説明

医用画像出力装置、医用画像出力方法、及び医用画像出力プログラム

【課題】 医用画像を通じた個人情報の漏洩を生じにくくする技術を提供することにある。
【解決手段】 医用画像の塗り潰し操作に応じて、医用画像内の指定された領域以外の領域を塗り潰す。また、医用画像の出力操作を受け付けると、この出力操作に応じて、医用画像の塗り潰しの有無を判定し、塗り潰しがあると判定された場合にのみ、医用画像を紙や記憶メディアやネットワーク上の他のコンピュータ等の記録媒体に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像の出力を制御する医用画像出力技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像診断装置で被検体を撮影することで作成された医用画像には、多くの個人情報が含まれている。例えば、医用画像に付帯する付帯情報には、医用画像の情報主体である患者の氏名や年齢や性別等の各種個人情報が文字列形式で記述されている。また、画像自体も身体的な特徴を読みとることのできる個人情報である。
【0003】
この個人情報が多く含まれた医用画像は、読影目的、診断目的、カンファレンス目的、研究目的等の様々の状況で閲覧される。個人情報保護の観点からすると、閲覧する目的や状況に応じて医用画像から適切に個人情報を隠蔽する必要がある。
【0004】
そこで、従来より、医用画像に付帯する付帯情報から患者氏名や患者ID等の個人情報に係る情報を取り除く、あるいはこれら情報をダミーに置き換えるという技術が提示されている(例えば、「特許文献1」参照。)。
【0005】
しかし、付帯情報から個人情報を取り除いたとしても、画像自体から読みとれる身体的な特徴から個人を特定することは、医師にとってさほど困難でないため、付帯情報のみを取り除いたとしても十分な個人情報の保護が計れているとは言い難い。
【0006】
【特許文献1】特開2006−18817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、医用画像を通じた個人情報の漏洩を生じにくくする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の第1の態様は、医用画像を記録媒体に出力する医用画像出力装置であって、医用画像を記憶する記憶手段と、前記医用画像上で領域が指定された場合、指定された領域以外を塗り潰し領域として、この塗り潰し領域を構成する前記医用画像の画素値データを所定画素値のデータに置き換える塗り潰しをして前記記憶手段に再記憶させる塗り潰し処理手段と、前記塗り潰された医用画像を前記記憶媒体に出力する出力手段と、を備えること、を特徴とする。
【0009】
上記課題を解決するための本発明の第2の態様は、医用画像を記録媒体に出力する医用画像出力装置であって、医用画像を記憶する記憶手段と、前記医用画像上で領域が指定された場合、指定された領域以外を塗り潰し領域として、この塗り潰し領域を構成する前記医用画像の画素値データを所定画素値のデータに置き換えて前記記憶手段に再記憶させる塗り潰し処理手段と、その後、前記医用画像の出力操作に応じて、前記医用画像の塗り潰しの有無を判定する塗り潰し判定手段と、前記医用画像を前記記録媒体に出力する出力手段と、前記判定手段で塗り潰しがあると判定された場合にのみ、前記医用画像を前記記録媒体に出力するように前記出力手段を制御する出力制御手段と、を備えること、を特徴とする。
【0010】
前記記憶手段は、同一グループの複数枚の医用画像を記憶し、前記画像処理手段は、前記複数枚の医用画像のうち一枚の医用画像内の塗り潰し領域を塗り潰すと、前記複数枚の医用画像のうちの他の医用画像の対応領域も塗り潰すようにしてもよい。
【0011】
前記医用画像の種類を特定する属性情報とその種類で特定される医用画像を出力可能な権限者を表す権限者情報とを対にした出力権限テーブルと、前記権限テーブルに基づき、前記出力操作の対象となった医用画像の出力権限を判定する出力権限判定手段と、をさらに備え、前記出力制御手段は、前記出力権限判定手段で出力権限有りと判定されるか、又は記判定手段で塗り潰し有りと判定された場合に、前記出力手段に前記医用画像を出力させるようにしてもうよい。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の第3の態様は、医用画像を記録媒体に出力する医用画像出力方法であって、前記医用画像上で領域が指定された場合には、指定された領域以外を塗り潰し領域として、この塗り潰し領域を構成する前記医用画像の画素値データを所定画素値のデータに置き換えるステップと、前記医用画像の出力操作がされた場合には、医用画像の塗り潰しの有無を判定するステップと、塗り潰しがあると判定された場合にのみ、前記医用画像を前記記録媒体に出力するステップと、を含むこと、を特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するための本発明の第4の態様は、医用画像を記録媒体に出力する出力手段とデータ通信可能なコンピュータを、医用画像を記憶する記憶手段と、前記医用画像上で領域が指定された場合、指定された領域以外を塗り潰し領域として、この塗り潰し領域を構成する前記医用画像の画素値データを所定画素値のデータに置き換えて前記記憶手段に再記憶させる塗り潰し処理手段と、その後、前記医用画像の出力操作に応じて、医用画像の塗り潰しの有無を判定する塗り潰し判定手段と、前記判定手段で塗り潰しがあると判定された場合にのみ、前記出力手段に医用画像を出力させる出力制御手段と、して機能させること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の態様によれば、医用画像の指定された領域以外の塗り潰し領域はその内容が完全に失われるため、隠蔽したはずの領域が閲覧されてしまうといった事態を防ぐことができる。
【0015】
本発明の第2乃至第4の態様によれば、医用画像の指定された領域以外の塗り潰し領域はその内容が完全に失われるため、この医用画像を出力しても隠蔽したはずの領域が閲覧されてしまうといった事態を防ぐことができ、多くの操作者が出力可能であるという利便性を保ちつつ、個人情報の保護を確実とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る医用画像出力装置の好適な各実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る医用画像出力装置の構成を示すブロック図である。
【0018】
この医用画像出力装置1は、医用画像を出力可能な構成を有している。この医用画像出力装置1は、例えば、医療現場に設置された画像診断装置や画像管理サーバや画像処理装置や画像表示装置に搭載される。この医用画像出力装置1は、CPUやHDDやRAMを少なくとも備えたコンピュータとマンマシンインターフェースと出力装置とで構成される。HDDには、オペレーティングシステムと制御プログラムとが搭載され、RAMにこれらプログラムを適宜展開し、CPUでこの展開したプログラムを解読及び実行することにより、出力機能をはじめ各種機能を発揮する。
【0019】
医用画像は、画像診断装置で被検体を撮影することで作成された被検体内の画像であり、例えばDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格に準拠して医用画像の属性を示す付帯情報と画像データとにより構成されている。画像診断装置は、X線CT装置やMRI装置や超音波診断装置や核医学診断装置等の被検体を撮影する装置である。画像管理サーバは、画像診断装置が作成した医用画像を受信してこの医用画像を保管・管理するコンピュータである。画像表示装置は、画像管理サーバから医用画像を受信して表示するコンピュータである。
【0020】
以下、この医用画像出力装置1が画像処理装置の場合を例にするが、コンピュータを搭載し、又は後述する各構成を回路として搭載し、医用画像を保管可能な装置であれば、後述する医用画像の塗り潰し構成や医用画像の出力構成を適用可能である。
【0021】
この医用画像出力装置1は、医用画像保管部100と画像処理部101と塗り潰し処理部102と権限判定部103と塗り潰し判定部104と出力制御部105と出力部106と操作部107を備える。
【0022】
医用画像保管部100は、主にHDDやRAMを含み構成される。この医用画像保管部100は、医用画像を保管する。
【0023】
画像処理部101は、主にCPUを含み構成される。この画像処理部101は、医用画像保管部100に保管されている医用画像を画像処理する。医用画像の画像処理は、例えば腫瘍の検出等の医用画像の計測や分析である。
【0024】
塗り潰し処理部102は、主にCPUとHDDを含み構成される。この塗り潰し処理部102は、医用画像の画像領域上の一部を塗り潰す。塗り潰し処理部102は、医用画像の塗り潰す領域に対応する画素値データを0の画素値データに書き替える。または、塗り潰し処理部102は、医用画像を構成する各画素値データの平均値を算出し、塗り潰し領域に対応する画素値データをこの平均値を表す画素値データに書き替える。そして、塗り潰し処理部102は、一部を塗り潰した医用画像に対して、塗り潰しが行われたことを表す塗り潰し符号を付す。
【0025】
塗り潰し処理部102は、操作部107から出力される操作信号に従って塗り潰す領域を特定し、この領域を塗り潰す。操作部107は、主にマウスやキーボード等の入力インターフェースによって構成され、医用画像出力装置1の操作者に操作されて、その操作内容に従った操作信号を塗り潰し処理部102に出力する。
【0026】
図2は、この塗り潰し処理部102による医用画像の塗り潰しの一例を示す模式図である。
【0027】
図2の(a)に示すように、医用画像出力装置1は、モニタに医用画像を表示する。操作者が医用画像の表示を参照して操作部107を用いて医用画像の一部領域を指定するように指定領域SRを囲むと、塗り潰し処理部102は、図2の(b)に示すように、この指定領域SR以外の領域を塗り潰し領域PRとして塗り潰す。即ち、操作者が操作部107を用い関心領域を指定すると、その関心領域以外の領域が塗り潰される。
【0028】
塗り潰し処理部102は、領域指定された範囲を、モニタ上の座標値からその座標値に対応する医用画像が記憶されているメモリ上のアドレスに変換すること、塗り潰し領域PRを構成する各画素値データが記憶されているメモリ上のアドレスを特定し、そのアドレスに対応するメモリ上の画素値データを0や平均値に置き換える。
【0029】
図2の(c)に示すように、塗り潰し処理部102は、塗り潰し領域PRを塗り潰すと、この医用画像に塗り潰し符号として透かしパターンCを埋め込む。透かしパターンCの画像データは、予めプログラムの一部としてHDDに記憶されており、塗り潰し処理部102は、この透かしパターンCを読み出して、医用画像の隅の定められた領域を透かしパターンCに置き換える。医用画像の隅の定められた領域は、座標等により特定され、この座標等がHDDにプログラムの一部として予め記憶されている。
【0030】
尚、塗り潰し符号の付加方式としては、透かしパターンCを医用画像に埋め込むほか、塗り潰しを表すデータを医用画像に付帯させてもよい。この場合、塗り潰し処理部102は、塗り潰しを表すデータをプログラムの一部から読み出し、医用画像の付帯情報部分に書き加える。
【0031】
また、図3は、この塗り潰し処理部102による医用画像の塗り潰しの変形例を示す模式図である。
【0032】
図3に示すように、この塗り潰し処理部102は、医用画像保管部100に塗り潰し処理の対象となった医用画像と同一のグループの他の医用画像が存在すると、その医用画像も同様に塗り潰す。例えばマルチスライスCTスキャン等により一度の検査で複数の医用画像が作成される場合がある。この一度の検査で作成された医用画像には、同一のグループを表すシリーズ情報が付帯する。尚、この医用画像のグループを特定するシリーズ情報は、被検体内の撮影部位毎に分けられる場合もある。
【0033】
塗り潰し処理部102は、塗り潰し対象となっている医用画像の付帯情報からシリーズ情報を読み出す。そして、この読み出したシリーズ情報を用いて医用画像保管部100を検索し、同一のシリーズ情報が付帯する医用画像を読み出す。塗り潰し処理部102は、読み出した同一グループの各医用画像において塗り潰し対象となっている医用画像で特定された塗り潰し領域PRに対応する画像領域を、これら各医用画像の塗り潰し領域PRとして構成する画素値データを0や平均値に置き換える。
【0034】
権限判定部103は、主にCPUとHDDを含み構成される。この権限判定部103は、操作部107を用いて医用画像の出力操作が行われると、医用画像出力装置1を操作する操作者の出力権限を判定する。この権限判定部103は、出力権限を判定するために、予め出力権限テーブル103aを有している。この出力権限テーブル103aは、プログラムの一部として予めHDDに記憶されている。
【0035】
図4は、この出力権限テーブル103aの一例を表す模式図である。
【0036】
出力権限テーブル103aは、医用画像を出力可能な権限者を表す権限者情報と、その権限者が出力可能な医用画像の属性を表す属性情報とを対にして複数記憶している。属性情報は、出力可能な医用画像の種類を特定する情報であり、例えば医用画像の情報主体である患者の患者IDである。権限者情報は、医用画像出力装置1を利用するときに操作部107を用いて入力されるログイン者情報と対応する。この出力権限テーブル103aは、操作部107を用いて入力することで作成若しくは追加又は修正される。
【0037】
権限判定部103は、操作部107を用いて医用画像が指定され、その医用画像の出力操作がなされると、指定された医用画像に付帯する付帯情報から属性情報と同一種類の情報、例えば患者IDを読み出す。さらに、権限判定部103は、医用画像出力装置1を操作している操作者を表すログイン情報を取得する。そして、権限判定部103は、この読み出した患者IDとログイン情報との組み合わせが出力権限テーブル103aに存在するか否か検索する。
【0038】
権限判定部103は、出力権限テーブル103aに読み出した患者IDとログイン情報との組み合わせが存在すると、権限有りを表す情報を返し、存在しなければ、権限無しを表す情報を返す。
【0039】
例えば、患者IDとこの患者IDで表される患者の主治医を表す権限者情報との組み合わせが出力権限テーブル103aに入力される。
【0040】
塗り潰し判定部104は、主にCPUを含み構成される。この塗り潰し判定部104は、操作部107を用いて指定された出力要求された医用画像の塗り潰しを判定する。塗り潰し判定部104は、出力要求された医用画像に塗り潰し符号が付加されていれば、塗り潰し有りを表す情報を返し、塗り潰し符号が付加されていなければ、塗り潰し無しを表す情報を返す。
【0041】
塗り潰し符号が透かしパターンCの場合、塗り潰し判定部104は、医用画像の隅の定められた領域を読み出し、透かしパターンCを当てはめる。透かしパターンCと医用画像の隅の定められた領域とが一致すれば、塗り潰し符号が付加されていると判断する。透かしパターンCと医用画像の隅の定められた領域とが一致しなければ、塗り潰し符号が付加されてないと判断する。
【0042】
塗り潰し符号が医用画像に付帯する塗り潰しを表すデータである場合には、この塗り潰しを表すデータが付帯するデータ列を参照して、この塗り潰しを表すデータが存在するか否かによって塗り潰し符号の付加を判断する。
出力制御部105は、主にCPUを含み構成される。この出力制御部105は、操作部107を用いて医用画像の出力操作がなされると、その医用画像の出力を制御する。出力制御部105は、権限判定部103の判定により、権限有りを表す情報が返され、または塗り潰し判定部104から塗り潰し有りを表す情報が返されていると、医用画像を出力部106に出力させる。また、権限判定部103の判定により、権限無しを表す情報が返され、かつ塗り潰し判定部104から塗り潰し無しを表す情報が返されていると、医用画像の出力を保留する。
【0043】
出力制御部105は、医用画像の出力を保留すると、塗り潰し処理部102を起動し、操作部107を用いて領域指定を可能な状態に遷移させる。
【0044】
出力部106は、医用画像を出力する装置である。この出力部106は、印刷用紙に医用画像を形成するプリンタ106aや、可搬記録媒体に医用画像を記憶させる書込ドライブ106bや、ネットワーク上のサーバ等の他のコンピュータに医用画像を送信する通信インターフェース106cである。印刷用紙には、紙やフィルムを含む。プリンタ106aは、インクジェット方式であっても電子写真方式であっても熱転写方式であってもよい。可搬記録媒体は、フロッピーディスク(登録商標)やリムーバブルHDD等の磁気記憶メディア、MOやZIPやCDやDVDやHD DVD等の光記憶メディア、USBメモリ等の半導体メモリであり、持ち運びが可能な大きさ及び形状を有するものである。
【0045】
尚、出力部106は、可搬記録媒体や他のコンピュータに医用画像を出力する場合、医用画像のうち、付帯情報部分は除いて出力するようにしてもよい。
【0046】
図5は、このような医用画像出力装置1の医用画像出力動作を示すアクティビティ図である。
【0047】
まず、操作者が操作部107を用いて、出力する医用画像を選択すると(S01)、権限判定部103は、出力権限の判断を行う(S02)。
【0048】
図6は、この出力権限の判断動作を示すフローチャートである。
【0049】
権限判定部103は、選択された医用画像から患者ID等の予め定められた属性情報を読み出し(S21)、医用画像出力装置1から操作者のログイン情報を読み出す(S22)。
【0050】
そして、権限判定部103は、出力権限テーブル103aからこの属性情報とログイン情報の組み合わせを検索する(S23)。この組み合わせが存在すれば(S24,Yes)、権限判定部103は、権限有りを表す情報を返す(S25)。
【0051】
一方、出力権限テーブル103aにこの属性情報とログイン情報の組み合わせが存在しなければ(S25,No)、権限判定部103は、権限無しを表す情報を返す(S26)。
【0052】
権限有り若しくは無しの情報を返すと、権限判定部103の処理は終了し、図5に示す医用画像出力装置1全体の医用画像出力動作に戻る。
【0053】
医用画像出力装置1全体の医用画像出力動作に戻り、権限有りを表す情報が返されることで、出力権限ありと判断されると(S02,Yes)、出力制御部105は、選択された医用画像を読み出して(S03)、出力部106に読み出した医用画像を出力させる(S04)。
【0054】
一方、権限無しを表す情報が返されることで、出力権限無しと判断されると(S02,No)、塗り潰し判定部104は、選択された医用画像を解析して塗り潰しが存在するか否かを判断する(S05)。
【0055】
図7は、この塗り潰し判定の動作を示すフローチャートである。
【0056】
塗り潰し判定部104は、選択された医用画像に塗り潰し符号が存在するか判定する(S31)。塗り潰し判定部104は、塗り潰し符号が存在すれば(S31,Yes)、塗り潰し有りを表す情報を返す(S32)。一方、選択された医用画像に塗り潰し符号が存在しなければ(S31,No)、塗り潰し判定部104は、塗り潰し無しを表す情報を返す(S33)。
【0057】
塗り潰し有り若しくは無しの情報を返すと、塗り潰し判定部104の処理は終了し、図5に示す医用画像出力装置1全体の医用画像出力動作に戻る。
【0058】
医用画像出力装置1全体の医用画像出力動作に戻り、塗り潰し有りを表す情報が返されることで塗り潰しがあると判定されると(S05,Yes)、出力制御部105は、選択された医用画像を読み出して(S03)、出力部106に読み出した医用画像を出力させる(S04)。
【0059】
一方、塗り潰し無しを表す情報が返されることで塗り潰しがないと判定されると(S05,No)、塗り潰し処理部102は、塗り潰し処理を行う(S06)。
【0060】
図8は、塗り潰し処理部102の塗り潰し処理の動作を示すフローチャートである。
【0061】
まず、塗り潰し処理部102は、選択された医用画像を表示したまま、塗り潰しを施すメッセージをモニタに表示させる(S41)。
【0062】
操作者が操作部107を用いて塗り潰し処理の実行に対応するボタンを押下する等の塗り潰し処理開始の操作を行い(S42,Yes)、続いて選択された医用画像上に指定領域SRを描くと(S43)、塗り潰し処理部102は、その指定領域SR以外の領域を塗り潰し領域PRとして塗り潰す(S44)。尚、ボタン押下と領域の指定は逆順であってもよい。さらに、塗り潰し処理部102は、この塗り潰し処理をした医用画像に塗り潰し符号を付す(S45)。塗り潰し処理開始の操作が行われなければ(S42,No)、この一連の処理は終了する。
【0063】
塗り潰し処理部102は、表示された医用画像の塗り潰し処理が終了すると、塗り潰し処理をした医用画像の付帯情報からシリーズ情報を読み出す(S46)。シリーズ情報を読み出すと、塗り潰し処理部102は、読み出したシリーズ情報が付帯する他の医用画像を医用画像保管部100から読み出す(S47)。そして、読み出した医用画像の、塗り潰し処理をした医用画像の塗り潰し領域PRに対応する領域を塗り潰し(S48)、塗り潰し符号を付す(S49)。
【0064】
塗り潰しが終了すると、図5に示す医用画像出力装置1全体の医用画像出力動作に戻る。
【0065】
医用画像出力装置1全体の医用画像出力動作に戻り、出力制御部105は、選択された医用画像を読み出して(S03)、出力部106に読み出した医用画像を出力させる(S04)。
【0066】
以上によりこの医用画像出力装置1の動作は終了する。この出力処理を行う前に、操作者が操作部107を用いて塗り潰し処理の実行に対応するボタンを押下する等の塗り潰し処理開始の操作を行われると(S42,Yes)、出力処理とは関係なく、S43〜S49の処理を行い、領域指定された医用画像の塗り潰し処理及び塗り潰し符号の付加と、この医用画像と同一のグループの他の医用画像の塗り潰し処理及び塗り潰し符号の付加を行う。操作部107を用いて領域指定していない他の医用画像についての塗り潰し処理及び塗り潰し符号の付加を行わない設定の入力が予めなされていると、S46〜S49は省略される。
【0067】
尚、本実施形態では、医用画像の出力操作がなされると、その医用画像に対して権限判定及び塗り潰し判定を行うようにした。そのほかにも、一度医用画像の出力ジョブをキューに加えておき、この出力ジョブの実行順になってから権限判定及び塗り潰し判定を行うようにしてもよい。そして、出力権限がなく、かつ塗り潰し符号がなければ、この出力ジョブに塗り潰し要を示すフラグを付加し、この出力ジョブの実行を保留する。
【0068】
そして、操作者が操作部107を用いて塗り潰し処理の実行に対応するボタンを押下すると、塗り潰し処理部102は、塗り潰し要を示すフラグが付加された出力ジョブに対応する医用画像をまとめて読み出してモニタに表示し、表示した各医用画像について塗り潰し処理を受け付ける。塗り潰しが終了すれば、塗り潰し処理部102は、出力ジョブに付加された塗り潰し要を示すフラグを取り消して、塗り潰し済みを示すフラグを付加する。塗り潰し済みを示すフラグがあれば、その出力ジョブについては権限判定及び塗り潰し判定を行うことなく実行する。
【0069】
このように、本実施形態の医用画像出力装置1では、医用画像の画素値データ自体を塗り潰しの画素値に置き換えることで医用画像の指定領域以外を塗り潰しているため、医用画像出力装置1や出力先で医用画像のデータを解析されて隠蔽した領域を閲覧されることがなくなり、この医用画像を閲覧する者の利便性を保ちつつ、個人情報の保護を確実におこなうことができる。
【0070】
尚、例えば、モニタに表示している医用画像の関心領域以外の部分にビットマップをオーバーレイで表示し、関心領域以外の部分を隠す仕組みを考えることもできるが、医用画像のデータ自体にはそのまま関心領域以外の部分のデータが隠蔽されることなく存在しているため、印刷用紙やメディアに出力すれば、関心領域以外も隠蔽されることなく閲覧ができてしまう。出力が可能な権限を設定することも考えられるが、医師や研究者の利便性を確保するためには、より多くの操作者が医用画像を印刷用紙やメディアに出力できるようにしなければならないため、権限設定が煩雑になるか、又は権限設定の実効性がなくなってしまう。しかし、本実施形態の医用画像出力装置1では、医用画像の指定された領域以外の塗り潰し領域はその内容が完全に失われるため、この医用画像を出力しても隠蔽したはずの領域が閲覧されてしまうといった事態を防ぐことができ、多くの操作者が出力可能であるという利便性を保ちつつ、個人情報の保護を確実とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本実施形態に係る医用画像出力装置の構成を示すブロック図である。
【図2】医用画像の塗り潰しの一例を示す模式図である。
【図3】医用画像の塗り潰しの変形例を示す模式図である。
【図4】出力権限テーブルの一例を表す模式図である。
【図5】医用画像出力装置の医用画像出力動作を示すフローチャートである。
【図6】出力権限の判断動作を示すフローチャートである。
【図7】塗り潰し判定の動作を示すフローチャートである。
【図8】塗り潰し処理の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0072】
1 医用画像出力装置
100 医用画像保管部
101 画像処理部
102 塗り潰し処理部
103 権限判定部
103a 出力権限テーブル
104 塗り潰し判定部
105 出力制御部
106 出力部
106a プリンタ
106b 書込ドライブ
106c 通信インターフェース
C 透かしパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像を記録媒体に出力する医用画像出力装置であって、
医用画像を記憶する記憶手段と、
前記医用画像上で領域が指定された場合、指定された領域以外を塗り潰し領域として、この塗り潰し領域を構成する前記医用画像の画素値データを所定画素値のデータに置き換えて前記記憶手段に再記憶させる塗り潰し処理手段と、
を備えること、
を特徴とする医用画像出力装置。
【請求項2】
医用画像を記録媒体に出力する医用画像出力装置であって、
医用画像を記憶する記憶手段と、
前記医用画像上で領域が指定された場合、指定された領域以外を塗り潰し領域として、この塗り潰し領域を構成する前記医用画像の画素値データを所定画素値のデータに置き換えて前記記憶手段に再記憶させる塗り潰し処理手段と、
前記医用画像の出力操作に応じて、前記医用画像の塗り潰しの有無を判定する塗り潰し判定手段と、
前記医用画像を前記記録媒体に出力する出力手段と、
前記判定手段で塗り潰しがあると判定された場合にのみ、前記医用画像を前記記録媒体に出力するように前記出力手段を制御する出力制御手段と、
を備えること、
を特徴とする医用画像出力装置。
【請求項3】
前記塗り潰し処理手段は、前記医用画像を塗り潰すと、塗り潰した医用画像に塗り潰し済みを表す塗り潰し符号を付加し、
前記塗り潰し判定手段は、前記塗り潰し符号の有無に基づき、前記医用画像の塗り潰しの有無を判定すること、
を特徴とする請求項2記載の医用画像出力装置。
【請求項4】
前記塗り潰し処理手段は、前記塗り潰し符号として、医用画像に透かしパターンを埋め込むこと、
を特徴とする請求項3記載の医用画像出力装置。
【請求項5】
前記記憶手段は、
同一グループの複数枚の医用画像を記憶し、
前記塗り潰し処理手段は、前記複数枚の医用画像のうち一枚の医用画像内の塗り潰し領域を塗り潰すと、前記複数枚の医用画像のうちの他の医用画像の対応領域も塗り潰すこと、
を特徴とする請求項2又は3記載の医用画像出力装置。
【請求項6】
前記塗り潰し処理手段は、
前記塗り潰し領域を、0の画素値又は前記医用画像の平均画素値に置き換えること、
を特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載の医用画像出力装置。
【請求項7】
前記医用画像の属性を表す属性情報とその属性の医用画像を出力可能な権限者を表す権限者情報とを対にした出力権限テーブルと、
前記権限テーブルに基づき、前記出力操作の対象となった医用画像の出力権限を判定する出力権限判定手段と、
をさらに備え、
前記出力制御手段は、前記出力権限判定手段で出力権限有りと判定されるか、又は記判定手段で塗り潰し有りと判定された場合に、前記出力手段に前記医用画像を出力させること、
を特徴とする請求項2乃至6の何れかに記載の医用画像出力装置。
【請求項8】
前記出力手段は、プリンタであり、前記記録媒体としてフィルムを含む印刷用紙に出力すること、
を特徴とする請求項2乃至7の何れかに記載の医用画像出力装置。
【請求項9】
前記出力手段は、メディア書込ドライブであり、前記記録媒体として可搬記録媒体に出力すること、
を特徴とする請求項2乃至7の何れかに記載の医用画像出力装置。
【請求項10】
前記出力手段は、通信インターフェースであり、前記記録媒体としてネットワーク上の他の端末に出力すること、
を特徴とする請求項2乃至7の何れかに記載の医用画像出力装置。
【請求項11】
医用画像を記録媒体に出力する医用画像出力方法であって、
前記医用画像上で領域が指定された場合、指定された領域以外を塗り潰し領域として、この塗り潰し領域を構成する前記医用画像の画素値データを所定画素値のデータに置き換えるステップと、
前記医用画像の出力操作に応じて、医用画像の塗り潰しの有無を判定するステップと、
塗り潰しがあると判定された場合にのみ、前記医用画像を前記記録媒体に出力するステップと、
を含むこと、
を特徴とする医用画像出力方法。
【請求項12】
塗り潰しがないと判定すると、医用画像内の指定された領域以外の領域の塗り潰しを促すステップをさらに含むこと、
を特徴とする請求項11記載の医用画像出力方法。
【請求項13】
医用画像を記録媒体に出力する出力手段とデータ通信可能なコンピュータを、
医用画像を記憶する記憶手段と、
前記医用画像上で領域が指定された場合、指定された領域以外を塗り潰し領域として、この塗り潰し領域を構成する前記医用画像の画素値データを所定画素値のデータに置き換えて前記記憶手段に再記憶させる塗り潰し処理手段と、
前記医用画像の出力操作に応じて、医用画像の塗り潰しの有無を判定する塗り潰し判定手段と、
前記判定手段で塗り潰しがあると判定された場合にのみ、前記出力手段に医用画像を出力させる出力制御手段と、
して機能させること、
を特徴とする医用画像出力プログラム。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−18097(P2009−18097A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−184498(P2007−184498)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】