説明

医用画像通信システム用の装置間接続確認装置とその装置間接続確認方法

【課題】 医用画像通信規格に準拠した装置間の接続確認を比較的容易に実施可能にして、設置、メンテナンス等の作業効率を飛躍的に高める。
【解決手段】 接続確認装置Sは、予めDICOM規格に準拠するための各種情報が格納されたデータベースS1と、データベースS1の登録データに基づいて、医用画像通信システムの運用のシミュレーションを行う運用シミュレータ機能F1等を持った情報処理装置S2を備える。この機能F1は、例えば機器Aと機器Bを接続し、機器Aから機器Bへ画像データを送信したい場合に、機器AのCSを参照して機器AのOUTPUTと機器Bの予想されるINPUTを生成して両者を付き合わせ、接続可・不可を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用におけるディジタル画像と通信に関する標準規格であるDICOM(digital imaging and communications in medicine)に準拠して装置間を接続した医用画像通信システムに係り、特にDICOM接続の確認作業を容易にするための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、医用情報処理システムにおいて、スキャナ、サーバ、プリンタ、ビューワなどのディジタル画像機器を接続する場合、DICOM規格に沿って行われている。この場合、まず接続試験前に、メーカ間で接続機器のDICOM Conformance Statement(以下、CS)を取り交わし、作業員がその内容をつき合わせて接続状態を確認していく人手による手法を用い、次に実際の機器同士を接続した接続試験により、期待する結果が得られることを確認する手法が採用される。
【0003】
しかしながら、実際には、接続試験が簡単に成功することは少なく、試行錯誤を繰返したり、ソフトウェアの部分的修正が必要になったりするなど、接続確認に膨大な時間を費やしている。
【0004】
尚、DICOM規格に沿った医用情報処理システムの概要については、特許文献1の従来技術で説明されている。
【特許文献1】特開2001−206703号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上述べたように、従来の医用画像通信システムでは、装置間の接続確認に膨大な時間を費やしており、設置、メンテナンス等の作業効率が極めて劣悪な状況にある。
【0006】
本発明は上記の問題を解決し、装置間の接続確認を比較的容易に実施することができ、設置、メンテナンス等の作業効率を飛躍的に高めることのできる医用画像通信システム用の装置間接続確認装置とその装置間接続確認方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明に係る医用画像通信システム用の装置間接続確認装置及びその装置間接続確認方法は、医用におけるディジタル画像と通信に関する標準規格に準拠した通信端末機器間を接続する場合に、前記規格の詳細情報が登録されるデータベースを参照して被確認機器における入力と出力の予測データを生成する予測データ生成手段またはステップと、前記入力と出力の予測データを比較して整合性をチェックしそのチェック結果に基づいて接続の可否を判定することで前記システムの運用シミュレーションを行う運用シミュレーション手段またはステップとを具備するようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
さらに、前記データベースに予め登録されている前記規格に準拠する通信端末機器の情報を参照し、指定された運用条件を満たす接続可能機器を検索する機器検索手段またはステップを備えることを特徴とする。
【0009】
さらに、前記データベースの被接続機器の登録情報または各種定義書を作成・更新する際の要領を支援する定義書作成支援手段またはステップを備えることを特徴とする。
【0010】
さらに、前記データベースの被確認機器に対する登録情報の誤りを検出しその正常性を検査する登録情報誤り検出手段またはステップを備えることを特徴とする。
【0011】
さらに、前記被接続機器の接続試験を計画し管理するための接続試験管理手段またはステップを備えることを特徴とする。
【0012】
前記規格はDICOM(digital imaging and communications in medicine)であり、前記データベースにはDICOM適合明細情報が登録されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、装置間の接続確認を比較的容易に実施することができ、設置、メンテナンス等の作業効率を飛躍的に高めることのできる医用画像通信システム用の装置間接続確認装置とその装置間接続確認方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明の一実施形態に係る医用画像通信システムの全体構成を示すもので、A,B,C,DはそれぞれDICOM規格に準拠した通信端末機器であり、これらはネットワークを通じて接続確認装置Sに接続される。
【0016】
この接続確認装置SはデータベースS1を備える。このデータベースS1には、予めCS、DICOM定義書、運用定義書、接続実績データ、試験用通信データ集等のDICOM規格に準拠するための各種情報が格納される。また、このデータベースS1には、各通信端末機器A〜Dそれぞれの接続・通信状況を常時あるいは定期的に監視して、機器間の接続・通信状態を示すステータス情報が蓄積される。
【0017】
また、上記接続確認装置Sは、情報処理装置S2を備える。この情報処理装置S2では、データベースS1の登録データに基づいて、運用のシミュレーションを行う運用シミュレータ機能F1、接続可能機器を検索する検索機能F2、接続する機器のCSや各種定義書を作成・更新する際の要領を支援する定義書作成支援機能F3、各装置に対するCSの誤りを検出しその正常性を検査するCS誤り検出機能F4、接続試験を計画し管理するための接続試験管理機能F5を備える。
【0018】
図2に上記DICOMのフォーマット構成を示す。このDICOMは、グループ(Group)及びエレメント値(Element VR)によるDICOMタグ(DICOM Tag)、値フィールドの長さ(Value Length)、例えば患者名、画像などの値を入れるエリア(Value Field)からなるデータ要素を順に配列したものである。
【0019】
上記グループの例を図3に示す。ここで、DICOMの標準となるグループの番号は偶数であり、プライベートタグはグループ番号が奇数となる。タグは、例えば16進表記の4桁で表現され、例えば患者氏名、生年月日、モダリティ、画素データ等を指定することができる。
【0020】
以下、本発明の特徴とする接続確認装置Sが備える情報処理機能について説明する。
【0021】
(1)運用シミュレータ機能F1
この機能F1の処理の流れを図4に示して説明する。まず、接続機器の指定入力を受け付け(ステップS11)、接続元及び接続先それぞれの機器のCSについてデータベースS1を参照し、所定のデータを接続元機器に入力したときの出力予測値Doutと接続先機器の入力予測値Dinを求める(ステップS12)。ここで、出力予測値Doutと入力予測値Dinとを比較し(ステップS13)、一致している場合は導入可と判断し(ステップS14)、一致しない場合には導入不可と判断して(ステップS15)、それぞれの判断結果を表示し(ステップS16)、一連の処理を終了する。
【0022】
この機能F1は、例えば機器Aと機器Bを接続し、機器Aから機器Bへ画像データを送信したい場合に、機器AのCSを参照して機器AのOUTPUTと機器Bの予想されるINPUTを生成して両者を付き合わせ、接続可・不可を判定する。例えば、装置AのCSには、患者ID(識別符号)は送信し、患者名は送信しないとの記述があるとする。また、装置BのCSには、患者IDと患者名は必須との記述があるとする。上記情報から作成した装置AのOUTPUTと装置BのINPUTを付き合わせると、“接続不可“という結果が実際の接続前に得ることができる。
【0023】
同様にして、機器Aと機器Cとの接続、機器Cと機器Dとの接続について運用シミュレータ処理を行い、これらはいずれも導入可であったとすると、図5に示すように表示され、これによって作業員は容易に機器接続の可否を確認することができる。
【0024】
(2)検索機能F2
この機能の処理の流れを図6に示して説明する。まず、条件としてキーワードが入力されると(ステップS21)、データベースS1を参照してキーワードによる条件に合致する該当機器をリストアップする(ステップS22)。続いて、条件の追加があるか判断し(ステップS23)、追加があればステップS21に戻り、追加がなければ機器選択を指示して(ステップS24)、一連の処理を終了する。
【0025】
この機能は、例えば新規に装置を接続したい場合に、データベースS1に登録されている機器情報から、運用条件に見合う機器を検索して絞り込み、リストアップする。例えば、「日本語が使えること」という条件を選択すると、日本語対応している機器のみがリストアップされる。また、「US(Ultra Sound)画像が使えること」という条件を選択すると、US画像に対応している機器のみがリストアップされる。
【0026】
尚、上記の説明では、キーワード検索を行ってから機器を絞り込むように説明したが、先に関係する機器を絞り込んでから検索をかけるようにしてもよい。この場合は、単純に条件から外れるものを先に排除することができ、検索時間を短縮することができる。
【0027】
(3)支援機能F3
この機能F3の処理の流れを図7に示して説明する。まず、CS、定義書の新規・更新指定があった場合(ステップS31)、予め登録されているナビゲーションプログラムを読み出してCS、定義書作成に必要な項目の入力を順次説明し(ステップS32)、全項目の入力が完了した場合には(ステップS33)、それぞれの入力項目に従ってCSまたは定義書の作成・更新を実行し(ステップS34)、一連の処理を終了する。
【0028】
この機能F3は、例えば接続する機器のCSや各種定義書を新規作成したり、更新したりする場合、その作成手順や記入内容、記入ポイントなどを示す。ユーザは本機能のナビゲーションに従って、必要な(要求される)内容を入力していくことでCSや各種定義書を作成することができる。ここで作成されたCSや定義書はデータベースS1に蓄積される。
【0029】
(4)CS誤り検出機能F4
この機能F4の処理の流れを図8に示して説明する。まず、被検査情報の入力が合った場合(ステップS41)、データベースS1のCSを参照比較し(ステップS42)、矛盾があるか否か判断する(ステップS43)。矛盾がある場合には、矛盾点を指摘して通知し(ステップS44)、矛盾がない場合には正常を通知して(ステップS45)、一連の処理を終了する。
【0030】
この機能F4は、実際に装置Aから出力された画像データや検査情報を入力すると、装置AのCSが正しいかどうかを検査し、実際の出力値とCSの記述に矛盾がある場合は、その矛盾点を通知するというものである。例えば、装置AのCSに「患者名はセットしない」と記述されているが、実際の画像データに患者名が存在する場合には、ユーザにその旨を通知することができる。
【0031】
(5)接続試験計画管理機能F5
実際に装置Aと装置Bの接続試験を実施する場合、試験前に試験項目や試験手順(接続試験計)を提示する。また、ユーザは、いつその試験項目を実施するかの計画を本システム上で立てる。さらに、試験開始後は、接続試験結果を入力することにより、どこまで接続試験が進んでいるのか、遅れはどのくらいかなどの進捗を表示することができる。装置Aと装置Bの最終的な接続結果(Pass or Fail)はデータベースS1に蓄積される。
【0032】
以上の機能F1〜F5を備える接続確認装置Sをネットワーク上に配置し、各通信端末機器をネットワークに接続する際に、接続確認装置Sの接続確認を受けることで、DICOM接続の適否を容易に確認することができ、メンテナンス作業も比較的短時間に行うことができる。
【0033】
尚、上記実施形態では、データベースS1の配置を接続確認装置S内としたが、接続確認装置Sの外部でもよい。また、ネットワーク上に配置したり、共有化設定したりすることで、外部からアクセス可能な環境とし、これによって情報の共有を図るようにすれば、いっそう効果的である。また、接続確認装置Sとしてネットワーク上で接続確認を実施するようにしたが、単独で使用して、被接続機器に個別に接続して対応するようにしてもよい。また、被接続機器に接続せずに、接続確認装置S単体(スタンドアローン)での対応でもよい。
【0034】
また、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係る医用画像通信システムの全体構成を示すブロック図。
【図2】図1のシステムに用いられるDICOMのフォーマット構成を示す図。
【図3】図2のフォーマットにおけるグループの例を示す図。
【図4】図1のシステムのサーバにおける運用シミュレータ機能の処理の流れを示すフローチャート。
【図5】図4の運用シミュレータ機能の処理結果の表示例を示す図。
【図6】図1のシステムのサーバにおける検索機能の処理の流れを示すフローチャート。
【図7】図1のシステムのサーバにおける定義書作成支援機能の処理の流れを示すフローチャート。
【図8】図1のシステムのサーバにおけるCS誤り検出機能の処理の流れを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0036】
A,B,C,D…通信端末機器
S…接続確認装置
S1…データベース
S2…情報処理装置
F1…運用シミュレータ機能
F2…検索機能
F3…定義書作成支援機能
F4…CS誤り検出機能

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用におけるディジタル画像と通信に関する標準規格に準拠した通信端末機器間を接続する医用画像通信システムに用いられ、
前記規格の詳細情報が登録されるデータベースを参照して被確認機器における入力と出力の予測データを生成する予測データ生成手段と、
前記入力と出力の予測データを比較して整合性をチェックしそのチェック結果に基づいて接続の可否を判定することで前記システムの運用シミュレーションを行う運用シミュレーション手段とを具備することを特徴とする装置間接続確認装置。
【請求項2】
さらに、前記データベースに予め登録されている前記規格に準拠する通信端末機器の情報を参照し、指定された運用条件を満たす接続可能機器を検索する機器検索手段を備えることを特徴とする請求項1記載の装置間接続確認装置。
【請求項3】
さらに、前記データベースの被接続機器の登録情報または各種定義書を作成・更新する際の要領を支援する定義書作成支援手段を備えることを特徴とする請求項1記載の装置間接続確認装置。
【請求項4】
さらに、前記データベースの被確認機器に対する登録情報の誤りを検出しその正常性を検査する登録情報誤り検出手段を備えることを特徴とする請求項1記載の装置間接続確認装置。
【請求項5】
さらに、前記被接続機器の接続試験を計画し管理するための接続試験管理手段を備えることを特徴とする請求項1記載の装置間接続確認装置。
【請求項6】
前記規格はDICOM(digital imaging and communications in medicine)であり、前記データベースにはDICOM適合明細情報が登録されていることを特徴とする請求項1記載の装置間接続確認装置。
【請求項7】
医用におけるディジタル画像と通信に関する標準規格に準拠した通信端末機器間を接続する医用画像通信システムに用いられ、
前記規格の詳細情報が登録されるデータベースを参照して被確認機器における入力と出力の予測データを生成する予測データステップと、
前記入力と出力の予測データを比較して整合性をチェックしそのチェック結果に基づいて接続の可否を判定することで前記システムの運用シミュレーションを行う運用シミュレーションステップとを具備することを特徴とする装置間接続確認方法。
【請求項8】
さらに、前記データベースに予め登録されている前記規格に準拠する通信端末機器の情報を参照し、指定された運用条件を満たす接続可能機器を検索する機器検索ステップを備えることを特徴とする請求項7記載の装置間接続確認方法。
【請求項9】
さらに、前記データベースの被接続機器の登録情報または各種定義書を作成・更新する際の要領を支援する定義書作成支援ステップを備えることを特徴とする請求項7記載の装置間接続確認方法。
【請求項10】
さらに、前記データベースの被確認機器に対する登録情報の誤りを検出しその正常性を検査する登録情報誤り検出ステップを備えることを特徴とする請求項7記載の装置間接続確認方法。
【請求項11】
さらに、前記被接続機器の接続試験を計画し管理するための接続試験管理ステップを備えることを特徴とする請求項7記載の装置間接続確認方法。
【請求項12】
前記規格はDICOM(digital imaging and communications in medicine)であり、前記データベースにはDICOM適合明細情報が登録されていることを特徴とする請求項7記載の装置間接続確認方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−110007(P2006−110007A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−299255(P2004−299255)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】