説明

医療用カプセルの搬送方法及びそれに用いる内視鏡装置

【課題】医療用カプセルを体腔内で確実に保持して搬送することのできる医療用カプセルの搬送方法及びそれに用いる内視鏡装置を提供することを目的とする。
【解決手段】内視鏡装置は、挿入部12の先端面45に鉗子口58を備えた内視鏡10と、筒状の挿入補助具70と、鉗子口58に連通される吸引ポンプ51と、挿入部12の外周面と挿入補助具70の内周面との隙間を密封する第1バルーン60とを備える。挿入部12の先端面45を挿入補助具70の内部に配置し、第1バルーン60を膨張させた後、吸引ポンプ51で鉗子口58から吸引を行うことによって、先端面45の前方に吸引状態のカプセル保持室が形成され、そのカプセル保持室に医療用カプセル220の少なくとも一部が取り込まれて保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用カプセルの搬送方法及びそれに用いる内視鏡装置に係り、特に小腸等の深部消化管内で医療用カプセルを保持して搬送する搬送方法及びそれに用いる内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療用内視鏡の分野において、小型カメラを内蔵したカプセル型内視鏡が各種開発されている。このカプセル型内視鏡はワイヤレスで利用できるため、挿入部を体腔内に挿入する内視鏡に比べて、患者の苦痛を軽減することができる。
【0003】
ところで、カプセル型内視鏡等の医療用カプセルは、体腔外に自然に排出されるのを待つのが一般的であるが、体腔内の所定の位置で医療用カプセルを回収したいという要望がある。また、医療用カプセルは、体腔内の狭窄部に引っかかる場合があり、その場合には、医療用カプセルを探して保持し、回収或いは狭窄部の前方に送り出すことが必要になる。さらに、近年では、医療用カプセルを体腔内の所定の位置まで搬送し、その位置から観察し始めたいという要望がある。このような様々な用途において、医療用カプセルを体腔内で保持して搬送することが必要になる。
【0004】
そこで、体腔内の医療用カプセルを保持する機能を備えた内視鏡装置が各種開発されている。例えば、特許文献1の内視鏡装置は、内視鏡の挿入部の先端部に吸引用の開口部を備え、この開口部に医療用カプセルを吸引して保持するようにしている。また、特許文献2の内視鏡装置は、磁石を備えた特殊な処置具を内視鏡の鉗子チャンネルに挿入し、医療用カプセルを磁着して回収するようにしている。
【特許文献1】特開2004−194976号公報
【特許文献2】特開2003−093332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2の内視鏡装置は、医療用カプセルを十分な吸着力で保持することができず、搬送中に医療用カプセルが脱落するおそれがあった。例えば、特許文献1の内視鏡装置は、外径が通常10mm程度の医療用カプセルに対して、内径が2〜4mmと非常に小さい吸引用の開口部に医療用カプセルを吸着して保持するため、保持力が弱く、医療用カプセルが脱落するおそれがあった。
【0006】
特許文献2の内視鏡装置は、磁着力が強いと腸管が挟まれて損傷するおそれがあるため、磁着力を強くすることができず、医療用カプセルの保持力が低下して脱落するおそれがあった。このように従来の内視鏡装置は、医療用カプセルを十分な保持力で保持することができないという問題があった。特に、医療用カプセルが内視鏡の挿入部の先端部よりも大きい場合には、保持力が不足し、医療用カプセルを搬送することができないという問題があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、医療用カプセルを体腔内で確実に保持して搬送することのできる医療用カプセルの搬送方法及びそれに用いる内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は前記目的を達成するために、挿入部の外周面に膨縮自在なバルーンが装着されるとともに、前記挿入部の先端部に吸引用の開口部が設けられる内視鏡と、前記挿入部を挿通させた状態で体腔内に案内する筒状の挿入補助具と、前記吸引用の開口部に連通される吸引手段と、を備えた内視鏡装置を用いて、医療用カプセルを体腔内で搬送する医療用カプセルの搬送方法において、前記挿入部の先端を前記挿入補助具の先端より若干引き込むとともに、前記バルーンを膨張させて前記挿入部の外周面と前記挿入補助具の内周面との隙間を密封し、前記吸引手段で前記吸引用の開口部から吸引して、前記挿入補助具の先端部内側を吸引状態にし、該吸引状態の挿入補助具の先端部内側に前記医療用カプセルの少なくとも一部を取り込んで保持し、搬送することを特徴とする。
【0009】
請求項1の発明によれば、内視鏡の挿入部よりも大きい挿入補助具を用いて医療用カプセルを保持するようにしたので、その保持力が大きくなり、医療用カプセルを確実に保持することができる。
【0010】
また、請求項1の発明によれば、挿入部の先端面の前方に医療用カプセルを保持するようにしたので、保持した医療用カプセルを内視鏡の観察部によって観察することができる。したがって、観察像が映し出されるモニタによって、医療用カプセルの保持状態を常に確認することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は前記目的を達成するために、挿入部の先端部に吸引用の開口部が設けられた内視鏡と、前記挿入部を挿通させた状態で体腔内に案内する筒状の挿入補助具と、前記吸引用の開口部に連通される吸引手段と、前記挿入部又は前記挿入補助具に設けられ、前記挿入部の外周面と前記挿入補助具の内周面との隙間を密封する密封手段と、を備え、前記挿入部の先端を前記挿入補助具の先端より若干引き込むとともに前記密封手段で前記隙間を密封し、前記吸引手段で前記吸引用の開口部から吸引して前記挿入補助具の先端部内側を吸引状態にして医療用カプセルの少なくとも一部を取り込んで保持することを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明によれば、内視鏡の挿入部よりも大きい挿入補助具を用いて医療用カプセルを保持するようにしたので、その保持力が大きくなり、医療用カプセルを確実に保持することができる。
【0013】
また、請求項2の発明によれば、挿入部の先端面の前方に医療用カプセルを保持するようにしたので、保持した医療用カプセルを内視鏡の観察部によって観察することができる。したがって、観察像が映し出されるモニタによって、医療用カプセルの保持状態を常に確認することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は請求項2の発明において、前記密封手段は、前記挿入部の外周面に装着された膨縮自在なバルーンであり、該バルーンを膨張させることによって前記隙間を密封することを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は請求項2の発明において、前記密封手段は、前記挿入補助具を狭窄する狭窄機構であり、前記挿入補助具を狭窄してその内周面を前記挿入部の外周面に密着させることによって前記隙間を密封することを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は請求項2〜4のいずれか1の発明において、前記挿入部の先端を前記挿入補助具の先端より所望の長さ分だけ引き込んだ際の前記挿入補助具の基端位置を示す指標が、前記挿入部に設けられることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、挿入部の指標に挿入補助具の基端位置を合わせることによって、挿入部の先端が所望の長さ分だけ挿入補助具の先端よりも引き込んだ状態になる。したがって、医療用カプセルを保持するのに適切な大きさだけ、挿入部を挿入補助具内に引き込むことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、内視鏡の挿入部よりも大きい挿入補助具を用いて医療用カプセルを保持するようにしたので、医療用カプセルを確実に保持することができるとともに、保持した医療用カプセルを内視鏡の観察部によって観察することができる。よって、本発明によれば、医療用カプセルを体腔内で確実に保持して搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下添付図面に従って本発明に係る医療用カプセルの搬送方法及びそれに用いる内視鏡装置の好ましい実施の形態について詳述する。
【0020】
図1は本発明が適用された内視鏡装置を示すシステム構成図である。図1に示すように内視鏡装置は主として、内視鏡10、挿入補助具70、及びバルーン制御装置100で構成される。
【0021】
内視鏡10は、手元操作部14と、この手元操作部14に連設され、体腔内に挿入される挿入部12とを備える。手元操作部14には、ユニバーサルケーブル16が接続され、このユニバーサルケーブル16の先端にLGコネクタ18が設けられる。LGコネクタ18は光源装置20に着脱自在に連結され、これによって後述の照明光学系54(図2参照)に照明光が送られる。また、LGコネクタ18には、ケーブル22を介して電気コネクタ24が接続され、この電気コネクタ24がプロセッサ26に着脱自在に連結される。
【0022】
手元操作部14には、送気・送水ボタン28、吸引ボタン30、シャッターボタン32、及び機能切替ボタン34が並設されるとともに、一対のアングルノブ36、36が設けられる。手元操作部14の基端部には、L状に屈曲した管によってバルーン送気口38が形成されている。このバルーン送気口38にエア等の流体を供給、或いは吸引することによって、後述の第1バルーン60を膨張、或いは収縮させることができる。
【0023】
挿入部12は、手元操作部14側から順に軟性部40、湾曲部42、及び先端部44で構成され、湾曲部42は、手元操作部14のアングルノブ36、36を回動することによって遠隔的に湾曲操作される。これにより、先端部44を所望の方向に向けることができる。
【0024】
図2に示すように、先端部44の先端面45には、観察光学系52、照明光学系54、54、送気・送水ノズル56、鉗子口(吸引用の開口部に相当)58が設けられる。
【0025】
観察光学系52の後方には、図3に示すプリズム53が配設されており、観察光学系52を介して取り込まれた被写体光の光路がプリズム53によって下方に屈曲される。プリズム53の下方には、基盤57に支持されたCCD55が配設されており、プリズム53で屈曲された被写体光がCCD55の受光面に結像するようになっている。そして、CCD55によって被写体光が電気信号に変換され、この電気信号が信号ケーブル59を介して送信される。信号ケーブル59は、図1の挿入部12、手元操作部14、ユニバーサルケーブル16等に挿通されて電気コネクタ24まで延設され、プロセッサ26に接続される。よって、観察光学系52で取り込まれた観察像は、CCD55の受光面に結像されて電気信号に変換され、そして、この電気信号が信号ケーブル59を介してプロセッサ26に出力され、映像信号に変換される。これにより、プロセッサ26に接続されたモニタ50に観察画像が表示される。
【0026】
照明光学系54、54の後方にはライトガイド(不図示)の出射端が配設されている。このライトガイドは、図1の挿入部12、手元操作部14、ユニバーサルケーブル16に挿通され、LGコネクタ18内に入射端が配設される。したがって、LGコネクタ18を光源装置20に連結することによって、光源装置20から照射された照明光がライトガイドを介して照明光学系54、54に伝送され、照明光学系54、54から前方に照射される。
【0027】
送気・送水ノズル56は、図1の送気・送水ボタン28によって操作されるバルブ(不図示)に連通されており、さらにこのバルブはLGコネクタ18に設けた送気・送水コネクタ48に連通される。送気・送水コネクタ48には不図示の送気・送水手段が接続され、エア又は水が供給される。したがって、送気・送水ボタン28を操作することによって、送気・送水ノズル56からエア又は水を観察光学系52に向けて噴射することができる。
【0028】
図2の鉗子口58は、図3の先端部本体65に支持されたパイプ61に連通され、さらにパイプ61にチューブ63が連結される。チューブ63は、図1の挿入部12内に挿通配置されて、鉗子挿入部46に連通される。よって、鉗子挿入部46から鉗子等の処置具を挿入することによって、この処置具を鉗子口58から導出することができる。また、図3のチューブ63は途中で分岐され、図1の吸引ボタン30によって操作されるバルブ(不図示)に連通されており、このバルブはさらにLGコネクタ18の吸引コネクタ49に接続される。吸引コネクタ49には、吸引ポンプ51が接続されている。したがって、吸引ポンプ51を作動し、吸引ボタン30でバルブを操作することによって、鉗子口58から体液やエア等を吸引することができる。
【0029】
なお、図3の符号67は、先端部本体65の先端面に装着されるキャップであり、符号69は、挿入部12の外周面を被覆する外皮部材である。
【0030】
図2に示すように、挿入部12の外周面には、ゴム等の弾性体から成る第1バルーン60が装着される。第1バルーン60は、両端部が絞られた略筒状に形成されており、挿入部12を挿通させて第1バルーン60を所望の位置に配置した後、図2に示すように第1バルーン60の両端部にゴム製の固定リング62、62を嵌め込むことによって、第1バルーン60が挿入部12に固定される。
【0031】
第1バルーン60の装着位置となる挿入部12の外周面には、通気孔64が形成されている。通気孔64は、図1の手元操作部14に設けられたバルーン送気口38に連通されている。このバルーン送気口38はチューブ110を介してバルーン制御装置100に接続される。したがって、バルーン制御装置100によってエアを供給、吸引することによって、第1バルーン60を膨張、収縮させることができる。なお、第1バルーン60はエアを供給することによって略球状に膨張し、エアを吸引することによって挿入部12の外表面に張り付くようになっている。
【0032】
図4(a)〜図4(c)に示すように、挿入部12の軟性部40には、指標37、39が形成されている。指標37は、図4(a)に示すように、挿入補助具70の先端が挿入部12の第1バルーン60に接近した際に(すなわち接触する前に)、挿入補助具70の基端から現れる位置に形成されている。また、指標39は、図4(b)、図4(c)に示すように、挿入部12の先端面45を挿入補助具70の内部に配置して、所定の長さ分だけ引き込んだ際に、挿入補助具70の基端から現れる位置に形成されている。ここで、所定の長さとは、挿入部12の先端面45の前方に医療用カプセル220を保持するのに適した大きさであり、例えば、医療用カプセル220一個分程度の長さに設定される。なお、指標37、39は一周するように形成されており、どの方向からも視認できるようになっている。また、指標37、39は、異なる色、又は、異なる太さ、或いは、異なる模様で形成されており、指標37と指標39の区別が一目で付くようになっている。
【0033】
一方、図1に示す挿入補助具70は、基端側に設けられた筒状で硬質の把持部72と、この把持部72の先端に装着された本体チューブ73で構成されており、前述した内視鏡10の挿入部12は、把持部72から本体チューブ73内に挿入される。
【0034】
本体チューブ73は、ウレタン等から成る可撓性の樹脂チューブを基材とし、この基材の外周面と内周面が親水性コート材(潤滑性コート材)によってコーティングされている。親水性コート材としては例えば、ポリビニルピロリドン、アクリル樹脂、シリコン樹脂が用いられる。
【0035】
本体チューブ73の先端近傍には、第2バルーン80が装着される。第2バルーン80は、両端が窄まった筒状に形成されており、挿入補助具70を貫通させた状態で装着され、不図示の糸を巻回することによって固定される。第2バルーン80には、挿入補助具70の外周面に貼り付けたチューブ74が連通され、このチューブ74の基端部にコネクタ76が設けられる。コネクタ76には、チューブ120が接続され、このチューブ120を介してバルーン制御装置100に接続される。したがって、バルーン制御装置100でエアを供給、吸引することによって、第2バルーン80を膨張、収縮させることができる。第2バルーン80は、エアを供給することによって略球状に膨張し、エアを吸引することによって挿入補助具70の外周面に貼りつくようになっている。
【0036】
挿入補助具70の基端側には注入口78が設けられている。この注入口78は、挿入補助具70の内周面に形成された開口(不図示)に連通される。したがって、注入口78から注射器等で潤滑剤(例えば水等)を注入することによって、挿入補助具70の内部に潤滑剤を供給することができる。よって、挿入補助具70に挿入部12を挿入した際に、挿入補助具70の内周面と挿入部12の外周面との摩擦を減らすことができ、挿入部12と挿入補助具70の相対的な移動をスムーズに行うことができる。
【0037】
バルーン制御装置100は、第1バルーン60にエア等の流体を供給・吸引するとともに、第2バルーン80にエア等の流体を供給・吸引する装置である。バルーン制御装置100は主として、装置本体102、及びリモートコントロール用のハンドスイッチ104で構成される。
【0038】
装置本体102の前面には、電源スイッチSW1、停止スイッチSW2、第1圧力表示部106、第2圧力表示部108、及び第1機能停止スイッチSW3、第2機能停止スイッチSW4が設けられる。第1圧力表示部106、第2圧力表示部108はそれぞれ、第1バルーン60、第2バルーン80の圧力値を表示するパネルであり、バルーン破れ等の異常発生時にはこの圧力表示部106、108にエラーコードが表示される。
【0039】
第1機能停止スイッチSW3、第2機能停止スイッチSW4はそれぞれ、後述の内視鏡用制御系統A、挿入補助具用制御系統Bの機能をON/OFFするスイッチであり、第1バルーン60と第2バルーン80の一方のみを使用する場合には、使用しない方の機能停止スイッチSW3、SW4を操作して機能をOFFにする。機能がOFFになった制御系統A又はBでは、エアの供給、吸引が完全に停止し、その系統の圧力表示部106、又は108もOFFになる。機能停止スイッチSW3、SW4は両方をOFFにすることによって、初期状態の設定等を行うことができる。例えば、両方の機能停止スイッチSW3、SW4をOFFにして、ハンドスイッチ104の全スイッチSW5〜SW9を同時に押下操作することによって、大気圧に対するキャリブレーションが行われる。
【0040】
装置本体102の前面には、第1バルーン60へのエア供給・吸引を行うチューブ110、及び第2バルーン80へのエア供給・吸引を行うチューブ120が接続される。各チューブ110、120と装置本体102との接続部分にはそれぞれ、第1バルーン60、或いは第2バルーン80が破れた時の体液の逆流を防止するための逆流防止ユニット112、122が設けられる。逆流防止ユニット112、122は、装置本体102に着脱自在に装着された中空円盤状のケース(不図示)の内部に気液分離用のフィルタを組み込むことによって構成されており、装置本体102内に液体が流入することをフィルタによって防止する。
【0041】
なお、圧力表示部106、108、機能停止スイッチSW3、SW4、及び逆流防止ユニット112、122は、内視鏡10用と挿入補助具70用とが常に一定の配置になっている。すなわち、内視鏡10用の圧力表示部106、機能停止スイッチSW3、及び逆流防止ユニット112がそれぞれ、挿入補助具70用の圧力表示部108、機能停止スイッチSW4、及び逆流防止ユニット122に対して右側に配置されている。
【0042】
一方、ハンドスイッチ104には、装置本体102側の停止スイッチSW2と同様の停止スイッチSW5と、第1バルーン60の加圧/減圧を指示するON/OFFスイッチSW6と、第1バルーン60の圧力を保持するためのポーズスイッチSW7と、第2バルーン80の加圧/減圧を指示するON/OFFスイッチSW8と、第2バルーン80の圧力を保持するためのポーズスイッチSW9とが設けられており、このハンドスイッチ104はコード130を介して装置本体102に電気的に接続されている。なお、図1には示してないが、ハンドスイッチ104には、第1バルーン60や第2バルーン80の送気状態、或いは排気状態を示す表示部が設けられている。
【0043】
上記の如く構成されたバルーン制御装置100は、各バルーン60、80にエアを供給して膨張させるとともに、そのエア圧を一定値に制御して各バルーン60、80を膨張した状態に保持する。また、各バルーン60、80からエアを吸引して収縮させるとともに、そのエア圧を一定値に制御して各バルーン60、80を収縮した状態に保持する。
【0044】
バルーン制御装置100は、バルーン専用モニタ82に接続されており、各バルーン60、80を膨張、収縮させる際に、各バルーン60、80の圧力値や膨張・収縮状態をバルーン専用モニタ82に表示する。なお、各バルーン60、80の圧力値や膨張・収縮状態は、内視鏡10の観察画像にスーパーインポーズしてモニタ50に表示するようにしてもよい。
【0045】
次に上記の如く構成された内視鏡装置において、挿入部12を体腔内に挿入する方法について図5(a)〜(j)に従って説明する。なお、図5(a)〜(j)は経口的に挿入を行う例であるが、経門的に挿入を行うようにしても良い。
【0046】
まず、第1バルーン60及び第2バルーン80を収縮させた状態で、挿入部12を挿入補助具70に挿通させた後、挿入部12の挿入を開始する。そして、図5(a)に示すように、挿入部12の先端が胃90Aの内部に達するまで挿入部12を挿入する。次いで、挿入補助具70を挿入部12に沿わせて挿入し、図5(b)に示すように、挿入補助具70の先端を胃90A内に到達させる。
【0047】
次に挿入補助具70が体腔内から抜けないように把持した状態で、挿入部12を挿入補助具70の内部に押し込んでいき、図5(c)に示すように、挿入部12の先端が十二指腸行脚90Bまで到達するまで挿入する(挿入操作)。そして、第1バルーン60を膨張させ、挿入部12の先端を十二指腸行脚に固定する(固定操作)。
【0048】
次いで、挿入補助具70を押し込むことによって挿入補助具70を挿入部12に沿わせて挿入する(押し込み操作)。そして、図5(d)に示すように、挿入補助具70の先端部を第1バルーン60の近傍に持っていった後、第2バルーン80にエアを供給して膨張させる。これにより、第2バルーン80が十二指腸下行脚90Bに固定され、十二指腸下行脚90Bが第2バルーン80を介して挿入補助具70に保持された状態になる(保持操作)。
【0049】
この状態で挿入補助具70と挿入部12をともに手繰り寄せる(手繰り寄せ操作)。これにより、十二指腸下行脚90Bまでの消化管90の余分な撓みや屈曲が取り除かれる。
【0050】
次いで、第1バルーン60からエアを吸引して第1バルーン60を収縮させた後、図5(e)に示すように、挿入部12を小腸90Cの内部まで進める(挿入操作)。その際、十二指腸下行脚90Bまでの消化管90の余分な撓みが挿入補助具70によって取り除かれているので、挿入部12を容易に挿入することができる。
【0051】
次に、図5(f)に示すように、第1バルーン60を膨張させて挿入部12の先端を消化管90に固定する。そして、第2バルーン80を収縮させた後、図5(g)に示すように、挿入補助具70を挿入部12に沿わせて挿入し、挿入補助具70の先端が第1バルーン60の近傍に近接した状態で第2バルーン80を膨張させる。
【0052】
次に図5(h)に示すように、第1バルーン60及び第2バルーン80を膨張させた状態で、挿入補助具70及び挿入部12を手繰り寄せる。これにより、消化管90の余分な撓みや屈曲が取り除かれる。
【0053】
上述した操作を繰り返すことによって、複雑に屈曲或いは撓んでいた消化管90が図5(i)に示すように単純化される。よって、図5(j)に示すように、消化管90のさらに深部に挿入部12を挿入することができる。
【0054】
次に本実施の形態の内視鏡装置を用いて、体腔内の医療用カプセル220を保持して搬送する方法について説明する。以下の例では、小腸等の深部消化管から医療用カプセル220を回収する例で説明する。
【0055】
第1バルーン60を挿入部12の先端部44に装着した状態で、挿入部12を体腔内に挿入する。その際の挿入方法としては、例えば前述の図5(a)〜図5(j)の如く操作を行い、挿入部12の先端部44を小腸等の深部消化管に挿入する。
【0056】
挿入部12の先端部44を医療用カプセル220の位置まで挿入した後、観察光学系52によって得られる観察像を見ながら、先端部44を体腔内の医療用カプセル220に接近させる。
【0057】
次に、第1バルーン60を収縮させた後、図4(b)に示すように、挿入部12を引き抜き方向に移動させ、その先端面45を挿入補助具70の内部に配置する。その際、指標39が現れた時点で挿入部12の操作を止めることによって、挿入補助具70の先端部内側には、適切な大きさの空間(すなわち、挿入部12の先端面45よりも前方で、且つ、挿入補助具70の内周面で囲まれた空間:以下、カプセル保持室という)が形成される。
【0058】
次に、図4(c)に示すように、第1バルーン60に所定圧のエアを送気して第1バルーン60を膨張させる。これにより、挿入部12の外周面と挿入補助具70の内周面との隙間が全周にわたって第1バルーン60によって密封される。
【0059】
次に、吸引ボタン30を操作することによって鉗子口58からの吸引作業を開始する。これにより、前記カプセル保持室の気体(或いは液体)が鉗子口58から吸引され、カプセル保持室の内部が吸引状態になる。カプセル保持室の内部が吸引状態になることによって、医療用カプセル220は、図4(c)に示すようにカプセル保持室の内部に吸引されて保持される。
【0060】
このようにして医療用カプセル220を保持した後、内視鏡10の挿入部12及び挿入補助具70を体腔内から引き抜く。これにより、医療用カプセル220が体腔の外部に搬送されて回収される。搬送時、医療用カプセル220は、観察光学系52による観察範囲内で保持されているので、医療用カプセル220が保持されていることをモニタ50の観察画像によって常に視認することができる。したがって、医療用カプセル220が脱落した場合、すぐに状況を把握することができる。
【0061】
また、挿入部12を体腔内から引き抜く際、挿入部12よりも大きい挿入補助具70を利用してカプセル保持室を形成し、このカプセル保持室で医療用カプセル220を保持するようにしたので、医療用カプセル220の保持力が大きくなり、医療用カプセル220の脱落を抑制することができる。
【0062】
このように本実施の形態によれば、挿入補助具70を利用して医療用カプセル220を保持するようにしたので、大きな保持力で医療用カプセル220を保持することができ、医療用カプセル220を確実に回収することができる。特に、本実施の形態によれば、挿入補助具70を利用することによって、挿入部12よりも太い医療用カプセル220を回収することができるので、挿入部12を細径化した場合にも医療用カプセル220の保持を確実に行うことができる。
【0063】
さらに、本実施の形態によれば、ダブルバルーン式の内視鏡を用いることによって医療用カプセル220を確実に保持することができる。すなわち、本実施の形態は、挿入部12に装着された第1バルーン60を膨張させることによって、挿入部12の外周面と挿入補助具70の内周面との隙間を密封するようにしたので、密封手段を別途設ける必要がない。
【0064】
なお、上述した実施形態は、体腔内の医療用カプセル220を保持して体腔外に回収する例で説明したが、保持した医療用カプセル220を体腔内で搬送して解放する用途で使用してもよい。例えば、医療用カプセル220が体腔内の狭窄部で引っかかった場合、医療用カプセル220を保持して狭窄部の前方に搬送し、医療用カプセル220の保持を解除するようにしてもよい。医療用カプセル220の保持解除は、図1の吸引ボタン30を操作し、鉗子口58からの吸引操作を停止することによって行われる。
【0065】
また、医療用カプセル220を体腔内で保持する用途だけでなく、体腔外で医療用カプセル220を保持し、その状態で挿入部12を体腔内に挿入して医療用カプセル220を体腔内へ搬送する用途で使用してもよい。
【0066】
また、上述した実施形態は、挿入補助具70よりも細い医療用カプセル220を保持する例で説明したが、例えば図6に示すように挿入補助具70よりも太い医療用カプセル220を保持する用途で使用してもよい。この場合、挿入部12の先端面45より前方のカプセル保持室は、軸方向の長さ(すなわち、先端面45から突出した挿入補助具70の突出量)をh、挿入補助具70の先端開口の内径d、医療用カプセル220の曲面部の半径をrとした際に、下記の式を満たすことが好ましい。
【0067】
【数1】

この式を満たすようにカプセル保持室を形成することによって、医療用カプセル220が挿入補助具70の先端に吸着された際に、医療用カプセル220が挿入部12の先端面45に接触しなくなる。よって、医療用カプセル220と挿入補助具70の先端との密着状態を保つことができるので、鉗子口58から吸引を行った際にカプセル保持室を減圧状態に保つことができ、医療用カプセル220を確実に吸着保持することができる。
【0068】
なお、上述した実施形態は、挿入部12の外周面と挿入補助具70の内周面との隙間を密封する密封手段として、第1バルーン60を利用したが、密封手段の構成はこれに限定するものではない。例えば、図7に示すように、挿入補助具70の内周面にドーナツ状のバルーン200を設け、このバルーン200にエア管路202を介してエアを供給するようにしてもよい。この場合、バルーン200を膨張させることによって、バルーン200の内周面が挿入部12の外周面に全周にわたって密着するので、挿入部12の外周面と挿入補助具70の内周面との隙間を密封することができる。
【0069】
図8(a)、図8(b)は、他の密封手段の構成を示す模式図である。同図に示す挿入補助具70には、リング部材204が周方向に配置されて埋め込まれている。このリング部材204は形状記憶材から成り、加熱することによって図8(b)に示す如く縮径して挿入補助具70を狭窄し、冷却することによって図8(a)に示す如く拡径して挿入補助具70を一定径の筒状態に戻すようになっている。また、リング部材204には、リード線106が接続されており、このリード線206で通電することによって加熱されるようになっている。なお、リング部材204に隣接してヒータを埋め込んでもよい。
【0070】
上記の如く構成された挿入補助具70は、リング部材204を通電加熱することによって、リング部材204が変形して縮径し、挿入補助具70が狭窄される。そして、狭窄された挿入補助具70が挿入部12の外周面に全周にわたって密着することによって、挿入部12の外周面と挿入補助具70の内周面との隙間を密封することができる。
【0071】
なお、図8(a)、図8(b)の実施形態では、形状記憶材から成るリング部材204によって挿入補助具70を狭窄するようにしたが、狭窄方法はこれに限定するものではなく、例えばワイヤ等の紐状部材(不図示)を用いて挿入補助具を狭窄するようにしてもよい。すなわち、挿入補助具70の内部に周方向のガイド孔を形成し、このガイド孔に紐状部材を挿通させ、さらにその紐状部材の端部を挿入補助具70の基端部から外部に引き出すようにするとよい。これにより、紐状部材の端部を引っ張ることによって、ガイド孔の位置で挿入補助具70を狭窄することができる。
【0072】
なお、本発明において、挿入補助具70の先端を縮径、或いは拡径できるように構成すると、医療用カプセル220の保持力をさらに高めることができる。例えば図9に示す挿入補助具70は、その先端に、形状記憶材から成るリング部材208が周方向に配置された状態で埋め込まれている。リング部材208にはリード線210が接続され、このリード線210を介してリング部材208に通電して加熱することによって、リング部材208が縮径され、挿入補助具70の先端が縮径されるようになっている。
【0073】
このように構成された挿入補助具70は、挿入部12の先端面45の前方にカプセル保持室を形成して吸引をかけ、医療用カプセル220をカプセル保持室に取り込んだ後、リング部材208を通電加熱して縮径させることによって挿入補助具70の先端が狭窄される。したがって、カプセル保持室の入口の開口が小さくなるので、カプセル保持室に取り込んだ医療用カプセル220が脱落しにくくなり、医療用カプセル220の保持力を高めることができる。
【0074】
一方、図10に示す挿入補助具70は、その先端に、形状記憶材から成るリング部材212が周方向に配置された状態で埋め込まれている。リング部材212にはリード線214が接続され、このリード線214を介してリング部材212に通電して加熱することによって、リング部材212が拡径され、挿入補助具70の先端が拡径方向に変形されるようになっている。
【0075】
このように構成された挿入補助具70は、リング部材212に通電することによって挿入補助具70の先端が拡径するので、挿入補助具70の径よりも大きい医療用カプセル220を保持した際に、医療用カプセル220の曲面部分と挿入補助具70の先端内側のテーパー部分とが面接触して密着される。したがって、カプセル保持室の内部の減圧度を高めることができるので、医療用カプセル220の保持力が大きくなり、医療用カプセル220の脱落を防止することができる。
【0076】
なお、上述した実施の形態では、図4(a)〜図4(c)に示す如く、挿入部12を挿入補助具70に対して抜く方向に移動させた際、所定の大きさのカプセル保持室が形成されたことを指標39によって認識するようにしたが、これに限定するものではなく、所定の大きさのカプセル保持室が形成された際に挿入部12の移動を規制するストッパを設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係る内視鏡装置のシステム構成図
【図2】内視鏡の挿入部の先端部を示す斜視図
【図3】小さい医療用カプセルの保持状態を示す図
【図4】指標の位置関係を示す模式図
【図5】本発明に係る内視鏡装置の操作方法を示す説明図
【図6】大きい医療用カプセルの保持状態を示す図
【図7】他の密封手段の構成を示す模式図
【図8】他の密封手段の構成を示す模式図
【図9】先端に縮径手段を備えた挿入補助具の構成図
【図10】先端に拡径手段を備えた挿入補助具の構成図
【符号の説明】
【0078】
10…内視鏡、12…挿入部、14…手元操作部、26…プロセッサ、50…モニタ、51…吸引ポンプ、52…観察光学系、58…鉗子口、60…第1バルーン、70…挿入補助具、80…第2バルーン、100…バルーン制御装置、220…医療用カプセル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部の外周面に膨縮自在なバルーンが装着されるとともに、前記挿入部の先端部に吸引用の開口部が設けられる内視鏡と、前記挿入部を挿通させた状態で体腔内に案内する筒状の挿入補助具と、前記吸引用の開口部に連通される吸引手段と、を備えた内視鏡装置を用いて、医療用カプセルを体腔内で搬送する医療用カプセルの搬送方法において、
前記挿入部の先端を前記挿入補助具の先端より若干引き込むとともに、前記バルーンを膨張させて前記挿入部の外周面と前記挿入補助具の内周面との隙間を密封し、
前記吸引手段で前記吸引用の開口部から吸引して、前記挿入補助具の先端部内側を吸引状態にし、
該吸引状態の挿入補助具の先端部内側に前記医療用カプセルの少なくとも一部を取り込んで保持し、搬送することを特徴とする医療用カプセルの搬送方法。
【請求項2】
挿入部の先端部に吸引用の開口部が設けられた内視鏡と、
前記挿入部を挿通させた状態で体腔内に案内する筒状の挿入補助具と、
前記吸引用の開口部に連通される吸引手段と、
前記挿入部又は前記挿入補助具に設けられ、前記挿入部の外周面と前記挿入補助具の内周面との隙間を密封する密封手段と、
を備え、前記挿入部の先端を前記挿入補助具の先端より若干引き込むとともに前記密封手段で前記隙間を密封し、前記吸引手段で前記吸引用の開口部から吸引して前記挿入補助具の先端部内側を吸引状態にして医療用カプセルの少なくとも一部を取り込んで保持することを特徴とする内視鏡装置。
【請求項3】
前記密封手段は、前記挿入部の外周面に装着された膨縮自在なバルーンであり、該バルーンを膨張させることによって前記隙間を密封することを特徴とする請求項2に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記密封手段は、前記挿入補助具を狭窄する狭窄機構であり、前記挿入補助具を狭窄してその内周面を前記挿入部の外周面に密着させることによって前記隙間を密封することを特徴とする請求項2に記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記挿入部の先端を前記挿入補助具の先端より所望の長さ分だけ引き込んだ際の前記挿入補助具の基端位置を示す指標が、前記挿入部に設けられることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1に記載の内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−61397(P2007−61397A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−251932(P2005−251932)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】