説明

医療デバイスを介した高親油性薬剤の送達

医療デバイスに付随する親油性薬剤を送達する装置及びシステムであって、医療デバイスと、体腔に浸透することができる第1の親油性薬剤とを備え、前記第1の親油性薬剤の移動係数が少なくとも約5,000で統計的に有意である量であり、前記第1の親油性薬剤が医療デバイスに付随し、前記第1の親油性薬剤/医療デバイスが前記体腔に隣接して留置され、治療有効量の前記第1の親油性薬剤が対象体内の所望の領域に送達される、装置及びシステム。さらに、本発明は、近接する疾病を治療及び/又は予防するか、又は体腔の開通性を維持するために医療デバイスを体腔内に留置することを含む、対象体内の開通性を改善するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
[01] 本出願は、2004年3月9日に出願した米国特許出願第10/796,243号の一部継続出願であり、これは2003年3月10日に出願した米国特許出願第60/453,555号の優先権を主張し、また本出願は、2004年10月29日に出願した米国特許出願第10/977,288号の一部継続出願であり、またこれは、2002年9月6日に出願した米国特許出願第10/235,572号の一部継続出願であり、またこれは、現在は米国特許第6,890,546号である、2001年9月10日に出願した米国特許出願第09/950,307号の一部継続出願であり、またこれは、現在は米国特許第6,329,386号である、1999年11月2日に出願した米国特許出願第09/433,001号の一部継続出願であり、またこれは、現在は米国特許第6,015,815号である、1998年9月24日に出願した米国特許出願第09/159,945号の分割出願であり、1997年9月26日に出願した米国特許出願第60/060,015号の優先権を主張し、本出願は、さらに、2005年3月23日に出願した米国特許出願第60/664,328号、2005年10月14日に出願した米国特許出願第60/727,080号、2005年10月14日に出願した米国特許出願第60/726,878号、2005年10月17日に出願した米国特許出願第60/732,577号、及び2005年10月14日に出願した米国特許出願第60/727,196号の優先権を主張し、上記の出願はすべて参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[発明の分野]
[02] 本発明は、医療デバイスを使用する高親油性薬剤、より具体的には、少なくとも約5,000(μg/mL)−1の移動係数を有する親油性薬剤の薬物遠隔送達の装置、システム、及び方法に関する。
【0003】
[発明の背景]
[03] 化合物シクロスポリン(シクロスポリンA)は、臓器移植及び免疫調節の分野に導入されて以来、汎用されており、移植術に成功率の大幅な増加をもたらした。近年、強力な免疫調節活性を有する大環状化合物が数種類発見された。Okuharaらは、1986年6月11日に公開された欧州特許出願第184,162号において、S.ツクバエンシス(S.tsukubaensis)の株から単離された、23員大環状ラクトンである免疫抑制剤FK−506を含む、ストレプトミセス(Streptomyces)属から単離された多数の大環状化合物を開示している。
【0004】
[04] S.ハイグロスコピカス・ヤクシムナエンシス(S.hygroscopicus yakushimnaensis)からは、C−21のアルキル置換基がFK−506と異なる、FR−900520及びFR−900523などの他の関連天然物が単離されている。S.ツクバエンシスによって産生される他の類似体FR−900525は、ピペコリン酸部分がプロリン基で置き換えられている点でFK−506と異なる。シクロスポリン及びFK−506には腎毒性などの好ましくない副作用が伴うため、局所的には有効であるが、全身的には無効な免疫抑制剤を含む、有効性及び安全性が改善された免疫抑制化合物が探索され続けてきた(米国特許第5,457,111号)。
【0005】
[05] ラパマイシンは、ストレプトミセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)によって産生される大環状トリエン抗生物質であり、生体外、生体内の両方において、特にカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)に対する抗真菌活性を有することが判明している(C.Vezinaら、J.Antibiot.1975,28,721、S.N.Sehgalら、J.Antibiot.1975,28,727、H.A.Bakerら、J.Antibiot.1978,31,539、米国特許第3,929,992号、及び米国特許第3,993,749号)。
【0006】
【化1】

【0007】
ラパマイシン単独(米国特許第4,885,171号)又はピシバニル(米国特許第4,401,653号)と組み合わせたラパマイシンは、抗腫瘍活性を有することが立証されている。1977年、ラパマイシンは、多発性硬化症のモデルである、実験的アレルギー性脳脊髄炎モデルにおいて、また関節リウマチのモデルである、アジュバント関節炎モデルにおいて免疫抑制剤として有効であることも立証され、IgE−様抗体形成を有効に抑制することが立証された(R.Martelら、Can.J.Physiol.Pharmacol.,1977,55,48)。
【0008】
ラパマイシンの免疫抑制作用は、組織不適合ゲッ歯類における臓器移植片の生存時間延長能を有するとして、FASEB,1989,3,3411にも開示されている(R.Morris、Med.Sci.Res.,1989,17,877)。ラパマイシンのT細胞活性化抑制能は、M.Strauch(FASEB,1989,3,3411)によって開示された。ラパマイシンのこれら及び他の生体作用は、Transplantation Reviews,1992,6,39−87において概説されている。
【0009】
ラパマイシンは、動物モデルにおいて新生内膜増殖を低減し、またヒトの再狭窄率を下げることが立証されている。ラパマイシンが、関節リウマチの治療薬剤としての選択の正しいことを裏付ける特性である、抗炎症作用も示す証拠が公開されている。細胞増殖と細胞炎症は両方とも、バルーン血管形成及びステント留置術の後に再狭窄病変を形成する原因と考えられるため、再狭窄の予防にラパマイシン及びその類似体が提案されている。
【0010】
[11] ラパマイシンのエステル及びジエステル誘導体(31位と42位のエステル化)は、抗真菌剤として(米国特許第4,316,885号)、及びラパマイシンの水溶性プロドラッグとして(米国特許第4,650,803号)有用であることが立証されている。
【0011】
[12] ラパマイシン及び30−デメトキシラパマイシンの発酵及び精製は、文献において説明されている(C.Vezinaら、J.Antibiot.(Tokyo),1975,28(10),721、S.N.Sehgalら、J.Antibiot.(Tokyo),1975,28(10),727;1983,36(4),351、N.L.Paviaら、J.Natural Products,1991,54(1),167−177)。
【0012】
[13] ラパマイシンの多数の化学修飾が試みられた。これらは、ラパマイシンのエステル誘導体及びジエステル誘導体(国際公開第92/05179号パンフレット)、ラパマイシンの27−オキシム(EP0467606)、ラパマイシンの42−オキソ類似体(米国特許第5,023,262号)、二環式ラパマイシン(米国特許第5,120,725号)、ラパマイシン二量体(米国特許第5,120,727号)、ラパマイシンのシリルエーテル(米国特許第5,120,842号)、並びにアリールスルホン酸塩及びスルファミン酸塩(米国特許第5,177,203号)の各調製を含む。ラパマイシンは、近年、天然由来の鏡像異性型として合成された(K.C.Nicolaouら、J.Am.Chem.Soc.,1993,115,4419−4420、S.L.Schreiber、J.Am.Chem.Soc.,1993,115,7906−7907、S.J.Danishefsky、J.Am.Chem.Soc.,1993,115,9345−9346。
【0013】
[14] ラパマイシンは、FK−506のように、FKBP−12に結合することが知られている(Siekierka,J.J.、Hung,S.H.Y.、Poe,M.、Lin,C.S.、Sigal,N.H.、Nature,1989,341,755−757、Harding,M.W.、Galat,A.、Uehling,D.E.、Schreiber,S.L.、Nature 1989,341,758−760、Dumont,F.J.、Melino,M.R.、Staruch,M.J.、Koprak,S.L.、Fischer,P.A.、Sigal,N.H.、J.Immunol.1990,144,1418−1424、Bierer,B.E.、Schreiber,S.L.、Burakoff,S.J.、Eur.J.Immunol.1991,21,439−445、Fretz,H.、Albers,M.W.、Galat,A.、Standaert,R.F.、Lane,W.S.、Burakoff,S.J.、Bierer,B.E.、Schreiber,S.L.、J.Am.Chem.Soc.1991,113,1409−1411)。近年、ラパマイシン/FKBP−12複合体が、FK−506/FKBP−12複合体が抑制するタンパク質であるカルシニューリンと異なる、さらに別のタンパク質に結合することが発見されている(Brown,E.J.、Albers,M.W.、Shin,T.B.、Ichikawa,K.、Keith,C.T.、Lane,W.S.、Schreiber,S.L.、Nature 1994,369,756−758、Sabatini,D.M.、Erdjument−Bromage,H.、Lui,M.、Tempest,P.、Snyder,S.H.、Cell,1994,78,35−43)。
【0014】
経皮経管冠動脈形成術(PTCA)は、1970年代にAndreas Gruntzigにより開発された。最初のイヌの冠状血管拡張は、1975年9月24日に実施され、PTCAの使用を示す研究が、次の年に米国心臓協会の年次会合において公開された。その後まもなく、最初のヒト患者がスイスのチューリッヒで研究され、その後、最初の米国人患者が、サンフランシスコとニューヨークで研究された。この手法は、閉塞性冠動脈疾患の患者の治療に関してインターベンション心臓病学の実施方法を変えたが、この手法は、長期的な解決策とはならなかった。患者は、血管閉塞に伴う胸痛を一時的に軽減されるにすぎず、多くの場合手法を繰り返すことが必要になった。再狭窄病変が存在すると、この新しい手技の有用性が大きく制限されることが分かった。1980年代後半期、血管形成の後の血管開通を維持するためにステントが導入された。ステント留置術は、今日実施されている血管形成術の90%に関わっている。ステントを導入する前には、再狭窄率は、バルーン血管形成術で治療された患者の30%から50%の範囲であった。ステント内再狭窄の拡張後の再発率は、選択された患者サブセットにおいて70%と高いと思われるが、新規ステント留置の血管造影再狭窄率は約20%である。ステントの留置により、再狭窄率が15%から20%の範囲に下がった。この割合は、純粋に機械的なステント留置で得られうる最もよい結果を表している可能性がある。再狭窄病変は、時間的経過と組織病理学的所見の両方におけるアテローム性動脈硬化症と際だって異なる、新生内膜過形成により主に引き起こされる。再狭窄は、新生内膜組織が血管腔上の著しく当たる、損傷した冠状動脈壁の治癒過程である。血管内小線源療法は、ステント内再狭窄病変に対し有効であるように見える。しかし、放射線には、実用性と費用の点で制限があり、また安全性と耐久性に関して長く続いている疑問点もある。
【0015】
[16] そこで、再狭窄率を現在のレベルの少なくとも50%下げることが望ましい。このような理由から、インターベンション用デバイス業界により薬物溶出性ステントの製造及び評価を行う主要な作業が進行中である。このようなデバイスは、周辺処置技術又は慢性経口薬物療法のいずれかの形態である、補助的療法をそのようなシステムが主に必要としないことから、成功するとすれば多数の利点を持つと思われる。
【0016】
[17] 外科又は他の関連する侵襲的薬物利用手法において、再狭窄の防止、血管若しくは内腔壁の支持又は補強、及び他の治療若しくは修復機能のために、血管、尿路、又は他の接近しにくい場所にステントデバイスを含むインターベンションコンポーネントを有する医療デバイスを挿入することは、長期間にわたる治療の通常の形態となっている。典型的には、このようなインターベンションコンポーネントは、血管カテーテル、又は類似の経管的デバイスを利用して対象とする位置に施され、これにより、ステントを対象とする位置に運び、その後、放出して膨張させるか、in situで膨張されるようにする。これらのデバイスは、一般的に、埋め込み部で接触する血管又は他の組織内に組み込まれうる恒久的埋め込み物として設計される。
【0017】
[18] ステントを含む埋め込まれたインターベンションコンポーネントは、さらに、血栓溶解薬などの薬剤を運ぶために使用されてきた。Froixの米国特許第5,163,952号では、ステントの材料自体を不活性なポリマー薬物担体として使用することにより薬剤を運ぶように形成されうる熱記憶膨張プラスチックステントデバイスを開示している。親水性(又は疎油性)薬物を含む薬物担持コーティングからの薬物溶出速度は通常、コーティングされたデバイスが体液又は血液に接触したとき、最初、非常に高速である。そこで、薬物送達ステントの今も続く問題は、損失及び全身性副作用を最小限に抑えつつ体内の標的部位における治療薬剤濃度を得ることである。いわゆる爆発的放出効果を低減する一技術では、例えば、米国特許第5,605,696号及び米国特許第5,447,724号において説明されているような、生物活性物質を含むコーティング層上にポロシゲンを含有する膜を付加することである。ポリマーは、さらに、例えば、米国特許第6,419,692号で教示されているように、薬物放出コーティングとしてステント上で使用される。米国特許第6,284,305号では、エラストマーオーバーコートが、ステントに設けられたアンダーコートからの生物活性物質の放出を制御する、エラストマーコーティングされた埋め込み物を説明している。米国特許第5,624,411号では、薬物の投与を制御するステント上の多孔質ポリマーを開示している。国際公開第0187372号パンフレットでは、ラパマイシンとデキサメタゾンを含む、薬物の組合せを担持させたポリマーでコーティングされたステントを説明している。Pinchukは、米国特許第5,092,877号において、薬物の送達に伴うコーティングとともに使用することができるポリマー材料のステントを開示している。生体分解性又は生体吸収性ポリマーを使用する種類のデバイスを対象とする他の特許は、Tangらの米国特許第4,916,193号及びMacGregorの米国特許第4,994,071号を含む。Sahatjianは、米国特許第5,304,121号において、ヒドロゲルポリマー及び事前選択薬物からなるステントに塗布されるコーティングを開示しており、可能な薬物としては、細胞増殖阻害剤及びヘパリンがある。溶媒内にポリマーコーティングが溶解され、その後蒸発する溶媒内に分散された治療物質を担持するコーティングされた血管内ステントを作る他の方法は、Bergらの米国特許第5,464,650号で説明される。
【0018】
[19] 「Medical Device Design−A Systems Approach:Central Venous Catheters」、22nd International Society for the Advancement of Material and Process Engineering Technical Conference(1990)のMichael N.Helmusによる記事は、ヘパリンを放出するポリマー/薬物/膜系に関係する。これらのポリマー/薬物/膜系では、2つの異なる層が機能する必要がある。Dingらの米国特許第6,358,556号では、生物活性種が治癒コーティング内に組み込まれている生体安定疎水性エラストマーを使用してステントプロテーゼをコーティングする工程について説明している。これらのコーティングでは、ポリマーの量は、比較的多く、例えば、薬物担持コーティングの約70%である。
【0019】
[20] したがって、医療デバイスからの親水性有益薬剤送達の制御を改善する必要が依然としてあり、この医療デバイスにより、爆発的放出効果が低減され、何らかの疎水性コーティングに伴う副作用なしで有益薬剤の長時間にわたる送達が可能になる。さらに、2つ以上の有益薬剤の局所放出の制御が改善された医療デバイスも必要である。さらに、送達の直後若しくは送達の後まもなく1つ又は複数の有益薬剤を放出し、続いて長時間にわたって同じ又は他の有益薬剤を制御しつつ送達することができる医療デバイスが必要である。
【0020】
[21] 以前の薬剤溶出性ステントは、治療薬をもっぱらステント留置の部位のすぐ近くにある組織に送達するように形成されていた。この目的は、新生内膜形成を制御し、冠状動脈系の速やかな治癒を可能にすることであった。その結果、送達される1つ又は複数の多量の薬物が、ステント埋め込みの部位に隣接する血管組織内に存在するか、長時間ステント上に留まるか、又は血流内に放出される。装置のすぐ近くにない組織に有益薬剤を深く浸透させる薬剤及び装置に対する満たされていない要求がある。例えば、隣接する組織に薬物を送達するだけでなく、心筋を貫通し、薬物を治療上有益な投薬量だけ大きな組織塊に供給するステントからの薬物の送達は、特に魅力的である。
【0021】
[発明の概要]
本発明は、親油性薬剤を送達するためのシステムであって、医療デバイスと、体腔に浸透することができる第1の親油性薬剤とを備え、第1の親油性薬剤の移動係数が少なくとも約5,000(μg/mL)−1の量であり、第1の親油性薬剤が医療デバイスに付随し、第1の親油性薬剤/医療デバイスが前記体腔に隣接して留置され、治療有効量の第1の親油性薬剤が対象体内の所望の領域に送達される、システムに関する。
【0022】
本発明の別の態様は、隣接する疾病を治療及び/又は予防するか、又は体腔の開通性を維持するために医療デバイスを体腔内に留置することを含む、対象における開通性を改善する方法であって、医療デバイスを体腔内に準備するステップと、体腔に浸透することができる第1の親油性薬剤であって、移動係数が少なくとも約5,000(μg/mL)−1の量であり、医療デバイスに付随する、第1の親油性薬剤を準備するステップと、第1の親油性薬剤/医療デバイスを体腔に隣接して留置するステップと、治療有効量の第1の親油性薬剤を対象体内の所望の領域に送達するステップとを含む、方法に関する。
【0023】
本発明のさらに別の態様は、医療デバイスに付随する治療有効量の第1の親油性薬剤を備える医療デバイスであって、第1の親油性薬剤が体腔に浸透することができ、第1の親油性薬剤の移動係数が少なくとも約5,000(μg/mL)−1の量であり、第1の親油性薬剤/医療デバイスが対象の体腔に隣接して留置され、治療有効量の第1の親油性薬剤を対象の所望の領域に送達することができる、医療デバイスに関する。
【0024】
[25] 本発明のさらに別の態様は、ステントに付随する治療有効量の第1の親油性薬剤を備えるステントであって、第1の親油性薬剤が体腔に浸透することができ、第1の親油性薬剤の移動係数が少なくとも約5,000(μg/mL)−1の量であり、第1の親油性薬剤/ステントが対象の体腔に隣接して留置され、治療有効量の第1の親油性薬剤を対象の所望の領域に送達することができる、ステントに関する。
【0025】
[26] 本発明の実施形態の目的は、より親水性が高い全身循環への薬物の喪失を最低限に抑えつつ血管壁中への薬物の摂取を増大させることである。
【0026】
[27] 本発明の実施形態のさらなる目的は、冠状動脈の経皮的インターベンションにおける再狭窄を減らす薬物送達システムを提供することである。
【0027】
[28]本発明の他の目的は、薬剤溶出性医療デバイス(DES、薬剤溶出性ステントを含む)の生体内薬物動態学に関する理解を深めることである。
【0028】
[29] 本発明の実施形態のさらに他の目的は、ラパマイシンよりも高い親油性を有する化合物を提供することである。
【0029】
[30] 本発明の実施形態のさらに他の目的は、動脈壁の組織細胞内への薬物輸送を改善し、薬物の組織貯留を改善することである。
【0030】
[31] 本発明の実施形態のさらに別の目的は、薬物を医療デバイスから隣接組織により深く浸透させ、より広い範囲にわたり分配させて、治療有効量の薬物の、対象の標的領域への送達を可能にすることである。
【0031】
前記の概要及び以下の詳細な説明は、例示的であり、説明のみを目的としており、請求されている本発明を制約するものとしてみなされないことは理解されるであろう。本発明のさらなる利点は、付属の図面に概略が示され、添付の特許請求の範囲に記載されている以下の開示された実施形態の詳細な説明をよく読んだ後に明らかになるであろう。
【0032】
[発明の実施形態の詳細な説明]
[61] 本発明は、親油性薬剤を体腔に送達するための装置、方法、及び薬物送達システムに関する。本発明の一態様は、親油性薬剤を送達するためのシステムであって、医療デバイスと、体腔に浸透することができる第1の親油性薬剤とを備え、第1の親油性薬剤の移動係数が少なくとも約5,000(μg/mL)−1の量であり、第1の親油性薬剤が医療デバイスに付随し、第1の親油性薬剤/医療デバイスが前記体腔に隣接して留置され、治療有効量の第1の親油性薬剤が対象内の所望の領域に送達される、システムに関する。
【0033】
[62] 本発明の別の態様は、隣接する疾病を治療及び/又は予防するか、又は体腔の開通性を維持するために医療デバイスを体腔内に留置することを含む、対象における開通性を改善する方法であって、医療デバイスを体腔内に準備するステップと、体腔に浸透することができる第1の親油性薬剤であり、その移動係数が少なくとも約5,000(μg/mL)−1の量であり、医療デバイスに付随する、親油性薬剤を準備するステップと、第1の親油性薬剤/医療デバイスを体腔に隣接して留置するステップと、治療有効量の第1の親油性薬剤を対象体内の所望の領域に送達するステップとを含む、方法に関する。
【0034】
本発明のさらに別の態様は、医療デバイスに付随する治療有効量の第1の親油性薬剤を備える医療デバイスであって、第1の親油性薬剤が体腔に浸透することができ、第1の親油性薬剤の移動係数が少なくとも約5,000(μg/mL)−1の量であり、第1の親油性薬剤/医療デバイスが対象の体腔に隣接して留置され、治療有効量の第1の親油性薬剤を対象体内の所望の領域に送達することができる、医療デバイスに関する。
【0035】
本発明のさらに別の態様は、ステントに付随する治療有効量の第1の親油性薬剤を備えるステントであって、第1の親油性薬剤が体腔に浸透することができ、第1の親油性薬剤の移動係数が少なくとも約5,000(μg/mL)−1の量であり、第1の親油性薬剤/ステントが対象の体腔に隣接して留置され、治療有効量の第1の親油性薬剤を対象体内の所望の領域に送達することができる、ステントに関する。
【0036】
定義
本明細書及び添付の請求項で使用されているように、単数形で表されている用語(“a”、“an”、及び“the”)は、明示的に、また明確に、1つの指示対象に制限されていない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。本明細書で使用されている「薬剤」という用語は、「少なくとも1つの薬剤」、「化合物」、又は「少なくとも1つの化合物」と同義であり、少なくとも1つの薬物若しくはコドラッグ、又はそのプロドラッグを意味する。
【0037】
本明細書で使用されている「有益薬剤」という用語は、好適な医療デバイスから送達されたときに治療上有益な効果を発揮する薬剤を意味する。本明細書で使用されている「有益薬剤」は、有益な若しくは有用な結果をもたらす、化合物、化合物の混合物、又は化合物からなる組成物を指す。有益薬剤は、ポリマー、マーカー、例えば放射線不透過性色素若しくは粒子であるか、又は医薬品及び治療薬を含む薬物、或いは制限することなく無機又は有機薬物を含む薬剤であることができる。薬剤又は薬物は、非荷電性分子、分子錯体の成分、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ラウリン酸塩、パルミチン酸塩、リン酸塩、硝酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、及びサリチル酸塩などの薬学的に許容される塩などのさまざまな形態のものとすることができる。
【0038】
[68] 不溶性の薬剤又は薬物は、その水溶性誘導体の形態で使用され、溶質としての有効な機能を果たすことができ、装置から放出されると、酵素により変換され、身体のpH、又は代謝過程により、生物学的に活性な形態に加水分解される。それに加えて、薬剤又は薬物製剤は、溶液、分散液、ペースト、粒子、顆粒、乳剤、懸濁液、粉末などのさまざまな知られている形態をとりうる。薬物又は薬剤は、必要に応じて、ポリマー又は溶媒と混合することも、しないこともできる。
【0039】
[69] 例示することを目的とし、また制限することなく、薬物又は薬剤は、抗血栓剤、抗凝血剤、抗血小板薬、血栓溶解薬、抗増殖剤、抗炎症剤、過形成を抑制する薬剤、平滑筋増殖の阻害剤、抗生物質、増殖因子阻害剤、又は細胞接着阻害剤を含むことができる。他の薬物又は薬剤は、限定はしないが、抗悪性腫瘍薬、抗有糸分裂薬、抗フィブリン剤、抗酸化薬、内皮細胞回復を促進する薬剤、抗アレルギー物質、放射線不透過性物質、ウイルスベクター、アンチセンス化合物、オリゴヌクレオチド、細胞透過促進剤、細胞接着促進剤、核酸、モノクローナル抗体、血糖降下薬、脂質低下薬、タンパク質、赤血球生成促進に有用な薬剤、血管形成剤、及びこれらの組合せを含む。
【0040】
このような抗血栓剤、抗凝血剤、抗血小板薬、及び血栓溶解剤の例としては、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、ヘパリン様物質、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、ヴァプリプロスト(vapriprost)、プロスタサイクリン及びプロスタサイクリン類似体、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成抗トロンビン剤)、ジピリダモール、糖タンパク質IIb/IIIa(血小板細胞膜受容体拮抗薬抗体)、組換え型ヒルジン、及びBiogen,Inc.社(マサチューセッツ州ケンブリッジ所在)のAngiomax(商標)などのトロンビン阻害剤、並びにウロキナーゼ、例えばAbbott Laboratories Inc.(イリノイ州ノースシカゴ所在)のAbbokinase(商標)、Abbott Laboratories Inc.の組換え型ウロキナーゼ及びプロウロキナーゼ、組織プラスミノゲン活性化因子(Genentech(カリフォルニア州サウスサンフランシスコ所在)のAlteplase(商標))及びテネクテプラーゼ(TNK−tPA)などの血栓溶解薬がある。
【0041】
このような細胞増殖抑制剤又は抗増殖剤の例としては、ラパマイシン及びその類似体として例えばエベロリムス、ゾタロリムス、つまり、3S,6R,7E,9R,10R,12R,14S,15E,17E,19E,21S,23S,26R,27R,34aS)−9,10,12,13,14,21,22,23,24,25,26,27,32,33,34,34a−ヘキサデカヒドロ−9,27−ジヒドロキシ−3−[(1R)−2−[(1S,3R,4R)−3−メトキシ−4−テトラゾール−1−イル)シクロヘキシル]−1−メチルエチル]−10,21−ジメトキシ−6,8,12,14,20,26−ヘキサメチル−23,27−エポキシ−3H−ピリド[2,1−c][1,4]オキサアザシクロヘントリアコンチン−1,5,11,28,29(4H,6H,31H)−ペントン;23,27−エポキシ−3Hピリド[2,1−c][1,4]オキサアザシクロヘントリアコンチン−1,5,11,28,29(4H,6H,31H)−ペントン、タクロリムス及びピメクロリムス、アンジオペプチン、カプトプリルなどのアンジオテンシン変換酵素阻害剤、例えば、Bristol−Myers Squibb Co.(コネチカット州スタンフォード所在)のCapoten(登録商標)及びCapozide(登録商標)、シラザプリル又はリシノプリル、例えば、Merck & Co.,Inc.(ニュージャージー州ホワイトハウスステーション所在)のPrinivil(登録商標)及びPrinzide(登録商標)、ニフェジピン、アムロジピン、シルニジピン、レルカニジピン、ベニジピン、トリフルペラジン、ジルチアゼム及びベラパミルなどのカルシウムチャネル遮断薬、線維芽細胞増殖因子拮抗薬、魚油(オメガ3−脂肪酸)、ヒスタミン拮抗薬、ロバスタチン、例えば、Merck & Co.,Inc.(ニュージャージー州ホワイトハウスステーション所在)のMevacor(登録商標)がある。それに加えて、エトポシド及びトポテカンなどのトポイソメラーゼ阻害剤、さらにはタモキシフェンなどの抗エストロゲン剤を使用することができる。
【0042】
[72] そのような抗炎症薬の例としては、ベタメタゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、ブデゾニド、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、及びヒドロコルチゾンなどのコルヒチン及びグルココルチコイドがある。非ステロイド系抗炎症剤としては、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナク、ジフルニサル、アセトミノフェン、インドメタシン、スリンダク、エトドラク、ジクロフェナク、ケトロラク、メクロフェナム酸、ピロキシカム、及びフェニルブタゾンがある。
【0043】
[73] そのような抗悪性腫瘍薬の例としては、アルトレタミン、ベンダムシン、カルボプラチン、カルムスチン、シスプラチン、シクロホスファミド、ホテムスチン、イホスファミド、ロムスチン、ニムスチン、プレドニムスチン、及びトレオスルフィンを含むアルキル化薬、ビンクリスチン、ビンブラスチン、パクリタキセル、例えば、Bristol−Myers Squibb Co.(コネチカット州スタンフォード所在)のTAXOL(登録商標)、ドセタキセル、例えば、Aventis S.A.(ドイツ、フランクフルト所在)のTaxotere(登録商標)を含む抗有糸分裂薬、メトトレキサート、メルカプトプリン、ペントスタチン、トリメトレキサート、ゲムシタビン、アザチオプリン、及びフルオロウラシルを含む代謝拮抗物質、並びに抗生物質、例えば塩酸ドキソルビシン、例えば、Pharmacia & Upjohn(ニュージャージー州ピーパック所在)のAdriamycin(登録商標)、及びマイトマイシン、例えば、Bristol−Myers Squibb Co.(コネチカット州スタンフォード所在)のMutamycin(登録商標)、エストラジオールを含む内皮細胞回復を促進する薬剤がある。
【0044】
[74] 本出願で使用することができる追加の薬物としては、RPR−101511Aなどのチロシンキナーゼの阻害剤、Abbott Laboratories Inc.(イリノイ州ノースシカゴ所在)のTricor(商標)(フェノフィブラート)などのPPAR−アルファアゴニスト、一般式C2938ClH及び下記構造式
[75]
【化2】


を有するアトラセンタン(ABT−627)を含む、Abbott Laboratories Inc.(イリノイ州ノースシカゴ所在)によるエンドセリン受容体アンタゴニスト、一般式C2122NOSを有し、また下記構造式
【化3】


を有する、Abbott Laboratories Inc.(イリノイ州ノースシカゴ所在)によるABT−518などのマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、ペルミロラストカリウムニトロプルシドなどの抗アレルギー剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニン阻害剤、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害剤、トリアゾロピリミジン、及び一酸化窒素がある。
【0045】
少なくとも1つの有益薬剤が本発明において使用される場合、この有益薬剤は、限定はしないが、抗潰瘍薬/抗逆流薬、及び制嘔吐薬/制吐薬のうちの少なくとも1つ、並びにそれらの任意の組合せを含む。少なくとも1つの有益薬剤が本発明において使用される場合、この有益薬剤は、限定はしないが、サリチル酸フェニル、β−エストラジオール、テストステロン、プロゲステロン、シクロスポリンA、カルベジオール、ビンデシン、葉酸、トロンボスポンジン模倣剤、エストラジオール、メトリザミド、イオパミドール、イオヘキソール、イオプロミド、イオビトリドール、イオメプロール、イオペントール、イオベルソール、イオキシラン、イオジキサノール、イオトロラン及びプロドラッグ、類似体、誘導体、並びにこれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含む。
【0046】
[80] 上記の有益薬剤は、予防特性及び治療特性を有することで知られているが、それらの物質又は薬剤は、例として取りあげられており、制限することを意図していない。さらに、現在利用可能な、又は開発される可能性のある他の有益薬剤は、本発明の実施形態と併用する場合についても同様に利用できる。
【0047】
[81] 「生体適合性のある」及び「生体適合性」という用語は、本明細書で使用される場合、当技術分野で認知されている用語であり、指示対象が、それ自体宿主(例えば、動物又はヒト)に対し有毒であることはなく、また宿主体内で毒性濃度で副産物(例えば、モノマー若しくはオリゴマーサブユニット又は他の副産物)を生成したり、炎症若しくは刺激を引き起こしたり、又は免疫反応を誘発したりする速度で分解することも(分解する場合)ないことを意味する。任意の対象体組成物が、生体適合性ありとみなされるのに100%の純度を有する必要はない。したがって、対象体組成物は、例えば、本明細書に記載のポリマー及び他の材料及び賦形剤を含め、生体適合性のある薬剤の99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、80%、75%、又はさらに少ないパーセントを占め、それでも生体適合性であってよい。
【0048】
[82] 「予防」という用語は、当技術分野で認知されており、局所再発(例えば、痛み)を含む状態、癌を含む疾患、心不全又は任意の他の病状を含む症候群に関連して使用される場合に、当技術分野でよく理解されており、また組成物を投与しない対象に対して、対象の病状の症状の頻度を低減する、又はその症状の発現を遅らせる組成物の投与を含む。したがって、癌の予防は、例えば、未治療対照群に対して、予防的処置を受ける患者群における検出可能な癌性増殖の数を減らすこと、及び/又は治療群における検出可能な癌性増殖の出現を、未治療対照群に対し、例えば統計的及び/又は臨床的に有意な期間だけ遅らせることを含む。感染の予防は、例えば、未治療対照群に対する治療群における感染の診断数を低減すること、及び/又は未治療対照群と比較して治療群における感染の症状の発現を遅らせることを含む。痛みの防止は、例えば、未治療対照群に対する治療群内の対象が経験する痛覚の程度を低減するか、又はそれとは別に、痛覚を遅らせることを含む。
【0049】
「ポリマー」という用語は、天然であろうと合成であろうと、ランダム、交互、ブロック、グラフト、ブランチ、架橋、ブレンド、ブレンドの組成物、及びこれらの変更形態を含む、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどを包含する重合反応の生成物を含むことが意図されている。ポリマーは、真溶液中、飽和、又は粒子として懸濁、又は有益薬剤中の過飽和の状態で存在しうる。ポリマーは、生体適合性、又は生体分解性であってよい。例示することを目的とし、限定することなく、ポリマー材料は、MPCを2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、LMAをメタクリル酸ラウリル、HPMAをメタクリル酸ヒドロキシプロピル、TSMAをメタクリル酸トリメトキシシリルプロピルとするポリ(MPC:LMA:HPMA:TSMA)などのペンダントホスホリルコリン基を含む高分子を含むホスホリルコリン結合高分子、ポリカプロラクトン、ポリ−DL−乳酸、ポリ−L−乳酸、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート−co−バレレート)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリアンヒドリド、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコール酸−co−トリメチレンカーボネート)、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、シアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、ポリイミノカーボネート、及び脂肪族ポリカーボネート、フィブリン、フィブリノゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン、Parylene(登録商標)、Parylast(登録商標)、ポリカーボネートウレタンを含むポリウレタン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、エチレン酢酸ビニル、エチレンビニルアルコール、ポリシロキサン及び置換ポリシロキサンを含むシリコーン、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンテレフタレート−co−PEG、PCL−co−PEG、PLA−co−PEG、ポリアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、及びこれらの組合せを含む。他の好適なポリマーの限定されない例として、一般に熱可塑性エラストマー、ポリオレフィンエラストマー、EPDMゴム及びポリアミドエラストマー、並びにアクリルポリマーとその誘導体、ナイロン、ポリエステル、及びエポキシを含む生体安定プラスチック材料がある。他のポリマーは、Bowersらの米国特許第5,705,583号及び第6,090,901号、及びTaylorらの米国特許第6,083,257号において開示されているようなペンダントホスホリル基を含み、米国特許第5,705,583号及び第6,090,901号では、ホスホリルコリンポリマー(PC−1036及びPC−2126を含む)を教示しており、これらの文献はすべて参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
[84] 本明細書で使用される「プロドラッグ」という用語は、生体内で、例えば、血中での加水分解によって上記の式の親化合物に変換される化合物を指す。詳細な説明が、A.C.S.シンポジウムシリーズのT.Higuchi及びV.Stella、「Pro−drugs as Novel Delivery systems」、Vol.14、及びEdward B.Roche,ed.「Bioreversible Carriers in Drug Design.」、American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987に掲載されており、両方とも参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
[85] 本明細書で使用されている「対象」という用語は、限定はしないが、ヒト、ブタ、イヌ、サル、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ネズミ、ハツカネズミ、及びテンジクネズミを含む、任意の温血動物及び哺乳類を指す。
【0052】
[86] 「治療」という用語は、当技術分野で認知されている用語であり、疾患、障害及び/又は状態にかかりやすいが、それを患っているという診断がまだなされていない動物に疾患、障害又は状態が発生するのを防止することと、疾患、障害又は状態を阻止すること、例えば、その進行を遅らせることと、疾患、障害、又は状態を軽減すること、例えば、疾患、障害及び/又は状態の回復をもたらすことを含む。疾患又は状態を治療することは、鎮痛薬の投与により、たとえそのような薬剤で疼痛の原因が治療されないとしても対象の疼痛を治療することなど、根本の病態生理が影響を受けないとしても特定の疾患又は状態の少なくとも1つの症状を寛解することを含む。
【0053】
以下は、上記の態様の実施形態の実用的な、また予言的な実施例であり、決して制限することを意図していない。ゾタロリムス(ABT−578)、ラパマイシン、シロリムス(siloilums、ラパマイシン)、バイオリムスA−9、エベロリムス、パクリタキセル、デキサメタゾン、及びエストラジオールは、すべて、冠状動脈の経皮的インターベンションにおいて再狭窄を低減する薬物溶出性ステントでの使用について提案されている。局所薬物送達及び組織内取り込みは、薬物溶解性及び親油性に依存するので、これらの化合物に対する正確な物理化学的特徴を決定する研究を行った。薬物分子(結晶形と非晶形の両方)の溶解度及び親油度(LogP)を決定した。これらの研究の結果、薬物溶出性ステントの生体内薬物動態学の理解が進む。
【0054】
さまざまな薬物の溶解度及び分配係数を決定する方法
「溶解度」は、医薬品化学で使用される標準的尺度に基づく。オクタノール−水分配係数(P)は、1−オクタノールとHOの混合物中の化合物分配の比である。LogPは、分配係数の10を底とする対数である。
【0055】
【数1】

【0056】
LogP値が約1よりも大きい化合物は、親油性とみなされる(HOに比べて1−オクタノールの溶解度が大きい)。さまざまなコンピュータ化プロトコルを使用して、LogP値の計算推定値を求めることができる。このようなコンピュータプログラムの1つに、CambridgeSoftCorporationのChemDraw Pro Version 5.0がある。LogP係数を計算するために、クリッペンのフラグメンテーション法(Crippenら、J.Chem.Inf.Comput.Sci.1987,27,21)を使用することができる。
【0057】
[92] 溶解度及び分配係数の研究に、振盪フラスコ法を使用した。この両方の方法について最適な条件を評価するために、予備分析を行った。分配係数法では、薬物を有機相(n−オクタノール)中に溶解させ、次いで、緩衝用水を加えて、有機相から薬物を抽出した。最後に、両方の相中の薬物濃度は、薬物化合物の分配係数により決定される平衡状態に到達する。溶解度試験に関して、初期評価を実施して、飽和溶液からの薬物粒子の全分離を確認し、実験装置による薬物の吸着を避けた。複数の平衡時間(2時間から最大5日までの間)で測定を実施した。実証済みのHPLC法により、すべての薬物化合物の濃度のアッセイを実行した。
【0058】
[93] 分配係数(オクタノール/水)の測定の際に、それぞれの試験に対する最適な薬物濃度、及び分配平衡を確定するための適切な時間を決定するために予備研究を行った。すべての実験は、2つの異なる検体を使用し、複数の薬物ロットで実施された。
【0059】
[94] 結果は、図20に示されている(DES=薬物溶出性ステント)。薬物間の分配係数の違いは400倍を超える。これらの結果から、「リムス」薬物のゾタロリムスとラパマイシンは、試験された群の中で最も親油性の高い化合物であることが分かった。これらのうち、ゾタロリムスの親油性は、ラパマイシンの2倍を超える。これらの実験の結果から、ZoMaxx(商標)冠状動脈薬物溶出性ステント(Abbott Vascular Inc.)から送達する現在の臨床試験におけるラパマイシン類似体であるゾタロリムスは、非晶質ラパマイシンに比べて水にかなり溶けにくく、試験されたすべてのDES薬物のうち最も親油性が高いことが分かる。この特性は、ゾタロリムスが血管壁に優先的に取り込まれ、より親水性の高い全身循環への薬物の損失が最低限に抑えられることを示唆している。親油性は、動脈壁の組織細胞中への薬物輸送を改善し、薬物の組織貯留を改善する。
【0060】
DES中の薬物送達は、理想的には、優勢な組織内取り込みで生じるが、薬物は、さらに、血液中にも分配される。その結果、高い水溶解度は、局所薬物生体利用性にマイナスの影響を及ぼしうる。親油度及び溶解度が、DES薬物送達において制御因子であると、上記試験により決定されている。
【0061】
大半の薬物溶出性ステントは、ポリマーマトリクス中で混合される非晶質薬物を有するが、バルクDES薬物は、非晶形又は結晶形のいずれかの中に存在する。そこで、非晶形及び結晶形の両方についてDES薬物に関する溶解度データを調べた。ラパマイシンは、非晶質又は結晶質のいずれかとすることができ、ゾタロリムスは、非晶質であり、パクリタキセルは、2つの結晶形を有することが分かった。非晶質DES薬物の水溶解度は、昇順に、パクリタキセル、ゾタロリムス、ラパマイシン、及びデキサメタゾン(結晶質)である。
【0062】
移動係数τは、PをSで除算した値として定義することができるが、ただし、Pは、分配係数であり、Sは、図21に示されているように、平衡水溶解度(μg/ml)に等しい。これらの研究から、研究されたDES薬物に対する移動係数は、ゾタロリムス>>パクリタキセル>>ラパマイシン>デキサメタゾンの順であることが実証されている。Sが薬物の非晶形の平衡水溶解度に等しい場合も可能であった。
【0063】
本発明の態様は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は賦形剤をさらに備え、医療デバイスは、薬学的に許容される担体又は賦形剤に付随される。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体又は賦形剤は、ポリマーである。他の実施形態では、薬学的に許容される担体又は賦形剤は、薬剤である。ポリマーが薬学的に許容される担体又は賦形剤として使用される場合、第1の親油性薬剤の送達機序は、ポリマー水和反応とそれに続く第1の親油性薬剤の溶解を含み、その後、第1の親油性薬剤は、体腔内に送達される。他の送達機序は、体腔への第1の親油性薬剤の溶出速度を制御する第1の親油性薬剤/ポリマーマトリクスを含む。
【0064】
[99] 本発明のいくつかの実施形態は、少なくとも1つの第2の親油性薬剤、少なくとも1つの親油性プロドラッグ、少なくとも1つの有益薬剤、少なくとも1つの親油性浸透促進剤、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つをさらに備える。親油性浸透促進剤が使用されるいくつかの実施形態では、この浸透促進剤は、医薬品である。
【0065】
[100] 本発明のさらなる実施形態は、虚血又は梗塞心臓組織の面積又は範囲を縮小するために心筋壁に薬物送達をもたらすことである。この目的のために使用される薬剤の例は、限定はしないが、カルシウムチャネル遮断薬(ニフェジピン、ジルチアゼム、ニカルジピン、及びベラパミル)、交感神経β遮断薬(ナドロール、メトプロロール、プロプラノロール、アテノロール、及びエスモロール)、並びに硝酸塩(ニトログリセリン及び硝酸イソソルビド)を含む。本発明のさらに別の実施形態は、心不全の治療における心筋の収縮性を改善するために心筋壁の運動不足又は運動不能領域に薬物を送達することである。薬物の例は、カルベジオールに限定することなく、非選択的β及びα受容体遮断特性を持つアドレナリンアンタゴニスト、ジギタリスなどの強心配糖体、及びレボシメンダンなどのカルシウム感受性増強薬を含む。マトリクスメタロプロテイナーゼ(バチミスタット、プリノマスタット、マリミスタット、及びABT−518)又はマクロライド系抗生物質アジスロマイシンの阻害剤などの、不安定プラークを安定化させるための薬剤の送達も、行うことができる。限定はしないが、尿道を含む、体腔の開通性を維持するために、アルキル化薬及び代謝拮抗物質などの化学療法薬剤の送達を利用することができる。
【0066】
[101] 体腔又は所望の標的領域に送達される第1の親油性薬剤の集積(concentration)は、治療有効量である。第2の親油性薬剤が使用される場合、第1の親油性薬剤と組み合わせた第2の親油性薬剤の集積は、治療有効量で体腔内又は所望の標的領域内に送達される。
【0067】
本発明で使用される場合、第1の親油性薬剤及び/又は第2の親油性薬剤ゾタロリムスは、以下の構造を有する。
【0068】
【化4】

【0069】
本願明細書における体腔は、限定はしないが、動脈又は静脈の血管壁を含む。他の実施形態では、体腔は、限定はしないが、血管壁、冠状動脈、食道管腔、又は尿道のうちの少なくとも1つを含む。例えば、第1の親油性薬剤/医療デバイスは、体腔(冠状動脈)に隣接して留置され、治療有効量の第1の親油性薬剤は、前記冠状動脈内に送達され、薬物送達システム内の心膜嚢内に拡散される。諸実施形態では、本発明は、心筋への親油性薬剤の実質的に一様な薬物送達をもたらし、及び/又は対象の血管疾患の治療及び/又は予防に使用できる。諸実施形態では、親油性薬剤は、心外膜及び/又は心膜嚢に連続的に送達される。
【0070】
[106] 第1の親油性薬剤の諸実施形態は、20,000を超える分配係数を有する薬剤を含む。本発明の諸実施形態では、第1の親油性薬剤は、少なくとも約10,000(μg/mL)−1の移動係数を含む。他の実施形態では、第1の親油性薬剤は、少なくとも約15,000(μg/mL)−1の移動係数を含む。第1の親油性薬剤の諸実施形態は、図24に示されているように、少なくとも約4.3のLogPを有する化合物を含む。第1の親油性薬剤は、20,000Pを超える分配係数を含み、親油性薬剤は、約30μg/ml未満の溶解度を含む。諸実施形態では、第1の親油性薬剤は非晶質である。
【0071】
[107] 図22は、ZoMaxx(商標)ステント対Cypher(登録商標)ステントにより、薬物溶出によるウサギの組織中の薬物濃度を比較するウサギ研究結果である。第1の親油性薬剤を血管組織内に送達する投薬量は、最大約5日までの期間にわたって約15μg/gから約150μg/gの範囲である。他の実施形態では、第1の親油性薬剤を血管組織内に送達する投薬量は、約5日から最大約15日までの期間にわたって約15μg/gから約80μg/gの範囲である。0日から15日までの間のどの時点においても、コンパレータCypher(登録商標)ステントは、10μg/gよりも高いラパマイシン濃度に達する。さらに他の実施形態では、第1の親油性薬剤を血管組織内に送達する投薬量は、15日から最大約28日までの期間にわたって約5μg/gから約60μg/gの範囲である。さらに他の実施形態では、第1の親油性薬剤を送達する投薬量は、28日の時点において比較Cypher(登録商標)ステントの送達投薬量の5倍を常に超える。
【0072】
図23は、ZoMaxx(商標)ステント対Cypher(登録商標)ステントについての、ウサギの血液中の薬物濃度を比較する同じウサギ研究からのものである。Cypher(登録商標)ステントから溶出されたラパマイシンの血中濃度は、ZoMaxx(商標)ステントから溶出されたゾタロリムスの血中濃度に比べて一貫して著しく高い。
【0073】
図25は、ブタモデルにおいてZoMaxx(商標)ステントから溶出されたゾタロリムスの血中濃度、肝臓中濃度、腎臓中濃度、動脈中濃度、及び心筋中濃度を示すグラフである。かなりの濃度のゾタロリムスが、28日までのすべての期間においてステント留置部に隣接する動脈組織に送達される。意外なことに、ゾタロリムスは、遠位の心筋、ステント留置されていない心筋、及び下部の心筋、並びにステント留置されていない遠位の冠状動脈においても治療上有意な濃度に達し、実験の続く28日間ずっとそれらの濃度を維持する。
【0074】
本発明の諸実施形態では、医療デバイスは、限定はしないが、血管内医療デバイスを含む。諸実施形態では、医療デバイスは、対象の血管系内で使用される、ステント、薬物送達カテーテル、グラフト、及び薬物送達バルーンのうちの少なくとも1つを含む冠動脈内医療デバイスを含む。医療デバイスがステントである場合、このステントは、末梢血管ステント、末梢血管冠状動脈ステント、分解可能冠状動脈ステント、分解不可能冠状動脈ステント、自己拡張ステント、バルーン拡張ステント、及び食道ステントを含む。他の実施形態では、医療デバイスは、限定はしないが、動静脈グラフト、バイパスグラフト、ペニス整形、血管移植及びグラフト、静脈内カテーテル、小口径グラフト、人工肺カテーテル、電気生理学カテーテル、骨ピン、縫合糸アンカー、血圧及びステントグラフトカテーテル、乳房インプラント、良性前立腺過形成及び前立腺癌インプラント、骨修復/強化デバイス、乳房インプラント、整形外科用関節インプラント、人工歯根、埋め込まれた薬物注入管、腫瘍インプラント、疼痛処理インプラント、神経学的カテーテル、中心静脈アクセスカテーテル、カテーテルカフ、血管アクセスカテーテル、泌尿器カテーテル/インプラント、アテローム切除カテーテル、凝血塊採取カテーテル、PTAカテーテル、PTCAカテーテル、探り針(血管及び非血管)、薬物注入カテーテル、血管造影用カテーテル、血液透析カテーテル、神経血管バルーンカテーテル、胸腔吸引ドレナージカテーテル、電気生理学カテーテル、脳卒中治療カテーテル、膿瘍ドレナージカテーテル、胆道ドレナージ製品、透析カテーテル、中心静脈アクセスカテーテル、及びパレンタルフィーディングカテーテルのうちの少なくとも1つを含む。
【0075】
[111] さらに他の実施形態において、医療デバイスは、限定はしないが、動脈又は静脈のペースメーカー、血管グラフト、括約筋デバイス、尿道デバイス、膀胱デバイス、腎臓デバイス、胃腸及び吻合デバイス、椎間板、止血用障壁、留め具、外科用ステープル/縫合糸/ネジ/プレート/ワイヤ/クリップ、グルコースセンサー、血液酸素付加装置配管、血液酸素付加装置膜、血液バッグ、バースコントロール/IUD及び関連する妊娠調節デバイス、軟骨修復デバイス、整形外科骨折修復部品、組織接着剤、組織シーラント、組織用足場、CSFシャント、歯科骨折修復デバイス、硝子体内薬物送達デバイス、神経再生導管、電気刺激用リード、脊椎/整形外科的修復デバイス、創傷被覆材、塞栓保護フィルタ、腹部大動脈瘤グラフト及びデバイス、神経動脈瘤治療コイル、血液透析デバイス、子宮出血パッチ、吻合閉鎖、体外診断薬、動脈瘤除外デバイス、神経パッチ、大静脈フィルタ、泌尿器拡張器、内視鏡外科及び創傷排液、外科組織抽出装置、遷移シース及び拡張器、冠状動脈及び末梢血管ガイドワイヤ、循環支援システム、中耳腔換気用チューブ、脳脊髄液シャント、除細動器リード、経皮的閉鎖デバイス、ドレナージチューブ、気管支チューブ、血管コイル、血管保護デバイス、血管フィルタ及び遠位支持デバイス並びに塞栓フィルタ/封じ込め補助デバイスを含む血管インターベンションデバイス、AVアクセスグラフト、並びに外科用タンポン、薬物送達カプセル、並びに心臓弁のうちの少なくとも1つを含む。例えば、第1の親油性薬剤/医療デバイスは、体腔(動脈、静脈、又はグラフト)に隣接して置かれ、治療有効量の第1の親油性薬剤が、前記動脈、静脈、又はグラフト内に送達され、薬物送達システム内の心膜嚢内に拡散される。いくつかの実施形態では、本発明は、心筋への親油性薬剤の実質的に一様な薬物送達を行い、及び/又は対象の血管疾患の治療及び/又は予防に有用である。医療デバイスは、対象体内に永久的又は一時的に埋め込まれる。
【0076】
本発明によれば、患者体内への有益薬剤の送達を制御する水和阻害剤に付随する有益薬剤を担持させたインターベンションコンポーネントを有する医療デバイスが実現される。本明細書で使用されているように、「医療デバイス」は、広い意味で、患者体内に投入される任意のデバイスを指す。一実施形態では、本発明は、心臓、血管、又は他の管腔内疾病の治療及び予防のため有益薬剤を調節しつつ送達する医療デバイスを対象とする。この医療デバイスは、管腔内送達又は埋め込みに適している。
【0077】
当技術分野で知られているように、このようなデバイスは、1つ又は複数のインターベンションコンポーネントを備えることができる。例示するために、また制限することなく、このような医療デバイスの例は、ステント、グラフト、ステント−グラフト、弁、フィルタ、コイル、ステープル、縫合糸、ガイドワイヤ、カテーテル、カテーテルバルーンなどを含む。一実施形態では、インターベンションコンポーネントは、送達を目的とする第1の断面寸法、及び投入後の第2の断面寸法を有するインターベンションコンポーネントであり、当技術分野でよく知られているように、バルーン拡張投入技術を含む知られている機械的技術、或いは電気的若しくは熱による作動、又は自己膨張投入技術により投入されうる。例えば、本明細書で具現化されているように、ステント、ステント−グラフト又は類似のインターベンションコンポーネントの代表的な実施形態が、Palmazの米国特許第4,733,665号、Roubinらの米国特許第6,106,548号、Gianturcoの米国特許第4,580,568号、Pennらの米国特許第5,755,771号、Borghiの米国特許第6,033,434号において開示されており、すべて参照により本明細書に組み込まれる。しかし、インターベンションコンポーネントは、有益薬剤を担持させることができる埋め込み可能、又は投入可能なインターベンションコンポーネントの任意のタイプとすることができることに留意されたい。
【0078】
[114] インターベンションコンポーネントは、有益薬剤の担持中に膨張又は収縮状態にありうる。インターベンションコンポーネントの基本構造は、実質的にどのような構造でもよく、またインターベンションコンポーネントは、限定はしないが、ステンレス鋼、「MP35N」、「MP20N」、エラスティナイト(ニチノール)、タンタル、ニッケル−チタン合金、白金−イリジウム合金、クロム−コバルト合金、金、マグネシウム、ポリマー、セラミック、組織、又はこれらの組合せを含む、好適な任意の材料で構成されうる。「MP35N」及び「MP20N」は、Standard Press Steel Co.(ペンシルバニア州ジェンキンタウン所在)から入手可能なコバルト、ニッケル、クロム、及びモリブデンの合金の市販名であると理解される。「MP35N」は、コバルト35%、ニッケル35%、クロム20%、及びモリブデン10%からなる。「MP20N」は、コバルト50%、ニッケル20%、クロム20%、及びモリブデン10%からなる。同様に、インターベンションコンポーネントは、生体吸収性又は生体安定性ポリマーから作ることができる。いくつかの実施形態では、インターベンションコンポーネントの表面は、多孔質又は不浸透性であるか、或いは当技術分野で知られているように有益薬剤を中に保持することを目的として中に形成された1つ又は複数の貯留層若しくは空洞を含む。
【0079】
インターベンションコンポーネントは、当技術分野で知られている任意の数の方法を使用して製造されうる。例えば、インターベンションコンポーネントは、レーザー、放電フライス加工、化学エッチング、又は他の知られている技術を使用して機械加工された中空若しくは成形チューブで製造できる。それとは別に、インターベンションコンポーネントは、当技術分野で知られているようにシートから製造されるか、又はワイヤ若しくはフィラメント構造で形成されうる。
【0080】
本発明によれば、インターベンションコンポーネントは、患者体内に投入されたときにインターベンションコンポーネントから送達される有益薬剤を担持される。本明細書で使用されている「有益薬剤」は、一般に、患者に有益な若しくは有用な結果をもたらす、任意の化合物、化合物の混合物、又は化合物からなる組成物を指す。有益薬剤は、第1のLogP値を有する。
【0081】
「LogP」の記号「P」は、化学物質の計算された分配係数であり、これは、化合物が二相オクタノール−水系内のオクタノール相と水相との間で自己分配される方法の一尺度であり、したがって、いくつかの種類の生物活性の指標である。特に、Pは、オクタノール相内の化合物の濃度(単位はモル/リットル)の無限希釈における水相内の化合物の濃度に対する比である。溶解度は、通常、分配係数LogPの10を底とする対数として表される。LogP及びそれを計算する方法は、当業者によく知られている。LogP値は、(Hansch C.及びLeo A.「Substituent Constants for Correlation Analysis in Chemistry and Biology」、Wiley,N.Y.,1979)において説明されている方法により計算できる。本明細書で開示されているような「比較的低い親水性」又は「比較的大きい親水性」であるという特性は、LogP値の計算に応じて決定される。LogPに対する測定方法及び精度考慮事項に関する説明は、参照により本明細書に組み込まれているSangster,J.,J.Phys.Chem.Ref.Data,18,1111,1989に掲載されている。LogP値は、Hansch C.及びLeo A.「Substituent Constants for Correlation Analysis in Chemistry and Biology」、Wiley,N.Y.,1979において説明されている方法により計算することもできる。LogPの他の説明は、参照により本明細書に組み込まれている、Mackay,D.、Shiu,W.Y.、及びMa,K.C.「Illustrated Handbook of Physical−Chemical Properties and Environmental Fate for Organic Chemicals」、Lewis Publishers/CRC Press,Boca Raton,FL,1992、Shiu,W.Y.及びMackay,D.,J.Phys.Chem.Ref.Data,15,911,1986、Pinsuwan,S.、Li,L.、及びYalkowsky,S.H.、J.Chem.Eng.Data,40,623,1995、Solubility Data Series,International Union of Pure and Applied Chemistry,Vol.20,Pergamon Press,Oxford,1985、Solubility Data Series,International Union of Pure and Applied Chemistry,Vol.38,Pergamon Press,Oxford,1985、Miller,M.M.、Ghodbane,S.、Wasik,S.P.、Tewari,Y.B.、及びMartire,D.E.,J.Chem.Eng.Data,29,184,1984に掲載されている。LogPは、有機物質の生物学的効果の相関を求めるために広く使用されているパラメータである。これは、水と1−オクタノールが一定の温度で平衡状態にあり、物質が、水に富んだ相とオクタノールに富んだ相との間に分配される二相系の特性である。
【0082】
一般に、化合物又は薬剤のLogP値が大きいほど、化合物又は薬剤の親水性は低くなる。また、より大きいLogP値を有する化合物又は薬剤(つまり、「親水性が比較的低い薬剤」)は、より小さいLogP値を有する第2の化合物又は薬剤(つまり、「親水性が比較的高い薬剤」)の水和を阻害することが分かっている。そこで、本発明の実施形態によれば、親水性が比較的低い薬剤を、有益薬剤としてインターベンションコンポーネントから送達される、親水性が比較的高い有益薬剤の水和阻害剤として使用することができるが、ただし、水和阻害剤は、有益薬剤のLogP値よりも大きいLogP値を有する。いくつかの実施形態では、水和阻害剤のLogP値は、有益薬剤よりも少なくとも0.1単位だけ大きく、有益薬剤よりも少なくとも0.5単位だけ大きい。特に、また本発明の一実施形態では、有益薬剤のLogP値は、4.5単位よりも小さく、より好ましくは、3.0単位よりも小さい。「CRC Handbook of Chemistry and Physics」、3rd Electronic Edition,2000を参照のこと。ただし、化合物は、有益薬剤のLogP値が所定の水和阻害剤のLogP値よりも小さい場合に、本発明のいくつかの実施形態により所定の有益薬剤の溶出の水和阻害剤として使用されることが可能である。当業者は、LogP値及びよく知られているその計算方法を熟知しているけれども、例示を目的として、また限定することなく、表1は、本発明のいくつかの実施形態とともに使用するいくつかの好適な有益薬剤に対するLogP値の代表的なまとめである。
【0083】
[119]
[120]
【表1】

【0084】
インターベンションコンポーネントの送達のためのさまざまな好適な有益薬剤がよく知られている。例えば、限定はしないが、LogP値を有するさまざまな好適な有益薬剤は、例えば、放射線不透過性色素又は粒子などのマーカー、例えば、医薬品及び治療薬などの薬物、並びに限定することなく無機又は有機薬物を含む。薬剤又は薬物は、分子錯体の成分、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、及びサリチル酸塩などの薬理学的に許容される塩など、さまざまな形態のものとすることができる。
【0085】
例示することを目的として、限定することなく、薬物又は薬剤は、抗血栓剤、抗凝血剤、抗血小板薬、抗脂肪剤、血栓溶解剤、抗増殖剤、抗炎症薬、過形成を阻害する薬剤、平滑筋細胞阻害剤、抗生物質、成長因子阻害剤、細胞接着阻害剤、細胞粘着促進剤、抗有糸分裂薬、抗フィブリン剤、抗酸化薬、抗悪性腫瘍薬、内皮細胞回復を促進する薬剤、抗アレルギー物質、ウイルスベクター、核酸、モノクローナル抗体、アンチセンス化合物、オリゴヌクレオチド、細胞透過促進剤、プロドラッグ、及びこれらの組合せを含む。他の有益薬剤は、限定はしないが、医薬品として有用なペプチド又は細胞内の対象とする遺伝子を制御するために使用されるアンチセンスオリゴヌクレオチドをエンコードする核酸を含む。
【0086】
[124] 対象とする特定の有益薬剤の例は、インドメタシン、サリチル酸フェニル、β−エストラジオール、ビンブラスチン、ABT−627(アトラセンタン)、テストステロン、プロゲステロン、パクリタキセル、シクロスポリンA、ビンクリスチン、カルベジオール、ビンデシン、ジピリダモール、メトトレキサート、葉酸、トロンボスポンジン模倣剤、エストラジオール、デキサメタゾン、メトリザミド、イオパミドール、イオヘキソール、イオプロミド、イオビトリドール、イオメプロール、イオペントール、イオベルソール、イオキシラン、イオジキサノール、イオトロラン、及びこれらのプロドラッグ、類似体、誘導体、又は組合せを含む。有益薬剤は、溶液、分散液、ペースト、粒子、顆粒、乳剤、懸濁液、粉末などのさまざまな当技術分野で知られている形態をとりうる。有益薬剤は、典型的には、混合物として水和阻害剤に付随するが、後述のように有益薬剤が水和阻害剤として使用される場合に、オーバーコート又は層を含む、独立した用途として関連付けられうる。
【0087】
[125] 前記の有益薬剤は、予防特性及び治療特性を有することでよく知られているが、それらの物質又は薬剤は、例として取りあげられており、限定されない。さらに、現在利用可能な、又は開発される可能性のある好適なLogP値を持つ他の有益薬剤は、本発明とともに用いる場合についても同様に利用できる。
【0088】
さらに、本発明のいくつかの実施形態によれば、有効な量の水和阻害剤は、インターベンションコンポーネントからの送達を制御するためにインターベンションコンポーネントから送達される有益薬剤に付随される。本明細書で使用されているような「水和阻害剤」という用語は、LogP値が有益薬剤のLogP値よりも大きい好適な化合物又は薬剤などを指す。したがって、水和阻害剤は、有益薬剤に比べて親水性が比較的低く、付随する水和阻害剤なしで有益薬剤がインターベンションコンポーネントから送達される速度を遅らせるか、抑制するか、又は他の何らかの形で維持することにより有益薬剤の送達を制御する。インターベンションコンポーネントからの有益薬剤の送達は、溶出、拡散、溶解、浸透、又は他の生体内輸送機序を含む、知られているさまざまな機序により引き起こされる。
【0089】
一般に、「有効な量」の水和阻害剤とは、インターベンションコンポーネントから送達される有益薬剤の水和を阻害するのに十分な量のことを意味する。例えば、光学的接触角の尺度として水和を決定することはよく知られており、約30°の接触角は、親水性化合物であることを示し、約50°を超える接触角は、疎水性化合物であることを示す。光学的接触角及びそれを計算する方法は、標準的な評価方法を使用することで当業者によく知られており、参照により本明細書に組み込まれている「McGraw−Hill Encyclopedia of Chemistry」、538(Sybil P.Parker,2nd ed.1993)及び「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、256−7及び294−5(Arthur Osol et al.eds.,16th ed.1980)において開示されている。そのようなものとして、有効な量の水和阻害剤は、水和阻害剤と関連する有益薬剤の光学的接触角を少なくとも約50°及び少なくとも約70°にシフトするのに十分な量であると認識されている。
【0090】
例示することを目的とし、また限定はしないが、水和阻害剤は、有益薬剤(マーカーを含む)、ポリマー材料、添加剤、及びその組合せを含む。第2の「有益薬剤」が水和阻害剤として使用される場合、第2の有益薬剤のLogP値は、第1の有益薬剤のLogP値よりも大きくなければならない。このような有益剤水和阻害剤の例は、抗酸化薬、抗血栓剤、抗凝血剤、抗血小板薬、抗脂肪剤、血栓溶解剤、抗増殖剤、抗炎症薬、過形成を阻害する薬剤、平滑筋細胞阻害剤、抗生物質、成長因子阻害剤、細胞接着阻害剤、細胞粘着促進剤、抗有糸分裂薬、抗フィブリン剤、抗酸化薬、抗悪性腫瘍薬、内皮細胞回復を促進する薬剤、抗アレルギー物質、ウイルスベクター、核酸、モノクローナル抗体、アンチセンス化合物、オリゴヌクレオチド、細胞透過促進剤、放射線不透過性薬剤マーカー、及びこれらの組合せを含む。
【0091】
[129] 水和阻害剤として有用な特定の有益薬剤の限定されない例は、パクリタキセル、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、ピメクロリムス、エベロリムス、フェノフィブラート、カルベジオール、タキソテール、タクロリムス、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ビタミンE、ダナゾール、プロブコール、トコフェロール、トコトリエノール、ゾタロリムス、ABT−627及び類似体、誘導体、又はこれらの組合せを含む。ABT−627の化学構造式は、
[130]
【化5】


であり、ゾタロリムスの化学構造式は、
【化6】


である。
【0092】
ABT−627(アトラセンタン)の詳細な説明は、2002年9月10日に出願されたPCT/02/28776で、ゾタロリムスの詳細な説明は、米国特許第6,015,815号及び第6,329,386号に掲載されており、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0093】
水和阻害剤は、混合物として有益薬剤に付随しているけれども、代替実施形態では、水和阻害剤が、第2の有益薬剤であり、水和阻害剤は、第1の有益薬剤の少なくとも一部を覆うオーバーコート又は封入層として付随しうる。
【0094】
[136] 水和阻害剤として好適なポリマー材料は、典型的には、天然であろうと合成であろうと、ランダム、交互、ブロック、グラフト、ブランチ、架橋、ブレンド、ブレンドの組成物、及びこれらの変更形態を含む、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどを包含する重合反応の生成物である。ポリマーは、真溶液中、飽和、又は粒子として懸濁、又は有益薬剤中の過飽和の状態で存在しうる。ポリマーは、生体適合性、また生体分解性であってよい。
【0095】
[137] そのようなポリマー材料のいくつかの例は、ホスホリルコリン、ポリカプロラクトン、ポリ−DL−乳酸、ポリ−L−乳酸、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート−co−バレレート)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリアンヒドリド、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコール酸−co−トリメチレンカーボネート)、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、シアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、ポリイミノカーボネート、及び脂肪族ポリカーボネート、フィブリン、フィブリノゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン、Parylene(登録商標)、Parylast(登録商標)、ポリウレタン、ポリカーボネートウレタン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、エチレン酢酸ビニル、エチレンビニルアルコール、シリコーンポリシロキサン、置換ポリシロキサン、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンテレフタレート−co−PEG、PCL−co−PEG、PLA−co−PEG、ポリアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、熱可塑性エラストマー、ポリオレフィンエラストマー、EPDMゴム、ポリアミドエラストマー、生体安定プラスチック、アクリルポリマー、ナイロン、ポリエステル、エポキシ、及びこれらの誘導体又は組合せを含む。
【0096】
[138] 一実施形態では、ポリマー材料は、双性イオンペンダント基を有する。いくつかの実施形態では、ポリマーは、参照により全体が本明細書にそれぞれ組み込まれている、Bowersらの米国特許第5,705,583号及び第6,090,901号、並びにTaylorらの米国特許第6,083,257号で開示されているホスホリルコリンである。
【0097】
上記のように、有益薬剤は、有益薬剤とポリマーの混合物を含むことができる。本発明の方法によれば、第1の有益薬剤は、有益薬剤混合物中の特定の有益薬剤の送達速度をもたらすポリマーの濃度を有する有益薬剤−ポリマー混合物に対応しうる。例えば、より高いポリマー濃度を有する有益薬剤−ポリマー混合物だと、管腔内の有益薬剤の送達速度が遅くなる。対照的に、より低いポリマー濃度を有する有益薬剤−ポリマー混合物だと、有益薬剤の送達速度が速くなる。送達速度は、さらに、水和阻害剤のLogP値と有益薬剤のLogP値との差の影響を受ける。例えば、一般に、LogP値間の差が大きいほど、水和阻害剤を使用しない有益薬剤と比較して有益薬剤の送達速度の遅延が大きくなる。
【0098】
水和阻害剤として好適な添加剤の例は、可塑性剤、低分子、及び油を含む。添加剤は、制限されることなく化合物、ポリマー、及び混合物から引き出される。ポリマーコーティングを有するインターベンションデバイスと併用される場合、添加剤は、多くの場合、ポリマーコーティングを通じて分散することができ、対照ポリマーコーティングと比較すると、膨張時間の増大として経験的に特徴付けられるように、水溶液と接触してポリマーコーティングが水和するのが実際により困難になる。
【0099】
添加剤の特定の限定されない例は、ニトロフェニルオクチルエーテル、セバシン酸ビスエチルヘキシル、フタル酸ジイソドデシル、N−メチルピロリドン、リノレン酸、リノール酸、ステアリン酸、オレイン酸、及びこれらの組合せを含む。
【0100】
水和阻害剤を、さまざまな従来技術のいずれかで、有益薬剤に付随させることができる。本明細書で具現化され、またすでに述べられているように、これは、水和阻害剤を化合物の混合物として有益薬剤に付随させることである。混合物は、溶液、懸濁液、固体散在、気相蒸着、又は任意の物理的組合せを含む、さまざまな形態の物理的組合せにより得られる。
【0101】
[143] 本発明の追加の態様は、インターベンションコンポーネント上の有益薬剤の担持を促進させるためにポリマー材料の基層の使用を含む。本発明のこの態様は、有益薬剤が単独又は好適な結合剤などと組み合わせて担持するのが難しいか、又は適当でない場合に特に重要である。
【0102】
[144] 本発明でコーティングが使用される場合、コーティングは、治療薬、つまり薬物が実質的に可溶性である任意のポリマー材料を含むことができる。コーティングの目的は、治療薬の制御放出媒体として、又は損傷部位に送達される治療薬用の貯蔵層として使用されることである。コーティングは、ポリマーであってよく、またさらに、親水性、疎水性、生体分解性、又は非生体分解性とすることができる。ポリマーコーティングの材料は、ポリカルボン酸、セルロースポリマー、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸ポリマー、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、グリコサミノグリカン、多糖類、ポリエステル、ポリウレタン、シリコーン、ポリオルトエステル、ポリアンヒドリド、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレートバレレート、ポリアクリルアミド、ポリエーテル、並びに前記の混合物及びコポリマーからなる群から選択されうる。ポリウレタン分散液(BAYHYDROLなど)及びアクリル酸ラテックス分散液を含むポリマー分散液から調製されたコーティングも、本発明のいくつかの実施形態の治療薬と併用されうる。
【0103】
[145] 本発明で使用されうる生体分解性ポリマーは、ポリ(L−乳酸)、ポリ(DL−乳酸)、ポリカプロラクトン、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリグリコリド、ポリ(ジアキサノン)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリオルトエステルを含むポリマー;ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリヒドロキシ(ブチレート−co−バレレート)、ポリグリコリド−co−トリメチレンカーボネートを含むコポリマー;ポリアンヒドリド;ポリホスホエステル;ポリホスホエステルウレタン;ポリアミノ酸;ポリシアノアクリレート;フィブリン、フィブリノゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン、及びヒアルロン酸を含む生体分子;並びに前記の混合物を含む。本発明で使用するのに好適な生体安定材料は、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカプロラクタム、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアルコール、アクリルポリマー及びコポリマー、ポリアクリロニトリル、ビニルモノマーとオレフィンとのポリスチレンコポリマー(スチレンアクリロニトリルコポリマー、エチレンメチルメタクリル酸コポリマー、エチレン酢酸ビニルを含む)、ポリエーテル、レーヨン、セルロース誘導体(酢酸セルロース、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロースなどを含む)、パリレン及びその誘導体、並びに前記の混合物及びコポリマーを含むポリマーを含む。
【0104】
本発明によりコーティングが施される医療デバイスは、コーティングが塗布される表面を調製するために事前処理されうる。例えば、ステンレス鋼製ステントは、コーティング(例えば、アンダーコート)が施される前に電解研磨されうる。有用な医療デバイスは、NITINOL合金、TRIPLEX(ステンレス鋼/タンタル/ステンレス層)、又はコバルトクロム合金から形成されうる。コーティングは、適宜、ポリマー材料、例えば、ホスホリルコリン、ポリカプロラクトン、ポリ−DL−乳酸、ポリ−L−乳酸、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート−co−バレレート)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリアンヒドリド、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコール酸−co−トリメチレンカーボネート)、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、シアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、ポリイミノカーボネート、及び脂肪族ポリカーボネート、フィブリン、フィブリノゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン、Parylene(登録商標)ブランドのポリ−パラ−キシリレン(SCSCookson Industries(インディアナ州インディアナポリス所在)から入手可能)、Paryl AST(商標)ブランドの生体適合誘電性ポリマー(米国特許第5,355,832号及び第5,447,799号、AST Products(マサチューセッツ州ビルリカ所在)から市販されている)、ポリウレタン、ポリカーボネートウレタン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、エチレン酢酸ビニル、エチレンビニルアルコール、シリコーンポリシロキサン、置換ポリシロキサン、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンテレフタレート−co−PEG、PCL−co−PEG(つまり、ポリカプロラクトン−co−ポリエチレングリコール)、PLA−co−PEG(つまり、ポリ乳酸−co−ポリエチレングリコール)、ポリアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、熱可塑性エラストマー、ポリオレフィンエラストマー、EPDMゴム、ポリアミドエラストマー、生体安定プラスチック、アクリルポリマー、ナイロン、ポリエステル、エポキシ、及びこれらの誘導体又はブレンド(例えば、PLLA−ホスホリルコリン)を含む。
【0105】
[147] 本明細書で開示されている実施形態では、必要ならば、生体適合性材料から作られた多孔質又は生体分解性膜若しくは層を、徐放するように有益薬剤上にコーティングすることができる。それとは別に、中に有益薬剤を保持することができる好適なベースコーティングを、プロテーゼの表面上に一様に塗布することができ、次いで、本発明のいくつかの実施形態に従って、ベースコーティングの選択された部分に有益薬剤を担持することができる。局所面密度を大きくすることを意図されている単位表面領域上により多い量の有益薬剤を担持し、局所面密度を低くすることを意図されている単位表面領域上により少ない量の有益薬剤を担持することができる。
【0106】
[148] 本発明のさらに他の実施形態では、有益薬剤をプロテーゼの表面に直接塗布することができる。一般に、結合剤又は類似の成分を使用することで、十分な接着を保証することができる。例えば、このコーティング技術は、有益薬剤と好適な結合剤又はポリマーとを混ぜ合わせてコーティング混合物を形成することを含むことができ、次いでプロテーゼの表面にコーティングされる。コーティング混合物は、必要に応じて有益薬剤の濃度を上げ下げして調製され、次いで、適宜、プロテーゼの選択された部分に塗布される。
【0107】
上記のように、有益薬剤は、薬物/ポリマー混合物を含む、ポリマー内のインターベンションコンポーネントに施されうる。混合物中のポリマーの量は、薬物の量と比較して少ない。例えば、ポリマーは、薬物の量の約10%としてよい。これらの実施形態では、ポリマーは、インターベンションデバイス上で薬物を処理若しくは担持するのを助長するか、又は保持を高めるが、薬物の水和を実質的に阻害する効果がない量である。上述のような好適なLogPの水和阻害剤が存在することは、この環境における薬物の送達に対し大きな影響を持つ。
【0108】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第1及び第2の有益薬剤は、それぞれの有益薬剤中の特定の薬物の異なる放出速度をもたらすポリマーの異なる濃度を有する薬物−ポリマー混合物に対応しうる。例えば、高いポリマー濃度を有する薬物−ポリマー混合物だと、管腔内の薬物の放出速度が遅くなる。対照的に、低いポリマー濃度を有する薬物−ポリマー混合物だと、薬物の放出速度が速くなる。それとは別に、異なる放出速度をもたらす異なるポリマー濃度を有する薬物−ポリマー混合物を用意するのではなく、異なるポリマー又は他の結合剤内に有益薬剤を分注することも可能であり、その場合、特定のポリマー又は結合剤は、異なる速度で有益薬剤を必ず送達させる異なる拡散率又は親和性を有する。そこで、本発明によれば、複数の有益薬剤は、その活性に適した速度で放出され、本発明のプロテーゼは、所望の速度でプロテーゼを流出する複数の有益薬剤を有する。
【0109】
[151] 例えば、アニオン性治療薬のより高い親和性を有するカチオン性ホスホリルコリンは、ブレンドされ、第1の有益薬剤として分散され、親油性ホスホリルコリンは、それぞれ異なる放出速度をもたらす第2の有益薬剤として親油性薬物とブレンドされうる。
【0110】
[152] 以下でさらに詳しく説明されるように、有益薬剤及び水和阻害剤は、1つ又は複数のコーティング層内の医療デバイスに塗布することができる。例えば、交互に並ぶ層は、複数の有益薬剤の送達を制御するために使用できる。有益薬剤は、単独、又は好適な水和阻害剤と組み合わせて医療デバイスに施すことができる。本発明で使用するのに適しているコーティングは、限定はしないが、好適な機械的特性を有し、有益薬剤が実質的に溶解しうる、任意の生体適合性ポリマー材料を含む。
【0111】
[153] 噴霧、ディッピング、又はスパッタリングなどの従来のコーティング技術もまた、プロテーゼの表面に有益薬剤をコーティングするのに使用することができ、適切に実行された場合に、所望の結果をもたらしうる。このような技術を使用することで、有益薬剤が担持される場所及び量を制御する知られているマスキング又は抽出技術を使用することが望ましいか、又は必要であると思われる。
【0112】
[154] 本発明のいくつかの実施形態によれば、有益薬剤は、直接、コンポーネント上に担持されうるか(例えば、ピペット操作で)、又はそれとは別に、有益薬剤は、コンポーネントの表面に施される基材層上に担持される(例えば、ディップ担持)。例えば、限定はしないが、結合剤又は好適なポリマーなどのベースコーティングは、インターベンションコンポーネントの選択された表面に施される。必要ならば、コンポーネント表面にパターンを形成することができる。次いで、有益薬剤が、基材のパターンに直接塗布される。そのため、本発明によれば、有益薬剤は、意図された使用又は用途に適した速度で送達されうる。
【0113】
説明及び例示を目的として、限定することなく、本発明によるインターベンションデバイスの例示的な実施形態が図1〜7に示されている。本発明の一態様によれば、図1に示されているように、インターベンションデバイスは、ステントストラット10を有する、ステント5である。一実施形態では、ステント5の形態のインターベンションデバイスは、有益薬物が担持されるホスホリルコリンのベースコーティングを有する。図3Aは、PCポリマーのみをコーティングしたステント5が留置された血管セグメントの断面図であり、図3Bは、ポリマーに薬物を加えたものをコーティングしたステント5が留置された血管セグメントの断面図である。本発明の異なる実施形態をさらに例示するために、図1のステント5のステントストラット10の断面図が、図4〜7に示されている。本発明の一実施形態では、図4に示されているように、ステントストラット10は、混合物として水和阻害剤12に付随している有益薬剤11の層を担持している。本明細書に具現化されているように、この混合物は、必要なときに投薬量を増やして片側に厚く、ステントストラット10上に担持される。しかし、図に示されていない他の実施形態では、有益薬剤11及び水和阻害剤12は、インターベンションコンポーネントの表面上に所望の配置で全体を通して均等に、又は選択的に担持されうる。図5に示されているように、本発明の他の実施形態では、ステントストラット10は、水和阻害剤22として作用する第2の有益薬剤の層で覆われている、有益薬剤11の層を担持している。本発明のさらに他の実施形態では、図6に示されているように、ステントストラット10は、ポリマー材料31、好ましくはホスホリルコリンの基層を有しており、ポリマー材料は、混合物として水和阻害剤12に付随している有益薬剤32を担持される。図7は、ステントストラット10が、有益薬剤32を担持したポリマー材料31の基層を有し、第2の有益薬剤のコーティングが、第1の有益薬剤の送達を制御する水和阻害剤22として作用する本発明のさらに他の実施形態を示している。
【0114】
[156] さらに、図8の断面図から分かるように本発明の異なる実施形態において、ステントストラット10は、第2の有益薬剤/水和阻害剤の層12A及び12Bと交互に並ぶ第1の有益薬剤の層11A、11B、及び11Cを有する。この実施形態によれば、層11Cからの第1の有益薬剤、例えば、エストラジオールは、初期バーストで溶出する。層12B内の第2の有益薬剤/水和阻害剤、例えば、ゾタロリムスは、層11Bからの第1の有益薬剤の溶出を制御する。そこで、第2の有益薬剤/水和阻害剤のLogP値は、本発明の原理により、第1の有益薬剤のLogP値よりも大きい。同様に、層12A内の第2の有益薬剤/水和阻害剤は、層11A内の第1の有益薬剤の溶出を制御する。層12A及び12Bは、第2の有益薬剤/水和阻害剤とともに第1の有益薬剤の中期及び後期の送達を可能にする。選択された有益薬剤に応じて、層11A、11B、11C、12A、及び12Bは、適宜、インターベンション用装置上の有益薬剤の処理又は保持を促進するポリマー担体又は結合剤又は他の添加剤を含むことができる。
【0115】
[157] 当業者であれば理解するように、この実施形態のさまざまな変更形態は、治療される病状、選択された有益薬剤の数及び同一性、送達の所望の順序、及び他の要因に応じて、可能である。例えば、層11A、11B、及び11Cは、同じ有益薬剤を含む必要はない。それぞれ、異なる有益薬剤を含むか、又は2つが同じ有益薬剤を含み、第3が他の有益薬剤を含むことができる。同様に、層12A及び12Bは、同じ有益薬剤を含む必要はない。ここには示されていないけれども、なおいっそう複雑な変更形態も、本明細書で開示されている原理を使用して当業者により形成されうる。例えば、表面単球を処理するエストラジオールの比較的早期の送達並びに組織単球及びマクロファージを処理するデキサメタゾンの遅延送達を行うことが望ましい場合がある。
【0116】
本発明の一実施形態では、水和阻害剤は、4.5単位よりも大きいLogP値を有し、有益薬剤は、3単位よりも小さいLogP値を有する。このようにして、水和阻害剤は、疎水性の低い有益薬剤に対する水障壁として作用し、これにより、有益薬剤の放出速度を下げる。例えば、限定はしないが、疎水性の低い有益薬剤は、ABT 620 {1−メチル−N−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−1H−インドール−5−スルホンアミド}、ABT 627、ABT 518 {[S−(R,R)]−N−[1−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール−4−イル)−2−[[4−[4−(トリフルオロ−メトキシ)−フェノキシ]フェニル]スルホニル]エチル]−N−ヒドロキシホルムアミド}、デキサメタゾンなどとすることができ、また水和阻害剤は、フェノフィブラート、Tricor(商標)又は3S,6R,7E,9R,10R,12R,14S,15E,17E,19E,21S,23S,26R,27R,34aS)−9,10,12,13,14,21,22,23,24,25,26,27,32,33,34,34a−ヘキサデカヒドロ−9,27−ジヒドロキシ−3−[(1R)−2−[(1S,3R,4R)−3−メトキシ−4−テトラゾール−1−イル)シクロヘキシル]−1−メチルエチル]−10,21−ジメトキシ−6,8,12,14,20,26−ヘキサメチル−23,27−エポキシ−3H−ピリド[2,1−c][1,4]オキサアザシクロヘントリアコンチン−1,5,11,28,29(4H,6H,31H)−ペントン、23,27エポキシ−3H−ピリド[2,1−c][1,4]オキサアザシクロヘントリアコンチン−1,5,11,28,29(4H,6H,31H)−ペントンとすることができる。
【0117】
インターベンションコンポーネントは、中に少なくとも1つの貯蔵層又は空洞を備えることができる。本発明の他の態様によれば、これらの貯蔵層又は空洞の1つ又は複数は、親水性のより高い第1の有益薬剤を担持し、次いで、第2の疎水性のより高い有益薬剤は、上述の方法で空洞又は貯蔵層内の第1の有益薬剤上に担持できる。
【0118】
[60] 本発明の他の実施形態では、インターベンションデバイスは、第3の有益薬剤を備えることができる。第3の有益薬剤は、上で開示されている有益薬剤のいずれでもよい。一実施形態では、第3の有益薬剤は、第2の有益薬剤を覆い、第3の有益薬剤は、第3の有益薬剤を高速に放出するために第2のLogP値よりも小さいLogP値を有する。この実施形態では、第3の有益薬剤は、第1と同じであってよく、したがって、有益薬剤は、埋め込みの後即座に放出され、続いて有益薬剤の制御放出が行われる。
【0119】
[61] 本発明は、さらに、有益薬剤の制御送達を行う医療デバイスを製造するための方法も提示する。この方法は、患者体内に投入されるインターベンションコンポーネントを準備するステップと、そこからの送達のためインターベンションコンポーネントに、第1のLogP値を有する有益薬剤を担持するステップと、第1のLogP値よりも大きい第2のLogP値を有する有効な量の水和阻害剤を有益薬剤に付随させてインターベンションコンポーネントからの有益薬剤の送達を制御するステップとを含む。
【0120】
[62] 有益薬剤をインターベンションコンポーネントの表面に担持し、有益薬剤の制御された局所面密度を提供するために多数の方法を使用できる。例えば、インターベンションコンポーネントは、単独で、又は水和阻害剤と組み合わせて、有益薬剤を含浸、又は充てんした細孔又は貯蔵層を備えるように構成することができる。これらの細孔は、インターベンションデバイスの長さに沿って所望の局所面密度パターンに従い中に含まれている有益薬剤の量に対応するか、若しくは制限するようなサイズであるか、又は相隔てて並べられることがあり、そこでは、より大きな局所面密度を持つことを意図されているそのような部分において細孔を大きくするか、又は間隔密度を高くする。
【0121】
[63] 本発明のさまざまな実施形態によれば、有益薬剤は、直接、インターベンションコンポーネント上に直接担持されうるか、又はそれとは別に、有益薬剤は、インターベンションコンポーネントの少なくとも一部に施される基材層上に担持される。例えば、限定はしないが、結合剤又は好適なポリマーを含むベースコーティングは、インターベンションコンポーネント表面上に所望のパターンが形成されるようにインターベンションコンポーネントの選択された表面に施される。次いで、有益薬剤及び水和阻害剤が、基材のパターンに直接塗布される。一般に、「制御された面密度」は、インターベンションコンポーネントの単位表面積に対する、重量又は体積による、有益薬剤若しくは有益薬剤及び水和阻害剤の混合物の知られている、又は所定の量を意味するものと理解される。本発明の一態様では、所望のパターンは、所望の制御された局所面密度に対応する。例えば、より大きな局所面密度の有益薬剤を有することが意図されているインターベンションデバイスの部分にはより多量の基材層が施され、より低い局所面密度の有益薬剤を有することが意図されているインターベンションデバイスの部分にはより少量の基材が施される。本発明のさらに他の実施形態では、有益薬剤をインターベンションコンポーネントの表面に直接塗布することができる。
【0122】
噴霧、ディッピング、又はスパッタリングなどの従来のコーティング技術も、インターベンションコンポーネントの表面上に有益薬剤をコーティングするのに使用することができ、適切に実行された場合に、所望の結果をもたらしうる。このような技術を使用することで、有益薬剤が担持される場所及び量を制御する知られているマスキング又は抽出技術を使用することが望ましいか、又は必要であると思われる。参照によりそれぞれ本明細書に組み込まれている、2001年9月10日に出願された米国特許出願第09/950,307号、米国特許第6,329,386号及び第6,015,815号、並びに2003年3月10日に出願された「Medical Device Having a Hydration Inhibitor」という表題の米国特許仮出願を参照のこと。
【0123】
[165] 本発明のさらに他の態様では、本明細書に記載の有益薬剤は、ポリマー化合物でコーティングされたインターベンションコンポーネントに施すことができる。インターベンションコンポーネントのポリマーコーティングに化合物又は薬物を取り込むことは、十分な期間(例えば、5分間など)、化合物又は薬物を含む溶液中にポリマーコーティングされたインターベンションコンポーネントを浸して、次いで、コーティングされたインターベンションコンポーネントを、好ましくは空気乾燥で、十分な期間(例えば、30分間など)、乾燥させることにより実行できる。次いで、化合物又は薬物を含むポリマーコーティングされたインターベンションコンポーネントを、例えばバルーンカテーテルから投入することにより冠状血管に送達することができる。
【0124】
[166] 他の実施形態では、有益薬剤及び水和阻害剤は、それぞれの液滴が制御された軌跡を描く離散液滴で有益薬剤を分注することができる分注要素を有する液体ディスペンサーによりインターベンションコンポーネントの表面上に「プリント」される。特に、有益薬剤又は混合物は、分注経路に沿ってラスター形式により分注要素からインターベンションコンポーネントの所定部分へ選択的に分注される。有利には、液体ジェッティング技術を使用して、有益薬剤及び水和阻害剤などの材料を、体積を制御しつつ、制御された場所の基板に蒸着することができる。それぞれが参照により本明細書に組み込まれている、すべて2002年11月7日に出願された、米国仮特許出願第60/424,575号、第60/424,577号、第60/424,607号、第60/424,574号、及び第60/424,576号を参照のこと。
【0125】
[167] さらに、本発明によれば、インターベンションコンポーネント上に担持された第1の有益薬剤は、第1の局所面密度を有し、インターベンションコンポーネント上に担持された第2の有益薬剤は、第2の局所面密度を有する。本明細書で使用されているように、「面密度」は、インターベンションコンポーネントの選択された部分の単位表面積当たりの有益薬剤の量を指す。「局所面密度」は、インターベンションコンポーネントの局所表面積当たりの有益薬剤の投薬量を指す。第1の有益薬剤の局所面密度及び第2の有益薬剤の局所面密度は、局所面密度の階段状変化を規定するためにそれぞれの部分にわたって一様であるか、又は局所面密度の勾配を規定するためにインターベンションコンポーネントの選択された部分にわたって可変であってよい。そこで、インターベンションコンポーネントの本体の選択された部分に沿って変化する局所面密度を有する有益薬剤を少なくとも部分的に担持したインターベンションコンポーネントを有する医療デバイスが提供される。
【0126】
本発明によれば、局所面密度は、有益薬剤がインターベンションコンポーネントに沿って選択された位置に担持される相対速度を変えることにより変化させることができる。この目的のために、有益薬剤の液滴がインターベンションコンポーネントへの分注経路の単位長に沿って施される頻度を変化させる。それとは別に、分注要素とインターベンションコンポーネントとの間の相対的移動を変えることにより、有益薬剤を担持する相対速度を変化させることができる。有益薬剤を担持する相対的速度を変化させる他の代替方法では、分注要素から分注される液滴1滴当たりの有益薬剤の量を変化させる。インターベンションコンポーネント上に担持される有益薬剤の局所面密度を変化させる他の代替方法は、有益薬剤と結合材とを混合することと、有益薬剤と結合剤との比を変化させることとを含む。それとは別に、有益薬剤の可変局所面密度を得るためにインターベンションコンポーネントに施される有益薬剤と結合剤の混合物の量を変えることができる。しかし、当技術分野で知られている有益薬剤の局所面密度を変化させる他の方法も使用できる。
【0127】
本発明の他の実施形態によれば、インターベンションコンポーネントの第1の表面は、複数の相互接続構造部材により定められる。したがって、第1の表面は、構造部材の第1の選択された集まり、例えば、コネクタ部材を含むことができ、第2の表面は、構造部材の第2の選択された集まり、例えば、インターベンションコンポーネントの周りに延在したリング形状要素を含むことができる。
【0128】
[170] 本発明の他の特徴は、上述のインターベンションコンポーネントの選択された部分に基材の層を施すことを含む。有益薬剤又は水和阻害剤との混合物が、上述の方法に従って基材層上に担持される。基材層は、インターベンションコンポーネント上に有益薬剤を担持するためのパターンを定めることができる。
【0129】
[171] 本発明は、例示することを目的とし、限定することなく、実現される、以下で述べる実施例によりさらに理解される。
[172]
【実施例】
【0130】
[173] 実施例1.有益薬剤の溶出実験
[174] I.PC1036によるクーポンのコーティング
[175] 実験を行う前に、コーティングされたステンレス鋼クーポンを用意した。これらのクーポンは316L電解研磨ステンレス鋼ディスク(直径10mm)である。このサイズが選ばれたのは、クーポンの片側の表面積が、15mmオープンセルBiodivYsioステントの表面積に似ているからである。クーポンは、クーポンの片側のマークを引っかいて、コーティングされないクーポンの側を示すことにより用意され、次いでクリーニングされた。クリーニングは、クーポンがジクロロメチレン中で3分間、エタノール中で3分間超音波処理される2段階工程であった。クーポンを室温で乾燥させた。エタノール中でホスホリルコリンポリマーPC1036(Biocompatibles Ltd.(英国、ファーナム、サリー所在)の製品)の濾過された20mg/mLの溶液を使用してクーポンの片側をコーティングした。気密注射筒を使用して20μLのPC溶液をクーポン上に置いて、表面全体がコーティングされるが、ただし、クーポンの側面にこぼれないようにする。クーポンは、最初に空気乾燥させ、次いで、16時間にわたって70℃で硬化させた。次いで、<25KGyでγ線照射のために送った。結果として得られるPCコーティング厚さは、図9A〜Bにグラフで表されているように、ステントの太さに近く、所望の担持薬剤投与量を受け入れるのに十分な厚さであった。図9A〜Bは、電解研磨されたステンレス鋼ディスク上のPCコーティング20を有する、コーティングされたステンレス鋼クーポン30の上面及び側面図である。
【0131】
II.対象とする薬物によるクーポンの担持
これらの実験において、有益薬剤をクーポンに担持し、溶出プロフィルを調べた。一般に、以下のような手順である。12個のPCコーティングされたクーポンにそれぞれの薬物を担持させた。薬物の溶液は、100%エタノール中で通常5.0mg/mLであり、使用前に0.45μmのフィルタで濾過された。
【0132】
薬物溶液で担持する前に、クーポンの重量を測定した。100μgの薬物を担持するために、クーポンのPCコーティングされた側の中心に、(例えば、ピペットで取って)溶液20μLを置いた。蓋を閉じた状態でクーポンを30分間バイアル瓶内に入れて、薬物をコーティングに浸透させた。蓋を外して、さらに90分かけてクーポンを乾燥させた。クーポンが完全に乾燥したことを確認するために、クーポンの重量を測定し、15分後、そのクーポンの重量を3度目に測定した。クーポンの2つの重量が同じであった場合、クーポンは乾燥しているとみなされた。担持された乾燥クーポンを冷蔵庫に保管して、光から保護した。
【0133】
III.クーポンからの薬物抽出
薬物毎に、6個のクーポンを使用して、上記の手順により担持された薬物の総量を評価した。これらのクーポンを50%エタノール、50%水の溶液5mLに浸漬して、1時間かけて超音波処理した。HPLCにより抽出溶液中の薬物の濃度を分析した。
【0134】
[181] 後述の溶出実験の終わりに、これらのクーポンを溶出溶媒から取り出して、50%エタノール、50%水の溶液5mLに浸漬して、1時間かけて超音波処理した。これらのバイアル瓶中の薬物の濃度は、溶出実験の終わりにクーポンに残っていた薬物の量を示していた。
【0135】
[182] IV.溶出工程
[183] それぞれの薬物の6つのコーティングされたクーポンを溶出実験に使用した。これらのクーポンを個別に、コーティング側を上にして、小さな金属カップ内に入れて、クーポンを保持し、それぞれの時点において新しいバイアル瓶に移動させた。これらのクーポンは、通常、pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水10mLを入れたバイアル瓶内に置いた。バイアル瓶をオービタルシェーカー内に保管し、100rpmの水平振盪を少なくとも30分間、37℃の温度で行ってから、クーポンを挿入し、所望の温度で溶液を平衡状態にした。表2に示されているように、少なくとも9つの異なる時点が観察された。所望の時間が経過した後、クーポンホルダを持ち上げて、排出を行った。次いで、次の時点に対応する予熱されているバイアル瓶内に置いた。この手順は、所定の時間が経過するまで続けた。その時点で、クーポンは、前に概要を述べたように薬物抽出工程に通された。HPLCにより溶出試料中の薬物の量を決定した。
【0136】
[184] 親水性が比較的小さい有益薬剤/水和阻害剤の親水性の比較的大きい有益薬剤(つまり、複合薬)に対する効果を示すために、複数の異なる担持手順を調べた。特に、ゾタロリムス及びデキサメタゾンの組合せについて、以下を調べた。
【0137】
【表2】

【0138】
図10、11、12、13、及び14は、本発明による水和阻害剤の親水性の比較的高い有益薬剤の溶出に対する効果を示している。図10〜13では、クーポンに薬物が塗布され、図14では、ステントがコーティングされた。
【0139】
図10では、図に示されている6時間溶出プロフィルは、有益薬剤がフェノフィブラートであり、水和阻害剤がゾタロリムスである場合である。上述のように溶出が実行された。曲線Aは、ゾタロリムス単独の溶出プロフィルである。曲線B及びCは、それぞれ、ゾタロリムスと組み合わせた、及び単独での、フェノフィブラートに対するプロファイルである。曲線Bは、6時間後、フェノフィブラートの約7%のみが、クーポンから放出されたことを示している。曲線BとCを比較すると分かるように、フェノフィブラートの放出は、ゾタロリムスの存在により著しく低減された。
【0140】
図11は、水和阻害剤ゾタロリムスの存在下における有益薬剤ABT−627(アトラセンタン)の6時間溶出プロファイルを示している。曲線A及びCは、それぞれ、ゾタロリムスの存在下及び単独での、ABT−627の溶出プロファイルである。曲線Bは、同じ条件の下でのゾタロリムスの溶出を示している。曲線AとCを比較すると、親水性の比較的大きいABT−627の溶出速度は、親水性の比較的小さいゾタロリムスの存在下では遅くなることが分かる。6時間後、ゾタロリムスの非存在下(曲線A)の50%と比較して、ゾタロリムスの存在下(曲線C)では10%よりもかなり少ない量のABT−627が放出された。
【0141】
[193] 図12は、水和阻害剤ゾタロリムスの存在下における有益薬剤ジピリダモールの6時間溶出プロファイルを示している。曲線A及びBは、それぞれ、ゾタロリムスの存在下及び単独での、ジピリダモールの溶出プロファイルである。曲線Cは、同じ条件の下でのABT 578の溶出プロファイルを示している。曲線AとBを比較すると分かるように、ゾタロリムス及びジピリダモールでコーティングされたクーポンから放出されるジピリダモールの量は、ゾタロリムスの非存在下のほぼ90%と比較して、6時間後に約52%にすぎない。
【0142】
[194] 図13は、水和阻害剤ゾタロリムスの存在下における有益薬剤デキサメタゾンの6時間溶出プロファイルを示している。曲線A及びBは、それぞれ、単独及びゾタロリムスの存在下での、デキサメタゾンの溶出プロファイルである。曲線C及びD(重ね合わされている)は、同じ条件の下で、それぞれ、単独及びデキサメタゾンの存在下での、ゾタロリムスの溶出プロファイルである。曲線AとBを比較すると分かるように、デキサメタゾン及びゾタロリムスを含むクーポン上に残っているデキサメタゾンの量は、ゾタロリムスがまったく存在していなかったクーポン上のわずか25%と比較して、ほぼ70%であった。
【0143】
[195] 図14は、PCコーティングステント上の水和阻害剤ゾタロリムスの存在下における有益薬剤デキサメタゾンの6時間溶出プロファイルを示している。担持は、ディップ担持により実行された、つまり、ステントを、一方又は両方の薬物を含む溶液に浸漬させ、次いで、乾燥させた。曲線A及びBは、それぞれ、ゾタロリムスの存在下及び単独での、デキサメタゾンの溶出プロファイルである。曲線C及びDは、それぞれ、デキサメタゾンの存在下及び単独での、ゾタロリムスの溶出プロファイルである。曲線AとBを比較すると分かるように、24時間後には、ゾタロリムス及びデキサメタゾンを含むステントからデキサメタゾンはほとんど放出されなかったけれども、コーティング中にゾタロリムスが一切存在していないステントからは約40%のデキサメタゾンが放出された。
【0144】
実施例2.ステントからのデキサメタゾンの溶出実験
I.PC1036によるステントのコーティング
実験を行う前に、コーティングされたステントを用意した。これらは、3.0mm×15mmの316L電解研磨ステンレス鋼ステントであった。エタノール中ホスホリルコリンポリマーPC1036(Biocompatibles Ltd.(英国、ファーナム、サリー所在)の製品)の濾過された20mg/mLの溶液を使用してそれぞれのステントを噴霧コーティングした。ステントを、最初に空気乾燥させ、次いで、16時間にわたって70℃で硬化させた。次いで、<25KGyでγ線照射のために送った。
【0145】
II.対象とする薬物によるステントの担持
これらの実験において、有益薬剤をステント内に担持し、溶出プロフィルを調べた。一般に、以下のような手順であった。複数のPCコーティングされたステントにそれぞれの薬物複合溶液を担持させた。これらの薬物の溶液は、通常、100%エタノール中、ゾタロリムス2〜20mg/mL及びデキサメタゾン10.0mg/mLの範囲にあり、膜形成を高めるためにこの溶液に約10%のPC1036を加えた。
【0146】
薬物溶液で担持する前に、ステントの重量を測定した。それぞれの薬物約10μg/mLを担持するために、ゾタロリムス及びデキサメタゾンを等量含む溶液を、制御しつつ、ステント上に噴霧した。ステントを乾かしてから、ステントの重量を再度測定し、全薬物負荷を決定した。担持された乾燥ステントを冷蔵庫に保管して、光から保護した。
【0147】
[202] III.ステントからの薬物抽出
[203] 薬物毎に、3個のステントを使用して、上記の手順により担持された薬物の総量を評価した。これらのステントを50%エタノール、50%水の溶液6mLに浸漬して、20分かけて超音波処理した。HPLCにより抽出溶液中の薬物の濃度を分析した。
【0148】
[204] 後述の加速溶出実験の終わりに、これらのステントを溶解溶媒から取り出して、50%エタノール、50%水の溶液5mLに浸漬して、20分かけて超音波処理した。これらのバイアル瓶中の薬物の濃度は、加速溶出実験の終わりにステントに残っていた薬物の量を示していた。このようにして、薬物抽出量が測定された。
【0149】
[205] IV.加速溶出工程
[206] 溶解溶媒としてpH4に緩衝されたポリエチレングリコール660の水溶液を使用する溶解研究においてホスホリルコリン(PC)コーティング金属ステント(上述)から溶出されたゾタロリムス及びデキサメタゾンの量を決定するためにHPLC法が開発された。この方法は、選択された時点、典型的には24時間の期間に、37℃でステントから溶解溶媒中に溶出された薬物の量を決定するために使用される。この高速の生体外溶出試験は、製造工程に関する品質検査及びステントからの薬物溶出を制御する因子を理解するための高速の信頼性の高いリサーチツールとして使用することが意図されている。
【0150】
[207] それぞれの複合薬比の2つのコーティングされたステントを加速溶出実験に使用した。ステントを個別に、37℃の溶解溶媒500mLが入っている溶解槽装置の1リットルの容器内に落とした。溶解槽攪拌へらを50rpmで操作した。複数の時点で試料を引くようにオートサンプラーをプログラムした(表4)。この手順は、所定の時間が経過するまで続けた。その時点で、ステントは、前に概要を述べたように薬物抽出工程に通された。HPLCにより溶出試料中の薬物の量を決定した。
【0151】
親水性が比較的小さい有益薬剤/水和阻害剤の親水性の比較的大きい有益薬剤(つまり、複合薬)に対する効果を示すために、複数の異なる担持比を調べた。特に、ゾタロリムス/デキサメタゾン(ゾタロリムス/デックス(dex))の組合せに対し、以下の表3に示されている比及び担持溶液濃度で以下を調べた。
【0152】
【表3】

【0153】
[211]
[212]
[213]
[214]
[215]
[216]
[217]
[218]
【表4】

【0154】
図15は、本発明による水和阻害剤の、親水性の比較的高い有益薬剤の、例えばステントからの溶出に対する効果を示している。
【0155】
特に、図15は、異なる比の水和阻害剤ゾタロリムスの存在下における有益薬剤デキサメタゾンの加速溶出プロファイル(例えば、上述の技術により生成される)を示している。曲線A及びBは、デキサメタゾンの加速溶出プロフィルである。プロットの表から分かるように、デキサメタゾンの量は、ゾタロリムスよりも多い。曲線C及びDは、デキサメタゾンに対する加速溶出プロフィルを示している。これらの曲線では、ゾタロリムス対デキサメタゾンの比は、1:1及び2:1に増大する。曲線AからDを比較すると分かるように、デキサメタゾン溶出は、ゾタロリムスの濃度が増大するとともに次第に遅くなって行く。したがって、ゾタロリムス/デキサメタゾンコーティングステント上に残っているデキサメタゾンの量は、ゾタロリムス対デキサメタゾンの比が増大すると増える。
【0156】
したがって、ゾタロリムスは、親水性の大きいデキサメタゾンに対する溶出阻害剤として作用し、さらに、このことは親水性の比較的小さい有益薬剤は、親水性の比較的大きい薬剤の水和阻害剤として作用しうるという結論を支持するものである。
【0157】
実施例3.ゾタロリムスの存在下でデキサメタゾンの分解からの保護
I.デキサメタゾン/ゾタロリムス/PCコーティングステント
これらの実験において、有益薬剤をステント上に担持し、2つの薬物の安定性を調べた。一般に、以下のような手順であった。複数のPCコーティングされたステントに溶液からのそれぞれの複合薬を担持させた。これらの薬物の溶液は、通常、100%エタノール中、ゾタロリムス2〜20mg/mL及びデキサメタゾン10.0mg/mLの範囲にあり、膜形成を高めるためにこの溶液に約10%のPC1036を加えた。
【0158】
薬物溶液で担持させる前に、ステントの重量を測定した。それぞれの薬物約10μg/mLを担持させるために、ゾタロリムス及びデキサメタゾンを等量含む溶液を、制御しつつ、ステント上に噴霧した。ステントを乾かしてから、ステントの重量を再度測定し、全薬物負荷を決定した。担持された乾燥ステントを冷蔵庫に保管して、光から保護した。
【0159】
[226] II.ステントのETO殺菌
[227] 薬物担持の後、ステントをカテーテルバルーン上に圧着し、ETO(エチレンオキシド)殺菌用の医療用製品タイベックパウチ内にパッケージした。ETO殺菌工程は、医療デバイス業界では製品安全性を保証するための標準である。ETO工程は、微生物及び胞子を確実に殺すために高湿度、高温環境において実行された。
【0160】
[228] III.ステントからの薬物抽出
[229] 薬物毎に、複数のステントを使用して、上記の手順により担持された薬物の純度及び安定度を評価した。これらのステントを50%エタノール、50%水の溶液6mLに浸漬して、20分かけて超音波処理した。HPLCにより抽出溶液中の薬物の分解物関連不純物の濃度及び存在を分析した。
【0161】
[230] 図16は、デキサメタゾンのみを担持したステントのクロマトグラム及び1対1の比でデキサメタゾンとゾタロリムスの両方を担持したステントのクロマトグラムのオーバーレイを示している。図から分かるように、デキサメタゾンのみのコーティング中のデキサメタゾンは、8.3、11.3、及び21.8分に少なくとも3つの不純物ピークを発生するETO殺菌環境において分解した。対照的に、この同じ高湿度環境においてゾタロリムスと組み合わせて担持させたデキサメタゾンは、分解しなかった。デキサメタゾンのみコーティングしたステントに見られる不純物ピークは、存在せず、またクロマトグラム中に明白な不純物ピークもなかった。
【0162】
[231] したがって、この図は、ゾタロリムスが親水性の大きいデキサメタゾンに対する水和阻害剤として作用すること、またこの阻害作用が親水性の小さい薬物ゾタロリムスの存在下で親水性の大きい薬物デキサメタゾンを安定化する効果を有することを示している。
【0163】
本発明の化合物の調製
本発明の実施形態の化合物及び工程は、本発明の化合物を調製できる方法を例示する以下の合成スキームと併せるとよく理解できる。
【0164】
本発明の化合物は、さまざまな合成経路により調製されうる。代表的な手順をスキーム1に示す。
【0165】
[238]
【化7】


[239]
【0166】
[240] スキーム1に示されているように、ラパマイシンのC−42ヒドロキシルをトリフルオロメタンスルホン酸又はフルオロスルホン酸離脱基に転換することでAを得た。2,6−ルチジンなどのヒンダード非求核性塩基、又は好ましくは、ジイソプロピルエチルアミンの存在下でテトラゾールによる離脱基の置換の結果、エピマーB及びCが得られたが、これらは、フラッシュカラムクロマトグラフィにより分離され、精製された。
【0167】
[241] 合成方法
[242] 前記は、本発明の化合物を調製できる方法を示し、添付の請求項に定められているような本発明の範囲を制限することを意図していない、以下の実施例を参照することでよりよく理解できる。
【0168】
実施例1
42−エピ−(テトラゾリル)−ラパマイシン(極性の小さい異性体)
実施例1A
窒素雰囲気下、−78℃の温度のジクロロメタン(0.6mL)中のラパマイシン(100mg、0.11mmol)の溶液を、2,6−ルチジン(53μL、0.46mmol、4.3eq.)及びトリフルオロメタンスルホン酸無水物(37μL、0.22mmol)で順次処理し、その後15分間攪拌し、室温に温めて、ジエチルエーテルを使用してシリカゲル(6mL)のパッドに通して溶出した。トリフラートを含む分画をプールし、濃縮して、示された化合物を琥珀色の発泡体として得た。
【0169】
実施例1B
42−エピ−(テトラゾリル)−ラパマイシン(極性の小さい異性体)
酢酸イソプロピル(0.3mL)中の実施例1Aの溶液を、ジイソプロピルエチルアミン(87L、0.5mmol)及び1H−テトラゾール(35mg、0.5mmol)で順次処理し、その後18時間攪拌した。この混合物を、水(10mL)とエーテル(10mL)とに分けた。有機物を塩水(10mL)で洗い、乾燥させた(NaSO)。この有機物を濃縮し、ヘキサン(10mL)、ヘキサン:エーテル(4:1(10mL)、3:1(10mL)、2:1(10mL)、1:1(10mL))、エーテル(30mL)、ヘキサン:アセトン(1:1(30mL))で溶出するシリカゲル(3.5g、70〜230メッシュ)上のクロマトグラフィにより精製された粘着性のある黄色固体を得た。異性体の1つをエーテル分画中に集めた。
MS(ESI)m/e 966(M);
【0170】
実施例2
[252] 42−エピ−(テトラゾリル)−ラパマイシン(極性の大きい異性体)
[253] 実施例2A
[254] 42−エピ−(テトラゾリル)−ラパマイシン(極性の大きい異性体)
[255] 実施例1Bのヘキサン:アセトン(1:1)移動相を使用してクロマトグラフィカラムからゆっくり移動するバンドを回収して、目的の化合物を得た。
[256] MS(ESI)m/e 966(M)
【0171】
[257] 生物活性の生体外アッセイ
[258] 本発明の化合物の免疫抑制剤活性をラパマイシン及び2つのラパマイシン類似体:40−エピ−N−[2’−ピリドン]−ラパマイシン及び40−エピ−N−[4’−ピリドン]−ラパマイシンと比較した。この活性は、Kino,T.ら、Transplantation Proceedings,XTX(5):36−39,Suppl.6(1987)において説明されているヒト混合リンパ球反応(MLR)アッセイを使用して決定された。このアッセイの結果は、本発明の化合物が、表1に示されているように、ナノモル濃度で有効な免疫調節薬であることを示している。
【0172】
[259]
[260]
[261]
[262]
[263]
【表5】

【0173】
実施例1及び実施例2の薬物動態学的挙動は、以下の、カニクイザルに単一の2.5mg/kgの静脈内投与で特徴付けられた(群毎にn=3)。それぞれの化合物を、水媒体に20%エタノール:30%プロピレングリコール:2%クレモホールEL:48%デキストロースを溶かした5%水溶液2.5mg/mLとして調製した。1mL/kgの静脈内投薬をサルの伏在静脈内にゆっくりボーラス投与した(約1〜2分)。投薬前と、投薬してから0.1(IVのみ)、0.25、0.5、1、1.5、2、4、6、9、12、24、及び30時間後にそれぞれの動物の大腿動脈又は静脈から血液試料を採取した。EDTA温存試料を完全に混合して、抽出し、その後分析した。
【0174】
血液のアリコート(1.0mL)を内部標準を含む20%メタノール水溶液(0.5mL)で溶血した。酢酸エチルとヘキサン(1:1(v/v)、6.0mL)の混合物を使用して溶血した試料を抽出した。室温の窒素の流れを用いて有機物層を蒸発させ、乾燥させた。試料を、メタノール:水(1:1、150μL)中で再構成した。逆相HPLCをUV検出とともに使用して汚染物質から表題化合物(50μL注入)を分離した。実験中、試料を低温(4℃)に保持した。それぞれの研究からのすべての試料をHPLC上の単一バッチとして分析した。
【0175】
実施例1、実施例2、及び内部標準の曲線下の領域(AUC)の測定は、Sciex MacQuan(商標)のソフトウェアを使用して決定された。スパイクのある血液標準のピーク面積比(親薬物/内部標準)からこの比と理論的濃度との最小二乗回帰を使用して較正曲線を導いた。この方法は、推定定量限界が0.1ng/mLである標準曲線(相関>0.99)の範囲にわたって両方の化合物に対し直線的であった。最大血液濃度(CMAX)と最大血液濃度に達する時間(TMAX)を観察された血液濃度−時間データから直接読み取った。CSTRIPを使用して血液濃度データに多重指数曲線フィッティングを適用し、薬物動態パラメータの推定値を得た。NONLIN 84を使用して、推定パラメータをさらに決定した。血液−時間プロファイルに対する直線台形規則を使用して、投薬後の0からt時間(血液濃度測定可能最終時点)までの間の血液濃度−時間曲線の下の面積(AUC0−t)を計算した。残りの面積を無限大に外挿し、これを最終測定血中濃度(C)を最終消失速度定数(β)で割った値として決定し、AUC0−tに加えて、曲線の下の総面積(AUC0−t)を得た。
【0176】
[267] 図1及び表2に示されているように、実施例1及び実施例2は両方とも、ラパマイシンと比べたときに驚くほどかなり短い最終消失半減期(t1/2)を有していた。したがって、本発明の化合物のみ、十分な効能(表1)と短い最終半減期(表2)の両方をもたらす。
【0177】
[268]
【表6】

【0178】
[269] 本発明は、実際に推定されたさまざまな特定の実施形態又は変更形態に関して説明され、開示され、例示され、示されているが、本発明の範囲は、限定されることを意図されておらず、また限定されるものとみなされるべきでもなく、本明細書の教示により示唆されうるような他の修正形態又は実施形態は、特に添付の請求項の広さと範囲に収まるときには特に留保される。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】図1は、本発明の実施形態による、例示的なインターベンションデバイス(ステント)の側面図である。
【図2】図2は、本発明のいくつかの実施形態による、本発明で使用するのに好適なPCコーティング(ホスホリルコリンコーティング)されたステントを示す側面図である。
【図3】図3Aは、本発明のいくつかの実施形態による、ポリマーのみをコーティングしたステントが留置された血管セグメントの断面図である。図3Bは、本発明のいくつかの実施形態による、ポリマーと薬物とをコーティングしたステントが留置された血管セグメントの断面図である。
【図4】図4は、本発明のいくつかの実施形態による、有益薬剤と水和阻害剤の混合物の層を有するステントストラットの断面図である。
【図5】図5は、本発明のいくつかの実施形態による、有益薬剤の第1の層と、水和阻害剤として作用する第2の有益薬剤の第2の層とを有するステントストラットの断面図である。
【図6】図6は、本発明のいくつかの実施形態による、有益薬剤及び水和阻害剤の混合物を担持したポリマー材料の基層を有するステントストラットの断面図である。
【図7】図7は、本発明のいくつかの実施形態による、有益薬剤を担持したポリマー材料の基層と水和阻害剤として作用する第2の有益薬剤の第2の層を有するステントストラットの断面図である。
【図8】図8は、本発明のいくつかの実施形態による、第1の有益薬剤の層と第2の有益薬剤/水和阻害剤の層とが交互に重なるステントストラットの断面図である。
【図9】図9Aは、本発明のいくつかの実施形態による、薬物担持クーポンの上面図である。図9Bは、本発明のいくつかの実施形態による、薬物担持クーポンの側面図である。
【図10】図10は、本発明のいくつかの実施形態による、有益薬剤フェノフィブラート及び水和阻害剤ゾタロリムス(ABT−578)の6時間溶出プロファイルを示すグラフである。
【図11】図11は、本発明のいくつかの実施形態による、水和阻害剤ゾタロリムスの存在下における有益薬剤ABT−627(アトラセンタン)の6時間溶出プロファイルを示すグラフである。
【図12】図12は、本発明のいくつかの実施形態による、水和阻害剤ゾタロリムスの存在下における有益薬剤ジピリダモールの6時間溶出プロファイルを示すグラフである。
【図13】図13は、本発明のいくつかの実施形態による、水和阻害剤ゾタロリムスの存在下における有益薬剤デキサメタゾンの6時間溶出プロファイルを示すグラフである。
【図14】図14は、本発明のいくつかの実施形態による、PCコーティングステント上の水和阻害剤ゾタロリムスの存在下における有益薬剤デキサメタゾンの6時間溶出プロファイルを示すグラフである。
【図15】図15は、本発明のいくつかの実施形態による、異なるゾタロリムス対デキサメタゾンの比の水和阻害剤ゾタロリムスの存在下における有益薬剤デキサメタゾンの加速溶出プロファイルを示すグラフである。
【図16】図16は、本発明の実施形態による、デキサメタゾンのみを担持したステントからのクロマトグラム及び1対1の比でデキサメタゾンとゾタロリムスの両方を担持したステントからのクロマトグラムのオーバーレイを示す図である。
【図17】図17は、本発明のいくつかの実施形態による、サルに投薬したテトラゾール含有ラパマイシン類似体の血液濃度±SEM(n=3)を示す図である。
【図18】図18は、本発明のいくつかの実施形態による、本発明で使用するのに好適なステントを示す側面図である。
【図19】図19Aは、本発明のいくつかの実施形態による、ポリマーのみをコーティングしたステントが留置された血管セグメントの断面図である。 図19Bは、本発明のいくつかの実施形態による、ポリマーと薬物とをコーティングしたステントが留置された血管セグメントの断面図である。
【図20】図20は、本発明の実施形態による、薬物溶出性デバイスで使用されるさまざまな薬物の分配係数及び溶解度を示すグラフである。
【図21】図21は、本発明の実施形態による、薬物溶出性デバイスで使用されるさまざまな薬物の移動係数を示すグラフである。
【図22】図22は、本発明の実施形態による、28日間にわたるウサギ組織中の薬物濃度の量(ZoMaxx(商標)ステント対Cypher(登録商標)ステント)を示すグラフである。
【図23】図23は、本発明の実施形態による、28日間にわたるウサギ血液中の薬物濃度の量(ZoMaxx(商標)ステント対Cypher(登録商標)ステント)を示すグラフである。
【図24】図24は、本発明のいくつかの実施形態による、さまざまな薬物化合物のLogP値を示すグラフである。
【図25】図25は、本発明のいくつかの実施形態による、ゾタロリムスを使用してブタに実施した実験の結果を示し、ゾタロリムスの血液、肝臓、腎臓、動脈、及び心筋中の濃度を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療デバイスであって、
前記医療デバイスに付随する、治療有効量の第1の親油性薬剤を備え、前記第1の親油性薬剤は体腔に浸透することができ、前記親油性薬剤の移動係数が少なくとも約5,000(μg/mL)−1の量であり、及び
前記第1の親油性薬剤/医療デバイスが、対象の体腔に隣接して留置され、治療有効量の前記第1の親油性薬剤を対象の所望の領域に送達することができる、医療デバイス。
【請求項2】
少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は賦形剤をさらに備え、前記医療デバイスは前記薬学的に許容される担体又は賦形剤に付随する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記薬学的に許容される担体又は賦形剤は、コーティングの形で前記医療デバイスに付随する、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記薬学的に許容される担体又は賦形剤はポリマーである、請求項2に記載のデバイス。
【請求項5】
前記薬学的に許容される担体又は賦形剤は薬剤である、請求項2に記載のデバイス。
【請求項6】
前記薬学的に許容される担体又は賦形剤は、生体分解性、生体適合性、及び合成性を含めた特性のうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載のデバイス。
【請求項7】
前記体腔は、血管壁、冠状動脈、食道管腔、及び尿道のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第1の親油性薬剤/医療デバイスは、冠状動脈を含む前記体腔に隣接して留置され、治療有効量の前記第1の親油性薬剤は前記冠状動脈内に送達され、薬物送達システム内の心膜嚢内に拡散される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第1の親油性薬剤及び/又は前記医療デバイスは、前記親油性薬剤の心筋への実質的に一様な薬物送達をもたらす、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記第1の親油性薬剤は、対象の血管疾患の治療及び/又は予防に有用である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記第1の親油性薬剤の前記送達機序は、ポリマー水和反応とそれに続く前記第1の親油性薬剤の溶解を含み、その後、前記第1の親油性薬剤は前記体腔内に送達される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記第1の親油性薬剤の前記送達機序は、前記体腔への前記第1の親油性薬剤の溶出速度を制御する親油性薬剤/ポリマーマトリクスを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
少なくとも1つの第2の親油性薬剤をさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
少なくとも1つの親油性プロドラッグをさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
少なくとも1つの親油性浸透促進剤をさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
前記親油性浸透促進剤は、医薬品である請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記体腔内に送達される前記第1の親油性薬剤の集積(concentration)は治療有効量である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項18】
前記第1の親油性薬剤と組み合わせた前記第2の親油性薬剤の集積は、治療有効量で前記体腔内に送達される、請求項13に記載のデバイス。
【請求項19】
前記第1の親油性薬剤は、ゾタロリムスである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項20】
少なくとも1つの有益薬剤をさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項21】
前記第1の親油性薬剤は、20,000Pを超える分配係数を含む、請求項82に記載のデバイス。
【請求項22】
前記第1の親油性薬剤は20,000Pを超える分配係数を含み、前記親油性薬剤は約30μg/ml未満の溶解度を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項23】
前記第1の親油性薬剤は少なくとも約4.3のLogPを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項24】
前記システムは、少なくとも約15μg/mLの溶解度を有する第1の親油性薬剤を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項25】
前記システムは、少なくとも約10,000(μg/mL)−1の移動係数を有する第1の親油性薬剤を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項26】
前記システムは、少なくとも約15,000(μg/mL)−1の移動係数を有する第1の親油性薬剤を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項27】
前記第1の親油性薬剤を前記体腔内に送達する投薬量は、最大約5日の期間にわたって約15μg/gから約150μg/gまでの範囲である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項28】
前記第1の親油性薬剤を前記体腔内に送達する投薬量は、約5日から最大約15日までの期間にわたって約15μg/gから約80μg/gまでの範囲である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項29】
前記第1の親油性薬剤を前記体腔内に送達する投薬量は、15日から最大約28日までの期間にわたって約5μg/gから約60μg/gまでの範囲である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項30】
前記第1の親油性薬剤は、遠位の心筋、ステント留置されていない心筋、前記下部の心筋、ステント留置されていない、及び遠位の冠状動脈のうちの少なくとも1つを含む、前記対象の標的領域において治療上有意な濃度に到達し、28日間全体を通してそれらの濃度を維持する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項31】
前記医療デバイスは対象体内に永久的又は一時的に埋め込まれる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項32】
前記第1の親油性薬剤は非晶質状である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項33】
抗血栓剤、抗凝血剤、抗血小板薬、抗脂肪剤、血栓溶解剤、抗増殖剤、抗炎症薬、過形成を阻害する薬剤、平滑筋細胞阻害剤、抗生物質、成長因子阻害剤、細胞接着阻害剤、細胞粘着促進剤、抗有糸分裂薬、抗フィブリン剤、抗酸化薬、抗悪性腫瘍薬、内皮細胞回復を促進する薬剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、抗悪性腫瘍薬、代謝拮抗物質、抗アレルギー物質、ウイルスベクター、核酸、モノクローナル抗体、チロシンキナーゼの阻害剤、アンチセンス化合物、オリゴヌクレオチド、細胞透過促進剤、及びこれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含む有益薬剤をさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項34】
血糖降下薬、脂質低下薬、タンパク質、核酸、赤血球生成促進に有用な薬剤、血管形成剤、抗潰瘍/逆流防止剤、及び制嘔吐剤/制吐薬、PPAR−アルファアゴニスト、及びこれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含む有益薬剤をさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項35】
ヘパリンナトリウム、LMWヘパリン、ヘパリン様物質、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、ヴァプリプロスト(vapriprost)、プロスタサイクリン及びプロスタサイクリン類似体、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成抗トロンビン剤)、糖タンパク質Iib/Iia(血小板細胞膜受容体拮抗薬抗体)、組換え型ヒルジン、トロンビン阻害剤、インドメタシン、サリチル酸フェニル、β−エストラジオール、ビンブラスチン、ABT−627(アトラセンタン)、テストステロン、プロゲステロン、パクリタキセル、メトトレキサート、ホテムスチン、RPR−101511A、シクロスポリンA、ビンクリスチン、カルベジオール、ビンデシン、ジピリダモール、メトトレキサート、葉酸、トロンボスポンジン模倣剤、エストラジオール、デキサメタゾン、メトリザミド、イオパミドール、イオヘキソール、イオプロミド、イオビトリドール、イオメプロール、イオペントール、イオベルソール、イオキシラン、イオジキサノール、イオトロラン、及びこれらのプロドラッグ、類似体、誘導体、及びこれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含む有益薬剤をさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項36】
前記医療デバイスは血管内医療デバイスである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項37】
前記医療デバイスは、対象の血管系内で使用されるステント、薬物送達カテーテル、グラフト、及び薬物送達バルーンからなる群から選択された冠動脈内医療デバイスを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項38】
前記医療デバイスは、末梢血管ステント、末梢血管冠状動脈ステント、分解可能冠状動脈ステント、分解不可能冠状動脈ステント、自己拡張ステント、バルーン拡張ステント、及び食道ステントからなる群から選択されるステントを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項39】
前記医療デバイスは、動静脈グラフト、バイパスグラフト、ペニス整形、血管移植及びグラフト、静脈内カテーテル、小口径グラフト、人工肺カテーテル、電気生理学カテーテル、骨ピン、縫合糸アンカー、血圧及びステントグラフトカテーテル、乳房インプラント、良性前立腺過形成及び前立腺癌インプラント、骨修復/強化デバイス、乳房インプラント、整形外科用関節インプラント、人工歯根、埋め込まれた薬物注入管、腫瘍インプラント、疼痛処理インプラント、神経学的カテーテル、中心静脈アクセスカテーテル、カテーテルカフ、血管アクセスカテーテル、泌尿器カテーテル/インプラント、アテローム切除カテーテル、凝血塊採取カテーテル、PTAカテーテル、PTCAカテーテル、探り針(血管及び非血管)、薬物注入カテーテル、血管造影用カテーテル、血液透析カテーテル、神経血管バルーンカテーテル、胸腔吸引ドレナージカテーテル、電気生理学カテーテル、脳卒中治療カテーテル、膿瘍ドレナージカテーテル、胆道ドレナージ製品、透析カテーテル、中心静脈アクセスカテーテル、及びパレンタルフィーディングカテーテルからなる群から選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項40】
前記医療デバイスは、ペースメーカー、血管グラフト、括約筋デバイス、尿道デバイス、膀胱デバイス、腎臓デバイス、胃腸及び吻合デバイス、椎間板、止血用障壁、留め具、外科用ステープル/縫合糸/ネジ/プレート/ワイヤ/クリップ、グルコースセンサー、血液酸素付加装置配管、血液酸素付加装置膜、血液バッグ、バースコントロール/IUD及び関連する妊娠調節デバイス、軟骨修復デバイス、整形外科骨折修復、組織接着剤、組織シーラント、組織用足場、CSFシャント、歯科骨折修復デバイス、硝子体内薬物送達デバイス、神経再生導管、電気刺激用リード、脊椎/整形外科的修復デバイス、創傷被覆材、塞栓保護フィルタ、腹部大動脈瘤グラフト及びデバイス、神経動脈瘤治療コイル、血液透析デバイス、子宮出血パッチ、吻合閉鎖、体外診断薬、動脈瘤除外デバイス、神経パッチ、大静脈フィルタ、泌尿器拡張器、内視鏡外科及び創傷排液、外科組織抽出装置、遷移シース及び拡張器、冠状動脈及び末梢血管ガイドワイヤ、循環支援システム、中耳腔換気用チューブ、脳脊髄液シャント、除細動器リード、経皮的閉鎖デバイス、ドレナージチューブ、気管支チューブ、血管コイル、血管保護デバイス、血管フィルタ及び遠位支持デバイス並びに塞栓フィルタ/封じ込め補助デバイスを含む血管インターベンションデバイス、AVアクセスグラフト、並びに外科用タンポン、薬物送達カプセル、並びに心臓弁からなる群から選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項41】
前記医療デバイスは、心房中隔欠損症閉鎖、心調律管理用の電気刺激リード、組織及び機械人工心臓弁及びリング、動静脈シャント、弁輪形成デバイス、僧帽弁修復デバイス、左心室補助デバイス、左心耳フィルタ、心臓センサ、ペースメーカー電極、及びリードからなる群から選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項42】
前記第2の親油性薬剤は、以下の構造を有するゾタロリムスのうちの少なくとも1つである、請求項13に記載のデバイス。
【化1】

【請求項43】
前記親油性薬剤は、心外膜及び/又は心膜嚢に連続的に送達される、請求項8に記載のデバイス。
【請求項44】
ステントであって、
前記ステントに付随する、治療有効量の第1の親油性薬剤を備え、前記第1の親油性薬剤は体腔に浸透することができ、前記第1の親油性薬剤の移動係数が少なくとも約5,000(μg/mL)−1の量であり、
前記第1の親油性薬剤/ステントが、対象の体腔に隣接して留置され、治療有効量の前記第1の親油性薬剤を対象内の所望の領域に送達することができる、ステント。
【請求項45】
少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は賦形剤をさらに備え、前記ステントに前記薬学的に許容される担体又は賦形剤が付随する、請求項44に記載のステント。
【請求項46】
前記薬学的に許容される担体又は賦形剤は、コーティングの形で前記ステントに付随する、請求項45に記載のステント。
【請求項47】
前記薬学的に許容される担体又は賦形剤はポリマーである、請求項45に記載のステント。
【請求項48】
前記薬学的に許容される担体又は賦形剤は薬剤である、請求項45に記載のステント。
【請求項49】
前記薬学的に許容される担体又は賦形剤は、生体分解性、生体適合性、及び合成性を含めた特性のうちの少なくとも1つを含む、請求項45に記載のステント。
【請求項50】
前記体腔は、血管壁、冠状動脈、食道管腔、及び尿道のうちの少なくとも1つを含む、請求項44に記載のステント。
【請求項51】
前記第1の親油性薬剤/ステントは、冠状動脈を含む前記体腔に隣接して留置され、治療有効量の前記第1の親油性薬剤は、前記冠状動脈内に送達され、薬物送達システム内の心膜嚢内に拡散される、請求項44に記載のステント。
【請求項52】
前記第1の親油性薬剤及び/又は前記ステントは、前記親油性薬剤の心筋への実質的に一様な薬物送達をもたらす、請求項51に記載のステント。
【請求項53】
前記第1の親油性薬剤は、対象における血管疾患の治療及び/又は予防に有用である、請求項44に記載のステント。
【請求項54】
前記第1の親油性薬剤の前記送達機序は、ポリマー水和反応とそれに続く前記第1の親油性薬剤の溶解を含み、その後、前記第1の親油性薬剤は前記体腔内に送達される、請求項47に記載のステント。
【請求項55】
前記第1の親油性薬剤の前記送達機序は、前記体腔への前記第1の親油性薬剤の溶出速度を制御する親油性薬剤/ポリマーマトリクスを含む、請求項47に記載のステント。
【請求項56】
少なくとも1つの第2の親油性薬剤をさらに備える、請求項44に記載のステント。
【請求項57】
少なくとも1つの親油性プロドラッグをさらに備える、請求項44に記載のステント。
【請求項58】
少なくとも1つの親油性浸透促進剤をさらに備える、請求項44に記載のステント。
【請求項59】
前記親油性浸透促進剤は医薬品である、請求項58に記載のステント。
【請求項60】
前記体腔内に送達される前記第1の親油性薬剤の集積は治療有効量である、請求項44に記載のステント。
【請求項61】
前記第1の親油性薬剤と組み合わせた前記第2の親油性薬剤の集積は、治療有効量で前記体腔内に送達される、請求項56に記載のステント。
【請求項62】
前記第1の親油性薬剤はゾタロリムスである、請求項44に記載のステント。
【請求項63】
少なくとも1つの有益薬剤をさらに備える、請求項44に記載のステント。
【請求項64】
前記第1の親油性薬剤は、20,000Pを超える分配係数を含む、請求項44に記載のステント。
【請求項65】
前記第1の親油性薬剤は20,000Pを超える分配係数を含み、前記親油性薬剤は約30μg/ml未満の溶解度を有する、請求項44に記載のステント。
【請求項66】
前記第1の親油性薬剤は少なくとも約4.3のLogPを含む、請求項44に記載のステント。
【請求項67】
前記ステントは、少なくとも約15μg/mLの溶解度を有する第1の親油性薬剤を備える、請求項44に記載のステント。
【請求項68】
前記ステントは、少なくとも約10,000(μg/mL)−1の移動係数を有する第1の親油性薬剤を備える、請求項44に記載のステント。
【請求項69】
前記ステントは、少なくとも約15,000(μg/mL)−1の移動係数を有する第1の親油性薬剤を備える、請求項44に記載のステント。
【請求項70】
前記第1の親油性薬剤を前記体腔内に送達する投薬量は、最大約5日の期間にわたって約15μg/gから約150μg/gまでの範囲である、請求項44に記載のステント。
【請求項71】
前記第1の親油性薬剤を前記体腔内に送達する前記投薬量は、約5日から最大約15日までの期間にわたって約15μg/gから約80μg/gまでの範囲である、請求項44に記載のステント。
【請求項72】
前記第1の親油性薬剤を前記体腔内に送達する投薬量は、15日から最大約28日までの期間にわたって約5μg/gから約60μg/gまでの範囲である、請求項44に記載のステント。
【請求項73】
前記第1の親油性薬剤は、遠位の心筋、ステント留置されていない心筋、前記下部の心筋、ステント留置されていない、及び遠位の冠状動脈のうちの少なくとも1つを含む、前記対象の標的領域において治療上有意な濃度に到達し、28日間全体を通してそれらの濃度を維持する、請求項44に記載のステント。
【請求項74】
前記ステントは対象体内に永久的又は一時的に埋め込まれる、請求項44に記載のステント。
【請求項75】
前記第1の親油性薬剤は非晶質状である、請求項44に記載のステント。
【請求項76】
抗血栓剤、抗凝血剤、抗血小板薬、抗脂肪剤、血栓溶解剤、抗増殖剤、抗炎症薬、過形成を阻害する薬剤、平滑筋細胞阻害剤、抗生物質、成長因子阻害剤、細胞接着阻害剤、細胞粘着促進剤、抗有糸分裂薬、抗フィブリン剤、抗酸化薬、抗悪性腫瘍薬、内皮細胞回復を促進する薬剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、抗悪性腫瘍薬、代謝拮抗物質、抗アレルギー物質、ウイルスベクター、核酸、モノクローナル抗体、チロシンキナーゼの阻害剤、アンチセンス化合物、オリゴヌクレオチド、細胞透過促進剤、及びこれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含む有益薬剤をさらに備える、請求項44に記載のステント。
【請求項77】
血糖降下薬、脂質低下薬、タンパク質、核酸、赤血球生成促進に有用な薬剤、血管形成剤、抗潰瘍/逆流防止剤、及び制嘔吐剤/制吐薬、PPAR−アルファアゴニスト、及びこれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含む有益薬剤をさらに備える、請求項44に記載のステント。
【請求項78】
ヘパリンナトリウム、LMWヘパリン、ヘパリン様物質、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、ヴァプリプロスト、プロスタサイクリン及びプロスタサイクリン類似体、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成抗トロンビン剤)、糖タンパク質Iib/Iia(血小板細胞膜受容体拮抗薬抗体)、組換え型ヒルジン、トロンビン阻害剤、インドメタシン、サリチル酸フェニル、β−エストラジオール、ビンブラスチン、ABT−627(アトラセンタン)、テストステロン、プロゲステロン、パクリタキセル、メトトレキサート、ホテムスチン、RPR−101511A、シクロスポリンA、ビンクリスチン、カルベジオール、ビンデシン、ジピリダモール、メトトレキサート、葉酸、トロンボスポンジン模倣剤、エストラジオール、デキサメタゾン、メトリザミド、イオパミドール、イオヘキソール、イオプロミド、イオビトリドール、イオメプロール、イオペントール、イオベルソール、イオキシラン、イオジキサノール、イオトロラン、及びこれらのプロドラッグ、類似体、誘導体、及びこれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含む有益薬剤をさらに備える、請求項44に記載のステント。
【請求項79】
末梢血管ステント、末梢血管冠状動脈ステント、分解可能冠状動脈ステント、分解不可能冠状動脈ステント、自己拡張ステント、バルーン拡張ステント、及び食道ステントからなる群から選択されるステントを含む、請求項44に記載のステント。
【請求項80】
前記第2の親油性薬剤は、以下の構造を有するゾタロリムスのうちの少なくとも1つである、請求項56に記載のステント。
【化2】

【請求項81】
前記親油性薬剤は、心外膜及び/又は心膜嚢に連続的に送達される、請求項51に記載のステント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公表番号】特表2009−530031(P2009−530031A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501512(P2009−501512)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/006916
【国際公開番号】WO2007/111885
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(507316642)アボット ラボラトリーズ (18)
【Fターム(参考)】