説明

医療用プローブの2段階較正

【課題】診察および治療のための侵襲性システムに使用するプローブおよびセンサーの較正装置および方法を提供する。
【解決手段】患者の体内に挿入するプローブは、センサーと、センサーに関する第1較正データを格納するマイクロ回路と、プローブの近位端にある第1コネクターとを含む。プローブアダプターは、第1コネクターに結合する第2コネクターと、センサー信号を処理する信号処理回路と、信号処理回路に関する第2較正データを格納する第2マイクロ回路とを含む。アダプター内のマイクロコントローラーが、第1および第2較正データを受信し総合較正データを演算処理する。アダプターは、制御卓上の第4コネクターに結合する第3コネクターを含む。制御卓は、プローブアダプターにより供給された総合較正データを使って処理された信号を解析する信号解析回路装置を含む。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は医療の診察および治療のための侵襲性(invasive)システムに関し、特にそのようなシステムに使用するプローブおよびセンサーの較正(calibration)に関する。
【0002】
〔発明の背景〕
体内にあるプローブの位置を追跡することは多くの医療処置に必要である。例えば、体内にある物体の位置座標(位置および/または配向)を磁界の検出に基づいて決定するシステムがいろいろと開発されてきている。これらのシステムは、物体に取付けたセンサーを使って外部で発生した磁界の相対的な強度を測定しそれらの測定値から物体の位置を得るものである。(本特許出願および特許請求の範囲で使われる用語「位置(position)」は、位置座標(location coordinates)、角方位座標(angular orientation coordinates)のいずれか一方、または両方を含む空間座標のすべての組み合わせを言う。)磁界に基づく位置検出方法は、例えば、ベン-ハイム(Ben-Haim)に対する米国特許第5,391,199号、第5,443,489号および第6,788,967号、ベン-ハイム(Ben-Haim)他に対する米国特許第6,690,963号、エイカー(Acker)他に対する米国特許第5,558,091号、アッシュ(Ashe)に対する米国特許第6,172,499号、およびゴバリ(Gobari)に対する米国特許第6,177,792号に開示されており、これら特許の開示は参照して本明細書に組み込まれる。
【0003】
正確な位置測定が要求される場合は、プローブを予め較正すればよい。典型的な較正方法が、オサドシー(Osadchy)他に対する米国特許第6,266,551号に記載されており、その開示は参照して本明細書に組み込まれる。この特許に記載の実施例では、体内にあるカテーテルの位置および配向を決定するのに用いる装置は、カテーテルの遠位端に隣接する複数のコイルを備えている。カテーテルは、その近位端に隣接して装置の較正に関する情報を格納する電子マイクロ回路をさらに含む。マイクロ回路はEEPROM、EPROM、PROM、フラッシュROM、または不揮発性RAMなどの読み/書きメモリ素子を含み、情報はディジタル型式で記憶される。較正情報にはカテーテル遠位先端の上記コイルに対する相対的変位に関連する情報が含まれている。較正情報にはコイルの直交度からの偏移(deviation)に関するデータ、またはコイルのそれぞれの利得に関するデータ、あるいはこれらデータの組み合わせも含む。
【0004】
オサドシー(Osadchy)他に対する米国特許第6,370,411号には、制御卓に接続するためのカテーテル組立体が記載されており、この特許の開示は参照して本明細書に組み込まれる。そのカテーテル組立体は二つの部品、即ち患者の体内に挿入するできるだけ複雑でないように構成したカテーテル、およびカテーテルの近位端と制御卓との間を接続する接続ケーブルを具備する。カテーテルは、カテーテル特有の較正データを格納できるマイクロ回路を含んでいる。ケーブルはカテーテルからの情報を受けそれを適当な形で制御卓に送るアクセス回路を含んでいる。ケーブルがある特定のモデルまたはタイプのすべてのカテーテルに使用でき、従ってカテーテルを取り替えた時にケーブルを取り替える必要のないことが好ましい。ケーブルは、ケーブルに関連した1つまたは複数モデルに特有の情報を記憶する追加のマイクロ回路を含む。この追加のマイクロ回路はアクセス回路用およびケーブル内の増幅器用の較正情報を含んでもよい。増幅器の較正情報は、例えばそれらのゼロゲイン(zero-gain)、DCオフセット(DC offset)および直線性(linearity)を含んでもよい。
【0005】
〔発明の分野〕
本発明の実施例は、侵襲性医療用プローブに関する較正情報の発生、記憶および演算処理する便利な方法を提供する。
【0006】
本明細書に開示する実施例では、プローブは適当な結合用のコネクターを介してアダプターに接続し、アダプターは別の結合用のコネクターを介して制御卓に接続する。プローブはセンサーおよびセンサーの較正データを格納するプローブマイクロ回路を含む。アダプターはセンサーから出力される信号を処理する信号処理回路を含む。アダプターは信号処理回路に関する較正データを格納するアダプター独自のマイクロ回路を含む。アダプター内のマイクロコントローラーは、両方のマイクロ回路からのデータに基づいて総合較正データ(combined calibration data)を演算処理する。制御卓内の信号解析回路は処理された信号を受信し、プローブアダプターからの総合較正データを使って受信信号を解析する。
【0007】
典型的な実施例では、センサーは位置信号を出力し、信号処理回路はその位置信号を増幅する増幅器を含む。制御卓は総合較正データを使って、センサーおよび増幅器の双方に起因する偏移を修正したプローブの正確な位置座標を算出する。アダプターは、ハードウェアおよびソフトウェアの構成の双方の面で、センサーおよび増幅器の双方を含み、カテーテルのための全較正データを格納する単一のマイクロ回路を有する従来のプローブと適合するように形成されている。従って、制御卓はハードウェアまたはソフトウェアを変更することなく従来のプローブおよびアダプターを介して制御卓に接続するプローブの双方に使用できる。
【0008】
従って、本発明の実施例による医療装置は、
近位端および遠位端を有し、患者の体内に挿入するように構成された、プローブであって、このプローブは、センサー信号を出力するセンサーと、このセンサーに関する第1較正データを格納する、第1マイクロ回路と、プローブの近位端に設けられており、少なくともセンサーに電気的に連結されている、第1コネクターと、を含む、プローブと、
プローブアダプターであって、第1コネクターと結合するように構成された、第2コネクターと、センサー信号を処理するように連結され、処理された信号を出力する、信号処理回路と、この信号処理回路に関する第2較正データを格納する、第2マイクロ回路と、第1および第2マイクロ回路から第1および第2較正データを受信し、第1および第2較正データに基づいて総合較正データを演算処理するように構成された、マイクロコントローラーと、少なくとも信号処理回路に電気的に連結された、第3コネクターと、を含む、プローブアダプターと、
制御卓であって、第3コネクターと結合するように構成された、第4コネクターと、第4コネクターから少なくとも処理された信号を受信するように連結され、かつ、プローブアダプターから供給された総合較正データを使って処理された信号を解析するように構成された、信号解析回路装置と、を含む、制御卓と、
を具備する。
【0009】
いくつかの実施例においては、センサーは、位置センサーを含み、信号解析回路装置は、処理された信号を解析してプローブの遠位端の座標を決定するよう動作する。ある実施例では、位置センサーは、患者の体に外部から加えられた磁界に応答してセンサー信号を発生するよう動作する。
【0010】
本明細書に開示した実施例では、プローブは患者の心臓に挿入するためのカテーテルを含む。
【0011】
またいくつかの実施例では、プローブは第1のタイプのプローブであり、処理された信号は、第1処理信号であり、また制御卓は、第2のタイプのプローブと協働してさらに動作でき、この第2のタイプのプローブは、第4コネクターに結合するように、かつ、少なくとも第2処理信号を第4コネクターに伝達するように構成され、ならびに、制御卓は、信号解析回路装置が第2処理信号を解析する際にアクセスする予め決められたアドレス空間に第3較正データを格納する記憶回路を含み、マイクロコントローラーは、処理回路(processing circuitry)によって読み出されるように総合較正データを予め決められたアドレス空間に配置するよう動作する。通常、制御卓は、プローブのタイプに応じてハードウェアまたはソフトウェアを変更することなく、第1および第2のタイプのプローブの双方と協働して動作できる。
【0012】
ある実施例では、第1較正データは、センサーの感度およびプローブにより生じた位相偏移(phase deviation)を示し、信号処理回路は、増幅器を含み、第2較正データは、増幅器の利得および増幅器により生じた第2の位相偏移を示す。
【0013】
通常、少なくとも第1および第2コネクターは、磁気干渉に対するシールドを備えている。
【0014】
本発明の実施例による侵襲性医療処置をおこなう方法は、
プローブを供給するステップであって、このプローブは、近位端および遠位端を有し、センサー信号を出力するセンサーと、このセンサーに関する第1較正データを格納する、第1マイクロ回路と、プローブの近位端に設けられており、少なくともセンサーに電気的に連結されている、第1コネクターと、を含む、ステップと、
プローブの第1コネクターを、プローブアダプターの第2コネクターに接続するステップであって、このプローブアダプターは、センサー信号を処理するように連結され、処理された信号を出力する、信号処理回路と、この信号処理回路に関する第2較正データを格納する、第2マイクロ回路と、少なくとも信号処理回路に電気的に連結された、第3コネクターと、を含む、ステップと、
アダプター内のマイクロコントローラーを使用し、第1および第2マイクロ回路からそれぞれ第1および第2較正データを読み出し、第1および第2較正データに基づいて総合較正データを演算処理する、ステップと、
アダプターの第3コネクターを、信号解析回路装置を含む制御卓の第4コネクターに接続する、ステップと、
プローブを患者の体内に挿入する、ステップと、
信号解析回路装置を使用し、アダプターから第4コネクターを介して少なくとも処理された信号を受信し、プローブが患者の体内にある間、プローブアダプターからの総合較正データを使って処理された信号を解析する、ステップと、
を含む。
【0015】
本発明は、図面を参照して次に本発明実施例について詳細に説明するところから十分理解されるであろう。
【0016】
〔発明の詳細な説明〕
図1は、本発明の1実施例による心臓カテーテル法のシステム20の略線概要図である。システム20は、例えばバイオセンス・ウェブスター社(Biosense Webster Inc.)(アメリカ合衆国カリフォルニア州ダイアモンド・バー所在)製造のCARTO(商標)システムに基づくものである。このシステムは、カテーテル22としての侵襲性プローブと制御卓24とを具備している。カテーテルは、通常使い捨て部品としてコネクター26と共にユーザーに供給され、そのコネクターは通常レセプタクルである制御卓の対応するコネクター28に差し込むプラグである。本特許出願および特許請求の範囲において、用語「コネクター」は、従来通りはんだ付けまたはかしめ(crimping)などの技術的な操作なしで簡単に着脱できる任意の類の電気プラグまたは同様な装置を意味するのに使っている。
【0017】
カテーテル22は、遠位端部30が脈管系を経由して心臓腔に達するように構成された挿入管(insertion tube)を含む。通常、カテーテルの遠位端部は、カテーテルの遠位先端34の近傍に治療および/または診断の機能を有する機能素子32を備えている。例えば、機能素子32は、電極または超音波トランスデューサーを含んでもよい。
【0018】
カテーテル22は、遠位端部30の位置座標を決定するのに使う位置センサー36も内蔵している。CARTOシステムでは、位置センサーは、外部から加えられる磁界に応答して信号を出力する三つのコイルを含む。これらコイルからの信号は、カテーテル内の信号処理回路48により増幅される。通常、回路48は、カテーテルを操作するための制御40も含むカテーテルのハンドル38に便宜上配置されている。回路48からの増幅された信号は、ケーブル42を通りコネクター26および28を介して制御卓24に送られる。制御卓は信号を処理して遠位先端34の座標を決定し、その結果をユーザーインターフェイススクリーン44上に表示する。ユーザーはキーボードなどのユーザー入力装置46を介して制御卓とやり取りをすることができる。この種の磁気位置検出システムの理論と操作は、発明の背景で言及している特許に記述されている。
【0019】
信号処理回路48、ケーブル42、およびコネクター26は、高価な部品である。システム20の使い捨て部分のコストを下げるために、これらの部品を殺菌消毒しないで複数回使用できるように構成した代替カテーテル50を作製する。カテーテル50は、アダプター51の対応するコネクター54に結合するコネクター52を含む。カテーテルは、以下に述べる機能を有する終端回路(termination circuit)56を備えている。アダプター51は、ケーブル42およびコネクター26に加えてセンサー36からの信号を増幅する信号処理回路装置58を含む。この後者のコネクターは、カテーテル50を(アダプター51と協働して)システム20のカテーテル22と相互に交換して使用できるようにコネクター28と互換性のあるプラグである。通常、カテーテル50は使い捨ての装置であるが、アダプター51は再利用できる。図1に示す実施例では、コネクター52および54は、一種の「分割ハンドル(split handle)」を形成するように機械的に構成されるが、他の機械的形状構成を使って同じ電気的な機能を得ることができる。例えば、一代替実施例では、回路装置58の幾つかまたはすべて部品をコネクター26の中またはその近傍に配置する。
【0020】
図2Aは本発明の実施例によるカテーテル22および制御卓24の詳細を略線的に示すブロック図である。センサー36は相互に直交する軸に沿って配置された三つの非同心コイル60、62、および64を含む。コイルワイヤー66はケーブル68を介して信号処理回路48内の増幅器72に接続されている。通常、ケーブルシールド70が回路48内の適当なアース接続(図示せず)に接地されている。増幅器72により増幅された信号はケーブル42を通りコネクター26および28を介して制御卓24内のフロントエンド回路(front end circuit)74に送られる。フロントエンド回路は、通常信号を濾波しディジタル化して、そのディジタルサンプルを中央処理装置(CPU)76に送り、CPUは遠位先端34の位置座標および方位座標を算出するためにそのサンプルを演算処理する。
【0021】
カテーテル22は、カテーテルの遠位先端に対するコイル60、62、64の正確な位置および傾斜角(angular skew)のみならずコイル60、62、64および増幅器72の総合感度および位相オフセットを決定するために工場で較正される。つぎに、較正データは、ハンドル38内の電気的消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)などのマイクロ回路メモリ78に格納される。その後カテーテルを診療のため制御卓24に接続したとき、CPU76がケーブル42を通るバス80を介してメモリ78から較正データを読み取る。通常、較正データは予め決められたフォーマットに配列され、CPUは、メモリの或るアドレスまたはアドレス範囲からデータを読み出すようにプログラムされている。CPUは、センサー信号に基づいてカテーテルの先端の正確な位置座標を決定するのに較正データを使用する。較正方法および較正パラメータを格納するメモリの使用については前述した米国特許第6,266,551号に詳細に述べられている。
【0022】
図2Bは本発明の実施例によるカテーテル50、アダプター51、および制御卓24の詳細を略線的に示すブロック図である。カテーテル50内のセンサー36は、カテーテル22内のセンサーと同一であり、両方のカテーテルは上述したものと同じ制御卓24と共に動作する。カテーテル50内のケーブル68は、コネクター52のコネクターピン82に接続している。これらのピンは、コネクター54のレセプタクル84に結合している。コネクター52および54も通常カテーテル50内の回路を接地するためのアース接続86を含む。通常、コネクター52および54は、ピン82上の微弱信号に対する磁気干渉を減少するために、例えばミューメタル(μ-metal)を使った磁気シールド85を備えている。
【0023】
カテーテル50内のセンサーコイル60、62、64およびアダプター51内の増幅器72は共にシステムの総合感度および位相オフセットに寄与する。アダプターは多くの異なるカテーテルに使用できるので、所定のカテーテルは、任意のアダプターでも使うことができ、センサーコイルおよび増幅器はそれぞれ別々に較正される。換言すれば、別々の較正データを各カテーテルおよび各アダプターについて決める必要がある。カテーテルとアダプターを現場で一緒に使用するときに、CPU76が増幅したセンサー信号に与える正確な総合較正係数を決定するために、所定のカテーテルおよびアダプターに対する適正な較正データが併用される。
【0024】
しかし、もし制御卓24がもともと一体構造のカテーテル(前図に示すようなカテーテル22)と動作するように構成されている場合は、制御卓をカテーテル内のメモリから較正係数を一組だけ受信するように配線しプログラムすればよい。上述したように、従来のカテーテルにおいては、これらの較正係数はセンサーコイルおよび増幅器の総合特性に関係する。制御卓は、別々のカテーテルおよびアダプターの較正係数を受信し使用することができない。
【0025】
この問題に対処するため、二つのメモリ88および90、即ちカテーテル50内のメモリ88およびアダプター51内のメモリ90を用いて較正データを格納する。これらのメモリはEEPROMチップ、あるいはEPROMまたはフラッシュメモリなどの他の任意適当なタイプの不揮発性メモリを含んでもよい。カテーテル内のメモリ88は、センサーコイル60、62、64に関する較正データを格納する。アダプター内のメモリ90は回路58および特に増幅器72の特性に関係する較正データを格納する。
【0026】
アダプター51内のマイクロコントローラー92は、メモリ88および90の両方から較正データを読み出し、一組の総合較正係数(combined set of calibration factors)を演算する。マイクロコントローラーは、カテーテル22内のメモリ78(図2A)の従来のインターフェイスをエミュレートするように、その総合較正係数を制御卓に供給する。例えば、マイクロコントローラーは、CPU76がこの目的でアクセスするようにプログラムされたのと同じメモリ90のアドレス範囲に、メモリ78内で較正係数に使用されるのと同じフォーマットで、総合較正係数を書き込んでもよい。従って、マイクロコントローラー92により演算された較正係数を制御卓24が受信し使用できるようにするのに何らの変更も必要としない。
【0027】
上述ではセンサー36を磁気位置センサーとしたが、ここに述べるシステム構成および方法は、超音波およびインピーダンスに基づく位置センサーなどの他のタイプの位置センサーとも協働して適用できる。インピーダンスに基づくシステムにおいては、例えば、カテーテルに取付けた電極と患者の体表面に置かれた電極との間のインピーダンスを測定し、位置座標をインピーダンス測定値から得る。インピーダンスに基づく位置検出方法は、例えば、2005年1月7日に出願された米国特許出願第11/030,934号ばかりでなく、ウィットカンプ(Wittkampf)に対する米国特許第5,983,126号、スワンソン(Swanson)に対する米国特許第6,456,864号、およびナルデラ(Nardella)に対する米国特許第5,944,022号にも開示されており、これらの開示はすべて参照して本明細書に組み入れる。
【0028】
さらに、ここに記載の実施例は、特に位置センサーの較正および動作に関するが、メモリ88、90およびマイクロコントローラー92は、カテーテル50あるいは他の種類のプローブで使用される他のタイプのセンサーの較正に同じ様に使うことができる。例えば、機能素子32が検出電極(sensing electrode)、化学センサー、温度センサー、圧力センサー、または、超音波トランスデューサーなどのセンサーだと仮定すると、メモリ88は、このセンサーに関する較正データを格納する。さらに、あるいは、そのメモリは、例えば米国特許出願第10/447,940号,出願人ゴバリ(Govari)(US2004/0254458 Alとして公告された)に記載してあるように位置センサーと協働して使用する超音波撮像トランスデューサーに関する較正データを格納してもよい。上記出願の記載は参照して本明細書に組み入れる。
【0029】
メモリ88および90を使って、上述の米国特許第6,266,511号に述べられているようにアクセス制御パラメータを保持することもできる。これらのパラメータには、例えば識別コード(identification code)、または、使用回数(use counter)、あるいは、使用期限(expiration time)を含むことができる。マイクロコントローラー92は、メモリ88および90に格納されているパラメータを読み出し、演算処理して、その結果をCPU76に供給することができる。もしそのパラメータが不適当な、または使用期限を過ぎたカテーテルもしくはアダプターが制御卓に接続されていることを示す場合には、CPUは、システム20が動作するのを防ぐことができる。
【0030】
図3はカテーテル50により生じた信号を較正し、演算処理する本発明の実施例による方法を図式的に示すフローチャートである。カテーテル50内のセンサー36をセンサー較正ステップ100において適当な較正セットアップ(calibration setup)を使って較正する。この目的に使用できるジグ(jig)および手順は、上述の米国特許第6,266,551号に記載されている。通常、センサー較正パラメータには既知の振幅および位相の外部から加えられた磁界に対して測定されたコイル60、62および64のそれぞれの感度および位相ずれ


が含まれる。較正パラメータは、コイル軸の直交性からの偏移ばかりでなく、カテーテル50の遠位先端34に対する各コイルの空間オフセットも含んでもよい。較正データはメモリ88に格納される。
【0031】
アダプター51内の増幅器72もアダプター較正ステップ102で較正される。この目的のために、テスト信号を増幅器の入力に(例えば、コネクター54を介して)与え、増幅器利得および位相ずれ


を決定するために増幅器出力を測定できる。これらの結果はメモリ90に格納される。
【0032】
コネクター52および54が互いに連結され、システム20に電源が投入されると、マイクロコントローラー92が、スタートアップステップ104でメモリ88および90から較正パラメータを読み出す。つぎにマイクロコントローラーは、総合パラメータ演算処理ステップ106でカテーテルおよびアダプターの総合較正パラメータを演算処理する。例えば、マイクロコントローラーは、各センサーコイルの感度値にその対応する増幅器の利得を乗算して総合感度値(combined sensitivity value)を得ることができ、かつ、センサー位相ずれを増幅器の位相ずれと合算して総合位相ずれ値を得ることができる。代わりに、より複雑な演算アルゴリズムを使ってパラメータを合成することもできる。
【0033】
マイクロコントローラー92は、総合較正パラメータ値を、CPU76が較正パラメータを見つけると期待される適切な目標アドレス空間に書き込む。例えば、メモリ90内のあるアドレス範囲をこの目的に利用できるようにしておけばよい。パラメータをこのアドレス範囲に書き込んだ後、マイクロコントローラーは、CPUがバス80を介してメモリ90から較正パラメータが読み出せるようにメモリ90の制御およびデータ線のルーティングをおこなう(routes the control and data lines of memory)。この目的のため、マイクロコントローラーは、その内部スイッチ、または、回路58内の外部スイッチ(図示せず)をセットすればよい。あるいは、マイクロコントローラーは、総合較正パラメータ値を内部メモリに退避させ、それらのパラメータ値は、CPU76の適切な目標アドレス空間にマップされ、CPUがその値を読み出そうとすると、メモリ78の動作をエミュレートできる。
【0034】
CPU76が、パラメータ読み出しステップ108でアダプター51から総合較正パラメータ値を読み出す。そしてCPUは、これらの値をカテーテル50から受信する信号を演算処理するのに用いる。システム20の動作は、カテーテル22またはカテーテル50が使用されるか否かに関係なく同じ様に進行する。
【0035】
上述の実施例は、特にある種の心臓カテーテルに関係しているが、本発明の原理は、他のタイプの侵襲性医療用プローブおよびシステムにも同様に適用できる。従って、上述の実施例は例示のもので、本発明は特に本明細書に示しかつ述べた事柄に限定されないことは理解されるであろう。むしろ、本発明の範囲には前記説明を読めば当業者が思い付きそして従来技術に開示されていない本発明の変形および変更ばかりでなく、前述した様々な特徴の組み合わせおよび部分組み合わせの両方が含まれる。
【0036】
〔実施の態様〕
(1)医療装置において、
近位端および遠位端を有し、患者の体内に挿入するように構成されたプローブであって、
センサー信号を出力する、センサー、
前記センサーに関する第1較正データを格納する、第1マイクロ回路、および、
前記プローブの近位端に設けられており、少なくとも前記センサーに電気的に連結されている、第1コネクター、
を含む、プローブと、
プローブアダプターであって、
前記第1コネクターと結合するように構成された、第2コネクター、
前記センサー信号を処理するように連結され、処理された信号を出力する、信号処理回路、
前記信号処理回路に関する第2較正データを格納する、第2マイクロ回路、
前記第1および第2マイクロ回路からそれぞれ前記第1および第2較正データを受信し、前記第1および第2較正データに基づいて総合較正データを演算処理するように構成された、マイクロコントローラー、および、
少なくとも前記信号処理回路に電気的に連結された、第3コネクター、
を含む、プローブアダプターと、
制御卓であって、
前記第3コネクターと結合するように構成された、第4コネクター、および、
前記第4コネクターから少なくとも前記処理された信号を受信するように連結されており、かつ、前記プローブアダプターから供給された前記総合較正データを使って前記処理された信号を解析するように構成された、信号解析回路装置、
を含む、制御卓と、
を具備する、装置。
(2)実施の態様1に記載の装置において、
前記センサーは、位置センサーを含み、
前記信号解析回路装置は、前記処理された信号を解析して前記プローブの前記遠位端の座標を決定するよう動作する、
装置。
(3)実施の態様2に記載の装置において、
前記位置センサーは、患者の体に外部から加えられた磁界に応答して前記センサー信号を発生するよう動作する、装置。
(4)実施の態様1に記載の装置において、
前記プローブは、患者の心臓に挿入するためのカテーテルを含む、装置。
(5)実施の態様1に記載の装置において、
前記プローブは、第1のタイプのプローブであり、前記処理された信号は、第1処理信号であり、
前記制御卓は、第2のタイプのプローブと協働してさらに動作でき、前記第2のタイプのプローブは、前記第4コネクターに結合し、少なくとも第2処理信号を前記第4コネクターに伝達するように構成され、前記制御卓は、記憶回路を含み、前記記憶回路は、前記信号解析回路装置が前記第2処理信号を解析する際にアクセスする予め決められたアドレス空間に、第3較正データを格納し、
前記マイクロコントローラーは、前記処理回路(processing circuitry)によって読み出されるように、前記総合較正データを前記予め決められたアドレス空間に配置するよう動作する、
装置。
(6)実施の態様5に記載の装置において、
前記制御卓は、プローブのタイプに応じてハードウェアまたはソフトウェアを変更することなく、前記第1および第2のタイプのプローブの双方と協働して動作できる、装置。
(7)実施の態様1に記載の装置において、
前記第1較正データは、前記センサーの感度、および前記プローブにより生じた位相偏移、を示し、
前記信号処理回路は、増幅器を含み、前記第2較正データは、前記増幅器の利得、および前記増幅器により生じた第2の位相偏移、を示す、
装置。
(8)実施の態様1に記載の装置において、
少なくとも前記第1および第2コネクターは、磁気干渉に対するシールドを備えている、装置。
(9)侵襲性医療処置をおこなう方法において、
プローブを供給するステップであって、
前記プローブは、近位端および遠位端を有し、
前記プローブは、
センサー信号を出力するセンサー、
前記センサーに関する第1較正データを格納する、第1マイクロ回路、および、
前記プローブの近位端に設けられており、少なくとも前記センサーに電気的に連結されている、第1コネクター、
を含む、
ステップと、
前記前記プローブの前記第1コネクターを、プローブアダプターの第2コネクターに接続するステップであって、
前記プローブアダプターは、
前記センサー信号を処理するように連結され、処理された信号を出力する、信号処理回路、
前記信号処理回路に関する第2較正データを格納する、第2マイクロ回路、および、
少なくとも前記信号処理回路に電気的に連結された、第3コネクター、
を含む、
ステップと、
前記アダプター内のマイクロコントローラーを使用し、前記第1および第2マイクロ回路からそれぞれ前記第1および第2較正データを読み出し、前記第1および第2較正データに基づいて総合較正データを演算処理する、ステップと、
前記アダプターの前記第3コネクターを、信号解析回路装置を含む制御卓の第4コネクターに接続するステップと、
前記プローブを患者の体内に挿入するステップと、
前記信号解析回路装置を使用し、前記アダプターから前記第4コネクターを介して少なくとも前記処理された信号を受信し、前記プローブが前記患者の体内にある間、前記プローブアダプターからの前記総合較正データを使って前記処理された信号を解析する、ステップと、
を含む、方法。
(10)実施の態様9に記載の方法において、
前記センサーは、位置センサーを含み、
前記処理された信号を解析するステップは、前記プローブの前記遠位端の座標を決定することを含む、
方法。
【0037】
(11)実施の態様10に記載の方法において、
前記位置センサーは、患者の体に外部から加えられた磁界に応答して前記センサー信号を発生するよう動作する、方法。
(12)実施の態様9に記載の方法において、
前記プローブは、患者の心臓に挿入するためのカテーテルを含む、方法。
(13)実施の態様9に記載の方法において、
前記プローブは、第1のタイプのプローブであり、前記処理された信号は、第1処理信号であり、
前記制御卓は、第2のタイプのプローブと協働してさらに動作でき、前記第2のタイプのプローブは、前記第4コネクターに結合し、少なくとも第2処理信号を前記第4コネクターに伝達するように構成され、前記制御卓は、記憶回路を含み、前記記憶回路は、前記信号解析回路装置が前記第2処理信号を解析する際にアクセスする予め決められたアドレス空間に、第3較正データを格納し、
前記総合較正データを演算処理するステップは、前記処理回路によって読み出されるように、前記総合較正データを前記予め決められたアドレス空間に配置することを含む、
方法。
(14)実施の態様13に記載の方法において、
前記制御卓は、プローブのタイプに応じてハードウェアまたはソフトウェアを変更することなく、前記第1および第2のタイプのプローブの双方と協働して動作できる、方法。
(15)実施の態様9に記載の方法において、
前記第1較正データは、前記センサーの感度、および前記プローブにより生じた位相偏移、を示し、
前記信号処理回路は、増幅器を含み、前記第2較正データは、前記増幅器の利得、および前記増幅器により生じた第2の位相偏移、を示す、
方法。
(16)実施の態様9に記載の方法において、
前記第1コネクターを前記第2コネクターに接続するステップは、少なくとも前記第1および第2コネクターを磁気干渉からシールドすることを含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例によるカテーテルをベースにしている医療システムの略線概要図である。
【図2A】本発明の実施例による図1のシステムにおけるカテーテルおよび制御卓に使用される回路装置を略線的に示すブロック図である。
【図2B】本発明の実施例による図1のシステムにおけるカテーテルおよび制御卓に使用される回路装置を略線的に示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例によるカテーテル較正方法を模式的に示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療装置において、
近位端および遠位端を有し、患者の体内に挿入するように構成されたプローブであって、
センサー信号を出力する、センサー、
前記センサーに関する第1較正データを格納する、第1マイクロ回路、および、
前記プローブの近位端に設けられており、少なくとも前記センサーに電気的に連結されている、第1コネクター、
を含む、プローブと、
プローブアダプターであって、
前記第1コネクターと結合するように構成された、第2コネクター、
前記センサー信号を処理するように連結され、処理された信号を出力する、信号処理回路、
前記信号処理回路に関する第2較正データを格納する、第2マイクロ回路、
前記第1および第2マイクロ回路からそれぞれ前記第1および第2較正データを受信し、前記第1および第2較正データに基づいて総合較正データを演算処理するように構成された、マイクロコントローラー、および、
少なくとも前記信号処理回路に電気的に連結された、第3コネクター、
を含む、プローブアダプターと、
制御卓であって、
前記第3コネクターと結合するように構成された、第4コネクター、および、
前記第4コネクターから少なくとも前記処理された信号を受信するように連結されており、かつ、前記プローブアダプターから供給された前記総合較正データを使って前記処理された信号を解析するように構成された、信号解析回路装置、
を含む、制御卓と、
を具備する、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
前記センサーは、位置センサーを含み、
前記信号解析回路装置は、前記処理された信号を解析して前記プローブの前記遠位端の座標を決定するよう動作する、
装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置において、
前記位置センサーは、患者の体に外部から加えられた磁界に応答して前記センサー信号を発生するよう動作する、装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置において、
前記プローブは、患者の心臓に挿入するためのカテーテルを含む、装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置において、
前記プローブは、第1のタイプのプローブであり、前記処理された信号は、第1処理信号であり、
前記制御卓は、第2のタイプのプローブと協働してさらに動作でき、前記第2のタイプのプローブは、前記第4コネクターに結合し、少なくとも第2処理信号を前記第4コネクターに伝達するように構成され、前記制御卓は、記憶回路を含み、前記記憶回路は、前記信号解析回路装置が前記第2処理信号を解析する際にアクセスする予め決められたアドレス空間に、第3較正データを格納し、
前記マイクロコントローラーは、前記処理回路によって読み出されるように、前記総合較正データを前記予め決められたアドレス空間に配置するよう動作する、
装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置において、
前記制御卓は、プローブのタイプに応じてハードウェアまたはソフトウェアを変更することなく、前記第1および第2のタイプのプローブの双方と協働して動作できる、装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置において、
前記第1較正データは、前記センサーの感度、および前記プローブにより生じた位相偏移、を示し、
前記信号処理回路は、増幅器を含み、前記第2較正データは、前記増幅器の利得、および前記増幅器により生じた第2の位相偏移、を示す、
装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置において、
少なくとも前記第1および第2コネクターは、磁気干渉に対するシールドを備えている、装置。
【請求項9】
侵襲性医療処置をおこなう方法において、
プローブを供給するステップであって、
前記プローブは、近位端および遠位端を有し、
前記プローブは、
センサー信号を出力するセンサー、
前記センサーに関する第1較正データを格納する、第1マイクロ回路、および、
前記プローブの近位端に設けられており、少なくとも前記センサーに電気的に連結されている、第1コネクター、
を含む、
ステップと、
前記プローブの前記第1コネクターを、プローブアダプターの第2コネクターに接続するステップであって、
前記プローブアダプターは、
前記センサー信号を処理するように連結され、処理された信号を出力する、信号処理回路、
前記信号処理回路に関する第2較正データを格納する、第2マイクロ回路、および、
少なくとも前記信号処理回路に電気的に連結された、第3コネクター、
を含む、
ステップと、
前記アダプター内のマイクロコントローラーを使用し、前記第1および第2マイクロ回路からそれぞれ前記第1および第2較正データを読み出し、前記第1および第2較正データに基づいて総合較正データを演算処理する、ステップと、
前記アダプターの前記第3コネクターを、信号解析回路装置を含む制御卓の第4コネクターに接続するステップと、
前記プローブを患者の体内に挿入するステップと、
前記信号解析回路装置を使用し、前記アダプターから前記第4コネクターを介して少なくとも前記処理された信号を受信し、前記プローブが前記患者の体内にある間、前記プローブアダプターからの前記総合較正データを使って前記処理された信号を解析する、ステップと、
を含む、方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−222617(P2007−222617A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−29560(P2007−29560)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(500520846)バイオセンス・ウェブスター・インコーポレイテッド (75)
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster, Inc.
【住所又は居所原語表記】3333 Diamond Canyon Road, Diamond Bar, California 91765, U.S.A.
【Fターム(参考)】