説明

医科歯科診療用キャビネット

【課題】従来、医科歯科診療用のキャビネットは、その重量を各構成要素で支えており、厚く太い堅牢な部材と強固で複雑な構造とが必要であったため、低コスト化が困難で、収納部内部及び開口部も狭く、デザイン上の制約も多かった。本発明では一本の支柱で重量を支えるシンプルな構造のキャビネットを提供する。
【解決手段】床に立設された支柱と、該支柱の背面に固定・支持された背板と、該背板の途中位置に前方へ背板の全幅にわたって水平に突設された細長いテーブル部と、該細長いテーブル部の下側の背板に前方に突設された収納箱と、前記細長いテーブル部の上方に、支柱に回動自在に支承されたアームとその先端に取付けられた表示パネル及び、先端にインスツルメントテーブルが取着され、基部が底板部に取着された多関節アームを備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は医科歯科診療用キャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医科歯科診療用キャビネットは、診療空間を区分する背板と、同背板の片側又は両側に配設された収納箱と、水平な細長いテーブル部及び、別床面に配設された多関節アームとその先端に装着されたインスツルメントテーブルから構成されるものがあったが、キャビネットの重量は、直接床面に接触する構成要素の底面で支えられていた。
【特許文献1】特開2004−24534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記医科歯科診療用キャビネットの重量を、直接床面に接触する構成要素の底面で支えるためには、厚く太い堅牢な部材と、強固で複雑な構造とが必要であった。
そのため、低コスト化が困難で、収納箱の内部及び開口部も狭くなり、デザイン上の制約も多く自由な設計ができなかった。
本発明では、キャビネットの重量を、一本の支柱で支えるシンプルな構造としたことにより、支柱以外は薄く細い軽量な部材で構成することが可能になり、収納箱も広くまた大きく開口でき、デザインの自由度が高く、低コストで製作可能な医科歯科診療用キャビネットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記に鑑み本発明者は鋭意実験研究の結果下記の手段によりこの課題を解決した。
(1)床面に立設された一本の支柱と、該支柱の背面に固定・支持された背板と、該背板の途中位置に前方へ背板の全幅にわたって水平に突設された細長いテーブル部と、該細長いテーブル部の下側の背板に前方に突設された収納箱とからなることを特徴とする医科歯科診療用キャビネット。
(2)支柱の背面に固定・支持された背板が、該支柱の左右に延設されてなることを特徴とする前項(1)に記載の医科歯科診療用キャビネット。
(3)医科歯科診療用キャビネットが、その下部位置に前方へ背板の全幅にわたって水平に突設された細長い底板部と、先端にインスツルメントテーブルが取着され、基部が前記底板部に取着された多関節アームとを備えてなることを特徴とすることを特徴とする前項(1)又は(2)に記載の医科歯科診療用キャビネット。
(4)医科歯科診療用キャビネットの支柱の背面に固定・支持された背板が、上下に区分され、上方の背板が透明又は半透明なものであることを特徴とする前項(1)〜(3)のいずれか1項に記載の医科歯科診療用キャビネット。
(5)医科歯科診療用キャビネットが、細長いテーブルの上方に支柱に回動自在に支承されたアームとその先端に取り付けられた表示パネルとを備えてなることを特徴とする前項(1)〜(4)のいずれか1項に記載の医科歯科診療用キャビネット。
【発明の効果】
【0005】
1、本発明の請求項1の発明によれば、
床面に立設された支柱と、該支柱の背面に固定・支持された背板と、該背板の途中位置に前方へ背板の全幅にわたって水平に突設された細長いテーブル部と、該細長いテーブル部の下側の背板に前方に突設された収納箱とからなるため、
一本の支柱で全体の重量を支えるシンプルな構造となり、前記支柱以外は薄く細い軽量な部材で構成することが可能になり、収納箱も広くまた大きく開口でき、デザインの自由度が高く、低コストで製作可能となる。
2、請求項2の発明によれば、
支柱の背面に固定・支持された背板が、支柱の左右に延設されてなるため、安定性が良く、シンプルなデザインで外観が優れている。
【0006】
3、請求項3の発明によれば、
医科歯科診療用キャビネットが、その下部位置に前方へ背板の全幅にわたって水平に突設された細長い底板部と、先端にインスツルメントテーブルが取着され、基部が前記底板部に取着された多関節アームとを備えてなるため、
前記インスツルメントテーブルの重量はキャビネットの支柱には掛からず、またインスツルメントテーブルの近傍に設置されている、例えば医科歯科診療用チェアユニットと共に使用することにより、効率良く適切な診療を行うことができる。
4、請求項4の発明によれば、
医科歯科診療用キャビネットの支柱の背面に固定・支持された背板が、上下に区分され、上方の背板が透明又は半透明なものであるため、
診療に必要な照明又は外部からの光を必要以外に遮ることがなく、快適な診療環境を得ることができる。
5、請求項5の発明によれば、
医科歯科診療用キャビネットが、細長いテーブル部の上方に支柱に回動自在に支承されたアームとその先端に取り付けられた表示パネルとを備えてなるため、
診療に関連した情報を前記表示パネルに表示し、アームを回動して最も見やすい位置に
セットできるので、効率の良い診療とインフォオームド・コンセントに有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
発明を実施するための最良の形態を以下に説明する。
使途は、これに限定されないが、本例では歯科診療用キャビネットを実施例とする。
【実施例】
【0008】
歯科診療用として、歯科診療用チェアユニットと共に使用され、効率よく診療とインフォームド・コンセントが行える歯科診療用キャビネットについて説明する。
図1は、歯科診療用キャビネットを左前方より見た外観斜視図で一部透視図である。 図2は、歯科診療用キャビネットを右前方より見た外観斜視図である。
図において 1は、歯科診療用キャビネット、2は支柱、2’は基部、3は上方の背板、4は下方の背板、5は収納箱、5’は収納箱扉、6は細長いテーブル部、7はアーム、7’は回動軸、8は通線カバー、8’は脚、9は基礎板カバー、10は多関節アーム、10’は基部、11はインスツルメントテーブル、12は表示パネル、13、13’は支持具、14は下方の背板留め具、15は上方背板上部留め具、16は上方背板挿入溝、17は基礎板、20は支持具、21は格納空間部、22は底板部を示す。
【0009】
本図では、インスツルメントテーブル11は、歯科診療用キャビネット1下部の空間部21に格納されており、また、前記歯科診療用キャビネット1の近くに設置されている。なお、歯科診療用チェアユニットは、図示されていない。
前述のように、本歯科診療用キャビネットは、支柱2によって、上方の背板3,下方の背板4、収納箱5、細長いテーブル部6及びアーム7の各構成要素が支持されている。また、多関節アーム10は、支柱2の基部2’と共通の基礎板17に、前記支柱2の基部2’から離れた位置に基部10’が固定されているため、
多関節アーム10の先端に装着されるインスツルメントテーブル11と共に、加重は全く支柱2には掛からない。
そして、前記シンプルな構造のため外観は優美である。
【0010】
前記支柱2は、床面に据え付けられた基礎板17に固定され、そこから立設されている。支柱2には高い強度を有する金属等の材料が使用されている。
下方の背板4は、下方の背板留め具14(点線)によって、図のように途中位置が支柱2の裏側に強固に取付けられており、そして前方から見て支柱2の左右に延設されている。
また、前記下方の背板4の下端は、脚8’を介して床に接触しているが、下方の背板4の重量は支柱2が支えているため、床へは加重が殆ど掛かっていない。
また、前記下方の背板4の上端には、上方背板挿入溝16が凹設されており、前記上方の背板3の下端が挿嵌されている。
さらに、上方の背板3の上端は、上方背板上部留め具15によって支柱2に固着されている。
前記上方の背板3の素材は、透明あるいは半透明の、合成樹脂あるいはガラス等である。
【0011】
また、下方の背板4の左下方には、例えば収納箱5内部の背面を下方の背板4に螺着する等、下方の背板4を介して前記支柱2に間接的に支持された収納箱5が配設されている。
前記収納箱5は、太い柱や厚い部材を必要としないため広い容積を確保でき、また側方に大きく開く扉を有しており、かつ軽量である。
【0012】
さらに、図1に示したように、前記収納箱5の右隣の部分には、前記支柱2の基礎板17と同一の基礎板に、前記支柱の2の基部2’から離れた箇所に多関節アームの基部10’が固定されている(本図では基礎板17は同一としたが、前記のように多関節アームの基部10’の基礎板の部分は分離してもよい)。
そして、歯科診療用キャビネット1の下部位置には、前方へ下方の背板4の全幅にわたって水平に突設された細長い底板部22が配設されている。
該底板部22において、多関節アーム10の下部及び収納箱5の下部に台状に見えるのは前記基礎板17を隠すための、収納箱5の通線カバー8及び多関節アーム10の基礎板カバー9であり、前記歯科診療用キャビネット1には加重は掛からない。
【0013】
そして、図のように、先端が上下しかつ前方水平方向に回動する多関節アーム10の先端には、インスツルメントテーブル11が配設されており、格納空間部21に格納されている。
また、前記インスツルメントテーブル11は、診療時には前方の所要診療位置に引き出される(図2)。
【0014】
歯科診療用キャビネット1は、支柱2の背面に支持具20によって、固定・支持された下方の背板4の途中位置に、前方へ背板の全幅にわたって水平に突設された細長いテーブル部6を有するが、
該細長いテーブル部6は、さらに下方の背板4上部から支持具13、13’(図2)によって補助的に支持されている。
【0015】
また、前記細長いテーブル部6の上部には、前記支柱2に回動自在に支承されたアーム7を有している。
該アーム7の回動の部分は、例えば回動軸7’の部分の支柱2は、外周の肉厚が削られて細くなっており、その凹んだ部分に、前記回動軸7’の内周が摺接するように構成されている。
したがって、アーム7の重量は支柱2のみにかかり、また前記左右に回動するので見やすい位置に設定することができる。
【0016】
そして、診療の場合には、前記アーム7の先端に表示パネル12が取着されているので、歯科診療用キャビネット1においては、診療に適応した位置に表示パネル12を移動させることができると共に、
施術やインフォームド・コンセントに関連した診療情報を、前記収納箱5に収納されている、情報作成及び伝達用のコンピュータ(図示せず)を介して、表示パネル12に表示できるため、適切な診療やインフォームド・コンセントを効率良く行うことができる。 図1は、前記表示パネル12を右に回動させ、前記インスツルメントテーブル11を格納空間部21に格納した状態、図2は、表示パネル12を左に回動させ、前記インスツルメントテーブル11を前方に引き出した状態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】歯科診療用キャビネットを左前方より見た外観斜視図、一部透視図
【図2】歯科診療用キャビネットを右前方より見た外観斜視図
【符号の説明】
【0018】
1:歯科診療用キャビネット
2:支柱
2’:基部
3:上方の背板
4:下方の背板
5:収納箱
5’:収納箱扉
6:細長いテーブル部
7:アーム
7’:回動軸
8:通線カバー
8’:脚
9:基礎板カバー
10:多関節アーム
10’:基部
11:インスツルメントテーブル
12:表示パネル
13、13’:支持具
14:下方の背板留め具
15:上方背板上部留め具
16:上方背板挿入溝
17:基礎板
20:支持具
21:格納空間部
22:底板部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に立設された一本の支柱と、
該支柱の背面に固定・支持された背板と、
該背板の途中位置に前方へ背板の全幅にわたって水平に突設された細長いテーブル部と、該細長いテーブル部の下側の背板に前方に突設された収納箱とからなることを特徴とする医科歯科診療用キャビネット。
【請求項2】
支柱の背面に固定・支持された背板が、該支柱の左右に延設されてなることを特徴とする請求項1記載の医科歯科診療用キャビネット。
【請求項3】
医科歯科診療用キャビネットが、その下部位置に前方へ背板の全幅にわたって水平に突設された細長い底板部と、先端にインスツルメントテーブルが取着され、基部が前記底板部に取着された多関節アームとを備えてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の医科歯科診療用キャビネット。
【請求項4】
医科歯科診療用キャビネットの支柱の背面に固定・支持された背板が、上下に区分され、上方の背板が透明又は半透明なものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の医科歯科診療用キャビネット。
【請求項5】
医科歯科診療用キャビネットが、細長いテーブルの上方に支柱に回動自在に支承されたアームとその先端に取り付けられた表示パネルとを備えてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の医科歯科診療用キャビネット。


【図1】
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【図2】
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