説明

化粧用シート

【課題】 皮膚からの角栓除去能力が従来品より優れており、かつ、皮膚貼付層表面にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの層が存在している場合にセパレータの軽剥離が生じない化粧用シートを提供すること。
【解決手段】 化粧用シートは、基材の一方の面に、水溶性高分子、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及び、無機充填剤を含有する湿潤粘着性組成物を用いて成る皮膚貼付層を有し、このポリオキシソルビタン脂肪酸エステルが皮膚貼付層の表面に層状に存在し、かつ、この皮膚貼付層の表面上に、セパレータとして剥離処理が施されていないシートを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧用シートに関し、特に、角栓除去等に使用される化粧用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、皮膚の角栓除去に適した化粧用シートとして、不織布等からなる基材層の片面に、水溶性高分子を用いて皮膚貼付層を形成したものが知られている。この化粧用シートは、通常、まず、鼻部などの貼付される部位を予め水で濡らした後に貼付される。貼付された化粧用シートは、この状態で約10分間放置され、水分が蒸発した後、ゆっくりと剥離除去される。このような一連の操作を経て、水で溶解若しくは湿潤した皮膚貼付層が、毛穴内に存在する角栓と接触した後、乾燥することによって、角栓と一体化するので、皮膚貼付層を剥がすことによって角栓も除去できるのである。
【0003】
ところで、このように化粧用シートは既に乾燥して皮膚と接着あるいは粘着している状態で皮膚から引き剥がされるのであるから、剥離の際、皮膚に相当の痛みを与えることになる。特開平5−221843号公報には、皮膚に痛みを与えることなく角栓等を除去することができるものとして、塩生成基を有する高分子化合物と油剤とをパック剤の一成分として用いたシート状パックが開示されているが、油剤を併用するため角栓除去能力が低下する恐れがある。これに対し、パックの角栓除去能力を低下させることなく、皮膚から剥離する際の痛みを緩和することができるパック化粧料が、特開平11−199435号公報に開示されている。このパック化粧料は、鎮痛剤、止痒剤、ポリオキシアルキレン鎖を有する非イオン界面活性剤、アルキレングリコール若しくはポリアルキレングリコールのサリチル酸エステル及び高級脂肪酸とアミノアルコールの縮合物よりなる群から選ばれた1種又は2種以上の成分を含有している。
【0004】
ところが、このパック化粧料も未だ十分な角栓除去能力を有するものではなく、ユーザーの高いニーズに応えることができるものではなかった。
【0005】
【特許文献1】特開平5−221843号公報
【特許文献2】特開平11−199435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、化粧用シートの角栓除去能力を向上させる技術の開発を行ってきた。その研究過程で、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを皮膚貼付層に含有させることにより、皮膚に痛みを与えることなく角栓を除去することができ、しかも、優れた角栓除去能力を発揮することを見出した。
【0007】
しかしながら、皮膚貼付層にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有させると、皮膚貼付層の表面にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの層が形成されることがあることが分かった。このように皮膚貼付層の表面にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの層が形成された化粧用シートでは、通常の剥離処理されたセパレータで皮膚貼付層の表面を覆っても、製造中の移動過程においてセパレータの軽剥離が生じることがあり、任意の形状に切断された化粧用シートを作製するための切断工程でセパレータの浮きや剥がれによる製品不良が発生することがあった。
【0008】
そのため、皮膚貼付層の表面にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの層が形成されている皮膚貼付層にセパレータを積層しても軽剥離が生じない化粧用シートが求められていた。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、従来品より角栓除去能力に優れており、かつ、皮膚貼付層の表面にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの層が形成されている皮膚貼付層にセパレータを積層しても軽剥離が生じない化粧用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の化粧用シートは、基材の一方の面に、水溶性高分子、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及び、無機充填剤を含有する湿潤粘着性組成物を用いて成る皮膚貼付層を有し、該ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが該皮膚貼付層の表面に層状に存在し、かつ、該皮膚貼付層の表面上に、セパレータとして剥離処理が施されていないシートを有することを特徴とする。
【0011】
ここで、前記剥離処理が施されていないシートは、プラスチックフィルム及び紙からなる群から選ばれる少なくとも1つであることができる。
【0012】
また、前記プラスチックフィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び、ポリエステルからなる群から選ばれる少なくとも1つを用いてなることができる。
【0013】
本発明において、前記無機充填剤は、シリカ、酸化チタン、チタンブラック、薬用炭、黒酸化鉄、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び、炭酸カルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0014】
また、前記無機充填剤は、0.01μm以上、50μm以下の平均粒径を有することができる。
【0015】
また、前記水溶性高分子は、ポリビニルピロリドン及びビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種であることができる。
【0016】
また、前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを形成する脂肪酸が、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及び、オレイン酸からなる群から選ばれる1つであることができる。
【0017】
また、前記ポリオキシソルビタン脂肪酸エステルのHLBが12以上であることができる。
【0018】
また、前記水溶性高分子は、重量平均分子量が70万未満の水溶性高分子と重量平均分子量が70万以上の水溶性高分子とを含有することができる。
【0019】
また、前記湿潤粘着性組成物は、更に、保湿成分を含有することができる。
ここで、前記保湿成分は、グリセリン及び/又は多価アルコールであることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、皮膚から剥離する際の痛みを緩和することができ、かつ、皮膚からの角栓除去能力が従来品より優れており、かつ、皮膚貼付層の表面にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの層が形成されている皮膚貼付層にセパレータを積層しても軽剥離が生じない化粧用シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の化粧用シートは、基材の片面に皮膚貼付層とセパレータとを有し、この皮膚貼付層が、水溶性高分子、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及び、無機充填剤を含有する湿潤粘着性組成物を用いて形成されたものであって、表面にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの層が形成されている。
【0022】
ここで、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、水溶性高分子100重量部に対して、3重量部以上、40重量部以下の範囲で配合されることが好ましく、5重量部以上、20重量部以下の範囲で配合されることが更に好ましく、10質量部程度であることが特に好ましい。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの配合量が3重量部以上であれば、角栓除去能力を十分に発揮することができる。また、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの配合量が3重量部未満であると、剥離処理されていないセパレータに重剥離を生じさせることがある。
【0023】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビットの高級脂肪酸エステルよりなる非イオン界面活性剤であり、水の中に油を乳化せしめる水中油滴型(o/w 型)であることが好ましい。また、界面活性剤分子中の親水基と親油基との相関関係を示す数値としてHLB(Hydrophile Lipophile Balance)があるが、このHLBが12以上であることが好ましく、さらに上限は20以下とすることが好ましく、14〜17であることが更に好ましく、特に15〜17であることが好ましい。本発明に用いられるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、人体の頭皮や毛穴に付着したコレステロール、老廃物等の皮脂成分との相溶性が高い。
【0024】
本発明に用いられるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルにおける脂肪酸としては、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等が好ましいものとして挙げられる。また、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、親水性部分を形成するエチレンオキサイド(EO)の付加モル数が、例えば、4モル〜20モルであることが好ましい。
【0025】
本発明に用いられる水溶性高分子は、水または親水性媒体の存在により粘着性を発揮するものである。角栓除去に適した水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルピロリドン及びビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましいものとして挙げられる。また、水溶性高分子の分子量が大き過ぎると、湿潤粘着性組成物を用いて形成された皮膚貼付層は、水又は親水性媒体の存在によって粘着力が充分とならないことがあり、分子量が小さ過ぎると、皮膚貼付層の機械的強度が低下することがあって、貼付後、乾燥した化粧用シートを貼付部位から剥離除去する際に皮膚貼付層の一部が残渣として残ることがあるので、これらの水溶性高分子は、重量平均分子量が5,000〜500万であることが好ましく、特に、2万〜120万であることが好ましい。
【0026】
粘着性を発揮させるために用いた水等を蒸発させるための乾燥時間を短縮させ、かつ、剥離時の痛みを更に和らげることを可能にするという観点からは、低分子量の水溶性高分子、すなわち重量平均分子量が70万未満、好ましくは5,000〜30万の水溶性高分子と、高分子量の水溶性高分子、すなわち重量平均分子量が70万以上、好ましくは100万〜500万の水溶性高分子とを混合して使用することが更に好ましい。高分子量の水溶性高分子と低分子量の水溶性高分子とを混合して用いる場合、その配合割合は、用いる水溶性高分子の分子量や使用目的等に応じて適宜決定されることが好ましいが、例えば、高分子量の水溶性高分子と低分子量の水溶性高分子との割合は、重量比で、おおよそ、5:95〜95:5であることが好ましく、さらに好ましくは20:80〜70:30である。角栓の除去効率、剥がす際の皮膚に与える痛みの軽減等の観点からは、例えば、重量平均分子量が120万のポリビニルピロリドンと重量平均分子量が45万のポリビニルピロリドンを重量比で30:70〜60:40の範囲内で併用することが好ましく、40:60〜50:50で併用することが更に好ましい。
【0027】
本発明に係る湿潤粘着性組成物を構成する無機充填剤としては、例えば、シリカ(特に無水珪酸)、酸化チタン、チタンブラック、薬用炭、黒酸化鉄、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。これらの無機充填剤は、1種類のみを使用してもよいし、あるいは2種類以上を併用してもよい。本発明に使用される充填剤は、通常、粉体状態が好ましく、その形状は特に限定されないが、均一な分散性が得られることを考慮すると球形であることが好ましい。また、その平均粒径は0.01〜50μmであることが好ましく、特に、0.1〜10μmであることが好ましい。
【0028】
湿潤粘着性組成物に無機充填剤を含有させることによって、形成された皮膚貼付層の湿潤して乾燥させた後の機械的強度を向上させることができる。また、無機充填剤を含有させることによって、貼付後、乾燥するのに要する乾燥所要時間を短縮させることができる。したがって、無機充填剤を含有させれば貼付層の厚みが厚くても、従来品のような長時間を要することはない。なお、乾燥所要時間が短くなる理由は、無機充填剤と、水溶性高分子及び液状可塑剤との界面が、水分逸散の通路として機能するものと推察される。
【0029】
無機充填剤は、水溶性高分子100重量部に対して10〜200重量部の範囲内で使用することが好ましく、25〜100重量部の範囲内で使用することが更に好ましい。充填剤の使用量が10〜200重量部の範囲内であれば、形成された皮膚貼付層の柔軟性が乏しくなって貼付部位に良好にフィットし難くなるようなことはなく、また、乾燥所要時間が長くなることもなく、かつ、皮膚貼付層を貼り付けて乾燥した後の機械的強度の改善効果が得られる。
【0030】
本発明においては、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、チタンブラック及び薬用炭のような無機充填剤の中から2種類以上を選択し、この一部を顔料として配合することができる。顔料として配合される無機充填剤の配合量は、水溶性高分子100重量部に対して1〜20重量部の範囲内で使用することが好ましく、3〜10重量部の範囲内で使用することが更に好ましい。顔料としての無機充填剤の使用量が1〜20重量部の範囲内であれば、良好な白色若しくは黒色を示す皮膚貼付層を形成することができる。
【0031】
本発明に係る湿潤粘着性組成物には保湿成分を配合することができる。本発明に用いられる保湿成分としては、水溶性高分子に対して相溶性を有し、溶解して可塑化効果を示す材料が使用される。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、その他のポリエチレングリコール類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、その他のポリプロピレングリコール類、グリセリン、ジグリセリン、その他のポリグリセリン類、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール等のブチレングリコール類、ソルビトール、マンニトール等の糖アルコール類、ラノリン、レシチン、オリーブ油等のグリセライド類、などが例示される。これらは1種類のみを使用してもよいし、あるいは、2種類以上を併用してもよい。
【0032】
保湿成分の使用量が過剰であると、形成された皮膚貼付層の湿潤して乾燥させた後の機械的強度が乏しくなり易く、過少であると、柔軟性が乏しくなって貼付部位に良好にフィットさせることが難くなる傾向にある。したがって、保湿成分は、水溶性高分子100重量部に対して、1〜75重量部の範囲で使用することが好ましく、5〜50重量部の範囲で使用することが更に好ましい。
【0033】
本発明に係る湿潤粘着性組成物は、必要に応じて、化粧料、香料、防腐剤、着色剤、アルコール、薬剤、紫外線吸収剤、あるいは、その他の化粧用シートに通常使用される薬剤や添加剤を本発明の効果を阻害しない範囲内で含んでもよい。
【0034】
水溶性高分子と、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルと、無機充填剤と、必要に応じて保湿成分等とを含有する湿潤粘着性組成物は、エチルアルコール、メチルアルコール等の親水性媒体や水等と共に塗布液とした後、剥離処理が施された剥離シート、あるいは、基材上に塗布乾燥されて、シート状の皮膚貼付層が形成される。
【0035】
本発明において、皮膚貼付層の厚みは、10μm以上、500μm以下であることが好ましく、50μm以上、250μm以下であることが更に好ましい。
【0036】
本発明の化粧用シートは、皮膚貼付層の表面にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが層状に存在しているが、湿潤粘着性組成物を構成する、水溶性高分子の種類や配合量、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの配合量、無機充填剤の種類や配合量を適宜調整することによって、皮膚貼付層の表面にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの層を形成することができる。
【0037】
本発明の化粧用シートは、基材の片面に皮膚貼付層を有する。ここで、基材としては、皮膚貼付層の乾燥速度の観点から透湿性のある透湿性基材を用いることが好ましい。その構造としては、織布、不織布、編布、紙等の繊維の集合体類、および、多孔性フィルム、透気性フィルム等のフィルム類などが例示される。これらのうち、貼付部位の曲面になじみやすい適度の伸縮性を有するものが特に好ましい。また、材料に関しては、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、セルロース等の、合成あるいは天然の有機高分子類が例示される。
【0038】
本発明において、基材の厚みは、10μm〜200μmであることが好ましい。
【0039】
本発明の化粧用シートは、皮膚貼付層の上にセパレータを有する。但し、このセパレータとしては表面に剥離処理が施されていないシートを用いることが必要である。すなわち、本発明に用いられるセパレータは、例えばシリコン等のポリマー等で表面処理が施されていないシートであることが必要である。このようなシートとしては、表面が剥離処理されていない、プラスチックフィルム、紙等が挙げられる。
【0040】
また、かかるプラスチックシートを形成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等が挙げられるが、ポリエチレンが好ましく用いられる。本発明においては、2種類以上材料を併用してプラスチックシートを形成してもよいし、また、プラスチックシートは2層以上の積層体でもよいし、あるいは、紙とプラスチックシートとの積層体でもよい。
【0041】
本発明の化粧用シートは、例えば、剥離処理が施されていないシート(セパレータ)の片面に、湿潤粘着性組成物を水等に分散させた塗布液を塗布し、その上に基材を重ねて乾燥させることにより形成することができる。この化粧用シートは、基材/皮膚貼付層/セパレータの構成を有し、任意の形状に裁断される。セパレータは、使用時に剥がされるまで、皮膚貼付層を衛生面から、あるいは貼着力の面から保護することができる。また、セパレータを有することによって、化粧用シートを枚葉状に積み重ねて保存することもできるという利点もある。
【0042】
本発明の化粧用シートは、化粧用シート中の水分の揮散を防止するために不透湿性基材等の包装材料で包装されていてもよい。例えば、不透湿性基材からなる袋等の内部に収納されて密封保存されていてもよい。
【0043】
本発明に用いられる不透湿性基材としては、例えば、アルミニウム等の金属箔等が好ましく使用される。また、プラスチックフィルムと金属箔との積層体でもよく、例えば、アルミニウムとポリエステルフィルムとの積層体等が好ましく使用される。
【0044】
本発明の化粧用シートは、非イオン界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを皮膚貼付層に含有させているので、皮膚から剥離する際の痛みを緩和させることができ、かつ、角栓を十分に除去することができる。
【0045】
また、本発明の化粧用シートは皮膚貼付層の表面にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの層が存在しているので、化粧用シートが皮膚に貼着されると、皮膚貼付層と皮膚との界面に親油性を示すポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが貯留した状態になる。そのため、油性を示す皮膚面に短時間で濡れていくことができ、結果として角栓の除去性能を向上させることができる。また、無機充填剤を含んでいるので、機械的強度にも優れた化粧用シートを実現することができる。
【0046】
本発明の化粧用シートは、ピールオフ型のパック等に代表されるような角栓除去シート、にきびシート等に有用であり、特に鼻部のように複雑に湾曲した肌にぴったりと貼付でき、鼻部の角栓除去シートとして有効に利用できる。
【実施例】
【0047】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。
【0048】
(実施例1)
水溶性高分子として重量平均分子量が120万のポリビニルピロリドンを58重量%、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしてソルビタンオレイン酸モノエステル(エチレンオキサイド20モル付加物、HLB 15.0)を6重量%、無水珪酸34重量%、及び、酸化チタン2重量%を用い、これらを適量の精製水を用いて攪拌、混合して塗布液を作製した。この塗布液を、剥離処理が施されていないポリエチレンフィルム(厚み50μm)の片面に、塗布量が110g/mで均一な厚さとなるように塗布して皮膚貼付層を形成し、この皮膚粘着層の上に、ポリエステル繊維からなるスパンレース不織布(坪量:40g/m)を重ね、100℃で1.5分間乾燥させて、3層構造の化粧用シートを作製した。得られた化粧用シートの含水率は、15〜20重量%であった。ただし含水率は、室温下で約24時間保存した後の重量変化より算出した。なお、得られた化粧用シートは、シート中の水分の揮散を防止するために、アルミニウムとポリエステルフィルムが積層された保存袋に密閉保存された。
【0049】
(比較例1)
実施例1において、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを使用せずに、その替わりにグリセリンを6重量%使用した以外は実施例1と同様にして塗布液を作製した。この塗布液を、片面にシリコーン処理が施されたポリエチレンフィルム(厚み50μm)のシリコーン処理面に塗布した以外は実施例1と同様にして、化粧用シートを作製した。ただし含水率は15〜20重量%であった。得られた化粧用シートは、実施例1と同様に保存された。
【0050】
参考例として市販の化粧用シートを用い、実施例1と比較例1で作製された化粧用シートについて、下記に示すように角栓除去割合を求めた。
すなわち、実施例1、比較例1、参考例の化粧用シートを適当な大きさ(2.5cm×3.0cm)に裁断した。この化粧用シート試験片を、健常な成人ボランティア60名の鼻部の片方に水を適量塗布した後、貼付した。このように貼付した状態で約10分間放置し、化粧用シートが乾燥した後、剥離した。各ボランティアごとに剥離した化粧用シートの皮膚貼付層に付着した角栓の数を数えた。
次に、参考例の化粧用シートを用いて除去された角栓の数を1とし、実施例1又は比較例1の角栓除去割合を求めた。すなわち、下記式に基づいて、実施例1または比較例1の化粧用シートを用いて除去された角栓の数を、参考例の化粧用シートを用いて除去された角栓の数で除して角栓除去割合を求めた。ただし、実施例1及び比較例1の角栓除去割合は得られた値の平均値で示した。

角栓除去割合=実施例1又は比較例1で除去された角栓数/参考例で除去された角栓数

なお、試験は、60人のボランティアを3つのグループに分け、1つ目のグループには小鼻の片方の半分に実施例の化粧用シート、他方の半分に参考例の化粧用シートを貼付し、2つ目のグループには小鼻の片方の半分に比較例の化粧用シート、他方の半分に実施例の化粧用シートを貼付し、3つ目のグループには小鼻の片方の半分に参考例の化粧用シート、他方の半分に比較例の化粧用シートを貼付して試験を行った。
【0051】
上記評価結果として、実施例1の角栓除去割合は1.3であり、比較例1の角栓除去割合は0.95の結果が得られた。すなわち、本発明の化粧用シートである実施例1は、角栓除去割合が参考例の1.3倍の角栓取れ性を示すのに対し、比較例1では、角栓除去割合が0.95であり、参考例とほぼ同等の角栓取れ性しか示さなかった。
【0052】
(比較例2)
実施例1と同様にして塗布液を作製した。この塗布液を、シリコーン処理が施されているポリエチレンフィルム(厚み50μm)の片面に、塗布量が110g/mで均一な厚さとなるように塗布して皮膚貼付層を形成した以外は実施例1と同様にして、化粧用シートを作製した。化粧用シートの含水率は15〜20%であった。得られた化粧用シートは、実施例1と同様に保存された。
【0053】
実施例1、比較例1、及び、比較例2で得られた化粧用シートについて、下記に示す方法でセパレータ剥離力を測定した。その結果を図1のグラフに示す。
【0054】
[セパレータの剥離力の測定方法]
試験用サンプルとして、化粧用シートから幅20mm×長さ10mmの試験片を3枚切り出した。この試験片のセパレータ側の背面を、両面テープを貼着したフェノール樹脂積層板の両面テープ部に、ローラーで圧着した(圧力2kg)。次いで、引張試験機を用いて、試験片の端部を、引張角度90°、引張速度300mm/minの条件下で引っ張って、試験片の剥離力を測定した。なお、剥離力は試験片3枚に関するものの平均値をとった。
【0055】
図1から明らかなように、実施例1の剥離力は438mN/20mmであり、比較例2の剥離力は181mN/20mmであった。すなわち、実施例1の化粧用シートは、セパレータの剥離力が比較例2の剥離力の2.4倍あることが分かった。また、比較例1の化粧用シートはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの層が皮膚貼付層の表面に形成されていないので、セパレータの剥離力は356mN/20mmであった。本願発明の実施例1の化粧用シートは、セパレータ剥離力が比較例1の化粧用シートとほぼ同等であるか、それよりもやや大きく軽剥離の生じないものであることが分かった。
【0056】
すなわち、本発明によれば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが皮膚貼付層の表面に存在していて角栓の除去性の向上が実現できる化粧用シートであって、しかも、製造時に軽剥離が生じずに任意の形状に裁断することができ、かつ、保存中にも軽剥離が生じることのない、使用時まで皮膚貼付層を衛生面、貼着力面において保護することができる化粧用シートを得ることができる。また、皮膚貼付層には、非イオン界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有させているので、皮膚から剥離する際の痛みを緩和させることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の化粧用シートは、角栓除去シート、にきびシート等に有用であり、特に鼻部等の角栓除去シートとして有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、実施例1、比較例1、及び、比較例2の化粧用シートのセパレータ剥離力の測定結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面に、水溶性高分子、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及び、無機充填剤を含有する湿潤粘着性組成物を用いて成る皮膚貼付層を有し、該ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが該皮膚貼付層の表面に層状に存在し、かつ、該皮膚貼付層の表面上に、セパレータとして剥離処理が施されていないシートを有することを特徴とする化粧用シート。
【請求項2】
前記剥離処理が施されていないシートが、プラスチックフィルム及び紙からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1記載の化粧用シート。
【請求項3】
前記プラスチックフィルムが、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び、ポリエステルからなる群から選ばれる少なくとも1つを用いてなることを特徴とする請求項2記載の化粧用シート。
【請求項4】
前記無機充填剤が、シリカ、酸化チタン、チタンブラック、薬用炭、黒酸化鉄、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び、炭酸カルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の化粧用シート。
【請求項5】
前記無機充填剤が、0.01μm以上、50μm以下の平均粒径を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の化粧用シート。
【請求項6】
前記水溶性高分子が、ポリビニルピロリドン及びビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の化粧用シート。
【請求項7】
前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを形成する脂肪酸が、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及び、オレイン酸からなる群から選ばれる1つであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の化粧用シート。
【請求項8】
前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのHLBが12以上であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の化粧用シート。
【請求項9】
前記水溶性高分子が、重量平均分子量が70万未満の水溶性高分子と重量平均分子量が70万以上の水溶性高分子とを含有することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の化粧用シート。
【請求項10】
前記湿潤粘着性組成物が、更に、保湿成分を含有することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載の化粧用シート。
【請求項11】
前記保湿成分が、グリセリン及び/又は多価アルコールであることを特徴とする請求項10記載の化粧用シート。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−51070(P2007−51070A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−235286(P2005−235286)
【出願日】平成17年8月15日(2005.8.15)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】