説明

医用画像処理装置及び3次元画像処理方法

【課題】 取得したシリーズデータに対して複数の3次元画像処理を行う場合に、3次元画像処理を行うためのパラメータ設定を簡易に行う。
【解決手段】 1つのシリーズデータを用いて第1のボリュームデータと第2のボリュームデータを生成し、第1のボリュームデータで設定されたクリッピング領域を第2のボリュームデータにコピーして、該第2のボリュームデータに対して該コピーされたクリッピング領域を設定し、クリッピング領域が設定された第1及び第2のボリュームデータに対して、異なる3次元画像処理をそれぞれ行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像の3次元画像処理に関し、特に、3次元画像処理の設定を簡易に行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(MRI)装置等を含む医用画像処理装置で得られた同一被検体についての一連の複数の断面像(以下「シリーズデータ」という)から3次元データ(ボリュームデータ)を生成し、ボリュームデータに対して3次元画像処理を行って画像を再構成して診断を行う画像診断が行われている。ボリュームデータから画像再構成を行う3次元画像処理方法として、最大値投影法(MIP:Maximum Intensity Projection),最小値投影法(MinIP:Minimum Intensity Projection),ボリュームレンダリング(VR:Volume Rendering),MPR(Multi Planer Reconstruction)などがある。これらの手法では1回の3次元画像処理に際して、クリッピング処理や透明度設定などの複数の付随処理を行う。さらに、医用画像処理装置の高機能化によって、取得したシリーズデータに対して、例えばMIPとVRなどの異なる複数の3次元画像処理を適用し、診断や画像評価に用いることが増加している。そのため、複数の3次元画像処理を行う場合には、各3次元画像処理の付随処理の回数の総和分の操作を必要とし、その操作数が多く煩雑となっている。
【0003】
そこで、特許文献1は、MRI装置で得られた複数の3次元画像データ間で、設定された投影パラメータを共有して、該複数の3次元画像データの各々から投影像をそれぞれ生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-181659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、一つの3次元画像処理方法に関して複数の3次元画像データ間で投影パラメータを共有しているので、複数の異なる3次元画像処理を行う場合には、3次元画像処理毎にその付随処理のための操作を行う必要が生じ、結果として、同じ操作を繰り返す必要が生じる可能性がある。そのため、複数の異なる3次元画像処理を行う場合には、操作数が増大し、その操作が煩雑となる可能性がある。
【0006】
そこで本発明の目的は、上記課題を鑑みてなされたものであり、取得したシリーズデータに対して複数の3次元画像処理を行う場合に、3次元画像処理を行うためのパラメータ設定を簡易に行うことができる医用画像処理装置および3次元画像処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、一つのシリーズデータを用いて第1のボリュームデータと第2のボリュームデータを生成し、第1のボリュームデータで設定されたクリッピング領域を第2のボリュームデータにコピーして、該第2のボリュームデータに対して該コピーされたクリッピング領域を設定し、クリッピング領域が設定された第1及び第2のボリュームデータに対して、異なる3次元画像処理をそれぞれ行うことを特徴とする。
【0008】
具体的には、本発明の医用画像処理装置は、被検体の複数の断層像データを有して成るシリーズデータを取得するシリーズデータ取得手段と、シリーズデータを用いてボリュームデータを生成するボリュームデータ生成手段と、ボリュームデータにおいてクリッピング領域を設定するクリッピング処理手段と、クリッピング領域が設定されたボリュームデータに対して、3次元画像処理を行う3次元画像処理手段と、を備え、ボリュームデータ生成手段は、一つのシリーズデータを用いて第1のボリュームデータと第2のボリュームデータを生成し、クリッピング処理手段は、第1のボリュームデータで設定されたクリッピング領域を第2のボリュームデータにコピーして、該第2のボリュームデータに対して該コピーされたクリッピング領域を設定し、3次元画像処理手段は、クリッピング領域が設定された第1及び第2のボリュームデータに対して、異なる3次元画像処理をそれぞれ行うことを特徴とする。
【0009】
また、本発明3次元画像処理方法は、被検体の複数の断層像データを有して成るシリーズデータを取得するシリーズデータ取得工程と、シリーズデータを用いてボリュームデータを生成するボリュームデータ生成工程と、ボリュームデータにおいてクリッピング領域を設定するクリッピング処理工程と、クリッピング領域が設定されたボリュームデータに対して、3次元画像処理を行う3次元画像処理工程と、を備え、ボリュームデータ生成工程は、一つのシリーズデータを用いて第1のボリュームデータと第2のボリュームデータを生成し、クリッピング処理工程は、第1のボリュームデータで設定されたクリッピング領域を第2のボリュームデータにコピーして、該第2のボリュームデータに対して該コピーされたクリッピング領域を設定し、3次元画像処理工程は、クリッピング領域が設定された第1及び第2のボリュームデータに対して、異なる3次元画像処理をそれぞれ行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に医用画像処理装置及び3次元画像処理方法によれば、パラメータ設定のコピーおよび適切なパラメータの自動生成ができるため、取得したシリーズデータに対して複数の3次元画像処理を行うためのパラメータ設定を簡易に行うことができる。その結果、操作者の操作数を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る医用画像処理装置の一実施例の全体構成を示すブロック図。
【図2】演算処理装置2が備える各機能を表す機能ブロック図であり、(a)図が実施例1に係る機能ブロック図であり、(b)図が実施例2に係る機能ブロック図である。
【図3】本発明の実施例1の処理フローを表すフローチャート。
【図4】本発明の実施例1の処理におけるデータの状態遷移図。
【図5】本発明の実施例1の処理における画面の状態遷移図。
【図6】本発明の実施例2の処理フローを表すフローチャート。
【図7】本発明の実施例2の処理におけるデータの状態遷移図
【図8】本発明の実施例3の処理フローを表すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に従って本発明に係る医用画像処理装置及び3次元画像処理方法の好ましい実施形態について説明する。なお、以下の説明及び添付図面において、同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略することにする。
【0013】
最初に、本発明に係る医用画像処理装置の一例の全体概要を図1に基づいて説明する。図1は、本発明に係る医用画像処理装置の一実施例の全体構成を示すブロック図である。この医用画像処理装置1は、演算処理装置(Central Processing Unit)2、主メモリ3、記憶装置4、表示メモリ5、表示装置6、マウス8に接続されたコントローラ7、キーボード9、ネットワークアダプタ10が、システムバス11によって相互に信号送受可能に接続されて構成される。
【0014】
そして、医用画像処理装置1は、ネットワークアダプタ10を介してネットワーク12に接続し、ネットワーク12を経由して他の医用画像撮像装置13や医用画像データベース14と信号送受可能に接続される。ここで、「信号送受可能に」とは、電気的、光学的に有線、無線を問わずに、相互にあるいは一方から他方へ信号送受可能な状態を示す。
【0015】
演算処理装置2は、各構成要素の動作を制御する装置であり、記憶装置4に格納されるプログラムやプログラム実行に必要なデータを主メモリ3にロードして実行する。
【0016】
記憶装置4は、医用画像撮像装置を用いて取得された医用画像情報、或いは、演算処理装置2が実行するプログラムやプログラム実行に必要なデータを格納する装置であり、具体的にはハードディスク等である。また、記憶装置4は、フレシキブルディスク、光(磁気)ディスク、ZIPメモリ、USBメモリ等の可搬性記録媒体とデータの受け渡しをする装置であっても良い。医用画像情報は、LAN(Local Area Network)等のネットワーク12を介して医用画像撮像装置13や医用画像データベース14から取得される。
【0017】
主メモリ3は、演算処理装置2が実行するプログラムや演算処理の途中経過を記憶するものである。
【0018】
表示メモリ5は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)等の表示装置6に表示するための表示データを一時格納するものである。
【0019】
マウス8やキーボード9は、操作者が医用画像処理装置1に対して操作指示を行う操作デバイスである。マウス8はトラックパッドやトラックボールなどの他のポインティングデバイスであっても良い。コントローラ7は、マウス8の状態を検出して、表示装置6上のマウスポインタの位置を取得し、取得した位置情報等を演算処理装置2へ出力するものである。
【0020】
ネットワークアダプタ10は、医用画像処理装置1をLAN、電話回線、インターネット等のネットワーク12に接続するためのものである。
【0021】
医用画像撮像装置13は、被検体の断層画像等の医用画像情報を取得する装置である。医用画像撮像装置13は、例えば、MRI装置やX線CT装置、超音波診断装置、シンチレーションカメラ装置、PET装置、SPECT装置など、である。
【0022】
医用画像データベース14は、医用画像撮像装置13によって撮像された医用画像情報を記憶するデータベースシステムである。
【0023】
演算処理装置2が後述する3次元画像処理を実行することにより、投影画像が生成され、生成された投影画像は表示装置6に表示される。
【0024】
本発明の医用画像処理装置及び3次元画像処理方法は、一つのシリーズデータを用いて第1のボリュームデータと第2のボリュームデータを生成し、第1のボリュームデータで設定されたクリッピング領域を第2のボリュームデータにコピーして、該第2のボリュームデータに対して該コピーされたクリッピング領域を設定し、クリッピング領域が設定された第1及び第2のボリュームデータに対して、異なる3次元画像処理をそれぞれ行うことを特徴とする。
【0025】
以下、本発明の各実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0026】
次に、本発明の医用画像処理装置及び3次元画像処理方法の実施例1を説明する。本実施例1は、第1のボリュームデータをMIP用ボリュームデータとし、第2のボリュームデータをVR用ボリュームデータとする。そして、MIP処理時にMIP用ボリュームデータにおいて設定したクリッピング領域をVR処理においてをVR用ボリュームデータにコピーし、コピーしたクリッピング領域とヒストグラム解析に基づいて、VR処理に適切な透明度をクリッピング領域を設定したVR用ボリュームデータに設定する。なお、本実施例1では、クリッピング領域は、ボリュームデータの内で3次元画像処理の対象から除外する領域を意味する。以下、図2〜5に基づいて本実施例1を詳細に説明する。
【0027】
(実施例1の処理機能)
最初に、本実施例1の演算処理装置2が備える、本実施例1に係る各演算処理機能を図2(a)に基づいて説明する。図2(a)は、本実施例の演算処理装置2が有する各機能の機能ブロック図である。本実施例1に係る演算処理機能は、処理画面生成部201、シリーズデータロード部202、3次元画像処理部203、クリッピング処理部204、透明度設定部205、画像表示部206、とを有して成る。
【0028】
処理画面生成部201は、3次元画像処理毎にその処理画面を生成して、生成した処理画面を表示装置6に表示させる。処理画面は、3次元画像処理を行うためのGUI(Graphical User Interface)や処理結果画像を表示する画面である。例えば、MIP処理を行うためのMIP処理画面やVR処理を行うためのVR処理画面を生成して表示装置6に表示させる。
【0029】
各処理画面は、左部と中央部と右部を有して成り、左部に3次元画像処理を切り替える切り替えボタンが配置される。中央部には、ボリュームデータに基づいて生成された直交3断面の各画像と、処理画像とが、4分割された各分割領域にそれぞれ表示される。右部は、各種設定を行うための設定領域で、コマンドボタン等が配置される。
【0030】
シリーズデータロード部202は、医用画像撮像装置13又は医用画像データベース14から、シリーズデータを取得して記憶装置4に記憶すると共に、MIP処理画面およびVR処理画面にそれぞれロードする。
【0031】
3次元画像処理部203は、シリーズデータを構成する複数の断層像データを用いてボリュームデータを生成する。具体的には、シリーズデータを構成する各断層像データをスライス位置順序に従ってスライス方向に積み上げて、ボリュームデータとする。そして、生成したボリュームデータを用いて、所定の3次元画像処理を行い、処理結果である画像データを表示メモリ5に呼び出して表示装置6に表示させる。3次元画像処理は、プログラムとして記憶装置4に記憶されており、3次元画像処理部203がそのプログラムを記憶装置4からロードして実行することにより行われる。
【0032】
クリッピング処理部204は、一つのボリュームデータでクリッピング領域の設定処理を行うと共に、設定したクリッピング領域の情報を、他のボリュームデータに適用し、他のボリュームデータにおいても同一のクリッピング領域が設定されたボリュームデータを取得する。
【0033】
透明度設定部205は、クリッピング領域が設定されたボリュームデータ内でヒストグラムを作成し、作成したヒストグラムに基づいて、ボリュームデータのボクセル毎に透明度を算出して設定する。例えば、ヒストグラムの分散値を計算し、最も高いボクセル値から分散値の第1の整数倍を引いた値をボクセル値の下限値とし、この下限値以下のボクセル値を持つボクセルの透明度を1に設定する。また、最も高いボクセル値から分散値の第2の整数倍(ただし第1の整数倍よりも小さな整数倍)を引いたものを上限値とし、この上限値以上のボクセル値をもつボクセルの透明度を0に設定する。上限値と下限値の中間のボクセル値を持つボクセルには、上限値のボクセル値の透明度を0、下限値のボクセル値を1としたときにそのボクセル値に比例して0〜1の透明度を設定する。
【0034】
画像表示部206は、3次元画像処理部203で生成された処理画像のデータを、表示メモリ5に呼び出して、表示装置6に処理画像を表示させる。
【0035】
(本実施例1の処理フロー)
次に、図3〜5を用いて本実施例1の処理フローを説明する。図3は、本実施例1の処理フローを表すフローチャートである。図4は、図3のフローチャートに基づいたデータの状態遷移図を示し、図5は、図3のフローチャートに基づいた画面の状態遷移図を示す。本処理フローは、予めプログラムとして記憶装置4に記憶されており、演算処理装置2が記憶装置4からそのプログラムを読み込んで実行することにより実施される。以下、各ステップの処理の詳細をステップ毎に説明する。
【0036】
ステップS301で、処理画面生成部201は、MIP処理画面およびVR処理画面を生成して表示装置6に表示させる。たとえば図5(a)に示すように、MIP処理を行うためのMIP処理画面501と、VR処理を行うためのVR処理502を表示装置6に表示させる。図5(a)に示す処理画面は、その左部にMIP処理画面501とVR処理画面502の表示を切り替えるMIPボタン511とVRボタン512とを有して成り、それぞれのボタン押下により、MIP処理画面501とVR処理画面502の表示切り替えが行われる。
【0037】
ステップS302で、シリーズデータロード部202は、医用画像撮像装置13によって取得されたシリーズデータ、または医用画像データベース14に保存されているシリーズデータを、MIP処理画面501およびVR処理画面502にそれぞれロードする。例えば、MIP処理画面501又はVR処理画面502上での操作者の操作に従って、シリーズデータロード部202は、医用画像撮像装置13又は医用画像データベース14に格納されているシリーズデータを選択して、同一のシリーズデータをMIP処理画面501およびVR処理画面502にそれぞれロードして、それぞれシリーズデータ401-1,401-2とする。
【0038】
ステップS303で、3次元画像処理部203は、ステップS302でロードされたシリーズデータ401-1,401-2に基づいて、それぞれMIP用ボリュームデータ402-1とVR用ボリュームデータ402-2を生成する。そして、3次元画像処理部203は、MIP用ボリュームデータ402-1に対してMIP処理を実行してMIP画像を得てMIP処理画面501に表示する。同様に、3次元画像処理部203は、VR用ボリュームデータ402-2に対してVR処理を実行してVR画像を得てVR処理画面502に表示する。例えば、図5(b)に示すMIP画像のように、3次元画像処理部203は、 MIP用ボリュームデータ402-1から、その直交3断面の画像(551,552,553)と、所望のMIP処理を行ったMIP画像554をそれぞれ生成し、MIP処理画面501の中央部の4分割領域にそれぞれ表示する。また、3次元画像処理部203は、 VR用ボリュームデータ402-2から、その直交3断面の画像(561,562,563)と、所望のVR処理を行ったVR画像564をそれぞれ生成し、VR処理画面502の中央部の4分割領域にそれぞれ表示する。
【0039】
ステップS304で、クリッピング処理部204は、操作者の操作に基づいて、ボリュームデータに対してクリッピング処理を行う。例えば図4(c)、図5(c)に示すように、操作者によりMIP処理画面501上で入力されたクリッピング領域521-1を、MIP用ボリュームデータ402-1に適用して、MIP用ボリュームデータ402-1からクリッピング領域521-1を除去したボリュームデータ403-1を得る。クリッピング領域の設定は、公知の手法を用いることができる。例えば、操作者は、マウス等でMIP画像554を任意に回転させて、その都度マウス8を用いてクリッピング領域の境界を設定する。このMIP画像の回転と境界設定を複数回繰り返して、設定された各境界で囲まれる領域をクリッピング領域とすることができる。このようなクリッピング領域の設定と設定されたクリッピング領域のMIP用ボリュームデータ402-1への適用は、クリッピング処理部204が記憶装置4に記憶された所定のプログラムを読み出して実行することで行う。
【0040】
そして、3次元画像処理部203は、クリッピング領域521-1を除去したボリュームデータ403-1に対してMIP処理を行い、MIP画像405-1を得る。
【0041】
ステップS305で、クリッピング処理部204は、ステップS304で操作者によりMIP処理画面501上でMIP用ボリュームデータ402-1に対して入力設定されたクリッピング領域をVR用ボリュームデータ402-2にコピーして、該VR用ボリュームデータからコピーされたクリッピング領域を除去したボリュームデータ403-2を得る。また、VR処理画面502上にコピーされたクリッピング領域を表示する。この操作は、MIP処理画面501内で設定されたクリッピング領域のコピーを行うボタン513を押下する、或いは、事前にクリッピング領域のコピーを行うためのリンクを作っておく、等いずれでもよい。図5に示すように、クリッピング処理部204は、MIP処理で設定されたクリッピング領域521-1の情報を取得し、その情報をVR用ボリュームデータ402-2に適用して、クリッピング領域521-2が除去されたボリュームデータ403-2を得る。ここで、クリッピング領域521-1とこのコピーであるクリッピング領域521-2は同一の領域である。
【0042】
ステップS306で、透明度設定部205は、クリッピング領域が除去されたVR用ボリュームデータに対してVR処理における透明度の設定を行い、透明度を設定したVR用ボリュームデータを得る。そのために、透明度設定部205は、クリッピング領域521-2が除去されたVR用ボリュームデータ403-2内でヒストグラムを作成する。このヒストグラムは、例えば高ボクセル値を持つ領域である血管と中程度のボクセル値を持つ領域である脳実質組織で構成される。そして、最も高いボクセル値からヒストグラムの分散値の第1の整数倍を引いたボクセル値を血管のボクセル値の下限値とし、この下限値以下のボクセル値を持つボクセルの透明度を1に設定する。また、最も高いボクセル値からヒストグラムの分散値の第2の整数倍(第1の整数倍より小さい整数倍)を引いたボクセル値を血管のボクセル値の上限値とし、この上限値以上のボクセル値を持つボクセルの透明度を0に設定する。上限値と下限値の間のボクセル値を有するボクセルには、上限値の透明度を0とし下限値の透明度を1としたときにそのボクセル値に比例して0〜1の透明度を設定する。これによって、血管ボクセルの透明度を1以下に設定し、血管以外のボクセルの透明度を1にすることができる。
【0043】
図4(e)に、クリッピング領域521-2が除去されたVR用ボリュームデータ403-2に、更に透明度が設定された例を示す。図4(e)では、透明度1に設定されたボクセルが除外されて、透明度1以外のボクセルのみを表示していることを、円柱状のボリュームデータ404-2として表している。
【0044】
ステップS307で、3次元画像処理部203は、磁気ディスク4の所定のプログラムを呼び出し、ステップS305でクリッピング領域521-2が除去され、ステップS306で透明度が設定されて得られたVR用ボリュームデータ404-2に対してメモリ3でVR処理を施して、VR画像405-2を得る。VR画像405-2上には、例えば、図4(f)に示すように、 VR用ボリュームデータ402-2にコピーされたクリッピング領域が明瞭に表示されることになる。
【0045】
ステップS308で、画像表示部206は、各設定を反映して生成された画像を対応する処理画面にそれぞれ表示する。例えば、画像表示部206は、ステップS304で生成したMIP画像405-1をMIP処理画面501にMIP画像571として表示する。また、ステップS307で生成したVR画像405-2をVR処理画面502にVR画像572(ただし、VR画像564はクリッピング領域の設定及び透明度設定の前のVR画像であり、VR画像572はクリッピング領域をコピーした後に透明度設定が適用された後のVR画像なので、見え方が違う。また、図4はボリュームデータの変遷の説明のための図であり、図5は画面遷移の説明のための図なので、VR画像405-2と572を敢えて異なる画像として記載している。)として表示する。
【0046】
以上までが、本実施例1の処理フローの説明である。
【0047】
以上説明したように本実施例1は、操作者により、MIP用ボリュームデータに設定したクリッピング領域をVR用ボリュームデータにコピーするだけで、VR用ボリュームデータにクリッピング領域の設定を行う。そして、クリッピング領域を設定したVR用ボリュームデータのヒストグラム解析に基づいて、該クリッピング領域を設定したVRボリュームデータの透明度設定を行い、設定した透明度を用いて、クリッピングされたVR用ボリュームデータからVR画像を得る。これにより、複数の3次元画像処理を行う場合に、複数の3次元画像処理間でクリッピング領域の設定を簡易に行うことができる。特に、MIP処理からVR処理へのクリッピング領域の設定が容易になる。その結果、クリッピング領域設定から透明度設定までの操作者の操作数を大幅に低減することができる。
【実施例2】
【0048】
本発明の医用画像処理装置及び3次元画像処理方法の実施例2を説明する。本実施例2は、第1のボリュームデータをVR用ボリュームデータとし、第2のボリュームデータをMIP用ボリュームデータとする。そして、VR処理においてVR用ボリュームデータに透明度設定を適用し、透明度設定によって抽出した領域に膨張処理を施して得られた領域をクリッピング領域として設定し、設定したクリッピング領域をMIP処理におけるMIP用ボリュームデータに適用する例を示す。なお、本実施例2では、クリッピング領域は、3次元画像処理の対象とする領域を意味する。以下、図6〜7に基づいて本実施例2を詳細に説明する。
【0049】
(実施例2の処理機能)
最初に、本実施例2の演算処理装置2が備える、本実施例2に係る各演算処理機能を図2(b)に基づいて説明する。図2(b)は、本実施例2の演算処理装置2が有する各機能の機能ブロック図である。本実施例2に係る各演算処理機能は、図2(a)に示した実施例1の機能ブロックの他に膨張処理部207を備える。
【0050】
膨張処理部207は、起点とするボクセルの回りに、所定の基準を満たすボクセルを追加して領域を拡張していく膨張処理を行う。具体的には、起点ボクセルの透明度と該起点ボクセルに隣接するボクセルの透明度との差が所定の閾値範囲内である場合に、その隣接ボクセルを起点ボクセルと同じ抽出領域とする。そして、抽出領域の境界ボクセルを新たに起点として、この起点ボクセルの透明度と該起点ボクセルに隣接する非注目領域のボクセルの透明度との差が所定の閾値範囲内であれば、この隣接ボクセルを抽出領域に追加する。このようにして、最初の起点ボクセルから所定の範囲内の周囲ボクセルを同じ抽出領域として領域拡張を行う。
【0051】
(本実施例2の処理フロー)
次に、図6〜7を用いて本実施例2の処理フローを説明する。図6は、本実施例2の処理フローを表すフローチャートである。図7は図6のフローチャートに基づいたデータの状態遷移図を示す。本処理フローは、予めプログラムとして記憶装置4に記憶されており、演算処理装置2が記憶装置4からそのプログラムを読み込んで実行することにより実施される。以下、図3に示した実施例1の処理フローと異なるステップの処理のみを詳細に説明する。
【0052】
ステップS301〜S303は図3に示した実施例1の処理ステップと同じなので、説明を省略する。
【0053】
ステップS604で、透明度設定部205は、操作者の操作に基づいてVR用ボリュームデータに対して透明度の設定を行う。図7に示すように、操作者が設定した透明度を、VR処理画面にロードしたシリーズデータに対応したVR用ボリュームデータ402-2に適用して、透明度適用後のVR用ボリュームデータ703-2を得る。操作者による透明度の設定と、設定された透明度のVR用ボリュームデータ402-2への適用は、透明度設定部205が磁気ディスク4の所定のプログラムを実行することで行う。例えば、ボクセル値と透明度との関係を表すグラフ表示を行い、操作者がマウス等を用いてこのグラフを設定・変更することで、透明度設定を行う。そして、VR用ボリュームデータ402-2の各ボクセルのボクセル値と、操作者が設定した関係グラフとに基づいて、該ボクセルの透明度を設定する。
【0054】
ステップ S605で、クリッピング処理部204は、ステップS604で得られた透明度適用後のVR用ボリュームデータ703-2に基づいて、クリッピング領域の生成を行う。そこで、膨張処理部207は、透明度が0に設定されたボクセルに対して膨張処理を適用し、該透明度が0のボクセルの周りの所定範囲の領域を抽出する。そして、クリッピング処理部204は、この膨張処理によって抽出された領域をクリッピング領域704-2とする。図7(d)では、実線の円柱で示す透明度適用後のVR用ボリュームデータ703-2に膨張処理を施して、点線で示すクリッピング領域704-2が抽出されたことを示す。
【0055】
ステップS606において、クリッピング処理部204は、ステップS605で抽出されたクリッピング領域を、MIP用ボリュームデータにコピーして、クリッピングされたMIP用ボリュームデータを生成する。この操作は、VR処理画面502内のクリッピングコピーを行うボタン513を押下する、事前にクリッピングコピーを行うためのリンクを作っておくなどいずれでもよい。図7(e)は、クリッピング処理部204が、ステップS605で抽出したクリッピング領域704-2の情報を取得し、その情報をMIP用ボリュームデータ402-1に適用して、クリッピング処理したMIP用ボリュームデータ705-1を得る場合を示す。図7では、(d)の点線で示す円柱状のクリッピング領域704-2と、(e)の実線で示す円柱状のMIP用ボリュームデータ705-1とは、同じクリッピング領域である。
【0056】
ステップS307は図3に示した実施例1の処理ステップと同じなので、説明を省略する。
【0057】
以上までが、本実施例2の処理フローの説明である。
【0058】
なお本実施例2では、操作者の透明度の変更にも対応する。例えば操作者がステップS604で、スクロールバーなどで透明度を変更した場合でも、随時ステップS605以降の処理を行ってクリッピング領域の自動設定及びMIP処理へのコピーを行っても良い。
【0059】
以上説明したように、本実施例2は、操作者により、VR用ボリュームデータの透明度設定が行われ、該透明度設定に基づいて膨張処理を介してクリッピング領域の抽出を行い、抽出したクリッピング領域をMIP用ボリュームデータにコピーして、MIP処理を行う。これにより、複数の3次元画像処理を行う場合に、複数の3次元画像処理間でクリッピング領域の設定を簡易に行うことができる。特に、VR処理からMIP処理へのクリッピング領域の設定が容易になる。その結果、透明度設定からクリッピング領域設定までの操作者の操作数を大幅に低減することができる。
【実施例3】
【0060】
本発明の医用画像処理装置及び3次元画像処理方法の実施例3を説明する。本実施例3は、前述の実施例1又は実施例2の処理を、MRI装置等の医用画像撮像装置で行う。以下、本実施例3を、図8に示す本実施例3の処理フローを表すフローチャートを用いて説明する。
【0061】
ステップS801で、所定の方法によって、医用画像撮像装置を起動する。
【0062】
ステップS802で、所定の方法によって、複数のシリーズデータの撮像を行う。
【0063】
ステップS803〜S810で、前述の実施例1で説明したステップS301〜S308の処理を医用画像撮像装置で行うものであり、それぞれ、処理内容は実施例1のS301〜S308と同じであるので詳細な説明は省略する。ただし、シリーズデータの取得先を外部の医用画像撮像装置13又は医用画像データベース14ではなく、本医用画像撮像装置によって撮像されたシリーズデータとする。
【0064】
以上までが、本実施例3の処理フローの説明である。なお、上記処理フローは、前述の実施例1の処理内容を医用画像撮像装置で行う場合を説明したが、前述の実施例2の処理内容を医用画像撮像装置で行う場合も同様である。
【0065】
以上説明したように、本実施例3は、操作者は撮像直後に本発明の複数の3次元画像処理を行う。これにより、医用画像撮像装置をシリーズデータを取得した後の複数の異なる3次元画像処理を行う場合にも、操作数を大幅に低減して、所望の複数の3次元画像処理を簡易に行うことができる。
【0066】
以上、本発明の実施例を述べたが、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、前述の各実施例の説明では、異なる3次元画像処理間におけるパラメータコピーおよびパラメータの自動設定を述べたが、これらに限定されず、複数の同じ3次元画像処理の間で、パラメータコピーおよびパラメータの自動設定が実施されてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 医用画像処理装置、2 演算処理装置、3 主メモリ、4 記憶装置、5 表示メモリ、6 表示装置、7 コントローラ、8 マウス、9 キーボード、10 ネットワークアダプタ、11 システムバス、12 ネットワーク、13 医用画像撮像装置、14 医用画像データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の複数の断層像データを有して成るシリーズデータを取得するシリーズデータ取得手段と、
前記シリーズデータを用いてボリュームデータを生成するボリュームデータ生成手段と、
前記ボリュームデータにおいてクリッピング領域を設定するクリッピング処理手段と、
前記クリッピング領域が設定されたボリュームデータに対して、3次元画像処理を行う3次元画像処理手段と、
を備えた医用画像処理装置であって、
前記ボリュームデータ生成手段は、一つのシリーズデータを用いて第1のボリュームデータと第2のボリュームデータを生成し、
前記クリッピング処理手段は、前記第1のボリュームデータで設定されたクリッピング領域を前記第2のボリュームデータにコピーして、該第2のボリュームデータに対して該コピーされたクリッピング領域を設定し、
前記3次元画像処理手段は、前記クリッピング領域が設定された第1及び第2のボリュームデータに対して、異なる3次元画像処理をそれぞれ行うことを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の医用画像処理装置において、
前記第1のボリュームデータはMIP用ボリュームデータであり、前記第2のボリュームデータはVR用ボリュームデータであり、
前記クリッピング領域が設定されたVR用ボリュームデータに基づいて、該VR用ボリュームデータの各ボクセルの透明度を設定する透明度設定手段を備え、
前記3次元画像処理手段は、前記設定された透明度に基づいて、前記VR用ボリュームデータからVR画像を得ることを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項3】
請求項1記載の医用画像処理装置において、
前記第1のボリュームデータはVR用ボリュームデータであり、前記第2のボリュームデータはMIP用ボリュームデータであり、
前記VR用ボリュームデータの内で所定の透明度が設定されたボクセルを起点として膨張処理を行う膨張処理手段を備え、
前記クリッピング領域は、前記膨張処理に基づいてVR用ボリュームデータにおけるクリッピング領域を設定することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の医用画像処理装置において、
医用画像処理装置は、医用画像撮像装置であり、
前記シリーズデータ取得手段は、撮像により得られたシリーズデータを取得することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項5】
被検体の複数の断層像データを有して成るシリーズデータを取得するシリーズデータ取得工程と、
前記シリーズデータを用いてボリュームデータを生成するボリュームデータ生成工程と、
前記ボリュームデータにおいてクリッピング領域を設定するクリッピング処理工程と、
前記クリッピング領域が設定されたボリュームデータに対して、3次元画像処理を行う3次元画像処理工程と、
を備えた3次元画像処理方法であって、
前記ボリュームデータ生成工程は、一つのシリーズデータを用いて第1のボリュームデータと第2のボリュームデータを生成し、
前記クリッピング処理工程は、前記第1のボリュームデータで設定されたクリッピング領域を前記第2のボリュームデータにコピーして、該第2のボリュームデータに対して該コピーされたクリッピング領域を設定し、
前記3次元画像処理工程は、前記クリッピング領域が設定された第1及び第2のボリュームデータに対して、異なる3次元画像処理をそれぞれ行うことを特徴とする3次元画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−165780(P2012−165780A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26627(P2011−26627)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】