説明

医薬品適用のための熱−動力学的混合

医薬剤形を製造するための組成物及び方法には、熱動力学的配合により複合材料にすることによって1又は複数の原薬(API)を1又は複数の薬学的に許容される賦形剤とともに含む医薬組成物を製造することが含まれる。1又は複数のAPIを1又は複数の賦形剤とともに含む複合材料を前処理する組成物及び方法は、APIを賦形剤とともに熱動力学的処理して複合材料にすることを含む熱動力学的配合が含まれ、複合材料は、ホットメルト押出、溶融造粒、圧縮成形、錠剤圧縮、カプセル充填、フィルムコーティング、又は射出成形など、当技術分野で知られる従来の方法によってさらに処理することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に医薬品製造の分野、より具体的には、新規な剤形を製造するための原薬(API)の熱−動力学的混合に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品業界で用いられる現在の高処理分子スクリーニング方法は、低水溶性である、新しく発見された分子実体の割合の膨大な増加をもたらしている(Lipinski, C. A. Avoiding investment in doomed drugs, is poor solubility an industry wide problem? Current Drug Discovery 2001:17-9、Lipinski, C. A., Lombardo, F., Dominy, B. W., Feeney, P. J. Experimental and computational approaches to estimate solubility and permeability in drug discovery and development settings. Advanced Drug Delivery Reviews 1997;23(1-3):3-25、Lipinski, C. A. Poor Aqueous Solubility - an Industry Wide Problem in Drug Delivery. American Pharmaceutical Review 2002;5:82-5)。これらの分子の多くの治療可能性は、不十分な薬物動態学的なプロファイルにより開発中に分子が破棄されるため又は最適以下の製品性能のため、完全に実現されていないことが多い。また、近年では、医薬品業界は、中性又は弱酸性/塩基性薬物の化学修飾及び塩の形成の実用上の制限により、薬物の溶解性を改善するための配合方法により大きく依存し始めている(Serajuddin, A. T. M. Solid Disperison of Poorly Water-Soluble Drugs: Early Promises, Subsequent Problems, and Recent Breakthroughs. Journal of Pharmaceutical Sciences 1999;88(10):1058-66)。その結果、低水溶性の薬物の溶解特性を強化することを目的とした進歩的な配合技術は、現代の薬物送達にますますより重要になっている。
【0003】
Guptaの米国特許第4,789,597号明細書は、樹脂粒子上の化学的に反応する作用物質(agent)の組込みを対象とする。簡単に言えば、化学的に反応する作用物質は、樹脂を完全に溶融させずに適当な合成樹脂の粒子に固定される。高品質の中間生成物は、さらなる技法に適した、発生する中途の反応をせずに得られる。その過程は、密閉された混合槽中でその槽内で中心軸の周囲を回転し、1秒当たり少なくとも約18メートルの羽根先のスピードを有するアームに結合した複数の羽根を用いて、微粉砕した樹脂粒子のバッチを、化学的に反応する作用物質と集中的に混合し熱動力学的に加熱するステップ、化学的に反応する作用物質が樹脂粒子に固定されるまでバッチを混合するステップ、バッチの温度が反応性作用物質の分解温度より下及び樹脂粒子の溶融温度より下に維持することを保証するステップ、バッチを混合槽から排出するステップ、樹脂粒子が凝集しないように排出されたバッチを冷却するステップが含まれる。
【0004】
Goodの米国特許第5,895,790号明細書は、広範囲のポリマーブレンドを熱硬化させることを対象とする。簡単に言えば、広範囲のポリマーブレンド及び廃棄熱可塑性物質は回収することができる。広範囲のポリマーブレンドを熱硬化させる1つの方法により、均質で適合可能な第1の方法の物質を形成する。この物質は、メルトインデックス0及び比較的予想可能な密度を有する。非常に高いレベルの繊維状の非ポリマーは、その第1の方法の物質に加えることができる。
【0005】
Littleの米国特許第6,709,146号明細書は、熱動力学的なミキサー及び使用方法を対象とする。簡単に言えば、熱動力学的なミキサーは、少なくとも部分的に移動可能な及びプロジェクションをシャフトから切り離さずに入れ替え可能なシャフトプロジェクションを有する混合槽を有する。他の実施形態では、かかるプロジェクションの先端部分のみ、かかる切断をせずに移動可能であり入れ替え可能である。他の実施形態では、混合槽内のシャフトプロジェクションには、歯に当たるほぼ全ての混合槽の粒子が、偏向する表面からほぼ外側の入射角で偏向されるように、偏向する表面を形成する実質的に網状の表面を有する歯が含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,789,597号明細書
【特許文献2】米国特許第5,895,790号明細書
【特許文献3】米国特許第6,709,146号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】1. Lipinski, C. A. Avoiding investment in doomed drugs, is poor solubility an industry wide problem? Current Drug Discovery 2001:17-9
【非特許文献2】2. Lipinski, C. A., Lombardo, F., Dominy, B. W., Feeney, P. J. Experimental and computational approaches to estimate solubility and permeability in drug discovery and development settings. Advanced Drug Delivery Reviews 1997;23(1-3):3-25
【非特許文献3】3. Lipinski, C. A. Poor Aqueous Solubility - an Industry Wide Problem in Drug Delivery. American Pharmaceutical Review 2002;5:82-5
【非特許文献4】4. Serajuddin, A. T. M. Solid Disperison of Poorly Water-Soluble Drugs: Early Promises, Subsequent Problems, and Recent Breakthroughs. Journal of Pharmaceutical Sciences 1999;88(10):1058-66
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、短い処理時間、低い処理温度、高いずり速度、及びより均質な複合材料中で熱に適合しない物質を混合する能力など多数の利点を提供する、医薬品製造の分野における熱動力学的配合(TKC)方法の適用を対象とする。このような独特の特性により、TKCは、従来の医薬品処理作業よりも医薬組成物を効率的に作製する方法を提供し、いくつかの場合において、従来の方法で実現することができない組成物の作製を可能にする。したがって、TKCの医薬品製造への適用は、処理効率、組成能力、並びに、例えば、固体分散体などの進歩的な製剤設計の剤形の商業的実行可能性に関して、相当な進歩を表す。さらに、TKCは、全く新規な医薬品製造方法である。
【0009】
本開示の実施形態は、1又は複数の原薬(API)を1又は複数の薬学的に許容される賦形剤とともに熱動力学的処理して複合材料にすることによって、1又は複数のAPIを1又は複数の薬学的に許容される賦形剤とともに含む医薬組成物を熱動力学的配合により製造する方法を対象とする。TKCにより作製した新規な医薬組成物又は複合材料は、さらに、最終生成物へのホットメルト押出、溶融造粒、圧縮成形、錠剤圧縮、カプセル充填、フィルムコーティング、又は射出成形を含むがそれだけに限らない、当業者に周知の方法に従って処理することができる。いくつかの実施形態において、TKCにより作製した複合材料は、最終生成物である。
【0010】
一態様では、複合材料は、均質な、不均一な若しくは不均一に均質な複合材料又は非晶質の複合材料である。他の態様では、熱動力学的処理は、処理剤を用いて又は用いずに行うことができる。処理剤の例としては、可塑剤、熱性滑剤、有機溶媒、溶融混合を容易にする作用物質、及び後処理プロセスを容易にする作用物質(例えば、レシチン)が含まれる。熱動力学的処理は、熱動力学的な槽の中で実施することができる。熱動力学的な槽は、TKCを行う、密閉された容器又は槽である。一態様では、槽内の平均温度は、処理期間にわたって、複合材料中の1又は複数のAPI及び1又は複数の薬学的に許容される賦形剤の最適な熱動力学的混合を実現するために事前定義された最終温度に上昇させる。処理の長さ及び熱動力学的混合中の温度上昇への曝露の長さは、一般に、API、賦形剤又は両方の熱感受性閾値より下である。複合材料はまた、キャリア、例えば、高い溶融粘度を有するポリマーを含むことができる。他の態様では、1又は複数のAPIの放出速度プロファイルは、組成物の1又は複数の賦形剤によって決定される。そのようなものとして、組成物は、即時放出、混合放出、延長放出又はそれらの組合せについて配合することができる。
【0011】
他の態様では、1又は複数のAPIの粒径は、APIが混和性でない賦形剤/キャリア系、相容性でない賦形剤/キャリア系、又は混和性でも相容性でもない賦形剤/キャリア系において縮小する。一態様では、1又は複数のAPIは、賦形剤を有するナノ複合材料、キャリアを有するナノ複合材料、又は賦形剤及びキャリアを有するナノ複合材料である。他の態様では、熱動力学的処理は、API又は賦形剤の1又は複数の融点又はそれ以下の平均温度で行う;熱動力学的処理は、API又は賦形剤の1又は複数のガラス転移温度又はそれ以下の平均温度で行う;又は、熱動力学的処理は、API又は賦形剤の1又は複数の融解転移点(molten transition point)又はそれ以下の平均温度で行う。
【0012】
他の態様では、APIは、低分子の有機分子、タンパク質、ペプチド、又はポリ核酸となり得る。APIの水溶解性は、低可溶性となり得る。当業者に周知の任意の薬学的に許容される賦形剤は、本明細書に開示される複合材料及び組成物を作製するために用いることができる。本発明に使用する賦形剤の例としては、それだけには限らないが、例えば、薬学的に許容されるポリマー、熱不安定性ポリマーの賦形剤、又は非ポリマーの賦形剤が含まれる。賦形剤の他の限定しない例には、ラクトース、グルコース、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸、水、単シロップ、グルコース溶液、デンプン溶液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、シェラック、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、カルメロースカルシウム、デンプン及びラクトースの混合物、スクロース、バター、硬化油、四級アンモニウム塩基及びラウリル硫酸ナトリウムの混合物、グリセリン及びデンプン、ラクトース、ベントナイト、コロイド状ケイ酸、タルク、ステアラート、及びポリエチレングリコール、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポロキサマー(ポリエチレン−ポリプロピレングリコールブロックコポリマー)、スクロースエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸、ラウリン酸、ビタミンE TPGS、ポリオキシエチル化グリコール分解グリセリド、ジパルミトイルホスファジチルコリン(dipalmitoyl phosphadityl choline)、グリコール酸及び塩、デオキシコール酸及び塩、フシジン酸ナトリウム、シクロデキストリン、ポリエチレングリコール、ポリグリコール化グリセリド、ポリビニルアルコール、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、ポリビニルピロリドン、ホスファチジルコリン誘導体、セルロース誘導体、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)及びそれらのブレンド、組合せ及びコポリマーから選択される生体適合性のあるポリマーが含まれる。
【0013】
他の態様では、本発明の方法、組成物及び複合材料は、経口、直腸、経膣、局所、尿道、経耳、経眼又は経皮投与に適合することができる。本開示の1つの利点として、熱動力学的処理は、API及び賦形剤の分解を実質上なくす。例えば、いくつかの実施形態において、熱動力学的処理は、それぞれのAPIの約1.0%、0.75%、0.5%、0.1%、0.05%又は0.01%未満の分解生成物を含む組成物及び複合材料を作製することができる。この利点は、通常、熱処理中にかなりの分解を起こす熱不安定性API、並びに酸化を受けやすいAPIにとって重要である。他の実施形態では、熱動力学的処理は、それぞれのAPIに関して最低で少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99.9%の薬物の効力を有する組成物を作製することができる。熱動力学的処理の例は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、75、100、120、150、180、240及び300秒未満で実施することができる。一般に、熱動力学的処理は、5〜120秒、7〜180秒、10〜60秒、15〜45秒、及び20〜30秒で実施することができる。一態様では、APIは、非晶質の形態、結晶の形態、又は中間体の形態を有する。
【0014】
本発明の他の実施形態には、1又は複数のAPIを1又は複数の薬学的に許容される賦形剤とともに熱動力学的処理して複合材料にすることにより、1又は複数の薬学的に許容される賦形剤とともに1又は複数の原薬(API)を有する複合材料を熱動力学的配合によって処理する方法が含まれる。本発明の他の実施形態には、1又は複数のAPIを1又は複数の薬学的に許容される賦形剤とともに熱動力学的処理して複合材料にすることにより、1又は複数の薬学的に許容される賦形剤とともに1又は複数の原薬(API)を有する複合材料を熱動力学的配合によって前処理する方法が含まれる。その方法は、さらに、ホットメルト押出、溶融造粒、圧縮成形、錠剤圧縮、カプセル充填、フィルムコーティング又は射出成形により、複合材料を処理することが含まれる。一態様では、熱動力学的処理のステップは、処理剤を含まない。処理剤の例には、可塑剤、熱性滑剤、有機溶媒、溶融混合を容易にする作用物質、及び後処理プロセスを容易にする作用物質からなる群から選択されるものが含まれる。熱動力学的処理は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、75、100、120、150、180、240及び300秒以下、並びにその任意の範囲で実施することができる。
【0015】
本発明のさらに他の実施形態には、凝集前の熱動力学的混合によってオリゴマー、コポリマー、オイル、有機分子、脂肪族ヒドロキシを有するポリオール、エステル型可塑剤、グリコールエーテル、ポリ(プロピレングリコール)、マルチブロックポリマー、シングルブロックポリマー、ポリ(エチレンオキシド)、リン酸エステル;フタル酸エステル、アミド、鉱油、ポリエチレングリコール、グリセリン又は砂糖との脂肪酸及びそのエステル、ポリエチレングリコール、グリセリン又は砂糖との脂肪アルコール及びそのエーテル、及び植物油からなる群から選択される1又は複数の可塑剤とポリマーをブレンドして、1又は複数の可塑剤とともに1又は複数のポリマーを熱動力学的処理して複合材料中にすることによって、1又は複数の医薬用ポリマーを予備可塑化する方法が含まれる。さらに、その方法は、ホットメルト押出、溶融造粒、圧縮成形、錠剤圧縮、カプセル充填、フィルムコーティング、又は射出成形により1又は複数のAPIを含む複合材料を処理するステップが含まれてもよい。一態様では、その方法は、さらに、ポリマー及び可塑剤を1又は複数の賦形剤とともに予備可塑化することが含まれてもよい。
【0016】
本発明のさらに他の実施形態では、方法は、APIバルク原料の粒径を縮小させるために熱動力学的配合により1又は複数のAPIを乾燥粉砕するのに用いる。いくつかの態様では、APIは結晶性である。例えば、この方法を用いることにより、粒径は、1000μm、100μm、10μm、又は1μm未満に縮小することができる。前述のように、熱動力学的混合は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、75、100、120、150、180、240及び300秒未満、及びその任意の範囲で行われる。
【0017】
本発明のさらなる修正形態では、1又は複数のAPI、1又は複数の任意選択の機能賦形剤及び1又は複数の不混和性キャリア物質の組合せは、インサイチュでナノ複合材料を作製するために熱動力学的混合によって処理することができる。処理は、熱転移温度又はそれ以上又はそれ以下で処理速度及び処理期間で5〜1000秒の時間実施することができる。追加の処理はまた、最終生成物のナノ複合材料構造を実現するために行うことができる。ナノ複合材料を作製するのに用いることができる物質は、それだけには限らないが、シリカ、タルク、ステアリン酸マグネシウム、コロイド状二酸化ケイ素、粘土、モノステアリン酸グリセロール、ステアリン酸(steric acid)などが含まれる。ナノ閉込めを実現するために熱動力学的混合を用いて改変することができる、医薬組成物の物理的特性は、以下の通りである。
(a)薬物放出を制御される医薬品:ナノ閉込めの使用は、剤形、例えば、制御放出剤形により、拡散経路を制御し、したがって薬物放出速度を制御するのを助けることによってAPIのねじれを有意に増加することができる。
(b)水分輸送特性が強化された医薬フィルム:ナノ閉込めの使用により、水分摂取を制御するのに役立てるために、組成物の物理的特性を調節することが考えられ、それによってより望ましい処理性能を有する組成物が作製される。
(c)後処理プロセス特性が強化された医薬材料:ナノ閉込めの使用は、当業者に知られている打錠、カプセル化及び例えば、射出成形、圧縮成形、フィルムプレス、ペレット化、ホットメルト押出、溶融造粒、錠剤圧縮、カプセル充填、及びフィルムコーティングなどの他の薬学的に許容される剤形開発技法の下流工程の特性を容易にするために、弾性率への変化など機械的特性を強化させることができる。
(d)医薬デバイスに対する機械的特性の増大:ナノ閉込めの使用は、例えば、特に生理的温度周囲の弛緩イベントの減少に基づいて、これらの適用において施そうとする、経皮パッチから薬用デンタルフロスまで移植可能なデバイスに対する機械的な問題により、デバイスの適用に適さないポリマーの使用を可能にし得る、機械的特性の強化を提供することができる。こうした機械的特性の強化はまた、かかるデバイスのより長い寿命をもたらし、したがって、投薬回数を減らすことができる。
【0018】
本発明は、不混和性である、2種以上の薬学的に許容される賦形剤の複合材料を当業者に知られている任意の他の処理方法によって作製するために、熱動力学的配合、例えば、溶融混合されるまでの熱動力学的混合の使用も対象とする。一態様では、複合材料は、不均一に均質な複合材料又は非晶質の複合材料である。
【0019】
本発明はまた、熱動力学的配合、例えば、溶融混合されるまでの熱動力学的混合によって、長期間、結晶性の又は半結晶性の医薬用ポリマーを非晶質にする方法が含まれる。本発明の一態様では、ポリマーは、例えば、周囲条件又はAPIの典型的な貯蔵条件で貯蔵されるとき、2ヵ月、6ヵ月、1年、又は2年より長く、非晶質になる。
【0020】
本発明はまた、1又は複数の原薬を1又は複数の薬学的に許容される賦形剤とともに含む医薬組成物であって、組成物は、均質な、不均一な又は不均一に均質な組成物であり、ガラス転移温度が、可塑剤を使用して又は使用せずに、熱処理された、同一の原薬及び薬学的に許容される賦形剤の同一の製剤のガラス転移温度よりも有意に高い医薬組成物を対象とする。他の実施形態では、組成物は、単一のガラス転移温度を有し、熱処理された同一の製剤が、2種以上のガラス転移温度を有する。さらに、他の実施形態では、医薬組成物は、熱処理された同一の製剤の最も低いガラス転移温度よりも少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%高い単一のガラス転移温度を有する。組成物は、熱動力学的配合によって処理することができ、同一の製剤は、ホットメルト押出、溶融造粒、圧縮成形、錠剤圧縮、カプセル充填、フィルムコーティング、又は射出成形を含むがそれだけに限らない、当業者に知られている方法に従って熱処理することができる。
【0021】
本発明の特徴及び利点のより完全な理解のために、添付の図とともに本発明の詳細な説明についてここに次の通り言及する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ACM標準注入と比較したACM:EUDRAGIT(登録商標)L 100-55(1:2)のTKCによって処理された物質のHPLC分析の図である。
【図2】KTZ標準注入及びKollidon(登録商標)30ポリマー単独と比較したKTZ:Kollidon(登録商標)30(1:2)のTKCによって処理された物質のHPLC分析の図である。
【図3】170℃及び300RPMで(a)Methocel(登録商標)E50、(b)非晶質のKTZ、(c)TKCによって処理されたKTZ:Methocel(登録商標)E50(1:2)、及び(d)HMEによって処理されたKTZ:Methocel(登録商標)E50(1:2)の変調したDSC分析の図である。
【図4】170℃及び300RPMで(a)Kollidon(登録商標)30、(b)非晶質のKTZ、(c)TKCによって処理されたKTZ:Kollidon(登録商標)30(1:2)、及び(d)HMEによって処理されたKTZ:Kollidon(登録商標)30(1:2)の変調したDSC分析の図である。
【図5】USP29装置II法により50RPMで、pH6.8のリン酸緩衝液(37±0.2)900mL中におけるTKCによって処理されたKTZ:Methocel(登録商標)E50及びKTZ:Kollidon(登録商標)30の過飽和溶解試験の図である。それぞれの組成物(KTZ当量100mg)300mgを各溶解容器(n=3)に加え、その結果、理論上完全溶解濃度KTZ111μg/mLにする。この濃度は、中性pH媒体(5.98μg/mL)中におけるKTZの平衡溶解度の18.6倍である(Glomme, A., Marz, J., Dressman, J. Comparison of a miniaturized shake-flask solubility method with automated potentiometric acid/base titrations and calculated solubilities. Journal of Pharmaceutical Sciences 2005;94(1):1-16)。KTZ:Kollidon(登録商標)(1:2)製剤の標準偏差は、わずかであるため、C/Ceqスケールの大きさにより図で見ることができない。
【図6】TKCによって処理されたKTZ:EUDRAGIT(登録商標)L 100-55(1:4)及び(1:2)のDSC分析の図である。
【図7】TKCによって処理されたIND:EUDRAGIT(登録商標)L 100-55(1:4)及び(1:2)のDSC分析の図である。
【図8】グリセオフルビン:TKC及びHMEによって処理されたPVP K30の溶解分析の図である。
【図9】グリセオフルビン:TKC及びHMEによって処理されたPVP K30のpXRD分析の図である。
【図10】グリセオフルビン:TKC及びHMEによって処理されたPVP K30のDSC分析の図である。
【図11】イトラコナゾール:TKC及びHMEによって処理されたHPMC E5の溶解分析の図である。
【図12】イトラコナゾール:TKC及びHMEによって処理されたHPMC E5のpXRD分析の図である。
【図13】イトラコナゾール:TKC及びHMEによって処理されたHPMC E5のDSC分析の図である。
【図14】イトラコナゾール:TKC及びHMEによって処理されたL100-55の溶解分析の図である。
【図15】イトラコナゾール:TKC及びHMEによって処理されたL100-55 Tの沈降速度の算出を示す図である。
【図16】イトラコナゾール:TKCによって処理されたL100-55のXRD分析の図である。
【図17】イトラコナゾール:可塑剤(TEC)を加えたTKC及びHMEによって処理されたL100-55のDSC分析の図である。
【図18】HME及びTKCによって処理された組成物によって処理された、カルボマー974P、イトラコナゾール:L100-55の複合材料、及びイトラコナゾール:Eudragit(登録商標)L100-55:カルボマー974Pの複合材料のmDSC熱流プロファイルを示す図である。
【図19】図18の複合材料について示されるmDSC反転熱流(reversing heat flow)プロファイルの図である。
【図20】Aerosil R972無しの複合材料と比較したAerosil R972を含む、TKCによって処理された複合材料の熱流プロファイルを示す図である。
【図21】図20の複合材料について示される反転熱流プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の様々な実施形態の製造及び使用を下記で詳細に論じるとき、本発明が、広範囲の個々の状況において具現することができる多くの適用可能な進歩性のある概念を提供することを理解されたい。本明細書で論じる個々の実施形態は、本発明を製造し使用するための個々のやり方の例示的なものにすぎず、本発明の範囲を定めるものではない。
【0024】
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語を以下に定義する。本明細書で定義する用語は、本発明に関連する領域の当業者によって普通に理解される意味を有する。単数形(「a」、「an」及び「the」)の用語は、ただ1つの実体を意味するものとしないが、個々の例が例証に用いることができる一般的クラスが含まれる。本明細書における専門用語は、本発明の個々の実施形態を記載するために用いられるが、それらの使用は、特許請求の範囲において概説する場合を除き、本発明の範囲を定めるものはない。
【0025】
本明細書では、「熱動力学的配合」又は「TKC」という用語は、溶融混合されるまでの熱動力学的な混合方法を意味する。TKCはまた、処理が凝集の前にある時点で終了する熱動力学的混合法として記載され得る。
【0026】
本明細書では、「均質な、不均一な若しくは不均一に均質な複合材料又は非晶質の複合材料」という語句は、TKC法を用いて製造することができる様々な組成物を意味する。
【0027】
本明細書では、「不均一に均質な複合材料」という用語は、体積中に均等かつ均一に分布する少なくとも2つの異なる物質を有する材料組成物を意味する。
【0028】
組成物が、均質な、不均一な若しくは不均一に均質な組成物、非晶質組成物又はそれらの組合せであるかどうかにかかわらず、TKCの処理条件は、例えば、可塑剤を使用して又は使用せずに、熱処理された同一の原薬(API)及び薬学的に許容される賦形剤の同一の製剤のガラス転移温度よりも高いガラス転移温度を有する組成物を作製することができる。TKC処理条件はまた、単一のガラス転移温度を有する組成物を作製することができ、熱処理された、同一の原薬及び薬学的に許容される賦形剤の同一の製剤が、2種以上のガラス転移温度を有する。他の例において、本開示の医薬組成物は、熱処理された同一の製剤の最も低いガラス転移温度よりも少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%高い単一のガラス転移温度を有する。或いは、熱動力学的処理を用いて製造する組成物は、それぞれのAPIに関して最低で少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99.9%の薬物の効力を有する組成物を作製することができる。
【0029】
本明細書では、「熱動力学的な槽」という用語は、TKC法を用いて本発明の新規組成物を製造する密閉された容器又は槽を意味する。TKC槽において、槽内の平均温度は、処理期間にわたって複合材料中の1又は複数のAPI及び1又は複数の薬学的に許容される賦形剤の熱動力学的配合を実現するために、事前定義された最終温度に上昇させる。処理の長さ及び熱動力学的配合中の温度上昇への曝露の長さは、一般に、API、賦形剤又は両方の熱感受性閾値より下である。事前定義された最終温度は、1又は複数のAPI、賦形剤及び/又は処理剤が分解される、或いは、それらの機能性が処理中に損なわれる可能性を減らすために選択される。一般に、事前定義された処理の最終温度、圧力、時間及び他の環境条件(例えば、pH、水分、緩衝液、イオン強度、O)は、API、賦形剤及び/又は処理剤の分解を実質的になくすために選択される。
【0030】
本明細書では、「バイオアベイラビリティ」は、薬物が体に投与された後標的組織に利用できるようになる程度を意味する用語である。乏しいバイオアベイラビリティは、医薬組成物、特に、やや不溶性の有効成分を含むものの開発で遭遇する重大な問題である。タンパク質の製剤などのいくつかの実施形態において、タンパク質は、水溶性、低可溶性、低不溶性、又は不溶性となり得る。例えば、異なる溶媒、賦形剤、キャリアの使用、融合タンパク質の形成、アミノ酸配列の標的化した操作、糖鎖修飾、脂質化、分解、1又は複数の塩との組合せ及び様々な塩の付加など、様々な方法論を用いて、タンパク質の溶解性を増大させることができるということが当業者には理解されよう。
【0031】
本明細書では、「薬学的に許容される」という語句は、一般にヒトに投与するとき、アレルギー反応又は類似の有害反応を引き起こさない、分子の実体、組成物、物質、賦形剤、キャリアなどを意味する。
【0032】
本明細書では、「薬学的に許容されるキャリア」又は「薬学的に許容される物質」は、任意及び全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌薬、抗真菌薬、等張剤及び吸収遅延剤などが含まれる。医薬活性物質に対するかかる媒体及び薬剤の使用は、当技術分野でよく知られている。従来の任意の媒体又は薬剤が有効成分に適合しない場合を除いて、本明細書に開示される組成物及び複合材料の医薬品における使用が考えられる。補助的な有効成分も、組成物及び複合材料に組み入れることができる。
【0033】
原薬(API)の例としては、それだけには限らないが、抗生物質、鎮痛薬、ワクチン、抗痙攣薬;抗糖尿病薬、抗真菌薬、抗新生物薬、抗パーキンソン病薬、抗リウマチ薬、食欲抑制薬、生物学的応答調節物質、心血管作動薬、中枢神経興奮薬、避妊薬、栄養補助食品、ビタミン、鉱物、脂質、糖類、金属、アミノ酸(及び前駆体)、核酸及び前駆体、造影剤、診断薬、ドーパミン受容体アゴニスト、勃起機能不全薬、妊娠促進薬、胃腸薬、ホルモン、免疫調節薬、高カルシウム血症治療薬、肥満細胞安定剤、筋弛緩薬、栄養剤、点眼剤(ophthalmic agent)、骨粗鬆症薬、精神治療薬、副交感神経作動薬、副交感神経遮断薬、呼吸器薬、催眠鎮静薬、皮膚及び粘膜薬、禁煙剤、ステロイド、交感神経遮断薬、尿路薬、子宮弛緩薬、膣薬、血管拡張薬、高血圧治療薬、甲状腺機能亢進症薬、抗甲状腺機能亢進症薬、抗喘息薬及びめまい治療薬が含まれる。いくつかの実施形態では、APIは、低水溶性の薬物又は融点が高い薬物である。
【0034】
APIは、1又は複数の薬学的に許容される塩、エステル、誘導体、アナログ、プロドラッグ及びそれらの溶媒和物の形態で見い出され得る。本明細書では、「薬学的に許容される塩」は、酸及び塩基の相互作用、すなわち、酸の水素原子が塩基の陽イオンによって置換されることによって形成される化合物を意味することが理解される。薬学的に許容される塩の限定しない例には、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシナート(gentisinate)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロネート、サッカラート、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、及びパモ酸塩が含まれる。イオン性塩を定義するための他の方法は、カルボン酸官能基などの酸性官能基、及び薬学的に許容される無機又は有機塩基としてであってもよい。塩基の限定しない例は、それだけには限らないが、ナトリウム、カリウム及びリチウムなどのアルカリ金属の水酸化物;カルシウム及びマグネシウムの水酸化物;アルミニウム及び亜鉛などの他の金属の水酸化物;アンモニア;及び非置換又はヒドロキシで置換されたモノアルキルアミン、ジアルキルアミン又はトリアルキルアミンなどの有機アミン;ジシクロヘキシルアミン;トリブチルアミン;ピリジン;N−メチル−N−エチルアミン;ジエチルアミン;トリエチルアミン;モノ−、ビス−又はトリス−(2−ヒドロキシエチル)アミン、2−ヒドロキシ−tert−ブチルアミン、又はトリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミンなどのモノ−、ビス−又はトリス−(2−ヒドロキシ−低級アルキルアミン)、N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミン、又はトリ−(2−ヒドロキシエチル)アミンなどのN,N−ジ−低級アルキル−N−(ヒドロキシ低級アルキル)−アミン;N−メチル−D−グルカミン;及びアルギニン、リジンなどのアミノ酸などが含まれる。
【0035】
本明細書では、「低可溶性」は、投与しようとする用量を、pH1〜7.5の水性媒体250mlで溶かすことができないような溶解性を有すること、緩徐な溶解速度を有する薬物及び低い平衡溶解度を有する薬物を意味し、その結果、例えば、バイオアベイラビリティの低下及び送達される治療薬の薬理学的効果の低下をもたらすことを意味する。
【0036】
本明細書では、「誘導体」は、元のAPIの所望の効果又は特性を依然として保持している化学的に改変された阻害剤又は刺激薬を意味する。かかる誘導体は、親分子上で1又は複数の化学部分を付加する、除去する、又は置換することによって誘導することができる。かかる部分は、それだけには限らないが、水素又はハロゲン化物などの要素、又はメチル基などの分子群が含まれ得る。このような誘導体は、当業者に知られている任意の方法によって調製することができる。かかる誘導体の特性は、当業者に知られている任意の手段によってそれらの所望の特性についてアッセイすることができる。本明細書では、「アナログ」には、構造上の相当物又は模倣体が含まれる。
【0037】
様々な投与経路は、APIを、それを必要とする患者に送達するのに利用できる。選択される個々の経路は、選択される個々の薬物、患者の体重及び年齢、及び治療効果に必要とされる用量に応じて変わる。医薬組成物は、好都合には、単位剤形として提供することができる。本開示に従って使用するのに適したAPI、及びその薬学的に許容される塩、誘導体、アナログ、プロドラッグ及びそれらの溶媒和物は、単独で投与することができるが、一般に、所期の投与経路及び標準の医薬慣行に関して選択される適当な医薬賦形剤、希釈剤、又はキャリアとの混合物として投与される。
【0038】
APIは、錠剤、カプセル剤又は懸濁剤としての経口送達;経肺及び経鼻送達;乳剤、軟膏剤又はクリーム剤としての局所送達;経皮送達;及び懸濁剤、マイクロエマルジョン又はデポ剤としての非経口送達を含めて、様々な適用様式において用いることができる。本明細書では、「非経口」という用語には、皮下、静脈内、筋肉内又は注入の投与経路が含まれる。
【0039】
溶液中に用いる溶液剤は、水、1又は複数の有機溶媒又はその組合せなど、水溶液となり得る。用いるとき、有機溶媒は、水混和性又は非水混和性となり得る。適当な有機溶媒は、それだけには限らないが、エタノール、メタノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン、t−ブチルアルコール、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジエチルエーテル、塩化メチレン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン及びそれらの組合せが含まれる。
【0040】
本明細書に開示される組成物及び複合材料に用いることができる賦形剤及び補助剤は、それ自体である程度の活性を潜在的に有するが、例えば、酸化防止剤は、一般に、有効成分の効率及び/又は効果を増強する化合物として、本出願では定義される。形成される粒子が1種を超える有効成分を含むように、所与の溶液中で1種を超える有効成分を有することも可能である。
【0041】
記載した通り、賦形剤及び補助剤は、APIの効果及び効率を増強するために用いることができる。溶液中に含めることができる化合物の限定しない例は、凍結保護物質、溶解保護物質(lyoprotectant)、界面活性剤、充填剤、安定剤、ポリマー、プロテアーゼ阻害薬、酸化防止剤及び吸収促進剤である。賦形剤は、フロー又はバイオアベイラビリティを改善することによって有効成分の所期の機能を改変するため、又は、APIの放出を制御する又は遅延するために選択することができる。具体的な限定しない例には、スクロース、トレハロース、Span80、Tween80、Brij35、Brij98、プルロニック、sucroester7、sucroester11、sucroester15、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸、ラウレス−9、ラウレス−8、ラウリン酸、ビタミンE TPGS、Gelucire50/13、Gelucire 53/10、Labrafil、ジパルミトイルホスファジチルコリン、グリコール酸及び塩、デオキシコール酸及び塩、フシジン酸ナトリウム、シクロデキストリン、ポリエチレングリコール、labrasol、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びチロキサポールが含まれる。本発明の方法を用いて、有効成分の形態は改変され、その結果、高度に多孔質の微小粒子及びナノ粒子をもたらすことができる。
【0042】
現在開示される組成物及び複合材料に用いることができる模範的な熱結合剤は、それだけには限らないが、ポリエチレンオキシド;ポリプロピレンオキシド;ポリビニルピロリドン;ポリビニルピロリドン−co−ビニルアセテート;アクリラート及びメタクリラートのコポリマー;ポリエチレン;ポリカプロラクトン;ポリエチレン−co−ポリプロピレン;メチルセルロースなどのアルキルセルロース;ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシブチルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース;ヒドロキシエチルメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのヒドロキシアルキルアルキルセルロース;デンプン、ペクチン;トラガカントゴム、アラビアゴム、グアーガム及びキサンタンガムなどの多糖類が含まれる。結合剤の一実施形態は、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)であり、平均分子量約200,000、1,000,000及び2,000,000を有するWSR N80を含み得る模範的グレードのPOLY OXという登録商標でPEOを販売しているDow Chemical Company社などの会社から市販品として購入することができる。
【0043】
PEOの適当なグレードはまた、例えば、以下のようなPEOの固定濃度を含む、溶液の粘度によって特徴付けることができる。
【0044】
【表1】

【0045】
可塑剤を必要とし得る又は必要とし得ない適当な熱結合剤には、例えば、Eudragit(登録商標)RS PO、Eudragit(登録商標)S100、Kollidon SR(ポリ(ビニルアセテート)−co−ポリ(ビニルピロリドン)コポリマー)、Ethocel(登録商標)(エチルセルロース)、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、メタクリル酸ジメチルアミノエチル−メタクリル酸エステルコポリマー、エチルアクリラート−メチルメタクリラートコポリマー(GA−MMA)、C-5又は60 SH-50(Shin-Etsu Chemical社)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、セルロースアセタートトリメリタート(cellulose acetate trimelletate)(CAT)、ポリ(ビニルアセテート)フタラート(PVAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート(HPMCP)、ポリ(メタクリラート エチルアクリラート)(1:1)コポリマー(MA−EA)、ポリ(メタクリラート メチルメタクリラート)(1:1)コポリマー(MA−MMA)、ポリ(メタクリラート メチルメタクリラート)(1:2)コポリマー、Eudragit L-30-D(登録商標)(MA−EA、1:1)、Eudragit L-100-55(登録商標)(MA−EA、1:1)、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)、Coateric(登録商標)(PVAP)、Aquateric(登録商標)(CAP)及びAQUACOAT(登録商標)(HPMCAS)、ポリカプロラクトン、デンプン、ペクチン;トラガカントゴム、アラビアゴム、グアーガム、及びキサンタンガムなどの多糖類が含まれる。
【0046】
安定化及び非可溶化キャリアはまた、親水性ポリマー、酸化防止剤、超崩壊剤、両親媒性分子を含めた界面活性剤、湿潤剤、安定化剤、遅延剤、類似の機能性賦形剤又はその組合せ、及びクエン酸エステル、ポリエチレングリコール、PG、トリアセチン、フタル酸ジエチル、ヒマシ油を含めた可塑剤及び当業者に周知の他のものなどの様々な機能性賦形剤を含むことができる。押出材にはまた、酸性化剤、吸収剤、アルカリ化剤、緩衝剤、着色料、香味料、甘味剤、希釈剤、不透明化剤、錯生成剤、香料、保存剤又はその組合せを含み得る。
【0047】
本明細書に開示される複合材料又は組成物中に含むことができる第1又は第2のポリマーのキャリアとなり得る模範的な親水性ポリマーには、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリエチレン−ポリプロピレングリコール(例えば、POLOXAMER(登録商標))、カルボマー、ポリカルボフィル又はキトサンが含まれる。本発明に使用する親水性ポリマーには、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、グアーガム、アラビアゴム、トラガカントゴム又はキサンタンガムなどの天然ゴム、及びポビドンのうち1種又は複数が含まれてもよい。親水性ポリマーにはまた、ポリエチレンオキシド、カルボキシメチセルロースナトリウム(sodium carboxymethycellulose)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシポリメチレン、ポリエチレングリコール、アルギン酸、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリホスファジン(polyphosphazine)、ポリオキサゾリジン、ポリ(ヒドロキシアルキルカルボン酸)、カラギーナートアルギナート(carrageenate alginates)、カルボマー、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウム、又はそれらの混合物が含まれる。
【0048】
「即時放出」とは、放出が開始した後、数秒から約30分以内にわたる環境への有効な薬剤の放出を意味し、放出は投与後約2分以内に開始する。即時放出は、薬物の放出における大幅な遅延を示さない。
【0049】
「急速放出」とは、放出が開始した後、1〜59分又は0.1分から3時間までの時間にわたる環境への有効な薬剤の放出を意味し、放出は、投与後数分以内に又は投与後の遅延期間(時間のずれ)の終了後に開始することができる。
【0050】
本明細書では、「延長放出」プロファイルという用語は、薬学の分野において広く認識される定義を想定している。延長放出剤形は、薬物(すなわち、有効な薬剤又はAPI)を実質的に定速で長期間にわたって放出する、或いは、実質的に一定量の薬物が、長期間にわたって追加的に放出される。延長放出錠剤は、一般に、従来の剤形(例えば、溶液又は急速放出する従来の固形剤形)として提供される薬物と比較して、投薬回数を少なくとも2倍減少させる。
【0051】
「制御放出」とは、約8時間から約12時間、16時間、18時間、20時間、1日又は1日を超える期間にわたる、環境への有効な薬剤の放出を意味する。「徐放」とは、デバイスを投与する対象の血液又は標的組織中で一定の薬物レベルを維持するための有効な薬剤の延長放出を意味する。
【0052】
薬物放出に関して「制御放出」という用語には、「延長放出」、「持続放出」、「徐放」又は「緩徐放出」が、薬学において用いられるため、含まれる。制御放出は、投与後数分以内に又は投与後の遅延期間(時間のずれ)の終了後に開始することができる。
【0053】
緩徐放出剤形は、薬物が、例えば、3時間、6時間、12時間、18時間、1日、2日以上、1週間、2週間以上の期間にわたって、ゆっくりとほぼ連続して放出されるように、ゆっくりとした速度の薬物放出を提供するものである。
【0054】
本明細書では、「混合放出」という用語は、1又は複数の原薬に対して2つ以上の放出プロファイルが含まれる医薬品を意味する。例えば、混合放出は、即時放出及び延長放出部分を含むことができ、それぞれの放出は同じAPIとなり得、或いは、それぞれは異なるAPIとなり得る。
【0055】
時限放出剤形は、使用環境への最初の曝露の瞬間から測定された予定期間の後に薬物を放出し始めるものである。
【0056】
標的放出剤形は一般に、対象の胃腸管の特定の部分に薬物を送達するよう設計されている経口剤形を意味する。模範的な標的剤形は、対象の胃又は口の中でなく中央部から下部までの腸管に薬物を送達する腸溶剤形である。他の標的剤形は、胃、空腸、回腸、十二指腸、盲腸、大腸、小腸、結腸、又は直腸などの胃腸管の他の部位に送達することができる。
【0057】
「遅延放出」とは、薬物の最初の放出が、近似の遅延(又は、ずれ)期間の終了後に起こることを意味する。例えば、延長放出組成物からの薬物の放出が2時間遅れるなら、その場合は、薬物の放出は、対象への組成物又は剤形の投与後約2時間で開始する。一般に、遅延放出は、即時放出の反対のものであり、薬物の放出が投与後数分してから、開始する。したがって、個々の組成物からの薬物放出プロファイルは、遅延−延長放出又は遅延−急速放出となり得る。「遅延−延長」放出プロファイルは、薬物の延長放出が、最初の遅延期間の終了後に開始するものである。「遅延−急速」放出プロファイルは、薬物の急速放出が、最初の遅延期間の終了後に開始するものである。
【0058】
拍動性放出剤形は、低いトラフ濃度で分散される、高い有効成分の濃度のパルスを提供するものである。2つのピークを含む拍動性プロファイルは、「二峰性」と記載され得る。2つを超えるピークを有する拍動性プロファイルは、多峰性と記載され得る。
【0059】
擬一次放出プロファイルは、一次放出プロファイルに近似するものである。一次放出プロファイルは、単位時間当たりの最初の薬物投入量の一定の百分率を放出する剤形の放出プロファイルを特徴付ける。
【0060】
擬ゼロ次放出プロファイルは、ゼロ次放出プロファイルに近似するものである。ゼロ次放出プロファイルは、単位時間当たりの一定量の薬物を放出する剤形の放出プロファイルを特徴付ける。
【0061】
本明細書に開示される、得られた複合材料又は組成物はまた、配合される低水溶性の薬物の溶解速度の増強を示すために配合することができる。
【0062】
安定した放出プロファイルを有する組成物又は製剤の例は、次の通りである。同じ製剤を有する2つの錠剤を作製する。第1の錠剤を、第1の条件下で1日貯蔵し、第2の錠剤を同じ第1の条件下で4ヵ月間貯蔵する。第1の錠剤の放出プロファイルは、1日貯蔵した後に測定し、第2の錠剤の放出プロファイルは、4ヵ月間貯蔵した後に測定する。第1の錠剤の放出プロファイルが、第2の錠剤の放出プロファイルとほぼ同じである場合、錠剤/フィルム製剤は、安定した放出プロファイルを有すると見なす。
【0063】
安定した放出プロファイルを有する組成物又は製剤の他の例は、次の通りである。本発明による組成物をそれぞれ含む、錠剤A及びBを作製し、本発明によらない組成物をそれぞれ含む錠剤C及びDを作製する。錠剤A及びCをそれぞれ、第1の条件下で1日貯蔵し、錠剤B及びDをそれぞれ、同じ第1の条件下で3ヵ月間貯蔵する。錠剤A及びCのそれぞれの放出プロファイルは1日貯蔵した後に測定し、それぞれ放出プロファイルA及びCと称する。錠剤B及びDのそれぞれの放出プロファイルは、3ヵ月間貯蔵した後に測定し、それぞれ放出プロファイルB及びDと称する。放出プロファイルAとBとの差を、放出プロファイルCとDとの差を定量化するように定量化する。放出プロファイルAとBとの差が放出プロファイルCとDとの差より小さい場合、錠剤A及びBは、安定した又はより安定した放出プロファイルを提供することが理解される。
【0064】
具体的には、TKC方法は、以下の医薬品適用のうち1種又は複数に使用することができる。
【0065】
経口、肺、非経口、経膣、直腸、尿道、経皮又は局所送達経路によってAPIを患者に送達することを目的とする、ポリマー及び/又は非ポリマーの薬学的に許容される物質中への1又は複数のAPIの分散で、APIは、低分子の有機分子、タンパク質、ペプチド又はポリ核酸である。
【0066】
APIのバイオアベイラビリティを改善すること、APIの放出を延長すること、胃腸管の特異部位にAPIを放出すること、APIの放出を遅延すること、又はAPIのための拍動性放出系を作製することによって、APIの経口送達を改善することを目的とする、ポリマー及び/又は非ポリマーの薬学的に許容される物質中への1又は複数のAPIの分散で、APIは、低分子の有機分子、タンパク質、ペプチド又はポリ核酸である。
【0067】
生侵食性、生分解性、又は制御放出植込み送達デバイスを創出することを目的とする、ポリマー及び/又は非ポリマーの薬学的に許容される物質中への1又は複数のAPIの分散で、APIは低分子の有機分子、タンパク質、ペプチド又はポリ核酸である。
【0068】
低温で非常に短い期間処理することによって、熱不安定性APIの固体分散体を作製すること。
【0069】
熱不安定性ポリマー及び賦形剤中で低温で非常に短い期間処理することによって、APIの固体分散体を作製すること。
【0070】
ポリマー、非ポリマー、又はその組合せの賦形剤キャリア系中に分散させながら、低分子の有機APIを非晶質にすること。
【0071】
結晶性のAPIを乾燥粉砕して、バルク原料の粒径を縮小させること。
【0072】
結晶性のAPIを薬学的に許容される溶媒とともに湿式粉砕して、バルク原料の粒径を縮小させること。
【0073】
結晶性のAPIとの限られた混和性を有する1又は複数の溶融した医薬賦形剤と結晶のAPIを溶融粉砕して、バルク原料の粒径を縮小させること。
【0074】
ポリマー又は非ポリマーの賦形剤の存在下で結晶性のAPIを粉砕し、微細な薬物粒子が賦形剤の粒子の表面に付着するかつ/又は賦形剤の粒子が微細な薬物粒子の表面に付着する、規則正しい混合物を創出すること。
【0075】
例えば、粉砕及びふるい分けなどの後処理のために、2つ以上の医薬賦形剤を有する不均一に均質な複合材料又は非晶質の複合材料を作製し、それらは、続いて、例えば、フィルムコーティング、打錠、湿式造粒法及び乾式造粒法、ローラー圧縮、ホットメルト押出、溶融造粒、圧縮成形、カプセル充填、及び射出成形などの当業者によく知られている第2の医薬操作に利用される。
【0076】
例えば、メルト押出、フィルムコーティング、打錠及び造粒などの第2の処理ステップにおける利用に対して、不混和性であると以前はみなされた、2つ以上の医薬用物質の単相の混和性複合材料を作製すること。
【0077】
その後フィルムコーティング又はメルト押出操作に使用するためのポリマー材料を予備可塑化すること。
【0078】
結晶性の又は半結晶性の医薬用ポリマーを、API用のキャリアとして用いることができる非晶質にし、非晶質の特性が、API−ポリマー複合材料の溶解速度、API−ポリマー複合材料の安定性及び/又はAPI及びポリマーの混和性を改善する。
【0079】
脱凝集及び分散によって作製された粒子の特性を変更せずにポリマーのキャリア中で作製された粒子。
【0080】
1又は複数の医薬賦形剤と粉末の形態のAPIを単純にブレンドすること。
【0081】
処理剤を使用せずに1又は複数の融点の高いAPI及び1又は複数の熱不安定性ポリマーを含む複合材料を作製すること。
【0082】
ポリマーのキャリア又は賦形剤混合物の中に着色剤又は不透明化剤を均質に分散させること。
【実施例1】
【0083】
本研究は、新規な製造方法である熱動力学的配合 (TKC)の、非晶質の固体分散系への適用を調査するものである。かかるTKC方法は、ホットメルト押出(HME)が固体分散体製剤の好ましい製造方法となったその特性と同じ多くの特性を提供する。しかしながら、TKCは、HMEによる処理とは区別される非常に独特の能力を有し、種々の医薬品製造面での革新的な適用に関して幅広い可能性を示唆している。具体的には、TKCは、非常に短い処理時間、低い処理温度、粘性流無しの融解混合、及び通常の2軸溶融押出機と比較して、著しく高いずり速度の利益を提供する。HMEに代替する技術としてのTKCの可能性を評価するために、非晶質の医薬品固体分散系を作製するためのTKCの使用を調査することが本研究の目的であった。種々の固体分散系を、種々のモデル薬物(アセトアミノフェン(ACM)、ケトコナゾール(KTZ)、及びインドメタシン(IND))及び種々のポリマーのキャリア(Methocel(登録商標)E50、Kollidon(登録商標)30、及びEUDRAGIT(登録商標)L 100-55)を用いて、TKCによって作製した。ACM及びKTZの固体分散体のクロマトグラフ分析を行ったところ、TKC処理によるこれらの活性薬剤の目立った分解は認められなかった。示差走査熱量測定法(DSC)によれば、Methocel(登録商標)E50及びKollidon(登録商標)30の双方において、TKC処理によってKTZの非晶質の複合材料が得られたこと、及びこれらの組成物が、HMEによって処理された同一の製剤と同様の特性を有していたことが明らかになった。溶解に関する研究を行ったところ、Methocel(登録商標)E50(1:2)中のKTZの非晶質分散体(KTZ:Methocel=1:2)について、TKCによって、KTZがpH6.8のリン酸緩衝液中で広範囲に過飽和したことが明らかになった。DSCを行ったところ、熱不安定性ポリマーEUDRAGIT(登録商標)L 100-55中の融点の高い活性剤(KTZ及びIND)の実質的に非晶質の組成物が、TKC処理によって、処理助剤の追加無しに作製されたことが明らかになった。本研究の結果、TKCが非晶質の医薬品固体分散系を作製するための新規な技術であることが立証されている。TKCの独特の特性により、製造能力が拡大することが分かったが、このことは、非晶質の固体分散系に対して革新的な製剤機会を提供する。
【0084】
固体溶解速度に関するNoyes-Whitneyの方程式(方程式1)(Noyes, A. A., Whitney, W. R. The rate of dissolution of solid substances in their own solutions. Journal of the American Chemical Society 1897;19:930-4)を分析すると、一般式から低水溶性な薬物粒子の溶解性が強化できる方法が明らかになる。すなわち、その一般式とは
【数1】

である。
【0085】
溶質表面の総面積(薬物の理論的な表面積)は、薬剤の粒径を縮小させることによる配合方法によって増加する。溶質表面の総面積の増加は、薬物結晶の乾燥粉砕から賦形剤キャリアにおける薬物固溶体の形成にいたる、種々の技術のうちの1つによって実現されてもよい。固溶体の形成は、薬物粒子が分割され、個々の分子として拡散される時に、粒径縮小の限界を示す。総表面積中、その部分が溶媒と密に接触する有効表面積を増加させることは、親水性の賦形剤中の薬物粒子/分子をカプセル封入する配合によって実現される。親水性のカプセル封入は、水性媒体と疎水性の薬物粒子との間の表面張力を低下させ、これによって湿潤性を改善し、薬物溶質の溶媒表面被覆率を増加させる(Sinswat, P., Gao, X., Yacaman, M. J., Williams Iii, R. O., Johnston, K. P. Stabilizer choice for rapid dissolving high potency itraconazole particles formed by evaporative precipitation into aqueous solution. International Journal of Pharmaceutics 2005;302(1-2):113-24)。また、親水性の賦形剤中の粒子をカプセル封入することは、水性媒体中の薬物粒子間の疎水性相互作用を低下させ、これによって凝集を低下させる。方程式1から、有効表面積(A)が増加した総合的な結果として、薬物粒子の溶解速度(dC/dt)が比例的に増加することが分かる。
【0086】
薬物粒子の形態を熱力学的に最も安定な結晶性形状から、より高いエネルギー形態(多形型)へと変化させると、水性媒体中の薬物のみかけの飽和濃度(C)が上昇することによって溶解を加速する。方程式1に話を戻すと、C値が大きいほど、溶液の飽和濃度勾配(C−C)が増加し、溶解のためのより大きな駆動力を備える。非晶質の薬物製剤中のポリマーのキャリアは、過飽和ITZ溶液を安定化させる効果をもたらすことができ、それゆえに薬物のみかけ可溶性をさらに増加させ、同時に全体的な溶解速度を増加させる。したがって、過飽和溶液の安定剤としてポリマーを利用することが、低水溶性の薬物分子の溶解性を改善するためのその他の方法である。
【0087】
固溶技術は、低水溶性の薬物の溶解特性を改善するための、広範囲に使用される配合技術である。低可溶性の製剤原料の溶解性を改善するための上記の各様式は、固体分散体製剤の作製においても同時に達成できる。極めて難溶性の製剤原料(drug substance)に対しては、非晶質の固体分散系が、その結晶格子構造の熱力学的な安定性ゆえに、多くの場合、溶解速度を顕著に改善するための唯一の選択肢である(Brittain, H. G., Grant, D. J. W. Effects of Polymorphism and Solid-State Solvation on Solubility and Dissolution Rate. In: Brittain, H. G., ed. Polymorphism in Pharmaceutical Solids. Boca Raton, FL: Informa Health Care; 1999:279-330)。固体分散体の作製のための数多くの方法が科学文献において報告されているが、かかる方法は全て、溶媒又は熱処理方法のいずれかを変更した方法である。溶媒技術は、溶媒蒸発(Chowdary, K. P. R., Babu, K. V. V. S. Dissolution, bioavailability and ulcerogenic studies on solid dispersions of indomethacin in water-soluble cellulose polymers. . Drug Development and Industrial Pharmacy 1994;20(5):799-813)、共沈(Chen, X., Young, T. J., Sarkari, M., Williams, I., Robert O., Johnston, K. P. Preparation of cyclosporine A nanoparticles by evaporative precipitation into aqueous solution. International Journal of Pharmaceutics 2002;242(1-2):3-14、Sekikawa, H., Arita, T., Nakano, M. Dissolution behaviors and gastrointestinal absorption of phenytoin in phenytoin-polyvinylpyrrolidine coprecipitate. Chemical and Pharmaceutical Bulletin 1978;26:118-26)及び噴射乾燥(Jung, J.-Y., Yoo, S. D., Lee, S.-H., Kim, K.-H., Yoon, D.-S., Lee, K.-H. Enhanced solubility and dissolution rate of itraconazole by a solid dispersion technique. International Journal of Pharmaceutics 1999;187(2):209-18)などの通常のプロセスのほか、より近年になって立証された低温流体技術及び超臨界流体技術などの技術(Rogers, T. L., Johnston, K. P., Williams III, R. O. Solution-Based Particle Formation of Pharmaceutical Powders by Supercritical or Compressed Fluid Co2 and Cryogenic Spray-Freezing Technologies. Drug Development and Industrial Pharmacy 2001;27(10):1003-15、Hu, J., Johnston, K. P., Williams III, R. O. Nanoparticle Engineering Processes for Enhancing the Dissolution Rates of Poorly Water Soluble Drugs. Drug Development and Industrial Pharmacy 2004;30(3):233-45)も含む。これらの方法のプロセスの詳細は、かなりの程度相違するが、開始点は同一である。すなわち、薬物及び安定化賦形剤を共通の溶媒系に溶解しなければならない。また、かかる各プロセスの終点も、同一である。すなわち、溶媒除去によって固体を回収しなければならない。これらの2つの共通点は、溶媒型固体分散体プロセスにとって著しく不利となる。溶媒の使用は高価であり、ヒト及び環境に対して毒性を有し、薬剤及び賦形剤を共通の溶媒系に溶解しなければならないという要件は、製剤中で使用可能な賦形剤を著しく制限し得る(Serajuddin, A. T. M. Solid Disperison of Poorly Water-Soluble Drugs: Early Promises, Subsequent Problems, and Recent Breakthroughs. Journal of Pharmaceutical Sciences 1999;88(10):1058-66、Leuner, C., Dressman, J. Improving drug solubility for oral delivery using solid dispersions. European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 2000;50(1):47-60、Breitenbach, J. Melt extrusion: from process to drug delivery technology. European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 2002;54(2):107-17)。また、溶媒除去は、長期にわたるプロセスとなることがあり、製造効率を低下させる。固体分散系を作製するために、熱的方法が溶媒法よりも好ましいのはこれらの理由による。
【0088】
初期のバッチ式熱法は、活性賦形剤及びキャリア賦形剤を容器内で攪拌しつつ、薬物若しくは固定賦形剤のいずれか又はその両方が融解する点に達するまで加熱することを含んでいた(Goldberg, A. H., Gibaldi, M., Kanig, J. L. Increasing dissolution rates and gastrointestinal absorption of drugs via solid solutions and eutectic mixtures II. Experimental evaluation of eutectic mixture: urea-acetaminophen system. . Journal of Pharmaceutical Sciences 1966;55:482-7、Goldberg, A. H., Gibaldi, M., Kanig, J. L., Mayersohn, M. Increasing dissolution rates and gastrointestinal absorption of drugs via solid dispersion in eutectic mixtures IV. Chloramphenicol-urea system. Journal of Pharmaceutical Sciences 1966;55:581-3、Chiou, W. L., Riegelman, S. Preparation and dissolution characteristics of several fast-release solid dispersions of griseofulvin. Journal of Pharmaceutical Sciences 1969;58:1505-9、Summers, M. P., Enever, R. P. Preparation and properties of solid dispersion system containing citric acid and primidone. Journal of Pharmaceutical Sciences 1976;65:1613-161、Goldberg, A. H., Gibaldi, M., Kanig, J. L. Increasing dissolution rates and gastrointestinal absorption of drugs via solid solutions and eutectic mixtures I. Theoretical considerations and discussion of the literature. Journal of Pharmaceutical Sciences 1965;54:1145-8)。生成物を長時間熱曝露することに加え、混合時及び加熱時の非効率のために、これらの初期のバッチ方法は、固体分散系を大規模に作製するうえで実行可能な方法ではなかった。かかる固体分散系の作製にホットメルト押出(HME)を適用することにより、加熱時及び混合時の非効率の問題が解消し、かかる方法の持続性も相俟って、製造効率が改善した(Leuner, C., Dressman, J. Improving drug solubility for oral delivery using solid dispersions. European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 2000;50(1):47-60、Repka, M., Koleng, J., Zhang, F., McGinity, J. W. Hot-Melt Extrusion Technology. In: Swarbrick, J., Boylan, J., eds. Encyclopedia of Phamaceutical Technology. 2nd ed. New York: Marcel Dekker, Inc; 2002)。
【0089】
低水溶性の化合物の溶解性の改善のためのみならず、徐放性マトリックス系の作製のため、固体分散系の作製にHMEを使用することについて、数多くの報告が薬学文献に発表されている(Aitken-Nichol, C., Zhang, F., McGinity, J. W. Hot Melt Extrusion of Acrylic Films. Pharmaceutical Research 1996;13(5):804-8、Zhang, F., McGinity, J. W. Properties of Sustained-Release Tablets Prepared by Hot-Melt Extrusion. Pharmaceutical Development and Technology 1999;4(2):241-50、Zhang, F., McGinity, J. W. Properties of Hot-Melt Extruded Theophylline Tablets Containing Poly(Vinyl Acetate). Drug Development and Industrial Pharmacy 2000;26(9):931-42、Repka, M. A., McGinity, J. W. Hot-melt extruded films for transmucosal & transdermal durg delivery applications. Drug Delivery Technology 2004;4(7):40, 2, 4-7、Rambali, B., Verreck, G., Baert, L., Massart, D. L. Itraconazole Formulation Studies of the Melt-Extrusion Process with Mixture Design. Drug Development and Industrial Pharmacy 2003;29(6):641-52、Hulsmann, S., Backensfeld, T., Keitel, S., Bodmeier, R. Melt extrusion - an alternative method for enhancing the dissolution rate of 17[beta]-estradiol hemihydrate. European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 2000;49(3):237-42、de Brabander, C., Vervaet, C., Remon, J. P. Development and evaluation of sustained release mini-matrices prepared via hot melt extrusion. Journal of Controlled Release 2003;89(2):235-47、Crowley, M. M., Fredersdorf, A., Schroeder, B., Kucera, S., Prodduturi, S., Repka, M. A., McGinity, J. W. The influence of guaifenesin and ketoprofen on the properties of hot-melt extruded polyethylene oxide films. European Journal of Pharmaceutical Sciences 2004;22(5):409-18、Six, K., Leuner, C., Dressman, J., Verreck, G., Peeters, J., Blaton, N., Augustijns, P., Kinget, R., Van den Mooter, G. Thermal Properties of Hot-Stage Extrudates of Itraconazole and Eudragit E100. Phase separation and polymorphism. Journal of Thermal Analysis and Calorimetry 2002;68(2):591-601、Six, K., Verreck, G., Peeters, J., Brewster, M. E., Van den Mooter, G. Increased physical stability and improved dissolution properties of itraconazole, a class II drug, by solid dispersions that combine fast- and slow-dissolving polymers. Journal of Pharmaceutical Sciences 2004;93(1):124-31、Verreck, G., Six, K., Van den Mooter, G., Baert, L., Peeters, J., Brewster, M. E. Characterization of solid dispersions of itraconazole and hydroxypropylmethylcellulose prepared by melt extrusion--part I. International Journal of Pharmaceutics 2003;251(1-2):165-74、Forster, A., Hempenstall, J., Tucker, I., Rades, T. Selection of excipients for melt extrusion with two poorly water-soluble drugs by solubility parameter calculation and thermal analysis. International Journal of Pharmaceutics 2001;226(1-2):147-61)。医薬品適用のためのHMEの使用を要求する薬学文献上の報告及び特許は、数十年前から存在するにもかかわらず、かかるHMEの商業的使用は制限されていた(Serajuddin, A. T. M. Solid Disperison of Poorly Water-Soluble Drugs: Early Promises, Subsequent Problems, and Recent Breakthroughs. Journal of Pharmaceutical Sciences 1999;88(10):1058-66、Breitenbach, J. Melt extrusion: from process to drug delivery technology. European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 2002;54(2):107-17)。しかしながら、近年では、商業用固体分散系の作製のためのHMEの利用は増加している様子である。例えば、Abott GmbH and Co., KG社の子会社であるSoliqs社は、Meltrex(登録商標)として知られるプラットフォームである、HMEに基づく薬物送達技術を積極的に市販している。かかるMeltrex(登録商標)系は、より簡便で、より利便性の高い抗HIV薬物療法を提供することによって、従前のソフトゼラチンカプセル製剤(formulation)に代替した新Kaletra(登録商標)(ロピナビル/リトナビル)錠の作製に利用される基本技術である(Breitenbach, J. Melt extrusion can bring new benefits to HIV therapy: the example of Kaletra tablets. American Journal of Drug Delivery 2006;4(2):61-4)。広く処方されている避妊用のNuvaRing(登録商標)もHMEによって作製された、近年市販されている固体分散体製剤のその他の1例である。NuvaRing(登録商標)は、従来の錠剤避妊薬と比較して、はるかに利便性の高いその服薬スケジュールのため、急速にその人気を博している徐放性エトノゲストレル/エチニルエストラジオールのリング状膣挿入薬である。2006年の米国におけるKaltera(登録商標)及びNuvaRing(登録商標)の販売額は、それぞれ3億6000万(米ドル)、1億7000万(米ドル)であった(Top 200 Drugs for 2006 by Sales. Drugs.com, 2007 (Accessed August 6, 2007, 2007, at www.drugs.com/top200.html.)。かかる販売数量は、これらの製品が各々その患者集団に対して有する影響力を示しており、同様に固体分散体製剤の作製のための実行可能な商業的製造方法としてHMEが出現したことを示している。
【0090】
HMEは、固体分散体製剤を作製する最も実行可能な方法の1つとなり得るにもかかわらず、その方法には重大な制限が無いわけではない。まず、薬物原料とキャリア賦形剤とが熱不適合であることが、医薬製剤のHME処理に際してよく遭遇する問題である(Leuner, C., Dressman, J. Improving drug solubility for oral delivery using solid dispersions. European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 2000;50(1):47-60)。この場合、熱不適合の意味するところは、製剤成分の1つの熱分解が、別の成分のガラス転移温度(T)又は融点(T)である融解転移点よりも低温で始まることである。EUDRAGIT(登録商標)L 100-55及びHP-55におけるITZの非晶質組成物が所望されたとき、かかるポリマーの分解は、薬物の融点よりも低く、かつTに近すぎる温度で始まるので、製剤添加剤の使用無しにはポリマーの処理ができなかった。所望のキャリア賦形剤のT又はTよりも低温で薬物原料の分解が開始するという、前記例とは反対の場面も、医薬品製造のためのHMEの利用に対して少なからぬ障害となる(Dittgen, M., Fricke, S., Gerecke, H., Osterwald, H. Hot spin mixing - a new technology to manufacture solid dispersions. Part 1: Testosterone. Pharmazie 1995;50(3):225-6)。かかる熱分解の問題に遭遇したとき、最も一般的な解決法は、キャリア賦形剤の融解転移が起きる温度を低下させることによって処理温度を低下させることである。これは、かかる製剤に可塑化添加剤を追加することによって実現される。別の1例では、HME処理がこれらのポリマーの熱分解の開始温度より下で可能になるように、20%クエン酸トリエチル(TEC:triethyl citrate)をEUDRAGIT(登録商標)L 100-55、HP-55及びEUDRAGIT(登録商標)L 100-55/Carbopol 974Pキャリア系に組み入れた。熱分解が問題とならない場合は、キャリア賦形剤の溶融粘度を低下させるために、押出バレル内側の製剤の融解フローを容易にする可塑剤又は熱性滑剤を要件としてもよい。特に、高分子量ポリマーの場合、溶融粘度は、駆動モータに過度の負担を生じ、融解フローを容易にする添加剤の組込み無しでは処理が不可能となる。
【0091】
固体医薬品の長期的な安定化のためのガラス転移温度の重要性は、周知である。非晶質組成物は、インビトロで得られた溶解速度の改善及びインビボで得られたバイオアベイラビリティの強化に関する文献において今まで多く書かれてきたが、これらの組成物は、熱力学的に不安定であり、そのガラス転移温度は組成物において実現されることができる固体安定性の予測のための指標とされてきた。かかる系が熱力学的に不安定な結果、これらの組成物は、その系中の分子運動性に依存する所与の期間を経て、結晶状態に移行するであろう。かかる組成物の貯蔵温度が上昇してガラス転移温度に近づくにつれて、分子運動性が増加する。そのため、再結晶を防止するために、貯蔵状態の温度よりも実質的に高いガラス転移温度を有する組成物を開発することが推奨されている(Breitenbach, J. Melt extrusion: from process to drug delivery technology. European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 2002;54(2):107-17)。可塑剤は、メルト押出中の処理を改善するが、かかる可塑剤は、非晶質組成物の固体安定性を低下させ得るガラス転移温度も実質的に低下させる。可塑剤の補助無しにTKCを用いて作製すると、固体安定性が強化された、実質的により高いガラス転移温度を有する組成物ができる。
【0092】
本発明者らは、ポリマーキャリアの可塑化に関連する問題が、非晶質の固体分散系、及び複合材料のTの低下に関わっていることを認識した。ポリマーのキャリアに可塑剤を加えると、マトリックスのTが低下し、かかるキャリアの分子運動性を促進し、結果としてその中に分散される非晶質の薬物が再結晶する(Hamaura, T., Newton, M. N. Interaction between Water and Poly(vinylpyrrolidone) Containing Polyethylene Glycol. Journal of Pharmaceutical Sciences 1999;88(11):1228-33)。その最終的な結果は、貯蔵中の製品の動的な薬物放出プロファイルである。貯蔵時間とともに変化する薬物放出は、薬物製品の安全性と効果を減退させ、かかる不安定性が生じる製剤の市場性を阻害するであろう。
【0093】
医薬品固体分散系のHME処理にこうした制限があることにより、新規なプロセスである熱動力学的配合(TKC)を医薬品固体分散系の作製方法として評価する今回の研究に拍車がかかった。TKCは、ポリマー業界で確立されてはいるが、いまだ殆ど知られていない方法である熱動力学的混合(TKM)から派生した方法である。かかるTKCは、着色剤、セルロース、グラファイト、クレイ、(発泡剤又は難燃剤などの)化学剤及びゴムなどの添加剤を混合してポリマーとするために使用される(Park, B. D., Balatinecz, J. J. A comparison of compounding processes for wood-fiber/thermoplastic composites. Polymer Composites 1997;18(3):425-31、Gopakumar, T., Page, D. J. Y. S. Compounding of nanocomposites by thermokinetic mixing. Journal of Applied Polymer Science 2005;96(5):1557-63、Gopakumar, T., Page, D. J. Y. S. Polypropylene/graphite nanocomposites by thermo-kinetic mixing. Polymer Engineering and Science 2004;44(6):1162-9)。かかる方法は柔軟性があり、異なる効果の程度を伴って、(ポリマーを融解させる)凝集の有無を問わず、物質を混合することができる。かかる柔軟性は、熱分解性が重要点となる熱に敏感なポリマー内で添加剤を分散する際に特に有用である。この柔軟性は、TKCの主たる競合方法でポリマーの融解を要件とする2軸押出配合を超えて主要な利点となる。TKMが凝集に使用される場合、物質がはるかに短期間で熱曝露されるという点で、2軸押出よりもさらに有利である。また、TKMは、2軸押出よりもはるかに大きなずり速度が得られると推定されている(Gopakumar, T., Page, D. J. Y. S. Compounding of nanocomposites by thermokinetic mixing. Journal of Applied Polymer Science 2005;96(5):1557-63)。凝集が必要な場合には、TKMは2軸押出によるよりも処理費用が高く、そのため、ポリマー業界は非常に限られた用途にのみ、これを利用している。
【0094】
TKCは、TKMの独特で固有なバリエーションの1つである。本明細書中に使用される熱動力学的配合なる用語は、溶融混合に使用される熱動力学的混合を意味する。また、TKSは、凝集前に停止される熱動力学的混合を意味する。本開示における1つの新規な組成物及び方法とは、熱に敏感な方法から凝集に重点を置く積極的な熱集中方法に変更することである。かかる新規な方法の結果、例えば、結晶質の熱可塑剤と高度に非晶質の熱可塑剤とが相容性を有するのみならず、熱硬化性(非溶融)ポリマーと熱可塑性(溶融)ポリマーとが相容性を有するなど、多種多様なポリマー同士が相容性を有するようになる。この方法によって、これらの組成物が単に混合されるのではなく、むしろ2つの物質が結合される。
【0095】
また、多種多様な融点を有するポリマー同士は、より熱に敏感なポリマーを分解することなく処理されることができる。TKC処理時間は、配合される物質(活性及び/又は不活性の熱曝露を最小限にするために短く(例えば1分未満)されている。TKCを用いると、外部熱の付加によるのではなく運動エネルギーの機械的な発生を通してポリマー物質が融解するため、融解処理は、ポリマー物質のT又はTよりも低温で実現されることができる。かかる方法は融解物質の大規模なフローを含まないため、HMEのように高ポリマー溶融粘度の結果駆動モータに過重負担となることが重要な問題とならない。これらの特性によって、TKCは、医薬品製造への適用においてHMEよりも実質的な利益を提供する。
【0096】
TKCは、例えば、非溶媒処理、融解状態の物質の密な混合、及び高度に有効かつ測定可能な製造など、医薬品製造に関してHMEと全く同じ利点を提供する。しかしながら、TKCは、医薬品製造にさらに利点を追加して提供できる、極めて独特の特徴、例えば、その典型的な融解転移点よりも低温の温度で融解状態の物質を処理する能力のみならず、高いずり速度、処理物質の熱曝露をほんの数秒に制限する短い処理時間などの特徴を有する。その融解転移点温度より低温の温度で融解ポリマーを処理することは、熱に適合しない物質から固体分散系を作製することを可能にし得る。融解フローはTKC処理中には起きないが、可塑剤及び熱性滑剤などの処理添加剤は不要としてもよく、このことは当該技術分野で公知のその他の製造方法よりもさらに有利な点である。
【0097】
現行の知見に基づけば、TKC処理は、医薬品製造に関して相当数の適用を有している。かかるTKC方法は、多種多様なポリマーのキャリア中で、低水溶性の薬物の非晶質の固体分散体製剤を作製するために使用されていた。そのTKCの特性が、医薬品製造のかかる側面において特によく当てはまると考えられているためである。第1に、本明細書中に示すように、TKCは、熱的に安定なポリマーを用いてケトコナゾール(KTZ)の非晶質な固体分散系を作製することに関して、メルト押出と同じ結果を実現することができる。第2に、本明細書中に示すように、TKCは可塑剤又はその他の処理助剤を加えることなく熱不安定性のEUDRAGIT(登録商標)L 100-55ポリマー中で、融点の高い薬物の非晶質の固体分散系を作製することによって、HMEよりも有利ないくつかの点を有する。
【0098】
材料と方法。ケトコナゾール(USP(KTZ))をHawkins, Inc.社 (ミネソタ州ミネアポリス)より購入した。アセトアミノフェン(USP(ACM))をFisher Scientific Co. 社(テキサス州ヒューストン)より購入した。インドメタシン(USP(IND))をSpectrum Chemical Mfg. Corp.社(カリフォルニア州ガーデナ) より購入した。Kollidon(登録商標)30PF(ポビドン K 30 USP)は、BASF社(ドイツ国、ルートビフィスハーフェン)より提供を受けた。Methocel(登録商標)E 50 Premium LV(ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 50cPs)は、The Dow Chemical Company社 (ミシガン州ミッドランド) より提供を受けた。EUDRAGIT (登録商標)L100-55は、Degussa GmbH 社(ニュージャージー州リンデン)より購入した。HPLCグレードのアセトニトリルをEMD Chemicals社 (ドイツ国、ダルムシュタット)より購入した。本研究において使用されたその他の化学薬品は全て、ACSグレードである。
【0099】
熱動力学的配合。熱動力学的配合機の1例は、シャフトの回転軸に対して垂直に外側へ延伸する歯のような突出部を有する水平シャフトの回転を駆動する高馬力モータを有する。かかる突出部を含むシャフト部分は、配合操作が行われる密閉した容器すなわち熱動力学的槽内に収容されている。かかるシャフトの高い回転速度が、シャフトの突出部のデザインとも相俟って、処理されている物質に対して運動エネルギーを付加する。処理される各バッチは、API及びポリマーを1:2(w/w)の割合で含み、そのバッチサイズは合計で1.36kgであった。本研究で使用される製剤のバッチサイズは3〜4kgであるが、材料費がかかることから、はるかに小さなバッチサイズを使用した。薬物及びポリマーの粉末を正確に秤量し、袋の中で事前に混合し、混合粉末として供給管に投入した。かかる製剤は、操作パラメータ、すなわち毎分回転数(RPM)及び射出温度を配合操作前に設定できるデジタル制御系で操作している。温度分析器は、この場合は小さなバッチサイズのものが入っている配合槽の容器内の平均温度を測定するが、容器内の空隙容量が大きいため、処理される物質の表面温度よりも20〜40℃低い温度結果であった。TKC機械は、容器内で設定温度に達すると、デジタル制御系が物質を射出する自動モードで稼動することができる。本研究のためには、物質の射出は手動制御され、射出時の温度はデジタルアウトプットから記録された。Fluke 61 IR温度計(ワシントン州エバレット)を用いて配合した直後に物質の表面温度を測定した。本研究において提示された各配合バッチの操作パラメータ及び表面温度を表1に提示する。
【0100】
【表2】

【0101】
HPLC分析。本研究において提示されているHPLC分析は全て、光ダイオードアレイ検出器(Model 996)が備えられたWaters社(マサチューセッツ州ミルフォード)の高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)系及び自動サンプラー (Model 717 Plus)を用いて行われた。クロマトグラフデータを収集してEmpower(登録商標)Version 5.0ソフトウェアを用いて積分した。使用したカラムは、Phenomenex(登録商標)Luna 5μm C18(2) 100A、150mm×4.6mm (Phenomenex(登録商標)社、カリフォルニア州トランス)であった。ACMの移動相を、アセトニトリル:脱イオン水を15:85(v/v)で構成した。ACMの滞留時間は、流速1mL/分で約3.5分であった。クロマトグラムは、244nmで抽出した。KTZに関しては、その移動相をアセトニトリル:pH6.8のリン酸緩衝液を50:50(v/v)で構成した。KTZの滞留時間は、流速1.2mL/分で約6.1分であった。クロマトグラムは、225nmで抽出した。
【0102】
ホットメルト押出(HME)。DSC分析において提示したKTZ:Methocel(登録商標)E50 (1:2)及びKTZ:Kollidon(登録商標)(1:2)のTKCによって処理された試料のホットメルト押出組成物を、2軸同速回転円錐スクリュー(直径 5/14mm)を備えたHAAKE MinilabIIミクロ配合機 (Thermo Electron Corporation社、ニューハンプシャー州ニューイントン)で作製した。Minilab手動供給装置によって、粉体混合物を全て押出成形機のバレルに注入した。かかる押出成形機のバレルの出口には外部ダイを適用せず、したがって押し出された物質は、1.0×4.0mmの長方形の出口を通過して吐き出された。提示された両組成物の操作パラメータは、170℃及び300RPMであった。かかる処理後、押出成形品を羽根付粉砕機(Capresso Inc.,社、ニュージャージー州クロスター)で2分間粉砕した。結果得られた粉砕物を、その後60メッシュのふるいにかけた。ふるいの目を通った物質を磁器製のすり鉢とすりこぎを用いて手動で1分間かけて粉砕し、微粉末を得た。その後、かかる微粉末に対してDSC分析を行った。
【0103】
示差走査熱量測定法(DSC)。冷蔵冷却機能を備えたTA Instruments Model 2920 DSC (デラウェア州ニューキャッスル)を用いてDSC分析を行った。試料をアルミニウム製クリンプパン(crimped pan)(Kit 0219-0041, Perkin-Elmer Instruments社, コネチカット州ノーウォーク)に入れて15±5mg秤量した。Methocel(登録商標)E50及びKollidon(登録商標)30中にKTZを分散させるために、研究全体を通して、試料をランプ速度10℃/分かつ温度変調振幅0.5℃、変調周期40秒にて5℃から215℃まで加熱した。EUDRAGIT(登録商標)L100-55中のIND及びKTZの分散のために、試料を、従来の変調していないDSCでランプ速度10℃/分にて5〜200℃で分析した。パージガスとして超高純度窒素を流速40mL/分で使用した。TA Universal Analysis 2000 ソフトウェアを用いて、全てのデータ分析を行った。結晶質KTZを最初に215℃まで加熱し、5℃まで急冷し(20℃/分)、その後2度目の加熱をしてMethocel(登録商標)E50及びKollidon(登録商標)30におけるKTZ固体分散体製剤のDSC分析に使用する非晶質KTZのサーモグラムを得た。吸収した水分を除去するために、MF-50 model 水分計 (AND Company Ltd.社、カリフォルニア州エンチノ)中でポリマーの粉末を90℃まで15分間事前加熱した後、DSCの1回目の実行(run)でMethocel(登録商標)E50及びKollidon(登録商標)30のサーモグラムを得た。
【0104】
溶解試験。USP29装置IIガイドライン (パドル式) に従って、model VK 8000 自動サンプラーを備えたVankel 7000 溶解試験装置 (Vankel Technology Group社、ノースカロライナ州キャリー)中で、50rpmにてTKCによって処理されたKTZ/ Methocel(登録商標)E50及びKTZ/ Kollidon(登録商標)30の製剤の溶解試験を行った。媒体(pH6.8のリン酸緩衝液900mL)を使用前にガス抜きし、試験中37±0.5℃に維持した。KTZ100mgに相当する試験された各製剤の量(〜18倍の飽和溶解性)を各溶解容器(n=3)に追加した。10、20、30、60、120、180、240、360及び1440分の時点での溶解媒体の試料のアリコット(5mL)のサンプリングを行った。溶解媒体の全アリコットを0.2μmPTFE膜(Pall Life Sciences社, ニューヨーク州イーストヒルズ)を有するAcrodisc(登録商標)CRの13mmのシリンジフィルターを用いてろ過した。その後、ろ過したアリコットを1:1の割合で(上記の)KTZのHPLC移動相で希釈した。サンプリングした溶解媒体アリコットにつき、前述したKTZのHPLC法にて、薬物含量を分析した。直線台形法を用いて溶解曲線下の面積(AUDC)を算出した。
【0105】
TKCによって処理された組成物における薬物分解分析。かかるTKC方法の積極的な性質及びその薬物分子の化学的安定性に及ぼす効果を調査するために、TKCによって処理されたACM:EUDRAGIT(登録商標)L100-55(1:2)の組成物及びKTZ:Kollidon(登録商標)30(1:2)の組成物についてHPLCを行って、処理中に起こり得たこれらの薬物分子の有意な分解の有無を確認した。この分析のため、TKCによって処理されたACM及びKTZの組成物の6つの独立した試料をHPLCにより評価し、純薬基準(pure drug standard)と比較した。ACM:EUDRAGIGT(登録商標)L100-55(1:2)の製剤についての分析結果を図1に示す。TKC物質のHPLC分析によって得られた各クロマトグラムは同一であったため、図1には、代表的なクロマトグラフを1つだけ示す。この図から、TKCによって処理された試料の代表的なクロマトグラムがACM基準と同一であることが分かる。カラムからのACM溶解を代表的に示す、滞留時間が3.54分の1つの明確なピークが、TKCによって処理された試料を代表的に示すクロマトグラム中にみられる。各試料注入を8分間かけて評価したが、第1ACMピークを超える吸収ピークが無かったため、この報告図は約4分経過時点で切り捨てた。ACMの分解は、第1ACM基準ピークに対する追加的ピークの出現により、又は滞留時間若しくはACMピークの形状の変化により確認されるであろう。これらのいずれもが観察されなかったので、TKC処理期間中にACMの著しい分解は起きなかったとの結論に至った。
【0106】
KTZ:Kollidon(登録商標)30(1:2)の組成物に関する同様の結果を図2に示す。この図で示すTKCによって処理された試料の代表的なクロマトグラムは、単一ピークが約1.2分経過後に溶解したことの例外を除いて、KTZ基準と同一である。かかる第2のピークは、図2の最終列において示されるポリマーのピークから分かるKollidon(登録商標)30のポリマーの結果である。カラムからのKTZの溶解を代表的に示す、滞留時間約6.1分の明確なピークは、TKCによって処理された試料を代表的に示すクロマトグラム中にみられる。各試料注入を10分間かけて評価したが、第1KTZピークを超える吸収ピークが無かったため、この報告図は約6.5分経過時点で切り捨てた。クロマトグラフ分析では未知の大きなピーク又は第1KTZピークにおける明白な変化が観察されなかったため、TKC処理の結果、KTZの分解は生じなかったとの結論に至った。
【0107】
熱的に安定なポリマーでTKCによって処理された組成物のDSC分析。非晶質の固体分散体製剤の作製のためのTKCの適用を示す目的で、KTZを2種の熱安定ポリマー、Methocel(登録商標)E50とKollidon(登録商標)30とで処理した。処理後、直ちにKTZ:Methocel(登録商標)E50の組成物は、(IR温度計による測定で)表面温度が150℃の大きな凝集の塊の外見と、ゴムのような硬さを有していた。押出時の配合生成物の表面温度(150℃)は、処理中に配合物質が、KTZの融点(150℃)より数度以上には高い温度とはならなかったことを明確に示す指標である。さらに、処理時間は約10秒であり、材料温度が処理時間に伴って上昇したため、配合された塊全体は、一瞬温度上昇を生じただけであった。
【0108】
ポリマー中の分散状態とともに複合材料中のKTZの形態を測定するために
、KTZ:Methocel(登録商標)E50(1:2)のTKCで処理された組成物についてDSC分析を行った。Methocel(登録商標)E50の未処理ポリマー、非晶質KTZ、及びKTZ:Methocel(登録商標)E50(1:2)のHMEによって処理された組成物(170℃/300RPM)も、比較のため分析対象に含めた。図3から、Methocel(登録商標)E50が、約140℃で開始すると思われる極めて僅かな融解転移を有する完全に非晶質のポリマーであることが分かる。この転移は、非常に微小で、利用するDSC系の試料の大きさ上の制限のため、この現象の適切な解明が妨げられている(Six, K., Berghmans, H., Leuner, C., Dressman, J., Van Werde, K., Mullens, J., Benoist, L., Thimon, M., Meublat, L., Verreck, G., Peeters, J., Brewster, M., Van den Mooter, G. Characterization of Solid Dispersions of Itraconazole and Hydroxypropylmethylcellulose Prepared by Melt Extrusion, Part II. Pharmaceutical Research 2003;20(7):1047-54)。この図において、非晶質のKTZが約45℃のTを有していることが分かる。再結晶又は溶融を示す熱現象が不在であることから、KTZが非晶質な状態で安定であることが明らかである。TKCによって処理されたKTZ:Methocel(登録商標)E50(1:2)の組成物は、約45℃の中間点を有する単一の幅広いTが示すように、単相系であるように思われるが、このTが非晶質KTZのTに対して同等であることは、この転移がMethocel(登録商標)E50マトリックス中に分散されたKTZの非晶質領域の結果であることを示唆している。Methocel(登録商標)E50マトリックス中にKTZの分子分散が実現されれば、複合材料のTは、KTZのTとポリマーのTとの間に位置するであろうと予測される。KTZのTの範囲の広さは、DSC実験中の非晶質薬物領域とポリマーとの加熱時の混合相互作用の結果である。HME処理後のヒプロメロース中のイトラコナゾール(ITZ)の同様の分散がSix et al.によって報告された。その報告においては、かかる組成物は、別個の薬物相とポリマーリッチ相とを含んでいた(Six, K., Berghmans, H., Leuner, C., Dressman, J., Van Werde, K., Mullens, J., Benoist, L., Thimon, M., Meublat, L., Verreck, G., Peeters, J., Brewster, M., Van den Mooter, G. Characterization of Solid Dispersions of Itraconazole and Hydroxypropylmethylcellulose Prepared by Melt Extrusion, Part II. Pharmaceutical Research 2003;20(7):1047-54)。
【0109】
HMEによって処理されたKTZ:Methocel(登録商標)E50(1:2)の試料をDSC分析したところ、TKCによるよりも、はるかに多くの不均一な分散がHMEによって生じたことが明らかになった。2つの異なる低温での転移が40℃と66℃においてみられたが、このことは、Methocel(登録商標)E50中に分子分散KTZ領域(66℃)のみならず、KTZの非晶質領域(40℃)が存在することを示している可能性がある。また、吸熱(最低〜150)の前に起きる発熱(ピーク〜145℃)と思われるものが、DSC実験におけるポリマーマトリックスからの少量のKTZのさらなる相分離である可能性がある。
【0110】
要約すれば、DSC分析の結果は、TKC処理によってMethocel(登録商標)E50中のKTZ領域に、HME処理によって作出された同様の系に関して従前の研究者が報告したものと同様の分散性を有する、完全に非晶質の分散体が作製されたことを示している。また、かかる分析の結果は、TKC処理を用いれば、HME処理によるよりも均質な分散系が得られたことも示している。
【0111】
KTZ:Kollidon(登録商標)30(1:2)の製剤のTKC処理時間は、約10秒間であり、融解物質の表面温度を140〜150℃の範囲で測定した。前回同様、処理された物質の温度は、極めて短期間しかKTZの融点の近傍に達しなかった。配合機から出る際には、KTZ:Kollidon(登録商標)30(1:2)の製剤は、白色から黄色の均一な融解した塊の外見を有していた。ポリマー中のKTZの形態及び分散状態を測定するために、Kollidon(登録商標)30未処理ポリマー及び非晶質KTZのみならず、このTKCによって処理された複合材料についてもDSC分析を行った。また、2つの方法の比較評価のために、KTZ:Kollidon(登録商標)30(1:2)のHMEによって処理された組成物(170℃/RPM)も、分析に含めた。DSC分析の結果を図4に示す。
【0112】
Methocel(登録商標)同様、Kollidon(登録商標)30のポリマーは、緩やかな下降スロープのみの非常に微妙な温度転移を有しており、このことは、温度の上昇とともにポリマーの熱容量が着実に拡大していることを示している。下降スロープにおける非常に微妙な増加が、150〜160℃の温度範囲で起き、その後短い安定期が現れるが、このことはポリマーの融解転移が終了したことを示しているのかもしれない。再び、45℃でTKC及びHMEによって処理された試料それぞれのTとの比較を可能にするために、非晶質KTZのガラス転移温度をこの図に示す。TKC及びHMEによって処理されたKTZ:Kollidon(登録商標)30の組成物のサーモグラムは、同じ一般的特徴を示している。つまり、かかる組成物のサーモグラムは、ともに50〜80℃の幅広いT範囲を有して、KTZの完全な非晶質性を示している。分子間相互作用によってKollidon(登録商標)が可塑化する一方で、非晶質KTZでは反対の効果を有するので、KTZ:Kollidon(登録商標)30の複合材料のTは、非晶質のKTZのTよりも大きく、かかる薬剤がポリマー中に混和性を有していることが分かる。この結果を前出のKTZ:Methocel(登録商標)E50の組成物のそれと比較すると、KTZがヒプロメロースに対するよりもポビドンに対して実質的に、より混和性であるであることが明らかである。
【0113】
TKC及びHMEによって処理されたKTZ:Kollidon(登録商標)30の組成物(1:2)のサーモグラムは類似してみえるが、より密に評価すると、ポリマー中のKTZの分布に相違があることが明らかである。TKC及びHMEによってそれぞれ処理された試料においてともに観察される幅広いTの算出中間点は、それぞれ61℃と67℃であった。TKCによって処理された試料の中間点が、より低温であったことは、分析試料中に、Tを下方へ移動させ、純粋に非晶質のKTZに向かわせるKTZ含量がより大きい領域があったことを示している。また、かかるTKCによって処理された試料は、160℃近傍での開始を有する明らかな第2の温度転移を示すが、このことは、試料中のポリマーリッチ領域を示しているのかもしれない。かかる転移は、HMEによって処理された組成物においては明白ではない。これらの現象を併せて考えると、処理された塊の極めて小さな試料中に薬物リッチ領域とポリマーリッチ領域とが存在するように思われるため、TKCによって処理されたKTZ:Kollidon(登録商標)30(1:2)の製剤は、HME試料と比較して幾分不均一である。この結果は、本研究において利用するTKC機械の大きさと積極的な性質に起因するものであるかもしれない。本研究で使用するTKC機械は、物質に高い摩擦力とずり速度とを付与することによって、異種の廃棄プラスチックを適合させるための積極的な配合用に設計されている。したがって、かかる特殊な機械の溶融混合能力は、本研究での要件を超えて、はるかに優れたものである。したがって、かかる機械は、通常の操作に対して極めて低いRPMで操作され、その実行時間は極めて短かった。
【0114】
また、前述のように、本研究で使用するバッチサイズは、理想的なバッチの1/2〜1/3である。これらの全要因により、機械内に理想的でない混合プロファイルが得られ、KTZ:Kollidon(登録商標)30(1:2)の製剤でみられた2相の組成物の原因であったと思われる。Methocel(登録商標)の製剤では、微細な不均一は検出されなかった。この組成物においては、Tの変化をもたらす分子混合が実現されなかったためである。KTZとKollidon(登録商標)30との均質な混合は、処理時間を増加させることによって改善されるであろう。しかしながら、本研究において利用するTKC機械の積極的な性質を鑑みると、ポリマーが分解するおそれがあるので、20〜30秒というより理想的な時間は不可能であった。医薬品適用のためのTKCのさらなる開発は、かかる改良によって多数の異なる医薬品適用に用いられるよう配合の積極的な性質の調節を可能にし、かつ、複合材料の均質性を確実なものとするために、より長期の処理時間を可能にすべく、機械設計の変更をその視野に入れることになるだろう。
【0115】
METHOCEL(登録商標)E50及びKOLLIDON(登録商標)30におけるTKCによって処理されたKTZの溶解試験。KTZ:Methocel(登録商標)E50(1:2)及びKTZ:Kollidon(登録商標)30(1:2)のTKCによって処理された試料について、かかる2つの配合によって実現されるKTZの過飽和の程度を評価するため、pH6.8のリン酸緩衝液中の過飽和溶解試験を行った。本研究の結果を図5に示す。より直接的な過飽和の表示を提供するために、各時点での溶液中のKTZ濃度を中性のpH媒体(5.98μg/mL(Glomme, A., Marz, J., Dressman, J. Comparison of a miniaturized shake-flask solubility method with automated potentiometric acid/base titrations and calculated solubilities. Journal of Pharmaceutical Sciences 2005;94(1):1-16))におけるKTZの飽和溶解度によって標準化した。図5において、KTZ:Methocel(登録商標)E50(1:2)及びKTZ:Kollidon(登録商標)30(1:2)の製剤は、最初の10分で各々の最大濃度である87%及び82%に達し、その急速な溶解速度を示したことが分かる。しかしながら、KTZ:Methocel(登録商標)E50(1:2)の製剤は、その最大C/Ceq値が7.6であり、その最大C/Ceq値が1.4しか示さなかったKTZ:Kollidon(登録商標)30(1:2)の製剤と比較してはるかに広範囲な過飽和を生成した。また、24時間C/Ceq値が、それぞれ4.9及び1.2で示されるように、KTZ:Methocel(登録商標)E50(1:2)の製剤による過飽和の期間は、KTZ:Kollidon(登録商標)30(1:2)の製剤のそれよりもはるかに優れていることが分かった。KTZ:Methocel(登録商標)E50(1:2)の製剤及びKTZ:Kollidon(登録商標)30(1:2)の製剤の溶解曲線下の総面積(AUDC)は、それぞれ852μg・時/mL、177μg・時/mLであった。これらのAUDC値は、Methocel(登録商標)E50がKollidon(登録商標)30よりもKTZのほうが過飽和濃度の安定性が優れていることを明示している。同じ結果が、イトラコナゾール(ITZ)の過飽和濃度に関しても得られた。このことは、溶液中でITZを安定化させる遊離ヒドロキシル基(水素結合部位)がMethocel(登録商標)上に存在することによって、ITZとKollidon(登録商標)との分子間相互作用よりも、ITZとMethocel(登録商標)との分子間相互作用が強まることに起因している。KTZも弱塩基で、その分子構造もITZと極めて類似していることから、この安定化のメカニズムは、本研究において調査された2つの製剤から観察される過飽和の不一致の原因であると思われる。これらのインビトロでの結果とインビボでの対照物との相互の関連を比較すると、Methocel(登録商標)E50の製剤のほうが腸管におけるKTZの過飽和が大きいことが分かるため、Methocel(登録商標)E50(1:2)の製剤の方がKollidon(登録商標)30の製剤よりも大量の吸収が実現されるであろう。したがって、これらの結果は、低水溶性の薬物の経口薬物療法を改善することに関して、TKCが有する潜在的な影響力を示している。
【0116】
熱不安定性ポリマーのキャリアを使用したTKCによる固体分散系の作製。前述したとおり、TKCは硬質状態から融解状態への転移温度(rigid-to-molten transition temperature)よりも低温にてポリマーを融解状態とする処理能力を有する。上記では、HME処理の実質的な限界は、熱による分解及び/又は融解フローによって処理が制限を受ける場合に助剤の使用を要件することであることも議論された。したがって、可塑剤や熱性滑剤などの処理剤を使用することなく、熱不安定性ポリマーであるEUDRAGIT(登録商標)L100-55中でKTZ及びインドメタシン(IND)の非晶質の固体分散系を作製するためのTKCの使用を示すことが、本研究の目的であった。これらの組成物が成功裡に作製されたことは、TKC処理がHEM処理よりも実質的な利益を有することを示している。
【0117】
KTZ:EUDRAGIT(登録商標)L100-55について、薬物:ポリマーの比率を(1:2)及び(1:4)と変えた2種類のバッチをTKCによって処理した。配合機から出てきた際の物質の質感は、先述した試料のそれに類似の、すなわち、ゴムのような凝集の塊であった。2種類の配合バッチの表面温度は、測定の結果、それぞれ、KTZ:EUDRAGIT(登録商標)L100-55(1:2)のバッチでは125℃、(1:4)のバッチでは90℃であった。これらの温度は、EUDRAGIT(登録商標)L100-55(1:2)のT(127℃)より下で、KTZの融点(151℃)を下回り、かつ、EUDRAGIT(登録商標)L100-55の分解の開始点(〜150℃)より下であるため、重要である(Petereit, H.-U., Weisbrod, W. Formulation and process considerations affecting the stability of solid dosage forms formulated with methacrylate copolymers. European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 1999;47(1):15-25)。前述したように、処理時間は短く(〜10秒)、処理される物質は、一瞬高温に曝露されるに過ぎない。再び、本研究で使用する配合機の大きさと積極的な性質は、配合された物質に付与されるエネルギーの制御を制限し、その結果、処理されたバッチの一部がポリマー分解の明らかな兆候を示した。しかしながら、分解の兆候をみせなかった処理バッチの部分も多くあり、かかる部分はさらなる分析用に回収された。バッチ間でのバリエーションを最小限にするため、より正確な処理制御を提供するために、今後の研究では、より柔軟な操作パラメータを有する、より小規模な機械が使用されるであろう。
【0118】
図6において、KTZ:EUDRAGIT(登録商標)L100-55のTKCによって処理されたバッチ双方のDSCサーモグラムを、比較のため、未処理ポリマー、薬物:ポリマーの単純混合物及びバルクKTZとともに示す。対応する単純混合物においては約151℃で結晶性KTZの融解吸熱が無くなっていることから分かるように、KTZ:EUDRAGIT(登録商標)L100-55(1:4)のバッチではTKC処理によってかかる製剤中のKTZが完全に非晶質となったことを示している。単純混合物中の結晶性KTZの融解現象と同じ範囲において極めて浅く広い吸熱が起きていることから分かるように、極めて少量の結晶性KTZがKTZ:EUDRAGIT(登録商標)L100-55(1:2)中に検出された。このバッチにおいて若干の結晶性が検出されたが、かかる組成物は、対応する単純混合物と比較して、KTZが結晶中で実質的に減少していることを立証している。
【0119】
KTZ:EUDRAGIT(登録商標)L100-55の両バッチがKTZの融点よりも実質的に低温で処理されたが、TKC処理は、薬物をその天然の結晶性構造から非晶質形態に転換することができた。さらに、EUDRAGIT(登録商標)L100-55中のKTZの分散が、可塑剤やその他の処理剤を使用することなく実現された。従来は、非可塑化EUDRAGIT(登録商標)L100-55の温度制限及び過度の溶融粘度が存在するため、ITZ:EUDRAGIT(登録商標)L100-55(1:2)の製剤を成功裡に処理するために20%クエン酸トリエチルを追加することが必要であるとされていた。固体分散系での大量の可塑剤の存在という不利点は、それがかかる系の安定性を低下させ、薬物放出プロファイルを変更し得る点である。したがって、処理助剤を使用せずに熱に適合しない物質(融点の高い薬物及び熱不安定性ポリマー)から非晶質組成物を作製するTKCの能力は、非晶質の固体分散系の作製において、TKCがHMEよりも実質的に利点を有することを示している。
【0120】
異なる薬物分子を用いて効果を調べるために、EUDRAGIT(登録商標)L100-55中のIND組成物も、TKCによって処理した。INDの融点は、161℃であるため、熱的方法によるINDのEUDRAGIT(登録商標)L100-55への分散は、前述したポリマー分解の問題によって制限を受ける。従来のKTZ製剤と同様に、2種類のINDバッチをポリマー比率(1:4)及び(1:2)にて薬物中で処理した。2つの生成物は、淡黄色の融解凝集の塊として配合機から出てきた。IND:EUDRAGIT(登録商標)L100-55(1:4)及び(1:2)のバッチの表面温度は、それぞれ60℃及び140℃であった。
【0121】
IND:EUDRAGIT(登録商標)L100-55バッチのサーモグラムを、比較のため、未処理EUDRAGIT(登録商標)L100-55ポリマー、単純混合物及びバルクINDとともに図7に示す。かかる図において、TKCによって処理されたバッチの双方が、実質的に非晶質の形態にてINDを含有していることが分かる。IND:EUDRAGIT(登録商標)L100-55(1:4)バッチは、約161℃でのより急な融解吸熱から明白なように、IND:EUDRAGIT(登録商標)L100-55(1:4)バッチと比較して、結晶性薬物含量が僅かに多いと思われる。このことはかかる2種類のバッチ間での処理条件が相違していることに起因する可能性がある。すなわち、1:4バッチでは、1:2バッチに対してRPMが減少(1600対1950)し、表面温度が低下(60℃対140℃)している。しかしながら、はるかに「低温」条件での処理であるにもかかわらず、IND:Eudragit(登録商標)L100-55(1:4)バッチに含有される薬物は、TKC処理によって実質的に非晶質となった。両方の場合において、物質温度は、INDの融点よりも実質的に低く、これによりTKCによって処理助剤の使用無しに薬物の融点より低温でEUDRAGIT(登録商標)L100-55においてINDの非晶質分散体が作製できることが分かる。
【0122】
これら2種類のIND:EUDRAGIT(登録商標)L100-55のバッチで観察された僅かな結晶化は、ここでもまた、比較的小さなバッチサイズで大きな配合機を使用したことに起因し得る。EUDRAGIT(登録商標)L100-55を分解することなくポリマーを融解状態にし、かつ薬物を非晶質にするには精密制御が要求される。しかしながら、かかる制御は、大きな配合機では不可能であり、ポリマーを分解しないためにバッチは保存的に処理される。配合機を保存的方法で操作した結果、処理した両方のバッチにおいてINDの結晶化が僅かにみられた。
【0123】
要約すれば、本研究の結果は、TKC処理が、例えば高い融点を有する薬物と熱不安定性ポリマーとのように熱に適合しない物質から非晶質組成物を形成する能力を立証している。殆どの低水溶性薬物が高い融点を有しているため、非晶質の固体分散系の作製のためにTKC処理を適用することは、その配合において、より高い柔軟性をもたせることができる。これは、EUDRAGIT(登録商標)L100-55などの熱不安定性ポリマーが処理助剤を必要とすることなくキャリアとして利用できるためである。
【0124】
さらに、可塑剤及び/又は熱性滑剤などの処理剤の必要性を排除することによって、TKC処理は、添加剤の影響を受けない、より安定性の高い固体分散体製剤及び薬物放出特性を有する製剤を作製するために利用されることができる。
【0125】
したがって、キャリア及び活性物質双方の融点及びガラス転移温度を下回る温度にて融解処理を可能にすることにより、TKC処理は、固体分散系の製造技術における大きな進歩を表すものである。
【実施例2】
【0126】
さらなる研究により、新規な高エネルギーの製造技術である熱動力学的配合(TKC)を用いて、実質的に縮小された処理時間で、ホットメルト押出 (HME)で作製された組成物と同等の性質を有する、低水溶性の薬物の非晶質の固体分散体が作製できることが示されている。
【0127】
親水性キャリアであるヒドロキシプロピルメチルセルロースとポリビニルピロリドン中に、低水溶性の薬物であるイトラコナゾール(ITZ)とグリセオフルビン(GRIS)を分散させた固体分散体(薬物:キャリア比率 1:2)を新規な高エネルギー製造方法を用いて作製し、HMEによって処理された同等の製剤と比較した。組成物の非晶質性を評価するために、変調した示差走査熱量測定法(mDSC)及びX線回折装置(XRD)を使用した。過飽和の程度及び範囲を評価するため、10倍の平衡溶解度と同等の薬物分量を加えることによって、過飽和溶解試験を行った。既知分量の薬物製品を適切な溶媒中に溶解し、製剤原料の濃度を測定することによって効力試験を行った。アッセイ及び溶解の試料をHPLCによって分析した。
【0128】
USP29装置IIの溶解試験に基づいて、VK7010溶解装置(Varian, Inc.社、カリフォルニア州パロアルト)及びVK8000自動サンプラー(Varian, Inc.社、カリフォルニア州パロアルト)を用いて、過飽和溶解試験を行った。10×0.1NのHCl媒体平衡溶解度に相当する量を秤量し、0.1NのHCl媒体900mLを含有する溶解容器に加えた。試験中、5、10、15、30、45及び60分後、置換することなく溶解容器から5mLずつ試料を取り出した。試料を直ちにろ過し、移動相で1:1の割合で希釈し、ボルテックスし、混合し、1mLバイアル(VWR International社、ペンシルバニア州ウェストチェスター)に移して、分析に供した。
【0129】
Waters 515 二重シリンジポンプ、 Waters 717自動サンプラー及びWaters
996 光ダイオードアレイからなるWaters(Waters Corporation社, マサチューセッツ州ミルフォード)高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)系を用いて293.4nmの波長で抽出を行い、グリセオフルビン溶解試料を分析した。かかる系を、60:35:5の水:アセトニトリル:テトラヒドロフランからなり、Phenomenex Luna CN 100 Å、250mm×4.6mm(Phenomenex(登録商標)社、カリフォルニア州トランス)HPLCカラムを備えた移動相を用いて1mL/分のアイソクラチックフロー(isocratic flow)で操作した。データを収集し、Empower(登録商標)Version 5.0ソフトウェアを用いて分析した。
【0130】
TKC及びHMEによって調製されたグリセオフルビン:PVPの過飽和溶解試験の結果を図8に示す。かかる組成物は、未処理の製剤原料よりも大幅に速い溶解速度を示した。さらに、TKCによって処理された組成物は、媒体を過飽和させる能力を示し、バイオアベイラビリティが強化されている可能性を提供した。
【0131】
Philips Model 1710 X線回折計(Philips Electronic Instruments Inc社., ニュージャージー州マーワー)を用いてpXRD試験を行った。粉末試料をチャンネルステージに配置し、回折プロファイルを2θ刻み幅0.05°かつドウェル時間3秒にて、5〜50°まで測定した。TKC及びHMEによって処理されグリセオフルビン:PVP K30のpXRD試験の結果を図9に示す。比較のため、粉末形態の混合物及びグリセオフルビンについての結果も示す。
【0132】
pXRD試験は、物質の結晶構造を評価するために使用される。未処理のグリセオフルビンはその結晶化を示す、いくつかの特徴的なピークを示す。かかるピークは、グリセオフルビンとPVPとの物理的混合物中にも存在する。これらのピークは、TKC及びHMEによって処理されたグリセオフルビンとPVPとの組成物中には存在せず、いずれの型で処理した物質も非晶質であることを示している。
【0133】
グリセオフルビン生成物に関して、TA Instruments Model 2920 DSC (デラウェア州ニューキャッスル)を用いて変調した示差走査熱量測定法試験を行い、TA Universal Analysis 2000 ソフトウェアを用いて分析した。試料をアルミニウム製クリンプパンに入れて15±2mgまで正確に秤量した。試験は、ランプ速度10℃/分かつ温度変調振幅0.5℃にて5〜275℃で、40mL/分の流速で窒素パージしながら変調期間40秒で行った。薬物無しの組成物をガラス転移温度より最低50℃高い温度で加熱した。
【0134】
mDSC試験を用いると、組成物の結晶化及びガラス転移を評価することが可能である。mDSC試験の結果を図10に示す。熱流プロファイルの調査により、グリセオフルビンが222℃で融解吸熱を示したことが分かる。初回に実行した試料を急冷することによって形成された非晶質組成物の形成物は、90℃で特徴的なグリセオフルビンのガラス転移温度を示している。再結晶化及び溶融に伴う後のダウンストリーム現象もサーモグラム中にみられる。PVP K30の組成物に関する熱流プロファイルは、グリセオフルビン:PVP K30の組成物同様、融解吸熱を示さず、pXRD試験においてみられた非晶質な結果が確認される。物質のガラス転移値を測定するために、反転熱流プロファイルを調べた。PVP K30の組成物が180℃のガラス転移値を示した一方で、非晶質のグリセオフルビンのガラス転移値が90℃であることが確認された。HME及びTKCの双方によって処理されたグリセオフルビン:PVP K30の組成物は、約127〜130℃である、単一のガラス転移相しか示さず、両組成物が単相としてのみ存在していたことを示している。
【0135】
したがって、TKCによって調製された固体分散体は、1分未満での処理時間を示した一方で、これと同等のHMEの組成物の処理には10分を超過する実行時間を要した。TKC及びHMEの双方によって作製された固体分散体のXRD試験は、回折パターン中の結晶化ピークの不在を示し、非晶質組成物であることを示唆した。mDSC試験を行った全ての組成物に関して製剤原料の融解吸熱の不在が分かり、かかる薬物製品の非晶質な性質を裏付けた。さらに、TKCによって処理された組成物では単一のガラス転移温度しか観察されず、物質が分子段階で拡散されたことを示した。TKCによって作製されたITZ及びGRISの固体分散体もその理論値が95.0%〜105.0%にわたり、優れた生成物能力を示した。溶解試験の結果により、非晶質組成物が結晶性製剤原料よりも相当程度高い溶解速度を有したことを示し、バイオアベイラビリティが強化されている可能性を示した。
【0136】
したがって、TKCによって処理された物質は、HMEによって作製された組成物と同様の物理的特性及び化学的特性を示しながら、かかるHMEによって作製された組成物と比較して相当程度短い処理時間で作製されたことが分かった。これらの結果により、TKCが薬学的に許容される固体分散体の効果的かつ効率的な作製方法であり、従来的なHME処理よりも実質的に高い処理能力を提供していることが示される。
【実施例3】
【0137】
本発明者らは、従来的な製造技術によって作製された物質と比較して、より優れた固体の特徴を実現するために、可塑剤の補助無しに融合方法を用いてイトラコナゾール(ITZ)とEudragit(登録商標)L100-55との固体分散体の作製が可能であることも示した。
【0138】
本研究において、TKCを用いて、ITZとEudragit(登録商標)L100-55(1:2)との固体分散体を作製し、ホットメルト押出(HME)処理された同等の製剤と比較した。HMEによって処理された物質は、可塑剤の補助無しには作製されなかった。可塑剤として、クエン酸トリエチル(TEC)を乾燥ポリマー重量で20%(w/w)使用した。組成物の非晶質の性質を評価するために、変調した示差走査熱量測定法(mDSC)及びX線回折装置(XRD)を使用した。過飽和の程度及び範囲を評価するため、USP法A腸溶性試験に基づいて、10倍の酸性平衡溶解度と同等の薬物分量を加えることによって、過飽和溶解試験を行った。既知分量の薬物製品を適切な溶媒中に溶解して、有効試験を行った。有効性及び溶解試料をHPLCによって分析した。
【0139】
USP29装置IIの溶解試験に基づいて、VK 7010溶解装置(Varian, Inc.社、カリフォルニア州パロアルト)及びVK 8000自動サンプラー(Varian, Inc.社、カリフォルニア州パロアルト)を用いて、TKC処理及びHMEによって処理されたイトラコナゾール:HPMC E5の過飽和溶解試験を行った。10×0.1NのHCl媒体平衡溶解度に相当する量を秤量し、0.1NのHCl媒体900mLを含有する溶解容器に加えた。試験中、5、10、15、30、45及び60分後、置換することなく溶解容器から5mLずつ試料を取り出した。試料を直ちにろ過し、移動相で1:1の割合で希釈し、ボルテックスし、混合し、1mLのバイアル(VWR International社、ペンシルバニア州ウェストチェスター)に移して、分析に供した。
【0140】
Waters 515 二重シリンジポンプ、 Waters 717自動サンプラー及びWaters
996 Waters光ダイオードアレイからなるWaters(Waters Corporation社, マサチューセッツ州ミルフォード)高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)系を用いて263nmの波長で抽出を行い、溶解試料を分析した。かかる系を、70:30:0.05の水:アセトニトリル:テトラヒドロフランからなり、Phenomenex Luna 5 mcm C18(2) 100 Å、150mm×4.6mm(Phenomenex(登録商標)社、カリフォルニア州トランス)HPLCカラムを備えた移動相を用いて1mL/分のアイソクラチックフロー(isocratic flow)で操作した。データを収集し、Empower(登録商標)Version 5.0ソフトウェアを用いて分析した。
【0141】
溶解試験の結果を図11に示す。TKC及びHMEによって作製されたイト
ラコナゾール:HPMC固体分散体は、過飽和性とともに、著しく高い溶解速度を示した。また、製造方法による統計的に有意な差異は観察されなかった。このことは、HME又はTKCによって作製された組成物が、インビボで同等のバイオアベイラビリティを提供するはずであることを示している。
【0142】
Philips Model 1710 X線回折計(Philips Electronic Instruments Inc社., ニュージャージー州マーワー)を用いてTKC及びHMEによって処理されたイトラコナゾール:HPMC E5のXRD試験を行った。粉末試料をチャンネルステージに配置し、2θ刻み幅0.05°かつドウェル時間3秒にて回折プロファイルを5〜50°まで測定した。XRD試験の結果を図12に示す。
【0143】
XRD試験は、物質の結晶構造を評価するために使用される。未処理のイトラコナゾールはその結晶性を示す、いくつかの特徴的なピークを示す。かかるピークは、TKC及びHMEによって処理されたイトラコナゾール及びHPMCの組成物中には存在せず、双方の型で処理した物質が非晶質であることを示している。
【0144】
TA Instruments Model 2920 DSC (デラウェア州ニューキャッスル)を用いてTKC及びHMEによって処理されたイトラコナゾール及びHPMC E5に関する変調した示差走査熱量測定法試験を行い、TA Universal Analysis 2000 ソフトウェアを用いて分析した。試料をアルミニウム製クリンプパンに入れて15±2mgまで正確に秤量した。試験は、ランプ速度10℃/分かつ温度変調振幅0.5℃にて5〜215℃で、40mL/分の流速で窒素パージしながら変調周期40秒で行った。薬物無しの組成物をガラス転移温度より最低50℃高い温度で加熱した。結果を図13に示す。
【0145】
熱流プロファイルの調査は、組成物の結晶性を評価するために使用された。
イトラコナゾールは、171℃で特徴的な融解吸熱を示したが、これは非晶質の物質中には存在していなかった。また、この融解吸熱は、処理した組成物全てにおいて不在であり、pXRD分析によって観察された非晶質の性質を裏付けた。組成物のガラス転移温度の値を測定するために反転熱流プロファイルを調べた。HME及びTKCによって作製されたITZ:HPMC E5組成物はともに、試験で約115℃のガラス転移温度を示し、組成物中の薬物分散レベルと同等であることを裏付けた。
【0146】
TKC及びHMEによって処理されたイトラコナゾール:L 100-55も試験に供した。USP29法Aの腸溶性試験に基づいて、VK 7010溶解装置(Varian, Inc.社、カリフォルニア州パロアルト)及びVK 8000自動サンプラー(Varian, Inc.社、カリフォルニア州パロアルト)を用いて、過飽和溶解試験を行った。10×0.1NのHCl媒体平衡溶解度に相当する量を秤量し、0.1NのHCl媒体750mLを含有する溶解容器に加えた。2時間後、0.2MのNa3PO4溶液250mLを溶解容器に追加してpHを約6.8にした。試験中、120、125、130、150、180及び240分後、置換することなく溶解容器から5mLずつ試料を取り出した。試料を直ちにろ過し、移動相で1:1の割合で希釈し、ボルテックスし、混合し、1mLのバイアル(VWR International社、ペンシルバニア州ウェストチェスター)に移して分析に供した。
【0147】
Waters515二重シリンジポンプ、 Waters 717自動サンプラー及びWaters 996光ダイオードアレイからなるWaters(Waters Corporation社, マサチューセッツ州ミルフォード)高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)系を用いて263nmの波長で抽出し、溶解試料を分析した。かかる系を、70:30:0.05のアセトニトリル:水:ジエタノールアミンからなり、Phenomenex Luna 5 mcm C18(2)、100Å、150mm×4.6mm(Phenomenex(登録商標)社、カリフォルニア州トランス)HPLCカラムを備えた移動相を用いて1mL/分のアイソクラチックフロー(isocratic flow)で操作した。試験において、試料を0.1NのHCl媒体中に収集して、中和媒体をそれぞれ200mL注入した。データを収集して、Empower(登録商標)Version 5.0ソフトウェアを用いて分析した。イトラコナゾール:L100-55試料の結果を図14に示す。
【0148】
イトラコナゾールは、弱塩基性の薬物であり、中性の媒体と比較して酸性の
媒体により高い溶解性を有するものの、依然として低水溶性の薬物と考えられる。これまでの研究調査では、インビボでの組成物の性能を評価するために、pH変化過飽和試験が最も代表的なインビトロでの試験であることが示されている。過飽和溶解試験は、非晶質組成物によって実現される溶解速度及び過飽和の大きさを評価するために使用される。試験の結果、TKCによって処理された物質では、より長い最高血中濃度到達時間(tmax)が観察され、両組成物が全体的に類似した溶解プロファイルを示したことが分かった。TKCによって処理された物質では放出速度が若干遅いことも観察されたが、同時により強い過飽和がより長い期間で観察され、かかる組成物が強化されたバイオアベイラビリティを提供する可能性を示した。これらの性能の相違は、おそらくはTKCによって処理された物質中に可塑剤が含まれないためと考えられる。
【0149】
得られた最高血中濃度(Cmax)を確認し、データ上で対数変換する過飽和溶解プロファイルの評価によって、インビトロでの沈降速度の評価を算出することができる。変換データの勾配は、算出されたより小さなk値がより長い過飽和半減期に対応して、崩壊半減期と相関している。データ分析の結果によれば(図15)、TKCによって作製された組成物は、HMEによって作製された組成物と比較して、より長期の過飽和溶液の半減期を得たことが分かった(131分対44分)が、これは製剤中に可塑剤が含まれないことによるものであった。この性能は、インビボでより高いバイオアベイラビリティを有する可能性がある。
【0150】
Philips Model 1710 X線回折計(Philips Electronic Instruments Inc社.,
ニュージャージー州マーワー)を用いて、TKCによって処理されたイトラコナゾール:L100-55XRDの試験を行った。粉末試料をチェンネルステージに配置し、2θ刻み幅0.05°かつドウェル時間3秒にて回折プロファイルを5〜50°まで測定した。結果を図16に示す。
【0151】
XRD試験は、物質の結晶構造を評価するために使用される。未処理のイトラコナゾールはその結晶化を示す、いくつかの特徴的なピークを示す。これらのピークは、TKCによって処理されたイトラコナゾール及びL100-55の組成物中には存在せず、両方の型にて処理した物質が非晶質であることを示している。
【0152】
TKCによって処理されたイトラコナゾール:L100-55に関して変調した示差
走査熱量測定法試験を行い、HMEによって処理された可塑剤(TEC)を加えたイトラコナゾール:L100-55と比較した。TA Instruments Model 2920 DSC (デラウェア州ニューキャッスル)を用いて試験を行い、TA Universal Analysis 2000 ソフトウェアを用いて分析した。試料をアルミニウム製クリンプパンに入れて15±2mgまで正確に秤量した。試験は、ランプ速度10℃/分かつ温度変調振幅0.5℃にて5〜215℃で、40mL/分の流速で窒素パージしながら変調期間40秒で行った。薬物無しの組成物をガラス転移温度より最低50℃高い温度で加熱した。結果を図17に示す。
【0153】
組成物のガラス転移温度を評価するために、反転熱流プロファイルの試験を行うことができる。かかる試験の結果、L100-55のガラス転移温度は127℃であり、これまでに公表されている結果とよく合致している。20%(w/w)TECにて可塑化すると温度が63℃まで低下した。TECを含有するHMEによって処理された組成物は、53℃のガラス転移温度を示したが、可塑剤無しでTKCによって処理された組成物は101℃のガラス転移温度を示した。このガラス転移温度における相違は、非晶質組成物の長期的な安定性の強化に極めて有益である。
【0154】
この実施例は、TKCの使用によってITZ:L100-55の固体分散体が、観察された処理時間が1分未満かつ目標の±5%の効力で成功裡に作製されたことを示している。TKCによって処理された物質のXRD試験は、非晶質のプロファイルを示したが、これはmDSC分析において結晶性薬物融解吸熱の不在により、確認された。このことは、観察された単一のガラス転移温度とも相俟って、組成物の非晶質の固溶体の性質を示した。mDSCを用いてガラス転移温度(T)を確認した。TKC方法を使用して可塑剤無しに作製された組成物は、100.7℃のガラス転移温度の値を示したが、一方、TECを含有するHME組成物では、53.2℃のガラス転移温度の値を得た。過飽和溶解試験では、インビトロで得られた最大濃度間(TKC:15.4±0.8μg/mL、HME:17.1±5.5μg/mL)で統計的に有意な誤差がみられなかった一方、TKCによって作製された組成物では、中性の媒体に対する沈降速度が相当程度減少した。
【0155】
結論として、可塑剤の補助無しにTKCによって処理された組成物は、より高いT及び減少した沈降速度を示し、従来的な処理技術を用いて作製された組成物と比較して、TKC処理が、固体特性を強化し、高度な固体分散体製剤のバイオアベイラビリティを改善したことを示した。
【実施例4】
【0156】
本研究は、TKC製造方法における熱不安定性のAPIの安定性を調査するものである。ヒドロコルチゾンは、医薬品の熱処理中に分解することが示された薬物である。その他の医薬品熱処理技術によってヒドロコルチゾン組成物を生じ得ることが、例えばRepka et al. (Repka, A., Gerding, T., Repka, S., McGinity, J. Influence of plasticizers and drugs on the physical-mechanical properties of hydroxypropylcellulose films prepared by hot melt extrusion. Drug Development and Industrial Pharmacy 1999;25(5):625-33)などにおいて既知であるため、本研究の目的は、TKC処理が熱不安定性のAPIをも生じ得るか否か調べることである。Repka et al.において見い出されたヒドロコルチゾンの分解量は、HMEで処理した場合の処理時間に比例することが示された。
【0157】
ヒドロコルチゾンの医薬組成物を、射出温度約160℃にてTKCによって調製し、未処理の製剤原料と比較して、処理によって引き起こされた分解物質の形成を評価した。TKCによって処理されたヒドロコルチゾン製剤を表2に示す。
【0158】
【表3】

【0159】
TKCによって処理されたヒドロコルチゾン製剤の分析試験をPhenomenex C18カラム及び水:メタノールが65:35の移動相を用いて、流速1ml/分で、HPLCを用いて行った。分解生成物を同定し、かかる方法による分解生成物を滞留時間という観点から記載した。その結果を表3に示す。
【0160】
【表4】

【0161】
分析試験の結果、少量の分解しか形成されなかったことが分かり、TKCによる処理においては、API分解が驚異的に低かったことが分かった。例えば、不純物量に変化が無かった一方で、7.8分ではヒドロコルチゾンの分解が0.05%しか検出できなかった。かかる分解レベルは、実際のところ、分解生成物報告に関するICHガイドラインを下回っていた(ICH Harmonised Tripartite Guideline, Impurities in New Drug Products Q3B(R2); Current Step 4 version, dated June 2, 2006)。さらに、マスバランス試験は、TKCによって処理された組成物が理論上100.6%の効力を示したことを示し、かかる方法の有するプロセス中でAPI分解を最小限にする能力をさらに明らかにした。これらの結果は、TKCが例えばHMEと比較してより短い処理時間ゆえに、処理中APIの分解レベルを著しく低下させることを示している。Repka et al.に示すように、HMEでは大幅な分解度及び約70%〜ほぼ94%の製品の効力が生じた。したがって、TKCでは分解がより低く、このことは組成物製品におけるAPIの割合がより高く、製品の効力がより高いことを示している。
【実施例5】
【0162】
本研究では、混合が改善された三元(ternary)固体分散体に焦点をあてた。2軸ホットメルト押出によって生成されたイトラコナゾール、Eudragit(登録商標)L100-55及びカルボマー974Pの多成分固体分散体が、L100-55ドミナント相及びカルボマードミナント相の存在に起因して、2つの不連続相を示すことが分かった。イトラコナゾール、Eudragit(登録商標)L100-55及びカルボマー974Pの組成物を変調した示差走査熱量測定法 (mDSC)によって特徴付けられる複合材料の固体特性を用いて2軸押出及びTKCによって処理した。イトラコナゾール及びEudragit(登録商標)L100-55の組成物を1:2の割合で処理した。カルボマーポリマーレベル20%にてカルボマー含有組成物を作製した。2軸ホットメルト押出で処理した組成物については、20%TECを可塑剤として使用した。
【0163】
試験は、約15mgの試料を秤量し、ランプ速度10℃/分かつ振幅0.5℃にて5℃から215℃まで加熱することによって行った。TKC及びHMEによって処理されたカルボマー 974P、イトラコナゾール:L100-55の複合材料並びにTKC及びHMEによって処理されたイトラコナゾール:Eudragit(登録商標)L100-55:カルボマー 974Pの複合材料の総熱流プロファイルを図18に提示する。その結果、TKCによって処理されたイトラコナゾール:Eudragit(登録商標)L100-55:カルボマー 974Pの複合材料の緩和温度の出現時は、2軸ホットメルト押出のそれとは著しく相違していた。これらの組成物の反転熱流プロファイルを図19に提示する。図19に示すように、TKCによって処理されたイトラコナゾール:Eudragit(登録商標)L100-55:カルボマー 974Pの製剤が単相を示したのに対して、2軸ホットメルト押出によって作製された組成物は、それぞれEudragit(登録商標)L100-55ドミナント相及びカルボマー974Pドミナント相に相当する2つの不連続相を示した。
【0164】
本研究は、HMEと比較して、TKCが、APIと薬学的に許容される賦形剤と、より密な混合を実現することを示している。したがって、HMEが2つ以上のガラス転移温度を有する組成物を作製するときに、TKCであれば、API及び賦形剤の同じ組合せを使用して単一のガラス転移温度を有する組成物を作製することができる可能性がある。また、TKCは、既知の組成物の混合物を含めて、種々のAPI及び賦形剤を含む組成物の放出特性及び安定性を調整することができる可能性がある。かかるTKCによって処理された組成物は、第1の組成物における2以上のガラス転移温度のうち低い方の温度よりは高い単一ガラス転移温度を有するであろう。このことは、結果として、より長期の保存寿命を得る可能性のある、より安定的な組成物を得ることとなるであろう。したがって、短期の保存寿命を有する医薬組成物は、結果的にその安定性及び保存寿命が改善されることから、TKCによる処理を受ける利益があるであろう。
【実施例6】
【0165】
この実施例は、ナノ閉込めのための機能的な添加剤の使用に関するものである。ポリマーマトリックスに基づくナノ複合材料は、例えば物質の弛緩、ガラス転移温度、安定性、薬物放出速度、吸湿を修正するなど、医薬組成物の特性の修正能力を提供する。かかる潜在的な適用を研究するために、疎水性ヒュームド・シリカであるAerosil R972をTKCによって調製したイトラコナゾールとEudragit(登録商標)L100-55との医薬組成物中に組み入れ、ヒュームド・シリカ無しの組成物と比較した。これらの組成物は、ガラス転移における変化をみるためにmDSCで評価した。試験は、約15mgの試料を秤量し、ランプ速度10℃/分かつ振幅0.5℃にて5℃から215℃まで加熱することによって行った。図20に示す総熱流プロファイルから、Aerosil R972を含有する組成物が、Aerosil R972を含有しない組成物と比較して、より弱い弛緩現象を示したことが分かる。また、Aerosil R972を含有する組成物は、可視のガラス転移現象を有していた。図21に示す反転熱流プロファイルは、ガラス転移現象における若干の温度低下を明示している。これらの結果は、閉込め効果による物性の変化について論じたPaul and Robeson(Paul, D.R., Robeson, L.M. Polymer nanotechnology: Nanocomposites. Polymer 2008;49:3187-3204)に記載の総説と一致している。
【0166】
このようにして、本開示は、医薬品固体分散系を作製するための新規かつ改善された技術としてのTKCを確立している。TKCは、無溶媒の、有効な、測定可能な製造方法として、HMEを好ましい製造方法とした特性の多くを有している。熱的に安定なポリマーのキャリアにおける非晶質の固体分散系の作製に関して、本開示は、かかる2つの方法が酷似していることを示している。しかしながら、TKC独特の特性である非常に短い処理時間、より低い処理温度及びフロー無しの融解処理(no-flow molten processing)は、特に、高いT/T/溶融粘度の物質の処理のみならず、熱不安定性の物質の処理に関して、TKCをHMEよりも優れた技術として区別化している。処理助剤を使用することなく、熱不安定性ポリマー中で融点の高い薬物の非晶質組成物を成功裡に作製することによって、本開示はTKCが固体分散体製造技術における注目に値する進歩であることを示している。なお、本開示は、非晶質固体分散系の製造のためのTKCの使用に重点をおいているが、TKC、TKM及びこれらの間にあるバリエーションが医薬品製造に関して多種多様な用途を有するものと考えられる。
【0167】
本明細書で論じた任意の実施形態は、本発明の任意のAPI、賦形剤、キャリア、方法、キット、試薬、又は組成物に対して実施することができ、逆の場合も同様であることを意図している。さらに、本発明の組成物は、本発明の方法を達成するために使用することができる。
【0168】
本明細書に記載した特定の実施形態は、例として示されており、本発明の制限として示されていないことが理解されよう。本発明の主な特徴は、本発明の範囲を逸脱することなく種々の実施形態において使用することができる。当業者は、日常程度の実験を用いて、本明細書に記載した特定の手順に対する多数の均等物を認識すること、又は確認することができるであろう。そのような均等物は、本発明の範囲内であるとみなされ、特許請求の範囲に包含されている。
【0169】
本明細書で述べた全ての刊行物及び特許出願は、本発明が関係する当業者のスキルのレベルを示す。全ての刊行物及び特許出願は、それぞれ個々の刊行物又は特許出願が、具体的にかつ個々に参照により組み込まれていると示されているのと同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれている。
【0170】
特許請求の範囲及び/又は本明細書において、用語「含む」とともに使用されるとき、単数の使用は、「1つ」を意味することができるが、「1又は複数の」、「少なくとも1つの」及び「1又は1を超える」の意味とも一致する。特許請求の範囲における用語「又は」の使用は、代替物のみを指すか、代替物が相互に排他的であることが明確に示されていない限り、「及び/又は」を意味するのに使用されるが、本開示は、代替物のみ、並びに「及び/又は」を指す定義を支持する。本願全体にわたって、用語「約」は、ある値が、その値を求めるために使用されるデバイス、方法に対する誤差の固有の変動、又は研究対象の中に存在する変動を含むことを示すのに使用される。
【0171】
本明細書及び請求項(複数も)で使用する場合、単語「含む(comprising)」(並びに「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」などの含む(comprising)の任意の形態)、「有する(having)」(並びに「有する(have)」及び「有する(has)」などの有する(having)の任意の形態)、「含む(including)」(並びに「含む(includes)」及び「含む(include)」などの含む(including)の任意の形態)、又は「含む(containing)」(並びに「含む(contains)」及び「含む(contain)」などの含む(containing)の任意の形態)は、包括的又は無制限であり、追加の、列挙していない要素又は方法ステップを除外しない。
【0172】
本明細書で使用する場合、用語「又はこれらの組合せ」は、本明細書で使用する場合、この用語に先行して列挙される項目の全ての順列及び組合せを指す。例えば、「A、B、C、又はこれらの組合せ」は、A、B、C、AB、AC、BC、又はABC、及び特定の状況において順序が重要である場合、また、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、又はCABのうちの少なくとも1つを含むことが意図されている。この例に続いて、1又は複数の項目又は用語の繰り返し、例えば、BB、AAA、MB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどを含む組合せは特に含まれる。当業者は、状況から明らかでない限り、任意の組合せにおける項目又は用語の数に制限は一般にないことを理解するであろう。
【0173】
本明細書で開示及び主張した組成物及び/又は方法の全ては、本開示を考慮すると、過度の実験を伴うことなく、作製及び実行することができる。本発明の組成物及び方法を、好適な実施形態に関して説明してきたが、組成物及び/又は方法に対して、並びに本明細書に記載した方法のステップ又はステップの順序において、本発明の概念、精神並びに範囲から逸脱することなく、変形を適用することができることは当業者に明らかとなるであろう。当業者に明らかな全てのそのような類似の代替及び改変は、添付の特許請求の範囲によって定義されるように、本発明の精神、範囲及び概念の中にあるとみなされる。
【0174】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数の原薬(API)を1又は複数の薬学的に許容される賦形剤とともに含む医薬組成物を熱動力学的配合により作製する方法であって、混合されて複合材料になるまで、1又は複数のAPIを1又は複数の薬学的に許容される賦形剤とともに熱動力学的処理することを含む方法。
【請求項2】
熱動力学的配合が、溶融混合されるまでの熱動力学的混合である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
熱動力学的配合が、凝集の前の熱動力学的混合である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
複合材料が、均質な、不均一な又は不均一に均質な複合材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
APIの少なくとも1種の水溶解性が低可溶性である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
熱動力学的処理が処理剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
処理剤が、可塑剤、熱性滑剤、有機溶媒、溶融混合を容易にする作用物質、及び後処理を容易にする作用物質からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
高い溶融粘度を有するポリマーを含むキャリアをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
組成物が、即時放出、遅延放出、又は調節放出のために配合される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
1又は複数のAPIの粒径が、約1000μm、100μm、10μm〜約1μmの平均径まで縮小される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
1又は複数のAPIの平均粒径が約1μm未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
1又は複数のAPIが、低分子の有機分子、タンパク質、ペプチド、又はポリ核酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
1又は複数の賦形剤が、薬学的に許容されるポリマー、熱不安定性ポリマーの賦形剤、及び非ポリマーの賦形剤からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
1又は複数の賦形剤が、ラクトース、グルコース、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸、水、単シロップ、グルコース溶液、デンプン溶液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、シェラック、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、カルメロースカルシウム、デンプン及びラクトースの混合物、スクロース、バター、硬化油、四級アンモニウム塩基及びラウリル硫酸ナトリウムの混合物、グリセリン及びデンプン、ラクトース、ベントナイト、コロイド状ケイ酸、タルク、ステアラート、及びポリエチレングリコール、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポロキサマー(ポリエチレン−ポリプロピレングリコールブロックコポリマー)、スクロースエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸、ラウリン酸、ビタミンE TPGS、ポリオキシエチル化グリコール分解グリセリド、ジパルミトイルホスファジチルコリン(dipalmitoyl phosphadityl choline)、グリコール酸及び塩、デオキシコール酸及び塩、フシジン酸ナトリウム、シクロデキストリン、ポリエチレングリコール、ポリグリコール化されたグリセリド、ポリビニルアルコール、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、ポリビニルピロリドン、ホスファチジルコリン誘導体、セルロース誘導体、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)及びそれらのブレンド、組み合わせ及びコポリマーから選択される生体適合性のあるポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ホットメルト押出、溶融造粒、圧縮成形、錠剤圧縮、カプセル充填、フィルムコーティング、又は射出成形により複合材料をさらに処理することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
1又は複数の原薬(API)を1又は複数の薬学的に許容される賦形剤とともに含む複合材料を熱動力学的配合によって前処理する方法であって、1又は複数の原薬を1又は複数の薬学的に許容される賦形剤とともに熱動力学的処理して複合材料にすることを含む方法。
【請求項17】
ホットメルト押出、溶融造粒、圧縮成形、錠剤圧縮、カプセル充填、フィルムコーティング、又は射出成形により、複合材料を処理することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
熱動力学的処理が5秒〜300秒間実施される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
1又は複数の賦形剤が、薬学的に許容されるポリマー、熱不安定性ポリマーの賦形剤、及び非ポリマーの賦形剤からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
1又は複数の賦形剤が、ラクトース、グルコース、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、グルコース溶液、デンプン溶液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、シェラック、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、カルメロースカルシウム、デンプン及びラクトースの混合物、スクロース、バター、硬化油、四級アンモニウム塩基及びラウリル硫酸ナトリウムの混合物、グリセリン及びデンプン、ラクトース、ベントナイト、コロイド状ケイ酸、タルク、ステアラート、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポロキサマー(ポリエチレン−ポリプロピレングリコールブロックコポリマー)、スクロースエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸、ラウリン酸、ビタミンE TPGS、ポリオキシエチル化グリコール分解グリセリド、ジパルミトイルホスファジチルコリン、グリコール酸及び塩、デオキシコール酸及び塩、フシジン酸ナトリウム、シクロデキストリン、ポリエチレングリコール、ポリグリコール化グリセリド、ポリビニルアルコール、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、ポリビニルピロリドン、ホスファチジルコリン誘導体、セルロース誘導体、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、及びそれらの混合物、組み合わせ及びコポリマーから選択される生体適合性のあるポリマーからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
オリゴマー、コポリマー、オイル、有機分子、脂肪族ヒドロキシを有するポリオール、エステル型可塑剤、グリコールエーテル、ポリ(プロピレングリコール)、マルチブロックポリマー、シングルブロックポリマー、ポリ(エチレンオキシド)、リン酸エステル;フタル酸エステル、アミド、鉱油、ポリエチレングリコール、グリセリン又は砂糖との脂肪酸及びそのエステル、ポリエチレングリコール、グリセリン又は砂糖との脂肪アルコール及びそのエーテル、及び植物油からなる群から選択される1又は複数の可塑剤と1又は複数の医薬用ポリマーを熱動力学的配合によってブレンドすることによって、前記ポリマーを可塑化する方法であって、1又は複数のポリマーを1又は複数の可塑剤で熱動力学的処理して複合材料にすることを含む方法。
【請求項22】
ホットメルト押出、溶融造粒、圧縮成形、錠剤圧縮、カプセル充填、フィルムコーティング、又は射出成形により複合材料を1又は複数の原薬とともに処理することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ポリマー及び可塑剤を1又は複数の賦形剤で予備可塑化することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
1又は複数の賦形剤が、薬学的に許容されるポリマー、熱不安定性ポリマーの賦形剤、及び非ポリマーの賦形剤からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
原薬のバルク原料の粒径を縮小するために熱動力学的配合により、1又は複数の原薬(API)を乾燥粉砕する方法。
【請求項26】
APIの1種又は複数が結晶性である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
粒径が約1000μm〜約1μm未満まで縮小される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
熱動力学的配合が5秒〜30秒間実施される、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
熱動力学的配合が10秒〜300秒間実施される、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
熱動力学的配合により長期間、結晶性又は半結晶性の医薬用ポリマーを非晶質にする方法。
【請求項31】
ポリマーが、周囲条件で貯蔵されるとき少なくとも2年間非晶質になる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
1又は複数の原薬(API)を1又は複数の薬学的に許容される賦形剤とともに含む医薬組成物であって、均質な、不均一な又は不均一に均質な組成物であり、ガラス転移温度が、熱処理された同一の原薬及び薬学的に許容される賦形剤の同一の配合物のガラス転移温度よりもかなり高い組成物。
【請求項33】
同一の配合物が、ホットメルト押出によって処理される、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項34】
同一の配合物が、可塑剤を用いて処理される、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項35】
医薬組成物が、熱動力学的配合を含めた方法により処理される、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項36】
1又は複数の原薬(API)を1又は複数の薬学的に許容される賦形剤とともに含む、医薬組成物であって、単一のガラス転移温度を有する、均質な、不均一な又は不均一に均質な組成物であり、熱処理された同一の原薬及び薬学的に許容される賦形剤の同一の配合物が2つ以上のガラス転移温度を有する組成物。
【請求項37】
同一の配合物がホットメルト押出によって処理される、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
同一の配合物が、可塑剤を用いて処理される、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項39】
熱動力学的配合を含めた方法により処理される、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項40】
同一の配合物の最も低いガラス転移温度よりも少なくとも20%高い単一のガラス転移温度を有する、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項41】
複合材料に処理された1又は複数の原薬(API)を1又は複数の薬学的に許容される賦形剤とともに含む医薬組成物であって、APIの少なくとも1種が熱不安定性であり、複合材料が、それぞれの熱不安定性APIの約1.0%未満の分解生成物を有する、均質な、不均一な又は不均一に均質である組成物。
【請求項42】
未処理のAPIと比較して、それぞれのAPIの少なくとも約94%の薬物の効力を有する、請求項41に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2010−536877(P2010−536877A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522038(P2010−522038)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/073913
【国際公開番号】WO2009/026461
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(500039463)ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システム (115)
【出願人】(510100313)インテグリコ コンポジッツ,インク. (1)
【Fターム(参考)】