医療用ガイドワイヤ及びその製造方法
【課題】 ガイドワイヤの柔軟性を損なうことなく、血管内病変部に高度な閉塞部が生じた場合でも、これを容易に削り落とすことができ、術者の意図する方向へ容易に穿孔・穿刺することができる医療用ガイドワイヤ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 先端部と手元部を有し、先端部11が徐変縮径する芯線10の外装部にコイルスプリング体50を外装固着してその先端部に先端チップ13をコイルスプリング体と固着形成した医療用ガイドワイヤ100において、先端チップの外周部に先端側へ徐変縮径するドリル刃等の切刃20を形成する。
【解決手段】 先端部と手元部を有し、先端部11が徐変縮径する芯線10の外装部にコイルスプリング体50を外装固着してその先端部に先端チップ13をコイルスプリング体と固着形成した医療用ガイドワイヤ100において、先端チップの外周部に先端側へ徐変縮径するドリル刃等の切刃20を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管等の状態を検査又は治療するためカテーテルなどをガイドするのに使用される医療用ガイドワイヤ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用ガイドワイヤは人体の血管内患部の状態の検査したり該患部を治療したりするために血管内に挿入されるものであり、挿入されたガイドワイヤは、X線造影剤注入用のカテーテルを挿入したり、狭窄部位を拡大するためのバルーンカテーテルやステントを送り込むときの案内部材として使用される。このような医療用ガイドワイヤとして、先端部と手元部を有し、先端部が徐変縮径する芯線の外装部にコイルスプリング体を外装固着してその先端部に先端チップをコイルスプリング体と固着形成することで、柔軟性を持たせたものが使用されている。
【0003】
このような医療用ガイドワイヤに関する技術として、例えば、特許文献1には、半球状の切削部材と該切削部材の表面から緩やかに隆起した突状と該切削部材の基部を固定するための円盤状ベースとからなる塞栓切除ヘッドを、カテーテルの先端部において、該カテーテルに内挿されたワイヤに接続する塞栓切除カテーテルが開示されている。
また、特許文献2には、ワイヤ主部とコア部の先端に固着された先導栓との間にコイルばねを装着し、該コイルばねの前記先導栓と中間固定部との間にコイル線間隙間を有する弾性拡縮自在部分を設ける医療用ガイドワイヤが開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、先端部に螺旋状凸部を有するカテーテル本体とカテーテル本体内に挿通されたガイドワイヤとからなるカテーテルの外周に、前記カテーテル本体の前記凸部を含む外径とほぼ等しい内径を有するとともに先端に刃を有するカテーテルシースを嵌合装着する構成のカテーテル組立体が開示されている。
さらに、特許文献4には、複数本のワイヤを一定の撚り角(ピッチ角)で螺旋状に巻回した多条線コイルからなるシャフト部分と、該シャフト部分の一端に固着された末端部と、該シャフト部分の他端に固着された先端部と、からなる血管処置用のガイドワイヤが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平7−108044号公報
【特許文献2】特開2003−164530号公報
【特許文献3】特開平63−262160号公報
【特許文献4】特表2002−539901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の医療用ガイドワイヤでは、先端部の穿孔性能及び押し込み性能が冠状動脈等の狭窄病変部に対処するためには不十分であった。また、先端部の穿孔性能及び押し込み性能を上げようとするとワイヤの剛性が高くなり過ぎて血管穿孔等の危険性を招くおそれがあった。さらには、従来の医療用ガイドワイヤでは、術者への先端情報を的確に伝達して術者の意図する方向へ穿孔・穿刺することが困難であった。
【0007】
一般に血管は内膜、中膜及び外膜からなり、その完全閉塞部は血栓の器質化が進行することにより硬化し、その両端部では器質化が比較的早く、中央では比較的遅い。また、この両端部は閉塞期間の経過に伴って硬化していく。
【0008】
このため、術者は、内膜内における「ガリガリ、ゴツゴツ」とした硬い組織の手元部への感触、あるいは中膜内での「粘りつくような抵抗感」の手元部への感触を頼りに、ガイドワイヤを内膜と中膜の間を通して迂回させることで病変部を通過させ、その後、バルーンカテーテルを用いて閉塞部拡張及びステント留置の治療を行っていた。しかし、従来の医療用ガイドワイヤによるこのような穿孔・穿刺の方法では、再狭窄の発生率が高いという解決すべき課題があった。
【0009】
図25は従来の医療用ガイドワイヤの血管内の高度閉塞部における問題を示す部分断面図である。図25において、前述の再狭窄の発生率が高いという不都合のため、近年では、前述のような高度閉塞部を迂回する方法を採らず、先端部の芯材を太くした剛性の高いガイドワイヤを用いて血管の血流と同方向に貫通させる治療に変わりつつある。しかし、この方法においても、図25に示すように、高度閉塞部の遠位端の手前に硬く小さな石灰片が比較的軟質な閉塞組織内に散在していると、この硬く石灰化した小片を貫通させることは困難である。
【0010】
その理由は、硬軟組織が散在している場合、剛性の高い先端部を持つガイドワイヤでは、軟質組織に導かれことによりその進行方向が変化させられ、偽腔を形成しやすくなることにある。これは、ひいては血管穿孔の原因となってしまう。さらに、芯線径等を太くして剛性を高めたガイドワイヤでは、前述のような「ガリガリ、ゴツゴツ」・「粘りつくような抵抗感」等が剛性の差に打ち消され、先端情報として術者へ伝達され難くなる。
【0011】
図26は従来の医療用ガイドワイヤの血管の分岐部における問題を示す部分断面図である。図26において、血管の分岐部にガイドワイヤを挿通する場合、術者は、分岐部での方向選択性向上のため、ガイドワイヤ先端部を予め曲げ変形させ、手元部を時計方向・反時計方向へ約90度ほど交互に回転を繰り返しながら徐々に病変部内へ推し進める。このような場合、従来のガイドワイヤの半球砲弾状の先端チップでは、軟組織中に硬い石灰化小片が散在していると、この小片を避けるように、つまり軟組織に導かれるように進行する。その結果、ガイドワイヤが術者の意図する方向とは異なる方向へ迷入することがある。
【0012】
本発明は上述のような従来の技術的課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ガイドワイヤの柔軟性を損なうことなく、血管内病変部に高度な閉塞部が生じた場合でも、これを容易に削り落とすことができ、術者の意図する方向へ容易に穿孔・穿刺することができる医療用ガイドワイヤ及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するため、芯線の先端部の所定長さ範囲に縮径部を形成し、該縮径部の先端に先端チップを固着し、前記縮径部にコイルスプリング体を外装固着してなる医療用ガイドワイヤにおいて、前記先端チップの外周部に先端側へ徐変縮径する切刃を形成することを特徴とする。
【0014】
上記の構成においては、前記先端チップの切刃は、ドリル状刃面を有する切刃構造、横断面の片側に形成された山形切刃であって断面形状が扇形又は切欠円形状であり、先端側へ徐変縮小している切刃構造、横断面が三角形を形成してナイフエッジ部を有し、かつ先端側へ徐変縮小している切刃構造、あるいは、ワニ口形状である切刃構造とすることが好ましい。さらには、上記構成においては、前記先端チップの切刃の切削回転方向が該先端チップに固着される前記コイルスプリング体を捩じったときの縮径方向と同じである構成、前記先端チップに固着されるコイルスプリング体が多条線からなる構成、あるいは、前記先端チップに固着されるコイルスプリング体は軸方向のテーパ形状を有する構成とすることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る医療用ガイドワイヤの製造方法は、上記目的を達成するため、芯線の先端部に固着した先端チップの外周部に先端側へ徐変縮径する切刃を形成した医療用ガイドワイヤの製造方法において、芯材の先端部を縮径加工する工程と、その芯材に樹脂を被覆する工程と、芯材の先端部にコイルスプリング体を挿入する工程と、少なくともコイルスプリング体の後端部を芯材に固着する工程と、先端部に切刃が形成された放射線不透過材からなる先端チップを芯材とコイルスプリング体に固着する工程と、を有することを特徴とする。この製造方法においては、上記の先端部に切刃が形成された放射線不透過材からなる先端チップを芯材とコイルスプリング体に固着する工程に代えて、芯材の先端部に放射線不透過材からなる先端チップを固着した後に該先端チップに切刃を形成する工程を実施しても良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ガイドワイヤの柔軟性を損なうことなく、血管内病変部に高度な閉塞部が生じた場合でも、これを容易に削り落とすことができ、術者の意図する方向へ容易に穿孔・穿刺することができる医療用ガイドワイヤ及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を具体的に説明する。なお、各図面を通して同一符号は同一又は対応部分を示すものである。図1は本発明の一実施形態に係る医療用ガイドワイヤの要部である先端部の縦断面図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。図1において、医療用ガイドワイヤ100は、芯線10の先端部11を縮径するとともに、該先端縮径部11の周囲をコイルスプリング体50で包被する構造を有している。12は芯線10の基体部を示す。芯線10としては例えば基体部の直径が直径0.355mmで長さ1.5m〜3m程度のステンレス鋼線又はニッケルチタン合金線等が使用され、その先端縮径部11は、例えば、基端から先端までの長さが110mm〜150mm程度で直径0.142mmに縮径され、さらにその先端部の40〜50mm程度の範囲で先細状に縮径されている。また、芯線10は、基体部12の手前側の基端部(手元部)を操作しながら、人体の血管内患部の状態の検査したり該患部を治療したりするために血管内に挿入される。
【0018】
芯線10(その縮径部11)の先端には、ろう付け等で先端チップ13が固定されるか、あるいは、外径が0.2〜0.3mmの球状のろう材を用いて、ろう付けによりろう材自体で先端チップが形成されている。先端縮径部11の外周部に巻回されている外装部としてのコイルスプリング体50は、例えば外径0.065mmの金属線材を外径0.355mm程度でコイル状に巻回して形成されている。コイルスプリング体50は、その近位端を芯線10(その縮径部11)の手前側にろう付け等で固定されており、また、その遠位端(先端側)を先端チップ13にろう付け等で固着されている。先端チップ13は放射線不透過材で形成されている。本実施形態では、先端チップ13の外周部に先端側へ徐変縮径する切刃20が形成されている。この切刃20としては、種々の構造及び形状のものを使用することができ、以下に実施例を挙げて説明する。
【実施例1】
【0019】
図2〜図6は、それぞれ、実施例1に係る医療用ガイドワイヤ100の第1〜第5構造例の要部を示す図である。図2は先端チップ13にチゼル幅Aを有しねじれ角θを有しないドリル状の切刃20が形成された第1構造例を示し、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。図3は先端チップ13にチゼル幅A及びねじれ角θを有するドリル状の切刃20が形成された第2構造例を示し、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。
【0020】
図4は先端チップ13にチゼル幅A及びねじれ角θを有しないドリル状の切刃20が形成された第3構造例を示し、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。図5は先端チップ13にチゼル幅Aがゼロでねじれ角θを有するドリル状の切刃20が形成された第4構造例を示し、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。図6は先端チップ13の片側にチゼル幅A及びねじれ角θを有するドリル状の切刃20が形成された第5構造例を示し、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。
【0021】
実施例1の各構造例に係る医療用ガイドワイヤ100によれば、先端チップ13の外周部に先端側へ徐変縮径する切刃20を形成するので、血管内病変部に高度な閉塞部が生じた場合でも、これを容易に削り落とすことができ、術者の意図する方向へ容易に穿孔・穿刺することができる。すなわち、冠状動脈完全閉塞病変部内に血栓が高度に石灰化、あるいは硬く線維化した組織が存在していても、偽腔や迷入を防ぎながら穿孔・貫通して真腔をつくることが極めて容易になる。また、術者への先端情報の伝達を阻害させることなく、容易に意図する方向へ穿孔・穿刺することが可能になる。
【0022】
図7は本実施形態のガイドワイヤ100で血管内の硬い石灰片が散在する領域を穿孔する状態を示す断面図である。図7において、本実施形態に係る医療用ガイドワイヤでは、先端チップ13の外周部に先端側へ徐変縮径する鋭利な切刃20が形成されているため、硬い石灰化小片が散在していても、この切刃の刃面で引っ掛けて捕らえることができる。そのため、ガイドワイヤの先端部が軟組織に誘導されて異なる方向へ引き込まれることはない。この刃面の引っ掛かり抵抗感は術者の手元へ伝わり、切刃面を切削方向に回転させることにより、ドリル作用によって硬い石灰化小片を穿孔することができる。これによって、ガイドワイヤ100を、閉塞部で迷入させることなく、真腔(血管内中央通路)に正しく貫通させることができる。
【0023】
また、先端部の剛性を高めたガイドワイヤと異なり、従来と同様の先端柔軟性を確保しながら、穿孔・穿刺が可能である。また、術者が時計方向及び反時計方向に交互に回転させることにより、コイルスプリング体50の拡径・縮径(コイルの巻き方向と反対方向に回転させる場合のコイル径の拡大、並びに、コイルの巻き方向に回転させる場合のコイル径の縮小)を交互に繰り返すことができる。このため、コイルスプリング体の素線間への病変組織の出入り、あるいは、押し引き操作によるコイルスプリング体の素線間の拡大・縮小による病変組織の出入りによって、術者へ閉塞部内の先端情報を伝えることができる。また、切刃面の回転方向をコイルスプリング体の縮径方向と一致させることにより、一時的に剛直化させることができ、これによって、先端部への回転伝達を向上させることができ、切削・ドリル作用をより高めることができる。
【0024】
さらに、本実施形態の切刃20によれば、ドリル作用による切削能力のみならず、押し力による穿刺能力も向上させることができる。同一の押し力であれば、先端部の横断面積が小さく、先端側へ徐変縮径しているほど穿刺進入力が高くなる。本実施形態の切刃20の形状はいずれも断面積が現行品(従来例)より小さく、切刃の形状とあいまって穿刺進入力を高めることができる。特に、前述の各構造例では、いずれの切刃もエッジ形状を有するため、横断面形状は従来の円形とことなり異形状をしているため、硬質組織部分であっても、切刃のエッジ部が穿刺・進入力を発揮する。また、先端部のトルク力は、先端側と後端側のうでの長さの比率(アーム比)であり、前述の各構成例について断面積からこの比率を算出すると、例えば、図2に示すような先端チップにチゼル幅を有しねじれ角を有しないドリル状の切刃が形成された実施例1の第1構造例の場合(比率が比較的小さい場合)でも、先端から0.1mmの位置で約1.26倍となっており、大幅にトルク力を向上させることができる。
【0025】
図8は本実施形態に係る医療用ガイドワイヤにより血管内の完全閉塞部を穿刺・貫通させる状態を示す断面図である。図8において、完全閉塞部の両端部は一般的にすり鉢状のカップ形状になっている。その近位側カップは中央部が凹み状であるため、病変部の中央通路(真腔)を比較的容易に捕らえることができる。これに対して、遠位側カップはガイドワイヤ100の進行方向から見て中央部で凸状となっているため、遠位側カップの領域では中央通路から逸脱しやすく、偽腔への迷入を生じやすい。また、遠位側カップの硬質部の厚さは近位側カップに比べて薄いことが知られている。
【0026】
従って、本実施形態のようなエッジ状の切刃20を有するガイドワイヤ100を用いることにより、遠位側カップが凸状であっても、エッジ部で引っ掛けて凸状カップの中央部を容易に捕らえることができる。そのため、ガイドワイヤが中央通路から逸脱することはない。さらに、遠位側カップの硬質部が比較的薄いことから、先端チップ13の横断面積を少しの距離で小さくして面圧を高くすることにより、容易に遠位側の硬質カップに穿刺・貫通させることが可能になる。
【0027】
図9は実施例1に係る医療用ガイドワイヤにおいてチゼル幅を有する切刃の切削抵抗とチゼル幅を有しない切刃の切削抵抗を比較して示す説明図である。図9において、ドリル状の切刃のチゼル幅を変化させることにより、被切削部への食いつき力を調整することができる。つまり、チゼル幅を「ゼロ」とすることにより、より病変組織への食いつき力を一層高めることができる。この場合の切削メカニズムは、次のようなものである。すなわち、チゼル幅Aが有る場合は、ガイドワイヤを回転させながら病変組織へ押し付けることでチゼル部によってえぐられる。また、押し広げられた病変組織が中心部より押し出されて、チゼル部により盛り上がった病変組織部分が削られることになる。
【0028】
一方、チゼル幅Aが「ゼロ」の場合は、切刃の先端部の求心力を高めて、病変組織への食いつき力を向上させることができる。これは、先端角を小さくするほど押し込み抵抗が小さくなり、その結果、少しの力で深く進入させることが可能となり、同一操作力での進入・押し込み力が増大するからである。
【0029】
図10は実施例1の各構造例の切刃の先端部の横断面積を比較して示す図表である。図10において、先端部横断面積の大きさは、[図4に示すチゼル幅ゼロの第3構造例]<[図2に示すチゼル幅有りの第1構造例]<[図6に示す片側切刃の第5構造例]<[従来品]の関係となる。実施例1のいずれの構造例であっても、横断面積が従来品より小さくなることから、押し込み能力が高くなる。また、実施例1のいずれの構造例においても、ドリル状の切刃面が円弧状の刃面を形成しているため、細径であっても切刃面の強度を高く保つことができる。
【0030】
図11は医療用ガイドワイヤの切刃の刃面の先端角の大小と切刃の刃面が受ける回転力の大小との関係を説明するための模式図である。図11において、先端チップに形成される切刃の先端角θを小さくすると、刃面が受ける回転力は増大する。逆に先端角θを大きくすると、刃面が受ける回転力は減少する。本実施形態に係る医療用ガイドワイヤ100の円弧状刃面では、先端側へ徐変縮径しているため、先端側(細径側)では先端角θ1が大きく、回転力は小さい。その後方では、先端角θ2小さくなり、回転力は増大する。つまり、後方の回転力H>先端側の回転力hとなる。そのため、切刃面が受ける力を緩和することができ、細径であっても、切刃部の強度を高く維持することができる。
【0031】
図12は図3に示す第2構造例のねじれ角を有する切刃によって切削組織片を後方へ搬送・排出する状態を示す部分側面図である。図12において、実施例1の第2構造例(図3)のように先端チップ13の外周部に先端側へ徐変縮径する切刃20をねじれ角を設けた切刃構造とすることにより、病変組織への食いつき力の増大、並びに、切削組織片の後方への搬送・排出作用を向上させることができる。
【実施例2】
【0032】
図13は実施例2に係る医療用ガイドワイヤ100の第1構造例の要部を示す図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。図14は実施例2に係る医療用ガイドワイヤ100の第2構造例の要部を示す図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。図13の第1構造例では、先端チップ13の切刃20が片側山形切刃であってその横断面形状が扇形であり、かつ切刃が先端側へ徐変縮小するように構成されている。一方、図14の第2構造例では、先端チップ13の切刃20が片側外周切刃であってその横断面形状が切り欠き円形状(D形状)であり、かつ切刃が先端側へ徐変縮小するように構成されている。実施例2に係る医療用ガイドワイヤは、上記以外の部分では前述の実施例1と実質的に同じ構成を有している。
【0033】
本実施例によっても、ガイドワイヤ100の時計・反時計方向の繰り返し操作による穿孔性能、並びに先端チップ13の切刃が先端側へ徐変縮小していることに伴う押し込み性能の向上については、前述の実施例1の場合と同様の作用効果が得られる。また、本実施例によれば、先端チップ13の片側に形成する切刃20の刃面を山形切刃面(図13)あるいは外周切刃面(図14)とすることで、実施例1と比べ、時計・反時計方向のいずれの回転であっても常に一層の穿孔能力を発揮することができる。さらに、図13に示す山形切刃面にすることで、切り裂き効果も併せもつ切刃を実現することができる。実施例2に係る医療用ガイドワイヤは、その他の点では前述の実施例1と実質的に同じ構成を有することから、それに伴って、実施例1の場合と同様の作用効果を奏するものである。
【実施例3】
【0034】
図15は実施例3に係る医療用ガイドワイヤ100の要部を示す図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。本実施例では、先端チップ13の切刃20がナイフエッジと外周切刃を併用した横断面三角形の切刃構造を有し、かつ切刃が先端側へ徐変縮小するように構成されている。本実施例に係る医療用ガイドワイヤは、上記以外の部分では前述の実施例1又は2と実質的に同じ構成を有している。本実施例によっても、ガイドワイヤ100の時計・反時計方向の繰り返し操作による穿孔性能、並びに先端チップ13の切刃が先端側へ徐変縮小していることに伴う押し込み性能の向上については、前述の実施例1及び2の場合と同様の作用効果が得られる。
【0035】
さらに、本実施例によれば、先端チップ13の切刃部分の横断面積を特に小さくすることができ、かつ、切刃20が注射針構造と同様なナイフエッジ刃面を有する構成とすることができる。そのため、切り裂き効果による穿刺押し込み能力及び穿孔能力を格段に向上させることができる。また、先端チップ13の横断面積が小さいことから、仮に血管を穿孔貫通した場合でも、穿孔径が小さいことから、早期止血が容易になるという効果も得られる。
【実施例4】
【0036】
図16は実施例4に係る医療用ガイドワイヤ100の第1構造例の要部を示す図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。図17は実施例4に係る医療用ガイドワイヤ100の第2構造例の要部を示す図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。本実施例では、先端チップ13の切刃20がワニ口形状に形成されるとともに切刃部分が先端側へ徐変縮小するように構成されている。そして、第1構造例ではワニ口構造が直径方向に対称に形成され、第2構造例ではワニ口構造が直径方向に非対称に形成されている。本実施例に係る医療用ガイドワイヤは、上記以外の部分では前述の実施例1〜3と実質的に同じ構成を有している。
【0037】
本実施例によっても、ガイドワイヤ100の時計・反時計方向の繰り返し操作による穿孔性能、並びに先端チップ13の切刃が先端側へ徐変縮小していることに伴う押し込み性能の向上については、前述の実施例1〜3の場合と同様の作用効果が得られる。また、切刃20をワニ口構造にすることにより、一旦捕らえた硬質組織を脱落させることなく咥えたままの状態を維持することができる先端チップが得られる。実施例4に係る医療用ガイドワイヤも、その他の点では前述の実施例1と実質的に同じ構成を有することから、それに伴って、実施例1の場合と同様の作用効果を奏するものである。
【0038】
図18は、以上説明した実施例1〜4の各切刃構造と従来構造の先端部の横断面積を比較して示す図表である。この図表から明らかなように、先端からの距離が0.1〜0.2mmの領域における先端部の横断面積の小ささの順は次のようになる。すなわち、実施例3の三角切刃<実施例4の第2構造例のワニ口非対称切刃<実施例2の第1構造例の山形切刃<実施例1の第1構造例のドリル刃<実施例4の第1構造例のワニ口対称切刃<従来品となり、いずれの実施例とも従来品より小さくなっている。ここで、同一の押し力であれば、先端部横断面積が小さいほど穿刺進入性能が高くなる。従って、本実施形態に係るガイドワイヤによれば、いずれの切刃構造を用いても、先端部横断面積が従来品より小さく、穿刺・進入力に優れていることになる。
【0039】
より具体的には、例えば先端から0.1mmの横断面積は、実施例1の第1構造例のドリル刃では従来品の約62%、実施例3の三角切刃に至ってはわずか約9%である。このように先端部の横断面積を小さくすることにより、この部分が受ける面圧が高くなり、横断面積の縮小化に伴い穿刺進入性能を向上させることができる。特に、本実施形態に係るガイドワイヤでは、いずれもエッジ状切刃を有する構造であるため、上記の横断面の形状は従来品の円形と異なり、異形状をしている。従って、硬質組織部分であっても、この切刃のエッジ部分が優れた穿刺進入性能を発揮する。そして、実施例3の三角切刃に至っては、注射針形状と同様のナイフエッジ刃面を有しているため、硬質組織部分を切り裂きながら穿刺進入していくという格別の作用効果を発揮することができる。
【0040】
さらに、先端部のトルク力は、先端側と後端側の腕の長さ比であり、例えば断面積からこの腕の長さ比を算出してトルク力を求めると次のようになる。すなわち、先端から0.1mmの位置では実施例1の第1構造例のドリル刃では従来品の約1.26倍、実施例2の第1構造例の山形切刃では従来品の約1.31倍となる。そして、実施例3の三角切刃に至っては、従来品より約3.33倍となり、飛躍的にトルク力を向上させることができる。
【0041】
なお、図18において、実施例4のワニ口構造では、対称構造(第1構造例)及び非対称構造(第2構造例)のいずれにおいても、先端切刃部の横断面積は従来品より小さくなっている。ただし、非対称構造の場合には、図18に見られるように、先端から0.2mm近傍の位置に大きな変曲点が存在する。これは、非対称構造のワニ口では、上下2箇所の凸部に位置差(例えば0.2mm)が生じることに起因するものである。
【0042】
図19は対称構造のワニ口切刃を回転させる場合と非対称構造のワニ口切刃を回転させる場合の穿孔位置及び穿孔径を対比して示す説明図である。図19において、対称構造においては、2個所の凸部のうちのいずれかを中心として回転させるため、病変組織との当接部分が異なる位置を中心とする非対形状となり、穿孔径を大きくすることができる。一方、2箇所の凸部に位置差が設けられる非対称構造では、常に突出した方の先端部を中心とした回転運動となるため、先端部の回転位置を安定化させることができる。そして、いずれの場合も、ワニ口構造のため、一旦捕らえた硬質組織を脱落させることなく咥えたままの状態を維持することができる。
【実施例5】
【0043】
図20は実施例5に係る医療用ガイドワイヤの要部である先端部を示す図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。本実施例は、実施例1〜実施例4に係る医療用ガイドワイヤにおいて、切刃20の刃面の回転方向がコイルスプリング体50の縮径方向(捩じった場合に縮径する方向)と同一にされたものである。ここで、縮径方向は、コイルスプリング体を捩じった場合にそのコイル巻き径(又は外径)が減少する方向の回転方向(又は捩じり方向)のことである。このように先端チップ13の切刃面の切削回転方向とコイルスプリング体の縮径方向とを同一とすることにより、その切削能力をより一層高めることができる。
【0044】
例えば、図20の状態において、ドリル切刃面の回転方向が左回転のとき、コイルスプリング体の巻き方向を同方向から見て左回転方向とする。このように切削回転方向をコイルスプリング体50の縮径方向と同一方向とすることにより、コイルスプリング体を一時的に剛直化させることで先端側のトルク伝達力を高めることができる。それによって、切削能力を向上させることができる。本実施例に係るガイドワイヤ100は、以上の点で前述の各実施例と相違するが、その他の点では実質的に同じ構成を有しており、それに伴って同様の作用効果を奏するものである。
【実施例6】
【0045】
図21は実施例6に係る医療用ガイドワイヤの要部である先端部を示す縦断面図であり、(a)は1本の線材をコイル状に巻回して構成された単条コイルスプリング体を有するガイドワイヤを示し、(b)は複数本の線材をコイル状に巻回又は撚り合わせて構成された多条コイルスプリング体を有する本実施例に係るガイドワイヤを示す。図21の(b)のガイドワイヤ100は、実施例1〜5のガイドワイヤにおいて、先端チップ13に固着されるコイルスプリング体50として、複数本の線材を巻回又は撚り合わせて形成した多条コイル体を用いたものである。このような構成によれば、先端チップへのトルク伝達力を向上させ、先端チップの切削能力を向上させることができる。その理由は、単条コイル体では、回転力を一本の線材で支えながら先端側へトルクを伝達するのに対し、多条コイル体では、回転力を複数本の線材で支えるとともに、撚りピッチが大きく大きな傾斜角θ2を有する複数本の線材を用いることから、先端側へ回転力を伝え易くなることにある。
【0046】
さらに、多条コイル体により撚りピッチが大きくなることから、先端チップ13の1回転での移動距離が大きくなるという効果もある。そして、先端チップの切削片に対しては、撚りピッチが大きいことにより後方への移動距離が大きくなり、搬送及び排出作用を高める効果がある。また、コイルスプリング体として、太い線材と細い線材を組み合わせて成形したものを使用しても良い。なお、補足すれば、先端チップの切刃による切削片は、コイルスプリング体の素線間の溝部で搬送、排出されることから、多条コイル体の撚りピッチを大きくするほど搬送・排出の効果を高めることができる。多条コイル体の具体例として、例えば、線径0.065mmの線材を4〜6本、外径0.355mmに巻回成形した構造が用いられる。また、材質として、ステンレス鋼線材、又は、白金等の放射線不透過材を組み合わて用いてもよい。
【実施例7】
【0047】
図22は実施例7に係る医療用ガイドワイヤの第1構造例の要部である先端部を示す縦断面図である。図23は実施例7に係る医療用ガイドワイヤの第2構造例の要部である先端部を示す縦断面図である。本実施例は、実施例1〜実施例6に係る医療用ガイドワイヤにおいて、コイルスプリング体50の一部又は全体を先細りテーパ形状としたものである。図22の第1構造例では、コイルスプリング体50の途中から先端にかけてテーパ形状部が形成されている。これに対して、図23の第2構造例では、コイルスプリング体50の途中にテーパ形状部を形成するとともにその先端側の一定長さ範囲に同径のストレート部からなる先端部が形成されている。本実施例は、以上の点で前述の各実施例と相違するが、その他の点では実質的に同じ構成を有している。
【0048】
本実施例のようにコイルスプリング体50に先細りテーパ形状部を設けることにより、先端側への回転伝達力を向上させることができる。具体的には、図22に示すように後端側から先端側へ外径0.355mm〜0.250mmの縮径テーパ形状部を設けることにより、先端トルクを約1.42倍に向上させることができる。その理由は、捻りモーメントによるトルク力は「腕の長さ比」により決定されるため、縮径された先端側ほど回転力を高めることができるからである。一方、図23に示すように、スプリング体50の先端部に同径のストレート部を設けることにより、その分だけ、先端部の柔軟性を確保することができる。すなわち、本実施例によれば、前述の実施例と同様の作用効果が得られる他に、コイルスプリング体50の一部又は全体を先細りテーパ形状にすることで、先端側への回転力伝達力を向上させることができ、先端チップの切削能力が向上するという効果が得られる。
【実施例8】
【0049】
本実施例は、実施例1〜実施例7に係る医療用ガイドワイヤのそれぞれにおいて、先端チップ13を放射線不透過材で形成したものである。本実施例は、放射線透過材で形成した先端チップの表面に溶着やコーティングによって放射線不透過材の層を形成することで放射線不透過性を付与する場合も含むものである。放射線不透過材としては、金や白金等が好ましく、あるいは、これらの材質を含むろう付け材で先端チップを形成したり、先端チップに塗布したりし、そして、これらの材質をメッキ(鍍金)したりしたものを使用しても良い。本実施例によれば、ガイドワイヤを体内に挿通して使用する際に、放射線透視下において切刃20の刃面の先端位置を確認することが容易になる。
【実施例9】
【0050】
本実施例は、以上の各実施例を含む本実施形態に係る医療用ガイドワイヤの製造方法に係るものである。本実施例の製造方法は、芯材(芯線)10の先端部11を縮径加工する工程と、その芯材に樹脂被覆する工程と、芯材の先端部にコイル体50を挿入する工程と、少なくともコイル体の先端部と後端部を芯材に固着して、先端部が予め切刃20を形成した放射線不透過材からなる先端チップ13を芯材とコイル体に固着する工程、又は、先端部に放射線不透過材からなる先端チップ13を固着した後、先端チップの切刃20を形成する工程からなる医療用ガイドワイヤの製造方法である。本実施例における芯材に樹脂被覆する工程で使用される樹脂被覆材としては、PTFE等のふっ素樹脂など、易滑性に優れた樹脂を使用することが好ましい。なお、コイル体50内の芯材先端部は樹脂被膜されていない。
【実施例10】
【0051】
本実施例も、以上の各実施例を含む本実施形態に係る医療用ガイドワイヤの製造方法に係るものである。本実施例の製造方法は、芯材(芯線)10の先端部11を縮径加工する工程と、その芯材に樹脂被覆する工程と、芯材の先端部にコイル体50を挿入する工程と、少なくともコイル体の先端部と後端部を芯材に固着して、先端部が予め切刃20を形成した放射線不透過材からなる先端チップ13の切刃切削回転方向とコイル体の縮径方向と一致させる方向に先端チップを芯材とコイル体に固着する工程、又は、先端部に放射線不透過材からなる先端チップを芯材とコイル体に固着コイル体に固着した後、先端チップ切刃切削回転方向とコイル体の縮径方向と一致させる方向に先端チップの切刃を形成する工程からなる医療用ガイドワイヤの製造方法である。本実施例においても、芯材に樹脂被覆する工程で使用される樹脂被覆材として、PTFE等のふっ素樹脂など、易滑性に優れた樹脂を使用することが好ましい。なお、コイル体50内の芯材先端部は、上記の実施例と同様、樹脂被膜されていない。
【実施例11】
【0052】
実施例11は、医療用ガイドワイヤと医療用チューブ体との組立体に係るものであり、以上説明した各実施例に係る医療用ガイドワイヤとこれに外装嵌合される医療用チューブ体との組立体であって、先端部が柔軟性で後端部が先端部より剛性を有して、先端外径が1mm以下の中空状医療用チューブ体内に前述の各実施例のいずれかによる医療用ガイドワイヤを挿入して穿孔させることを特徴とするものである。図24は本実施形態に係る医療用ガイドワイヤとこれに外装嵌合される医療用チューブ体との組立体を用いてバルーンカテーテルを穿孔する状態を示す部分断面図である。前述の実施例のいずれかに係るガイドワイヤ100とマイクロカテーテル等の医療用チューブ体との組立体を用いることにより、体内から回収不能状態となったバルーンカテーテルを極めて容易に回収することが可能になる。
【0053】
医療現場では、図24に示すように、病変部へガイドワイヤを貫通した後、ステントを外装させたバルーンカテーテルを用いて狭窄部をステントとともに拡径し、ここにステントを留置することにより拡径治療が行われる。このようなステントを用いる拡径治療においては、近年、薬剤溶出型ステントの登場により、バルーン拡径後、バルーン外周部に装着した、薬剤を塗布したステントが何らかの原因によりバルーン部に接着・固着状態となることがある。このようなステントの接着・固着が生じると、拡張したステントに引っ張られてバルーン部が収縮しないことがある。また、生理食塩水等を用いてバルーン部を拡大・縮小しているが、その場合にバルーン部が縮小できない状態になると、これを体内から体外へ回収できなくなるため、外科手術が必要になることがある。その場合、患者の体力の問題もあり、術者は緊急対応を迫られる。
【0054】
かかる場合には、医療用チューブ体をバルーンカテーテルのバルーン部近傍まで導入し、図24に示すように、医療用チューブ体の細径先端部より本実施形態に係るガイドワイヤを突出させることにより、バルーン部を穿孔して強制的に収縮させることができる。これにより、バルーン部回収することができる。この場合、図15に示すような実施例3によるガイドワイヤ、すなわち先端横断面が「ナイフエッジ」と「外周切刃」を併用した三角形状となっているガイドワイヤ100を用いることが特に好ましい。その理由は、先端横断面が「ナイフエッジ」と「外周切刃」を併用した三角形状になっているため、切り裂き効果による穿刺押し込み能力及び穿孔能力が格段に高いこと、並びに先端チップ13の横断面積が小さいいことから、仮に血管を穿孔貫通した場合でも穿孔径が小さく早期止血が容易であることにある。
【0055】
なお、以上の実施の形態ではバルーン部の穿孔を例に挙げて説明したが、完全閉塞病変部を穿孔・貫通させる手段として、本発明による医療用ガイドワイヤと医療用チューブ体との組立体を用いてもよい。
【0056】
上記医療用チューブ体は、ガイドワイヤの押し込み力の反力を支える構造体として機能する。この機能を満たすチューブ体として、先端部が柔軟で後端側が剛性の高い「先柔後剛」の特性を有する細径の中空チューブ体が使用される。実用上は、先端外径が概ね1mm以下の細径の中空チューブ体が使用される。このような細径の医療用チューブ体には、各種のチューブ体が含まれる。例えば、先端部から後端部へ軟質樹脂から硬質樹脂へ徐変増大した中空チューブ体、軟・中・硬の樹脂チューブ体を組合せて加熱収縮させた同チューブ体、樹脂被覆を多層形態にして樹脂層間に金属性編組を介在させた中空チューブ体、並びに、多条の線材をコイル状に巻回成形して先端側を縮径加工させた細径の「先柔後剛」の特性を有する中空チューブ体などが含まれる。
【0057】
以上の説明した本発明の実施形態によれば、ガイドワイヤの柔軟性を損なうことなく、穿孔力及び貫通力を向上させることができ、血管内病変部に高度な閉塞部が生じた場合でも、これを容易に削り落とすことができ、術者の意図する方向へ容易に穿孔・穿刺することができる医療用ガイドワイヤ及びその製造方法、並びに、医療用ガイドワイヤと医療用チューブ体との組立体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態に係る医療用ガイドワイヤの要部である先端部の縦断面図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。
【図2】実施例1において先端チップにチゼル幅Aを有しねじれ角を有しないドリル状の切刃が形成された第1構造例に係る医療用ガイドワイヤを示し、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。
【図3】実施例1において先端チップにチゼル幅及びねじれ角を有するドリル状の切刃が形成された第2構造例に係る医療用ガイドワイヤを示し、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。
【図4】実施例1において先端チップにチゼル幅及びねじれ角を有しないドリル状の切刃が形成された第3構造例に係る医療用ガイドワイヤを示し、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。
【図5】実施例1において先端チップにチゼル幅がゼロでねじれ角を有するドリル状の切刃が形成された第4構造例に係る医療用ガイドワイヤを示し、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。
【図6】実施例1において先端チップの片側にチゼル幅及びねじれ角を有するドリル状の切刃が形成された第5構造例に係る医療用ガイドワイヤを示し、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。
【図7】一実施形態に係る医療用ガイドワイヤにより血管内の硬い石灰片が散在する領域を穿孔する状態を示す断面図である。
【図8】一実施形態に係る医療用ガイドワイヤにより血管内の完全閉塞部を穿刺・貫通させる状態を示す断面図である。
【図9】実施例1に係る医療用ガイドワイヤにおいてチゼル幅を有する切刃の切削抵抗とチゼル幅を有しない切刃の切削抵抗を比較して示す説明図である。
【図10】実施例1の各構造例の切刃の先端部の横断面積を比較して示す図表である。
【図11】医療用ガイドワイヤの切刃の刃面の先端角の大小と切刃の刃面が受ける回転力の大小との関係を説明するための模式図である。
【図12】図3に示す実施例1の第2構造例のねじれ角を有する切刃によって切削組織片を後方へ搬送・排出する状態を示す部分側面図である。
【図13】実施例2に係る医療用ガイドワイヤの第1構造例の要部を示す図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。
【図14】実施例2に係る医療用ガイドワイヤの第2構造例の要部を示す図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。
【図15】実施例3に係る医療用ガイドワイヤの要部を示す図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。
【図16】実施例4に係る医療用ガイドワイヤの第1構造例の要部を示す図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。
【図17】実施例4に係る医療用ガイドワイヤの第2構造例の要部を示す図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。
【図18】本発明による医療用ガイドワイヤの実施例1〜4の各切刃構造と従来構造の先端部の横断面積を比較して示す図表である。
【図19】実施例4において対称構造のワニ口切刃を回転させる場合と非対称構造のワニ口切刃を回転させる場合の穿孔位置及び穿孔径を対比して示す説明図である。
【図20】実施例5に係る医療用ガイドワイヤの要部である先端部を示す図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。
【図21】実施例6に係る医療用ガイドワイヤの要部である先端部を示す縦断面図である。
【図22】実施例7に係る医療用ガイドワイヤの第1構造例の要部である先端部を示す縦断面図である。
【図23】実施例7に係る医療用ガイドワイヤの第2構造例の要部である先端部を示す縦断面図である。
【図24】一実施形態に係る医療用ガイドワイヤと医療用チューブ体との組立体を用いてバルーンカテーテルを穿孔する状態を示す部分断面図である。
【図25】従来の医療用ガイドワイヤの血管内の高度閉塞部における問題を示す部分断面図である。
【図26】従来の医療用ガイドワイヤの血管の分岐部における問題を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0059】
10 芯線(芯材)
11 芯線の先端部
12 芯線の基体部
13 先端チップ
15 フランジ
20 切刃
50 コイルスプリング体
100 医療用ガイドワイヤ
A 切刃のチゼル幅
R、r 抵抗
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管等の状態を検査又は治療するためカテーテルなどをガイドするのに使用される医療用ガイドワイヤ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用ガイドワイヤは人体の血管内患部の状態の検査したり該患部を治療したりするために血管内に挿入されるものであり、挿入されたガイドワイヤは、X線造影剤注入用のカテーテルを挿入したり、狭窄部位を拡大するためのバルーンカテーテルやステントを送り込むときの案内部材として使用される。このような医療用ガイドワイヤとして、先端部と手元部を有し、先端部が徐変縮径する芯線の外装部にコイルスプリング体を外装固着してその先端部に先端チップをコイルスプリング体と固着形成することで、柔軟性を持たせたものが使用されている。
【0003】
このような医療用ガイドワイヤに関する技術として、例えば、特許文献1には、半球状の切削部材と該切削部材の表面から緩やかに隆起した突状と該切削部材の基部を固定するための円盤状ベースとからなる塞栓切除ヘッドを、カテーテルの先端部において、該カテーテルに内挿されたワイヤに接続する塞栓切除カテーテルが開示されている。
また、特許文献2には、ワイヤ主部とコア部の先端に固着された先導栓との間にコイルばねを装着し、該コイルばねの前記先導栓と中間固定部との間にコイル線間隙間を有する弾性拡縮自在部分を設ける医療用ガイドワイヤが開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、先端部に螺旋状凸部を有するカテーテル本体とカテーテル本体内に挿通されたガイドワイヤとからなるカテーテルの外周に、前記カテーテル本体の前記凸部を含む外径とほぼ等しい内径を有するとともに先端に刃を有するカテーテルシースを嵌合装着する構成のカテーテル組立体が開示されている。
さらに、特許文献4には、複数本のワイヤを一定の撚り角(ピッチ角)で螺旋状に巻回した多条線コイルからなるシャフト部分と、該シャフト部分の一端に固着された末端部と、該シャフト部分の他端に固着された先端部と、からなる血管処置用のガイドワイヤが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平7−108044号公報
【特許文献2】特開2003−164530号公報
【特許文献3】特開平63−262160号公報
【特許文献4】特表2002−539901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の医療用ガイドワイヤでは、先端部の穿孔性能及び押し込み性能が冠状動脈等の狭窄病変部に対処するためには不十分であった。また、先端部の穿孔性能及び押し込み性能を上げようとするとワイヤの剛性が高くなり過ぎて血管穿孔等の危険性を招くおそれがあった。さらには、従来の医療用ガイドワイヤでは、術者への先端情報を的確に伝達して術者の意図する方向へ穿孔・穿刺することが困難であった。
【0007】
一般に血管は内膜、中膜及び外膜からなり、その完全閉塞部は血栓の器質化が進行することにより硬化し、その両端部では器質化が比較的早く、中央では比較的遅い。また、この両端部は閉塞期間の経過に伴って硬化していく。
【0008】
このため、術者は、内膜内における「ガリガリ、ゴツゴツ」とした硬い組織の手元部への感触、あるいは中膜内での「粘りつくような抵抗感」の手元部への感触を頼りに、ガイドワイヤを内膜と中膜の間を通して迂回させることで病変部を通過させ、その後、バルーンカテーテルを用いて閉塞部拡張及びステント留置の治療を行っていた。しかし、従来の医療用ガイドワイヤによるこのような穿孔・穿刺の方法では、再狭窄の発生率が高いという解決すべき課題があった。
【0009】
図25は従来の医療用ガイドワイヤの血管内の高度閉塞部における問題を示す部分断面図である。図25において、前述の再狭窄の発生率が高いという不都合のため、近年では、前述のような高度閉塞部を迂回する方法を採らず、先端部の芯材を太くした剛性の高いガイドワイヤを用いて血管の血流と同方向に貫通させる治療に変わりつつある。しかし、この方法においても、図25に示すように、高度閉塞部の遠位端の手前に硬く小さな石灰片が比較的軟質な閉塞組織内に散在していると、この硬く石灰化した小片を貫通させることは困難である。
【0010】
その理由は、硬軟組織が散在している場合、剛性の高い先端部を持つガイドワイヤでは、軟質組織に導かれことによりその進行方向が変化させられ、偽腔を形成しやすくなることにある。これは、ひいては血管穿孔の原因となってしまう。さらに、芯線径等を太くして剛性を高めたガイドワイヤでは、前述のような「ガリガリ、ゴツゴツ」・「粘りつくような抵抗感」等が剛性の差に打ち消され、先端情報として術者へ伝達され難くなる。
【0011】
図26は従来の医療用ガイドワイヤの血管の分岐部における問題を示す部分断面図である。図26において、血管の分岐部にガイドワイヤを挿通する場合、術者は、分岐部での方向選択性向上のため、ガイドワイヤ先端部を予め曲げ変形させ、手元部を時計方向・反時計方向へ約90度ほど交互に回転を繰り返しながら徐々に病変部内へ推し進める。このような場合、従来のガイドワイヤの半球砲弾状の先端チップでは、軟組織中に硬い石灰化小片が散在していると、この小片を避けるように、つまり軟組織に導かれるように進行する。その結果、ガイドワイヤが術者の意図する方向とは異なる方向へ迷入することがある。
【0012】
本発明は上述のような従来の技術的課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ガイドワイヤの柔軟性を損なうことなく、血管内病変部に高度な閉塞部が生じた場合でも、これを容易に削り落とすことができ、術者の意図する方向へ容易に穿孔・穿刺することができる医療用ガイドワイヤ及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するため、芯線の先端部の所定長さ範囲に縮径部を形成し、該縮径部の先端に先端チップを固着し、前記縮径部にコイルスプリング体を外装固着してなる医療用ガイドワイヤにおいて、前記先端チップの外周部に先端側へ徐変縮径する切刃を形成することを特徴とする。
【0014】
上記の構成においては、前記先端チップの切刃は、ドリル状刃面を有する切刃構造、横断面の片側に形成された山形切刃であって断面形状が扇形又は切欠円形状であり、先端側へ徐変縮小している切刃構造、横断面が三角形を形成してナイフエッジ部を有し、かつ先端側へ徐変縮小している切刃構造、あるいは、ワニ口形状である切刃構造とすることが好ましい。さらには、上記構成においては、前記先端チップの切刃の切削回転方向が該先端チップに固着される前記コイルスプリング体を捩じったときの縮径方向と同じである構成、前記先端チップに固着されるコイルスプリング体が多条線からなる構成、あるいは、前記先端チップに固着されるコイルスプリング体は軸方向のテーパ形状を有する構成とすることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る医療用ガイドワイヤの製造方法は、上記目的を達成するため、芯線の先端部に固着した先端チップの外周部に先端側へ徐変縮径する切刃を形成した医療用ガイドワイヤの製造方法において、芯材の先端部を縮径加工する工程と、その芯材に樹脂を被覆する工程と、芯材の先端部にコイルスプリング体を挿入する工程と、少なくともコイルスプリング体の後端部を芯材に固着する工程と、先端部に切刃が形成された放射線不透過材からなる先端チップを芯材とコイルスプリング体に固着する工程と、を有することを特徴とする。この製造方法においては、上記の先端部に切刃が形成された放射線不透過材からなる先端チップを芯材とコイルスプリング体に固着する工程に代えて、芯材の先端部に放射線不透過材からなる先端チップを固着した後に該先端チップに切刃を形成する工程を実施しても良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ガイドワイヤの柔軟性を損なうことなく、血管内病変部に高度な閉塞部が生じた場合でも、これを容易に削り落とすことができ、術者の意図する方向へ容易に穿孔・穿刺することができる医療用ガイドワイヤ及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を具体的に説明する。なお、各図面を通して同一符号は同一又は対応部分を示すものである。図1は本発明の一実施形態に係る医療用ガイドワイヤの要部である先端部の縦断面図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。図1において、医療用ガイドワイヤ100は、芯線10の先端部11を縮径するとともに、該先端縮径部11の周囲をコイルスプリング体50で包被する構造を有している。12は芯線10の基体部を示す。芯線10としては例えば基体部の直径が直径0.355mmで長さ1.5m〜3m程度のステンレス鋼線又はニッケルチタン合金線等が使用され、その先端縮径部11は、例えば、基端から先端までの長さが110mm〜150mm程度で直径0.142mmに縮径され、さらにその先端部の40〜50mm程度の範囲で先細状に縮径されている。また、芯線10は、基体部12の手前側の基端部(手元部)を操作しながら、人体の血管内患部の状態の検査したり該患部を治療したりするために血管内に挿入される。
【0018】
芯線10(その縮径部11)の先端には、ろう付け等で先端チップ13が固定されるか、あるいは、外径が0.2〜0.3mmの球状のろう材を用いて、ろう付けによりろう材自体で先端チップが形成されている。先端縮径部11の外周部に巻回されている外装部としてのコイルスプリング体50は、例えば外径0.065mmの金属線材を外径0.355mm程度でコイル状に巻回して形成されている。コイルスプリング体50は、その近位端を芯線10(その縮径部11)の手前側にろう付け等で固定されており、また、その遠位端(先端側)を先端チップ13にろう付け等で固着されている。先端チップ13は放射線不透過材で形成されている。本実施形態では、先端チップ13の外周部に先端側へ徐変縮径する切刃20が形成されている。この切刃20としては、種々の構造及び形状のものを使用することができ、以下に実施例を挙げて説明する。
【実施例1】
【0019】
図2〜図6は、それぞれ、実施例1に係る医療用ガイドワイヤ100の第1〜第5構造例の要部を示す図である。図2は先端チップ13にチゼル幅Aを有しねじれ角θを有しないドリル状の切刃20が形成された第1構造例を示し、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。図3は先端チップ13にチゼル幅A及びねじれ角θを有するドリル状の切刃20が形成された第2構造例を示し、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。
【0020】
図4は先端チップ13にチゼル幅A及びねじれ角θを有しないドリル状の切刃20が形成された第3構造例を示し、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。図5は先端チップ13にチゼル幅Aがゼロでねじれ角θを有するドリル状の切刃20が形成された第4構造例を示し、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。図6は先端チップ13の片側にチゼル幅A及びねじれ角θを有するドリル状の切刃20が形成された第5構造例を示し、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。
【0021】
実施例1の各構造例に係る医療用ガイドワイヤ100によれば、先端チップ13の外周部に先端側へ徐変縮径する切刃20を形成するので、血管内病変部に高度な閉塞部が生じた場合でも、これを容易に削り落とすことができ、術者の意図する方向へ容易に穿孔・穿刺することができる。すなわち、冠状動脈完全閉塞病変部内に血栓が高度に石灰化、あるいは硬く線維化した組織が存在していても、偽腔や迷入を防ぎながら穿孔・貫通して真腔をつくることが極めて容易になる。また、術者への先端情報の伝達を阻害させることなく、容易に意図する方向へ穿孔・穿刺することが可能になる。
【0022】
図7は本実施形態のガイドワイヤ100で血管内の硬い石灰片が散在する領域を穿孔する状態を示す断面図である。図7において、本実施形態に係る医療用ガイドワイヤでは、先端チップ13の外周部に先端側へ徐変縮径する鋭利な切刃20が形成されているため、硬い石灰化小片が散在していても、この切刃の刃面で引っ掛けて捕らえることができる。そのため、ガイドワイヤの先端部が軟組織に誘導されて異なる方向へ引き込まれることはない。この刃面の引っ掛かり抵抗感は術者の手元へ伝わり、切刃面を切削方向に回転させることにより、ドリル作用によって硬い石灰化小片を穿孔することができる。これによって、ガイドワイヤ100を、閉塞部で迷入させることなく、真腔(血管内中央通路)に正しく貫通させることができる。
【0023】
また、先端部の剛性を高めたガイドワイヤと異なり、従来と同様の先端柔軟性を確保しながら、穿孔・穿刺が可能である。また、術者が時計方向及び反時計方向に交互に回転させることにより、コイルスプリング体50の拡径・縮径(コイルの巻き方向と反対方向に回転させる場合のコイル径の拡大、並びに、コイルの巻き方向に回転させる場合のコイル径の縮小)を交互に繰り返すことができる。このため、コイルスプリング体の素線間への病変組織の出入り、あるいは、押し引き操作によるコイルスプリング体の素線間の拡大・縮小による病変組織の出入りによって、術者へ閉塞部内の先端情報を伝えることができる。また、切刃面の回転方向をコイルスプリング体の縮径方向と一致させることにより、一時的に剛直化させることができ、これによって、先端部への回転伝達を向上させることができ、切削・ドリル作用をより高めることができる。
【0024】
さらに、本実施形態の切刃20によれば、ドリル作用による切削能力のみならず、押し力による穿刺能力も向上させることができる。同一の押し力であれば、先端部の横断面積が小さく、先端側へ徐変縮径しているほど穿刺進入力が高くなる。本実施形態の切刃20の形状はいずれも断面積が現行品(従来例)より小さく、切刃の形状とあいまって穿刺進入力を高めることができる。特に、前述の各構造例では、いずれの切刃もエッジ形状を有するため、横断面形状は従来の円形とことなり異形状をしているため、硬質組織部分であっても、切刃のエッジ部が穿刺・進入力を発揮する。また、先端部のトルク力は、先端側と後端側のうでの長さの比率(アーム比)であり、前述の各構成例について断面積からこの比率を算出すると、例えば、図2に示すような先端チップにチゼル幅を有しねじれ角を有しないドリル状の切刃が形成された実施例1の第1構造例の場合(比率が比較的小さい場合)でも、先端から0.1mmの位置で約1.26倍となっており、大幅にトルク力を向上させることができる。
【0025】
図8は本実施形態に係る医療用ガイドワイヤにより血管内の完全閉塞部を穿刺・貫通させる状態を示す断面図である。図8において、完全閉塞部の両端部は一般的にすり鉢状のカップ形状になっている。その近位側カップは中央部が凹み状であるため、病変部の中央通路(真腔)を比較的容易に捕らえることができる。これに対して、遠位側カップはガイドワイヤ100の進行方向から見て中央部で凸状となっているため、遠位側カップの領域では中央通路から逸脱しやすく、偽腔への迷入を生じやすい。また、遠位側カップの硬質部の厚さは近位側カップに比べて薄いことが知られている。
【0026】
従って、本実施形態のようなエッジ状の切刃20を有するガイドワイヤ100を用いることにより、遠位側カップが凸状であっても、エッジ部で引っ掛けて凸状カップの中央部を容易に捕らえることができる。そのため、ガイドワイヤが中央通路から逸脱することはない。さらに、遠位側カップの硬質部が比較的薄いことから、先端チップ13の横断面積を少しの距離で小さくして面圧を高くすることにより、容易に遠位側の硬質カップに穿刺・貫通させることが可能になる。
【0027】
図9は実施例1に係る医療用ガイドワイヤにおいてチゼル幅を有する切刃の切削抵抗とチゼル幅を有しない切刃の切削抵抗を比較して示す説明図である。図9において、ドリル状の切刃のチゼル幅を変化させることにより、被切削部への食いつき力を調整することができる。つまり、チゼル幅を「ゼロ」とすることにより、より病変組織への食いつき力を一層高めることができる。この場合の切削メカニズムは、次のようなものである。すなわち、チゼル幅Aが有る場合は、ガイドワイヤを回転させながら病変組織へ押し付けることでチゼル部によってえぐられる。また、押し広げられた病変組織が中心部より押し出されて、チゼル部により盛り上がった病変組織部分が削られることになる。
【0028】
一方、チゼル幅Aが「ゼロ」の場合は、切刃の先端部の求心力を高めて、病変組織への食いつき力を向上させることができる。これは、先端角を小さくするほど押し込み抵抗が小さくなり、その結果、少しの力で深く進入させることが可能となり、同一操作力での進入・押し込み力が増大するからである。
【0029】
図10は実施例1の各構造例の切刃の先端部の横断面積を比較して示す図表である。図10において、先端部横断面積の大きさは、[図4に示すチゼル幅ゼロの第3構造例]<[図2に示すチゼル幅有りの第1構造例]<[図6に示す片側切刃の第5構造例]<[従来品]の関係となる。実施例1のいずれの構造例であっても、横断面積が従来品より小さくなることから、押し込み能力が高くなる。また、実施例1のいずれの構造例においても、ドリル状の切刃面が円弧状の刃面を形成しているため、細径であっても切刃面の強度を高く保つことができる。
【0030】
図11は医療用ガイドワイヤの切刃の刃面の先端角の大小と切刃の刃面が受ける回転力の大小との関係を説明するための模式図である。図11において、先端チップに形成される切刃の先端角θを小さくすると、刃面が受ける回転力は増大する。逆に先端角θを大きくすると、刃面が受ける回転力は減少する。本実施形態に係る医療用ガイドワイヤ100の円弧状刃面では、先端側へ徐変縮径しているため、先端側(細径側)では先端角θ1が大きく、回転力は小さい。その後方では、先端角θ2小さくなり、回転力は増大する。つまり、後方の回転力H>先端側の回転力hとなる。そのため、切刃面が受ける力を緩和することができ、細径であっても、切刃部の強度を高く維持することができる。
【0031】
図12は図3に示す第2構造例のねじれ角を有する切刃によって切削組織片を後方へ搬送・排出する状態を示す部分側面図である。図12において、実施例1の第2構造例(図3)のように先端チップ13の外周部に先端側へ徐変縮径する切刃20をねじれ角を設けた切刃構造とすることにより、病変組織への食いつき力の増大、並びに、切削組織片の後方への搬送・排出作用を向上させることができる。
【実施例2】
【0032】
図13は実施例2に係る医療用ガイドワイヤ100の第1構造例の要部を示す図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。図14は実施例2に係る医療用ガイドワイヤ100の第2構造例の要部を示す図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。図13の第1構造例では、先端チップ13の切刃20が片側山形切刃であってその横断面形状が扇形であり、かつ切刃が先端側へ徐変縮小するように構成されている。一方、図14の第2構造例では、先端チップ13の切刃20が片側外周切刃であってその横断面形状が切り欠き円形状(D形状)であり、かつ切刃が先端側へ徐変縮小するように構成されている。実施例2に係る医療用ガイドワイヤは、上記以外の部分では前述の実施例1と実質的に同じ構成を有している。
【0033】
本実施例によっても、ガイドワイヤ100の時計・反時計方向の繰り返し操作による穿孔性能、並びに先端チップ13の切刃が先端側へ徐変縮小していることに伴う押し込み性能の向上については、前述の実施例1の場合と同様の作用効果が得られる。また、本実施例によれば、先端チップ13の片側に形成する切刃20の刃面を山形切刃面(図13)あるいは外周切刃面(図14)とすることで、実施例1と比べ、時計・反時計方向のいずれの回転であっても常に一層の穿孔能力を発揮することができる。さらに、図13に示す山形切刃面にすることで、切り裂き効果も併せもつ切刃を実現することができる。実施例2に係る医療用ガイドワイヤは、その他の点では前述の実施例1と実質的に同じ構成を有することから、それに伴って、実施例1の場合と同様の作用効果を奏するものである。
【実施例3】
【0034】
図15は実施例3に係る医療用ガイドワイヤ100の要部を示す図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。本実施例では、先端チップ13の切刃20がナイフエッジと外周切刃を併用した横断面三角形の切刃構造を有し、かつ切刃が先端側へ徐変縮小するように構成されている。本実施例に係る医療用ガイドワイヤは、上記以外の部分では前述の実施例1又は2と実質的に同じ構成を有している。本実施例によっても、ガイドワイヤ100の時計・反時計方向の繰り返し操作による穿孔性能、並びに先端チップ13の切刃が先端側へ徐変縮小していることに伴う押し込み性能の向上については、前述の実施例1及び2の場合と同様の作用効果が得られる。
【0035】
さらに、本実施例によれば、先端チップ13の切刃部分の横断面積を特に小さくすることができ、かつ、切刃20が注射針構造と同様なナイフエッジ刃面を有する構成とすることができる。そのため、切り裂き効果による穿刺押し込み能力及び穿孔能力を格段に向上させることができる。また、先端チップ13の横断面積が小さいことから、仮に血管を穿孔貫通した場合でも、穿孔径が小さいことから、早期止血が容易になるという効果も得られる。
【実施例4】
【0036】
図16は実施例4に係る医療用ガイドワイヤ100の第1構造例の要部を示す図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。図17は実施例4に係る医療用ガイドワイヤ100の第2構造例の要部を示す図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。本実施例では、先端チップ13の切刃20がワニ口形状に形成されるとともに切刃部分が先端側へ徐変縮小するように構成されている。そして、第1構造例ではワニ口構造が直径方向に対称に形成され、第2構造例ではワニ口構造が直径方向に非対称に形成されている。本実施例に係る医療用ガイドワイヤは、上記以外の部分では前述の実施例1〜3と実質的に同じ構成を有している。
【0037】
本実施例によっても、ガイドワイヤ100の時計・反時計方向の繰り返し操作による穿孔性能、並びに先端チップ13の切刃が先端側へ徐変縮小していることに伴う押し込み性能の向上については、前述の実施例1〜3の場合と同様の作用効果が得られる。また、切刃20をワニ口構造にすることにより、一旦捕らえた硬質組織を脱落させることなく咥えたままの状態を維持することができる先端チップが得られる。実施例4に係る医療用ガイドワイヤも、その他の点では前述の実施例1と実質的に同じ構成を有することから、それに伴って、実施例1の場合と同様の作用効果を奏するものである。
【0038】
図18は、以上説明した実施例1〜4の各切刃構造と従来構造の先端部の横断面積を比較して示す図表である。この図表から明らかなように、先端からの距離が0.1〜0.2mmの領域における先端部の横断面積の小ささの順は次のようになる。すなわち、実施例3の三角切刃<実施例4の第2構造例のワニ口非対称切刃<実施例2の第1構造例の山形切刃<実施例1の第1構造例のドリル刃<実施例4の第1構造例のワニ口対称切刃<従来品となり、いずれの実施例とも従来品より小さくなっている。ここで、同一の押し力であれば、先端部横断面積が小さいほど穿刺進入性能が高くなる。従って、本実施形態に係るガイドワイヤによれば、いずれの切刃構造を用いても、先端部横断面積が従来品より小さく、穿刺・進入力に優れていることになる。
【0039】
より具体的には、例えば先端から0.1mmの横断面積は、実施例1の第1構造例のドリル刃では従来品の約62%、実施例3の三角切刃に至ってはわずか約9%である。このように先端部の横断面積を小さくすることにより、この部分が受ける面圧が高くなり、横断面積の縮小化に伴い穿刺進入性能を向上させることができる。特に、本実施形態に係るガイドワイヤでは、いずれもエッジ状切刃を有する構造であるため、上記の横断面の形状は従来品の円形と異なり、異形状をしている。従って、硬質組織部分であっても、この切刃のエッジ部分が優れた穿刺進入性能を発揮する。そして、実施例3の三角切刃に至っては、注射針形状と同様のナイフエッジ刃面を有しているため、硬質組織部分を切り裂きながら穿刺進入していくという格別の作用効果を発揮することができる。
【0040】
さらに、先端部のトルク力は、先端側と後端側の腕の長さ比であり、例えば断面積からこの腕の長さ比を算出してトルク力を求めると次のようになる。すなわち、先端から0.1mmの位置では実施例1の第1構造例のドリル刃では従来品の約1.26倍、実施例2の第1構造例の山形切刃では従来品の約1.31倍となる。そして、実施例3の三角切刃に至っては、従来品より約3.33倍となり、飛躍的にトルク力を向上させることができる。
【0041】
なお、図18において、実施例4のワニ口構造では、対称構造(第1構造例)及び非対称構造(第2構造例)のいずれにおいても、先端切刃部の横断面積は従来品より小さくなっている。ただし、非対称構造の場合には、図18に見られるように、先端から0.2mm近傍の位置に大きな変曲点が存在する。これは、非対称構造のワニ口では、上下2箇所の凸部に位置差(例えば0.2mm)が生じることに起因するものである。
【0042】
図19は対称構造のワニ口切刃を回転させる場合と非対称構造のワニ口切刃を回転させる場合の穿孔位置及び穿孔径を対比して示す説明図である。図19において、対称構造においては、2個所の凸部のうちのいずれかを中心として回転させるため、病変組織との当接部分が異なる位置を中心とする非対形状となり、穿孔径を大きくすることができる。一方、2箇所の凸部に位置差が設けられる非対称構造では、常に突出した方の先端部を中心とした回転運動となるため、先端部の回転位置を安定化させることができる。そして、いずれの場合も、ワニ口構造のため、一旦捕らえた硬質組織を脱落させることなく咥えたままの状態を維持することができる。
【実施例5】
【0043】
図20は実施例5に係る医療用ガイドワイヤの要部である先端部を示す図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。本実施例は、実施例1〜実施例4に係る医療用ガイドワイヤにおいて、切刃20の刃面の回転方向がコイルスプリング体50の縮径方向(捩じった場合に縮径する方向)と同一にされたものである。ここで、縮径方向は、コイルスプリング体を捩じった場合にそのコイル巻き径(又は外径)が減少する方向の回転方向(又は捩じり方向)のことである。このように先端チップ13の切刃面の切削回転方向とコイルスプリング体の縮径方向とを同一とすることにより、その切削能力をより一層高めることができる。
【0044】
例えば、図20の状態において、ドリル切刃面の回転方向が左回転のとき、コイルスプリング体の巻き方向を同方向から見て左回転方向とする。このように切削回転方向をコイルスプリング体50の縮径方向と同一方向とすることにより、コイルスプリング体を一時的に剛直化させることで先端側のトルク伝達力を高めることができる。それによって、切削能力を向上させることができる。本実施例に係るガイドワイヤ100は、以上の点で前述の各実施例と相違するが、その他の点では実質的に同じ構成を有しており、それに伴って同様の作用効果を奏するものである。
【実施例6】
【0045】
図21は実施例6に係る医療用ガイドワイヤの要部である先端部を示す縦断面図であり、(a)は1本の線材をコイル状に巻回して構成された単条コイルスプリング体を有するガイドワイヤを示し、(b)は複数本の線材をコイル状に巻回又は撚り合わせて構成された多条コイルスプリング体を有する本実施例に係るガイドワイヤを示す。図21の(b)のガイドワイヤ100は、実施例1〜5のガイドワイヤにおいて、先端チップ13に固着されるコイルスプリング体50として、複数本の線材を巻回又は撚り合わせて形成した多条コイル体を用いたものである。このような構成によれば、先端チップへのトルク伝達力を向上させ、先端チップの切削能力を向上させることができる。その理由は、単条コイル体では、回転力を一本の線材で支えながら先端側へトルクを伝達するのに対し、多条コイル体では、回転力を複数本の線材で支えるとともに、撚りピッチが大きく大きな傾斜角θ2を有する複数本の線材を用いることから、先端側へ回転力を伝え易くなることにある。
【0046】
さらに、多条コイル体により撚りピッチが大きくなることから、先端チップ13の1回転での移動距離が大きくなるという効果もある。そして、先端チップの切削片に対しては、撚りピッチが大きいことにより後方への移動距離が大きくなり、搬送及び排出作用を高める効果がある。また、コイルスプリング体として、太い線材と細い線材を組み合わせて成形したものを使用しても良い。なお、補足すれば、先端チップの切刃による切削片は、コイルスプリング体の素線間の溝部で搬送、排出されることから、多条コイル体の撚りピッチを大きくするほど搬送・排出の効果を高めることができる。多条コイル体の具体例として、例えば、線径0.065mmの線材を4〜6本、外径0.355mmに巻回成形した構造が用いられる。また、材質として、ステンレス鋼線材、又は、白金等の放射線不透過材を組み合わて用いてもよい。
【実施例7】
【0047】
図22は実施例7に係る医療用ガイドワイヤの第1構造例の要部である先端部を示す縦断面図である。図23は実施例7に係る医療用ガイドワイヤの第2構造例の要部である先端部を示す縦断面図である。本実施例は、実施例1〜実施例6に係る医療用ガイドワイヤにおいて、コイルスプリング体50の一部又は全体を先細りテーパ形状としたものである。図22の第1構造例では、コイルスプリング体50の途中から先端にかけてテーパ形状部が形成されている。これに対して、図23の第2構造例では、コイルスプリング体50の途中にテーパ形状部を形成するとともにその先端側の一定長さ範囲に同径のストレート部からなる先端部が形成されている。本実施例は、以上の点で前述の各実施例と相違するが、その他の点では実質的に同じ構成を有している。
【0048】
本実施例のようにコイルスプリング体50に先細りテーパ形状部を設けることにより、先端側への回転伝達力を向上させることができる。具体的には、図22に示すように後端側から先端側へ外径0.355mm〜0.250mmの縮径テーパ形状部を設けることにより、先端トルクを約1.42倍に向上させることができる。その理由は、捻りモーメントによるトルク力は「腕の長さ比」により決定されるため、縮径された先端側ほど回転力を高めることができるからである。一方、図23に示すように、スプリング体50の先端部に同径のストレート部を設けることにより、その分だけ、先端部の柔軟性を確保することができる。すなわち、本実施例によれば、前述の実施例と同様の作用効果が得られる他に、コイルスプリング体50の一部又は全体を先細りテーパ形状にすることで、先端側への回転力伝達力を向上させることができ、先端チップの切削能力が向上するという効果が得られる。
【実施例8】
【0049】
本実施例は、実施例1〜実施例7に係る医療用ガイドワイヤのそれぞれにおいて、先端チップ13を放射線不透過材で形成したものである。本実施例は、放射線透過材で形成した先端チップの表面に溶着やコーティングによって放射線不透過材の層を形成することで放射線不透過性を付与する場合も含むものである。放射線不透過材としては、金や白金等が好ましく、あるいは、これらの材質を含むろう付け材で先端チップを形成したり、先端チップに塗布したりし、そして、これらの材質をメッキ(鍍金)したりしたものを使用しても良い。本実施例によれば、ガイドワイヤを体内に挿通して使用する際に、放射線透視下において切刃20の刃面の先端位置を確認することが容易になる。
【実施例9】
【0050】
本実施例は、以上の各実施例を含む本実施形態に係る医療用ガイドワイヤの製造方法に係るものである。本実施例の製造方法は、芯材(芯線)10の先端部11を縮径加工する工程と、その芯材に樹脂被覆する工程と、芯材の先端部にコイル体50を挿入する工程と、少なくともコイル体の先端部と後端部を芯材に固着して、先端部が予め切刃20を形成した放射線不透過材からなる先端チップ13を芯材とコイル体に固着する工程、又は、先端部に放射線不透過材からなる先端チップ13を固着した後、先端チップの切刃20を形成する工程からなる医療用ガイドワイヤの製造方法である。本実施例における芯材に樹脂被覆する工程で使用される樹脂被覆材としては、PTFE等のふっ素樹脂など、易滑性に優れた樹脂を使用することが好ましい。なお、コイル体50内の芯材先端部は樹脂被膜されていない。
【実施例10】
【0051】
本実施例も、以上の各実施例を含む本実施形態に係る医療用ガイドワイヤの製造方法に係るものである。本実施例の製造方法は、芯材(芯線)10の先端部11を縮径加工する工程と、その芯材に樹脂被覆する工程と、芯材の先端部にコイル体50を挿入する工程と、少なくともコイル体の先端部と後端部を芯材に固着して、先端部が予め切刃20を形成した放射線不透過材からなる先端チップ13の切刃切削回転方向とコイル体の縮径方向と一致させる方向に先端チップを芯材とコイル体に固着する工程、又は、先端部に放射線不透過材からなる先端チップを芯材とコイル体に固着コイル体に固着した後、先端チップ切刃切削回転方向とコイル体の縮径方向と一致させる方向に先端チップの切刃を形成する工程からなる医療用ガイドワイヤの製造方法である。本実施例においても、芯材に樹脂被覆する工程で使用される樹脂被覆材として、PTFE等のふっ素樹脂など、易滑性に優れた樹脂を使用することが好ましい。なお、コイル体50内の芯材先端部は、上記の実施例と同様、樹脂被膜されていない。
【実施例11】
【0052】
実施例11は、医療用ガイドワイヤと医療用チューブ体との組立体に係るものであり、以上説明した各実施例に係る医療用ガイドワイヤとこれに外装嵌合される医療用チューブ体との組立体であって、先端部が柔軟性で後端部が先端部より剛性を有して、先端外径が1mm以下の中空状医療用チューブ体内に前述の各実施例のいずれかによる医療用ガイドワイヤを挿入して穿孔させることを特徴とするものである。図24は本実施形態に係る医療用ガイドワイヤとこれに外装嵌合される医療用チューブ体との組立体を用いてバルーンカテーテルを穿孔する状態を示す部分断面図である。前述の実施例のいずれかに係るガイドワイヤ100とマイクロカテーテル等の医療用チューブ体との組立体を用いることにより、体内から回収不能状態となったバルーンカテーテルを極めて容易に回収することが可能になる。
【0053】
医療現場では、図24に示すように、病変部へガイドワイヤを貫通した後、ステントを外装させたバルーンカテーテルを用いて狭窄部をステントとともに拡径し、ここにステントを留置することにより拡径治療が行われる。このようなステントを用いる拡径治療においては、近年、薬剤溶出型ステントの登場により、バルーン拡径後、バルーン外周部に装着した、薬剤を塗布したステントが何らかの原因によりバルーン部に接着・固着状態となることがある。このようなステントの接着・固着が生じると、拡張したステントに引っ張られてバルーン部が収縮しないことがある。また、生理食塩水等を用いてバルーン部を拡大・縮小しているが、その場合にバルーン部が縮小できない状態になると、これを体内から体外へ回収できなくなるため、外科手術が必要になることがある。その場合、患者の体力の問題もあり、術者は緊急対応を迫られる。
【0054】
かかる場合には、医療用チューブ体をバルーンカテーテルのバルーン部近傍まで導入し、図24に示すように、医療用チューブ体の細径先端部より本実施形態に係るガイドワイヤを突出させることにより、バルーン部を穿孔して強制的に収縮させることができる。これにより、バルーン部回収することができる。この場合、図15に示すような実施例3によるガイドワイヤ、すなわち先端横断面が「ナイフエッジ」と「外周切刃」を併用した三角形状となっているガイドワイヤ100を用いることが特に好ましい。その理由は、先端横断面が「ナイフエッジ」と「外周切刃」を併用した三角形状になっているため、切り裂き効果による穿刺押し込み能力及び穿孔能力が格段に高いこと、並びに先端チップ13の横断面積が小さいいことから、仮に血管を穿孔貫通した場合でも穿孔径が小さく早期止血が容易であることにある。
【0055】
なお、以上の実施の形態ではバルーン部の穿孔を例に挙げて説明したが、完全閉塞病変部を穿孔・貫通させる手段として、本発明による医療用ガイドワイヤと医療用チューブ体との組立体を用いてもよい。
【0056】
上記医療用チューブ体は、ガイドワイヤの押し込み力の反力を支える構造体として機能する。この機能を満たすチューブ体として、先端部が柔軟で後端側が剛性の高い「先柔後剛」の特性を有する細径の中空チューブ体が使用される。実用上は、先端外径が概ね1mm以下の細径の中空チューブ体が使用される。このような細径の医療用チューブ体には、各種のチューブ体が含まれる。例えば、先端部から後端部へ軟質樹脂から硬質樹脂へ徐変増大した中空チューブ体、軟・中・硬の樹脂チューブ体を組合せて加熱収縮させた同チューブ体、樹脂被覆を多層形態にして樹脂層間に金属性編組を介在させた中空チューブ体、並びに、多条の線材をコイル状に巻回成形して先端側を縮径加工させた細径の「先柔後剛」の特性を有する中空チューブ体などが含まれる。
【0057】
以上の説明した本発明の実施形態によれば、ガイドワイヤの柔軟性を損なうことなく、穿孔力及び貫通力を向上させることができ、血管内病変部に高度な閉塞部が生じた場合でも、これを容易に削り落とすことができ、術者の意図する方向へ容易に穿孔・穿刺することができる医療用ガイドワイヤ及びその製造方法、並びに、医療用ガイドワイヤと医療用チューブ体との組立体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態に係る医療用ガイドワイヤの要部である先端部の縦断面図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。
【図2】実施例1において先端チップにチゼル幅Aを有しねじれ角を有しないドリル状の切刃が形成された第1構造例に係る医療用ガイドワイヤを示し、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。
【図3】実施例1において先端チップにチゼル幅及びねじれ角を有するドリル状の切刃が形成された第2構造例に係る医療用ガイドワイヤを示し、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。
【図4】実施例1において先端チップにチゼル幅及びねじれ角を有しないドリル状の切刃が形成された第3構造例に係る医療用ガイドワイヤを示し、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。
【図5】実施例1において先端チップにチゼル幅がゼロでねじれ角を有するドリル状の切刃が形成された第4構造例に係る医療用ガイドワイヤを示し、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。
【図6】実施例1において先端チップの片側にチゼル幅及びねじれ角を有するドリル状の切刃が形成された第5構造例に係る医療用ガイドワイヤを示し、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。
【図7】一実施形態に係る医療用ガイドワイヤにより血管内の硬い石灰片が散在する領域を穿孔する状態を示す断面図である。
【図8】一実施形態に係る医療用ガイドワイヤにより血管内の完全閉塞部を穿刺・貫通させる状態を示す断面図である。
【図9】実施例1に係る医療用ガイドワイヤにおいてチゼル幅を有する切刃の切削抵抗とチゼル幅を有しない切刃の切削抵抗を比較して示す説明図である。
【図10】実施例1の各構造例の切刃の先端部の横断面積を比較して示す図表である。
【図11】医療用ガイドワイヤの切刃の刃面の先端角の大小と切刃の刃面が受ける回転力の大小との関係を説明するための模式図である。
【図12】図3に示す実施例1の第2構造例のねじれ角を有する切刃によって切削組織片を後方へ搬送・排出する状態を示す部分側面図である。
【図13】実施例2に係る医療用ガイドワイヤの第1構造例の要部を示す図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。
【図14】実施例2に係る医療用ガイドワイヤの第2構造例の要部を示す図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。
【図15】実施例3に係る医療用ガイドワイヤの要部を示す図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。
【図16】実施例4に係る医療用ガイドワイヤの第1構造例の要部を示す図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。
【図17】実施例4に係る医療用ガイドワイヤの第2構造例の要部を示す図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。
【図18】本発明による医療用ガイドワイヤの実施例1〜4の各切刃構造と従来構造の先端部の横断面積を比較して示す図表である。
【図19】実施例4において対称構造のワニ口切刃を回転させる場合と非対称構造のワニ口切刃を回転させる場合の穿孔位置及び穿孔径を対比して示す説明図である。
【図20】実施例5に係る医療用ガイドワイヤの要部である先端部を示す図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)中の線(b)−(b)から見た正面図である。
【図21】実施例6に係る医療用ガイドワイヤの要部である先端部を示す縦断面図である。
【図22】実施例7に係る医療用ガイドワイヤの第1構造例の要部である先端部を示す縦断面図である。
【図23】実施例7に係る医療用ガイドワイヤの第2構造例の要部である先端部を示す縦断面図である。
【図24】一実施形態に係る医療用ガイドワイヤと医療用チューブ体との組立体を用いてバルーンカテーテルを穿孔する状態を示す部分断面図である。
【図25】従来の医療用ガイドワイヤの血管内の高度閉塞部における問題を示す部分断面図である。
【図26】従来の医療用ガイドワイヤの血管の分岐部における問題を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0059】
10 芯線(芯材)
11 芯線の先端部
12 芯線の基体部
13 先端チップ
15 フランジ
20 切刃
50 コイルスプリング体
100 医療用ガイドワイヤ
A 切刃のチゼル幅
R、r 抵抗
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線の先端部の所定長さ範囲に縮径部を形成し、該縮径部の先端に先端チップを固着し、前記縮径部にコイルスプリング体を外装固着してなる医療用ガイドワイヤにおいて、
前記先端チップの外周部に先端側へ徐変縮径する切刃を形成することを特徴とする医療用ガイドワイヤ。
【請求項2】
前記先端チップの切刃がドリル状刃面を有することを特徴とする請求項1に記載の医療用ガイドワイヤ。
【請求項3】
前記ドリル状刃面がチゼル幅なしであることを特徴とする請求項2に記載の医療用ガイドワイヤ。
【請求項4】
前記ドリル状刃面が前記先端チップの横断面の片側部分に形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の医療用ガイドワイヤ。
【請求項5】
前記ドリル状刃面がねじれ角を有することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の医療用ガイドワイヤ。
【請求項6】
前記先端チップの切刃が横断面の片側に形成された山形切刃であって断面形状が扇形又は切欠円形状であり、先端側へ徐変縮小していることを特徴とする請求項1に記載の医療用ガイドワイヤ。
【請求項7】
前記先端チップの切刃の横断面が三角形を形成してナイフエッジ部を有し、かつ先端側へ徐変縮小していることを特徴とする請求項1に記載の医療用ガイドワイヤ。
【請求項8】
前記先端チップの切刃がワニ口形状であることを特徴とする請求項1に記載の医療用ガイドワイヤ。
【請求項9】
前記先端チップの切刃の切削回転方向が該先端チップに固着される前記コイルスプリング体を捩じったときの縮径方向と同じであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の医療用ガイドワイヤ。
【請求項10】
前記先端チップに固着されるコイルスプリング体が多条線からなることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の医療用ガイドワイヤ。
【請求項11】
前記先端チップに固着されるコイルスプリング体は軸方向のテーパ形状を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の医療用ガイドワイヤ。
【請求項12】
芯線の先端部に固着した先端チップの外周部に先端側へ徐変縮径する切刃を形成した医療用ガイドワイヤの製造方法において、
芯材の先端部を縮径加工する工程と、その芯材に樹脂を被覆する工程と、芯材の先端部にコイルスプリング体を挿入する工程と、少なくともコイルスプリング体の後端部を芯材に固着する工程と、先端部に切刃が形成された放射線不透過材からなる先端チップを芯材とコイルスプリング体に固着する工程と、を有することを特徴とする医療用ガイドワイヤの製造方法。
【請求項13】
芯線の先端部に固着した先端チップの外周部に先端側へ徐変縮径する切刃を形成した医療用ガイドワイヤの製造方法において、
芯材の先端部を縮径加工する工程と、その芯材に樹脂を被覆する工程と、芯材の先端部にコイルスプリング体を挿入する工程と、少なくともコイルスプリング体の後端部を芯材に固着する工程と、芯材の先端部に放射線不透過材からなる先端チップを固着した後に該先端チップに切刃を形成する工程と、を有することを特徴とする医療用ガイドワイヤの製造方法。
【請求項14】
芯線の先端部に固着した先端チップの外周部に先端側へ徐変縮径する切刃を形成した医療用ガイドワイヤの製造方法において、
芯材の先端部を縮径加工する工程と、その芯材に樹脂を被覆する工程と、芯材の先端部にコイルスプリング体を挿入する工程と、少なくともコイルスプリング体の後端部を芯材に固着する工程と、先端部に切刃が形成された放射線不透過材からなる先端チップをその切刃切削回転方向とコイルスプリング体の捩じり縮径方向とを一致させて芯材に固着する工程と、を有することを特徴とする医療用ガイドワイヤの製造方法。
【請求項15】
芯線の先端部に固着した先端チップの外周部に先端側へ徐変縮径する切刃を形成した医療用ガイドワイヤの製造方法において、
芯材の先端部を縮径加工する工程と、その芯材に樹脂を被覆する工程と、芯材の先端部にコイルスプリング体を挿入する工程と、少なくともコイルスプリング体の後端部を芯材に固着する工程と、芯材の先端部に放射線不透過材からなる先端チップを固着した後に該先端チップに切刃切削回転方向とコイルスプリング体の捩じり縮径方向が一致する方向に切刃を形成する工程と、を有することを特徴とする医療用ガイドワイヤの製造方法。
【請求項16】
先端部が後端部よりも柔軟性を有する、先端外径が1mm以下の中空状医療用チューブ体内に請求項1〜11のいずれか1項に記載の医療用ガイドワイヤを挿入して穿孔させることを特徴とする医療用ガイドワイヤと医療用チューブ体との組立体。
【請求項1】
芯線の先端部の所定長さ範囲に縮径部を形成し、該縮径部の先端に先端チップを固着し、前記縮径部にコイルスプリング体を外装固着してなる医療用ガイドワイヤにおいて、
前記先端チップの外周部に先端側へ徐変縮径する切刃を形成することを特徴とする医療用ガイドワイヤ。
【請求項2】
前記先端チップの切刃がドリル状刃面を有することを特徴とする請求項1に記載の医療用ガイドワイヤ。
【請求項3】
前記ドリル状刃面がチゼル幅なしであることを特徴とする請求項2に記載の医療用ガイドワイヤ。
【請求項4】
前記ドリル状刃面が前記先端チップの横断面の片側部分に形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の医療用ガイドワイヤ。
【請求項5】
前記ドリル状刃面がねじれ角を有することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の医療用ガイドワイヤ。
【請求項6】
前記先端チップの切刃が横断面の片側に形成された山形切刃であって断面形状が扇形又は切欠円形状であり、先端側へ徐変縮小していることを特徴とする請求項1に記載の医療用ガイドワイヤ。
【請求項7】
前記先端チップの切刃の横断面が三角形を形成してナイフエッジ部を有し、かつ先端側へ徐変縮小していることを特徴とする請求項1に記載の医療用ガイドワイヤ。
【請求項8】
前記先端チップの切刃がワニ口形状であることを特徴とする請求項1に記載の医療用ガイドワイヤ。
【請求項9】
前記先端チップの切刃の切削回転方向が該先端チップに固着される前記コイルスプリング体を捩じったときの縮径方向と同じであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の医療用ガイドワイヤ。
【請求項10】
前記先端チップに固着されるコイルスプリング体が多条線からなることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の医療用ガイドワイヤ。
【請求項11】
前記先端チップに固着されるコイルスプリング体は軸方向のテーパ形状を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の医療用ガイドワイヤ。
【請求項12】
芯線の先端部に固着した先端チップの外周部に先端側へ徐変縮径する切刃を形成した医療用ガイドワイヤの製造方法において、
芯材の先端部を縮径加工する工程と、その芯材に樹脂を被覆する工程と、芯材の先端部にコイルスプリング体を挿入する工程と、少なくともコイルスプリング体の後端部を芯材に固着する工程と、先端部に切刃が形成された放射線不透過材からなる先端チップを芯材とコイルスプリング体に固着する工程と、を有することを特徴とする医療用ガイドワイヤの製造方法。
【請求項13】
芯線の先端部に固着した先端チップの外周部に先端側へ徐変縮径する切刃を形成した医療用ガイドワイヤの製造方法において、
芯材の先端部を縮径加工する工程と、その芯材に樹脂を被覆する工程と、芯材の先端部にコイルスプリング体を挿入する工程と、少なくともコイルスプリング体の後端部を芯材に固着する工程と、芯材の先端部に放射線不透過材からなる先端チップを固着した後に該先端チップに切刃を形成する工程と、を有することを特徴とする医療用ガイドワイヤの製造方法。
【請求項14】
芯線の先端部に固着した先端チップの外周部に先端側へ徐変縮径する切刃を形成した医療用ガイドワイヤの製造方法において、
芯材の先端部を縮径加工する工程と、その芯材に樹脂を被覆する工程と、芯材の先端部にコイルスプリング体を挿入する工程と、少なくともコイルスプリング体の後端部を芯材に固着する工程と、先端部に切刃が形成された放射線不透過材からなる先端チップをその切刃切削回転方向とコイルスプリング体の捩じり縮径方向とを一致させて芯材に固着する工程と、を有することを特徴とする医療用ガイドワイヤの製造方法。
【請求項15】
芯線の先端部に固着した先端チップの外周部に先端側へ徐変縮径する切刃を形成した医療用ガイドワイヤの製造方法において、
芯材の先端部を縮径加工する工程と、その芯材に樹脂を被覆する工程と、芯材の先端部にコイルスプリング体を挿入する工程と、少なくともコイルスプリング体の後端部を芯材に固着する工程と、芯材の先端部に放射線不透過材からなる先端チップを固着した後に該先端チップに切刃切削回転方向とコイルスプリング体の捩じり縮径方向が一致する方向に切刃を形成する工程と、を有することを特徴とする医療用ガイドワイヤの製造方法。
【請求項16】
先端部が後端部よりも柔軟性を有する、先端外径が1mm以下の中空状医療用チューブ体内に請求項1〜11のいずれか1項に記載の医療用ガイドワイヤを挿入して穿孔させることを特徴とする医療用ガイドワイヤと医療用チューブ体との組立体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2007−44388(P2007−44388A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233998(P2005−233998)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(503338228)株式会社エフエムディ (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(503338228)株式会社エフエムディ (5)
【Fターム(参考)】
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