説明

医療用ポンプ収容ラック及びその制御方法

【課題】 PPB法による送液を行う複数の医療用ポンプの監視を行い、当該医療用ポンプに対する誤操作を低減させる医療用ポンプ収容ラックを提供する。
【解決手段】 医療用ポンプ収容ラックであって、収容された2台の医療用ポンプについて、互いに連携して動作させることが可能であるか否かを、該2台の医療用ポンプの収容位置と、設定された薬剤とに基づいて判断する手段と、連携して動作させることが可能であると判断した場合に、前記2台の医療用ポンプに対して行われる、薬剤の送液の開始指示の操作を有効にするための連携可能通知を、該2台の医療用ポンプに対して送信する手段と、を備えており、前記収容位置が隣接しており、かつ、前記設定された薬剤が、PPB法による送液に適用可能な薬剤であった場合に、連携して動作させることが可能であると判断することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の医療用ポンプを配列して収容する医療用ポンプ収容ラック及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
病院等の医療現場では、薬剤を患者の体内に投与するためのポンプとして、輸液バッグ中の薬剤を、制御された輸液速度で輸液チューブを介して注入する輸液ポンプや、シリンジ内の薬剤を、制御された輸液速度で注入するシリンジポンプ等が用いられている。
【0003】
一般に、これらの輸液ポンプやシリンジポンプ(本明細書では、これらを総称して医療用ポンプと称する)は、1種類の薬剤を送液するのに用いられる。このため、手術室や集中治療室などにおいて複数の薬剤を同時に患者に投与するためには、薬剤の種類に応じた複数の医療用ポンプが必要となってくる。
【0004】
また、輸液バックやシリンジには予め定められた量の薬剤のみ装填されており、同一種類の薬剤を連続的かつ多量に患者に投与するためには、投与する量に応じた複数の医療用ポンプを用意しておき、これらをシーケンシャルに動作させる必要がある(なお、このように、複数の医療用ポンプをシーケンシャルに動作させ、同一種類の薬剤を連続して投与する方法を、「W法」と称す)。
【0005】
更に、複数の薬剤を順次投与する場合であっても、間隔をあけることなく連続的に患者に投与するためには、予め複数の医療用ポンプを用意しておき、これらをシーケンシャルに動作させる必要がある(なお、このように、複数の医療用ポンプをシーケンシャルに動作させ、2種類の薬剤を連続して投与する方法を、「PPB法」(PPB:PairPiggyBack)と称す)。
【0006】
このように、医療現場では、一人の患者に対して複数の医療用ポンプが用いられることも多く、その場合に、医療用ポンプを机上に並べたり、床に置いたりすることは、医師等による作業の妨げになるうえ、それらを移動する際の作業負荷の増大にもつながることから、通常は、これらを配列して収容する医療用ポンプ収容ラックが利用される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−347118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、複数の医療用ポンプが医療用ポンプ収容ラックに配列して収容された場合、操作すべき医療用ポンプとは異なる医療用ポンプを誤って操作してしまうといった事態も生じえる。特に、上記W法やPPB法により複数の医療用ポンプを連携して動作させようとした場合、設定操作や動作指示操作等が通常の送液と比べて煩雑化するため、誤操作も生じやすい。
【0009】
一方で、W法やPPB法による送液の場合、連携して動作させるべき医療用ポンプそれぞれが、自ポンプに対するユーザの誤操作を監視するのみならず、連携して動作させるべき他方の医療用ポンプの動作状況についても監視しておくことが重要となってくる。他方の医療用ポンプの動作状況によっては、連携を解消させたり、動作を停止させたりする必要があるからである。
【0010】
このようなことから、医療用ポンプ収容ラックに収容された複数の医療用ポンプを用いてW法やPPB法による送液を行うにあたっては、医療用ポンプ収容ラックにて、各医療用ポンプの監視を行い、ユーザによる誤操作の防止を図る構成とすることが望ましい。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、W法またはPPB法による送液を行う複数の医療用ポンプの監視を行い、当該医療用ポンプに対するユーザの誤操作を低減させる医療用ポンプ収容ラックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明に係る医療用ポンプ収容ラックは以下のような構成を備える。即ち、
複数の医療用ポンプを配列して収容し、該収容した医療用ポンプと通信可能に接続される医療用ポンプ収容ラックであって、
収容された前記複数の医療用ポンプのうち、所定の2台の医療用ポンプについて、互いに連携して動作させることが可能か否かを、該2台の医療用ポンプそれぞれが収容された収容位置を示す情報と、該2台の医療用ポンプそれぞれに設定された薬剤情報とに基づいて判断する連携可否判断手段と、
前記連携可否判断手段において、連携して動作させることが可能であると判断した場合に、前記2台の医療用ポンプに対して行われる、薬剤の送液の開始指示の操作を有効にするための連携可能通知を、該2台の医療用ポンプに対して送信する連携可能通知送信手段とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、W法またはPPB法による送液を行う複数の医療用ポンプの監視を行い、当該医療用ポンプに対するユーザの誤操作を低減させる医療用ポンプ収容ラックを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】W法による送液を説明するための図である。
【図2】医療用ポンプ収容ラックの外観構成を示す図である。
【図3】複数の医療用ポンプが収容された医療用ポンプ収容ラックにおける制御構成を示す図である。
【図4】W法により送液を行う場合の先発ポンプ及び後発ポンプの動作、及び、その場合の医療用ポンプ収容ラック200のW法監視機能における各種処理を説明するための図である。
【図5】医療用ポンプ収容ラックにおける連携可否判断処理の詳細な流れを示すフローチャートである。
【図6】医療用ポンプ収容ラックにおける連携成立判断処理の詳細な流れを示すフローチャートである。
【図7】医療用ポンプにおける送液開始処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】PPB法による送液を説明するための図である。
【図9】複数の医療用ポンプが収容された医療用ポンプ収容ラックにおける制御構成を示す図である。
【図10】PPB法により送液を行う場合の先発ポンプ及び後発ポンプの動作、及び、その場合の医療用ポンプ収容ラックのPPB監視機能における各種処理を説明するための図である。
【図11】医療用ポンプ収容ラックにおける連携可否判断処理の詳細な流れを示すフローチャートである。
【図12】医療用ポンプ収容ラックにおける連携成立判断処理の詳細な流れを示すフローチャートである。
【図13】医療用ポンプにおける送液開始処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
[第1の実施形態]
<1.W法による送液についての説明>
はじめにW法による送液について説明する。W法は、2つの医療用ポンプをシーケンシャルに動作させることで、同一の薬剤を、その流量を変更させることなく持続して患者に送液する投与方法である。
【0017】
一般に、2つの医療用ポンプを動作させるにあたり、医療用ポンプにより送液される流量が少ない場合には、2台目(後発ポンプ)の医療用ポンプの送液の立ち上がりが遅くなる。W法は、このような送液の立ち上がりの遅れに伴う流量の変動を回避すべく、1台目のポンプ(先発ポンプ)の送液が終了してからではなく、終了する少し前から2台目のポンプ(後発ポンプ)の送液を開始させるものである。
【0018】
W法による送液では、2台の医療用ポンプによる合算流量はほぼ一定となるように制御されるとともに、最終的に先発ポンプが送液を終了した時点で、後発ポンプの流量が連携開始時点の流量となるように制御される。なお、合算流量の制御はこれに限定されず、例えば、後発ポンプの送液の立ち上がりの遅れに伴う流動変動を回避するために、連携中の2台の医療ポンプによる合算流量が基準流量を上回るように予め設定しておき、これに基づいて制御するようにしてもよい(なお、「基準流量」とは、連携開始直前の先発ポンプの流量(後発ポンプが引き継ぐ流量)をいう)。
【0019】
図1は、所定の2台の医療用ポンプ(ポンプAとポンプB)を用いてW法による送液を行う場合の、各ポンプの流量の時間変化および両ポンプの合算流量の時間変化を示す図である。
【0020】
このうち、グラフ100は先に送液を行うポンプA(先発ポンプ)の流量の時間変化を、グラフ110はポンプAの後に送液を行うポンプB(後発ポンプ)の流量の時間変化をそれぞれ示している。
【0021】
なお、グラフ100及びグラフ110において、流量を段階的に変更させていくことを「ステップ」と称し、流量の変更回数を「ステップ数」と称することとする。グラフ100及びグラフ110の例では、ステップ数は“4”である。
【0022】
なお、当該ステップ数及び各ステップの時間間隔、各ステップにおける流量(ステップ流量)は、W法テーブルとして、予め薬剤情報と対応付けて、各医療用ポンプに格納されているものとする。そして、各医療用ポンプにてユーザにより薬剤が選択され、対応するW法テーブルが読み出されることで、各医療用ポンプでは、当該読み出されたWテーブルに従って、ステップ数、各ステップの時間間隔及びステップ流量を設定する。
【0023】
また、ステップ数、各ステップの時間間隔及びステップ流量が設定されることにより、流量を段階的に変更させていく際の変更開始タイミング(連携開始タイミング)と、流量がゼロとなるタイミング(連携終了タイミング)が決定される。なお、本実施形態において、上記ステップ流量は、連携開始タイミングにおけるポンプA(先発ポンプ)の流量を100%とした場合の、割合として設定されているものとする。
【0024】
W法による送液によれば、ポンプA及びポンプBがグラフ100及びグラフ110に示す時間変化に従って制御されることで、ポンプA及びポンプBの合算流量はほぼ一定となるとともに、ポンプAの送液が終了した時点で(連携終了タイミングにおいて)、ポンプBの流量は、連携開始タイミングにおけるポンプAの流量となる(グラフ120参照)。なお、例えば、W法テーブルの最終ステップに移行する前に、ポンプAの残量がなくなってしまった場合(あるいは、ポンプAの残量が少なくなったことを通知する残量警報が発生した場合)には、ポンプBの流量はW法テーブルに関係なく、最終ステップの流量(連携開始時のポンプAの流量)に変更するよう制御され、これにより、ポンプBにおいてポンプAの流量が保たれることとなる。
【0025】
<2.医療用ポンプ収容ラックの外観構成>
次に、W法により送液を行う医療用ポンプが収容される医療用ポンプ収容ラックの外観構成について説明する。
【0026】
図2(A)は、複数の医療用ポンプが収容される医療用ポンプ収容ラック200の外観構成を示す図である。図2(A)に示すように、医療用ポンプ収容ラック200には、複数の医療用ポンプ(本例では、3台の医療用ポンプ)が縦に配列されるよう、医療用ポンプをそれぞれ1台ずつ収容するための収容部201〜203が縦方向に設けられている。
【0027】
各収容部201〜203は、前面側が開放されており、医療用ポンプを前面側から挿入できるように構成されている。また、各収容部201〜203の背面側には、医療用ポンプの収容位置に対応してポート211〜213(図2(A)では、ポート211のみ図示)が配置されている。複数のポート211〜213の各々は、医療用ポンプと接続可能なコネクタにより形成されており、各医療用ポンプは各ポート211〜213を介して医療用ポンプ収容ラック200と通信可能に接続される。なお、ポート211〜213には、縦に配列された収容位置の上から順に#1、#2、#3という識別番号が割り当てられているものとする。
【0028】
図2(B)は、複数の医療用ポンプが収容された医療用ポンプ収容ラック200の外観構成を示す図である。
【0029】
図2(B)において、医療用ポンプ(輸液ポンプ)221〜223は、紙面右側のチューブ231〜233に接続された不図示の輸液バッグ内の薬剤を、紙面左側のチューブ241〜243に接続された不図示の患者に対して送液する。
【0030】
医療用ポンプ221〜223の前面側には、各種設定及び各種動作指示を入力するための操作ボタンや、医療用ポンプ221〜223における送液状態等を表示する表示部が設けられており、ユーザは、表示部の表示を見ながら各操作ボタンを操作することで、患者への薬剤の投与を行う。
【0031】
なお、上記説明では、医療用ポンプ収容ラック200における医療用ポンプの収容台数を3台としているが、本発明はこれに限定されるものではない。また、上記説明では、医療用ポンプ収容ラック200に収容される医療用ポンプとして、輸液ポンプを例に説明したが、本発明はこれに限定されず、シリンジポンプなどの他の医療用ポンプであってもよい。
【0032】
<3.医療用ポンプシステムの制御構成>
図3は、本実施形態に係る医療用ポンプ収容ラック200と医療用ポンプ221〜223の制御構成例を示すブロック図である。医療用ポンプ収容ラック200の3つのポート211〜213は、それぞれ通信モジュール302に接続されている。通信モジュール302は、ポート211〜213を介して医療用ポンプ221〜223からの信号(データ)を受信すると、その受信したデータと受信したポートの番号(#1〜#3のいずれかのポート番号)とを制御部301に通知する。
【0033】
また、制御部301から、ポート番号とデータ(コマンド等)の対を受信すると、当該ポート番号に対応するポート211〜213に対して制御部301から受信したデータを出力する。こうして、医療用ポンプ収容ラック200の制御部301は、収容されている複数の医療用ポンプ221〜223のそれぞれと個別に通信することが可能となっている。なお、制御部301は、不図示のCPU、ROM、RAMを備えるコンピュータであり、図5、図6のフローチャートに示す処理(連携可否判断処理、連携成立判断処理)を含むW法監視機能に関する各種処理プログラムを実行する。
【0034】
一方、医療用ポンプ221において、表示部311は、たとえば液晶パネルを有し、ポンプ制御部312の制御下で各種表示を行う。操作部313は、各種設定や各種動作指示を入力する操作ボタンを含む。
【0035】
コネクタ316はポート211と接続し、医療用ポンプ221と医療用ポンプ収容ラック200との電気的な接続(通信)を実現する。なお、コネクタ316とポート211との間はケーブルを介して接続されるものとする。或いは、コネクタ316とポート211は直接的に接続されていてもよい(たとえば、医療用ポンプ221を医療用ポンプ収容ラック200に収容することでコネクタ316とポート211とが接続されるようにしてもよい)。
【0036】
ポンプ制御部312は、送液機構314を制御して、送液を制御する。医療用ポンプ221が輸液ポンプの場合、送液機構314は、たとえば送液用の複数のフィンガーを備え、複数のフィンガーが順次に輸液チューブを押すことによりチューブ内の薬液を送出するよう構成される。また、医療用ポンプ221がシリンジポンプの場合にあっては、送液機構314はシリンジを装着してその押し子を押圧する構成となる。
【0037】
なお、操作部313より入力された信号(データ)は、ポンプ制御部312、通信モジュール315を介して医療用ポンプ収容ラック200に送信され、上記W法監視機能に関する各種処理に用いられる。また、医療用ポンプ収容ラック200より送信された信号(データ)は、通信モジュール315を介して受信され、ポンプ制御部312においてW法による送液のための処理に用いられる。
【0038】
以上のような制御構成のもと、医療用ポンプ221を先発ポンプ、医療用ポンプ222を後発ポンプとして、W法による送液を行う場合の医療用ポンプ収容ラック200のW法監視機能について、以下に説明する。なお、以下では先発ポンプを“ポンプA”、後発ポンプを“ポンプB”と称して説明を行う。
【0039】
<4.W法による送液時の動作>
図4は、W法により送液を行う場合のポンプA(先発ポンプ)及びポンプB(後発ポンプ)の動作、及び、その場合の医療用ポンプ収容ラック200のW法監視機能による各種処理を説明するための図である。
【0040】
はじめに、先発ポンプと後発ポンプの決定方法について説明する。医療用ポンプ収容ラック200では、2台の医療用ポンプからW法連携予約の通知(W法可能薬剤選択の通知)を受けると、一方の医療用ポンプで既に送液が行われている場合にあっては、当該医療用ポンプを先発ポンプ(ポンプA)と認識し、もう一方の医療用ポンプに対して、後発ポンプ(ポンプB)である旨を通知する。また、両方の医療用ポンプが送液を行っていない場合には、連携予約確立後に先に送液開始通知を受けた方の医療用ポンプを先発ポンプと認識し、もう一方の医療用ポンプに対して、後発ポンプである旨を通知する。また、2台の医療用ポンプがどちらとも既に送液を行っている場合には、連携不成立である旨を両方の医療用ポンプに通知する。
【0041】
ポンプAとポンプBが決定した後、ポンプAでは、ステップS401において、投与する薬剤の選択を受け付ける。
【0042】
更に、ステップS402において、ステップS401で受け付けた薬剤に対応付けて格納されているW法テーブルを読み出し、ステップ数、各ステップの時間間隔及びステップ流量を設定する。また、ユーザにより設定された流量に基づいて、連携開始タイミング及び連携終了タイミングを決定し、設定する(つまり、W法による送液を行うために必要な各種パラメータを設定する)。
【0043】
更に、ステップS403において、W法による送液を実現するために、他の医療用ポンプ(本例では、ポンプB)と連携する旨の指示を受け付ける。
【0044】
なお、ステップS401において選択された薬剤についての情報と、ステップS403において受け付けた連携する旨の指示は、医療用ポンプ収容ラック200に送信される。
【0045】
同様に、ポンプBでは、ステップS411において、投与する薬剤の選択を受け付ける。
【0046】
更に、ステップS412において、ステップS411で受け付けた薬剤に対応付けて格納されているW法テーブルを読み出し、ステップ数、各ステップの時間間隔及びステップ流量を設定する。また、ユーザにより設定された流量に基づいて、連携開始タイミング及び連携終了タイミングを決定し、設定する(つまり、W法による送液を行うために必要な各種パラメータを設定する)。
【0047】
なお、ステップS411において選択された薬剤についての情報と、ステップS413において受け付けた連携する旨の指示は、医療用ポンプ収容ラック200に送信される。
【0048】
医療用ポンプ収容ラック200では、ステップS401、403及びステップS411、413において送信された情報に基づいて、ステップS421において、ポンプAとポンプBとを連携させることが可能であるか否かの判断を行う。
【0049】
このように、ポンプAとポンプBにおいて連携する旨の指示が選択された場合に、ポンプAとポンプBとの連携可否を、ポンプA及びポンプBより送信された情報に基づいて、医療用ポンプ収容ラック200が判断する構成とすることで、本来連携されるべきでない医療用ポンプをユーザが誤って連携対象としてしまった場合であっても、当該誤操作がユーザに報知されることとなる(つまり、W法による送液を行うためのユーザによる各種操作における誤操作を低減させることが可能となる)。なお、連携可否判断処理の詳細は後述する。
【0050】
ステップS421における連携可否判断処理の結果、連携可能であると判定された場合、医療用ポンプ収容ラック200では、ポンプA及びポンプBにその旨を通知する(連携可能通知)。
【0051】
ステップS421において通知された、連携可否判断処理の結果が、連携可能であった場合、ポンプAでは、ステップS404において、ユーザによる送液開始指示の入力を受け付ける(ユーザによる送液開始指示の操作が有効になる)。
【0052】
更に、当該指示の入力を受け付けた場合には、ステップS405において、送液が開始されるとともに、送液が開始されたことが医療用ポンプ収容ラック200に通知される。
【0053】
医療用ポンプ収容ラック200では、ステップS422において、ポンプAにより送液が開始された旨の通知をポンプAより受信すると、ポンプBにその旨を通知する。
【0054】
ポンプBでは、当該通知を受信すると、ユーザによる送液開始指示の操作を有効にする。以降、連携開始タイミングに到達するまでの間、ポンプBでは、送液開始指示の受け付けが可能となる。
【0055】
ステップS414において、ポンプBが、ユーザによる送液開始指示の入力を受け付けると、ポンプBでは、その旨を医療用ポンプ収容ラック200に通知する。
【0056】
これにより、医療用ポンプ収容ラック200では、ステップS422において、ポンプBの送液準備が完了したと認識する。
【0057】
なお、このように、ポンプAのみならずポンプBにおいてもユーザに送液開始指示を入力させる構成としたのは、患者の安全性の確保を考慮したためである。つまり、ポンプAの送液開始指示を受け付けることで、ポンプAの送液とポンプBの送液とを自動的に開始させる構成としてしまうと、ポンプAの送液開始指示が入力された後は、ユーザによってポンプBの状態が監視されることなく、ポンプBの送液が開始されてしまうこととなるからである。
【0058】
本実施形態に係る医療用ポンプ収容ラック200では、上記構成とすることで、このような事態を回避することができる。
【0059】
ステップS422において、医療用ポンプ収容ラック200では、更に、ポンプBの送液準備が完了したと認識すると、連携開始タイミングまで待機する。
【0060】
なお、この状態で、ポンプAに対して流量設定変更の指示が入力され、ポンプAの送液中の流量設定が変更されると、その旨の通知が医療用ポンプ収容ラック200に送信される(ステップS406)。この場合、医療用ポンプ収容ラック200では、ポンプAより受信した流量設定変更の通知をポンプBに対して送信する。ただし、流量設定変更の通知は、医療用ポンプ収容ラック200がその都度ポンプBに通知するように構成してもよいし、連携開始のタイミングで行う流量通知に含めて通知するように構成してもよい。
【0061】
更に、連携開始タイミングに到達し、ステップS407において、ポンプAが連携開始指示を送信すると、医療用ポンプ収容ラック200では、ステップS422において、ポンプAより送信された連携開始指示により、ポンプAとポンプBとの間の連携が成立したものと認識し、ポンプA及びポンプBに対してその旨を通知する(連携成立通知)。なお、ステップS422におけるこれらの処理(連携成立判断処理)の詳細は後述する。
【0062】
ポンプBでは、ステップS415において、医療用ポンプ収容ラック200より、流量設定変更の通知を受信すると、変更後の流量設定に基づいて、ステップ流量を設定する。更に、医療用ポンプ収容ラック200より、連携が成立した旨の通知を受信すると、送液を開始する。なお、上述したように、流量設定変更の通知は、医療用ポンプ収容ラック200がその都度ポンプBへ通知するように構成しても、あるいは、連携開始のタイミングで行う流量通知に含めて通知するように構成してもよいが、連携開始のタイミングで行う流量通知に含めて通知する場合にあっては、ポンプBは、当該流量通知を受けて、ステップ流量の設定を行い、送液を開始することとなる。なお、ポンプBにおけるこれらの処理(送液開始処理)の詳細は後述する。
【0063】
このように、医療用ポンプ収容ラック200において、ポンプAとポンプBとの間の連携が成立したと判断し、その後もポンプAとポンプBの送液状態を監視可能な構成とすることで、ポンプBにおいて何らかの不具合が生じ、W法による送液を維持すべきでない状況になったにも関わらず、ポンプBの送液が自動的に開始されてしまうといった事態が回避されることとなる。
【0064】
また、連携開始タイミング前に変更されたポンプAの送液中の流量設定を、医療用ポンプ収容ラック200を介してポンプBに通知する構成とすることで、ユーザがポンプAに対して行った流量設定の変更をポンプBに対しても反映させることが可能となる。
【0065】
<5.W法による送液時の動作の詳細>
次に、上記W法による送液時の動作のうち、医療用ポンプ収容ラック200のW法監視機能における連携可否判断処理及び連携成立判断処理と、ポンプBにおける送液開始処理について以下に詳説する。
【0066】
(1)連携可否判断処理(ステップS421)の詳細
はじめに、医療用ポンプ収容ラック200における連携可否判断処理(ステップS421)の詳細な流れについて説明する。
【0067】
図5は、医療用ポンプ収容ラック200における連携可否判断処理の詳細な流れを示すフローチャートである。ポンプA及びポンプBより、連携する旨の指示を受信した場合に、図5に示す連携可否判断処理が開始される。
【0068】
ステップS501では、連携する旨の指示を送信したポンプA及びポンプBのそれぞれの収納位置を識別する。なお、ポンプA及びポンプBのそれぞれの収納位置は、ポンプから連携する旨の指示を受信したポート番号に基づいて識別する。
【0069】
ステップS502では、連携する旨の指示を送信したポンプA及びポンプBが、互いに隣接しているか否かを、ステップS501において識別した収納位置に基づいて判断する。具体的には、それぞれのポート番号が連番となっていれば隣接していると判断し、ステップS503に進む。一方、それぞれのポート番号が連番となっていなければ隣接していないと判断し、ステップS506に進む。
【0070】
ステップS506では、連携する旨の指示を送信したポンプA及びポンプBに対して、連携が不可である旨を通知する。このように、連携の可否条件として、ポンプA及びポンプBの収納位置が隣接する場合に限定したのは、医療用ポンプ収容ラック200に収容された複数の医療用ポンプのうち、互いに離れた位置にある医療用ポンプ同士を連携させてしまうと、ユーザによる誤操作を誘発する恐れがあるためである。
【0071】
ステップS503では、連携する旨の指示を送信したポンプA及びポンプBにおいて選択されている薬剤を識別する。ステップS504では、ステップS503において識別されたそれぞれの薬剤が、一致しているか否かを判定する。
【0072】
ステップS504において一致していないと判定された場合には、ポンプAまたはポンプB上でユーザが選択した薬剤が誤っているか、あるいは、連携対象とすべき医療用ポンプとは異なる医療用ポンプを誤って操作し、連携する旨の指示を入力したことが考えられる。いずれにしても、ユーザが誤操作したと判断し、連携する旨の指示を送信したポンプA及びポンプBに対して、連携が不可である旨を通知する。
【0073】
一方、ステップS504において一致していると判定された場合には、ステップS505に進み、連携する旨の指示を送信したポンプA及びポンプBに対して、連携が可能である旨の通知を行う(連携可能通知)。
【0074】
このように、本実施形態に係る医療用ポンプ収容ラック200では、ユーザがポンプA及びポンプB上でそれぞれ連携する旨の指示を入力した段階で、連携の可否を判断し、連携が不可であると判断した場合には、直ちに報知する構成とした。これにより、ユーザの誤操作を低減させることが可能となる。
【0075】
なお、医療用ポンプ収容ラック200より、連携が可能である旨の通知を受けたポンプAでは、送液開始指示の受け付けが可能となり、ユーザは、ポンプAの送液を開始させることが可能となる。
【0076】
(2)連携成立判断処理(ステップS422)の詳細
次に、医療用ポンプ収容ラック200における連携成立判断処理の流れについて説明する。図6の医療用ポンプ収容ラックにおける連携成立判断処理の詳細な流れを示すフローチャートである。ポンプAより、送液開始指示が入力された旨の通知を受けた場合に、図6に示す連携成立判断処理が開始される。
【0077】
ステップS601では、ポンプBより送液開始指示が入力された旨の通知を受信したか否かを判定する。ステップS601において、受信したと判定された場合には、ステップS602に進む。
【0078】
一方、ステップS601において、受信していないと判定された場合には、ステップS606に進み、連携開始タイミングに到達したか否か(ポンプAより連携開始指示を受信したか否か)を判定する。そして、連携開始タイミングに到達していないと判定された場合には、ステップS602に進む。
【0079】
ステップS602では、ポンプAの送液中の流量設定がユーザにより変更されたか否かを判定する。ステップS602において、ポンプAの送液中の流量設定がユーザにより変更されたと判定された場合には、ステップS603に進み、ポンプBに対して、変更された流量設定を通知した後、ステップS604に進む。なお、ポンプBでは、変更された流量設定の通知に基づいて、ステップ流量等を変更する。ただし、本発明はこれに限定されず、例えば、変更された流量設定は医療用ポンプ収容ラック200に通知されるが、ステップS603の処理は実行せず、ステップS604に進むように構成してもよい。この場合、ステップS605において、変更された流量設定の通知が行われることとなる。
【0080】
一方、ステップS602において、ポンプAの送液中の流量設定がユーザにより変更されていないと判定された場合には、そのままステップS604に進む。
【0081】
ステップS604では、連携開始タイミングに到達したか否か(ポンプAより連携開始指示を受信したか否か)を判定する。ステップS604において連携開始タイミングに到達していないと判定された場合には、ステップS601に戻り、ポンプBより送液開始指示が入力された旨の通知を受信していない場合にあっては、ポンプBからの送液開始指示を待つ。一方、ポンプBからの送液開始指示が入力された旨の通知を既に受信している場合にあっては、連携開始タイミングまで待機する。ただし、ポンプAの送液中の流量設定が変更された場合には、変更されるたびにポンプBに通知する。ただし、本発明はこれに限定されず、例えば、ポンプAの流量が変更されるたびに流量変更の通知が医療用ポンプ収容ラック200に対して行われるが、その時点ではポンプBへの通知は行わず、連携開始のタイミングで、最終的なポンプAの流量をポンプBに通知するように構成してもよい。
【0082】
ステップS604において、連携開始タイミングに到達したと判定された場合には、ステップS605に進み、ポンプA及びポンプBに対して、連携が成立した旨を通知する(連携成立通知)。これにより、ポンプBでは送液が開始される。
【0083】
一方、ステップS606において、ポンプBより送信開始指示が入力された旨の通知を受信する前に、連携開始タイミングに到達したと判定された場合には、ステップS607に進む。ステップS607では、ポンプBに対して警報指示を通知する。警報指示が通知されたポンプBでは、警報を出力する。
【0084】
ステップS608では、ポンプBにおける警報出力が、ユーザによって停止されたか否かを判定し、ステップS608において警報出力が停止されたと判定された場合には、ステップS605に進み、ポンプA及びポンプBに対して、連携が成立した旨を通知する(連携成立通知)。
【0085】
なお、図6においては明示していないが、連携開始タイミングに到達するまでの間に、ポンプAが医療用ポンプ収容ラック200から取り外されてしまったり、異常により送液が停止してしまった場合には、ポンプBに対して、連携が成立しなかった旨を通知する。この場合、ポンプBが自動的にW法による送液を開始することはない。
【0086】
(3)ポンプBにおける送液開始処理(ステップS415)の詳細
次に、ポンプBにおける送液開始処理(ステップS415)の流れについて説明する。図7は、ポンプBにおける送液開始処理の詳細な流れを示すフローチャートである。医療用ポンプ収容ラック200より、連携が可能である旨の通知を受信すると、ポンプBでは、図7に示す送液開始処理を開始する。
【0087】
ステップS701では、ポンプAにおいて送液開始指示が入力され、医療用ポンプ収容ラック200より、ポンプAにおける送液開始指示が入力された旨の通知を受けたか否かを判定する。ステップS701において、ポンプAにおける送液開始指示が入力された旨の通知を医療用ポンプ収容ラック200より受信した場合には、ステップS702に進む。なお、医療用ポンプ収容ラック200が、その都度、変更された流量設定の通知を行わない場合には、ポンプBでは、ポンプAの流量設定変更通知を受けないため、ステップS702は実行せず、ステップS704へと進む。
【0088】
ステップS702では、ポンプAにおいて送液中の流量設定が変更され、医療用ポンプ収容ラック200より、変更された流量設定が通知されたか否かを判定する。ステップS702において、変更された流量設定が通知されていないと判定された場合には、ステップS704に進む(上述のとおり、ステップS702を実行しない場合にあっては、直接、ステップS704に進む)。
【0089】
一方、ステップS702において、変更された流量設定が通知されたと判定された場合には、ステップS703に進み、通知された流量設定に基づいて、ステップ流量等を算出し、設定する(上述のとおり、ステップS702を実行しない場合にあっては、直接、ステップS704に進む)。
【0090】
ステップS704では、医療用ポンプ収容ラック200より、連携が成立した旨の通知を受信したか否かを判定し、受信していないと判定された場合には、ステップS702に戻る(なお、医療用ポンプ収容ラック200が、その都度、変更された流量設定の通知をポンプBに対して行わない場合にあっては、ステップS704に戻る)。
【0091】
一方、ステップS704において、受信したと判定された場合には、ステップS705に進み、送液を開始する(なお、医療用ポンプ収容ラック200が、その都度、変更された流量設定の通知をポンプBに対して行わない場合にあっては、このとき受信した流量に基づいて、ステップS703の処理を実行する)。
【0092】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る医療用ポンプ収容ラックでは、収容された複数の医療用ポンプのW法による送液を監視するにあたり、
・ユーザが指示した連携に対して、連携可否の判定を行う構成とした。
・ポンプAの送液開始からポンプBの送液開始までの間において、連携成立の条件を規定し、当該条件を満たした場合にポンプBの送液を開始させる構成とした。
【0093】
このように、医療用ポンプ収容ラックにおいて、W法による送液を行う医療用ポンプに対するユーザの各種操作を監視する構成とすることにより、本実施形態によれば、ユーザの誤操作を低減させることが可能となる。
【0094】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、W法により送液を行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、PPB法により送液を行う場合においても適用可能である。
【0095】
<1.PPB法による送液についての説明>
はじめにPPB法による送液について説明する。PPB法は、2つの医療用ポンプをシーケンシャルに動作させることで、1種類の薬剤を投与完了後に、間隔をあけることなく、異なる種類の薬剤を連続して投与する投与方法である。具体的には、輸液ラインの血液輸液ラインの血液凝固による閉塞を防ぐことを目的として、1種類目の薬剤を所定量送液後、ヘパリンなどの抗凝固剤を2種類目の薬剤として低流量で送液する場合等に利用される。
【0096】
PPB法による送液では、1台目の医療用ポンプが先発ポンプとして送液を終了した時点で、2台目の医療用ポンプが後発ポンプとして送液を開始する。
【0097】
図8は、所定の2台の医療用ポンプ(ポンプAとポンプB)を用いてPPB法による送液を行う場合の、各ポンプの流量の時間変化を示す図である。
【0098】
このうち、グラフ800は先に送液を行うポンプA(先発ポンプ)の流量の時間変化を、グラフ810はポンプAの後に送液を行うポンプB(後発ポンプ)の流量の時間変化をそれぞれ示している。
【0099】
PPB法による送液によれば、ポンプAの送液が完了した時点(ポンプAの積算量が予定量に達した時点)で、ポンプBが予め設定された流量にて送液を開始する。
【0100】
<2.医療用ポンプ収容ラックの外観構成>
PPB法により送液を行う医療用ポンプが収容される医療用ポンプ収容ラックの外観構成は、既述の図2と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0101】
<3.医療用ポンプシステムの制御構成>
図9は、本実施形態に係る医療用ポンプ収容ラック900と医療用ポンプ221〜223の制御構成例を示すブロック図である。なお、図9に示すブロック図は、医療用ポンプ収容ラック900の制御部901がPPB監視機能を備えていること以外は、既述の図3のブロック図と同様であるため、同じ参照番号を付すことで説明は省略する。
【0102】
図9において、制御部901は、不図示のCPU、ROM、RAMを備えるコンピュータであり、図10、図11のフローチャートに示す処理(連携可否判断処理、連携成立判断処理)を含むPPB法監視機能に関する各種処理プログラムを実行する。
【0103】
なお、操作部313より入力された信号(データ)は、ポンプ制御部312、通信モジュール315を介して医療用ポンプ収容ラック900に送信され、上記PPB法監視機能に関する各種処理に用いられる。また、医療用ポンプ収容ラック900より送信された信号(データ)は、通信モジュール315を介して受信され、ポンプ制御部312においてPPB法による送液のための処理に用いられる。
【0104】
図9に示す制御構成のもと、医療用ポンプ221を先発ポンプ、医療用ポンプ222を後発ポンプとして、PPB法による送液を行う場合の医療用ポンプ収容ラック900のPPB監視機能について、以下に説明する。なお、以下でも、上記第1の実施形態と同様に、先発ポンプを“ポンプA”、後発ポンプを“ポンプB”と称して説明する。
【0105】
<4.PPB法による送液時の動作>
図10は、PPB法により送液を行う場合のポンプA(先発ポンプ)及びポンプB(後発ポンプ)の動作、及び、その場合の医療用ポンプ収容ラック900のPPB法監視機能による各種処理を説明するための図である。
【0106】
はじめに、先発ポンプと後発ポンプの決定方法から説明する。医療用ポンプ収容ラック900では、2つのポンプからPPB法連携予約の通知(PPB可能薬剤選択の通知)を受けると、一方の医療用ポンプで既に送液が行われている場合にあっては、当該医療用ポンプを先発ポンプ(ポンプA)と認識し、もう一方の医療用ポンプに対して、後発ポンプ(ポンプB)である旨を通知する。また、両方の医療用ポンプが送液を行っていない場合には、連携予約確立後に先に送液開始通知を受けた方の医療用ポンプを先発ポンプと認識し、もう一方の医療用ポンプに対して、後発ポンプである旨を通知する。また、2台の医療用ポンプのどちらとも既に送液を行っている場合には、連携不成立である旨を両方の医療用ポンプに通知する。
【0107】
ポンプAとポンプBが決定した後、PPB法による送液を行うにあたり、はじめに、ポンプAでは、ステップS1001において、投与する薬剤の選択を受け付ける。
【0108】
更に、ステップS1002において、PPB法による送液を行うために必要な各種パラメータの設定が行われると、ステップS1003では、PPB法による送液を実現するために、他の医療用ポンプ(本例では、ポンプB)と連携する旨の指示を受け付ける。
【0109】
なお、ステップS1001において選択された薬剤についての情報と、ステップS1003において受け付けた連携する旨の指示は、医療用ポンプ収容ラック900に送信される。
【0110】
同様に、ポンプBでは、ステップS1011において、投与する薬剤の選択を受け付け、ステップS1012においてPPB法による送液を行うために必要な各種パラメータの設定が行われる。更に、ステップS1013において、PPB法による送液を実現するために、他の医療用ポンプ(本例では、ポンプA)と連携する旨の指示を受け付ける。
【0111】
なお、ステップS1011において選択された薬剤についての情報と、ステップS413において受け付けた連携する旨の指示は、医療用ポンプ収容ラック900に送信される。
【0112】
医療用ポンプ収容ラック900では、ステップS1001、1003及びステップS1011、1013において送信された情報に基づいて、ステップS1021において、ポンプAとポンプBとを連携させることが可能であるか否かの判断を行う。
【0113】
このように、ポンプAとポンプBにおいて連携する旨の指示が選択された場合に、ポンプAとポンプBとの連携可否を、ポンプA及びポンプBより送信された情報に基づいて、医療用ポンプ収容ラック900が判断する構成とすることで、本来連携されるべきでない医療用ポンプをユーザが誤って連携対象としてしまった場合であっても、当該誤操作がユーザに報知されることとなる(つまり、PPB法による送液を行うためのユーザによる各種操作における誤操作を低減させることが可能となる)。なお、連携可否判断処理の詳細は後述する。
【0114】
ステップS1021における連携可否判断処理の結果、連携可能であると判定された場合、医療用ポンプ収容ラック900では、ポンプA及びポンプBにその旨を通知する(連携可能通知)。
【0115】
ステップS1021において通知された、連携可否判断処理の結果が、連携可能であった場合、ポンプAでは、ステップS1004において、ユーザによる送液開始指示の入力を受け付ける(ユーザによる送液開始指示の操作が有効になる)。
【0116】
更に、当該指示の入力を受け付けた場合には、ステップS1005において、送液が開始されるとともに、送液が開始されたことが医療用ポンプ収容ラック900に通知される。
【0117】
医療用ポンプ収容ラック900では、ステップS1022において、ポンプAにより送液が開始された旨の通知をポンプAより受信すると、ポンプBにその旨を通知する。
【0118】
ポンプBでは、当該通知を受信すると、ユーザによる送液開始指示の操作を有効にする。以降、連携開始タイミングに到達するまでの間、ポンプBでは、送液開始指示の受け付けが可能となる。
【0119】
ステップS1014において、ポンプBが、ユーザによる送液開始指示の入力を受け付けると、ポンプBでは、その旨を医療用ポンプ収容ラック900に通知する。
【0120】
これにより、医療用ポンプ収容ラック900では、ステップS1022において、ポンプBの送液準備が完了したと認識する。
【0121】
なお、このように、ポンプAのみならずポンプBにおいてもユーザに送液開始指示を入力させる構成としたのは、患者の安全性の確保を考慮したためである。つまり、ポンプAの送液開始指示を受け付けることで、ポンプAの送液とポンプBの送液とを自動的に開始させる構成としてしまうと、ポンプAの送液開始指示が入力された後は、ユーザによってポンプBの状態が監視されることなく、ポンプBの送液が開始されてしまうこととなるからである。
【0122】
本実施形態に係る医療用ポンプ収容ラック900では、上記構成とすることで、このような事態を回避することができる。
【0123】
ステップS1022において、医療用ポンプ収容ラック900では、更に、ポンプBの送液準備が完了したと認識すると、連携開始タイミングまで待機する。
【0124】
更に、連携開始タイミングに到達し、ステップS1006において、ポンプAが連携開始指示(完了警報)を送信すると、医療用ポンプ収容ラック900では、ステップS1022において、ポンプAより送信された連携開始指示により、ポンプAとポンプBとの間の連携が成立したものと認識し、ポンプA及びポンプBに対してその旨を通知する(連携成立通知)。なお、ステップS1022におけるこれらの処理(連携成立判断処理)の詳細は後述する。
【0125】
ポンプBでは、医療用ポンプ収容ラック900より、連携が成立した旨の通知を受信すると、送液を開始する。なお、ポンプBにおける送液開始処理の詳細は後述する。
【0126】
このように、医療用ポンプ収容ラック900において、ポンプAとポンプBとの間の連携が成立したと判断し、その後もポンプAとポンプBの送液状態を監視可能な構成とすることで、ポンプBにおいて何らかの不具合が生じ、PPB法による送液を維持すべきでない状況になったにも関わらず、ポンプBの送液が自動的に開始されてしまうといった事態が回避されることとなる。
【0127】
<5.PPB法による送液時の動作の詳細>
次に、上記PPB法による送液時の動作のうち、医療用ポンプ収容ラック900のPPB法監視機能における連携可否判断処理及び連携成立判断処理と、ポンプBにおける送液開始処理について以下に詳説する。
【0128】
(1)連携可否判断処理(ステップS1021)の詳細
はじめに、医療用ポンプ収容ラック900における連携可否判断処理(ステップS1021)の詳細な流れについて説明する。
【0129】
図11は、医療用ポンプ収容ラック900における連携可否判断処理の詳細な流れを示すフローチャートである。ポンプA及びポンプBより、連携する旨の指示を受信した場合に、図11に示す連携可否判断処理が開始される。
【0130】
ステップS1101では、連携する旨の指示を送信したポンプA及びポンプBのそれぞれの収納位置を識別する。なお、ポンプA及びポンプBのそれぞれの収納位置は、ポンプから連携する旨の指示を受信したポート番号に基づいて識別する。
【0131】
ステップS1102では、連携する旨の指示を送信したポンプA及びポンプBが、互いに隣接しているか否かを、ステップS1101において識別した収納位置に基づいて判断する。具体的には、それぞれのポート番号が連番となっていれば隣接していると判断し、ステップS1103に進む。一方、それぞれのポート番号が連番となっていなければ隣接していないと判断し、ステップS1106に進む。
【0132】
ステップS1106では、連携する旨の指示を送信したポンプA及びポンプBに対して、連携が不可である旨を通知する。このように、連携の可否条件として、ポンプA及びポンプBの収納位置が隣接する場合に限定したのは、医療用ポンプ収容ラック900に収容された複数の医療用ポンプのうち、互いに離れた位置にある医療用ポンプ同士を連携させてしまうと、ユーザによる誤操作を誘発する恐れがあるためである。
【0133】
ステップS1103では、連携する旨の指示を送信したポンプA及びポンプBにおいて選択されている薬剤を識別する。ステップS1104では、ステップS1103において識別されたそれぞれの薬剤が、PPB法による送液が可能な薬剤か否かを判定する。具体的には、PPB法による送液に適用可能な薬剤として医療用ポンプ収容ラック900に予め登録されている薬剤と一致するか否かを判定する。
【0134】
ステップS1104においてポンプA及びポンプBの薬剤がともにPPB法による送液が可能な薬剤でないと判定された場合には、ポンプAまたはポンプB上でユーザが選択した薬剤が誤っているか、あるいは、連携対象とすべき医療用ポンプとは異なる医療用ポンプを誤って操作し、連携する旨の指示を入力したことが考えられる。いずれにしても、ユーザが誤操作したと判断し、連携する旨の指示を送信したポンプA及びポンプBに対して、連携が不可である旨を通知する。
【0135】
一方、ステップS1104においてポンプA及びポンプBの薬剤がともにPPB法による送液が可能な薬剤であると判定された場合には、ステップS1105に進み、連携する旨の指示を送信したポンプA及びポンプBに対して、連携が可能である旨の通知を行う(連携可能通知)。
【0136】
このように、本実施形態に係る医療用ポンプ収容ラック900では、ユーザがポンプA及びポンプB上でそれぞれ連携する旨の指示を入力した段階で、連携の可否を判断し、連携が不可であると判断した場合には、直ちに報知する構成とした。これにより、ユーザの誤操作を低減させることが可能となる。
【0137】
なお、医療用ポンプ収容ラック900より、連携が可能である旨の通知を受けたポンプAでは、送液開始指示の受け付けが可能となり、ユーザは、ポンプAの送液を開始させることが可能となる。
【0138】
(2)連携成立判断処理(ステップS1022)の詳細
次に、医療用ポンプ収容ラック900における連携成立判断処理の流れについて説明する。図12は医療用ポンプ収容ラック900における連携成立判断処理の詳細な流れを示すフローチャートである。ポンプAより、送液開始指示が入力された旨の通知を受けた場合に、図12に示す連携成立判断処理が開始される。
【0139】
ステップS1201では、ポンプBより送液開始指示が入力された旨の通知を受信したか否かを判定する。ステップS1201において、受信したと判定された場合には、ステップS1201に戻る。
【0140】
一方、ステップS1201において、受信していないと判定された場合には、ステップS1204に進み、連携開始タイミングに到達したか否か(ポンプAより連携開始指示(完了警報)を受信したか否か)を判定する。そして、連携開始タイミングに到達していないと判定された場合には、ステップS1202に進む。
【0141】
ステップS1202では、連携開始タイミングに到達したか否か(ポンプAより連携開始指示(完了警報)を受信したか否か)を判定する。ステップS1202において連携開始タイミングに到達していないと判定された場合には、ステップS1201に戻る。
【0142】
つまり、ポンプBより送液開始指示が入力された旨の通知を受信していない場合にあっては、ポンプBからの送液開始指示を待つ。一方、ポンプBからの送液開始指示が入力された旨の通知を既に受信している場合にあっては、連携開始タイミングまで待機する。
【0143】
ステップS1202において、連携開始タイミングに到達したと判定された場合には、ステップS1203に進み、ポンプA及びポンプBに対して、連携が成立した旨を通知する(連携成立通知)。これにより、ポンプBでは送液が開始される。
【0144】
一方、ステップS1204において、ポンプBより送信開始指示が入力された旨の通知を受信する前に、連携開始タイミングに到達したと判定された場合には、ステップS1205に進む。ステップS1205では、ポンプBに対して警報指示を通知する。警報指示が通知されたポンプBでは、警報を出力する。
【0145】
ステップS1206では、ポンプBにおける警報出力が、ユーザによって停止されたか否かを判定し、ステップS1206において警報出力が停止されたと判定された場合には、ステップS1203に進み、ポンプA及びポンプBに対して、連携が成立した旨を通知する(連携成立通知)。
【0146】
なお、図12においては明示していないが、連携開始タイミングに到達するまでの間に、ポンプAが医療用ポンプ収容ラック900から取り外されてしまったり、異常により送液が停止してしまった場合には、ポンプBに対して、連携が成立しなかった旨を通知する。この場合、ポンプBが自動的にPPB法による送液を開始することはない。
【0147】
(3)ポンプBにおける送液開始処理(ステップS1015)の詳細
次に、ポンプBにおける送液開始処理(ステップS1015)の流れについて説明する。図13は、ポンプBにおける送液開始処理の詳細な流れを示すフローチャートである。医療用ポンプ収容ラック900より、連携が可能である旨の通知を受信すると、ポンプBでは、図13に示す送液開始処理を開始する。
【0148】
ステップS1301では、ポンプAにおいて送液開始指示が入力され、医療用ポンプ収容ラック900より、ポンプAにおける送液開始指示が入力された旨の通知を受け付けたか否かを判定する。ステップS1301において、ポンプAにおける送液開始指示が入力された旨の通知を医療用ポンプ収容ラック900より受信した場合には、ステップS1302に進む。
【0149】
ステップS1302では、医療用ポンプ収容ラック900より、連携が成立した旨の通知を受信したか否かを判定し、受信していないと判定された場合には、待機する。
【0150】
一方、ステップS1302において、受信したと判定された場合には、ステップS1303に進み、送液を開始する。
【0151】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る医療用ポンプ収容ラックでは、収容された複数の医療用ポンプのPPB法による送液を監視するにあたり、
・ユーザが指示した連携に対して、連携可否の判定を行う構成とした。
・ポンプAの送液開始からポンプBの送液開始までの間において、連携成立の条件を規定し、当該条件を満たした場合にポンプBの送液を開始させる構成とした。
【0152】
このように、医療用ポンプ収容ラックにおいて、PPB法による送液を行う医療用ポンプに対するユーザの各種操作を監視する構成とすることにより、本実施形態によれば、ユーザの誤操作を低減させることが可能となる。
【0153】
[第3の実施形態]
上記第1及び第2の実施形態では、W法により送液を行う医療用ポンプ収容ラックとPPB法により送液を行う医療用ポンプ収容ラックとをわけて構成することとしたが、本発明はこれに限定されず、1つの医療用ポンプ収容ラックが、W法監視機能とPPB法監視機能の両方を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0154】
200・・・医療用ポンプ収容ラック、201〜203・・・収容部、211〜213・・・ポート、221〜223・・・医療用ポンプ、231〜233・・・チューブ、241〜243・・・チューブ、900・・・医療用ポンプ収容ラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の医療用ポンプを配列して収容し、該収容した医療用ポンプと通信可能に接続される医療用ポンプ収容ラックであって、
収容された前記複数の医療用ポンプのうち、所定の2台の医療用ポンプについて、互いに連携して動作させることが可能か否かを、該2台の医療用ポンプそれぞれが収容された収容位置を示す情報と、該2台の医療用ポンプそれぞれに設定された薬剤情報とに基づいて判断する連携可否判断手段と、
前記連携可否判断手段において、連携して動作させることが可能であると判断した場合に、前記2台の医療用ポンプに対して行われる、薬剤の送液の開始指示の操作を有効にするための連携可能通知を、該2台の医療用ポンプに対して送信する連携可能通知送信手段と、を備え、
前記連携可否判断手段は、前記2台の医療用ポンプそれぞれが収容された収容位置が互いに隣接しており、かつ、前記2台の医療用ポンプそれぞれに設定された薬剤情報がPPB法による送液に適用可能な薬剤情報と一致していた場合に、連携して動作させることが可能であると判断することを特徴とする医療用ポンプ収容ラック。
【請求項2】
前記連携可否判断手段は、前記収容された複数の医療用ポンプのうち、ユーザによって、連携して動作させる旨の指示がなされた医療用ポンプを識別し、該識別した医療用ポンプを対象に、連携して動作させることが可能か否かを判断することを特徴とする請求項1に記載の医療用ポンプ収容ラック。
【請求項3】
前記連携可能通知送信手段により連携可能通知が送信された前記2台の医療用ポンプのうち、先に送液が開始された先発の医療用ポンプから送信された連携開始指示を、後に送液が開始される後発の医療用ポンプに送信する連携開始指示送信手段を更に備え、
前記連携開始指示送信手段により、前記連携開始指示が送信された場合に、前記後発の医療用ポンプの送液が開始されることを特徴とする請求項2に記載の医療用ポンプ収容ラック。
【請求項4】
前記先発の医療用ポンプから前記連携開始指示が送信された時点で、前記後発の医療用ポンプに対して、ユーザが送液の開始指示の操作を行っていなかった場合に、該後発の医療用ポンプに対して警報指示を送信する警報送信手段を更に備え、
前記連携開始指示送信手段は、前記警報送信手段による警報指示の送信に応じて前記後発の医療用ポンプにおいて警報が出力された場合であって、前記ユーザにより該警報の出力を停止する操作が行われた場合に、前記後発の医療用ポンプに対して前記連携開始指示を送信することを特徴とする請求項3に記載の医療用ポンプ収容ラック。
【請求項5】
複数の医療用ポンプを配列して収容し、該収容した医療用ポンプと通信可能に接続される医療用ポンプ収容ラックの制御方法であって、
収容された前記複数の医療用ポンプのうち、所定の2台の医療用ポンプについて、互いに連携して動作させることが可能か否かを、該2台の医療用ポンプそれぞれが収容された収容位置を示す情報と、該2台の医療用ポンプそれぞれに設定された薬剤情報とに基づいて判断する連携可否判断工程と、
前記連携可否判断工程において、連携して動作させることが可能であると判断した場合に、前記2台の医療用ポンプに対して行われる、薬剤の送液の開始指示の操作を有効にするための連携可能通知を、該2台の医療用ポンプに対して送信する連携可能通知送信工程と、を備え、
前記連携可否判断工程では、前記2台の医療用ポンプそれぞれが収容された収容位置が互いに隣接しており、かつ、前記2台の医療用ポンプそれぞれに設定された薬剤情報がPPB法による送液に適用可能な薬剤情報と一致していた場合に、連携して動作させることが可能であると判断することを特徴とする医療用ポンプ収容ラックの制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の制御方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−90965(P2012−90965A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205210(P2011−205210)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】