医用画像表示装置
【課題】大腰筋領域を精度良く抽出することができる画像処理技術を提供することを目的とする。
【解決手段】
被検体のへそ位置で撮影した断層像であって、へそ領域、大腰筋を含む軟部組織、及び脊椎領域が撮影された医用画像から脊椎領域を二値化処理で抽出し(S21)、前記大腰筋を含む軟部組織を抽出するために所定の閾値を設定して二値化処理で抽出し(S22)、前記断層像を被検体の左右方向に分割する対称中心線を設定し対称中心線を基準に対称となる位置に存在する画素点のみを抽出し(S23)、脊椎領域の左右にある領域として近似的大腰筋領域を抽出し(S24)、この近似的大腰筋領域に基づいて、二値化医用画像から対称中心線を基準として非対称となる位置に存在する画素点を含む全大腰筋領域を抽出する(S25)
【解決手段】
被検体のへそ位置で撮影した断層像であって、へそ領域、大腰筋を含む軟部組織、及び脊椎領域が撮影された医用画像から脊椎領域を二値化処理で抽出し(S21)、前記大腰筋を含む軟部組織を抽出するために所定の閾値を設定して二値化処理で抽出し(S22)、前記断層像を被検体の左右方向に分割する対称中心線を設定し対称中心線を基準に対称となる位置に存在する画素点のみを抽出し(S23)、脊椎領域の左右にある領域として近似的大腰筋領域を抽出し(S24)、この近似的大腰筋領域に基づいて、二値化医用画像から対称中心線を基準として非対称となる位置に存在する画素点を含む全大腰筋領域を抽出する(S25)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像診断表示装置に係り、特に、被検体の断層像から大腰筋領域を抽出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
大腰筋の体積は年齢と共に縮小し、わずかな突起にもつまずいてころぶようになる。縮小した場合は受診者に知らせ、リハビリを促す必要がある。この場合、CT画像を用いて大腰筋領域を抽出するのが便利であり、医師要求が高い。なお、大腰筋の体積は、へその写っているスライス画像の大腰筋面積と相関があり、医師はこの面積測定で代用する場合が多い。
【0003】
ここで、大腰筋について図17に基づき説明する。大腰筋は、脊椎を挟んで左右に位置する。この左右の大腰筋A、Bは他の周辺の臓器A、B(例えば腎臓)と接触していているため、単純なしきい値処理では抽出できない。
【0004】
そこで、医用画像から大腰筋領域を抽出する技術の一つとして、例えば特許文献1には、二値化画像の部分的な出っ張り領域を削除する画像処理技術が開示されている。特許文献1の画像処理技術は、図18(a)のように、複数の画素点からなるx軸に平行な点列a1、a2、a3、a4、a5を設定し、a1=a5=0 ならa2=a3=a4=0とする。また、複数の画素点からなるy軸に平行な点列b1、b2、b3、b4を設定し、b1=b4=0ならb2=b3=0とする。これにより、点列a1、a2、a3、a4、a5及び点列b1、b2、b3、b4を切断または削除し、二値化画像の部分的な出っ張り領域を削除する。
【特許文献1】特開2002-325761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の画像処理技術により二値化画像の部分的な出っ張り領域を削除すると、図18(b)に示すように、切断個所が直線状になるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、大腰筋領域を精度良く抽出することができる画像処理技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために本発明に係る医用画像表示装置は、被検体のへそ位置で撮影した断層像であって、へそ領域、大腰筋を含む軟部組織、及び脊椎領域が撮影された医用画像を取得する画像取得手段と、前記取得された医用画像に所定の閾値を設定して前記大腰筋を含む軟部組織を抽出した抽出画像を生成する手段と、前記抽出画像を所望に分割する対称中心線を設定する手段と、前記抽出画像において、前記対称中心線を基準に対称となる位置に存在する画素点のみを抽出することによって近似的大腰筋領域を抽出する第一抽出手段と、前記近似的大腰筋領域に基づいて、前記抽出画像から前記対称中心線を基準として非対称となる位置に存在する画素点を含む全大腰筋領域を抽出する第二抽出手段と、前記第二抽出手段によって抽出された前記全大腰筋領域を表示する表示手段と、を備える。
【0008】
また、前記第二抽出手段は、前記近似的大腰筋領域の輪郭線の形状に沿って1ラインずつ拡張し、前記ライン上の画素点が前記所定の閾値を満たす場合には前記画素点を大腰筋領域として抽出する。
【0009】
また、前記表示手段に表示された前記抽出画像のうち所定の領域を領域指定するための位置座標入力手段を、更に備える。
【0010】
また、前記第二抽出手段によって抽出された前記対称中心線によって分割される全大腰筋領域の面積を算出して比較し、面積の差が所望の範囲にあるか否かを判定する面積差判定手段と、前記面積差判定手段が、前記面積の差が所望の範囲に無いと判定した場合に前記面積の差が所望の範囲に無い旨を通知する通知手段と、を更に備え、前記通知がされた場合に、前記位置座標入力手段により前記抽出画像に含まれる大腰筋領域を指定して抽出する。
【0011】
上述の「第二抽出手段」は、前記抽出画像において大腰筋領域が隣り合う軟部組織と接している場合に、前記近似的大腰筋領域の傾き角度を算出し、前記二値化画像に含まれる大腰筋領域の輪郭線上の任意の2点を通り、かつ前記傾き角度に基づいて決定された傾き角度を有する線分を設定し、該線分の長さが極小となる位置を算出し、該位置より前記大腰筋領域の外側であって前記傾き角度を有する所定の傾斜領域を削除して抽出してもよい。
【0012】
また「第二抽出手段」は、前記抽出画像において大腰筋領域が隣り合う軟部組織と接している場合に、前記大腰筋領域に接する軟部組織の重心から同心円を設定し、該同心円上の任意の2点において画素値が0となる場合に前記任意の2点を結ぶ円弧上の画素点の画素値を0にすることにより前記軟部組織と前記大腰筋領域と分離し、更に、前記近似的大腰筋領域の傾き角度を算出し、前記分離された大腰筋領域の輪郭線上の任意の2点を通り、かつ前記傾き角度に基づいて決定された傾き角度を有する線分を設定し、該線分上において前記閾値を満たす画素点を大腰筋領域として抽出してもよい。
【0013】
また「医用画像表示装置」は、前記医用画像から脊椎領域を抽出する脊椎抽出手段を更に備えてもよい。そして、「第一抽出手段」は、前記対称中心線を基準に対称となる位置に存在する画素点のうち、脊椎抽出手段が抽出した脊椎領域の両側に位置する画素点を近似的大腰筋領域として抽出してもよい。
【0014】
更に、脊椎領域抽出手段により抽出された前記脊椎領域が所望の条件を満たさない場合に、前記画像取得手段は、前記断層像に相当する被検体の部位付近を撮影した他の医用画像を取得し、該他の医用画像に基づいて全大腰筋領域の抽出処理を行ってもよい。
【0015】
また、前記脊椎領域抽出手段により抽出された前記脊椎領域が所望の条件を満たさない場合に、前記位置座標入力手段により前記抽出画像に含まれる脊椎領域を指定して抽出してもよい。
【0016】
また、前記脊椎領域抽出手段により抽出された前記脊椎領域が所望の条件を満たさない場合に、前記画像取得手段に前記被検体の断層像を撮影した他の医用画像を取得させ該他の医用画像に基づいて脊椎領域を抽出する処理を行なうか、又は前記位置座標入力手段により前記抽出画像に含まれる脊椎領域を指定して抽出するか、を操作者に選択させるための選択手段を更に備えてもよい。
【0017】
また、前記脊椎領域抽出手段により抽出された前記脊椎領域が所望の条件を満たさず、大腰筋領域が脊椎領域の一部と隣接して広領域を形成する場合に、前記脊椎抽出手段が抽出した脊椎領域の重心及び前記断層像に写ったへそ領域の重心を通る直線または前記断層像における体表輪郭線の中心線上にあって、前記脊椎抽出手段が抽出した脊椎領域の重心から所定の範囲にある画素点を仮中心点として抽出し、該仮中心点から前記広範囲領域の輪郭線上の画素点までの距離を算出することにより前記広範囲領域の重心を算出し、該広範囲領域の重心を本中心点とする同心円を設定し、該同心円上にある任意の2点の画素値が0である場合に、前記任意の2点を結ぶ円弧上の画素点の画素値を0にすることにより、前記大腰筋領域と前記脊椎領域の一部とを分離する脊椎領域分離手段を更に備えてもよい。
【0018】
また、前記脊椎領域抽出手段により抽出された前記脊椎領域が所望の条件を満たさず、大腰筋領域が脊椎領域の一部と隣接して広領域を形成する場合に、前記第一抽出手段が抽出した前記近似的大腰筋領域の傾き角度を算出し、前記広範囲領域の輪郭線上の任意の2点を通りかつ前記傾き角度に基づいて決定される傾き角度を有する線分を設定し、該線分の長さが極小となる位置において前記広範囲領域を分割することにより前記大腰筋領域と前記脊椎領域の一部とを分離する脊椎領域分離手段を更に備えてもよい。
【0019】
また、前記第二抽出手段が抽出した前記全大腰筋領域から、該全大腰筋領域に含まれる脂肪領域の面積を算出する脂肪面積算出手段を更に備えてもよい。
【0020】
また、前記第二抽出手段が抽出した前記全大腰筋領域の面積を算出し、該全大腰筋領域の面積から前記脂肪面積算出手段が算出した前記脂肪領域の面積を減算処理し、減算後の大腰筋領域の面積を算出する大腰筋面積算出手段を更に備えてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、大腰筋の非対称性を利用して近似的大腰筋領域を算出し、更に近似的大腰筋領域に基づいて医用画像に含まれる大腰筋領域を精度良く抽出することができる。そして、抽出した大腰筋領域を利用して、大腰筋の面積を求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面に従って本発明に係る医用画像表示装置の好ましい実施の形態について詳説する。なお、発明の実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0023】
図1は、発明の一実施の形態に係る医用画像表示システム1の構成を示すハードウェア構成図である。
【0024】
図1の医用画像表示システム1は、X線CT装置2と、MR装置3と、X線CT装置2及びMR装置3が撮影して得た医用画像を格納する画像データベース4と、医用画像を表示する医用画像表示装置10とを備え、X線CT装置2、MR装置3、画像データベース4、及び医用画像表示装置10は、LAN5等のネットワークにより互いに接続される。
【0025】
医用画像表示装置10は、主として各構成要素の動作を制御する中央処理装置(CPU)11と、装置の制御プログラムが格納されたり、プログラム実行時の作業領域となったりする主メモリ12と、オペレーティングシステム(OS)、周辺機器のデバイスドライブ、医用画像から大腰筋領域を抽出する処理等を行うためのプログラムを含む各種アプリケーションソフト等が格納される磁気ディスク13と、表示用データを一時記憶する表示メモリ14と、この表示メモリ14からのデータに基づいて画像を表示するCRTモニタや液晶モニタ等のモニタ15と、キーボード16と、位置座標入力装置としてのマウス17と、マウス17の状態を検出してモニタ15上のマウスポインタの位置やマウス17の状態等の信号をCPU11に出力するコントローラ18と、上記各構成要素を接続する共通バス19とを備える。
【0026】
本実施の形態においては、医用画像表示装置10は、LAN5を介して画像データベース4から医用画像を読み出すが、医用画像表示装置10に接続された記憶装置、例えばFDD、CD−RWドライブ、MOドライブ、ZIPドライブ等から医用画像を読み込んでも良い。また、LAN5を経由してX線CT装置2やMR装置3から直接医用画像を取得してもよい。
【0027】
次に、図2乃至5、図15及び16に基づいて、本実施の形態に係る医用画像表示装置10を用いて医用画像から大腰筋領域を抽出する手順について説明する。図2は、大腰筋領域の抽出手順を示すフローチャートである。図3は、ステップS23の処理結果画像であって、二値化画像に対称中心線を設定し、対称性を満たした画素のみを残す処理により残った領域を示す模式図である。図4(a)はステップS24の処理結果画像であって、脊椎の左右に隣接領域として、近似的大腰筋領域を抽出した状態を示す模式図であり、図4(b)は図4(a)の近似的大腰筋領域に領域拡張法を適用して大腰筋領域を求める方法を示す模式図である。図5(a)は、大腰筋領域と脊椎領域とを分離するための第一の処理方法をしめす模式図であり、図5(b)は大腰筋領域と脊椎領域とを分離するための第二の処理方法をしめす模式図である。図15は、脊椎領域が鮮明に写った原画像例、図16は、脊椎領域が不鮮明に写った原画像例を示す。以下図2の各ステップ順に説明する。
【0028】
(ステップS21)
原画像(例えば図15、16に示す被検体のへそ位置で撮影した断層像を示す医用画像)から脊椎のCT値に基づいて閾値(例えば、CT値がt2より大)を設定して閾値処理し、脊椎領域を二値化抽出する(S21)。予め、脊椎の一部を囲む矩形で領域を限定しておくと処理が少なくなる。
【0029】
このとき、抽出された脊椎領域の面積は所定の範囲内か否かを、また脊椎領域の重心座標は所定の範囲内にあるか否を判定するための自動チェック処理を行なう。これは、例えば図15に示す原画像150には高濃度の脊椎151が写っているが、図16に示す原画像には、撮影スライス位置が骨の間に位置したため、大部分の領域161が低濃度で写っており、閾値処理だけでは脊椎領域の全部を抽出できない場合があるためである。この脊椎領域の自動チェック処理については図6に基づいて後述する。
【0030】
(ステップS22)
原画像から大腰筋のCT値に基づいて閾値を設定して閾値処理し、大腰筋を含む軟部組織領域を二値化抽出する(S22)。
【0031】
(ステップS23)
対称中心線40を設定し、その対称中心線40を基準として対称に存在する画素のみを残す(S23)。
【0032】
対称中心線40は、(1)脊椎領域の重心とへそ位置(へそを示す凹部領域の重心)とを通る直線、(2)へそが写ってない場合は、脊椎領域よりも背中側に位置する筋肉(図17における筋肉A,B)の両端を検出し、筋肉A,Bの両端を結ぶ線分の中点を通り、かつ垂直方向な直線、又は(3)脊椎と被検体の体組織領域の重心を通る直線を設定することにより求める。
【0033】
そして、ステップS22でもとめた軟部組織領域のうち、対称中心線40を基準として対称となる位置に存在する画素のみを残す。このステップS23の処理結果を図3に示す。図3に示すように、大腰筋30A,30B、他の臓器31A,31B、筋肉32など、対称中心線40に対して対称な画素点のみが抽出される。また、脊椎のCT値が高い場合には脊椎領域は抽出されない。
【0034】
通常、人体の構成は、対称中心線40に対して完全に対称な位置に大腰筋や他の臓器、筋肉などが位置せず、また各大腰筋や臓器、筋肉の形状は非対称形をなしている。一方、ステップS23では、対称中心線40を挟んで対称な画素のみを抽出するため、ステップS23で結果抽出される領域は、隣り合う臓器から分離されて(接していない状態で)抽出される。
【0035】
(ステップS24)
脊椎領域の左右に存在する領域のみを抽出することにより、図4(a)に示すように近似的大腰筋領域30A、30Bを求める(S24)。このとき、近似的大腰筋領域30A、30Bの面積は所定の範囲内か否かを、また近似的大腰筋領域30A、30Bの重心座標は所定の範囲内にあるか否を判定するための自動チェック処理を行なう。これにより、正しく近似的大腰筋領域30A、30Bを抽出しているか否か、例えば図3に示す二値化画像において、近似的大腰筋領域30A、30Bに隣接する臓器領域31A、31Bを誤って近似的大腰筋領域として抽出していないかどうかをチェックすることができる。
【0036】
この自動チェック処理については図12に基づいて後述する。
【0037】
(ステップS25)
ステップS24で求めた近似的大腰筋領域30A、30Bの情報をもとに高精度の大腰筋領域抽出処理を行なう(S25)。すなわち、近似的大腰筋領域30A、30Bは、大腰筋領域のうち対称中心線40を基準として左右対称に位置する画素点のみを抽出している。そのため、実際の大腰筋領域よりも小さく抽出している。そこで、対称中心線40を基準として非対称に位置する画素点も抽出して、大腰筋領域を構成する画素点を全て抽出する。
【0038】
そのための一つの方法として、図4(b)のように、近似的大腰筋領域30A、30Bを領域拡張することによって非対称な画素を含む大腰筋領域を高精度に抽出する方法がある。より詳細には、ステップS23で抽出した二値化された近似的大腰筋領域30A、30Bの輪郭線の形状に沿って1ラインずつ拡張し(ライン41)、このライン41上の画素点のうち近似的大腰筋領域30A、30Bを抽出するために設定した閾値の条件を満たす画素点を抽出する。そして、ライン41の長さが極小となる位置で領域拡張処理を止める。
【0039】
また、他の方法として、例えば図5のように、近似的大腰筋領域30A、30Bの情報をもとに、ステップS22で作成した二値化画像から大腰筋以外の領域を削除して目的とする大腰筋領域のみを残す方法がある。
【0040】
図5(a)では、ステップS24で算出した近似的大腰筋領域30A、30Bの輪郭線上の2点のうち最も距離が長い2点を求める。そしてその2点の座標を基に、二値化画像における大腰筋領域50A、50Bの傾き角度を求める。そして、その傾き角度をもち、かつ大腰筋領域50A、50Bの輪郭線上の2点を結ぶ線分D1を設定する。その線分D1を1ラインずつ大腰筋領域50A、50Bの外側にずらし、線分D1の長さが0となる位置を求める。そして、この線分D1の長さが0となる位置よりも大腰筋領域50A、50Bの外側であり、かつ大腰筋領域50A、50Bの傾き角度と同じ傾斜角度を有する所定領域を削除領域53として設定する。この削除領域53を削除することにより、大腰筋領域50A、50Bのみを抽出し、隣接する臓器領域51A、51Bから分離する。
【0041】
図5(b)では、近似的大腰筋領域30A、30Bに基づいてステップS22で作成した二値化画像における大腰筋領域50A、50Bを特定する。そして、例えば、大腰筋領域50Aに隣接する他の臓器領域51Aの重心51Apを算出する。この重心51Apを中心とする円を設定し、円周上の2点p1、p2点で画素値が0の場合、円弧p1p2をゼロクリアすることにより、他の臓器領域51Aを大腰筋領域50Aから分離する。その後、ステップS24で抽出した近似的大腰筋領域30Aの中心点(重心点)を開始点とする領域拡張方法などにより、大腰筋領域50Aのみを残す。他の大腰筋領域50Bについても同様である。
【0042】
上記図4(b)、図5(a)、又は図5(b)による近似的大腰筋領域の情報に基づく高精度の大腰筋領域の抽出処理が終了すると、図2に示す大腰筋抽出処理を終了する。
【0043】
次に図6に基づいて、上記ステップS21で行なう脊椎領域が抽出されているか否かの自動チェック処理について説明する。
【0044】
(ステップS61)
ステップS21で抽出した脊椎領域の面積を算出し、その面積が所定の範囲にあるか否かを判定する(S61)。所定の範囲にある場合にはステップS62へ、所定の範囲に無い場合にはステップS63へ進む。
【0045】
(ステップS62)
ステップS21で抽出した脊椎領域の重心座標を算出し、その重心座標が所定の範囲にあるか否かを判定する(S62)。所定の範囲にある場合には、脊椎領域が正しく抽出できたと判定して、自動チェック処理を終了する。所定の範囲に無い場合にはステップS63へ進む。
【0046】
(ステップS63)
ステップS21では抽出できなかった脊椎領域の一部について脊椎抽出処理を行なう(S63)。この脊椎領域の一部について抽出するための第一の処理方法を図7、図8に基づいて説明する。図7は、脊椎が鮮明に写っておらず、しきい値処理では抽出できない場合に行う第一の脊椎分離処理方法の手順を示すフローチャートである。図8は、脊椎が鮮明に写っておらず、しきい値処理では抽出できない場合に行う第一の脊椎分離処理方法を示す模式図である。
【0047】
(ステップS71)
ステップS22と同様、原画像160に対して大腰筋領域を抽出するための閾値を設定して二値化処理を行なう(S71)。この結果、脊椎も骨と骨の間の場合はCT値が低く大腰筋のCT値に近いため、図8に示すように同時に抽出される。そのため、以下では、脊椎領域と大腰筋領域とを分離する処理を行う。なお、脊椎領域を含む矩形領域90を設定することにより、より処理速度を向上させることができる。
【0048】
(ステップS72)
ステップS23と同様、背中側の三角状の脊椎領域83の一部(例えば重心)とへそ位置(へそ領域81の重心)とを結ぶ対称中心線Lを設定し、この対称中心線Lを基準として対称な画素だけを残す(S72)。一般に、大腰筋面積の測定はへそ領域81が写っているスライスを用いる習慣になっている。そのため、へそ領域81の重心を算出して、対称中心線Lを設定するために用いることができる。脊椎領域83とへそ位置81とを結ぶ直線の代わりに、体表輪郭の中心線(脊椎領域83の重心と体組織の重心とを結ぶ直線)を用いてもよい。
【0049】
(ステップS73)
距離変換(エッジまでの最短距離をその点での濃度とする)で大腰筋領域と脊椎領域とからなる広領域の中心を求める(S73)。
【0050】
円形な脊椎領域82は、解剖学的にみると、背中側の三角状の脊椎領域83の一部(重心)とへそ位置(へそ領域81の重心)とを結ぶ直線(本実施の形態においてはステップS72で算出した対称中心線Lに一致する)上であって、背中側の三角状の脊椎領域83から一定割合の点(C1、C2…、Cnとする)に位置する。このC1、C2…、Cn点から広領域のエッジ(輪郭線上の画素点)までの最短距離を算出し、この最短距離をC1、C2…、Cn点における濃度(画素値)とする。そして、上記C1、C2…、Cn点全てについて最短のエッジまでの距離を濃度に変換する処理を行い、最も濃度が濃い点を広領域の中心C点とする。
【0051】
(ステップS74)
広領域間の境界、すなわち円形の脊椎領域82と大腰筋領域50A、50Bとを切断する(S74)。
【0052】
ステップS73で求めた広領域の中心C点から同心円を拡張しながら描き、同心円上の任意の2点p1、p2の画素値が共に0であれば、円弧p1p2上の画素点の画素値に0を格納する。これにより、円形の脊椎領域82と大腰筋領域50A、50Bとを分離する。
【0053】
(ステップS75)
円形の脊椎領域82を、大腰筋領域50A、50Bとの接触から防ぐため、削除する(S75)。なお、脊椎領域82を削除する代わりに、大腰筋領域50A、50Bに数値1を記録し、脊椎領域82に数値2を記録するなどすれば区別してもよい。そして、脊椎領域の一部についての抽出処理を終了する。その後、ステップS24へ進み近似的大腰筋領域を求め、更にステップS25へ進み高精度の大腰筋領域抽出を行う。
【0054】
ステップS21では抽出できなかった脊椎領域の一部を抽出するための第二の処理方法を図9乃至図13に基づいて説明する。以下、図9のステップ順に沿って説明する。図9は、脊椎が鮮明に写っておらず、しきい値処理では抽出できない場合に行う第二の脊椎分離処理方法の手順を示すフローチャートである。図10脊椎が鮮明に写っておらず、しきい値処理では抽出できない場合に行う第二の脊椎分離処理方法を示す模式図である。図11は、脊椎領域が正しく抽出されていない場合に、操作者に処理を選択させるための表示を示す画面表示例である。図12は、近似的大腰筋領域が正しく抽出されたかを自動チェックする手順を示すフローチャートである。図13は、大腰筋領域から不必要な突起を削除する方法を示す模式図である。
【0055】
以下図9の各ステップ順に沿って説明する。
【0056】
(ステップS91及びS92)
ステップS71及びS72と同様、原画像から大腰筋領域を抽出するために二値化し(S91)、脊椎領域83とへそ領域81とを結ぶ対称中心線Lに対称な画素のみを残す(S91乃至S92)。
【0057】
(ステップS93)
大腰筋領域50A及び50Bの傾き角度と平行で、円形の脊椎領域82のエッジ上の2点を通る線分D2を設定し、その線分D2の長さを算出する。線分D2を大腰筋領域50A又は50Bに向かって1ラインずつ拡張し、その都度長さDを算出する。
【0058】
(ステップS94)
ステップS93で求めた線分D2の長さが極小となる箇所で線分D2上の画素点に画素値0を格納することにより、広領域間すなわち円形の脊椎領域82と大腰筋領域50A又は50Bとを切断する(S94)。
【0059】
(ステップS95)
ステップS75と同様、脊椎領域82を削除または大腰筋領域50A及び50Bと区別する処理を行なう(S95)。その後、脊椎抽出処理を終了し、ステップS64へ進む。
【0060】
(ステップS64)
ステップS63により脊椎領域が抽出できたか否かを判定する(S64)。
【0061】
脊椎領域82が抽出できた場合には、自動チェック処理を終了する。脊椎領域93が抽出できなった場合には、ステップS65へ進む。
【0062】
(ステップS65)
マウス17で脊椎領域82をトレースして脊椎領域82を抽出する。又は代用する画像を選択する(S65)。付近の画像(隣のスライス画像)には、骨の隙間から外れて脊椎領域が鮮明に写っている場合が多い。そこで、両付近の画像を用いて、MIP(最大値投影)画像を作っても良い。上述の例では、ステップS61又はS62において脊椎領域が正しく抽出されていないと判定された場合に、脊椎領域の自動抽出処理(S63)を行い、それでも自動抽出ができない場合にマウス17を用いるトレース、または代用する医用画像の取り込み(S65)を行うように順番を予め決め、自動的に順次処理した。しかし、図11のように、モニタ15に代用する医用画像の取り込みを選択するためのメッセージ111、例えば「隣のスライスを使います」と、マウス17でトレースをすることを選択するためのメッセージ112、例えば「マウスでトレースします」と、脊椎領域の中心を指定するためのメッセージ113、例えば「脊椎中心を指示します」と、を表示して操作者に選択させてもよい。
【0063】
次にステップS24で行なう近似的大腰筋領域が正しく抽出できているか否かの自動チェック処理を図12に基づいて説明する。図12は、近似的大腰筋領域が正しく抽出されたかを自動チェックする手順を示すフローチャートである。以下、図12のステップ順に沿って説明する。
【0064】
(ステップS1201)
ステップS24で抽出した左右の近似的大腰筋領域30A、30Bの面積は所定の範囲内にあるか否かを判定する(S1201)。所定の範囲にある場合には、ステップS1202へ、所定の範囲に無い場合にはステップS1203へ進む。
【0065】
(ステップS1202)
左右各々の近似的大腰筋領域30A、30Bの面積の重心座標は、所定の範囲にあるか否かを判定する(S1202)。所定の範囲としては、例えば脊椎領域の重心座標からみた角度及び距離に基づいて設定してもよい。所定の範囲にある場合には、近似的大腰筋領域が正しく抽出されたとして自動チェック処理を終了する。所定の範囲に無い場合にはステップS1203へ進む。
【0066】
(ステップS1203)
大腰筋領域が抽出できないため、操作者にマウス17でトレースを促すメッセージを表示する。そして、操作者が大腰筋領域をマウス17でトレースすることにより大腰筋領域を抽出する(S1203)。そして、近似的大腰筋領域の自動チェック処理を終了する。
【0067】
なお、上記実施の形態で抽出した大腰筋領域に不自然な突起などが残る場合は、図13に示すように大腰筋領域の輪郭線上に点列P1、P2、P3と点列Q1、Q2、Q3とを設定し、点列P1、P2、P3と点列Q1、Q2、Q3との間をスプライン補間して、補間した曲線で切断してもよい。これにより、大腰筋領域から不必要な突起を曲線状に切断処理することができる。
【0068】
大腰筋領域が抽出できたら、左右の大腰筋領域の面積をそれぞれ算出し、面積の差を計算する。そして、面積の差が所望する範囲外であれば、その旨を伝えるメッセージを表示し、操作者にマウス17を用いて大腰筋領域を手動入力させても良い。
【0069】
上記により、大腰筋領域が正常に抽出できると、大腰筋領域を指定して脂肪組織に沿ったCT値に基づいて閾値を設定して抽出処理を行うことにより、脂肪領域を抽出することができる。そして、抽出した脂肪領域及び大腰筋領域の面積をそれぞれ算出し、大腰筋領域の面積から脂肪領域の面積を減算処理することにより、大腰筋領域のうち筋肉領域のみの面積を算出することができる。この大腰筋領域のうち筋肉領域のみの面積が所定値以下である場合には、図14に示すように、リハビリを促すメッセージ141を表示させてもよい。更に、抽出した脂肪領域の面積142及び大腰筋面積143を表示させてもよい。
【0070】
また、被検体の大腰筋領域を体軸方向に沿って複数枚撮影して得た各断層像について、上記実施の形態に係る大腰筋領域の抽出処理及び大腰筋面積の算出処理を行い、その面積を体軸方向に積算することによって大腰筋領域の体積を算出してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】医用画像表示システムの構成を示すハードウェア構成図。
【図2】大腰筋領域の抽出手順を示すフローチャート。
【図3】ステップS23の処理結果画像であって、二値化画像に対称中心線を設定し、対称性を満たした画素のみを残す処理により残った領域を示す模式図。
【図4】図4(a)はステップS24の処理結果画像であって、脊椎の左右に隣接領域として、近似的大腰筋領域を抽出した状態を示す模式図、図4(b)は図4(a)の近似的大腰筋領域に領域拡張法を適用して大腰筋領域を求める方法を示す模式図。
【図5】図5(a)は、大腰筋領域と脊椎領域とを分離するための第一の処理方法をしめす模式図、図5(b)は大腰筋領域と脊椎領域とを分離するための第二の処理方法をしめす模式図。
【図6】ステップS22で行なう脊椎領域が正しく抽出されたかを自動チェックする処理の手順を示すフローチャート。
【図7】脊椎が鮮明に写っておらず、しきい値処理では抽出できない場合に行う第一の脊椎分離処理方法の手順を示すフローチャート。
【図8】脊椎が鮮明に写っておらず、しきい値処理では抽出できない場合に行う第一の脊椎分離処理方法を示す模式図。
【図9】脊椎が鮮明に写っておらず、しきい値処理では抽出できない場合に行う第二の脊椎分離処理方法の手順を示すフローチャート。
【図10】脊椎が鮮明に写っておらず、しきい値処理では抽出できない場合に行う第二の脊椎分離処理方法を示す模式図。
【図11】脊椎領域が正しく抽出されていない場合に、操作者に処理を選択させるための表示を示す画面表示例。
【図12】近似的大腰筋領域が正しく抽出されたかを自動チェックする手順を示すフローチャート。
【図13】大腰筋領域から不必要な突起を削除する方法を示す模式図。
【図14】大腰筋領域から脂肪領域を抽出してメッセージを表示した画面表示例を示す模式図。
【図15】脊椎領域が鮮明に写った原画像例。
【図16】脊椎領域が不鮮明に写った原画像例。
【図17】被検体の断層像における大腰筋領域の位置を示す模式図。
【図18】先行技術による大腰筋領域処理を説明する模式図。
【符号の説明】
【0072】
1…医用画像表示システム、2…X線CT装置、3…MR装置、4…画像データベース、5…LAN、10…医用画像表示装置、11…CPU、12…主メモリ、13…磁気ディスク、14…表示メモリ、15…モニタ、16…キーボード、17…マウス、18…コントローラ、19…共通バス
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像診断表示装置に係り、特に、被検体の断層像から大腰筋領域を抽出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
大腰筋の体積は年齢と共に縮小し、わずかな突起にもつまずいてころぶようになる。縮小した場合は受診者に知らせ、リハビリを促す必要がある。この場合、CT画像を用いて大腰筋領域を抽出するのが便利であり、医師要求が高い。なお、大腰筋の体積は、へその写っているスライス画像の大腰筋面積と相関があり、医師はこの面積測定で代用する場合が多い。
【0003】
ここで、大腰筋について図17に基づき説明する。大腰筋は、脊椎を挟んで左右に位置する。この左右の大腰筋A、Bは他の周辺の臓器A、B(例えば腎臓)と接触していているため、単純なしきい値処理では抽出できない。
【0004】
そこで、医用画像から大腰筋領域を抽出する技術の一つとして、例えば特許文献1には、二値化画像の部分的な出っ張り領域を削除する画像処理技術が開示されている。特許文献1の画像処理技術は、図18(a)のように、複数の画素点からなるx軸に平行な点列a1、a2、a3、a4、a5を設定し、a1=a5=0 ならa2=a3=a4=0とする。また、複数の画素点からなるy軸に平行な点列b1、b2、b3、b4を設定し、b1=b4=0ならb2=b3=0とする。これにより、点列a1、a2、a3、a4、a5及び点列b1、b2、b3、b4を切断または削除し、二値化画像の部分的な出っ張り領域を削除する。
【特許文献1】特開2002-325761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の画像処理技術により二値化画像の部分的な出っ張り領域を削除すると、図18(b)に示すように、切断個所が直線状になるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、大腰筋領域を精度良く抽出することができる画像処理技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために本発明に係る医用画像表示装置は、被検体のへそ位置で撮影した断層像であって、へそ領域、大腰筋を含む軟部組織、及び脊椎領域が撮影された医用画像を取得する画像取得手段と、前記取得された医用画像に所定の閾値を設定して前記大腰筋を含む軟部組織を抽出した抽出画像を生成する手段と、前記抽出画像を所望に分割する対称中心線を設定する手段と、前記抽出画像において、前記対称中心線を基準に対称となる位置に存在する画素点のみを抽出することによって近似的大腰筋領域を抽出する第一抽出手段と、前記近似的大腰筋領域に基づいて、前記抽出画像から前記対称中心線を基準として非対称となる位置に存在する画素点を含む全大腰筋領域を抽出する第二抽出手段と、前記第二抽出手段によって抽出された前記全大腰筋領域を表示する表示手段と、を備える。
【0008】
また、前記第二抽出手段は、前記近似的大腰筋領域の輪郭線の形状に沿って1ラインずつ拡張し、前記ライン上の画素点が前記所定の閾値を満たす場合には前記画素点を大腰筋領域として抽出する。
【0009】
また、前記表示手段に表示された前記抽出画像のうち所定の領域を領域指定するための位置座標入力手段を、更に備える。
【0010】
また、前記第二抽出手段によって抽出された前記対称中心線によって分割される全大腰筋領域の面積を算出して比較し、面積の差が所望の範囲にあるか否かを判定する面積差判定手段と、前記面積差判定手段が、前記面積の差が所望の範囲に無いと判定した場合に前記面積の差が所望の範囲に無い旨を通知する通知手段と、を更に備え、前記通知がされた場合に、前記位置座標入力手段により前記抽出画像に含まれる大腰筋領域を指定して抽出する。
【0011】
上述の「第二抽出手段」は、前記抽出画像において大腰筋領域が隣り合う軟部組織と接している場合に、前記近似的大腰筋領域の傾き角度を算出し、前記二値化画像に含まれる大腰筋領域の輪郭線上の任意の2点を通り、かつ前記傾き角度に基づいて決定された傾き角度を有する線分を設定し、該線分の長さが極小となる位置を算出し、該位置より前記大腰筋領域の外側であって前記傾き角度を有する所定の傾斜領域を削除して抽出してもよい。
【0012】
また「第二抽出手段」は、前記抽出画像において大腰筋領域が隣り合う軟部組織と接している場合に、前記大腰筋領域に接する軟部組織の重心から同心円を設定し、該同心円上の任意の2点において画素値が0となる場合に前記任意の2点を結ぶ円弧上の画素点の画素値を0にすることにより前記軟部組織と前記大腰筋領域と分離し、更に、前記近似的大腰筋領域の傾き角度を算出し、前記分離された大腰筋領域の輪郭線上の任意の2点を通り、かつ前記傾き角度に基づいて決定された傾き角度を有する線分を設定し、該線分上において前記閾値を満たす画素点を大腰筋領域として抽出してもよい。
【0013】
また「医用画像表示装置」は、前記医用画像から脊椎領域を抽出する脊椎抽出手段を更に備えてもよい。そして、「第一抽出手段」は、前記対称中心線を基準に対称となる位置に存在する画素点のうち、脊椎抽出手段が抽出した脊椎領域の両側に位置する画素点を近似的大腰筋領域として抽出してもよい。
【0014】
更に、脊椎領域抽出手段により抽出された前記脊椎領域が所望の条件を満たさない場合に、前記画像取得手段は、前記断層像に相当する被検体の部位付近を撮影した他の医用画像を取得し、該他の医用画像に基づいて全大腰筋領域の抽出処理を行ってもよい。
【0015】
また、前記脊椎領域抽出手段により抽出された前記脊椎領域が所望の条件を満たさない場合に、前記位置座標入力手段により前記抽出画像に含まれる脊椎領域を指定して抽出してもよい。
【0016】
また、前記脊椎領域抽出手段により抽出された前記脊椎領域が所望の条件を満たさない場合に、前記画像取得手段に前記被検体の断層像を撮影した他の医用画像を取得させ該他の医用画像に基づいて脊椎領域を抽出する処理を行なうか、又は前記位置座標入力手段により前記抽出画像に含まれる脊椎領域を指定して抽出するか、を操作者に選択させるための選択手段を更に備えてもよい。
【0017】
また、前記脊椎領域抽出手段により抽出された前記脊椎領域が所望の条件を満たさず、大腰筋領域が脊椎領域の一部と隣接して広領域を形成する場合に、前記脊椎抽出手段が抽出した脊椎領域の重心及び前記断層像に写ったへそ領域の重心を通る直線または前記断層像における体表輪郭線の中心線上にあって、前記脊椎抽出手段が抽出した脊椎領域の重心から所定の範囲にある画素点を仮中心点として抽出し、該仮中心点から前記広範囲領域の輪郭線上の画素点までの距離を算出することにより前記広範囲領域の重心を算出し、該広範囲領域の重心を本中心点とする同心円を設定し、該同心円上にある任意の2点の画素値が0である場合に、前記任意の2点を結ぶ円弧上の画素点の画素値を0にすることにより、前記大腰筋領域と前記脊椎領域の一部とを分離する脊椎領域分離手段を更に備えてもよい。
【0018】
また、前記脊椎領域抽出手段により抽出された前記脊椎領域が所望の条件を満たさず、大腰筋領域が脊椎領域の一部と隣接して広領域を形成する場合に、前記第一抽出手段が抽出した前記近似的大腰筋領域の傾き角度を算出し、前記広範囲領域の輪郭線上の任意の2点を通りかつ前記傾き角度に基づいて決定される傾き角度を有する線分を設定し、該線分の長さが極小となる位置において前記広範囲領域を分割することにより前記大腰筋領域と前記脊椎領域の一部とを分離する脊椎領域分離手段を更に備えてもよい。
【0019】
また、前記第二抽出手段が抽出した前記全大腰筋領域から、該全大腰筋領域に含まれる脂肪領域の面積を算出する脂肪面積算出手段を更に備えてもよい。
【0020】
また、前記第二抽出手段が抽出した前記全大腰筋領域の面積を算出し、該全大腰筋領域の面積から前記脂肪面積算出手段が算出した前記脂肪領域の面積を減算処理し、減算後の大腰筋領域の面積を算出する大腰筋面積算出手段を更に備えてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、大腰筋の非対称性を利用して近似的大腰筋領域を算出し、更に近似的大腰筋領域に基づいて医用画像に含まれる大腰筋領域を精度良く抽出することができる。そして、抽出した大腰筋領域を利用して、大腰筋の面積を求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面に従って本発明に係る医用画像表示装置の好ましい実施の形態について詳説する。なお、発明の実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0023】
図1は、発明の一実施の形態に係る医用画像表示システム1の構成を示すハードウェア構成図である。
【0024】
図1の医用画像表示システム1は、X線CT装置2と、MR装置3と、X線CT装置2及びMR装置3が撮影して得た医用画像を格納する画像データベース4と、医用画像を表示する医用画像表示装置10とを備え、X線CT装置2、MR装置3、画像データベース4、及び医用画像表示装置10は、LAN5等のネットワークにより互いに接続される。
【0025】
医用画像表示装置10は、主として各構成要素の動作を制御する中央処理装置(CPU)11と、装置の制御プログラムが格納されたり、プログラム実行時の作業領域となったりする主メモリ12と、オペレーティングシステム(OS)、周辺機器のデバイスドライブ、医用画像から大腰筋領域を抽出する処理等を行うためのプログラムを含む各種アプリケーションソフト等が格納される磁気ディスク13と、表示用データを一時記憶する表示メモリ14と、この表示メモリ14からのデータに基づいて画像を表示するCRTモニタや液晶モニタ等のモニタ15と、キーボード16と、位置座標入力装置としてのマウス17と、マウス17の状態を検出してモニタ15上のマウスポインタの位置やマウス17の状態等の信号をCPU11に出力するコントローラ18と、上記各構成要素を接続する共通バス19とを備える。
【0026】
本実施の形態においては、医用画像表示装置10は、LAN5を介して画像データベース4から医用画像を読み出すが、医用画像表示装置10に接続された記憶装置、例えばFDD、CD−RWドライブ、MOドライブ、ZIPドライブ等から医用画像を読み込んでも良い。また、LAN5を経由してX線CT装置2やMR装置3から直接医用画像を取得してもよい。
【0027】
次に、図2乃至5、図15及び16に基づいて、本実施の形態に係る医用画像表示装置10を用いて医用画像から大腰筋領域を抽出する手順について説明する。図2は、大腰筋領域の抽出手順を示すフローチャートである。図3は、ステップS23の処理結果画像であって、二値化画像に対称中心線を設定し、対称性を満たした画素のみを残す処理により残った領域を示す模式図である。図4(a)はステップS24の処理結果画像であって、脊椎の左右に隣接領域として、近似的大腰筋領域を抽出した状態を示す模式図であり、図4(b)は図4(a)の近似的大腰筋領域に領域拡張法を適用して大腰筋領域を求める方法を示す模式図である。図5(a)は、大腰筋領域と脊椎領域とを分離するための第一の処理方法をしめす模式図であり、図5(b)は大腰筋領域と脊椎領域とを分離するための第二の処理方法をしめす模式図である。図15は、脊椎領域が鮮明に写った原画像例、図16は、脊椎領域が不鮮明に写った原画像例を示す。以下図2の各ステップ順に説明する。
【0028】
(ステップS21)
原画像(例えば図15、16に示す被検体のへそ位置で撮影した断層像を示す医用画像)から脊椎のCT値に基づいて閾値(例えば、CT値がt2より大)を設定して閾値処理し、脊椎領域を二値化抽出する(S21)。予め、脊椎の一部を囲む矩形で領域を限定しておくと処理が少なくなる。
【0029】
このとき、抽出された脊椎領域の面積は所定の範囲内か否かを、また脊椎領域の重心座標は所定の範囲内にあるか否を判定するための自動チェック処理を行なう。これは、例えば図15に示す原画像150には高濃度の脊椎151が写っているが、図16に示す原画像には、撮影スライス位置が骨の間に位置したため、大部分の領域161が低濃度で写っており、閾値処理だけでは脊椎領域の全部を抽出できない場合があるためである。この脊椎領域の自動チェック処理については図6に基づいて後述する。
【0030】
(ステップS22)
原画像から大腰筋のCT値に基づいて閾値を設定して閾値処理し、大腰筋を含む軟部組織領域を二値化抽出する(S22)。
【0031】
(ステップS23)
対称中心線40を設定し、その対称中心線40を基準として対称に存在する画素のみを残す(S23)。
【0032】
対称中心線40は、(1)脊椎領域の重心とへそ位置(へそを示す凹部領域の重心)とを通る直線、(2)へそが写ってない場合は、脊椎領域よりも背中側に位置する筋肉(図17における筋肉A,B)の両端を検出し、筋肉A,Bの両端を結ぶ線分の中点を通り、かつ垂直方向な直線、又は(3)脊椎と被検体の体組織領域の重心を通る直線を設定することにより求める。
【0033】
そして、ステップS22でもとめた軟部組織領域のうち、対称中心線40を基準として対称となる位置に存在する画素のみを残す。このステップS23の処理結果を図3に示す。図3に示すように、大腰筋30A,30B、他の臓器31A,31B、筋肉32など、対称中心線40に対して対称な画素点のみが抽出される。また、脊椎のCT値が高い場合には脊椎領域は抽出されない。
【0034】
通常、人体の構成は、対称中心線40に対して完全に対称な位置に大腰筋や他の臓器、筋肉などが位置せず、また各大腰筋や臓器、筋肉の形状は非対称形をなしている。一方、ステップS23では、対称中心線40を挟んで対称な画素のみを抽出するため、ステップS23で結果抽出される領域は、隣り合う臓器から分離されて(接していない状態で)抽出される。
【0035】
(ステップS24)
脊椎領域の左右に存在する領域のみを抽出することにより、図4(a)に示すように近似的大腰筋領域30A、30Bを求める(S24)。このとき、近似的大腰筋領域30A、30Bの面積は所定の範囲内か否かを、また近似的大腰筋領域30A、30Bの重心座標は所定の範囲内にあるか否を判定するための自動チェック処理を行なう。これにより、正しく近似的大腰筋領域30A、30Bを抽出しているか否か、例えば図3に示す二値化画像において、近似的大腰筋領域30A、30Bに隣接する臓器領域31A、31Bを誤って近似的大腰筋領域として抽出していないかどうかをチェックすることができる。
【0036】
この自動チェック処理については図12に基づいて後述する。
【0037】
(ステップS25)
ステップS24で求めた近似的大腰筋領域30A、30Bの情報をもとに高精度の大腰筋領域抽出処理を行なう(S25)。すなわち、近似的大腰筋領域30A、30Bは、大腰筋領域のうち対称中心線40を基準として左右対称に位置する画素点のみを抽出している。そのため、実際の大腰筋領域よりも小さく抽出している。そこで、対称中心線40を基準として非対称に位置する画素点も抽出して、大腰筋領域を構成する画素点を全て抽出する。
【0038】
そのための一つの方法として、図4(b)のように、近似的大腰筋領域30A、30Bを領域拡張することによって非対称な画素を含む大腰筋領域を高精度に抽出する方法がある。より詳細には、ステップS23で抽出した二値化された近似的大腰筋領域30A、30Bの輪郭線の形状に沿って1ラインずつ拡張し(ライン41)、このライン41上の画素点のうち近似的大腰筋領域30A、30Bを抽出するために設定した閾値の条件を満たす画素点を抽出する。そして、ライン41の長さが極小となる位置で領域拡張処理を止める。
【0039】
また、他の方法として、例えば図5のように、近似的大腰筋領域30A、30Bの情報をもとに、ステップS22で作成した二値化画像から大腰筋以外の領域を削除して目的とする大腰筋領域のみを残す方法がある。
【0040】
図5(a)では、ステップS24で算出した近似的大腰筋領域30A、30Bの輪郭線上の2点のうち最も距離が長い2点を求める。そしてその2点の座標を基に、二値化画像における大腰筋領域50A、50Bの傾き角度を求める。そして、その傾き角度をもち、かつ大腰筋領域50A、50Bの輪郭線上の2点を結ぶ線分D1を設定する。その線分D1を1ラインずつ大腰筋領域50A、50Bの外側にずらし、線分D1の長さが0となる位置を求める。そして、この線分D1の長さが0となる位置よりも大腰筋領域50A、50Bの外側であり、かつ大腰筋領域50A、50Bの傾き角度と同じ傾斜角度を有する所定領域を削除領域53として設定する。この削除領域53を削除することにより、大腰筋領域50A、50Bのみを抽出し、隣接する臓器領域51A、51Bから分離する。
【0041】
図5(b)では、近似的大腰筋領域30A、30Bに基づいてステップS22で作成した二値化画像における大腰筋領域50A、50Bを特定する。そして、例えば、大腰筋領域50Aに隣接する他の臓器領域51Aの重心51Apを算出する。この重心51Apを中心とする円を設定し、円周上の2点p1、p2点で画素値が0の場合、円弧p1p2をゼロクリアすることにより、他の臓器領域51Aを大腰筋領域50Aから分離する。その後、ステップS24で抽出した近似的大腰筋領域30Aの中心点(重心点)を開始点とする領域拡張方法などにより、大腰筋領域50Aのみを残す。他の大腰筋領域50Bについても同様である。
【0042】
上記図4(b)、図5(a)、又は図5(b)による近似的大腰筋領域の情報に基づく高精度の大腰筋領域の抽出処理が終了すると、図2に示す大腰筋抽出処理を終了する。
【0043】
次に図6に基づいて、上記ステップS21で行なう脊椎領域が抽出されているか否かの自動チェック処理について説明する。
【0044】
(ステップS61)
ステップS21で抽出した脊椎領域の面積を算出し、その面積が所定の範囲にあるか否かを判定する(S61)。所定の範囲にある場合にはステップS62へ、所定の範囲に無い場合にはステップS63へ進む。
【0045】
(ステップS62)
ステップS21で抽出した脊椎領域の重心座標を算出し、その重心座標が所定の範囲にあるか否かを判定する(S62)。所定の範囲にある場合には、脊椎領域が正しく抽出できたと判定して、自動チェック処理を終了する。所定の範囲に無い場合にはステップS63へ進む。
【0046】
(ステップS63)
ステップS21では抽出できなかった脊椎領域の一部について脊椎抽出処理を行なう(S63)。この脊椎領域の一部について抽出するための第一の処理方法を図7、図8に基づいて説明する。図7は、脊椎が鮮明に写っておらず、しきい値処理では抽出できない場合に行う第一の脊椎分離処理方法の手順を示すフローチャートである。図8は、脊椎が鮮明に写っておらず、しきい値処理では抽出できない場合に行う第一の脊椎分離処理方法を示す模式図である。
【0047】
(ステップS71)
ステップS22と同様、原画像160に対して大腰筋領域を抽出するための閾値を設定して二値化処理を行なう(S71)。この結果、脊椎も骨と骨の間の場合はCT値が低く大腰筋のCT値に近いため、図8に示すように同時に抽出される。そのため、以下では、脊椎領域と大腰筋領域とを分離する処理を行う。なお、脊椎領域を含む矩形領域90を設定することにより、より処理速度を向上させることができる。
【0048】
(ステップS72)
ステップS23と同様、背中側の三角状の脊椎領域83の一部(例えば重心)とへそ位置(へそ領域81の重心)とを結ぶ対称中心線Lを設定し、この対称中心線Lを基準として対称な画素だけを残す(S72)。一般に、大腰筋面積の測定はへそ領域81が写っているスライスを用いる習慣になっている。そのため、へそ領域81の重心を算出して、対称中心線Lを設定するために用いることができる。脊椎領域83とへそ位置81とを結ぶ直線の代わりに、体表輪郭の中心線(脊椎領域83の重心と体組織の重心とを結ぶ直線)を用いてもよい。
【0049】
(ステップS73)
距離変換(エッジまでの最短距離をその点での濃度とする)で大腰筋領域と脊椎領域とからなる広領域の中心を求める(S73)。
【0050】
円形な脊椎領域82は、解剖学的にみると、背中側の三角状の脊椎領域83の一部(重心)とへそ位置(へそ領域81の重心)とを結ぶ直線(本実施の形態においてはステップS72で算出した対称中心線Lに一致する)上であって、背中側の三角状の脊椎領域83から一定割合の点(C1、C2…、Cnとする)に位置する。このC1、C2…、Cn点から広領域のエッジ(輪郭線上の画素点)までの最短距離を算出し、この最短距離をC1、C2…、Cn点における濃度(画素値)とする。そして、上記C1、C2…、Cn点全てについて最短のエッジまでの距離を濃度に変換する処理を行い、最も濃度が濃い点を広領域の中心C点とする。
【0051】
(ステップS74)
広領域間の境界、すなわち円形の脊椎領域82と大腰筋領域50A、50Bとを切断する(S74)。
【0052】
ステップS73で求めた広領域の中心C点から同心円を拡張しながら描き、同心円上の任意の2点p1、p2の画素値が共に0であれば、円弧p1p2上の画素点の画素値に0を格納する。これにより、円形の脊椎領域82と大腰筋領域50A、50Bとを分離する。
【0053】
(ステップS75)
円形の脊椎領域82を、大腰筋領域50A、50Bとの接触から防ぐため、削除する(S75)。なお、脊椎領域82を削除する代わりに、大腰筋領域50A、50Bに数値1を記録し、脊椎領域82に数値2を記録するなどすれば区別してもよい。そして、脊椎領域の一部についての抽出処理を終了する。その後、ステップS24へ進み近似的大腰筋領域を求め、更にステップS25へ進み高精度の大腰筋領域抽出を行う。
【0054】
ステップS21では抽出できなかった脊椎領域の一部を抽出するための第二の処理方法を図9乃至図13に基づいて説明する。以下、図9のステップ順に沿って説明する。図9は、脊椎が鮮明に写っておらず、しきい値処理では抽出できない場合に行う第二の脊椎分離処理方法の手順を示すフローチャートである。図10脊椎が鮮明に写っておらず、しきい値処理では抽出できない場合に行う第二の脊椎分離処理方法を示す模式図である。図11は、脊椎領域が正しく抽出されていない場合に、操作者に処理を選択させるための表示を示す画面表示例である。図12は、近似的大腰筋領域が正しく抽出されたかを自動チェックする手順を示すフローチャートである。図13は、大腰筋領域から不必要な突起を削除する方法を示す模式図である。
【0055】
以下図9の各ステップ順に沿って説明する。
【0056】
(ステップS91及びS92)
ステップS71及びS72と同様、原画像から大腰筋領域を抽出するために二値化し(S91)、脊椎領域83とへそ領域81とを結ぶ対称中心線Lに対称な画素のみを残す(S91乃至S92)。
【0057】
(ステップS93)
大腰筋領域50A及び50Bの傾き角度と平行で、円形の脊椎領域82のエッジ上の2点を通る線分D2を設定し、その線分D2の長さを算出する。線分D2を大腰筋領域50A又は50Bに向かって1ラインずつ拡張し、その都度長さDを算出する。
【0058】
(ステップS94)
ステップS93で求めた線分D2の長さが極小となる箇所で線分D2上の画素点に画素値0を格納することにより、広領域間すなわち円形の脊椎領域82と大腰筋領域50A又は50Bとを切断する(S94)。
【0059】
(ステップS95)
ステップS75と同様、脊椎領域82を削除または大腰筋領域50A及び50Bと区別する処理を行なう(S95)。その後、脊椎抽出処理を終了し、ステップS64へ進む。
【0060】
(ステップS64)
ステップS63により脊椎領域が抽出できたか否かを判定する(S64)。
【0061】
脊椎領域82が抽出できた場合には、自動チェック処理を終了する。脊椎領域93が抽出できなった場合には、ステップS65へ進む。
【0062】
(ステップS65)
マウス17で脊椎領域82をトレースして脊椎領域82を抽出する。又は代用する画像を選択する(S65)。付近の画像(隣のスライス画像)には、骨の隙間から外れて脊椎領域が鮮明に写っている場合が多い。そこで、両付近の画像を用いて、MIP(最大値投影)画像を作っても良い。上述の例では、ステップS61又はS62において脊椎領域が正しく抽出されていないと判定された場合に、脊椎領域の自動抽出処理(S63)を行い、それでも自動抽出ができない場合にマウス17を用いるトレース、または代用する医用画像の取り込み(S65)を行うように順番を予め決め、自動的に順次処理した。しかし、図11のように、モニタ15に代用する医用画像の取り込みを選択するためのメッセージ111、例えば「隣のスライスを使います」と、マウス17でトレースをすることを選択するためのメッセージ112、例えば「マウスでトレースします」と、脊椎領域の中心を指定するためのメッセージ113、例えば「脊椎中心を指示します」と、を表示して操作者に選択させてもよい。
【0063】
次にステップS24で行なう近似的大腰筋領域が正しく抽出できているか否かの自動チェック処理を図12に基づいて説明する。図12は、近似的大腰筋領域が正しく抽出されたかを自動チェックする手順を示すフローチャートである。以下、図12のステップ順に沿って説明する。
【0064】
(ステップS1201)
ステップS24で抽出した左右の近似的大腰筋領域30A、30Bの面積は所定の範囲内にあるか否かを判定する(S1201)。所定の範囲にある場合には、ステップS1202へ、所定の範囲に無い場合にはステップS1203へ進む。
【0065】
(ステップS1202)
左右各々の近似的大腰筋領域30A、30Bの面積の重心座標は、所定の範囲にあるか否かを判定する(S1202)。所定の範囲としては、例えば脊椎領域の重心座標からみた角度及び距離に基づいて設定してもよい。所定の範囲にある場合には、近似的大腰筋領域が正しく抽出されたとして自動チェック処理を終了する。所定の範囲に無い場合にはステップS1203へ進む。
【0066】
(ステップS1203)
大腰筋領域が抽出できないため、操作者にマウス17でトレースを促すメッセージを表示する。そして、操作者が大腰筋領域をマウス17でトレースすることにより大腰筋領域を抽出する(S1203)。そして、近似的大腰筋領域の自動チェック処理を終了する。
【0067】
なお、上記実施の形態で抽出した大腰筋領域に不自然な突起などが残る場合は、図13に示すように大腰筋領域の輪郭線上に点列P1、P2、P3と点列Q1、Q2、Q3とを設定し、点列P1、P2、P3と点列Q1、Q2、Q3との間をスプライン補間して、補間した曲線で切断してもよい。これにより、大腰筋領域から不必要な突起を曲線状に切断処理することができる。
【0068】
大腰筋領域が抽出できたら、左右の大腰筋領域の面積をそれぞれ算出し、面積の差を計算する。そして、面積の差が所望する範囲外であれば、その旨を伝えるメッセージを表示し、操作者にマウス17を用いて大腰筋領域を手動入力させても良い。
【0069】
上記により、大腰筋領域が正常に抽出できると、大腰筋領域を指定して脂肪組織に沿ったCT値に基づいて閾値を設定して抽出処理を行うことにより、脂肪領域を抽出することができる。そして、抽出した脂肪領域及び大腰筋領域の面積をそれぞれ算出し、大腰筋領域の面積から脂肪領域の面積を減算処理することにより、大腰筋領域のうち筋肉領域のみの面積を算出することができる。この大腰筋領域のうち筋肉領域のみの面積が所定値以下である場合には、図14に示すように、リハビリを促すメッセージ141を表示させてもよい。更に、抽出した脂肪領域の面積142及び大腰筋面積143を表示させてもよい。
【0070】
また、被検体の大腰筋領域を体軸方向に沿って複数枚撮影して得た各断層像について、上記実施の形態に係る大腰筋領域の抽出処理及び大腰筋面積の算出処理を行い、その面積を体軸方向に積算することによって大腰筋領域の体積を算出してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】医用画像表示システムの構成を示すハードウェア構成図。
【図2】大腰筋領域の抽出手順を示すフローチャート。
【図3】ステップS23の処理結果画像であって、二値化画像に対称中心線を設定し、対称性を満たした画素のみを残す処理により残った領域を示す模式図。
【図4】図4(a)はステップS24の処理結果画像であって、脊椎の左右に隣接領域として、近似的大腰筋領域を抽出した状態を示す模式図、図4(b)は図4(a)の近似的大腰筋領域に領域拡張法を適用して大腰筋領域を求める方法を示す模式図。
【図5】図5(a)は、大腰筋領域と脊椎領域とを分離するための第一の処理方法をしめす模式図、図5(b)は大腰筋領域と脊椎領域とを分離するための第二の処理方法をしめす模式図。
【図6】ステップS22で行なう脊椎領域が正しく抽出されたかを自動チェックする処理の手順を示すフローチャート。
【図7】脊椎が鮮明に写っておらず、しきい値処理では抽出できない場合に行う第一の脊椎分離処理方法の手順を示すフローチャート。
【図8】脊椎が鮮明に写っておらず、しきい値処理では抽出できない場合に行う第一の脊椎分離処理方法を示す模式図。
【図9】脊椎が鮮明に写っておらず、しきい値処理では抽出できない場合に行う第二の脊椎分離処理方法の手順を示すフローチャート。
【図10】脊椎が鮮明に写っておらず、しきい値処理では抽出できない場合に行う第二の脊椎分離処理方法を示す模式図。
【図11】脊椎領域が正しく抽出されていない場合に、操作者に処理を選択させるための表示を示す画面表示例。
【図12】近似的大腰筋領域が正しく抽出されたかを自動チェックする手順を示すフローチャート。
【図13】大腰筋領域から不必要な突起を削除する方法を示す模式図。
【図14】大腰筋領域から脂肪領域を抽出してメッセージを表示した画面表示例を示す模式図。
【図15】脊椎領域が鮮明に写った原画像例。
【図16】脊椎領域が不鮮明に写った原画像例。
【図17】被検体の断層像における大腰筋領域の位置を示す模式図。
【図18】先行技術による大腰筋領域処理を説明する模式図。
【符号の説明】
【0072】
1…医用画像表示システム、2…X線CT装置、3…MR装置、4…画像データベース、5…LAN、10…医用画像表示装置、11…CPU、12…主メモリ、13…磁気ディスク、14…表示メモリ、15…モニタ、16…キーボード、17…マウス、18…コントローラ、19…共通バス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体のへそ位置で撮影した断層像であって、へそ領域、大腰筋を含む軟部組織、及び脊椎領域が撮影された医用画像を取得する画像取得手段と、
前記取得された医用画像に所定の閾値を設定して前記大腰筋を含む軟部組織を抽出した抽出画像を生成する手段と、
前記抽出画像を所望に分割する対称中心線を設定する手段と、
前記抽出画像において、前記対称中心線を基準に対称となる位置に存在する画素点のみを抽出することによって近似的大腰筋領域を抽出する第一抽出手段と、
前記近似的大腰筋領域に基づいて、前記抽出画像から前記対称中心線を基準として非対称となる位置に存在する画素点を含む全大腰筋領域を抽出する第二抽出手段と、
前記第二抽出手段によって抽出された前記全大腰筋領域を表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする医用画像表示装置。
【請求項2】
前記第二抽出手段は、前記近似的大腰筋領域の輪郭線の形状に沿って1ラインずつ拡張し、前記ライン上の画素点が前記所定の閾値を満たす場合には前記画素点を大腰筋領域として抽出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の医用画像表示装置。
【請求項3】
前記表示手段に表示された前記抽出画像のうち所定の領域を領域指定するための位置座標入力手段を更に備える、
ことを特徴とする請求項1又は2の一つに記載の医用画像表示装置。
【請求項4】
前記第二抽出手段によって抽出された前記対称中心線によって分割される全大腰筋領域の面積を算出して比較し、面積の差が所望の範囲にあるか否かを判定する面積差判定手段と、
前記面積差判定手段が、前記面積の差が所望の範囲に無いと判定した場合に前記面積の差が所望の範囲に無い旨を通知する通知手段と、を更に備え、
前記通知がされた場合に、前記位置座標入力手段により前記抽出画像に含まれる大腰筋領域を指定して抽出する、
ことを特徴とする請求項3に記載の医用画像表示装置。
。
【請求項1】
被検体のへそ位置で撮影した断層像であって、へそ領域、大腰筋を含む軟部組織、及び脊椎領域が撮影された医用画像を取得する画像取得手段と、
前記取得された医用画像に所定の閾値を設定して前記大腰筋を含む軟部組織を抽出した抽出画像を生成する手段と、
前記抽出画像を所望に分割する対称中心線を設定する手段と、
前記抽出画像において、前記対称中心線を基準に対称となる位置に存在する画素点のみを抽出することによって近似的大腰筋領域を抽出する第一抽出手段と、
前記近似的大腰筋領域に基づいて、前記抽出画像から前記対称中心線を基準として非対称となる位置に存在する画素点を含む全大腰筋領域を抽出する第二抽出手段と、
前記第二抽出手段によって抽出された前記全大腰筋領域を表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする医用画像表示装置。
【請求項2】
前記第二抽出手段は、前記近似的大腰筋領域の輪郭線の形状に沿って1ラインずつ拡張し、前記ライン上の画素点が前記所定の閾値を満たす場合には前記画素点を大腰筋領域として抽出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の医用画像表示装置。
【請求項3】
前記表示手段に表示された前記抽出画像のうち所定の領域を領域指定するための位置座標入力手段を更に備える、
ことを特徴とする請求項1又は2の一つに記載の医用画像表示装置。
【請求項4】
前記第二抽出手段によって抽出された前記対称中心線によって分割される全大腰筋領域の面積を算出して比較し、面積の差が所望の範囲にあるか否かを判定する面積差判定手段と、
前記面積差判定手段が、前記面積の差が所望の範囲に無いと判定した場合に前記面積の差が所望の範囲に無い旨を通知する通知手段と、を更に備え、
前記通知がされた場合に、前記位置座標入力手段により前記抽出画像に含まれる大腰筋領域を指定して抽出する、
ことを特徴とする請求項3に記載の医用画像表示装置。
。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
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【図11】
【図12】
【図13】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2006−149446(P2006−149446A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340841(P2004−340841)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
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