説明

医療用長尺体の製造方法

【課題】歩留まりが高く、容易かつ迅速に、医療用長尺体を製造することができる医療用長尺体の製造方法を提供すること。
【解決手段】電解加工装置10の電解槽11内には、電解液41とその電解液41よりも比重が大きい絶縁性を有する絶縁性液体42とが互いに分離した状態で貯留されている。加工前長尺体32の電解加工を行う部位が、電解槽11内の電解液41に浸漬し、その電解加工を行う部位より先端側の加工前長尺体32の電解加工を行わない部位が、絶縁性液体42に浸漬するように、加工前長尺体32を電解加工装置10にセットする。補強体層5を陽極、電極17を陰極として電解液41に通電し、電解加工を行なう。これにより、補強体層5の電解液41に浸漬している部位は、電解加工により除去され、加工前長尺体32の絶縁性液体42に浸漬している部位は、電解加工は行われない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用長尺体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、外科的侵襲が非常に少ないという理由から、カテーテルを用いた血管病変の治療が盛んに行われている。
【0003】
このような手技においては、カテーテルを細く複雑なパターンの血管系に迅速かつ確実な選択性をもって挿入し得るような優れた操作性が要求される。
【0004】
また、カテーテル挿入部位の選択の幅を広げること、患者の負担軽減、挿入操作等の容易性向上の観点から、カテーテルの細径化を図ること、特に、一定の内径を確保しつつ外径をできるだけ小さくすることが要求される。
【0005】
前記操作性について詳述すると、血管内を前進させるために術者の押し込む力がカテーテルの基端側から先端側に確実に伝達され得るいわゆる押し込み性(プッシャビリティー)と、カテーテルの基端側にて加えられた回転力が先端側に確実に伝達され得るトルク伝達性と、曲がった血管内を先行するガイドワイヤーに沿って円滑かつ確実に進み得る追随性(以下「追従性」と言う)と、目的部位までカテーテル先端が到達し、ガイドワイヤーを引き抜いた後でも、血管の湾曲、屈曲した部位でカテーテルに折れ曲がりが生じない耐キンク性とが必要とされる。また、カテーテルの先端で血管内壁を損傷したりすることがないような安全性も要求される。
【0006】
このようなカテーテルのカテーテル本体は、その主要部分が、内層の外周に補強体層を有し、さらにその外周に外層を有する構造をなしている。また、カテーテル本体の前記主要部分の先端側に続く先端部は、補強体層を有さず、内層と外層とで構成されている。または、カテーテル本体の先端部は、外層のみで構成されている。これにより、前記先端部は、非常に柔軟になり、その先端部で血管内壁を損傷させてしまうことを防止することができる。
【0007】
前記カテーテルのカテーテル本体は、下記のようにして製造される。まずは、金属製の芯材の外周に内層を設けてなるコアの外周に、金属製の線材で構成された補強体層を設ける。
【0008】
次に、図8に示すように、補強体層5を陽極とし、電極200を陰極として、電解液に通電し、補強体層5の先端部を電解加工で除去する。この電解加工に際しては、コアの先端部の必要な部位が除去されてしまうことを防止するため、そのコアの先端部の電解加工を行わない部位を被覆するマスク100を形成する(例えば、特許文献1参照)。なお、前記マスク100は、電解加工を行った後に除去される。
【0009】
次に、外層を形成し、この後、芯材を引き抜く。これにより、カテーテル本体が得られる。
【0010】
しかしながら、前記従来のカテーテルの製造方法では、電解加工に際して、マスク100を形成する工程と、電解加工を行った後に、そのマスク100を除去する工程とを必要とするので、製造工程が多く、カテーテルの製造に、手間と時間とを要するという欠点がある。
【0011】
また、マスク100の形成が不十分で、隙間が形成されている場合は、その隙間からマスク100の内側に電解液が入り込み、コアの先端部の電解加工を行わない予定の部位に対して電解加工が行われてしまい、これにより、歩留りが低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−51362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、歩留まりが高く、容易かつ迅速に、医療用長尺体を製造することができる医療用長尺体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような目的は、下記(1)〜(18)の本発明により達成される。
(1) 長尺状のコアと、該コアの外周に設けられた金属製の線材とを有する医療用長尺体の製造方法であって、
電解液と該電解液と比重が異なる絶縁性を有する絶縁性液体とが互いに分離した状態で貯留された電解槽内の液体に、前記コアの外周に前記線材が設けられた加工前長尺体の所定の部位を浸漬し、前記加工前長尺体の前記線材を陽極として前記電解液に通電し、前記線材の前記電解液に浸漬している部位を電解加工し、前記加工前長尺体の前記絶縁性液体に浸漬している部位は、電解加工が行われないようにすることを特徴とする医療用長尺体の製造方法。
【0015】
(2) 前記絶縁性液体は、前記電解液よりも比重が大きい液体または前記電解液よりも比重が小さい液体である上記(1)に記載の医療用長尺体の製造方法。
【0016】
(3) 前記絶縁性液体は、前記電解液よりも比重が大きい第1の液体および前記電解液よりも比重が小さい第2の液体を含み、
前記電解液は、前記第1の液体と前記第2の液体との間に介在している上記(1)に記載の医療用長尺体の製造方法。
【0017】
(4) 前記加工前長尺体に造影性を有するマーカーが設けられており、
前記加工前長尺体の前記マーカーよりも先端側の部位を電解加工する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の医療用長尺体の製造方法。
【0018】
(5) 前記マーカーは、電解加工に際して前記電解液に接触しても電解加工されない金属材料で構成されている上記(4)に記載の医療用長尺体の製造方法。
【0019】
(6) 電解加工を行った後、前記加工前長尺体を長手方向に移動させて該加工前長尺体の前記電解液に浸漬する部位を変更し、新たな当該部位に電解加工を行なう上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の医療用長尺体の製造方法。
【0020】
(7) 前記加工前長尺体の移動方向は、鉛直下方であり、前記加工前長尺体は、前記移動に際し、前記電解槽の底部から外部に排出されてゆく上記(6)に記載の医療用長尺体の製造方法。
【0021】
(8) 前記加工前長尺体の移動方向は、鉛直上方であり、前記加工前長尺体は、前記移動に際し、前記電解槽の上部から外部に排出されてゆく上記(6)に記載の医療用長尺体の製造方法。
【0022】
(9) 前記加工前長尺体の前回電解加工を行った部位との間に電解加工が行われない部位が設けられるように前記加工前長尺体を移動させて電解加工を行う上記(5)ないし(8)のいずれかに記載の医療用長尺体の製造方法。
【0023】
(10) 電解加工に際し、前記電解槽内の前記電解液の深さを調整する上記(1)ないし(9)のいずれに記載の医療用長尺体の製造方法。
【0024】
(11) 前記電解液の深さの調整においては、前記電解液の上面のレベルを一定にし、前記電解液と前記絶縁性液体との界面のレベルを調整する上記(10)に記載の医療用長尺体の製造方法。
【0025】
(12) 前記電解液の深さの調整においては、前記電解液の深さを前記加工前長尺体の電解加工を行う部位の長さと等しくする上記(10)または(11)に記載の医療用長尺体の製造方法。
【0026】
(13) 電解加工により、前記線材を除去または研磨する上記(1)ないし(12)のいずれかに記載の医療用長尺体の製造方法。
【0027】
(14) 前記絶縁性液体は、フッ素系の液体である上記(1)ないし(13)のいずれかに記載の医療用長尺体の製造方法。
【0028】
(15) 電解加工が行われた前記加工前長尺体の電解加工が行われていない部位を外層で被覆する上記(1)ないし(14)のいずれかに記載の医療用長尺体の製造方法。
【0029】
(16) 前記コアは、金属製の芯材と、該芯材の外周に設けられた絶縁性を有する樹脂層とを備える上記(1)ないし(15)のいずれかに記載の医療用長尺体の製造方法。
【0030】
(17) 前記線材は、前記コアの外周に網状またはコイル状に形成されている上記(1)ないし(16)のいずれかに記載の医療用長尺体の製造方法。
【0031】
(18) 前記医療用長尺体は、カテーテルであり、前記線材により、補強体層が形成されている上記(1)ないし(17)のいずれかに記載の医療用長尺体の製造方法。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、電解液とその電解液と比重が異なる絶縁性液体とが互いに分離した状態で貯留された電解槽内の液体に、加工前長尺体の所定の部位を浸漬し、線材の電解液に浸漬している部位を電解加工し、加工前長尺体の絶縁性液体に浸漬している部位は、電解加工が行われないようにするので、加工前長尺体の電解加工を行わない部位をマスク等で被覆する工程が不要であり、これにより、容易かつ迅速に、医療用長尺体を製造することができる。
【0033】
また、電解加工の際は、加工前長尺体の電解液に浸漬している部位の金属材料で構成されている部位のみに電解加工が行われ、加工前長尺体の絶縁性液体に浸漬している部位は、電解加工が行われないので、確実に、目的の部位のみに対し、電解加工を行うことができる。これにより、歩留りを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の医療用長尺体の製造方法をカテーテルの製造方法に適用した場合において、その製造方法により製造されたカテーテル(血管カテーテル)の全体構成例を示す平面図である。
【図2】図1に示すカテーテルの内部構造を示す一部切り欠き断面図である。
【図3】図1に示すカテーテルにおいて先端側の部位の補強体層等が見えるように外層の図示を一部省略した斜視図である。
【図4】本発明の医療用長尺体の製造方法の第1実施形態において使用する電解加工装置の構成を示す図である。
【図5】図1に示すカテーテルの製造方法を説明するための図である。
【図6】図1に示すカテーテルの製造方法を説明するための図である。
【図7】本発明の医療用長尺体の製造方法の第2実施形態において使用する電解加工装置の構成を示す図である。
【図8】従来のカテーテルの製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の医療用長尺体の製造方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0036】
なお、本発明は、長尺状のコアとそのコアの外周に設けられた金属製の線材とを有する各種の医療用長尺体を製造する方法に適用することができるが、下記の実施形態では、代表的に、本発明をカテーテルの製造方法に適用した場合について説明する。
【0037】
<第1実施形態>
図1は、本発明の医療用長尺体の製造方法をカテーテルの製造方法に適用した場合において、その製造方法により製造されたカテーテル(血管カテーテル)の全体構成例を示す平面図、図2は、図1に示すカテーテルの内部構造を示す一部切り欠き断面図、図3は、図1に示すカテーテルにおいて先端側の部位の補強体層等が見えるように外層の図示を一部省略した斜視図、図4は、本発明の医療用長尺体の製造方法の第1実施形態において使用する電解加工装置の構成を示す図、図5および図6は、それぞれ、図1に示すカテーテルの製造方法を説明するための図である。
【0038】
以下では、図1〜図3中の左側を「先端」、右側を「基端(後端)」、上側を「上」、下側を「下」とし、また、図4中の左側を「左」、右側を「右」、上側を「上」または「基端(後端)」、下側を「下」または「先端」とし、また、図5および図6中の左側を「基端(後端)」、右側を「先端」、上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。なお、図4中の上下方向が鉛直方向である。
【0039】
図1〜図3に示すように、カテーテル1は、可撓性(柔軟性)を有するカテーテル本体2と、このカテーテル本体2の基端21に装着されたハブ7とを備えている。
【0040】
カテーテル本体2は、その基端21から先端にかけて内部にルーメン(内腔)3が形成されている。カテーテル1の血管(生体管腔)への挿入時には、ルーメン3内にガイドワイヤーが挿通される。また、ルーメン3は、薬液等の通路として用いることもできる。
【0041】
ハブ7は、ルーメン3内への前記ガイドワイヤーの挿入口、ルーメン3内への薬液等の注入口等として機能し、また、カテーテル1を操作する際の把持部としても機能する。
【0042】
図2および図3に示すように、カテーテル本体2は、その主要部分22が、内層4の外周に補強体層5を有し、さらにその外周に外層6を有する構造をなしている。また、主要部分22は、その先端部に造影性を有するマーカー8を備えている。また、カテーテル本体2の前記主要部分22の先端側(マーカー8の先端側)に続く先端部23は、補強体層5を有さず、内層4と外層6とで構成されている。また、内層4および外層6は、それぞれ、可撓性(柔軟性)を有する材料(絶縁性を有する樹脂材料)で構成されている。
【0043】
内層4および外層6の構成材料としては、それぞれ、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂、ポリイミド等各種可撓性を有する樹脂や、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリスチレンエラストマー、フッ素系エラストマー、シリコーンゴム、ラテックスゴム等の各種エラストマー、またはこれらのうちの2以上を組み合わせたものが使用可能である。
【0044】
ここで、ポリアミドエラストマーとは、例えば、ナイロン6、ナイロン64、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン46、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、N−アルコキシメチル変性ナイロン、ヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸縮重合体、メタキシロイルジアミン−アジピン酸縮重合体のような各種脂肪族または芳香族ポリアミドをハードセグメントとし、ポリエステル、ポリエーテル等のポリマーをソフトセグメントとするブロック共重合体が代表的であり、その他、前記ポリアミドと柔軟性に富む樹脂とのポリマーアロイ(ポリマーブレンド、グラフト重合、ランダム重合等)や、前記ポリアミドを可塑剤等で軟質化したもの、さらには、これらの混合物をも含む概念である。
【0045】
また、ポリエステルエラストマーとは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の飽和ポリエステルと、ポリエーテルまたはポリエステルとのブロック共重合体が代表的であり、その他、これらのポリマーアロイや前記飽和ポリエステルを可塑剤等で軟質化したもの、さらには、これらの混合物をも含む概念である。内層4の構成材料と外層6の構成材料とは、同一でもよく、また、異なっていてもよい。
【0046】
なお、内層4および外層6に同一の構成材料を用いる場合、その材料は、比較的柔軟な材料であるのが好ましい。また、内層4と外層6の構成材料が異なる場合でも、外層6側が生体に接触することおよび通常、外層6の方がカテーテル本体2の剛性を左右する断面2次モーメントが大きいこと等を考慮して、内層4に比べ外層6をより柔軟な材料で構成するのが好ましい。
【0047】
内層4の厚さとしては、特に限定されないが、100μm以下であるのが好ましく、80μm以下であるのがより好ましい。
【0048】
また、外層6の厚さとしては、特に限定されないが、0.02〜0.20mm程度であるのが好ましく、0.06〜0.12mm程度であるのがより好ましい。
【0049】
また、外層6に用いられる材料の硬度は、特に限定されないが、ショアD硬度が40〜80程度であることが好ましい。
【0050】
また、使用時にX線透視下でカテーテル本体2の位置を視認できるように、内層4または外層6の構成材料中に、例えば、白金、金、銀、タングステンまたはこれらの合金による金属粉末、硫酸バリウム、酸化ビスマスまたはそれらのカップリング化合物のようなX線造影剤を混練しておいてもよい。
【0051】
なお、図示の構成では、内層4および外層6の内径および外径は、それぞれ一定となっているが、これらは、それぞれカテーテル本体2の長手方向に沿って変化してもよい。例えば、所定の領域において、内層4または外層6の外径がカテーテル本体2の先端方向(以下、先端方向という)に向かって漸減したり、内層4の内径が先端方向に向かって漸増したりする構成であってもよい。これにより、内層4または外層6の厚さが先端方向に向かって徐々に薄くなり、カテーテル本体2の剛性も連続的に減少する。
【0052】
補強体層5は、金属製の線状体(線材)53を交差させて網状(格子状)に編んだもの(形成したもの)、すなわち、網状の編組体で構成されている。線状体53としては、例えば、その横断面形状が円形のものや、横断面形状が偏平形状のもの、すなわちリボン状(帯状)のもの等が挙げられる。
【0053】
線状体53は、その横断面形状が円形のものである場合、直径が0.03〜0.06mm程度のものが好ましく、0.04〜0.05mm程度のものがより好ましい。
【0054】
また、線状体53が、リボン状のものである場合、幅が0.05〜3mm程度、厚さが0.01〜0.10mm程度のものが好ましい。
【0055】
補強体層5を構成する線状体53の構成材料としては、十分な補強効果が得られる程度の剛性を有する金属材料であれば、特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼、銅、タングステン、ニッケル、チタン、ピアノ線、Ni−Ti合金、Ni−Ti−Co合金、Ni−Al合金、Cu−Zn合金、Cu−Zn−X合金(例えば、X=Be、Si、Sn、Al、Ga)のような超弾性合金、アモルファス合金等の各種金属材料あるいはこれらのうちの2以上を組み合わせたもの等が挙げられる。
【0056】
前記線状体53は、前記の構成材料等による単繊維または繊維の集合体(例えば単繊維を縒ったもの)のいずれでもよい。また、線状体53は、単一で用いても、複数本を束ねた状態で用いてもよい。また、線状体53は、その巻回方向で異なる数の繊維の集合体(例えば、2本と4本)を用いてもよい。
【0057】
なお、補強体層5は、前記網状の編組体には限定されず、この他、例えば、線状体53をカテーテル本体2の周方向に沿ってコイル状(螺旋状)に巻いたもの等、すなわち、螺旋体等で構成されていてもよい。前記螺旋体の巻きのピッチは、特に限定されず、諸条件に応じて適宜決定されるが、0〜5mm程度が好ましく、0.02〜0.5mm程度がより好ましい。また、補強体層5を網状の編組体と螺旋体とで構成してもよい。
【0058】
マーカー8は、図示の構成では、円筒状(筒状)をなしている。このマーカーは、主要部分22の先端部における補強体層5の外周に固定されており、マーカー8の外周には、前記外層6が設けられている。
【0059】
マーカー8の構成材料としては、X線透視下(CTスキャンも含む)やMRI等において造影性を有するものであれば、特に限定されないが、後述する電解加工に際して電解液に接触しても電解加工されない金属材料が好ましく、例えば、白金、金またはこれらの合金等が好ましい。
【0060】
このマーカー8により、使用時にX線透視下やMRI等(造影下)においてカテーテル本体2の先端部23の基端側の直近の位置を視認することができる。
【0061】
なお、カテーテル本体2の外表面は、親水性(または水溶性)高分子物質で覆われている(図示せず)ことが好ましい。これにより、カテーテル本体2の外表面が血液または生理食塩水等に接触したときに、摩擦係数が減少して潤滑性が付与され、カテーテル本体2の摺動性が一段と向上し、その結果、押し込み性、追随性、耐キンク性および安全性が一段と高まる。
【0062】
親水性高分子物質としては、以下のような天然または合成の高分子物質、あるいはその誘導体が挙げられる。特に、セルロース系高分子物質(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)、ポリエチレンオキサイド系高分子物質(ポリエチレングリコール)、無水マレイン酸系高分子物質(例えば、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体のような無水マレイン酸共重合体)、アクリルアミド系高分子物質(例えば、ポリアクリルアミド)、水溶性ナイロン(例えば、東レ社製のAQ−ナイロン P−70)は、低い摩擦係数が安定的に得られるので好ましい。
【0063】
また、上記高分子物質の誘導体としては、水溶性のものに限定されず、上記水溶性高分子物質を基本構成としていれば、特に制限はなく、不溶化されたものであっても、分子鎖に自由度があり、かつ含水するものであればよい。
【0064】
このような、親水性高分子物質の被覆層をカテーテル本体2の外表面に固定するには、外層6中もしくは外層6の表面に存在または導入された反応性官能基と共有結合させることにより行うのが好ましい。これにより、持続的な潤滑性表面を得ることができる。
【0065】
外層6中または表面に存在しまたは導入される反応性官能基は、前記高分子物質と反応し、結合ないし架橋して固定するものであればいかなるものでもよく、ジアゾニウム基、アジド基、イソシアネート基、酸クロリド基、酸無水物基、イミノ炭酸エステル基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、水酸基、アルデヒド基等が挙げられ、特にイソシアネート基、アミノ基、アルデヒド基、エポキシ基が好適である。
【0066】
以上説明したように、このカテーテル1によれば、カテーテル本体2が内層4、補強体層5および外層6等を備えているので、優れた押し込み性、トルク伝達性、追従性および耐キンク性等の優れた操作性を有している。また、カテーテル本体2の先端部23は、補強体層5を有さず、内層4と外層6とで構成されているので、その先端部23は、非常に柔軟であり、先端部23で血管内壁を損傷させてしまうことを防止することができる。
【0067】
次に、前記カテーテル1を製造する際に使用する電解加工装置について説明する。
図4に示すように、電解加工装置10は、電解槽11と、管路12〜16と、電極17と、発光部181および受光部182を有し、液面(界面)を検出する光学式のセンサ18とを備えている。なお、このセンサ18は、光学式センサに限らず、例えば、超音波式センサであってもよい。
【0068】
電解槽11内には、電解液41と、その電解液41と比重が異なる絶縁性を有する絶縁性液体42とが互いに分離した状態で貯留されている。この実施形態では、絶縁性液体42は、電解液41より比重が大きいため、電解液41の鉛直下方に位置している。
【0069】
電解液41としては、電解加工を行った際、補強体層5の電解液41に浸漬している部位を除去または研磨し得るものであれば、特に限定されず、諸条件に応じて適宜選択されるが、例えば、所定の濃度の硝酸等を用いることができる。
【0070】
また、絶縁性液体42としては、電解加工を行った際、後述する加工前長尺体32の絶縁性液体42に浸漬している部位の電解加工が行われないものであれば、特に限定されず、諸条件に応じて適宜選択されるが、例えば、絶縁性を有するフッ素系の液体や、絶縁性を有する不燃性、揮発性を有する液体等を用いることができる。
【0071】
管路12の一端側は、電解槽11の鉛直上方に位置し、管路13の一端側は、電解槽11の側部の上側に接続されている。図示しないタンク内の電解液41は、図示しないポンプの作動により、管路12を経て電解槽11内に供給される。これにより、電解槽11内の電解液41は、管路13へ溢れ出し、電解槽11内の電解液41の上面43のレベル(鉛直方向の位置)は、一定に保持される。前記管路13へ溢れ出した電解液41は、図示しないポンプの作動により、その管路13を経て前記タンク内に移送される。
【0072】
管路14および15の一端側は、それぞれ、電解槽11の絶縁性液体42が貯留されている部位に対応する側部に接続されている。管路14の他端側からは、図示しないポンプの作動により、絶縁性液体42がその管路14を経て電解槽11内に供給されるようになっている。一方、管路15の一端側からは、図示しないポンプの作動により、電解槽11内の絶縁性液体42がその管路15を経て外部に排出されるようになっている。これにより、電解槽11内の電解液41と絶縁性液体42との界面44のレベル(鉛直方向の位置)を調整することができる。
【0073】
管路16は、コ字状をなしており、その一端側は、電解槽11の電解液41が貯留されている部位に対応する側部に接続され、他端側は、電解槽11の絶縁性液体42が貯留されている部位に対応する側部に接続されている。これにより、管路16内には、界面44が存在している。また、管路16は、光透過性を有する材料で構成されている。
【0074】
センサ18の発光部181および受光部182は、それぞれ、管路16を介して互いに対向するように、その管路16に設置されている。
【0075】
発光部181は、鉛直方向に長い形状をなしている。また、受光部182は、鉛直方向に沿って並設された複数の受光素子を有している。
【0076】
発光部181から発せられた光は、受光部182の各受光素子でそれぞれ受光され、その光量に応じた電流に変換され、さらに電圧に変換されて出力される。図示しない制御部(制御手段)は、前記電圧に基づいて、界面44のレベルを検知し、その界面44のレベルが目標レベルになるように、すなわち、界面44の位置が目標位置に位置するように、前記各ポンプの作動をそれぞれ制御し、前記電解槽11内への絶縁性液体42の供給や前記電解槽11内からの絶縁性液体42の排出を行って、界面44のレベルを調整する。
【0077】
このようにして、電解槽11内の電解液41の深さを調整することができる。この電解液41の深さの調整は、電解加工に際して行われる。また、前記電解液41の深さの調整においては、電解液41の深さを加工前長尺体32の電解加工を行う部位の長さと等しくする。
【0078】
電極17は、電解加工の際、陰極として使用される。この電極17は、電解槽11内に挿入され、その電解槽11内の電解液41に接触している。なお、加工前長尺体32の補強体層5は、電解加工の際、陽極として使用される。
【0079】
次に、カテーテル1の製造方法について説明する。
まず、図5(a)に示すように、金属製の芯材9の外周に内層(樹脂層)4を被覆し、長尺状のコア31を得る。芯材9の構成材料としては、特に限定されず、例えば、銅等の各種の金属材料を用いることができる。
【0080】
次に、図5(b)に示すように、コア31の内層4の外周に、線状体53を交差させて網状に編み込み、網状の編組体で構成される補強体層5を形成する。これにより、長尺状の加工前長尺体32が得られる。
【0081】
次に、図5(c)に示すように、補強体層5の先端部および基端部をそれぞれ除去する。この処理は、例えば、溶断等で行うことができる。
【0082】
次に、図6(d)に示すように、加工前長尺体32の補強体層5の先端部の外周に、マーカー8を固定する。この処理では、補強体層5の目標位置に、マーカー8を位置決めし、そのマーカー8と補強体層5との間に、例えば、紫外線硬化型の接着剤等の硬化性接着剤を供給し、紫外線を照射してその接着剤を硬化させる。これにより、前記硬化した接着剤によって、マーカー8が補強体層5の先端部に接着されると共に、補強体層5の先端部が内層4に接着される。この状態では、加工前長尺体32のマーカー8の先端側に、補強体層5が存在する。
【0083】
次に、図6(e)に示すように、補強体層5の基端部を内層4に固定する。この処理では、補強体層5の基端部に、例えば、紫外線硬化型の接着剤等の硬化性接着剤を供給し、紫外線を照射してその接着剤を硬化させる。これにより、前記硬化した接着剤33によって、補強体層5の基端部が内層4に接着される。この状態では、加工前長尺体32の接着剤33の基端側に、補強体層5が存在する。
【0084】
次に、図6(f)に示すように、マーカー8より先端側に位置する補強体層5と、接着剤33より基端側に位置する補強体層5とを、それぞれ、電解加工を行って除去する。マーカー8より先端側に位置する補強体層5を除去する先端側補強体層除去処理と、接着剤33より基端側に位置する補強体層5を除去する基端側補強体層除去処理とは、いずれを先に行ってもよい。また、先端側補強体層除去処理と、基端側補強体層除去処理とは、同様であるので、以下では、代表的に、先端側補強体層除去処理について説明する。
【0085】
まずは、図4に示す電解加工装置10に対し、電解槽11内の液体に加工前長尺体32の所定の部位が浸漬するように、その加工前長尺体32をセットする。すなわち、加工前長尺体32のマーカー8よりも先端側の部位を電解液41または絶縁性液体42に浸漬する。具体的には、加工前長尺体32の電解加工を行う部位が、電解槽11内の電解液41に浸漬し、その電解加工を行う部位より先端側の加工前長尺体32の電解加工を行わない部位が、絶縁性液体42に浸漬するようにする。
【0086】
図示の構成では、マーカー8の先端側の端面と電解液41の上面43とが一致し、加工前長尺体32のマーカー8より先端側の部位の途中に、電解液41と絶縁性液体42との界面44が位置するようになっている。この場合は、電解加工後において、加工前長尺体32のマーカー8より先端側の補強体層5が残存する部位を除去する。
【0087】
なお、この電解加工に際しては、前述したように、電解槽11内の電解液41の深さを目標の深さに調整する。
【0088】
次に、加工前長尺体32の補強体層5を陽極、電極17を陰極として電解液41に通電し、電解加工を行なう。これにより、マーカー8の先端側において、補強体層5の電解液41に浸漬している部位は、電解加工により除去され、加工前長尺体32の絶縁性液体42に浸漬している部位は、電解加工は行われない。
【0089】
また、マーカー8が白金、金またはこれらの合金等で構成されている場合は、この電解加工において、そのマーカー8が電解液に接触しても電解加工されない。
なお、前記基端側補強体層除去処理も前記先端側補強体層除去処理と同様にして行う。
【0090】
次に、図6(g)に示すように、電解加工が行われた加工前長尺体32の補強体層5が除去されていない部位(電解加工が行われていない部位)と、補強体層5が除去されていない部位と除去された部位との境界部と、補強体層5が除去された部位とを外層6で被覆し、芯材9を引き抜く。これにより、カテーテル本体2が得られる。
【0091】
前記外層6の形成方法は、特に限定されず、例えば、内層4や補強体層5の外周に外層6を形成する管状体を被せ、外層6の外周に熱収縮チューブを被せ、これを加熱して収縮させ、前記外層6を内層4および補強体層5等に密着させる方法(熱収縮チューブは収縮後除去する)や、コーティング、ディッピング、あるいはスプレー等による塗布法等が挙げられる。
【0092】
次に、カテーテル本体2の基端21にハブ7を装着する。これにより、カテーテル1が得られる。
【0093】
以上説明したように、このカテーテル1の製造方法によれば、加工前長尺体32の電解加工を行わない部位をマスク等で被覆する工程が不要であり、これにより、容易かつ迅速に、カテーテル1を製造することができる。
【0094】
また、電解加工の際は、加工前長尺体32の電解液41に浸漬している部位の補強体層5のみに電解加工が行われ、加工前長尺体32の絶縁性液体42に浸漬している部位は、電解加工が行われないので、確実に、目的の部位のみに対し、電解加工を行うことができ、補強体層5の目的の部位のみを除去することができる。これにより、歩留りを向上させることができる。
【0095】
ここで、本発明では、絶縁性液体42は、電解液41と比重が異なる絶縁性を有する液体であればよい。すなわち、絶縁性液体42は、電解液41より比重が大きくてもよく、電解液41より比重が小さくてもよい。絶縁性液体42の比重が電解液41の比重より小さい場合、電解液41の液面が毛細管現象により加工前長尺体32に沿って元の液面から鉛直上方に移動することを防止できる。したがって、電解加工を行う部位の位置決めを容易かつ確実に行うことができる。
【0096】
また、電解槽11内に電解液41より比重が大きい絶縁性液体(第1の液体)および電解液41より比重が小さい絶縁性液体(第2の液体)を貯留し、これらの絶縁性液体の間に電解液41が介在していてもよい。すなわち、電解液41より比重が大きい絶縁性液体(第1の液体)と比重が小さい絶縁性液体(第2の液体)とを同時に用いて、電解液41の層をその上下から前記絶縁性液体の層で挟んでもよい。このように比重が電解液41より大きい絶縁性液体および小さい絶縁性液体を同時に用いることにより、電解加工を行う部位の位置決めを容易かつ確実に行うことができる。
【0097】
なお、電解槽内に電解液のみが貯留されており、マスク等を設けずに、加工前長尺体32の電解加工を行う部位のみをその電解液に浸漬して電解加工を行う場合には、加工前長尺体32をU字状に湾曲させて電解槽内に挿入するので、短い部位に対しては電解加工を行うことはできないが、このカテーテル1の製造方法では、短い部位に対しても容易に電解加工を行うことができる。また、前記マスク等を設けない方法の場合には、加工前長尺体32をU字状に湾曲させて電解槽内に挿入するので、補強体層5の一部を除去した後のその補強体層5の端面が、加工前長尺体32の軸に対して傾斜してしまうが、このカテーテル1の製造方法では、前記補強体層5の端面を加工前長尺体32の軸に対して垂直にすることができる。
【0098】
<第2実施形態>
図7は、本発明の医療用長尺体の製造方法の第2実施形態において使用する電解加工装置の構成を示す図である。以下では、図7中の左側を「左」、右側を「右」、上側を「上」または「基端(後端)」、下側を「下」または「先端」として説明を行う。なお、図7中の上下方向が鉛直方向である。
【0099】
以下、第2実施形態について、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0100】
図7に示すように、第2実施形態では、電解加工装置10の電解槽11の底部に、加工前長尺体34が挿通し得る開口63が形成されており、その開口63を開閉し得る弁体機構61が設置されている。加工前長尺体34が開口63を挿通しているときは、弁体機構61により開口63が開く。また、加工前長尺体34が開口63を挿通していないときは、弁体機構61により開口63が閉じ、これにより、電解槽11内の絶縁性液体42や電解液41がその開口63から外部に流出してしまうことを防止することができる。
【0101】
また、電解槽11の開口63に臨む縁部には、その縁部と、開口63を挿通している加工前長尺体34との間を液密に封止するシール部材62が設置されている。
【0102】
また、本実施形態における加工前長尺体34のその軸方向の長さは、前述した第1実施形態における加工前長尺体32の複数本分の長さを有している。これにより、加工前長尺体34から、複数のカテーテル1を製造することができる。
【0103】
次に、カテーテル1の製造方法について説明する。
本実施形態では、電解加工装置10において、加工前長尺体34に対し電解加工を行った後、加工前長尺体34をその軸方向(長手方向)、すなわち、鉛直下方(先端方向)に移動させてその加工前長尺体34の電解液41に浸漬する部位を変更し、新たな当該部位に電解加工を行なう。すなわち、加工前長尺体32の前回電解加工を行った部位との間に電解加工が行われない部位が設けられるように加工前長尺体32を移動させて電解加工を行う。
【0104】
この加工前長尺体34の移動量は、加工前長尺体34の次のカテーテル1に対応する部分における電解加工を行う部位が、電解槽11内の電解液41に浸漬し、その電解加工を行う部位より先端側の電解加工を行わない部位が、絶縁性液体42に浸漬するように設定される。
【0105】
また、加工前長尺体34の移動方向は、鉛直下方であり、その加工前長尺体34の移動に際し、加工前長尺体34は、電解槽11の底部の開口63から外部に排出されてゆく。
【0106】
なお、加工前長尺体34の移動方向が鉛直上方の場合は、加工前長尺体34に対し電解加工を行った後、加工前長尺体34を移動させて電解加工を行なう際、電解液41が加工前長尺体34の電解加工を行わない部位に付着し、その付着した電解液41と電解槽11内の電解液とが導通し、本来電解加工を行わない部位電解加工されてしまう虞があるが、このカテーテル1の製造方法では、加工前長尺体34の移動方向が下方であるので、本来電解加工を行わない部位が電解加工されてしまうことを防止することができる。
【0107】
前記電解加工を繰り返し行って、加工前長尺体34の最後まで電解加工が終了すると、その電解加工が終了した加工前長尺体34の補強体層5が除去されていない部位(電解加工が行われていない部位)と、補強体層5が除去されていない部位と除去された部位との境界部と、補強体層5が除去された部位とを外層6で被覆し、芯材9を引き抜く。これにより、複数のカテーテル本体2がその軸方向に連結された状態の連結体が得られる。
【0108】
次に、前記連結体を複数の個々のカテーテル本体2となるように切断し、各カテーテル本体2の基端21にそれぞれハブ7を装着する。これにより、複数のカテーテル1が得られる。
【0109】
このカテーテル1の製造方法によれば、前述した第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0110】
そして、このカテーテル1の製造方法では、加工前長尺体34を移動させ、次々と電解加工を行うことができるので、生産性を向上させることができる。
【0111】
なお、電解加工の対象でない部分(電解加工したくない部分)が加工前長尺体34の電解加工の目的部位に対して基端側(上側)にある場合、絶縁性液体42として、電解液41より比重が小さい絶縁性液体を使用し、これらを重層することにより電解槽を形成することができる。このような場合は、前記の電解加工において、加工前長尺体34を鉛直上方に移動させることになり、加工前長尺体34は、その移動に際し、電解槽の上部から外部に排出されてゆく。また、前記の場合、電解液41より比重が大きい絶縁性液体(第1の液体)と比重が小さい絶縁性液体(第2の液体)とを同時に用いて、電解液41の層をその上下から前記絶縁性液体の層で挟んでもよい。このように比重が電解液41より大きい絶縁性液体および小さい絶縁性液体を同時に用いることにより、電解加工を行う部位の位置決めを容易かつ確実に行うことができる。
【0112】
以上、本発明の医療用長尺体の製造方法を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、他の任意の工程が付加されていてもよい。
【0113】
また、前記実施形態では、電解加工により補強体層(線材)の一部を除去する場合について説明したが、本発明では、これに限定されず、例えば、電解加工により補強体層(線材)の一部を研磨して(薄くして)、その補強体層の強度を調節してもよい。また、電解加工により補強体層(線材)の一部を研磨してその線材の幅(軸に対して垂直な方向の長さ)を減少させ、線材間の間隙距離を大きくし、補強体層の強度を調節してもよい。
【0114】
また、本発明では、カテーテルの用途は、特に限定されず、例えば、ガイディングカテーテル、造影用カテーテル、PTCA用、PTA用、IABP用等の各種バルーンカテーテル、超音波カテーテル、アテレクトミーカテーテル、内視鏡用カテーテル、留置カテーテル、薬液投与用カテーテル、血管狭窄部の貫通用や、脳や肝臓等の臓器に導入される塞栓術用カテーテル(マイクロカテーテル)、金属補強体を有するシース(例えば、ガイディングシース)等の種々のカテーテルに適用することができる。
【0115】
また、前記実施形態では、医療用長尺体は、カテーテルであるが、本発明では、医療用長尺体は、長尺状のコアとそのコアの外周に設けられた金属製の線材とを有するものであれば、これに限定されず、例えば、ガイドワイヤー等であってもよい。
【符号の説明】
【0116】
1 カテーテル
2 カテーテル本体
21 基端
22 主要部分
23 先端部
3 ルーメン
4 内層
5 補強体層
53 線状体
6 外層
7 ハブ
8 マーカー
9 芯材
10 電解加工装置
11 電解槽
12〜16 管路
17 電極
18 センサ
181 発光部
182 受光部
31 コア
32、34 加工前長尺体
33 接着剤
41 電解液
42 絶縁性液体
43 上面
44 界面
61 弁体機構
62 シール部材
63 開口
100 マスク
200 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状のコアと、該コアの外周に設けられた金属製の線材とを有する医療用長尺体の製造方法であって、
電解液と該電解液と比重が異なる絶縁性を有する絶縁性液体とが互いに分離した状態で貯留された電解槽内の液体に、前記コアの外周に前記線材が設けられた加工前長尺体の所定の部位を浸漬し、前記加工前長尺体の前記線材を陽極として前記電解液に通電し、前記線材の前記電解液に浸漬している部位を電解加工し、前記加工前長尺体の前記絶縁性液体に浸漬している部位は、電解加工が行われないようにすることを特徴とする医療用長尺体の製造方法。
【請求項2】
前記絶縁性液体は、前記電解液よりも比重が大きい液体または前記電解液よりも比重が小さい液体である請求項1に記載の医療用長尺体の製造方法。
【請求項3】
前記絶縁性液体は、前記電解液よりも比重が大きい第1の液体および前記電解液よりも比重が小さい第2の液体を含み、
前記電解液は、前記第1の液体と前記第2の液体との間に介在している請求項1に記載の医療用長尺体の製造方法。
【請求項4】
前記加工前長尺体に造影性を有するマーカーが設けられており、
前記加工前長尺体の前記マーカーよりも先端側の部位を電解加工する請求項1ないし3のいずれかに記載の医療用長尺体の製造方法。
【請求項5】
前記マーカーは、電解加工に際して前記電解液に接触しても電解加工されない金属材料で構成されている請求項4に記載の医療用長尺体の製造方法。
【請求項6】
電解加工を行った後、前記加工前長尺体を長手方向に移動させて該加工前長尺体の前記電解液に浸漬する部位を変更し、新たな当該部位に電解加工を行なう請求項1ないし5のいずれかに記載の医療用長尺体の製造方法。
【請求項7】
前記加工前長尺体の移動方向は、鉛直下方であり、前記加工前長尺体は、前記移動に際し、前記電解槽の底部から外部に排出されてゆく請求項6に記載の医療用長尺体の製造方法。
【請求項8】
前記加工前長尺体の移動方向は、鉛直上方であり、前記加工前長尺体は、前記移動に際し、前記電解槽の上部から外部に排出されてゆく請求項6に記載の医療用長尺体の製造方法。
【請求項9】
前記加工前長尺体の前回電解加工を行った部位との間に電解加工が行われない部位が設けられるように前記加工前長尺体を移動させて電解加工を行う請求項5ないし8のいずれかに記載の医療用長尺体の製造方法。
【請求項10】
電解加工に際し、前記電解槽内の前記電解液の深さを調整する請求項1ないし9のいずれに記載の医療用長尺体の製造方法。
【請求項11】
前記電解液の深さの調整においては、前記電解液の上面のレベルを一定にし、前記電解液と前記絶縁性液体との界面のレベルを調整する請求項10に記載の医療用長尺体の製造方法。
【請求項12】
前記電解液の深さの調整においては、前記電解液の深さを前記加工前長尺体の電解加工を行う部位の長さと等しくする請求項10または11に記載の医療用長尺体の製造方法。
【請求項13】
電解加工により、前記線材を除去または研磨する請求項1ないし12のいずれかに記載の医療用長尺体の製造方法。
【請求項14】
前記絶縁性液体は、フッ素系の液体である請求項1ないし13のいずれかに記載の医療用長尺体の製造方法。
【請求項15】
電解加工が行われた前記加工前長尺体の電解加工が行われていない部位を外層で被覆する請求項1ないし14のいずれかに記載の医療用長尺体の製造方法。
【請求項16】
前記コアは、金属製の芯材と、該芯材の外周に設けられた絶縁性を有する樹脂層とを備える請求項1ないし15のいずれかに記載の医療用長尺体の製造方法。
【請求項17】
前記線材は、前記コアの外周に網状またはコイル状に形成されている請求項1ないし16のいずれかに記載の医療用長尺体の製造方法。
【請求項18】
前記医療用長尺体は、カテーテルであり、前記線材により、補強体層が形成されている請求項1ないし17のいずれかに記載の医療用長尺体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−72563(P2011−72563A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227172(P2009−227172)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】