし、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン((c)シランカップリング剤)の配合量を2.2重量部とした。
(実施例9)
基本的には前記実施例3と同様にして不燃性化粧板を製造した。ただし、スラリーの製造において、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン((c)シランカップリング剤)の配合量を2.2重量部とした。また、メラミン樹脂含浸バランス紙を用いずに不燃性化粧板を製造した。図2に示すように、製造した不燃性化粧板5'は、1枚のメラミン樹脂含浸化粧紙1、及び2枚のプリプレグ2を積層した構造を有する。
【0037】
本実施例で製造した不燃性化粧板は、前記実施例1〜8で製造した不燃性化粧板に比べると、曲げ強度がやや弱く、反りがやや大きかった。
(実施例10)
基本的には前記実施例3と同様にして不燃性化粧板を製造した。ただし、スラリーの製造において、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの代わりに、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(SH−6020、商品名、東レ・ダウコーニング株式会社製)を2.2重量部用いた。3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランは、(c)シランカップリング剤の一実施形態である。
(実施例11)
基本的には前記実施例3と同様にして不燃性化粧板を製造した。ただし、スラリーの製造において、アクリル樹脂エマルジョン(品番AXN−150、アイカ工業株式会社製、平均粒子径225nm)の代わりに、同量のアクリルウレタンエマルジョン(WEM−3008.商品名、大成ファインケミカル株式会社製)を用い、また、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの配合量を2.2重量部とした。
(実施例12)
基本的には前記実施例11と同様にして不燃性化粧板を製造した。ただし、スラリーの製造において、アクリルウレタンエマルジョン(WEM−3008.商品名、大成ファインケミカル株式会社製)の代わりに、高分子量の熱可塑性ウレタン樹脂を水に安定に分散させた非イオン性の水性ポリウレタン樹脂(ハイドラン(登録商標)WLI−602、DIC株式会社製)を同量用いた。
(実施例13)
基本的には前記実施例11と同様にして不燃性化粧板を製造した。ただし、スラリーの製造において、アクリルウレタンエマルジョン(WEM−3008.商品名、大成ファインケミカル株式会社製)の代わりに、塩ビ系重合体を主成分とする塩ビ系水溶液(ビニブラン(登録商標)711、ガラス転移温度30℃、日信化学工業株式会社製)を同量用いた。
(実施例14)
基本的には前記実施例4と同様にして不燃性化粧板を製造した。ただし、スラリーの製造において、アクリル樹脂エマルジョンの配合量を24重量部とし、さらに、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂を12重量部配合した。
(比較例1)
(1)スラリーの製造
以下の成分を含むスラリーを製造した。
【0038】
フェノール−ホルムアルデヒド樹脂:36重量部(固形分)
平均粒子径8μmの水酸化アルミニウム:200重量部
平均粒子径1μmの重質炭酸カルシウム:40重量部
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン:2.2重量部
(2)プリプレグの製造
50g/m2のガラス繊維不織布(繊維質基材)に、前記(1)で製造したスラリーを、数式1で定義される算出方法で含浸率が760%となるように含浸し、乾燥してプリプレグを製造した。
(3)メラミン樹脂含浸化粧紙の製造
前記実施例1と同様にメラミン樹脂含浸化粧紙を製造した。
(4)メラミン樹脂含浸バランス紙の製造
前記実施例1と同様にメラミン樹脂含浸バランス紙を製造した。
(5)不燃性化粧板の製造
下から順に、前記(4)で製造したメラミン樹脂含浸バランス紙を1枚、前記(2)で製造したプリプレグを2枚、及び前記(3)で製造したメラミン樹脂含浸化粧紙を1枚積層し、フラット仕上げプレートを用いて、130℃、70kg/cm2、60分間の条件で熱圧成形して一体化し、不燃性化粧板を製造した。
(比較例2)
基本的には前記比較例1と同様にして不燃性化粧板を製造した。ただし、スラリーの製造において、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂の代わりに同量のメラミン−ホルムアルデヒド樹脂を用いた。
(比較例3)
基本的には前記比較例1と同様にして不燃性化粧板を製造した。ただし、スラリーの製造において、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂の代わりに、熱可塑性樹脂であるガラス転移温度(Tg)47℃のアクリル樹脂エマルジョン(品番AXN−150、アイカ工業株式会社製、平均粒子径225nm)18重量部(固形分)と、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂18重量部(固形分)とを用いた。
(比較例4)
基本的には前記比較例1と同様にして不燃性化粧板を製造した。ただし、スラリーの製造において、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂の代わりに、熱可塑性樹脂であるガラス転移温度(Tg)47℃のアクリル樹脂エマルジョン(品番AXN−150、アイカ工業株式会社製、平均粒子径225nm)12重量部(固形分)と、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂24重量部(固形分)とを用いた。
(比較例5)
基本的には前記比較例1と同様にして不燃性化粧板を製造した。ただし、スラリーの製造において、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂の代わりに、熱可塑性樹脂であるガラス転移温度(Tg)47℃のアクリル樹脂エマルジョン(品番AXN−150、アイカ工業株式会社製、平均粒子径225nm)18重量部(固形分)と、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂18重量部(固形分)とを用いた。
【0039】
本比較例では、アクリル樹脂エマルジョンとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂の相溶性が悪く、不燃性化粧板を製造することができなかった。
(比較例6)
基本的には前記実施例1と同様にして不燃性化粧板を製造した。ただし、スラリーの製造において、アクリル樹脂エマルジョンの代わりに、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂11.5重量部(固形分)と、メラミン−ルムアルデヒド樹脂9.5重量部(固形分)とを用いた。
(比較例7)
基本的には前記実施例1と同様にして不燃性化粧板を製造した。ただし、スラリーの製造において、ガラス転移温度Tgが47℃であるアクリル樹脂エマルジョン(品番AXN−150、アイカ工業株式会社製、平均粒子径225nm)の代わりに、ガラス転移温度が−21℃のアクリル樹脂エマルジョン(品番CMX−43、アイカ工業株式会社製)36重量部(固形分)を用いた。
(比較例8)
フェノール−ホルムアルデヒド樹脂含浸コア紙5枚と、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂含浸パターン紙1枚とを積層し、130℃、70kg/cm2、60分間の条件で熱圧成形し、厚み1.2mmのメラミン化粧板(公知のメラミン化粧板)を得た。
<化粧板の評価>
各実施例及び各比較例の化粧板について、不燃性、曲げ強度、弾性率、寸法変化率、化粧板の反り、曲げ加工性、及び重量増加率の評価試験を行った。試験の方法は以下のとおりとした。
(i)不燃性
ISO5660に準拠したコーンカロリーメーターによる20分試験の発熱性試験を行った。以下のα〜γの全てを充足した場合は○と評価し、それ以外を×と評価した。
【0040】
α:総発熱量が8MJ/m2以下である。
β:最高発熱速度が10秒以上継続して200KW/m2を超えない。
γ:試験開始後20分間、裏面まで貫通する亀裂および穴の発生がない。
(ii)曲げ強度
JIS K 7171「プラスチック−曲げ特性の求め方」に基づき測定した。
(iii)弾性率
JIS K 7171「プラスチック−曲げ特性の求め方」に基づき測定した。
(iv)寸法変化率
JIS K 6902「熱硬化性樹脂高圧化粧板試験方法」の寸法安定性試験に基づき測定した。
(v)化粧板反り
繊維方向が短手方向となっている50mm×300mmのサンプルを室温40℃、湿度30%の環境で24時間養生した。その後、サンプルを水平面上に置いたときの、水平面からの反り高さを測定した。
(vi)曲げ加工性
150mm幅にサンプルを切り出し、所定の半径を持つ曲げ棒に化粧板の繊維方向が曲げ棒と平行になるように当てて曲げ加工し、目視によりクラックの発生の有無を確認した。クラックを生じない最小の曲率を測定値とした。
(vii)重量増加率
JIS K 6902「熱硬化性樹脂高圧化粧板試験方法」の耐煮沸性に基づき測定した。尚、規格値は17%以下である。
【0041】
評価試験の結果を上記表1〜表3に示す。この結果から明らかなように、実施例1〜14の化粧板は、板厚が薄くても、不燃性を有し、しかも、曲げ強度、弾性率、寸法変化率、化粧板反り、曲げ加工性、重量増加率の各項目において優れており、加工しやすく、取り扱いやすい。
【0042】
それに対し、比較例1〜8の化粧板は、少なくともいずれかの評価項目において劣っていた。特に、比較例1〜4の化粧板では、化粧板反りの評価結果が劣っていた。また、比較例6の化粧板では、曲げ加工性において劣っていた。また、比較例7の化粧板は、弾性率が小さく、取り扱いにくかった。
【符号の説明】
【0043】
1・・・メラミン樹脂含浸化粧紙
2・・・プリプレグ
3・・・メラミン樹脂含浸バランス紙
5、5'・・・不燃性化粧板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a1)ガラス転移温度Tgが0℃を超えるアクリル樹脂、ガラス転移温度Tgが0℃を超える塩化ビニル樹脂、アクリルウレタン、及び水性ポリウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂、及び(a2)熱硬化性樹脂の配合割合が固形分比で1:0〜0.5である(a)バインダー成分、及び(b)吸熱性金属水酸化物を含むプリプレグと、熱硬化性樹脂含浸化粧紙とが積層され、一体化されたことを特徴とする化粧板。
【請求項2】
前記プリプレグが更に、(c)シランカップリング剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の化粧板。
【請求項3】
前記(b)吸熱性金属水酸化物が水酸化アルムニウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の化粧板。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂がアクリル樹脂エマルジョンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の化粧板。
【請求項5】
前記プリプレグはガラス繊維不織布を基材とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の化粧板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−99939(P2013−99939A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−227061(P2012−227061)
【出願日】平成24年10月12日(2012.10.12)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】