説明

医療用ガイドワイヤとその製造方法

【課題】放射線不透過線材と放射線透過線材の単一の線材から成るコイルスプリング体の溶着接合部内の接合形態と、線材の機械的強度特性との相関関係を明確にして、高強度の引張破断強度を有するコイルスプリング体から成る医療用ガイドワイヤに関する技術を開示するものである。
【解決手段】単一の線材の縮径伸線加工前後の放射線不透過線材と放射線透過線材に一定範囲の引張破断強度に差を設け、さらに縮径伸線加工の途中で引張破断強度が逆転する遷移領域を設けることにより、高強度の引張破断強度と高強度の接合部を備えたコイルスプリング体を得て、耐繰り返し回転操作特性を向上させた医療用ガイドワイヤを提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、細線である放射線不透過線材と放射線透過線材の線材端を溶着接合したコイルスプリング体の接合部における機械的強度特性と、コイルスプリング体を形成する放射線不透過線材と放射線透過線材との機械的強度特性を改善した医療用ガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
血管内へ挿入する医療用ガイドワイヤ先端部の、コイルスプリング体のコイル線との接合部は、細線でありながら機械的強度特性を考慮して人体への安全確保を満たさなければならず、この為種々の提案がなされている。
【0003】
特許文献1には、芯線の先端部に放射線不透過材と放射線透過材のコイルスプリング体がねじ込まれ、このねじ込まれている部分が芯線と共に、ろう付け固着されている。
この構成により異種材料であるコイルスプリング体との接合を可能と成して、放射線透視下での視認性の向上を図ること等を目的としている。しかし、線材端部がろう付け接合の為、コイルスプリング体の屈曲変形時に均一な曲率半径を得ることはできない。
【0004】
特許文献2には、放射線不透過線材と放射線透過線材の接合部に拡大拡散層を形成し、コイルスプリング体の屈曲変形時に均一な曲率半径を得る技術手段が開示されている。
しかし、放射線不透過線材と放射線透過線材の接合部内の噛み込み形態と各線材の機械的強度との相関関係、さらに高強度の引張破断強度を有し、かつ接合部の接合強度をより向上させる技術手段とその製造方法については、何ら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平4−25024号公報
【特許文献2】特開平9−38210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の医療用ガイドワイヤにおいて、放射線不透過線材と放射線透過線材を溶着接合して成るコイルスプリング体の接合部内の噛み込み形態と、その噛み込み形態を出現させる放射線不透過線材と放射線透過線材との機械的強度との相関関係、さらに、放射線不透過線材と放射線透過線材の線材端を溶着接合して単一の線材とし、強加工の縮径伸線加工における単一の線材の断線防止を図りながら、かつ、高強度の引張破断強度を有する単一の線材から成るコイルスプリング体の技術思想は存在していない。
そしてさらに、強加工の縮径伸線加工の途中において、放射線不透過線材と放射線透過線材の引張破断強度を逆転させる遷移領域を設けて、接合部内の前記噛み込み形態の接合強度をより向上させる技術思想に関しては、何ら存在していない。
【0007】
この発明の目的は、放射線不透過線材と放射線透過線材の単一の線材から成るコイルスプリング体の、縮径溶着接合部の接合形態と、放射線不透過線材と放射線透過線材の強加工の縮径伸線加工前後の機械的強度特性との相関関係を明確にして、強加工縮径伸線加工における断線防止を図りつつ、高強度の引張破断強度を有する単一の線材から成るコイルスプリング体を得ることができ、さらに強加工縮径伸線加工の途中において、放射線不透過線材と放射線透過線材の引張破断強度が逆転する遷移領域を設けることにより、高強度の縮径溶着接合部と高強度の引張破断強度を備えたコイルスプリング体を得て、耐繰り返し回転操作特性と耐繰り返し曲げ疲労特性が高く、術者が安全に操作できる医療用ガイドワイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、可とう性細長体から成る芯線と、この芯線の先端部に芯線を貫挿して単一の線材を単数、又は複数巻回成形したコイルスプリング体を装着した医療用ガイドワイヤにおいて、単一の線材は、縮径伸線加工による引張破断強度の増加率が異なる放射線不透過線材と放射線透過線材の線材端を溶着して溶着接合部を形成し、その後、総減面率が90%以上97.6%以下の縮径伸線加工を行って縮径溶着接合部を形成し、縮径溶着接合部を挟んで、放射線不透過線材と放射線透過線材との引張破断強度の差を、いずれか一方の高い値の引張破断強度を分母とし、前記一方の高い値の引張破断強度から他方の低い値の引張破断強度との差を分子とする比率を百分率で表すと、前記百分率が20%以上45%以下とし、縮径溶着接合部の縦断面が、放射線不透過線材と放射線透過線材のいずれか一方の先細り形状の先端位置が、線材の外方へ偏向して他方へ食い込んだ噛み込み形態であることを特徴とする。
【0009】
この構成により、強加工の縮径伸線加工により単一の線材の引張破断強度を向上させ、かつ、強加工後の放射線不透過線材と放射線透過線材との引張破断強度との差を一定範囲とすることにより、強加工縮径伸線加工時の縮径溶着接合部での断線を防止して、双方の引張破断強度を共に向上させ、かつ、縮径溶着接合部での縦断面において、いずれか一方の線材の先細り形状の先端位置が線材の外方へ偏向させることにより、放射線不透過線材と放射線透過線材との接触面積を増大させて噛み込み係着力を向上させ、縮径溶着接合部の引張破断強度を向上させながら、かつ高強度の引張破断強度を有するコイルスプリング体を得ることができ、術者が安全に操作できる医療用ガイドワイヤの提供ができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の医療用ガイドワイヤにおいて、溶着接合部を形成する放射線不透過線材と放射線透過線材との引張破断強度の差を、いずれか一方の高い値の引張破断強度を分母とし、前記一方の高い値の引張破断強度から他方の低い値の引張破断強度との差を分子とする比率を百分率で表すと、百分率が5%以上45%以下としたことを特徴とする。
この構成により、溶着接合する各線材の引張破断強度の差を前記範囲とすることにより、縮径溶着接合部の縦断面のいずれか一方の線材の先細り形状の先端位置を、線材の外方へ偏向し易くさせて噛み込み係着力を向上させ、そして下限値を下回ると噛み込み係着力の向上は期待できず、又上限値を上回れば縮径伸線加工後の各線材の引張破断強度の差が拡大して、この拡大した引張破断強度の差がコイルスプリング体の回転操作により縮径溶着接合部にて応力集中を受けて変形し易くなり、これによる変形を防ぐ必要があるからである。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1〜2のいずれか一つに記載の医療用ガイドワイヤにおいて、単一の線材を総減面率が97.6%の縮径伸線加工するまでの間に、放射線不透過線材と放射線透過線材の引張破断強度が逆転する遷移領域を形成して成ることを特徴とする。
この構成により、縮径伸線加工の途中において縮径溶着接合部を形成する放射線不透過線材と放射線透過線材の引張破断強度を逆転させる遷移領域を設けることにより、縮径溶着接合部の縦断面のいずれか一方の線材の先細り形状の先端位置を、線材の外方へより偏向し易くさせ、かつ、その状態のまま固めて固着させ、噛み込み係着力をより向上させることができ、耐繰り返し回転操作性に優れたコイルスプリング体から成る医療用ガイドワイヤを得ることができる。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3記載の医療用ガイドワイヤにおいて、放射線不透過線材と放射線透過線材の引張破断強度が逆転する遷移領域が、縮径伸線加工の総減面率が5%以上50%以下であることを特徴とする。
この構成により、縮径溶着接合部の縦断面のいずれか一方の線材の先細り形状の先端位置を、線材の外方へより偏向し易くさせ、かつ、その状態のまま固めて固着させ、噛み込み係着力をより向上させることができ、下限値を下回れば強加工伸線後の各線材の引張破断強度差が拡大して、この拡大した引張破断強度差がコイルスプリング体の回転操作により縮径溶着接合部にて応力集中を受けて変形し易くなり、又上限値を上回れば先細り形状の先端位置の偏向による噛み込み係着力のより向上効果が期待できなくなるからである。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1〜4記載のいずれか一つに記載の医療用ガイドワイヤにおいて、縮径溶着接合部の縦断面の噛み込み形態が、放射線不透過線材、又は放射線透過線材のいずれか一方の先細り形状が波状、又はスパイラル状で他方へ食い込んだ噛み込み形態であることを特徴とする。
この構成により、縮径溶着接合部の縦断面における噛み込み形態において、放射線不透過線材と放射線透過線材との接触面積をより増大させて噛み込み係着力をさらに向上させることができ、耐繰り返し回転操作性のより優れたコイルスプリング体から成る医療用ガイドワイヤを得ることができる。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一つに記載の医療用ガイドワイヤにおいて、溶着接合部を形成する前記放射線不透過線材は、白金が89.5重量%以上95.5重量%以下で残部がニッケルの白金とニッケルの合金で、引張破断強度が75kgf/mm2 以上、115kgf/mm2 以下とし、かつ、溶着接合部を形成する前記放射線透過線材は、オーステナイト系ステンレス鋼線で、引張破断強度が65kgf/mm2 以上95kgf/mm2 以下とし、その後、総減面率が90%以上97.6%以下の縮径伸線加工を行って前記縮径溶着接合部を形成して成ることを特徴とする。
この構成により、放射線不透過線材と放射線透過線材の材質、及び引張破断強度を限定することにより、強加工の縮径伸線加工時の縮径溶着接合部の断線を防止しながら、又双方の線材の引張破断強度を共に向上させ、かつ、縮径溶着接合部の縦断面において、いずれか一方の線材の先細り形状の先端位置を、線材の外方へ偏向させることにより、双方の線材の接触面積を増大させて噛み込み係着力を向上させることができる。
そして又、前記線材の引張破断強度を選択することにより縮径伸線加工の途中において、双方の線材の引張破断強度が逆転する遷移領域を設けることにより、いずれか一方の線材の先細り形状の先端位置を線材の外方へより偏向し易くさせ、縮径溶着接合部の引張破断強度をより向上させながら、かつ、高強度の引張破断強度を有し、耐繰り返し回転操作性等に優れたコイルスプリング体から成る医療用ガイドワイヤを得ることができる。
【0015】
請求項7記載の発明は、コイルスプリング体の放射線不透過線材と放射線透過線材の材質、及び機械的強度特性を限定し、かつ、放射線不透過線材と放射線透過線材の引張破断強度が縮径伸線加工の途中において逆転する遷移領域を設けた縮径伸線加工工程とし、放射線不透過線材と放射線透過線材から成るコイルスプリング体を備えた医療用ガイドワイヤの製造方法である。
この構成により、放射線不透過線材と放射線透過線材の材質、及び引張破断強度を限定することにより、強加工の縮径伸線加工時の縮径溶着接合部での断線を防止しながら、双方の線材の引張破断強度を共に向上させ、かつ、縮径伸線加工の途中において、双方の線材の引張破断強度が逆転する遷移領域を設けることにより、縮径溶着接合部での縦断面において、いずれか一方の線材の先細り形状の先端位置を、線材の外方へより偏向し易くさせて縮径溶着接合部の引張破断強度をより向上させながら、かつ、高強度の引張破断強度を有し、耐繰り返し回転操作性等に優れたコイルスプリング体から成る医療用ガイドワイヤを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】医療用ガイドワイヤのコイルスプリング体組付図、及び芯線の正面図と要部拡大図。(実施例1)
【図2】コイルスプリング体に用いる線材の加工方法。
【図3】線材の総減面率と引張破断強度の特性図。
【図4】線材の縮径溶着接合部内の偏向噛み込み形態。
【図5】線材の縮径溶着接合部内の他の噛み込み形態。
【図6】医療用ガイドワイヤの先端部組付図。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の実施形態を図に示すとともに説明する。
【実施例】
【0018】
図1は、本発明の実施例1の医療用ガイドワイヤ(以下ガイドワイヤという)1Aを示し、芯線2の芯線先端部21には、同軸的に外嵌めされたコイルスプリング体(以下コイル体)3Aを有し、コイル体3Aは線直径が0.045mmから0.093mmで先端側は金、又は金を含む合金、白金、又は白金を含む合金、タングステン又はドープタングステン等の放射線不透過線材31の放射線不透過部と、後端側はオーステナイト系ステンレス鋼線の放射線透過線材32の放射線透過部から成り、前記放射線不透過線材31と前記放射線透過線材32の線材端を溶着接合し、後述する縮径溶着接合部81から成る。
そして芯線2の先端部には、先丸円柱状の先導栓5がろう材等の接合部材により、芯線先端部21の先端と放射線不透過線材31のコイル体3Aと部分的に接合されている。又、芯線先端部21の後端部には、接合部材により芯線2と放射線透過線材32のコイル体3Aと後端接合部4にて部分的に接合されている。
【0019】
そしてコイル体3Aの外径D1が概ね0.254mmから0.457mmで、長手方向の長さは30mmから300mmから成っている。又、芯線2の芯線先端部21の先端から長手方向の約300mmは、概ね0.060mmから0.200mmの細径の線で、残りの芯線手元部22は、長手方向に約1200mmから約2700mmで、外径D2が0.254mmから0.457mmから成る太径の線から成っている。芯線先端部21の細径部分は、先端側へ徐変縮径し、その断面形状は円形断面、又は矩形断面(図示(ハ))いずれの形状であってもよい。又、芯線2及びコイル体3Aの外周部にふっ素樹脂、又はウレタン樹脂等の樹脂被膜6が形成され、その外周部には、湿潤時に潤滑特性を示すポリビニルピロリドン等の親水性被膜7が形成され、コイル体3Aは外周を直接接触する前記樹脂被膜6と、前記親水性被膜7との二層構造により密閉状に包被されている。
【0020】
そして本発明のコイル体3Aは、放射線不透過線材31と放射線透過線材32から成る単一の線材を単数、又は複数(後述する実施例2のコイル体3B)巻回成形して成り、前記単一の線材は、縮径伸線加工による引張破断強度の増加率が異なる放射線不透過線材31と放射線透過線材32を用いて線材端を突き合わせ溶着して溶着接合部8を形成し、その後、総減面率が90%以上97.6%以下の縮径伸線加工を行い、縮径溶着接合部81を形成して成る。
そして縮径伸線加工による引張破断強度の増加率が異なるとしたのは、後述する縮径溶着接合部81の縦断面において、放射線不透過線材31、又は放射線透過線材32のいずれか一方の線材の先細り形状の先端位置が、線材の外方へ偏向し易くする為であり、そして又、放射線不透過線材31と放射線透過線材32の引張破断強度が逆転する遷移領域を設ける為である。又総減面率が90%以上97.6%以下の縮径伸線加工としたのは、強加工縮径伸線加工時の縮径溶着接合部81での断線防止を図りながら、放射線不透過線材31と放射線透過線材32の引張破断強度を共に向上させる為である。
尚、ここいう総減面率とは、線材と最終仕上がり線径との間の断面積差を減少率で表したものをいう。又、引張破断強度とは、線材に引張力を加えて破断した時の値を線材の断面積で除した値のことをいう。
【0021】
そして具体的には、本発明の実施例の溶着接合部8を形成する放射線不透過線材31は、白金が89.5重量%以上95.5重量%以下で残部がニッケルの白金とニッケルの合金(本実施例は白金が92.5重量%で残部がニッケル)で、引張破断強度が75kgf/mm2 以上115kgf/mm2 以下(本実施例は92kgf/mm2 )を用いている。
そして好ましくは、白金が90.5重量%以上94.5重量%以下で残部がニッケルの白金とニッケルの合金、さらに好ましくは、白金が91.0重量%以上94.0重量%以下で残部がニッケルの白金とニッケルの合金である。この理由は、白金が前記下限値を下回れば、放射線透視下における視認性が低下し、かつ、ニッケル成分の増加により引張破断強度が高くなって縮径溶着接合部81を挟んで放射線不透過線材31と放射線透過線材32の引張破断強度との差が拡大して、縮径伸線加工時に断線が発生し易くなり、強加工の縮径伸線加工は困難となる。又、白金が前記上限値を上回れば、白金成分が多くなることにより縮径伸線加工による放射線不透過線材31の引張破断強度向上効果は期待できなくなるからである。
【0022】
そして又、放射線透過線材32はオーステナイト系ステンレス鋼線で、引張破断強度が65kgf/mm2 以上95kgf/mm2 以下(本実施例では70kgf/mm2 )を用いる。
オーステナイト系ステンレス鋼線を用いる理由は、加工性のよいオーステナイト組織を得る為であり、オーステナイト系ステンレス鋼線は変態点を利用した熱処理による結晶粒の微細化ができず、冷間加工によってのみ結晶粒の微細化が可能で、伸線加工により顕著な加工硬化性を示して引張破断強度を向上させることができるからである。
【0023】
そして図2は、本発明のコイル体3Aに用いる放射線不透過線材31と放射線透過線材32から成る線材の加工方法を示す。
線直径が0.295mmで引張破断強度が92kgf/mm2 で白金が92.5重量%で残部がニッケルの放射線不透過線材31と、線直径が0.295mmで引張破断強度が70kgf/mm2 でオーステナイト系ステンレス鋼線の放射線透過線材32の、線材端をバット溶接、又はフラッシュバット溶接により溶着接合部8を形成して、線直径が0.295mmの単一の線材とする。
そして総減面率が97.6%の強加工の縮径伸線加工を行って縮径溶着接合部81を形成し、線直径が0.045mmの線材とし、前記線直径が0.045mmの線材を巻回成形し、本発明のコイル体3Aとする。
そして又、縮径溶着接合部81の縦断面において、前記放射線不透過線材31と前記放射線透過線材32のいずれか一方の線材の先細り形状の先端位置P1が線材の外方へ偏向(中心軸L0よりL1寸法)して、他方(図2では放射線透過線材32)へ食い込んだ噛み込み形態である。
【0024】
次に図3は、白金が92.5重量%で残部がニッケルの放射線不透過線材31(符号イ)と、オーステナイト系ステンレス鋼線の放射線透過線材32(符号ロ)の線直径が0.295mmの各線材を用いて、総減面率が97.6%までの縮径伸線加工を行って、線直径が0.045mmとして各線材の総減面率と引張破断強度との相関関係を示した図である。
【0025】
図3によれば、放射線不透過線材31(符号イ)と放射線透過線材32(符号ロ)とは、縮径伸線加工による引張破断強度の増加率が異なり、本実施例では放射線透過線材32(符号ロ)の方が引張破断強度の増加率が高い。
そして縮径伸線加工前の線直径が0.295mmの放射線不透過線材31(符号イ)と放射線透過線材32(符号ロ)の引張破断強度に差(符号A、本実施例では22kgf/mm2 )を設け、かつ、前記引張破断強度の増加率が高い線材(本実施例では放射線透過線材32、符号ロ)の引張破断強度を低く設定(本実施例では70kgf/mm2 )することにより、放射線不透過線材31と放射線透過線材32の引張破断強度が逆転する遷移点Qが遷移領域R内に現れる。
【0026】
本実施例では、遷移点Qは総減面率が概ね23%近傍で現れ、又引張破断強度が逆転する遷移領域Rは縮径伸線加工の総減面率が5%以上50%以下である。この理由は、前記下限値を下回れば最終仕上がりの強加工伸線後の各線材の引張破断強度の差が拡大して(図示符号B)、この拡大した引張破断強度差がコイル体3Aを回転操作したとき、縮径溶着接合部に応力集中を受けて変形し易くなり、又前記上限値を上回れば後述する縮径溶着接合部の内部における噛み込み係着力のより向上効果は期待できなくなるからである。
【0027】
そして縮径伸線加工前の線直径が0.295mmの溶着接合部8を形成する放射線不透過線材31と放射線透過線材32の引張破断強度に差を設けることにより、そして又縮径伸線加工の途中において、放射線不透過線材31と放射線透過線材32の引張破断強度が逆転する遷移領域Rを設けることにより、縮径溶着接合部81の縦断面において、放射線不透過線材31と放射線透過線材32とのいずれか一方の線材の先細り形状の先端位置(本実施例では図2の放射線不透過線材31の符号P1)を線材の外方へ偏向させることができる。これにより、縮径溶着接合部81における放射線不透過線材31と放射線透過線材32との溶着接合力を向上させることができる。
この理由は、図4は、縮径溶着接合部81の縦断面の放射線不透過線材31と放射線透過線材32との噛み込み形態を示し、放射線不透過線材31の先細り形状の先端位置P1が外方へ偏向した三角形d1、P1、d2の斜辺の長さの合計(b+c)が、先細り形状の先端位置P0が中心軸L0を通る三角形d1、P0、d2の斜辺の長さの合計(a1+a2)よりも長く、この為縮径溶着接合部81における放射線不透過線材31と放射線透過線材32との接触面積を増大させることができるからである。このことにより、放射線不透過線材31と放射線透過線材32の噛み込み係着力を向上させることができる。
そして又、縮径伸線加工においては、線径の縦断面において、外周部の硬度は中心部よりも高く、これは外周部が中心部よりも引き延ばされて縮径して加工硬化が進んだ結果と考えられ、この外周部が強く引き伸ばされることにより、外周部に偏向した先細り形状の先端位置P1は、中心軸L0を通る先細り形状の先端位置P0よりも長手方向に長く伸びる傾向となる。又、溶着接合部8の形成時、線材端の面圧を不均一、又は偏心させることによっても、また、先細り形状の先端位置P1は線材の外方へ偏向し易くなる。
尚補足すれば、接合部の線材端に高い面直角が要求されるバット溶接よりも、フラッシュバット溶接のほうが火花発生を繰り返す為、接合部の線材端に高い面直角は要求されず、その結果、フラッシュバット溶接が前記縮径伸線加工により先細り形状の先端位置P1を線材の外方へ偏向し易くする為の好ましい接合法である。
【0028】
そして総減面率が90%以上97.6%以下の強加工の縮径伸線加工において、縮径溶着接合部81の断線防止を図りながら、放射線不透過線材31と放射線透過線材32の引張破断強度を共に向上させる為には、最大の強加工縮径伸線加工時(本実施例では総減面率が97.6%)に放射線不透過線材31と放射線透過線材32の引張破断強度との差を一定範囲内にしておく必要がある。
つまり、縮径溶着接合部81を挟んで、放射線不透過線材31と放射線透過線材32の引張破断強度の差を、いずれか一方の高い値の引張破断強度を分母とし、前記一方の高い値の引張破断強度から他方の低い値の引張破断強度との差を分子とする比率を百分率で表すと、前記百分率は20%以上45%以下である。
【0029】
本実施例では、総減面率が97.6%のときオーステナイト系ステンレス鋼線の引張破断強度は230kgf/mm2 であり、又白金が92.5重量%で残部がニッケルの白金とニッケルの合金の引張破断強度は158kgf/mm2 であることから、引張破断強度の差(図示符号B)の百分率は約31.3%である。
そしてこの引張破断強度の差の好ましい百分率は20%から40%であり、さらに好ましくは20%から37%である。この理由は、前記下限値を下回れば、共に引張破断強度を向上させた線材を得ることは期待できず、前記上限値を上回れば強加工の縮径伸線加工の途中で縮径溶着接合部81で断線が発生し易くなり、そして又、縮径溶着接合部81を挟んで引張破断強度の差が拡大しているコイル体3Aは、コイル体3Aを回転操作したとき、縮径溶着接合部81に応力が集中して変形し易くなり、この変形を防いで耐繰り返し回転操作性を向上させる必要があるからである。
【0030】
そして又、強加工の縮径溶着接合部81の縦断面において、先細り先端位置P1を線材の外方へ偏向し易くさせ、又前記強加工の縮径伸線加工の途中において引張破断強度が逆転する遷移領域Rを設けて、前記噛み込み係着力を向上させる為には、溶着接合する各線材の引張破断強度に差を設けることが望ましい。
つまり、溶着接合部8を形成する放射線不透過線材31と放射線透過線材32との引張破断強度の差を、いずれか一方の高い値の引張破断強度を分母とし、前記一方の高い値の引張破断強度から他方の低い値の引張破断強度との差を分子とする比率を百分率で表すと、前記百分率は5%以上45%以下である。
本実施例では、縮径伸線加工前の白金が92.5重量%で残部がニッケルの白金とニッケルの合金の引張破断強度は92kgf/mm2 であり、固溶化熱処理(例えば1050℃の熱処理により引張破断強度を65kgf/mm2 から95kgf/mm2 とすること)したオーステナイト系ステンレス鋼線の引張破断強度は70kgf/mm2 であることから、引張破断強度の差(図3符号A)の百分率は約23.9%である。
そしてこの引張破断強度の差の好ましい百分率は5%から35%であり、さらに好ましくは5%から30%である。この理由は、前記下限値を下回れば、前記噛み込み係着力の向上効果は期待できず、又前記上限値を上回れば縮径伸線加工後の各線材の引張破断強度の差が拡大して、この拡大した引張破断強度の差がコイル体3Aの回転操作により縮径溶着接合部81に応力集中を受けて変形し易くなり、この変形を防いで耐繰り返し回転操作性を向上させる必要があるからである。
【0031】
次に図5は、縮径溶着接合部81の縦断面の放射線不透過線材31と放射線透過線材32との噛み込み形態を示す。
図示(イ)は、放射線不透過線材31の先細り形状がウェイブ状で放射線透過線材32へ食い込んだ噛み込み形態を示し、図示(ロ)は、放射線不透過線材31の先細り形状がスパイラル状で放射線透過線材32へ食い込んだ噛み込み形態を示す。そして又これらを組み合わせた噛み込み形態である。(図示せず)そして図示(ハ)と(ニ)は、先細りスパイラル状のA−A断面とB−B断面を示す。
そしてこの噛み込み形態により放射線不透過線材31と放射線透過線材32との接触面積を増大させて噛み込み係着力を向上させ、縮径溶着接合部81の溶着接合力を向上させることができる。
【0032】
そして前記ウェイブ状の噛み込み形態、又はスパイラル状の噛み込み形態は、縮径伸線加工前の放射線不透過線材31と放射線透過線材32の引張破断強度の差、及び縮径伸線加工の途中において引張破断強度が逆転する遷移領域Rを設けることにより発生する。
特に、引張破断強度が逆転する遷移点Qが縮径伸線加工の加工度が低い、つまり総減面率が低い場合(前記遷移領域Rの総減面率が5%側)に現われるときには、前記ウェイブ状、又はスパイラル状の噛み込み形態が発生し易くなり、又総減面率が高い場合(前記遷移領域Rの総減面率が50%側)に現われるときには、斜辺が直線状で三角形の偏向した噛み込み形態となる傾向がある。(図4)
そして補足すれば、縮径伸線加工においては、穴径を徐々に小さく(一般に断面減少率で10%から30%)した複数のダイス(通常5個から10個)を用いて連続してダイス内を通過させる為、ダイス内通過時の縮径伸線抵抗により、又は縮径伸線抵抗を不安定にさせる放射線不透過線材31と放射線透過線材32の引張破断強度の差等の存在により、前記噛み込み形態が発生する、と考えられる。
【0033】
そしてコイル体3Aに用いる放射線透過線材32のオーステナイト系ステンレス鋼線は、線直径が0.045mm(総減面率が97.6%)から0.093mm(総減面率が90%)で、その化学成分は、重量%でC:0.15%以下、Si:1%以下、Mn:2%以下、Ni:6%〜16%、Cr:16%〜20%、P:0.045%以下、S:0.030%以下、Mo:3%以下、残部が鉄及び不可避的不純物から成る。尚、Cは引張破断強度向上の為には、0.005%以上が望ましく、粒界腐食抑制の観点から0.15%以下が望ましい。特に線直径が0.045mmから0.075mmで、総減面率が94%以上の縮径伸線加工を可能として安定生産する為には、再溶解材を用いたSUS302材、SUS304材、又はSUS316材が望ましい。
この理由は、ステンレス鋼線の伸線時の断線原因は、表面疵もさることながら酸化物系介在物であることが最も多く、細線・極細線化するほどこの傾向が著しい。
そしてその化学成分は、介在物生成元素であるAl,Ti,Ca,Oの成分は低く、又硫化物の作用で伸線低下を引き起こすSも低く抑える。具体的なオーステナイト系ステンレス鋼線の化学成分は、重量%で、C:0.08%以下、Si:0.10%以下、Mn:2%以下、P:0.045%以下、S:0.010%以下、Ni:8%〜12%、Cr:16%〜20%、Mo:3%以下、Al:0.0020%以下、Ti:0.10%以下、Ca:0.005%以下、O:0.0020%以下、で残部がFeと不可避的不純物から成る。
そして再溶解材の製造方法としては、ステンレス鋼の溶製後のインゴットにフラックスを用いたエレクトロスラグ再溶解の製造方法等である。トリプル溶解材を用いても前記同様の効果が得られる。
【0034】
次に図6は、本発明の実施例2のガイドワイヤ1Bの先端部のコイル体3Bを示し、後端部は前記実施例1と同様であり、樹脂被膜6、及び親水性被膜7は省略してある。尚樹脂被膜6、及び親水性被膜7は形成してもしなくてもいずれでもよい。
そして前記実施例1と異なるところは、放射線不透過線材31と放射線透過線材32から成る単一の線材を2本から6本(実施例2では3本)用いて巻回成形、又は撚り線機等を用いて撚合構成した多条線から成るコイル体3Bを形成することである。尚、前記単一の線材は前記実施例1と同様の線材を用いる。
この構成により、コイル体3Bを回転操作したとき、回転操作により狭窄病変部内での進退操作を容易にし、かつ、先端側への回転伝達性能を向上させることができる。この理由は、前記実施例1のような単一の線材の単線を巻回成形したコイル体3Aよりも、単一の線材を多数本用いて巻回成形、又は撚合構成した多条線から成るコイル体3Bのほうが、芯線2の長手方向に対する傾斜角θが小さく、その結果1回転させたときのコイル体3Bの進退距離L2は前記実施例1よりも長くなり、かつ、傾斜角θを小さくすることにより隣接線相互による回転力を高めて、先端側への回転伝達性能を向上させることができるからである。
【0035】
次に、本発明のガイドワイヤの製造方法について説明する。
可とう性細長体から成る芯線と、この芯線の先端部に芯線を貫挿して単一の線材を単数、又は複数巻回成形したコイルスプリング体を装着した医療用ガイドワイヤの製造方法において、
単一の線材は、放射線不透過線材と放射線透過線材の線材端を溶着して溶着接合部を形成し、放射線不透過線材は、白金が89.5重量%以上95.5重量%以下で残部がニッケルの白金とニッケルの合金で、引張破断強度が75kgf/mm2 以上115kgf/mm2 以下とし、放射線透過線材は、オーステナイト系ステンレス鋼線で、引張破断強度が65kgf/mm2 以上95kgf/mm2 以下とし、放射線不透過線材と放射線透過線材とが溶着接合部を挟んで交互に連続配置した単一の線材とする工程と、
その後単一の線材に総減面率が90%以上97.6%以下の縮径伸線加工を行い、縮径伸線加工の途中の総減面率が5%から50%において、放射線不透過線材を放射線透過線材の引張破断強度が逆転する遷移領域を設けた縮径伸線加工工程とし、縮径伸線加工工程において、縮径溶着接合部を挟んで放射線不透過線材と放射線透過線材の引張破断強度の差を、放射線透過線材の引張破断強度を分母とし、放射線透過線材の引張破断強度から放射線不透過線材の引張破断強度との差を分子とする比率を百分率で表すと、百分率が20%以上45%以下とし、縮径伸線加工した単一の線材を、単数又は複数巻回成形して長尺状のコイル体とする工程と、
長尺状のコイル体を所定長切断して縮径溶着接合部を挟んで放射線不透過線材と放射線透過線材から成るコイルスプリング体とする工程から成ることを特徴とする。
尚、縮径伸線加工した単一の線材を巻回成形して長尺状のコイル体とする工程には、芯金の外周に巻回成形した後に芯金を抜き出して長尺状のコイル体とする工程も含まれる。
【0036】
この構成により、放射線不透過線材と放射線透過線材の材質、及び引張破断強度を限定することにより、強加工の縮径伸線加工時の縮径溶着接合部での断線を防止しながら、双方の線材の引張破断強度を共に向上させ、かつ、縮径伸線加工の途中において、双方の線材の引張破断強度が逆転する遷移領域を設けることにより、縮径溶着接合部での縦断面において、いずれか一方の線材の先細り形状の先端位置を、線材の外方へより偏向し易くさせて縮径溶着接合部の引張破断強度をより向上させながら、かつ、高強度の引張破断強度を有し、耐繰り返し回転操作性等に優れたコイルスプリング体から成る医療用ガイドワイヤを製造することができる。
【0037】
そして補足すれば、本発明のコイル体3A、3Bには、先端側が径小の等径部と後端側が径大の等径部から成る径小等径径大等径コイル体の構造、及び手元側から先端側にかけてテーパ形状の徐変縮径するコイル体の構造(図示せず)も含まれる。
【0038】
(発明の効果)
以上説明のとおり、本発明の医療用ガイドワイヤは、放射線不透過線材と放射線透過線材を溶着接合した単一の線材から成るコイルスプリング体の縮径溶着接合部内の接合形態と、放射線不透過線材と放射線透過線材の縮径伸線加工前後の機械的強度特性との相関関係を明確にして、強加工の縮径伸線加工における断線防止を図りつつ、高強度の引張破断強度を有する単一の線材から成るコイルスプリング体を得て、さらに強加工の縮径伸線加工の途中において放射線不透過線材と放射線透過線材の引張破断強度が逆転する遷移領域を設けることにより、高強度の縮径溶着接合部と高強度の引張破断強度を備えたコイルスプリング体を得て、耐繰り返し回転操作特性と耐繰り返し曲げ疲労特性が高く、術者が安全に操作できる医療用ガイドワイヤを提供するものである。以上の諸効果がある。
【符号の説明】
【0039】
1 ガイドワイヤ(医療用ガイドワイヤ)
2 芯線
3A、3B コイルスプリング体(コイル体)
31 放射線不透過線材
32 放射線透過線材
8 溶着接合部
81 縮径溶着接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可とう性細長体から成る芯線と、前記芯線の先端部に前記芯線を貫挿して単一の線材を単数、又は複数巻回成形したコイルスプリング体を装着した医療用ガイドワイヤにおいて、
前記単一の線材は、縮径伸線加工による引張破断強度の増加率が異なる放射線不透過線材と放射線透過線材の線材端を溶着して溶着接合部を形成し、
その後、総減面率が90%以上97.6%以下の縮径伸線加工を行って縮径溶着接合部を形成し、
前記縮径溶着接合部を挟んで、前記放射線不透過線材と前記放射線透過線材との引張破断強度の差を、いずれか一方の高い値の引張破断強度を分母とし、前記一方の高い値の引張破断強度から他方の低い値の引張破断強度との差を分子とする比率を百分率で表すと、前記百分率が20%以上45%以下とし、
前記縮径溶着接合部の縦断面を、前記放射線不透過線材と前記放射線透過線材のいずれか一方の先細り形状の先端位置が、線材の外方へ偏向して他方へ食い込んだ噛み込み形態としたことを特徴とする医療用ガイドワイヤ。
【請求項2】
請求項1記載の医療用ガイドワイヤにおいて、
前記溶着接合部を形成する前記放射線不透過線材と前記放射線透過線材との引張破断強度の差を、いずれか一方の高い値の引張破断強度を分母とし、前記一方の高い値の引張破断強度から他方の低い値の引張破断強度との差を分子とする比率を百分率で表すと、前記百分率が5%以上45%以下としたことを特徴とする医療用ガイドワイヤ。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれか一つに記載の医療用ガイドワイヤにおいて、
前記単一の線材を総減面率が97.6%の縮径伸線加工するまでの間に、前記放射線不透過線材と前記放射線透過線材の引張破断強度が逆転する遷移領域を形成して成ることを特徴とする医療用ガイドワイヤ。
【請求項4】
請求項3記載の医療用ガイドワイヤにおいて、
前記放射線不透過線材と前記放射線透過線材の引張破断強度が逆転する遷移領域が、縮径伸線加工の総減面率が5%以上50%以下であることを特徴とする医療用ガイドワイヤ。
【請求項5】
請求項1〜4記載のいずれか一つに記載の医療用ガイドワイヤにおいて、
前記縮径溶着接合部の縦断面の噛み込み形態が、前記放射線不透過線材、又は前記放射線透過線材のいずれか一方の先細り形状が波状、又はスパイラル状で他方へ食い込んだ噛み込み形態であることを特徴とする医療用ガイドワイヤ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つに記載の医療用ガイドワイヤにおいて、
前記溶着接合部を形成する前記放射線不透過線材は、白金が89.5重量%以上95.5重量%以下で残部がニッケルの白金とニッケルの合金で、引張破断強度が75kgf/mm2 以上115kgf/mm2 以下とし、かつ、
前記溶着接合部を形成する前記放射線透過線材は、オーステナイト系ステンレス鋼線で、引張破断強度が65kgf/mm2 以上95kgf/mm2 以下とし、その後、総減面率が90%以上97.6%以下の縮径伸線加工を行って前記縮径溶着接合部を形成して成ることを特徴とする医療用ガイドワイヤ。
【請求項7】
可とう性細長体から成る芯線と、前記芯線の先端部に前記芯線を貫挿して単一の線材を単数、又は複数巻回成形したコイルスプリング体を装着した医療用ガイドワイヤの製造方法において、
前記単一の線材は、放射線不透過線材と放射線透過線材の線材端を溶着して溶着接合部を形成し、
前記放射線不透過線材は、白金が89.5重量%以上95.5重量%以下で残部がニッケルの白金とニッケルの合金で、引張破断強度が75kgf/mm2 以上115kgf/mm2 以下とし、
前記放射線透過線材は、オーステナイト系ステンレス鋼線で、引張破断強度が65kgf/mm2 以上95kgf/mm2 以下とし、
前記放射線不透過線材と前記放射線透過線材とが前記溶着接合部を挟んで交互に連続配置した単一の線材とする工程と、
その後前記単一の線材に総減面率が90%以上97.6%以下の縮径伸線加工を行い、縮径伸線加工の途中の総減面率が5%から50%において、前記放射線不透過線材の引張破断強度を前記放射線透過線材の引張破断強度が上回って逆転する遷移領域を設けた縮径伸線加工工程とし、
前記縮径伸線加工工程において、前記縮径溶着接合部を挟んで前記放射線不透過線材と前記放射線透過線材の引張破断強度の差を、前記放射線透過線材の引張破断強度を分母とし、前記放射線透過線材の引張破断強度から前記放射線不透過線材の引張破断強度との差を分子とする比率を百分率で表すと、前記百分率が20%以上45%以下とし、
前記縮径伸線加工した単一の線材を、単数又は複数巻回成形して長尺状のコイル体とする工程と、
前記長尺状のコイル体を所定長切断して前記縮径溶着接合部を挟んで前記放射線不透過線材と前記放射線透過線材から成る前記コイルスプリング体とする工程から成ることを特徴とする医療用ガイドワイヤの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−245213(P2012−245213A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120225(P2011−120225)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【特許番号】特許第4913252号(P4913252)
【特許公報発行日】平成24年4月11日(2012.4.11)
【出願人】(309023704)株式会社パテントストラ (16)
【Fターム(参考)】