説明

医療用カテーテルキット

【課題】 処置具挿入管路内でのカテーテルの蛇行を抑えて処置具挿入管路に容易に挿入することができる医療用カテーテルキットを提供すること。
【解決手段】 医療用カテーテルキット1は、内視鏡2に配された処置具挿入管路3を介して少なくとも一部が胆管(体腔)内に挿入されて留置され、全長が胆管内における留置長さと処置具挿入管路3の長さとの和よりも長い経鼻ドレナージチューブ(カテーテル)6と、処置具挿入管路3の内径よりも小さい外径及び経鼻ドレナージチューブ6の外径よりも大きい内径を有して処置具挿入管路3に挿入可能な挿入アダプター(外套管)7とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の体腔内に挿入する医療用カテーテルキットに関する。
【背景技術】
【0002】
胆管内に溜まった胆汁等を排出する処置の際に使用する医療用カテーテルの一つとして、内瘻式及び外瘻式のドレナージチューブがある。内瘻式のドレナージチューブは、一端が胆管内に留置された状態で他端側が胆管外に突出して配されて使用される。このような内瘻式のドレナージチューブには、一般にフラップと呼ばれる胆管内留置後の移動防止を軽減するためのチューブ表面の切り込み部やピッグテールと称するループ部が配されている。
【0003】
一方、外瘻式のドレナージチューブの一つとして経鼻ドレナージチューブがある(例えば、特許文献1参照。)。この経鼻ドレナージチューブは、一端側が胆管内に留置された状態で、他端側が鼻腔を介して体外に引き出されて使用される。この経鼻ドレナージチューブは、上述の状態で数日間留置されるため、非常に柔軟に形成されている。
【0004】
何れのタイプのドレナージチューブも内視鏡に配された処置具挿入管路を介して胆管、左右肝管、胆嚢管、膵管等まで挿入される。
この処置具挿入管路は、他にも幅広い処置具に対応するため、なるべく大きな内径を確保する方向に技術の革新が図られている。
【0005】
ここで、図4に示すように、経鼻ドレナージチューブ100のような柔軟なカテーテルを処置具挿入管路の大きな内視鏡に挿入する際、処置具挿入管路101内を蛇行せずに挿入して内視鏡102の挿入部103の先端から突出できることが望ましい。しかしながら、通常は図5に示すように、経鼻ドレナージチューブ100が処置具挿入管路101内で蛇行してしまい、挿入部103の先端まで挿通させることが困難である。
また、経鼻ドレナージチューブ100の挿入性を向上するために、図6に示すように、ガイドワイヤ105を使用して挿入する場合もある。しかし、経鼻ドレナージチューブ100とガイドワイヤ105との間の摩擦が大きく、処置具挿入管路101内でガイドワイヤ105とともにやはり蛇行したり、ガイドワイヤ105との間で経鼻ドレナージチューブ100が蛇行したりしてしまうことにより、挿入力量が大きくなって挿入が困難となる。
【特許文献1】特開2003−135590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、処置具挿入管路内でのカテーテルの蛇行を抑えて処置具挿入管路に容易に挿入することができる医療用カテーテルキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明に係る医療用カテーテルキットは、内視鏡に配された処置具挿入管路を介して少なくとも一部が体腔内に挿入されて留置され、全長が前記体腔内における留置長さと前記処置具挿入管路の長さとの和よりも長いカテーテルと、前記処置具挿入管路の内径よりも小さい外径及び前記カテーテルの外径よりも大きい内径を有して前記処置具挿入管路に挿入可能な外套管とを備えていることを特徴とする。
【0008】
この医療用カテーテルキットは、外套管にカテーテルを挿通し、外套管に対してカテーテルを進退操作することができる。従って、内視鏡の処置具挿入管路にカテーテルを挿通させる際、処置具挿入管路に外套管を挿入した状態で外套管にカテーテルを挿入又は予め外套管にカテーテルを挿入した状態の外套管を処置具挿入管路に挿入することによって、カテーテルの剛性に外套管の剛性を加えることができ、処置具挿入管路内におけるカテーテルの剛性を向上させることができる。
【0009】
また、本発明に係る医療用カテーテルキットは、前記医療用カテーテルキットであって、前記内視鏡の操作部から前記処置具挿入管路に前記外套管を挿入する際に、前記外套管が、前記処置具挿入管路内で少なくとも前記内視鏡の挿入部に前記外套管の遠位端が到達する長さ以上であることを特徴とする。
【0010】
この医療用カテーテルキットは、処置具挿入管路の先端まで外套管を予め挿入した際に、外套管の遠位端を処置具挿入管路の内視鏡挿入部領域まで挿入した状態で、外套管の他端を処置具挿入管路の手元側端部から突出させることができる。従って、カテーテルを処置具挿入管路に挿入する前に外套管内に挿入することができ、処置具挿入管路に対する高い剛性を維持させながらカテーテルを挿入することができる。
【0011】
また、本発明に係る医療用カテーテルキットは、前記医療用カテーテルキットであって、前記外套管と前記カテーテルとをともに支持する固定具を備え、該固定具の外径が、前記処置具挿入管路の内径よりも大きいことを特徴とする。
この医療用カテーテルキットは、外套管やカテーテルの意図しない過度な処置具挿入管路への挿入を行おうとしても、固定具を処置具挿入管路の端部に当接させることによって、外套管やカテーテルの処置具挿入管路への挿入を抑えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、処置具挿入管路壁面との摩擦等によってカテーテルが湾曲して蛇行するのを抑えることができ、カテーテルを処置具挿入管路に容易に挿入することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る一実施形態について、図1から図3を参照して説明する。
本実施形態に係る医療用カテーテルキット1は、内視鏡2に配された処置具挿入管路3を介して少なくとも一部が胆管(体腔)5内に挿入されて留置され、全長が胆管5内における留置長さと処置具挿入管路3の長さとの和よりも長い経鼻ドレナージチューブ(カテーテル)6と、処置具挿入管路3の内径よりも小さい外径及び経鼻ドレナージチューブ6の外径よりも大きい内径を有して処置具挿入管路3に挿入可能な挿入アダプター(外套管)7とを備えている。
【0014】
内視鏡2はいわゆる側視型とされており、可撓性を有して体内に挿入される挿入部8と、挿入部8の先端側を湾曲操作する操作部10とを備えている。処置具挿入管路3は、操作部10の一部及び挿入部8の内部を貫通するようにして配されている。
処置具挿入管路3は、操作部10内で分岐部11にて分岐されており、一端が挿入部8の先端で開口して配され、他端が操作部10に配された鉗子口12に連通されている。
【0015】
経鼻ドレナージチューブ6は、細長で柔軟な材料で構成されており、一端側は胆管5内に留置され、他端側は鼻腔から体外に引き出されて配される。そして、胆汁が経鼻ドレナージチューブ6を介して放出される。
経鼻ドレナージチューブ6は、胆汁の状態や量を把握したり、胆管造影にも用いられる。
【0016】
挿入アダプター7は、チューブ状に形成されており、挿入アダプター7の長さは、処置具挿入管路3の長さ以上とされている。具体的には、挿入アダプター7を処置具挿入管路3内に挿入した際、一端を挿入部8の先端位置に配した場合、他端が鉗子口12から所定の長さで突出して配される長さとされている。
挿入アダプター7には、経鼻ドレナージチューブ6を挿入アダプター7内に挿入後に両者を固定するための固定具13が配されている。
【0017】
固定具13は、挿入アダプター7を貫通させた状態で互いに螺合されるメス部材13A及びオス部材13Bと、メス部材13Aをオス部材13Bと螺合させた際につぶれることによって挿入アダプター7の径を変化させて固定具への固定を確実にするOリング13Cとを備えている。固定具13の外径(D)は、処置具挿入管路3の内径(d)よりも大きく形成されている。
【0018】
次に、本実施形態に係る医療用カテーテルキット1の使用方法、及び作用・効果について説明する。
まず、内視鏡2の挿入部8を口から体内に挿入して十二指腸乳頭13近傍まで移動する。
そして、胆管造影後、不図示のガイドワイヤを鉗子口12から処置具挿入管路3に挿入して胆管5内に留置する。
【0019】
ガイドワイヤを介して、不図示の切開用ナイフを処置具挿入管路3に挿入し、十二指腸乳頭13を切開する。その後、必要があれば胆管5内の結石を除去するために、不図示のバルーンカテーテル等による採石手技を行う。
【0020】
一方、予め挿入アダプター7内に挿入し、固定具にて挿入アダプター7に固定した経鼻ドレナージチューブ6を準備しておく。この状態で、挿入アダプター7とともにガイドワイヤに挿通させながら鉗子口12から処置具挿入管路3に挿入する。
【0021】
このとき、挿入アダプター7の外径のほうが経鼻ドレナージチューブ6の外径よりも大きいので、経鼻ドレナージチューブ6を単独で処置具挿入管路3に挿入する場合と比べた場合、処置具挿入管路3の内壁との間の隙間が小さくなる。また、経鼻ドレナージチューブ6が挿入アダプター7内に収納された状態なので、経鼻ドレナージチューブ6の肉厚が挿入アダプター7の肉厚分増加したのと同様の状態となる。従って、処置具挿入管路3に対する経鼻ドレナージチューブ6の剛性が向上する。
【0022】
この結果、挿入アダプター7が処置具挿入管路3の途中で引っ掛ったとしても、その場で挿入アダプター7及び経鼻ドレナージチューブ6が屈曲又は湾曲することなく、処置具挿入管路3内で蛇行することなく管壁に沿って処置具挿入管路3の先端まで経鼻ドレナージチューブ6が挿入される。
【0023】
そして、固定具13による固定を解除して、挿入アダプター7の先端が内視鏡2の挿入部8先端から突出しないようにしながら、処置具挿入管路3に対して経鼻ドレナージチューブ6のみを胆管5内に挿入して所定の位置に留置する。
こうして挿入アダプター7をガイドワイヤとともに処置具挿入管路3から抜去し、さらに内視鏡2の挿入部8を抜去することによって、又はこれらを一緒に抜去することによって、経鼻ドレナージチューブ6のみを胆管5内に留置する。
【0024】
一方、挿入アダプター7のみを先に処置具挿入管路3に挿入した状態で経鼻ドレナージチューブ6を挿入アダプター7に挿入してもよい。
この場合、処置具挿入管路3に挿通されたガイドワイヤを介して、まず挿入アダプター7を鉗子口12から処置具挿入管路3に挿入する。そして、同様にガイドワイヤを介して挿入アダプター7内に経鼻ドレナージチューブ6を挿入する。
【0025】
このとき、挿入アダプター7の内径は処置具挿入管路3の内径よりも小さいため、挿入アダプター7内で経鼻ドレナージチューブ6が蛇行等することなく挿入される。
こうして、経鼻ドレナージチューブ6の先端が挿入アダプター7及び内視鏡2の挿入部8の先端から突出させた後は、上述のようにその後の処置を行う。
【0026】
この医療用カテーテルキット1によれば、処置具挿入管路3に経鼻ドレナージチューブ6を挿入する際、処置具挿入管路3の壁面との摩擦等によって経鼻ドレナージチューブ6が管路内で湾曲して蛇行するのを抑えることができる。従って、経鼻ドレナージチューブ6を処置具挿入管路3に容易に挿入することができる。
【0027】
特に、処置具挿入管路3の先端まで挿入アダプター7を予め挿入した際に、挿入アダプター7の一端を処置具挿入管路3の先端まで挿入した状態で、挿入アダプター7の他端を鉗子口12から突出させることができる。従って、経鼻ドレナージチューブ6を処置具挿入管路3に挿入する前に挿入アダプター7内に挿入することができる。この結果、処置具挿入管路3に対する高い剛性を維持させながら、経鼻ドレナージチューブ6を処置具挿入管路3に挿入することができる。
【0028】
また、固定具13の外径は、処置具挿入管路3の内径よりも大きいので、挿入アダプター7の意図しない過度な処置具挿入管路3内への挿入があっても、固定具13よりも近位側の挿入アダプター7を処置具挿入管路3内に挿入してしまうのを抑えることができる。
【0029】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態ではカテーテルとして経鼻ドレナージチューブとしているが、これに限ることはなく、細長で柔軟なカテーテルであれば他のものでも構わない。
【0030】
また、挿入アダプター7の長さを処置具挿入管路3よりも長いものとしているが、操作部10の鉗子口12から処置具挿入管路3に挿入した際、挿入アダプターの遠位端が内視鏡2の挿入部8に到達可能な程度の長さであっても構わない。さらに、固定具13と挿入アダプター7の遠位端との距離を処置具挿入管路3の全体の長さよりも短くなるように固定具13を挿入アダプター7に固定しても構わない。これらの場合には、挿入アダプター7の遠位端が処置具挿入管路3の先端から突出するのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る医療用カテーテルキットを内視鏡内に挿入した状態を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る医療用カテーテルキットを内視鏡内に挿入した状態を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る医療用カテーテルキットの使用状態を示す説明図である。
【図4】カテーテルのみを内視鏡に挿入したときの理想状態を示す説明図である。
【図5】カテーテルのみを内視鏡に挿入したときの実際の状態を示す説明図である。
【図6】カテーテルにガイドワイヤを挿通して内視鏡に挿入したときの実際の状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1 医療用カテーテルキット
6 経鼻ドレナージチューブ(カテーテル)
7 挿入アダプター(外套管)
13 固定具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡に配された処置具挿入管路を介して少なくとも一部が体腔内に挿入されて留置され、全長が前記体腔内における留置長さと前記処置具挿入管路の長さとの和よりも長いカテーテルと、
前記処置具挿入管路の内径よりも小さい外径及び前記カテーテルの外径よりも大きい内径を有して前記処置具挿入管路に挿入可能な外套管とを備えていることを特徴とする医療用カテーテルキット。
【請求項2】
前記内視鏡の操作部から前記処置具挿入管路に前記外套管を挿入する際に、前記外套管が、前記処置具挿入管路内で少なくとも前記内視鏡の挿入部に前記外套管の遠位端が到達する長さ以上であることを特徴とする請求項1に記載の医療用カテーテルキット。
【請求項3】
前記外套管と前記カテーテルとをともに支持する固定具を備え、
該固定具の外径が、前記処置具挿入管路の内径よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の医療用カテーテルキット。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−111223(P2007−111223A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−305392(P2005−305392)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】